(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130153
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/355 20060101AFI20220830BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20220830BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220830BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20220830BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220830BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20220830BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20220830BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20220830BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K31/355
A61P39/06
A61P29/00
A61P9/00
A61K47/14
A61K47/44
A61K9/08
A61K9/72
A61K9/06
A61K9/12
A61K9/107
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029163
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薄井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 みすず
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA24
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB24
4C076BB25
4C076BB29
4C076BB31
4C076CC04
4C076CC11
4C076CC50
4C076DD09
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD39
4C076DD46
4C076EE23
4C076EE53
4C076FF18
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA09
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA20
4C086ZA36
4C086ZB11
4C086ZC37
(57)【要約】
【課題】トコフェロール類のポリオレフィン系樹脂製容器への吸着を抑制する新たな手段の提供。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)トコフェロール類;
(B)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;
(C)ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油;
を含有する液状又は半固形状の組成物が、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなる、医薬製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)トコフェロール類;
(B)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;
(C)ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油;
を含有する液状又は半固形状の組成物が、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなる、医薬製剤。
【請求項2】
成分(A)が、トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロールニコチン酸エステル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項3】
成分(B)が、ポリオキシエチレン(4~60)C12~30脂肪酸エステルである、請求項1又は2記載の医薬製剤。
【請求項4】
成分(C)が、オキシエチレンの繰り返し単位数が2~150のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油である、請求項1~3のいずれか1項記載の医薬製剤。
【請求項5】
剤形が、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤又はシロップ剤である、請求項1~4のいずれか1項記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
dl-α-トコフェロール酢酸エステルに代表されるトコフェロール類は、例えば抗酸化作用、抗炎症作用、血行促進作用など有用な薬理作用を有する成分であり、点眼剤をはじめ種々の液状・半固形状組成物に配合されている。しかしながら、トコフェロール類は脂溶性の成分であり、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂製の容器等に吸着し、保存時において経時的に含量が低下することが知られている(例えば、非特許文献1など)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】家庭薬研究、No.8、24~30頁、1989年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、トコフェロール類のポリオレフィン系樹脂製容器への吸着を抑制する新たな手段の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討したところ、トコフェロール類を含有する液状又は半固形状の組成物に、さらにポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油の組み合わせを含有せしめることによって、トコフェロール類のポリオレフィン系樹脂製容器への吸着が抑制され、含量安定性の改善された医薬製剤となることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)トコフェロール類;
(B)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;
(C)ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油;
