(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130019
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】抗菌ブラシ
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20220830BHJP
A46B 15/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A45D34/04 510A
A46B15/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028946
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】509119197
【氏名又は名称】株式会社エイエムジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】福田 豊
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AA14
3B202AB16
3B202EA01
3B202EB10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗菌効果を有し、かつ、ブラシとしての良好な使用感を確保することができる抗菌ブラシを提供すること。
【解決手段】人間の体の一部に接して使用され、抗菌作用を有する抗菌ブラシであって、抗菌ブラシを構成するブラシ毛(突起)12は、細菌を低減する効果を有する金属の微粒子28が樹脂26中に分散して構成されており、微粒子28はブラシ毛12の表面に露出しないように構成されており、ブラシ毛12と同一の形状であり、ブラシ毛とは金属の微粒子を含まない点においてのみ異なる比較用ブラシ毛との対比において、曲げ硬さの相違が所定の許容範囲として規定される第一許容範囲内に限定される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の体の一部に接して使用され、抗菌作用を有する抗菌ブラシであって、
前記抗菌ブラシを構成するブラシ毛は、
細菌を低減する効果を有する金属の微粒子が樹脂中に分散して構成されており、
前記微粒子は少なくとも前記ブラシ毛の端部以外の部分において前記ブラシ毛の表面に露出しないように構成されており、
前記ブラシ毛と同一の形状であり、前記ブラシ毛とは前記金属の微粒子を含まない点においてのみ異なる比較用ブラシ毛との対比において、曲げ硬さの相違が所定の許容範囲として規定される第一許容範囲内に限定される、
抗菌ブラシ。
【請求項2】
前記第一許容範囲は、15パーセント(%)である、請求項1に記載の抗菌ブラシ。
【請求項3】
前記曲げ硬さにおける変形の大きさを基準変形度とし、前記基準変形度の半分の大きさの変形の大きさを中間変形度とし、前記中間変形度における力を中間曲げ硬さとするとき、前記中間曲げ硬さが、前記比較用ブラシ毛との対比において、同一または所定の許容範囲として規定される第二許容範囲内に限定される、
請求項1または請求項2に記載の抗菌ブラシ。
【請求項4】
前記第二許容範囲は、10パーセント(%)である、請求項3に記載の抗菌ブラシ。
【請求項5】
前記ブラシ毛における前記金属の微粒子の含有量は、25重量%以上55重量%以下である、
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の抗菌ブラシ。
【請求項6】
前記金属の微粒子の外形は実質的に球形である、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の抗菌ブラシ。
【請求項7】
前記ブラシ毛の長さ方向と直交する方向における断面において、前記金属の微粒子は前記樹脂中に実質的に均一に分散している、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の抗菌ブラシ。
【請求項8】
前記ブラシ毛の長さ方向と直交する方向における断面において、前記金属の微粒子は前記樹脂中に、周辺近傍に偏って分散している、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の抗菌ブラシ。
【請求項9】
前記ブラシ毛の長さ方向と直交する方向における断面において、前記金属の微粒子は前記樹脂中に、中心近傍に偏って分散している、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の抗菌ブラシ。
