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特開2022-129843鋼製土留パネル及び該鋼製土留パネルを用いた土留構造物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129843
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】鋼製土留パネル及び該鋼製土留パネルを用いた土留構造物
(51)【国際特許分類】
   E21D 5/10 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
E21D5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028682
(22)【出願日】2021-02-25
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 省吾
(72)【発明者】
【氏名】松岡 馨
(72)【発明者】
【氏名】原 翔悟
(57)【要約】      (修正有)
【課題】止水性を必要としない土留構造物に使用されるものであり、スキンプレートと主桁との接合部、及びスキンプレートと継手板との接合部を溶接する際、鋼製土留パネルの外面側から溶接する作業の一部又は全部を省略することができ、溶接作業の作業性を高め、製造の手間とコストを軽減することができる、鋼製土留パネル及び該鋼製土留パネルを用いた土留構造物を提供する。
【解決手段】鋼製土留パネル1は、掘削孔の壁面に面するスキンプレート10と、スキンプレート10の上端及び下端に設けられ、上面及び下面を形成する主桁11と、スキンプレート10の左右の両端に設けられ、左右の側面を形成する継手板12と、を備えている。掘削孔の内部に向かって開口する凹状に形成されており、スキンプレート10と主桁11との接合部、及びスキンプレート10と継手板12との接合部のうち、いずれか一方又は双方が、凹状の凹内部側から溶接されて接合される。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面を掘削して形成された掘削孔に設置されて土留構造物を構築するために用いられる鋼製土留パネルであって、
前記掘削孔の壁面に面するスキンプレートと、
前記スキンプレートの上端及び下端に設けられ、上面及び下面を形成する主桁と、
前記スキンプレートの左右の両端に設けられ、左右の側面を形成する継手板と、を備え、
前記掘削孔の内部に向かって開口する凹状に形成されており、前記スキンプレートと前記主桁との接合部、及び前記スキンプレートと前記継手板との接合部のうち、いずれか一方又は双方が、前記凹状の凹内部側から溶接されて接合された構成である、鋼製土留パネル。
【請求項2】
前記主桁と前記継手板との接合部は、前記凹状の凹内部側から溶接されて接合された構成である、請求項1に記載の鋼製土留パネル。
【請求項3】
上下の前記主桁の間に設けられ、凹状の形状を保持する形状保持部材を更に備えている、請求項1又は2に記載の鋼製土留パネル。
【請求項4】
前記形状保持部材は、板状部材又は棒状部材とされ、
前記主桁にのみ溶接されて固定されている、請求項3に記載の鋼製土留パネル。
【請求項5】
前記形状保持部材は、2つの部材を組み合わせて形成されており、一方の部材の一端が一方の主桁に固定され、他方の部材の一端が他方の主桁に固定されており、一方の部材と他方の部材の他端同士が固定されて、一対の前記主桁の間に設けられている、請求項3又は4に記載の鋼製土留パネル。
【請求項6】
地面を掘削して形成された掘削孔に、複数の鋼製土留パネルを設置して構築される土留構造物であって、
前記掘削孔の壁面に沿って、複数の前記鋼製土留パネルを配置して形成された構造体が、孔軸方向に少なくとも1段以上構築された第1土留構造部を備え、
複数の前記鋼製土留パネルは、請求項1~5のいずれか一項に記載の鋼製土留パネルを少なくとも1つ有している、土留構造物。
【請求項7】
前記掘削孔の壁面に沿って、複数の波付け鋼板を配置して形成された構造体が、孔軸方向に少なくとも1段以上構築された第2土留構造部を更に備えており、
前記第1土留構造部は、前記第2土留構造部の下方に構築されている、請求項6に記載の土留構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製土留パネル及び該鋼製土留パネルを用いた土留構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、地面を掘削して形成された鉛直の掘削孔に波付け鋼板を組み立てて構築された土留構造物が知られている。土留構造物は、掘削孔の壁面に沿って複数の波付け鋼板を環状に配置して形成された構造体を、孔軸方向に積み重ねて構築される。
【0003】
土留構造物は、掘削孔の深度が深くなるにつれて地山側からの土圧が大きくなり、波付け鋼板だけでは剛性が足りない場合がある。また、深度の深さにかかわらず、土質の条件等により、土圧が大きい場合もある。更に、孔軸方向の深度が深くなるにつれて、上方に配置された構造体の自重が下方に配置された構造体に作用する。このため、土留構造物では、深度が深い箇所において、上下に隣り合う波付け鋼板の間に補強リングと呼ばれるH形鋼を挟み込み剛性を高めている。
【0004】
