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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129966
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20220830BHJP
   G01K 1/143 20210101ALI20220830BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220830BHJP
【FI】
G01H17/00 D
G01K1/143
G01M99/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028868
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【テーマコード(参考)】
2F056
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2F056CA08
2F056CA15
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
(57)【要約】
【課題】配管が入り組んだ場所にある計測対象物の振動強度を精度良く計測する。
【解決手段】計測装置1は、計測対象物の振動強度に応じた信号を出力する振動センサ26を含む振動プローブ3と、前記信号を処理する回路基板8と、ケース10と、を備える。ケース10は、回路基板8が組み込まれるケース本体部40と、その端面から突出するように設けられて、振動プローブ3の基端部を保持するスリーブ部42とを備える。回路基板8は、ケース本体部40に収容される主部50と、主部50から延設されてスリーブ部42の内側に挿入される延設部52とを含む。振動センサ26は、延設部52に電気的に接続されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測対象物の振動強度に応じた信号を出力する振動センサを含む、軸状の振動プローブと、
前記信号を処理するための回路基板と、
前記振動プローブ及び前記回路基板が組込まれるケースと、を備え、
前記ケースは、前記回路基板が組み込まれる箱形のケース本体部と、このケース本体部の端面から突出するように設けられて、前記振動プローブを保持するスリーブ部とを備え、
前記回路基板は、前記ケース本体部に収容される主部と、この主部から延設されて前記スリーブ部の内側に挿入される延設部とを含み、
前記振動センサは、前記延設部に電気的に接続されている、ことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置において、
前記延設部は、前記スリーブ部に固定されている、ことを特徴とする計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の計測装置において、
前記延設部は、前記振動プローブの軸方向と直交する直交方向における両端部分が前記ケースに対して固定されており、
前記振動センサは、接続用配線を有し、前記延設部のうち前記両端部分よりも内側の領域に当該接続用配線を介して電気的に接続されている、ことを特徴とする計測装置。
【請求項4】
請求項3に記載の計測装置において、
前記振動センサの前記接続用配線の末端に配線側コネクタが備えられ、
前記延設部の前記内側の領域には基板側コネクタが備えられ、
前記基板側コネクタに前記配線側コネクタが接続されることにより、前記振動センサが前記回路基板に電気的に接続されている、ことを特徴とする計測装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の計測装置において、
前記計測対象物の表面温度を検出する温度プローブをさらに備え、
前記振動プローブは、その先端に筒状の振動入力部を備えており、
前記温度プローブは、前記振動入力部の内側に配置されるとともに、前記延設部に電気的に接続されている、ことを特徴とする計測装置。
【請求項6】
請求項5に記載の計測装置において、
前記延設部は、前記両端部分が前記ケースに対して固定されるものであって、
