(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022129992
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】感熱転写媒体
(51)【国際特許分類】
B41M 5/385 20060101AFI20220830BHJP
B41M 5/392 20060101ALI20220830BHJP
B41M 5/395 20060101ALI20220830BHJP
B41M 5/42 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B41M5/385 300
B41M5/392 300
B41M5/395 300
B41M5/42 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028908
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】306029349
【氏名又は名称】ゼネラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成瀬 博昭
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111AA26
2H111BA03
2H111BA07
2H111BA32
2H111BA53
2H111BA54
2H111BA61
(57)【要約】
【課題】印刷の白色度を向上するべく、白色層のバインダ樹脂としてアクリル樹脂を用いて、なおかつカールを生じにくい感熱転写媒体を提供する。
【解決手段】感熱転写媒体は、基材と、当該基材上に順に積層された剥離層、および白色層を含み、白色層は、白色顔料、バインダ樹脂、および可塑剤を含むとともに、バインダ樹脂は、アクリル樹脂である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に順に積層された剥離層、および白色層を含み、前記白色層は、白色顔料、バインダ樹脂、および可塑剤を含み、前記バインダ樹脂は、アクリル樹脂である感熱転写媒体。
【請求項2】
前記可塑剤の割合は、前記白色層を形成する固形分の総量中の0.1質量%以上、12質量%以下である請求項1に記載の感熱転写媒体。
【請求項3】
前記アクリル樹脂は、酸価が1mgKOH/g以上である請求項1または2に記載の感熱転写媒体。
【請求項4】
前記白色顔料の割合は、前記白色層を形成する固形分の総量中の60質量%以上、91質量%以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の感熱転写媒体。
【請求項5】
前記白色顔料は、酸化チタン、および体質顔料であり、前記体質顔料の割合は、前記白色顔料の総量中の0.5質量%以上、12質量%以下である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の感熱転写媒体。
【請求項6】
前記体質顔料は、カオリンである請求項5に記載の感熱転写媒体。
【請求項7】
前記剥離層は、白色顔料を含む請求項1ないし6のいずれか1項に記載の感熱転写媒体。
【請求項8】
前記白色顔料の割合は、前記剥離層を形成する固形分の総量中の20質量%以上、95質量%以下である請求項7に記載の感熱転写媒体。
【請求項9】
前記白色顔料は、酸化チタン、および体質顔料であり、前記体質顔料の割合は、前記白色顔料の総量中の20質量%以上、80質量%以下である請求項7または8に記載の感熱転写媒体。
【請求項10】
前記体質顔料は、カオリンである請求項9に記載の感熱転写媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
感熱転写リボン等の感熱転写媒体を用いた熱転写印刷によれば、たとえばインクジェット印刷法や電子写真法を利用した印刷などでは得ることのできない、隠蔽性のある白色の印刷をすることができる(特許文献1、2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-124892号公報
【特許文献2】特開2016-022722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱転写印刷によって白色の印刷をするための感熱転写媒体としては、白色顔料をバインダ樹脂によって結着した白色層(インク層)を、基材上に、熱転写可能な状態で積層したものを用いるのが一般的である。
また白色顔料としては、それ自体が高い隠ぺい率と明度とを有し、白色度に優れた酸化チタン等の無機系の白色顔料が好適に用いられる。
【0005】
しかし白色層は一般に、
・ 厚みが小さいこと、
・ バインダ樹脂が無色透明または無色半透明であること、
・ 酸化チタン等の通常の白色顔料は粒子形状が球状で、その隙間を光が透過しやすいこと、
等が原因となって、厚み方向に光が透過しやく、結果として白色層の全体での隠蔽性が低下する傾向がある。
【0006】
そして白色層の全体での隠蔽性が低下すると、下地の色に影響されて、隠ぺい率と明度で評価される印刷の白色度が低下する場合があるため、白色層の全体での隠蔽性を向上し、下地の色に影響されるのを抑制して、印刷の白色度を高めることが求められる。
印刷の白色度を高めるためには、白色層中に含まれる白色顔料の割合を、たとえば白色層を形成する固形分の総量中の91質量%を超える範囲まで増加させて、当該白色顔料間の隙間を小さくしたり、あるいは白色層の厚みを大きくしたりすることが考えられる。
【0007】
ところが白色顔料の割合を増加させて、相対的にバインダ樹脂の量を減少させると、熱転写印刷時の熱感度が低下して、印刷に掠れを生じる場合がある。
すなわちバインダ樹脂は、熱転写印刷時の加熱によって軟化ないし溶融して、基材から剥離した白色層を、紙等の被印刷体の表面に定着させるために機能する。
しかしバインダ樹脂の割合が少ない場合には、かかる機能が十分に得られず、熱転写印刷時の熱感度が低下して被印刷体の表面に白色層が定着しにくくなって、印刷に掠れを生じる場合がある。
【0008】
とくに省電力化を考慮して、熱転写プリンタのサーマルヘッドに印加されるエネルギー値が小さい場合に、この傾向が顕著である。
また、印刷の白色度を高めるために白色層の厚みを大きくすると、熱転写印刷時に白色層が膜キレしにくくなって、熱転写領域に隣接する非転写領域の転写層まで基材から剥離する、いわゆる余剥離を生じやすくなる。
【0009】
余剥離は、とくに特許文献1に記載されているように、バインダ樹脂として塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂(以下「塩酢ビ系樹脂」と略記する場合がある。)等を用いた場合に、当該塩酢ビ系樹脂等の結着力や造膜力が高いため、より顕著に発生する。
特許文献2では、バインダ樹脂としてアクリル樹脂を用いることが検討されている。
アクリル樹脂は透明性が高いため、白色顔料の割合を増加させることなしに、したがって熱転写印刷時の熱感度を低下させることなしに、白色層の明度を高めることができる。
【0010】
またアクリル樹脂は、塩酢ビ系樹脂等と比べて結着力や造膜力が低いため、白色層の厚みをある程度大きくしても熱転写印刷時に膜キレしやすくして、余剥離が生じるのを抑制することもできる。
したがってアクリル樹脂を使用することで、白色顔料の割合を増加させて熱感度を低下させることなしに白色層の明度を向上できることと、余剥離を生じさせることなしに白色層の厚みを大きくできることとが相まって、印刷の白色度を向上することができる。
