(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130043
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/08 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
E03D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028988
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸次 允
(72)【発明者】
【氏名】山崎 洋式
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AD00
2D039DB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水洗大便器の外方に洗浄水が飛散することを抑制可能な水洗大便器を提供する。
【解決手段】水洗大便器1は、鉢状の汚物受け面を有するボウル部2と、ボウル部の上部に設けられたリム部と、ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部4と、リム部の内周面は、ボウル部の側方領域に設けられる側面部8Bと、ボウル部の前方領域に設けられる前面部8Aと、ボウル部の後方領域に設けられる後面部8Cと、を備え、吐水部は側面部に設けられ、側面部の垂直面に対する傾斜角度は、前面部又は後面部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗大便器であって、
鉢状の汚物受け面を有するボウル部と、
前記ボウル部の上部に設けられたリム部と、
前記ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部と、
前記リム部の内周面は、前記ボウル部の側方領域に設けられる側面部と、前記ボウル部の前方領域に設けられる前面部と、前記ボウル部の後方領域に設けられる後面部と、
を備え、
前記吐水部は側面部に設けられ、
前記側面部の垂直面に対する傾斜角度は、前記前面部又は前記後面部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい水洗大便器。
【請求項2】
前記リム部の内周面の下方には、洗浄水を旋回方向に導く棚面状の棚部を備え、
前記側方領域の前記棚部の水平面に対する傾斜角度は、前記前方領域又は前記後方領域の水平面に対する傾斜角度よりも大きい請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
前記側方領域の前記棚部の水平方向の幅は、前記前方領域又は前記後方領域の水平方向の幅よりも小さい請求項2に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水源から供給される洗浄水によって洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1に記載されているように、リム内周面の視認性を高めるために、リム内周面が下方から上方に向かって外側に傾斜しているものや、リム内周面が垂直に立ち上がっているものが知られている。また、上述した特許文献1に記載されているように、リム内周面が下方から上方に向かって内側に傾斜しているものについても知られている。
【0003】
さらに、特許文献2に記載されているように、従来の水洗大便器として、前方領域の棚部の幅を小さくする、若しくは棚をなくすことで、前方領域における洗浄水の流下量を大きくしているものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-97172号公報
【特許文献2】特許4721026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行文献1において、特に水洗大便器の前方領域は、遠心力が強く発生するため、リム部から水洗大便器の外方に洗浄水が飛散し易く、所謂オーバーハングが形成されていない水洗大便器では、この洗浄水の飛散が顕著となる。これに対して、特許文献2のように、水洗大便器の前方の棚部を変更し、前方における流下量を増加させたとしても、遠心力により、リム内周面に洗浄水が押し付けられ、水洗大便器の外方に洗浄水が飛散する可能性があり、改良の余地がある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、水洗大便器の外方に洗浄水が飛散することを抑制可能な水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、水洗大便器であって、鉢状の汚物受け面を有するボウル部と、ボウル部の上部に設けられたリム部と、ボウル部に洗浄水を吐水し、旋回流を形成する吐水部と、リム部の内周面は、ボウル部の側方領域に設けられる側面部と、ボウル部の前方領域に設けられる前面部と、ボウル部の後方領域に設けられる後面部と、を備え、吐水部は側面部に設けられ、側面部の垂直面に対する傾斜角度は、前面部又は後面部の垂直面に対する傾斜角度よりも大きい水洗大便器。
