IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジェイテクトの特許一覧

特開2022-130102磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法
<>
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図1
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図2
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図3
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図4
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図5
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図6
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図7
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図8
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図9
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図10
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図11
  • 特開-磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130102
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G01L3/10 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029079
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】桑原 祐也
(57)【要約】
【課題】組み付け作業を容易にすることができる磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法を提供する。
【解決手段】磁気シールド60は、永久磁石20と、各磁気ヨーク31,32と、各集磁リング41,42とを有するセンサ装置に組み付けられるものである。磁気シールド60は、センサ装置へ組み付け前の状態で2つに分割された分割部位70を有している。分割部位70は、センサ装置への組み付けの際に互いに近接させるように統合される部位である。そして、分割部位70は、統合された状態で、各集磁リング41,42の各本体部41a,42aを径方向の外側と軸方向の両側とから取り囲む部位である第1シールド部と、当該第1シールド部から径方向の外側に延びるように各集磁リング41,42の各集磁部41b,41c,42b、42cを各磁気センサ51,52と共に取り囲む部位である第2シールド部とを有するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸と第2軸とがトーションバーを通じて互いに連結されてなる回転軸の前記第1軸に固定され、当該第1軸の周方向に着磁された永久磁石と、
前記第2軸に固定され、前記永久磁石を前記回転軸の径方向の外側から取り囲むように当該永久磁石が形成する磁界内に配置された磁気ヨークと、
前記磁気ヨークを前記径方向の外側から取り囲むように配置された本体部を有し、当該本体部から前記径方向の外側に向かって延びる部位である集磁部が設けられた集磁リングと、
前記集磁部に対応付けて配置され、前記永久磁石、前記磁気ヨーク、及び前記集磁リングにより形成される磁気回路の磁束を検出する磁気センサと、を備えるセンサ装置に対して前記集磁リングを前記径方向の外側から取り囲むように組み付けられる磁気シールドであって、
前記センサ装置へ組み付け前の状態で複数に分割された部位である分割部位を有し、
前記分割部位は、前記センサ装置への組み付けの際に互いに近接又は接触させることで統合される部位であり、当該統合された状態で、前記集磁リングの前記本体部を前記径方向の外側から取り囲む部位である第1シールド部と、当該第1シールド部から前記径方向の外側に延びるように前記集磁リングの前記集磁部を前記磁気センサと共に取り囲む部位である第2シールド部とを有するように構成されている磁気シールド。
【請求項2】
前記分割部位は、第1部位と、第2部位との2つの部位を含み、
前記第1部位と、前記第2部位とは、対称構造をなしており、
前記第2シールド部は、前記第1部位と前記第2部位との境界となる部位である境界部位を含んでいる請求項1に記載の磁気シールド。
【請求項3】
前記磁気ヨークは、前記回転軸の軸方向に並んで設けられた2つの磁気ヨークを含み、
前記集磁リングは、前記軸方向に並んで設けられた2つの集磁リングを含み、
前記集磁部は、前記本体部について前記周方向で互いに離間した2つの集磁部を含み、
前記磁気センサは、前記2つの集磁リングにそれぞれ設けられた前記2つの集磁部のうちの前記軸方向で互いに重なる前記集磁部の間にそれぞれ配置された2つの磁気センサを含み、
前記境界部位は、前記2つの集磁リングにそれぞれ設けられた前記2つの集磁部と前記軸方向で重ならないなかで当該2つの集磁部が前記周方向で隣接する間の部位と前記軸方向で重なるように構成されている請求項2に記載の磁気シールド。
【請求項4】
前記境界部位について、前記第1部位と前記第2部位とは、前記周方向で隙間を含んでおり、
前記隙間は、前記2つの集磁リングにそれぞれ設けられた前記2つの集磁部が前記周方向で隣接する隙間よりも小さく設定されている請求項3に記載の磁気シールド。
【請求項5】
前記第1シールド部は、前記本体部を前記径方向の外側から覆う本体被覆部を有し、
前記本体被覆部の前記回転軸の軸方向の両端部には、当該両端部から前記径方向の内側に延びる部位である縁部が設けられており、
前記縁部の前記径方向の内側の先端を結んでできる仮想円の内径は、前記本体部の外径又は内径よりも小さく設定されている請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の磁気シールド。
【請求項6】
前記縁部は、前記径方向の内側の端部から前記径方向の外側に向かって延びる複数のスリットを有している請求項5に記載の磁気シールド。
【請求項7】
前記第1シールド部は、前記本体被覆部と前記縁部とを接続する部位である接続部位を有し、
前記接続部位は、アール状をなしており、
前記接続部位について、前記集磁リングが設けられた側の部位の曲率半径は、前記第1シールド部の板厚の2倍以上に設定されている請求項5又は請求項6に記載の磁気シールド。
【請求項8】
請求項1~請求項7のうちいずれか一項に記載の磁気シールドを備えるセンサ装置。
【請求項9】
第1軸と第2軸とがトーションバーを通じて互いに連結されてなる回転軸の前記第1軸に固定されて前記回転軸の周方向に着磁された永久磁石、前記第2軸に固定されて前記永久磁石を前記回転軸の径方向の外側から取り囲むように当該永久磁石が形成する磁界内に配置された磁気ヨーク、前記磁気ヨークを前記径方向の外側から取り囲むように配置された本体部を有して当該本体部から前記径方向の外側に向かって延びる部位である集磁部が設けられた集磁リング、前記集磁部に対応付けて配置されて前記永久磁石と前記磁気ヨークと前記集磁リングとにより形成される磁気回路の磁束を検出する磁気センサを備えるセンサ装置に対して前記集磁リングを前記径方向の外側から取り囲むように組み付けられる磁気シールドの組み付け方法であって、
前記センサ装置は、前記集磁リングが樹脂モールドされてなるモールド体を前記磁気センサと共に前記回転軸に対して被せるように取り付けられるものであり、
前記センサ装置へ組み付け前の状態で複数に分割された部位である分割部位が前記集磁リングの前記本体部を前記径方向の外側から取り囲む部位である第1シールド部と前記集磁リングの前記集磁部を前記磁気センサと共に取り囲む部位である第2シールド部とを有するように互いに近接又は接触させることで統合された状態で、前記モールド体の樹脂モールドの際に前記集磁リングと共に樹脂モールドされることで前記センサ装置への組み付けがなされる磁気シールドの組み付け方法。
【請求項10】
第1軸と第2軸とがトーションバーを通じて互いに連結されてなる回転軸の前記第1軸に固定されて前記回転軸の周方向に着磁された永久磁石、前記第2軸に固定されて前記永久磁石を前記回転軸の径方向の外側から取り囲むように当該永久磁石が形成する磁界内に配置された磁気ヨーク、前記磁気ヨークを前記径方向の外側から取り囲むように配置された本体部を有して当該本体部から前記径方向の外側に向かって延びる部位である集磁部が設けられた集磁リング、前記集磁部に対応付けて配置されて前記永久磁石と前記磁気ヨークと前記集磁リングとにより形成される磁気回路の磁束を検出する磁気センサを備えるセンサ装置に対して前記集磁リングを前記径方向の外側から取り囲むように組み付けられる磁気シールドの組み付け方法であって、