しかしながら、補強リングの施工は、煩雑で手間が掛かるため、工期が長引き工費が嵩む問題がある。そのため、補強リングを省略できる土留構造物の構築が望まれている。例えば土圧が小さく補強リングが不要である掘削孔の深度が浅い部分には、掘削孔の壁面に沿って複数の波付け鋼板を環状に配置して構造体を構築し、土圧が大きく補強リングが必要となる掘削孔の深度が深い部分では、掘削孔の壁面に沿って複数の鋼製土留パネルを環状に配置して構造体を構築することが考えられる。鋼製土留パネルは、波付け鋼板よりも剛性が高い製品である。この鋼製土留パネルは、掘削孔の壁面に面するスキンプレートと、スキンプレートの上端及び下端に設けられて上面及び下面を形成する主桁と、スキンプレートの左右の両端に設けられて左右の側面を形成する継手板と、を備えている。鋼製土留パネルは、スキンプレート、主桁及び継手板で、掘削孔の孔内部に向かって開口する凹状に形成されている。スキンプレート、主桁及び継手板は、それぞれ溶接で固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-066845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の鋼製土留パネルとしては、止水性を有する構造が知られている。止水性を有する構造とするためには、スキンプレートと主桁との接合部、及びスキンプレートと継手板との接合部を鋼製土留パネルの外面側から溶接する必要がある。スキンプレートと主桁との間の隙間、及びスキンプレートと継手板との隙間を外面側から完全に塞ぎ、該隙間に地下水が侵入する事態を防止するためである。
【0007】
しかしながら、スキンプレートと主桁との接合部、及びスキンプレートと継手板との接合部を鋼製土留パネルの外面側から溶接する作業において、該鋼製土留パネルの下部に位置する接合部分を溶接するためには、組み立て途中の鋼製土留パネルを反転させなければならない。鋼製土留パネルを反転させなければ、溶接できない箇所があるためである。また、溶接作業の安全性を確保すると共に、溶接精度を高めるためでもある。このような重量のある鋼製土留パネルを反転させつつ溶接を行う作業が、作業者にとって大きな負担となっていた。また、接合部の全体に亘って隙間なく溶接する必要があるため、溶接しなければならない箇所が多くなり、溶接の工数が増えて製造の手間とコストが掛かるおそれがある。
【0008】
一方、波付け鋼板は、止水性を有さない構造である。このような止水性を有さない波付け鋼板を用いて構築される土留構造物は、例えば地下水の影響を受け難く、止水性を必要としない場所に構築されるものである。つまり、波付け鋼板と共に使用され、或いは波付け鋼板に代えて使用される鋼製土留パネルも、止水性を有する必要がない。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、止水性を必要としない土留構造物に使用されるものであり、スキンプレートと主桁との接合部、及びスキンプレートと継手板との接合部を溶接するに際し、鋼製土留パネルの外面側から溶接する作業の一部又は全部を省略することができ、溶接作業の作業性を高め、製造の手間とコストを軽減することができる、鋼製土留パネル及び該鋼製土留パネルを用いた土留構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鋼製土留パネルは、地面を掘削して形成された掘削孔に設置されて土留構造物を構築するために用いられる鋼製土留パネルであって、前記掘削孔の壁面に面するスキンプレートと、前記スキンプレートの上端及び下端に設けられ、上面及び下面を形成する主桁と、前記スキンプレートの左右の両端に設けられ、左右の側面を形成する継手板と、を備え、前記掘削孔の内部に向かって開口する凹状に形成されており、前記スキンプレートと前記主桁との接合部、及び前記スキンプレートと前記継手板との接合部のうち、いずれか一方又は双方が、前記凹状の凹内部側から溶接されて接合された構成である。
【0011】
本発明に係る土留構造物は、地面を掘削して形成された掘削孔に、複数の鋼製土留パネルを設置して構築される土留構造物であって、前記掘削孔の壁面に沿って、複数の前記鋼製土留パネルを配置して形成された構造体が、孔軸方向に少なくとも1段以上構築された第1土留構造部を備え、複数の前記鋼製土留パネルは、上記鋼製土留パネルを少なくとも1つ有しているものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、スキンプレートと主桁との接合部、及びスキンプレートと継手板との接合部のうち、いずれか一方又は双方が、凹状の凹内部側から溶接されて接合された構成なので、鋼製土留パネルの外面側から溶接する作業の一部又は全部を省略することができる。よって、溶接作業の作業効率を高めることができ、製造の手間とコストを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る土留構造物を模式的に示した斜視図である。
図2】実施の形態に係る波付け鋼板の一例としてライナープレートを示した斜視図である。
図3】実施の形態に係る波付け鋼板の一例としてライナープレートを示した縦断面図である。
図4】実施の形態に係る波付け鋼板の一例としてプランクプレートを示した斜視図である。
図5】実施の形態に係る波付け鋼板の一例としてプランクプレートを示した縦断面図である。
図6】実施の形態に係る鋼製土留パネルを示した斜視図である。
図7】実施の形態に係る鋼製土留パネルを示した平断面図である。
図8】(A)は実施の形態に係る鋼製土留パネルを示した正面図、(B)は該鋼製土留パネルを示した左側面図である。
図9図8に示したI部を側面方向から見た断面図である。
図10図8に示したII部の拡大図である。
図11図8に示したIII-III線矢視断面図である。
図12図8に示したII部を側面方向から見た断面図である。
図13】実施の形態に係る鋼製土留パネルの形状保持部材の変形例1を示した説明図である。
図14】実施の形態に係る鋼製土留パネルの形状保持部材の変形例2を示した説明図である。
図15】実施の形態に係る土留構造物の構築工法の一例を模式的に示した説明図である。
図16】実施の形態に係る土留構造物における第1土留構造部の一例を示した平断面図である。
図17】実施の形態に係る鋼製土留パネルの変形例1を示した平断面図である。
