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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130091
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/08 20060101AFI20220830BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20220830BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
B60C9/08 J
B60C11/03 100A
B60C9/18 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029062
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】下村 和生
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC05
3D131BC31
3D131BC42
3D131DA09
3D131DA15
3D131DA33
3D131DA34
3D131EB11X
(57)【要約】
【課題】軽量化を図るとともにエンベロープ特性を向上することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】実施形態の空気入りタイヤ10において、カーカスプライ20は、一対のビードコア18間に掛け渡された第1プライ50と、そのタイヤ外面側に配置されてトレッド16に位置する一端56Eから両側のサイドウォール14を経て両側のビード12にそれぞれ延在しビードコア18で折り返された一対のプライ片56からなる第2プライ52と、を含む。各プライ片56の一端56Eは、ショルダー主溝40よりもタイヤ幅方向WD外側かつベルト22の幅方向外端22Aよりもタイヤ幅方向WD内側に位置する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビードコアと、有機繊維コードを含むカーカスプライと、ベルトと、前記ベルトのタイヤ半径方向外側に設けられたトレッドゴムと、を備え、
前記トレッドゴムには、ショルダー陸部とそのタイヤ幅方向内側の陸部とを区画するタイヤ周方向に延びる一対のショルダー主溝が設けられ、
前記カーカスプライは、前記一対のビードコア間に掛け渡された第1プライと、前記第1プライのタイヤ外面側に配置されてトレッドに位置する一端から両側のサイドウォールを経て両側のビードにそれぞれ延在し前記ビードコアで折り返された一対のプライ片からなる第2プライと、を含み、
前記第2プライの各プライ片の前記一端が、前記ショルダー主溝よりもタイヤ幅方向外側かつ前記ベルトの幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に位置する、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ベルトが、最大幅を持つ第1ベルトと、前記第1ベルトのタイヤ半径方向外側に配置された第2ベルトと、を含み、前記第2プライの各プライ片と前記第1ベルトとの重なり量が5mm以上である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2プライの各プライ片と前記第1ベルトとの重なり量が5mm以上50mm以下である、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ベルトが、最大幅を持つ第1ベルトと、前記第1ベルトのタイヤ半径方向外側に配置された第2ベルトと、を含み、前記第2ベルトの幅方向外端からの前記第1ベルトの延出量が4mm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ベルトが、最大幅を持つ第1ベルトと、前記第1ベルトのタイヤ半径方向外側に配置された第2ベルトと、を含み、前記第2プライの各プライ片と前記第2ベルトとの重なり量が3mm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤに関し、特許文献1には、一対のビードコア間に掛け渡されたカーカスプライを備えた空気入りタイヤにおいて、カーカスプライを2枚以上で構成し、ベルト側のカーカスプライをセンター側が除去された中抜きプライとすることが開示されている。