前記センサ装置は、前記集磁リングが樹脂モールドされてなるモールド体を前記磁気センサと共に前記回転軸に対して被せるように取り付けられるものであり、
前記モールド体を前記磁気センサと共に前記回転軸に対して被せるように取り付けた後に、前記センサ装置へ組み付け前の状態で複数に分割された部位である分割部位が前記集磁リングの前記本体部を前記径方向の外側から取り囲む部位である第1シールド部と前記集磁リングの前記集磁部を前記磁気センサと共に取り囲む部位である第2シールド部とを有するように互いに近接又は接触させて統合されることで前記センサ装置への組み付けがなされる磁気シールドの組み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、例えば、電動パワーステアリング装置に使用され、ステアリング軸に加わる操舵トルクを検出するトルクセンサが開示されている。トルクセンサは、ステアリング軸を構成する入力軸と出力軸とを連結するトーションバーに生じる捩れ変位を検出することができるように構成されている。
【0003】
具体的には、トルクセンサは、多極磁石と、2つの磁気ヨークと、2つの集磁リングと、磁気センサとを有している。多極磁石は、入力軸に固定されている。2つの磁気ヨークは、出力軸に固定されている。2つの集磁リングは、2つの磁気ヨークからの磁束を誘導する。磁気センサは、2つの磁気ヨークに誘導された磁束を検出する。
【0004】
特許文献1のトルクセンサでは、検出対象以外からの外部磁場の影響を効果的に防止するために、集磁リングの外周を覆う磁気シールドが設けられている。この磁気シールドは、集磁リングの外周に対して鉄板が巻き付けて固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-125717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
集磁リングの外周に対して鉄板を巻き付けるべく、集磁リングの外周に沿うように鉄板を変形させようとすると、鉄板の部分毎に形状のばらつきが生じてしまう。一方、鉄板の部分毎に形状のばらつきが生じることを抑えようとすれば、作業に要する時間が延びて効率が低下してしまう。つまり、上記特許文献1の場合、磁気シールドについて、集磁リングの外周に対して鉄板を巻き付ける作業が煩雑になっていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する磁気シールドは、第1軸と第2軸とがトーションバーを通じて互いに連結されてなる回転軸の前記第1軸に固定され、当該第1軸の周方向に着磁された永久磁石と、前記第2軸に固定され、前記永久磁石を前記回転軸の径方向の外側から取り囲むように当該永久磁石が形成する磁界内に配置された磁気ヨークと、前記磁気ヨークを前記径方向の外側から取り囲むように配置された本体部を有し、当該本体部から前記径方向の外側に向かって延びる部位である集磁部が設けられた集磁リングと、前記集磁部に対応付けて配置され、前記永久磁石、前記磁気ヨーク、及び前記集磁リングにより形成される磁気回路の磁束を検出する磁気センサと、を備えるセンサ装置に対して前記集磁リングを前記径方向の外側から取り囲むように組み付けられるものであって、前記センサ装置へ組み付け前の状態で複数に分割された部位である分割部位を有し、前記分割部位は、前記センサ装置への組み付けの際に互いに近接又は接触させることで統合される部位であり、当該統合された状態で、前記集磁リングの前記本体部を前記径方向の外側から取り囲む部位である第1シールド部と、当該第1シールド部から前記径方向の外側に延びるように前記集磁リングの前記集磁部を前記磁気センサと共に取り囲む部位である第2シールド部とを有するように構成されている。
【0008】
また、上記課題を解決する磁気シールドの組み付け方法は、第1軸と第2軸とがトーションバーを通じて互いに連結されてなる回転軸の前記第1軸に固定されて前記回転軸の周方向に着磁された永久磁石、前記第2軸に固定されて前記永久磁石を前記径方向の外側から取り囲むように当該永久磁石が形成する磁界内に配置された磁気ヨーク、前記磁気ヨークを前記径方向の外側から取り囲むように配置された本体部を有して当該本体部から前記径方向の外側に向かって延びる部位である集磁部が設けられた集磁リング、前記集磁部に対応付けて配置されて前記永久磁石と前記磁気ヨークと前記集磁リングとにより形成される磁気回路の磁束を検出する磁気センサを備えるセンサ装置に対して前記集磁リングを前記径方向の外側から取り囲むように組み付けられる磁気シールドの組み付け方法であって、前記センサ装置は、前記集磁リングが樹脂モールドされてなるモールド体を前記磁気センサと共に前記回転軸に対して被せるように取り付けられるものであり、前記センサ装置へ組み付け前の状態で複数に分割された部位である分割部位が前記集磁リングの前記本体部を前記径方向の外側から取り囲む部位である第1シールド部と前記集磁リングの前記集磁部を前記磁気センサと共に取り囲む部位である第2シールド部とを有するように互いに近接又は接触させることで統合された状態で、前記モールド体の樹脂モールドの際に前記集磁リングと共に樹脂モールドされることで前記センサ装置への上記磁気シールドの組み付けがなされる。
【0009】
また、上記課題を解決する磁気シールドの組み付け方法は、第1軸と第2軸とがトーションバーを通じて互いに連結されてなる回転軸の前記第1軸に固定されて前記回転軸の周方向に着磁された永久磁石、前記第2軸に固定されて前記永久磁石を前記径方向の外側から取り囲むように当該永久磁石が形成する磁界内に配置された磁気ヨーク、前記磁気ヨークを前記径方向の外側から取り囲むように配置された本体部を有して当該本体部から前記回転軸の径方向の外側に向かって延びる部位である集磁部が設けられた集磁リング、前記集磁部に対応付けて配置されて前記永久磁石と前記磁気ヨークと前記集磁リングとにより形成される磁気回路の磁束を検出する磁気センサを備えるセンサ装置に対して前記集磁リングを前記径方向の外側から取り囲むように組み付けられる磁気シールドの組み付け方法であって、前記センサ装置は、前記集磁リングが樹脂モールドされてなるモールド体を前記磁気センサと共に前記回転軸に対して被せるように取り付けられるものであり、前記モールド体を前記磁気センサと共に前記回転軸に対して被せるように取り付けた後に、前記センサ装置へ組み付け前の状態で複数に分割された部位である分割部位が前記集磁リングの前記本体部を径方向の外側から取り囲む部位である第1シールド部と前記集磁リングの前記集磁部を前記磁気センサと共に取り囲む部位である第2シールド部とを有するように互いに近接又は接触させて統合されることで前記センサ装置への上記磁気シールドの組み付けがなされる。
【0010】
上記各構成によれば、分割部位としては、センサ装置への組み付けをし易い形状に成形するとともに、センサ装置への組み付けをし易いように分割することができる構造とすることができる。例えば、集磁リングを径方向の外側から取り囲むように磁気シールドをセンサ装置へ組み付けるとしても、集磁リングの形状に沿うように磁気シールドを変形させながら組み付ける必要がなくなる。つまり、集磁リングの形状に沿うように磁気シールドを変形させながら組み付ける必要がなければ、磁気シールドの部分毎に形状のばらつきが生じてしまうことも抑えられるようになる。この場合、磁気シールドの部分毎に形状のばらつきが生じることを抑えようとして作業に要する時間が延びて効率が低下してしまうこともなくなる。したがって、集磁リングを径方向の外側から取り囲むように磁気シールドをセンサ装置へ組み付ける作業が煩雑になることを抑えることができる。
【0011】
上記磁気シールドにおいて、前記分割部位は、第1部位と、第2部位との2つの部位を含み、前記第1部位と、前記第2部位とは、対称構造をなしており、前記第2シールド部は、前記第1部位と前記第2部位との境界となる部位である境界部位を含んでいることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、第1部位と、第2部位とが対称構造をなさない場合に比べて、磁気シールドの成形がし易くなる。
