(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129943
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】発泡粒子、発泡成形体及び複合構造部材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/18 20060101AFI20220830BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220830BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C08J9/18 CFD
B32B5/18
B32B27/36 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028833
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】権藤 裕一
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼▲原▼ 佑輔
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
【Fターム(参考)】
4F074AA65
4F074AA70
4F074AB01
4F074AB04
4F074AB05
4F074AC02
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4F074CA34
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4F074CC47Y
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4F074DA34
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4F100AK41A
4F100AK45A
4F100AL05A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA01A
4F100DH02B
4F100DJ01A
4F100GB31
4F100GB32
4F100GB48
4F100GB81
4F100JA05A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】本発明は、機械的物性に優れたポリカーボネート系樹脂発泡成形体、当該発泡成形体を形成するための基材樹脂粒子及び発泡粒子、当該発泡成形体及び表皮材から構成される複合構造部材、当該基材樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ポリカーボネート系樹脂及び非晶性ポリエステル系樹脂を含有する基材樹脂で構成された発泡粒子であって、
前記ポリカーボネート系樹脂はビスフェノールAに由来する単位を含有し、
非晶性ポリエステル系樹脂は環状ジオールに由来する単位を含有し、
前記発泡粒子の断面における中心部の最大気泡径が500μm以下である、
発泡粒子に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート系樹脂及び非晶性ポリエステル系樹脂を含有する基材樹脂で構成された発泡粒子であって、
前記ポリカーボネート系樹脂はビスフェノールAに由来する単位を含有し、
非晶性ポリエステル系樹脂は環状ジオールに由来する単位を含有し、
前記発泡粒子の断面における中心部の最大気泡径が500μm以下である、
発泡粒子。
【請求項2】
前記ポリカーボネート系樹脂が140~155℃のガラス転移温度を有し、前記非晶性ポリエステル系樹脂が100~130℃のガラス転移温度を有し、前記発泡粒子中に前記ポリカーボネート系樹脂と前記非晶性ポリエステル系樹脂とが30:70~80:20の質量比で含有される、請求項1に記載の発泡粒子。
【請求項3】
0.03~0.30g/cm3の嵩密度を有する、請求項1又は2に記載の発泡粒子。
【請求項4】
前記ポリカーボネート系樹脂及び前記非晶性ポリエステル系樹脂を含有する基材樹脂の発泡粒子であって、前記基材樹脂が固体粘弾性測定におけるtanδの最大値が1.6以下であり、損失弾性率E”の最大値が3.5.E+08Pa以下である、請求項1~3のいずれかに記載の発泡粒子。
【請求項5】
粒子断面における中心部の平均気泡径(a)が10~250μmであり、外周部の平均気泡径(b)が20~400μmである、請求項1~4のいずれかに記載の発泡粒子。
【請求項6】
無機系発泡剤を含有する請求項1~5のいずれかに記載の発泡粒子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の発泡粒子の発泡成形体。
【請求項8】
自動車部品用、複合部材の芯材用、梱包材用、電池部品用のいずれかである、請求項7に記載の発泡成形体。
【請求項9】
請求項7に記載の発泡成形体、及びその表面に積層された表皮材を含有する、複合構造部材。
【請求項10】
前記表皮材が、繊維強化プラスチックである、請求項9に記載の複合構造部材。
【請求項11】
加熱された基材樹脂を押出す工程、押出された基材樹脂を切断する工程、及び切断された樹脂粒子を冷却する工程を有する、発泡粒子製造用の基材樹脂粒子の製造方法であって、
前記基材樹脂は、ビスフェノールAに由来する単位を含有するポリカーボネート系樹脂及び環状ジオールに由来する単位を含有する非晶性ポリエステル系樹脂を含有し、
前記冷却工程が、気体中で樹脂粒子を冷却するものである、
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂を含有する発泡粒子、発泡成形体、複合構造部材、当該発泡粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、粒子内に大きな空隙を有さないポリカーボネート系樹脂を含有する発泡粒子及びその製造方法、並びに剛性が改善された発泡成形体及び複合構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡成形体は、軽いことに加え、加工性及び形状保持性がよく、比較的強度も強いため、食品トレー及び自動車用部材を始め、建材、土木資材、照明器具等のさまざまな分野で使用されている。特に耐熱性が要求されない場合にはポリスチレン系樹脂製の発泡成形体が用いられ、緩衝特性、回復性、柔軟性等が必要な場合にはポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂製の発泡成形体が用いられる傾向にある。
これらポリスチレン系樹脂及びオレフィン系樹脂よりも一般的に耐熱性及び剛性が高い樹脂として、ポリカーボネート系樹脂が知られている。ところで、型内発泡法のような発泡粒子を金型に充填して成形する成形方法では、金型内の空隙を埋めるまで発泡粒子が二次発泡する必要がある。そのためには発泡粒子が軟化状態で気泡構造を維持する必要がある。したがって型内発泡に使用される発泡粒子には高度な発泡特性が求められる。しかしながら、ポリカーボネート系樹脂は、その高い溶融粘度及び低い溶融張力により、発泡性に劣っていた。
【0003】
そこで、ポリカーボネート系樹脂に非晶性ポリエステル系樹脂を配合した基材樹脂を使用することで美麗な外観とある程度の強度を有する発泡成形体を製造する方法が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の製造方法で製造された発泡成形体よりも機械的物性に優れたポリカーボネート系樹脂発泡成形体を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者は、特許文献1の技術について更に検討したところ、この技術で得られる発泡粒子は中心部に大気泡(例えば、径が500μm超の気泡であり、シュリンクホールとも称される。)が存在し得ることを知覚した。本発明の発明者は、基材樹脂を切断後、空冷して得られる基材樹脂粒子から製造された発泡粒子が、大気泡より小さな気泡径を有すること、及びこの発泡粒子を使用して発泡成形体を製造することによって、機械的物性(例えば、圧縮強度又は最大曲げ強さ)がより向上した発泡成形体を得られること見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、代表的には以下の態様を包含する。
項1.
