(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129845
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028684
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】503247791
【氏名又は名称】アクトインテリア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519381458
【氏名又は名称】青島拜倫湾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 忠夫
(72)【発明者】
【氏名】孫 石林
(57)【要約】
【課題】着用者の呼気を、簡単な構造で確実にマスク内から排気できる、マスクを提供する。
【解決手段】このマスク10は、アウター生地30、及び、その内側に部分的に配置されるインナー生地40を有し、着用者の鼻及び口を覆うマスク本体20と、マスク本体20の両側にループ状に連設されて、着用者の耳に引き掛けられる耳掛け部25,25とを備え、アウター生地30の裏面側であって、その左右両側部には、アウター生地30とインナー生地40とで囲まれてなるポケット部50,50が形成されており、各ポケット部50の左右端部に、アウター生地30とインナー生地40とで閉塞されない開口部51,53が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウター生地、及び、その内側に部分的に配置されるインナー生地を有し、着用者の鼻及び口を覆うマスク本体と、
該マスク本体の両側にループ状に連設されて、着用者の耳に引き掛けられる耳掛け部とを備え、
前記インナー生地は、前記アウター生地の裏面側の、着用者の少なくとも鼻が入る部分を避けて取付けられており、着用者の少なくとも鼻が入る部分の両側には、前記アウター生地と前記インナー生地とで囲まれてなるポケット部が形成されており、
各ポケット部の左右端部に、前記アウター生地と前記インナー生地とで閉塞されない開口部が設けられていることを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記インナー生地の中央部に、着用者の少なくとも鼻が入る切欠き部が設けられており、
この切欠き部の左右両側部に、前記ポケット部が形成されており、
前記インナー生地の、前記切欠き部に位置する部分に、前記ポケット部の前記開口部の1つが形成されている請求項1記載のマスク。
【請求項3】
前記アウター生地の中央部に、着用状態で外方に突出する立体形状をなした突出部が設けられており、
該突出部の内側が、前記切欠き部を通して、少なくとも着用者の鼻が入る立体空間をなしている、請求項1又は2記載のマスク。
【請求項4】
前記ポケット部に、冷感材料又は発熱材料を含有するシート状物が着脱可能に収容されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の鼻や口を覆う、蒸れにくいマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コロナウイルスの感染抑制などの見地から、着用者の鼻や口を覆うマスクの重要性がますます高まっている。
【0003】
従来のこの種のマスクとしては、種々の構造のものがあるが、例えば、下記特許文献1には、着用者の鼻及び口を覆う外側被覆部と、外側被覆部の左右に該外側被覆部と連続して一体に設けられ、着用者の耳に保持される被保持部と、外側被覆部の前記着用者側の面に設けられる内側被覆部と、外側被覆部及び内側被覆部の上端及び下端を縫合してなる主縫合部と、主縫合部の縫合により外側被覆部及び内側被覆部の間に形成され、左右方向に開口するポケット部とを備えた、マスクが記載されている。
【0004】
ところで、マスクを着用した場合、着用者の呼気がマスク内にこもりやすくなり、蒸れやすいという問題がある。
【0005】
上記問題を解決するものとして、例えば、下記特許文献2には、顔面の鼻口部を覆うよう装着されるマスク本体部の左右両方の側縁部に、それぞれ通気ユニットを配置し、マスク本体部の顔面側表面に沿って通気ユニットの間を接続部により接続する、マスク用通気装置が記載されている。また、通気ユニットは、枠状の本体部と、その両側に配置された櫛形のクリップとを有しており、該クリップを介して、マスクに取付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3229141号公報