特許文献1では、カーカスプライを2枚以上で構成したものにおいて、軽量化により転がり抵抗を低下させつつ、凹部を有するバットレス部の耐カット性を向上させるために、中抜きプライを少なくともバットレス部の凹部に対応する位置に配置し、中抜きプライの内端をトレッド部の接地端に対応する位置とインナーライナーの湾曲部の内端に対応する位置との間に位置させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-109517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように特許文献1において、中抜きプライの端部の位置は、転がり抵抗の低下とバットレス部の耐カット性の観点から検討されており、エンベロープ特性の観点からの検討はなされていない。カーカスプライは補強材であることから、トレッドに存在するとトレッドが硬くなりエンベロープ特性を低下させる要因になる。そのため、カーカスプライを2枚以上として中抜きプライを設ける場合であっても、エンベロープ特性の観点から中抜きプライの端部位置を検討することが望まれる。ここで、エンベロープ特性とは、タイヤが道路の継ぎ目や段差などの小さな突起を乗り越すときにトレッドが変形して突起を包み込む特性であり、エンベロープ特性を向上することで路面からの衝撃を吸収して乗り心地性を向上することができる。
【0005】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、軽量化を図るとともにエンベロープ特性を向上することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤは、一対のビードコアと、有機繊維コードを含むカーカスプライと、ベルトと、前記ベルトのタイヤ半径方向外側に設けられたトレッドゴムと、を備える。前記トレッドゴムには、ショルダー陸部とそのタイヤ幅方向内側の陸部とを区画するタイヤ周方向に延びる一対のショルダー主溝が設けられている。前記カーカスプライは、前記一対のビードコア間に掛け渡された第1プライと、前記第1プライのタイヤ外面側に配置されてトレッドに位置する一端から両側のサイドウォールを経て両側のビードにそれぞれ延在し前記ビードコアで折り返された一対のプライ片からなる第2プライと、を含む。そして、前記第2プライの各プライ片の前記一端が、前記ショルダー主溝よりもタイヤ幅方向外側かつ前記ベルトの幅方向外端よりもタイヤ幅方向内側に位置する。
【0007】
本実施形態においては、前記ベルトが、最大幅を持つ第1ベルトと、前記第1ベルトのタイヤ半径方向外側に配置された第2ベルトと、を含んでもよい。その場合、前記第2プライの各プライ片と前記第1ベルトとの重なり量が5mm以上でもよく、また該重なり量が5mm以上50mm以下でもよい。また、前記第2ベルトの幅方向外端からの前記第1ベルトの延出量が4mm以上でもよい。また、前記第2プライの各プライ片と前記第2ベルトとの重なり量が3mm以上でもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態に係る空気入りタイヤであると、カーカスプライとして、一対のビードコア間に掛け渡された第1プライを設けるとともに、トレッドに位置する一端から両側に延在する一対のプライ片からなる第2プライを設け、当該第2プライの上記一端をショルダー主溝よりもタイヤ幅方向外側に配置したことにより、タイヤを軽量化できるとともに、トレッドを撓み変形しやすくしてエンベロープ特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る空気入りタイヤの断面図
図2】同空気入りタイヤの半断面図
図3】同空気入りタイヤの要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1~3に示す一実施形態の空気入りタイヤ10(以下、単にタイヤ10という。)は、リムに固定される左右一対のビード12,12と、該一対のビード12,12からそれぞれタイヤ半径方向外側に連なる左右一対のサイドウォール14,14と、該一対のサイドウォール14,14の間に跨がって延び接地面を構成するトレッド16とを有する。図1は、タイヤ回転軸を含む子午線断面でタイヤ10を切断した断面図である。
