(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130134
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】更生管の位置調整用スペーサー及びこれを用いた位置調整方法
(51)【国際特許分類】
F16L 1/00 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
F16L1/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029128
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】592057385
【氏名又は名称】株式会社湘南合成樹脂製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100075292
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】神山 隆夫
(57)【要約】
【課題】第1と第2のクサビ状部材の係止を容易に解除できるとともに、スペーサー内に多量の充填材を流し込むことを可能にする。
【解決手段】所定ピッチで歯51bが形成された第1のクサビ状部材51と、弾性変形片52cが形成された第2のクサビ状部材52を備える。弾性変形片には、挿入方向には第1のクサビ状部材に対して移動でき逆方向には移動が阻止されるように、歯51bと係合する歯52bが形成される。第2のクサビ状部材には、既設管と更生管の隙間に注入される充填材を通過させる充填材通過穴52eが形成される。弾性変形片を充填材通過穴内に弾性変形させると、第1と第2のクサビ状部材の歯の係合が外れ、第2のクサビ状部材が挿入方向と逆方向に移動できるようになる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管とこの既設管を更生する更生管との隙間に挿入され、更生管の既設管に対する位置を調節する更生管の位置調整用スペーサーであって、
挿入方向の奥側が高くなるように所定角度で傾斜し、所定ピッチで歯が形成されて傾斜方向に延びるガイド溝を備えた第1のクサビ状部材と、
第1のクサビ状部材に傾斜面を合わせて重ねられ、スペーサー全体の高さが高くなる挿入方向には第1のクサビ状部材に対する移動ができるとともに逆方向には移動が阻止されるように、前記ガイド溝の歯と係合する歯が形成された第2のクサビ状部材と、を備え、
前記第2のクサビ状部材には、既設管と更生管の隙間に注入される充填材を通過させる充填材通過穴が形成されており、
前記第2のクサビ状部材の歯が形成された部分は、前記充填材通過穴内に弾性変形することが可能な弾性変形片となっていて、該弾性変形片を充填材通過穴内に弾性変形させたときは、第2のクサビ状部材の歯とガイド溝の歯との係合が外れ、第2のクサビ状部材が挿入方向と逆方向に移動可能になることを特徴とする更生管の位置調整用スペーサー。
【請求項2】
前記充填材通過穴は、第2のクサビ状部材の幅方向に全域に渡って延びていることを特徴とする請求項1に記載の更生管の位置調整用スペーサー。
【請求項3】
前記第2のクサビ状部材の歯とガイド溝の歯は同じ又は異なるピッチで形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の更生管の位置調整用スペーサー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の更生管の位置調整用スペーサーを、既設管と更生管の隙間に挿入して更生管の位置調整を行う位置調整方法であって、
前記第1と第2のクサビ状部材を重ね合わせた状態で既設管と更生管の隙間に挿入した後、第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動させ、また該挿入方向と逆方向に移動させることにより、スペーサー全体の高さを調整し更生管の既設管に対する位置調整を行うことを特徴とする位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管とこの既設管を修復ないし更生する更生管の隙間に挿入され、更生管の位置調整を行うための位置調整用スペーサー及びこれを用いた位置調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管等の既設管内で外径が既設管の内径より少し小さな更生管を設け、更生管外周と既設管の内壁面の隙間に充填材を充填し硬化させて複合管を構築することにより、既設管を修復あるいは更生する既設管更生方法が知られている。その既設管更生工事において、通常は既設管内での更生管の上下左右方向の位置を既設管と同心の位置から少し下方にずれた位置で、その外周の下端が既設管の管底に接する位置に調整して更生管を固定する必要がある。
