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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129826
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】熱機関および動力発生装置
(51)【国際特許分類】
   F02K 99/00 20090101AFI20220830BHJP
   F02C 7/22 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
F02K99/00
F02C7/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028662
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】591214033
【氏名又は名称】李 勤三
(74)【代理人】
【識別番号】100154405
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 大吾
(74)【代理人】
【識別番号】100079005
【弁理士】
【氏名又は名称】宇高 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100201341
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 順一
(72)【発明者】
【氏名】李 勤三
(57)【要約】
【課題】化石燃料を用いず二酸化炭素を排出しないジェットエンジンに代わる動力発生装置を提供する。
【解決手段】動力発生装置3は吸引手段31と圧縮手段32と反応室33と排出手段34とを備える。熱機関1は、レーザー装置11,21と、ポジトロン蓄積手段12と、誘導手段13,14,24と、反応室33とを備える。高出力照射によりポジトロンが発生し、誘導手段13を介しポジトロン蓄積手段12に蓄積され、誘導手段14を介し反応室33に供給される。低出力照射によりエレクトロンが発生し、誘導手段24を介し反応室33に供給される。反応室33では対消滅により熱エネルギーが発生する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1燃料と、
前記第1燃料にレーザー照射する高出力レーザー装置と、
前記第1燃料から発生するポジトロンを誘導する第1ポジトロン誘導手段と、
前記第1ポジトロン誘導手段の経路上に設けられポジトロンを蓄積するポジトロン蓄積手段と、
前記ポジトロン蓄積手段よりポジトロンを誘導する第2ポジトロン誘導手段と、
第2燃料と、
前記第2燃料にレーザー照射する低出力レーザー装置と、
前記第2燃料から発生するエレクトロンを誘導するエレクトン誘導手段と、
前記第2ポジトロン誘導手段により誘導されたポジトロンと、前記エレクトロン誘導手段により誘導されたエレクトロンとを反応させ、熱を発生させる反応室と、
を備えることを特徴とする熱機関。
【請求項2】
燃料と、
前記燃料に高出力レーザーと低出力レーザーを切り替え可能に照射するレーザーと、
高出力レーザーと低出力レーザーを切り替える制御装置と、
高出力レーザー照射により前記燃料から発生するポジトロンを誘導する第1ポジトロン誘導手段と、
前記第1ポジトロン誘導手段の経路上に設けられポジトロンを蓄積するポジトロン蓄積手段と、
前記ポジトロン蓄積手段よりポジトロンを誘導する第2ポジトロン誘導手段と、
低出力レーザー照射により前記燃料から発生するエレクトロンを誘導するエレクトン誘導手段と、
前記第2ポジトロン誘導手段により誘導されたポジトロンと、前記エレクトロン誘導手段により誘導されたエレクトロンとを反応させ、熱を発生させる反応室と、
を備えることを特徴とする熱機関。
【請求項3】
外部より気体を吸引する気体吸引手段と、
前記吸引した気体を圧縮する気体圧縮手段と、
前記気体を加熱する請求項1または2記載の反応室と、
前記加熱された気体を排出する排出手段と
を備えることを特徴とする動力発生装置。
【請求項4】
燃料に高出力レーザー照射することにより、ポジトロンを発生させ、前記ポジトロンを蓄積手段を介して、反応室に誘導し、
燃料に低出力レーザー照射することにより、エレクトロンを発生させ、前記反応室に誘導し、
前記反応室にて対消滅による熱エネルギーを発生させる
ことを特徴とする熱エネルギー発生方法。
【請求項5】
第1燃料と、
前記第1燃料にレーザー照射する高出力レーザー装置と、
前記第1燃料から発生するポジトロンを誘導するポジトロン誘導手段と、
第2燃料と、
