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特開2022-129874測量用ターゲット及びトータルステーションによる測量方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129874
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】測量用ターゲット及びトータルステーションによる測量方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20220830BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 103A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028729
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591284601
【氏名又は名称】株式会社演算工房
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正嘉
(72)【発明者】
【氏名】西田 与志雄
(72)【発明者】
【氏名】近藤 高弘
(72)【発明者】
【氏名】川北 潤
(72)【発明者】
【氏名】林 稔
(72)【発明者】
【氏名】森口 晃行
(72)【発明者】
【氏名】松村 匡樹
(72)【発明者】
【氏名】土本 真史
(57)【要約】
【課題】様々な状況下における測量の盛り替えを効率よく行うことが可能になる測量用ターゲットを提供する。
【解決手段】2台のトータルステーションを使って測量を行う際に視準する測量用ターゲット1である。
そして、第1のトータルステーションに対して正対させる第1プリズム2Aと、第2のトータルステーションに対して正対させる第2プリズム2Bと、第1プリズムと第2プリズムとが同じ軸心周りで回動可能となるように取り付けられる軸部3とを備えている。
また、軸部を径方向に架け渡させる環状のリング部4と、リング部を周方向に回転可能に支持するとともに構造物Mに固定させるための固定部5とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台のトータルステーションを使って測量を行う際に視準する測量用ターゲットであって、
第1のトータルステーションに対して正対させる第1反射体と、
第2のトータルステーションに対して正対させる第2反射体と、
前記第1反射体と前記第2反射体とが同じ軸心周りで回動可能となるように取り付けられる軸部とを備えたことを特徴とする測量用ターゲット。
【請求項2】
前記第1反射体及び前記第2反射体がプリズムであって、プリズム定数が0となる位置が前記軸部の軸心となることを特徴とする請求項1に記載の測量用ターゲット。
【請求項3】
前記第1反射体及び前記第2反射体は、前記軸部に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の測量用ターゲット。
【請求項4】
前記軸部を径方向に架け渡させる環状のリング部と、
前記リング部を周方向に回転可能に支持するとともに構造物に固定させるための固定部とを備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測量用ターゲット。
【請求項5】
2台のトータルステーションを使って測量を行う際に視準する測量用ターゲットであって、
第1のトータルステーションに視準させるシート状の第1反射体と、
第2のトータルステーションに視準させるシート状の第2反射体と、
背面同士が対向するように重ねられた前記第1反射体及び前記第2反射体を支持する支持部とを備えたことを特徴とする測量用ターゲット。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の測量用ターゲットを使用したトータルステーションによる測量方法であって、
間隔を置いて設置された2台のトータルステーションの間に2個以上の前記測量用ターゲットを配置するステップと、
第1のトータルステーションによって2点以上の測量基準地点を測量することで前記第1のトータルステーションが設置された位置の座標を算出するステップと、
前記第1のトータルステーションによって前記2個以上の測量用ターゲットの前記第1反射体をそれぞれ視準して測量を行うステップと、
第2のトータルステーションによって前記2個以上の測量用ターゲットの前記第2反射体をそれぞれ視準して測量を行うステップと、
