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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130075
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】顆粒及びその製造方法、並びに錠剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/16 20060101AFI20220830BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 31/609 20060101ALN20220830BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K9/20
A61K47/26
A61K47/38
A61K31/609
A61P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029034
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000112912
【氏名又は名称】フロイント産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】阿井 敬佑
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA32
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC05
4C076DD38A
4C076DD41C
4C076DD67A
4C076EE32B
4C076EE45B
4C076FF02
4C076FF06
4C076FF09
4C076FF33
4C076FF36
4C076GG09
4C076GG12
4C086AA01
4C086AA10
4C086DA17
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA07
4C086ZA08
(57)【要約】
【課題】優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することが可能な顆粒及びその製造方法、並びに前記顆粒を用いた錠剤を提供する。
【解決手段】糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む顆粒であって、前記顆粒が、前記顆粒100質量部に対して、滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを1.2質量部配合した錠剤(直径8mm、厚み4.0mm~4.5mm、湾曲率10、重量195mg~205mg、硬度40N~60N)とし、所定の条件で1か月間保存した場合に、前記錠剤の重量変化率が0.2%以下である顆粒である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む顆粒であって、
前記顆粒が、前記顆粒100質量部に対して、滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを1.2質量部配合した錠剤(直径8mm、厚み4.0mm~4.5mm、湾曲率10、重量195mg~205mg、硬度40N~60N)とし、下記条件で1か月間保存した場合に、前記錠剤の重量変化率が0.2%以下であることを特徴とする顆粒:
保存条件:前記錠剤30錠をガラス軽量規格瓶(No.1K)に入れ、開放系にて、温度40℃、相対湿度75%で保存する。
【請求項2】
前記顆粒における結合剤の含有量が、1質量%未満である請求項1に記載の顆粒。
【請求項3】
前記顆粒における無機添加剤の含有量が、5質量%未満である請求項1から2のいずれかに記載の顆粒。
【請求項4】
前記顆粒が、前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と前記崩壊剤のみからなる請求項1から3のいずれかに記載の顆粒。
【請求項5】
糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む液体を噴霧乾燥造粒し、顆粒を得ることを含み、
前記顆粒が、前記顆粒100質量部に対して、滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを1.2質量部配合した錠剤(直径8mm、厚み4.0mm~4.5mm、湾曲率10、重量195mg~205mg、硬度40N~60N)とし、下記条件で1か月間保存した場合に、前記錠剤の重量変化率が0.2%以下であることを特徴とする顆粒の製造方法:
