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特開2022-130089排水器具取付構造、水槽及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130089
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】排水器具取付構造、水槽及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/18 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
E03C1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029060
(22)【出願日】2021-02-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年4月10日に株式会社オンリーワンクラブのオンリーワンガーデンリビングG13、2020年3月発行に掲載 令和2年5月25日に株式会社MIZNOのウェブサイト1(https://www.facebook.com/sazendo)に掲載 令和2年6月6日に株式会社MIZNOのウェブサイト2(https://sazendo.shop-pro.jp/?mode=f15)に掲載 令和2年6月6日に株式会社MIZNOのウェブサイト3(https://www.rakuten.ne.jp/gold/sazendoshop/)に掲載 令和2年6月6日に株式会社MIZNOのウェブサイト4(https://store.shopping.yahoo.co.jp/yafoo-sazendo/)に掲載
(71)【出願人】
【識別番号】514267629
【氏名又は名称】株式会社MIZNO
(74)【代理人】
【識別番号】100187517
【弁理士】
【氏名又は名称】森 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】水野 典康
(72)【発明者】
【氏名】西川 真也
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061BA01
2D061BA04
2D061BA08
2D061BA10
2D061BB10
2D061BC01
2D061BG01
2D061DE01
2D061DE13
(57)【要約】
【課題】水漏れの発生を防止することができる排水器具取付構造、この排水器具取付構造を適用できる水槽及びその製造方法を提供する。
【解決手段】水槽は、水を流す或いは貯留する槽体10と、槽体10に開設する排水口11に設ける目皿取付部20とを備えている。目皿取付部20は、槽体10の排水口11の周面に設けられ設備ユニット用排水器具を挿入可能な貫通部を有する本体21と、本体21の上部に形成され上方から本体21に挿入される設備ユニット用排水器具のストレーナ受け金具Dを載置する受け部22と、受け部22の表面積よりも大きい面積を有し本体21に設けられている突出部23とを備えている。目皿取付部20の突出部23は硬化されたセメント含有部30で被覆されている。本体21の外周面及び突出部23の下面にスチレン系樹脂製発泡層を含有する断熱材40が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備ユニット用排水器具と、
水を流す或いは貯留する槽体に開設する排水口の周面に設けられ前記排水器具を挿入可能な貫通部を有する本体と、
該本体の上部に形成され上方から前記本体に挿入される前記排水器具を載置する受け部と、
該受け部の表面積よりも大きい面積を有し前記本体に設けられている突出部とを備えており、
前記突出部は硬化されたセメント含有部で被覆されていることを特徴とする排水器具取付構造。
【請求項2】
前記本体の外周面及び前記突出部の下面にスチレン系樹脂製発泡層を含有する断熱材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の排水器具取付構造。
【請求項3】
前記本体の外周面及び前記突出部の下面と前記断熱材との間に水密材を介在させることを特徴とする請求項2記載の排水器具取付構造。
【請求項4】
前記水密材は、変性シリコン系のシーリング材であることを特徴とする請求項3記載の排水器具取付構造。
【請求項5】