ポリカーボネート系樹脂及び非晶性ポリエステル系樹脂を含有する基材樹脂で構成された発泡粒子であって、
前記ポリカーボネート系樹脂はビスフェノールAに由来する単位を含有し、
非晶性ポリエステル系樹脂は環状ジオールに由来する単位を含有し、
前記発泡粒子の断面における中心部の最大気泡径が500μm以下である、
発泡粒子。
項2.
前記ポリカーボネート系樹脂が140~155℃のガラス転移温度を有し、前記非晶性ポリエステル系樹脂が100~130℃のガラス転移温度を有し、前記発泡粒子中に前記ポリカーボネート系樹脂と前記非晶性ポリエステル系樹脂とが30:70~80:20の質量比で含有される、項1に記載の発泡粒子。
項3.
0.03~0.30g/cm3の嵩密度を有する、項1又は2に記載の発泡粒子。
項4.
前記ポリカーボネート系樹脂及び前記非晶性ポリエステル系樹脂を含有する基材樹脂の発泡粒子であって、前記基材樹脂が固体粘弾性測定におけるtanδの最大値が1.6以下であり、損失弾性率E”の最大値が3.5.E+08Pa以下である、項1~3のいずれかに記載の発泡粒子。
項5.
粒子断面における中心部の平均気泡径(a)が10~250μmであり、外周部の平均気泡径(b)が20~400μmである、項1~4のいずれかに記載の発泡粒子。
項6.
無機系発泡剤を含有する項1~5のいずれかに記載の発泡粒子。
項7.
項1~6のいずれかに記載の発泡粒子の発泡成形体。
項8.
自動車部品用、複合部材の芯材用、梱包材用、電池部品用のいずれかである、項7に記載の発泡成形体。
項9.
項7に記載の発泡成形体、及びその表面に積層された表皮材を含有する、複合構造部材。
項10.
前記表皮材が、繊維強化プラスチックである、項9に記載の複合構造部材。
項11.
加熱された基材樹脂を押出す工程、押出された基材樹脂を切断する工程、及び切断された樹脂粒子を冷却する工程を有する、発泡粒子製造用の基材樹脂粒子の製造方法であって、
前記基材樹脂は、ビスフェノールAに由来する単位を含有するポリカーボネート系樹脂及び環状ジオールに由来する単位を含有する非晶性ポリエステル系樹脂を含有し、
前記冷却工程が、気体中で樹脂粒子を冷却するものである、
製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大気泡径のない、つまり中心部の最大気泡径が500μm以下の発泡粒子を提供できる。
本発明によれば、優れた機械的物性(例えば、圧縮強度(例えば10%変形圧縮応力)又は最大曲げ強さ)を有し、ポリカーボネート系樹脂を含有する発泡成形体及び複合構造部材を提供できる。
本発明の製造方法によれば、中心部の最大気泡径が500μm以下の発泡粒子を与え得る基材樹脂粒子を提供できる。
本発明によれば、密度が0.10g/cm3時の10%変形圧縮応力が0.58MPa以上の、ポリカーボネート系樹脂を含有する発泡成形体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1及び3で得られた発泡粒子の断面画像を示す。撮影倍率は30倍である。
【
図2】
図2は、実施例6及び9で得られた発泡粒子の断面画像を示す。撮影倍率は30倍及び27倍である。
【
図3】
図3は、比較例1で得られた発泡粒子の断面画像を示す。撮影倍率は30倍である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0011】
(基材樹脂)
基材樹脂は適当な大きさに切断されて基材樹脂粒子となる。本発明において、基材樹脂は、ポリカーボネート系樹脂及び非晶性ポリエステル系樹脂を含有する。ここで、前記ポリカーボネート系樹脂はビスフェノールAに由来する単位を含有し、非晶性ポリエステル系樹脂は環状ジオールに由来する単位を含有する。基材樹脂に占めるポリカーボネート系樹脂と非晶性ポリエステル系樹脂の合計割合は、70質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、100質量%であってもよい。
【0012】
(ポリカーボネート系樹脂)
一般的には、ポリカーボネート系樹脂は、ホスゲン又は炭酸とグリコール又は2価のフェノールとから形成されたポリエステル構造を有するものが多い。本発明ではポリカーボネート系樹脂は、ビスフェノールAに由来する単位(-O-Ar-C(CH3)2-Ar-O-(式中、Arは1位と6位で隣接原子と結合したベンゼン環を示す。))を含有する。このため、本発明では、ビスフェノールA(つまり、2,2-ビス(4-オキシフェニル)プロパン)から誘導されたポリカーボネート系樹脂を使用できる。
【0013】
ポリカーボネート系樹脂は、140℃~155℃のガラス転移温度を有することが好ましい。ガラス転移温度が前記範囲内であると、発泡粒子が高発泡性となり、発泡粒子同士の熱融着一体化が良好となり、発泡成形体の機械的物性が向上する。ガラス転移温度は、143℃~155℃が好ましく、145℃~155℃がより好ましい。
ポリカーボネート系樹脂は、3万~9万の質量平均分子量を有し得る。質量平均分子量が前記範囲内であると、発泡粒子の発泡性が向上し、発泡粒子同士の熱融着一体化が良好となり、発泡成形体の機械的物性が向上する。質量平均分子量は、3万~7万が好ましく、4万~6万がより好ましい。
【0014】
(非晶性ポリエステル系樹脂)
一般的には、非晶性ポリエステル系樹脂は、ポリカルボン酸とポリオールとの共重合樹脂が多い。本発明では環状ジオールに由来する単位を含有する非晶性ポリエステル系樹脂が使用される。非晶性ポリエステルとしては、ポリカルボン酸と環状ジオールとの共重合樹脂から選択されることが好ましい。ポリカルボン酸及び環状ジオールは、それぞれ、1種のみであっても、2種以上からなっていてもよい。ここで、非晶性とは、DSC測定にて得られたDSC曲線にて、結晶化による発熱ピーク及び結晶の融解による吸熱ピークが見られないことを意味する。
【0015】
ポリカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2-メチルテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-カルボキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、5-カルボキシ-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-カルボキシエチル)-1,3-ジオキサン等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
ポリカルボン酸は、テレフタル酸及びイソフタル酸から選択されることが好ましい。
【0016】
環状ジオールとしては、例えば、