を含有する液状又は半固形状の組成物が、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなる、医薬製剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、トコフェロール類のポリオレフィン系樹脂製容器への吸着を抑制でき、組成物中のトコフェロール類の含量安定性を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本明細書において、「w/v%」は質量対容積百分率を意味し、具体的には、100mLの組成物当りに含まれる各成分の質量(g)を意味する。
<成分(A)>
本発明において「トコフェロール類」とは、トコフェロール、トコトリエノール及びそれらの誘導体(例えば、酢酸エステル、コハク酸エステル、ニコチン酸エステル等のエステル化誘導体など)並びにそれらの塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩など)から選ばれる1種又は2種以上を意味する。ここで、トコフェロールとしては、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールのいずれであってもよいが、α-トコフェロールが好ましい。また、トコトリエノールとしては、α-トコトリエノール、β-トコトリエノール、γ-トコトリエノール、δ-トコトリエノールのいずれであってもよいが、α-トコトリエノールが好ましい。本発明においては、α-トコフェロール、α-トコフェロール酢酸エステル、α-トコフェロールコハク酸エステル及びα-トコフェロールニコチン酸エステル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。なお、トコフェロールやトコトリエノールには光学異性体が存在し得るが、本発明においては、特に指定しない限りいずれの異性体も含まれる。すなわち、本発明において、トコフェロール類の成分名として特定の光学異性体を指定しない限り、斯かる成分表記は各種光学異性体単独及びそれらの任意の割合の混合物の全てを包含し、単一の光学異性体であってもよく各種光学異性体の任意の割合の混合物であってもよい(例えば、「α-トコフェロールの酢酸エステル」との記載は、dl-α-トコフェロールの酢酸エステル、d-α-トコフェロールの酢酸エステルのいずれをも包含するものである。)。また、本発明のトコフェロール類としては、第十七改正日本薬局方に収載の「トコフェロール」、「トコフェロールコハク酸エステルカルシウム」、「トコフェロール酢酸エステル」、「トコフェロールニコチン酸エステル」などを好適に用いることができる。
これらのトコフェロール類は公知の化合物であり、公知の方法により製造すればよく、また、市販品を使用してもよい。
【0009】
本発明においてトコフェロール類としては、トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロールニコチン酸エステル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステルカルシウム、トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロールニコチン酸エステルよりなる群から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、d-α-トコフェロール、d-α-トコフェロールコハク酸エステルカルシウム、d-α-トコフェロール酢酸エステル及びd-α-トコフェロールニコチン酸エステルよりなる群から選ばれる1種又は2種以上がさらに好ましく、d-α-トコフェロール酢酸エステルが特に好ましい。
【0010】
組成物中のトコフェロール類の含有量は特に限定されず、使用目的等に応じて適宜検討して決定すればよいが、組成物全容量に対して0.00001~1w/v%含有するのが好ましく、0.0001~0.5w/v%含有するのがより好ましく、0.001~0.1w/v%含有するのがさらに好ましく、0.005~0.05w/v%含有するのが特に好ましい。
【0011】
<成分(B)>
本発明において「ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル」とは、ポリアルキレングリコールと脂肪酸のエステルを意味し、本発明においては、単一種のエステル、あるいは複数種のエステルの混合物を使用することができる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の脂肪酸が挙げられ、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、直鎖の飽和脂肪酸が好ましい。また、その炭素数は特に限定されないが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、12~30が好ましく、14~28がより好ましく、16~26が特に好ましい。このような脂肪酸としては、具体的には例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノリン酸、リノレニン酸、エレオステアリン酸、ベへニン酸、ヘキサコサン酸等が挙げられる。
本発明において、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、炭素数12~30の脂肪酸が好ましく、炭素数16~26の直鎖の飽和脂肪酸がより好ましく、ステアリン酸が特に好ましい。
本発明において、エステルは特に限定されず、モノエステルでもジエステルでもよい。
【0012】
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルにおける、繰り返し単位を形成するオキシアルキレン基は特に限定されず、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が挙げられる。また、その炭素数は特に限定されないが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2~3が特に好ましい。このようなオキシアルキレン基としては、具体的には例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基などが挙げられる。
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルにおける、オキシアルキレン基の繰り返し単位数(平均付加モル数)は正の整数であれば特に限定されないが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、2~70が好ましく、3~65がより好ましく、4~60が更に好ましく、4~50が特に好ましい。なお、繰り返しを形成する複数のオキシアルキレン基は互いに同一でも異なっていてもよい。具体的には例えばポリオキシエチレン基のようにオキシエチレンのみで繰り返しを形成してもよいし、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのように異なる複数種のオキシアルキレン基で繰り返しを形成してもよい。