保存条件:前記錠剤30錠をガラス軽量規格瓶(No.1K)に入れ、開放系にて、温度40℃、相対湿度75%で保存する。
【請求項6】
前記顆粒における結合剤の含有量が、1質量%未満である請求項5に記載の顆粒の製造方法。
【請求項7】
前記顆粒における無機添加剤の含有量が、5質量%未満である請求項5から6のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項8】
前記顆粒が、前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と前記崩壊剤のみからなる請求項5から7のいずれかに記載の顆粒の製造方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれかに記載の顆粒を含むことを特徴とする錠剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品や食品の錠剤を製造するために好適に用いられる顆粒及びその製造方法、並びに前記顆粒を用いた錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品の錠剤の製造方法には、原料を混合後直接打錠する製造方法と、予め原料を造粒しておいて打錠する製造方法がある。予め原料を造粒しておいて打錠する製造方法では、予め造粒することにより、含量均一性が良く、打錠する際の流動性に優れ均一な性能の錠剤が得られるという利点がある。この造粒の方法には、流動層造粒、噴霧乾燥造粒、乾式造粒等種々の方法がある。これらの中でも、噴霧乾燥造粒は生産性の面から有利である。
【0003】
これまでに、水分の存在下、特に口腔内において迅速に崩壊する錠剤を製造するための直接圧縮性マトリックスに関する技術として、所定量の噴霧マンニトール、及び所定量の架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムからなる共混合物であって、BET表面積が1.5m/gを超える共混合物(「顆粒」と称することがある。)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、従来技術における速崩壊性錠剤と比べて、崩壊時間が短く、しかも充分な硬度を有する口腔内速崩壊性錠剤に関する技術として、マンニトールとキシリトールが複合粒子を形成し、無機賦形剤及び崩壊剤が複合粒子中に均質に分散してなる口腔内速崩壊性錠剤用の組成物(「顆粒」と称することがある。)が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、これらの提案の技術の顆粒では、成形性は十分とまでは言えず、また、顆粒を用いて製造した錠剤の硬度、崩壊性についての更なる向上も求められている。更に、錠剤には、優れた保存安定性も求められる。
【0006】
したがって、従来の顆粒よりも優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することが可能な顆粒の提供が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2011-524386号公報
【特許文献2】特開2005-139168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することが可能な顆粒及びその製造方法、並びに前記顆粒を用いた錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、以下のような知見を得た。即ち、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む顆粒であって、前記顆粒が、前記顆粒100質量部に対して、滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを1.2質量部配合した錠剤(直径8mm、厚み4.0mm~4.5mm、湾曲率10、重量195mg~205mg、硬度40N~60N)とし、所定の条件で1か月間保存した場合に、前記錠剤の重量変化率が0.2%以下であると、前記顆粒を用いた錠剤は、成形性が良く、錠剤硬度が高いにも関わらず、口腔内での優れた崩壊性を有し、更には優れた保存安定性も有することを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む顆粒であって、
前記顆粒が、前記顆粒100質量部に対して、滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを1.2質量部配合した錠剤(直径8mm、厚み4.0mm~4.5mm、湾曲率10、重量195mg~205mg、硬度40N~60N)とし、下記条件で1か月間保存した場合に、前記錠剤の重量変化率が0.2%以下であることを特徴とする顆粒である。