【0011】
ところが発明者の検討によると、白色層のバインダ樹脂としてアクリル樹脂を用いた感熱転写媒体は、当該白色層の柔軟性が不十分で、カールを生じやすいという課題がある。
たとえば、感熱転写媒体が長尺帯状の感熱転写リボンである場合には、その幅方向、および長さ方向の両方に沿ってカールを生じやすく、とくに幅方向に沿って強いカールを生じると、当該幅方向の端の部分の白色層を良好に熱転写できない場合がある。
【0012】
特許文献2では、アクリル樹脂とともに、ゴム状弾性物質として、透明性の高い熱可塑性アクリルエラストマを併用することで、白色層の明度の低下を抑制しながら、当該白色層の柔軟性や基材に対する追従性を高めることが検討されている。
しかし、アクリル樹脂とともに熱可塑性アクリルエラストマを併用しても、カールが生じるのを抑制することはできない。
【0013】
のみならず、上述したように熱可塑性アクリルエラストマはゴム状弾性物質であって、アクリル樹脂よりも結着力や造膜力が高いため、アクリル樹脂を用いているにも拘らず白色層が膜キレしにくくなって、余剥離を生じる場合もある。
本発明の目的は、印刷の白色度を向上するべく、白色層のバインダ樹脂としてアクリル樹脂を用いて、なおかつカールを生じにくい感熱転写媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、基材と、前記基材上に順に積層された剥離層、および白色層を含み、前記白色層は、白色顔料、バインダ樹脂、および可塑剤を含み、前記バインダ樹脂は、アクリル樹脂である感熱転写媒体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷の白色度を向上するべく、白色層のバインダ樹脂としてアクリル樹脂を用いて、なおかつカールを生じにくい感熱転写媒体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述したように、本発明の感熱転写媒体は、基材と、当該基材上に順に積層された剥離層、および白色層を含み、白色層は、白色顔料、バインダ樹脂、および可塑剤を含むとともに、バインダ樹脂は、アクリル樹脂であることを特徴とするものである。
上記本発明の感熱転写媒体によれば、バインダ樹脂として透明性の高いアクリル樹脂を用いることにより、前述したように、白色顔料の割合を増加させることなしに、したがって熱転写印刷時の熱感度を低下させることなしに、白色層の明度を高めることができる。
【0017】
またアクリル樹脂は、たとえば特許文献1で用いている塩酢ビ系樹脂等と比べて結着力や造膜力が低いため、白色層の厚みをある程度大きくしても熱転写印刷時に膜キレしやすくして、余剥離が生じるのを抑制することもできる。
そのため、白色顔料の割合を増加させて熱感度を低下させることなしに白色層の明度を向上できることと、余剥離を生じさせることなしに白色層の厚みを大きくできることとが相まって、印刷の白色度を向上することができる。
しかも白色層は、アクリル樹脂とともに可塑剤を含み、柔軟性が高いため、感熱転写媒体がカールするのを良好に抑制することもできる。
これらのことは、後述する実施例、比較例の結果からも明らかである。
【0018】
《基材》
基材としては、従来同様に、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、トリアセテート等の樹脂のフィルムや、コンデンサー紙、グラシン紙等の薄葉紙、あるいはセロファン等が挙げられる。
【0019】
中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルムが、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格等の見地から好ましい。
基材の厚みは、たとえば熱転写プリンタの仕様等に応じて任意に設定できるものの、1μm以上、とくに2μm以上であるのが好ましく、10μm以下、とくに8μm以下であるのが好ましい。
【0020】
厚みをこの範囲とすることで、基材の強度(引張強度等)を確保しながら、熱転写プリンタのサーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、当該基材を通して剥離層と白色層にできるだけ効率よく伝達することができる。
そのため、熱転写印刷時の熱感度をさらに向上し、掠れを生じにくくして、より一層、鮮明な印刷をすることができる。
【0021】
《白色層》
白色層は、サーマルヘッドによる加熱によって溶融または軟化して当該白色層を基材から剥離させる機能、すなわち熱剥離性を有する剥離層を介して、上記基材上に形成される。
白色層は、前述したように白色顔料、バインダ樹脂、および可塑剤を含み、かつバインダ樹脂はアクリル樹脂であることを特徴とする。
【0022】
〈白色顔料〉
上記のうち白色顔料としては、白色を呈する種々の顔料を用いることができ、中でも、それ自体が高い隠ぺい率と明度とを有し、白色度に優れた無機系の白色顔料、とくにこれらの特性に優れた酸化チタンが好適に用いられる。
また白色顔料としては、上記酸化チタンと、体質顔料とを併用するのが好ましい。
【0023】
体質顔料としては、たとえば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム(アルミナ)等の粉末や、天然鉱物由来の各種体質顔料等が挙げられる。
また、天然鉱物由来の体質顔料としては、たとえばタルク、カオリン、セリサイト、マイカ、ベントナイト等が挙げられる。
【0024】
上記体質顔料の1種または2種以上を用いることができる。
中でも体質顔料としては、鱗片状ないし薄片状を呈する体質顔料が好ましい。
鱗片状ないし薄片状を呈する体質顔料は、たとえば基材上に形成した剥離層の上に、白色層用の塗材を塗工して白色層を形成する際に加えられる応力等によって、形成される白色層の面方向に配向された状態で、当該白色層中に分散される。
【0025】
そのため白色顔料として、上記体質顔料と、白色度にとくに優れた酸化チタンとを併用すると、体質顔料が酸化チタン間の隙間を白色層の厚み方向に遮って、上記隙間を光が白色層の厚み方向に透過するのを抑制することができる。
したがって、鱗片状ないし薄片状を呈する体質顔料を併用することで、酸化チタンの量を増加させることなく白色層の隠蔽性を高めて、印刷の白色度をさらに向上することができる。
【0026】
また、鱗片状ないし薄片状を呈する同系の体質顔料の中では、平均粒子径が大きいものを選択して用いるのが好ましい。
同系の体質顔料の中でも平均粒子径が大きいものほど、先に説明した、酸化チタン間の隙間を白色層の厚み方向に遮って、上記隙間を光が白色層の厚み方向に透過するのを抑制する効果に優れているためである。
【0027】
かかる鱗片状ないし薄片状を呈する体質顔料としては、たとえば、天然鉱物由来の体質顔料のうちカオリンや、あるいは水酸化アルミニウムを高温、高圧下で水と作用させる水熱合成法によって製造される板状アルミナ粉体〔扁平アルミナ粒子、キンセイマテック(株)製のセラフ(登録商標)等〕が挙げられる。
とくに、鱗片状ないし薄片状を呈する上、それ自体が白色で高い隠蔽性をも有するカオリンが好ましい。
【0028】
(カオリン)
カオリンとしては、天然に産出する粘土鉱物(白陶土、カオリンクレー等)を精製して製造され、たとえばカオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイト、加水ハロイサイト等の1種または2種以上を含む各種のカオリンが挙げられる。
