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特開2022-129897描画装置、描画方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129897
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】描画装置、描画方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/02 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G03F9/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028763
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】坂本 道昭
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197AA29
2H197CA07
2H197CB11
2H197CC05
2H197CD12
2H197CD15
2H197CD17
2H197CD18
2H197CD35
2H197CD47
2H197DA04
2H197DA10
2H197DB11
2H197DC06
2H197DC08
2H197EB03
2H197EB10
2H197HA02
2H197HA03
2H197HA04
(57)【要約】
【課題】オートフォーカス動作に異常が発生して、描画領域における描画に影響が生じることを防止する。
【解決手段】描画装置のオートフォーカス機構5は、基板に垂直な方向において描画ヘッド31における基準位置と基板との間の離間距離を測定するとともに、離間距離に基づいて描画ヘッド31から出射される描画光の焦点位置を基板に合わせるオートフォーカス動作を行う。オートフォーカス制御部43は、ステージの走査方向への相対移動に並行して、オートフォーカス機構5にオートフォーカス動作を実行させるとともに、離間距離の測定位置が、基板上の非描画領域に含まれる所定領域に重なる際に、オートフォーカス動作をOFF状態とする。これにより、オートフォーカス動作に異常が発生して、描画領域における描画に影響が生じることを防止することができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンを描画する描画装置であって、
基板を保持するステージと、
前記ステージ上の基板に向けて変調された描画光を出射する描画ヘッドと、
前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に、かつ、前記基板に沿う走査方向に連続的に移動する移動機構と、
前記基板に垂直な方向において前記描画ヘッドにおける基準位置と前記基板との間の離間距離を測定するとともに、前記離間距離に基づいて前記描画ヘッドから出射される前記描画光の焦点位置を前記基板に合わせるオートフォーカス動作を行うオートフォーカス機構と、
前記ステージの前記走査方向への相対移動に並行して、前記オートフォーカス機構に前記オートフォーカス動作を実行させるとともに、前記離間距離の測定位置が、前記基板上の非描画領域に含まれる所定領域に重なる際に、前記オートフォーカス動作をOFF状態とするオートフォーカス制御部と、
を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置であって、
前記所定領域が、少なくともホール領域を含むことを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の描画装置であって、
前記基板に描画すべきパターン画像を示す設計データが準備されており、前記ステージの前記走査方向への相対移動により前記離間距離の測定位置が通過する前記基板上の経路に対応する前記パターン画像上のラインを設定し、前記ラインでのパターン領域と非パターン領域との切り替わりを示す切替データを生成する切替データ生成部をさらに備え、
前記オートフォーカス制御部が、前記切替データに従って前記オートフォーカス動作のON状態とOFF状態とを切り替えることを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の描画装置であって、
前記オートフォーカス機構が、前記基板に向けて検出光を出射するとともに前記基板からの前記検出光の反射光を受光して前記離間距離を測定する距離測定部を備え、
前記基板上における前記検出光のスポットの少なくとも一部が前記所定領域に重なっている間、前記オートフォーカス制御部が、前記オートフォーカス動作をOFF状態とすることを特徴とする描画装置。
【請求項5】
請求項4に記載の描画装置であって、
前記走査方向に垂直かつ前記基板に沿う幅方向、または/および、前記走査方向に関して、設計上の前記検出光のスポットの領域を設定値だけ広げた領域の少なくとも一部が前記所定領域に重なっている間、前記オートフォーカス制御部が、前記オートフォーカス動作をOFF状態とすることを特徴とする描画装置。
【請求項6】
描画装置を用いてパターンを描画する描画方法であって、
前記描画装置が、
基板を保持するステージと、
前記ステージ上の基板に向けて変調された描画光を出射する描画ヘッドと、
前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に、かつ、前記基板に沿う走査方向に連続的に移動する移動機構と、
前記基板に垂直な方向において前記描画ヘッドにおける基準位置と前記基板との間の離間距離を測定するとともに、前記離間距離に基づいて前記描画ヘッドから出射される前記描画光の焦点位置を前記基板に合わせるオートフォーカス動作を行うオートフォーカス機構と、
を備え、
前記描画方法が、
a)前記移動機構により前記ステージを前記走査方向に相対移動しつつ、前記描画ヘッドにより前記基板にパターンを描画する工程と、
b)前記a)工程に並行して、前記オートフォーカス機構に前記オートフォーカス動作を実行させるとともに、前記離間距離の測定位置が、前記基板上の非描画領域に含まれる所定領域に重なる際に、前記オートフォーカス動作をOFF状態とする工程と、
を備えることを特徴とする描画方法。
【請求項7】
描画装置を用いてパターンを描画するプログラムであって、
前記描画装置が、
基板を保持するステージと、
前記ステージ上の基板に向けて変調された描画光を出射する描画ヘッドと、
前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に、かつ、前記基板に沿う走査方向に連続的に移動する移動機構と、