【0003】
これは、更生管の管底を可能な限り既設管の管底に近付けて低くして既設管内の流体の流れを確保するためと、既設管の損傷の大部分は、その上側部分に生じるので、上側で充填材を厚くして強度を強くするためである。これに対して更生管は、プラスチック材からなることから比重が充填材より小さく、充填材に浮いてしまうので、これを下方に押えるために、上記のように位置調整する必要がある。
【0004】
このような更生管の位置調整のために、挿入方向の奥側が高くなるように所定角度で傾斜した第1のクサビ状部材と、第1のクサビ状部材の傾斜角度と同角度で傾斜し、第1のクサビ状部材に傾斜角度面を合わせて重ねられる第2のクサビ状部材と、第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動可能にし、逆方向には移動できないように係止する係止手段と、を設け、スペーサー全体の高さを所定の高さに調整する構成が知られている(下記特許文献1)。
【0005】
また、第2のクサビ状部材に、第1のクサビ状部材との係止を解除できる弾性変形片を設け、この弾性変形片を弾性変形させて、両クサビ状部材の係止を解除し、第2のクサビ状部材を挿入方向と逆方向に移動させる構成が知られている(下記特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-265070号公報
【特許文献2】特開2016-176571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の構成では、スペーサー全体の高さを所定の高さに調整して不都合なときは、弾性変形片を弾性変形させて、第2のクサビ状部材を逆方向に移動させ、スペーサー全体の高さを再調整できる。しかしながら、弾性変形片を弾性変形させるとき、弾性変形片が第2のクサビ状部材の下面に当たってしまい、弾性変形片の変位量が少なく、第1のクサビ状部材との係止を解除させるのが困難である、という問題があった。
【0008】
また、更生管外周と既設管の内壁面の隙間に充填される充填材を流通させるために、スペーサーには、充填材を流通させる長孔が形成される。しかしながら、従来の構成では、充填材が充分スペーサーに流れ込まず、スペーサー内に空洞が発生する、という問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、弾性変形片の変位量を大きくして、第1と第2のクサビ状部材の係止を容易に解除できるとともに、スペーサー内に多量の充填材を流し込むことができる更生管の位置調整用スペーサー及びこれを用いた位置調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
既設管とこの既設管を更生する更生管との隙間に挿入され、更生管の既設管に対する位置を調節する更生管の位置調整用スペーサーであって、
挿入方向の奥側が高くなるように所定角度で傾斜し、所定ピッチで歯が形成されて傾斜方向に延びるガイド溝を備えた第1のクサビ状部材と、
第1のクサビ状部材に傾斜面を合わせて重ねられ、スペーサー全体の高さが高くなる挿入方向には第1のクサビ状部材に対する移動ができるとともに逆方向には移動が阻止されるように、前記ガイド溝の歯と係合する歯が形成された第2のクサビ状部材と、を備え、
前記第2のクサビ状部材には、既設管と更生管の隙間に注入される充填材を通過させる充填材通過穴が形成されており、
前記第2のクサビ状部材の歯が形成された部分は、前記充填材通過穴内に弾性変形することが可能な弾性変形片となっていて、該弾性変形片を充填材通過穴内に弾性変形させたときは、第2のクサビ状部材の歯とガイド溝の歯との係合が外れ、第2のクサビ状部材が挿入方向と逆方向に移動可能になることを特徴とする。
また、本発明は、このようなスペーサーを用いて、第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に対して挿入方向に移動させ、また該挿入方向と逆方向に移動させることにより、スペーサー全体の高さを調整し更生管の既設管に対する位置調整を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弾性変形片を充填材通過穴内に弾性変形させることができるので、弾性変形量を大きくでき、第1と第2のクサビ状部材の歯の係合を簡単に解除して、第2のクサビ状部材を逆方向に移動させることができる。また、弾性変形片が変形して入り込む充填材通過穴が第2のクサビ状部材の幅方向に全域に渡って延びているので、スペーサー内に多量の充填材が流れ込み、スペーサー内に形成される空洞を最小限にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】更生管の組み立てに使用されるセグメントの構造を示した斜視図である。