上記磁気シールドにおいて、前記磁気ヨークは、前記回転軸の軸方向に並んで設けられた2つの磁気ヨークを含み、前記集磁リングは、前記軸方向に並んで設けられた2つの集磁リングを含み、前記集磁部は、前記本体部について前記周方向で互いに離間した2つの集磁部を含み、前記磁気センサは、前記2つの集磁リングにそれぞれ設けられた前記2つの集磁部のうちの前記軸方向で互いに重なる前記集磁部の間にそれぞれ配置された2つの磁気センサを含み、前記境界部位は、前記2つの集磁リングにそれぞれ設けられた前記2つの集磁部と前記軸方向で重ならないなかで当該2つの集磁部が前記周方向で隣接する間の部位と前記軸方向で重なるように構成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成の場合、第1部位と第2部位との境界部位は、磁気シールドについて、2つの集磁リングの間で軸方向にて互いに重なる集磁部の間に配置された磁気センサを磁束が通過する方向に沿って延びることになる。つまり、第2シールド部については、磁気センサを磁束が通過する方向で途切れる部分を有さないで連続的に繋がるように構成することができる。この場合、第2シールド部には、外部磁場の磁気回路として、磁気センサを磁束が通過する成分に沿った迂回路を形成することができる。したがって、外部磁場については上記迂回路を通過することで磁気センサを通過し難くなり、外部磁場がセンサ装置に与える影響を抑えることができる。
【0014】
上記磁気シールドにおいて、前記境界部位について、前記第1部位と前記第2部位とは、前記周方向で隙間を含んでおり、前記隙間は、前記2つの集磁リングにそれぞれ設けられた前記2つの集磁部が前記周方向で隣接する隙間よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、境界部位が隙間を有していたとしても、第1部位と第2部位との間の隙間を外部磁場が通過し難くなる。これは、外部磁場がセンサ装置に与える影響を抑えるのに効果的である。
【0016】
上記磁気シールドにおいて、前記第1シールド部は、前記本体部を前記径方向の外側から覆う本体被覆部を有し、前記本体被覆部の前記回転軸の軸方向の両端部には、当該両端部から前記径方向の内側に延びる部位である縁部が設けられており、前記縁部の前記径方向の内側の先端を結んでできる仮想円の内径は、前記本体部の外径又は内径よりも小さく設定されていることが好ましい。
【0017】
上記構成によれば、第1シールド部は、本体被覆部によって集磁リングの周方向外周を覆うだけではなく、縁部によって回転軸の軸方向における集磁リングの両端の少なくとも一部を覆うことができる。このため、磁気シールドでは、回転軸の軸方向から侵入しようとする外部磁場を第1シールド部の縁部を通じて磁気センサへの影響を抑えるように誘導することができる。これは、外部磁場がセンサ装置に与える影響を抑えるのに効果的である。
【0018】
上記磁気シールドにおいて、前記縁部は、前記径方向の内側の端部から前記径方向の外側に向かって延びる複数のスリットを有していることが好ましい。
上記構成によれば、磁気シールドでは、例えば、本体被覆部の軸方向の端部を当該本体被覆部に対して径方向の内側へ屈曲させるようにして縁部を成形するとしても、当該屈曲させる作業がし易くなる。
【0019】
上述のように、磁気シールドでは、例えば、本体被覆部の軸方向の端部を当該本体被覆部に対して径方向の内側へ屈曲させるようにして縁部を成形することが考えられる。この場合、縁部を成形するべく屈曲させる際の起点となる根本の部位では、応力の発生が懸念される。これは、応力の発生により生じる残留応力が磁気シールドの磁気特性を変化させるからである。
【0020】
これに対して、上記磁気シールドにおいて、前記第1シールド部は、前記本体被覆部と前記縁部とを接続する部位である接続部位を有し、前記接続部位は、アール状をなしており、前記接続部位について、前記集磁リングが設けられた側の部位の曲率半径は、前記第1シールド部の板厚の2倍以上に設定されていることが好ましい。
【0021】
上記構成によれば、磁気シールドでは、本体被覆部の軸方向の端部を当該本体被覆部に対して径方向の内側へ屈曲させて縁部を成形するとしても、当該屈曲させる際の起点となる根本の部位への応力の発生を抑えることができる。したがって、応力の発生により残留応力を生じることが抑えられ、磁気シールドの磁気特性の変化が抑えられる。
【0022】
上記の磁気シールドは、センサ装置に用いられるのに好適である。この場合、集磁リングを径方向の外側から取り囲むように磁気シールドを組み付ける作業が煩雑になることを抑えることができるセンサ装置を実現できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法によれば、組み付け作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態について、センサ装置の概略構成を示す斜視図。
図2】第1実施形態について、センサ装置の概略構成を示す分解斜視図。
図3】第1実施形態のセンサ装置の構成について、軸方向の上方から見た平面図。
図4図3について、4-4線で切断した構造を示す端面図。
図5】トルク変動について、接続部位の径方向の内側の部位の曲率半径との関係を説明する図。
図6】(a)~(d)は、第1実施形態のセンサ装置の組み立て工程を説明する図。
図7】第2実施形態のセンサ装置の概略構成を示す斜視図。
図8】第2実施形態のセンサ装置の構成について、図4と同様の位置で切断した構造を示す端面図。
図9】トルク変動について、シールド内径との関係を説明する図。
図10】(a),(b)は、第2実施形態のセンサ装置の組み立て工程を説明する図。
図11】他の実施形態の磁気シールドの構成について、軸方向の上方から見た平面図。
図12】他の実施形態のセンサ装置の構成について、図4と同様の位置で切断した構造を示す端面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
以下、磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法の第1実施形態を図面に従って説明する。
【0026】
<センサ装置1>
図1及び図2に示すように、センサ装置1は、回転軸10に設けられている。本実施形態のセンサ装置1は、回転軸10に加わるトルクを検出するトルクセンサである。回転軸10は、例えば、電動パワーステアリング装置のステアリングホイールに連結されたステアリング軸である。回転軸10は、第1軸である入力軸11と、第2軸である出力軸12と、トーションバー13とを備えている。トーションバー13は、入力軸11と出力軸12との間に配置されている。入力軸11と出力軸12とは、トーションバー13を介して同一軸線上に連結されている。
【0027】
具体的には、センサ装置1は、永久磁石20と、磁気ヨーク30と、集磁リング40と、磁気センサ50と、磁気シールド60とを備えている。永久磁石20と、磁気ヨーク30とは、回転軸10に固定されている。集磁リング40と、磁気センサ50と、磁気シールド60とは、センサ装置1の外郭を規定する樹脂製のハウジング100の内部に収容されている。そして、センサ装置1は、永久磁石20と磁気ヨーク30とが固定された回転軸10に対して、永久磁石20が固定された入力軸11の側からハウジング100を被せるようにして取り付けられている。なお、以下では、説明の便宜上、回転軸10を基準として、入力軸11の側を「上方」とし、出力軸12の側を「下方」とする。また、回転軸10の軸線Xに沿った方向を軸方向とし、回転軸10の軸線Xに直交する方向を径方向とし、回転軸10の軸線X周りの方向を周方向とする。
【0028】
<永久磁石20>
図2に示すように、永久磁石20は、円筒状をなしている。永久磁石20は、入力軸11に対して一体回転可能に嵌合されている。永久磁石20は、例えば、入力軸11の周方向に沿ってN極とS極とが交互に着磁されている。
【0029】
<磁気ヨーク30>
磁気ヨーク30は、第1磁気ヨーク31と、第2磁気ヨーク32とを有する。各磁気ヨーク31,32は、円筒状をなしている。各磁気ヨーク31,32は、永久磁石20との間に径方向で隙間を有した状態で、当該永久磁石20を径方向の外側から取り囲むようにそれぞれ配置されている。各磁気ヨーク31,32は、出力軸12に対して一体回転可能に嵌合されている。各磁気ヨーク31,32は、永久磁石20が形成する磁界内に配置されており、当該永久磁石20の磁界に応じた磁気回路の一部をそれぞれ形成する。第1磁気ヨーク31と、第2磁気ヨーク32とは、軸方向に並んで設けられている。
【0030】
第1磁気ヨーク31は、円環状の第1環状部31aを有している。第1環状部31aは、永久磁石20の全周を取り囲むように周方向に連続的に延びている。第1環状部31aには、第1環状部31aの内周側の端部から軸方向の下方に向かって突出する部位である板状の複数の第1歯部31bが設けられている。各第1歯部31bは、第1環状部31aの周方向に等間隔を空けて設けられている。なお、第2磁気ヨーク32は、第1磁気ヨーク31に対応する構成として、第2環状部32aと、複数の第2歯部32bとを有している。
【0031】
各磁気ヨーク31,32は、各第1歯部31bと、各第2歯部32bとが軸方向において互いに異なる方向に突出するように組み合わされている。また、各第1歯部31bと、各第2歯部32bとは、径方向において互いに重ならないように周方向において互い違いに配置されている。
