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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129906
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】塗布材繰出容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 40/20 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
A45D40/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028777
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 新
(72)【発明者】
【氏名】吉原 寛也
(57)【要約】
【課題】より多くの塗布材を充填することができると共にコンパクトにすることができる塗布材繰出容器を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る塗布材繰出容器1は、筒状部材6の外面には第1突部6cが設けられ、容器後部3の内面には第2突部3mが設けられ、第1突部6cは、径方向D2に貫通する貫通孔によって径方向D2に弾性を有し、筒状部材6は、筒状部材6の径方向D2の内側に突出すると共に移動体5が係合する小径部6b1を有し、移動体5は、筒状部材6の筒孔6zに挿通されると共に小径部6b1に係合する挿通部5cを有し、挿通部5cは、小径部6b1の内面6b5とに係合すると共に筒孔6zにおいて筒孔6zの軸線方向に延在するカット面5g,5jを有し、筒孔6zは、第1突部6cとカット面5g,5jとの間に、第1突部6cが径方向D2の内側に変位可能な空間部6b4を有する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の容器前部と、前記容器前部に対して相対回転可能とされた筒状の容器後部と、前記容器前部の内部に位置する塗布材の後側に配置され外周に雄螺子を有する移動体と、前記容器後部の内部に位置すると共に前記雄螺子に螺合する雌螺子を内周に有する筒状の雌螺子部材と、を備え、
前記容器前部と前記容器後部の相対回転に伴い、前記雄螺子及び前記雌螺子の螺合作用が働いて前記雌螺子部材に対して前記移動体が前進することによって前記容器前部から前記塗布材が繰り出される塗布材繰出容器であって、
前記容器後部の内部における前記容器前部と前記雌螺子部材との間に配置された筒状部材を備え、
前記筒状部材の外面には、第1突部が設けられ、
前記容器後部の内面には、前記第1突部に前記容器後部の回転方向に係合する第2突部が設けられ、
前記第1突部は、前記第1突部の周囲において前記筒状部材の径方向に貫通する貫通孔によって前記径方向に弾性を有し、
前記筒状部材は、前記筒状部材の径方向内側に突出すると共に前記移動体が係合する小径部を有し、
前記移動体は、前記筒状部材の筒孔に挿通されると共に前記小径部に係合する挿通部を有し、
前記挿通部は、前記小径部の内面に係合すると共に前記筒孔において前記筒孔の軸線方向に延在するカット面を有し、
前記筒孔は、前記第1突部と前記カット面との間に、前記第1突部が前記径方向の内側に変位可能な空間部を有する、
塗布材繰出容器。
【請求項2】
前記筒状部材は、前記容器前部に固定される固定部を有し、
前記軸線方向に直交する前記固定部の断面が非円形状とされており、
前記容器前部は、前記固定部が固定される被固定部を有し、
前記軸線方向に直交する前記被固定部の断面形状は、前記軸線方向に直交する前記固定部の断面形状と相似形状とされている、
請求項1に記載の塗布材繰出容器。
【請求項3】
前記塗布材は、前記容器前部の内面に密着した状態で硬化されている、
請求項1又は2に記載の塗布材繰出容器。
【請求項4】
前記第1突部及び前記第2突部は、前記容器前部と前記容器後部との一方向の相対回転を許容し、前記一方向の反対方向である他方向の相対回転を規制するラチェット機構を構成する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の塗布材繰出容器。
【請求項5】
前記第1突部は、前記第2突部に常時当接し、前記筒状部材と前記容器後部との間で常時抵抗を発生させる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の塗布材繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布材を繰り出す塗布材繰出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗布材を繰り出す塗布材繰出容器としては種々のものが知られている。特開2012-235885号公報には、棒状化粧料繰出容器が記載されている。棒状化粧料繰出容器は、棒状化粧料を収容する先筒と、先筒に相対回転可能に係合する容器本体と、先筒の内部において先筒に同期回転可能に係合する雌螺子部材と、雌螺子部材に螺合して先筒と容器本体との相対回転に伴って前進する移動体とを備える。雌螺子部材の後方には、更に、雌螺子部材とクリック係合するバネ部材が設けられる。バネ部材は両端が開口している筒状を成し、バネ部材の軸線方向中間部には軸線方向に収縮して衝撃を吸収する弾性がある螺旋状のバネ部が形成されている。
