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特開2022-130049直進カット性に優れた包装材、および包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130049
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】直進カット性に優れた包装材、および包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20220830BHJP
   B65D 75/62 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D75/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021028998
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 基邦
(72)【発明者】
【氏名】古川 周平
【テーマコード(参考)】
3E067
3E086
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB12A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067BB26A
3E067CA05
3E067CA06
3E067CA07
3E067CA15
3E067CA24
3E067EA06
3E067EA08
3E067EA15
3E067EB07
3E067EB10
3E067EE40
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E067GA01
3E067GA06
3E067GC02
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC15
3E086AD01
3E086BA13
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA33
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB51
3E086CA01
(57)【要約】
【課題】直進カット性に優れた包装材および当該包装材を用いた包装体を提供する。
【解決手段】外層、ガスバリア層、中間層、シーラント層をこの順に有する包装材であって、中間層およびシーラント層の少なくとも一方が、下記測定方法で測定されるフィルムのノッチズレが1mm以下である、包装材。
包装材。
<測定方法>
フィルムをMD方向が150mm、TD方向が50mmである長方形に切り出し、TD方向の2辺一方の中点に、ノッチを形成したサンプルを作成し、JIS K 7128-1に従い試験速度200mm/minにてトラウザー試験を実施し、TD方向の2辺のうち、ノッチを形成していない辺上の切断位置と中点との距離を「フィルムのノッチズレ」とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層、ガスバリア層、中間層、シーラント層をこの順に有する包装材であって、
前記中間層および前記シーラント層の少なくとも一方が、下記測定方法で測定されるフィルムのノッチズレが1mm以下である、包装材。
包装材。
<測定方法>
フィルムをMD方向が150mm、TD方向が50mmである長方形に切り出し、TD方向の2辺一方の中点に、ノッチを形成したサンプルを作成し、JIS K 7128-1に従い試験速度200mm/minにてトラウザー試験を実施し、TD方向の2辺のうち、ノッチを形成していない辺上の切断位置と中点との距離を「フィルムのノッチズレ」とする。
【請求項2】
前記バリア層は、金属箔、金属蒸着膜層、無機化合物蒸着膜層、およびガスバリア性樹脂層から1以上選択される、請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記バリア層は、アルミ箔である、請求項1に記載の包装材。
【請求項4】
前記外層および中間層がポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、およびポリアミドフィルムのいずれかを用いた、請求項1~3のいずれかに記載の包装材。
【請求項5】
前記外層にポリエステルフィルム、前記中間層にポリアミドフィルムを用いた請求項1~3のいずれかに記載の包装材。
【請求項6】