【請求項10】
前記ブラシ毛は、粉状の前記樹脂と、前記金属の微粒子を混合した混合紛を生成し、前記混合紛を押し出し成型して得られる、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の抗菌ブラシ。
【請求項11】
前記抗菌ブラシは、マスカラ塗布用の塗布具、アイライナー塗布用の塗布具、または、歯ブラシの部分である、
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の抗菌ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間の体の部分に接して使用される抗菌ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブラシ上に雑菌が繁殖することを防止することを目的として、抗菌ブラシが提案されている(例えば、特許文献1)。また、抗菌作用を有する金属を含む繊維や糸(以下、「抗菌繊維」と呼ぶ)が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許平5―7510号公報
【特許文献2】実用新案登録第3222178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の抗菌ブラシは、ブラシ自体の雑菌の繁殖を防止することはできるが、ブラシによって人間の体の部分に塗布するマスカラやアイシャドーなどの固体又は液体(以下、「対象物」という。)における雑菌の繁殖を防止する効果は不明である。また、上述の抗菌繊維は、抗菌繊維と接する対象物における雑菌の繁殖を防止する効果(以下、「抗菌効果」と呼ぶ。)を奏すると認められるが、ブラシの場合には、単に抗菌効果があるというだけではなく、ブラシとしての使用感が良好である必要がある。なお、本明細書において、「抗菌」は、抗菌、除菌、滅菌、抗ウイルス、徐ウイルス及び滅ウイルスを含む概念として使用する。
【0005】
本発明は、上記を踏まえて、抗菌効果を有し、かつ、ブラシとしての良好な使用感を確保することができる抗菌ブラシを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、人間の体の一部に接して使用され、抗菌作用を有する抗菌ブラシであって、前記抗菌ブラシを構成するブラシ毛は、細菌を低減する効果を有する金属の微粒子が樹脂中に分散して構成されており、前記微粒子は少なくとも前記ブラシ毛の端部以外の部分において前記ブラシ毛の表面に露出しないように構成されており、前記ブラシ毛と同一の形状であり、前記ブラシ毛とは前記金属の微粒子を含まない点においてのみ異なる比較用ブラシ毛との対比において、曲げ硬さの相違が所定の許容範囲として規定される第一許容範囲内に限定される、抗菌ブラシである。
【0007】
第一の発明の構成によれば、抗菌ブラシを構成するブラシ毛は、細菌を低減する効果を有する金属の微粒子が樹脂中に分散されて構成されており、かつ、微粒子はブラシ毛の少なくとも端部以外の部分においては表面に露出しないから金属が対象物と直接接する部分は存在しない、あるいは、その部分の面積は極めて小さい。このため、金属と対象物の成分が化学反応を起こし、対象物が変性することはない、あるいは、対象物が変性する可能性は極めて小さい。なお、「端部」とは、長手方向における端部を意味する。また、ブラシ毛は、比較用ブラシ毛との対比において、曲げ硬さの相違が所定の許容範囲として規定される第一許容範囲内に限定されるから、ブラシとしての使用感は、比較用ブラシ毛と比べて所定範囲内の相違に留まる。これにより、抗菌効果を有し、かつ、ブラシとしての良好な使用感を確保することができる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記第一許容範囲は、15パーセント(%)である、抗菌ブラシである。
【0009】
第三の発明は、第一の発明または第二の発明の構成において、前記曲げ硬さにおける変形の大きさを基準変形度とし、前記基準変形度の半分の大きさの変形の大きさを中間変形度とし、前記中間変形度における力を中間曲げ硬さとするとき、前記中間曲げ硬さが、前記比較用ブラシ毛との対比において、同一または所定の許容範囲として規定される第二許容範囲内に限定される、抗菌ブラシである。
【0010】
第三の発明の構成によれば、ブラシ毛は、比較用ブラシ毛との相違は、曲げ硬さにおいて第一許容範囲内であるだけではなく、中間曲げ硬さにおいて、第二許容範囲内に限定されるから、比較用ブラシ毛との使用感における相違を一層小さく限定することができる。