【0012】
図中、符号CLは、タイヤ幅方向中心に相当するタイヤ赤道面を示す。本明細書において、タイヤ幅方向とは、タイヤ軸方向とも称され、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、図において符号WDで示す。タイヤ幅方向WD内側とはタイヤ赤道面CLに近づく方向であり、タイヤ幅方向WD外側とはタイヤ赤道面CLから離れる方向である。タイヤ半径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいい、図において符号RDで示す。タイヤ半径方向RD内側とはタイヤ回転軸に近づく方向であり、タイヤ半径方向RD外側とはタイヤ回転軸から離れる方向である。タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心として回転する方向をいう。
【0013】
タイヤ10は、左右一対のビードコア18,18と、該一対のビードコア18,18間に掛け渡されたカーカスプライ20と、カーカスプライ20のクラウン部のタイヤ半径方向RD外側に配置されたベルト22と、を備える。
【0014】
ビードコア18は、スチール製のビードワイヤで構成されたタイヤ周方向の全周にわたって延びる環状部材であり、ビード12に埋設されている。ビード12にはまた、ビードコア18の外周に設置されたビードフィラー24が埋設されている。ビードフィラー24は、タイヤ半径方向RD外側ほど幅狭の断面略三角形状をなしてタイヤ周方向の全周にわたって延びる環状の硬質ゴム部材である。
【0015】
カーカスプライ20は、一対のビードコア18,18間にトロイダル状に掛け渡されており、すなわち、トレッド16から両側のサイドウォール14,14を経て両側のビード12,12に至り、ビードコア18の周りに折り返されることで係止されている。
【0016】
カーカスプライ20は、補強材としての有機繊維コードを含み、詳細には、有機繊維コードの配列体と該配列体を被覆するトッピングゴムを含む。配列体は、有機繊維コードを所定の打ち込み本数で平行配列してなる。有機繊維コードは、タイヤ周方向に対して実質上直角(例えば80°~90°)に、即ち子午線方向に沿って配されている。有機繊維コードとしては、例えば、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維等が挙げられる。
【0017】
ベルト22は、トロイダル状をなすカーカスプライ20のクラウン部(即ち、頂部)の外周側に設置されており、トレッド16においてカーカスプライ20の外周面に重ねて設けられている。ベルト22は、少なくとも1枚、好ましくは2枚以上のベルトプライで構成されている。
【0018】
この例では、ベルト22は、最大幅を持つ第1ベルト26と、該第1ベルト26のタイヤ半径方向RD外側に配された第2ベルト28との2枚で構成されている。第1ベルト26は、最も広い幅を持つ最大幅ベルトである。第2ベルト28は、第1ベルト26の外周に重ねて配された最外ベルトであり、第1ベルト26よりも幅の狭いベルトである。
【0019】
第1ベルト26及び第2ベルト28は、スチールコード等の金属コードを含み、詳細には、金属コードをタイヤ周方向に対して所定角度(例えば15°~35°)で傾斜させかつタイヤ幅方向WDに所定間隔で配設し、トッピングゴムで被覆してなる。該金属コードは2枚のベルト26,28間で互いに交差するよう配設されている。
【0020】
ベルト22のタイヤ半径方向RD外側には、接地面をなすトレッドゴム30が設けられている。トレッドゴム30は、路面と接触する接地面をなすキャップゴム層と、該キャップゴム層のタイヤ半径方向RD内側に配されたベースゴム層とからなる二層構造でもよく、両者が一体に構成された一層構造でもよい。
【0021】
ベルト22とトレッドゴム30との間にはベルト補強層32が設けられている。ベルト補強層32は、タイヤ周方向に対して実質的に平行に延びる有機繊維コードを有するキャッププライにより構成されている。
【0022】
