(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130161
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】抗コロナウイルス剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/235 20060101AFI20220830BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20220830BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220830BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K31/235
A61P31/14
A61K8/37
A61Q19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029175
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 修
(72)【発明者】
【氏名】扇谷 えり子
(72)【発明者】
【氏名】新屋 政春
【テーマコード(参考)】
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
4C083AC341
4C083AC342
4C083BB48
4C083CC23
4C083FF01
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB17
4C206DB43
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZB33
(57)【要約】
【課題】抗コロナウイルス剤、特にSARS-CoV-2に対する抗コロナウイルス剤を提供すること。
【解決手段】アルキルガレート、没食子酸、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、抗コロナウイルス剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルガレート、没食子酸、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、抗コロナウイルス剤。
【請求項2】
前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、請求項1に記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項3】
前記アルキルガレートを有効成分として含有する、請求項1又は2に記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項4】
前記アルキルガレート及び/又は没食子酸が一般式(1):
【化1】
[式中:R
1は水素原子又はアルキル基を示す。]
で表される化合物である、請求項1~3のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項5】
前記R1が水素原子又は炭素原子数1~7のアルキル基である、請求項4に記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項6】
前記R1が炭素原子数1~4のアルキル基である、請求項4又は5に記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項7】
生体に適用するために用いられる、請求項1~6のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項8】
医薬、化粧品、食品組成物、食品添加剤、消毒剤又は洗浄剤である、請求項7に記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項9】
COVID-19の予防又は改善用である、請求項7又は8に記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項10】
物品に適用するために用いられる、請求項1~6のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項11】
消毒剤又は洗浄剤である、請求項10に記載の抗コロナウイルス剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗コロナウイルス剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルスは、コロナウイルス科のコロナウイルス亜科に属するウイルスの種であり、ヒトおよび動物に感染し、呼吸器、消化器、血管、または神経性の疾患を発症させるプラス鎖RNAウイルスである。コロナウイルスは、感染している何らかの宿主動物から伝播して、ヒトに対して大規模な伝染病を引き起こすことが可能である。コロナウイルスとしては、近年では、例えば、2002年及び2003年に流行したSARSコロナウイルス1(SARS-CoV-1)、及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)が挙げられる。最近では、SARSコロナウイルス2(SARS-CoV-2)の世界的な流行が起こり、治療技術が確立されていないことから、医療、経済等の多方面に亘って甚大な被害が続いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、抗コロナウイルス剤、特にSARS-CoV-2に対する抗コロナウイルス剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、アルキルガレート及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、抗コロナウイルス剤、であれば、上記課題を解決できることを見出した。本発明者は、この知見に基づいてさらに研究を進めた結果、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0005】