【0011】
第四の発明は、第三の発明の構成において、前記第二許容範囲は、10パーセント(%)である、抗菌ブラシである。
【0012】
第五の発明は、第一の発明乃至第四の発明のいずれかの構成において、前記ブラシ毛における前記金属の微粒子の含有量は、25重量%以上55重量%以下である、抗菌ブラシである。
【0013】
第六の発明は、第一の発明乃至第五の発明のいずれかの構成において、前記金属の微粒子の外形は実質的に球形である、抗菌ブラシである。
【0014】
第六の発明の構成によれば、金属の微粒子の外形が実質的に球形であるから、比表面積が大きい。このため、球相当径が同一の様々な形状の微粒子のなかでも、金属による抗菌作用を最大限に利用することができる。また、微粒子の球相当径が同一であり、ブラシ毛における微粒子の含有量が同一の場合において、金属の微粒子の外形が実質的に球形である場合には、金属の微粒子同士が接触する可能性が低い。このため、樹脂本来の曲げ硬さへ与える影響を低減し、良好な使用感を確保することができる。
【0015】
第七の発明は、第一の発明乃至第六の発明のいずれかの構成において、前記ブラシ毛の長さ方向と直交する方向における断面において、前記金属の微粒子は前記樹脂中に実質的に均一に分散している、抗菌ブラシである。
【0016】
第七の発明の構成によれば、金属の微粒子同士が接触する可能性を一層低減することができる。
【0017】
第八の発明は、第一の発明乃至第六の発明のいずれかの構成において、前記ブラシ毛の長さ方向と直交する方向における断面において、前記金属の微粒子は前記樹脂中に、周辺近傍に偏って分散している、抗菌ブラシである。
【0018】
第八の発明の構成によれば、ブラシ毛の長さ方向と直交する方向における断面において、金属の微粒子は樹脂中に周辺近傍に偏って分散しているから、相対的に多くの金属の微粒子はブラシ毛の周壁の表面近傍に分散している。このため、金属の抗菌作用を効果的に利用することができる。
【0019】
第九の発明は、第一の発明乃至第六の発明のいずれかの構成において、前記ブラシ毛の長さ方向と直交する方向における断面において、前記金属の微粒子は前記樹脂中に、中心近傍に偏って分散している、抗菌ブラシである。
【0020】
第九の発明の構成によれば、ブラシ毛の長さ方向と直交する方向における断面において、金属の微粒子は樹脂中に中心近傍に偏って分散しているから、相対的に多くの金属の微粒子はブラシ毛の中心近傍に分散している。このため、ブラシ毛の周辺近傍は樹脂の割合が大きいから、樹脂本来の弾性を奏し、良好な使用感を確保することができる。
【0021】
第十の発明は、第一の発明乃至第九の発明のいずれかの構成において、前記ブラシ毛は、粉状の前記樹脂と、前記金属の微粒子を混合した混合紛を生成し、前記混合紛を押し出し成型して得られる、抗菌ブラシである。
【0022】
第十一の発明は、第一の発明乃至第十の発明のいずれかの構成において、前記抗菌ブラシは、マスカラ塗布用の塗布具、アイライナー塗布用の塗布具、または、歯ブラシの部分である、抗菌ブラシである。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる抗菌ブラシによれば、抗菌効果を有し、かつ、ブラシとしての良好な使用感を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第一の実施形態にかかるマスカラコームの概略全体図である。
【
図2】マスカラコームがマスカラ液の容器と係合した状態を示す概略図である。
【
図3】マスカラコームがマスカラ液の容器から引き出された状態を示す概略図である。
【
図7】突起の長手方向と直交する方向の断面の概念図である。
【
図12】マスカラコームの使用方法を示す概略図である。
【
図13】マスカラコームの使用方法を示す概略図である。
【
図14】マスカラコームの使用方法を示す概略図である。
【
図15】マスカラコームの使用方法を側面から視た概略図である。
【
図16】マスカラコームの使用方法を側面から視た概略図である。
【
図17】マスカラコームの使用方法を側面から視た概略図である。
【
図18】マスカラコームの使用方法を側面から視た概略図である。
【
図19】第二の実施形態に係る突起の長手方向と直交する方向の断面の概念図である。
【
図20】第二の実施形態に係る突起の長手方向の断面の概念図である。
【
図21】第三の実施形態に係る突起の長手方向と直交する方向の断面の概念図である。
【
図22】第三の実施形態に係る突起の長手方向の断面の概念図である。
【
図23】第四の実施形態に係るマスカラブラシの要部を示す概略図である。
【