保存条件:前記錠剤30錠をガラス軽量規格瓶(No.1K)に入れ、開放系にて、温度40℃、相対湿度75%で保存する。
<2> 前記顆粒における結合剤の含有量が、1質量%未満である前記<1>に記載の顆粒である。
<3> 前記顆粒における無機添加剤の含有量が、5質量%未満である前記<1>から<2>のいずれかに記載の顆粒である。
<4> 前記顆粒が、前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と前記崩壊剤のみからなる前記<1>から<3>のいずれかに記載の顆粒である。
<5> 糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む液体を噴霧乾燥造粒し、顆粒を得ることを含み、
前記顆粒が、前記顆粒100質量部に対して、滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを1.2質量部配合した錠剤(直径8mm、厚み4.0mm~4.5mm、湾曲率10、重量195mg~205mg、硬度40N~60N)とし、下記条件で1か月間保存した場合に、前記錠剤の重量変化率が0.2%以下であることを特徴とする顆粒の製造方法である。
保存条件:前記錠剤30錠をガラス軽量規格瓶(No.1K)に入れ、開放系にて、温度40℃、相対湿度75%で保存する。
<6> 前記顆粒における結合剤の含有量が、1質量%未満である前記<5>に記載の顆粒の製造方法である。
<7> 前記顆粒における無機添加剤の含有量が、5質量%未満である前記<5>から<6>のいずれかに記載の顆粒の製造方法である。
<8> 前記顆粒が、前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と前記崩壊剤のみからなる前記<5>から<7>のいずれかに記載の顆粒の製造方法である。
<9> 前記<1>から<4>のいずれかに記載の顆粒を含むことを特徴とする錠剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することが可能な顆粒及びその製造方法、並びに前記顆粒を用いた錠剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A図1Aは、プラセボ錠剤の硬度を測定した結果を示す図である。
図1B図1Bは、エテンザミド錠剤の硬度を測定した結果を示す図である。
図2A図2Aは、プラセボ錠剤の崩壊試験1(JP崩壊試験)の結果を示す図である。
図2B図2Bは、エテンザミド錠剤の崩壊試験1(JP崩壊試験)の結果を示す図である。
図3A図3Aは、プラセボ錠剤の崩壊試験2(口腔内崩壊試験)の結果を示す図である。
図3B図3Bは、エテンザミド錠剤の崩壊試験2(口腔内崩壊試験)の結果を示す図である。
図4A図4Aは、プラセボ錠剤の経時での錠剤硬度を測定した結果を示す図である。
図4B図4Bは、エテンザミド錠剤の経時での錠剤硬度を測定した結果を示す図である。
図5A図5Aは、プラセボ錠剤の経時での崩壊試験1(JP崩壊試験)の結果を示す図である。
図5B図5Bは、エテンザミド錠剤の経時での崩壊試験1(JP崩壊試験)の結果を示す図である。
図6A図6Aは、プラセボ錠剤の経時での崩壊試験2(口腔内崩壊試験)の結果を示す図である。
図6B図6Bは、エテンザミド錠剤の経時での崩壊試験2(口腔内崩壊試験)の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(顆粒及びその製造方法)
本発明の顆粒は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤と、必要に応じて更にその他の成分とを含む顆粒であり、本発明の顆粒の製造方法により好適に製造することができる。即ち、本発明の顆粒は、噴霧乾燥造粒して得られた顆粒(以下、「噴霧乾燥顆粒」と称することがある。)であることが好ましい。
以下、本発明の顆粒の製造方法の説明と併せて、本発明の顆粒についても説明する。
【0014】
<顆粒の製造方法>
本発明の顆粒の製造方法は、噴霧乾燥造粒工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0015】
<<噴霧乾燥造粒工程>>
前記噴霧乾燥造粒工程は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む液体を噴霧乾燥造粒し、顆粒を得る工程である。
【0016】
-糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む液体-
前記液体(以下、「調製液」と称することがある。)は、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤と、必要に応じて更にその他の成分とを含む。
【0017】
--糖及び/又は糖アルコールからなる糖類--