サイドウォール14におけるカーカスプライ20のタイヤ外面側には、タイヤ外表面を構成するサイドウォールゴム34が設けられている。ビード12には、ビード12の外表面をなしてリムと接触するリムストリップゴム36がサイドウォールゴム34に隣接して設けられている。タイヤ10の内面、即ちカーカスプライ20のタイヤ内面側には、空気非透過性ゴムからなるインナーライナー38が設けられている。
【0023】
トレッドゴム30の接地面には、タイヤ周方向に延在する左右一対のショルダー主溝40,40と、該ショルダー主溝40,40のタイヤ幅方向WD内側に位置してタイヤ周方向に延在するセンター主溝42が設けられている。この例では、センター主溝42はタイヤ赤道面CLの両側に左右一対、即ち2本設けられているが、センター主溝42は1本でもよく、またセンター主溝42は設けなくてもよい。ショルダー主溝40及びセンター主溝42は、それぞれタイヤ周方向にストレート状に延在してもよく、ジクザグ状に延在してもよい。ショルダー主溝40及びセンター主溝42の溝幅(開口幅)は、特に限定されず、例えば6mm以上でもよく、また20mm以下でもよい。
【0024】
トレッドゴム30の接地面には、上記主溝により複数の陸部が区画形成されている。この例では、一対のセンター主溝42,42の間にあるセンター陸部44と、センター主溝42とショルダー主溝40の間にあるメディエート陸部46,46と、ショルダー主溝40よりもタイヤ幅方向WD外側にあるショルダー陸部48,48とが設けられている。
【0025】
センター陸部44は、タイヤ赤道面CLを含む、タイヤ幅方向WD中央の陸部である。メディエート陸部46は、タイヤ幅方向WDにおいてセンター陸部44の両側に1つずつ設けられた左右一対の陸部である。ショルダー陸部48は、左右一対のメディエート陸部46,46のタイヤ幅方向WD外側にそれぞれ設けられた左右一対の陸部であり、接地端を含む陸部である。これらのセンター陸部44、メディエート陸部46及びショルダー陸部48は、横溝により分断されていないタイヤ周方向に連続する陸部であるリブでもよく、また、タイヤ周方向に間隔をあけて配された横溝により分断された断続状の陸部であるブロック列でもよい。
【0026】
ショルダー主溝40は、ショルダー陸部48とそのタイヤ幅方向WD内側の陸部とを区画する周方向溝である。ショルダー主溝40によりショルダー陸部48と区画される上記陸部は、この例ではメディエート陸部46であるが、センター主溝42が1本または0本でメディエート陸部46が存在しない場合はセンター陸部44でもよい。
【0027】
本実施形態において、カーカスプライ20は、一対のビードコア18,18間に掛け渡された第1プライ50と、該第1プライ50のタイヤ外面側(例えばサイドウォール14ではタイヤ幅方向WD外側)に重ねて配置された第2プライ52とで構成されている。
【0028】
第1プライ50は、両端部がビードコア18,18の周りに折り返されたターンアッププライである。すなわち、第1プライ50は、一対のビードコア18,18間にわたるトロイダル状のプライ本体部50Aと、プライ本体部50Aから延びビードコア18の周りにタイヤ幅方向WD内側から外側に向かって折り返された折返し部50B,50Bと、を備える。第1プライ50は、このように両端部で折り返すことにより係止されている。そのため、プライ本体部50Aと折返し部50Bとの間に、ビードコア18とビードフィラー24が配されている。
【0029】
第1プライ50のプライ本体部50Aは、トレッド16から両側のサイドウォール14,14を経てそれぞれビード12,12に至り、ビードフィラー24のタイヤ幅方向WD内側を通ってビードコア18の内周面まで延在している。折返し部50Bは、ビードコア18の内周面からビードフィラー24のタイヤ幅方向WD外側を通ってタイヤ半径方向RD外側に延びている。この例では、折返し部50Bは、ビードフィラー24のタイヤ半径方向RDの外側端24Aを越え、タイヤ最大幅位置P1を越えて延在しており、ベルト22の端部に達する前で終端している。従って、折返し部50Bのタイヤ半径方向RDの外側端50B1はタイヤ最大幅位置P1よりもタイヤ半径方向RD外側に位置している。なお、折返し部50Bの外側端50B1の位置は特に限定されず、例えばタイヤ最大幅位置P1よりもタイヤ半径方向RD内側でもよい。
【0030】