【特許文献2】特許第6778349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に記載のマスク用通気装置は、通気ユニットがマスクとは別体であって、クリップを介してマスクに取付ける必要があるので、構造が複雑であった。また、通気ユニットが肌に当たるため、装着感が悪くなる可能性があった。
【0008】
一方、上記特許文献1に記載のマスクは、マスクの左右方向に延びる幅広の一つのポケット部を有し、その左右両側が開口しているが、このポケット部には、着用者の鼻や口に連通する開口は形成されていないため、着用者の呼気は排気できない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、着用者の呼気を、簡単な構造でマスク内から排気しやすくできる、マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のマスクは、アウター生地、及び、その内側に部分的に配置されるインナー生地を有し、着用者の鼻及び口を覆うマスク本体と、該マスク本体の両側にループ状に連設されて、着用者の耳に引き掛けられる耳掛け部とを備え、前記インナー生地は、前記アウター生地の裏面側の、着用者の少なくとも鼻が入る部分を避けて取付けられており、着用者の少なくとも鼻が入る部分の両側には、前記アウター生地と前記インナー生地とで囲まれてなるポケット部が形成されており、各ポケット部の左右端部に、前記アウター生地と前記インナー生地とで閉塞されない開口部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
上記発明によれば、アウター生地の裏面側であって、着用者の少なくとも鼻が入る部分の両側には、アウター生地とインナー生地とで囲まれてなるポケット部が形成されており、各ポケット部の左右端部に、アウター生地とインナー生地とで閉塞されない開口部が設けられているので、着用者の呼気は、各ポケット部の内側端部に設けられた開口部から、各ポケット部内に入り、更に各ポケット部の外側端部に設けられた開口部から、マスク外へと排気されるため、呼気がマスク内にこもりにくくすることができ、蒸れにくくすることができる。
【0012】
また、ポケット部は、アウター生地とインナー生地を利用して、マスク本体に一体形成されているので、簡単な構造で確実に、着用者の呼気を排気可能なマスクを得ることができる。
【0013】
更に、各ポケット部に、冷感材料を含有するシート状物や、発熱材料を含有するシート状物を収容することもでき、季節に合わせて温度調整機能を有するマスクを提供することができる。
【0014】
本発明のマスクにおいては、前記インナー生地の中央部に、少なくとも着用者の鼻が入る切欠き部が設けられており、この切欠き部の左右両側部に、前記ポケット部が形成されており、前記インナー生地の、前記切欠き部に位置する部分に、前記ポケット部の前記開口部の1つが形成されていることが好ましい。
【0015】
上記態様によれば、マスク着用時には、着用者の鼻は、切欠き部内に挿入されて、アウター生地の裏面側に位置することになる。、そのため、空気の吸引時には、アウター生地だけを通して空気が吸引されるので、通気抵抗を軽減することができ、空気を吸い込みやすい。
【0016】
また、切欠き部の左右両側部に、ポケット部が形成されており、インナー生地の切欠き部に位置する部分に、ポケット部の開口部の1つが形成されているので、着用者の鼻から吐き出された呼気は、切欠き部に位置する開口部からポケット部内に流入し、各ポケット部のマスク外側に位置する開口部から排気されるので、呼気をスムーズに排気することができる。
【0017】
本発明のマスクにおいては、前記アウター生地の中央部に、着用状態で外方に突出する立体形状をなした突出部が設けられており、該突出部の内側が、前記切欠き部を通して、少なくとも着用者の鼻が入る立体空間をなしていることが好ましい。
【0018】
