(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129960
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】フラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20220830BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20220830BHJP
C22C 13/02 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
B23K35/363 D
B23K35/363 E
B23K35/26 310A
C22C13/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028859
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】邑田 美智子
(72)【発明者】
【氏名】大谷 怜史
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光康
(57)【要約】
【課題】接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制することが可能なフラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、ヒドロキシ基を3つ以上有すると共に、分子量が150以下である多価溶剤と、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、該2つのヒドロキシ基間で直鎖状に結合する炭素原子の数が4つ以上で、かつ、常温で液体の液体溶剤と、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、常温で固体の固体溶剤と、チキソ剤と、を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けに用いられるフラックスであって、
ヒドロキシ基を3つ以上有すると共に、分子量が150以下である多価溶剤と、
ヒドロキシ基を2つ有すると共に、該2つのヒドロキシ基間で直鎖状に結合する炭素原子の数が4つ以上で、かつ、常温で液体の液体溶剤と、
ヒドロキシ基を2つ有すると共に、常温で固体の固体溶剤と、
チキソ剤と、を含有するフラックス。
【請求項2】
前記多価溶剤の含有量が、0.5質量%以上60.0質量%以下である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記多価溶剤が、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、及び、エリスリトールから選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のフラックス。
【請求項4】
前記液体溶剤の含有量が、フラックス全体に対して、5.0質量%以上78.0質量%以下である、請求項1~3のいずれか一つに記載のフラックス。
【請求項5】
前記液体溶剤が、3-メチル1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、及び、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールから選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか一つに記載のフラックス。
【請求項6】
さらに、ヒドロキシ基を1つ有する1価溶剤を含む、請求項1~5のいずれか一つに記載のフラックス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載のフラックスと、はんだ合金と、を含む、ソルダペースト。
【請求項8】
請求項7に記載のソルダペーストを用いて、基板と接合部品とを接合する、接合構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、該フラックスを含むソルダペースト、及び、該ソルダペーストを用いた接合構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板等の電子回路基板と接合部品との接合には、はんだ合金とフラックスとを混合したソルダペーストが用いられる。ソルダペーストは、基板表面の電極部に塗布されると共に、該電極部に接合部品の電極部を接触させた状態で加熱(リフロー)される。これにより、はんだ合金が溶融してはんだ接合部が形成され、該はんだ接合部を介して基板と接合部品とが接合された接合構造体を得ることができる。
【0003】
従来、リフロー後のフラックス残渣を低減する観点から、ロジンを含まないフラックスが数多く開発されている。例えば、特許文献1では、ロジンの代わりに、液体溶剤と固体溶剤とを併用したフラックスが開示されている。このようなロジンを含まないフラックスでは、リフロー中に減圧工程を入れることでボイドの排出を促したり、還元雰囲気下でリフローを行い、はんだの濡れ性を改善したりすることで、ボイドの低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、高電圧、大電流を取り扱える半導体として、パワーデバイスが広く用いられている。パワーデバイスは、動作時に高温となり、故障が生じ得る。そのため、放熱対策を講じた金属ベース高放熱基板やヒートシンクを用いて、効率よく熱を外に逃がす工夫がなされている。
【0006】
金属ベース高放熱基板やヒートシンクのように接合部の面積が大きい場合、冷却効率を向上させるため、接合部におけるボイドのさらなる低減が求められる。また、パワーデバイスは発熱量が大きいため、接合部中に大きなボイドが存在すれば、熱伝導の妨げになる虞がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制することが可能なフラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、ヒドロキシ基を3つ以上有すると共に、分子量が150以下である多価溶剤と、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、該2つのヒドロキシ基間で直鎖状に結合する炭素原子の数が4つ以上で、かつ、常温で液体の液体溶剤と、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、常温で固体の固体溶剤と、チキソ剤と、を含有する。