1,3-シクロブタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5-デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6-デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7-デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルネンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロドデカンジメタノール等の飽和炭化水素環を有する環状ジオール;
スピログリコール(3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン)、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン等の飽和複素環を有する環状ジオール;
4,4’-(1-メチルエチリデン)ビスフェノール(ビスフェノールA)、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、4,4’-スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)等のビスフェノール化合物及びそのアルキレンオキシド付加物、
ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物等の芳香環を有する環状ジオール等が挙げられる。
【0017】
環状ジオールは、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール及びスピログリコールから選択されることが好ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂は、テレフタル酸と1,4-シクロヘキサンジメタノールとに由来するポリエステルと、テレフタル酸と2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールに由来するポリエステルとのコポリエステルであってもよい。
【0018】
非晶性ポリエステル系樹脂は、100℃~130℃のガラス転移温度を有することが好ましい。ガラス転移温度が100℃以上の場合、得られる発泡成形体の耐熱性が良好である。ガラス転移温度が前記範囲内にあると、発泡粒子の発泡性が向上し、発泡粒子同士の熱融着一体化が良好となり、発泡成形体の機械的物性が向上する。ガラス転移温度は、105℃~125℃が好ましく、105℃~120℃がより好ましく、108℃~120℃がさらに好ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂は、0.55~0.80のIV値(固有粘度)を有することが好ましい。IV値がこの範囲内であると、発泡粒子の発泡性が向上し、発泡粒子同士の熱融着一体化が良好となり、発泡成形体の機械的物性が向上する。IV値は、0.58~0.78が好ましく、0.60~0.75がより好ましい。
【0019】
(ポリカーボネート系樹脂と非晶性ポリエステル系樹脂の含有比)
ポリカーボネート系樹脂と非晶性ポリエステル系樹脂とが、基材樹脂中に、30:70~80:20の質量比で含有されることが好ましい。含有比がこの範囲内であると、発泡粒子の発泡性が向上し、発泡粒子同士の熱融着一体化が良好となり、発泡成形体の機械的物性が向上する。質量比は、40:60~80:20がより好ましく、50:50~70:30が更に好ましい。
【0020】
(他の樹脂及び添加剤)
前記基材樹脂は、前記ポリカーボネート系樹脂及び前記非晶性ポリエステル系樹脂以外の他の樹脂を含んでいてもよい。他の樹脂としては、アクリル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ABS系樹脂、ポリスチレン系樹脂、及びポリフェニレンオキサイド系樹脂等が挙げられる。
基材樹脂には必要に応じて、樹脂以外に添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、充填剤、着色剤、耐候剤、老化防止剤、滑剤、防曇剤、香料等が挙げられる。
【0021】
(基材樹脂の物性)
基材樹脂は、これを固体粘弾性測定に供して示されるtanδの最大値が1.6以下であることが好ましい。tanδの最大値が前記範囲内であると、高発泡化の点で有利である。tanδの最大値は、1.1~1.6がより好ましく、1.2~1.6が更に好ましい。
基材樹脂は、これを固体粘弾性測定に供して示される損失弾性率E”の最大値が3.5.E+08Pa以下であることが好ましい。損失弾性率E”の最大値が前記範囲内であると、高発泡化及び2次発泡性の点で有利である。損失弾性率E”の最大値は、2.8.E+08Pa~3.5.E+08Paがより好ましく、3.0.E+08Pa~3.5.E+08Paが更に好ましい。
基材樹脂が前記範囲内のtanδ及び/又は損失弾性率E”の最大値を有すると、発泡成形体の表面伸びがよくなり発泡成形体の外観がよくなる点、発泡成形条件(加熱時間、蒸気圧力等)を広い範囲から選択可能になる点で有利である。
【0022】
(固体粘弾性測定)
基材樹脂の粘弾性測定は以下の条件によって実施できる。
固体粘弾性測定は、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTRAR DMS6100」粘弾性スペクトロメータを用いる。まず試料をオーブンで100℃、4hr乾燥する。その後、熱プレス機にて温度230℃の条件下で樹脂を成形し、長さ40mm、幅10mm、厚み1mmの試験片を作製する。なお、試験片の寸法測定には、Mitutoyo Corporation製 「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いる。
モード:引張制御モード
雰囲気:窒素雰囲気
周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:30℃~220℃
チャック間隔:20mm
歪振幅:5μm
最小張力:100mN
張力ゲイン:1.5
力振幅初期値:100mN
装置付属の解析ソフトを用いて解析を行い、測定温度80~190℃における、損失弾性率E”の最大値及び貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”から算出される損失正接tanδ=E”/E’ の最大値を導き出す。
【0023】