前記糖類としては、糖及び/又は糖アルコールからなる糖類であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蔗糖、乳糖、果糖、麦芽糖、トレハロース、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、イソマルト、ラクチトール、スクロース、グリセリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、より優れた効果が得られる点で、糖アルコールが好ましく、マンニトールがより好ましい。
前記糖類は、市販品を使用することができる。
【0018】
前記調製液における前記糖類の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0019】
--崩壊剤--
前記崩壊剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルセルロース(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)等のセルロース誘導体、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、コーンスターチ等のデンプンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)、カルボキシメチルセルロース(カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)等のセルロース誘導体が好ましく、さらに、より優れた効果が得られる点で、クロスカルメロースナトリウムがより好ましい。
前記崩壊剤は、市販品を使用することができる。
【0020】
前記調製液における前記崩壊剤の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0021】
--その他の成分--
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、結合剤、無機添加剤、前記糖類以外の賦形剤等の医薬品の添加剤として公知のものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用することができる。
前記調製液におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0022】
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸、ゼラチン、部分α化デンプン、アラビアガム、プルラン、デキストリンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記結合剤は、市販品を使用することができる。
【0023】
前記調製液における前記結合剤の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0024】
前記無機添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルミニウム、マグネシウム、及びカルシウムのいずれかを含有する医薬上許容される無機化合物などが挙げられる。
前記無機添加剤のより具体的な例としては、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ハイドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウムなどが挙げられる。
前記無機添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記無機添加剤は、市販品を使用することができる。
【0025】
前記調製液における前記無機添加剤の含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記糖類以外の賦形剤等の医薬品の添加剤として公知のものとしては、例えば、結晶セルロース、トウモロコシデンプン等の賦形剤、滑沢剤、流動化剤、甘味剤、吸湿剤、除湿剤、コーティング剤、色素、矯味矯臭剤、溶解補助剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記糖類以外の賦形剤等の医薬品の添加剤として公知のものは、市販品を使用することができる。
【0027】
前記調製液における前記糖類以外の賦形剤等の医薬品の添加剤として公知のものの含有量としては、特に制限はなく、顆粒における含有量や噴霧乾燥造粒のし易さなどに応じて適宜選択することができる。
【0028】
前記調製液を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、メタノール等の医薬的に許容される溶媒に上記した各成分を添加、混合する方法などが挙げられる。前記調製液は、添加した各成分が溶解した状態のものであってもよいし、分散した状態のものであってもよい。