図18】(A)は図17に示した鋼製土留パネルの正面図、(B)は該鋼製土留パネルの左側面図である。
図19図17に示した鋼製土留パネルを用いた土留構造物における第1土留構造部の一例を示した平断面図である。
図20図19に示したA部の拡大図である。
図21図19に示した土留構造物の第1土留構造部を構築する手順を模式的に示した説明図である。
図22図19に示した土留構造物の構築工法の特徴を具体的に示した説明図である。
図23】実施の形態に係る鋼製土留パネルの変形例2を示した平面図である。
図24図23に示した鋼製土留パネルの左側面の拡大図である。
図25図23に示した鋼製土留パネルを用いた土留構造物の要部を模式的に示した拡大図である。
図26】実施の形態に係る土留構造物の変形例を模式的に示した斜視図である。
図27】実施の形態に係る鋼製土留パネルの変形例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本発明の範囲内で適宜変更することができる。
【0015】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る土留構造物を模式的に示した斜視図である。図1に示すように、土留構造物100は、地面を掘削して形成された鉛直の掘削孔に波付け鋼板2と鋼製土留パネル1を設置して構築された構成である。土留構造物100は、例えば建築構造物の基礎を構築するための立坑又は地中に構築される集水井等の土木構造物を構築する際に構築されるものである。具体的には、土留構造物100は、第2土留構造部102と、第1土留構造部101と、を備えている。第2土留構造部102は、平面視が円弧状の波付け鋼板2が環状に配置されて形成された構造体102Aを、孔軸方向に4段積み重ねて構築された構成である。第2土留構造部102は、波付け鋼板2を千鳥状に配置して組み立てられている。第1土留構造部101は、平面視が円弧状の鋼製土留パネル1が環状に配置されて形成された構造体101Aを、孔軸方向に2段積み重ねて構築された構成である。第1土留構造部101も、鋼製土留パネル1を千鳥状に配置して組み立てられている。土留構造物100は、一例として平面視が円形状とした構成である。
【0016】
なお、第1土留構造部101及び第2土留構造部102の段数は、図示した構成に限定されず、それぞれ少なくとも1段以上あればよい。また、図1に示した土留構造物100の周方向における波付け鋼板2及び鋼製土留パネル1の個数は、一例であってこれに限定されない。
【0017】
図2は、実施の形態に係る波付け鋼板の一例としてライナープレートを示した斜視図である。図3は、実施の形態に係る波付け鋼板の一例としてライナープレートを示した縦断面図である。図4は、実施の形態に係る波付け鋼板の一例としてプランクプレートを示した斜視図である。図5は、実施の形態に係る波付け鋼板の一例としてプランクプレートを示した縦断面図である。
【0018】
波付け鋼板2は、例えば図2及び図3に示したライナープレート2Aや、図4及び図5に示したプランクプレート2Bで構成されている。ライナープレート2Aは、波形断面がサインカーブ状に形成された構成である。プランクプレート2Bは、波形断面が矩形状に形成された構成である。波付け鋼板2には、図2図5に示すように、上端縁及び下端縁に沿って設けられた円弧状の周方向フランジ部20と、円弧方向の両端縁に沿って設けられた軸方向フランジ部21と、が設けられている。周方向フランジ部20は、波付け鋼板2の上端縁及び下端縁から掘削孔の内部に向かって突出するように曲げ加工されて形成されている。軸方向フランジ部21は、波付け鋼板2の円弧方向の両端縁にプレートを溶接して形成されている。
【0019】
波付け鋼板2は、例えば厚さが2.7mm~7mm程度である。図1に示す土留構造物100では、上から1段目及び2段目にライナープレート2Aからなる波付け鋼板2が用いられ、上から3段目及び4段目にプランクプレート2Bからなる波付け鋼板2が用いられている。土留構造物100では、掘削孔の深度が深くなるにつれて地山側からの土圧が大きく、更に上方に配置された構造体102Aの自重が下方に配置された構造体102Aに作用する。そのため、ライナープレート2Aよりも剛性が高いプランクプレート2Bを、土留構造物100の3段目及び4段目に用いている。なお、第2土留構造部102は、すべての段をライナープレート2Aで構成してもよいし、すべての段をプランクプレート2Bで構成してもよい。
【0020】
周方向フランジ部20には、孔軸方向に積み重ねた上下に隣り合う波付け鋼板2同士、又は波付け鋼板2と鋼製土留パネル1とを連結するための連結孔20aが円弧方向に沿って複数形成されている。上下に隣り合う波付け鋼板2は、周方向フランジ部20を突き合わせ、例えば連結孔20aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、上下に隣り合う波付け鋼板2の周方向フランジ部20を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔20aの個数は一例であって、これに限定されるものではない。
【0021】
軸方向フランジ部21には、掘削孔の周方向に配置した左右に隣り合う波付け鋼板2同士を連結するための連結孔21aが上下方向に沿って複数形成されている。左右に隣り合う波付け鋼板2は、軸方向フランジ部21を突き合わせ、連結孔21aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、左右に隣り合う波付け鋼板2の軸方向フランジ部21を連結する手段は、例えばクリップ等の連結具を用いてもよい。また、図示した連結孔21aの個数は一例であって、これに限定されるものではない。
【0022】