【0008】
このように構成された本発明によれば、前面部に比べ、旋回流に遠心力が発生しない側面部の傾斜が大きく構成されているため、旋回する洗浄水を、水洗大便器の側方から多く流下させ、傾斜が小さく構成された前面部又は後面部に到達した洗浄水は、前面部又は後面部を駆け上がらずに、その下流側に旋回するため、便器外に洗浄水が飛散することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第一実施形態における水洗大便器の上面図である。
【
図2】
図1における[II]断面を示す部分拡大断面図である。
【
図3】
図1における[III]断面を示す部分拡大断面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態における水洗大便器の洗浄水の流れの概略を示した上面図である。
【
図5】
図1の[II]断面における洗浄水の流動の概略を示した部分断面図である。
【
図6】
図1の[III]断面における洗浄水の流動の概略を示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の第一実施形態による水洗大便器1の構成を示す上面視図である。水洗大便器1は鉢状の汚物受け面を有するボウル部2と、ボウル部2の上部に設けられたリム部3と、リム部3に設けられ、ボウル部2に洗浄水を吐水し、旋回流を形成するリム吐水部4(吐水部)と、ボウル部2の下方に、溜水面5を形成し、汚物及び洗浄水を排出するトラップ開口6とを備えている。トラップ開口6は、トラップ開口6から水洗大便器1の後方に向かい、且つ上下方向に延びる排水路(図示せず)に接続されている。
【0011】
さらに、ボウル部2の上部には、棚面状に形成された棚部7が形成されており、棚部7がリム部3と接続されている。リム部3は、その内周壁にリム内周面8(内周面)が形成されており、リム吐水部4から吐水された洗浄水は、棚部7及びリム内周面8上を流れ、ボウル部2を周方向に旋回する旋回流を形成する。棚部7及びリム内周面8は洗浄水が通過するリム通水路9として機能する。
【0012】
ここで、
図1に示す本発明の第一実施形態による水洗大便器1においては、ボウル部2の上面視において、ボウル部2を前後方向に二等分するように水平左右方向に延びる中心軸線を「X」で示し、ボウル部2を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線を「Y」で示し、ボウル部2の中心Oを通る鉛直方向に延びる中心軸線を「Z」で示している。また、
図1に示すように、水洗大便器1の前後左右の方向については「前」、「後」、「左」、「右」でそれぞれ示している。
【0013】
そして、
図1に示すように、水洗大便器1のボウル部2における中心O、水平左右方向の中心軸線X、及び鉛直方向の中心軸線Zに対して、前方側(F)、後方側(B)とし、水洗大便器1のボウル部2における中心O、水平前後方向の中心軸線Yに対して、
図1の平面視において、左側(L)、右側(R)とそれぞれ定義している。
【0014】
リム内周面8の各部位は、前後方向で3つに区画されており、ボウル部2の内面部分の前端から中心線Oまでを2等分し、ボウル部2の内部部分の前端から2等分線までを、前面部8Aが設けられた前方領域(A)とし、ボウル部2の内部部分の後端から中心線Oまでを2等分し、ボウル部2の内部部分の後端から2等分線までを、後面部8Cが設けられた後方領域(C)とし、前方領域(A)及び後方領域(C)の間の領域を一対の側面部8B(8BL、8BR)が設けられた側方領域(B)と定義する。なお、以下の説明においては、前面部8A、後面部8C、側面部8B(8BL、8BR)を総称して、リム内周面8と呼ぶこともある。
【0015】
リム吐水部4は、水平前後方向の中心軸線Yに対して、右側(R)に設けられており、より具体的には、右側(R)の側方領域(C)のリム部3に位置している。図示しない給水源から、ボウル部2の点線領域で示す給水空間を経由してリム吐水部4に洗浄水が供給され、リム吐水部4に設けられた開口から、ボウル部2の前側(F)に向かって洗浄水を吐水し、上述したリム通水路9に洗浄水を供給する。供給された洗浄水は、リム通水路9に沿ってボウル部2を周方向に旋回し、ボウル部2に旋回流を形成する。