前記温度プローブは、接続用配線を有し、前記延設部のうち、前記両端部分よりも内側の領域に当該接続用配線を介して電気的に接続されている、ことを特徴とする計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気や復水が流れるスチームトラップや配管等の計測対象物に計測用プローブを押し当てて計測対象物の振動強度を検出する、可搬型の計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記計測装置の一例として、例えば特許文献1に開示されるような計測装置が公知である。この計測装置は、液晶表示部を備えた箱形の装置本体部と、その端面に突設された軸状のプローブとを備えている。プローブは、検出針と、その外周に配置される保護管と、保護管の先端に設けられる熱電対とで構成されており、装置本体部を把持してプローブの先端を計測対象物に押し付けることで、計測面の振動強度及び表面温度を同時に計測することが可能となる。
【0003】
この計測装置では、検出針から入力された振動は、圧電素子で電気信号に変換され、当該信号を演算処理する回路基板に送られる。回路基板では、圧電素子から送られた電気信号が増幅部で増幅され、A/D変換部を介して制御部に入力される。そして、制御部において、例えば、被計測面の振動強度と表面温度との相互関係に基づいて計測対象物の状態が診断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-34419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既述のような可搬型の計測装置の場合、計測対象物が入り組んだ配管の中にあると、装置本体部が邪魔になってプローブ先端を計測対象物に適切に押し付けることが難しい場合がある。従って、プローブは出来るだけ長尺であるのが都合が良いが、検出すべき振動の周波数(共振周波数)による制約や強度的な制約もあり実際の長尺化は難しい。
【0006】
従って、例えば保護管を長尺化し、検出針を保護管の先端部で保持するような構造が考えられるが、この場合には、検出針と装置本体部(回路基板)とが離れるため、配線を通じて圧電素子から送られる電気信号にノイズが侵入し易くなり、このノイズを含んだ電気信号が増幅部で増幅される結果、計測精度に影響が出る。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、配管の入り組んだ場所にある計測対象物の振動強度を計測し易く、また、高い計測精度を確保することが可能な可搬型の計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一の局面に係る計測装置は、計測対象物の振動強度に応じた信号を出力する振動センサを含む、軸状の振動プローブと、前記信号を処理するための回路基板と、前記振動プローブ及び前記回路基板が組込まれるケースと、を備え、前記ケースは、前記回路基板が組み込まれる箱形のケース本体部と、このケース本体部の端面から突出するように設けられて、前記振動プローブを保持するスリーブ部とを備え、前記回路基板は、前記ケース本体部に収容される主部と、この主部から延設されて前記スリーブ部の内側に挿入される延設部とを含み、前記振動センサは、前記延設部に電気的に接続されている、ことを特徴とするものである。
【0009】
この計測装置によれば、スリーブ部の突出寸法の分だけ、ケース本体部の端面から振動プローブの先端までの軸状部分の寸法を長尺化することができる。つまり、振動プローブ自体を長尺化することなく、振動プローブを長尺化したのと同等の構造を達成することができる。しかも、スリーブ部の内側に回路基板の一部(延設部)が挿入され、この延設部において振動プローブと回路基板とが電気的接続されているため、振動プローブと回路基板(延設部)との間隔も狭く保つことができ、これにより、振動プローブからの出力信号へのノイズの侵入も抑制される。従って、この計測装置によれば、配管の入り組んだ場所にある計測対象物の振動強度を計測し易く、また、高い計測精度を確保することが可能な可搬型の計測装置を提供することが可能となる。
【0010】
上記計測装置において、前記延設部は、前記スリーブ部に固定されているのが好適である。より具体的には、前記延設部は、前記振動プローブの軸方向と直交する直交方向における両端部分が前記ケースに対して固定されており、前記振動センサは、接続用配線を有し、前記延設部のうち前記両端部分よりも内側の領域に当該接続用配線を介して電気的に接続されているのが好適である。
【0011】