上記態様によれば、アウター生地の中央部に、着用状態で外方に突出する立体形状をなした突出部が設けられ、その内側が着用者の鼻が入る立体空間をなしているので、鼻から吐き出された呼気が、突出部内側の立体空間から左右のポケット部に抜けやすくなり、呼気がマスク内にこもることをより効果的に防止でき、暑苦しさを効果的に抑制できる。
【0019】
本発明のマスクにおいては、前記ポケット部に、冷感材料又は発熱材料を含有するシート状物が着脱可能に収容されていることが好ましい。
【0020】
上記態様によれば、冷感材料又は発熱材料を含有するシート状物を、ポケット部に収容することにより、夏は冷感作用をもたらし、冬は保温作用をもたらすことができ、マスクの着用感をより高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、着用者の呼気は、各ポケット部の内側端部に設けられた開口部から、各ポケット部内に入り、更に各ポケット部の外側端部に設けられた開口部から、マスク外へと排気されるため、呼気がマスク内にこもりにくくすることができ、蒸れにくくすることができる。また、ポケット部は、アウター生地とインナー生地を利用して、マスク本体に一体形成されているので、簡単な構造で確実に、着用者の呼気を排気可能なマスクを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係るマスクの第1実施形態を示しており、マスクを着用した状態での、正面側から見た斜視図である。
【
図2】同マスクを背面側から見た場合の斜視図である。
【
図3】同マスクを背面側から見た場合の説明図である。
【
図4】同マスクを着用した状態での側面説明図である。
【
図5】同マスクを平面側から見た場合の説明図である。
【
図6】本発明に係るマスクの第2実施形態を示しており、背面側から見た場合の説明図である。
【
図7】本発明に係るマスクの第3実施形態を示しており、背面側から見た場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(マスクの第1実施形態)
以下、
図1~5を参照して、本発明に係るマスクの第1実施形態について説明する。
【0024】
図1及び
図2に示すように、このマスク10は、アウター生地30及びその内側に部分的に配置されるインナー生地40を有し、着用者1の鼻3及び口5を覆うマスク本体20と、このマスク本体20の両側にループ状に連設されて、着用者1の耳7に引き掛けられる耳掛け部25,25とを備えている。
【0025】
上記耳掛け部25は、伸縮可能な弾性を有する紐状部材からなる。ただし、耳掛け部25は、弾性を有しない紐であってもよい。また、耳掛け部2は、長さ調整可能なアジャスターを備えるものであってもよい。
【0026】
また、インナー生地40は、アウター生地30の裏面側の、着用者1の少なくとも鼻3が入る部分を避けて取付けられており、着用者1の少なくとも鼻3が入る部分の両側には、アウター生地30とインナー生地40とで囲まれてなるポケット部50が形成されている。
【0027】
更に、各ポケット部50の左右端部には、アウター生地30とインナー生地40とで閉塞されない開口部51,53が設けられている。開口部51は、マスク10の左右方向の端部(以下、「外側端部」ともいう)に位置し、開口部53は、マスク10の左右方向の中心寄りに位置する端部(以下、内側端部」ともいう)に位置する。
【0028】
また、
図2に示すように、この実施形態の場合、インナー生地40の中央部に、着用者1の少なくとも鼻3が入る切欠き部45が設けられている。この切欠き部45の左右両側部に、上述した一対のポケット部50,50が配置されている。更に、インナー生地40の、切欠き部45に位置する部分に、ポケット部50の開口部51,53の1つが形成されている。
【0029】
この実施形態では、各ポケット部50は、内側端部側の開口部53を、インナー生地40の切欠き部45に位置するように形成されている。
【0030】
更に
図4に示すように、アウター生地30の中央部に、着用状態で外方に突出する立体形状をなした突出部35が設けられている。すなわち、この実施形態におけるマスク10は、着用者1の鼻3及び口5を覆う立体形状をなした突出部35を有する、いわゆる立体マスクとなっている。この実施形態では、突出部35は、後述するように、アウター生地30が重ね合わされ溶着してなる折れ目部36によって形成されている。
【0031】