前記基板に垂直な方向において前記描画ヘッドにおける基準位置と前記基板との間の離間距離を測定するとともに、前記離間距離に基づいて前記描画ヘッドから出射される前記描画光の焦点位置を前記基板に合わせるオートフォーカス動作を行うオートフォーカス機構と、
を備え、
前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、
a)前記移動機構により前記ステージを前記走査方向に相対移動しつつ、前記描画ヘッドにより前記基板にパターンを描画する工程と、
b)前記a)工程に並行して、前記オートフォーカス機構に前記オートフォーカス動作を実行させるとともに、前記離間距離の測定位置が、前記基板上の非描画領域に含まれる所定領域に重なる際に、前記オートフォーカス動作をOFF状態とする工程と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置、描画方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マスクを用いることなく、基板上の感光材料にパターンを描画する描画装置が実用化されている。描画装置では、描画ヘッドから出射される描画光の焦点位置を基板表面に合わせるオートフォーカス機構が用いられる。典型的なオートフォーカス機構では、基板表面にレーザ光を照射し、当該レーザ光の反射光を受光することで、基板の表面位置が測定される(例えば、特許文献1および2参照)。パターンの描画が行われる間、オートフォーカス機構を常時用いることにより、基板の厚さにばらつきがある場合や、基板が反っている場合等であっても、パターンを適切に描画することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-181132号公報
【特許文献2】特開2016-31502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリント配線基板等、ホール(長孔、ドリル孔等)が形成された基板にパターンを描画する場合、当該ホールでは、レーザ光の基板表面からの反射光が得られない。この場合、オートフォーカス機構が、基板の表面位置を誤検出して、描画光の焦点位置を基板表面から大きくずれた位置に配置することがある。すなわち、オートフォーカス動作に異常が発生する。通常、ホールの領域は描画が行われない非描画領域である。しかしながら、ホールにおいてオートフォーカス動作に異常が発生すると、当該ホールに隣接した描画領域において、描画光の焦点位置を基板表面に直ぐに合わせることができず、パターンを適切に描画することができなくなる。ホールが形成された基板のみならず、比較的大きな凹凸(例えば、高いパッド等)が形成された基板においても、上記問題は、同様に発生し得る。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、オートフォーカス動作に異常が発生して、描画領域における描画に影響が生じることを防止または抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、パターンを描画する描画装置であって、基板を保持するステージと、前記ステージ上の基板に向けて変調された描画光を出射する描画ヘッドと、前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に、かつ、前記基板に沿う走査方向に連続的に移動する移動機構と、前記基板に垂直な方向において前記描画ヘッドにおける基準位置と前記基板との間の離間距離を測定するとともに、前記離間距離に基づいて前記描画ヘッドから出射される前記描画光の焦点位置を前記基板に合わせるオートフォーカス動作を行うオートフォーカス機構と、前記ステージの前記走査方向への相対移動に並行して、前記オートフォーカス機構に前記オートフォーカス動作を実行させるとともに、前記離間距離の測定位置が、前記基板上の非描画領域に含まれる所定領域に重なる際に、前記オートフォーカス動作をOFF状態とするオートフォーカス制御部とを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の描画装置であって、前記所定領域が、少なくともホール領域を含む。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の描画装置であって、前記基板に描画すべきパターン画像を示す設計データが準備されており、前記ステージの前記走査方向への相対移動により前記離間距離の測定位置が通過する前記基板上の経路に対応する前記パターン画像上のラインを設定し、前記ラインでのパターン領域と非パターン領域との切り替わりを示す切替データを生成する切替データ生成部をさらに備え、前記オートフォーカス制御部が、前記切替データに従って前記オートフォーカス動作のON状態とOFF状態とを切り替える。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の描画装置であって、前記オートフォーカス機構が、前記基板に向けて検出光を出射するとともに前記基板からの前記検出光の反射光を受光して前記離間距離を測定する距離測定部を備え、前記基板上における前記検出光のスポットの少なくとも一部が前記所定領域に重なっている間、前記オートフォーカス制御部が、前記オートフォーカス動作をOFF状態とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の描画装置であって、前記走査方向に垂直かつ前記基板に沿う幅方向、または/および、前記走査方向に関して、設計上の前記検出光のスポットの領域を設定値だけ広げた領域の少なくとも一部が前記所定領域に重なっている間、前記オートフォーカス制御部が、前記オートフォーカス動作をOFF状態とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、描画装置を用いてパターンを描画する描画方法であって、前記描画装置が、基板を保持するステージと、前記ステージ上の基板に向けて変調された描画光を出射する描画ヘッドと、前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に、かつ、前記基板に沿う走査方向に連続的に移動する移動機構と、前記基板に垂直な方向において前記描画ヘッドにおける基準位置と前記基板との間の離間距離を測定するとともに、前記離間距離に基づいて前記描画ヘッドから出射される前記描画光の焦点位置を前記基板に合わせるオートフォーカス動作を行うオートフォーカス機構とを備え、前記描画方法が、a)前記移動機構により前記ステージを前記走査方向に相対移動しつつ、前記描画ヘッドにより前記基板にパターンを描画する工程と、b)前記a)工程に並行して、前記オートフォーカス機構に前記オートフォーカス動作を実行させるとともに、前記離間距離の測定位置が、前記基板上の非描画領域に含まれる所定領域に重なる際に、前記オートフォーカス動作をOFF状態とする工程とを備える。