【0003】
移動体は棒状化粧料の後方に配置されており、移動体と棒状化粧料との間には先筒の内部に密着して棒状化粧料を押し出すピストン体が設けられる。棒状化粧料は、アイライナーに用いられるジェル状のものであって、化粧用揮発性オイルを含む。揮発性を有する棒状化粧料は、先筒の収容部に直接充填されており、先筒の内面に密着した状態で収容されている。
【0004】
実用新案登録第3169255号公報には、揮発性棒状化粧料繰出容器が記載されている。揮発性棒状化粧料繰出容器は、揮発性化粧料を収容する先筒と、先筒に相対回転可能に係合する容器本体とを備える。先筒は容器本体との相対回転時には軸線方向に離脱しない程度に容器本体と係合されており、先筒の交換時に軸線方向にある程度の力を加えると先筒を容器本体から離脱させることが可能である。
【0005】
揮発性棒状化粧料繰出容器は、先筒の内部において摺動するピストン体と、先筒の内部において先筒と同期回転可能とされた雌螺子部材と、容器本体の内部において容器本体と同期回転するバネ部材と、雌螺子部材と螺合結合して先筒と容器本体の相対回転に伴って前進する移動体とを備える。バネ部材は、雌螺子部材とラチェット係合する。バネ部材は、両端が開口する筒状を呈する。バネ部材の軸線方向中間部には、バネ部材の軸線方向に収縮して衝撃を吸収する螺旋状のバネ部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-235885号公報
【特許文献2】実用新案登録第3169255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した塗布材繰出容器及び揮発性棒状化粧料繰出容器では、化粧料等の塗布材をより多く充填することが求められている。しかしながら、塗布材繰出容器では、容器本体の内部に雌螺子部材とバネ部材が配置されており、バネ部材の軸線方向中間部にバネ部が形成されている。このバネ部が軸線方向に収縮して衝撃を吸収する。従って、軸線方向に伸縮するバネ部材が配置される領域を容器本体の内部に確保する必要があり、軸線方向に長い塗布材を充填することができないので、より多くの塗布材を充填できないという問題が生じうる。また、持ちやすさ等の観点から、塗布材繰出容器をコンパクトにすることが求められる場合がある。
【0008】
本開示は、より多くの塗布材を充填することができると共にコンパクトにすることができる塗布材繰出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る塗布材繰出容器は、筒状の容器前部と、容器前部に対して相対回転可能とされた筒状の容器後部と、容器前部の内部に位置する塗布材の後側に配置され外周に雄螺子を有する移動体と、容器後部の内部に位置すると共に雄螺子に螺合する雌螺子を内周に有する筒状の雌螺子部材と、を備え、容器前部と容器後部の相対回転に伴い、雄螺子及び雌螺子の螺合作用が働いて雌螺子部材に対して移動体が前進することによって容器前部から塗布材が繰り出される塗布材繰出容器であって、容器後部の内部における容器前部と雌螺子部材との間に配置された筒状部材を備え、筒状部材の外面には、第1突部が設けられ、容器後部の内面には、第1突部に容器後部の回転方向に係合する第2突部が設けられ、第1突部は、第1突部の周囲において筒状部材の径方向に貫通する貫通孔によって径方向に弾性を有し、筒状部材は、筒状部材の径方向内側に突出すると共に移動体が係合する小径部を有し、移動体は、筒状部材の筒孔に挿通されると共に小径部に係合する挿通部を有し、挿通部は、小径部の内面に係合すると共に筒孔において筒孔の軸線方向に延在するカット面を有し、筒孔は、第1突部とカット面との間に、第1突部が径方向の内側に変位可能な空間部を有する。
【0010】
この塗布材繰出容器では、筒状の容器前部と筒状の容器後部とが相対回転可能に係合される。容器前部の内部には塗布材が配置されており、塗布材の後側には外周に雄螺子を有する移動体が配置されている。容器後部の内部には移動体の雄螺子に螺合する雌螺子を備えた筒状の雌螺子部材が配置されている。容器前部及び容器後部が相対回転すると、移動体の雄螺子と雌螺子部材の雌螺子との螺合作用が働いて雌螺子部材に対して移動体が前進し、前進する移動体が容器前部の内部に配置された塗布材を前方に押し出すことにより、塗布材が容器前部から繰り出される。容器後部の内部における容器前部と雌螺子部材の間には外面に第1突部を有する筒状部材が配置されている。筒状部材における第1突部の周囲には貫通孔が形成されており、この貫通孔によって第1突部は径方向に弾性を有する。すなわち、第1突部は筒状部材の径方向に沿って弾性変形可能とされている。容器後部の内面には、第1突部に回転方向に係合する第2突部が形成されている。筒状部材は径方向内側に突出する小径部を有し、小径部には筒状部材の筒孔に挿通された移動体が係合する。移動体は筒状部材の筒孔に挿通されると共に小径部に係合する挿通部を有する。挿通部は、小径部の内面に係合すると共に筒孔において軸線方向に延在するカット面を有する。筒孔における第1突部と移動体のカット面との間には、第1突部が径方向内側に弾性変形可能な空間部が形成される。従って、容器後部の第2突部の径方向内側に筒状部材の第1突部が係合し、第1突部の径方向内側に移動体のカット面が配置されるので、筒状部材の軸線方向への長さを小さくすることができる。よって、軸線方向への長さが小さい筒状部材を配置することにより、軸線方向に長い塗布材を充填することができるので、より多くの塗布材を充填することができる。また、容器後部及び移動体のそれぞれに係合する筒状部材の軸線方向への長さが抑えられることにより、塗布材繰出容器をコンパクトにすることができる。