図3を併せて参照すると、前記アウター生地30は、左右方向に長く延びた形状をなしている。この実施形態におけるアウター生地30は、その長手方向中央部が最も幅広(マスク10の上下方向の高さが大きい)で、長手方向両側部に向けて次第に幅狭となる形状を呈している。なお、アウター生地30の上方に位置する辺が上辺31をなし、下方に位置する辺が下辺32をなし、左右方向に位置する辺が外側辺33,33をなしている。
【0032】
一方、この実施形態におけるインナー生地40は、前記アウター生地30に適合して、左右方向に長く延びた形状をなし、且つ、その長手方向中央部が最も幅広で、長手方向両側部に向けて次第に幅狭となる形状を呈している。なお、インナー生地40の上方に位置する辺が上辺41をなし、下方に位置する辺が下辺42をなし、左右方向に位置する辺が外側辺43,43をなしている。
【0033】
また、インナー生地40の長手方向中央部に、前記切欠き部45が形成されている。
図3に示すように、この実施形態の切欠き部45は、マスク前後方向が開口すると共に上方も開口した、略U字形状をなしている。より具体的には、この切欠き部45は、インナー生地40の長手方向中央部であって、下辺42よりも上方に位置した底辺45aと、該底辺45aの両側から一定幅で上方に延びる内側辺45b,45bと、マスク上方に配置されマスク外部に連通する開口45cとからなる。なお、この切欠き部45には、着用者1の鼻3及び口5が入り込むようになっている。
【0034】
また、
図3に示すように、切欠き部45の幅H(両内側辺45b,45bどうしの距離)は、2~20cmであることが好ましく、3~15cmであることがより好ましい。更に
図3に示すように、切欠き部45の高さT(底辺45aから上端部までの距離)は、2~20cmであることが好ましく、3~15cmであることがより好ましく、3~7cmであることが最も好ましい。
【0035】
再びアウター生地30の説明に戻ると、この実施形態のアウター生地30は、その長手方向中央部に、アウター生地30が重ね合わされ溶着してなる折れ目部36が形成されており、この折れ目部36を介して、着用状態で外方に突出する立体形状をなした、前記突出部35が形成されるようになっている。また、アウター生地30に設けた突出部35の内側が、インナー生地40に形成した切欠き部45を通して、少なくとも着用者1の鼻3が入る立体空間をなしている(
図4参照)。
【0036】
また、左右一対のポケット部50,50は、以下のようにして形成される。
【0037】
すなわち、アウター生地30の上辺31に、インナー生地40の上辺41の、切欠き部45の左右両側に位置する部分を当接させると共に、アウター生地30の下辺32に、インナー生地40の下辺42を当接させ、各当接部分を縁取り部27で覆う。そして、この縁取り部27を介して、縫着やラミネート(加熱による溶着、超音波による溶着、接着剤を介しての接着等)などの接合手段によって、アウター生地30及びインナー生地40どうしを互いに接合することで、アウター生地30及びインナー生地40の上辺側及び下辺側がそれぞれ接合されて、
図1や
図2に示すようなマスク本体20が形成される。
【0038】
この場合、インナー生地40の上辺41及び下辺42はアウター生地30に接合されるものの、インナー生地40の両外側辺43,43はアウター生地30に接合されず、更にインナー生地40に形成した切欠き部45の内側辺45b,45bも、アウター生地30に接合されないことになる。
【0039】
その結果、アウター生地30の裏面側であって、インナー生地40の中央部に形成した切欠き部45を介して、その左右両側部に、一対のポケット部50,50が形成されるようになっている。
【0040】
また、各ポケット部50の外側端部(各ポケット部50のマスク外側に位置する端部)には、アウター生地30と、アウター生地30とは未接合のインナー生地40の外側辺43とによって囲まれてなる、開口部51が形成される。更に、各ポケット部50の内側端部(各ポケット部50のマスク内側に位置する端部)には、アウター生地30と、アウター生地30とは未接合のインナー生地40の、切欠き部45の内側辺45bとによって囲まれてなる、側開口部53が形成される。
【0041】