図6は、実施の形態に係る鋼製土留パネルを示した斜視図である。図7は、実施の形態に係る鋼製土留パネルを示した平断面図である。図8の(A)は実施の形態に係る鋼製土留パネルを示した正面図、(B)は該鋼製土留パネルを示した左側面図である。図9は、図8に示したI部を側面方向から見た断面図である。図10は、図8に示したII部の拡大図である。図11は、図8に示したIII-III線矢視断面図である。図12は、図8に示したII部を側面方向から見た断面図である。
【0023】
鋼製土留パネル1は、図6図8に示すように、掘削孔の壁面に面する円弧状のスキンプレート10と、スキンプレート10の上端及び下端に設けられて上面及び下面を形成する円弧状の主桁11と、スキンプレート10の円弧方向の両端に設けられて左右の側面を形成する継手板12と、を有している。鋼製土留パネル1は、スキンプレート10、主桁11及び継手板12によって、掘削孔の内部に向かって開口する凹状に形成されている。スキンプレート10、主桁11及び継手板12は、それぞれ溶接で固定されている。主桁11の桁高は、掘削孔の土質及び深度等によって仕様が変わるが、例えば150mm~400mm程度である。また、孔軸方向における鋼製土留パネル1の高さは、例えば土留構造物100を構築する作業者の安全性と効率を考慮して、500mmを標準とし、500mm~1000mm程度範囲で設計される。
【0024】
鋼製土留パネル1は、図9図11に示すように、スキンプレート10と主桁11との接合部10a、及びスキンプレート10と継手板12との接合部10bが、凹状の凹内部側から溶接されて接合された構成である。つまり、スキンプレート10と主桁11との接合部10a、及びスキンプレート10と継手板12との接合部10bは、鋼製土留パネル1の外面側から溶接された構成ではない。
【0025】
例えば、一般的な鋼製土留パネルとして、止水性を有する構造が知られている。止水性を有する構造とするためには、スキンプレート10と主桁11との接合部、及びスキンプレート10と継手板12との接合部を鋼製土留パネル1の外面側から溶接する必要がある。スキンプレート10と主桁11との間の隙間、及びスキンプレート10と継手板12との隙間を外面側から完全に塞ぎ、該隙間に地下水が侵入する事態を防止するためである。
【0026】
しかしながら、スキンプレート10と主桁11との接合部、及びスキンプレート10と継手板12との接合部を鋼製土留パネル1の外面側から溶接する作業において、該鋼製土留パネル1の下部に位置する接合部分を溶接するためには、組み立て途中の鋼製土留パネル1を反転させなければならない。鋼製土留パネル1を反転させなければ、溶接できない箇所があるためである。また、溶接作業の安全性を確保すると共に、溶接精度を高めるためでもある。このような重量のある鋼製土留パネル1を反転させつつ溶接を行う作業が、作業者にとって大きな負担となっていた。また、接合部の全体に亘って隙間なく溶接する必要があるため、溶接しなければならない箇所が多くなり、溶接の工数が増えて製造の手間とコストが掛かるおそれがある。
【0027】
一方、波付け鋼板2は、止水性を有さない構造である。このような止水性を有さない波付け鋼板2を用いて構築される土留構造物100は、例えば地下水の影響を受け難く、止水性を必要としない場所に構築される。つまり、波付け鋼板2と共に使用され、或いは波付け鋼板2に代えて使用される鋼製土留パネル1も、止水性を有する必要がない。
【0028】
すなわち、本実施の形態1に係る鋼製土留パネル1では、止水性を必要としない土留構造物100に使用されるものであり、スキンプレート10と主桁11との接合部10a、及びスキンプレート10と継手板12との接合部10bが、凹状の凹内部側から溶接されて接合された構成とし、鋼製土留パネル1の外面側から溶接する作業を省略したものである。
【0029】
接合部10aは、接合強度を高めるために、円弧方向に沿って隙間なく連続して設けることが望ましいが、十分な接合強度を得ることができれば、円弧方向に沿って部分的に設けてもよい。同様に、接合部10bも、接合強度を高めるために、上下方向に沿って隙間なく連続して設けることが望ましいが、十分な接合強度を得ることができれば、上下方向に沿って部分的に設けてもよい。
【0030】
なお、鋼製土留パネル1は、接合部10a及び接合部10bの双方が、凹内部側から溶接されて接合された構成に限定されない。鋼製土留パネル1は、接合部10a及び接合部10bのうち、いずれか一方の接合部(10a又は10b)が、凹内部側から溶接されて接合された構成でもよい。この場合であっても、鋼製土留パネル1の外面側から溶接する作業の一部を省略することができるので、溶接作業の作業効率を高めることができ、製造の手間とコストを軽減することができる。
【0031】
また、図11に示すように、上記理由と同様の理由に基づき、主桁11と継手板12との接合部10cも、凹内部側から溶接されて接合された構成である。
【0032】
主桁11には、図6及び図7に示すように、孔軸方向に積み重ねた上下に隣り合う鋼製土留パネル1同士、又は鋼製土留パネル1と波付け鋼板2とを連結するための連結孔11aが複数形成されている。上下に隣り合う鋼製土留パネル1は、主桁11を突き合わせ、連結孔11aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。また、上下に隣り合う鋼製土留パネル1と波付け鋼板2は、主桁11と周方向フランジ部20とを突き合わせ、連結孔11a及び20aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。
【0033】