【0012】
請求項7に記載の発明は、描画装置を用いてパターンを描画するプログラムであって、前記描画装置が、基板を保持するステージと、前記ステージ上の基板に向けて変調された描画光を出射する描画ヘッドと、前記ステージを前記描画ヘッドに対して相対的に、かつ、前記基板に沿う走査方向に連続的に移動する移動機構と、前記基板に垂直な方向において前記描画ヘッドにおける基準位置と前記基板との間の離間距離を測定するとともに、前記離間距離に基づいて前記描画ヘッドから出射される前記描画光の焦点位置を前記基板に合わせるオートフォーカス動作を行うオートフォーカス機構とを備え、前記プログラムのコンピュータによる実行は、前記コンピュータに、a)前記移動機構により前記ステージを前記走査方向に相対移動しつつ、前記描画ヘッドにより前記基板にパターンを描画する工程と、b)前記a)工程に並行して、前記オートフォーカス機構に前記オートフォーカス動作を実行させるとともに、前記離間距離の測定位置が、前記基板上の非描画領域に含まれる所定領域に重なる際に、前記オートフォーカス動作をOFF状態とする工程とを実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、オートフォーカス動作に異常が発生して、描画領域における描画に影響が生じることを防止または抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】描画装置の構成を示す斜視図である。
図2】描画ヘッドを示す斜視図である。
図3】複数の描画ヘッドによるパターンの描画を説明するための図である。
図4】描画ヘッドの一部を示す側面図である。
図5】コンピュータの構成を示す図である。
図6】制御部の機能構成を示すブロック図である。
図7】描画装置がパターンを描画する動作の流れを示す図である。
図8】基板の上面を示す図である。
図9A】基板の上面およびSRパターン画像を示す図である。
図9B】基板の上面およびSRパターン画像を示す図である。
図10A】SRパターン画像の一部を示す図である。
図10B】SRパターン画像の一部を示す図である。
図11A】SRパターン画像の一部を示す図である。
図11B】SRパターン画像の一部を示す図である。
図11C】SRパターン画像の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る描画装置1の構成を示す斜視図である。図1では、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向として矢印にて示している。図1に示す例では、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0016】
描画装置1は、空間変調された光を基板9上の感光材料に照射し、当該光の照射領域を基板9上にて走査することによりパターンの描画を行う直接描画装置である。基板9は、例えば、平面視において略矩形状の板状部材である。基板9は、例えば、可撓性を有するプリント配線基板である。本実施の形態では、基板9の主面(後述の上面91)に、回路パターンが既に形成されており、感光材料であるソルダーレジストの膜が、当該主面の略全体を覆うように設けられている。描画装置1では、基板9のソルダーレジスト膜にソルダーレジスト層のパターンが描画される。後工程では、現像等の処理が行われ、回路パターン上にソルダーレジスト層が形成された基板9が得られる。なお、基板9上の感光材料の膜は、ソルダーレジスト膜には限定されず、例えば、回路パターンの形成において利用されるレジスト膜であってもよい。
【0017】
描画装置1は、ステージ21と、ステージ移動機構22と、描画部3と、制御部4と、オートフォーカス機構5(後述の図4参照)とを備える。制御部4は、ステージ移動機構22、描画部3およびオートフォーカス機構5等を制御する。ステージ21は、描画部3の下方(すなわち、(-Z)側)において、水平状態の基板9を下側から保持する略平板状の保持部である。ステージ21上に載置された基板9の(+Z)側の主面(以下、「上面91」と呼ぶ。)は、Z方向に対して略垂直であり、X方向およびY方向に略平行である。ステージ21は、基板9の外縁を把持するもの等であってもよい。
【0018】
ステージ移動機構22は、支持プレート23と、ベースプレート24と、基台25と、回動機構26と、主走査機構27と、副走査機構28とを備える。支持プレート23は、ステージ21を下方から支持する。回動機構26は、例えば、リニアモータと、回動軸とを有する。リニアモータは、ステージ21の端部に取り付けられた可動子と、支持プレート23の上面に設けられた固定子とを有する。回動軸は、Z方向に略平行であり、ステージ21の下面の中央部に設けられる。当該リニアモータの駆動により、ステージ21が当該回動軸を中心として所定の角度範囲内で回動する。
【0019】
副走査機構28は、例えば、リニアモータと、一対のガイド部とを有する。リニアモータは、支持プレート23の下面に取り付けられた可動子と、ベースプレート24の上面に設けられた固定子とを有する。一対のガイド部は、X方向に延びており、支持プレート23とベースプレート24との間に設けられる。当該リニアモータの駆動により、支持プレート23がベースプレート24上のガイド部に沿ってX方向に移動する。
【0020】
主走査機構27は、例えば、リニアモータと、一対のガイド部とを有する。リニアモータは、ベースプレート24の下面に取り付けられた可動子と、基台25の上面に設けられた固定子とを有する。一対のガイド部は、Y方向に延びており、ベースプレート24と基台25との間に設けられる。当該リニアモータの駆動により、ベースプレート24が基台25上のガイド部に沿ってY方向に移動する。換言すると、主走査機構27は、基板9の上面91に沿うY方向に、基板9およびステージ21を移動する。以下の説明では、Y方向を「走査方向」といい、走査方向に垂直かつ基板9の上面91に沿うX方向を「幅方向」という。回動機構26、副走査機構28および主走査機構27の駆動源は、リニアモータ以外であってもよく、例えば、ボールねじにモータを取り付けたものが用いられてもよい。ステージ移動機構22では、ステージ21をZ方向に昇降させるステージ昇降機構が設けられてもよい。また、回動機構26が省略されてもよい。
【0021】
描画部3は、幅方向に配列される複数の描画ヘッド31を備える。本実施の形態では、描画ヘッド31の個数は、5であるが、4個以下、または、6個以上であってもよい。複数の描画ヘッド31は、ステージ21を跨いで設けられるヘッド支持部19により、ステージ21の上方にて支持される。
【0022】