【0009】
前記フラックスは、斯かる構成により、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制することができる。
【0010】
本発明に係るフラックスは、前記多価溶剤の含有量が、0.5質量%以上60.0質量%以下であってもよい。
【0011】
本発明に係るフラックスは、斯かる構成により、接合部におけるボイドをより低減すると共に、大きなボイドの発生をより抑制することができる。
【0012】
本発明に係るフラックスは、前記多価溶剤が、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、及び、エリスリトールから選択される少なくとも1種であってもよい。
【0013】
本発明に係るフラックスは、斯かる構成により、はんだ合金の濡れ性を向上させるため、接合部におけるボイドをより低減すると共に、大きなボイドの発生をより抑制することができる。
【0014】
本発明に係るフラックスは、前記液体溶剤の含有量が、フラックス全体に対して、5.0質量%以上78.0質量%以下であってもよい。
【0015】
本発明に係るフラックスは、斯かる構成により、接合部におけるボイドをより低減すると共に、大きなボイドの発生をより抑制することができる。
【0016】
本発明に係るフラックスは、前記液体溶剤が、3-メチル1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、及び、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールから選択される少なくとも1種であってもよい。
【0017】
本発明に係るフラックスは、斯かる構成により、フラックスの粘性を上げるため、部品搭載時の部品脱落を防ぐことができる。また、前記フラックスは、ソルダペーストの印刷性を向上させる。
【0018】
本発明に係るフラックスは、さらに、ヒドロキシ基を1つ有する1価溶剤を含むものであってもよい。
【0019】
本発明に係るフラックスは、斯かる構成により、ソルダペーストの連続印刷時における負荷を低減すると共に、ソルダペーストの粘度低下を抑制することができる。
【0020】
本発明に係るソルダペーストは、前記フラックスと、はんだ合金とを含む。
【0021】
本発明に係るソルダペーストは、斯かる構成により、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制することができる。
【0022】
本発明に係る接合構造体の製造方法は、ソルダペーストを用いて、基板と接合部品とを接合する。
【0023】
本発明に係る接合構造体の製造方法は、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制した接合構造体を得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制することが可能なフラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るフラックス、ソルダペースト、及び、接合構造体の製造方法について説明する。
【0026】
<フラックス>
本実施形態に係るフラックスは、ヒドロキシ基を3つ以上有すると共に、分子量が150以下である多価溶剤と、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、該2つのヒドロキシ基間で直鎖状に結合する炭素原子の数が4つ以上で、かつ、常温で液体の液体溶剤と、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、常温で固体の固体溶剤と、チキソ剤と、を含有する。
【0027】
(多価溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、ヒドロキシ基を3つ以上有すると共に、分子量が150以下である多価溶剤を含有する。このような多価溶剤としては、例えば、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トレイトール等が挙げられる。これらの中でも、多価溶剤は、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、及び、エリスリトールから選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、前記フラックスは、多価溶剤を少なくとも2種含むことが好ましい。多価溶剤は、ソルダペーストの粘度上昇を抑制し、印刷性を向上させる観点から、ヒドロキシ基の数が4つ以下であることが好ましい。本実施形態に係るフラックスは、多価溶剤を含有することにより、はんだの濡れ性を向上させることができる。また、多価溶剤の分子量が150以下であることにより、分子量が150を超える多価溶剤に比べて沸点が低くなり、揮発しやすくなる。これにより、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制することができる。
【0028】
なお、多価溶剤は、常温で液体であっても、固体であってもよい。本明細書において常温とは、25℃~30℃を意味する。すなわち、多価溶剤は、25℃~30℃のすべての範囲において液体又は固体であることを意味する。
【0029】
多価溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。また、多価溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、85.0質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以下であることがより好ましく、10.0質量%以下であることが特に好ましい。ここで、多価溶剤の含有量は、60.0質量%以下であることにより、印刷性を向上させることができる。なお、多価溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は多価溶剤の合計含有量である。
【0030】
(液体溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、該2つのヒドロキシ基間で直鎖状に結合する炭素原子の数が4つ以上で、かつ、常温で液体の液体溶剤を含有する。このような液体溶剤としては、3-メチル1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、及び、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールから選択される少なくとも1種であることが好ましい。なお、本明細書において常温とは、25℃~30℃を意味する。すなわち、液体溶剤は、25℃~30℃のすべての範囲において液体であることを意味する。