【0016】
また、
図1に示すように、側面部8Bは、前面部8A及び後面部8Cよりも、上面視における曲率が比較的小さく形成されている。このため、旋回流は、前面部8A及び後面部8Cを旋回する際には、遠心力が強く働くこととなり、洗浄水はリム内周面8に押し付けられ、リム内周面8を駆け上がるように、洗浄水が流動する。一方で、側面部8Bは遠心力が比較的小さいため、洗浄水がリム内周面8に押し付けられず、棚部7上を流れながら、ボウル部2を流下するように流れる。
【0017】
次に、
図2及び
図3を用いて、本発明の一実施形態におけるリム内周面8について、説明する。リム内周面8は、前面部8A、後面部8C、側面部8Bから構成され、側面部8Bは8BL、8BRから構成される。
【0018】
図2は、
図1における[II]断面を示しており、前方領域(A)、後方領域(C)におけるリム部3の部分拡大断面図である。以下では、前方領域(A)を例に説明するが、後方領域(C)と同様の構成のため、共通する部分は、
図2に番号を付与し、後方領域(C)の説明は省略する。
【0019】
図2に示すよう、前方領域(A)において、棚状に形成された棚部7は、水平方向に平坦状に、長さLAとして形成されており、棚部7の水平方向外方の端部は、曲率を有する連結部10によって、前面部8Aに接続される。なお、棚状とは、概ね平坦状のものであるが、洗浄水を乗せて旋回するよう運ぶことができれば、曲率を有していてもよい。また、連結部10は周囲と比較して、大きな曲率を有するものであり、前面部8A又は棚部7との境界は、曲率が大きく変化する変曲点を有する部分である。
【0020】
さらに、前面部8Aは、連結部10と接続する下側前面部8A1と上側前面部8A2から構成されており、ボウル部2に露出し、上下方向に延出するように構成されている。なお、本発明の第一実施形態においては、上側前面部8A2のさらに上方の傾斜面11は、オーバーハングするよう水平方向の外方から内方に傾斜して設けられており、リム部3の上面であるリム部上面12に連続するよう設けられている。下側前面部8A1と上側前面部8A2は前面部8Aを2等分するように区分けされている。なお、前方領域(A)の傾斜面11及びリム部上面12について説明したが、本発明の第一実施形態においては、リム部3の全周に設けられている。
【0021】
ここで、棚部7は、水平面に対する傾斜角度が、α1(度)となるように構成されており、また下側前面部8A1は垂直面に対する傾斜角度が、β1(度)となるように構成されている。なお、本発明の第一実施形態においては、下側前面部8A1の傾斜角度をβ1としたが、例えば、前面部8A全体が直線状に形成される場合には、下側前面部8A1及び上側前面部8A2を含んだ前面部8A全体の傾斜角度をβ1としてもよい。
【0022】
上記のとおり、
図2を用いて、前面部8Aの構成について説明したが、後面部8Bについても同様の構成であるため、「前面部8A」「上側前面部8A1」「下側前面部8A2」「長さLA」を、「後面部8C」「上側後面部8C1」「下側後面部8C2」「長さLB」として変換してもよい。
【0023】
次に、
図3は、
図1における[III]断面を示しており、側方領域(B)におけるリム部3の拡大断面図を示している。以下では、側方領域(B)のうち、右側の側方領域(右側側方領域)をBR、左側の領域(左側側方領域)をBLとして、右側側方領域(BR)を例に説明するが、左側側方領域(BL)も同様の構成のため、共通する部分は、
図2に番号を付与し、左側側方領域(BL)の説明は省略する。以下では、側面部8BL、8BRを総称して、側面部8Bと呼ぶこともある
【0024】
図3に示すよう、右側側方領域(BR)において、棚状に形成された棚部7は、水平方向に平坦状に、長さLBRとして形成されており、棚部7の水平方向外方の端部は、曲率を有する連結部10によって、側面部8BRに接続される。なお、棚状とは、概ね平坦状のものであるが、洗浄水を乗せて旋回するよう運ぶことができれば、曲率を有していてもよい。また、連結部10は周囲と比較して、大きな曲率を有するものであり、側面部8BR又は棚部7との境界は、曲率が大きく変化する変曲点を有する部分である。
【0025】
また、側面部8BRは、連結部10と接続する下側側面部8BR1と上側側面部8BR2から構成されており、ボウル部2に露出し、上下方向に延出するように構成されている。なお、本発明の第一実施形態においては、上側側面部8BR2のさらに上方の傾斜面11は、オーバーハングするように設けられており、リム部3の上面であるリム部上面12に連続するよう設けられている。下側側面部8BR1と上側側面部8BR2は側面部8BRを2等分するように区分けされている。なお、上述のとおり、傾斜面11及びリム部上面12について、本発明の第一実施形態においては、リム部3の全周に設けられている。