ここで、タイヤ最大幅位置P1は、サイドウォール14におけるタイヤ10の外表面のプロファイルラインが、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向WDに最も離れる位置であり、そのタイヤ半径方向RDにおける位置である。該プロファイルラインは、リムプロテクターなどの突起を除いたサイドウォール本体の外表面の輪郭であり、通常、複数の円弧を滑らかに接続することで規定されるタイヤ子午線断面形状を有する。
【0031】
第2プライ52は、トレッド16に位置する一端56E,56Eから両側のサイドウォール14,14を経て両側のビード12,12にそれぞれ延在する左右一対のプライ片56,56からなる。
【0032】
第2プライ52、詳細には当該第2プライ52を構成する一対のプライ片56,56は、それぞれ、ビード12,12において端部がビードコア18,18で折り返されており、この例では、ビードコア18,18の周りにタイヤ幅方向WD内側から外側に向かって折り返されている。従って、各プライ片56は、上記一端56Eからサイドウォール14を経てビード12に至り、ビードフィラー24のタイヤ幅方向WD内側を通ってビードコア18の内周面まで延在するプライ本体部56Aと、ビードコア18の内周面からビードフィラー24のタイヤ幅方向WD外側をタイヤ半径方向RD外側に延びる折返し部56Bと、を備える。この例では、折返し部56Bのタイヤ半径方向RDの外側端、即ちプライ片56の他端56Fは、ビードコア18の外周面とビードフィラー24のタイヤ半径方向RDの外側端24Aとの間に位置している。
【0033】
図3に示すように、第2プライ52の各プライ片56の上記一端56Eは、ショルダー主溝40よりもタイヤ幅方向WD外側かつベルト22の幅方向外端22Aよりもタイヤ幅方向WD内側に位置している。すなわち、トレッド16の両端部にそれぞれ位置する上記一端56E,56Eは、タイヤ幅方向WDにおいて、それぞれ対応するショルダー主溝40,40よりも外側かつベルト端22A,22Aよりも内側に位置している。
【0034】
詳細には、各ショルダー主溝40においてタイヤ幅方向WDの最も外側に位置する部位(図ではショルダー主溝40の幅方向外側の開口端)40Aを通りタイヤ半径方向RDに平行な直線L1をひいたとき、各プライ片56の一端56Eは該直線L1よりもタイヤ幅方向WDの外側に位置する。
【0035】
また、ベルト22の幅方向外端22Aを通りタイヤ半径方向RDに平行な直線L2をひいたとき、各プライ片56の一端56Eは該直線L2よりもタイヤ幅方向WDの内側に位置する。ベルト22の幅方向外端22Aとは、最大幅ベルトである第1ベルト26のタイヤ幅方向WDにおける外側端である。
【0036】
本実施形態によれば、カーカスプライ20を、一対のビードコア18,18に掛け渡された第1プライ50と、トレッド16の両端部から両側のサイドウォール14,14に延在する一対のプライ片56,56からなる第2プライ52とで構成したことにより、サイドウォール14では2プライ構造となり、トレッド16の中央部では1プライ構造となっている。張力解析の結果よりトレッド中央部ではカーカスプライにかかる張力が小さいことから、当該中央部において1プライ構造とすることにより、2プライ構造によるケース剛性を維持しつつ、タイヤを軽量化することができる。タイヤが軽量化されることにより、転がり抵抗を低減することができるとともに、バネ下荷重が小さくなることで応答性が向上することにより操縦安定性を向上することができる。
【0037】
また、上記のように、第2プライ52の一端56Eをショルダー主溝40よりもタイヤ幅方向WDの外側に配置したことにより、トレッド16が撓み変形しやすくなり、エンベロープ特性を向上することができる。この点について詳述すると、一般にトレッド16はショルダー主溝40が設けられることで、その部分のゴムが薄くなっているため、ショルダー主溝40を起点とした撓み変形を生じやすく、道路の継ぎ目や段差などの突起による衝撃を吸収することができる。しかしながら、仮に第2プライ52がショルダー主溝40よりもタイヤ幅方向WD内側に延在していると、ショルダー主溝40の底部側での剛性が高くなり、ショルダー主溝40を起点としたトレッド16の撓み変形のしやすさが損なわれる。本実施形態によれば、第2プライ52をショルダー主溝40にかからないように設けたことにより、ショルダー主溝40を起点としたトレッド16の撓み変形が生じやすくなる。そのため、道路のポットホール、ひび割れ、舗装の継ぎ目、マンホール段差、未舗装路などの路面の凹凸に対するエンベロープ特性を向上することができ、乗り心地性を向上することができ、悪路走破性を向上することができる。
