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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130065
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20220830BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01F17/04 A
H01F17/00 B
H01F17/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029018
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】橋本 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敏之
(72)【発明者】
【氏名】西川 朋永
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 将典
(72)【発明者】
【氏名】三浦 満
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB06
5E070AB07
5E070BB03
5E070CB12
5E070CB13
(57)【要約】
【課題】高周波領域におけるQ値が高く直流抵抗の低いコイル部品を提供する。
【解決手段】コイル部品1はスパイラルパターンSP1~SP4を備える。スパイラルパターンSP1~SP4の各ターンは、ラインL11,L21,L31,L41と、ラインL11,L21,L31,L41よりも内周側に位置するラインL12,L22,L32,L42と、ラインL11,L21,L31,L41よりも外周側に位置するラインL13,L23,L33,L43をそれぞれ含む。ラインL11,L21,L31,L41は、ラインL12,L22,L32,L42,L13,L23,L33,L43よりも径方向におけるライン幅が広い。これにより、ライン幅の狭いラインによって高周波領域におけるQ値が高められるとともに、ライン幅の広いラインによって直流抵抗の増加が抑えられことから、Q値と直流抵抗のバランスを両立させることが可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル状に複数ターン巻回された少なくとも一つのスパイラルパターンを備えるコイル部品であって、
前記スパイラルパターンの各ターンは、径方向に複数のラインに分割されており、
前記複数のラインは、第1のラインと、前記第1のラインよりも内周側に位置する第2のラインと、前記第1のラインよりも外周側に位置する第3のラインとを含み、
前記第1のラインは、前記第2及び第3のラインよりも径方向におけるライン幅が広いことを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記スパイラルパターンを覆う絶縁部材と、
前記絶縁部材を介して前記スパイラルパターンをコイル軸方向から挟む第1及び第2の磁性部材と、
前記絶縁部材を介して前記スパイラルパターンの内径領域に配置され、前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材の間における第1の磁路を構成する第3の磁性部材と、
前記絶縁部材を介して前記スパイラルパターンの外側領域に配置され、前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材の間における第2の磁路を構成する第4の磁性部材と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記スパイラルパターンを覆う絶縁部材と、
前記絶縁部材を介して前記スパイラルパターンを軸方向から挟む第1及び第2の配線層と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1の配線層の表面に設けられ、前記スパイラルパターンの一端及び他端にそれぞれ接続された第1及び第2の端子電極と、
前記第2の配線層の表面に設けられ、前記スパイラルパターンの前記一端及び前記他端にそれぞれ接続された第3及び第4の端子電極と、をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記スパイラルパターンは、共通の又は異なるコイル軸を有する複数のスパイラルパターンからなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、特に、スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを備えるコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを備えるコイル部品において、スパイラルパターンの各ターンを径方向に2分割した例が開示されている。このように、スパイラルパターンの各ターンを2分割すれば、渦電流を抑制することが可能となる。そして、スパイラルパターンの各ターンをより多くのラインに分割すれば、渦電流がより低減することから高周波領域におけるQ値が高められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-78234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コイル部品の平面サイズを拡大することなく、スパイラルパターンの各ターンを多くのラインに分割すると、スパイラルパターンの断面積の減少によって直流抵抗が増加するという問題があった。