【0031】
液体溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、2.4質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましく、30.0質量%以上であることが特に好ましい。また、液体溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、78.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以下であることがより好ましい。なお、液体溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は液体溶剤の合計含有量である。
【0032】
(固体溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、常温で固体の固体溶剤を含有する。このような固体溶剤としては、例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-ノナンジオール、threo-5,6-ドデカンジオール、erythro-5,6-ドデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール等が挙げられる。これらの中でも、固体溶剤は、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、及び、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールから選択される少なくとも1種であることが好ましい。本実施形態に係るフラックスは、固体溶剤を含有することにより、フラックスとはんだ合金の分離を防止することができる。なお、本明細書において常温とは、25℃~30℃を意味する。すなわち、固体溶剤は、25℃~30℃のすべての範囲において固体であることを意味する。
【0033】
固体溶剤は、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制する観点から、4級炭素を有する固体溶剤を2種以上、又は、4級炭素を有しない固体溶剤を2種以上用いることが好ましい。4級炭素を有する固体溶剤としては、例えば、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。4級炭素を有しない固体溶剤としては、例えば、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール等が挙げられる。これらの中でも、固体溶剤は、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,9-ノナンジオール、又は、1,2-オクタンジオール及び1,8-オクタンジオールであることが好ましく、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールであることがより好ましい。
【0034】
固体溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、2.0質量%以上であることが好ましく、30.0質量%以上であることがより好ましい。また、固体溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、75.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以下であることがより好ましい。なお、固体溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は固体溶剤の合計含有量である。
【0035】
(チキソ剤)
本実施形態に係るフラックスは、チキソ剤を含む。チキソ剤としては、例えば、ヒマシ硬化油、脂肪酸アミド、脂肪酸ビスアマイド、ポリアミド化合物、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリット等が挙げられる。これらの中でも、チキソ剤は、ボイドを低減すると共に、最大ボイドを小さくする観点から、脂肪酸アミドを含むことが好ましく、脂肪酸アミドからなることがより好ましい。脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、ミリスチン酸アミド等が挙げられる。これらの中でも、脂肪酸アミドは、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミドであることが好ましい。なお、チキソ剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0036】
チキソ剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、2.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましい。また、チキソ剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、40.0質量%以下であることが好ましく、20.0質量%以下であることがより好ましい。なお、チキソ剤が2種以上含まれる場合、前記含有量はチキソ剤の合計含有量である。
【0037】
(1価溶剤)
本実施形態に係るフラックスは、ヒドロキシ基を1つ有する1価溶剤を含んでいてもよい。1価溶剤としては、例えば、α-テルピネオール、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、2-デシルテトラドデカノール、オレイルアルコール等が挙げられる。これらの中でも、1価溶剤は、へキシルデカノール、又は、2-デシルテトラドデカノールであることが好ましい。なお、1価溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0038】
1価溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、2.0質量%以上であることがより好ましい。また、1価溶剤の含有量は、前記フラックス全体に対して、10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましい。なお、1価溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記1価溶剤の合計含有量である。