【0011】
筒状部材は、容器前部に固定される固定部を有し、軸線方向に直交する固定部の断面が非円形状とされており、容器前部は、固定部が固定される被固定部を有し、軸線方向に直交する被固定部の断面形状は、軸線方向に直交する固定部の断面形状と相似形状とされていてもよい。この場合、筒状部材の固定部が容器前部の被固定部に固定されるときに、非円形状の被固定部に固定部が嵌まり込むことによって、筒状部材を容器前部に同期回転可能に係合することができる。
【0012】
塗布材は、容器前部の内面に密着した状態で硬化されていてもよい。この場合、塗布材が容器前部の内面に密着しているので、柔らかい塗布材であっても容器前部の内部においてより確実に保護することができる。
【0013】
第1突部及び第2突部は、容器前部と容器後部との一方向の相対回転を許容し、一方向の反対方向である他方向の相対回転を規制するラチェット機構を構成してもよい。この場合、容器前部と容器後部との一方向への相対回転によって移動体が前進し、他方向への相対回転はラチェット機構によって規制される。従って、容器前部と容器後部との他方向への相対回転、並びに、塗布材及び移動体の意図しない後退を規制することができる。
【0014】
第1突部は、第2突部に常時当接し、筒状部材と容器後部との間で常時抵抗を発生させてもよい。このように、筒状部材の外面から突出する第1突部と容器後部の内面から突出する第2突部とを常時当接させる場合には、筒状部材と容器後部との間で常時抵抗を発生させることが可能となるので、筒状部材と容器後部とのがたつきを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、より多くの塗布材を充填することができると共にコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る塗布材繰出容器を示す側面図である。
図2図1の塗布材繰出容器からキャップを外した状態を示す側面図である。
図3図1の塗布材繰出容器のA-A線断面図である。
図4図1の塗布材繰出容器の容器前部を示す斜視図である。
図5図1の塗布材繰出容器の移動体、筒状部材及び雌螺子部材を示す斜視図である。
図6図1の塗布材繰出容器の容器後部の断面斜視図である。
図7】(a)は、図5の筒状部材を前側から見た斜視図である。(b)は、図5の筒状部材を後側から見た斜視図である。
図8図5の筒状部材の断面斜視図である。
図9図3のB-B線断面図である。
図10図3の塗布材繰出容器からキャップを外して塗布材を繰り出した状態を示す断面図である。
図11】(a)及び(b)は、比較例に係る塗布材繰出容器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る塗布材繰出容器の実施形態について説明する。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0018】
図1は、実施形態に係る塗布材繰出容器の側面図である。図2は、図1の塗布材繰出容器からキャップを外した状態を示す側面図である。図3は、図1のA-A線断面図である。図1図3に示されるように、本実施形態に係る塗布材繰出容器1は、例えば、容器前部2に収容された塗布材Mを使用者の操作によって繰り出す(押し出す)ペンシル型の容器である。
【0019】
塗布材Mは、例えば、化粧料である。塗布材Mは、例えば、リップライナー、リップスティック、リップグロス、アイブロウ、アイライナー、美容スティック又はコンシーラーである。塗布材Mは、非常に柔らかい(例えば、半固形状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状又はこれらを含む練り物等の)棒状物であってもよい。更に、塗布材Mは、外径が1.5mm以下の細径棒状物、外径が1.5mm以上且つ3.0mm以下である一般棒状物、又は外径が4.0mm以上である太径棒状物であってもよい。
【0020】
塗布材繰出容器1は、塗布材Mが収容される筒状の容器前部2と、容器前部2の軸線方向D1の一端に連結されると共に容器前部2に係合される筒状の容器後部3とを備える。塗布材繰出容器1は、更に、容器前部2に装着されるキャップ10を備え、キャップ10が外されて容器前部2及び容器後部3が一方向に相対回転されて容器前部2から塗布材Mが押し出されることにより、使用に供される。
【0021】
キャップ10は、有底円筒状の外キャップ11と、外キャップ11の底部に保持される段付き円筒状の内キャップ12とを含んでいる。外キャップ11は、内面に環状凹部11c及び環状凸部11dを有する。外キャップ11は、容器前部2が挿入される部位である。外キャップ11は内周面11fを有し、内周面11fには容器前部2が係合する凹部11gが形成されている。
【0022】