【0005】
したがって、本発明は、スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを備えるコイル部品において、高周波領域におけるQ値を高めつつ、直流抵抗の増加を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるコイル部品は、スパイラル状に複数ターン巻回された少なくとも一つのスパイラルパターンを備えるコイル部品であって、スパイラルパターンの各ターンは、径方向に複数のラインに分割されており、複数のラインは、第1のラインと、第1のラインよりも内周側に位置する第2のラインと、第1のラインよりも外周側に位置する第3のラインとを含み、第1のラインは、第2及び第3のラインよりも径方向におけるライン幅が広いことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、ライン幅の狭い第2及び第3のラインによって高周波領域におけるQ値が高められるとともに、ライン幅の広い第1のラインによって直流抵抗の増加が抑えられことから、Q値と直流抵抗のバランスを両立させることが可能となる。
【0008】
本発明によるコイル部品は、スパイラルパターンを覆う絶縁部材と、絶縁部材を介してスパイラルパターンをコイル軸方向から挟む第1及び第2の磁性部材と、絶縁部材を介してスパイラルパターンの内径領域に配置され、第1の磁性部材と第2の磁性部材の間における第1の磁路を構成する第3の磁性部材と、絶縁部材を介してスパイラルパターンの外側領域に配置され、第1の磁性部材と第2の磁性部材の間における第2の磁路を構成する第4の磁性部材とをさらに備えていても構わない。これによれば、第1~第4の磁性部材が磁路となることから、大きなインダクタンスを得ることが可能となる。
【0009】
本発明によるコイル部品は、スパイラルパターンを覆う絶縁部材と、絶縁部材を介してスパイラルパターンを軸方向から挟む第1及び第2の配線層とをさらに備えても構わない。これによれば、いわゆる基板プロセスによってコイル部品を作製することが可能となる。この場合、コイル部品は、第1の配線層の表面に設けられ、スパイラルパターンの一端及び他端にそれぞれ接続された第1及び第2の端子電極と、第2の配線層の表面に設けられ、スパイラルパターンの一端及び他端にそれぞれ接続された第3及び第4の端子電極とをさらに備えても構わない。これによれば、第1の配線層を実装面、第2の配線層を他の電子部品の搭載面として用いることが可能となる。
【0010】
本発明において、スパイラルパターンは、共通の又は異なるコイル軸を有する複数のスパイラルパターンからなるものであっても構わない。これによれば、よりターン数の多いコイル部品又は複数のコイルを含むアレイ品を提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、スパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンを備えるコイル部品において、高周波領域におけるQ値を高めつつ、直流抵抗の増加を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1の構造を説明するための略断面図である。
図2図2は、導体層10の略平面図である。
図3図3は、導体層20の略平面図である。
図4図4は、導体層30の略平面図である。
図5図5は、導体層40の略平面図である。
図6図6(a)は図2のB-B線に沿った略断面図であり、図6(b)は第1の参考例を示し、図6(c)は第2の参考例を示している。
図7図7は、周波数とQ値の関係を示すグラフである。
図8図8は、周波数とQ値の関係を示すグラフである。
図9図9は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の構造を説明するための略断面図である。
図10図10は、導体層10の略平面図である。
図11図11は、導体層20の略平面図である。
図12図12は、導体層30の略平面図である。
図13図13は、導体層40の略平面図である。
図14図14は、本発明の第3の実施形態によるコイル部品3の構造を説明するための略断面図である。
図15図15は、本発明の第4の実施形態によるコイル部品4の構造を説明するための略斜視図である。
図16図16は、コイル部品4を基板61側から見た略平面図である。
図17図17は、コイル部品4を基板62側から見た略平面図である。