これらのポリオキシアルキレン脂肪酸エステルは公知の化合物であり、公知の方法により製造すればよく、また、市販品を使用してもよい。
【0013】
また、本発明においてポリオキシアルキレン脂肪酸エステルは、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、グリフィンの式により求められるHLBの値が4~20であるのが好ましく、7~17であるのがより好ましく、10~14であるのが特に好ましい。
【0014】
本発明においてポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとしては、例えば以下のもの(なお、数字は当該ポリオキシアルキレンの繰り返し単位数(平均付加モル数)を示す。)が挙げられる。
モノステアリン酸エチレングリコールなどのエチレングリコールとステアリン酸のモノエステル;
ポリエチレングリコール(2)モノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(5)モノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(10)モノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(20)モノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(30)モノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(40)モノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(50)モノステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステルなどのポリエチレングリコールとステアリン酸のモノエステル;
ポリエチレングリコール(2)ジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(4)ジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(6)ジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(8)ジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(12)ジステアリン酸エステルなどのポリエチレングリコールとステアリン酸のジエステル;
ポリエチレングリコール(6)モノオレイン酸エステル、ポリエチレングリコール(10)モノオレイン酸エステルなどのポリエチレングリコールとオレイン酸のモノエステル;
ポリエチレングリコール(2)ジオレイン酸エステル、ポリエチレングリコール(4)ジオレイン酸エステル、ポリエチレングリコール(6)ジオレイン酸エステル、ポリエチレングリコール(8)ジオレイン酸エステル、ポリエチレングリコール(12)ジオレイン酸エステルなどのポリエチレングリコールとオレイン酸のジエステル;
ポリエチレングリコール(3)モノイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(6)モノイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(8)モノイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(10)モノイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(12)モノイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(20)モノイソステアリン酸エステルなどのポリエチレングリコールとイソステアリン酸のモノエステル;
ポリエチレングリコール(2)ジイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(4)ジイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(6)ジイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(8)ジイソステアリン酸エステル、ポリエチレングリコール(12)ジイソステアリン酸エステルなどのポリエチレングリコールとイソステアリン酸のジエステル。
本発明においては、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルが好ましく、炭素数12~30の脂肪酸と平均付加モル数が4~60のポリオキシエチレンとのエステル(ポリオキシエチレン(4~60)C12~30脂肪酸エステル)がより好ましく、炭素数12~30の脂肪酸と平均付加モル数が4~50のポリオキシエチレンとのエステル(ポリオキシエチレン(4~55)C12~30脂肪酸エステル)がさらに好ましく、ポリオキシエチレン(4~55)モノステアリン酸エステルが特に好ましい。
【0015】
組成物中のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよいが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、組成物全容量に対して、0.001~5w/v%含有するのが好ましく、0.01~3w/v%含有するのがより好ましく、0.1~1w/v%含有するのが特に好ましい。
【0016】
組成物中のトコフェロール類とポリオキシアルキレン脂肪酸エステルの含有質量比率は特に限定されないが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、トコフェロール類1質量部に対し、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステルを0.1~35質量部含有するのが好ましく、1~25質量部含有するのがより好ましく、3~15質量部含有するのが特に好ましい。
【0017】
<成分(C)>
本発明において「ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油」とは、ポリアルキレングリコールとヒマシ油に水素を添加して得た硬化油のエステルを意味し、本発明においては、単一種のエステル、あるいは複数種のエステルの混合物を使用することができる。
ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油における、繰り返し単位を形成するオキシアルキレン基は特に限定されず、直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が挙げられる。また、その炭素数は特に限定されないが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、2~6が好ましく、2~4がより好ましく、2~3が特に好ましい。このようなオキシアルキレン基としては、具体的には例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基などが挙げられる。
ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油における、オキシアルキレン基の繰り返し単位数(平均付加モル数)は正の整数であれば特に限定されないが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、2~150が好ましく、3~120がより好ましく、4~100が特に好ましい。なお、繰り返しを形成する複数のオキシアルキレン基は互いに同一でも異なっていてもよい。具体的には例えばポリオキシエチレン基のようにオキシエチレンのみで繰り返しを形成してもよいし、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンのように異なる複数種のオキシアルキレン基で繰り返しを形成してもよい。
これらのポリオキシアルキレン脂肪酸エステルは公知の化合物であり、公知の方法により製造すればよく、また、市販品を使用してもよい。
【0018】
また、本発明においてポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油は、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、グリフィンの式により求められるHLBの値が4~20であるのが好ましく、7~17であるのがより好ましく、10~14であるのが特に好ましい。
【0019】
本発明においてポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油としては、例えば以下のもの(なお、数字は当該オキシアルキレンの繰り返し単位数(平均付加モル数)を示す。)が挙げられる。
ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油。
本発明においては、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が好ましく、ポリオキシエチレン(5~100)硬化ヒマシ油がより好ましく、ポリオキシエチレン(20~80)硬化ヒマシ油が特に好ましい。
【0020】
組成物中のポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油の含有量は特に限定されず、適宜検討して決定すればよいが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、組成物全容量に対して、0.001~5w/v%含有するのが好ましく、0.01~3w/v%含有するのがより好ましく、0.05~1w/v%含有するのが特に好ましい。
【0021】
組成物中のトコフェロール類とポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油の含有質量比率は特に限定されないが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、トコフェロール類1質量部に対し、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油を0.01~30質量部含有するのが好ましく、0.1~20質量部含有するのがより好ましく、1~15質量部含有するのが特に好ましい。
【0022】
組成物中のポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油の含有質量比率は特に限定されないが、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル1質量部に対し、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油を0.001~12質量部含有するのが好ましく、0.01~8質量部含有するのがより好ましく、0.1~4質量部含有するのが特に好ましい。
【0023】
本発明において「液状又は半固形状の組成物」の性状としては、後述する容器に収容可能なものである限り特に限定されず、液状(溶液、コロイド溶液(ゾル(懸濁液や乳濁液)))、半固形状(軟膏、ゲル)等のいずれであってもよい。また、溶媒あるいは基剤の種類・性質等は特に限定されず、親水性であっても油性等の疎水性であってもよく、さらには異なる複数種の溶媒・基剤を適宜混合・乳化等して用いてもよい。こうした溶媒・基剤としては、具体的には例えば、後記の添加物として例示された成分等が挙げられる。
【0024】
液状又は半固形状の組成物としては、組成物の使用感の観点から、水を含有するものが好ましい(なお、本明細書において、水を含有する液状又は半固形状の組成物を「含水組成物」と称する。)。ここで、含水組成物中の水としては例えば、精製水、注射用水、滅菌精製水等を用いることができる。
含水組成物に含まれる水の含有量は特に限定されないが、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がさらにより好ましく、90~97質量%が特に好ましい。
【0025】
組成物は、前記した以外に、剤形に応じて、医薬品や医薬部外品等で利用される添加物を含んでいても良い。このような添加物としては、例えば、無機塩類、等張化剤、キレート剤、安定化剤、pH調節剤、防腐剤、抗酸化剤、粘稠化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁化剤、清涼化剤、分散剤、保存剤、油性基剤、乳剤性基剤、水溶性基剤等が挙げられる。
【0026】
こうした添加物としては、具体的には例えば、亜硫酸水素ナトリウム、安息香酸ベンジル、ウイキョウ油、エタノール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩化カリウム、塩化カルシウム水和物、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン液、果糖、カルボキシビニルポリマー、乾燥亜硫酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、d-カンフル、dl-カンフル、キシリトール、グリセリン、クレアチニン、クロロブタノール、ゲラニオール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、酸化チタン、ジブチルヒドロキシトルエン、臭化カリウム、水酸化ナトリウム、ステアリン酸ポリオキシル45、精製ラノリン、ソルビトール、タウリン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、チロキサポール、デヒドロ酢酸ナトリウム、トロメタモール、白色ワセリン、ハッカ水、ハッカ油、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、人血清アルブミン、ピロ亜硫酸ナトリウム、フェニルエチルアルコール、ブドウ糖、プロピレングリコール、ベルガモット油、ベンザルコニウム塩化物、ベンジルアルコール、ポビドン、ポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレングルコール(70)、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリソルベート80、d-ボルネオール、マクロゴール100、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600、マクロゴール1000、マクロゴール1500、マクロゴール1540、マクロゴール4000、マクロゴール6000、マクロゴール20000、マクロゴール35000、マンニトール、メタンスルホン酸、l-メントール、モノエタノールアミン、モノステアリン酸アルミニウム、ユーカリ油、ヨウ化カリウム、硫酸オキシキノリン、流動パラフィン、リュウノウ、ワセリン等が例示され、これらの1種又は2種以上を配合できる。