内キャップ12は外周面に環状凸部12bを有し、環状凸部11dを乗り越えた環状凸部12bが環状凹部11cに嵌まることによって内キャップ12が外キャップ11に固定される。内キャップ12は、キャップ10が装着された容器前部2の内部に位置する塗布材Mの気密を確保するために設けられる。内キャップ12は容器前部2が挿入される筒状の挿入部12dを有する。
【0023】
本開示において、「軸線」とは、筒状体の軸線であって、塗布材繰出容器の長手方向に沿って延びる塗布材繰出容器の中心線を示している。「軸線方向」とは、塗布材繰出容器の長手方向であって、軸線に沿った方向を示している。「前」、「前側」及び「前方」は軸線方向において容器後部3から容器前部2に向かう方向を示しており、「後」、「後側」及び「後方」は軸線方向において容器前部2から容器後部3に向かう方向を示している。「径方向」は軸線に直交する方向を示しており、「回転方向」は軸線を中心とする環に沿う方向(例えば周方向)を示している。本開示において、塗布材Mの繰出方向を前方(前進する方向)とし、その反対方向を後方(後退する方向)とする。
【0024】
容器前部2の内側には、塗布材Mを外部に押し出すピストン4と、ピストン4を前方に移動させる移動体5と、移動体5が挿通される筒状部材6と、筒状部材6の後側に位置する筒状の雌螺子部材7とが配置されている。移動体5は、容器後部3の内部に位置する筒状部材6及び雌螺子部材7において軸線方向D1に延びるように配置されている。
【0025】
図4は、容器前部2を示す斜視図である。容器前部2は、例えば、PBT(Poly Butylene Terephtalate)樹脂によって構成されている。図3及び図4に示されるように、容器前部2は、軸線方向D1の一端に位置する開口2bと、開口2bから離れるに従って容器前部2が拡径するように傾斜するテーパ面2cとを有する。開口2bは、容器前部2における塗布材Mが露出する部位であって、開口2bから塗布材Mが突出して塗布材Mが使用に供される。テーパ面2cは、例えば、開口2bから容器前部2の軸線方向D1の中央を超える位置まで延在している。
【0026】
容器前部2は、キャップ10(外キャップ11)が装着される凸部2dを有する。凸部2dは、例えば、円形状を呈する。凸部2dは、例えば、テーパ面2cの後側に形成されている。テーパ面2cが外キャップ11の内部に入り込むと共に外キャップ11の凹部11gに凸部2dが係合することによって、容器前部2にキャップ10が装着される。
【0027】
容器前部2は、容器前部2の軸線方向D1の中央よりも後側に鍔部2fを有する。鍔部2fは、キャップ10(外キャップ11)の端面11h、及び容器後部3の端面3bが軸線方向D1に沿って対向する部位である。容器前部2は、容器前部2の径方向外側に突出する環状凸部2gを有する。環状凸部2gが容器後部3の内面3gに形成された環状凹部3cに係合することにより、容器前部2は容器後部3に相対回転可能に係合する。
【0028】
容器前部2は、筒状部材6が固定される被固定部2hを有する。被固定部2hは、例えば、容器前部2の軸線方向D1の一端(後端)に位置する端面2jに設けられる。被固定部2hは、容器前部2の端面2jから窪む凹状とされている。被固定部2hは、端面2jから軸線方向D1に延びる内側面2kと、内側面2kの端面2jとは反対側に位置する底面2mとを有する。被固定部2hの内側面2k及び底面2mによって画成された領域に筒状部材6が挿入されて固定される。
【0029】
軸線方向D1に沿って見た被固定部2hの形状は、非円形状とされている。例えば、軸線方向D1に沿って見た被固定部2hの形状は、隅丸長方形状とされている。被固定部2hは、互いに平行に延びる一対の第1直線部2pと、第1直線部2pとは異なる方向に互いに平行に延びる一対の第2直線部2qと、第1直線部2pと第2直線部2qの間で被固定部2hの外側に湾曲する4つの湾曲部2rとを有する。被固定部2hに筒状部材6が固定されることによって容器前部2は筒状部材6と回転方向に(同期回転可能に)係合する。
【0030】
容器前部2の内面2sには、塗布材M及びピストン4が配置されている。内面2sは軸線方向D1に沿って容器前部2を貫通する筒孔の内周面を示しており、例えば、内面2sの後端が被固定部2hに連通している。内面2sは、例えば、平滑面とされている。これにより、移動体5及びピストン4による塗布材Mの押し出しをスムーズに行うことができる。
【0031】
塗布材Mは、一例として、揮発性を有する棒状化粧料である。塗布材Mは、例えば、容器前部2の内面2sに直接充填されることによって形成されており、容器前部2の内面2sに密着した状態で容器前部2の内部に収容されている。塗布材Mは、容器前部2の内面2sに密着した状態で硬化している。
【0032】
ピストン4は、例えば、熱可塑性エラストマー(TPE:Thermo Plastic Elastomers)によって構成されている。ピストン4は、例えば、軸線方向D1の一端及び他端のそれぞれに凹部4bを有する。前側に位置する凹部4bには塗布材Mが充填されており、後側に位置する凹部4bには移動体5が挿入されている。
【0033】
図5は、移動体5、筒状部材6及び雌螺子部材7が組み付けられて構成された塗布材繰出容器1の繰出機構20を示す斜視図である。図3及び図5に示されるように、繰出機構20は、雄螺子5hを有する移動体5と、移動体5が挿通されると共に移動体5に同期回転可能に係合する筒状部材6と、移動体5の雄螺子5hが螺合結合する筒状の雌螺子部材7とを備える。
