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特開2022-130050機能性香料を有する皮膚化粧料並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130050
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】機能性香料を有する皮膚化粧料並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/63 20060101AFI20220830BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220830BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K8/63
A61K8/06
A61Q19/00
A61Q13/00 101
A61K8/31
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029000
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】590002389
【氏名又は名称】静岡県
(71)【出願人】
【識別番号】500066539
【氏名又は名称】株式会社コーヨー化成
(71)【出願人】
【識別番号】507219686
【氏名又は名称】静岡県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 里恵
(72)【発明者】
【氏名】神谷 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】藤井 好己
(72)【発明者】
【氏名】志田 正人
(72)【発明者】
【氏名】柏木 敏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】寺田 祐子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC021
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC482
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD531
4C083CC02
4C083DD31
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】バラの香り成分の一種であるゲラニオールによるコラーゲン及びエラスチン産生促進効果を、容易且つ確実に人体に作用させることのできる、新規なゲラニオールが含有された化粧料並びにこの化粧料を含有する皮膚化粧料並びにこの皮膚化粧料の製造方法を開発することを技術課題とした。
【解決手段】油剤2を含む水溶媒に対し、バラの香り成分の一種であるゲラニオール50が、コラーゲンとエラスチンとの何れか一方又は双方の産生促進効果を有する機能性香料5として添加され、更にCNF6が添加されることにより、ピッカリングエマルション10が形成されていることを特徴として成る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油剤を含む水溶媒に対し、バラの香り成分の一種であるゲラニオールが、コラーゲンとエラスチンとの何れか一方又は双方の産生促進効果を有する機能性香料として添加され、
更にCNFが添加されていることを特徴とする機能性香料を有する皮膚化粧料。
【請求項2】
前記CNFの添加により、ピッカリングエマルションが形成されていることを特徴とする請求項1記載の機能性香料を有する皮膚化粧料。
【請求項3】
前記CNFは、幅3nm~100nmのものであることを特徴とする請求項1または2記載の機能性香料を有する皮膚化粧料。
【請求項4】
前記CNFは、0.1wt%~1wt%となる割合で添加されていることを特徴とする請求項1、2または3記載の機能性香料を有する皮膚化粧料。
【請求項5】
前記請求項1、2、3または4記載の機能性香料を有する皮膚化粧料に、保湿剤を添加することにより、乳液状とされていることを特徴とする機能性香料を有する皮膚化粧料。
【請求項6】
乳化剤、保湿剤、乳化助剤、油溶性成分を添加・撹拌し、更に徐々に水を添加して転送乳化を行うことにより第一の乳液を作成し、
次いで機能性香料を油剤中に溶かし、CNFを添加・撹拌し、更に徐々に水を加えることにより、ピッカリングエマルションが形成された第二の乳液を作成し、
次いでこれら第一の乳液と、第二の乳液とを混合して、CNFに包摂された機能性香料が含まれた乳液を得ることを特徴とする機能性香料を有する皮膚化粧料の製造方法。
【請求項7】
前記第二の乳液における機能性香料と油剤との重量比を、1:10~2000とすることを特徴とする請求項6記載の機能性香料を有する皮膚化粧料の製造方法。
【請求項8】