前記第2のトータルステーションが設置された位置の座標と前記2個以上の測量用ターゲットが設置された位置の座標とを算出するステップとを備えたことを特徴とするトータルステーションによる測量方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2台のトータルステーションを使って測量を行う際に視準する測量用ターゲット、及びそれを使用したトータルステーションによる測量方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2に開示されているように、光波距離計や、測距と測角を単一器械で行うことができるトータルステーションによる測量において、ターゲットとして使用される測量用のプリズムが知られている。このプリズムは、測量用のポールやピンポールなどに任意の高さとなるように取り付けられて、トータルステーションなどによって視準される。
【0003】
一方において、特許文献3に記載されているように、急曲線のトンネルでは、トンネル内の見通し可能な距離が短く、トータルステーションからターゲットを視準するために盛り替えを繰り返す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11‐83488号公報
【特許文献2】特開平7‐306045号公報
【特許文献3】特開平5‐340186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、盛り替え回数が多くなると、測量にかかる時間が増加して工期が長引く原因になるため、できるだけ簡単に盛り替えが行えるのが望ましい。また、特許文献3に記載されているようにウエッジプリズムを介在させる方法もあるが、ウエッジプリズムによってレーザ光を屈折させることができる角度は一定で、使用範囲が限定される。
【0006】
そこで、本発明は、様々な状況下における測量の盛り替えを効率よく行うことが可能になる測量用ターゲット、及びそれを使用したトータルステーションによる測量方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の測量用ターゲットは、2台のトータルステーションを使って測量を行う際に視準する測量用ターゲットであって、第1のトータルステーションに対して正対させる第1反射体と、第2のトータルステーションに対して正対させる第2反射体と、前記第1反射体と前記第2反射体とが同じ軸心周りで回動可能となるように取り付けられる軸部とを備えたことを特徴とする。
【0008】
ここで、前記第1反射体及び前記第2反射体がプリズムであって、プリズム定数が0となる位置が前記軸部の軸心となる構成とすることができる。また、前記第1反射体及び前記第2反射体は、前記軸部に沿って移動可能であることが好ましい。さらに、前記軸部を径方向に架け渡させる環状のリング部と、前記リング部を周方向に回転可能に支持するとともに構造物に固定させるための固定部とを備えている構成とすることができる。
【0009】
また、別の測量用ターゲットの発明は、2台のトータルステーションを使って測量を行う際に視準する測量用ターゲットであって、第1のトータルステーションに視準させるシート状の第1反射体と、第2のトータルステーションに視準させるシート状の第2反射体と、背面同士が対向するように重ねられた前記第1反射体及び前記第2反射体を支持する支持部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
そして、トータルステーションによる測量方法の発明は、上記いずれかに記載の測量用ターゲットを使用したトータルステーションによる測量方法であって、間隔を置いて設置された2台のトータルステーションの間に2個以上の前記測量用ターゲットを配置するステップと、第1のトータルステーションによって2点以上の測量基準地点を測量することで前記第1のトータルステーションが設置された位置の座標を算出するステップと、前記第1のトータルステーションによって前記2個以上の測量用ターゲットの前記第1反射体をそれぞれ視準して測量を行うステップと、第2のトータルステーションによって前記2個以上の測量用ターゲットの前記第2反射体をそれぞれ視準して測量を行うステップと、前記第2のトータルステーションが設置された位置の座標と前記2個以上の測量用ターゲットが設置された位置の座標とを算出するステップとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように構成された本発明の測量用ターゲットは、2台のトータルステーションを使って測量を行う際に視準する測量用ターゲットであって、第1のトータルステーションに対して正対させる第1反射体と、第2のトータルステーションに対して正対させる第2反射体とを備えている。そして、第1反射体と第2反射体は、同じ軸心周りで回動可能となるように軸部に取り付けられている。
【0012】
このため、任意の位置に2台のトータルステーションを設置しても、その間に配置された測量用ターゲットをそれぞれのトータルステーションから視準して精度の高い測量を行うことができる。また、従来のように1台目のトータルステーションで視準させたプリズムを反転させて2台目のトータルステーションに正対させる際に必要となる作業員が不要で、様々な状況下における測量や盛り替えを効率よく行うことができるようになる。