これらの構成によれば、振動プローブと延設部(回路基板)との電気的接続状態を安定的に良好に保つことが可能となる。すなわち、回路基板のうち、延設部は、本体部からスリーブ部の内側に延設された不安定な部分と言える。そのため、延設部が固定されていない場合には、持ち運びの際の振動などにより、振動プローブと延設部との接続部分にクラックが生じ、接続不良を招くことが考えられる。しかし、上記構成によれば、延設部がケースに固定されて安定するため、上記のような現象の発生が抑制される。特に、延設部の両端部分が固定されて、その内側の領域に前記接続用配線が接続されている構成によれば、振動プローブと延設部との電気的接続状態をより安定的に良好に保つことが可能となる。
【0012】
この場合、前記振動センサの前記接続用配線の末端に配線側コネクタが備えられ、前記延設部の前記内側の領域には基板側コネクタが備えられ、前記基板側コネクタに前記配線側コネクタが接続されることにより、前記振動センサが前記回路基板に電気的に接続されているのが好適である。
【0013】
この構成によれば、振動センサと回路基板との配線の接続及びその解除を簡単に行うことが可能であり、計測装置の組立性やメンテナンス性が向上する。
【0014】
上記の計測装置においては、前記計測対象物の表面温度を検出する温度プローブをさらに備え、前記振動プローブは、その先端に筒状の振動入力部を備えており、前記温度プローブは、前記振動入力部の内側に配置されるとともに、前記延設部に電気的に接続されているものであってもよい。
【0015】
この構成によれば、既述のような作用効果を享受しつつ、振動プローブの先端中心部分で計測対象物の表面温度を計測することが可能となる。従って、配管が入り組んだ場所の計測対象物の振動強度と表面温度とを同時に計測することが可能となる。
【0016】
この場合、前記延設部は、前記両端部分が前記ケースに対して固定されるものであって、前記温度プローブは、接続用配線を有し、前記延設部のうち、前記両端部分よりも内側の領域に当該接続用配線を介して電気的に接続されているのが好適である。
【0017】
この構成によれば、振動プローブと同様に、温度プローブについても、延設部(回路基板)との接続部分の電気的接続状態を安定的に良好に保つことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した、本発明の計測装置によれば、配管が入り組んだ場所にある計測対象物の振動強度を計測し易く、また、高い計測精度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る計測装置を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
図2】計測用プローブの斜視図である。
図3】計測用プローブの断面図である。
図4】計測装置の内部構造を示す平面図である。
図5図4の丸枠で囲った部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
[計測装置の全体構成]
図1は、本発明に係る計測装置1の一例を示しており、(a)は正面図で、(b)は側面図で、(c)は背面図で各々計測装置1を示している。
【0022】
同図に示す計測装置1は、蒸気や復水(ドレン)が流れるスチームトラップや配管等の計測対象物の状態を検出し、その結果を図外の診断装置に無線送信するものである。当例では、計測装置1は、計測対象物の振動強度及び表面温度を計測する。なお、以下の計測装置1の説明で用いる方向や配置は、特に言及する場合を除き、図1(a)に示す計測装置1の状態(姿勢)を基準とする。
【0023】
図1(a)~(c)に示すように、計測装置1は、上下方向に細長くかつ前後方向(図1(b)の左右方向)に扁平な直方体形状の装置本体部6と、装置本体部6の上端部から上向きに延びる軸状の計測用プローブ2と、キャップ9とを備える。装置本体部6は、計測時に把持する部分であり、作業者は、装置本体部6を把持した状態で、計測用プローブ2の先端を計測対象物の表面に押し当てることで、計測対象物の振動強度及び表面温度を計測することが可能となる。なお、装置本体部6は、以下に説明する通り、計測装置1における各種情報表示やコマンド入力等の操作を行う部分でもある。
【0024】
装置本体部6の前面には、操作部12と表示部14とが設けられている。表示部14は、計測結果(振動強度、表面温度)や、当該計測結果に基づく診断装置の診断結果などの各種情報が表示される部分であり、例えば液晶ディスプレイ(LCD)で構成されている。
【0025】