具体的には、たとえば精製方法によって分類される湿式カオリン、焼成カオリン、乾式カオリン等の1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
中でも、水を利用して精製、漂白して不純物を除去した湿式カオリンや、当該湿式カオリンを焼成した焼成カオリンが、明度や白色度に優れるため好ましい。
カオリンの具体例としては、これに限定されないが、たとえば下記の各種カオリンが挙げられる。
【0030】
(焼成カオリン)
(株)イメリス ミネラルズ・ジャパン製のNeoGen 1000(平均粒子径:0.6μm)、PoleStar(登録商標)400(平均粒子径:0.6μm)、Kaopolite(登録商標)SF(平均粒子径:0.70μm)、NeoGen 2000(平均粒子径:0.7μm)、OpTiMax 0425(平均粒子径:0.8μm)、Kaopolite(登録商標)1152(平均粒子径:0.90μm)、MetaStar 501HP(平均粒子径:1.0μm)、PoleStar 450HP(平均粒子径:1.0μm)、NeoGen MX(平均粒子径:1.1μm)、Glomax(登録商標)LX(平均粒子径:1.20μm)、MetaStar 501(平均粒子径:1.20μm)、Kaopolite 1168(平均粒子径:1.30μm)、Glomax(登録商標)LL(平均粒子径:1.50μm)、PoleStar 450(平均粒子径:1.50μm)、Kaopolite 1147(平均粒子径:1.60μm)、PoleStar 200R(平均粒子径:2.0μm)。
竹原化学工業(株)製のSatintone No.5(平均粒子径:0.8μm)、Satintone W(平均粒子径:1.4μm)、Glomax LL(平均粒子径:1.5μm)。
【0031】
(湿式カオリン)
山陽クレー工業(株)製のBIカオリン(平均粒子径:3μm)、AAカオリン(平均粒子径:5μm)。
(株)イメリス ミネラルズ・ジャパン製のHydrite(登録商標)シリーズのうちTS90(平均粒子径:0.20μm)、TS90S(平均粒子径:0.20μm)、UF90(平均粒子径:<0.20μm)、UF90S(平均粒子径:<0.20μm)、PXN-LC(平均粒子径:0.40μm)、PXN-LCS(平均粒子径:0.40μm)、SB 60(平均粒子径:0.40μm)、SB 60S(平均粒子径:0.40μm)、R(平均粒子径:0.45μm)、RA(平均粒子径:0.45μm)、RS(平均粒子径:0.50μm)、RSA(平均粒子径:0.50μm)、121S(平均粒子径:1.00μm)、SB 100S(平均粒子径:1.10μm)、SB 100(平均粒子径:1.20μm)、Flat D(平均粒子径:4.00μm)、Flat DS(平均粒子径:4.0μm);Kaopaqueシリーズのうち10(平均粒子径:0.40μm)、10S(平均粒子径:0.60μm);Eckalite(登録商標)シリーズのうちED(平均粒子径:0.4μm)、1(平均粒子径:0.5μm)。
上記カオリンの1種または2種以上を用いることができる。
【0032】
〈酸化チタン〉
酸化チタン(二酸化チタン、TiO2)としては、たとえば硫酸法、塩素法等の製造方法によって製造された、ルチル型、アナターゼ型等の各種の酸化チタンがいずれも使用可能である。
ただし酸化チタンとしては、白色層の隠蔽性を高めて良好な白色度を有する印刷をすることを考慮すると、平均粒子径が0.2μm以上であるものを選択して用いるのが好ましい。
また酸化チタンとしては、上記の範囲でも小径でより軽い、平均粒子径が0.5μm以下の酸化チタンを選択して用いるのがさらに好ましい。
【0033】
これにより、比重の大きい酸化チタンの、白色層のもとになる塗材中や白色層中での分散性を向上したり、感熱転写媒体の取り扱い時に応力が加わる等した際に、白色層が基材から不用意に剥離する、いわゆる溢れ(こぼれ)の発生を抑制したりすることができる。
酸化チタンの具体例としては、これに限定されないが、たとえば、いずれもルチル型である、石原産業(株)製の、下記の各種グレードの酸化チタンが挙げられる。
【0034】
(硫酸法酸化チタン)
R-780(平均粒子径:0.24μm)、R-780-2(平均粒子径:0.24μm)、R-850(平均粒子径:0.24μm)、PF-736(平均粒子径:0.24μm)、PF-737(平均粒子径:0.21μm)、PF-742(平均粒子径:0.25μm)、R-820(平均粒子径:0.26μm)、R-830(平均粒子径:0.25μm)、R-930(平均粒子径:0.25μm)、R-980(平均粒子径:0.24μm)、R-550(平均粒子径:0.24μm)、R-630(平均粒子径:0.24μm)、R-680(平均粒子径:0.21μm)。
【0035】
(塩素法酸化チタン)
CR-58(平均粒子径:0.28μm)、CR-58-2(平均粒子径:0.28μm)、CR-85(平均粒子径:0.25μm)、PF-690(平均粒子径:0.21μm)、PF-691(平均粒子径:0.21μm)、PF-711(平均粒子径:0.25μm)、PF-739(平均粒子径:0.25μm)、PC-3(平均粒子径:0.21μm)、CR-95(平均粒子径:0.28μm)、CR-953(平均粒子径:0.28μm)、CR-97(平均粒子径:0.25μm)、UT771(平均粒子径:0.25μm)、PFC105(平均粒子径:0.28μm)、CR-60(平均粒子径:0.21μm)、CR-60-2(平均粒子径:0.21μm)、CR-63(平均粒子径:0.21μm)、CR-67(平均粒子径:0.21μm)、CR-50(平均粒子径:0.25μm)、CR-50-2(平均粒子径:0.25μm)、CR-57(平均粒子径:0.25μm)、CR-Super70(平均粒子径:0.25μm)、CR-80(平均粒子径:0.25μm)、CR-90(平均粒子径:0.25μm)、CR-90-2(平均粒子径:0.25μm)、CR-93(平均粒子径:0.28μm)。
上記酸化チタンの1種または2種以上を用いることができる。
【0036】
〈アクリル樹脂〉
アクリル樹脂としては、成膜性を有し、なおかつ透明性に優れた種々のアクリル樹脂がいずれも使用可能である。
またアクリル樹脂としては、任意の溶剤に可溶で塗料用、インキ用等として粒度等が調整された微粉状で、なおかつ熱可塑性のアクリル樹脂が好適に用いられる。
【0037】
これらの条件を満足する熱可塑性のアクリル樹脂としては、これに限定されないが、たとえば三菱レイヨン(株)製のダイヤナール(登録商標)BRシリーズの各種製品、具体的には、たとえばBR-50(酸価:0mgKOH/g)、BR-52(酸価:0mgKOH/g)、BR-60(酸価:1mgKOH/g)、BR-64(酸価:2mgKOH/g)、BR-73(酸価:3mgKOH/g)、BR-75(酸価:0mgKOH/g)、BR-77(酸価:18.5mgKOH/g)、BR-79(酸価:3.5mgKOH/g)、BR-80(酸価:0mgKOH/g)、BR-83(酸価:2mgKOH/g)、BR-85(酸価:0mgKOH/g)、BR-87(酸価:10.5mgKOH/g)、BR-88(酸価:1mgKOH/g)、BR-90(酸価:1mgKOH/g)、BR-93(酸価:4mgKOH/g)、BR-95(酸価:0mgKOH/g)、BR-100(酸価:0mgKOH/g)、BR-101(酸価:0mgKOH/g)、BR-102(酸価:1mgKOH/g)、BR-105(酸価:0mgKOH/g)、BR-106(酸価:3.5mgKOH/g)、BR-107(酸価:0mgKOH/g)、BR-108(酸価:0mgKOH/g)、BR-112(酸価:0mgKOH/g)、BR-113(酸価:3.5mgKOH/g)、BR-115(酸価:0mgKOH/g)、BR-116(酸価:7mgKOH/g)、BR-117(酸価:0mgKOH/g)、BR-118(酸価:0mgKOH/g)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0038】