【0013】
また、トータルステーションによる測量方法の発明であれば、既知座標値を有する2点以上の測量基準地点を出発点として、見通しがきかない急曲線のトンネルの前方の測量などであっても、効率よく実施していくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態の測量用ターゲットの構成を説明する正面図である。
図2図1のA-A矢視方向で見た断面図である。
図3図1のB-B矢視方向で見た断面図である。
図4図1のC-C矢視方向で見た断面図である。
図5図2のD方向で見た説明図である。
図6】測量用ターゲットの主要部の組み立て方法を示した説明図である。
図7】測量用ターゲットの主要部の使用方法を例示した説明図である。
図8】測量用ターゲットの可動範囲を示した説明図である。
図9】2点の測量基準地点を利用した測量対象地点の測量方法を例示した説明図である。
図10】実施例1の測量用ターゲットの構成を説明する正面図である。
図11図10のE-E矢視方向で見た断面図である。
図12】実施例1の測量用ターゲットの可動範囲を示した図であって、(a)は側方から見た説明図、(b)は正面から見た説明図である。
図13】実施例1の測量用ターゲットの誤差について説明する図であって、(a)は誤差が大きくなる場合を示した説明図、(b)は誤差が小さくなる場合を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態の測量用ターゲット1の構成を説明する正面図である。また、図2図5は、測量用ターゲット1の詳細を説明するための断面図である。
【0016】
本実施の形態の測量用ターゲット1を視準するトータルステーションは、測距と測角とを行うことができる測量器械である。トータルステーションは、可視光半導体レーザ光源から出射される射出光(光波)を目標反射物に照射することにより、目標反射物までの距離計測、水平角測定及び高度角測定を行うことができる。
【0017】
トータルステーションは、整準を行うための整準部と、整準部に対して回転可能に設けられる架台と、架台に回転可能に取り付けられる望遠鏡部とを備えている。架台には、表示部を有する操作入力部が取り付けられ、表示部には測定対象物までの距離や角度の測定値などが表示される。
【0018】
そして、望遠鏡部は、水平軸を中心に回転可能となるように架台に取り付けられる。この望遠鏡部では、可視光半導体レーザ光源の射出光を合焦レンズにより集光調整して射出させ、プリズムなどの目標反射物で反射された反射光を対物レンズに入射させる。対物レンズにより集光される反射光は、受光素子に導かれて光電変換され電気信号となる。そして、この電気信号が、電気回路とマイクロコンピュータにより、増幅及び波形変換並びに処理されて距離計測値として出力される。
【0019】
要するに、本実施の形態の測量用ターゲット1を使って測量を行うトータルステーションは、公知の測量器械である。このトータルステーションの構成については、いずれの汎用の測量器械であっても使用することができる。
【0020】
一方、本実施の形態の測量用ターゲット1は、2台のトータルステーションを使って測量を行う際に視準するためのターゲットである。通常のターゲットは、トータルステーションで視準される一面にのみプリズムなどの反射体を備えており、別の場所に設置されたトータルステーションから視準する場合は、測点(測量対象地点)に設置されたターゲットの反射面を、作業員が別の場所に設置されたトータルステーションに対して正対するように回転させる必要がある。
【0021】
これに対して本実施の形態の測量用ターゲット1は、第1のトータルステーションに対して正対させる第1反射体となる第1プリズム2Aと、第2のトータルステーションに対して正対させる第2反射体となる第2プリズム2Bと、第1プリズム2Aと第2プリズム2Bとが同じ軸心周りで回動可能となるように取り付けられる軸部3とを備えている。
【0022】
この軸部3は、図1に示すように、環状のリング部4の径方向に架け渡される。リング部4は、図2図5に示すように平板な部材によって円形に形成されている。軸部3は、リング部4の円の中心を通るように配置されて、両方の端部が留め金具31によってリング部4に固定される。
【0023】
詳細には留め金具31は、図5に示すようにΩ状に形成されていて、リング部4と留め金具31との間に軸部3を挟んで、留め金具31の両端をビス311でリング部4に接合させる。このようにしてリング部4に固定された軸部3は、軸心周りに回転させることができる。
【0024】
さらにリング部4には、図1に示すように、固定部5が取り付けられる。固定部5は、測量用ターゲット1を壁や柱などの構造物Mに固定するための部材である。固定部5は、例えば構造物Mにねじ込まれるねじボルトの端部に連結部51を設けた構成とすることができる。
【0025】