図24】第五の実施形態に係るアイライナー塗布具の要部を示す概略図である。
【
図25】第六の実施形態に歯ブラシを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づき本発明の好適な実施形態を説明する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。本発明において、「ブラシ毛」は、モノフィラメントを所定の長さに切断して形成した部材を意味する。
【0026】
<第一の実施形態>
図1に示すように、マスカラコーム1は、櫛部10、ロッド(柄)50及び握り部材70で構成される。ロッド50の一方の端部に櫛部10が接続され、他方の端部に握り部材70が接続されている。マスカラコーム1は、使用者のまつげにマスカラ液100(
図2参照)を塗布し、まつげを梳くためのマスカラコームである。櫛部10は、抗菌ブラシの一例である。櫛部10は、人体の部分に接して使用される。具体的には、櫛部10は、まつ毛に接して使用される。マスカラコーム1は、マスカラ塗布用の塗布具の一例である。マスカラ液100は対象物の一例である。
【0027】
図2に示すように、マスカラコーム1は、マスカラ液100が格納された容器102と着脱自在な態様において係合する。握り部材70は、使用者がマスカラコーム1を操作する際の握り部として機能する。握り部材70は、また、容器102の密閉蓋としても機能する。
【0028】
図2に示す状態において、容器102からマスカラコーム1を矢印Y1方向に引き出すと、
図3に示すように、マスカラコーム1の櫛部10にマスカラ液100が付着した状態となる。矢印Y1方向は鉛直方向であるとする。使用者は、容器102からマスカラコーム1を下方から上方へ引き出す。以下、櫛部10の構成を説明する。
【0029】
図4に示すように、櫛部10は上面10aと下面10bで構成される。上面10aは、所定の曲率半径以上の曲率半径を有する上に凸の凸状の曲面である。下面10bは、所定の曲率半径を有する曲面であるが、その曲率半径は上面10aの曲率半径よりも小さい。すなわち、上面10aは、下面10bとの対比において、平坦に近い曲面である。下面10bは、表面10baと凹部10bbを有する。
【0030】
上面10aには、複数の突起12が配置されている。突起12は、ブラシ毛の一例である。突起12は、細長い円柱形状に形成されている。複数の突起12によって突起列BL1が形成され、複数の突起列BL1は互いに平行に配置されている。なお、本実施形態とは異なり、突起12をアイライナー塗布用の塗布具に使用する筆を構成する毛、あるいは、歯ブラシのブラシ部を構成するブラシ毛として構成してもよい。
【0031】
突起12の製法は、例えば、樹脂と金属の多数の微粒子を混合し、シランカップリング材など適宜のカップリング材、その他、必要に応じて添加剤を加えて押出成型することによってモノフィラメントとして形成する。樹脂は、例えば、ポリブタジエンテレフタレート(polybutylene terephthalate)、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)、ポリアミド(polyamide)である。
【0032】
金属の微粒子は、抗菌効果を有する金属の微粒子である。抗菌効果を有する金属は、例えば、銅(Cu)である。本明細書において、「銅」は、銅及び酸化銅を含むものとする。なお、抗菌効果を有する金属は、銅に限定されず、例えば、銀(Ag)であってもよいし、亜鉛であってもよい。本実施形態においては、金属の微粒子は銅の微粒子である。押出成形は、樹脂の粉末と金属の多数の微粒子とを混合した混合紛を準備し、混合紛を押出成形することによって実施してもよい。
【0033】
図5は、突起12を側面から視た概略図である。
図5に示すように、突起12は高さh1を有する。高さh1は、例えば、5ミリメートル(mm)である。突起12は、長手方向と直交する方向の断面は円形であり、直径d1に形成されている。断面直径d1は、例えば、0.25mmである。
【0034】
図6は、
図5に示す突起12の長手方向の断面の概念図であり、
図5の突起12の一部A1を拡大して示す概念図である。
図7は、突起12の長手方向と直交する方向の断面の概念図である。突起12は、銅の微粒子28が樹脂26中に分散されて構成されている。微粒子28は、突起12において、樹脂26に実質的に均一に分散している。
【0035】
微粒子28は、突起12の表面に露出しておらず、樹脂26に覆われている。なお、本実施形態とは異なり、微粒子28は、突起12の上端12a及び下端12bにおいては露出し、周壁12cにおいては露出しない構成としてもよい。