前記機能性香料はゲラニオールであり、前記油剤はスクワランであることを特徴とする請求項6または7記載の機能性香料を有する皮膚化粧料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースナノファイバーを活用した生活製品に関するものであって、特にバラの香り成分の一種であるゲラニオールが、コラーゲンとエラスチンとの何れか一方又は双方の産生促進効果を有する機能性香料として働くことを活用した化粧料に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ほとんどの化粧品には香料が使用されており、その目的として、香料が持っている香りを製品基材に付加するための賦香剤として、また原料自体が持つ不快臭を心地よい香りに変えるためのマスキング剤としての利用が挙げられる。
また、香りにはストレスの緩和などの心理的作用があると言われており、この効果を利用することもある。
【0003】
このような香料の賦香剤、マスキング剤としての利用の他に、近時、香り成分を身体 (皮膚) に塗布することにより、前記心理的作用に加え、身体 (皮膚) へ各種効果が発現されることが確認されている(例えば特許文献1~3参照)。
しかしながらこれらは、疾病予防による美容効果を期待するもの、抗かゆみ剤として用いるもの、皮膚外用剤として用いるもの等であり、化粧品分野への応用事例はほとんど開発されていなかった。
【0004】
このように従来技術は、香り成分以外の機能成分を新たに加えるため、コストと手間がかかる、安定性が悪い、有効な含有量では臭いや色の点で化粧品としての商品価値が保てない等、実製品としての利用が困難なものが多かった。
一方、香り成分を機能成分として用いた場合には、香り成分は揮発性物質であるため、皮膚に塗布した直後から揮発してしまい、皮膚への浸透量が減少し、その機能を有効に発揮することができない等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-001282公報
【特許文献2】特開2019-137641公報
【特許文献3】特開平11-35455公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、バラの香り成分の一種であるゲラニオールによるコラーゲン及びエラスチン産生促進効果を、容易且つ確実に人体に作用させることのできる、新規なゲラニオールが含有された化粧料並びにこの化粧料を含有する皮膚化粧料並びにこの皮膚化粧料の製造方法を開発することを技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の機能性香料を有する皮膚化粧料は、油剤を含む水溶媒に対し、バラの香り成分の一種であるゲラニオールが、コラーゲンとエラスチンとの何れか一方又は双方の産生促進効果を有する機能性香料として添加され、更にCNFが添加されていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の機能性香料を有する皮膚化粧料は、前記要件に加え、前記CNFの添加により、ピッカリングエマルションが形成されていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項3記載の機能性香料を有する皮膚化粧料は、前記要件に加え、前記CNFは、幅3nm~100nmのものであることを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載の機能性香料を有する皮膚化粧料は、前記要件に加え、前記CNFは、0.1wt%~1wt%となる割合で添加されていることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項5記載の機能性香料を有する皮膚化粧料は、前記請求項1、2、3または4記載の機能性香料を有する皮膚化粧料に、保湿剤を添加することにより、乳液状とされていることを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項6記載の機能性香料を有する皮膚化粧料の製造方法は、乳化剤、保湿剤、乳化助剤、油溶性成分を添加・撹拌し、更に徐々に水を添加して転送乳化を行うことにより第一の乳液を作成し次いで機能性香料を油剤中に溶かし、CNFを添加・撹拌し、更に徐々に水を加えることにより、ピッカリングエマルションが形成された第二の乳液を作成し、次いでこれら第一の乳液と、第二の乳液とを混合して、CNFに包摂された機能性香料が含まれた乳液を得ることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項7記載の機能性香料を有する皮膚化粧料の製造方法は、前記請求項6記載の要件に加え、前記第二の乳液における機能性香料と油剤との重量比を、1:10~2000とすることを特徴として成るものである。
【0014】
更にまた請求項8記載の機能性香料を有する皮膚化粧料の製造方法は、前記請求項6または7記載の要件に加え、前記機能性香料はゲラニオールであり、前記油剤はスクワランであることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0015】
まず請求項1記載の発明によれば、通常、化粧料には、機能性成分と香料とが配合されるが、本発明の機能性香料を有する皮膚化粧料は、香り成分のみで機能と賦香が担保されるため、機能性成分を加える手間やコストを削減することができる。
また特に機能性香料としてのゲラニオールは無色であることから、退色の可能性が無く、化粧料の製造にあたって通常行われている測色工程を排除することができる。