図2は、1つの描画ヘッド31を示す斜視図である。複数の描画ヘッド31は、略同じ構造を有する。各描画ヘッド31には、光源部36および照明光学系37が接続される。光源部36は、例えばLED等の光源を有し、所定波長の光を出射する。光源部36は、他の種類の光源を有してもよい。照明光学系37は、例えば、ロッドインテグレーターおよびレンズ等を有する。光源部36から出射された光は、照明光学系37を介して描画ヘッド31に導かれる。
【0023】
描画ヘッド31は、光変調部32と、投影光学系33とを備える。光変調部32は、例えば、複数の微小ミラーが二次元に配列されたDMD(デジタルミラーデバイス)である。照明光学系37からの光は、光変調部32における複数の光変調素子(ここでは、複数の微小ミラー)に照射される。各光変調素子では、投影光学系33に向かって光を反射する姿勢(ON状態)と、投影光学系33とは異なる方向に光を反射する姿勢(OFF状態)とが、制御部4の制御により切替可能である。光変調部32に照射された光のうち、ON状態である光変調素子にて反射された光が投影光学系33に入射する。すなわち、光変調部32から空間変調された光が、投影光学系33に向かって出射される。投影光学系33は、当該光を所定の倍率に変倍し、基板9の上面91に照射する。上面91には、光変調部32の像が投影(形成)される。以下の説明では、各描画ヘッド31から基板9に向けて出射される変調された光を「描画光」という。なお、光変調部32は、複数の光変調素子が一次元に配列された変調器等であってもよい。
【0024】
図3は、複数の描画ヘッド31による基板9に対するパターンの描画を説明するための図である。パターンの描画では、まず、図1の主走査機構27により、ステージ21が(+Y)側から(-Y)方向に連続的に移動(主走査)する。これにより、図3に示すように、各描画ヘッド31から出射される描画光の照射領域A1(平行斜線を付す矩形にて示す。)が、基板9の上面91を(-Y)側から(+Y)方向に移動し、上面91において走査方向に延びる帯状領域R1にパターンが描画される。このとき、幅方向(X方向)において、複数の描画ヘッド31の照射領域A1の間には隙間が設けられており、複数の帯状領域R1の間にも隙間が設けられる。照射領域A1が、基板9の(+Y)側の端部まで到達すると、副走査機構28により、ステージ21が(-X)方向に所定の距離だけ移動(副走査)する。典型的には、幅方向におけるステージ21の移動距離は、帯状領域R1の幅と同じ、または、当該幅よりも僅かに小さい(以下同様)。
【0025】
続いて、ステージ21が(-Y)側から(+Y)方向に連続的に移動し、描画光の照射領域A1が上面91上を(+Y)側から(-Y)方向に移動する。これにより、各帯状領域R1に対して(+X)側に接するとともに、走査方向に延びる帯状領域R2にパターンが描画される。帯状領域R2は、帯状領域R1と部分的に重なっていてもよい。照射領域A1が、基板9の(-Y)側の端部まで到達すると、副走査機構28により、ステージ21が(-X)方向に所定の距離だけ移動する。
【0026】
その後、ステージ21が(+Y)側から(-Y)方向に連続的に移動し、描画光の照射領域A1が上面91上を(-Y)側から(+Y)方向に移動する。これにより、各帯状領域R2に対して(+X)側に接するとともに、走査方向に延びる帯状領域R3にパターンが描画される。最も(+X)側の帯状領域R3を除く各帯状領域R3は、(+X)側に位置する帯状領域R1とも接する。帯状領域R3は、帯状領域R1,R2と部分的に重なっていてもよい。以上の動作により、上面91における描画対象領域の全体に、パターンが描画される。本実施の形態では、ステージ21が描画ヘッド31に対して走査方向への連続的な相対移動(以下、単に「ステージ21の主走査」という。)を3回行うことにより、上面91に対するパターンの描画が完了する。
【0027】
描画装置1では、ステージ21の主走査を2回、または、4回以上行うことにより、描画対象領域の全体に対してパターンが描画されてもよい。また、1回のステージ21の主走査により、パターンの描画が完了してもよい。この場合、副走査機構28が省略されてもよい。さらに、照射領域A1の走査方向への移動は、描画ヘッド31が移動することにより実現されてもよい。照射領域A1の幅方向への移動について同様である。もちろん、ステージ21および描画ヘッド31の双方が移動してもよい。
【0028】
図4は、描画ヘッド31の一部を示す側面図である。各描画ヘッド31には、オートフォーカス機構5が設けられる。オートフォーカス機構5は、距離測定部51と、昇降機構52と、図示省略の演算部とを備える。距離測定部51は、照射部511と、受光部512とを備える。図4の例では、照射部511および受光部512は、取付具513を介して投影光学系33の鏡筒に取り付けられる。照射部511は、レーザ光である検出光の光源を有し、基板9の上面91に向けて検出光を出射する。検出光は、基板9に垂直なZ方向に対して傾斜した軸に沿って上面91に導かれ、上面91に検出光のスポットが形成される。
【0029】
受光部512は、例えば、およそZ方向に延びるラインセンサ(ポジションセンサ)を有する。受光部512では、基板9からの検出光の反射光が、当該ラインセンサにて受光される。当該ラインセンサ上において、当該反射光の受光位置が所定位置からずれることにより、Z方向において、描画ヘッド31における基準位置と基板9の上面91(正確には、ソルダレジスト膜の表面)との間の離間距離D1の変動が検出される。すなわち、離間距離D1が実質的に測定される。離間距離D1の測定値(所定位置からのずれ量を示す値であってもよい。)は、演算部に出力される。描画ヘッド31の基準位置は、照射部511および受光部512に対して固定された位置であり、例えば、投影光学系33の下端である。以下の説明では、検出光が照射される上面91上の位置M1、すなわち、検出光のスポットの中心位置M1を「測定位置M1」という。測定位置M1は、投影光学系33の光軸J1近傍に位置する。
【0030】
昇降機構52は、投影光学系33の鏡筒に取り付けられた移動体と、ヘッド支持部19に取り付けられた固定体とを有する。離間距離D1の測定値に基づく演算部の制御により、昇降機構52が移動体と共に投影光学系33をZ方向に移動し、受光部512のラインセンサ上において、検出光の反射光の受光位置が所定位置へと戻される。これにより、光変調部32の像が基板9の上面91(正確には、ソルダレジスト膜の表面)に形成される。すなわち、描画光の焦点位置が基板9の上面91に合わせられる。昇降機構52の一例は、ボールねじをモータにて駆動する機構と、移動体をZ方向にガイドする機構とを組み合わせたものである。昇降機構52の駆動源として、リニアモータ等が用いられてもよい。
【0031】