したがって、各ポケット部50は、左右両端部に開口部51,53を設けた、略トンネル状をなしている。また、上記の両開口部51,53は、各ポケット部50の内部空間に連通している。更、ポケット部50の内側端部に位置する開口部53は、切欠き部45に連通し、該切欠き部45を通じて、突出部35の内側の立体空間にも連通している。
【0042】
そして、上記のようなポケット部50を設けた結果、
図5に示すように、突出部35の内側の立体空間内にて生じた着用者1の呼気は、切欠き部45及び開口部53を通過し、ポケット部50内に流入し、更にポケット部50の外側端部に位置する開口部51から排気されるようになっている。
【0043】
上記構成をなしたアウター生地30の材料としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリウレタン繊維、レーヨンやリヨセル等の再生繊維、酢酸繊維セルロースアセテート)、ポリ乳酸繊維などからなる織物・編物、又は、不織布を用いることができる。
【0044】
また、上記材料からなる織物・編物、又は、不織布は、単層(1層)でも、複数枚積層させた多層であってもよく、更に、上記材料からなる織物・編物、及び、不織布を、適宜組わせた多層構造としてもよい。
【0045】
なお、アウター生地30の目付量としては、50~500g/m2であることが好ましく、70~450g/m2であることがより好ましい。
【0046】
一方、インナー生地40の材料としては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン等のポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、アクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリウレタン繊維、レーヨンやリヨセル等の再生繊維、酢酸繊維(セルロースアセテート)、ポリ乳酸繊維などからなる織物・編物を用いることができる。
【0047】
また、インナー生地40に用いられる繊維としては、短繊維ではなく、長繊維であることが好ましい。長繊維の方が、マスク10を長期間着用しても、ピリング(毛玉)が発生しにくいからである(短繊維は長期使用でピリングが発生しやすい)。
【0048】
更に、インナー生地40に用いられる材料としては、特に、ナイロン等のポリアミドの長繊維からなる織物や、ポリエステルの長繊維からなる織物であることが好ましい。
【0049】
なお、インナー生地40の目付量としては、30~250g/m2であることが好ましく、50~200g/m2であることがより好ましく、100~190g/m2であることが最も好ましい。
【0050】
また、
図3に示すように、各ポケット部50内には、冷感材料又は発熱材料を含有するシート状物60が、着脱可能に収容されるようになっている。
【0051】
このシート状物60は、開口部51,53を介してポケット部50内に収容可能なように、開口部51,53よりも小さい形状であることが好ましい。
図3に示すように、この実施形態のシート状物60は、四角形状の薄肉シートとなっている。なお、シート状物60の厚さは、0.1~5mmであることが好ましい。
【0052】
また、シート状物60が冷感材料を含有する場合は、同シート状物60は、冷感材料を含有したジェルが塗布されたジェル芯層と、該ジェル芯層に積層された薄膜被覆層とからなる、いわゆるジェルシートであることが好ましい。
【0053】
上記ジェルは、三次元ネットワーク構造に、大量の水分が閉じ込められているため、急速な熱伝導が可能となり、また、比熱容量が高いため、着用者に清涼感を与えることが可能となっている。
【0054】
また、上記ジェルは、例えば、天然高分子類(例えば、澱粉類、セルロース類、ペクチン、寒天、コラーゲン、ヒアルロン酸、アミノ酸、アルギン酸、キトサン等)や、人工合成類(例えば、ポリビニルアルコール類、ポリプロピレン酸塩類、ポリオキシエチレン類、ポリアクリルアミド類、ポリウレタン類、及び、これらの誘導体等)から選ばれたものであることが好ましい。
【0055】
更に、上記ジェル中に、ミント、キシリトールなどの冷感助剤を加えると、更に冷感を高めることが可能となるため、好ましい。また、上記ジェルに、相転移材料を加えることも好ましい。相転移材料としては、相転移物質を含有するマイクロカプセルなどが用いられる。この場合、マスク外部の温度が上昇すると、相転移材料が、大量の熱量を吸収して相転移し、温度を一定に保持するため、冷感の持続時間を延長可能となる。