【0034】
雌螺子部材7は、例えば、ポリアセタール樹脂(POM樹脂)によって構成されている。雌螺子部材7の外面7bには、容器後部3に回転方向に係合すると共に軸線方向D1に延在する凸部7cが形成されている。雌螺子部材7は、例えば、複数(一例として4個)の凸部7cを有し、複数の凸部7cが雌螺子部材7の周方向に等間隔に並ぶように形成されている。雌螺子部材7の内面には雌螺子7dが形成されており、雌螺子7dには移動体5の雄螺子5hが螺合結合している。
【0035】
筒状部材6は、例えば、POM樹脂によって構成されている。筒状部材6の外面6bには、筒状部材6の径方向D2(図7参照)に弾性を有する第1突部6cが設けられる。第1突部6cは、後述する容器後部3の第2突部3mとラチェット機構30を構成する。第1突部6c、第2突部3m及びラチェット機構30の構成については後に詳述する。
【0036】
移動体5は、例えば、POM樹脂によって構成されている。移動体5は棒状を呈する。移動体5は、雌螺子部材7に螺合する雄螺子部5bと、筒状部材6に挿通される挿通部5cとを有する。挿通部5cは移動体5の前部に設けられる。軸線方向D1に直交する平面で切断したときの挿通部5cの断面の形状は、非円形状とされている。
【0037】
挿通部5cの軸線方向D1の端部には、軸線方向D1に突出する凸部5dが形成されている。軸線方向D1に沿って見た凸部5dの形状は、例えば、長円状とされている。凸部5dは、ピストン4の凹部4bに入り込む部位である。凸部5dが凹部4bに入り込むことにより、移動体5はピストン4と共に前進する。
【0038】
軸線方向D1に沿って見た挿通部5cの形状は非円形状とされている。挿通部5cは、移動体5の外側に湾曲する一対の湾曲面5fと、一対の湾曲面5fの端部の間を接続する一対のカット面5gとを有する。湾曲面5fは、例えば、円弧状に湾曲している。カット面5gは、例えば、円弧状部分の一部がカットされた欠円状とされている。一例として、カット面5gは、平坦面である。
【0039】
雄螺子部5bは、移動体5の幅方向の一方側及び他方側のそれぞれに形成された雄螺子5hと、一対の雄螺子5hの間に形成されたカット面5jとを有する。雄螺子5hは、例えば、挿通部5cの湾曲面5fの後方に設けられ、カット面5jはカット面5gの後方に設けられる。
【0040】
以上のように構成される移動体5は、筒状部材6及び雌螺子部材7に挿通されており、筒状部材6に回転方向に係合する。移動体5は、雄螺子5hが雌螺子部材7に螺合していることにより、容器前部2及び容器後部3の相対回転に伴って雌螺子部材7及び筒状部材6に対して前進する。
【0041】
図6は、容器後部3の断面斜視図である。容器後部3は、例えば、ABS樹脂によって構成されている。図3及び図6に示されるように、容器後部3は、軸線方向D1に延びる筒状を呈する。容器後部3は、端面3bの内側に繰出機構20が挿入される開口3fを有する。容器後部3の内面3gにおける開口3f寄りの位置には、容器前部2の環状凸部2gが軸線方向D1に係合する環状凹部3c及び環状凸部3dが形成されている。
【0042】
容器後部3は、内面3gに形成された筒状部材係合部3h及び雌螺子部材係合部3jを有する。容器後部3の環状凹部3cと筒状部材係合部3hとの間には、容器前部2の外周面に対向する平滑な(段差を有しない)湾曲面3kが形成されている。筒状部材係合部3hは、筒状部材6に回転方向に係合する第2突部3mを有する。容器後部3は、例えば、複数(一例として8個)の第2突部3mを有する。第2突部3mは、前述した筒状部材6の第1突部6cと共にラチェット機構30を構成する。
【0043】
筒状部材係合部3hの後方には、雌螺子部材係合部3jが設けられる。雌螺子部材係合部3jは、雌螺子部材7の凸部7cが回転方向に係合する凸部3pを有する。例えば、凸部3pは、第2突部3mから容器後部3の径方向内側に突出している。容器後部3は、例えば、複数の凸部3pを有し、複数の凸部3pは容器後部3の周方向に沿って等間隔に並ぶように配置されている。
【0044】
雌螺子部材係合部3jと容器後部3の軸線方向D1の端部3q(後端)との間には、移動体5が挿入される移動体挿入部3rが設けられる。移動体挿入部3rには、軸線方向D1に延びる凸部3tが形成されている。例えば、移動体挿入部3rは、複数の凸部3tを有する。
【0045】
図7(a)は、筒状部材6を軸線方向D1の一方側(前側)から見た斜視図である。図7(b)は、筒状部材6を軸線方向D1の他方側(後側)から見た斜視図である。筒状部材6は、軸線方向D1の一端に容器前部2の被固定部2hに固定される固定部6dを有する。固定部6dは、筒状部材6の軸線方向D1の一端において軸線方向D1に突出している。
【0046】
筒状部材6は、例えば、固定部6dから見て筒状部材6の端面6gとは反対側にフランジ部6hを有する。また、固定部6dは、筒状部材6の軸線方向D1の一端に位置する拡張部6jと、拡張部6jの端面6gとは反対側(フランジ部6h側)に位置する根元部6kとを有する。このように固定部6dが拡張部6jを有することにより、容器前部2の被固定部2hに固定部6dを強固に固定することが可能となる。
【0047】