前記調製液の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、所望の物性の顆粒を得やすい点で、10mPa・s以下が好ましい。本発明において、粘度とは、温度20℃で、単一円筒形回転粘度計により測定することができる。
【0029】
--噴霧乾燥造粒--
前記噴霧乾燥造粒の方法としては、特に制限はなく、公知の装置を用いて実施することができる。
前記噴霧乾燥造粒の条件としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記噴霧乾燥造粒により得られた造粒物は、必要に応じて篩過してもよい。
【0030】
<<その他の工程>>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と、崩壊剤とを含む液体を調製する調製工程などが挙げられる。
【0031】
<顆粒>
本発明の顆粒は、優れた成形性を有し、かつ、優れた硬度、崩壊性、及び保存安定性を有する錠剤を製造することができる。
【0032】
<<重量変化率>>
前記顆粒は、所定の錠剤とし、所定の条件で1か月間保存した場合の前記錠剤の重量変化率が0.2%以下である。
【0033】
前記所定の錠剤とは、前記顆粒100質量部に対して、滑沢剤であるステアリン酸マグネシウムを1.2質量部配合した錠剤であって、直径8mm、厚み4.0mm~4.5mm、湾曲率10、重量195mg~205mg、硬度40N~60Nである錠剤のことをいう。
【0034】
前記所定の条件とは、前記錠剤30錠をガラス軽量規格瓶(No.1K)に入れ、開放系にて、温度40℃、相対湿度75%で保存することをいう。
【0035】
前記重量変化率としては、0.2%以下であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、より優れた効果が得られる点で、0.20%未満であることが好ましく、0.18%未満であることがより好ましく、0.16%以下であることが特に好ましい。
【0036】
前記顆粒における前記糖類の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、90質量%~99質量%が好ましい。
【0037】
前記顆粒における前記崩壊剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%~10質量%が好ましく、1質量%~5質量%がより好ましい。
【0038】
前記顆粒における前記結合剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1質量%未満が好ましく、前記結合剤を含有しないことが特に好ましい。
【0039】
前記顆粒における前記無機添加剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、前記無機添加剤を含有しないことが特に好ましい。
【0040】
前記顆粒は、前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と前記崩壊剤のみからなるものであることが好ましい。
【0041】
前記顆粒の平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20~100μmが好ましい。本明細書において、平均粒子径とは、体積平均粒子径のことをいう。
【0042】
本発明の顆粒は、主成分の前記糖及び/又は糖アルコールからなる糖類と前記崩壊剤が粒子内にほぼ均一に含有しており、錠剤としたときに、錠剤内に均一に崩壊剤が存在することとなり、口腔内で錠剤に唾液による水分が供給されると、錠剤全体が膨潤して優れた崩壊性を有する。
また、前記顆粒には主成分以外の成分が殆ど含まれないため、水分の錠剤内部への進行を妨げず、崩壊剤の水膨潤を推進することができる。前記結合剤等の水溶性高分子が前記顆粒に含まれていると、水溶性高分子が崩壊剤を分子レベルで崩壊剤を取り囲み、膨潤を妨げる場合がある。
更に、前記顆粒には主成分以外の成分が殆ど含まれないため、前記顆粒が均一ながら粒子内に多くの空間を含み、成形性や錠剤硬度の向上に寄与している。主成分以外の成分が多く含まれたり、前記調製液の粘度が高かったりすると噴霧乾燥時に粒子内を充填しあって、より密な粒子が形成される。粒子が密になると成形性・錠剤硬度が高くならなくなる。
【0043】
本発明の顆粒は、賦形剤等として医薬品や食品の錠剤の製造等に好適に用いることができる。
【0044】
(錠剤)
本発明の錠剤は、本発明の顆粒を少なくとも含み、食品素材又は活性成分や必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0045】