操作部12は、表示部14の下側に設けられている。操作部12には、各々メンブレンスイッチやメカニカルスイッチにより構成される複数の操作スイッチが設けられている。例えば電源のオンオフを行うための電源スイッチ12a、データ表示の送り/戻しを行うためのスクロールスイッチ12b、及び各種コマンドを実行するための複数のコマンドスイッチ12c等が設けられている。
【0026】
装置本体部6の内部には、コントローラが備えられている。コントローラを構成する回路基板8には、CPU、RAM、ROM等から構成されたマイクロプロセッサや各種機能を実現するための周辺回路などが実装されている。コントローラ(回路基板8)は、計測結果を表示部14に表示させるとともに、当該計測結果を診断装置に無線送信する機能を有する。また、診断装置から送信される診断結果を受信し、当該診断結果を表示部14に表示させる機能も有する。
【0027】
装置本体部6の背面部には、蓋部材44により開閉可能な電池収容部が設けられており、当例では、計測装置1の駆動用電源として、例えば単3型の乾電池60(一次電池)が出し入れ可能に収納されている。なお、キャップ9は、下方が開口した中空状に形成された計測用プローブ2の保護部材であり、ケース10の後記スリーブ部42の先端部42cに着脱可能に外嵌されるように形成されている。
【0028】
[計測用プローブの構成]
図2及び図3は、計測用プローブ2を示しており、図2は斜視図で、図3は断面図で各々計測用プローブ2を示している。図2及び図3では、各々左側が計測用プローブ2の先端側である。
【0029】
計測用プローブ2は、計測対象物の振動強度を計測するための振動プローブ3と、計測対象物の表面温度を計測するための温度プローブ4とを備えている。
【0030】
振動プローブ3は、計測対象物からの振動が入力される振動プローブ本体20と、振動プローブ本体20に入力された振動強度に応じた信号を出力する振動センサ26とを含む。
【0031】
振動プローブ本体20は、上下方向(図3では左右方向)に延びる断面円環状の金属パイプ、具体的にはステンレス製のパイプからなる振動入力部22と、この振動入力部22の下端部(基端部)に繋がる台座部24とを含む。
【0032】
台座部24は、装置本体部6の側(図3では右側)から順に、下段部24a、中段部24b及び上段部24cを含む、段付きの金属体であり、振動入力部22と同じ金属材料(ステンレス)によって、下段部24a、中段部24b及び上段部24cが一体に形成されている。下段部24aは、上下方向に扁平な直方体形状である。中段部24b及び上段部24cは、共に円柱形状であり、上段部24cは中段部24bよりも径が小さく設定されている。中段部24bの外径は、前記振動入力部22の内径と同等又はそれよりも若干小さく設定されており、上段部24cの外径は、温度プローブ4の後記ハウジング30の内径と同等又はそれよりも若干小さく設定されている。
【0033】
振動入力部22(金属パイプ)は、台座部24の中段部24bに外嵌され、下段部24aの上面に突き当てられた状態で、ビスB2で台座部24に固定されている。これにより、円筒状の振動入力部22を先端に備えた前記振動プローブ本体20が構成されている。
【0034】
振動センサ26は、圧電素子として圧電型セラミックが使用された圧電型加速度センサからなる。振動センサ26は、図3に示すように、台座部24の下面に配置され、その中央部にビスB1で固定されている。振動センサ26には、信号出力線を含む2本の接続用配線27が設けられており、当該接続用配線27及び後記コネクタ28、29を介して前記回路基板8に接続されている。これにより、振動プローブ本体20に振動が入力すると、その振動強度に対応した電気信号(アナログ信号)が振動センサ26から上記コントローラ(回路基板8)に出力される。
【0035】
なお、コントローラ(回路基板8)には、振動センサ26から接続用配線27を介して入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、A/D変換されたデジタル信号の振幅を増幅させる信号増幅部と、所定の周波数域における信号の積分値を算出する積分値算出部と、当該積分値算出部で算出された積分値を用いて計測対象物の振動の強度を算出する振動強度算出部とが備えられている。
【0036】