【0039】
(樹脂)
本実施形態に係るフラックスは、本発明の効果に影響を与えない範囲で樹脂を含んでいてもよい。樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、合成樹脂等が挙げられる。ロジン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、ロジン及びロジン誘導体(例えば、水素添加ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、アクリル酸変性ロジン等)が挙げられる。また、合成樹脂としては、例えば、テルペンフェノール樹脂等の公知の合成樹脂が挙げられる。フラックスに樹脂が含まれる場合には、樹脂の含有量は、フラックス全体に対して、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。また、樹脂の含有量は、フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。なお、樹脂は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。樹脂が2種以上含まれる場合、前記含有量は樹脂の合計含有量である。
【0040】
(活性剤)
本実施形態に係るフラックスは、活性剤を含んでいてもよい。活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、有機酸系活性剤、アミン系化合物、アミノ酸、アミンハロゲン塩やハロゲン化合物等のハロゲン系活性剤等が挙げられる。なお、活性剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0041】
有機酸系活性剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸等のその他の有機酸が挙げられる。
【0042】
アミン系化合物としては、特に限定されるものではなく、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられる。前記イミダゾール系化合物としては、例えば、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)エチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。前記トリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-メタノール、1-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。その他のアミン系化合物としては、例えば、セチルアミン、エルカ酸アミド、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、3,5-ジメチルピラゾール、ジメチルウレア、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリフェニル-1,3,5-トリアジン、ピラジンアミド、N-フェニルグリシン、3-メチル-5-ピラゾロン、N-ラウロイルサルコシン、1,3-ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0043】
アミノ酸としては、特に限定されるものではなく、例えば、N-アセチルフェニルアラニン(N-アセチル-L-フェニルアラニン、N-アセチル-DL-フェニルアラニン、N-アセチル-D-フェニルアラニン)、N-アセチルグルタミン酸(N-アセチル-L-グルタミン酸)、N-アセチルグリシン、N-アセチルロイシン(N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン)、又は、N-アセチルフェニルグリシン(N-アセチル-N-フェニルグリシン、N-アセチル-L-フェニルグリシン、N-アセチル-DL-フェニルグリシン)等が挙げられる。
【0044】
ハロゲン系活性剤としては、特に限定されるものではなく、アミンハロゲン塩、ハロゲン化合物等が挙げられる。アミンハロゲン塩のアミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジフェニルグアニジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。アミンハロゲン塩のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。ハロゲン化合物としては、イソシアヌル酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブロモ-3-ヨード-2-ブテン-1,4-ジオール、TBA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、4,4’-ジヨードビフェニル等が挙げられる
【0045】
活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。また、活性剤の含有量は、フラックス全体に対して、5.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましい。なお、活性剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は活性剤の合計含有量である。
【0046】
本実施形態に係るフラックスは、その他の添加剤として、例えば、安定剤、界面活性剤、消泡剤、及び、腐食防止剤から選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。その他の添加剤の合計含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、フラックス全体に対して、5.0質量%以下とすることができる。
【0047】
本実施形態に係るフラックスは、はんだ付けに用いられるフラックスであって、ヒドロキシ基を3つ以上有すると共に、分子量が150以下である多価溶剤と、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、該2つのヒドロキシ基間で直鎖状に結合する炭素原子の数が4つ以上で、かつ、常温で液体の液体溶剤と、ヒドロキシ基を2つ有すると共に、常温で固体の固体溶剤と、チキソ剤と、を含有することにより、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制することができる。