前記断熱材を芯体とし、該芯体をモルタル又はコンクリートで包囲固化してなることを特徴とする請求項2~4の何れかに記載の排水器具取付構造。
【請求項6】
水を流す或いは貯留する槽体と、
該槽体に開設する排水口の周面に設けられ設備ユニット用排水器具を挿入可能な貫通部を有する本体と、
該本体の上部に形成され上方から前記本体に挿入される前記排水器具を載置する受け部と、
該受け部の表面積よりも大きい面積を有し前記本体に設けられている突出部とを備えており、
前記突出部は硬化されたセメント含有部で被覆されていることを特徴とする水槽。
【請求項7】
スチレン系樹脂製発泡層を含有する断熱材に貫通孔を形成する工程と、
設備ユニット用排水器具を挿入可能な貫通部を有する本体と、該本体の上部に形成され上方から前記本体に挿入される前記排水器具を載置する受け部と、該受け部の表面積よりも大きい面積を有し前記本体に設けられている突出部とを備える目皿取付部を形成する工程と、
前記貫通孔に前記目皿取付部の本体を挿入し前記本体の外周面及び前記突出部の下面に前記断熱材を配置する工程と、
前記目皿取付部と前記断熱材との間に水密材を介在させる工程と、
前記突出部及び前記断熱材をモルタル又はコンクリートで包囲した後固化させる工程とを有することを特徴とする水槽の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽、浴槽、流し、洗面台、洗面ボウル、シンクその他の水槽に排水器具を取り付けるための排水器具取付構造、この排水器具取付構造を適用できる水槽及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流しは、型枠を組んでコンクリートを流し込むか、モルタルで固定するなどして槽体を形成し、必要に応じて槽体の表面をタイルで仕上げるなどしていた。その槽体の底部の適所に排水器具が固定され、排水配管が接続されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭28-007564号公報
【0004】
しかしながら、排水器具は金属で製造されているのに対し、槽体はコンクリート又はモルタルで製造されているので、コンクリート又はモルタル製の槽体と金属製の排水器具間に剥離等の隙間が生じ、水漏れが生ずるおそれがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、水漏れの発生を防止することができる排水器具取付構造、この排水器具取付構造を適用できる水槽、又はその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る排水器具取付構造は、設備ユニット用排水器具と、水を流す或いは貯留する槽体に開設する排水口の周面に設けられ前記排水器具を挿入可能な貫通部を有する本体と、該本体の上部に形成され上方から前記本体に挿入される前記排水器具を載置する受け部と、該受け部の表面積よりも大きい面積を有し前記本体に設けられている突出部とを備えており、前記突出部は硬化されたセメント含有部で被覆されている構成である。
【0007】
また、本発明の一態様に係る排水器具取付構造は、前記本体の外周面及び前記突出部の下面にスチレン系樹脂製発泡層を含有する断熱材が設けられている構成であってもよい。
【0008】
さらに、本発明の一態様に係る排水器具取付構造は、前記本体の外周面及び前記突出部の下面と前記断熱材との間に水密材を介在させる構成であってもよい。
【0009】
さらにまた、本発明の一態様に係る排水器具取付構造は、前記水密材は、変性シリコン系のシーリング材である構成であってもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る排水器具取付構造は、前記断熱材を芯体とし、該芯体をモルタル又はコンクリートで包囲固化してなる構成であってもよい。
【0011】
本発明の他の態様に係る水槽は、水を流す或いは貯留する槽体と、該槽体に開設する排水口の周面に設けられ設備ユニット用排水器具を挿入可能な貫通部を有する本体と、該本体の上部に形成され上方から前記本体に挿入される前記排水器具を載置する受け部と、該受け部の表面積よりも大きい面積を有し前記本体に設けられている突出部とを備えており、前記突出部は硬化されたセメント含有部で被覆されている構成である。
【0012】
