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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129840
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】表示体
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20220830BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G02B5/18
G09F3/02 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028679
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】澤村 力
【テーマコード(参考)】
2H249
【Fターム(参考)】
2H249AA07
2H249AA12
2H249AA60
2H249AA65
(57)【要約】
【課題】高さが異なる反射面によって生じる光の干渉を利用して表示を行う表示体において、より複雑な表示を可能とする。
【解決手段】表示体1は、一方の面が第1及び第2領域を含んだレリーフ層11と、第1及び第2領域を被覆した反射層12とを備えている。第1及び第2領域の各々は、平坦領域と、島状に分布したサブ領域とで構成されている。第1及び第2領域では、それぞれ、サブ領域は平坦領域から第1及び第2距離だけ離間している。表示体1のうち、第1及び第2領域にそれぞれ対応した第1部分P1及び第2部分の各々は、前面を白色光で照明して反射光を肉眼で観察する第1観察条件、及び、裏返して反射光を肉眼で観察する第2観察条件の少なくとも一方で有彩色を表示し、第1及び第2部分は、第1及び第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面とその裏面である第2面とを有している光透過性のレリーフ層であって、前記第1面は第1領域及び第2領域を含み、前記第1領域は、前記第1領域の全体に亘って広がった第1平坦領域と、前記第1平坦領域に対して各々が平行であり、前記第1平坦領域を含む平面から第1距離だけ離間し、島状に分布した複数の第1サブ領域とで構成され、前記第2領域は、前記第1平坦領域に対して平行な第2平坦領域と、前記第2平坦領域に対して各々が平行であり、前記第2平坦領域を含む平面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ離間し、島状に分布した複数の第2サブ領域とで構成されたレリーフ層と、
前記第1領域及び前記第2領域をコンフォーマルに被覆した反射層と
を備え、
前記第1領域に対応した第1部分と前記第2領域に対応した第2部分との各々は、前記レリーフ層と白色光を射出する光源との間に前記反射層を介在させて、反射光を肉眼で観察する第1観察条件、及び、前記反射層と前記光源との間に前記レリーフ層を介在させて、反射光を肉眼で観察する第2観察条件の少なくとも一方で有彩色を表示し、
前記第1部分及び前記第2部分は、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見える表示体。
【請求項2】
前記反射層を間に挟んで前記第1面を被覆し、前記レリーフ層とは屈折率が異なる光透過性の被覆層を更に備えた請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
第1面とその裏面である第2面とを有しているレリーフ層であって、前記第1面は第1領域及び第2領域を含み、前記第1領域は、前記第1領域の全体に亘って広がった第1平坦領域と、前記第1平坦領域に対して各々が平行であり、前記第1平坦領域を含む平面から第1距離だけ離間し、島状に分布した複数の第1サブ領域とで構成され、前記第2領域は、前記第1平坦領域に対して平行な第2平坦領域と、前記第2平坦領域に対して各々が平行であり、前記第2平坦領域を含む平面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ離間し、島状に分布した複数の第2サブ領域とで構成されたレリーフ層と、
前記第1領域及び前記第2領域をコンフォーマルに被覆した反射層と、
前記反射層を被覆するとともに、前記反射層から剥離可能な光透過性の被覆層と
を備え、
前記第1領域に対応した第1部分と前記第2領域に対応した第2部分との各々は、前記レリーフ層と白色光を射出する光源との間に前記反射層及び前記被覆層を介在させて反射光を肉眼で観察する第1観察条件、及び、前記被覆層を前記反射層から剥離し、前記光源と前記レリーフ層との間に前記反射層を介在させて反射光を肉眼で観察する第2観察条件の少なくとも一方で有彩色を表示し、
前記第1部分及び前記第2部分は、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見える表示体。
【請求項4】
第1面とその裏面である第2面とを有しているレリーフ層であって、前記第1面は第1領域及び第2領域を含み、前記第1領域は、前記第1領域の全体に亘って広がった第1平坦領域と、前記第1平坦領域に対して各々が平行であり、前記第1平坦領域を含む平面から第1距離だけ離間し、島状に分布した複数の第1サブ領域とで構成され、前記第2領域は、前記第1平坦領域に対して平行な第2平坦領域と、前記第2平坦領域に対して各々が平行であり、前記第2平坦領域を含む平面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ離間し、島状に分布した複数の第2サブ領域とで構成されたレリーフ層と、
前記第1領域及び前記第2領域をコンフォーマルに被覆した反射層と
を備え、
前記第1領域に対応した第1部分と前記第2領域に対応した第2部分との各々は、前記レリーフ層と白色光を射出する光源との間に前記反射層を介在させて反射光を肉眼で観察する第1観察条件、及び、前記反射層上に液膜を設け、前記光源と前記レリーフ層との間に前記反射層及び前記液膜を介在させて反射光を肉眼で観察する第2観察条件の少なくとも一方で有彩色を表示し、
前記第1部分及び前記第2部分は、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見える表示体。
【請求項5】
前記液膜は水からなる請求項4に記載の表示体。
【請求項6】
前記第1領域と前記第2領域とは隣接しており、前記第1部分と前記第2部分とが、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の一方のもとで表示する画像は、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の他方の下で顕像化する潜像である請求項1乃至5の何れか1項に記載の表示体。
【請求項7】
前記第1領域において、前記複数の第1サブ領域はランダムに分布し、前記第2領域において、前記複数の第2サブ領域はランダムに分布している請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示体。