【
図2】セグメントを周方向に連結して管ユニットを組み立てた状態を示す斜視図である。
【
図3】管ユニットのセグメントを連結ボルトを用いて管長方向に連結する状態を示した説明図である。
【
図4】管ユニットを組み立てて更生管を既設管内に敷設する状態を説明した説明図である。
【
図5】敷設された更生管の外周と既設管の内壁面との隙間に充填材を注入する状態を示す断面図である。
【
図6】更生管の位置調整用のスペーサーを構成する第1のクサビ状部材の構造を示す斜視図である。
【
図7】スペーサーを構成する第2のクサビ状部材の下面側を示す斜視図である。
【
図8】第2のクサビ状部材を第1のクサビ状部材に重ね合わせる状態を示す説明図である。
【
図9】第2のクサビ状部材の第1のクサビ状部材に対する移動を、両クサビ状部材の幅方向中央で断面して説明する断面図である。
【
図10】スペーサーにより更生管の位置調整を行う状態を示す説明図である。
【
図11】第1と第2のクサビ状部材の歯の係合を解除させる過程を示す断面図である。
【
図12】第2のクサビ状部材を挿入方向と逆方向に移動させる状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を、添付図面に示す実施例に基づいて説明する。本発明は、下水管、上水管、トンネル、あるいは農業用水路などの大口径の既設管を更生あるいは修復するのに適している。実施例では、更生管は、管長方向に直交する断面形状が円形として説明されるが、矩形など円形以外の形状の更生管にも本発明を適用できることは勿論である。更に、断面形状が管として閉じた形状でなく、例えば馬蹄形や半円形、凹字形など片側が開いた形状である場合にも管と見なして本発明を適用することができるものである。
【0014】
この明細書において、管長方向とは
図2で管ユニット10の管の長さ方向に延びる矢印Xで示した方向を、周方向とは管ユニット10の円の周方向をいう。
【0015】
図1には、更生管用セグメント1(以下、単にセグメントという)の構造が図示されている。セグメント1は、更生管の内周面を構成する内面板101と、該内面板101の周方向に延びる両側に垂直に立設された同じ板厚の側板102、103と、内面板101の管長方向に延びる両端に垂直に立設された端板104、105とからなるプラスチックでできた一体成形のブロック状の部材である。
【0016】
内面板101の上面にはセグメント1の機械的強度を補強するために、側板102、103の内側に、側板102、103と同じ板厚並びに同様な形状の複数の内部板106、107が側板102、103と平行に等間隔に立設される。
【0017】
セグメント1は、円周を複数等分する所定角度、例えば6等分する60度の円弧状に湾曲した形状となっているが、既設管の断面形状、あるいはその大きさ、あるいは既設管の補修箇所に応じて、直方体あるいは直角に丸みを付けて折り曲げた形などにすることもできる。
【0018】
側板102、103には、セグメント1を管長方向に連結するために、連結ボルト11及びナット12(
図3)を通すための円形の挿通穴102a、103aが周方向に等間隔に複数形成される。内部板106にも、連結ボルト11を通すための円形の挿通穴106aが等間隔に複数形成され、内部板107には、連結ボルト11が挿入でき挿通穴として機能する切り欠き107aが等間隔に複数形成される。これらの挿通穴102a、103a、106a、並びに切り欠き107aは、それぞれ周方向の位置が一致している。
【0019】
端板104、105には、セグメント1を周方向に連結するボルト等の連結ボルトを通すための円形の挿通穴104a、105aが複数形成される。セグメント1はその端板105と他のセグメントの端板104を当接させ、ボルト6とナット7(
図3)を、螺合させることにより周方向に連結させることができる。
【0020】
セグメントを順次周方向に一周分連結させると、
図2に示すような管長方向Xに垂直に所定幅Dを有するリング状の管ユニット10を組み立てることができる。管ユニット10は、その外径が更生すべき既設管の内径より少し小さな値となっている。なお、
図2では、セグメント1の主要な構造部材である内面板101、側板102、103、端板104、105が図示されていて、内部板106、107等の補強構造は、煩雑さを避けるために、図示が省略されている。