前記第2燃料にレーザー照射する低出力レーザー装置と、
前記第2燃料から発生するエレクトロンを誘導するエレクトン誘導手段と、
前記ポジトロン誘導手段により誘導されたポジトロンと、前記エレクトロン誘導手段により誘導されたエレクトロンとを反応させ、熱を発生させる反応室と、
を備えることを特徴とする熱機関。
【請求項6】
燃料と、
前記燃料に高出力レーザーと低出力レーザーを切り替え可能に照射するレーザーと、
高出力レーザーと低出力レーザーを切り替える制御装置と、
高出力レーザー照射により前記燃料から発生するポジトロンを誘導するポジトロン誘導手段と、
低出力レーザー照射により前記燃料から発生するエレクトロンを誘導するエレクトン誘導手段と、
前記第2ポジトロン誘導手段により誘導されたポジトロンと、前記エレクトロン誘導手段により誘導されたエレクトロンとを反応させ、熱を発生させる反応室と、
を備えることを特徴とする熱機関。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱機関および動力発生装置に関する。特に、ジェットエンジンに代替する動力発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機等には動力発生装置としてジェットエンジンが搭載されている。このようなジェットエンジンは、吸引ファンと、圧縮機と、燃焼器と、タービンと、排出ノズルとを備える(例えば特許文献1)。なお、動力発生装置の対象は航空機に限定する必要はない。
【0003】
吸引ファンにより取り込まれた空気は、圧縮機により圧縮される。燃焼器は燃料を圧縮空気に供給することで、燃焼ガスを生成する。燃焼ガスがタービンを回転させることにより回転駆動力が発生する。回転駆動力の一部は圧縮機の動作に用いられる。燃焼ガスは排出ノズルより排出される。この燃焼ガスの噴射により推進力が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-200191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、気候変動の一因として、化石燃料の使用による二酸化炭素排出が指摘されており、代替エネルギーが検討されている。
【0006】
また、既存の飛行機では、燃料積載可能量には限界があり、その結果、航続距離に限界がある。
【0007】
このような理由から次世代の動力発生装置が検討されている。
【0008】
本願は上記課題を解決するものであり、ジェットエンジンに代替可能であり、長い航続距離を実現できる動力発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための本発明は熱機関である。本願熱機関は、第1燃料と、前記第1燃料にレーザー照射する高出力レーザー装置と、前記第1燃料から発生するポジトロンを誘導する第1ポジトロン誘導手段と、前記第1ポジトロン誘導手段の経路上に設けられポジトロンを蓄積するポジトロン蓄積手段と、前記ポジトロン蓄積手段よりポジトロンを誘導する第2ポジトロン誘導手段と、第2燃料と、前記第2燃料にレーザー照射する低出力レーザー装置と、前記第2燃料から発生するエレクトロンを誘導するエレクトン誘導手段と、前記第2ポジトロン誘導手段により誘導されたポジトロンと、前記エレクトロン誘導手段により誘導されたエレクトロンとを反応させ、熱を発生させる反応室と、を備える。
【0010】
上記の目的を達成するための本発明は熱機関である。本願熱機関は、燃料と、前記燃料に高出力レーザーと低出力レーザーを切り替え可能に照射するレーザーと、高出力レーザーと低出力レーザーを切り替える制御装置と、高出力レーザー照射により前記燃料から発生するポジトロンを誘導する第1ポジトロン誘導手段と、前記第1ポジトロン誘導手段の経路上に設けられポジトロンを蓄積するポジトロン蓄積手段と、前記ポジトロン蓄積手段よりポジトロンを誘導する第2ポジトロン誘導手段と、低出力レーザー照射により前記燃料から発生するエレクトロンを誘導するエレクトン誘導手段と、前記第2ポジトロン誘導手段により誘導されたポジトロンと、前記エレクトロン誘導手段により誘導されたエレクトロンとを反応させ、熱を発生させる反応室と、を備える。
【0011】
本願発明では、燃料選択とレーザ出力制御により、ポジトロンとエレクトロンを発生させる。ポジトロンは蓄積しておき、ポジトロンとエレクトロンを反応室に供給することで、対消滅に伴う熱エネルギーを発生させる。
【0012】