前記シーラント層にポリオレフィンフィルムを用いた請求項1~5のいずれかに記載の包装材。
【請求項7】
前記シーラント層にポリプロピレンフィルムを用いた請求項1~5のいずれかに記載の包装材。
【請求項8】
下記測定方法により測定される包装材のノッチズレが4mm以下である、請求項1~7のいずれかに記載の包装材。
<測定方法>
包装材を200℃、0.15MPa、シール幅5mmで1秒間ヒートシールして三方袋を作製し、水を600mL入れた後、同条件にて未シールの1辺をヒートシールして、内寸が200mm×200mmである包装体を作製する。作成した包装体に130℃、40分のレトルト処理を行った後、包装体の未シール部をMD方向が63mm、TD方向が75mmである長方形に切り出し、TD方向の2辺の一方の中点にノッチを形成したサンプルを作成し、JIS K 7128-2に従いエルメンドルフ試験を実施し、TD方向の2辺のうち、ノッチを形成していない辺上の切断位置と中点との距離を「包装材のノッチズレ」と定義する。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の包装材を用いた包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装材に用いられるフィルムを適切な層に用いることで、優れた直進カット性を有する包装材に関するものである。また、当該包装材を用いた包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層フィルムを用いた包装体である軟包装は、金属缶に比べて軽量であるため輸送時のコストや環境負荷が小さく、また射出成型やブロー成型により得られたプラスチック成形体に比べて廃棄時の体積を減らすことができる。また軟包装はそのフィルム構成によって、空気や水蒸気からのバリア性を付与することやレトルト処理と呼ばれる高温殺菌処理を用いることができることから、包装体のなかでも広く一般に使用されている。
【0003】
従来の軟包装は手で開封するときの直進性が悪く、包装体の表裏で異なる方向に斜行して切れることがある。その結果、開封時に包装体の一部を切り離すときに大きな力を要するようになり、包装体の内容物が飛び散ることが問題となっている。従って、包装体に良好な開封性を付与することは重要である。包装体を直進的に切る方法としてハサミなどの用具を用いることができるが、用具に内容物が付着するため内容物によっては好ましくない。
【0004】
包装体に直進カット性を付与する方法として、例えば一軸延伸したシーラントフィルムを用いる方法(特許文献1)があるが、一軸延伸したシーラントフィルムをレトルト処理すると、延伸方向に強くカールしバリア層を破壊することがあり実用に適さない。またレーザー加工により直進カット性を付与する方法(特許文献2)もあるが、特殊インキを用い、またレーザー加工を行うことから包装体が高コストとなり実用が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6351259号公報
【特許文献2】特開2020-55633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような課題を鑑みてなされたものであり、直進カット性に優れる包装材、および当該包装材を用いた包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、外層、ガスバリア層、中間層、シーラント層をこの順に有する包装材であって、中間層およびシーラント層の少なくとも一方が、下記測定方法で測定されるフィルムのノッチズレが1mm以下である、包装材。
包装材。
<測定方法>
フィルムをMD方向が150mm、TD方向が50mmである長方形に切り出し、TD方向の2辺一方の中点に、ノッチを形成したサンプルを作成し、JIS K 7128-1に従い試験速度200mm/minにてトラウザー試験を実施し、TD方向の2辺のうち、ノッチを形成していない辺上の切断位置と中点との距離を「フィルムのノッチズレ」とする
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、直進カット性に優れた包装材および当該包装材を用いた包装体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】フィルムの直進カット性評価に用いる試験片の説明図
図2】フィルムの直進カット性評価試験後の試験片の説明図
図3】包装材の直進カット性評価に用いる試験片の説明図
図4】包装材の直進カット性評価試験後の試験片の説明図