【0027】
組成物は、前記した以外に、その使用目的(用途)に応じて適宜薬効成分を含んでいても良い。このような薬効成分としては、具体的には例えば、エピネフリン、塩酸エピネフリン、塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、硝酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、dl-塩酸メチルエフェドリン、メチル硫酸ネオスチグミン、イプシロン-アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ベルベリン、硫酸ベルベリン、アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、塩化リゾチーム、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、シアノコバラミン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、塩酸ピリドキシン、パンテノール、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸カリウム、L-アスパラギン酸カルシウム、L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物)、アミノエチルスルホン酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、スルファメトキサゾール、スルファメトキサゾールナトリウム、スルフイソキサゾール、スルフイソミジンナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ブドウ糖、メチルセルロース、アルキルポリアミノエチルグリシン、ホウ酸等が例示され、これらの1種又は2種以上を配合できる。
【0028】
組成物のpH(25℃)は特に限定されないが、3~9が好ましく、3.5~8がより好ましく、4~7がさらに好ましく、5~6が特に好ましい。また、生理食塩水に対する浸透圧比は特に限定されないが、0.6~3が好ましく、0.6~2が特に好ましい。
【0029】
本発明の医薬製剤は、ポリオレフィン系樹脂製容器を用いたものである。
本明細書において、「容器」とは、前記組成物を直接的に収容する包装体を意味する。容器は、第十七改正日本薬局方 通則に定義される「密閉容器」、「気密容器」、「密封容器」のいずれをも包含する概念である。
【0030】
当該容器の形態は、前記組成物を収容可能であることを限度として特に限定されず、剤形、医薬製剤の用途等に応じて適宜選択、設定すればよい。このような容器の形態としては、具体的には例えば、注射剤用容器、吸入剤用容器、スプレー剤用容器、ボトル状容器、チューブ状容器、点眼剤用容器、点鼻剤用容器、点耳剤用容器、バッグ容器等が挙げられる。
容器としては、トコフェロール類の有する薬理作用を有利に利用する観点から、点眼剤用容器であるのが好ましい。
【0031】
本明細書において、「ポリオレフィン系樹脂製容器」とは、容器のうち少なくとも液状又は半固形状の組成物と接する部分が「ポリオレフィン系樹脂製」である容器を意味する。従って、例えば、液状又は半固形状の組成物と接する内層にポリオレフィン系樹脂の層を設け、その外側に他の材質の樹脂等を積層等させてなる容器や、容器本体と吐出口を具備する中栓とを備えており、中栓が、液状又は半固形状の組成物と接するようにして配置されており且つ中栓の表面素材がポリオレフィン系樹脂である容器も、「ポリオレフィン系樹脂製容器」に該当する。ここで、ポリオレフィン系樹脂は特に限定されず、単一種のモノマーの重合体(ホモポリマー)であっても、複数種のモノマーの共重合体(コポリマー)であってもよい。また、コポリマーである場合においては、その重合様式は特に限定されず、ランダム重合でもブロック重合でもよい。さらに、その立体規則性(タクティシティー)は特に限定されない。
このようなポリオレフィン系樹脂としては、具体的には例えば、ポリエチレン(より詳細には例えば低密度ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレンを含む)、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。ポリオレフィン系樹脂としては、トコフェロール類の吸着抑制の観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがより好ましい。
なお、本明細書において、「ポリオレフィン系樹脂製」とは、その材質の少なくとも一部にポリオレフィン系樹脂を含んでいることを意味し、例えば、ポリオレフィン系樹脂と他の樹脂との2種以上の樹脂の混合体(ポリマーアロイ)も「ポリオレフィン系樹脂製」に含まれる。
【0032】
ポリオレフィン系樹脂製容器は、その内部が肉眼で視認可能(観察可能)であるのが好ましい。内部が視認可能であれば、医薬製剤の製造工程において異物混入の有無等の検査が可能となる、医薬製剤の使用者が内容物(組成物)の残量を確認できる等のメリットが生ずる。ここで、視認可能性は、少なくとも容器表面の一部において確保されていればよい(例えば、点眼剤用容器の側面がシュリンクフィルム等により見通せなくなっていても、底面が視認可能であれば視認可能と言える。)。容器表面の一部において内部が視認可能であれば、これにより、容器内の組成物が確認可能となる。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂製容器への組成物の収容手段は特に限定されず、容器の形態等に従って常法により充填等すればよい。
【0034】
医薬製剤あるいは液状又は半固形状の組成物は、例えば、第十七改正日本薬局方 製剤総則等に記載の公知の方法に従って、種々の剤形とすることができる。剤形としては、例えば、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤、シロップ剤等が挙げられる。剤形としては、トコフェロール類の有する薬理作用を有利に利用する観点から、眼疾患用剤、具体的には点眼剤、眼軟膏剤が好ましく、点眼剤が特に好ましい。
【0035】