温度プローブ4は、振動プローブ本体20の振動入力部22の内側、詳しくは、振動入力部22の中心部に配置されている。温度プローブ4は、振動入力部22に沿ってその軸方向に延びる円筒状のハウジング30と、当該ハウジング30の先端に出没可能に配置される接触板34と、接触板34を突出方向に弾性的に付勢する図外の付勢部材と、ハウジング30の内側の空間に配置される熱電対32と、ハウジング30内で熱電対32を保持する保持部材とを含む。ハウジング30及び接触板34は、金属材料で構成されている。
【0037】
ハウジング30は、台座部24の上段部24cに外嵌され、中段部24bの上面に突き当てられた状態で、外側からビスB3で台座部24に固定されている。これにより、温度プローブ4は、振動入力部22の中心部に、当該振動入力部22の内周面との間に一定の隙間Sを隔てた状態で一体に組付けられている。
【0038】
図3に示すように、ハウジング30の先端と振動入力部22の先端とは面一に設けられており、接触板34は、前記付勢部材の付勢力により、ハウジング30及び振動入力部22の端面から上方(図3では左方)に僅かに飛び出した位置に配置されている。これにより、振動プローブ3の先端が計測面に当接されると、付勢部材の付勢力に抗して接触板34が押し戻され、その結果、当該接触板34が計測面に密接するように構成されている。
【0039】
熱電対32は、互いに異なる材質の金属線で構成された二本の熱電対素線32a、32bを備えている。例えば、一方の熱電対素線32aはクロメル線で、他方の熱電対素線32bはアルメル線で構成されている。各熱電対素線32aは、ガラス繊維やフッ素樹脂等の被覆材によって被覆されている。
【0040】
各熱電対素線32a、32bの一端(先端)は、接触板34の下面(図3では右面)中心部に溶接されている(符号33は溶接部分を示す)。これにより、当該接触板34によって熱電対32の測温接点が構成されている。上記の通り、温度プローブ4は、振動入力部22の中心部に配置されており、従って、熱電対32の測温接点は、振動入力部22の中心部、すなわち振動プローブ3の軸心上に位置する。
【0041】
図3に示すように、各熱電対素線32a、32bは、ハウジング30に沿って配索されている。各熱電対素線32a、32bの他端は、前記台座部24に形成されたスリット状の溝部25を通じて振動プローブ3の外側に導出されており、後記コネクタ36,37を介してコントローラ(回路基板8)の温度計測回路に接続されている。
【0042】
[振動プローブ3の具体的構成]
蒸気および復水(ドレン)の何れか一方が流れるスチームトラップ等の計測対象物においてその振動を計測した場合、検査対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かによって、特定の周波数成分の振動強度が大きく異なり、特に、10kHz付近の振動強度を調べることで、検査対象物内を流れる流体が蒸気であるか否かを比較的高い精度で判別できる(特開2016-11904号公報)。
【0043】
そのため、スチームトラップ等の蒸気漏れの診断を行う場合に使用する振動プローブ3については、10kHz付近の振動強度を精度良く計測できるように構成する必要があり、この場合、本願の発明者らは、図3に示す、振動プローブ3の各値については、次の関係式(1)を満たすように設定することが重要であるとの知見を得た。
f=C×(D/L1) ・・(式1)
上記の関係式において、fは共振周波数、Cは構成材料が有する振動加速度、L1は振動プローブ本体20の全長、Dは振動入力部22の外径である。
【0044】
また、本願の発明者は、鋭意検討を重ねた結果、図3に示すように振動入力部22が円筒体であり、その内径がdである場合には、形状係数βを考慮して、上記関係式1を次のように変形することができるとの知見を得た。なお、形状係数βは、長さL1に占める中空部分の長さL2の割合に応じて設定される値である。
f=C×((D-d)/L1)×β ・・(式2)
従って、本実施形態では、振動入力部22をステンレス鋼で形成する場合に、細径化と強度とのバランスを確保しつつ共振周波数が10kHz付近となるように、上記の関係式2に基づいて、振動プローブ3の各値L1,L2,D,dが設定されている。
【0045】
なお、振動入力部22をステンレス鋼以外の金属材料で形成する場合には、Cの値が異なることとなるが、上記の関係式2に基づいて各値L1,L2,D1,dを設定することができる。
【0046】
[計測用プローブ2及び回路基板8の組込構造]
図1(a)~(c)に示すように、計測装置1の装置本体部6は、その外郭を形成する、耐熱性プラスチック等からなる箱形のケース10を備えている。
【0047】