本発明のさらに他の態様に係る水槽の製造方法は、スチレン系樹脂製発泡層を含有する断熱材に貫通孔を形成する工程と、設備ユニット用排水器具を挿入可能な貫通部を有する本体と、該本体の上部に形成され上方から前記本体に挿入される前記排水器具を載置する受け部と、該受け部の表面積よりも大きい面積を有し前記本体に設けられている突出部とを備える目皿取付部を形成する工程と、前記貫通孔に前記目皿取付部の本体を挿入し前記本体の外周面及び前記突出部の下面に前記断熱材を配置する工程と、前記目皿取付部と前記断熱材との間に水密材を介在させる工程と、前記突出部及び前記断熱材をモルタル又はコンクリートで包囲した後固化させる工程とを有する方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る排水器具取付構造によれば、上記構成としたので、水漏れの発生を防止することができるという効果を奏する。
【0014】
本発明の他の態様に係る水槽によれば、上記構成としたので、水漏れの発生を防止することができるという効果を奏する。
【0015】
本発明のさらに他の態様に係る水槽の製造方法によれば、上記水槽を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の水槽を示す斜視図である。
図2図1の水槽に備える本発明の一実施形態の排水器具取付構造を示す一部拡大断面図である。
図3図2の水槽に排水器具のストレーナ受け金具を取り付けた状態を示す一部拡大断面図である。
図4図1の水槽を一部破断した全体斜視図である。
図5】本発明の一実施形態の水槽の製造方法を示すフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態の排水器具取付構造を水槽に形成する製造方法を示す一部拡大断面図である。図6(a)~(f)は、工程の一部を示す一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、図1図6を参照しつつ、詳細に説明する。本実施形態の水槽100は、本発明の一実施形態である排水器具取付構造を備えている。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。
【0018】
水槽100は、コンクリート又はモルタル上にタイル貼りがなされたシンクである。水槽100は、槽体10と、目皿取付部20と、セメント含有部30と、断熱材40と、水密材50とを備えている。
【0019】
槽体10は、図1に示すように、槽体10の底面に、排水口11が開設されている。槽体10は、水を流す或いは水を貯留する。排水口11には目皿取付部20が設けられている。
【0020】
目皿取付部20は、合成樹脂製であり、より好ましくは、硬質の合成樹脂製が好ましい。また、目皿取付部20は、図2に示すように、本体21と、受け部22と、突出部23と、立設部24とを備えている。目皿取付部20は、一体成型品であり、例えば、プラスチック加工により、本体21と受け部22と突出部23と立設部24とが一体成形されている。
【0021】
本体21は、上下に貫通する貫通部25を中央に有し、略円筒状に形成されている。本体21は、槽体10の排水口11の周面に設けられている。本体21は、排水口11において、下部が槽体10の底面裏側と同じ高さ又は底面裏側から下方へ突出している。貫通部25には、図3に示すように、排水器具のストレーナ受け金具Dを挿入可能である。なお、排水器具は、JIS規格品であり、より具体的には、設備ユニット用排水器具である。
【0022】
また、本体21は、排水器具のストレーナ受け金具Dが上方から挿入された場合、水平若しくは左右方向において、ストレーナ受け金具Dと槽体間に介在する。また、ストレーナ受け金具Dが槽体10に取り付けられたときに、本体21は、上下方向において、ストレーナ受け金具DとスリップパッキンPとの間に介在する。なお、ストレーナ受け金具Dは、スリップパッキンPを挟んでロックナイトNが締め込まれている。
【0023】
受け部22は、所定の面積を有する平面視環状であり、本体21の上部に、かつ、貫通部25の外周に形成されている。受け部22は、槽体10の表面より低い位置に配設される。ストレーナ受け金具Dが上方から挿入された場合に、ストレーナ受け金具Dを載置し、載置された状態でストレーナ受け金具Dを保持する。なお、受け部22の外周に立設部24が設けられている場合には、受け部22は立設部24で囲まれている。
【0024】
突出部23は、本体21の上部外周から側方へ突出しており、受け部22の表面積よりも大きい面積を有する平面視環状である。突出部23は、本体21に設けられている。さらに、突出部23は、硬化されたセメント含有部30で被覆されている。