以上のように、各描画ヘッド31に設けられるオートフォーカス機構5では、離間距離D1を測定するとともに、離間距離D1に基づいて描画光の焦点位置を基板9に合わせるオートフォーカス動作が行われる。距離測定部51では、検出光を用いない手法により(例えば、超音波等を利用して)、離間距離D1が測定されてもよい。図4の例では、昇降機構52により、描画ヘッド31の一部の構成がZ方向に移動するが、描画ヘッド31の全体がZ方向に移動してもよい。また、1つの描画ヘッド31のみが設けられる場合には、ステージ21がZ方向に移動してもよい。
【0032】
図5は、コンピュータ11の構成を示す図である。コンピュータ11は、各種演算処理を行うCPU111と、基本プログラムを記憶するROM112と、各種情報を記憶するRAM113とを含む一般的なコンピュータシステムの構成となっている。コンピュータ11は、情報記憶を行う固定ディスク114と、各種情報の表示を行う表示部115と、入力部116として操作者からの入力を受け付けるキーボード116aおよびマウス116bと、光ディスク、磁気ディスク、光磁気ディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体12から情報の読み取りを行ったり記録媒体12に情報の書き込みを行う読取/書込装置118と、描画装置1の各構成と通信を行う通信部119とをさらに含む。
【0033】
コンピュータ11では、事前に読取/書込装置118を介して記録媒体12からプログラム120が読み出され、固定ディスク114に記憶されている。プログラム120はネットワークを介して固定ディスク114に記憶されてもよい。CPU111がRAM113および固定ディスク114を利用しつつプログラム120に従って演算処理を実行することにより(すなわち、コンピュータがプログラムを実行することにより)、コンピュータ11が、図1の描画装置1における制御部4として機能する。制御部4は、専用の電気回路により構築されてもよく、部分的に専用の電気回路が利用されてもよい。制御部4は、複数のコンピュータが協働して実現されてもよく、この場合に、当該複数のコンピュータが互いに離れた位置に設けられてもよい。
【0034】
図6は、コンピュータ11により実現される制御部4の機能構成を示すブロック図である。図6では、制御部4以外の構成も併せて示す。制御部4は、記憶部41と、切替データ生成部42と、オートフォーカス制御部43と、描画制御部44とを備える。記憶部41は、主にRAM113および固定ディスク114により実現され、設計データ等の各種情報を記憶する。設計データは、基板9に描画すべきパターン画像を示す。切替データ生成部42、オートフォーカス制御部43および描画制御部44は、主にCPU111により実現される。切替データ生成部42は、後述の切替データを生成する。オートフォーカス制御部43は、切替データに従ってオートフォーカス機構5におけるオートフォーカス動作のON状態とOFF状態とを切り替える。描画制御部44は、ステージ移動機構22および描画ヘッド31等を制御することにより、基板9に対する描画を実行させる。
【0035】
図7は、描画装置1がパターンを描画する動作の流れを示す図である。描画装置1がパターンを描画する際には、まず、基板9に描画すべきパターン画像を示す設計データが、記憶部41に記憶されて準備される(ステップS11)。設計データは、例えば、CAD(Computer-Aided Design)データであり、ベクトルデータである。設計データは、ラスタデータであってもよい。
【0036】
図8は、ステージ21上に載置された基板9(処理対象の基板9)の上面91を示す図である。既述のように、基板9の上面91には回路パターンが既に形成されている。図8では、回路パターンが形成された領域911を矩形にて示している。上記設計データが示すパターン画像は、基板9上に形成されるべきソルダーレジスト層のパターンを示す。以下、当該パターン画像を「SRパターン画像」という。実際には、基板9には、上面91の略全体を覆うソルダーレジスト膜が設けられているが、図8では、ソルダーレジスト膜の図示を省略している。
【0037】
図9Aおよび図9Bは、基板9の上面91の一部、および、SRパターン画像8の一部を示す図である。図9Aの左側は、図8の上面91において細線にて囲む領域912に含まれる回路パターンを示し、図9Aの右側は、領域912に対応するSRパターン画像8の領域を示す。図9Bの左側は、図8の上面91において細線にて囲む領域913に含まれる回路パターンを示し、図9Bの右側は、領域913に対応するSRパターン画像8の領域を示す。既述のように、SRパターン画像8は、基板9の上面91に描画すべきパターンを示す。したがって、「上面91の一の領域に対応するSRパターン画像8の領域」は、上面91にSRパターン画像8を重ね合わせた際に、当該一の領域と重なるSRパターン画像8の領域を意味する。
【0038】
図9Aおよび図9Bの左側では、上面91上のホール領域921(一部のホール領域に符号921a~921dを付している。)およびパッド領域922(一部のパッド領域に符号922a,922bを付している。)に平行斜線を付している。図9Aおよび図9Bの右側では、SRパターン画像8における非パターン領域81に平行斜線を付している。非パターン領域81は、上面91(のソルダーレジスト膜)の非描画領域、すなわち、ソルダーレジスト層が形成されない領域を示す。図9Aおよび図9Bに示すように、上面91上のホール領域921およびパッド領域922に対応するSRパターン画像8の領域は、非パターン領域81である。一方、上面91上のホール領域921およびパッド領域922に対応しないSRパターン画像8の領域(すなわち、SRパターン画像8において、ホール領域921およびパッド領域922に対応する領域以外の領域)の大部分は、パターン領域82である。パターン領域82は、上面91の描画領域(描画ヘッド31からの光が照射される領域)、すなわち、ソルダーレジスト層が形成される領域を示す。典型的には、上面91上の配線領域等に対応するSRパターン画像8の領域は、パターン領域82に含まれる。
【0039】
本実施の形態では、既述のように、ステージ21が描画ヘッド31に対して走査方向への連続的な相対移動(すなわち、ステージ21の主走査)を3回行うことにより、上面91に対するパターンの描画が完了する。切替データ生成部42では、ステージ21の主走査において、各描画ヘッド31の距離測定部51の測定位置M1(図4参照)が通過する基板9上の経路が求められる。図8では、1回目のステージ21の主走査において測定位置M1が通過する経路K1、2回目のステージ21の主走査において測定位置M1が通過する経路K2、および、3回目のステージ21の主走査において測定位置M1が通過する経路K3を破線にて示している。本実施の形態では、経路K1,K3は、(-Y)側から(+Y)側に向かい、経路K2は、(+Y)側から(-Y)側に向かう。なお、複数の描画装置1において切替データ生成部42が共有されてもよく、この場合、対象となる描画装置1の機種に合わせて経路が求められる。