医薬製剤の適用疾患は特に限定されず、トコフェロール類の有する薬理作用等に応じて適宜選択すればよい。本発明の医薬製剤は、具体的には例えば、目の疲れ、結膜充血、眼病予防(水泳のあと、ほこりや汗が目に入ったときなど)、紫外線その他の光線による眼炎(雪目など)、眼瞼炎(まぶたのただれ)、ハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズを装着しているときの不快感、目のかゆみ、目のかすみ(目やにの多いときなど)、結膜炎(はやり目)、ものもらい、涙液の補助(目のかわき)、ハードコンタクトレンズ又はソフトコンタクトレンズの装着を容易にする、目の洗浄等の効能又は効果を有する医薬品として好適に実施できる。
【0036】
なお、組成物や医薬製剤を、点眼剤や眼軟膏剤として利用する場合においては、例えば、1日1~3回程度、適量を投与すればよい。
【0037】
また、本発明は、次の成分(A):
(A)トコフェロール類;
を含有する液状又は半固形状の組成物に、次の成分(B)及び(C):
(B)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;
(C)ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油;
を含有せしめる工程、及び組成物をポリオレフィン系樹脂製容器に収容せしめる工程を含む、トコフェロール類の容器への吸着を抑制する方法にも関する。
この場合において、各工程の順序は特に限定されるものでは無く、成分(A)、(B)及び(C)を含有する液状又は半固形状の組成物が、ポリオレフィン系樹脂製容器内に収容せしめられている状態が最終的に作出されればよい。
さらに、本発明は、次の成分(A):
(A)トコフェロール類;
を含有する液状又は半固形状の組成物に、次の成分(B)及び(C):
(B)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;
(C)ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油;
を含有せしめる工程、及び組成物をポリオレフィン系樹脂製容器に収容せしめる工程を含む、組成物中のトコフェロール類の含量低下を抑制する方法にも関する。
この場合において、各工程の順序は特に限定されるものでは無く、成分(A)、(B)及び(C)を含有する液状又は半固形状の組成物が、ポリオレフィン系樹脂製容器内に収容せしめられている状態が最終的に作出されればよい。
【0038】
本明細書は、これらに何ら限定されるものではないが、例えば以下の態様の実施形態を開示する。
[1A] 次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)トコフェロール類;
(B)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;
(C)ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油;
を含有する液状又は半固形状の組成物が、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容されてなる、医薬製剤。
[2A] 成分(A)が、トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロールニコチン酸エステル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[1A]記載の医薬製剤。
[3A] 成分(B)が、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルである、[1A]又は[2A]記載の医薬製剤。
[4A] 成分(B)が、ポリオキシエチレン(4~60)C12~30脂肪酸エステルである、[1A]~[3A]のいずれか記載の医薬製剤。
[5A] 成分(B)を構成する脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノリン酸、リノレニン酸、エレオステアリン酸、ベへニン酸及びヘキサコサン酸よりなる群から選ばれる1種以上である、[1A]~[4A]のいずれか記載の医薬製剤。
[6A] 成分(B)が、ポリオキシエチレン(4~60)モノステアリン酸エステルである、[1A]~[5A]のいずれか記載の医薬製剤。
[7A] 成分(B)が、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステルである、[1A]~[6A]のいずれか記載の医薬製剤。
[8A] 成分(C)が、ポリオキシエチレン(2~150)硬化ヒマシ油である、[1A]~[7A]のいずれか記載の医薬製剤。
[9A] 成分(C)が、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油よりなる群から選ばれる1種以上である、[1A]~[8A]のいずれか記載の医薬製剤。
[10A] 成分(C)が、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油である、[1A]~[9A]のいずれか記載の医薬製剤。
[11A] 組成物が、含水組成物である、[1A]~[10A]のいずれか記載の医薬製剤。
[12A] 剤形が、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤又はシロップ剤である、[1A]~[11A]のいずれか記載の医薬製剤。
【0039】
[1B] 次の成分(A):
(A)トコフェロール類;
を含有する液状又は半固形状の組成物に、次の成分(B)及び(C):
(B)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;
(C)ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油;
を含有せしめる工程、及び組成物をポリオレフィン系樹脂製容器に収容せしめる工程を含む、トコフェロール類の容器への吸着を抑制する方法。
[2B] 成分(A)が、トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロールニコチン酸エステル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[1B]記載の方法。
[3B] 成分(B)が、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルである、[1B]又は[2B]記載の方法。
[4B] 成分(B)が、ポリオキシエチレン(4~60)C12~30脂肪酸エステルである、[1B]~[3B]のいずれか記載の方法。
[5B] 成分(B)を構成する脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノリン酸、リノレニン酸、エレオステアリン酸、ベへニン酸及びヘキサコサン酸よりなる群から選ばれる1種以上である、[1B]~[4B]のいずれか記載の方法。
[6B] 成分(B)が、ポリオキシエチレン(4~60)モノステアリン酸エステルである、[1B]~[5B]のいずれか記載の方法。