【0025】
立設部24は、受け部22と突出部間に設けられており、上方へ突出し、平面視環状で、所定高さを有する筒状に形成されている。立設部24の高さは、ストレーナ受け金具Dが受け部22に載置されているときのストレーナ受け金具D又は目皿Cの頂部の高さより低い。また、立設部24でストレーナ受け金具Dを受けることも可能である。
【0026】
セメント含有部30は、モルタル又はコンクリートなどに用いられるセメントを含有し、所定厚みを有する層状に形成されている。特に、モルタルの場合、カチオン系モルタルが好ましい。セメント含有部30は、突出部23を被覆する。また、セメント含有部30は、断熱材40の表裏両面を包囲し、固化されていてもよい。
【0027】
また、セメント含有部30の表面には、複数のタイル12が張られ、タイル間には、目地材による目地13が設けられている。なお、タイル12、目地13及び目皿取付部20の表面には、ガラスコーティングが施されていてもよい。
【0028】
断熱材40は、断熱性を有するものであり、JIS規格に準拠した建築用断熱材が好ましい。断熱材40は、より好ましくは、発泡プラスチック系断熱材が好ましく、さらに好ましくは、スチレン系樹脂製発泡層を含有する押出法ポリスチレンフォーム断熱材が好ましい。
【0029】
また、断熱材40は、本体21の貫通方向の厚みと同じ厚み又は薄い所定厚みを有する平板状に形成されているものが好ましく、少なくとも本体21の外周面及び突出部23の下面に設けられる。さらに、断熱材40に傾斜部41を設けてもよい。傾斜部41は、突出部23の周囲から本体21側に向かって下がる所定の勾配を有するものである。
【0030】
水密材50は、水密性、気密性を有するものであり、JIS規格に準拠したシーリング材が好ましい。水密材50は、より好ましくは、変性系シリコン系のシーリング材が好ましく、さらに好ましくは、変性シリコン系のシーリングコークが好ましい。水密材50は、目皿取付部20と断熱材40との間に介在する。
【0031】
また、水槽100は、図4に示すように、槽体10の全体にわたって、断熱材40を芯体とし、この芯体をモルタル又はコンクリートで包囲固化してなるようにしてもよい。芯体として、複数の平板状の断熱材40を組み合わせて構成することができる。この場合に、芯体である断熱材40の繋ぎ目、コーナー部に水密材50を設けてもよい。
【0032】
次に、図5及び図6を参照して、本実施形態の水槽100の製造方法及び排水器具取付構造の形成方法について、説明する。図5は、その製造方法を示すフローチャートであり、図6(a)~(f)は、その形成方法の工程を示す一部拡大断面図である。水槽100の製造方法は、図5に示すように、ステップS101~ステップS110を有する。
【0033】
ステップS101のスタート後、まず、ステップS102において、断熱材40の切り出し工程が行われる。即ち、ステップS102では、芯体として用いられる断熱材40を電熱線で槽体10の寸法に合わせて切り出す。
【0034】
ステップS103において、排水の勾配調整工程が行われる。即ち、ステップS103では、図6(a)に示すように、切り出された断熱材40の一に貫通孔42を形成し、縁部から貫通孔42に向けて所定の排水の勾配を有する傾斜部41を断熱材40に形成する。
【0035】
ステップS104において、目皿取付部20の形成工程が行われる。即ち、ステップS104では、図6(b)に示すように、目皿取付部20をプラスチック加工により形成する。次いで、ステップS103で形成された貫通孔42に目皿取付部20の本体21を挿入し、図6(c)に示すように、貫通孔42を有する断熱材40に目皿取付部20を取り付ける。
【0036】
ステップS105において、防水処理工程が行われる。即ち、ステップS105では、水密材50を目皿取付部20と断熱材間に設け、図6(d)に示すように、目皿取付部20と断熱材40とが接着される。ここで、断熱材40を芯体とする場合には、複数の断熱材40を組み合わせて槽体10の芯体の形状に固定する。ここでは、例えば、ドライバーでビス、ネジ、コーススレッドを使ってつなぐ接合方法や、接着剤でつなぐ接合方法を適用できる。
【0037】
ステップS106において、強度向上処理工程が行われる。即ち、ステップS106では、断熱材40を芯体とする場合に、断熱材40の曲がり又は引っ張りに対する強度の少なくとも一方を上げる処理や、断熱材40の角の強度を上げる処理が行われる。例えば、芯体にメッシュテープを巻回することでメッシュテープを用いた曲がり又は引張強度の少なくとも一方の向上を図ることができる。また、芯体にコーナー定規を付けることで過度の強度向上を図ることができる。