<顆粒>
前記顆粒は、上記した本発明の顆粒である。
前記錠剤における前記顆粒の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%~99.9質量%が好ましく、50質量%~99.9質量%がより好ましく、70質量%~99.9質量%が更に好ましい。
【0046】
<食品素材又は活性成分>
-食品素材-
前記食品素材としては、食品に用いることができるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グルコサミン、アミノ酸、ビタミン類、コンドロイチン、ミネラル類、コラーゲン、ウコン、イチョウ葉、ブルーベリー、大豆イソフラボン、ローヤルゼリー、クロレラなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記食品素材は、市販品を使用することができる。
【0047】
-活性成分-
前記活性成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高血圧薬、狭心薬、気管支拡張薬、向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、催眠鎮静薬、抗パーキンソン薬、アレルギー用薬、歯科口腔用薬、強心薬、解熱鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、制酸薬、生薬、降圧薬、抗生物質、抗菌剤、不整脈用薬、冠血管拡張薬、末梢血管拡張薬、高脂血症用薬、利胆薬、ホルモン薬、痛風治療薬、抗リウマチ薬、化学療法薬、糖尿病用薬、鎮吐薬、抗てんかん薬、交感神経興奮薬、骨粗鬆症用薬、抗悪性腫瘍薬、免疫抑制薬、泌尿器科用薬、胃腸薬、脳代謝改善薬、脳循環改善薬、呼吸促進薬、血管収縮薬、鎮暈薬、去痰薬、中枢神経作用用薬、潰瘍治療薬、胃粘膜修復薬、鎮痛鎮痙薬等に使用される医薬品有効成分などが挙げられる。
具体的には、エテンザミド、アセトアミノフェン、テモカプリル塩酸塩、カベルゴリン、ベシル酸アムロジピン、オメプラゾール、ランソプラゾール、ファモチジン、ラフチジン、エカベトナトリウム、クエン酸モサプリド、レバミピド、ボグリボース、リスペリドン、イミダプリル塩酸塩、メロキシカム、ミルナシプラン塩酸塩、レボフロキサシン、クラリスロマイシン、サルポグレラート塩酸塩、トスフロキサシントシル酸塩、タムスロシン塩酸塩、ミゾリビン、タクロリムス水和物、フルボキサミンマレイン酸塩、グリメピリド、ラモセトロン塩酸塩、ニコランジル、ドネペジル塩酸塩、酒石酸ゾルピデム、ピオグリタゾン塩酸塩、アレンドロン酸ナトリウム水和物、リセドロン酸ナトリウム水和物、アトルバスタチンカルシウム水和物、フルバスタチンナトリウム、ロラタジン、ロサルタンカリウム、パロキセチン塩酸塩水和物、ラベプラゾールナトリウム、リバビリン、コハク酸スマトリプタン、ペロスピロン塩酸塩水和物、フマル酸クエチアピン、オロパタジン塩酸塩、フェキソフェナジン塩酸塩、エバスチン、セフジトレンピボキシル、塩酸セフカペンピボキシル、バルサルタン、ビカルタミド、アカルボースなどが挙げられる。
前記活性成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記活性成分は、市販品を使用することができる。
【0048】
前記錠剤における食品素材又は活性成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1質量%~80質量%が好ましく、0.1質量%~30質量%がより好ましい。
【0049】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した医薬品の添加剤として公知のものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を使用することができる。
【0050】
前記錠剤の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、素錠(裸錠)、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、徐放錠、口腔内崩壊錠(OD錠)、舌下錠、チュアブル錠などが挙げられる。本発明の顆粒は、前記錠剤の中でも、口腔内崩壊錠(「口腔内速崩性錠剤」と称することもある。)に好適に用いることができる。
【0051】
前記錠剤の製造方法としては、本発明の顆粒を用いる以外は、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
【実施例0052】
以下、実施例、比較例、及び参考例を示して本発明を説明するが、本発明は、これらに何ら限定されるものではない。
【0053】
(実施例1)
<調製液の作製>