図18図18は、コイル部品4の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品1の構造を説明するための略断面図である。
【0015】
第1の実施形態によるコイル部品1は、DCDCコンバーターなどの電源回路用のインダクタとして用いることが好適な表面実装型のチップ部品であり、図1に示すように、磁性部材M1~M4と、磁性部材M1~M4に埋め込まれたコイルパターンC1とを備える。コイルパターンC1の構成については後述するが、本実施形態においてはスパイラル状に複数ターン巻回されたスパイラルパターンSP1~SP4からなる。
【0016】
磁性部材M1~M4は、鉄(Fe)やパーマロイ系材料などからなる金属磁性体フィラーと樹脂バインダーを含む複合部材であり、コイルパターンC1に電流を流すことによって生じる磁束の磁路を構成する。樹脂バインダーとしては、液状又は粉体のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。磁性部材M1~M4を構成する材料は、互いに同じであっても構わないし、互いに異なっていても構わない。コイルパターンC1は絶縁部材50によって覆われている。ここで、磁性部材M1は、絶縁部材50を介してコイルパターンC1を軸方向における一方側(図1に示す下側)から覆う部分であり、磁性部材M2は、絶縁部材50を介してコイルパターンC1を軸方向における他方側(図1に示す上側)から覆う部分である。磁性部材M3は、絶縁部材50を介してコイルパターンC1の内径領域に埋め込まれた部分であり、磁性部材M1と磁性部材M2の間における第1の磁路を構成する。磁性部材M4は、絶縁部材50を介してコイルパターンC1の径方向における外側領域に位置する部分であり、磁性部材M1と磁性部材M2の間における第2の磁路を構成する。磁性部材M2については、フェライトなどからなる磁性基板であっても構わない。
【0017】
コイルパターンC1は、導体層10,20,30,40によって形成される。導体層10の平面形状は図2に示され、導体層20の平面形状は図3に示され、導体層30の平面形状は図4に示され、導体層40の平面形状は図5に示されている。図1に示す断面は、図2図5に示すA-A線に沿った断面に対応している。導体層10,20,30,40はそれぞれスパイラルパターンSP1~SP4を有している。スパイラルパターンSP1~SP4は、共通のコイル軸を有し、絶縁部材50に形成されたスルーホールを介して互いに接続されることによりコイルパターンC1を構成している。コイルパターンC1の一端は端子電極E1に接続され、コイル導体の他端は端子電極E2に接続される。導体層10,20,30,40の材料としては、銅(Cu)を用いることが好ましい。
【0018】
図2に示すように、導体層10は、スパイラル状に約3ターン巻回されたスパイラルパターンSP1を有している。スパイラルパターンSP1は、径方向に3つのラインL11~L13に分割されている。ここで、ラインL11は径方向における中央に位置し、ラインL12はラインL11よりも内周側に位置し、ラインL13はラインL11よりも外周側に位置する。スパイラルパターンSP1の内周端及び外周端においては、ラインL11~L13が短絡されている。スパイラルパターンSP1の外周端は端子電極E1に接続される。
【0019】
図3に示すように、導体層20は、スパイラル状に約3ターン巻回されたスパイラルパターンSP2を有している。スパイラルパターンSP2は、径方向に3つのラインL21~L23に分割されている。ここで、ラインL21は径方向における中央に位置し、ラインL22はラインL21よりも内周側に位置し、ラインL23はラインL21よりも外周側に位置する。スパイラルパターンSP2の内周端及び外周端においては、ラインL21~L23が短絡されている。スパイラルパターンSP2の内周端はスパイラルパターンSP1の内周端に接続される。
【0020】
図4に示すように、導体層30は、スパイラル状に約3ターン巻回されたスパイラルパターンSP3を有している。スパイラルパターンSP3は、径方向に3つのラインL31~L33に分割されている。ここで、ラインL31は径方向における中央に位置し、ラインL32はラインL31よりも内周側に位置し、ラインL33はラインL31よりも外周側に位置する。スパイラルパターンSP3の内周端及び外周端においては、ラインL31~L33が短絡されている。スパイラルパターンSP3の外周端はスパイラルパターンSP2の外周端に接続される。
【0021】
図5に示すように、導体層40は、スパイラル状に約2.5ターン巻回されたスパイラルパターンSP4を有している。スパイラルパターンSP4は、径方向に3つのラインL41~L43に分割されている。ここで、ラインL41は径方向における中央に位置し、ラインL42はラインL41よりも内周側に位置し、ラインL43はラインL41よりも外周側に位置する。スパイラルパターンSP4の内周端及び外周端においては、ラインL41~L43が短絡されている。スパイラルパターンSP4の内周端はスパイラルパターンSP3の内周端に接続され、スパイラルパターンSP4の外周端は端子電極E2に接続される。