【請求項8】
前記複数の第1サブ領域及び前記複数の第2サブ領域の各々は、最大寸法が0.3乃至50μmの範囲内にあり、この最大寸法を有する方向に対して垂直な方向における寸法の最大値が0.3乃至50μmの範囲内にある請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項9】
前記第1領域の面積に対する前記複数の第1サブ領域の合計面積の比、及び、前記第2領域の面積に対する前記複数の第2サブ領域の合計面積の比は、0.15乃至0.85の範囲内にある請求項1乃至8の何れか1項に記載の表示体。
【請求項10】
前記反射層は、前記複数の第1サブ領域及び前記複数の第2サブ領域の各々の位置で矩形状の断面形状を有している請求項1乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項11】
前記第1距離及び前記第2距離の各々は0.05乃至0.5μmの範囲内にある請求項1乃至10の何れか1項に記載の表示体。
【請求項12】
前記反射層は金属又は合金からなる層を含んだ請求項1乃至11の何れか1項に記載の表示体。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の表示体を含んだ転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体と
を備えた転写箔。
【請求項14】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体上に設けられた粘着層と
を備えた粘着ラベル。
【請求項15】
請求項1乃至12の何れか1項に記載の表示体と、
前記表示体を支持した物品と
を備えた表示体付き物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
表示体として、ベース表面と、このベース表面に対して平行であり且つベース表面から等しい高さで突き出た複数のエレメント表面とを有し、白色光で照明した場合に、有彩色を表示するものがある(例えば、特許文献1を参照)。この色表示は、ベース表面によって反射された光とエレメント表面によって反射された光との干渉によってもたらされるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/001283号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高さが異なる反射面によって生じる光の干渉を利用して表示を行う表示体において、より複雑な表示を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面によると、第1面とその裏面である第2面とを有している光透過性のレリーフ層であって、前記第1面は第1領域及び第2領域を含み、前記第1領域は、前記第1領域の全体に亘って広がった第1平坦領域と、前記第1平坦領域に対して各々が平行であり、前記第1平坦領域を含む平面から第1距離だけ離間し、島状に分布した複数の第1サブ領域とで構成され、前記第2領域は、前記第1平坦領域に対して平行な第2平坦領域と、前記第2平坦領域に対して各々が平行であり、前記第2平坦領域を含む平面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ離間し、島状に分布した複数の第2サブ領域とで構成されたレリーフ層と、前記第1領域及び前記第2領域をコンフォーマルに被覆した反射層とを備え、前記第1領域に対応した第1部分と前記第2領域に対応した第2部分との各々は、前記レリーフ層と白色光を射出する光源との間に前記反射層を介在させて、反射光を肉眼で観察する第1観察条件、及び、前記反射層と前記光源との間に前記レリーフ層を介在させて、反射光を肉眼で観察する第2観察条件の少なくとも一方で有彩色を表示し、前記第1部分及び前記第2部分は、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見える表示体が提供される。
【0006】
ここで、「白色光」は、可視域の全体に亘ってほぼ等しい強度を有する光である。また、一般に、色差ΔE abが13以下である場合、それら色は同じ色に見える。そして、一般に、色差ΔE abが13超である場合、それら色は異なる色に見える。
【0007】
白色光で照明した場合に第1部分及び第2部分の各々が表示する色は、例えば、有彩色である。そして、白色光で照明した場合に第1部分及び第2部分の各々が表示する有彩色は、例えば、照明方向や観察方向を僅かに変化させただけでは変化せず、照明方向や観察方向を大きく変化させることにより、無彩色化する。
【0008】
また、この表示体では、第1部分及び第2部分は、第1観察条件及び第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見える。このような色変化を生じさせるには、第1距離及び第2距離が互いから異ならしめるとともに、例えば、反射層と隣接し且つ反射層と観察者との間に位置した領域(以下、隣接領域という)を空気層とレリーフ層との間で切り替えることにより、隣接領域の屈折率を変化させる必要がある。
【0009】
第1部分及び第2部分の各々は、第1観察条件における隣接領域の屈折率と第2観察条件における隣接領域の屈折率との相違が十分に大きければ、照明角度や観察角度が同じであったとしても、第1観察条件と第2観察条件とで異なる色に見える。そして、第1距離及び第2距離を適切に設定すれば、第1部分及び第2部分は、第1観察条件及び第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見えるようにすることができる。第1部分及び第2部分の個々の色変化は容易に認識できなかったとしても、第1部分及び第2部分が異なる色に見える状態と同じ色に見える状態との間での変化は、容易に認識できる。
【0010】
従って、上記の技術によると、高さが異なる反射面によって生じる光の干渉を利用して表示を行う表示体において、より複雑な表示が可能となる。
【0011】
本発明の他の側面によると、前記反射層を間に挟んで前記第1面を被覆し、前記レリーフ層とは屈折率が異なる光透過性の被覆層を更に備えた上記側面に係る表示体が提供される。
被覆層を設けると、反射層の損傷や劣化を生じ難くすることができる。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、第1面とその裏面である第2面とを有しているレリーフ層であって、前記第1面は第1領域及び第2領域を含み、前記第1領域は、前記第1領域の全体に亘って広がった第1平坦領域と、前記第1平坦領域に対して各々が平行であり、前記第1平坦領域を含む平面から第1距離だけ離間し、島状に分布した複数の第1サブ領域とで構成され、前記第2領域は、前記第1平坦領域に対して平行な第2平坦領域と、前記第2平坦領域に対して各々が平行であり、前記第2平坦領域を含む平面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ離間し、島状に分布した複数の第2サブ領域とで構成されたレリーフ層と、前記第1領域及び前記第2領域をコンフォーマルに被覆した反射層と、前記反射層を被覆するとともに、前記反射層から剥離可能な光透過性の被覆層とを備え、前記第1領域に対応した第1部分と前記第2領域に対応した第2部分との各々は、前記レリーフ層と白色光を射出する光源との間に前記反射層及び前記被覆層を介在させて反射光を肉眼で観察する第1観察条件、及び、前記被覆層を前記反射層から剥離し、前記光源と前記レリーフ層との間に前記反射層を介在させて反射光を肉眼で観察する第2観察条件の少なくとも一方で有彩色を表示し、前記第1部分及び前記第2部分は、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見える表示体が提供される。