【0056】
なお、ジェル芯層に積層された薄膜被覆層は、ジェル中の水分の蒸散を防止して、冷感持続時間を延長できる効果を奏する。このような薄膜被覆層は、例えば、ポリウレタンフィルム(PUフィルム)、熱可塑性ポリウレタンフィルム(TPUフィルム)、ポリテトラフルオロエチレンフィルム(PTFEフィルム)等からなり、防水性や通気性を有するフィルムを用いることが好ましい。
【0057】
また、この薄膜被覆層の厚さは、0.01~0.5mmであることが好ましい。この場合、防水性を維持し、汚れ防止を図りつつ、冷感性能の伝導性に影響を及ぼしにくい。
【0058】
一方、シート状物60が発熱材料を含有する場合は、同シート状物60は、鉄粉と炭粉を含む発熱シートであることが好ましい。
【0059】
以上説明したマスク本体や、アウター生地、インナー生地等の形状や構造等は、上記態様に限定されるものではなく、例えば、略長方形状や、左右水平方向に長軸を位置させた略楕円形状、略小判形状等をなしていてもよい。また、アウター生地に、突出部を設けなくてもよい。更に、インナー生地には、切欠き部を設けない構造としてもよい。
【0060】
また、インナー生地に形成した切欠き部としては、この実施形態では略U字状をなしているが、この形状のみならず、例えば、略V字状をなしていたり、マスク下縁から上縁に亘り一定幅で延びるスリット状をなしていたり、更には、丸穴や、楕円形状の穴、矩形状の穴等の穴状の切欠きとしたりしてもよく、少なくとも着用者1の鼻3を挿入可能であればよい。更に、アウター生地及びインナー生地からなるポケット部の形状や構造は、上記態様に限定されるものではなく、少なくとも着用者1の呼気をマスク外へ排気可能であればよい。
【0061】
(作用効果)
次に、上記構成からなるマスク10の作用効果について説明する。
【0062】
マスク10を装着する際には、インナー生地40を顔表面に向け、切欠き部45に鼻3や口5を位置合わせして、マスク本体20を顔表面にあてがって、一対の耳掛け部25,25を、耳7,7に引き掛けることで、
図1に示すように、着用者1は、マスク10を着用することができる。
【0063】
そして、このマスク10においては、
図5に示すように、着用者1の呼気は、各ポケット部50の内側端部に設けられた開口部53から、各ポケット部50内に入り、更に各ポケット部50の外側端部に設けられた開口部51から、マスク外へと排気されるため、呼気がマスク10内にこもりにくくすることができ、蒸れにくくすることができる。
【0064】
また、各ポケット部50は、アウター生地30とインナー生地40を利用して、マスク本体20に一体形成されているので、簡単な構造で確実に、着用者1の呼気を排気可能なマスク10を得ることができる。なお、ポケット部50がマスク本体20から脱落するおそれは皆無であり、着用者1の呼気を確実に排気可能である。
【0065】
更に、呼気が一対のポケット部50,50を介してマスク外に排出されるので、呼気が着用者1の顔表面に触れにくくなり、べたつきにくくすることができる。また、呼気が一対のポケット部50,50の開口部51,51から、マスク側方へと排出されるので、着用者1が眼鏡を装着している場合には、眼鏡をくもりにくくすることができる。
【0066】
更に、着用者1がマスク10を着用した際には、着用者1の鼻3は、切欠き部45内に挿入されて、アウター生地30の裏面側に位置することになる(
図4参照)。そのため、空気の吸引時には、アウター生地30だけを通して空気が吸引されるので、通気抵抗を軽減することができ、空気を吸い込みやすい。
【0067】
また、切欠き部45の左右両側部に、ポケット部50が形成されており、インナー生地40の切欠き部45に位置する部分に、ポケット部50の開口部51,53の1つが形成されている(ここでは各ポケット部50の内側端部に位置する開口部53が、切欠き部45に位置するように形成されている)。
【0068】
そのため、着用者1の鼻3から吐き出された呼気は、
図5に示すように、切欠き部45に位置する開口部53からポケット部50内に流入し、各ポケット部50のマスク外側に位置する開口部51から排気されるので、呼気をスムーズに排気することができる。
【0069】
更に