【0032】
<集磁リング40>
集磁リング40は、第1集磁リング41と、第2集磁リング42とを有する。各集磁リング41,42は、円環状をなしている。第1集磁リング41は、第1磁気ヨーク31との間に径方向で隙間を有した状態で第1磁気ヨーク31を径方向の外側から取り囲むように配置されている。第2集磁リング42は、第2磁気ヨーク32との間に径方向で隙間を有した状態で第2磁気ヨーク32を径方向の外側から取り囲むように配置されている。各集磁リング41,42は、永久磁石20が形成する磁界内に配置されており、当該永久磁石20の磁界に応じた磁気回路の一部をそれぞれ形成する。第1集磁リング41と、第2集磁リング42とは、軸方向に並んで設けられている。
【0033】
第1集磁リング41は、軸方向から見た場合にC字の筒状の第1本体部41aを有する。第1本体部41aは、第1磁気ヨーク31の第1環状部31aの外周の一部を取り囲むように周方向に連続的に延びている。第1本体部41aには、第1本体部41aの下方側の端部から径方向の外側に向かって突出する部位である2つの第1集磁部41b、41cが設けられている。2つの第1集磁部41b、41cは、第1本体部41aの周方向に所定の間隔を空けて配置されている。各第1集磁部41b,41cは、軸方向から見た場合に略長方形状をなしている。なお、第2集磁リング42は、第1集磁リング41に対応する構成として、第2本体部42aと、各第2集磁部42b,42cとを有している。
【0034】
<磁気センサ50>
磁気センサ50は、第1磁気センサ51と、第2磁気センサ52とを有する。各磁気センサ51,52としては、例えば、ホールセンサが採用されている。第1磁気センサ51は、第1集磁部41bと第2集磁部42bとの間に配置されている。また、第2磁気センサ52は、第1集磁部41cと第2集磁部42cとの間に配置されている。各磁気センサ51,52は、永久磁石20、第1磁気ヨーク31、第2磁気ヨーク32、第1集磁リング41、及び第2集磁リング42により形成される磁気回路の磁束を電気信号として検出する。
【0035】
回転軸10の入力軸11と出力軸12との間に相対的な回転変位が生じると、トーションバー13に捩れ変形が生じる。各第1歯部31bは、トーションバー13に捩れ変形が生じている状態において、トーションバー13に捩れ変形が生じていない状態に対して周方向にずれる等して角度差が生じる。これは、各第2歯部32bについても同様である。これにより、トーションバー13に捩れ変形が生じている状態において、永久磁石20の磁界に応じた磁気回路が各磁気ヨーク31,32、各集磁リング41,42で形成されて、トーションバー13の捩れ変形の量に応じた磁束が各歯部31b,32bに伝わるように構成されている。そして、各磁気センサ51,52は、トーションバー13の捩り変形に応じて導かれる磁気回路の磁束に応じた電気信号を生成する。各磁気センサ51,52に接続される図示しない制御装置は、各磁気センサ51,52により生成された電気信号に基づいて回転軸10に作用するトルクを操舵トルクとして演算する。
【0036】
<磁気シールド60>
図1及び図2に示すように、磁気シールド60は、集磁リング40、すなわち各集磁リング41,42を径方向や軸方向から取り囲むように配置されている。磁気シールド60は、磁気を遮断できる金属の材料、例えば、冷間圧延鋼板であるSPCC又は電気亜鉛メッキ鋼板であるSECC等の鋼板で構成されている。つまり、磁気シールド60は、検出対象以外の外部磁場が磁気ノイズとして集磁リング40、すなわち各集磁リング41,42、ひいては磁気センサ50、すなわち各磁気センサ51,52に伝達されることを抑制する。本実施形態において、磁気シールド60は、ハウジング100に樹脂モールドされている。
【0037】
磁気シールド60は、第1シールド部61と、第2シールド部62とを有する。第1シールド部61は、各集磁リング41,42の各集磁部41b,41c,42b,42cが設けられた周辺以外の各本体部41a,42aを径方向の外側と軸方向の両側とから取り囲む部位である。第2シールド部62は、第1シールド部61から径方向の外側に延びており、各集磁リング41,42の各集磁部41b,41c,42b,42cを各磁気センサ51,52と共に取り囲む部位である。
【0038】
<第1シールド部61>
具体的には、図1及び図2に示すように、第1シールド部61は、本体被覆部61aと、縁部61bとを有する。本体被覆部61aは、径方向に厚みを有し、周方向で一部が途切れている略円筒状をなしている。本体被覆部61aは、各集磁リング41,42の各集磁部41b,41c,42b,42cが設けられた周辺以外の各本体部41a,42aの径方向の外周面を取り囲むように周方向に連続的に延びている。
【0039】
縁部61bは、本体被覆部61aの軸方向の両端部から径方向の内側に向かってそれぞれ延びる部位である。各縁部61bは、軸方向に厚みを有し、周方向で一部が途切れている略環状をなしている。各縁部61bは、各縁部61bの径方向の内側の端部から径方向の外側である本体被覆部61aに向かって延びる複数のスリット61cを通じて周方向で複数に分割されている。本体被覆部61aは、各スリット61cのうちの本体被覆部61a及び各縁部61bのそれぞれの両端の周方向の中心に設けられたスリット61dを通じて周方向で2つに分割されている。なお、スリット61d以外の各スリット61cは、本体被覆部61aの軸方向の両端部の一部までそれぞれ延びている。そして、各縁部61bは、各本体部41a,42aの軸方向の両端面を取り囲むように周方向に各スリット61cを介して断続的に延びている。
【0040】
<第2シールド部62>
第2シールド部62は、第1センサ被覆部62aと、第2センサ被覆部62bとを有する。第1センサ被覆部62aは、本体被覆部61aの周方向の両端から径方向にそれぞれ延びる部位であり、周方向に厚みを有する平板状をなしている。各第1センサ被覆部62aは、各集磁リング41,42の各集磁部41b,41c,42b,42cについて、互いに隣接する側と反対側の周方向の外面を取り囲むように軸方向に連続的に延びている。
【0041】
第2センサ被覆部62bは、各第1センサ被覆部62aの軸方向の両端を周方向でそれぞれ接続する部位であり、軸方向に厚みを有する平板状をなしている。各第2センサ被覆部62bの径方向の内側の先端と、各縁部61bの径方向の先端とを結んだ場合に、軸線Xを通る中心点C0を有する仮想円C1を形成するように構成されている。つまり、各第2センサ被覆部62bの径方向の内側の一部の部位は、各縁部61bから周方向に延びる部位である。
【0042】
各第2センサ被覆部62bは、各第2センサ被覆部62bの径方向の内側の端部から径方向の外側である第1センサ被覆部62aに向かって延びる単数のスリット62cを通じて周方向で2つに分割されている。スリット62cは、第2センサ被覆部62bの周方向の中心に設けられている。つまり、スリット62cは、互いに周方向で隣接する各第1集磁部41b,41cの周方向の中心に設けられている。これは、互いに周方向で隣接する各第2集磁部42b,42cに対しても同様である。また、スリット62cは、第1シールド部61に設けられたスリット61dに対して周方向で180度だけ位相がずれている。そして、第2センサ被覆部62bは、各集磁部41b,41c,42b,42cの軸方向の両端面を取り囲むように周方向にスリット62cを介して断続的に延びている。
【0043】
<分割部位70>
図2に示すように、磁気シールド60は、第1部位71と、第2部位72との2つの部位が互いに近接することで統合されてなる分割部位70を有する。各部位71,72は、センサ装置1へ組み付け前の状態で2つに分割された部位であり、互いに対称構造をなしている。各部位71,72は、第1シールド部61に設けられたスリット61dと、第2シールド部62に設けられたスリット62cとを境界部位として2つに分割されている。
【0044】
各部位71,72は、上記金属の材料からなる板状の鋼板を折り曲げる等してセンサ装置1へ組み付け前に予めそれぞれ成形される。各部位71,72は、センサ装置1への組み付けをし易い形状に成形されるとともに、センサ装置1への組み付けをし易いように分割することができる構造とされる。
【0045】
具体的には、第1部位71は、第2部位72と統合された状態で、第1シールド部61の本体被覆部61aとなる対応部位として、スリット61dを通じて本体被覆部61aを2つに分割した形状をなす第1本体分割部71aを有する。また、第1部位71は、第2部位72と統合された状態で、第1シールド部61の各縁部61bとなる対応部位として、スリット61dを通じて各縁部61bを2つに分割した形状をなす第1縁分割部71bを有する。また、第1部位71は、第2部位72と統合された状態で、第2シールド部62となる対応部位として、スリット62cを通じて各センサ被覆部62a,62bを2つに分割した形状をなす第1センサ分割部71cを有する。