【0038】
第2プライ52の一端56Eをショルダー主溝40よりもタイヤ幅方向WDの外側に配置したことは、また、タイヤの軽量化による転がり抵抗の低下にもつながる。
【0039】
また、上記のように、第2プライ52の各プライ片56の一端56Eをベルト22の幅方向外端22Aよりもタイヤ幅方向WD内側に配置したことにより、当該プライ片56の一端56Eをベルト22と第1プライ50との間で挟み込んで拘束することができる。そのため、一般に動きやすいプライ片56の端部の動きを抑えて発熱を抑制することができ、転がり抵抗を抑制することができる。また、発熱によるゴムの劣化を抑えて故障を抑制することができる。
【0040】
本実施形態において、第2プライ52の各プライ片56と第1ベルト26との重なり量K1は5mm以上であることが好ましい。重なり量K1は5mm以上50mm以下であることが好ましく、より好ましくは5mm以上15mm以下である。
【0041】
重なり量K1が5mm以上であることにより、プライ片56の端部の動きをより効果的に抑えることができ、応力集中を緩和することができる。また、タイヤは内圧を充填すると、その径が若干大きくなる。その際、重なり量K1が小さすぎると、第1ベルト26によるプライ片56の拘束が外れて両者が分離し、タイヤの内圧を保持できなくなるおそれがある。また、重なり量K1が小さすぎると、タイヤ走行時の外力(例えば、コーナリング時や、縁石への乗り上げ、こすり等)によりサイドウォール14が変形したりカーカスプライ20に過度な張力が働いたりしたときに、動きやすいプライ片56の端部が第1ベルト26から外れて分離し、横の剛性が低下して操縦安定性が低下するおそれがある。重なり量K1が5mm以上であることにより、これらの不具合を解消することができる。
【0042】
重なり量K1が50mm以下であることにより、タイヤの軽量化効果を高めることができる。より好ましくは重なり量K1を15mm以下として、プライ片56の一端56Eをベルト端22Aの内側近傍に配置したことにより軽量化効果をさらに高めることができる。
【0043】
ここで、プライ片56と第1ベルト26との重なり量K1は、プライ片56とそのタイヤ半径方向RD外側に重なる第1ベルト26との重なり幅であり、プライ片56に沿う長さである。プライ片56に沿う長さとは、ベルト22の幅方向外端22Aを通る上記直線L2とプライ片56との交点から上記一端56Eまでのプライ片56に沿う長さである。例えば、ベルト22の端部とカーカスプライ20との間にゴム製のパッド(不図示)が設置され、プライ片56と第1ベルト26が該パッドを介して重なり合っている場合でも、同様に、ベルト22の幅方向外端22Aを通る直線L2をひいて該直線L2とプライ片56との交点から重なり量K1を求めればよい。
【0044】
本実施形態において、第2ベルト28の幅方向外端28Aからの第1ベルト26の延出量K2は4mm以上であることが好ましい。延出量K2は4mm以上20mm以下であることが好ましく、より好ましくは5mm以上15mm以下である。
【0045】
延出量K2が4mm以上であることにより、第1ベルト26の幅方向外端と第2ベルト28の幅方向外端との位置が近接することによる局部的な歪みの集中を回避することができ、第1ベルト26と第2ベルト28との分離を抑制することができる。
【0046】
ここで、第1ベルト26の延出量K2は、第2ベルト28の幅方向外端28Aよりもタイヤ幅方向WD外側に延在する第1ベルト26の当該第1ベルト26に沿う長さである。
【0047】
本実施形態において、第2プライ52の各プライ片56と第2ベルト28との重なり量K3は3mm以上であることが好ましい。重なり量K3は3mm以上45mm以下であることが好ましく、より好ましくは3mm以上10mm以下である。
【0048】
重なり量K3が3mm以上であることにより、プライ片56の端部と第2ベルト28の端部との位置が近接することによる局部的な歪みの集中を回避することができ、また、プライ片56の端部がベルト22から外れて分離することを回避することができる。重なり量K3が45mm以下であることにより、タイヤの軽量化効果を高めることができる。
【0049】