基材樹脂は、一般的には、加熱された基材樹脂(例えば溶融混練された基材樹脂)を押出し、次いで切断し、冷却することで粒子化される。ここで、粒子化の方法としては、基材樹脂に金型(ダイス)から押出された樹脂を水中に投入して水中で切断する方法(ストランド法)、水中の金型から押出された樹脂をそのまま水中で切断する方法(アンダーウォーターカット法)、金型から押出された樹脂を切断後、切断された粒子を水中で冷却する方法(ホットカット及び水冷による方法)などの水中で粒子を冷却する工程を有する方法が知られている。しかし、ビスフェノールAに由来する単位を含有するポリカーボネート系樹脂及び環状ジオールに由来する単位を含有する非晶性ポリエステル系樹脂を含有する基材樹脂に、これらの方法を適用すると、これら方法で得られる基材樹脂粒子を発泡させて得られる発泡粒子が大気泡(シュリンクホール)を有し得る。
本発明では、押出された樹脂を切断後、大気等の気体の下で冷却する。これによって、切断された樹脂粒子を比較的緩やかに冷却でき、その結果、大気泡の発生が抑制された本発明の発泡粒子が得られる。
【0024】
例えば、基材樹脂粒子は、加熱された基材樹脂を押出す工程(押出工程)、押出された基材樹脂を切断する工程(切断工程)、及び切断された基材樹脂を気体中で冷却する工程(冷却工程)により製造できる。
押出工程及び切断工程は、基材樹脂の種類、所望の粒子の形状、サイズ等に応じて公知の方法により実施できる。例えば、基材樹脂を溶融混練し、ダイスから大気中に押出した後、大気中で切断することにより実施できる。溶融混練時の温度、時間、圧力等は、使用原料及び製造設備に合わせて適宜設定できる。例えば、溶融混練時の押出機内の溶融混練温度は、原料樹脂が十分に軟化する温度である、260~330℃が好ましく、270~300℃がより好ましい。溶融混練温度とは、押出機ヘッド付近の溶融混練物流路の中心部温度を熱電対式温度計で測定した押出機内部の溶融混練物の温度を意味する。
冷却工程は、例えば、常温雰囲気温度下の気体を導入しながら切断され、さらに切断された樹脂粒子が滞留する場所の壁(周囲部)は常に冷却媒体で冷やされた状態にしておくことによって、樹脂粒子の合着を防ぎながら、緩やかに冷却される。壁(周囲部)を冷却する手段は、特に制限はなく、例えば、水などを用いて、周囲部を定常的に冷却することが考えられる。
前記気体としては空気、ミスト、窒素等であってよいが、ハンドリングの点から空気が好ましい。
【0025】
基材樹脂の粒子の形状は公知の形状であればよいが、円筒状、楕円球状(卵状)又は球状であることが好ましい。また形状は、基材樹脂粒子から得られる発泡粒子の金型への充填性がよい点から、楕円球状又は球状であることがより好ましい。
基材樹脂粒子は、0.5mm~1.4mmの平均粒子径を有していることが好ましい。
【0026】
(発泡性粒子)
発泡性粒子は、基材樹脂粒子と発泡剤を含有する。
発泡剤としては、例えば、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン等の有機系ガス、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等の無機系ガスを使用でき、無機系ガスが好適である。これら発泡剤は、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。有機系ガスとしては、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタンのいずれか又はこれらの組み合わせが好適である。無機系ガスとしては二酸化炭素、窒素、空気のいずれか又はこれらの組合せが好適であり、二酸化炭素(炭酸ガス)がより好適である。
発泡性粒子における発泡剤の含有量は、基材樹脂粒子100質量部に対して、1~25質量部が好適である。
【0027】
発泡性粒子は、例えば、基材樹脂粒子に発泡剤を含浸することで得ることができる。含浸は、それ自体公知の方法により行うことができる。例えば、樹脂粒子を水系に分散し、撹拌させながら発泡剤を圧入することで含浸させる湿式含浸法や、密閉可能な容器に樹脂粒子を投入し、発泡剤を圧入して含浸させる実質的に水を使用しない乾式含浸法(気相含浸法)等が挙げられる。特に水を使用せずに含浸できる乾式含浸法が好ましい。樹脂粒子に発泡剤を含浸させる際の含浸圧、含浸時間及び含浸温度は特に限定されない。
含浸を効率的に行い、より一層良好な発泡粒子及び発泡成形体を得る観点からは、含浸圧は0.5MPa~10MPa(ゲージ圧)であることが好ましい。1MPa~4.5MPa(ゲージ圧)であることがより好ましい。含浸時間は、0.5時間~200時間であることが好ましく、1時間~100時間がより好ましい。
【0028】
発泡性粒子には、結合防止剤(合着防止剤)、帯電防止剤、展着剤等の表面処理剤を添加してもよい。
上記結合防止剤は、発泡工程において、発泡粒子同士の合着を防止する役割を果たす。ここで、合着とは、複数の発泡粒子が合一して一体化することをいう。上記結合防止剤の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
上記帯電防止剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル及びステアリン酸モノグリセリド等が挙げられる。
上記展着剤としては、ポリブテン、ポリエチレングリコール、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0029】
(発泡粒子)
発泡粒子(一般的には予備発泡粒子と称されることもある。)は、発泡性粒子を発泡させて得られる粒子である。この発泡は予備発泡と称されることもある。上記基材樹脂粒子を使用することによって、発泡粒子製造時の大気泡の発生が抑制される。
【0030】
発泡粒子の嵩密度は、0.03g/cm3~0.30g/cm3が好適であり、0.04g/cm3~0.25g/cm3がより好適であり、0.05g/cm3~0.20g/cm3が更に好適である。嵩密度がこの範囲内にあると、大気泡の形成が抑制される点、発泡成形体の強度が高い点、又は発泡成形体が軽量になる点で有利である。発泡粒子の嵩密度は実施例に記載された方法で特定できる。
【0031】
発泡粒子の形状は、発泡成形体を製造できさえすれば特に限定されず、例えば、球状、略球状、円筒形等が挙げられる。発泡粒子は、0.7以上の平均のアスペクト比で示される外形を有していることが好ましく、0.7~1がより好ましい。
【0032】
発泡粒子の平均粒子径は、発泡成形体を製造できさえすれば特に限定されないが、1.0mm~6.0mmであることが好ましく、1.5mm~4.0mmであることがより好ましい。
【0033】
(発泡粒子の気泡径)
発泡粒子は、中心部の最大気泡径が500μm以下であり、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下である。したがって、発泡粒子は大気泡を有さない。最大気泡径が前記範囲内であると、発泡成形体が高剛性(高弾性率)となる。