[7B] 成分(B)が、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステルである、[1B]~[6B]のいずれか記載の方法。
[8B] 成分(C)が、ポリオキシエチレン(2~150)硬化ヒマシ油である、[1B]~[7B]のいずれか記載の方法。
[9B] 成分(C)が、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油よりなる群から選ばれる1種以上である、[1B]~[8B]のいずれか記載の方法。
[10B] 成分(C)が、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油である、[1B]~[9B]のいずれか記載の方法。
[11B] 組成物が、含水組成物である、[1B]~[10B]のいずれか記載の方法。
[12B] 剤形が、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤又はシロップ剤である、[1B]~[11B]のいずれか記載の方法。
【0040】
[1C] 次の成分(A):
(A)トコフェロール類;
を含有する液状又は半固形状の組成物に、次の成分(B)及び(C):
(B)ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;
(C)ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油;
を含有せしめる工程、及び組成物をポリオレフィン系樹脂製容器に収容せしめる工程を含む、組成物中のトコフェロール類の含量低下を抑制する方法。
[2C] 成分(A)が、トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル及びトコフェロールニコチン酸エステル並びにそれらの塩よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、[1C]記載の方法。
[3C] 成分(B)が、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルである、[1C]又は[2C]記載の方法。
[4C] 成分(B)が、ポリオキシエチレン(4~60)C12~30脂肪酸エステルである、[1C]~[3C]のいずれか記載の方法。
[5C] 成分(B)を構成する脂肪酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノリン酸、リノレニン酸、エレオステアリン酸、ベへニン酸及びヘキサコサン酸よりなる群から選ばれる1種以上である、[1C]~[4C]のいずれか記載の方法。
[6C] 成分(B)が、ポリオキシエチレン(4~60)モノステアリン酸エステルである、[1C]~[5C]のいずれか記載の方法。
[7C] 成分(B)が、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステルである、[1C]~[6C]のいずれか記載の方法。
[8C] 成分(C)が、ポリオキシエチレン(2~150)硬化ヒマシ油である、[1C]~[7C]のいずれか記載の方法。
[9C] 成分(C)が、ポリオキシエチレン(5)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(10)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(30)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(50)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(80)硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレン(100)硬化ヒマシ油よりなる群から選ばれる1種以上である、[1C]~[8C]のいずれか記載の方法。
[10C] 成分(C)が、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油である、[1C]~[9C]のいずれか記載の方法。
[11C] 組成物が、含水組成物である、[1C]~[10C]のいずれか記載の方法。
[12C] 剤形が、注射剤、吸入液剤、点眼剤、眼軟膏剤、点耳剤、点鼻液剤、注腸剤、外用液剤、スプレー剤、軟膏剤、ゲル剤、経口液剤又はシロップ剤である、[1C]~[11C]のいずれか記載の方法。
【実施例0041】
次に、実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0042】
[試験例1]吸着抑制試験
トコフェロール類のポリオレフィン系樹脂製容器への吸着抑制手段を検討するため、トコフェロール類を含有する液状又は半固形状の組成物を、ポリエチレン樹脂を材質に含む容器に収容して一定期間保存した後の、トコフェロール類の含量低下を評価した。
【0043】
すなわち、表1に示す各種の液状の含水組成物を常法により調製した後、容器の一部(中栓)がポリエチレン製である汎用の点眼剤用容器(本体材質:ポリエチレンテレフタレート)に収容し、各種の医薬製剤を得た。
得られた各医薬製剤を、容器中の含水組成物が中栓に触れるようにして60℃で1週間保存した。保存後のd-α-トコフェロール酢酸エステルの含量低下を確認するため、各医薬製剤における、保存前後の含水組成物中のd-α-トコフェロール酢酸エステルの濃度を測定した。
含水組成物中のd-α-トコフェロール酢酸エステルの濃度は、HPLCを用いて、濃度既知のd-α-トコフェロール酢酸エステル溶液のピーク面積に対する含水組成物中のピーク面積の比率を測定することにより算出した。
そして、得られた含水組成物中のd-α-トコフェロール酢酸エステルの濃度より、以下の式に従い、d-α-トコフェロール酢酸エステルの残存率(%)を評価した。
【0044】
残存率(%)={(保存後の含水組成物中のd-α-トコフェロール酢酸エステルの濃度)/(保存前の含水組成物中のd-α-トコフェロール酢酸エステルの濃度)}×100
結果を表1に示す。
【0045】
【0046】
表1記載の結果から、例1と例2、例3との対比より、d-α-トコフェロール酢酸エステルを含有する含水組成物に、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)とポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60とを組み合わせて配合してポリオレフィン系樹脂製容器に収容することにより、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(55E.O.)あるいはポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60それぞれ単独で配合した場合と比較して、60℃で1週間保存後のd-α-トコフェロール酢酸エステルの残存率が顕著に向上することが明らかとなった。
【0047】