【0013】
被覆層を剥離すると、隣接領域の屈折率が変化する。従って、上記と同様の色変化を生じさせることができる。また、被覆層は、反射層の損傷や劣化を生じ難くする。
【0014】
この表示体では、レリーフ層は光透過性であってもよく、遮光性であってもよい。それ故、この表示体を物品に支持させる場合、その物品のうち表示体を支持する部分も、光透過性であってもよく、遮光性であってもよい。
【0015】
この表示体では、剥離した被覆層を肉眼で観察しても、上記の色変化を生じさせる特徴は見出せない。このことから、隣接領域の屈折率の変化に伴って、上記の色変化を生じたことが分かる。これと同様の変化を、印刷などの他の技術によって生じさせることは不可能である。
【0016】
本発明の更に他の側面によると、第1面とその裏面である第2面とを有しているレリーフ層であって、前記第1面は第1領域及び第2領域を含み、前記第1領域は、前記第1領域の全体に亘って広がった第1平坦領域と、前記第1平坦領域に対して各々が平行であり、前記第1平坦領域を含む平面から第1距離だけ離間し、島状に分布した複数の第1サブ領域とで構成され、前記第2領域は、前記第1平坦領域に対して平行な第2平坦領域と、前記第2平坦領域に対して各々が平行であり、前記第2平坦領域を含む平面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ離間し、島状に分布した複数の第2サブ領域とで構成されたレリーフ層と、前記第1領域及び前記第2領域をコンフォーマルに被覆した反射層とを備え、前記第1領域に対応した第1部分と前記第2領域に対応した第2部分との各々は、前記レリーフ層と白色光を射出する光源との間に前記反射層を介在させて反射光を肉眼で観察する第1観察条件、及び、前記反射層上に液膜を設け、前記光源と前記レリーフ層との間に前記反射層及び前記液膜を介在させて反射光を肉眼で観察する第2観察条件の少なくとも一方で有彩色を表示し、前記第1部分及び前記第2部分は、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見える表示体が提供される。
【0017】
液膜を設けると、隣接領域の屈折率が変化する。従って、上記と同様の色変化を生じさせることができる。また、この表示体では、上記の色変化を可逆的に生じさせることができる。
【0018】
この表示体では、レリーフ層は光透過性であってもよく、遮光性であってもよい。それ故、この表示体を物品に支持させる場合、その物品のうち表示体を支持する部分も、光透過性であってもよく、遮光性であってもよい。
【0019】
この表示体では、液膜を設けることにより上記の色変化を生じることから、隣接領域の屈折率の変化に伴って、上記の色変化を生じたことが分かる。これと同様の変化を、印刷などの他の技術によって生じさせることは不可能又は困難である。
【0020】
本発明の更に他の側面によると、前記液膜は水からなる上記側面に係る表示体が提供される。
【0021】
水は、入手し易く且つ安全である。また、水からなる液膜は、除去が容易であるとともに、除去後に残留物を生じ難い。
【0022】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記液膜は溶液からなる上記側面に係る表示体が提供される。
【0023】
上記の色変化は、液膜が特定の屈折率を有している場合にのみ生じる。ショ糖水溶液などの溶液は、溶媒、溶質及び濃度に応じて屈折率が変化し得る。どのような溶液からなる液膜を設けるべきかを知らない者にとって、上記の色変化を生じさせることは不可能又は困難である。
【0024】
本発明の更に他の側面によると、前記第1領域と前記第2領域とは隣接しており、前記第1部分と前記第2部分とが、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の一方のもとで表示する画像は、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の他方の下で顕像化する潜像である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0025】
第1領域と第2領域とを隣接させて、第1観察条件及び第2観察条件の一方のもとで表示する画像を、他方の下で顕像化する潜像とすると、第1部分及び第2部分が異なる色に見える状態と同じ色に見える状態との間での変化は、更に容易に認識できるようになる。
【0026】
本発明の更に他の側面によると、前記第1部分及び前記第2部分は、前記第1観察条件のもとでは異なる色に見え、前記第2観察条件のもとでは同じ色に見える上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0027】
上記側面の何れかに係る表示体は、前記第1部分及び前記第2部分は、前記第2観察条件のもとでは異なる色に見え、前記第1観察条件のもとでは同じ色に見えるものであってもよい。
【0028】
本発明の更に他の側面によると、前記第1観察条件及び前記第2観察条件のうち前記第1部分と前記第2部分とが同じ色に見える観察条件のもとでは、それらの色差ΔE abは6.5以下である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この観察条件のもとでは、上記の色差ΔE abは、3.2以下であることが好ましく、1.6以下であることがより好ましく、0.8以下であることが更に好ましい。
【0029】
本発明の更に他の側面によると、前記第1領域において、前記複数の第1サブ領域はランダムに分布し、前記第2領域において、前記複数の第2サブ領域はランダムに分布している上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0030】
ここで、「サブ領域はランダムに分布している」ことは、互いに交差する2つの方向の各々において、サブ領域の中心位置が不規則に分布した状態を意味している。
【0031】
第1サブ領域及び第2サブ領域がランダムに分布している場合、第1部分及び第2部分の各々は、白色光で照明したときに特定の波長の回折光を高い強度で射出することはない。従って、この場合、第1サブ領域及び第2サブ領域が規則的に配列している場合と比較して、照明方向や観察方向の変化が表示色へ及ぼす影響を小さくすることができる。
【0032】