軸線方向D1に沿って見た固定部6dの形状は、容器前部2の被固定部2hと相似形状とされている。すなわち、軸線方向D1に沿って見た固定部6dの形状は非円形状とされており、例えば、隅丸長方形状とされている。固定部6dは、互いに平行に延びる一対の第1直線部6mと、第1直線部6mとは異なる方向に互いに平行に延びる一対の第2直線部6pと、第1直線部6mと第2直線部6pの間で固定部6dの外側に湾曲する4つの湾曲部6qとを有する。以上のように形成される固定部6dは、軸線方向D1に沿って容器前部2の被固定部2hに挿し込まれて被固定部2hに固定される。このとき、筒状部材6のフランジ部6hが容器前部2の後端2t(図3参照)に軸線方向D1に沿って対向した状態となる。
【0048】
筒状部材6は、第1突部6cの周囲において筒状部材6の径方向D2に貫通する貫通孔6rを有する。第1突部6cは、貫通孔6rによって筒状部材6の径方向D2に弾性を有する。貫通孔6rは、例えば、軸線方向D1に延びる第1孔部6sと、第1孔部6sの一端及び他端のそれぞれから筒状部材6の周方向に延びる一対の第2孔部6tとによって画成されている。
【0049】
貫通孔6rは、第1孔部6sと、軸線方向D1に並ぶ一対の第2孔部6tによってコの字状を呈する。第1孔部6sの隣接位置であって且つ一対の第2孔部6tの間に第1突部6cが形成されていることにより、第1突部6cは筒状部材6の径方向D2に弾性を有する。第1突部6cは、例えば、筒状部材6の外周面6vから連続して斜め上方に突出する傾斜面6wと、傾斜面6wと第1孔部6sとの間に位置する頂面6xと、第1孔部6sを画成する壁面6yとを有する。
【0050】
図8は、筒状部材6の断面斜視図である。図9は、図3のB-B線断面図である。図8及び図9に示されるように、筒状部材6は移動体5が挿通される筒孔6zを有する。筒孔6zは筒状部材6を軸線方向D1に沿って貫通している。筒状部材6は、筒状部材6の径方向D2の内側に突出する小径部6b1を有する。
【0051】
小径部6b1は、筒状部材6の筒孔6zにおける内径が他の部位よりも小さい部分を示している。小径部6b1は、筒状部材6の軸線方向D1の一端(前端)に設けられている。小径部6b1は、筒孔6zにおいて筒状部材6の径方向D2の内側に突出する突出部6b2によって形成されている。筒状部材6は、例えば、2つの突出部6b2を有し、2つの突出部6b2は筒状部材6の径方向D2に沿って互いに対向している。
【0052】
筒状部材6の筒孔6zには移動体5の挿通部5cが挿通され、筒孔6zに挿通された挿通部5cは小径部6b1に係合する。このとき、挿通部5cのカット面5g,5jが小径部6b1の内面6b3に対向した状態で内面6b3に挿通部5cが回転方向に係合することにより、筒状部材6及び移動体5が同期回転可能に係合する。
【0053】
筒状部材6に係合する容器後部3の第2突部3mは、例えば、径方向D2に延びる当接面3m1と、当接面3m1の径方向D2の外側において容器後部3の周方向に延びる底面3m2と、底面3m2の当接面3m1とは反対側から径方向D2に傾斜する方向に延びる傾斜面3m3とによって画成される。当接面3m1は、筒状部材6の第1突部6cの壁面6yが当接する面である。傾斜面3m3は、例えば、隣接する当接面3m1に直交する方向に延在している。
【0054】
以上の構成により、容器後部3は、筒状部材6及び移動体5に対して一方向(図9では時計回りの方向)に回転する。しかしながら、容器後部3は、筒状部材6及び移動体5に対し当該一方向の反対方向である他方向には回転しない。また、筒孔6zは、第1突部6cと移動体5のカット面5g,5jとの間に、第1突部6cが径方向D2の内側に変位することが可能な空間部6b4を有する。
【0055】
空間部6b4の軸線方向D1の位置は、小径部6b1の軸線方向D1の位置とは異なる。空間部6b4は、筒孔6zの円形状に形成された内面6b5と、筒孔6zに挿通された移動体5のカット面5g,5jとの間に形成される。このように、本実施形態では、筒孔6zの内面6b5と移動体5のカット面5g,5jとの間の空間部6b4を第1突部6cが径方向D2に変位する領域として有効利用することが可能である。
【0056】
次に、塗布材繰出容器1の使用方法の例について説明する。まず、図2及び図3に示されるように、キャップ10を取り外して容器前部2を露出させる。そして、容器前部2に対して容器後部3を一方向に相対回転させると、容器後部3と共に雌螺子部材7が回転し、これに伴い、容器前部2と共に筒状部材6及び移動体5が回転する。従って、移動体5に対して雌螺子部材7が一方向に相対回転することとなるので、雄螺子5h及び雌螺子7dの螺合作用が働き雌螺子部材7に対して移動体5が前進する。
【0057】
雌螺子部材7に対して移動体5が前進すると、移動体5の前進と共にピストン4及び塗布材Mが前進し、容器前部2から塗布材Mが繰り出される。また、容器前部2に対して容器後部3が一方向に相対回転するときには、図9に示されるように、筒状部材6に対して容器後部3が一方向(図9では時計回り)に回転し、容器後部3の傾斜面3m3が筒状部材6の傾斜面6wに当接しながら容器後部3が当該一方向に移動する。
【0058】
このとき、第1突部6cは筒状部材6の径方向D2の内側に撓むこととなり、第1突部6cの径方向D2の内側の端部6c1が空間部6b4に入り込む。そして、容器後部3が更に一方向に回転すると、傾斜面3m3が第1突部6cの頂面6xを当該一方向に乗り越えて第1突部6cの撓みが元に戻る。傾斜面3m3が頂面6xを乗り越えるときにクリック音と共に抵抗感が発生するので、使用者は、カチカチというクリック音を発生させながら塗布材Mを繰り出すことが可能となる。