【0021】
このような管ユニット10は、
図3に示したように、順次管長方向に連結される。
図3において、管ユニットのセグメント1a、1b、1cの内部板106には、複数の金属製ナット12が連結ボルト13を用いて固定される。ナット12の管長方向の長さは、側板102と内部板106の間隔より長く、側板102からはみ出てセグメントの他方の側板103の厚さと同等あるいはそれ以上となっている。連結ボルト11は、一端にナット12と螺合するネジ部11aが形成され、他端につば14aを有する頭部14が固定された円柱状の細長いボルトである。
【0022】
管ユニットのセグメント1aを隣接する他の管ユニットのセグメント1bに連結する場合、セグメント1bの側板102からはみ出ているナット12を、セグメント1aの側板103の穴103aに通過させ、両セグメント1a,1bの側板103、102を突き合わせる。
【0023】
続いて、連結ボルト11を、セグメント1aの側板102の挿通穴102a、内部板106の挿通穴106a、内部板107の切り欠き107aに通し、ネジ部11aをセグメント1bに固定されているナット12にねじ込む。これにより、連結ボルト11とナット12が連結される。その後、頭部14のつば14aがセグメント1aの最左端の内部板106に圧接するまで連結ボルト11をナット12にねじ込み、両セグメント1a、1bをボルト締めして管長方向に連結する。
【0024】
セグメント1は、
図4に示すように、マンホール20を介して既設管21内に搬入され、セグメント1を周方向に順次連結して管ユニット10が組み立てられる。続いて、管ユニット10のセグメントが、
図3に示したように、順次管長方向に連結され、既設管21内に更生管40が敷設され、更生管40と既設管21間の隙間に充填材が充填される。
【0025】
敷設した更生管40は、プラスチック材からなり比重が小さく充填材に浮くので、これを下方に押えて既設管21と同心の位置から少し下方にずれた位置で、その外周の下端が既設管21の管底に接する位置に位置調整する必要がある。このため、本実施例では、管ユニット10を複数個連結して更生管40を所定長さ(例えば1m位)組み立てる毎に、
図5に示すスペーサー50を更生管40の上側外周の複数箇所においてその外周と既設管21の内壁面の間に挿入して位置調整を行う。
【0026】
スペーサー50は、
図6に上面側を示すプラスチック製の第1のクサビ状部材51と
図7に下面側を示すプラスチック製の第2のクサビ状部材52を
図8に示すように上下に重ねて構成される。
【0027】
第1のクサビ状部材51は、全体の外形がほぼクサビ形状で、上面が挿入方向の奥側が高くなるように所定角度(例えば約10度)で傾斜し下面が水平になっていて、幅方向の中央部には所定幅のガイド溝51aが傾斜線方向に沿って直線状に形成される。ガイド溝51aの底面には多数の歯51bが、例えば数mm程度の短い所定ピッチで鋸歯状に形成される。
【0028】
ガイド溝51aの幅方向の両側には、充填材を通過させるための多数(図示例では16個)の長孔51cが形成され、第1のクサビ状部材51の一方端部には、第1のクサビ部材51をセグメント1に係止するための足51dが形成される。
【0029】
図7に下面側を示す第2のクサビ状部材52は、全体の外形がクサビ形状であって、長さと幅が第1のクサビ状部材51と同じであり、
図7で見て上面が第1のクサビ状部材51の上面と同じ角度で傾斜し、
図7で見て下面が水平になっている。
【0030】
第2のクサビ状部材52の幅方向の中央部には、第1のクサビ状部材51のガイド溝51aに嵌合する凸部52aが形成される。凸部52aの一端側は、上下方向に厚さが薄くなっていて、
図7で見て下方に弾性変形するように構成されている。以下で、薄くなった凸部52aの部分を、弾性変形片52cという。
【0031】
弾性変形片52cには、複数(
図7の例では2つ)の歯52bが第1のクサビ状部材51の歯51bのピッチの整数倍の大きなピッチ(例えば10~20mm程度)で形成される。
図8に示したように、第2のクサビ状部材52の凸部52aを第1のクサビ状部材51のガイド溝51aに嵌合し、両クサビ状部材51,52の傾斜面を合わせると、弾性変形片52cの歯52bがガイド溝51aの歯51bと係合するようになる。
【0032】
第2のクサビ状部材52には、凸部52aの両側に充填材を通過させるための多数(図示例では6個)の長孔52dが形成され、弾性変形片52cの部分にも、充填材通過穴52eが形成される。充填材通過穴52eは、長孔52dより大きく、第2のクサビ状部材52の幅方向全長に渡って延びており、多量の充填材が流通する大きさになっている。また、弾性変形片52cは、後述するように、支障なく充填材通過穴52e内部に弾性変形できるような長さになっている。