なお、第1サブ領域が規則的に配列している場合であっても、それらの中心間距離が十分に大きければ、第1部分は、高い強度の回折光を射出しない。同様に、第2サブ領域が規則的に配列している場合であっても、それらの中心間距離が十分に大きければ、第2部分は、高い強度の回折光を射出しない。
【0033】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第1サブ領域及び前記複数の第2サブ領域の各々は、最大寸法が0.3乃至50μmの範囲内にあり、この最大寸法を有する方向に対して垂直な方向における寸法の最大値が0.3乃至50μmの範囲内にある上記側面の何れかに係る表示体が提供される。上記の最大寸法及び最大値は、0.3乃至2μmの範囲内にあってもよく、2乃至50μmの範囲内にあってもよい。上記の最大寸法及び最大値は、10μm以下であってもよい。
【0034】
これら寸法が小さい場合、第1サブ領域及び第2サブ領域が規則的に且つ高い密度で配列していると、第1部分及び第2部分の各々は、白色光で照明したときに特定の波長の回折光を高い強度で射出する可能性がある。これら寸法が十分に大きければ、第1部分及び第2部分の各々は、白色光で照明したときに特定の波長の回折光を高い強度で射出しない。但し、これら寸法を過剰に大きくすると、第1平坦領域によって反射された光と第1サブ領域によって反射された光との干渉、及び、第2平坦領域によって反射された光と第2サブ領域によって反射された光との干渉が表示へ及ぼす影響が小さくなる。
【0035】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第1サブ領域及び前記複数の第2サブ領域は、正方形状又は円形状を有している上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0036】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第1サブ領域の形状は異方性を有し、それらの方位は互いに等しい上記側面の何れかに係る表示体が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記複数の第1サブ領域の形状は異方性を有し、前記複数の第1サブ領域の1以上は、前記複数の第1サブ領域の他の1以上とは、方位が異なっている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0037】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第2サブ領域の形状は異方性を有し、それらの方位は互いに等しい上記側面の何れかに係る表示体が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記複数の第2サブ領域の形状は異方性を有し、前記複数の第2サブ領域の1以上は、前記複数の第2サブ領域の他の1以上とは、方位が異なっている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0038】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記複数の第1サブ領域の形状及び前記複数の第2サブ領域の形状は異方性を有し、それらの方位は互いに等しい上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0039】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第1サブ領域及び前記複数の第2サブ領域は、形状及び寸法が互いに等しい上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0040】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の第1サブ領域の平均中心間距離及び前記複数の第2サブ領域の平均中心間距離は、5乃至50μmの範囲内にある上記側面の何れかに係る表示体が提供される。好ましくは、これら平均中心間距離は、互いに等しい。
【0041】
ここで、複数の第1サブ領域の平均中心間距離は、第1領域の面積A1を第1サブ領域の個数N1で除してなる値A1/N1の1/2乗である。また、複数の第2サブ領域の平均中心間距離は、第2領域の面積A2を第2サブ領域の個数N2で除してなる値A2/N2の1/2乗である。なお、第1領域の面積及び第2領域の面積は、それらの見かけ面積である。
【0042】
本発明の更に他の側面によると、前記第1領域の面積に対する前記複数の第1サブ領域の合計面積の比、及び、前記第2領域の面積に対する前記複数の第2サブ領域の合計面積の比は、0.15乃至0.85の範囲内にある上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この比は、0.20以上であることが好ましく、0.80以下であることが好ましい。この比は、0.50以下であってもよい。
【0043】
これら比を過剰に大きくするか又は過剰に小さくすると、第1平坦領域と第1サブ領域との組み合わせが奏する光学効果や第2平坦領域と第2サブ領域との組み合わせが奏する光学効果が小さくなる。
【0044】
本発明の更に他の側面によると、前記第1領域は、前記第1平坦領域と、前記複数の第1サブ領域と、前記複数の第1サブ領域の縁と第1平坦領域との間でそれぞれ連続した複数の第1側壁とからなり、前記第2領域は、前記第2平坦領域と、前記複数の第2サブ領域と、前記複数の第2サブ領域の縁と第2平坦領域との間でそれぞれ連続した複数の第2側壁とからなる上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0045】
本発明の更に他の側面によると、前記反射層は、前記複数の第1サブ領域及び前記複数の第2サブ領域の各々の位置で矩形状の断面形状を有している上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0046】
第1サブ領域の縁と第1平坦領域との間で連続した第1側壁は、第1平坦領域に対して垂直であることが好ましい。また、第2サブ領域の縁と第2平坦領域との間で連続した第2側壁は、第2平坦領域に対して垂直であることが好ましい。この場合、第1サブ領域及び第2サブ領域の各々の位置で矩形状の断面形状を有している反射層が得られる。この構造は、第1側壁及び第2側壁がそれぞれ第1平坦領域及び第2平坦領域に対して傾いた構造と比較して、第1平坦領域によって反射された光と第1サブ領域によって反射された光との干渉、及び、第2平坦領域によって反射された光と第2サブ領域によって反射された光との干渉を生じ易い。
【0047】
第1側壁及び第2側壁は、それぞれ、第1平坦領域及び第2平坦領域に対して傾いていてもよいが、垂直であることが好ましい。第1側壁が第1平坦領域に対して成す角度及び第2側壁が第2平坦領域に対して成す角度は、70乃至90°の範囲内にあることが好ましく、80乃至90°の範囲内にあることがより好ましく、85乃至90°の範囲内にあることが更に好ましい。
【0048】