【0046】
なお、第2部位72は、第1部位71に対応する構成として、当該第1部位71と統合された状態で、第1シールド部61の本体被覆部61aとなる対応部位として、第2本体分割部72aを有する。また、第2部位72は、第1部位71と統合された状態で、第1シールド部61の各縁部61bとなる対応部位として、第2縁分割部72bを有する。また、第2部位72は、第1部位71と統合された状態で、第2シールド部62となる対応部位として、第2センサ分割部72cを有する。
【0047】
<スリット62c>
図3に示すように、第2シールド部62を2つに分割するべく、各第2センサ被覆部62bに設けられたスリット62cは、軸方向の上方から見た場合に、第1集磁リング41にて互いに周方向で隣接して設けられた各第1集磁部41b、41cの周方向の中心に配置されている。これは、第2集磁リング42についても同様である。つまり、スリット62cは、互いに隣接して設けられた各第2集磁部42b、42cの周方向の中心に配置されている。そして、スリット62cの周方向での隙間W1は、各第1集磁部41b,41cが互いに周方向で隣接する隙間W2よりも小さく設定されている。例えば、隙間W1は、検出対象以外の外部磁場がスリット62cの間を通過し難くする観点で、製造公差等の各種の公差を考慮して実験的に求められた範囲の大きさに設定されている。なお、第1シールド部61について、各本体分割部71a,72a及び各縁分割部71b,72bの2つにそれぞれ分割するべく当該第1シールド部61に設けられたスリット61dの周方向での隙間W3は、隙間W1と略同一に設定されている。
【0048】
ここで、第2シールド部62では、スリット62cを設ける場合、当該スリット62cでの磁気抵抗を他の部位と比べて大きくすることができる。また、第2シールド部62について、第1センサ被覆部62aは、各磁気センサ51,52を磁束が通過する方向である軸方向で途切れる部分を有さないで連続的に繋がるように構成されている。この場合、例えば、軸方向の上方から磁気シールド60に伝わる外部磁場は、第2シールド部62にて、スリット62cを介在して非連続的に延びる周方向に伝達しないで、スリット62cを介在しないで連続的に延びる軸方向に伝達する。
【0049】
<シールド内径L1>
図3及び図4に示すように、磁気シールド60について、各縁部61bと、各第2センサ被覆部62bとの径方向の内側の先端を結んでできる軸線Xを通る中心点C0を有する仮想円C1の内径であるシールド内径L1は、各集磁リング41,42の各本体部41a,42aの内径であるリング内径L2aよりも大きく設定されている。また、シールド内径L1は、各集磁リング41,42の各本体部41a,42aの外径であるリング外径L2bよりも小さく設定されている。つまり、シールド内径L1は、各磁気ヨーク31,32の各環状部31a,32aの外径であるヨーク外径L3よりも大きく設定されている。
【0050】
<接続部位71d>
図4に示すように、第1部位71について、第1本体分割部71aの軸方向の両端部と、各第1縁分割部71bの径方向の外側の端部とは、アール状をなす接続部位71dを通じてそれぞれ接続されている。つまり、各接続部位71dは、第1シールド部61について、本体被覆部61aの軸方向の両端部と、各縁部61bの径方向の外側の端部とを連結する部位である。このため、第1本体分割部71aの軸方向の両端部と、各第1縁分割部71bの径方向の外側の端部とは、互いに延びる方向で略直角で交差するような部位を間に存在させない状態で接続されている。そして、各接続部位71dについて、各集磁リング41、42が設けられた側である径方向の内側の部位の仮想中心R0からの曲率半径R1は、第1本体分割部71aの径方向及び各第1縁分割部71bの軸方向における厚みである板厚Tの2倍の値を基準として、製造公差等の各種の公差を考慮して若干大きく設定されている。これは、図4中に括弧で示すように、第2部位72について、第2本体分割部72aの軸方向の両端部と、第2縁分割部72bの径方向の外側の端部とを連結する部位である接続部位72dについても同様である。
【0051】
各部位71,72について、各本体分割部71a,72aは、上記金属の材料からなる板状の鋼板を半円筒状に湾曲させて成形される。各縁分割部71b,72bは、半円筒状に湾曲させて成形された各本体分割部71a,72aの軸方向の両端から所定範囲の部分を、各接続部位71d,72dとなる当該部分の根本の部位を起点に径方向の内側に屈曲させて成形される。そして、各縁分割部71b,72bを成形する際の屈曲の起点となる根元の部位には、当該屈曲に伴って応力が作用することに起因して残留応力が生じる。金属の材料に対して残留応力が生じる部位では、金属の材料が本来有する磁気特性とは異なる磁気特性を有するように、磁気特性を変化させることが知られている。
【0052】
本実施形態のように、磁気シールド60の材料として、上記SPCC又は上記SECCを採用する場合、残留応力が生じる部位である各縁分割部71b,72bを成形する際の屈曲の起点となる根元の部位では、他の部位と比べて磁気特性が悪化する。この場合、各縁分割部71b,72bを成形する際の屈曲の起点となる根元の部位では、他の部位と比べて磁気の伝達効率が低下する。これは、残留応力が大きいほど顕著である。そして、残留応力が大きくなることは、曲率半径R1が小さくなり接続部位71dの形状がアール状から直角状に近付くという関係を意味する。磁気の伝達効率が低下するということは、外部磁場の影響が大きくなること、すなわちセンサ装置1での検出結果としての操舵トルクの変動であるトルク変動が大きくなるという関係を意味する。こうした関係は、磁気シールド60に用いる金属の材料の板厚Tの大きさを用いて曲率半径R1を定義することで説明することができる。
【0053】
例えば、図5に、磁気シールド60に用いる金属の材料として、上記SPCC又は上記SECCを採用する場合についてのトルク変動の特性として実験的に得られた結果を示す。詳しくは、横軸は曲率半径R1であり、縦軸はトルク変動の大きさである。
【0054】
図5に示すように、曲率半径R1がゼロ値付近から大きくなるほど、トルク変動が小さく抑えられるように変動する特性を示す結果が得られた。これは、曲率半径R1が大きくなるほど、各接続部位71dでの他の部位に対する磁気特性の悪化が抑えられることに起因したものである。さらに続いて、曲率半径R1が各接続部位71dでの他の部位に対する磁気特性の悪化が見られなくなるほど曲率半径R1が大きくなると、当該曲率半径R1が大きくなってもトルク変動がほとんど変化しなくなるように変動する特性を示す結果が得られた。そして、トルク変動が小さく抑えられるように変動する特性と、トルク変動がほとんど変化しなくなるように変動する特性との境界は、板厚Tの2倍の値と一致する場合であることを示す結果が得られた。
【0055】
上記で説明した各接続部位71dに関する構成は、第2シールド部62について、第1センサ被覆部62aの軸方向の両端部と、各第2センサ被覆部62bのスリット62cと周方向で反対側の端部とを接続する部位についても同様に適用されている。
【0056】
<磁気シールド60の組み付け方法>
以下、本実施形態のセンサ装置1の組み立て方法について、磁気シールド60の組み付け方法と合わせて説明する。
【0057】
本実施形態のセンサ装置1の組み立て方法には、大きく分けて、実施する順に沿って、一次成形工程と、シールド組付工程と、二次成形工程と、組立工程との4つの工程がある。
【0058】
図6(a)に示すように、一次成形工程では、各集磁リング41,42を樹脂モールドしてなる第1モールド体80を成形する。一次成形工程での樹脂モールドの際に、各集磁リング41,42は、各本体部41a,42a、各集磁部41b,42b、及び各集磁部41c,42cがそれぞれ軸方向で重なるようにそれぞれの位置が調整されている。また、各集磁リング41,42は、各本体部41a,42aが軸方向で離間するようにそれぞれの位置が調整されている。つまり、各集磁部41b,42bの軸方向の間には、第1磁気センサ51を配置するための領域が確保されている。また、各集磁部41c,42cの軸方向の間には、第2磁気センサ52を配置するための領域が確保されている。
【0059】
そして、第1モールド体80は、各集磁リング41,42の内周に沿って軸線Xを軸心として得られる円柱の領域を軸方向に延ばして得られる第1軸孔81を有する円筒状をなすように成形されている。また、第1モールド体80では、各本体部41a,42aの径方向の内側の部位が露出されているとともに、各本体部41a,42aの径方向の外側の部位が被覆されている。また、第1モールド体80では、各集磁部41b,41c,42b,42cの全体が露出されている。
【0060】