項1. アルキルガレート、没食子酸、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、抗コロナウイルス剤。
【0006】
項2. 前記コロナウイルスがSARS-CoV-2である、項1に記載の抗コロナウイルス剤。
【0007】
項3. 前記アルキルガレートを有効成分として含有する、項1又は2に記載の抗コロナウイルス剤。
【0008】
項4. 前記アルキルガレート及び/又は没食子酸が一般式(1):
【0009】
【0010】
[式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。]
で表される化合物である、項1~3のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
【0011】
項5. 前記R1が水素原子又は炭素原子数1~7のアルキル基である、項4に記載の抗コロナウイルス剤。
【0012】
項6. 前記R1が炭素原子数1~4のアルキル基である、項4又は5に記載の抗コロナウイルス剤。
【0013】
項7. 生体に適用するために用いられる、項1~6のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
【0014】
項8. 医薬、化粧品、食品組成物、食品添加剤、消毒剤又は洗浄剤である、項7に記載の抗コロナウイルス剤。
【0015】
項9. COVID-19の予防又は改善用である、項7又は8に記載の抗コロナウイルス剤。
【0016】
項10. 物品に適用するために用いられる、項1~6のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
【0017】
項11. 消毒剤又は洗浄剤である、項10に記載の抗コロナウイルス剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、抗コロナウイルス剤、特にSARS-CoV-2に対する抗コロナウイルス剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】試験例1の試験方法(Mix protocol)の概略を示す。
【
図2】試験例1の結果を示す。縦軸は細胞死抑制率を示す。各グラフの上方に被検物質を示す。横軸は被検物質の濃度を示す。
【
図3】試験例2の試験方法(Post-infection protocol)の概略を示す。
【
図4】試験例2の結果を示す。縦軸は細胞死抑制率を示す。各グラフの上方に被検物質を示す。横軸は被検物質の濃度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0021】
本発明は、その一態様において、アルキルガレート、没食子酸、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、抗コロナウイルス剤(本明細書において、「本発明の剤」と示すこともある。)に関する。以下、これについて説明する。
【0022】
1.有効成分
有効成分は、アルキルガレート、没食子酸、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0023】
アルキルガレートは、没食子酸のアルキルエステルであり、この限りにおいて特に制限されない。アルキルガレートとしては、例えばメチルガレート、エチルガレート、プロピルガレート、ブチルガレート、ペンチルガレート、ヘキシルガレート、ヘプチルガレート、イソプロピルガレート、イソブチルガレート、sec-ブチルガレート、tert-ブチルガレート、イソアミルガレート等が挙げられる。これらの中でも、好ましくはメチルガレート、エチルガレート、プロピルガレート、ブチルガレート等が挙げられ、より好ましくはメチルガレート、エチルガレート、プロピルガレート等が挙げられる。食品添加剤として認められており、安全性の観点から、プロピルガレートが特に好ましい。
【0024】
アルキルガレート、没食子酸は、典型的には、一般式(1):
【0025】
【0026】
[式中:R1は水素原子又はアルキル基を示す。]
で表される化合物である。
【0027】
R1で示されるアルキル基には、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれのものも包含される。抗ウイルス作用等の観点から、アルキル基は、鎖状アルキル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基であることが特に好ましい。しかし環状アルキル基でもよい。該アルキル基(直鎖状又は分枝鎖状の場合)の炭素原子数は、特に制限されず、例えば1~12である。該炭素数は、本発明の一態様において、好ましくは1~9、より好ましくは1~7、さらに好ましくは1~5、よりさらに好ましくは1~4、とりわけ好ましくは1~3である。該アルキル基(環状の場合)の炭素数は、特に制限されず、例えば3~7、好ましくは4~6である。該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、3-メチルペンチル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられる。
【0028】
R1はアルキル基であることが好ましい。
【0029】
アルキルガレート及び没食子酸の誘導体は、そのまま或いは分解等の反応を経て抗ウイルス作用を発揮できるものである限り、特に制限されない。
【0030】
アルキルガレート及び没食子酸の誘導体としては、例えば、一般式(1)において、水酸基の1~3つが-OR(Rは置換されていてもよい炭化水素基又は置換されていてもよいヘテロ環を示す。)に置き換えられてなる化合物が挙げられる。
【0031】
また、アルキルガレート及び没食子酸の誘導体としては、例えばアルキルガレート又は没食子酸の配糖体が挙げられる。アルキルガレート又は没食子酸の配糖体は、アルキルガレート又は没食子酸をアグリコンとして、これに糖が結合(通常、グリコシド結合)により連結してなる化合物である限り、特に制限されない。糖としては、例えばグルコース、アラビノース、ピラノース、ラフィノース、ルチノース、アピオース、ラムノース、ルチノース、プリメベロース、ゲンチオビオース、ジギトキソース、ガラクトース、キシロース等が挙げられ、さらにこれらが複数個連結してなる糖が挙げられる。糖を構成する単糖残基の数は、例えば1~8、1~6である。