本発明においては、物質の質量欠損をエネルギーとしている。したがって、わずかな燃料で長時間稼働可能である。その結果、化石燃料の燃焼に比べ効率が良い。また、二酸化炭素を排出しない。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明は動力発生装置である。動力発生装置は、外部より気体を吸引する気体吸引手段と、前記吸引した気体を圧縮する気体圧縮手段と、前記気体を加熱する本願発明の反応室と、前記加熱された気体を排出する排出手段とを備える。
【0014】
排出手段より高温高圧の気体が噴射されることにより、推進力が得られる。
【0015】
上記の目的を達成するための本発明は熱エネルギー発生方法である。本願熱エネルギー発生方法では、燃料に高出力レーザー照射することにより、ポジトロンを発生させ、前記ポジトロンを蓄積手段を介して、反応室に誘導し、燃料に低出力レーザー照射することにより、エレクトロンを発生させ、前記反応室に誘導し、前記反応室にて対消滅による熱エネルギーを発生させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、化石燃料を用いず二酸化炭素を排出しない。飛行機に適用すれば、ジェットエンジンに比べて航続距離が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態にかかる熱機関および動力発生装置
図2】反応室イメージ図
図3】第2実施形態にかかる熱機関および動力発生装置
図4】一般的な飛行機
【発明を実施するための形態】
【0018】
~第1実施形態概要~
図1は、第1実施形態にかかる熱機関1および動力発生装置3の概念図である。
【0019】
本願発明は、熱機関1と動力発生装置3とから構成される。熱機関1を動力発生装置3の一構成要素と解釈してもよい。
【0020】
動力発生装置3は、例えば、飛行機(図4参照)に設けられる。動力発生装置3は、ケーシング内に、気体吸引手段31と、気体圧縮手段32と、反応室33と、排出手段34とを備える。
【0021】
気体吸引手段31は、例えば、飛行機の進行方向前面に設けられた吸引ファンである。進行方向前面より外気を吸引する。
【0022】
気体圧縮手段32は、気体吸引手段31より吸引された気体を燃焼に適した圧力となるように圧縮する。
【0023】
反応室33は、圧縮空気を加熱する。具体的な加熱方法は、熱機関1に係る説明において詳述する。
【0024】
排出手段34は、例えば、飛行機の進行方向後面に設けられた噴射ノズルである。加熱され膨張した気体を排出する。
【0025】
反応室33と排出手段34との間にタービン(付番省略)が設けられている。タービンは加熱された気体により、回転される。この回転力の一部は、圧縮機の動作に用いられる。また、回転力を発電に用いてもよい。
【0026】
これにより、動力発生装置3は噴射による推進力を得る。すなわち、ジェットエンジンの燃焼器が本願では反応室33となっている。ジェットエンジンの燃焼器は化石燃料を燃焼させるのに対し、反応室33ではポジトロンとエレクトロンとを対消滅させ、熱エネルギーに変換する。
【0027】
熱機関1について説明する。
【0028】
熱機関1は、2つのレーザー装置11,21と、ポジトロン蓄積手段12と、誘導手段13,14,24と、反応室33とを備える。反応室33は熱機関1の構成要素であるとともに、動力発生装置3の構成要素である。
【0029】
レーザー装置11,21は、より短い波長のパルス波が好ましい。最近では、理化学研究所が波長域20nm~60nmの極端紫外線による高出力レーザー光源を開発している。また、浜松フォトニクスは100J級の高出力パルスレーザー装置を開発している。これらに類似する装置により本願は実現可能である。
【0030】
レーザー装置11,21の電源として、上記タービンによる回転力を用いてもよい。ただし、照射開始時には、タービンは回転していないので、予備電源(図示省略)を用いる。タービン回転による余剰電力は予備電源に蓄電してもよい。
【0031】
レーザー装置11はレーザー装置21に比べて高出力である(例えば2倍以上)。例えば、高出力40Jに対し、低出力20Jとする。
【0032】
レーザー装置11は、第1燃料にレーザー照射する。第1燃料はレーザー照射によりポジトロンが発生する物質であれば、特に限定されない。具体例については下記詳述する。
【0033】
ポジトロン蓄積手段12は、レーザー装置11の下流側に設けられ、誘導手段13により誘導されたポジトロンを蓄積する。誘導手段13は、例えば、六方晶構造を持つ物質からなるキャパシタである。六方晶構造を持つ物質は、例えば、グラフェンや窒化ホウ素(BN)である。
【0034】
誘導手段13は、ポジトロン蓄積手段12の下流側に設けられる。すなわち、ポジトロン蓄積手段12は、レーザー装置11と誘導手段13の経路上に設けられる。誘導手段13は、たとえば、電磁石であり、第1燃料へのレーザー照射により発生したポジトロンを誘導する。