【0036】
微粒子28の外形の大きさとして、例えば、微粒子の粒度分布の極大値(d50)を使用する。d50に相当する直径φ1を微粒子28の大きさとする。直径φ1の「直径」の定義は球相当径とする。直径φ1は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置を使用して測定する。なお、本実施形態とは異なり、直径φ1は平均粒子径としてもよい。なお、
図6及び
図7は概念図であるから、説明の便宜のため、単一の直径φ1の微粒子28のみを表示しているが、実際には、突起12には、極大値(d50)を直径φ1とする所定の粒度分布(典型的には正規分布)の粒子群が分散している。
【0037】
微粒子28の直径φ1は、所定範囲に規定されており、例えば、10ナノメートル(nm)以上100ナノメートル未満であり、望ましくは、10ナノメートル以上80ナノメートル未満であり、より望ましくは、10ナノメートル以上40ナノメートル以下であり、より望ましくは、10ナノメートル以上20ナノメートル以下である。
【0038】
微粒子28の外形の形状は、例えば、球形である。ただし、外形の形状は球形に限らず、例えば、扁平な形状であってもよいし、他の形状であってもよい。微粒子28として、例えば、福田金属箔粉工業株式会社(京都市山科区西野山中臣町20番地)の製造に係る「銅ナノ粒子SFCPシリーズ」の銅粒子を使用することができる。あるいは、微粒子28として、古河ケミカルズ株式会社(大阪府大阪市西淀川区大野三丁目7番196号)の製造に係る50ナノメートル(nm)程度の一次粒子径を有する亜酸化銅粒子を使用してもよい。
【0039】
突起12の直径d1は、微粒子28の直径φ1よりも大きく、さらに、粒度分布における最大の粒子径の微粒子28よりも大きい。これにより、微粒子28が確実に樹脂26に覆われて突起12の表面に露出することなく、かつ、突起12における微粒子28の含有量を所定範囲に確保することができる。本実施形態においては、直径φ1は50ナノメートル(nm)である。突起12における微粒子28の含有量は、突起12が抗菌効果を有効に奏するための所定範囲に規定されている。本実施形態において、突起12における微粒子28の含有量の所定範囲は、例えば、3重量パーセント(wt%)以上70重量パーセント以下であり、あるいは、3重量パーセント(wt%)以上10重量パーセント以下であり、あるいは、3重量パーセント(wt%)以上7重量パーセント以下であり、あるいは、3重量パーセント(wt%)以上5重量パーセント以下であり、あるいは、4重量パーセント(wt%)以上7重量パーセント以下であり、望ましくは10重量パーセント(wt%)以上70重量パーセント以下であり、さらに望ましくは15重量パーセント以上65重量パーセント以下であり、さらに望ましくは、20重量パーセント以上60重量パーセント以下であり、さらに望ましくは25重量パーセント以上55重量パーセント以下であり、さらに望ましくは30重量パーセント以上50重量パーセント以下であり、さらに望ましくは35重量パーセント以上45重量パーセント以下であり、さらに望ましくは40重量パーセント以上43重量パーセント以下である。本実施形態においては、微粒子28の含有量は、30重量パーセントである。
【0040】
突起12との対比として、比較用ブラシ毛を観念する。比較用ブラシ毛は、突起12と同一の形状及び組成であり、突起12とは、微粒子28を含まない点においてのみ異なる。突起12及び比較用ブラシ毛の形状は、長さ、及び、長手方向と直交する断面形状によって規定される。なお、本実施形態とは異なり、突起12の先端をテーパー状とするときには、比較用ブラシ毛の先端も同一のテーパー状とする。比較用ブラシ毛を使用して製造したブラシ(ブラシ毛の集合体。以下、「比較用ブラシ」と呼ぶ。)は、感応試験において良好な使用感を奏する。
【0041】
櫛部10の使用感は、比較用ブラシと同一であるか、あるいは、所定の許容範囲内の小さな相違であることが望ましい。すなわち、突起12の抗菌効果は、銅の微粒子28の含有量が大きいほど大きいのであるが、銅の微粒子28の含有量が大きすぎると、突起12の製造工程においてモノフィラメントを製造することができないという問題がある。また、銅の微粒子28の含有量が大きすぎると、マスカラコーム1を使用するときの使用感が悪化するという問題がある。このため、突起12において、抗菌効果と使用時の使用感の双方を満足する必要がある。すなわち、突起12において、微粒子28の含有量は、抗菌効果を有効に奏するだけではなく、使用者によるマスカラコーム1の使用感が良好であるという条件を満たす必要がある。本実施形態において、使用感を規定するための指標の一つとして、曲げ硬さを採用する。曲げ硬さは、突起12に対して、長手方向と直交する方向に力を加えた場合の、曲がりにくさを示す指標である。曲げ硬さが大きいことは剛性が大きいことを意味し、曲げ強度が小さいことは柔軟性が大きいことを意味する。マスカラコーム1を使用するときの使用感は、曲げ硬さが適切な範囲である必要がある。