ケース10は、割線15に沿って分割される前側ケース部11aと後側ケース部11bで構成されている。これらケース部11a、11bは、互いに嵌合されて、複数本のビスB5によって一体に固定されている。具体的には、後側ケース部11bの外側から、当該後側ケース部11bに形成された図外の貫通孔にビスB5が差し込まれ、当該ビスB5が前側ケース部11aに形成された図外のねじ孔に螺合挿入されることにより、前後のケース部11a、11bが一体に固定されている。
【0048】
ケース10は、前後方向に扁平な直方体形状のケース本体部40と、当該ケース本体部40の上面から上方に突出するように、当該ケース本体部40に一体に形成された筒状部(スリーブ部42と称す)とを備えている。
【0049】
ケース本体部40は、主に回路基板8や表示部14等が組み込まれる部分であり、スリーブ部42は、前記計測用プローブ2が組み込まれる部分、換言すれば、計測用プローブ2を保持する部分である。
【0050】
スリーブ部42は、基端部42a、中間部42b及び先端部42cを含む三段構造を有している。先端部42cは、円筒状であり、その内径は、計測用プローブ2(つまり、振動プローブ3の振動入力部22)の外径と同等又は当該外径よりも若干大きく形成されている。中間部42bは、断面長方形であり、計測用プローブ2の基端部(つまり、台座部24の下段部24a)が挿入可能は寸法に設定されている。基端部42aは、中間部42bと同様に断面長方形であるが、中間部42bよりも若干左右に大きく形成されている。
【0051】
図4及び図5は、計測装置1の内部構造を示す平面図であり、ケース10への計測用プローブ2及び回路基板8の組込状態を示している。なお、図5は、図4の丸枠で囲った部分の拡大図である。
【0052】
同図に示すように、計測用プローブ2は、その基端部がスリーブ部42の内側に配置された状態で、ケース10に組み込まれている。詳しくは、スリーブ部42の中間部42bに振動プローブ3の台座部24及び振動センサ26が位置し、スリーブ部42の先端部42cに振動入力部22の基端部が位置する状態で、前後のケース部11a、11bの間に計測用プローブ2が挟み込まれている。そして、前記ビスB5が、前側ケース部11aの貫通孔及び台座部24の下段部24aに形成された一対の貫通孔241を通じて、後側ケース部11bのねじ孔に螺合挿入されることにより、ケース10に計測用プローブ2が固定されている。
【0053】
回路基板8は、図4中にハッチングで示すように、ケース10のうち、前記ケース本体部40に収容される主部50と、この主部50から上方に延設されて前記スリーブ部42に挿入される延設部52とを有している。主部50は、ケース本体部40の内壁面に沿った上下方向に細長い平面視略長方形の形状を有している。延設部52は、この主部50の上端中央部から上方に延びる左右方向に細長い平面視長方形の形状を有している。
【0054】
回路基板8も計測用プローブ2と同様にしてケース10に固定されている。すなわち、延設部52の左右両端部分と、主部50の上下中央部及び下端部の各々左右両端部分とに貫通孔50aが形成されており、前記ビスB5が、前側ケース部11aの貫通孔及び回路基板8の貫通孔50aを通じて、後側ケース部11bのねじ孔に螺合挿入されることにより、回路基板8が、前後のケース部11a、11bの間に挟み込まれた状態でケース10に固定されている。
【0055】
延設部52の左右一対の貫通孔50aの間の領域、すなわち、ビスB5による延設部52の左右両端の固定部分(便宜上、固定部50aと称す)の間の領域には、コネクタ29、37が左右方向に隣接して設けられている。これらコネクタ29、37には、計測用プローブ2に設けられた配線側コネクタ28、36が接続されている。
【0056】
詳しくは、前記振動センサ26の接続用配線27の末端に装着された配線側コネクタ28が、回路基板8に実装された基板側コネクタ29に接続されるとともに、温度プローブ4の熱電対素線32a、32bの末端に装着された配線側コネクタ36が、回路基板8に実装された基板側コネクタ37に接続されている。これにより、振動センサ26(振動プローブ3)が回路基板8における振動強度計測回路に電気的に接続されるとともに、温度プローブ4が回路基板8における温度計測回路に電気的に接続されている。なお、振動強度計測回路とは、前記A/D変換部、信号増幅部、積分値算出部及び振動強度算出部等を含む回路である。
【0057】
[作用効果等]