【0022】
図6(a)は、図2のB-B線に沿った略断面図である。
【0023】
図6(a)に示すように、ラインL11の径方向におけるライン幅W1は、ラインL12,L13の径方向におけるライン幅W2よりも広い。この関係は、スパイラルパターンSP1の全周に亘って維持される。図示しないが、他のスパイラルパターンSP2~SP4についても同様であり、ラインL21,L31,L41の径方向におけるライン幅はいずれもW1であり、ラインL22,L23,L32,L33,L42,L43の径方向におけるライン幅はいずれもW2である。このように、本実施形態においては、スパイラルパターンSP1~SP4の各ターンが3つのラインに分割されていることから、渦電流損が低減し、その結果、高周波領域におけるQ値が向上する。
【0024】
ラインL11とラインL12の間は、導体パターンの存在しないスペースS1を構成し、ラインL11とラインL13の間は、導体パターンの存在しないスペースS2を構成する。ここで、第1の参考例である図6(b)に示すように、スペースS1,S2を設けることなく、この部分を導体パターンで埋めれば、スパイラルパターンSP1の断面積が増加することから、直流抵抗は低減する。しかしながら、スペースS1,S2が設けられていない場合、大きな渦電流損が生じることから、高周波領域におけるQ値が低下する。これに対し、本実施形態においては、第1の参考例に対してスペースS1,S2を設けていることから、平面サイズを拡大することなく、高周波領域におけるQ値を高めることが可能となる。
【0025】
また、第2の参考例である図6(c)に示すように、ラインL11~L13の径方向におけるライン幅をいずれもW3とする方法も考えられるが、この場合、渦電流損の低減効果はあるが、図6(b)に示す第1の参考例と比べて配線幅が減少するため直流抵抗が増加する。これに対し、本実施形態によるコイル部品1は、最内周ターンを構成する3つのラインL11~L13のうち、最も内周端に位置するラインL12のライン幅がW2に低減され、最外周ターンを構成する3つのラインL11~L13のうち、最も外周端に位置するラインL13のライン幅がW2に低減されていることから、磁束密度の高い最内周ターン及び最外周ターンにおける渦電流損がより低減される。しかも、ラインL11の幅を広くすることで、直流抵抗の増加も抑制できる。また、ラインL11~L13の幅を調整することで、特性の微調整を容易に行うことが可能となる。
【0026】
図7及び図8は、周波数とQ値の関係を示すグラフである。
【0027】
図7において、符号aは図6(a)に示した本実施形態によるコイル部品1の特性を示し、符号bは図6(b)に示した第1の参考例によるコイル部品の特性を示し、符号cは図6(c)に示した第2の参考例によるコイル部品の特性を示している。また、各符号に付された抵抗値は、それぞれのコイル部品の直流抵抗(Rdc)を示している。図7に示すように、符号bで示す第1の参考例によるコイル部品は、直流抵抗が小さいものの渦電流損が大きく、Q値がピークとなる周波数が低い。これに対し、符号aで示す本実施形態によるコイル部品1や、符号cで示す第2の参考例によるコイル部品においては、各ターンを3つのラインに分割していることから渦電流損が低減され、Q値がピークとなる周波数が高められている。符号cで示す第2の参考例によるコイル部品は、符号aで示す本実施形態によるコイル部品1よりも高周波領域におけるQ値が僅かに高いものの、直流抵抗については符号aで示す本実施形態によるコイル部品1の方が低い。このように、本実施形態によるコイル部品1は、Q値と直流抵抗のバランスを両立していることが分かる。
【0028】
図8において、符号x3はW1/W2の比が3である場合の特性を示し、符号x2はW1/W2の比が2である場合の特性を示し、符号x1はW1/W2の比が1である場合の特性を示し、符号x0.5はW1/W2の比が0.5である場合の特性を示している。また、各符号に付された抵抗値は、それぞれのコイル部品の直流抵抗(Rdc)を示している。図8に示すように、符号x1及び符号x0.5で示すコイル部品は、Q値がピークとなる周波数が高いものの、符号x0.5で示すコイル部品はQ値のピーク自体が低い。Q値がピークとなる周波数は符号x3、符号x2及び符号x1の順に高くなるが、直流抵抗は符号x1、符号x2及び符号x3の順に低くなる。特に、符号x2は、直流抵抗とQ値のバランスが最も優れており、Q値のピークも最も高い。
【0029】
このように、本実施形態によるコイル部品1は、スパイラルパターンSP1~SP4を構成する各ターンが3つのラインに分割されているとともに、ラインL11,L21,L31,L41のライン幅が広く、ラインL12,L13,L22,L23,L32,L33,L42,L43のライン幅が狭く設計されていることから、Q値と直流抵抗のバランスを両立させることが可能となる。
【0030】
図9は、本発明の第2の実施形態によるコイル部品2の構造を説明するための略断面図である。
【0031】