本発明の更に他の側面によると、前記第1距離及び前記第2距離の各々は0.05乃至0.5μmの範囲内にある上記側面の何れかに係る表示体が提供される。前記第1距離及び前記第2距離の各々は、0.1乃至0.5μmの範囲内にあることが好ましく、0.15乃至0.4μmの範囲内にあることがより好ましい。
【0049】
第1距離及び第2距離を短くすると、第1平坦領域によって反射された光と第1サブ領域によって反射された光との干渉、及び、第2平坦領域によって反射された光と第2サブ領域によって反射された光との干渉が表示色へ及ぼす影響が小さくなる。それ故、第1距離及び第2距離を短くすると、照明光としての白色光の分光分布と、第1部分及び第2部分が射出する光の分光分布との相違が小さくなる。
【0050】
第1距離を長くすると、第1平坦領域への照明光の入射が第1サブ領域及び第1側壁によって妨げられ易くなるとともに、第1平坦領域からの反射光が第1サブ領域及び第1側壁によって遮られ易くなる。同様に、第2距離を長くすると、第2平坦領域への照明光の入射が第2サブ領域及び第2側壁によって妨げられ易くなるとともに、第2平坦領域からの反射光が第2サブ領域及び第2側壁によって遮られ易くなる。従って、第1距離及び第2距離を長くすると、第1平坦領域によって反射された光と第1サブ領域によって反射された光との干渉、及び、第2平坦領域によって反射された光と第2サブ領域によって反射された光との干渉が生じ難くなる。
【0051】
上記の色変化を生じさせるには、通常、この比は1よりも十分に大きい必要がある。但し、この比を過剰に大きくすると、第1観察条件及び第2観察条件の一方のもとで第1部分及び第2部分が同じ色に見えるようにすることが難しくなる。
【0052】
本発明の更に他の側面によると、前記反射層は金属又は合金からなる層を含んだ上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0053】
金属又は合金からなる層を含んだ反射層は、高い反射率を有し得る。従って、そのような反射層を含んだ表示体は、画像を明るく表示することができる。
【0054】
金属又は合金としては、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金、銅、又はそれらの1以上を含んだ合金を使用することができる。金属又は合金からなる層は、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。金属又は合金からなる層の厚さは、例えば、20乃至70nmの範囲内とする。
【0055】
レリーフ層及び被覆層は、例えば、ポリマーからなる層である。ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレン、又はトリアセチルセルロースを使用することができる。
【0056】
レリーフ層と被覆層とで屈折率を相違させる必要がある場合、例えば、一方にフッ素樹脂などの低屈折率のポリマーを使用し、他方にポリメタクリル酸メチルなどの高屈折率のポリマーを使用する。被覆層に剥離可能であることが求められる場合、被覆層の材料としては、例えば、フッ素樹脂を使用する。
【0057】
上記の表示体は、隣接領域の屈折率に影響しない限り、中間層、印刷層、及び保護層などの公知の1以上の機能層を更に備えていてもよい。
【0058】
第1面は、第1領域及び第2領域に加え、1以上の他の領域を更に含んでいてもよい。1以上の他の領域の少なくとも1つには、例えば、第1領域及び第2領域と類似した構造を設けることができる。
【0059】
例えば、上記側面の何れかに係る表示体は、前記第1面は第3領域を更に備え、前記第3領域は、前記第1平坦領域に対して平行な第3平坦領域と、前記第3平坦領域に対して各々が平行であり、前記第3平坦領域を含む平面から前記第1距離及び前記第2距離とは異なる第3距離だけ離間し、島状に分布した複数の第3サブ領域とで構成され、前記第3領域に対応した第3部分は、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の少なくとも一方で有彩色を表示し、前記第1観察条件及び前記第2観察条件の一方のもとでは前記第1部分とは異なる色に見え、他方のもとでは前記第1部分と同じ色に見えるものであってもよい。
【0060】
この場合、前記第1観察条件及び前記第2観察条件のうち、前記第1部分及び前記第2部分が同じ色に見える観察条件のもとで、前記第3部分は前記第1部分と同じ色に見え、前記第1部分及び前記第2部分が異なる色に見える観察条件のもとで、前記第3部分は前記第1部分とは異なる色に見えてもよい。
【0061】
或いは、この場合、前記第1観察条件及び前記第2観察条件のうち、前記第1部分及び前記第2部分が同じ色に見える観察条件のもとで、前記第3部分は前記第1部分とは異なる色に見え、前記第1部分及び前記第2部分が異なる色に見える観察条件のもとで、前記第3部分は前記第1部分と同じ色に見えてもよい。
【0062】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体を含んだ転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを備えた転写箔が提供される。
【0063】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体を含んだ転写材層と、前記転写材層を剥離可能に支持した支持体とを備えた転写箔が提供される。
【0064】
本発明の更に他の側面によると、前記転写材層上に設けられた接着層を更に備えた上記側面に係る転写箔が提供される。
【0065】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体と、前記表示体上に設けられた粘着層とを備えた粘着ラベルが提供される。
【0066】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体と、前記表示体を支持した物品とを備えた表示体付き物品が提供される。
【0067】
物品は、例えば、透明カード又は透明シートである。表示体付き物品は、表示体について上述した視覚効果を妨げない限り、中間層、印刷層、及び保護層などの公知の1以上の機能層を更に備えていてもよい。
【0068】
本発明の更に他の側面によると、前記物品のうち前記第1領域及び前記第2領域に対応した部分は光透過性である上記側面に係る表示体付き物品が提供される。
【0069】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記物品は、前記反射層又は前記被覆層が露出するように前記表示体を支持した上記側面に係る表示体付き物品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明の第1実施形態に係る表示体を示す平面図。
図2図1に示す表示体の第1部分を示す斜視図。
図3図2に示す第1部分のIII-III線に沿った断面図。
図4図1に示す表示体の第2部分を示す斜視図。
図5図2に示す第2部分のV-V線に沿った断面図。
図6】第1部分の前面を白色光で照明している様子を示す断面図。
図7】第2部分の前面を白色光で照明している様子を示す断面図。
図8】第1部分の背面を白色光で照明している様子を示す断面図。