またCNFは三次元ネットワークを形成する素材であるため、機能性香料が緻密なネットワークに蓋われることとなり、機能性香料の揮発を抑制し、機能性香料の皮膚への浸透量を増加させることができる。
【0016】
また請求項2記載の発明によれば、CNFの三次元ネットワークによる機能性香料の揮発抑制効果に加え、ピッカリングエマルションによる機能性香料の揮発抑制効果を得ることができる。
【0017】
また請求項3、4記載の発明によれば、ピッカリングエマルションの形成を好適なものとすることができる。
【0018】
また請求項5記載の発明によれば、機能性香料を有する皮膚化粧料を、用途に応じた性状のものとすることができる。
【0019】
また請求項6記載の発明によれば、CNFが水と機能性香料が溶け込んだ油剤の界面に吸着した、ピッカリングエマルションが形成されるものであり、機能性香料がCNFに包摂された状態の乳液を得ることができる。
【0020】
また請求項7記載の発明によれば、第二の乳液中に生成されるミセルの粒子径の変化を抑え、且つミセルの粒子径を小さくすることで、時間と共に起こりうる皮膚化粧料のエマルション崩壊を抑制することができる。
【0021】
また請求項8記載の発明によれば、安定したピッカリングエマルションを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の機能性香料を有する皮膚化粧料において、CNFが形成する三次元ネットワークに保持された、ピッカリングエマルションが形成された機能性香料が、長時間に渡って皮膚に浸透する様子を示す概念図(a)並びに界面活性剤によって油分と香料が乳化された既存の皮膚化粧料において、香料の多くが揮発してしまい、皮膚に浸透する量が少なくなってしまう様子を示す概念図(b)である。
図2】本発明の機能性香料を有する皮膚化粧料の製造方法を示す工程図である。
図3】皮膚線維芽細胞にゲラニオールを滴下し、48時間後にRT-PCRにてmRNA発現の変化を測定した結果を示すグラフである。
図4】皮膚線維芽細胞にゲラニオールを滴下し、48時間後にELISAにてタンパク質レベルの変化を測定した結果を示すグラフである。
図5】水と機能性香料とが溶け込んだ油剤の界面にCNFが吸着し、ピッカリングエマルションが形成された本発明の皮膚化粧料を示す写真(a)並びにCNFが添加されていない同成分の皮膚化粧料において、機能性香料が分離してしまった様子を示す写真(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明を実施するための最良の形態について説明するが、この形態に対して、本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【0024】
〔発明1:機能性香料を有する皮膚化粧料〕
まず本発明の機能性香料を有する皮膚化粧料1(以下、単に皮膚化粧料1と称する。)について説明する。
本発明の皮膚化粧料1は、油剤2を含む水溶媒に対し機能性香料5が添加され、更にセルロースナノファイバー(以下、CNFと記す)6が添加されたものであり、図1に示すようにピッカリングエマルション10が形成された乳液状の液体である。
更に本発明の皮膚化粧料1は、機能性香料5が含有された上記皮膚化粧料1に、更に保湿剤3および/または乳化剤4を添加することにより、更に粘度が増した乳液状の液体とされた形態も採られるものである。
なお皮膚化粧料1に対しては、乳化助剤9や防腐・殺菌剤7、増粘剤等の機能性成分、香料、等の各種調製成分が、用途に応じて適宜添加される。
【0025】
なお前記機能性香料5(図1における概念図で符号5として示した。)とは、コラーゲンとエラスチンとの何れか一方又は双方の産生促進効果を発現する機能を有する香料を意味するものであり、一例としてバラの香り成分の一種であるゲラニオール50(図1における概念図で符号50として示した。)が挙げられる。
ここで前記コラーゲンの産生促進効果、エラスチンの産生促進効果とは、それぞれ真皮の成分であるコラーゲン、エラスチンを作り出す結合組織を構成する細胞の1つである線維芽細胞において、真皮成分産生を促進する効果を意味するものである。
このゲラニオールは、バラの花弁・蕾から得られるローズオイルや、パルマローザ油、シトロネラ油等に含まれる、ほぼ無色の油性液体である。
【0026】
ここで皮膚線維芽細胞にゲラニオールを滴下し、ゲラニオールによるコラーゲン、エラスチンの産生を測定し、皮膚再生の活性化(コラーゲンの産生促進効果、エラスチンの産生促進効果)を評価した検証結果を示す。
まず図3に示すグラフは、皮膚線維芽細胞にゲラニオールを滴下し、48時間後にRT-PCRにてmRNA発現の変化を測定した結果を示すものである。
このグラフからも解るように、ゲラニオールによって、I型コラーゲン合成遺伝子(COL1A1、COL1A2、ELN)の遺伝子発現が増加していることが確認された。
【0027】
また図4に示すグラフは、皮膚線維芽細胞にゲラニオールを滴下し、48時間後にELISAにてタンパク質レベルの変化を測定した結果を示すものである。
このグラフからも解るように、ゲラニオールによって、I型プロコラーゲン合成が促進されていることが確認された。
【0028】
なお機能性香料5としては、1,8-シネオール、フェネチルアルコール、リナロール等を用いることもできる。
【0029】
また前記CNF6としては、一例としてカルボキシメチル化CNFを採用するものであり、その性状は、幅3~100nm、好ましくは幅3~80nm、更に好ましくは幅3~50nmとされる。