固定部5の連結部51には、リング部4が周方向に回転可能となるように取り付けられる。例えば図4に示すように、板状の連結部51の本体に対してリング部4と留め板511とを順に重ね、留め板511の両端をビス512で連結部51の本体に接合させる。このようにして連結部51に支持されるリング部4は、連結部51の本体と留め板511との間で、リング部4を周方向(図4の紙面直交方向)にスライドさせることができる。
【0026】
このようにして固定部5に回転可能となるように支持されるリング部4に架け渡される軸部3には、図2及び図3に示すように、2つのプリズム(2A,2B)が取り付けられる。
【0027】
トータルステーションによる測量で視準するプリズムは、トータルステーションの望遠鏡部から出射された光波を反射させるガラス製の反射体である。プリズムには、入射した光を平行に反射光として戻すためのコーナーキューブリフレクタが組み込まれている。
【0028】
トータルステーションによる測量のターゲットとしてプリズムを使用する場合、プリズムの尖閣点21の位置が測量されることになる(図6図7参照)。この尖閣点21の位置は、プリズム定数が0となる位置で、測点に置かれるプリズムのピンポールの先端位置と尖閣点21の位置とにずれがあると、プリズム定数が0以外の数字になる。
【0029】
本実施の形態の軸部3に取り付けられる一対のプリズム(2A,2B)は、上述した汎用のプリズムと同様のもので、図6に示すように、プリズム定数が0となる尖閣点21の位置に、軸部3を通す穴が設けられている。すなわち、第1プリズム2Aと第2プリズム2Bは、軸部3の軸心周りで回動可能となるように軸部3に取り付けられる。
【0030】
また、軸部3に取り付けられる第1プリズム2A及び第2プリズム2Bの上下には、第1プリズム2A及び第2プリズム2Bの軸部3に沿った移動を制限するための固定具22が装着される。要するに、第1プリズム2A及び第2プリズム2Bは、軸部3に沿って移動可能であるが、図2に示すように所望する軸部3の位置に留める際に、固定具22が使用される。固定具22としては、ナット状の締結具や楔状のものなどが使用できる。
【0031】
このように軸部3の軸心周りに回転可能に取り付けられる第1プリズム2A及び第2プリズム2Bは、図7に示すように、それぞれの尖閣点21を中心に、任意の角度に向けることができる。すなわち、第1プリズム2Aは、第1のトータルステーションに対して正対させ、第2プリズム2Bは、第2のトータルステーションに対して正対させる。
【0032】
さらに、本実施の形態の測量用ターゲット1は、図8に示すように、固定部5に対して相対的に、リング部4を周方向に回転させることができる。第1プリズム2A及び第2プリズム2Bが軸部3の中央に位置している場合は、リング部4を回転させても位置は変わらない。しかしながら図7に示すような第1プリズム2A(第2プリズム2B)が傾いた状態であれば、リング部4を回転させることで、入射する光波の3次元的な角度に対応させることができる。
【0033】
さらに、第1プリズム2A及び第2プリズム2Bが軸部3の中央以外の位置に移動しているときは、リング部4を回すことで第1プリズム2A及び第2プリズム2Bの位置を変えることができる。
【0034】
次に、本実施の形態の測量用ターゲット1を使用した2台のトータルステーションによる測量方法について、図9を参照しながら説明する。
この例では、既知座標値を有する2点の測量基準地点BS1,BS2を使用して、トラバース測量を行う場合について説明する。
【0035】
1台目のトータルステーションTS1は、測量基準地点BS1,BS2が見通せる位置に設置される。また、2台目のトータルステーションTS2は、測量対象がある方向(例えばトンネル前方)に離れた位置に設置される。そして、2個の測量用ターゲット1,1が、2台のトータルステーションTS1,TS2の中間で、いずれのトータルステーションTS1,TS2からも視準可能な測量対象地点TG1,TG2に設置される。
【0036】
測量対象地点TG1,TG2にそれぞれ設置された測量用ターゲット1,1の第1プリズム2A,2Aは、いずれも1台目のトータルステーションTS1に正対させる。また、測量対象地点TG1,TG2にそれぞれ設置された測量用ターゲット1,1の第2プリズム2B,2Bは、いずれも2台目のトータルステーションTS2に正対させる。
【0037】
ここで、2台のトータルステーションTS1,TS2は、有線又は無線の通信手段によって測量用のパーソナルコンピュータ(PC部)に接続されており、このPC部では、トータルステーションTS1,TS2の測量結果を、随時、取得することができる。
【0038】
まず1台目のトータルステーションTS1と測量基準地点BS1,BS2とを使って、後方交会法による測量を行う。測量基準地点BS1,BS2に設置されるターゲットは、反射面が1面のみの汎用のプリズムでよい。
【0039】