【0038】
ステップS107において、セメント含有部30の形成工程が行われる。即ち、ステップS107では、図6(e)に示すように、突出部23及び断熱材40の表裏両面にモルタル又はコンクリートを所定厚みで均等に塗り込む。
【0039】
ステップS108において、タイル12の貼付け工程が行われる。次いで、ステップS109において、目地入れ工程が行われる。そして、ステップS110で、図6(f)に示すように、水槽100の製造が完成する。
【0040】
さらに、図6(a)~図6(f)を参照して、本実施形態の排水器具取付構造を水槽100に形成する方法について、説明する。図6(a)~図6(c)は、図5のステップS101~ステップS104に対応する。
【0041】
まず、本方法では、図6(a)に示すように、断熱材40に貫通孔42を形成し、断熱材40に傾斜部41を形成する。次に、図6(b)に示すように、目皿取付部20を形成する。さらに、貫通孔42に上方から目皿取付部20を本体21側を下方として挿入する。次いで、図6(c)に示すように、目皿取付部20を断熱材上に載置し、本体21の外周面及び突出部23の下面に断熱材40を配置する。
【0042】
次いで、本方法では、図6(d)に示すように、目皿取付部20と断熱材40との間に水密材50を介在させる。なお、図6(d)は、図5のステップS105の防水処理工程に対応する。
【0043】
そして、図6(e)に示すように、突出部23及び断熱材40をモルタル又はコンクリートで包囲した後固化させる。なお、図6(e)は、図5のステップS107のセメント含有部30の形成工程に対応する。
【0044】
さらに、セメント含有部30の表面に、図6(f)に示すように、複数のタイル12を貼り、タイル間及びタイル12と立設部24との間に、目地13を設ける。なお、図6(f)は、図5のステップS108~ステップS110に対応する。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の水槽100によれば、槽体10と目皿取付部20とを備えているので、目皿取付部20を介して槽体10にストレーナ受け金具Dを取り付けることができる。そして、ストレーナ受け金具Dを介して、JIS規格に準拠した排水器具を接続することができる。また、排水器具、ストレーナ受け金具Dを着脱自在に槽体10に取り付けることができる。取り外しも容易にできる。また、排水器具、ストレーナ受け金具Dの交換も容易にできる。
【0046】
また、本実施形態の排水器具取付構造によれば、本体21と、受け部22と、突出部23とを備えており、突出部23は硬化されたセメント含有部30で被覆されているので、水漏れの発生を防止することができる。しかも、排水器具のストレーナ受け金具Dを槽体10に取り付けたり、交換ができる。また、水槽100は、本実施形態の排水器具取付構造を備えているので、同様にして、水漏れの発生を防止することができる。
【0047】
さらに、本実施形態の排水器具取付構造又は水槽100によれば、本体21の外周面及び突出部23の下面に断熱材40が設けられているので、更に、水漏れの発生を防止することができる。特に、断熱材40がスチレン系樹脂製発泡層を含有する場合には、水密性、気密性に優れる。断熱材40に傾斜部41を備えている場合には、排水性に優れる。
【0048】
さらにまた、本実施形態の排水器具取付構造又は水槽100によれば、本体21の外周面及び突出部23の下面と断熱材40との間に水密材50を介在させるので、防水性に優れる。特に、水密材50が、変性系シリコン系のシーリング材である場合には、断熱材40との接着性に優れる。さらに、断熱材40がスチレン系樹脂製発泡層を含有する場合には、さらに接着性、水密性、気密性、防水性に優れ、水漏れ効果が向上する。モルタル又はコンクリートとの接着性もよい。
【0049】
本実施形態の排水器具取付構造又は水槽100によれば、断熱材40を芯体とし、この芯体をモルタル又はコンクリートで包囲固化してなるので、水槽100を軽量とすることができる。ここで、芯体にメッシュテープが巻回されている場合には、曲がり又は引張強度の少なくとも一方に優れる。また、芯体にコーナー定規が付いている場合には、角の強度に優れる。
【0050】