図9】第2部分の背面を白色光で照明している様子を示す断面図。
図10図2及び図3に示す第1部分が、その前面を白色光で照明した場合に表示する色と、第1平坦領域を含む平面から第1サブ領域までの距離との関係の一例を示すグラフ。
図11図2及び図3に示す第1部分の前面を透明樹脂層で被覆し、この透明樹脂層を白色光で照明した場合に第1部分が表示する色と、第1平坦領域を含む平面から第1サブ領域までの距離との関係の一例を示すグラフ。
図12図1に示す表示体が、前面を白色光で照明した場合に表示する画像の一例を示す図。
図13図1に示す表示体が、背面を白色光で照明した場合に表示する画像の一例を示す図。
図14】本発明の第2実施形態に係る表示体の第1部分を示す断面図。
図15】本発明の第2実施形態に係る表示体の第2部分を示す断面図。
図16】本発明の第3実施形態に係る表示体の第1部分を示す断面図。
図17】本発明の第3実施形態に係る表示体の第2部分を示す断面図。
図18】本発明の第4実施形態に係る表示体の第1部分を示す断面図。
図19】本発明の第4実施形態に係る表示体の第2部分を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0072】
<1>第1実施形態
<1.1>構造
図1は、本発明の第1実施形態に係る表示体を示す平面図である。図2は、図1に示す表示体の第1部分を示す斜視図である。図3は、図2に示す第1部分のIII-III線に沿った断面図である。図4は、図1に示す表示体の第2部分を示す斜視図である。図5は、図2に示す第2部分のV-V線に沿った断面図である。
【0073】
図1に示す表示体1は、図2乃至図5に示すように、レリーフ層11と反射層12とを含んでいる。なお、各図において、X方向及びY方向は、表示体1の主面に平行であり且つ互いに直交する方向であり、Z方向は、X方向及びY方向に対して垂直な方向、即ち、表示体1の厚さ方向である。また、以下の説明では、「背面」は、表示体1の2つの主面のうちレリーフ層11側の面であり、「前面」はその裏面である。
【0074】
レリーフ層11は、図3及び図5に示すように、第1面S1と、その裏面である第2面S2とを有している。レリーフ層11は、ここでは、光透過性である。例えば、レリーフ層11は、無色透明である。
【0075】
第1面S1は、図3に示す第1領域R1と、図5に示す第2領域R2とを含んでいる。ここでは、第1領域R1と第2領域R2とは、互いに隣接している。
【0076】
第1領域R1は、ここでは、ハート形の領域である。第1領域R1は、図3に示すように、第1平坦領域FR1と複数の第1サブ領域SR1とを含んでいる。
【0077】
第1平坦領域FR1は、第1領域R1の全体に亘って広がった平面である。第1平坦領域FR1は、第1サブ領域SR1の位置で開口している。
【0078】
第1サブ領域SR1は、第1平坦領域FR1に対して各々が平行である。第1サブ領域SR1は、第1平坦領域FR1を含む平面から第1距離D1だけ離間している。ここでは、第1サブ領域SR1は、第1平坦領域FR1から突き出ている。第1サブ領域SR1は、島状に分布している。ここでは、第1サブ領域SR1は、正方形状を各々が有しており、寸法が互いに等しい。また、ここでは、第1サブ領域SR1は、ランダムに配置されている。
【0079】
第1領域R1は、複数の第1側壁を更に含んでいる。これら第1側壁は、複数の第1サブ領域SR1の縁と第1平坦領域FR1との間でそれぞれ連続している。ここでは、第1側壁は、第1平坦領域FR1に対して垂直である。
【0080】
第2領域R2は、ここでは、第1領域R1と隣接するとともに、第1領域R1を取り囲んでいる。第2領域R2は、図5に示すように、第2平坦領域FR2と複数の第2サブ領域SR2とを含んでいる。
【0081】
第2平坦領域FR2は、第1平坦領域FR1に対して平行であり、第2領域R2の全体に亘って広がった平面である。第2平坦領域FR2は、第2サブ領域SR2の位置で開口している。
【0082】
第2サブ領域SR2は、第2平坦領域FR2に対して各々が平行である。第2サブ領域SR2は、第2平坦領域FR2を含む平面から、第1距離D1とは異なる第2距離D2だけ離間している。ここでは、第2距離D2は、第1距離D1よりも大きい。また、ここでは、第2サブ領域SR2は、第2平坦領域FR2から突き出ている。第2サブ領域SR2は、島状に分布している。ここでは、第2サブ領域SR2は、正方形状を各々が有しており、寸法が互いに等しい。また、ここでは、第2サブ領域SR2は、ランダムに配置されている。
【0083】
第2領域R2は、複数の第2側壁を更に含んでいる。これら第2側壁は、複数の第2サブ領域SR2の縁と第2平坦領域FR2との間でそれぞれ連続している。ここでは、第2側壁は、第2平坦領域FR2に対して垂直である。
【0084】
反射層12は、図2乃至図5に示すように、第1領域R1及び第2領域R2をコンフォーマルに被覆している。即ち、反射層12は、第1領域R1及び第2領域R2を被覆するとともに、第1領域R1の位置で第1領域R1に対応した表面形状を有し、第2領域R2の位置で第2領域R2に対応した表面形状を有している。
【0085】
反射層12は、第1サブ領域SR1の位置に、図2及び図3に示す第1凸部PR1を有している。そして、反射層12は、第2サブ領域SR2の位置に、図4及び図5に示す第2凸部PR2を有している。
【0086】
<1.2>製造方法
表示体1は、例えば、以下の方法により製造することができる。
先ず、基板上に樹脂層を形成し、樹脂層に対して電子線描画を行う。これにより、樹脂層の表面にレリーフ構造を有する原版を得る。次に、樹脂層上に、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により、上記のレリーフ構造に対してコンフォーマルな金属薄膜を形成する。続いて、電鋳により、金属薄膜上に金属厚膜を形成する。なお、電鋳とは、電鋳の対象物を所定の水溶液中に浸して通電することで、この対象物上に金属膜を形成する表面処理技術の一種である。その後、基板及び樹脂層を除去することにより、金属製のスタンパを得る。
【0087】
次いで、このスタンパを用いて、樹脂層の表面に、レリーフ構造を複製する。先ず、例えば、ポリカーボネート又はポリエステルからなる光透過性の基材上に、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は放射線硬化性樹脂を塗布して、樹脂層を形成する。次に、樹脂層にスタンパを密着させ、この状態で、熱圧の付与又は光及び電子線などの放射線の照射を行う。その後、スタンパを樹脂層から剥がすことで、表面にレリーフ構造を有するレリーフ層11を得る。
【0088】
次に、レリーフ層11上に、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により、アルミニウム等の金属若しくは合金又は誘電体を、単層又は多層に堆積させる。これにより、反射層12を得る。
以上のようにして、表示体1が完成する。
【0089】
<1.3>視覚効果
表示体1のうち第1領域R1に対応した部分は、第1部分P1である。また、表示体1のうち第2領域R2に対応した部分は、第2部分P2である。ここでは、図1に示すように、第1部分P1はハート形の部分であり、第2部分P2は第1部分P1を取り囲んだ部分である。