【0042】
曲げ硬さの計測方法を説明する。例えば、測定対象をモノフィラメント12Xとすると、
図8に示すように、所定の長さのモノフィラメント12Xを準備し、水平方向に所定間隔で配置した円柱状のステンレス棒300a及び300bの下面に接するようにモノフィラメント12Xを配置し、ステンレス棒300a及び300bの中央の位置でステンレス製フック302を掛ける。そして、
図8及び9の矢印に示すように上方に引き上げつつ応力を計測し、引き上げた際の最大応力を曲げ硬さとする。具体的には、モノフィラメント12Xは、長さ約4cmに切断したものを準備し、ステンレス棒300a及び300bの直径は2mmとし、ステンレス棒300a及び300bの間隔は10mmとし、フック302の直径は1mmとし、株式会社メネベア製TCM-200型万能引張・圧縮試験機を使用してフック302を引取速度50mm/分で引き上げて、上記応力及び最大応力を計測する。
【0043】
突起12は、比較用ブラシ毛との対比において、曲げ硬さの相違が所定の第一許容範囲として規定される。そして、第一許容範囲は、例えば、15パーセント(%)である。
【0044】
また、上述の曲げ硬さの計測の過程において、モノフィラメント12Xとフック302が接する面の位置変化をG(
図9参照)とし、計測する。最大応力における位置変化を基準変形度G1とする。使用感は、曲げ硬さ以外の要素にも影響されるから、多面的に評価するのが望ましい。そこで、突起12は、比較用ブラシ毛との対比において、基準変形度G1に至るまでの状態も、所定許容範囲(以下、「第二許容範囲」という。)内の小さな相違であることが望ましい。具体的には、基準変形度G1の半分の大きさの変形の大きさを「中間変形度G2」とし、中間変形度G2における力を中間曲げ硬さとするとき、中間曲げ硬さが、比較用ブラシ毛との対比において、同一または所定の許容範囲として規定される第二許容範囲内に限定される。中間曲げ硬さの相違が、比較用ブラシ毛との対比において、同一または第二許容範囲内に限定される。第二許容範囲は、例えば、10パーセント(%)である。
【0045】
突起12が、比較用ブラシ毛との対比において、上述の第一許容範囲及び第二許容範囲を満たすことにより、抗菌効果を奏し、かつ、比較用ブラシ毛に優るとも劣らない使用感を奏することができる。
【0046】
図2に示すように、容器102にマスカラ液100を格納すると、
図10の矢印X1に示すように、突起12を構成する銅の微粒子28から銅イオンが放出され、樹脂26を通過し、マスカラ液100と接し、マスカラ液100中の細菌に作用し、細菌を低減する。
【0047】
銅の微粒子28は、マスカラ液100と直接的には接触していなくても、細菌を低減する作用を有する。このことは、本発明とは技術分野が異なり、構成も全く異なるが、例えば、特許4175486号公報に記載がある。また、このことは、
図11に示す実験結果によっても確認されている。例えば、
図11は、北里大学の笹井教授の実験による実験結果である。
図11に示すように、銅の微粒子を含む樹脂で、銅の微粒子が露出していない化粧品容器は、当初約100,000cfu/4cm2存在していた生菌数が、120分(miniute)後には皆無になった。なお、「cfu」は、「Colony forming unit」を意味する。
【0048】
マスカラ液100と接するのは樹脂26であり、微粒子28はマスカラ液100と接しないから、マスカラ液100の成分と反応することはない。すなわち、銅の微粒子28とマスカラ液100との間に樹脂26を配置することによって、マスカラ液100を変性させることなく、細菌を低減することを可能にしている。また、通常は、マスカラ液100に添加される防腐剤を添加しないことができる。あるいは、添加する防腐剤の量を低減することができる。
【0049】
以下、
図12乃至
図18を参照して、マスカラコーム1の使用方法を説明する。上述のように、マスカラコーム1は、容器102から引き出されたときには、櫛部10の上面10aにマスカラ液100が付着している。
図12及び
図15に示すように、上面10aの長手方向に沿った端部10をまつげ202の根本に押し当て、上面10aに付着したマスカラ液100をまつげ202の根本に付着させる。続いて、