本実施形態の排水器具取付構造又は水槽100によれば、立設部24を備えているので、モルタルの塗り込み又はコンクリートを打設する際に高さの目安や指標とすることができる。また、モルタルの塗り込み又はコンクリートの打設の際、受け部22へのモルタル又はコンクリートの流入を防止することができる。さらに、断熱材40を芯体とし、芯体の継ぎ目、コーナー部に水密材50で防水処理が施されている場合には、当該箇所の隙間が塞がれ、水漏れの発生が防止できる。
【0051】
本実施形態の排水器具取付構造又は水槽100によれば、防水及び排水がしっかりしているので、水槽100を屋内でも使うことができる。また、防水及び排水がしっかりしているので、ゴム栓で短時間の水溜が可能である。さらに、本実施形態の排水器具取付構造又は水槽100によれば、水槽100を軽量とすることができるので、移動性に優れ、持ち運びが容易にできる。また、水槽100の海外発送をすることができる。
【0052】
また、断熱材40に傾斜部41を設けた場合には、セメント含有部30を断熱材40上に所定厚みの形成することで、傾斜部41の傾斜と同様の排水のための勾配をセメント含有部上に容易に形成することができる。
【0053】
なお、水槽100によれば、セメント含有部30の表面にタイル貼りがなされているので、意匠性に優れる。さらに、水槽100によれば、表面にガラスコーティングが施されている場合には、傷つきを防止でき、汚れが落ちやすい。
【0054】
また、本実施形態の水槽100の製造方法によれば、防水性を有する水槽100を容易に製造することができる。また、排水の勾配調整工程を有する場合には、槽体10への追加の勾配加工が不要となり、排水性に優れる排水器具取付構造又は水槽100を容易かつ迅速に製造することができる。
【0055】
また、水槽100の製造方法によれば、強度向上処理工程を有する場合、曲がり及び/又は引張強度に優れる水槽100を製造することができる。さらに、角の強度に優れる水槽100を製造することができる。
【0056】
本実施形態の排水器具取付構造の形成方法によれば、自宅やオフィス、店舗の水槽、浴槽、流し、洗面台、洗面ボウル、シンク、手洗器、キッチンシンク、浴室用浴槽など様々な用途の屋内外のものに、本実施形態の排水器具取付構造を形成することができる。
【0057】
(実施例)
上記した実施形態の製造方法を用いて、実施形態の排水器具取付構造を適用した水槽を製造した。具体的には、まず、断熱材としてスチレン系樹脂製発泡層を含有する押出法ポリスチレンフォーム断熱材を用い、電熱線で槽体の寸法に合わせて切り出した。一の断熱材の適所に貫通孔を形成し、貫通孔への排水の勾配が所定の下り勾配となるように、ヤスリで断熱材の表面を削った。
【0058】
この断熱材に目皿取付部を取付け、目皿取付部と断熱材との間に水密材を介在させた。次いで、目皿取付部の突出部と断熱材の表裏両面に、カチオン系モルタルを所定厚みで塗布した。カチオン系モルタルは、普通ポルトランドセメント、セメント混和剤、珪砂を含有し、混ぜたものである。なお、その他の工程は、上記実施形態の製造方法のとおりである。
【0059】
(比較例)
断熱材やカチオン系モルタルを用いることなく、ポリマーセメントモルタルを、型に流し込んで、ワイヤメッシュを有するモルタル製槽体を形作った。このとき、このモルタル製槽体の底部表面に強めの勾配を付けた(追加の勾配加工)。次いで、このモルタル製槽体の底部の適所に有する排水口に、排水用目皿として塩ビ樹脂製管継手ソケットを取り付けた。
【0060】
このモルタル製槽体と塩ビ樹脂製管継手ソケット間に接着剤を介在させた(防水加工)。次いで、ワイヤメッシュを有するモルタル製槽体の表面に、タイル張りと目地入れを施し、比較例の水槽を製造した。なお、比較例の水槽は、実施例の水槽と同サイズである。
【0061】
上記の実施例および比較例の水槽について、重量を測定した。この測定結果とともに、海外発送の可否、勾配加工の追加の要否、設置可能場所、排水器具の取付の可否、排水用目皿又は排水器具の交換可否、その他の特徴を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
比較例では、槽体をワイヤメッシュとポリマーセメントモルタルで製作した。このため、モルタルの性質上、水分が漏れることはないが、槽体の底面の裏部分に水分が浸み込んでいく可能性がある。湿気防止のため槽体の下側を露出するよう設置する必要がある。
【0064】
これに対し、実施例では、槽体をスチレン系樹脂製発泡層を含有する押出法ポリスチレンフォーム断熱材とカチオン系モルタルで製作した。このため、より密着性が得られ、ひび割れを防止することができる。また、乾燥性もよく、作業性に優れる。