図9に示すように、第2の実施形態によるコイル部品2はいわゆるアレイ品であり、コイルパターンC1とコイルパターンC2が磁性部材M1~M4に埋め込まれた構造を有している。コイルパターンC1は、第1の実施形態によるコイル部品1と同様、導体層10,20,30,40にそれぞれ形成されたスパイラルパターンSP1~SP4からなる。一方、コイルパターンC2は、導体層10,20,30,40にそれぞれ形成されたスパイラルパターンSP5~SP8からなる。スパイラルパターンSP5~SP8は共通のコイル軸を有し、且つ、スパイラルパターンSP1~SP4とは異なるコイル軸を有している。スパイラルパターンSP5~SP8からなるコイルパターンC2は、一端が端子電極E3に接続され、他端が端子電極E4に接続されている。
【0032】
導体層10,20,30,40の構成は、それぞれ図10図13に示されている。図9に示す断面は、図10図13に示すC-C線に沿った断面に対応している。図10図13に示すように、スパイラルパターンSP1~SP4とスパイラルパターンSP5~SP8は対称形である。スパイラルパターンSP5~SP8は、それぞれラインL11~L13,L21~L23、L31~L33,L41~L43に対応するラインL51~L53,L61~L63、L71~L73,L81~L83に分割されている。
【0033】
本実施形態によるコイル部品2が例示するように、本発明をアレイ品に応用することも可能である。また、本実施形態によるコイル部品2は、コイルパターンC1とコイルパターンC2の巻回方向が互いに逆であることから、端子電極E1,E3を入力側、端子電極E2,E4を出力側として電流を流した場合、磁束が強め合うことから、高いインダクタンスを得ることが可能となる。
【0034】
図14は、本発明の第3の実施形態によるコイル部品3の構造を説明するための略断面図である。
【0035】
図14に示すように、第3の実施形態によるコイル部品3は、スパイラルパターンSP1~SP4を有する導体層10,20,30,40が配線層61,62によってコイル軸方向から挟まれた構造を有している。スパイラルパターンSP1~SP4の構造は第1の実施形態によるコイル部品1と同じである。導体層10,20,30,40の内側及び外側には磁性部材M3,M4が設けられている。そして、コイルパターンC1の一端は、配線層61に配置されるビア導体81,82を介して端子電極E11に接続され、コイルパターンC1の他端は、配線層61を貫通するビア導体83を介して端子電極E12に接続される。
【0036】
本実施形態によるコイル部品3が例示するように、本発明によるコイル部品は、いわゆる基板プロセスによって作製することも可能である。基板プロセスによって作製したコイル部品は、表面実装型のチップ部品であっても構わないし、プリント基板などの回路基板の一部であっても構わない。
【0037】
図15は、本発明の第4の実施形態によるコイル部品4の構造を説明するための略斜視図である。また、図16はコイル部品4を基板61側から見た略平面図であり、図17はコイル部品4を基板62側から見た略平面図である。
【0038】
図15図17に示すように、第4の実施形態によるコイル部品4は、第3の実施形態によるコイル部品3に対し、基板61に端子電極E13,E14が追加され、基板62に端子電極E21~E24が追加された構造を有している。端子電極E11~E14は、それぞれ端子電極E21~E24と短絡されている。本実施形態においては、基板61が回路基板に対する実装面、基板62が電子部品の搭載面であり、搭載面にはチップコンデンサ91~93が搭載されている。このうち、チップコンデンサ91は端子電極E21,E22間に接続され、チップコンデンサ92は端子電極E21,E23間に接続され、チップコンデンサ93は端子電極E22,E24間に接続されている。かかる構成により、本実施形態によるコイル部品4は、図18に示すLC回路を構成する。
【0039】
本実施形態によるコイル部品4が例示するように、本発明によるコイル部品に他のチップ部品を搭載することによって、より複雑な回路を構成することも可能である。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0041】
例えば、上記各実施形態では、スパイラルパターンの各ターンを径方向に3分割しているが、本発明において、スパイラルパターンの分割数についてはこれに限定されず、4ライン以上に分割しても構わない。
【符号の説明】
【0042】
1~4 コイル部品
10,20,30,40 導体層
50 絶縁部材
61,62 配線層
81,82,83 ビア導体
91~93 チップコンデンサ
C1,C2 コイルパターン
E1~E4,E11~E14,E21~E24 端子電極
L11~L13,L21~L23,L31~L33,L41~L43,L51~L53,L61~L63,L71~L73,L81~L83 ライン
M1~M4 磁性部材
S1,S2 スペース
SP1~SP8 スパイラルパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18