発泡粒子の断面における中心部の平均気泡径(a)は10μm~250μmが好適であり、10μm~200μmがより好適であり、10μm~150μmが特に好適である。平均気泡径(a)が前記範囲内であると、発泡体の機械的物性の向上の点で有利である。
発泡粒子の断面における外周部の平均気泡径(b)が20μm~400μmが好適であり、20μm~300μmがより好適であり、20μm~200μmが特に好適である。平均気泡径(b)が前記範囲内であると、発泡持続性及び高発泡化の点で有利である。
発泡粒子において、外周部の平均気泡径(b)は中心部の平均気泡径(a)より大きいと(b>a)、発泡持続性及び機械的物性の向上の点で有利である。
【0034】
(発泡粒子の気泡径)
発泡粒子の最大気泡径は、真球に近い形状の発泡粒子をその略中心点で二分割し、その断面を撮影した画像(例:25~100倍断面画像)から測定する。
前記断面画像中の断面を略円形とみなし、その円(断面円)の直径の中央を、発泡粒子の中心点とする。その中心点を中心として、断面円の半径の半分の長さで別の円(1/2円)を描き、その円内を中心部とする。したがって、1/2円の外周は断面円の半径の中央を通る線である。
前記断面画像で確認される発泡粒子表面から1及び2層目を外周部とする。
中心部の平均気泡径(a)は中心部に存在する気泡の長径の平均値(μm)である。
外周部の平均気泡径(b)は外周部に存在する気泡の長径の平均値(μm)である。
平均気泡径を決定する方法の詳細は実施例に記載する。
【0035】
発泡粒子を製造する方法としては、密閉し得る容器中で、発泡性粒子を水蒸気のような加熱媒体で加熱する方法が挙げられる。加熱条件としては、例えば、0.1MPa~0.5MPaのゲージ圧、100℃~159℃の温度、10秒~180秒が挙げられる。加熱条件は所望の嵩密度の発泡粒子が得られるように適宜変更できる。
発泡粒子の粒径は押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型の径を変えること等によって変動させることができる。
【0036】
(発泡成形体)
発泡成形体は、発泡粒子の融着体から構成された発泡体であり、例えば、上記発泡粒子を発泡成形させて得られる。上記発泡粒子から得られる発泡成形体は、機械的物性(例えば、圧縮強度又は最大曲げ強さ)がより向上したものとなる。
【0037】
発泡成形体の密度は、0.015g/cm3~0.30g/cm3が好適であり、0.020g/cm3~0.25g/cm3がより好適であり、0.05g/cm3~0.20g/cm3がさらに好適である。密度が前記範囲内にあると、軽量性と強度の双方に優れる。発泡成形体の密度は実施例に記載された方法で特定できる。
【0038】
発泡成形体の最大曲げ強さは、例えば0.8MPa以上、0.8MPa~4.0MPa、0.9MPa~3.8MPa等とでき、0.9MPa~3.5MPaが好適である。
また、最大曲げ強さは、成形体密度が0.10g/cm3のときに、例えば0.9MPa以上、0.9MPa~2.5MPa等とでき、1.0MPa~2.2MPaが好適であり、1.0MPa~2.0MPaがより好適である。
曲げ最大点応力は実施例に記載された方法で特定できる。
【0039】
発泡成形体の10%変形圧縮応力は、例えば0.5MPa以上、0.5MPa~3.0MPa、0.6MPa~3.0MPa等とでき、0.6MPa~2.5MPaが好適であり、0.6MPa~2.2MPaがより好適である。
また、10%変形圧縮応力は、成形体密度が0.10g/cm3のときに、例えば0.5MPa以上、0.5MPa~1.0MPa等とでき、0.5MPa~0.9MPaが好適であり、0.6MPa~0.9MPaがより好適である。
10%変形圧縮応力は実施例に記載された方法で特定できる。
【0040】
発泡成形体の圧縮弾性率は、例えば13MPa以上とでき、13MPa~35MPa等とでき、13MPa~30MPaが好適であり、15MPa~30MPaがより好適である。
また、圧縮弾性率は、成形体密度が0.10g/cm3のときに、13MPa以上、13MPa~70MPa等とでき、15MPa~65MPaが好適であり、15MPa~60MPaがより好適である。
圧縮弾性率は実施例に記載された方法で特定できる。
【0041】
(発泡成形体の製造)
発泡成形体の製造方法としては、発泡粒子から発泡成形体を製造する公知の方法を使用できる。例えば、発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、キャビティ内に加熱媒体を供給して、発泡粒子を加熱して再発泡(二次発泡)させ、再発泡させた発泡粒子同士をこれらの発泡圧力によって互いに熱融着一体化させることによって発泡成形体を得る方法が挙げられる。
加熱媒体としては、例えば、水蒸気、熱風、温水等が挙げられ、水蒸気が好ましい。
水蒸気に加えられる圧力及び時間は、発泡成形できる限り特に制限されないが、0.2MPa~0.5MPa及び10秒~90秒が好適である。
【0042】
また、発泡粒子の発泡性を調整するために、再発泡の前に、発泡粒子に内圧を付与する工程を加えることが好ましい。例えば、密閉可能な容器中に発泡粒子及び発泡剤を封入し加圧して発泡粒子に発泡剤を含浸させることで発泡粒子に内圧を付与できる。
ここで使用する発泡剤としては、発泡性粒子製造に使用できる発泡剤を使用できる。その中でも無機系発泡剤が好ましく、窒素ガス、空気及び二酸化炭素から選択される1種又は2種以上がより好ましい。
内圧付与工程における圧力は、発泡粒子がつぶれてしまわない程度の圧力でかつ発泡力を付与できる範囲であることが望ましい。そのような圧力は、0.1MPa~4MPaであることが好ましく、0.3MPa~3MPaであることがより好ましい。
【0043】
発泡成形体は、耐熱性及び機械的物性(例えば、最大曲げ強さ又は圧縮強度)に優れているため、例えば、自動車、航空機、鉄道車輛、船舶等の輸送機器の部品、複合部材の芯材(例えばFRPの芯材)、梱包材、電池部品等の用途に好適に用いることができる。自動車用部品としては、例えば、フロアパネル、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバー、ホイール、ステアリングホイール、コンテナ(筐体)、フードパネル、サスペンションアーム、バンパー、サンバイザー、トランクリッド、ラゲッジボックス、シート、ドア、カウル等が挙げられる。
【0044】
(複合構造部材)
発泡成形体は、その表面に表皮材を積層し、発泡成形体と表皮材とを、例えば接着剤、熱融着等により、一体化させて複合構造部材とすることもできる。発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて複合構造部材を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、
(1)発泡成形体の表面に接着剤を介して表皮材を積層及び一体化する方法、