なお、連結孔11aの孔径は、連結孔20aの孔径よりも大きくすることが好ましい。構造体102Aは、施工誤差が生じたり、波付け鋼板2の剛性が低いことに起因して、真円度の誤差が生じたりする場合がある。構造体102Aの施工誤差及び真円度の誤差が生じてしまうと、連結孔11aと連結孔20aの位置が若干ずれて、連結孔11a及び20aにボルトを挿通させることが困難となる場合がある。つまり、連結孔11aの孔径を連結孔20aの孔径よりも大きくすることで、波付け鋼板2によって形成された構造体102Aの施工誤差及び真円度の誤差を連結孔11aで吸収することができ、連結孔11a及び20aにボルトを挿通させることができる。なお、連結孔11aの位置、大きさ及び個数は、図示した限りではなく、鋼製土留パネル1の形状及び大きさ等に応じて、適宜変更して形成するものとする。
【0034】
また、図6及び図7に示すように、上下の主桁11には、工具を差し込んで抉るための抉り孔11bが、円弧方向に間隔をあけて複数形成されている。抉るとは、例えば隙間などに物を差し入れてねじることを意味する。工具とは、一例としてシノ棒等の棒状部材である。抉り孔11bは、上下に隣り合う鋼製土留パネル1同士、又は鋼製土留パネル1と波付け鋼板2とを連結するための連結孔11aの位置を一致させる作業を行うために設けられている。なお、抉り孔11bは、上下の主桁11のうち、いずれか一方にのみ設けてもよいし、双方ともに省略してもよい。また、抉り孔11bの位置、大きさ及び個数は、図示した限りではなく、適宜変更して形成するものとする。
【0035】
継手板12には、図6及び図8に示すように、掘削孔の周方向に配置した左右に隣り合う鋼製土留パネル1を連結するための連結孔12aが複数形成されている。左右に隣り合う鋼製土留パネル1は、継手板12を突き合わせ、連結孔12aに挿通したボルトの軸部をナットで締結することで連結される。なお、図示した連結孔12aの個数は一例であって、これに限定されるものではない。
【0036】
また、図6及び図8に示すように、左右の継手板12には、工具を差し込んで抉るための抉り孔12bが形成されている。工具とは、一例としてシノ棒等の棒状部材である。抉り孔12bは、左右に隣り合う鋼製土留パネル1の連結孔12aの位置を一致させる作業を行うために設けられている。なお、抉り孔12bは、上下に隣り合う鋼製土留パネル1同士、又は鋼製土留パネル1と波付け鋼板2とを連結するための連結孔11aの位置を一致させる際に利用してもよい。また、抉り孔12bは、左右の継手板12のうち、いずれか一方にのみ設けてもよいし、双方ともに省略してもよい。また、抉り孔12bの位置、大きさ及び個数は、図示した限りではなく、適宜変更して形成するものとする。
【0037】
また、鋼製土留パネル1は、図6図8図10及び図12に示すように、上下の主桁11との間に配置され、製造時、運搬時、及び施工時における該鋼製土留パネル1の形状を保持する形状保持部材13を有している。形状保持部材13は、例えば厚さが6mm程度の鋼板からなる板状部材で構成されている。形状保持部材13は、鋼製土留パネル1の形状を保持できる強度を有していればよいため、例えば継手板12の厚さよりも薄くてもよい。また、形状保持部材13は、図示例の場合、円弧方向に間隔をあけて4つ配置されている。なお、形状保持部材13の厚さ及び設置個数は、図示例に限定されず、例えば鋼製土留パネル1の大きさ及び形状等を考慮して決定される。
【0038】
形状保持部材13は、図10及び図12に示すように、スキンプレート10の内面との接合部13a、及び上下の主桁11との接合部13bが、凹状の凹内部側から溶接されて接合された構成である。接合部13aは、上下方向に沿って左右交互に所定の溶接長で形成されている。これは、形状保持部材13の歪みを防止するためである。但し、接合部13aは、形状保持部材13の右側又は左側にのみ設けて、接合の手間を省いた構成でもよい。また、接合部13aは、上下方向に沿って連続して設けてもよいし、部分的に設けてもよい。同様に、接合部13bは、掘削孔の径方向に沿って連続して設けてもよいし、部分的に設けてもよい。
【0039】
なお、形状保持部材13は、スキンプレート10の内面との接合部13aを省略し、上下の主桁11との接合部13bのみが、凹内部側から溶接されて接合された構成としてもよい。つまり、形状保持部材13をスキンプレート10に必ずしも溶接する必要がないことを意味している。これは、形状保持部材13が、鋼製土留パネル1の強度を高める目的で設けたものではなく、鋼製土留パネル1の製造時、運搬時、及び施工時において、該鋼製土留パネル1の形状を保持する目的で設けたものであり、最小限の溶接固定で十分だからである。これにより、溶接作業の手間とコストを削減でき、生産性を高めることができる。
【0040】
図13は、実施の形態に係る鋼製土留パネルの形状保持部材の変形例1を示した説明図である。図13に示した形状保持部材14は、例えば外径が6mm程度の鉄筋棒からなる棒状部材である。この形状保持部材14は、円弧方向に間隔をあけて複数配置される。形状保持部材14は、上下の主桁11との接合部14bのみが、凹内部側から溶接されて接合されている。なお、形状保持部材14の外径及び配置する個数は、例えば鋼製土留パネル1の大きさ及び形状等を考慮して決定される。
【0041】
図14は、実施の形態に係る鋼製土留パネルの形状保持部材の変形例2を示した説明図である。図14に示した形状保持部材15は、例えば2つの鉄筋棒15a及び15bを組み合わせて形成され、上下の主桁11の間に設けられた構成である。一方の鉄筋棒15aは一端が上部の主桁11に溶接されて固定され、他方の鉄筋棒15bは一端が下部の主桁11に溶接されて固定されている。一方の鉄筋棒15aの他端と、他方の鉄筋棒15bの他端は、互いに溶接で固定されている。形状保持部材15を2つの鉄筋棒15a及び15bで構成する理由は、上下の主桁11に間に嵌まるように長さを調整して設置するためである。なお、形状保持部材15は、図14に示すように、スキンプレート10の内面から所定の距離をあけた位置に設けてもよいが、例えばスキンプレート10の内面に近接させた位置に設けてもよい。また、形状保持部材15は、2本の鉄筋棒15a及び15bに限定されず、例えば2枚の鋼板で構成してもよい。