図5】包装体の手での開封性評価に用いる試料の説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の包装材について詳細を記述する。包装材は、外層、ガスバリア層、中間層およびシーラント層をこの順に備える。
【0011】
[フィルム組合せ]
中間層およびシーラント層の少なくとも一方に、後述する直進カット性を有するフィルムを用いる。すなわち、中間層およびシーラント層は、下記要件(a)~(c)のいずれかを満たす必要がある。
(a)中間層が直進カット性を有するフィルムでありシーラント層が直進カット性を有するフィルムである。
(b)中間層が直進カット性を有するフィルムでありシーラント層が直進カット性を有さないフィルムである。
(c)中間層が直進カット性を有さないフィルムでありシーラント層が直進カット性を有するフィルムである。
【0012】
[フィルムの直進カット性]
図1は、フィルムの直進カット性評価に用いる試験片の説明図であり、図2は、フィルムの直進カット性評価試験後の試験片の説明図である。フィルムの直進カット性は引き裂き時に直進的に切れる性質を示すものである。本明細書において、直進カット性は以下の方法により測定される「フィルムのノッチズレ」の値により判定する。
【0013】
[フィルムのノッチズレ測定]
MD方向が150mm、TD方向が50mmである長方形を有し、TD方向の2辺の中点のうち、ノッチが入れられていない中点を中点11、ノッチが入れられた中点を中点12として、中点11、12を結ぶ直線13が引かれた試験片10を作製する。この試験片10を用いて、JIS K7128-1に従い試験速度200mm/minにてトラウザー試験を実施する。
【0014】
トラウザー試験を行い得られた試験片20において、トラウザー試験により生じた引裂き曲線と中点11が設けられた辺との交点を交点14としたとき、中点11と、交点14を端点とする線分15の長さを「フィルムのノッチズレ」と定義する。図2では中点11の紙面における左側に点14を示したが、実際の引裂きにおいては中点11の右側に交点14が生じることもある。その場合も図2と同様にして中点11と交点14を端点とする線分15の長さを「フィルムのノッチズレ」と定義する。
【0015】
上記方法によって測定された試験片20のフィルムのノッチズレが1mm以下であるフィルムを、直進カット性を有するフィルムとする。フィルムのノッチズレが1mmよりも大きいまたは引裂き線が大きく曲がりMD方向の辺で引き裂きが終了したフィルムを、直進カット性を有さないフィルムとする。
【0016】
[外層、中間層]
外層や中間層に用いるフィルムは、包装材の要求特性に応じて選択する必要があり、特にポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルムが好ましい。直進カット性を付与するために、複数の材料を混合して用いてもよい。その具体例を示す。ポリオレフィンフィルムとしてプロピレン単独重合体とエチレンプロピレンランダム共重合体の混合物、プロピレン単独重合体とエチレンプロピレンラバーの混合物、プロピレン単独重合体とエチレンプロピレンランダム共重合体とエチレンプロピレンラバーの混合物、プロピレン単独重合体とポリエチレンの混合物、エチレンプロピレン共重合体とポリエチレンの混合物などを用いてよい。ポリエステルフィルムとしてポリエチレンテレフタラートとポリブチレンテレフタラートの混合物、ポリエチレンテレフタラートと酸変性ポリエチレンテレフタラートの混合物、ポリエチレンテレフタラートと酸変性ポリブチレンテレフタラートの混合物、ポリブチレンテレフタラートと酸変性ポリエチレンテレフタラートの混合物、ポリブチレンテレフタラートと酸変性ポリブチレンテレフタラートの混合物、ポリエチレンテレフタラートとポリアリレートの混合物、ポリブチレンテレフタラートとポリアリレートの混合物などを用いてよい。ポリアミドフィルムとして6-ナイロンと6,6-ナイロンの混合物、6-ナイロンと6,12-ナイロンの混合物、6-ナイロンとポリメタキシレンアジパミドの混合物、6,6-ナイロンと6,12-ナイロンの混合物、6,6-ナイロンとポリメタキシレンアジパミドの混合物、6,12-ナイロンとポリメタキシレンアジパミドの混合物などを用いてよい。
【0017】
外層や中間層に用いるフィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、厚みが小さすぎる場合には耐ピンホール性、耐衝撃性、耐熱性やコシ感が損なわれるため好ましくない。厚みが大きすぎる場合には過剰包装となりコストが増加するので好ましくない。ポリオレフィンフィルムでは厚み10~40μm、ポリエステルフィルムでは厚み10~30μm、ポリアミドフィルムでは厚み10~30μmのものが好適に用いられる。