【0032】
また、アルキルガレート及び没食子酸の誘導体としては、例えば、アルキルガレート又は没食子酸のプロドラッグが挙げられる。プロドラッグとは、生体内において酵素や胃酸などによる反応により本発明の化合物に変換される化合物をいう。アルキルガレート又は没食子酸のプロドラッグとしては、例えば、水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、アルキルガレートの水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、サクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジアルキル(例えばメチル)アミノアルキル(例えばメチル)カルボニル化された化合物など); カルボキシ基がエステル化、アミド化された化合物(例えば、本発明の化合物のカルボキシ基がアルキル(例えばエチル)エステル化、アリール(例えばフェニル)エステル化、カルボキシアルキル(例えばメチル)エステル化、ジアルキル(例えばメチル)アミノアルキル(例えばメチル)エステル化、ピバロイルオキシアルキル(例えばメチル)エステル化、1-{(アルコキシ(例えばエトキシ)カルボニル)オキシ}アルキル(例えばエチル)エステル化、フタリジルエステル化、(5-アルキル(例えばメチル)-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)アルキル(例えばメチル)エステル化、1-{[(シクロアルキル(例えばシクロヘキシル)オキシ)カルボニル]オキシ}アルキル(例えばエチル)エステル化、アルキル(例えばメチル)アミド化された化合物など)などが挙げられる。が挙げられる。これらの化合物はそれ自体公知の方法によって製造することができる。また、本発明の化合物のプロドラッグは、廣川書店1990年間「医薬品の開発」第7巻「分子設計」163~198頁に記載されているような生理的条件で、本発明の化合物に変化するものであってもよい。
【0033】
有効成分の中でも、好ましくはアルキルガレートが挙げられる。
【0034】
有効成分は、1種単独であってもよいし、2種以上の組合わせであってもよい。
【0035】
アルキルガレート、及びその誘導体としては、市販のものを使用することもできるし、公知の方法に従って或いは準じて合成したものを使用することもできる。
【0036】
2.用途
本発明の剤の対象コロナウイルスは、オルトコロナウイルス亜科に属するウイルスである限り、特に制限されない。コロナウイルスとしては、アルファコロナウイルス属、ベータコロナウイルス属、ガンマコロナウイルス属、デルタコロナウイルス属等が挙げられ、これらの中でも、ベータコロナウイルス属が好ましい。ベータコロナウイルス属としては、SARS関連コロナウイルス(SARSr-CoV)、コロナウイルスHKU1、MERSコロナウイルス等が挙げられ、これらの中でも、SARSr-CoVが好ましい。SARSr-CoVとしては、SARS-CoV-2、SARS-CoV-1等が挙げられ、これらの中でもSARS-CoV-2が好ましい。本発明の剤は、特にSARS-CoV-2に対して好適に使用することができる。
【0037】
本発明の剤によれば、コロナウイルスに対して抗ウイルス作用を発揮することができる。抗ウイルス作用としては、具体的には、ウイルス感染抑制作用、ウイルスの細胞感染力価を低下させる作用、ウイルスによる細胞死を抑制する作用、ウイルス不活化作用、ウイルス増殖抑制作用、ウイルス出芽抑制作用、ウイルス抵抗性誘導作用等が挙げられる。また、この作用により、コロナウイルス感染症(特に、COVID-19)の予防又は改善剤(或いは予防又は治療剤)として使用することもできる。
【0038】
本発明の剤は、抗ウイルス性を要する各種分野において広く使用することができる。本発明の剤は、例えば工業、洗浄、医療、食品、日用品等の各種分野において使用することができる。本発明の剤の用途は、主に、生体に適用する用途と、後述の物品に適用する用途とに分けられる。
【0039】
本発明の一態様において、本発明の剤は、アルキル基の炭素原子数が8以上或いは5以上のアルキルガレートの含有量がより少ないことができる。本発明の剤において、アルキル基の炭素原子数が8以上或いは5以上のアルキルガレートの含有量は、アルキル基の炭素原子数が7以下或いは4以下のアルキルガレートの含有量100質量%(又はモル%)に対して、例えば0~50質量%(又はモル%)、0~20質量%(又はモル%)、0~10質量%(又はモル%)、0~5質量%(又はモル%)、0~2質量%(又はモル%)、0~1質量%(又はモル%)、0~0.1質量%(又はモル%)、0~0.01質量%(又はモル%)、又は0質量%(又はモル%)である。
【0040】
本発明の一態様において、本発明の剤は、アルキルガレート以外の抗ウイルス成分の含有量がより少ないことができる。本発明の剤において、アルキルガレート以外の抗ウイルス成分の含有量は、アルキルガレート(例えばアルキル基の炭素原子数が7以下或いは4以下のアルキルガレート)の含有量100質量%(又はモル%)に対して、例えば0~50質量%(又はモル%)、0~20質量%(又はモル%)、0~10質量%(又はモル%)、0~5質量%(又はモル%)、0~2質量%(又はモル%)、0~1質量%(又はモル%)、0~0.1質量%(又はモル%)、0~0.01質量%(又はモル%)、又は0質量%(又はモル%)である。
【0041】
2-1.生体に適用する用途
生体に適用する用途としては、例えば医薬、化粧品、食品組成物(健康食品、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)を包含する)、食品添加剤、消毒剤、洗浄剤等が挙げられる。この場合の適用対象は特に限定されず、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、シカなどの種々の哺乳類動物などが挙げられる。
【0042】
本発明の剤を生体に適用することによって、有効成分が接触する部位において抗ウイルス作用を発揮することができる。
【0043】
本発明の剤の形態は、特に限定されず、本発明の剤の用途に応じて、各用途において通常使用される形態をとることができる。
【0044】