上記実施形態の計測装置1によれば、ケース本体部40に突設されるスリーブ部42に計測用プローブ2が保持されているので、スリーブ部42の突出寸法に応じた分だけ、ケース本体部40の端面(上面)から計測用プローブ2の先端までの軸状部分の寸法を長尺化することができる。つまり、振動プローブ3自体を長尺化することなく、振動プローブ3を長尺化したのと同等の構造を達成することができる。しかも、スリーブ部42の内側に回路基板8の一部(延設部52)が挿入され、この延設部52において振動プローブ3と回路基板8とが電気的接続されているため、振動プローブ3(振動センサ26)と回路基板8(延設部52)との間隔を狭く保つことでき、これにより、振動センサ26からの出力信号へのノイズの侵入が抑制される。従って、この計測装置1によれば、配管の入り組んだ場所にある計測対象物の振動強度を計測し易くなり、しかも、高い計測精度を確保することも可能となる。
【0058】
この場合、上記計測装置1では、延設部52がケース10に固定されているので、振動プローブ3と回路基板8との電気的接続状態を安定的に良好に保つことができる。すなわち、延設部52は、回路基板8の主部50からスリーブ部42の内側に延設された不安定な部分である。そのため、仮に延設部52が固定されていない場合には、持ち運びの際の振動などにより、例えばコネクタ29と回路基板8との接続部分に応力が生じてクラックが生じ、接続不良を招くことが考えられる。しかし、上記計測装置1の構造によれば、延設部52は、前後のケース部11a、11bに挟み込まれた状態でケース10に固定されて安定しているので、持ち運びの際の振動などが生じ難く、よって、上記のような接続不良の発生が抑制される。
【0059】
特に、延設部52は、その左右両端の部分がケース10に固定された上で(固定部50a)、振動プローブ3(振動センサ26)の接続用配線27が、これら一対の固定部50aの内側の領域で当該延設部52に接続されているため、振動センサ26と回路基板8との電気的接続状態をより安定的に良好に保つことができる。従って、上述のような接続不良の発生を高度に抑制することができる。この点は、温度プローブ4の熱電対素線32a、32bと回路基板8との電気的接続状態についても同様である。
【0060】
[変形例]
以上説明した計測装置1は、本発明に係る計測装置1の好ましい実施形態の一例であって、その具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0061】
例えば、実施形態では、ケース10におけるスリーブ部42の基端部42aが断面長方形に形成され、回路基板8の延設部52が当該基端部42aに挿入されるように構成されている。しかし、当該基端部42aと中間部42bとが一つの円筒形状に形成されていて、その内側に延設部52が挿入されるような構成であってもよい。つまり、スリーブ部42の具体的な形状は、実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0062】
また、実施形態では、回路基板8の延設部52は、その左右両端がケース10に固定されているが、例えば左右方向の中間部分で固定され、その左右両側にコネクタ29、37が振り分けられて配置された構成であってもよい。
【0063】
また、実施形態では、延設部52は、前後のケース部11a、11bに挟み込まれた状態で、当該ケース部11a、11bと共にビスB5で一体に固定されているが、例えば延設部52は、ケース10の内部で直接ビスによって前側ケース部11a(又は後側ケース部11b)に固定されていてもよい。また、ビス以外の固定手段、例えば基板固定用のクリップ等で固定されていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、スチームトラップや配管を計測対象物とする計測装置1について説明したが、既述の計測装置1の構成は、スチームトラップや配管以外の計測対象物についても適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 計測装置
2 計測用プローブ
3 振動プローブ
4 温度プローブ
6 装置本体部
8 回路基板
10 ケース
11a 前側ケース部11a
11b 後側ケース部11b
20 振動プローブ本体
22 振動入力部
24 台座部
26 振動センサ
32 熱電対
32a 熱電対素線
32b 熱電対素線
40 ケース本体部40
42 スリーブ部42
50 主部50
52 延設部52
図1
図2
図3
図4
図5