図6(b)に示すように、次に、シールド組付工程では、分割部位70、すなわち第1部位71と第2部位72とを第1モールド体80に対して組み付ける。シールド組付工程の組み付けの前に、分割部位70は、各部位71,72としてそれぞれ個別に成形されて予め準備されている。シールド組付工程の組み付けの際に、予め準備された各部位71,72は、各縁分割部71b,72bの互いの先端が対向した状態で、各センサ分割部71c,72cが各集磁部41b,41c,42b,42cに応じた位置となるようにそれぞれの位置が調整されている。つまり、各部位71,72は、軸線Xを通るとともに、互いに周方向で隣接する各第1集磁部41b,41c又は各第2集磁部42b,42cの周方向の中心を通る平面Fに対して対称構造となるようにそれぞれの位置が調整されている。そして、各部位71,72は、境界部位である各スリット61d,62cが現れるように、第1モールド体80の径方向の外側から当該第1モールド体80を間に挟み込み、互いに近接するように統合される。
【0061】
このシールド組付工程により、各集磁リング41,42の各集磁部41b,41c,42b,42cが設けられた周辺以外の各本体部41a,42aを径方向の外側と軸方向の両側とから取り囲む部位である第1シールド部61が現れる。これと合わせて、各集磁リング41,42の各集磁部41b,41c,42b,42cを取り囲む部位である第2シールド部62が現れる。この場合、特に、スリット62cについては、軸方向の上方から見た場合に、第1集磁リング41にて互いに周方向で隣接して設けられた各第1集磁部41b、41cの周方向の中心に配置されている。これは、第2集磁リング42についても同様である。このようにして、磁気シールド60の第1モールド体80への組み付けが完了する。
【0062】
図6(c)に示すように、次に、二次成形工程では、磁気シールド60が組み付けされた状態の第1モールド体80を樹脂モールドしてなる第2モールド体90を成形する。二次成形工程での樹脂モールドの後に、各磁気センサ51,52が搭載されたセンサ基板等の各種の部品は、第2モールド体90の内部へ挿入されて、例えば、熱かしめ等によって当該第2モールド体90に対して固定される。この場合、上記センサ基板は、第1磁気センサ51が各集磁部41b,42bの間、第2磁気センサ52が各集磁部41c,42cの間にそれぞれ配置されるようにそれぞれの位置が調整されている。
【0063】
そして、第2モールド体90は、第1モールド体80の第1軸孔81を軸方向に延ばして得られる第2軸孔91を有するように成形される。また、第2モールド体90では、磁気シールド60が組み付けされた状態の第1モールド体80の全体が被覆されている。つまり、磁気シールド60は、第2モールド体90の樹脂モールドの際に各集磁リング41,42と共に樹脂モールドされることでセンサ装置1への組み付けがなされる。また、第2モールド体90では、二次成形工程を通じて成形される部位がハウジング100として機能する。
【0064】
図6(d)に示すように、次に、組立工程では、二次成形工程を通じて成形された第2モールド体90、すなわちハウジング100を上記センサ基板等の各種の部品と共に、永久磁石20と各磁気ヨーク31,32とが固定された回転軸10に対して、永久磁石20が固定された入力軸11の側から被せるようにして取り付ける。組立工程での回転軸10への取り付けの際、第2モールド体90は、第2軸孔91、すなわち第1軸孔81への回転軸10の挿入を通じて取り付けられる。この場合、シールド内径L1とヨーク外径L3との関係によっては、磁気シールド60と各磁気ヨーク31,32との干渉が懸念されるところ、シールド内径L1をヨーク外径L3よりも大きく設定することで磁気シールド60と各磁気ヨーク31,32との干渉が回避されている。
【0065】
そして、第2モールド体90は、回転軸10に被せた状態で、永久磁石20と、各磁気ヨーク31,32と、各集磁リング41,42と、各磁気シールド60とが径方向で重なるなかで所定の配置を実現するようにそれぞれの位置が調整されている。このようにして、センサ装置1の組み立てが完了する。
【0066】
以下、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態によれば、分割部位70としては、センサ装置1への組み付けをし易い形状に成形するとともに、センサ装置1への組み付けをし易いように分割することができる構造とすることができる。
【0067】
具体的には、上記のシールド組付工程で説明したように、分割部位70は、各部位71,72としてそれぞれ個別に上記金属の材料から成形されて予め準備されている。こうして予め準備された各部位71,72は、第1モールド体80の径方向の外側から当該第1モールド体80を間に挟み込み、互いに近接するように統合されるのみで、磁気シールド60を第1モールド体80、すなわちセンサ装置1へ組み付けることができる。
【0068】
つまり、本実施形態では、各集磁リング41,42を径方向や軸方向から取り囲むように磁気シールド60をセンサ装置1へ組み付けるとしても、各集磁リング41,42の形状に沿うように磁気シールド60を変形させながら組み付ける必要がなくなる。
【0069】
以下、本実施形態の効果を説明する。
(1-1)本実施形態では、各集磁リング41,42の形状に沿うように磁気シールド60を変形させながら組み付ける必要がなければ、磁気シールド60の部分毎に形状のばらつきが生じてしまうことも抑えられるようになる。この場合、磁気シールド60の部分毎に形状のばらつきが生じることを抑えようとして作業に要する時間が延びて効率が低下してしまうこともなくなる。したがって、各集磁リング41,42を径方向や軸方向から取り囲むように磁気シールド60をセンサ装置1へ組み付ける作業が煩雑になることを抑えることができる。
【0070】
(1-2)分割部位70について、各部位71,72は、各スリット61d,62cを通じて2つに分割した対称構造をなしている。つまり、本実施形態によれば、各部位71,72が対称構造をなさない場合に比べて、磁気シールド60の成形がし易くなる。
【0071】
(1-3)磁気シールド60について、スリット62cは、互いに周方向で隣接する各第1集磁部41b,41cの周方向の中心に設けられている。これは、互いに周方向で隣接する各第2集磁部42b,42cに対しても同様である。
【0072】
本実施形態の構成の場合、スリット62cは、磁気シールド60について、各集磁リング41,42の間で軸方向にて互いに重なる各集磁部41b,42b又は各集磁部41c,42cの間に配置された各磁気センサ51,52を磁束が通過する方向に沿って延びることになる。つまり、第2シールド部62については、各磁気センサ51,52を磁束が通過する方向で途切れる部分を有さないで連続的に繋がるように構成することができる。この場合、第2シールド部62には、外部磁場の磁気回路として、各磁気センサ51,52を磁束が通過する成分に沿った迂回路を形成することができる。したがって、外部磁場については上記迂回路を通過することで各磁気センサ51,52を通過し難くなり、外部磁場がセンサ装置1に与える影響を抑えることができる。
【0073】
(1-4)スリット62cの周方向での隙間W1は、各第1集磁部41b,41cが互いに周方向で隣接する隙間W2よりも小さく設定されている。この場合、スリット62cが隙間W1を有していたとしても、各部位71,72の間の隙間W2を外部磁場が通過し難くなる。これは、外部磁場がセンサ装置1へ与える影響を抑えるのに効果的である。
【0074】
(1-5)シールド内径L1は、リング外径L2bよりも小さく設定されている。この場合、第1シールド部61は、本体被覆部61aによって各集磁リング41,42の周方向外周を覆うだけではなく、縁部61bによって軸方向における各集磁リング41,42の両端を部分的に覆うことができる。このため、磁気シールド60では、軸方向から侵入しようとする外部磁場を第1シールド部61の縁部61bを通じて各磁気センサ51、52への影響を抑えるように誘導することができる。これは、外部磁場がセンサ装置1へ与える影響を抑えるのに効果的である。
【0075】
(1-6)各第1縁分割部71bは、複数のスリット61dを有するようにしている。本実施形態では、磁気シールド60について、例えば、第1部位71について、第1本体分割部71aの軸方向の端部を当該本体分割部71aに対して径方向の内側へ屈曲させて各第1縁分割部71bを成形する手法を採用している。こうした成形する手法を採用する場合であっても、各第1縁分割部71bを成形する際の作業がし易くなる。これは、第2部位72についても同様である。
【0076】
(1-7)上述のように、例えば、第1本体分割部71aの軸方向の端部を当該本体分割部71aに対して径方向の内側へ屈曲させて各第1縁分割部71bを成形する手法を採用する場合、縁部を成形するべく屈曲させる際の起点となる根本の部位では、応力の発生が懸念される。これは、応力の発生により生じる残留応力が磁気シールド60の磁気特性を変化させるからである。
【0077】