【0018】
[ガスバリア層]
ガスバリア層に使用する材料はガスバリア性を発現するものであれば特に限定されるものではないが、金属箔としてアルミ箔、金属蒸着層としてアルミ蒸着層、無機化合物蒸着層としてアルミナ(AlOx)やシリカ(SiOx)、ガスバリア性樹脂層としてポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン―ビニルアルコール共重合体が好適に用いられる。ガスバリア性の観点からアルミ箔または無機化合物蒸着層が特に好適に用いられる。またバリア層の製造方法は特に制限されるものではない。金属箔を用いる場合は金属1層または複数層を同時に圧延する方法を用いることが出来る。無機化合物蒸着層および金属蒸着層を用いる場合は真空蒸着法、スパッタリング法などの物理気相成長法(PVD法)やプラズマ化学気相成長法などの化学気相成長法(CVD法)を用いることが出来る。ガスバリア性樹脂層を用いる場合はガスバリア性樹脂を共押出して積層する方法やコーティング等のウェットプロセスにより積層する方法を用いることが出来る。
【0019】
[シーラント層]
シーラント層は、ヒートシール適性から熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、ヒートシール性発現温度が小さいことからポリエチレン系無延伸フィルムまたはポリプロピレン系無延伸フィルムが特に好ましい。また直進カット性を得るために、ヒートシール性を阻害しない範囲で他の材料を混合する方法や一軸延伸を行う方法を用いてよい。一例として、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーの混合物、ポリプロピレンと環状オレフィンコポリマーの混合物、ポリエチレンとエチレン―ビニルアルコール共重合体の混合物、ポリエチレンとポリアミドの混合物、ポリプロピレンとポリアミドの混合物などを用いてよい。またポリオレフィン単体や上記の混合物からなるフィルムを一軸延伸して用いてよい。
【0020】
シーラント層には、直進カット性以外の性能を付与するために、ヒートシール性と直進カット性を阻害しない範囲で複数の材料を混合して用いてよい。例えば、ポリプロピレンとエチレンプロピレンラバーと環状オレフィンコポリマーの混合物、ポリプロピレンと環状オレフィンコポリマーと酸化カルシウムの混合物、ポリプロピレンとエチレンプロピレンラバーと環状オレフィンコポリマーと酸化カルシウムの混合物、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーと酸化カルシウムの混合物、ポリエチレンと環状オレフィンコポリマーと酸化亜鉛の混合物、ポリプロピレンと環状オレフィンコポリマーと酸化亜鉛の混合物、ポリプロピレンとエチレンプロピレンラバーと環状オレフィンコポリマーと酸化亜鉛の混合物などを用いてよい。
【0021】
シーラント層の厚みは特に限定されるものではないが、厚みが小さすぎる場合にはシール強度、耐破袋性、コシ感、耐熱性が損なわれ、厚みが大きすぎる場合には過剰包装となりコストが増加するので好ましくない。シーラント層の厚みは30~150μmのものが好適に用いられる。
【0022】
本発明に用いるフィルムは、後工程適性を向上するために表面改質処理を実施してよい。例えば、単体フィルム使用時の印刷適性向上、積層使用時のラミネート適性向上のために他基材と接触する面に対して表面改質処理を行うことが可能である。表面改質処理はコロナ放電処理、プラズマ処理、フレーム処理等のフィルム表面を酸化させることにより官能基を発現させる手法や、易接着層のコーティング等のウェットプロセスによる改質を好適に用いることが可能である。
【0023】
本発明の包装材の積層構造は、包装材の要求特性、例えば包装する食品の品質保持期間を満たすバリア性、内容物の重量に対応できるサイズ・耐衝撃性、内容物の視認性などに応じて適宜選択する必要がある。代表的な構成としては、外層/ガスバリア層/中間層/シーラント層の順に、PET/金属箔/ONy/CPP、PET/無機化合物蒸着層/ONy/CPP、ONy/金属蒸着層/PET/PE、OPP/金属蒸着層/PET/CPP、ONy/ガスバリア性樹脂層/ONy/PE、PET/ガスバリア性樹脂層/ONy/PE、PET/カスバリア性樹脂層/PET/CPPがあるが、上記の代表的な構成に限定されるものではない。
【0024】