【0048】
本実施形態に係るフラックスは、前記多価溶剤の含有量が、0.5質量%以上60.0質量%以下であることにより、接合部におけるボイドをより低減すると共に、大きなボイドの発生をより抑制することができる。
【0049】
本実施形態に係るフラックスは、前記多価溶剤が、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、及び、エリスリトールから選択される少なくとも1種であることにより、はんだ合金の濡れ性を向上させるため、接合部におけるボイドをより低減すると共に、大きなボイドの発生をより抑制することができる。
【0050】
本実施形態に係るフラックスは、前記液体溶剤の含有量が、フラックス全体に対して、5.0質量%以上78.0質量%以下であることにより、接合部におけるボイドをより低減すると共に、大きなボイドの発生をより抑制することができる。
【0051】
本実施形態に係るフラックスは、前記液体溶剤が、3-メチル1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、及び、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールから選択される少なくとも1種であることにより、フラックスの粘性を上げるため、部品搭載時の部品脱落を防ぐことができる。また、前記フラックスは、ソルダペーストの印刷性を向上させる。
【0052】
本実施形態に係るフラックスは、さらに、ヒドロキシ基を1つ有する1価溶剤を含むことにより、ソルダペーストの連続印刷時における負荷を低減すると共に、ソルダペーストの粘度低下を抑制することができる。
【0053】
<ソルダペースト>
本実施形態に係るソルダペーストは、上述のフラックスと、はんだ合金と、を含有する。前記はんだ合金としては、鉛フリーはんだ合金、鉛を含む共晶はんだ合金が挙げられるが、環境負荷低減の観点から、鉛フリーはんだ合金であることが好ましい。鉛フリーはんだ合金としては、例えば、スズ、銀、銅、インジウム、亜鉛、ビスマス、アンチモン等を含む合金が挙げられる。より具体的には、Sn/Ag、Sn/Ag/Cu、Sn/Cu、Sn/Ag/Bi、Sn/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Sb、Sn/Zn/Bi、Sn/Zn、Sn/Zn/Al、Sn/Ag/Bi/In、Sn/Ag/Cu/Sb、Sn/Ag/Sb、Sn/Ag/Cu/Bi、Sn/Ag/Cu/Bi/In/Sb、In/Ag、Sn/In等の合金が挙げられる。また、前記合金には、不可避的不純物が含まれる。不可避的不純物とは、製造過程において不可避的に混入する成分であって、本発明の効果に影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
【0054】
前記フラックスの含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。また、前記はんだ合金の含有量は、前記ソルダペースト全体に対して、80質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
【0055】
本実施形態に係るソルダペーストは、前記フラックスと、はんだ合金とを含むことにより、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制することができる。
【0056】
<接合構造体の製造方法>
本実施形態に係る接合構造体の製造方法では、前記ソルダペーストを用いて、基板(第1部材)と接合部品(第2部材)とを接合する。具体的には、リフロー炉内で、前記ソルダペーストを介して基板(第1部材)と接合部品(第2部材)とを接触させた状態で加熱し、前記ソルダペーストを構成するはんだ合金を溶融させる。その後、冷却することにより、基板(第1部材)と接合部品(第2部材)とを接合する。
【0057】
まず、前記基板(第1部材)の表面に前記ソルダペーストを配置する。前記ソルダペーストは、はんだ印刷装置による印刷、転写印刷、ディスペンサーによる塗布、マウンターによる搭載等の公知の方法を用いて配置することができる。はんだ印刷装置を用いて前記ソルダペーストを印刷する場合には、塗布するソルダペーストの厚みを100μm以上600μm以下とすることができる。また、前記基板(第1部材)としては、特に限定されず、例えば、プリント基板、DBC基板、ベースプレート板、リードフレーム、シリコンウエハ等の公知の基板を用いることができる。
【0058】
次に、前記ソルダペーストを介して前記基板(第1部材)と接触するように、前記接合部品(第2部材)を配置する。前記接合部品(第2部材)としては、特に限定されず、例えば、チップ部品(ICチップ等)、抵抗器、ダイオード、コンデンサ、トランジスタ、半導体チップ(Siチップ等)、ヒートシンク等の公知の接合部品を用いることができる。
【0059】
続いて、前記ソルダペーストを介して基板(第1部材)と接合部品(第2部材)とを接触させた状態で加熱する。加熱温度は特に限定されず、ソルダペーストに応じて適宜選択することができ、ソルダペーストの融点以上を範囲とする。加熱する工程は、金属の酸化を抑制する目的で、窒素ガス等を用いて不活性ガス雰囲気下で行ってもよい。また、ガスの放出を促進させる目的で、真空ポンプを用いて雰囲気を減圧若しくは真空にして行ってもよい。また、加熱する工程の前に、予熱する工程を行ってもよい。予熱温度は特に限定されず、ソルダペーストに応じて適宜選択することができ、ソルダペーストの融点未満を範囲とする。予熱する工程は、不活性ガス雰囲気下で減圧若しくは真空にして行ってもよく、また、水素ガス若しくはギ酸ガスを用いて還元雰囲気下で行ってもよい。
【0060】
最後に、前記ソルダペーストを介して接触した基板(第1部材)と接合部品(第2部材)とを冷却する。冷却する工程では、例えば、降温速度50℃/分以上5℃/分以下で、20℃以上200℃以下まで冷却する。
【0061】
本実施形態に係る接合構造体の製造方法は、第1部材が基板であることに限定されるものではない。基板以外の第1部材としては、例えば、チップ部品(ICチップ等)、抵抗器、ダイオード、コンデンサ、トランジスタ、半導体チップ(Siチップ等)、ヒートシンク等が挙げられる。また、本実施形態に係る接合構造体の製造方法は、第2部材が接合部品であることに限定されるものではない。接合部品以外の第2部材としては、例えば、プリント基板、DBC基板、ベースプレート、リードフレーム、ヒートシンク等が挙げられる。