【0059】
容器前部2に対して容器後部3が他方向に相対回転するときには、筒状部材6に対して容器後部3が他方向(図9では反時計回り)に回転しようとする。しかしながら、筒状部材6に対して容器後部3が他方向に回転しようとすると、容器後部3の当接面3m1が筒状部材6の壁面6yに当接することとなり、容器後部3の当該他方向への回転は規制されることとなる。従って、容器前部2に対する容器後部3の当該他方向への相対回転は規制される。
【0060】
次に、本実施形態に係る塗布材繰出容器1から得られる作用効果について詳細に説明する。図3及び図9に示されるように、塗布材繰出容器1では、筒状の容器前部2と筒状の容器後部3とが相対回転可能に係合される。容器前部2の内部には塗布材Mが配置されており、塗布材Mの後側には外周に雄螺子5hを有する移動体5が配置されている。容器後部3の内部には移動体5の雄螺子5hに螺合する雌螺子7dを備えた筒状の雌螺子部材7が配置されている。容器前部2及び容器後部3が相対回転すると、移動体5の雄螺子5hと雌螺子部材7の雌螺子7dとの螺合作用が働いて雌螺子部材7に対して移動体5が前進し、前進する移動体5が容器前部2の内部に配置された塗布材Mを前方に押し出すことにより、塗布材Mが容器前部2から繰り出される。
【0061】
容器後部3の内部における容器前部2と雌螺子部材7の間には外面6bに第1突部6cを有する筒状部材6が配置されている。筒状部材6における第1突部6cの周囲には貫通孔6rが形成されており、貫通孔6rによって第1突部6cは径方向D2に弾性を有する。すなわち、第1突部6cは筒状部材6の径方向D2に沿って弾性変形可能とされている。
【0062】
容器後部3の内面3gには、第1突部6cに回転方向に係合する第2突部3mが形成されている。第2突部3mは、第1突部6cに常時当接し、筒状部材6と容器後部3との間で常時抵抗を発生させる。筒状部材6は径方向D2の内側に突出する小径部6b1を有し、小径部6b1には筒状部材6の筒孔6zに挿通された移動体5が係合する。
【0063】
移動体5は筒状部材6の筒孔6zに挿通されると共に小径部6b1に係合する挿通部5cを有する。挿通部5cは、小径部6b1の内面6b3に係合すると共に筒孔6zにおいて軸線方向D1に延在するカット面5g,5jを有する。筒孔6zにおける第1突部6cと移動体5のカット面5g,5jとの間には、第1突部6cが径方向D2の内側に弾性変形可能な空間部6b4が形成される。従って、容器後部3の第2突部3mの径方向D2の内側に筒状部材6の第1突部6cが係合し、第1突部6cの径方向D2の内側に移動体5のカット面5g,5jが配置されるので、筒状部材6の軸線方向D1への長さを小さくすることができる。
【0064】
よって、軸線方向D1への長さが小さい筒状部材6を配置することにより、軸線方向D1に長い塗布材Mを充填することができるので、より多くの塗布材Mを充填することができる。また、容器後部3及び移動体5のそれぞれに係合する筒状部材6の軸線方向D1への長さが抑えられることにより、塗布材繰出容器1をコンパクトにすることができる。
【0065】
図10は、塗布材繰出容器1の塗布材Mを繰り出して移動体5を前進限まで移動させた状態を示す断面図である。図11(a)及び図11(b)は、比較例に係る塗布材繰出容器100を示す断面図である。比較例に係る塗布材繰出容器100は、塗布材繰出容器1と同様の容器前部2、容器後部3、ピストン4、移動体5及びキャップ10を備えており、容器前部2及び容器後部3の内部に配置される部品が塗布材繰出容器1とは異なっている。
【0066】
塗布材繰出容器100は、塗布材繰出容器1の筒状部材6及び雌螺子部材7に代えて、容器前部2の内部に収容された筒状の雌螺子部材101と、雌螺子部材101の後部において雌螺子部材101とラチェット係合するバネ部材102とを備える。バネ部材102は両端が開口する筒状を呈する。バネ部材102の軸線方向中間部には、バネ部材102の軸線方向D3に収縮して衝撃を吸収する螺旋状のバネ部102bが形成されている。比較例に係る塗布材繰出容器100では、軸線方向D3に伸縮するバネ部材102が配置される領域を容器後部3の内部に確保する必要があり、軸線方向D3に長い塗布材Mを充填することができないという問題があった。
【0067】
これに対し、本実施形態に係る塗布材繰出容器1では、移動体5、筒状部材6及び雌螺子部材7を備え、筒状部材6は移動体5の挿通部5cが係合する小径部6b1が形成された筒孔6zを有する。そして、筒孔6zにおける第1突部6cと移動体5のカット面5g,5jとの間に第1突部6cが径方向D2の内側に弾性変形可能な空間部6b4が形成される。従って、容器後部3の第2突部3mの径方向D2の内側に筒状部材6の第1突部6cが係合し、第1突部6cの径方向D2の内側に移動体5のカット面5g,5jが配置されるので、筒状部材6の軸線方向D1への長さを小さくすることができる。このように軸線方向D1への長さが小さい筒状部材6を配置することにより、軸線方向D1に長い塗布材Mを充填することができる。従って、塗布材繰出容器1の容器を大きくすることなくコンパクトな状態を維持した状態で、比較例に係る塗布材繰出容器100よりも多くの塗布材Mを充填することができる。
【0068】