【0040】
続いて、切替データ生成部42では、SRパターン画像8において、各経路K1~K3に対応するラインが設定される。図8、並びに、図9Aおよび図9Bの左側に示すように、上面91の領域912,913は、経路K2に重なっており、図9Aおよび図9Bの右側に示すSRパターン画像8では、経路K2に対応するラインL2(破線にて示す。)が設定される。図9Aおよび図9Bの右側では、基板9上の走査方向に対応する縦方向に、ラインL2が延びる。SRパターン画像8において、ラインL2に沿う方向の各位置は、走査方向における基板9上の位置を示す。
【0041】
切替データ生成部42では、SRパターン画像8において、各ラインでのパターン領域82と非パターン領域81との切り替わりを示す切替データが生成される(ステップS12)。具体的に、図9Aの右側の例では、図の上側から下側に向かってラインL2上を見た場合、点P11にてパターン領域82から非パターン領域81に切り替わり、点P12にて非パターン領域81からパターン領域82に切り替わる。また、点P13にてパターン領域82から非パターン領域81に切り替わり、点P14にて非パターン領域81からパターン領域82に切り替わる。さらに、点P15にてパターン領域82から非パターン領域81に切り替わり、点P16にて非パターン領域81からパターン領域82に切り替わる。図9Aの右側の例では、各点P11~P16の位置と、当該点P11~P16において非パターン領域81またはパターン領域82のいずれに切り替わるかを示す切替データが生成される。図9Aでは、点P11,P12は、パッド領域922aの(+Y)側および(-Y)側の端部(経路K2上の端部である。以下同様。)に対応する。点P13,P14は、ホール領域921aの(+Y)側および(-Y)側の端部に対応し、点P15,P16は、ホール領域921bの(+Y)側および(-Y)側の端部に対応する。
【0042】
同様に、図9Bの右側の例では、図の上側から下側に向かってラインL2上を見た場合、点P21にてパターン領域82から非パターン領域81に切り替わり、点P22にて非パターン領域81からパターン領域82に切り替わる。また、点P23にてパターン領域82から非パターン領域81に切り替わり、点P24にて非パターン領域81からパターン領域82に切り替わる。さらに、点P25にてパターン領域82から非パターン領域81に切り替わり、点P26にて非パターン領域81からパターン領域82に切り替わる。図9Bの右側の例では、各点P21~P26の位置と、当該点P21~P26において非パターン領域81またはパターン領域82のいずれに切り替わるかを示す切替データが生成される。図9Bでは、点P21,P22は、パッド領域922bの(+Y)側および(-Y)側の端部(経路K2上の端部)に対応する。点P23,P24は、ホール領域921cの(+Y)側および(-Y)側の端部に対応し、点P25,P26は、ホール領域921dの(+Y)側および(-Y)側の端部に対応する。
【0043】
既述のように、ラインL2に沿う方向の各位置は、走査方向における基板9上の位置を示す。また、後述するように、オートフォーカス制御部43によるオートフォーカス機構5の制御では、パターン領域82から非パターン領域81に切り替わる位置は、オートフォーカス動作をOFF状態にする位置を示す。非パターン領域81からパターン領域82に切り替わる位置は、オートフォーカス動作をON状態にする位置を示す。したがって、図9Aの右側の例において生成される切替データは、各点P11~P16に対応する基板9上の走査方向の位置と、当該点P11~P16においてオートフォーカス動作をOFF状態にする、または、ON状態にすることを指示するデータとなる。図9Bの右側の例において生成される切替データは、各点P21~P26に対応する基板9上の走査方向の位置と、当該点P21~P26においてオートフォーカス動作をOFF状態にする、または、ON状態にすることを指示するデータとなる。
【0044】
切替データが生成されると、描画制御部44の制御により、ステージ21が描画ヘッド31に対して相対的に、かつ、走査方向に連続的に移動するとともに、これに並行して、複数の描画ヘッド31からステージ21上の基板9に向けて変調された描画光が出射される。これにより、基板9にパターンが描画される(ステップS13)。典型的には、制御部4では、SRパターン画像8を示す設計データから制御用の描画データが生成され、描画データに従って各描画ヘッド31が制御される。図3を参照して説明したように、本実施の形態では、走査方向へのステージ21の連続移動(ステージ21の主走査)が3回行われる。なお、描画データは、ステージ21上の基板9の変形に応じて補正されてもよい。
【0045】
また、オートフォーカス制御部43は、パターンの描画におけるステージ21の主走査に並行して、オートフォーカス機構5にオートフォーカス動作を実行させる(ステップS14)。このとき、切替データに従ってオートフォーカス動作のON状態とOFF状態とが切り替えられる。したがって、距離測定部51の測定位置M1が、基板9上の経路K2を(+Y)側から(-Y)側に向かって移動する図9Aの左側の例では、測定位置M1がパッド領域922aの(+Y)側の端部へと到達する時に、オートフォーカス動作がOFF状態とされ、測定位置M1がパッド領域922aの(-Y)側の端部へと到達する時に、オートフォーカス動作がON状態とされる。また、測定位置M1がホール領域921aの(+Y)側の端部へと到達する時に、オートフォーカス動作がOFF状態とされ、測定位置M1がホール領域921aの(-Y)側の端部へと到達する時に、オートフォーカス動作がON状態とされる。さらに、測定位置M1がホール領域921bの(+Y)側の端部へと到達する時に、オートフォーカス動作がOFF状態とされ、測定位置M1がホール領域921bの(-Y)側の端部へと到達する時に、オートフォーカス動作がON状態とされる。
【0046】
以上のように、図9Aの左側の例では、オートフォーカス動作を実行しつつ、離間距離D1の測定位置M1が、基板9上の非描画領域に含まれるパッド領域922aおよびホール領域921a,921bに重なる際に、オートフォーカス動作がOFF状態とされる。図9Bの左側の例も、同様であり、オートフォーカス動作を実行しつつ、離間距離D1の測定位置M1が、基板9上の非描画領域に含まれるパッド領域922bおよびホール領域921c,921dに重なる際に、オートフォーカス動作がOFF状態とされる。上面91における描画対象領域の全体に、パターンが描画されると、描画装置1におけるパターンの描画が完了する。
【0047】