【0035】
誘導経路上にポジトロン蓄積手段12があることにより、誘導手段13により誘導されたポジトロンはポジトロン蓄積手段12に捕捉される。
【0036】
誘導手段14はポジトロン蓄積手段12に蓄積されているポジトロンを反応室33に誘導する。誘導手段14は、例えば、高圧窒素ガス流である。分子にポジトロンを帯電させ、移動させる。
【0037】
レーザー装置21は、第2燃料にレーザー照射する。第2燃料はレーザー照射によりエレクトロンが発生する物質であれば、特に限定されない。第2燃料は第1燃料と同じでもよいし、異なっていてもよい。反応後の第1燃料を転用してもよい。具体例については下記詳述する。
【0038】
誘導手段24は第2燃料へのレーザー照射により発生したエレクトロンを反応室33に誘導する。誘導手段24は、例えば、高圧窒素ガス流である。分子にエレクトロンを帯電させ、移動させる。
【0039】
誘導手段14と誘導手段24とは連動して、反応室33に供給されるポジトロンとエレクトロンが同量となるようにする。なお、ポジトロン量とエレクトロン量の制御が必要なければ、ポジトロン蓄積手段12は不要としてもよい。
【0040】
図2は反応室33のイメージ図である。
【0041】
反応室33は、誘導手段14により誘導されたポジトロンと、誘導手段24により誘導されたエレクトロンとを反応させる。ポジトロンとエレクトロンとが衝突すると、対消滅により、2本の511keVのガンマ線が、反対方向に放出される。ガンマ線は内壁に衝突し発熱する。これにより反応室33内の気体は加熱される。
【0042】
反応室33の上流部は、誘導手段14および誘導手段24と連続している。反応室33の中部には、ハニカム構造が設けられ、各部屋において、効率よく加熱される。例えば、ハニカムはセラミックやタングステンにより構成される。なお、ハニカム構造は必ずしも六角形でなくともよい。
【0043】
~ポジトロン発生・エレクトロン発生~
燃料は、レーザー照射によりポジトロンやエレクトロンが発生する物質であれば、特に限定されないが、レーザー照射前は安定同位体であり、レーザー照射後は同種の別の安定同位体であるか、安定同位体である核種変換(別の元素)であることが好ましい。これにより、燃料の取扱いが容易となる。
【0044】
例えば、Li(リチウム)はLi7とLi6の安定同位体を有する。B(ボロン)はB11とB10の安定同位体を有する。C(炭素)はC13とC12の安定同位体を有する。N(窒素)はN14とN15の安定同位体を有する。O(酸素)はO16とO17とO18の安定同位体を有する。Ne(ネオン)はNe22とNe21とNe20の安定同位体を有する。K(カリウム)はK41とK39の安定同位体を有する。S(硫黄)はS36とS34とS33とS32の安定同位体を有する。W(タングステン)はW186とW184とW183とW182の安定同位体を有する。
【0045】
燃料は、元素単体でもよいが、化合物でもよい。例えば、BN(窒化ホウ素)であれば、B(ボロン)もN(窒素)も安定同位体を有する。
【0046】
レーザー照射の際は適宜触媒を用いてもよい。触媒として、たとえば、MgOやCaOを用いる。
【0047】
CaOを触媒して、重水素と陽子数55のCs(セシウム)を反応させることで、陽子数59のPr(プラセオジム)に変換されることが報告されている。同様にCaOを触媒として、重水素と陽子数38のSr(ストロンチウム)を反応させることで陽子数42のMo(モリブデン)に変換されることが報告されている(特許4347262号公報)。
【0048】
一方、発明者はMgOが陽子数を1つづつ下げる触媒として、たとえば、239のプルトニウム(Pu)を陽子数92、質量数238のウラン(U)に変換される可能性について言及している(特開2019-100846)。
【0049】
これらの触媒は、反応時の活性化エネルギーを下げている。これにより、安定同位体(たとえばK41)を別の安定同位体(たとえばK39)とする活性化エネルギーを下げる可能性がある。
【0050】
まず、エレクトロン発生例について説明する。燃料にC12を用いる。触媒を用い、レーザー照射により、C11となるとともに、中性子nとエレクトロンeが放出される。
【0051】
次に、ポジトロン発生について説明する。燃料に上記C11を転用する。レーザー照射により、B11となるとともに、陽子pとポジトロンeが放出される。
【0052】
さらに、レーザー照射によりB10と余剰中性子nを反応せることにより、B11となるとともに、中性子が吸収される。
【0053】
この時、C12、B10、B11はいずれも安定同位体である。したがって、確実な反応が期待できる。なお、C11は安定同位体ではないが、一連の反応における中間生成物であり、放射線に係る問題は生じない。