精製水18,879gとマンニトール(Pearlitol 50C ROQUETTE社製)2,100gを撹拌混合してマンニトールを溶解させた後、この溶液を撹拌しながら崩壊剤であるクロスカルメロースナトリウム(旭化成社製)21.2gを添加して均一な調製液(粘度:4mPa・s)を作製した。
【0054】
<噴霧乾燥>
噴霧乾燥機(OC-16型、大川原化工機社製)を用いて、ディスク式アトマイザ(MC-65)により調製液を供給しながら、142℃の噴霧乾燥雰囲気下にて噴霧乾燥を実施し、噴霧乾燥造粒物を得た。得られた噴霧乾燥造粒物を目開き500μmで篩過し、平均粒子径42μmの実施例1の顆粒を得た。
【0055】
(比較例1)
噴霧乾燥マンニトール(Pearlitol 100SD ROQUETTE社製)495gとクロスカルメロースナトリウム5gとを粉末状態のまま混合して顆粒を得た。
【0056】
(参考例1)
実施例1の調製液に、さらに無機添加剤として無水リン酸水素カルシウム(協和化学工業社製)111.6gを加えて攪拌し、調製液(粘度:6mPa・s)を作製した。
前記調製液を実施例1と同様に噴霧乾燥して参考例1の顆粒(平均粒子径42μm)を得た。
【0057】
(参考例2)
実施例1の調製液に、さらに無水リン酸水素カルシウム21.4gを加えて攪拌し、調製液(粘度:5mPa・s)を作製した。
前記調製液を実施例1と同様に噴霧乾燥して参考例2の顆粒(平均粒子径42μm)を得た。
【0058】
(参考例3)
実施例1の調製液に、さらに結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L、日本曹達社製)21.4gを加えて攪拌し、調製液(粘度:5mPa・s)を作製した。
前記調製液を実施例1と同様に噴霧乾燥して参考例3の顆粒(平均粒子径30μm)を得た。
【0059】
(評価)
<打錠1>
実施例、比較例、及び参考例の各顆粒500gと滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム6gをミクロ型透視式V型混合機(筒井理化学器械社製)にて混合し、得られた粉体をロータリー打錠機(VERGO、菊水製作所社製)にて、回転数30rpmの条件により打錠(打錠圧:3.2kN、3.8kN、4.4kN、6kN、8kN、又は10kN)して、直径8mm、厚み4mm、湾曲率(R)10、200mgのプラセボ錠剤を得た。
但し、参考例3の顆粒を用いた場合には、打錠時に打錠障害(キャッピング)が発生し、プラセボ錠剤が得られなかった。
【0060】
<打錠2>
実施例、比較例、及び参考例の各顆粒450gとエテンザミド(粉末タイプ、山本化学工業社製)50gとをミクロ型透視式V型混合機にて混合した後、滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム6gを加えてミクロ型透視式V型混合機にて混合した。得られた粉体を打錠1と同様の条件(但し打錠圧は、(打錠圧:3.6kN、3.8kN、4.5kN、6kN、8kN、又は10kNとした。)にて製錠し、エテンザミド錠剤を得た。
但し、参考例3の顆粒を用いた場合には、打錠時に打錠障害(キャッピング)が発生し、エテンザミド錠剤が得られなかった。
【0061】
<錠剤硬度>
錠剤硬度測定装置(Tablet Tester 8M、Pharmatron Dr.schleuniger社製)を用いて、製造直後の前記各錠剤の硬度を測定した(n=10)。結果を図1A(プラセボ錠剤)及び1B(エテンザミド錠剤)に示す。図1A及び1B中、縦軸は錠剤硬度、横軸は打錠圧を示し、◆は実施例1の顆粒を用いた錠剤、▲は比較例1の顆粒を用いた錠剤、■は参考例1の顆粒を用いた錠剤、□は参考例2の顆粒を用いた錠剤の結果を示す。
【0062】
<崩壊試験1(JP崩壊試験)>
崩壊錠測定装置(NT-400、富山産業社製)を用い、第17改正日本薬局方の条件で試験液に精製水を用いて、製造直後の前記各錠剤の崩壊時間を測定した(n=6)。結果を図2A(プラセボ錠剤)及び2B(エテンザミド錠剤)に示す。図2A及び2B中、縦軸は崩壊時間、横軸は錠剤硬度を示し、◆は実施例1の顆粒を用いた錠剤、▲は比較例1の顆粒を用いた錠剤、■は参考例1の顆粒を用いた錠剤、□は参考例2の顆粒を用いた錠剤の結果を示す。
【0063】
<崩壊試験2(口腔内崩壊試験)>
口腔内(速)崩壊錠測定装置(トリコープテスタ、岡田精工社製)を用い、吐出速度6.0mL/分の条件で試験液に調製した人工唾液を用いて、製造直後の前記各錠剤の口腔内崩壊時間を測定した(n=5)。結果を図3A(プラセボ錠剤)及び3B(エテンザミド錠剤)に示す。図3A及び3B中、縦軸は口腔内崩壊時間、横軸は錠剤硬度を示し、◆は実施例1の顆粒を用いた錠剤、▲は比較例1の顆粒を用いた錠剤、■は参考例1の顆粒を用いた錠剤、□は参考例2の顆粒を用いた錠剤の結果を示す。
【0064】
<保存安定性>
-物性-