ここで、ステージ21の主走査に並行して、オートフォーカス動作を常時ON状態とする比較例の描画装置について述べる。比較例の描画装置では、離間距離D1の測定位置M1が、基板9上のホール領域に重なる際に、受光部512にて検出光の反射光を適切に受光することができない。この場合に、離間距離D1が検出可能範囲を超えていると判定され(離間距離D1を誤検出して)、オートフォーカス機構5が、描画光の焦点位置を基板9の上面91から大きくずれた位置に配置することがある。すなわち、オートフォーカス動作に異常が発生する。その結果、非描画領域である当該ホール領域を通過した直後の描画領域において、描画光の焦点位置を上面91に直ぐに合わせることができず、パターンを適切に描画することができなくなる。離間距離D1の測定位置M1が、基板9上のパッド領域に重なる際にも、同様に、オートフォーカス動作に異常が発生することがある。
【0048】
比較例の描画装置において、離間距離D1が検出可能範囲を超えていると判定される場合に、描画光の焦点位置をずらす量を制限することにより、オートフォーカス動作の上記異常の発生を防止することも考えられるが、この場合、オートフォーカス動作が基板9の大きな反りに追従できなくなる。このように、比較例の描画装置では、オートフォーカス動作を基板9の大きな反りに追従させることと、ホール領域等におけるオートフォーカス動作の異常の発生を防止することとを両立することは困難である。
【0049】
これに対し、描画装置1のオートフォーカス制御部43は、ステージ21の走査方向への相対移動に並行して、オートフォーカス機構5にオートフォーカス動作を実行させるとともに、離間距離D1の測定位置M1が、基板9上の非描画領域に含まれる所定領域に重なる際に、オートフォーカス動作をOFF状態とする。これにより、当該所定領域においてオートフォーカス動作に異常が発生して、描画領域における描画に影響が生じることを防止または抑制することができる。描画装置1では、オートフォーカス動作を基板9の大きな反りに追従させることも可能である。
【0050】
離間距離D1の誤検出は、測定位置M1がホール領域に重なる際に生じやすいため、描画装置1では、測定位置M1がホール領域に重なる際にのみ、オートフォーカス動作がOFF状態とされてもよい。換言すると、オートフォーカス動作をOFF状態とする上記所定領域は、少なくともホール領域を含むことが好ましい。これにより、ホール領域においてオートフォーカス動作に異常が発生して、描画領域における描画に影響が生じることを防止または抑制することができる。
【0051】
ところで、測定位置M1がホール領域に重なる際にのみ、オートフォーカス動作をOFF状態とするには、基板9上のホール領域のみを示す画像データ等が必要となる。しかしながら、回路パターンの設計データには様々な情報が含まれており、ホール領域のみを示すデータを準備することは容易ではない。操作者が、基板9を撮像した画像において、基板9上におけるホール領域の位置および範囲を入力することも可能であるが、煩雑な作業が必要となる。
【0052】
これに対し、描画装置1では、ソルダーレジスト層のパターン画像(SRパターン画像8)を示す設計データが準備される。切替データ生成部42では、ステージ21の走査方向への相対移動により測定位置M1が通過する基板9上の経路に対応するSRパターン画像8上のラインが設定され、当該ラインでのパターン領域82と非パターン領域81との切り替わりを示す切替データが生成される。オートフォーカス制御部43では、切替データに従ってオートフォーカス動作のON状態とOFF状態とが切り替えられる。SRパターン画像8では、全てのホール領域が非パターン領域81に含められるため、SRパターン画像8(設計データ)から切替データを生成することにより、測定位置M1がホール領域に重なる際にオートフォーカス動作をOFF状態とすることが、より確実に、かつ、容易に実現可能となる。
【0053】
既述のように、描画装置1の用途は、ソルダーレジスト層のパターンの描画には限定されない。すなわち、設計データは、SRパターン画像8以外のパターン(回路パターン等)を示すものであってもよい。この場合も、設計データから切替データを生成することにより、測定位置M1が描画領域に重なる際にオートフォーカス動作をON状態とし、測定位置M1が非描画領域に重なる際にオートフォーカス動作をOFF状態とする制御を、精度よく行うことができる。描画装置1では、基板9上においてオートフォーカス動作をOFF状態とする領域を操作者が入力する等、設計データを用いない手法も除外されない。
【0054】
次に、好ましい切替データを生成する手法について説明する。図10Aおよび図10Bは、SRパターン画像の一部を示す図である。図10Aおよび図10Bに示す非パターン領域81は、基板9上の1つのホール領域に対応する(後述の図11Aないし図11Cにおいて同様)。本処理例では、切替データの生成において、ラインL2に沿って、パターン領域82から非パターン領域81に切り替わる点、および、非パターン領域81からパターン領域82に切り替わる点を検出する際に、検出光のスポットの大きさ(径)が考慮される。
【0055】
具体的には、切替データ生成部42では、基板9上における検出光のスポットの大きさ(設計上の大きさ)が予め設定される。SRパターン画像上において当該スポットに対応する領域M20(以下、「スポット領域M20」という。)を、ラインL2に沿って図の上側から下側に向かって移動する場合に、スポット領域M20の外縁の下側が非パターン領域81に接する際におけるスポット領域M20の中心の位置P31が、オートフォーカス動作をON状態からOFF状態にする位置として特定される。また、スポット領域M20の全部が非パターン領域81と重ならなくなる(スポット領域M20の外縁の上側が非パターン領域81に接する)際におけるスポット領域M20の中心の位置P32が、オートフォーカス動作をOFF状態からON状態にする位置として特定される。このようにして、切替データが生成される。
【0056】
ラインL2が非パターン領域81の略中央を通過する図10Aの例と、ラインL2が非パターン領域81の中央から右側にずれた位置を通過する図10Bの例とを比較した場合、図10Bの例では、オートフォーカス動作をOFF状態にする位置P31が図10Aの例よりも下側にずれる。実際のパターンの描画では、オートフォーカス動作をOFF状態にする位置が(-Y)側にずれる(OFF状態にするタイミングが遅くなる)。同様に、図10Bの例では、オートフォーカス動作をON状態にする位置P32が図10Aの例よりも上側にずれており、実際のパターンの描画では、オートフォーカス動作をON状態にする位置が(+Y)側にずれる(ON状態にするタイミングが早くなる)。本処理例では、ラインL2でのパターン領域82と非パターン領域81との切り替わりをスポット領域M20を用いて判定することにより、切替データが生成されていると捉えることが可能である。