【0054】
別の具体例について説明する。
【0055】
エレクトロン発生例について説明する。燃料にCとWの複合体を用いる。レーザー照射により、W184はW183となるとともに、中性子nとエレクトロンeが放出される。
【0056】
更に別の具体例について説明する。
【0057】
まず、エレクトロン発生例について説明する。燃料にCとNa23の複合体を用いる。触媒を用い、レーザー照射により、Na22となるとともに、中性子nとエレクトロンeが放出される。
【0058】
次に、ポジトロン発生について説明する。燃料に上記Na22を転用する。レーザー照射により、Ne22となるとともに、陽子pとポジトロンeが放出される。
【0059】
さらに、レーザー照射によりB10と余剰中性子nを反応せることにより、B11となるとともに、中性子が吸収される。
【0060】
この時、Na23、Ne22、B10、B11はいずれも安定同位体である。したがって、確実な反応が期待できる。なお、Na22は安定同位体ではないが、一連の反応における中間生成物であり、放射線に係る問題は生じない。
【0061】
本発明においては、物質の質量欠損をエネルギーとしている。したがって、わずかな燃料で長時間稼働可能である。その結果、化石燃料の燃焼に比べ効率が良い。また、二酸化炭素を排出しない。
【0062】
~第2実施形態概要~
図3は、第2実施形態にかかる熱機関1および動力発生装置3の概念図である。
【0063】
本願発明は、熱機関1と動力発生装置3とから構成される。動力発生装置3は第1実施形態と同じく、ケーシング内に設けられた、気体吸引手段31と、気体圧縮手段32と、反応室33と、排出手段34とから構成され、詳細な説明を省略する。
【0064】
第2実施形態の熱機関1について説明する。
【0065】
熱機関1は、1つのレーザー装置11と、ポジトロン蓄積手段12と、誘導手段13,14,24と、制御装置15と、反応室33とを備える。
【0066】
第1実施形態では、高出力レーザー装置11と低出力レーザー装置21を併設したが、第2実施形態では、レーザー装置11は制御装置15により高出力/低出力を切り替え可能である。高出力は低出力の2倍以上とする。
【0067】
まず、制御装置15は高出力を選択する。レーザー装置11は、燃料に高出力レーザー照射する。制御装置15は連動して誘導手段13をONとする。
【0068】
ポジトロン蓄積手段12は、レーザー装置11の下流側に設けられ、誘導手段13により誘導されたポジトロンを蓄積する。誘導手段13は、例えば、六方晶構造を持つ物質からなるキャパシタである。六方晶構造を持つ物質は、例えば、グラフェンや窒化ホウ素(BN)である。
【0069】
誘導手段13は、ポジトロン蓄積手段12の下流側に設けられる。すなわち、ポジトロン蓄積手段12は、レーザー装置11と誘導手段13の経路上に設けられる。誘導手段13は、たとえば、電磁石であり、燃料へのレーザー照射により発生したポジトロンを誘導する。
【0070】
誘導経路上にポジトロン蓄積手段12があることにより、誘導手段13により誘導されたポジトロンはポジトロン蓄積手段12に捕捉される。
【0071】
誘導手段14はポジトロン蓄積手段12に蓄積されているポジトロンを反応室33に誘導する。誘導手段14は、例えば、高圧窒素ガス流である。分子にポジトロンを帯電させ、移動させる。
【0072】
次に、制御装置15は低出力を選択する。レーザー装置11は、燃料に低出力レーザー照射する。制御装置15は連動して誘導手段13をOFFとする。
【0073】
誘導手段24は燃料へのレーザー照射により発生したエレクトロンを反応室33に誘導する。誘導手段24は、例えば、高圧窒素ガス流である。分子にエレクトロンを帯電させ、移動させる。
【0074】
誘導手段14と誘導手段24とは連動して、反応室33に供給されるポジトロンとエレクトロンが同量となるようにする。
【0075】
反応室33における対消滅により熱エネルギーを得る点は、第1実施形態と同様である。当該熱エネルギーを動力発生装置3にて用いる。
【0076】
~ロケットへの適用~
本願熱機関をロケットに適用してもよい。宇宙空間では気体が得られないため、水分をタンクに貯蔵しておき、気体吸引に代えて水分を噴霧する。噴霧された水分は、本願熱機関により加熱され、噴射される。これにより推進力が得られる。
【符号の説明】
【0077】
1 熱機関
2 動力発生装置
11 レーザー装置
12 ポジトロン蓄積手段
13 誘導手段
14 誘導手段
15 制御装置
21 レーザー装置
24 誘導手段
31 吸引手段
32 圧縮手段
33 反応室
34 排出手段
図1
図2
図3
図4