また前記CNF6は、その製法に由来して、化学的解繊セルロースナノファイバー(CNF)と機械的解繊セルロースナノファイバー(CNF)とに分類されあるが、本発明には双方ともに利用が可能である。
なお前記CNF6は、皮膚化粧料1に対して、0.1wt%~1wt%、好ましくは0.3wt%~0.9wt%、更に好ましくは0.5wt%~0.8wt%となる割合で添加される。
【0030】
また前記油剤2としては、一例としてスクワランが適用されるものであり、このスクワランは、深海鮫の肝油、オリーブの実等に多く存在する「スクワレン」という成分に水素を添加して安定化(酸化しにくい状態)したものであり、色、味、においがほとんどない、透明な液状の油である。
なお油剤2としてはこの他に、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル(一例として日本精化社製 plamdool-MAS)や、ジメチコン( 一例としてダウ・ケミカル日本社/ダウ・東レ社製 SH200C Fluid 100cs)等のシリコンオイルを採用することもできる。
【0031】
また前記保湿剤3としては一例としてBG(1,3-ブチレングリコール)が適用されるものであり、このBGは、アセトアルデヒドのアルドール縮合物を水素添加して得られる多価アルコール(二価アルコール)である。
また保湿剤3としてはこの他に、グリセリン(天然油脂を鹸化またはプロピレンから合成して得られる吸湿性を有した多価アルコール(三価アルコール))等を採用することもできる。
【0032】
また前記乳化剤4としては、一例として日本精化社製 phytocompo-sp (含有成分:水添レシチン,フィトステロールズ,グリセリン,BG)が適用されるものである。
また界面活性剤4としてはこの他に、日本精化社製 phytpresome (含有成分:水添レシチン,フィトステロールズ,セラミド2,セラミド3,セラミド6)等を採用することもできる。
【0033】
また前記防腐・殺菌剤7としては、メチルパラベン(安息香酸エステルのパラ位にフェノール性ヒドロキシ基を持つパラオキシ安息香酸のメチルエステル)が適用されるものである。
また防腐・殺菌剤7としてはこの他に、フェノキシエタノール(エチレングリコールのヒドロキシ基(水酸基:-OH )にフェノールの水酸基がエーテル結合した芳香族アルコール)等が採用される。
【0034】
また水8としてハイブリッドローズ花水を採用するものであり、このものはRosa hybrid の花を水蒸気蒸留して得られる3,5-ジメトキシトルエンが微量含まれた水相である。なお水8として、精製水を用いることもできる。
【0035】
また前記乳化助剤9としては、一例としてセトステアリルアルコールを主成分としたカルコール6850(花王株式会社製)が適用されるものである。
【0036】
〔発明2:機能性香料を有する皮膚化粧料の製造方法〕
次に本発明の皮膚化粧料1の製造方法について説明する。
皮膚化粧料1を得るにあたっては、先ず図2中の左側のフローに示すように、乳化剤4、保湿剤3、防腐・殺菌剤7、乳化助剤9、油溶性成分(油剤2)を添加・撹拌し、更に徐々に水8を添加して転送乳化を行うことにより第一の乳液E1を作成する。
【0037】
次いで図2中の右側のフローに示すように、機能性香料5を油剤2中に溶かし、CNF6を添加・撹拌し、更に徐々に水8を加えることにより第二の乳液E2を作成する。
なおこの第二の乳液E2中には、図1(a)に示すようにCNF6が水8と機能性香料5が溶け込んだ油剤2の界面に吸着した、ピッカリングエマルション10が形成されるものであり、機能性香料5はCNF6に包摂された状態となる。
【0038】
次いでこれら第一の乳液E1と、第二の乳液E2とを混合して皮膚化粧料1が得られるものである。
このようにして得られた皮膚化粧料1中において、前記CNF6は三次元ネットワークを形成するものであり、図1(a)に示すようにCNF6に包摂された機能性香料5(ゲラニオール50)が、CNF6が形成する三次元ネットワーク(図1(a)中、網目で示す)に保持された状態が得られるため、機能性香料5の徐放性効果が長持ちする。
【0039】
なお本発明の皮膚化粧料1の製造方法においては、前記第二の乳液E2における機能性香料5と油剤2との重量比を、1:10~2000、好ましくは1:10~1000、更に好ましくは1:10~100とする。
そしてこのような重量比を選択することにより、第二の乳液E2中に生成されるミセルの粒子径変化を抑制すること及び粒子径を小さくすることで、時間とともに起こり得るエマルションの崩壊を防止できることが本発明者により確認されている。
【0040】
また本発明の皮膚化粧料1の製造方法においては、第二の乳液E2に用いる機能性香料5としてゲラニオール50を採用し、また油剤2としてスクワランを採用することにより、乳化剤を使用せずとも安定したエマルションが形成されており、ピッカリングエマルション10が得られることが本発明者により確認されている(図5(a)参照)。
なお図5(b)に示すものは、CNF6が添加されていない同成分の皮膚化粧料1′であって、エマルションが分離してしまっているのが確認できる。
【実施例0041】
次に本発明の皮膚化粧料1の実施例を記載するものであり、各成分の詳細を以下に示す。
【実施例0042】
第一の乳液E1の含有成分