ただし、酸化チタンの分散性を高めて、印刷の白色度をより一層、向上すること等を考慮すると、アクリル樹脂としては、酸価が1mgKOH/g以上、とくに3mgKOH/g以上であるものを用いるのが好ましい。
なお、アクリル樹脂の酸価の上限はとくに限定されず、上記の範囲で入手可能な種々の酸価を有するアクリル樹脂を用いることができる。
また、印刷の定着性や堅牢性を向上させることを目的として、たとえば転写後後に熱を加える等して白色層を硬化させる工程を経て印刷を完成することも考えられ、その場合には、アクリル樹脂として熱硬化性のものを採用することも可能である。
【0039】
〈可塑剤〉
可塑剤としては、白色層を形成する各成分に対する親和性や相溶性を有し、しかも白色層中に含ませることによって当該白色層の柔軟性を高めて、感熱転写媒体がカールするのを抑制する機能を有する種々の可塑剤がいずれも使用可能である。
【0040】
かかる可塑剤としては、たとえばアジピン酸誘導体、アゼライン酸誘導体、安息香酸誘導体、エポキシ誘導体、クエン酸誘導体、グリコール誘導体、グリセリン誘導体、脂肪酸エステル類、ポリエーテルエステル類、スルホン酸誘導体、石油誘導体、セバシン酸誘導体、テトラヒドロフタル酸誘導体、トリメリット酸誘導体、ビフェニル誘導体、ピロメリット酸誘導体、フタル酸誘導体、フマル酸誘導体、パラフィン誘導体、ポリエステル類、燐酸誘導体等が挙げられる。
【0041】
〈他の成分〉
白色層には、上記の各成分に加えて、たとえば白の色味を調製するために、白以外の任意の色の顔料を少量、配合してもよい。
また白色層には、さらに白色顔料の分散を補助するための分散剤や界面活性剤、あるいは酸化防止剤などの各種添加剤や、あるいは特許文献2で配合している熱可塑性アクリルエラストマやワックスなどを配合することもできる。
【0042】
しかし、前述したように熱可塑性アクリルエラストマはゴム状弾性物質であって結着力や造膜力が高いため、たとえアクリル樹脂と併用したとしても、白色層が膜キレしにくくなって余剥離を生じる場合がある。
そのため白色層は、組成を簡略化することも併せ考慮して、熱可塑性アクリルエラストマを含まない(除く)ことが好ましい。
また本発明では、白色層は基材上に剥離層を介して形成され、それ自体が熱剥離性を有している必要がないため、組成を簡略化することも併せ考慮して、当該白色層は、ワックスを含まない(除く)ことが好ましい。
【0043】
〈各成分の割合〉
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料の割合Rwwは60質量%以上、とくに65質量%以上であるのが好ましく、91質量%以下、中でも90質量%以下、とくに85質量%以下であるのが好ましい。
【0044】
白色顔料の割合Rwwがこの範囲未満では、白色層の明度や印刷の白色度が不足する場合がある。
一方、白色顔料の割合Rwwが上記の範囲を超える場合には、相対的にアクリル樹脂の量が不足するため、熱転写印刷時の熱感度が低下して、印刷に掠れを生じる場合がある。
また、アクリル樹脂による結着性、保持性が不足して、熱転写印刷前の白色層が溢れやすくなる場合もある。
【0045】
これに対し、白色顔料の割合Rwwを上記の範囲とすることにより、熱転写印刷前の白色層の溢れや、熱転写印刷時の熱感度の低下による印刷の掠れを生じさせることなしに、当該印刷の白色度を向上することができる。
白色顔料として、酸化チタン等を単体で使用する場合、白色顔料の割合Rwwは、当該単体の白色顔料の割合であり、白色顔料として、酸化チタンと、カオリン等の体質顔料とを併用する場合には、その合計の割合である。
【0046】
また白色顔料として、酸化チタンと体質顔料とを併用する場合、酸化チタンと体質顔料の合計、つまり白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは0.5質量%以上、とくに1質量%以上であるのが好ましく、12質量%以下、とくに10質量%以下であるのが好ましい。
体質顔料の割合rkwがこの範囲未満では、当該体質顔料を酸化チタンと併用することによる、前述した、酸化チタンの量を増加させることなく白色層の隠蔽性を高めて、白色度に優れた白色の印刷をする効果が得られない場合がある。
【0047】
また、隠蔽性を維持するべく、比重の大きい酸化チタンの量を多くすると、アクリル樹脂による結着性、保持性の能力を超えてしまって、熱転写印刷前の白色層が溢れやすくなる場合もある。
一方、体質顔料は、酸化チタンに比べて比重が小さく、単位質量あたりの体積が大きい。
【0048】
そのため、体質顔料の割合rkwが上記の範囲を超える場合には、相対的にアクリル樹脂の量が大きく不足し、熱転写印刷時の熱感度が低下して、印刷に掠れを生じる場合がある。
これに対し、体質顔料の割合rkwを上記の範囲とすることにより、熱転写印刷前の白色層の溢れを生じさせることなしに、また熱転写印刷時の熱感度の低下による印刷の掠れを生じさせることなしに、印刷の白色度を向上することができる。
【0049】
また、白色層を形成する固形分の総量中の、体質顔料の割合Rkwは10質量%以下、とくに8質量%以下であるのが好ましい。
体質顔料の割合Rkwの下限はとくに限定されず、前述したように体質顔料を含まない、すなわち体質顔料の割合Rkwが0質量%の場合をも含みうる。
ただし体質顔料を併用する場合は、前述した併用の効果をより一層、向上することを考慮して、白色層を形成する固形分の総量中の、体質顔料の割合Rkwは、1質量%以上とするのが好ましい。
【0050】
白色層を形成する固形分の総量中の、可塑剤の割合Rpwは0.1質量%以上、とくに1.5質量%以上であるのが好ましく、12質量%以下、とくに10質量%以下であるのが好ましい。
可塑剤の割合Rpwがこの範囲未満では、当該可塑剤を配合することによる、前述した、白色層の柔軟性を高めて、感熱転写媒体にカールが生じるのを抑制する効果が得られない場合がある。
【0051】
一方、可塑剤の割合Rpwが上記の範囲を超える場合には、過剰の可塑剤が白色層の表面にブリード(滲出)しやすくなる。
そして、たとえば長尺帯状の感熱転写リボンをリールに巻回する際や巻回した状態から繰り出す際等に、ブリードした可塑剤が原因となって、前述したブロッキングを生じる場合がある。
【0052】
これに対し、可塑剤の割合Rpwを上記の範囲とすることにより、当該可塑剤のブリードによるブロッキングを生じさせることなしに、白色層の柔軟性を高めて、感熱転写媒体がカールするのをさらに良好に抑制することができる。
白色層に添加してもよい各種の添加剤の割合は、任意に設定することができる。
白色層を形成する固形分の総量中の、アクリル樹脂の割合Rawは、上記各成分の残量とする。
【0053】
すなわち、上記各成分の割合を、それぞれ所定の範囲に設定し、さらにアクリル樹脂を加えた総量が100質量%となるように、当該アクリル樹脂の割合Rawを設定すればよい。
ただし、アクリル樹脂の割合Rawは8質量%以上、とくに10質量%以上であるのが好ましく、32質量%以下、とくに30質量%以下であるのが好ましい。
【0054】
アクリル樹脂の割合Rawがこの範囲未満では、熱転写印刷時の熱感度が低下して、印刷に掠れを生じる場合がある。
また、アクリル樹脂による結着性、保持性が不足して、熱転写印刷前の白色層が溢れやすくなる場合もある。