図13及び
図14、及び、
図16乃至
図18に示すように、上面10aに保持したマスカラ液100をまつげ202に付着させつつ、櫛部10をわずかに回動させて、突起12でまつげ202を梳きながら、マスカラ液100をまつげ202の全体に付着させる。マスカラ液100は、銅イオンを含むから、使用者200のまつげ202や、まつげ202の近傍における細菌を死滅、あるいは、低減する効果を奏する。すなわち、マスカラコーム1は、対象物であるマスカラ100を介して、使用者200の体の部分を除菌することができる。
【0050】
<第二の実施形態>
次に、
図19及び
図20を参照して、第二の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
図19は、突起12Aの長手方向と直交する方向の断面の概念図である。
図20は、突起12Aの長手方向の断面の概念図である。
【0051】
図19及び
図20に示すように、突起12Aの長さ方向と直交する方向における断面において、微粒子28は樹脂26中に、周辺近傍に偏って分散している。すなわち、相対的に多くの微粒子28は、突起12Aの表面近傍に分散している。これにより、微粒子28の抗菌作用をより効果的に利用することができる。突起12Aを形成するためのモノフィラメントの押出成形を、例えば、磁界または電界中で行うことによって、樹脂26中における微粒子28の分散態様(分散する位置)を制御する。
【0052】
<第三の実施形態>
次に、
図21及び
図22を参照して、第三の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
図21は、突起12Bの長手方向と直交する方向の断面の概念図である。
図22は、突起12Bの長手方向の断面の概念図である。
【0053】
図21及び
図22に示すように、突起12Bの長さ方向と直交する方向における断面において、微粒子28が樹脂26中に、中心近傍に偏って分散している。相対的に多くの微粒子28は突起12Bの中心近傍に分散している。このため、突起12Bの周辺近傍は樹脂26の割合が大きいから、樹脂26本来の弾性を奏することができる。突起12Bを形成するためのモノフィラメントの押出成形を、例えば、磁界または電界中で行うことによって、樹脂26中における微粒子28の分散態様(分散する位置)を制御する。
【0054】
<第四の実施形態>
次に、
図23を参照して、第四の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0055】
第四の実施形態においては、マスカラブラシ400のブラシ毛408が、細菌を低減する効果を有する金属の微粒子が樹脂中に分散して構成されている。マスカラブラシ400の要部は、
図23に示すように、ブラシ部406、ロッド(柄)404及び握り部材402で構成される。ブラシ部406は抗菌ブラシの一例である。
【0056】
<第五の実施形態>
次に、
図24を参照して、第五の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0057】
第五の実施形態においては、アイライナー塗布具410の毛416が、細菌を低減する効果を有する金属の微粒子が樹脂中に分散して構成されている。毛416は、ブラシ毛の一例である。アイライナー塗布具410の要部は、
図24に示すように、筆部414及び、ロッド(柄)412で構成される。筆部414は抗菌ブラシの一例である。
【0058】
<第六の実施形態>
次に、
図25を参照して、第六の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0059】
第六の実施形態においては、歯ブラシ420のブラシ毛426が、細菌を低減する効果を有する金属の微粒子が樹脂中に分散して構成されている。歯ブラシ420は、
図25に示すように、ブラシ部424及び、握り部材ロッド(柄)422で構成される。ブラシ部424は抗菌ブラシの一例である。
【0060】
なお、本発明の化粧品容器は、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えることができる。また、各上記実施形態は、技術的に矛盾を生じない限り、適宜、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 マスカラコーム
10 櫛部
10a 上面
10b 下面
12,12A,12B 突起
BL1 突起列
50 ロッド
70 握り部
100 マスカラ液
102 容器
202 まつげ