乳化剤4:5.005%(phytocompo-sp 、phytpresome )

保湿剤3:13.2%(BG、グリセリン)

油剤2:3.1%(plamdool-MAS、SH200C Fluid 100cs、スクワラン)

抗菌・防腐剤7:0.175%(メチルパラペン、フェノキシエタノール)

乳化剤9:3%(カルコール6850)

水8:25.52%(ハイブリッドローズ花水)
【0043】
第二の乳液E2の含有成分

機能性香料5:0.004%(ゲラニオール、1,8-シネオール、フェネチルアルコ ール、リナロール)
水8 :24.691%(ハイブリッドローズ花水)

CNF6 :25%(CNF 2%水溶液)

油剤2 :0.2%(スクワラン)
【0044】
機能性成分、香料等:0.105%
【実施例0045】
第一の乳液E1の含有成分

乳化剤4: 5.005%(phytocompo-sp 、phytpresome )

保湿剤3:13.2%(BG、グリセリン)

油剤2:1.3%(plamdool-MAS、SH200C Fluid 100cs)

抗菌・防腐剤7:0.175%(メチルパラペン、フェノキシエタノール)

乳化剤9:3%(カルコール6850)

水8:27.32%(ハイブリッドローズ花水)
【0046】
第二の乳液E2の含有成分

機能性香料5:0.004%(ゲラニオール、1,8-シネオール、フェネチルアルコ ール、リナロール)

水8:22.933%(ハイブリッドローズ花水)

CNF6:25%(CNF 2%水溶液)

油剤2:2%(スクワラン)
【0047】
機能性成分、香料等:0.063%
【実施例0048】
第一の乳液E1の含有成分

乳化剤4:1.5%( phytocompo-sp)

保湿剤3:25.65%(BG、グリセリン)

油剤2:1.3%(plamdool-MAS、SH200C Fluid 100cs)

抗菌・防腐剤7:0.175%(メチルパラペン、フェノキシエタノール)

乳化剤9:0.75%(カルコール6850)

水8:20.625%(ハイブリッドローズ花水)
【0049】
第二の乳液E2の含有成分

機能性香料5:0.04%(ゲラニオール、1,8-シネオール、フェネチルアルコー ル、リナロール)

水8:22.86%(ハイブリッドローズ花水)

CNF6:25%(CNF 2%水溶液)

油剤2:2%(スクワラン)
【0050】
機能性成分、香料等:0.1%
【符号の説明】
【0051】
1 (機能性香料を有する)皮膚化粧料
2 油剤
3 保湿剤
4 乳化剤
5 機能性香料
50 ゲラニオール
6 セルロースナノファイバー(CNF)
7 防腐・殺菌剤
8 水
9 乳化助剤
10 ピッカリングエマルション
E1 第一の乳液
E2 第二の乳液
図1
図2
図3
図4
図5