さらに、相対的に可塑剤の量が過剰になって、当該可塑剤のブリードによるブロッキングを生じる場合もある。
【0055】
一方、アクリル樹脂の割合Rawが上記の範囲を超える場合には、相対的に白色顔料の量が不足して、白色層の明度や白色度が低下する場合がある。
また、可塑剤の量にもよるが、白色層の柔軟性が低下して、感熱転写媒体にカールが生じる場合もある。
これに対し、アクリル樹脂の割合Rawを上記の範囲とすることにより、白色層のカールや溢れ、あるいは熱転写印刷時の熱感度の低下による印刷の掠れを生じさせることなしに、当該印刷の白色度を向上することができる。
【0056】
〈白色層の形成〉
白色層は、上記の各成分を任意の溶剤に溶解または分散させた塗材を、基材の表面に形成した剥離層の上に塗布したのち、乾燥させて形成することができる。
〈厚み〉
白色層の厚みTwは、やはり熱転写プリンタの仕様等に応じて任意に設定できるものの、単位面積当たりの固形分量で表して2g/m2以上、とくに3g/m2以上であるのが好ましく、10g/m2以下、とくに8g/m2以下であるのが好ましい。
【0057】
白色層の厚みTwをこの範囲以上とすることで、当該白色層の全体での隠蔽性を向上し、下地の色に影響されるのを抑制して、印刷の白色度を高めることができる。
また、白色層の厚みTwを上記の範囲以下とすることで、当該白色層の、熱転写印刷時の熱感度を向上して掠れを生じにくくして、鮮明な印刷をすることができる。
【0058】
《剥離層》
剥離層としては、従来同様に、感熱転写媒体を熱転写印刷に使用するまでの間、白色層を基材の表面に固定し続けるとともに、サーマルヘッドによる加熱によって溶融または軟化して、白色層を基材から剥離させる機能、すなわち熱剥離性を有する層が挙げられる。
【0059】
剥離層を形成する材料としては、従来同様に、ワックスや熱可塑性樹脂などを用いることができる。
このうちワックスとしては、たとえばポリエチレンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等が挙げられる。
【0060】
また熱可塑性樹脂としては、たとえばポリエチレン系共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、塩化ビニル系(共)重合体、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
上記ワックスや熱可塑性樹脂などの1種または2種以上を用いることができる。
とくにワックスが好ましいが、ワックスには、熱転写印刷前の剥離層、そして白色層の溢れを防止するために、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)等の熱可塑性樹脂を添加してもよい。
【0061】
剥離層は、上述した機能を良好に発現させることを考慮すると、融点または軟化点が50℃以上、とくに60℃以上であるのが好ましく、150℃以下、とくに120℃以下であるのが好ましい。
融点または軟化点が上記の範囲にある剥離層を形成するためには、例示のワックスや熱可塑性樹脂の中から、融点または軟化点が当該範囲にあるものを選択して使用すればよい。
【0062】
また、ワックスや熱可塑性樹脂の2種以上を併用して、融点または軟化点が上記の範囲に入るように調整してもよい。
ワックスと、EVA等の熱可塑性樹脂とを併用する場合は、両者を、質量比W(ワックス)/P(熱可塑性樹脂)で表して1以上、1.5以下の範囲で併用するのが好ましい。
剥離層には、ワックスや熱可塑性樹脂に加えて、さらに他の成分を含有させてもよい。
【0063】
他の成分としては、たとえば有機また無機の充てん剤、熱硬化性樹脂、高級脂肪酸、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、アミド類、高級アミン、オイル、界面活性剤等の1種または2種以上が挙げられる。
このうち界面活性剤は、剥離層の熱剥離性を調整するためのもので、界面活性剤としては、たとえばポリオキシエチレン鎖含有化合物等が挙げられる。
【0064】
これら他の成分の割合は、任意に設定することができる。
また剥離層には、白色層の隠蔽性を補助して、印刷の白色度さらに高めるため、白色層と同様に白色顔料を含有させてもよい。
白色顔料としては、前述したように酸化チタンが好ましく、酸化チタンとともにカオリン等の体質顔料を併用してもよい。
【0065】
これらの理由は、先に説明したとおりである。
剥離層を形成する固形分の総量中の、白色顔料の割合Rwpは20質量%以上、とくに25質量%以上であるのが好ましく、95質量%以下、とくに90質量%以下であるのが好ましい。
白色顔料の割合Rwpがこの範囲未満では、剥離層に白色顔料を含ませることによる、上述した、白色層の隠蔽性を補助して、印刷の白色度をさらに高める効果が得られない場合がある。
【0066】
一方、白色顔料の割合Rwpが上記の範囲を超える場合には、相対的にワックスや熱可塑性樹脂の量が不足するため、熱転写印刷前の剥離層、および白色層が溢れやすくなる場合がある。
これに対し、白色顔料の割合Rwpを上記の範囲とすることにより、熱転写印刷前の剥離層、および白色層の溢れを生じさせることなしに、印刷の白色度をさらに向上することができる。
【0067】
白色顔料として、酸化チタン等を単体で使用する場合、白色顔料の割合Rwpは、当該単体の白色顔料の割合であり、白色顔料として、酸化チタンと、カオリン等の体質顔料とを併用する場合には、その合計の割合である。
また白色顔料として、酸化チタンと体質顔料とを併用する場合、酸化チタンと体質顔料の合計、つまり白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkpは、20質量%以上、とくに30質量%以上であるのが好ましい。
【0068】
剥離層は熱感度に直接に影響しないため、比重の小さい体質顔料の割合を、白色層に比べて多く、具体的には上記の範囲として、白色層の隠蔽性の補助による、印刷の白色度を高める効果を、より一層、向上することができる。
ただし体質顔料の割合rkpは、上記の範囲でも80質量%以下、とくに70質量%以下であるのが好ましい。
【0069】
体質顔料の割合rkpがこの範囲を超える場合には、相対的にワックスや熱可塑性樹脂の量が不足するため、熱転写印刷前の剥離層、および白色層が溢れやすくなる場合がある。
これに対し、体質顔料の割合rkpを上記の範囲とすることにより、熱転写印刷前の剥離層、および白色層の溢れを生じさせることなしに、印刷の白色度をさらに向上することができる。
【0070】
また、剥離層を形成する固形分の総量中の、体質顔料の割合Rkpは45質量%以下、とくに40質量%以下であるのが好ましい。
体質顔料の割合Rkpの下限はとくに限定されず、前述したように体質顔料を含まない、すなわち体質顔料の割合Rkpが0質量%の場合をも含みうる。
ただし体質顔料を併用する場合は、その併用の効果をより一層、向上することを考慮して、剥離層を形成する固形分の総量中の、体質顔料の割合Rkpは、10質量%以上、とくに15質量%以上とするのが好ましい。
【0071】
剥離層は、そのもとになる上記の各成分を任意の溶剤に溶解または分散させた塗材を、基材の表面に塗布したのち乾燥させて形成することができる。
またホットメルト塗工により、上記の各成分の混合物を加熱して溶融させた状態で基材の表面に塗布したのち冷却、固化させて剥離層を形成することもできる。
剥離層の厚みは、やはり熱転写プリンタの仕様等に応じて任意に設定できるものの、単位面積あたりの固形分量で表して0.1g/m2以上、とくに0.2g/m2以上であるのが好ましく、3g/m2以下、とくに2g/m2以下であるのが好ましい。