ここで、プライ片56と第2ベルト28との重なり量K3は、プライ片56とそのタイヤ半径方向RD外側に少なくとも第1ベルト26を介して重なる第2ベルト28との重なり幅であり、プライ片56に沿う長さである。より詳細には、重なり量K3は、第2ベルト28の幅方向外端28Aを通りタイヤ半径方向RDに平行な直線L3とプライ片56との交点から上記一端56Eまでのプライ片56に沿う長さである。
【0050】
なお、図示した例ではベルト22の端部がカーカスプライ20の外周面に直接重ねて設けられているが、ベルト22の端部とカーカスプライ20との間にゴム製のパッドが設置されてもよい。その場合、該パッドと第2プライ52のプライ片56との重なり量は、プライ片56に沿う長さで、5mm以上であることが好ましい。当該重なり量が5mm以上であることにより、プライ片56の端部とパッドの端部との位置が近接することによる局部的な歪みの集中を回避することができ、両者の分離を抑制することができる。
【0051】
本実施形態において、上記の主溝の溝幅、重なり量K1,K3,延出量K2などの寸法等は、空気入りタイヤを正規リムに装着し内圧を充填していない未充填状態で測定される値である。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"MeasuringRim"である。
【実施例0052】
図1~3に示した構造に従って、実施例1~3の乗用車用空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ:235/55R20 102W)を、下記表1に示す諸元に従い試作した。また、比較例1として、カーカスプライ20の第2プライ52を上記の一対のプライ片56,56による構造ではなく、第1プライ50と同様の通常のプライ構造とし、その他は実施例1と同様の構成を持つラジアルタイヤを試作した。比較例2として、第2プライ52のプライ片56の一端56Eの位置をショルダー主溝40よりもタイヤ幅方向WD内側に配置し、その他は実施例1と同様の構成を持つラジアルタイヤを試作した。
【0053】
実施例1~3及び比較例1,2のタイヤについて、タイヤ質量、乗り心地性、耐久性を評価した。評価方法は以下のとおりである。
【0054】
・乗り心地性(エンベロープ特性):試作タイヤを正規リム(20x7.5)に装着し、乗用車に取り付けて車両指定空気圧に設定し、乾燥した凹凸路面にて専門のドライバーによる衝撃および振動等の観点から相対的に乗り心地性を官能評価した。比較例1の評価を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、乗り心地性に優れることを表す。
【0055】
・耐久性:FMVSS139に規定する方法により耐久性試験を行った。試験段階3を終えても損傷等が確認されない場合は、継続してタイヤに速度と負荷を与えることとし、不具合が確認されるまでの試験時間を測定した。比較例1の試験時間を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、耐久性に優れることを示す。
【0056】
【表1】
【0057】
結果は表1に示すとおりであり、第2プライ52のプライ片56の一端56Eがショルダー主溝40よりもタイヤ幅方向WD外側かつベルト22の幅方向外端22Aよりも内側に位置する実施例1~3であると、いわゆる2プライ構造である比較例1に対してタイヤが軽量化されており、またエンベロープ特性に優れ乗り心地性が改善されていた。また、実施例1~3は、プライ片56の一端56Eがショルダー主溝40よりもタイヤ幅方向WD内側に位置する比較例2と比べて、タイヤの軽量化と乗り心地性に優れていた。
【0058】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0059】
10…空気入りタイヤ、12…ビード、14…サイドウォール、16…トレッド、18…ビードコア、20…カーカスプライ、22…ベルト、22A…ベルトの幅方向外端、26…第1ベルト、28…第2ベルト、30…トレッドゴム、40…ショルダー主溝、48…ショルダー陸部、50…第1プライ、52…第2プライ、56…プライ片、56E…プライ片の一端、K1…第2プライと第1ベルトとの重なり量、K2…第2ベルトからの第1ベルトの延出量、K3…第2プライと第2ベルトとの重なり量、WD…タイヤ幅方向、RD…タイヤ半径方向
図1
図2
図3