【0062】
本実施形態に係る接合構造体の製造方法は、前記ソルダペーストを用いて、基板と接合部品を接合することにより、接合部におけるボイドをより低減すると共に、大きなボイドの発生をより抑制した接合構造体を得ることができる。
【実施例0063】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
<フラックスの材料>
(多価溶剤)
グリセリン:花王株式会社製
1,2,4-ブタントリオール:東京化成工業株式会社製
トリメチロールエタン:三菱ガス化学株式会社製
トリメチロールプロパン:三菱ガス化学株式会社製
1,2,6-ヘキサントリオール:東京化成工業株式会社製
エリスリトール:三菱ケミカルフーズ株式会社製
(液体溶剤)
3-メチル1,5-ペンタンジオール:株式会社クラレ製
1,4-ブタンジオール:東京化成工業株式会社製
2,5-ヘキサンジオール:東京化成工業株式会社製
1,5-ペンタンジオール:東京化成工業株式会社製
2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール:東京化成工業株式会社製
(固体溶剤)
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール:三菱ガス化学株式会社製
2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール:東京化成工業株式会社製
2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール:東京化成工業株式会社製
2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール:東京化成工業株式会社製
1,2-オクタンジオール:東京化成工業株式会社製
1,8-オクタンジオール:東京化成工業株式会社製
1,10-デカンジオール:東京化成工業株式会社製
1,2-ドデカンジオール:東京化成工業株式会社製
1,6-ヘキサンジオール:東京化成工業株式会社製
1,9-ノナンジオール:東京化成工業株式会社製
(チキソ剤)
ステアリン酸アミド:花王株式会社製
ラウリン酸アミド:三菱ケミカル株式会社製
パルミチン酸アミド:三菱ケミカル株式会社製
オレイン酸アミド:三菱ケミカル株式会社製
エルカ酸アミド:日本精化株式会社製
ベヘン酸アミド:日本精化株式会社製
(1価溶剤)
ヘキシルデカノール:高級アルコール工業株式会社製
イソステアリルアルコール:高級アルコール工業株式会社製
2-オクチルドデカノール:高級アルコール工業株式会社製
2-デシルテトラドデカノール:高級アルコール工業株式会社製
オレイルアルコール:高級アルコール工業株式会社製
(樹脂)
水素添加ロジン:荒川化学工業株式会社製
(活性剤)
フェニルコハク酸:東京化成工業株式会社製
【0065】
<フラックスの作製>
上記フラックスの材料を表1~表11に示す配合で加熱容器に投入し、120℃まで加熱することにより、全材料を溶解させた。その後、室温まで冷却することにより、均一に分散された各実施例及び各比較例のフラックスを得た。なお、表1~表11に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。
【0066】
<ソルダペーストの作製>
各実施例及び各比較例のフラックスを9質量%、はんだ合金粉末(95Sn/5Sb、Type3、株式会社弘輝製)を91質量%となるように混合して、各実施例及び各比較例のソルダペーストを得た。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
<試験基板の作製>
電解Niめっき無酸素Cu板(サイズ:60×55mm)の基板に各実施例及び各比較例のソルダペーストを、厚さ300μmのメタルマスクを用いて開口率100%となるように塗布した。塗布したソルダペーストの厚さは300μmであった。その後、無酸素Cu板(サイズ:44×35mm)を搭載し、上記ソルダペーストを介して、電解Niめっき無酸素Cu板(サイズ:60×55mm)の基板と、無酸素Cu板(サイズ:44×35mm)とが接触した状態でリフロー装置(商品名:VS1、株式会社オリジン製)のリフロー炉内に配置した。そして、後述する予熱工程及びリフロー工程を行うことにより、試験基板を作製した。
【0079】
予熱工程では、まず、窒素雰囲気下において、昇温速度2℃/sで予熱温度205℃まで加熱した。そして、該予熱温度において、真空ポンプを用いてリフロー炉内の気体を排気して60秒保持した後、ギ酸(3%)を導入することによりリフロー炉内の雰囲気を大気圧まで加圧して60秒保持した。
【0080】
リフロー工程では、まず、リフロー炉内の雰囲気を1000Paへ減圧した後、昇温速度1℃/sでピーク温度270℃まで加熱し、30秒保持した。次に、リフロー炉内の雰囲気を200Paまで減圧した後、30秒保持した。最後に、ピーク温度270℃にて、リフロー炉内に窒素を導入することにより大気圧まで加圧した。
【0081】
<ボイドの評価>
各試験基板の無酸素Cu板を搭載した箇所におけるX線透過写真を撮影した。次に、撮影した写真を二値化処理することにより、接合部のボイド率を算出した。また、はんだ付け面積に対する、検出されたボイドの中で面積が最大である1つのボイドの割合(最大ボイド率)を算出した。結果を表1~表11に示す。
【0082】
ボイドの評価は、下記の基準に基づいて行った。結果を表1~表11に示す。なお、評価1~評価4を「合格」と判定し、評価5を「不合格」と判定した。
評価1:ボイド率が3.0%以下、かつ、最大ボイド率が0.6%以下
評価2:ボイド率が4.0%以下、かつ、最大ボイド率が0.9%以下
評価3:ボイド率が4.5%以下、かつ、最大ボイド率が1.2%以下
評価4:ボイド率が5.0%以下、かつ、最大ボイド率が1.5%以下
評価5:ボイド率が5.0%を超える、又は、最大ボイド率が1.5%を越える
【0083】
表1~表11の結果から分かるように、本発明の要件をすべて満たす各実施例のソルダペーストを用いた接合部は、ボイド率が5.0%以下であり、かつ、最大ボイド率が1.5%以下であることから、接合部におけるボイドを低減すると共に、大きなボイドの発生を抑制することができる。
【0084】
一方、本発明の構成要件を満たさない各比較例のソルダペーストを用いた接合部は、ボイド率が5.0%を超える、又は、最大ボイド率が1.5%を越えることから、接合部におけるボイドを低減することが困難であり、大きなボイドの発生を抑制することが困難である。