【0026】
ここで、棚部7は、水平面に対する傾斜角度が、α2(度)となるように構成されており、また下側側面部8BR1は垂直面に対する傾斜角度が、β2(度)となるように構成されている。なお、ここでは、下側側面部8BR1の傾斜角度をβ2としたが、これに限るものではなく、側面部8BR全体が直線状に形成される場合には、下側側面部8BR1及び上側側面部8BR2を含んだ側面部8BR全体の傾斜角度をβ2としてもよい。
【0027】
上記のとおり、
図3を用いて、側面部8BRの構成について説明したが、側面部8BLについても同様の構成であるため、「側面部8BR」「上側側面部8BR1」「下側側面部8BR2」「長さLBR」を、「側面部8BL」「上側側面部8BL1」「下側側面部8BL2」「長さLBL」として変換してもよい。
【0028】
次に、
図2及び
図3を用いて、前方領域(A)及び後方領域(C)のリム部3及び棚部7と、側方領域(B)のリム部3及び棚部7とを比較した説明を行う。前方領域(A)及び後方領域(C)の棚部7の長さLA、LCは、側方領域(B)の棚部7の長さLB(LBR、LBL)も大きくなるように設定されている(LA、LC>LB)。
【0029】
また、前方領域(A)及び後方領域(C)の棚部7の水平面に対する傾斜角度α1は、側方領域(B)の棚部7の水平面に対する傾斜角度α2よりも小さくなるように設定されている(α1<α2)。
【0030】
さらに、前方領域(A)及び後方領域(C)のリム内周面8A、8Cは、垂直面に対する傾斜角度がβ1として設定されており、側方領域(B)のリム内周面8BR、8BLの垂直面に対する傾斜角度β2よりも小さくなるように設定されている(β1<β2)。
【0031】
次に、
図4乃至
図6を用いて、本発明の一実施形態における水洗大便器1の作用について説明する。
図4は水洗大便器1の洗浄水の流れの概略を示した上面視図で、
図5は
図1の[II]断面における洗浄水の流動の概略を示した部分断面図で、
図6は
図1の[III]断面における洗浄水の流動の概略を示した部分断面図である。
【0032】
図4に示すように、リム吐水部4から吐水された洗浄水は、ボウル部2の周方向に形成されたリム通水路9を構成する棚部7及びリム内周面8を旋回するよう流動する。吐水された洗浄水は、先ず側方領域(B)のうち、右側側方領域(BR)のリム通水路9を通過するが、その際、側面部8BRが、垂直面に対する傾斜角度がβ2となるように、比較的大きく構成されているため、
図5の点線で示すように、側面部8BRの洗浄水は、壁面に沿って上下方向に広がるような流れになる。一方で、側方領域(B)では、遠心力が強く発生しないため、側面部8BRの壁面の上方に向かう洗浄水の一部は側面部8BRからボウル部2の中心方向に流下する。
【0033】
さらに、
図5に示すように、側方領域(B)の棚部7は、水平面に対する傾斜角度がα2となるように、比較的大きく構成されているため、棚部7を流れる洗浄水は、自重によって、ボウル部2の中心方向に流下していく。また、棚部7の長さLBRは比較的短くなるよう構成されているため、棚部7からボウル部2の中心方向に流下する洗浄水を増加させることができる。
【0034】
上記のように、側方領域(B)のリム内周面8BR及び棚部7を構成することで、
図5に示すように、棚部7から流下する流れF11と、棚部を旋回する流れF12とに分流させることができる。これにより、前方に向かう洗浄水の流量を小さくすることで、旋回流の持つエネルギーを小さくすることができ、下流側の、特に、遠心力が発生しやすい前方領域(A)において、洗浄水の飛散を抑制することができる。また、側方領域(B)のボウル部2も洗浄することができ、不洗領域が発生しない。
【0035】
次に、
図4に示すように、棚部7を流れる洗浄水F12は、前方領域(A)に到達する。前方領域(A)は、
図6の点線に示すように、前方領域(A)では、遠心力が強く発生するため、前面部8Aに押し付けられる流れとなるが、前面部8Aの垂直面に対する傾斜角度がβ1となるように、比較的小さく構成されており、遠心力によって、洗浄水が前面部8Aの壁面に押さえつけられても、洗浄水が壁面の上方に向かうことを抑制でき、洗浄水が前方領域(A)で飛散することを抑制することができる。それに加えて、多くの洗浄水を下流側に旋回させることができるため、エネルギー損失が大きく流動が乱れやすい前方領域(A)を経由しても、多くの洗浄水を下流側に旋回させることができ、不洗領域が発生することを抑制することができる。
【0036】
また、
図6に示すように、前方領域(A)の棚部7は、水平面に対する傾斜角度がα1となるように構成されているため、比較的傾斜が小さくなるよう形成されている。言い換えれば、水平方向に平坦となるよう形成されている。このため、棚部7を流れる洗浄水が自重によってボウル部2の中心方向に落下することを抑制し、エネルギー損失が大きく流動が乱れやすい前方領域(A)を経由しても、多くの洗浄水を下流側に旋回させることができる。