後方交会法では、既知座標値を有する測量基準地点BS1,BS2をトータルステーションTS1で測量し、トータルステーションTS1から測量基準地点BS1,BS2までの水平距離と、トータルステーションTS1の設置位置を中心とした測量基準地点BS1,BS2間の夾角とを測定する。これらの測定値から、トータルステーションTS1の設置位置の座標値を算出することができる。
【0040】
さらに、設置位置の座標値が求められたトータルステーションTS1によって、2箇所の測量対象地点TG1,TG2に設置された測量用ターゲット1,1の第1プリズム2A,2Aを視準して、測量を行う。この測量結果は、PC部に送られる。
【0041】
一方、2台目のトータルステーションTS2においても、2点の測量対象地点TG1,TG2を使った後方交会法による測量が行われる。この測量結果もPC部に送られ、PC部に蓄積された測量対象地点TG1,TG2の座標値に基づいて、トータルステーションTS2の設置位置の座標値が算出されることになる。
【0042】
そして、設置位置の座標値が既知となった2台目のトータルステーションTS2によって、さらに前方の測量対象地点TG3,TG4の測量が行われることになる。こうした測量は、前方の目的とする測点に到達するまで繰り返される。
【0043】
次に、本実施の形態の測量用ターゲット1、及びそれを使用したトータルステーションによる測量方法の作用について説明する。
このように構成された本実施の形態の測量用ターゲット1は、2台のトータルステーションTS1,TS2を使って測量を行う際に視準する測量用ターゲット1であって、第1のトータルステーションTS1に対して正対させる第1プリズム2Aと、第2のトータルステーションTS2に対して正対させる第2プリズム2Bとを備えている。
【0044】
そして、第1プリズム2Aと第2プリズム2Bは、同じ軸心周りで回動可能となるように軸部3に取り付けられている。このため、任意の位置に2台のトータルステーションTS1,TS2を設置しても、図7に示すように、それぞれのトータルステーションTS1,TS2から出射される光波が真っすぐ入射されるような正対する向きに、第1プリズム2Aと第2プリズム2Bとをそれぞれ合わせることができる。
【0045】
この結果、トータルステーションTS1,TS2を正対させられないことによる誤差の発生を防いで、精度の高い測量を行うことができる。また、中間に配置された測量用ターゲット1をそれぞれのトータルステーションTS1,TS2から一度に視準して測量を行うことができる。
【0046】
要するに従来のように、1台目のトータルステーションTS1で視準させたプリズムを反転させて2台目のトータルステーションTS2に正対させる際に必要となるプリズムを反転させるための作業員が不要となる。また、見通し可能な距離が短い急曲線のトンネルなど、様々な状況下における測量や盛り替えを効率よく行うことができるようになる。
【0047】
さらに、第1プリズム2Aと第2プリズム2Bを、それぞれのプリズム定数が0となる尖閣点21の位置で軸部3に取り付けることによって、いずれのトータルステーションTS1,TS2の測量結果も、プリズム定数の補正を行うことなく使用することができる。ここで、第1プリズム2A及び第2プリズム2Bは、新たに製作しても、既製品であってもよく、既製品を利用する場合は、プリズム定数が0となる位置と軸部3の軸心とを一致させることができるように不要なものがあれば取り除くだけで、簡単に組み立てることができる。
【0048】
また、第1プリズム2A及び第2プリズム2Bが軸部3に沿って移動可能であれば、2台のトータルステーションTS1,TS2から視準可能な位置に第1プリズム2A及び第2プリズム2Bを容易に配置することができる。
【0049】
さらに、軸部3が周方向に回転可能なリング部4に架け渡されて構造物Mに固定されていれば、第1プリズム2A及び第2プリズム2Bの位置や向きを容易に変えることができるようになるので、様々な場所に設置されたトータルステーションTS1,TS2から視準させることが簡単にできる。
【0050】
また、本実施の形態のトータルステーションによる測量方法であれば、既知座標値を有する2点以上の測量基準地点BS1,BS2を出発点として、見通しがきかない急曲線のトンネルの前方の測量であっても、効率よく実施していくことができる。
【実施例0051】
以下、前記実施の形態で説明した測量用ターゲット1とは別の形態の実施例1の測量用ターゲット61について、図10図13を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一符号を用いて説明する。
【0052】
本実施例1で説明する測量用ターゲット61では、シート状の反射体を使用する。すなわち実施例1の測量用ターゲット61は、第1のトータルステーションに視準させる第1反射体となる第1反射シート62Aと、第2のトータルステーションに視準させる第2反射体となる第2反射シート62Bと、背面同士が対向するように重ねられた第1反射シート62A及び第2反射シート62Bを支持する支持部となるフレーム63とを備えている。
【0053】