【0033】
図8に示したように、第1と第2のクサビ状部材51,52の傾斜面を合わせ、第2のクサビ状部材52の凸部52aを第1のクサビ状部材51のガイド溝51aに嵌合すると、第2のクサビ状部材52の歯52bは、第1のクサビ状部材51の歯51bの何れかと係合し、第1と第2のクサビ状部材51,52の傾斜面と反対側の面は互いに平行になる。
【0034】
、
図9に矢印で示すように第2のクサビ状部材52を挿入方向に押圧すると、歯51b、52bの一方側係合端が傾斜面となっているので、第2のクサビ状部材52を挿入方向に移動させることができ、スペーサー50の全体の高さHを増大させて所望の高さに調整することができる。一方、第2のクサビ状部材52を逆方向に引く場合には、歯51b、52bの他方側係合端がほぼ垂直なっているので、第2のクサビ状部材52の逆方向移動が阻止される。
【0035】
第1と第2のクサビ状部材51,52の歯51b、52bが互いに係合している
図11の上段に示した状態で、矢印で示す方向に工具を挿入する。続いて工具で弾性変形片52cを持ち上げて、
図11の下段に示したように、弾性変形片52cを充填材通過穴52e内に弾性変形させると、歯51b,52bの係合が解除される。係合が解除されると、
図12に示すように、第2のクサビ状部材52を、図中矢印方向に移動させることが可能となり、スペーサー全体の高さを、低くなるように調整することが可能になる。なお、弾性変形片52cの先端は、工具の挿入が容易になるように、傾斜面となっている。
【0036】
以上のような構成で、スペーサー50を用いて更生管40の位置調整を行う場合、第1と第2のクサビ状部材51を重ね合わせた状態で既設管21と更生管40の隙間に挿入し、
図10に示したように、第1のクサビ状部材51の足51dをセグメント1の内部板106に係合させて第1のクサビ状部材51を固定する。続いて、第2のクサビ状部材52を矢印Aで示す挿入方向に押圧して移動させることにより、スペーサー全体の高さを順次段階的に増大させ、所望の隙間の寸法に対応した高さに調整することができる。
【0037】
スペーサー全体の高さが高すぎた場合には、
図11に示したように、工具などで弾性変形片52cを持ち上げて、弾性変形片52cを充填材通過穴52e内に弾性変形させると、歯51b,52bの係合が解除される。これにより、
図12に示したように、第2のクサビ状部材52を逆方向に移動させることができ、スペーサー全体の高さが低くなるように調整することが可能になる。
【0038】
本実施例では、第1のクサビ状部材51の歯51bと係合する第2のクサビ状部材52の歯52bが形成された部分が弾性変形片52cとなっていて、弾性変形片52cを充填材通過穴52e内に弾性変形させることができる。これにより弾性変形片52cの弾性変形量が大きくなり、歯51b,52bの係合を簡単に解除することができ、第2のクサビ状部材52の逆方向移動を容易にすることができる。
【0039】
このように、第2のクサビ状部材52を第1のクサビ状部材51に対して挿入方向あるいは逆方向に移動させて更生管40の位置を調整したあと、
図5に示すように、充填材30を既設管21の内壁面と更生管40の外周の隙間及びセグメント1の内面板101の外側のスペースに充填材30を充填する。充填材30は、セグメント1の適当な位置に孔41aを形成して、これに充填用ホース41を接続し、このホース41から注入される。
【0040】
第1のクサビ状部材51と第2のクサビ状部材52のそれぞれに長孔51cや長孔52d等が形成されており、スペーサー50に充填材30が流れ込んで流通するので、スペーサー内に空洞ができることはない。また、弾性変形片52cが変形して入り込む充填材通過穴52eは、第2のクサビ状部材52の幅方向に全域に渡って延びているので、スペーサー50内に多量の充填材30が流れ込み、スペーサー内に形成される空洞を最小限にできる。
【0041】
なお、第1のクサビ状部材51の歯51bのピッチは、第2のクサビ状部材52の歯52bのピッチと異なっているが、同じピッチとすることもできる。
【0042】
また、本発明は、既設管更生工事における更生管の位置調整に限らず、固定物と位置調整される物との隙間にスペーサーを挿入して行う位置調整にも広く用いることができることは勿論である。
【符号の説明】
【0043】
1 セグメント
10 管ユニット
21 既設管
40 更生管
50 スペーサー
51 第1のクサビ状部材
51a ガイド溝
51b 歯
52 第2のクサビ状部材
52a 凸部
52b 歯
52c 弾性変形片
52e 充填材通過穴