包装材の製造方法は接着剤を用いて各層を貼り合わせる通常のドライラミネート法が好適に採用できるが、必要に応じて溶剤を用いないノンソルベントラミネート法や直接各層を押出ラミネートする方法も採用することが出来る。ドライラミネート法やノンソルベントラミネート法に用いる接着剤の種類は特に限定されるものではないが、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤およびポリウレタン系接着剤が好適に用いられる。押出ラミネートに用いるラミネート用樹脂は特に限定されるものではないが、ポリエチレン、エチレンメタクリル酸共重合体、アイオノマー、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体が好適に用いられる。また押出ラミネートにて接着強度を高めるため、アンカーコートと呼ばれる接着補助剤を塗工して用いても良い。
【0025】
図3は、包装材の直進カット性評価に用いる試験片の説明図であり、図4は、包装材の直進カット性評価試験後の試験片の説明図である。包装材の直進カット性は引き裂き時に直進的に切れる性質を示すものである。本明細書において、包装材の直進カット性は以下の方法により測定される「包装材のノッチズレ」の値により判定する。
【0026】
[包装材の直進カット性]
包装材を200℃、0.15MPa、シール幅5mmで1秒間ヒートシールして三方袋を作製し、水を600mL入れ同条件にて未シールの1辺をヒートシールして、内寸が200mm×200mmである包装体を作製し、これを130℃、40分間のレトルト処理を行う。当該包装体から、MD方向が63mm、TD方向が75mmである長方形を有し、TD方向の2辺の中点のうち、ノッチが入れられていない中点を中点31、ノッチが入れられた中点を中点32として、中点31、32を結ぶ直線33が引かれた試験片30を作製する。試験片30を用いて、エルメンドルフ試験を実施する。当該試験はJIS K 7128-2に従って行う。
【0027】
エルメンドルフ試験を行い得られた試験片40において、エルメンドルフ試験により生じた引裂き曲線と中点31が設けられた辺との交点を交点34としたとき、中点31と交点34を端点とする線分35の長さを「包装材のノッチズレ」と定義する。図4では中点31の左側に34が生じる場合を示したが、実際の引裂きにおいては中点31の右側に交点34が生じることもある。その場合も図4と同様にして中点31と交点34を端点とする線分35の長さを「包装材のノッチズレ」と定義する。
【0028】
上記方法によって測定された試験片40のノッチズレが4mm以下であるものを、直進カット性を有する包装材とする。試験片40のノッチズレが4mmよりも大きいまたは引裂き線が大きく曲がりMD方向の辺で引き裂きが終了したフィルムを、直進カット性を有さない包装材とする。
【0029】
包装材の中間層およびシーラント層の少なくとも一方に、直進カット性を有するフィルムを用いることで、直進カット性を有する包装材とすることができる。
【0030】
本実施形態に係る包装材は、シーラント層をシール材として、平袋、三方袋、合掌袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ、スパウト付きパウチ、ビーク付きパウチ等の包装体に用いることが可能であり、その製袋様式は特に制限されるものではない。また包装体の開封性を高めるため、ノッチを入れる方法、レーザー加工を行う方法、引き裂きを補助するフィルムを貼り合わせる方法を用いてよい。
【0031】
以上のように、本実施形態に係る包装材は、外層、ガスバリア層、中間層およびシーラント層をこの順に備え、かつ、中間層およびシーラント層の少なくとも一方に直進カット性を有するフィルムが用いられるため、直進カット性に優れる。また、本実施形態に係る包装材は、シーラント層でシールして包装袋とすることができる。
【実施例0032】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