本実施形態に係る筒状部材6は、容器前部2に固定される固定部6dを有し、軸線方向D1に直交する固定部6dの断面が非円形状とされており、容器前部2は、固定部6dが固定される被固定部2hを有し、軸線方向D1に直交する被固定部2hの断面形状は、軸線方向D1に直交する固定部6dの断面形状と相似形状とされている。従って、筒状部材6の固定部6dが容器前部2の被固定部2hに固定されるときに、非円形状の被固定部2hに固定部6dが嵌まり込むことによって、筒状部材6を容器前部2に同期回転可能に係合することができる。
【0069】
本実施形態に係る塗布材Mは、図3に示されるように、容器前部2の内面2sに密着した状態で硬化されている。よって、塗布材Mが容器前部2の内面2sに密着しているので、柔らかい塗布材Mであっても容器前部2においてより確実に保護することができる。すなわち、容器前部2の内部における塗布材Mの折損をより確実に抑制することができる。
【0070】
図9に示されるように、本実施形態において、第1突部6c及び第2突部3mは、容器前部2と容器後部3との一方向の相対回転を許容し、一方向の反対方向である他方向の相対回転を規制するラチェット機構30を構成している。よって、容器前部2と容器後部3との一方向への相対回転によって移動体5が前進し、他方向への相対回転はラチェット機構30によって規制される。従って、容器前部2と容器後部3との他方向への相対回転、並びに、塗布材M及び移動体5の意図しない後退を規制することができる。
【0071】
本実施形態において、第1突部6cは、第2突部3mに常時当接し、筒状部材6と容器後部3との間で常時抵抗を発生させている。このように、筒状部材6の外面6bから突出する第1突部6cと容器後部3の内面3gから突出する第2突部3mとを常時当接させる場合には、筒状部材6と容器後部3との間で常時抵抗を発生させることが可能となるので、筒状部材6と容器後部3とのがたつきを抑制することができる。
【0072】
以上、本開示に係る塗布材繰出容器の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る塗布材繰出容器は、前述の実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載された要旨を変更しない範囲で変形し、更に他のものに用いられるものであってもよい。すなわち、塗布材繰出容器を構成する各部品の構成、形状、大きさ、材料及び配置態様は、上記の要旨の範囲内において適宜変更可能である。
【0073】
例えば、前述の実施形態では、小径部6b1が筒孔6zにおいて筒状部材6の径方向D2の内側に突出する突出部6b2によって形成されており、筒状部材6が2つの突出部6b2を有する例について説明した。しかしながら、筒状部材の小径部及び突出部の数は、1又は3以上であってもよく、適宜変更可能である。
【0074】
例えば、前述の実施形態では、一方向への相対回転が可能となっており塗布材Mの繰り出しのみが行われる塗布材繰出容器1について説明した。しかしながら、本開示に係る塗布材繰出容器は、一方向、及び当該一方向の反対方向、の双方への相対回転が可能な塗布材繰出容器であってもよい。
【0075】
更に、前述の実施形態では、塗布材Mが揮発性を有する棒状化粧料である例について説明した。しかしながら、本開示に係る塗布材は、化粧料以外の塗布材であってもよい。本開示に係る塗布材は、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、若しくはマーキングペン等の文房具(描画材)、医薬品、又は泥状物等を含む塗布材であってもよく、これらの塗布材を本開示に係る塗布材繰出容器に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0076】
1…塗布材繰出容器、2…容器前部、2b…開口、2c…テーパ面、2d…凸部、2f…鍔部、2g…環状凸部、2h…被固定部、2j…端面、2k…内側面、2m…底面、2p…第1直線部、2q…第2直線部、2r…湾曲部、2s…内面、2t…後端、3…容器後部、3b…端面、3c…環状凹部、3d…環状凸部、3f…開口、3g…内面、3h…筒状部材係合部、3j…雌螺子部材係合部、3k…湾曲面、3m…第2突部、3m1…当接面、3m2…底面、3m3…傾斜面、3p…凸部、3q…端部、3r…移動体挿入部、3t…凸部、4…ピストン、4b…凹部、5…移動体、5b…雄螺子部、5c…挿通部、5d…凸部、5f…湾曲面、5g…カット面、5h…雄螺子、5j…カット面、6…筒状部材、6b…外面、6b1…小径部、6b2…突出部、6b3…内面、6b4…空間部、6b5…内面、6c…第1突部、6c1…端部、6d…固定部、6g…端面、6h…フランジ部、6j…拡張部、6k…根元部、6m…第1直線部、6p…第2直線部、6q…湾曲部、6r…貫通孔、6s…第1孔部、6t…第2孔部、6v…外周面、6w…傾斜面、6x…頂面、6y…壁面、6z…筒孔、7…雌螺子部材、7b…外面、7c…凸部、7d…雌螺子、10…キャップ、11…外キャップ、11c…環状凹部、11d…環状凸部、11f…内周面、11g…凹部、11h…端面、12…内キャップ、12b…環状凸部、12d…挿入部、20…繰出機構、30…ラチェット機構、D1…軸線方向、D2…径方向、D3…軸線方向、M…塗布材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11