【0090】
第1部分P1及び第2部分P2の各々は、後述する第1観察条件及び第2観察条件の少なくとも一方で有彩色を表示する。そして、第1部分P1及び第2部分P2は、第1観察条件及び第2観察条件の一方のもとでは異なる色に見え、他方のもとでは同じ色に見える。これについて、以下に詳しく説明する。
【0091】
図6は、第1部分の前面を白色光で照明している様子を示す断面図である。図6には、レリーフ層11と白色光を射出する光源との間に反射層12を介在させて、反射光を肉眼で観察する第1観察条件のもとで、第1部分P1が光を反射する様子を描いている。なお、図6において、反射層12のうち第1平坦領域FR1上に位置した部分及び第1サブ領域SR1上に位置した部分は、それぞれ、反射部12a1及び反射部12b1である。
【0092】
図6では、第1部分P1の前面に白色光が入射角θ1で入射し、第1部分P1は射出角θ2で光を射出している。第1平坦領域FR1は平滑な平面であり、第1サブ領域SR1は、第1平坦領域FR1に対して平行であり且つ平滑な平面である。それ故、反射部12a1の表面は平滑な平面であり、反射部12b1の表面は、反射部12a1の表面に対して平行であり且つ平滑な平面である。従って、入射角θ1と射出角θ2とが等しい場合、第1部分P1が射出角θ2で射出する光は、反射部12a1及び反射部12b1による正反射光を含む。
【0093】
反射部12a1が射出角θ2で射出した光の少なくとも一部は、反射部12b1が射出角θ2で射出した光の一部の少なくとも一部と干渉する。例えば、下記等式(1)に示す関係を満たす波長λS1を有する光は強め合う干渉を生じ、下記等式(2)に示す関係を満たす波長λW1を有する光は強め合う干渉を生じる。
2D1=mλS1cosθ1 …(1)
2D1=(m+1/2)λW1cosθ1 …(2)
ここで、等式(1)及び(2)において、mは自然数である。
【0094】
入射角θ1が小さい場合、入射角θ1を僅かに変化させても、cosθ1は大きくは変化しない。それ故、この場合、入射角θ1を僅かに変化させても、強め合う干渉を生じる光の波長λS1や弱め合う干渉を生じる光の波長λW1も大きくは変化しない。
【0095】
また、通常、照明光は拡散光である。そして、観察者が表示体1を観察する場合、観察者の目と表示体との距離は短いことが通常である。それ故、観察者の目には、第1部分P1が特定の射出角で射出した光のみが入射する訳ではなく、第1部分P1が或る角度範囲で射出した光が入射する。
【0096】
そして、第1サブ領域SR1は、ランダムに配置されており、それらの平均中心間距離は十分に大きい。これに対応して、反射部12a1も、ランダムに配置されており、それらの平均中心間距離は十分に大きい。
【0097】
反射部12a1がランダムに配置された構造は、格子定数が異なる多数の回折格子を重ね合わせたものに相当する。反射部12a1の平均中心間距離が、特には、この平均中心間距離に対する反射部12a1の寸法の比が十分に大きい場合、反射部12a1が規則的に配列していたとしても、第1部分P1は、高い回折効率を達成できず、特定の波長の回折光を高い強度で射出することはない。
【0098】
従って、第1部分P1は、有彩色を表示する。そして、第1部分P1が表示する有彩色は、照明方向や観察方向を僅かに変化させただけでは変化せず、照明方向や観察方向を大きく変化させることにより無彩色化する。
【0099】
図7は、第2部分の前面を白色光で照明している様子を示す断面図である。図7には、第1観察条件のもとで第2部分P2が光を反射する様子を描いている。なお、図7において、反射層12のうち第2平坦領域FR2上に位置した部分及び第2サブ領域SR2上に位置した部分は、それぞれ、反射部12a2及び反射部12b2である。
【0100】
第2部分P2では、例えば、下記等式(3)に示す関係を満たす波長λS2を有する光は強め合う干渉を生じ、下記等式(4)に示す関係を満たす波長λW2を有する光は強め合う干渉を生じる。
2D2=mλS2cosθ1 …(3)
2D2=(m+1/2)λW2cosθ1 …(4)
この点を除けば、第2部分P2における光学的な振る舞いは、第1部分P1における光学的な振る舞いと同様である。
【0101】
第2距離D2は第1距離D1とは異なっているので、第2部分P2において強め合う干渉を生じる光の波長λS2及び弱め合う干渉を生じる光の波長λW2は、それぞれ、第1部分P1において強め合う干渉を生じる光の波長λS1及び弱め合う干渉を生じる光の波長λW1とは異なる。従って、第2部分P2は、第1部分P1が表示する色とは異なる有彩色を表示する。
【0102】
図8は、第1部分の背面を白色光で照明している様子を示す断面図である。図9は、第2部分の背面を白色光で照明している様子を示す断面図である。図8には、反射層12と白色光を射出する光源との間にレリーフ層11を介在させて、反射光を肉眼で観察する第2観察条件のもとで、第1部分P1が光を反射する様子を描いている。図9には、第2観察条件のもとで第2部分P2が光を反射する様子を描いている。
【0103】
図6及び図7では、反射層12の光源側の面には、空気層が隣接している。これに対し、図8及び図9では、反射層12の光源側の面には、レリーフ層11が隣接している。即ち、隣接領域は、図6及び図7では空気層からなるのに対し、図8及び図9ではレリーフ層11からなる。
【0104】
レリーフ層11は、空気層とは異なる屈折率を有している。従って、図8の状態において強め合う干渉を生じる光の波長λS1’及び弱め合う干渉を生じる光の波長λW1’は、それぞれ、図6の状態において強め合う干渉を生じる光の波長λS1及び弱め合う干渉を生じる光の波長λW1とは異なる。同様に、図9の状態において強め合う干渉を生じる光の波長λS2’及び弱め合う干渉を生じる光の波長λW2’は、それぞれ、図7の状態において強め合う干渉を生じる光の波長λS2及び弱め合う干渉を生じる光の波長λW2とは異なる。
【0105】
このように、第1部分P1及び第2部分P2の各々は、第1観察条件と第2観察条件とで異なる色に見える。そして、第1部分P1及び第2部分P2は、以下に設計する構成を採用することにより、第1観察条件のもとでは異なる色に見え、第2観察条件のもとでは同じ色に見える。
【0106】
図10は、図2及び図3に示す第1部分が、その前面を白色光で照明した場合に表示する色と、第1平坦領域を含む平面から第1サブ領域までの距離との関係の一例を示すグラフである。図11は、図2及び図3に示す第1部分の前面を透明樹脂層で被覆し、この透明樹脂層を白色光で照明した場合に第1部分が表示する色と、第1平坦領域を含む平面から第1サブ領域までの距離との関係の一例を示すグラフである。図12は、図1に示す表示体が、前面を白色光で照明した場合に表示する画像の一例を示す図である。図13は、図1に示す表示体が、背面を白色光で照明した場合に表示する画像の一例を示す図である。
【0107】
図10及び図11に示すグラフは、u’v’色度図である。