実施例に使用する各層の材料を説明する。外層に用いるフィルムは2種類用意した。ポリエステルフィルムAとしてユニチカ株式会社製「PC12」を用いた。このフィルムはポリエチレンテレフタラートを主成分とするフィルムであり、厚みが12μm、フィルムのノッチズレが0.8mmであった。ポリエステルフィルムBとしてユニチカ株式会社製「PET12」を用いた。このフィルムはポリエチレンテレフタラートを主成分とするフィルムであり、厚みが12μmであり、フィルムのノッチズレが18.4mmであった。バリア層にはアルミ箔として、東洋アルミニウム株式会社製「8079」を用いた。この箔は厚みが7μmであった。中間層に用いるフィルムは2種類用意した。ポリアミドフィルムAとしてユニチカ株式会社製「NCBC15」を用いた。このフィルムはナイロンを主成分とするフィルムであり、厚みが15μm、フィルムのノッチズレが0.9mmであった。ポリアミドフィルムBとしてユニチカ株式会社製「ONBC15」を用いた。このフィルムはナイロンを主成分とするフィルムであり、厚みが15μm、フィルムのノッチズレが11.1mmであった。シーラント層に用いるフィルムは3種類用意した。ポリプロピレンフィルムAとして東洋紡株式会社製「DC061」を用いた。このフィルムはポリプロピレンとエチレンプロピレン共重合体を含むフィルムであり、厚みが60μm、フィルムのノッチズレが0.4mmであった。ポリプロピレンフィルムBとして東レフィルム加工株式会社製「ZK207」を用いた。このフィルムはポリプロピレンとエチレンプロピレン共重合体を含むフィルムであり、厚みが60μm、フィルムのノッチズレが1.1mmであった。ポリプロピレンフィルムCとして東レフィルム加工株式会社製「ZK500R」を用いた。このフィルムはポリプロピレンとエチレンプロピレン共重合体を含むフィルムであり、厚みが60μm、フィルムのノッチズレが1.5mmであった。
【0034】
包装材は、各層をドライラミネート法により積層することで得た。接着剤には市販のポリウレタン系接着剤を使用した。具体的にはポリオールにタケラックA-626(三井化学株式会社製)を47.6質量部、ポリイソシアネートにタケネートA-50(三井化学株式会社製)を6.0質量部、固形分濃度調整のため酢酸エチル系溶剤であるNC401溶剤(東洋インキ株式会社製)を46.4質量部混合した接着剤を用いた。この接着剤を溶剤乾燥後塗布量が3g/平方メートルになるよう塗布、乾燥し、各層を順に貼り合わせた。ドライラミネート完了後、50℃の環境で4日間エージングすることで接着剤を硬化させ、実施例1~8および比較例1~4の包装材を得た。
【0035】
(実施例1)
ポリエステルフィルムA、アルミ箔、ポリアミドフィルムA、ポリプロピレンフィルムAを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0036】
(実施例2)
ポリエステルフィルムB、アルミ箔、ポリアミドフィルムA、ポリプロピレンフィルムAを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0037】
(実施例3)
ポリエステルフィルムA、アルミ箔、ポリアミドフィルムA、ポリプロピレンフィルムBを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0038】
(実施例4)
ポリエステルフィルムA、アルミ箔、ポリアミドフィルムA、ポリプロピレンフィルムCを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0039】
(実施例5)
ポリエステルフィルムB、アルミ箔、ポリアミドフィルムA、ポリプロピレンフィルムBを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0040】
(実施例6)
ポリエステルフィルムB、アルミ箔、ポリアミドフィルムA、ポリプロピレンフィルムCを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0041】
(実施例7)
ポリエステルフィルムA、アルミ箔、ポリアミドフィルムB、ポリプロピレンフィルムAを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0042】
(実施例8)
ポリエステルフィルムB、アルミ箔、ポリアミドフィルムB、ポリプロピレンフィルムAを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0043】
(比較例1)
ポリエステルフィルムA、アルミ箔、ポリアミドフィルムB、ポリプロピレンフィルムBを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0044】
(比較例2)
ポリエステルフィルムA、アルミ箔、ポリアミドフィルムB、ポリプロピレンフィルムCを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0045】
(比較例3)