【0042】
次に、上記土留構造物100の構築工法の一例を、図15及び図16に基づいて説明する。図15は、実施の形態に係る土留構造物の構築工法の一例を模式的に示した説明図である。図16は、実施の形態に係る土留構造物における第1土留構造部の一例を示した平断面図である。図16に示す矢印は、各鋼製土留パネル1の範囲を示している。
【0043】
本実施の形態に係る土留構造物100の構築工法では、第2土留構造部102を構築した後、該第2土留構造部102の下部に第1土留構造部101を構築する。先ず、図15(A)に示すように、地面200に土留構造物100を構築するための掘削孔201を形成する。掘削孔201は、土留構造物100の外径よりも例えば20cm程度の大きい外径で形成される。掘削孔201の深さは、一例として0.5m~1.5m程度である。そして、掘削孔201の壁面に沿って波付け鋼板2を環状に配置して構造体102Aを組み立てる。
【0044】
構造体102Aは、掘削孔201の壁面の周方向に沿って波付け鋼板2を順に配置し、左右に隣り合う波付け鋼板2をボルト及びナットで連結して組み立てられる。上段の構造体102Aの波付け鋼板2と、下段の構造体102Aの波付け鋼板2とは、ボルト及びナットで連結される。なお、上段の構造体102Aの波付け鋼板2と下段の構造体102Aの波付け鋼板2は、千鳥配置となるように、周方向の位置をずらして配置される。このように、構造体102Aを孔軸方向に沿って複数段積み重ねて(図示例の場合は3段)第2土留構造部102の一部が構築される。
【0045】
次に、図15(B)に示すように、最上段に位置する構造体102Aを地面200に設置した井桁300で固定した後、構造体102Aの外側の掘削孔201を掘削土で埋め戻す。なお、最上段に位置する構造体102Aを地面200に固定する手段は、井桁300に限定されず、例えばコンクリートを用いてもよい。
【0046】
そして、図15(C)に示すように、地盤を掘削しつつ、構造体102A及び101Aを組み立てて第2土留構造部102及び第1土留構造部101を構築し、所定の深度まで掘り進める。なお、最上段に位置する構造体102Aを井桁300で固定した後は、最下段の構造体102Aの下端に、掘削孔201の壁面の周方向に沿って波付け鋼板2を配置し、該波付け鋼板2を最下段の波付け鋼板2にボルト及びナットで連結するとともに、左右に隣り合う波付け鋼板2同士をボルト及びナットで連結して、構造体102Aを構築していく。また、波付け鋼板2と掘削孔201との間には、裏込注入材として、コンクリート又はモルタルが充填される。
【0047】
図15(C)に示すように、第1土留構造部101は、第2土留構造部102を構築した後、該第2土留構造部102の下端に構築される。構造体101Aは、図16に示すように、掘削孔201の壁面の周方向に沿って鋼製土留パネル1を順に配置して組み立てられる。掘削孔201の壁面に配置された鋼製土留パネル1は、上段の波付け鋼板2又は上段の鋼製土留パネル1にボルト及びナットで連結されるとともに、左右に隣り合う鋼製土留パネル1にボルト及びナットで連結される。なお、上段の波付け鋼板2又は上段の鋼製土留パネル1と下段の鋼製土留パネル1とは、千鳥配置となるように、周方向の位置をずらして配置される。このように、構造体101Aを孔軸方向に沿って複数段積み重ねて第1土留構造部101が構築される。なお、鋼製土留パネル1と掘削孔201との間には、裏込注入材として、コンクリート又はモルタルが充填される。また、各構造体101Aにおいて周方向に最後に配置される鋼製土留パネル1は、他の鋼製土留パネル1よりも、円弧方向の長さを0mm~6mm程度、より好ましくは3mm程度短くすることが好ましい。最後に配置される鋼製土留パネル1を、既に配置した左右の鋼製土留パネル1によって形成されたスペースに挿入しやすくし、組み立ての作業性を高めるためである。
【0048】
なお、第2土留構造部102は、図示した4段に限定されず、1段以上あればよい。また、第1土留構造部101を構成する各構造体101Aは、図示した6つの鋼製土留パネル1で形成された構成に限定されず、6つ以外の個数で形成してもよい。また、本実施の形態に係る土留構造物100では、波付け鋼板2で構築した第2土留構造部102と、鋼製土留パネル1で構築した第1土留構造部101と、を有する構成に限定されず、図示は省略したが、鋼製土留パネル1で構築した第1土留構造部101のみで構成してもよい。
【0049】
図17は、実施の形態に係る鋼製土留パネルの変形例1を示した平断面図である。図18の(A)は図17に示した鋼製土留パネルの正面図、(B)は該鋼製土留パネルの左側面図である。図19は、図17に示した鋼製土留パネルを用いた土留構造物における第1土留構造部の一例を示した平断面図である。図20は、図19に示したA部の拡大図である。図21は、図19に示した土留構造物の第1土留構造部を構築する手順を模式的に示した説明図である。図22は、図19に示した土留構造物の構築工法の特徴を具体的に示した説明図である。なお、図21及び図22に示した括弧書きの数字は、鋼製土留パネル1Aのピースの番号を示している。
【0050】
鋼製土留パネル1Aは、図17及び図18に示すように、平面視が円弧状とされ、円弧方向における両端面が、掘削孔201の径方向に対して傾斜して形成された構成である。具体的には、鋼製土留パネル1Aは、平面視において、主桁11の円弧方向における両端部及び継手板12が、掘削孔201の径方向に対して傾斜して形成されている。つまり、図19及び図20に示すように、複数の鋼製土留パネル1Aを環状に配置して構築された構造体101Aでは、周方向に隣り合う鋼製土留パネル1Aが突き合わさる端面の組が、掘削孔201の径方向に対して傾斜して形成されている。なお、掘削孔201の径方向に対して傾斜して形成されているとは、後述するように、既に設置された左右の鋼製土留パネル1A及び1Aの間に形成されたスペースに、最後に設置される鋼製土留パネル1Aを、構造体101Aの内側から周方向にスライドさせて嵌め込むことができる程度に傾斜して形成されていることを意味する。