図4に示すように、アウター生地30の中央部に、着用状態で外方に突出する立体形状をなした突出部35が設けられ、その内側が着用者1の鼻3が入る立体空間をなしている。そのため、鼻3から吐き出された呼気が、突出部35の内側の立体空間から左右のポケット部50,50に抜けやすくなり、呼気がマスク10内にこもることをより効果的に防止することができ、暑苦しさを効果的に抑制することができる。
【0070】
また、各ポケット部50には、冷感材料又は発熱材料を含有するシート状物60が着脱可能に収容されるようになっている。すなわち、冷感材料又は発熱材料を含有するシート状物60を、ポケット部50に収容することにより、夏は冷感作用をもたらし、冬は保温作用をもたらすことができ、マスク10の着用感をより高めることができる。
【0071】
(マスクの第2実施形態)
以下、
図6を参照して、本発明に係るマスクの第2実施形態について説明する。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0072】
このマスク10Aは、切欠き部46の形状が、前記実施形態のマスク10の切欠き部45と異なっている。
【0073】
すなわち、この実施形態における切欠き部46は、マスク10Aの上下方向に、互いにほぼ平行に配置された底辺46a及び天井辺46bと、マスク10Aの左右方向に、互いにほぼ平行に配置された両側辺46c,46cとからなる、略四角形状の穴となっている。また、切欠き部46を形成する、底辺46a、天井辺46b、両側辺46c,46cの全ては、アウター生地30には接合されていない。
【0074】
そして、上記のような構造のマスク10Aにおいても、前記実施形態のマスク10と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(マスクの第3実施形態)
以下、
図7を参照して、本発明に係るマスクの第3実施形態について説明する。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0076】
このマスク10Bは、インナー生地40Bの構造が、前記実施形態のインナー生地40と異なっている。
【0077】
すなわち、この実施形態のインナー生地40Bは、略四角形状をなした板状片となっており、アウター生地30の裏面側の左右両側部に、それぞれ配置されている。また、一対のインナー生地40B,40Bのそれぞれは、その下辺47及び上辺48がアウター生地30に接合されている一方、両側辺49,49はアウター生地30に接合されていない構造となっている。その結果、各ポケット部50Bの外側端部に開口部51が設けられており、各ポケット部50Bの内側端部に開口部53が設けられている。
【0078】
なお、マスク10の長手方向中央部であって、マスク上方には、針金等からなる鼻固定部65が設けられており、マスク着用時の位置ずれを抑制可能となっている。
【0079】
そして、上記のような構造のマスク10Bにおいても、前記実施形態のマスク10,10Aと同様の効果を得ることができる。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【実施例0081】
(1)実施例1
図1~5に示すマスクと同様の、実施例1のマスクを製造した。
【0082】
アウター生地30は、3層構造となっている。外側の層は、ナイロン・ポリウレタンからなり、目付量が150g/m2である。中間の層は、ポリプロピレン・メルトブローン不織布であり、目付量は25g/m2である。裏側の層は、ポリエチレン100%で且つ冷感が付与されており、目付量は180g/m2である。これらの3つの層を積層して、超音波融着(超音波キルト)して、互いに固着した後、その外周を所定形状に裁断する。
【0083】
インナー生地40はポリエチレン100%からなり、その目付量は150g/m2である。また、インナー生地40の外周を、アウター生地30に適合する形状となるように裁断すると共に、且つ、インナー生地40の中央部を裁断して切欠き部45を形成する。
【0084】
インナー生地40をアウター生地30の裏側に配置して、両生地30,40を長手方向中央部で二つ折りにする。その後、重ね合わせたアウター生地30の中央部に、超音波加工を施して溶着し、折れ目部36を形成する。併せて両生地30,40の不要部分を切除する。そして、折れ目部36を介してアウター生地30を広げることで、立体形状をなした突出部35を形成する。