図10は、図6を参照しながら説明した第1観察条件のもとで、第1距離D1を変化させた場合に生じる第1部分P1の色変化を示している。ここで、反射層12の光源側の面に隣接した空気層の屈折率は1.0である。図10において、点A、B、C及びDは、第1距離D1が小さいものから順に並んでいる。
【0108】
図11は、図8を参照しながら説明した第2観察条件のもとで、第1距離D1を変化させた場合に生じる第1部分P1の色変化を示している。ここで、反射層12の光源側の面に隣接したレリーフ層11の屈折率は1.4である。
【0109】
図11において、点Pは、第1距離D1を図10における点Aに対応した第1距離D1と等しくした第1部分P1について、第2観察条件のもとで得られた色度座標である。また、点Pは、第1距離D1を図10における点Cに対応した第1距離D1と等しくした第1部分P1について、第2観察条件のもとで得られた色度座標でもある。
【0110】
図11において、点Qは、第1距離D1を図10における点Bに対応した第1距離D1と等しくした第1部分P1について、第2観察条件のもとで得られた色度座標である。また、点Qは、第1距離D1を図10における点Dに対応した第1距離D1と等しくした第1部分P1について、第2観察条件のもとで得られた色度座標でもある。
【0111】
反射層12の光源側の面に隣接した隣接領域の屈折率を、空気層の1.0からレリーフ層11の1.4へ変化させると、第1距離D1と第1部分P1の表示色との関係は、図10に示す関係から、図11に示す関係へと変化する。図10では、第1部分P1の表示色の色度座標を表す曲線は交差していない。これに対し、図11では、第1部分P1の表示色の色度座標を表す曲線は、点P及びQで交差している。
【0112】
従って、第1部分P1及び第2部分P2の双方が第2観察条件のもとで点P又はQに相当する色を表示するように第1距離D1及び第2距離D2を設定すれば、第1観察条件のもとでは、図12に示すように、第1部分P1及び第2部分P2に異なる色を表示させ、第2観察条件のもとでは、図13に示すように、第1部分P1及び第2部分P2に同じ色を表示させることができる。例えば、第1距離D1及び第2距離D2をそれぞれ140nm及び325nmとした場合、第1部分P1及び第2部分P2に、第1観察条件のもとでは点A及びCに相当する色をそれぞれ表示させ、第2観察条件のもとでは点Pに相当する色を表示させることができる。或いは、第1距離D1及び第2距離D2をそれぞれ197nm及び370nmとした場合、第1部分P1及び第2部分P2に、第1観察条件のもとでは点B及びDに相当する色をそれぞれ表示させ、第2観察条件のもとでは点Qに相当する色を表示させることができる。
【0113】
以上の通り、この表示体1では、第1部分P1及び第2部分P2は、第1観察条件のもとでは異なる色に見え、第2観察条件のもとでは同じ色に見える。即ち、第1部分P1と第2部分P2とが第2観察条件のもとで表示する画像は、第1観察条件のもとで顕像化する潜像である。
【0114】
第1部分P1及び第2部分P2の個々の色変化は容易に認識できなかったとしても、第1部分P1及び第2部分P2が異なる色に見える状態と同じ色に見える状態との間での変化は、容易に認識できる。それ故、この表示体1は、第1部分P1及び第2部分P2が表示する有彩色と類似した色を印刷層によって再現する表示体から、肉眼による観察で容易に区別可能とすることができる。
【0115】
<2>第2実施形態
図14は、本発明の第2実施形態に係る表示体の第1部分を示す断面図である。図15は、本発明の第2実施形態に係る表示体の第2部分を示す断面図である。
【0116】
第2実施形態に係る表示体1は、被覆層13を更に含んでいること以外は、第1実施形態に係る表示体1と同様である。被覆層13は、反射層12を間に挟んで第1面S1を被覆している。被覆層13は、レリーフ層11とは屈折率が異なる光透過性の層である。
【0117】
被覆層13を設けると、反射層12の損傷や劣化を生じ難くすることができる。また、レリーフ層11及び被覆層13の屈折率並びに第1距離D1及び第2距離D2を適宜設定すれば、例えば、第1部分P1及び第2部分P2に、第1観察条件のもとでは異なる色を表示させ、第2観察条件のもとでは同じ色を表示させることができる。或いは、第1部分P1及び第2部分P2に、第1観察条件のもとでは同じ色を表示させ、第2観察条件のもとでは異なる色を表示させることができる。
【0118】
<3>第3実施形態
図16は、本発明の第3実施形態に係る表示体の第1部分を示す断面図である。図17は、本発明の第3実施形態に係る表示体の第2部分を示す断面図である。
【0119】
第3実施形態に係る表示体1は、レリーフ層11が光透過性及び遮光性の何れであってもよいこと以外は、第1実施形態に係る表示体1と同様である。
【0120】
第3実施形態では、第1観察条件のもとでは、レリーフ層11と白色光を射出する光源との間に反射層12を介在させて反射光を肉眼で観察する。そして、第2観察条件のもとでは、反射層12上に液膜23を設け、光源とレリーフ層11との間に反射層12及び液膜23を介在させて反射光を肉眼で観察する。液膜23は、例えば、水又は水溶液などの溶液である。
【0121】
液膜23は、空気層とは屈折率が異なる。従って、液膜23の屈折率並びに第1距離D1及び第2距離D2を適宜設定することにより、例えば、第1部分P1及び第2部分P2に、第1観察条件のもとでは異なる色を表示させ、第2観察条件のもとでは同じ色を表示させることができる。
【0122】
<4>第4実施形態
図18は、本発明の第4実施形態に係る表示体の第1部分を示す断面図である。図19は、本発明の第4実施形態に係る表示体の第2部分を示す断面図である。
【0123】
第4実施形態に係る表示体1は、被覆層14を更に含んでおり、レリーフ層11が光透過性及び遮光性の何れであってもよいこと以外は、第1実施形態に係る表示体1と同様である。被覆層14は、反射層12を被覆している。被覆層14は、反射層12から剥離可能な光透過性の層である。
【0124】
第4実施形態では、第1観察条件のもとでは、レリーフ層11と白色光を射出する光源との間に反射層12及び前記被覆層14を介在させて反射光を肉眼で観察する。そして、第2観察条件のもとでは、被覆層14を反射層12から剥離し、光源とレリーフ層11との間に反射層12を介在させて反射光を肉眼で観察する。
【0125】
被覆層14は、空気層とは屈折率が異なる。従って、被覆層14の屈折率並びに第1距離D1及び第2距離D2を適宜設定することにより、例えば、第1部分P1及び第2部分P2に、第1観察条件のもとでは同じ色を表示させ、第2観察条件のもとでは異なる色を表示させることができる。
【符号の説明】
【0126】
1…表示体、11…レリーフ層、12…反射層、12a1…反射部、12a2…反射部、12b1…反射部、12b2…反射部、13…被覆層、14…被覆層、23…液膜、D1…第1距離、D2…第2距離、FR1…第1平坦領域、FR2…第2平坦領域、P1…第1部分、P2…第2部分、PR1…第1凸部、PR2…第2凸部、R1…第1領域、R2…第2領域、S1…第1面、S2…第2面、SR1…第1サブ領域、SR2…第2サブ領域、θ1…入射角、θ2…射出角。
図1
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