【0051】
図17及び図18に示した鋼製土留パネル1Aを用いて土留構造物100を構築するには、図21(A)に示すように、第6ピースの鋼製土留パネル1Aを1つ残して、第1ピースから第5ピースの鋼製土留パネル1Aを掘削孔201の壁面の周方向に沿って順に組み立てて構造体101Aの一部を構築する。第1ピースから第5ピースの鋼製土留パネル1Aは、上段の波付け鋼板2又は上段の鋼製土留パネル1Aにボルト及びナットで連結するとともに、左右に隣り合う鋼製土留パネル1A同士をボルト及びナットで連結する。
【0052】
そして、図21(B)に示すように、第1ピースの鋼製土留パネル1Aと第5ピースの鋼製土留パネル1Aとの間に形成されたスペースSに、残した第6ピースの鋼製土留パネル1Aを、構造体101Aの内側から周方向にスライドさせて挿入する。このとき、図22に示すように、第5ピースの鋼製土留パネル1Aにおける一方の継手板12に対して、第6ピースの鋼製土留パネル1Aにおける一方の継手板12をスライドさせる。第6ピースの鋼製土留パネル1Aの一端側を、第1ピースの鋼製土留パネル1Aと第5ピースの鋼製土留パネル1Aとの間のスペースSにスライドさせて挿入した後、図21(C)及び図22に示すように、第6ピースの鋼製土留パネル1Aの他端側を、構造体101Aの内側から外側(図中の矢印Xの方向)に向かって押し込み、当該スペースSに嵌め込む。そして、第6ピースの鋼製土留パネル1Aを、上段の波付け鋼板2又は鋼製土留パネル1Aにボルト及びナットで連結するとともに、左右に隣り合う鋼製土留パネル1Aにボルト及びナットで連結する。
【0053】
図17及び図18に示した鋼製土留パネル1A及び該鋼製土留パネル1Aを用いた土留構造物100では、平面視が円弧状とされ、円弧方向における両端面が、掘削孔201の径方向に対して傾斜して形成された鋼製土留パネル1Aを用いているので、最後に設置される鋼製土留パネル1Aを、既に設置された左右の鋼製土留パネル1Aの間に形成されたスペースSに、構造体101Aの内側から周方向にスライドさせて嵌め込むことができ、施工性を向上させることができる。
【0054】
なお、構造体101Aを形成する鋼製土留パネル1Aは、図19に示すように、周方向に隣り合う鋼製土留パネル1Aが突き合わさる端面の組のうち、すべての組が掘削孔201の径方向に対して傾斜して形成された構成としてもよいし、図示することは省略したが、少なくとも1つ以上の組が、掘削孔201の径方向に対して傾斜して形成された構成としてもよい。
【0055】
図23は、実施の形態に係る鋼製土留パネルの変形例2を示した平面図である。図24は、図23に示した鋼製土留パネルの左側面の拡大図である。図25は、図23に示した鋼製土留パネルを用いた土留構造物の要部を模式的に示した拡大図である。
【0056】
図23図25に示す鋼製土留パネル1Bのように、上下の主桁11は、その外端縁11cがスキンプレート10の外面よりも掘削孔201の壁面に向かって突き出すように設けてもよい。ここで言う外端縁11cとは、スキンプレート10の外面よりも掘削孔201の壁面に向かって突き出している部分をいう。主桁11の外端縁11cの突き出す長さは、一例として25mm程度である。上下の主桁11の外端縁11cと、スキンプレート10の外面とで、土留構造物100の外面と掘削孔201との間に充填される裏込注入材202が入り込む凹状のスペースSが形成される。つまり、鋼製土留パネル1Bは、凹状のスペースSによって、掘削孔201の壁面と鋼製土留パネル1Bとの間に充填されて硬化した裏込注入材202が引っ掛かる定着代を形成することができ、裏込注入材202の定着性を高めることができる。
【0057】
なお、図示することは省略したが、鋼製土留パネル1Bは、上部の主桁11及び下部の主桁11のうち、いずれか一方の外端縁11cが、スキンプレート10の外面よりも掘削孔201の壁面に向かって突き出すように構成してもよい。この場合であっても、該突き出した主桁11の外端縁11cとスキンプレート10の外面とで、凹状のスペースSが形成されるので、掘削孔201の壁面と鋼製土留パネル1Bとの間に充填されて硬化した裏込注入材202が引っ掛かる定着代を形成することができ、裏込注入材202の定着性を高めることができる。
【0058】
また、図23図25に示した鋼製土留パネル1Bの特徴は、図17及び図18に示した鋼製土留パネル1Aの形状に適用した場合を示しているが、図6図8に示した鋼製土留パネル1の形状に適用することもできる。
【0059】
図26は、実施の形態に係る土留構造物の変形例を模式的に示した斜視図である。図27は、実施の形態に係る鋼製土留パネルの変形例を示した斜視図である。
【0060】
本実施の形態に係る土留構造物100は、図1に示した平面視において円形状とした構成に限定されない。土留構造物100は、図26に示すように、地面を掘削して形成された鉛直の掘削孔に波付け鋼板2と鋼製土留パネル1Cを設置して、平面視が矩形状に構築された構成としてもよい。具体的には、土留構造物100は、平面視が直線状の波付け鋼板2が矩形状に配置されて形成された構造体102Aを、孔軸方向に4段積み重ねて構築された第2土留構造部102と、平面視が直線状の鋼製土留パネル1Cが矩形状に配置されて形成された構造体101Aを、孔軸方向に2段積み重ねて構築された第1土留構造部101と、を有している。第2土留構造部102は、波付け鋼板2を千鳥状に配置して組み立てられている。また、第1土留構造部101も、鋼製土留パネル1を千鳥状に配置して組み立てられている。図26に示す波付け鋼板2は、図4及び図5に示したプランクプレート2Bを用いているが、図2及び図3に示したライナープレート2Aを用いてもよい。なお、第1土留構造部101及び第2土留構造部102の段数は、図示した構成に限定されず、それぞれ少なくとも1段以上あればよい。また、図26に示した各構造体102A及び101Aを構成する波付け鋼板2及び鋼製土留パネル1Cの個数は、一例である。