反射シート(62A,62B)は、表面に光を正確に屈折させることができるプリズムが形成された薄膜状のシート材で、裏面は粘着面となっている。また、反射シート(62A,62B)の表面には、様々な視準パターンを印刷しておくことができる。このような反射シート(62A,62B)であれば、トータルステーションに正対させなくても、正確な距離を測定することができる。
【0054】
第1反射シート62Aと第2反射シート62Bとは、図11に示すように、直貼部620においては直接、背面の粘着面同士が貼り合わされる。そして、直貼部620の周縁部621では、フレーム63の板状の内縁部63aの両面に、第1反射シート62Aと第2反射シート62Bとがそれぞれ貼り付けられる。
【0055】
フレーム63は、図10及び図11に示すように、正面視長方形の枠状に形成されていて、中央の開口側に向けて内縁部63aが鍔状に張り出されている。フレーム63は、コ字状に形成された受材641に対して、回動軸631を介して回転自在に取り付けられる。
【0056】
受材641を先端に取り付けた支柱642は、ボールジョイント651を介して固定棒65に接続される。固定棒65は、例えばねじボルトになっていて、構造物Mにねじ込ませることで測量用ターゲット61を固定させることができる。
【0057】
このようにして構成された測量用ターゲット61は、図12に示すように、様々な姿勢に可動させることができる。図12(a)は、測量用ターゲット61を側方から見て可動範囲を説明する図である。
【0058】
まず、ボールジョイント651を動かすことによって、例えば前後方向にそれぞれ25.0°の角度で傾けることができる。また、回動軸631を中心にして、フレーム63を360°回転させることができる。さらに、支柱642を中心にして、受材641ごと360°回転させることもできる。
【0059】
一方、図12(b)は、測量用ターゲット61を正面から見て可動範囲を説明する図である。正面視では、ボールジョイント651を動かすことによって、例えば左右方向にそれぞれ25.0°の角度で傾けることができる。また、支柱642を中心にして、受材641ごと360°回転させることもできる。
【0060】
ここで、図13を参照しながら、反射シート(62A,62B)を使った場合の誤差について説明する。ここで、反射シート(62A,62B)としては、厚さ0.12mmのものを使用した例について説明する。
【0061】
図13(a)に示すように、第1反射シート62Aと第2反射シート62Bとを、厚さ4.0mmの鋼板によって形成された内縁部63aの両面にそれぞれ貼り付けた場合、第1のトータルステーションTS1の視準線と第2のトータルステーションTS2の視準線とのずれによる誤差は、4.24mmを基準にした誤差となる。これは例えば、周縁部621で測定したときの誤差といえる。
【0062】
一方、図13(b)に示すように、第1反射シート62Aと第2反射シート62Bとを直接、貼り合わせた直貼部620では、誤差は0.24mmを基準とした小さい値になる。トータルステーションの機械誤差は、通常、0.5mmから2mm程度とされているので、許容できる範囲と言える。
【0063】
このように構成された実施例1の測量用ターゲット61は、極めて簡単な構成ではあるが、様々な状況下で2台のトータルステーションTS1,TS2による測量に使用することで、測量や盛り替えを効率よく行っていくことができるようになる。
なお、実施例1のこの他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるため説明を省略する。
【0064】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0065】
例えば、前記実施の形態及び実施例1では特に説明しなかったが、トータルステーションが自動追尾式のトータルステーションで、測量用ターゲット1,61を自動追尾して測量させる構成であってもよい。
【0066】
また、前記実施の形態では、プリズム定数が0となる位置と軸部3の軸心とを一致させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、プリズム定数が0以外のプリズムを利用する場合でも、2つのプリズムのプリズム定数の起点となる位置と軸部3の軸心の位置とを一致させることで、本発明を適用することができるようになる。
【符号の説明】
【0067】
1 :測量用ターゲット
2A :第1プリズム(第1反射体)
2B :第2プリズム(第2反射体)
3 :軸部
4 :リング部
5 :固定部
21 :尖閣点(プリズム定数0)
61 :測量用ターゲット
62A :第1反射シート(第1反射体)
62B :第2反射シート(第2反射体)
63 :フレーム(支持部)
TS1 :第1のトータルステーション
TS2 :第2のトータルステーション
BS1 :測量基準地点
BS2 :測量基準地点
図1
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