【0072】
厚みをこの範囲以上とすることで、基材の表面に、剥離層として良好に機能する連続した層を形成することができる。
また、剥離層の厚みを上記の範囲以下とすることで、サーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、当該剥離層を通して白色層にできるだけ効率よく伝達することもできる。
したがって、剥離層の厚みを上記の範囲とすることで、熱転写印刷時の熱感度をさらに向上し、掠れを生じにくくして、より一層、鮮明な印刷をすることができる。
【0073】
《背面層》
基材の、剥離層、および白色層を形成する側と反対面(背面)には、サーマルヘッドと接触する当該背面の耐熱性、滑り性、耐擦過性等を向上するため、従来同様に、背面層を形成してもよい。
【0074】
背面層は、従来同様に形成できる。
すなわち背面層は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン・フッ素共重合樹脂、ニトロセルロース樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂等によって形成できる。
また背面層には、必要に応じて滑剤を含有させても良い。
【0075】
背面層は、上記樹脂等を溶剤に溶解または分散させた塗材を、基材の背面に塗布したのち乾燥させて形成することができる。
背面層の厚みは、やはり熱転写プリンタの仕様等に応じて任意に設定できるものの、単位面積あたりの固形分量で表して0.05g/m2以上、とくに0.1g/m2以上であるのが好ましく、0.5g/m2以下、とくに0.4g/m2以下であるのが好ましい。
【0076】
厚みをこの範囲以上とすることで、基材の背面に、背面層として良好に機能する連続した層を形成して、当該背面層を設けることによる上述した効果を十分に確保することができる。
一方、背面層の厚みを上記の範囲以下とすることで、サーマルヘッドによって基材の背面側から加えられる熱を、当該背面層と基材とを通して剥離層、および白色層にできるだけ効率よく伝達して、熱転写印刷時の熱感度をさらに向上することができる。
そして、掠れを生じにくくして、鮮明な印刷をすることができる。
【0077】
《接着層》
白色層を形成するアクリル樹脂との親和性、接着性を有する被印刷体の表面へ印刷する場合は、アクリル樹脂の機能によって、白色層を直接に熱転写印刷できるため、接着層は不要である。
しかし被印刷体の表面が、とくにアクリル樹脂との親和性、接着性の低い表面である場合は、白色層の上に、熱転写印刷時の熱によって粘着性を示す感熱性の接着層を設けてもよい。
感熱性の接着層は、たとえば、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂などによって形成できる。
【0078】
また接着層には、白色層の隠蔽性と、印刷の白色度とを補助するために、酸化チタン等の白色の顔料を含有させてもよい。
本発明の感熱転写媒体の構成は、以上で説明した例のものには限定されない。
たとえば、背面層、接着層は省略してもよい。
その他、本発明の要旨を変更しない範囲で、種々の変更を施すことができる。
【実施例0079】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいてさらに説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(基材および背面層)
基材としては、背面に、シリコーン系樹脂からなる背面層を形成した、厚み5μmのPETフィルムを用意した。
【0080】
(剥離層)
下記の各成分を溶剤に溶解、分散させて調製した剥離層用の塗材を、基材の、背面層を形成した側と反対面である表面に塗布したのち乾燥させて、単位面積あたりの固形分量が1.0g/m2である剥離層を形成した。
【0081】
【0082】
表1中の各成分は、下記のとおり。
EVA:三井・ダウ ポリケミカル(株)製のエバフレックス(登録商標)EV250
カルナバワックス:カルナバワックス2号
酸化チタン:石原産業(株)製のR-550(平均粒子径:0.24μm)
体質顔料:湿式カオリン、山陽クレー工業(株)製のBIカオリン(平均粒子径:3μm)
剥離層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwpは55.0質量%、上記白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkpは50.0質量%であった。
また剥離層における、カルナバワックスとEVAの質量比W/P=1.25であった。
【0083】
(白色層)
下記の各成分を溶剤に溶解、分散させて、白色層用の塗材を調製した。
【0084】
【0085】
表2中の各成分は、下記のとおり。
酸化チタン:石原産業(株)製のR-550(平均粒子径:0.24μm)
体質顔料:湿式カオリン、山陽クレー工業(株)製のBIカオリン(平均粒子径:3μm)
アクリル樹脂:三菱レイヨン(株)製のダイヤナールBR-106(酸価:3.5mgKOH/g)
可塑剤:ジブチルフタレート〔フタル酸誘導体、大八化学工業(株)製のDBP〕
次いで上記塗材を、先に形成した剥離層の上に塗布したのち乾燥させて、単位面積当たりの固形分量が6.0g/m2の白色層を形成し、さらにスリット等の工程を経て、感熱転写媒体としての感熱転写リボンを作製した。
【0086】
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwwは77.5質量%、アクリル樹脂の割合Rawは20.0質量%、可塑剤の割合Rpwは2.5質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは6.45質量%であった。
【0087】
〈実施例2~5〉
酸化チタン、体質顔料、アクリル樹脂、および可塑剤の量を、それぞれ表3に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rww、アクリル樹脂の割合Raw、可塑剤の割合Rpw、および白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは、それぞれ表3に示したとおりであった。
【0088】
【0089】
〈実施例6~9〉
酸化チタンと体質顔料の量を、それぞれ表4に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rww、および白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは、それぞれ表4に示したとおりであった。
【0090】
【0091】
〈実施例10〉
酸化チタンの量を77.5質量%として、体質顔料を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンの割合Rwwは77.5質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは0質量%であった。
【0092】
〈比較例1〉
アクリル樹脂に代えて、塩酢ビ系樹脂〔日信化学工業(株)製のソルバインCL、塩酢ビ樹脂、組成:塩化ビニル86質量%、酢酸ビニル14質量%、重合度:300、重量平均分子量Mw:5×104、ガラス転移温度Tg:70℃〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwwは77.5質量%、アクリル樹脂の割合Rawは0質量%、可塑剤の割合Rpwは2.5質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは6.45質量%であった。