(2)発泡成形体の表面に、強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸されてなる繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱可塑性樹脂をバインダーとして発泡成形体の表面に繊維強化プラスチック形成材を繊維強化プラスチックとして積層一体化する方法、
(3)発泡成形体の表面に、強化繊維に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸された繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱硬化性樹脂をバインダーとして、熱硬化性樹脂を硬化させて形成された繊維強化プラスチックを発泡成形体の表面に積層一体化する方法、
(4)発泡成形体の表面に、加熱されて軟化状態の表皮材を配設し、発泡成形体の表面に表皮材を押圧させることによって表皮材を必要に応じて発泡成形体の表面に沿って変形させながら発泡成形体の表面に積層一体化させる方法、
(5)繊維強化プラスチックの成形で一般的に適用される方法等が挙げられる。
【0045】
発泡成形体が発泡シートである場合、発泡成形体の両面に表皮材が積層されている必要はなく、発泡成形体の両面のうち少なくとも一方の面に表皮材が積層されていればよい。表皮材は、複合構造部材の用途に応じて決定すればよい。なかでも、複合構造部材の表面硬度や機械的物性を考慮すると、発泡成形体の厚み方向における両面のそれぞれに表皮材が積層されていることが好ましい。
【0046】
表皮材としては、特に限定されず、繊維強化プラスチック、金属シート、合成樹脂フィルム等が挙げられる。この内、繊維強化プラスチックが好ましい。
【0047】
繊維強化プラスチックを構成している強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維等の無機繊維;ステンレス繊維、スチール繊維等の金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維等の有機繊維;ボロン繊維が挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的物性をプラスチックに付与できる。
【0048】
繊維強化プラスチックの厚みは、0.02mm~2mmが好ましく、0.05mm~1mmがより好ましい。厚みがこの範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
【0049】
繊維強化プラスチックの目付は、50g/m2~4000g/m2が好ましく、100g/m2~1000g/m2がより好ましい。目付がこの範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
【0050】
繊維強化プラスチックの成形で用いられる方法としては、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、PCM(Prepreg Compression Molding)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法等が挙げられる。
【0051】
このようにして得られた複合構造部材は、耐熱性、機械的物性及び軽量性に優れている。そのため、自動車、航空機、鉄道車輛、船舶等の輸送機器分野、家電分野、情報端末分野、家具の分野等の広範な用途に用いることができる。
例えば、複合構造部材は、輸送機器の部品、及び、輸送機器の本体を構成する構造部品を含めた輸送機器構成用部品(特に自動車用部品)、風車翼、ロボットアーム、ヘルメット用緩衝材、農産箱、保温保冷容器等の輸送容器、産業用ヘリコプターのローターブレード及び部品梱包材として好適に用いることができる。
自動車用部品としては、例えば、フロアパネル、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバー、ホイール、ステアリングホイール、コンテナ(筐体)、フードパネル、サスペンションアーム、バンパー、サンバイザー、トランクリッド、ラゲッジボックス、シート、ドア、カウル等の部品が挙げられる。
【実施例0052】
以下に実施例等を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例等に何ら限定されるものでない。まず、実施例及び比較例にて使用された測定方法等について説明する。なお、実施例等においてNDは測定を実施していないことを表す。
【0053】
(メルトマスフローレート(MFR))
メルトマスフローレートは、JIS K 7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」B法記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法により測定した。すなわち安田精機製作所製「メルトフローインデックステスター 120-SAS」を用いて、測定条件は試料3~8g、予熱5分、ロードホールド30秒、試験温度300℃、試験荷重11.77N、ピストン移動距離(インターバル):25mmとした。試料は予め100℃の減圧オーブンで3時間以上乾燥させ、試験回数は3回とし、その平均をメルトマスフローレート(g/10分)の値とした。
【0054】
(ガラス転移温度)
樹脂、樹脂粒子及び発泡成形体のガラス転移温度はJIS K7121:1987、JIS K7121:2012に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下のように行った。試料をアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう5.5±0.5mg充てん後、アルミニウム製の蓋をした。次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/minのもと以下のようなステップで試料を加熱及び冷却してDSC曲線を得た。
(ステップ1)20℃/minの速度で30℃から220℃まで昇温し、10分間保持。
(ステップ2)試料を速やかに取出し、25±10℃の環境下にて放冷。
(ステップ3)20℃/minの速度で30℃から220℃まで昇温。
得られたDSC曲線より、装置付属の解析ソフトを用いて、2回目昇温過程にみられる中間点ガラス転移温度を算出した。この時に基準物質としてアルミナを用いた。この中間点ガラス転移温度は該規格(9.3項)より求めた。
【0055】
(固体粘弾性測定)
基材樹脂粒子の粘弾性測定は以下の条件によって実施した。