これに対して、本実施形態では、第1シールド部61について、第1本体分割部71aの軸方向の両端部と、各第1縁分割部71bの径方向の外側の端部とは、アール状をなす接続部位71dを通じて接続されるようにしている。そして、接続部位71dについて、曲率半径R1は、第1本体分割部71aの径方向及び各第1縁分割部71b軸方向における厚みである板厚Tの2倍の値を基準として、製造公差等の各種の公差を考慮して若干大きく設定されている。この場合、磁気シールド60では、例えば、第1本体分割部71aの軸方向の端部を当該本体分割部71aに対して径方向の内側へ屈曲させて各第1縁分割部71bを成形する手法を採用したとしても、当該屈曲の根本の部位への応力の発生を抑えることができる。したがって、応力の発生により残留応力を生じることが抑えられ、磁気シールドの磁気特性の変化が抑えられる。これは、第2部位72の各第2縁分割部72bについても同様である。
【0078】
(1-8)二次成形工程の際、第1軸孔81には、例えば、リング内径L2aと略同径の治具が挿入される場合がある。治具は、第1モールド体80を所定の位置に保持等する。この場合、シールド内径L1とリング内径L2aとの関係によっては、磁気シールド60と上記治具との干渉が懸念される。これに対して、本実施形態では、上記治具を使用するにしてもシールド内径L1をリング内径L2aよりも大きく設定することで磁気シールド60と上記治具との干渉を回避することができる。
【0079】
(1-9)本実施形態のセンサ装置1では、磁気シールド60を用いることで、各集磁リング41,42を径方向や軸方向から取り囲むように磁気シールド60を組み付ける作業が煩雑になることを抑えることができる。
【0080】
(第2実施形態)
次に、磁気シールド、センサ装置、及び磁気シールドの組み付け方法の第2実施形態を図面に従って説明する。なお、説明の便宜上、同一の構成については上記第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0081】
図7に示すように、本実施形態のセンサ装置1は、上記第1実施形態では磁気シールド60がハウジング100の内部に収容されて構成されていたのに対して、磁気シールド60が本実施形態のハウジング110の外部に露出した状態で嵌め込み固定されている点が異なる。
【0082】
具体的には、ハウジング110は、磁気シールド60を外部から嵌め込むための嵌合部120を有する。なお、嵌合部120は、磁気シールド60を嵌め込んだ状態で、各集磁リング41,42の各本体部41a,42aを径方向や軸方向から取り囲むことができるように構成されていればよい。例えば、嵌合部120は、周方向の全体に連続的に延びる溝状であってもよいし、周方向の一部、例えば、各スリット61d,62cに対応する部位を除いた間で連続的に延びる溝状であってもよい。
【0083】
図8に示すように、本実施形態の磁気シールド60について、シールド内径L1は、リング内径L2a以下に設定されるとともに、ヨーク外径L3よりも小さく設定されている。また、シールド内径L1は、永久磁石20の外径である磁石外径L4よりも大きく設定されている。
【0084】
<シールド内径L1>
ここで、シールド内径L1をヨーク外径L3よりも小さく設定する場合、センサ装置1での検出結果としての操舵トルクの変動であるトルク変動に影響を与えることが考えられる。これは、シールド内径L1をヨーク外径L3に対して小さくしていくと、磁石外径L4に近付いていくことに起因する。シールド内径L1が磁石外径L4に近付いていくと、磁気シールド60が形成する磁気回路は、永久磁石20が発生させる磁界の磁気回路となる。この場合、センサ装置1の各磁気センサ51,52で検出されるべき磁束の一部が磁気シールド60を通過してしまい、これがトルク変動を大きくするという関係を示す。こうした関係は、磁石外径L4の大きさを用いてシールド内径L1の大きさを定義することで説明することができる。
【0085】
例えば、図9に、シールド内径L1の大きさを変化させた場合についてのトルク変動の特性として実験的に得られた結果を示す。詳しくは、横軸はシールド内径L1であり、縦軸はトルク変動の大きさである。
【0086】
図9に示すように、シールド内径L1が最も大きい値である最大値Lmaxからヨーク外径L3と一致する値である第1閾値Lth1に向かって小さくなるほど、トルク変動が小さく抑えられるように変動する特性を示す結果が得られた。これは、シールド内径L1が小さくなるほど、各集磁リング41,42に伝達する外部磁場を磁気シールド60を通じて遮断できる範囲が拡げられることに起因したものである。なお、最大値Lmaxは、本体被覆部61aの内周面が円を形成する場合の当該円の半径の値と一致する。
【0087】
さらに続いて、シールド内径L1が小さくなると、トルク変動がさらに小さく抑えるように変動する特性を示した後、磁石外径L4と一致する付近の値である第2閾値Lth2を過ぎた後、トルク変動が大きくなるように変動する特性を示す結果が得られた。これは、シールド内径L1が磁石外径L4に近付くことで、永久磁石20が発生させる磁束として磁気シールド60を通過する磁束が多くなることに起因したものである。そして、トルク変動が小さく抑えられるように変動する特性と、トルク変動が大きくなるように変動する特性との境界は、トルク変動が最も小さく抑えられる特性点である。この特性点となる第2閾値Lth2は、ヨーク外径L3と磁石外径L4との間でこれらの中間値を基準として、さらに磁石外径L4に若干寄った大きさの値と一致する場合であることを示す結果が得られた。したがって、本実施形態では、シールド内径L1が第2閾値Lth2に設定されている。
【0088】
<磁気シールド60の組み付け方法>
以下、本実施形態のセンサ装置1の組み立て方法について、磁気シールド60の組み付け方法と合わせて説明する。
【0089】
本実施形態のセンサ装置1の組み立て方法には、大きく分けて、実施する順に沿って、一次成形工程と、二次成形工程と、組立工程と、シールド組付工程との4つの工程がある。
【0090】
図10(a)に示すように、一次成形工程では、上記第1実施形態で説明した一次成形工程と同様の方法で、各集磁リング41,42を樹脂モールドしてなる第1モールド体80を成形する。
【0091】
図10(b)に示すように、次に、二次成形工程では、第1モールド体80を樹脂モールドしてなる第2モールド体130を成形する。二次成形工程での樹脂モールドの後に、上記第1実施形態で説明した一次成形工程と同様の方法で、磁気センサ51,52が搭載されたセンサ基板等の各種の部品が第2モールド体130に対して固定される。この場合、上記センサ基板は、第1磁気センサ51が各集磁部41b,42bの間、第2磁気センサ52が各集磁部41c,42cの間にそれぞれ配置されるようにそれぞれの位置が調整されている。
【0092】
そして、第2モールド体130は、第1モールド体80の第1軸孔81を軸方向に延ばして得られる第2軸孔131を有するとともに、嵌合部120を有するように成形される。また、第2モールド体130では、第1モールド体80の全体が被覆されていてもよいし、第1モールド体80の一部が嵌合部120を通じて露出していてもよい。また、第2モールド体130では、二次成形工程を通じて成形される部位がハウジング110として機能する。
【0093】
図10(b)中に矢印Aで示すように、次に、組立工程では、二次成形工程を通じて成形された第2モールド体130、すなわちハウジング110を上記センサ基板等の各種の部品と共に、永久磁石20と各磁気ヨーク31,32とが固定された回転軸10に対して、永久磁石20が固定された入力軸11の側から被せるようにして取り付ける。組立工程での回転軸10への取り付けの際、第2モールド体130は、第2軸孔131、すなわち第1軸孔81への回転軸10の挿入を通じて取り付けられる。
【0094】
そして、第2モールド体130は、回転軸10に被せた状態で、永久磁石20と、各磁気ヨーク31,32と、各集磁リング41,42とが径方向で重なるなかで所定の配置を実現するようにそれぞれの位置が調整されている。
【0095】
図10(b)中に矢印Bで示すように、次に、シールド組付工程では、分割部位70、すなわち第1部位71と第2部位72とを、組立工程を通じて回転軸10に被せた状態の第2モールド体130、すなわちハウジング110に対して組み付ける。シールド組付工程の組み付けの際に、上記第1実施形態で説明したシールド組付工程と同様の方法で、予め準備された各部位71,72は、ハウジング110の外部から当該ハウジング110の嵌合部120にそれぞれ嵌め込まれる。この場合、各部位71,72は、境界部位である各スリット61d,62cが現れるように、ハウジング110の外部から第1モールド体80を間に挟み込み、互いに近接するように統合される。
【0096】