ポリエステルフィルムB、アルミ箔、ポリアミドフィルムB、ポリプロピレンフィルムBを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0046】
(比較例4)
ポリエステルフィルムB、アルミ箔、ポリアミドフィルムB、ポリプロピレンフィルムCを、上記のラミネート方法を用いてこの順に積層した包装材を用いた。
【0047】
実施例1~8、比較例1~4で作成した包装材のそれぞれについて、下記評価を実施した。
【0048】
[包装材の直進カット性評価]
実施例1~8、比較例1~4で作製した包装材のそれぞれについて直進カット性評価を実施した。
【0049】
包装材を200℃、0.15MPa、シール幅5mmで1秒間ヒートシールして三方袋を作製し、水を600mL入れ、同条件にて未シールの1辺をヒートシールして、内寸が200mm×200mmである包装体を作製した。これを130℃、40分間のレトルト処理を行った試料を作製した。当該試料から切り出された、MD方向が63mm、TD方向が75mmである長方形を有する試験片を用いて、エルメンドルフ引裂試験機(株式会社東洋精機製作所製)によりエルメンドルフ試験を実施し、包装材のノッチズレを測定した。当該試験はJIS K 7128-2に従って行った。包装材のノッチズレの値が4mm以下であるものを直進カット性良好(〇)、4mmより大きいものを直進カット性不良(×)であると判断した。
【0050】
[手でのカット性評価]
図5は、包装体の手での開封性評価に用いる試料の説明図である。実施例1~8、比較例1~4で作製した包装材のそれぞれについて手でのカット性評価を実施した。包装材を200℃、0.15MPa、シール幅5mmで1秒間ヒートシールして三方袋を作製し、水を600mL入れ、同条件にて未シールの1辺をヒートシールして、内寸が200mm×200mmである包装体を作製した。当該包装体に130℃、40分間のレトルト処理を行い、試料50を作製した。MD方向へ引き裂かれるよう、試料50のシール部51に直線のノッチ52を入れ、手で試料を引き裂き開封した。開封時に試料の表裏で引き裂き線が一致したものを手でのカット性良好(〇)、試料の表裏で引き裂き線が一致しなかったものを手でのカット性不良(×)と判定した。
【0051】
実施例1~8と比較例1~4の各層組合せ、および、実施例1~8と比較例1~4において上述の評価を実施した結果を表1に記載する。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1~2においては、シーラント層とシーラント層に隣接する層である中間層との両方に直進カット性を有するフィルムを用いたため、包装材の直進カット性が良好であり、また手での開封性にも優れた包装体であった。
【0054】
実施例3~6においてはシーラント層に隣接する層である中間層に直進カット性を有するフィルムを用いたため、包装材の直進カット性が良好であり、また手での開封性にも優れた包装体であった。
【0055】
実施例7~8においてはシーラント層に直進カット性を有するフィルムを用いたため、包装材の直進カット性が良好であり、また手での開封性にも優れた包装体であった。
【0056】
比較例1~4ではシーラント層とシーラント層に隣接する層である中間層の両方ともに直進カット性を有さないフィルムを用いたため。包装材の直進カット性が不良であり、また手での開封性も劣る包装体であった。
【0057】
シーラント層は外層、バリア層、中間層に比べ厚みが大きいため、他層に比べ引き裂き挙動に与える影響が大きい。そのため、実施例1、2、7、8ではシーラント層に直進カット性を有するフィルムを用いることで、包装材の直進カット性が向上した。また、実施例1~6ではシーラント層に隣接する層である中間層に直進カット性を有するフィルムを用いた。これによって、包装材を引き裂く際に中間層の直進カット性がシーラント層の直進カットを補助することで、包装材の直進カット性が向上した。
【0058】
比較例1~2では、外層にのみ直進カット性を有するフィルムを用いたが、外層はシーラント層に隣接しておらずシーラント層の直進カットを補助できないため、包装材の直進カット性は向上しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、包装材および包装体に有用である。
【符号の説明】
【0060】
10…試験片
11…中点
12…中点
13…直線
14…交点
15…線分
20…試験片
30…試験片
31…中点
32…中点
33…直線
34…交点
35…線分
40…試験片
50…試料
51…シール部
52…ノッチ
図1
図2
図3
図4
図5