【0065】
また、比較例では、水槽を屋外使用する場合、風や太陽の力で自然に乾燥するが、屋内使用する場合は、乾燥がしにくい環境の為、槽体内部でのカビの発生や水分の浸透が懸念される。また、吸水性があるため、水槽の屋外使用が推奨される。さらに、排水の流れをよくするために少なくとも強めに追加の勾配加工が必要となる。必要に応じて防水加工も必要となる。
【0066】
これに対し、実施例では、水槽は防水性、排水性に優れるので、屋内でも使用することができる。また、実施例では、実施例以外の自由な寸法での排水器具取付構造を採用することができる。例えば、設置場所に応じた寸法の水槽を製造することができる。この場合には、比較例の型には今まで使えなかったアンティークタイルなども使うことができる。
【0067】
(本発明の変形例)
なお、本発明の排水器具取付構造、水槽及びその製造方法に係る構成は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、槽体、目皿取付部、セメント含有部、断熱材等の形状、構造に係る構成又は各工程について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で必要に応じ適宜変更可能である。
【0068】
例えば、本発明に係る水槽は、上記実施形態の如く、コンクリート又はモルタル上にタイル貼りがなされたシンクに何ら限定されず、例えば、コンクリート又はモルタル製でなくてもよいし、タイル貼りがなされてなくてもよい。また、シンクに限定されず、その他の水槽、浴槽、流し、洗面台、洗面ボウル、手洗器等であってもよい。また、その形状は、図示した形状に何ら限定されず、種々の形状に適用できる。
【0069】
また、本発明に係る排水器具取付構造又は水槽は、上記実施形態の如く、立設部を備えるものに何ら限定されず、立設部を備えず受け部と突出部とを備えているものであってもよい。また、目皿取付部は本体と受け部と突出部と立設部とが一体成形されているものに何ら限定されず、例えば、本体と受け部が別体で、本体と突出部とが一体に形成されているものであってもよい。
【0070】
さらに、本発明に係る排水器具取付構造又は水槽は、上記実施形態の如く、受け部は、環状のものや、また、立設部によって周縁が囲まれたものに何ら限定されるものではなく、本体の上部に形成され排水器具を載置するものであればよい。
【0071】
さらにまた、本発明に係る排水器具取付構造又は水槽は、上記実施形態の如く、突出部が本体の上部外周から側方へ突出した平面視環状のものに何ら限定されるものではなく、例えば、断熱材の傾斜部に沿って傾斜する羽根形状のものであってもよい。また、本体の上部外周から突出するものや、突出方向が側方に限定されるものではなく、例えば、斜め上方や斜め下方に突出していてもよい。
【0072】
本発明に係る排水器具取付構造又は水槽は、上記実施形態の如く、セメント含有部が断熱材の表裏両面を包囲し、固化されているものであってもよいが、何らこれに限定されず、セメント含有部は少なくとも突出部を被覆するものであればよい。また、セメント含有部の表面に、複数のタイルと目地が設けられているものに限定されず、例えば、槽体の表裏両面がセメント含有部で形成されていてもよい。
【0073】
また、本発明の排水器具取付構造又は水槽は、上記実施形態の如く、防水処理を施しているものに限定されず、屋外使用の場合は、必ずしも防水処理を施すことなく使用することができる。
【0074】
さらに、本発明の排水器具取付構造又は水槽は、断熱材が芯体として槽体全体にわたって設けられているものに何ら限定されず、断熱材は少なくとも本体の外周面及び突出部の下面に設けられていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
自宅やオフィス、店舗の水槽、浴槽、流し、洗面台、洗面ボウル、シンクなどに適用され得る排水器具取付構造、これを備える水槽であるが、屋外又は屋内に設置して使用することができ、その他、手洗器、キッチンシンク、浴室用浴槽など屋内の特定の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0076】
10 槽体
11 排水口
20 目皿取付部
21 本体
22 受け部
23 突出部
25 貫通部
30 セメント含有部
40 断熱材
42 貫通孔
50 水密材
100 水槽
D 排水器具のストレーナ受け金具(設備ユニット用排水器具)
図1
図2
図3
図4
図5
図6