固体粘弾性測定は、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTRAR DMS6100」粘弾性スペクトロメータを用いた。まず試料をオーブンで100℃、4hr乾燥した。その後、熱プレス機にて温度230℃の条件下で樹脂を成形し、長さ40mm、幅10mm、厚み1mmの試験片を作製した。なお、試験片の寸法測定には、Mitutoyo Corporation製 「DIGIMATIC」CD-15タイプを用いた。
モード:引張制御モード
雰囲気:窒素雰囲気
周波数:1Hz
昇温速度:5℃/分
測定温度:30℃~220℃
チャック間隔:20mm
歪振幅:5μm
最小張力:100mN
張力ゲイン:1.5
力振幅初期値:100mN
装置付属の解析ソフトを用いて解析を行い、測定温度80~190℃における、損失弾性率E”の最大値及び貯蔵弾性率E’と損失弾性率E”から算出される損失正接tanδ=E”/E’ の最大値を導き出した。
【0056】
(最低発泡嵩密度)
耐圧密閉容器に発泡性樹脂粒子を投入後、水蒸気を導入し、所定の圧力にて60秒間保持して発泡させた。得られた発泡粒子の嵩密度を測定した。得られた嵩密度のうち、容器内圧力は、0.15、0.17、0.19、0.21、0.23、0.25、0.27MPa(ゲージ圧)などとした。各圧力で発泡した発泡粒子の嵩密度の中で、一番低密度であった嵩密度を最低発泡嵩密度とした。
【0057】
(嵩密度)
嵩密度は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した。即ち、この規格に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定した。
発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)-メスシリンダーの質量(g)〕/〔メスシリンダーの容量(cm3)〕
【0058】
(発泡成形体の密度)
発泡成形体(成形後、55℃で4時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例;75mm×300mm×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求めた。
【0059】
(気泡径)
発泡粒子の最大気泡径は、真球に近い形状の発泡粒子をその略中心点で二分割し、その断面を撮影した画像(例:25~100倍断面画像)から測定した。
前記断面画像中の断面を略円形とみなし、その円(断面円)の直径の中央を、発泡粒子の中心点とする。その中心点を中心として、断面円の半径の半分の長さで別の円(1/2円)を描き、その円内を中心部とした。したがって、1/2円の外周は断面円の半径の中央を通る線である。
前記断面画像で確認される発泡粒子表面から1及び2層目を外周部とした。
中心部の平均気泡径(a)は中心部に存在する気泡の長径の平均値(μm)である。
外周部の平均気泡径(b)は外周部に存在する気泡の長径の平均値(μm)である。
画像をA4用紙に印刷し、中心部及び外周部の気泡として、それぞれ任意に少なくとも10個の気泡の断面から気泡径を測定し、得られた測定値を撮影倍率で除し、その平均値を算出した。詳細には、気泡断面の輪郭線上において相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡径」とした。
【0060】
(発泡成形体の密度;g/cm3)
発泡成形体から切り出した試験片の重量(a)と体積(b)を測定し、式(a)/(b)により求めた。
【0061】
(曲げ試験:最大曲げ強さ及び見かけ曲げ弾性率)
最大曲げ強さ及び見かけ曲げ弾性率はJIS K7221-1:2006に準拠し測定した。すなわち、最大曲げ強さ及び見かけ曲げ強さは(株)島津製作所製「オートグラフAG-X plus 100kN」万能試験機、(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理を用いて測定した。幅25mm×長さ130mm×厚さ20mmを切り出した。試験片の数は5個とした。試験片はJIS K7100:1999の記号「23/50」、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調節した後、同じ標準雰囲気下、試験速度を10mm/分とした。加圧くさびおよび支点の先端部の半径を5Rとし、支点間距離を100mmとして測定した。
最大曲げ強さ及び見かけ曲げ弾性率はJIS K7221-2規定の式に従い求めた。得られたグラフより、傾きが最大となる荷重領域を設定し、前記万能試験機データ処理にて見かけ曲げ弾性率を求めた。この弾性率の直線とストロークの交点を伸びの原点とし、対応する最大曲げ強さを自動算出した。
【0062】
(圧縮試験:圧縮弾性率及び10%変形圧縮応力)
圧縮弾性率及び10%変形圧縮応力は、JIS K7220:2006に準拠し、測定した。すなわち、圧縮弾性率及び10%変形圧縮応力は(株)島津製作所製「オートグラフAG-X plus 100kN」万能試験機、(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理を用いて測定した。試験片サイズは50mm×50mm×厚み25mm、スキン層はなしとし、試験片の数は3~5個とした。試験片はJIS K7100:1999の記号「23/50」、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調節した後、同じ標準雰囲気下、圧縮速度2.5mm/分の条件で測定を行った。
得られたグラフより、傾きが最大となる荷重領域を設定し、前記万能試験機データ処理にて圧縮弾性率を求めた。この弾性率の直線とストロークの交点を伸びの原点とし、10%変形圧縮応力を自動算出した。
【0063】
【0064】
(非晶性ポリエステル系樹脂)
PCT(ガラス転移温度110℃、IV値0.72、比重1.18)
【0065】
(実施例1)
(樹脂粒子製造工程)
PC1及びPCTを質量比60:40で採取し、100℃で3時間乾燥させた。得られた乾燥物(基材樹脂)を240℃~280℃で溶融混練した。続いて、単軸押出機の先端部に装着したダイス(温度:240℃、入り口側樹脂圧:18MPa)のダイス孔(直径1.0mmのノズルが8個配置)からチャンバー内に押出し、2枚の切断刃を有する回転刃の回転軸を3000rpmの回転数で回転させ、粒状に切断した(ホットカット)。容器の外周部が冷却されることによって容器内の空気が冷却された容器に切断された樹脂を落下させ、ブロアーエアーで樹脂粒子を別の容器へ圧送することにより、空気のみで冷却した基材樹脂粒子を作製した。
【0066】
(含浸工程:発泡性粒子の製造)