【0037】
上記のように、前方領域(A)側方領域のリム内周面8BR及び棚部7を構成することで、
図5に示すように、棚部7を流れる流れF2とすることができる。これにより、前方からの洗浄水の飛散を抑制することができ、曲率が比較的大きく形成された前方領域(A)においても、洗浄水がボウル部2の中央に流下しすぎることを抑制し、エネルギー損失を抑制しながら、多くの洗浄水を棚部7に乗せて下流側に向かわせることができる。
【0038】
次に、前方領域(A)を通過した洗浄水は、
図4に示すように、左側側方領域(BL)に到達する。左側側方領域(BL)は、
図5に示す右側側方領域(BR)と同様の構成となっており、共通する部分の説明は省略する。
【0039】
前方領域(A)を通過した洗浄水は、左側側方領域(BL)に到達すると、側面部8BR、及び棚部7が右側側方領域(BR)と同様に構成されているため、
図4に示すように、棚部7から流下する流れF31と、棚部を旋回する流れF32とに分流させることができる。左側側方領域(BL)においては、旋回に伴い、洗浄水の流量が少なくなるが、前方領域(A)の遠心力の作用が残るため、リム通水路9を流れる洗浄水がすべて流下してしまうことなく、棚部7から流下する流れF31と、棚部を旋回する流れF32とに分流させることができる。これにより、後方に向かう洗浄水の流量を小さくすることで、旋回流の持つエネルギーを小さくすることができ、下流側の、特に、遠心力が発生しやすい後方領域(C)において、洗浄水の飛散を抑制することができる。また、側方領域(B)のボウル部2も洗浄することができ、不洗領域が発生しない。
【0040】
次に、左側側方領域(BL)を通過した洗浄水は、
図4に示すように、後方領域(C)に到達する。後方領域(C)は、
図6に示す前方領域(A)と同様の構成となっており、共通する部分の説明は省略する。
【0041】
棚部7を流れる洗浄水F32は、後方領域(C)に到達する。前方領域(C)は、遠心力が強く発生するため、洗浄水が壁面の上方に向かうことを抑制でき、洗浄水が後方領域(B)で飛散することを抑制することができる。それに加えて、多くの洗浄水を下流側に旋回させることができるため、エネルギー損失が大きく流動が乱れやすい後方領域(C)を経由しても、多くの洗浄水を下流側に旋回させることができ、不洗領域が発生することを抑制することができる。
【0042】
以上により、水洗大便器1のボウル部2の全周、特に洗浄水の飛散が生じやすい、前方領域(A)及び後方領域(C)において、水洗大便器1の外方に洗浄水が飛散することを抑制しながら、ボウル部2の全周に、旋回流を供給して不洗領域が発生することを抑制することができる。
【0043】
以上、本発明の第一実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【0044】
具体的には、本発明の第一実施形態においては、傾斜面11が設けられた、所謂オーバーハングが設けられた水洗大便器1を例としたが、これらが全周に設けられず、オーバーハングが形成されず、リム内周面8がリム部上面12に接続されるようなものであってもよい。また、リム内周面8は、その全体が、ボウル部2の水平方向外側に向かうように延びて、リム部上面12に接続されるように構成されていてもよい。
【0045】
また、本発明の第一実施形態においては、前方領域(A)、右側側方領域(BR)、左側外側領域(BL)、後方領域(C)について、既述したが、変形例として、前方領域(A)と右側側方領域(BR)、左側側方領域と(BL)と後方領域(C)など、リム通水路9として連続する、いずれかの部位を組み合わせて構成してもよい。
【0046】
さらに、本発明の第一実施形態においては、右側側方領域(BR)から前方領域(A)に洗浄水を吐水するよう、リム吐水部4が設けられているが、これに限るものではなく、例えば、左側側方領域(BR)から前方領域(A)に吐水するようリム吐水部4が設けられていてもよい。もしくは、側方領域(B)から後方領域(C)に向かうようにリム吐水部4が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 水洗大便器
2 ボウル部
3 リム部
4 リム吐水部(吐水部)
5 溜水面
6 トラップ開口
7 棚部
8 リム内周面(内周面)
8A 前面部
8B 側面部
8BR 右側側面部
8BL 左側側面部
8C 後面部
9 リム通水路
10 連結部
11 傾斜面
12 リム部上面
A 前方領域
B 側方領域
BR 右側側方領域
BL 左側側方領域
C 後方領域