【0093】
〈比較例2〉
酸化チタンの量を85.0質量%、体質顔料の量を5.9質量%、塩化ビニル樹脂の量を6.6質量%、および可塑剤の量を2.5質量%としたこと以外は比較例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwwは90.9質量%、アクリル樹脂の割合Rawは0質量%、可塑剤の割合Rpwは2.5質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは6.49質量%であった。
【0094】
〈比較例3〉
アクリル樹脂の量を22.5質量%として、可塑剤を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwwは77.5質量%、アクリル樹脂の割合Rawは22.5質量%、可塑剤の割合Rpwは0質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは6.45質量%であった。
【0095】
〈実施例11〉
可塑剤として、脂肪酸エステル類としてのひまし油系脂肪酸エステル〔伊藤製油(株)製のリックサイザーS-4〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwwは77.5質量%、アクリル樹脂の割合Rawは20.0質量%、可塑剤の割合Rpwは2.5質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは6.45質量%であった。
【0096】
〈実施例12〉
体質顔料として、湿式カオリンに代えて、炭酸カルシウム〔軽質炭酸カルシウム、丸尾カルシウム(株)製〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwwは77.5質量%、アクリル樹脂の割合Rawは20.0質量%、可塑剤の割合Rpwは2.5質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは6.45質量%であった。
【0097】
〈実施例13〉
体質顔料として、湿式カオリンに代えて、板状アルミナ粉体〔キンセイマテック(株)製のセラフ〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwwは77.5質量%、アクリル樹脂の割合Rawは20.0質量%、可塑剤の割合Rpwは2.5質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは6.45質量%であった。
【0098】
〈実施例14〉
EVAの量を45.0質量%、カルナバワックスの量を55.0質量%として、酸化チタン、および体質顔料を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして剥離層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
剥離層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwpは0質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkpは0質量%、カルナバワックスとEVAの質量比W/Pは1.22であった。
【0099】
〈実施例15~18〉
酸化チタン、および体質顔料の量を、それぞれ表5に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして剥離層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
剥離層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwp、および白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkpは、それぞれ表5に示したとおりであった。また、カルナバワックスとEVAの質量比W/Pは1.25であった。
【0100】
【0101】
〈実施例19~21〉
酸化チタン、体質顔料、アクリル樹脂、および可塑剤の量を、それぞれ表6に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rww、アクリル樹脂の割合Raw、可塑剤の割合Rpw、および白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは、それぞれ表6に示したとおりであった。
【0102】
【0103】
〈実施例22~25〉
EVA、カルナバワックス、酸化チタン、および体質顔料の量を、それぞれ表7に示す値としたこと以外は実施例1と同様にして剥離層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
剥離層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwp、およびカルナバワックスとEVAの質量比W/Pは、それぞれ表7に示したとおりであった。
また、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkpは50.0質量%であった。
【0104】
【0105】
〈実施例26〉
アクリル樹脂として、三菱レイヨン(株)製のダイヤナールBR-107(酸価:0mgKOH/g)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にして白色層を形成し、感熱転写リボンを作製した。
白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料としての酸化チタンと体質顔料の合計の割合Rwwは77.5質量%、アクリル樹脂の割合Rawは20.0質量%、可塑剤の割合Rpwは2.5質量%、白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは6.45質量%であった。
【0106】
〈白色度評価〉
(隠ぺい率測定)
各実施例、比較例で作製した感熱転写リボンを熱転写プリンタ〔ゼブラ・テクノロジーズ社製のZebra 110Xi4、解像度:300dpi〕に使用して、厚み5μmの透明のPETフィルムの表面に、白色層を熱転写印刷した。
【0107】
次いで、熱転写印刷した白色層を上にした状態で、PETフィルムを、日本工業規格JIS K5600-4-1:1999「塗料一般試験方法-第4部:塗料の四角特性-第1節:隠ぺい力(淡彩色塗料用)」において規定された、白部と黒部が隣接して印刷された隠ぺい率試験紙の表面に重ねて固定した。
そしてPETフィルム上の白色層の、隠ぺい率試験紙の白部と黒部に対応する領域について、それぞれ4箇所ずつ、分光測色計〔ビデオジェット・エックスライト(株)製のX-Rite eXact〕を用いて測色して、CIE表色系のうちXYZ表色系の三刺激値Yを求めた。
次に、白部に対応する4箇所の三刺激値Yの平均値をYW、黒部に対応する4箇所の三刺激値Yの平均値をYBとして、隠ぺい率YB/YWを百分率で計算した。
【0108】
(明度測定)
上記各実施例、比較例で作製した感熱転写リボンを上記熱転写プリンタに使用して、厚み5μmの透明のPETフィルムの表面に、白色層を熱転写印刷した。
次いで、熱転写印刷した白色層について、上記分光測色計を用いて測色して、CIE1976(L*,a*,b*)色空間のL値を求めた。