上記樹脂粒子100質量部を圧力容器中に密閉し、圧力容器内を二酸化炭素で置換した後、二酸化炭素を、含浸圧(ゲージ圧)1.4MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、含浸時間24時間が経過した後、5分間かけて圧力容器内をゆっくりと除圧した。このようにして、樹脂粒子に二酸化炭素を含浸させて、発泡性粒子を得た。
【0067】
(発泡工程;発泡粒子の製造)
上記含浸工程における除圧後、直ぐに、圧力容器から発泡性粒子を取り出した後、水蒸気を用いて、発泡性粒子を攪拌及び流動させながら、発泡温度128℃で発泡粒子の容積を確認しつつ、上記発泡性樹脂粒子を水蒸気により嵩密度0.095(g/cm3)へ予備発泡させた。予備発泡後に粒子を乾燥させ、発泡粒子を得た。
【0068】
(成形工程)
得られた発泡粒子を圧力容器中に密閉し、圧力容器内に圧縮空気を含浸圧(ゲージ圧)0.5MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を24時間実施した。取り出し後、発泡粒子を30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.3MPaの水蒸気にて60秒間加熱することにより、発泡成形した。次いで、発泡成形体の発泡面圧が0.02MPaに低下するまで冷却して発泡成形体を得た。
【0069】
(実施例2)
発泡工程において、加熱時間を調整しながら嵩密度0.135(g/cm3)の発泡粒子を得たこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0070】
(実施例3)
ポリカーボネート系樹脂をPC2へ変更したことと、発泡温度を131℃としたこと以外は、実施例1と同様にして発泡成型体を得た。
【0071】
(実施例4)
ポリカーボネート系樹脂をPC2へ変更し、発泡工程において、発泡温度を131℃とし、加熱時間を調整しながら嵩密度0.135(g/cm3)の発泡粒子を得たことを変更した以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0072】
(実施例5)
ポリカーボネート系樹脂をPC2へ変更し、発泡工程において、発泡温度を131℃とし、加熱時間を調整しながら嵩密度0.190(g/cm3)の発泡粒子を得たこと変更した以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0073】
(実施例6)
ポリカーボネート系樹脂をPC3へ変更した以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0074】
(実施例7)
ポリカーボネート系樹脂をPC4へ変更した以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0075】
(実施例8)
ポリカーボネート系樹脂および非晶性ポリエステル系樹脂100重量部に対して、カーボン含有量が20%であり、ベース樹脂がポリカーボネート系樹脂であるカーボンマスターバッチを2.5重量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0076】
(実施例9)
PC1とPCTの配合比率を80:20とし、予備発泡時の発泡温度を138℃とし、発泡成形時の蒸気圧力を0.32MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0077】
(比較例1)
(樹脂粒子製造工程)
PC2及びPCTを質量比60:40で採取し、100℃で3時間乾燥させた。得られた乾燥物(基材樹脂)を240℃~280℃で溶融混練した。続いて、単軸押出機の先端部に装着したダイス(温度:300℃、入り口側樹脂圧:14MPa)のダイス孔(直径1.0mmのノズルが9個配置)から、50℃の冷却水を収容したチャンバー内に押出し、6枚の切断刃を有する回転刃の回転軸を5000rpmの回転数で回転させ、粒状に切断し(水中カット)、その冷却水中で冷却された粒子を基材樹脂粒子として得た。
得られた基材樹脂粒子を使用して実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0078】
(比較例2)
発泡工程において、加熱時間を調整しながら嵩密度0.130(g/cm3)の発泡粒子を得たこと以外は比較例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0079】
(比較例3)
発泡工程において、加熱時間を調整しながら嵩密度0.155(g/cm3)の発泡粒子を得たこと以外は比較例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0080】
(比較例4)
(樹脂粒子製造工程)
PC2及びPCTを質量比60:40で採取し、100℃で3時間乾燥させた。得られた乾燥物(基材樹脂)を240℃~280℃で溶融混練した。続いて、単軸押出機の先端部に装着したダイス(温度:280℃、入り口側樹脂圧:18MPa)のダイス孔(直径1.0mmのノズルが4個配置)から、チャンバー内に押出し、2枚の切断刃を有する回転刃の回転軸を5400rpmの回転数で回転させ、空気中で粒状に切断した(ホットカット)。切断した樹脂を一旦空気中に晒した後、10℃の冷却水で、粒子を冷却して基材樹脂粒子を作製した。
得られた基材樹脂粒子を使用して実施例1と同様にして発泡成形体を得た。
【0081】
実施例及び比較例で得られた基材樹脂、基材樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体の物性等を表2及び3に示す。表中、「大気泡」は気泡径が500μm超の気泡の存在を示す。
断面撮影画像から、全ての実施例中、中心部の最大気泡の気泡径は約130μmであり、大気泡(気泡径500μm超)が存在しないことを確認した。
また、実施例1、3、6及び9並びに比較例1の発泡粒子の断面を撮影した画像を
図1~3に示す。
【0082】
【0083】
【0084】
表2及び3並びに
図1~3から、基材樹脂を切断後、空気中で冷却して得られた基材樹脂粒子から得られた発泡粒子には、大気泡の存在が確認されず、中心部及び外周部の気泡径のバラツキが比較例1より小さいことが分かる。また、比較例の発泡粒子は実施例の発泡粒子よりも最低発泡嵩密度が低く、嵩高かった。これは、比較例の発泡粒子に大気泡が存在することにより、発泡剤を含んだ発泡性粒子が高発泡化して嵩高くなったものとわかる。さらに、表2及び3から、大気泡の存在しない実施例1~9の発泡粒子から製造された発泡成形体は、同程度の成形体密度を有する比較例の発泡成形体より、最大曲げ強さ、圧縮強度等の機械的物性に優れることが分かる。実施例9の発泡成形体は、実施例1~8の発泡成形体と比較すると、表面において若干の小さな凹みが見られたことから、実施例1~8の発泡成形体は表面の美麗さの点でも優れたものであった。