打錠1及び2で製造した錠剤(錠剤硬度:プラセボ錠剤は47N、52N、45N、又は57Nのもの、エテンザミド錠剤は50N、51N、又は53Nのもの)を各30錠ずつガラス軽量規格瓶(No.1K)に取り、開放系にて、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の定める安定性試験ガイドラインに従い、温度40℃、相対湿度75%の恒温恒湿槽で保存し、1週間後及び1か月後の錠剤の硬度と崩壊性を上記した<錠剤硬度>、<崩壊試験1(JP崩壊試験)>、及び<崩壊試験2(口腔内崩壊試験)>と同様にして測定して保存安定性を確認した。
【0065】
図4A(プラセボ錠剤)及び4B(エテンザミド錠剤)に錠剤硬度の測定結果(縦軸:錠剤硬度、横軸:保存期間)を示し、図5A(プラセボ錠剤)及び5B(エテンザミド錠剤)に崩壊試験1の結果(縦軸:崩壊時間、横軸:保存期間)を示し、図6A(プラセボ錠剤)及び6B(エテンザミド錠剤)に崩壊試験2の結果(縦軸:口腔内崩壊時間、横軸:保存期間)を示す。各図中、◆は実施例1の顆粒を用いた錠剤、▲は比較例1の顆粒を用いた錠剤、■は参考例1の顆粒を用いた錠剤、□は参考例2の顆粒を用いた錠剤の結果を示す。
【0066】
イニシャル(製造直後)の錠剤の物性及び保存後の錠剤の安定性をまとめた結果を下記の表1A(プラセボ錠剤)及び1B(エテンザミド錠剤)に示す。
【0067】
なお、イニシャルの錠剤の各評価は下記の評価基準に従って評価した。
〔評価基準〕
・ 成形性
○ ・・・ 硬度が高い錠剤が得られ、成形性が良好である。
△ ・・・ 十分な硬度の錠剤が得られ、成形性が許容範囲内である。
× ・・・ 十分な硬度の錠剤が得られず、成形性が劣る。
・ JP崩壊試験
○ ・・・ 崩壊時間が短く、崩壊性が良好である。
△ ・・・ 崩壊時間が許容範囲内である。
× ・・・ 崩壊時間が長く、崩壊性が劣る。
・ 口腔内崩壊試験
○ ・・・ 崩壊時間が短く、崩壊性が良好である。
△ ・・・ 崩壊時間が許容範囲内である。
× ・・・ 崩壊時間が長く、崩壊性が劣る。
【0068】
また、保存後の錠剤の安定性は、下記の評価基準に従って評価した。
・ 成形性
○ ・・・ 錠剤硬度の経時での変化が小さい。
△ ・・・ 錠剤硬度の経時での変化があるが許容範囲内である。
× ・・・ 錠剤硬度の経時での変化が大きい。
・ JP崩壊試験
○ ・・・ 崩壊時間の経時での変化が小さい。
△ ・・・ 崩壊時間の経時での変化があるが許容範囲内である。
× ・・・ 崩壊時間の経時での変化が大きい。
・ 口腔内崩壊試験
○ ・・・ 崩壊時間の経時での変化が小さい。
△ ・・・ 崩壊時間の経時での変化があるが許容範囲内である。
× ・・・ 崩壊時間の経時での変化が大きい。
【0069】
【表1A】
【0070】
【表1B】
【0071】
表1A及び1Bに示したように、実施例1の顆粒を用いた場合は、イニシャルの成形性及び崩壊性のいずれも良好であった。また、保存後では崩壊性がやや低下したものの許容範囲内であり、錠剤硬度の上昇も抑えられ、保存安定性にも優れた錠剤が得られることが確認された。
一方、比較例1の顆粒を用いた場合は、イニシャルの崩壊性は良好であったものの、成形性がやや低く、また、保存後では錠剤の硬度上昇が大きく、崩壊性も大きく低下し、保存安定性が非常に劣ることが確認された。
参考例1の顆粒を用いた場合は、イニシャルの成形性は良好であったものの、崩壊性が劣っていた。なお、参考例1の顆粒を用いた場合では、保存安定性は良好な結果となったが、これはイニシャルの物性を維持していただけであり、崩壊性自体は劣る(崩壊時間が長い)ものであった。
参考例2の顆粒を用いた場合は、参考例1の顆粒を用いた場合と比較して、イニシャルの成形性と口腔内崩壊時間が僅かに低下した。また、保存後では、錠剤硬度の上昇は抑えられていたものの、崩壊性は低下した。
【0072】
-吸湿性-
保存前と保存1か月後の錠剤の重量(30錠の合計重量)を測定し、下記式により錠剤の重量変化率を算出した。結果を表2A(プラセボ錠剤)及び2B(エテンザミド錠剤)に示す。
錠剤の重量変化率(%)={(B-A)/A}×100
上記式中、Aは保存前の錠剤の重量を表し、Bは保存後の錠剤の重量を表す。
【0073】
【表2A】
【0074】
【表2B】
【0075】
表2A及び2Bに示したように、実施例1の顆粒を用いた錠剤の重量増加率は、比較例1の顆粒を用いた錠剤と比較して、低かった。上記結果から、吸湿性の差が保存安定性に影響していると示唆された。また、比較例1と比べて、実施例1で吸湿性が低くなったのは、造粒時に崩壊剤がマンニトールで被覆されたためと考えられる。一方、比較例1では、崩壊剤がむき出しの状態で存在するため、崩壊剤が吸湿し、保存時の安定性が低下したと考えられる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B