【0109】
(白色度評価)
上記隠蔽率YB/YW(%)とL値とから、下記の基準で、熱転写印刷した白色層の白色度を評価した。
◎:隠蔽率YB/YWが70%以上で、かつL値が90以上であった。
○:隠蔽率YB/YWが70%以上で、かつL値が80以上、90未満、または隠蔽率YB/YWが60%以上、70%未満で、かつL値が90以上であった。
△:隠蔽率YB/YWが60%以上、70%未満で、かつL値が80以上、90未満であった。
×:隠蔽率YB/YWが60%未満、および/またはL値が80未満であった。
【0110】
〈熱感度評価〉
各実施例、比較例で作製した感熱転写リボンを、前述した熱転写プリンタに使用し、サーマルヘッドに印加するエネルギー値を、上記熱転写プリンタにあらかじめ設定された1~30の30段階のうち15(低値とする)、および30(高値とする)のいずれかに設定して、印字速度4inch/secでバーコードを印刷したのち、バーコードの状態を観察した。
【0111】
そして、下記の基準で、熱転写印刷時の熱感度を評価した。
○:サーマルヘッドに印加するエネルギーが低値、高値のいずれでも、印刷したバーコードに掠れは見られなかった。
△:サーマルヘッドに印加するエネルギーが低値では、印刷したバーコードに掠れが見られたが、エネルギーが高値では、印刷したバーコードに掠れは見られなかった。
×:サーマルヘッドに印加するエネルギーを高値にしても、印刷したバーコードに掠れが見られた。
【0112】
〈余剥離評価〉
各実施例、比較例で作製した感熱転写リボンを、前述した熱転写プリンタに用いて、PETフィルムの表面に、印字速度:6インチ/秒、印字濃度:25の条件でバーコードを熱転写印刷した。
【0113】
次いで、熱転写印刷したバーコードの状態を目視にて観察するとともに、バーコードリーダーを用いて読み取って、下記の基準で余剥離の有無を評価した。
○:バーコードには余剥離は見られず、バーコードリーダーで正しく読み取ることもできた。
△:バーコードには僅かな余剥離が見られたが、バーコードリーダーで正しく読み取ることはできた。
×:バーコードに著しい余剥離が見られ、バーコードリーダーで正しく読み取ることができなかった。
【0114】
〈カール評価〉
各実施例、比較例で作製し、60mm幅にスリットしてリールに巻回した状態の感熱転写リボンを、白色層側を上にして、30mmの長さに亘ってリールから引き出した。
次いで、引き出した感熱転写リボンの、長さ方向に沿うカールの状態を目視にて観察して、下記の基準でカールの有無を評価した。
○:引き出した感熱転写リボンは、円を描くほどカールしなかった。
△:引き出した感熱転写リボンは円を描くようにカールしたが、その直径は9mm以上であった。
×:引き出した感熱転写リボンは円を描くようにカールし、その直径は9mm未満であった。
【0115】
〈ブロッキング評価〉
各実施例、比較例で作製してリールに巻回した状態の感熱転写リボンを、温度50℃、相対湿度90%の高温高湿環境下で96時間静置したのち、リールから引き出した際のブロッキングの有無を、下記の基準で評価した。
○:全く問題なく引き出すことができた。
△:引き出す際に剥離音がしたが、引き出した後の感熱転写リボンは使用可能であった。
×:ブロッキングにより、白色層が背面側に接着して、感熱転写リボンを正常に引き出すことができなかった。
【0116】
〈溢れ評価〉
各実施例、比較例で作製した感熱転写リボンの白色層を黒綿棒で1回こすったのち、当該黒綿棒および白色層を観察した。そして、下記の基準で白色層の溢れにくさを評価した。
○:綿棒には粉は付着しておらず、白色層にも筋などの変化は見られなかった。
△:綿棒に、白色層から溢れた粉が僅かに付着したが、白色層に筋などの変化は見られなかった。
×:綿棒に、白色層から溢れた粉が付着するとともに、白色層に筋が見られた。
以上の結果を表8~表13に示す。
なお各表中、可塑剤の欄の略号は下記のとおり。
DBP:ジブチルフタレート、大八化学工業(株)製のDBP
S-4:ひまし油系脂肪酸エステル、伊藤製油(株)製のリックサイザーS-4
また、アクリル樹脂の欄の数字は、使用したアクリル樹脂の酸価(mgKOH/g)を示す。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
表8~表13の実施例1~26、比較例1、2の結果より、白色層のバインダ樹脂としてアクリル樹脂を用いることにより、白色顔料の割合Rwwを増加させて熱感度を低下させることなしに白色層の明度を向上できることと、余剥離を生じさせることなしに白色層の厚みを大きくできることとが相まって、印刷の白色度を向上できることが判った。
また実施例1~26、比較例3の結果より、上記アクリル樹脂とともに可塑剤を併用することにより、感熱転写媒体のカールを生じにくくできることが判った。
【0124】
実施例1~5の結果より、白色層を形成する固形分の総量中の、白色顔料の割合Rwwは60質量%以上、とくに65質量%以上であるのが好ましく、91質量%以下、中でも90質量%以下、とくに85質量%以下であるのが好ましいことが判った。
また実施例1~5の結果より、白色層を形成する固形分の総量中の、アクリル樹脂の割合Rawは8質量%以上、とくに10質量%以上であるのが好ましく、32質量%以下、とくに30質量%以下であるのが好ましいことも判った。
【0125】
実施例1、6~10の結果より、白色顔料としては、酸化チタンと体質顔料とを併用するのが好ましく、その場合、両者の合計、つまり白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkwは0.5質量%以上、とくに1質量%以上であるのが好ましく、12質量%以下、とくに10質量%以下であるのが好ましいことが判った。
実施例1、11の結果より、可塑剤としては、フタル酸誘導体、および脂肪酸エステル類等の各種の可塑剤が使用可能であることが判った。
【0126】
実施例1、12、13の結果より、体質顔料としては、カオリン、炭酸カルシウム、および板状アルミナ粉体等の各種の体質顔料が使用可能であり、中でも印刷の白色度を向上する効果の点で、カオリンや板状アルミナ粉体等の、鱗片状または薄片状を呈する体質顔料が好ましく、とくに、それ自体が白色で高い隠蔽性をも有するカオリンが最も好ましいことが判った。
【0127】
実施例1、14の結果より、白色層と組み合わせる剥離層にも白色顔料を含ませると、印刷の白色度をさらに向上できること、白色顔料としては、やはり酸化チタンと、カオリン等の、鱗片状または薄片状を呈する体質顔料とを併用するのが好ましいことが判った。
また実施例1、15~18の結果より、剥離層に含ませる、上記酸化チタンと体質顔料の合計、つまり白色顔料の総量中の、体質顔料の割合rkpは20質量%以上、とくに30質量%以上であるのが好ましく、80質量%以下、とくに70質量%以下であるのが好ましいことが判った。
【0128】
実施例1、19~21の結果より、白色層を形成する固形分の総量中の、可塑剤の割合Rpwは0.1質量%以上、とくに1.5質量%以上であるのが好ましく、12質量%以下、とくに10質量%以下であるのが好ましいことが判った。
実施例1、22~25の結果より、剥離層を形成する固形分の総量中の、白色顔料の割合Rwpは20質量%以上、とくに25質量%以上であるのが好ましく、95質量%以下、とくに90質量%以下であるのが好ましいことが判った。
【0129】
さらに実施例1、26の結果より、白色層を形成するアクリル樹脂としては、酸価が1mgKOH/g以上、とくに3mgKOH/g以上であるものを用いるのが好ましいことが判った。