【0061】
鋼製土留パネル1Cは、図27に示すように、掘削孔の壁面に面する平板状のスキンプレート10と、スキンプレート10の上端及び下端に設けられて上面及び下面を形成する平板状の主桁11と、スキンプレート10の左右の両端に設けられて左右の側面を形成する継手板12と、を有している。鋼製土留パネル1Cは、掘削孔201の内部に向かって開口する凹状に形成された構成である。スキンプレート10、主桁11及び継手板12は、それぞれ溶接で固定されている。なお、拡大して図示することは省略したが、図26に示した第1土留構造部101の矩形の角部には、L字形に加工したコーナー部用の鋼製土留パネル1Cが配置されている。
【0062】
このように、本実施の形態に係る土留構造物100は、波付け鋼板2及び鋼製土留パネル1Cの形状を変形させることで、種々の形状に構築することができる。なお、土留構造物100は、図1に示す円形状及び図26に示す矩形状に限定されず、例えば平面視において、小判のような形をした長円形状や、馬蹄形のようにU字状等でもよい。波付け鋼板2及び鋼製土留パネル1Cは、土留構造物100の形状に応じた形状で構成するものとする。
【0063】
以上のように、本実施の形態に係る鋼製土留パネル1は、掘削孔201の壁面に面するスキンプレート10と、スキンプレート10の上端及び下端に設けられ、上面及び下面を形成する主桁11と、スキンプレート10の左右の両端に設けられ、左右の側面を形成する継手板12と、を備えている。鋼製土留パネル1は、掘削孔201の内部に向かって開口する凹状に形成されており、スキンプレート10と主桁11との接合部10a、及びスキンプレート10と継手板12との接合部10bのうち、いずれか一方又は双方が、凹状の凹内部側から溶接されて接合された構成である。よって、本実施の形態に係る鋼製土留パネル1は、鋼製土留パネル1の外面側から溶接する作業の一部又は全部を省略することができるので、溶接作業の作業効率を高めることができ、製造の手間とコストを軽減することができる。
【0064】
また、主桁11と継手板12との接合部10cは、凹状の凹内部側から溶接されて接合された構成である。よって、本実施の形態に係る鋼製土留パネル1は、鋼製土留パネル1の外面側から溶接する作業の一部又は全部を省略することができるので、溶接作業の作業効率を高めることができ、製造の手間とコストを軽減することができる。
【0065】
また、鋼製土留パネル1は、上下の主桁11の間に設けられ、凹状の形状を保持する形状保持部材13を備えている。よって、本実施の形態に係る鋼製土留パネル1及び該鋼製土留パネル1を用いた土留構造物100では、製造時、運搬時、及び施工時において、該鋼製土留パネル1の形状を保持することができるので、施工性を向上させることができ、工期の短縮に寄与することができる。
【0066】
また、形状保持部材13は、板状部材又は棒状部材とされ、主桁11にのみ溶接されて固定されている。これは、形状保持部材13が、鋼製土留パネル1の強度を高める目的で設けたものではなく、鋼製土留パネル1の製造時、運搬時、及び施工時において、該鋼製土留パネル1の形状を保持する目的で設けたものであり、最小限の溶接固定で十分だからである。よって、本実施の形態に係る鋼製土留パネル1は、溶接作業の手間とコストを削減でき、生産性を高めることができる。
【0067】
また、形状保持部材15は、2つの部材15a及び15bを組み合わせて形成されている。形状保持部材15は、一方の部材15aの一端が一方の主桁11に固定され、他方の部材15bの一端が他方の主桁11に固定されており、一方の部材15aと他方の部材15bの他端同士が固定されて、上下の主桁11の間に設けられている。つまり、形状保持部材15は、上下の主桁11に間に嵌まるように長さを調整して設置することができる。よって、本実施の形態に係る鋼製土留パネル1は、土留構造物100の施工性の向上に寄与することができる。
【0068】
以上に、鋼製土留パネル(1、1A、1B、1C)及び土留構造物100を実施の形態に基づいて説明したが、鋼製土留パネル(1、1A、1B、1C)及び土留構造物100は、上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば図15に基づいて説明した土留構造物100の構築工法は、一例であって、上記実施の形態に限定されない。また、形状保持部材(13、14、15)は、図示した構成に限定されず、鋼製土留パネル1の形状を保持することができれば、どのような部材を用いてもよく、どのような構成でもよい。要するに、鋼製土留パネル(1、1A、1B、1C)及び土留構造物100は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0069】
1、1A、1B、1C 鋼製土留パネル、2 波付け鋼板、2A ライナープレート、2B プランクプレート、10 スキンプレート、10a、10b、10c 接合部、11 主桁、11a 連結孔、11b 抉り孔、11c 外端縁、12 継手板、12a 連結孔、12b 抉り孔、13 形状保持部材、13a、13b 接合部、14 形状保持部材、14b 接合部、15 形状保持部材、15a、15b 鉄筋棒(部材)、20 周方向フランジ部、20a 連結孔、21 軸方向フランジ部、21a 連結孔、100 土留構造物、101 第1土留構造部、101A 構造体、102 第2土留構造部、102A 構造体、200 地面、201 掘削孔、202 裏込注入材、300 井桁、S スペース。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図27