このシールド組付工程により、第1シールド部61と、第2シールド部62とが現れることは、上記第1実施形態で説明したのと同様である。また、磁気シールド60が組み付けされた状態の第2モールド体130では、シールド内径L1がリング内径L2aよりも小さい分だけ、各縁部61bと、各第2センサ被覆部62bとの径方向の内側の先端の一部が第1軸孔81内に突出する。この場合、第2モールド体130では、シールド内径L1がヨーク外径L3よりも小さいことで、各縁部61bと、各第2センサ被覆部62bとの径方向の内側の先端の一部が各磁気ヨーク31,32と軸方向で重なる。このようにして、磁気シールド60のセンサ装置1への組み付けが完了するとともに、センサ装置1の組み立てが完了する。
【0097】
こうした本実施形態によれば、上記第1実施形態に準じた作用及び効果に加えて、以下の効果を奏する。
(2-1)シールド内径L1は、リング内径L2aよりも小さく設定されている。この場合、第1シールド部61は、本体被覆部61aによって各集磁リング41,42の周方向外周を覆うだけではなく、縁部61bによって軸方向における各集磁リング41,42の両端を全体的に覆うことができる。このため、磁気シールド60では、軸方向から侵入しようとする外部磁場を第1シールド部61の縁部61bを通じて各磁気センサ51、52への影響を抑えるように誘導することができる。これは、外部磁場がセンサ装置1へ与える影響を抑えるのに効果的である。
【0098】
(他の実施形態)
上記各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0099】
・上記各実施形態では、例えば、図11に示すように、第1シールド部61の軸方向から見た場合の外郭が多角形状をなしていてもよい。この場合、本体被覆部61a、すなわち各本体分割部71a,72aは、各スリット61c,61dが設けられた部位をそれぞれ頂点とし、隣接する頂点の間で径方向の外側の面がそれぞれ平面をなしている。本形態によれば、各縁分割部71b,72bを成形する際の作業がし易くなる。
【0100】
・上記各実施形態において、曲率半径R1は、各本体分割部71a,72aの径方向及び各縁分割部71b,72bの軸方向における厚みである板厚Tの2倍の値と一致してもよい。また、曲率半径R1は、上記板厚Tの2倍未満に設定されていてもよい。この場合、各接続部位71d,72dやこれを同様の構成を有する部位は、アール状ではなく直角状をなす場合も含むことになる。例えば、接続部位71dが直角状をなす場合、第1部位71は、第1本体分割部71aと各第1縁分割部71bとを別部材として構成し、これらを溶接や接着等を通じて接合させて成形してもよい。これは、第2部位72についても同様である。
【0101】
・上記各実施形態において、各縁部61bでは、各スリット61cを削除してもよい。また、第1シールド部61では、スリット61dが現れないように構成してもよい。この場合、分割部位70は、第1部位71と、第2部位72との2つの部位が互いに接触することで統合される部位である。つまり、本体被覆部61aは、各部位71,72が統合された状態で、隙間なく当接してもよい。これと同様、第2シールド部62では、スリット62cが現れないように構成してもよい。つまり、各第2センサ被覆部62bは、各部位71,72が統合された状態で、隙間なく当接してもよい。
【0102】
・上記各実施形態において、例えば、図12に示すように、シールド内径L1は、リング内径L2aよりも小さい、且つ、ヨーク外径L3よりも大きく設定することもできる。この場合、第1シールド部61は、本体被覆部61aによって各集磁リング41,42の周方向外周を覆うだけではなく、縁部61bによって軸方向における各集磁リング41,42の両端を全体的に覆うことができる。その他、シールド内径L1は、リング内径L2a、リング外径L2b、又はヨーク外径L3と同径に設定することもできるし、リング内径L2a以上に設定することもできる。なお、シールド内径L1は、最大値Lmaxと一致してもよい。つまり、第1シールド部61では各縁部61bを削除してもよいし、第2シールド部62では各第2センサ被覆部62bを削除してもよい。
【0103】
・上記各実施形態において、スリット62cについて、隙間W1は、例えば、外部磁場が通過し難くなるのであれば、隙間W2以上に設定することもできる。その他、隙間W1は、軸方向からの外部磁場の侵入を考慮する必要がなければ、隙間W2に関係なく設定してもよい。
【0104】
・上記各実施形態では、スリット62cは、互いに隣接して設けられた各第1集磁部41b、41c又は各第2集磁部42b,42cの周方向の中心から周方向のいずれかにずらして配置してもよい。この場合、各部位71,72は、非対象構造を有することになる。なお、各部位71,72が非対称構造を有する構成では、スリット62cを各第2センサ被覆部62bに設けないで、当該スリット62cの機能を各縁部61bに設けられた各スリット61cのいずれかで代用するようにしてもよい。これは、分割部位70を3つ以上に分割する等、磁気シールド60に対する設計の自由度を高めるのに効果的である。
【0105】
・上記各実施形態では、各部位71,72を軸方向に分割するように構成することもできる。この場合、各第1センサ被覆部62aの軸方向の中心には、スリット62cに対応するスリットを設けるようにすればよい。これと合わせて、本体被覆部61aは、軸方向の中心から当該軸方向で2つに分割されるように構成すればよい。本形態では、各第2センサ被覆部62bは、周方向に連続的に延びている。これは、各集磁部41b,42c、及び各集磁部41c,42cがそれぞれ周方向で重なるように構成される場合に有効である。
【0106】
・上記各実施形態では、各集磁リング41,42について、集磁部をそれぞれ1つのみとしてもよいし、3つ以上としてもよい。この場合、磁気センサ50は、集磁部の数と同数となるように、1つのみとしたり、3つ以上としたりすればよい。
【0107】
・上記各実施形態において、各部位71,72では、上記SPCC又は上記SECC以外の金属の材料を採用してもよいし、熱可塑性の樹脂材料に金属粉末が含まれた樹脂材料を採用してもよい。各部位71,72として金属粉末が含まれた樹脂材料を採用する場合、各部位71,72は、金型を用いた射出成型を通じて成形することができる。
【0108】
・上記各実施形態において、各縁部61bについて、スリット61cの数は、増加させたり減少させたり適宜変更してもよい。なお、各部位71,72が非対称構造を有する構成では、各部位71,72の間でスリット61cの数を異ならせてもよい。
【0109】
・上記第2実施形態では、一次成形工程と、二次成形工程とを一の工程として実現することもできる。この場合、一次成形工程と同様にして各集磁リング41,42を纏めて樹脂モールドしてなる第2モールド体130に相当するモールド体を成形するようにすればよい。
【0110】
・上記各実施形態において、入力軸11には各磁気ヨーク31,32を固定し、出力軸12には永久磁石20を固定するようにしてもよい。この場合、出力軸12が第1軸に相当し、入力軸11が第2軸に相当する。
【0111】
・上記各実施形態において、第1集磁リング41は、第1本体部41aの第1部品と、各集磁部41b、41cを集約した第2部品との個別の2部品を一体的に固定することで得られるようにしてもよい。この場合、第1部品には、例えば、治具等の部品を介して第2部品が一体的に固定されるようにすればよい。これは、第2集磁リング42についても同様である。また、個別の2部品とする対象は、各集磁リング41,42の両方としてもよいし、各集磁リング41,42のいずれか一方のみとしてもよい。
【0112】
・上記各実施形態では、各磁気センサ51,52として磁気抵抗センサを採用してもよい。
・上記各実施形態では、センサ装置1として、トルクを検出するためのトルクセンサに具体化したが、例えば、回転軸10の回転角度を検出する機能を追加したトルクアングルセンサに具体化してもよい。
【0113】
・上記各実施形態において、センサ装置1は、電動パワーステアリングのステアリング軸に加わるトルクを検出したが、操舵部と転舵部との間の動力伝達が分離したステアバイワイヤ式の操舵装置の回転軸に加わるトルクを検出してもよい。
【符号の説明】
【0114】
1…センサ装置
10…回転軸
11…入力軸(第1軸)
12…出力軸(第2軸)
13…トーションバー
20…永久磁石
30…磁気ヨーク
31…第1磁気ヨーク
32…第2磁気ヨーク
40…集磁リング
41…第1集磁リング
42…第2集磁リング
41a…第1本体部
41b,41c…第1集磁部
42a…第2本体部
42b,42c…第2集磁部
50…磁気センサ
51…第1磁気センサ
52…第2磁気センサ
60…磁気シールド
61…第1シールド部
61a…本体被覆部
61b…縁部
61c,61d…スリット
62…第2シールド部
62c…スリット(境界部位)
70…分割部位
71…第1部位
71d…接続部位
72…第2部位
72d…接続部位
80,90,130…モールド体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12