【0057】
以上のように、描画装置1では、検出光のスポットの大きさを考慮して切替データが生成される。これにより、基板9上における検出光のスポットの少なくとも一部がホール領域に重なっている間、オートフォーカス制御部43が、オートフォーカス動作をOFF状態とすることが可能となる。その結果、ホール領域においてオートフォーカス動作に異常が発生して、描画領域における描画に影響が生じることをより確実に防止または抑制することができる。パッド領域等、非描画領域に含まれる他の所定領域においてオートフォーカス動作に異常が発生することを防止または抑制する場合も同様である。描画装置1の設計によっては、検出光のスポットの略全体が所定領域に重なっている間においてのみ、オートフォーカス動作がOFF状態とされてもよい。
【0058】
次に、他の好ましい切替データを生成する手法について説明する。図11Aないし図11Cは、SRパターン画像の一部を示す図である。本処理例では、切替データの生成において、ラインL2に沿って、パターン領域82から非パターン領域81に切り替わる点、および、非パターン領域81からパターン領域82に切り替わる点を検出する際に、検出光のスポットの大きさ、および、幅方向における距離測定部51の取付誤差(取付ギャップ)が考慮される。
【0059】
具体的には、切替データ生成部42では、基板9上における検出光のスポットの大きさ、および、取付誤差に関する設定値が予め設定される。当該設定値は、例えば距離測定部51の取付位置の公差である。これにより、図11Aに示すように、SRパターン画像上において、当該スポットに対応する設計上のスポット領域の位置を、設定値に相当する範囲で横方向両側にずらした場合に、これらのスポット領域の全体を包含する領域M30(以下、「拡張スポット領域M30」という。)が設定される。図11Aないし図11Cでは、設計上のスポット領域M20を二点鎖線にて示している。また、拡張スポット領域M30の端に配置したスポット領域M20(以下、「最大ずれのスポット領域M20」という。)を実線にて示すとともに内部に平行斜線を付している。
【0060】
続いて、拡張スポット領域M30をラインL2に沿って図の上側から下側に向かって移動する場合に、図11Bに示すように、拡張スポット領域M30の外縁の下側が非パターン領域81に接する際における設計上のスポット領域M20(二点鎖線にて示すスポット領域M20)の中心の位置P41が、オートフォーカス動作をON状態からOFF状態にする位置として特定される。また、図11Cに示すように、拡張スポット領域M30の全部が非パターン領域81と重ならなくなる(拡張スポット領域M30の外縁の上側が非パターン領域81に接する)際における設計上のスポット領域M20の中心の位置P42が、オートフォーカス動作をOFF状態からON状態にする位置として特定される。このようにして、切替データが生成される。
【0061】
ここで、図11Bでは、設計上のスポット領域M20は、非パターン領域81に重なっていないが、距離測定部51の取付誤差により、最大ずれのスポット領域M20のように、実際の検出光のスポットに対応するスポット領域が、縦方向の位置P41にて非パターン領域81に重なる可能性がある。したがって、ラインL2上の位置P41がオートフォーカス動作をOFF状態とする位置される。この場合、オートフォーカス動作をOFF状態にする位置が、設計上のスポット領域M20のみを用いて決定する位置よりも(+Y)側にずらされる(OFF状態にするタイミングが早くなる)。
【0062】
また、図11Cでは、図の縦方向に関して位置P42よりも上側の位置にて設計上のスポット領域M20が、非パターン領域81に重なっていない状態となっているが、最大ずれのスポット領域M20のように、当該位置では、実際の検出光のスポットに対応するスポット領域が、非パターン領域81に重なっていた可能性がある。したがって、拡張スポット領域M30の全部が非パターン領域81と重ならなくなるラインL2上の位置P42がオートフォーカス動作をON状態とする位置とされる。この場合、オートフォーカス動作をON状態にする位置が、設計上のスポット領域M20のみを用いて決定する位置よりも(-Y)側にずらされる(ON状態にするタイミングが遅くなる)。本処理例では、ラインL2でのパターン領域82と非パターン領域81との切り替わりを拡張スポット領域M30を用いて判定することにより、切替データが生成されていると捉えることが可能である。
【0063】
図11Aないし図11Cの例では、幅方向における距離測定部51の取付誤差が考慮されるため、幅方向に対応する横方向に延びる拡張スポット領域M30が設定されるが、走査方向に対応する縦方向にも延びる拡張スポット領域が設定され、幅方向および走査方向における距離測定部51の取付誤差が考慮されてもよい。また、縦方向のみに延びる拡張スポット領域が設定され、走査方向のみにおける距離測定部51の取付誤差が考慮されてもよい。
【0064】
以上のように、描画装置1では、検出光のスポットの大きさ、および、距離測定部51の取付誤差を考慮して切替データが生成される。これにより、幅方向または/および走査方向に関して、設計上の検出光のスポットの領域を設定値だけ広げた領域の少なくとも一部がホール領域に重なっている間、オートフォーカス制御部43が、オートフォーカス動作をOFF状態とすることが可能となる。その結果、ホール領域においてオートフォーカス動作に異常が発生して、描画領域における描画に影響が生じることをさらに確実に防止または抑制することができる。パッド領域等、非描画領域に含まれる他の所定領域においてオートフォーカス動作に異常が発生することを防止または抑制する場合も同様である。
【0065】
上記描画装置1および描画方法では様々な変形が可能である。
【0066】
既述のように、描画装置1は、ソルダーレジスト層のパターン以外のパターンの描画に利用されてよい。パターンが描画される基板9は、ホール領域が設けられない基板であってもよい。また、基板9は、プリント配線基板以外に、半導体基板やガラス基板等であってもよい。
【0067】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0068】
1 描画装置
5 オートフォーカス機構
8 パターン画像
9 基板
11 コンピュータ
21 ステージ
22 ステージ移動機構
31 描画ヘッド
42 切替データ生成部
43 オートフォーカス制御部
51 距離測定部
81 非パターン領域
82 パターン領域
120 プログラム
921,921a~921d ホール領域
D1 離間距離
K1~K3 経路
L2 ライン
M1 測定位置
S11~S14 ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C