以上の試験結果より、トコフェロール類を含有する液状又は半固形状の組成物に、さらにポリオキシアルキレン脂肪酸エステルとポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油の組み合わせを含有せしめることにより、ポリオレフィン系樹脂製容器に収容して保存した際に生じ得る含量低下(吸着)が相対的に抑制されることが明らかとなった。
【0048】
処方例1(点眼剤)
常法により、下記成分及び分量を100mL中に含有する液状の組成物(点眼剤)を製造し、容器(ボトル:ポリプロピレン、中栓:ポリエチレン)に収容した。
ナファゾリン塩酸塩 0.0015g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.004g
硫酸亜鉛水和物 0.2g
酢酸d-α-トコフェロール 0.05g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
l-メントール、dl-カンフル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステル、エタノール、濃ベンザルコニウム塩化物液50、クロロブタノール、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、希塩酸、塩化ナトリウム、エデト酸ナトリウム及び精製水 適量
【0049】
製造例2(点眼剤)
常法により、下記成分及び分量を100mL中に含有する液状の組成物(点眼剤)を製造し、容器(ボトル:ポリプロピレン、中栓:ポリエチレン)に収容した。
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.003g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.02g
レチノールパルミチン酸エステル 5万単位
酢酸d-α-トコフェロール 0.045g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.5g
l-メントール、dl-カンフル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステル、エタノール、濃ベンザルコニウム塩化物液50、クロロブタノール、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、希塩酸、塩化ナトリウム、エデト酸ナトリウム及び精製水 適量
【0050】
製造例3(点眼剤)
常法により、下記成分及び分量を100mL中に含有する液状の組成物(点眼剤)を製造し、容器(ボトル:ポリプロピレン、中栓:ポリエチレン)に収容した。
塩酸テトラヒドロゾリン 0.04g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.003g
イプシロン-アミノカプロン酸 1.0g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.02g
シアノコバラミン 0.02g
酢酸d-α-トコフェロール 0.05g
L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物) 2.0g
l-メントール、dl-カンフル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステル、エタノール、濃ベンザルコニウム塩化物液50、クロロブタノール、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、希塩酸、塩化ナトリウム、エデト酸ナトリウム及び精製水 適量
【0051】
製造例4(点眼剤)
常法により、下記成分及び分量を100mL中に含有する液状の組成物(点眼剤)を製造し、容器(ボトル:ポリプロピレン、中栓:ポリエチレン)に収容した。
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.002g
アラントイン 0.15g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.015g
レチノールパルミチン酸エステル 5万単位
ピリドキシン塩酸塩 0.03g
酢酸d-α-トコフェロール 0.035g
タウリン 1.0g
l-メントール、dl-カンフル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステル、エタノール、濃ベンザルコニウム塩化物液50、クロロブタノール、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、希塩酸、塩化ナトリウム、エデト酸ナトリウム及び精製水 適量
【0052】
製造例5(点眼剤)
常法により、下記成分及び分量を100mL中に含有する液状の組成物(点眼剤)を製造し、容器(ボトル:ポリプロピレン、中栓:ポリエチレン)に収容した。
塩酸テトラヒドロゾリン 0.05g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.005g
アラントイン 0.3g
グリチルリチン酸二カリウム 0.15g
硫酸亜鉛水和物 0.1g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
ピリドキシン塩酸塩 0.05g
パンテノール 0.1g
酢酸d-α-トコフェロール 0.025g
L-アスパラギン酸マグネシウム・カリウム(等量混合物) 2.0g
タウリン 0.5g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.25g
l-メントール、dl-カンフル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステル、エタノール、濃ベンザルコニウム塩化物液50、クロロブタノール、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、希塩酸、塩化ナトリウム、エデト酸ナトリウム及び精製水 適量
【0053】
製造例6(点眼剤)
常法により、下記成分及び分量を100mL中に含有する液状の組成物(点眼剤)を製造し、容器(ボトル:ポリプロピレン、中栓:ポリエチレン)に収容した。
ナファゾリン塩酸塩 0.003g
ネオスチグミンメチル硫酸塩 0.004g
アラントイン 0.15g
グリチルリチン酸二カリウム 0.1g
硫酸亜鉛水和物 0.15g
クロルフェニラミンマレイン酸塩 0.03g
フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム 0.025g
パンテノール 0.1g
酢酸d-α-トコフェロール 0.025g
L-アスパラギン酸カリウム 1.0g
タウリン 0.3g
コンドロイチン硫酸エステルナトリウム 0.25g
l-メントール、dl-カンフル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリエチレングリコール(55)モノステアリン酸エステル、エタノール、濃ベンザルコニウム塩化物液50、クロロブタノール、ホウ酸、クエン酸ナトリウム、希塩酸、塩化ナトリウム、エデト酸ナトリウム及び精製水 適量