【0085】
その後、アウター生地30及びインナー生地40の対応する各辺を当接し、所定の接合部分を、縁取り部27を介して縫着することで、一対のポケット部50,50を形成する。更にマスク本体20の各側部に、耳掛け部25をそれぞれ連結する。
【0086】
また、10%の相転移材料を添加したジェル芯層に、熱可塑性ポリウレタンフィルムからなる薄膜被覆層を積層させて、冷感材料を含有したシート状物60を作成した。このシート状物60の厚さは2mmである。このシート状物60を各ポケット部50に収容することで、
図1~5に示すマスクと同様の実施例1のマスクを製造した。
【0087】
(a)実施例1の接触冷感試験
上記実施例1について、シート状物60が収容されたポケット部50での接触冷感、及び、シート状物60のない部分での接触冷感を、20℃の条件下でそれぞれ測定した。その結果を下記表1に示す。
【表1】
【0088】
その結果、シート状物60が収容されたポケット部50での接触冷感の方が、シート状物60のない部分の接触冷感よりも、接触冷感が高いことが確認できた。
【0089】
(b)実施例1の持続冷感試験
上記実施例1について、シート状物60が収容されたポケット部50での、冷感の持続性、及び、シート状物60のない部分での、冷感の持続性接を、それぞれ測定した。試験は、マスクを45℃に傾けた熱板に載置し、熱板を昇温させない状態での温度(開始時)、及び、熱板を所定温度に昇温させて10分後の温度を、それぞれ測定した。その結果を下記表2に示す。
【表2】
【0090】
その結果、シート状物60が収容されたポケット部50での冷感持続性の方が、シート状物60のない部分の冷感持続性よりも高いことが確認できた。
【0091】
(2)実施例2
図6に示すマスクと同様の、実施例2のマスクを、実施例1と同様の製造方法によって製造した。なお、シート状物60はポケット部50には収容していない。
【0092】
アウター生地30は、外側の層が、ポリエステル100%の層、中間の層が、ポリプロピレン100%のメルドブローンの層、裏側の層が、綿50%ナイロン50%の織物である。また、アウター生地30の目付量は、300g/m2である。
【0093】
インナー生地40は、ポリエチレン100%であり、目付量は、180g/m2である。また、インナー生地40の中央部に形成した略四角穴状の切欠き部46は、その幅Hが5mmで、高さTは5mmである。
【0094】
その後、アウター生地30及びインナー生地40の対応する各辺を当接し、所定の接合部分を、縁取り部27を介して縫着することで、
図6に示すマスクと同様の実施例2のマスクを製造した。
【0095】
(3)実施例3
図7に示すマスクと同様の、実施例3のマスクを製造した。
【0096】
アウター生地30は、4層構造となっている。最も外側の層は、ポリエステル100%で抗ウイルス加工を施したもので、目付量が200g/m2である。その内側の層は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなり、目付量は15g/m2である。その内側の層は、ポリプロピレンのスパンボンドの不織布であり、目付量は15g/m2である。最も内側の層は、遠赤外線のポリエステルニットであり、その目付量は200g/m2である。これらの4つの層を積層して、超音波融着(超音波キルト)して、互いに固着した後、その外周を所定形状に裁断する。
【0097】
インナー生地40はポリプロピレン100%からなり、その目付量は140g/m2である。それを四角形状に裁断し、アウター生地30の裏側両側部に配置し、その上下両辺をアウター生地30に縫着することで、一対のポケット部50B,50Bを作成した。
【0098】
また、鉄粉及びカルボキシメチルセルロースを有する発熱材料を含有する暖感シートであるシート状物60を各ポケット部50Bに収容することで、
図7に示すマスクと同様の実施例3を製造した。
【0099】
(a)実施例3の暖感試験
暖感シートであるシート状物60を各ポケット部50Bに収容した実施例3のマスクについて、所定時間の経過によるマスク表面の温度変化を測定した。試験時間は30分で、5分ごとに測定した。その結果を下記表3に示す。
【表3】
【0100】
その結果、マスク表面の温度は、15分経過した場合に最も高くなり、その後は徐々に低下することを確認できた。