形態としては、用途が医薬である場合は、例えば注射剤、点滴剤、うがい剤、吸入剤、貼付剤(プラスター剤、硬膏剤等のテープ剤(リザーバー型、マトリックス型等)、パップ剤、パッチ剤、マイクロニードル等)、軟膏剤、外用液剤(リニメント剤、ローション剤等)、スプレー剤(外用エアゾール剤、ポンプスプレー剤等、クリーム剤、ゲル剤、点眼剤、眼軟膏剤、点鼻剤、坐剤、直腸用半固形剤、注腸剤等の非経口摂取に適した製剤形態; 錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤、舌下錠などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(ドリンク剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などの経口摂取に適した製剤形態(経口製剤形態)、経管栄養剤、経腸栄養剤、経鼻カテーテル剤、食道ろうカテーテル剤、胃ろうカテーテル剤などが挙げられる。
【0045】
形態としては、用途が化粧品である場合は、例えば液剤、ジェル剤、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、スティック剤等が挙げられる。
【0046】
形態としては、用途が食品組成物の場合は、液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、茶、スープ、豆乳などの飲料、サラダ油、ドレッシング、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、ケーキミックス、乳製品(例えば、粉末状、液状、ゲル状、固形状等)、パン、菓子(例えば、クッキー等)などが挙げられる。また、用途が食品添加剤、健康増進剤、栄養補助食品(サプリメントなど)などである場合は、例えば錠剤(口腔内側崩壊錠、咀嚼可能錠、発泡錠、トローチ剤、ゼリー状ドロップ剤などを含む)、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、ドライシロップ剤、液剤(懸濁剤、シロップ剤を含む)、ゼリー剤などが挙げられる。
【0047】
形態としては、用途が消毒剤又は洗浄剤である場合は、例えば液体(溶液、乳液、懸濁液、スプレーなど)、半固体(ゲル、クリーム、ペーストなど)、固体(錠剤、粒子状剤、カプセル剤、フィルム剤、混練物、溶融固体、ロウ状固体、弾性固体など)などの任意の形態を採ることができる。例えば、口腔に適用する場合であれば、より具体的には、歯磨剤(練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、粉歯磨など)、洗口剤、塗布剤、貼付剤、口中清涼剤、食品(例えば、チューインガム、錠菓、キャンディ、グミ、フィルム、トローチなど)などが挙げられる。また、鼻腔に適用する場合であれば、より具体的には、スプレー型点鼻剤等が挙げられる。皮膚に適用する場合であれば、石鹸、ボディソープ、シャンプー、リンス、スプレー剤等が挙げられる。
【0048】
本発明の剤は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば医薬、化粧品、消毒剤、洗浄剤などに配合され得る成分である限り特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤などが挙げられる。
【0049】
緩衝剤としては、特に制限されず、用途に応じて、許容される適切なものを採用することができる。好ましくはリン酸緩衝液、酢酸緩衝液等が挙げられる。
【0050】
本発明の剤の有効成分の含有量は、有効成分の種類、用途、使用態様、適用対象、適用対象の状態などに左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.000001~100重量%、好ましくは0.01~50重量%とすることができる。
【0051】
本発明の剤の適用(例えば、投与、摂取、接種など)量は、所望の効果を発現する有効量であれば特に限定されず、通常は、有効成分の重量として、一般に一日あたり0.1~1000 mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2~3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減することもできる。
【0052】
2-2.物品に適用する用途
物品に適用する用途としては、例えば消毒剤、洗浄剤等が挙げられる。この場合の適用対象は、特に制限されず、各種分野において用いられている工業製品やその原材料が挙げられる。
【0053】
物品の具体例としては、マスク、フェイスマスク、手袋等が挙げられる。また気管内挿管チューブ、バイトブロック、喉頭鏡、電極、計測機器、点滴装置、酸素マスク、鼻カテーテル、チューブ、カテーテル、白衣、ガウン、キャップ、防護服、防護シールド、手術器具等の医療器具、手術台、ベッド、ストレッチャー、車いす等が挙げられる。また、OA機器、家電、空調機器、掃除機、机、椅子、ソファー、ベンチ、窓、つり革、ハンドル、シート、自動改札機、自動券売機、自動販売機、扉、柵、手摺、食器、調理用具、包装フィルム、包装袋、瓶、ボトル、包装パック、シンク、便器、文房具、書籍、棚、歯ブラシ、鏡、空調フィルター、マスク、コート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、下着、オムツ、サポーター、靴下、タイツ、ストッキング、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、ストール、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、アミ戸、布団地、布団綿、布団カバー、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ、壁布、バンドエイド、包帯等が挙げられる。
【0054】
本発明の剤を物品に適用することによって、有効成分が接触する部位において抗ウイルス作用を発揮することができる。なお、有効成分が接触する部位は、物品上の部位に限られず、物品が生体等に適用された場合には生体中の部位も包含される。
【0055】
本発明の剤の剤形は特に制限されず、その用途に応じて適宜選択することができる。剤形としては、例えば液剤、乳剤、懸濁剤、分散剤、スプレー剤、エアゾール剤等の液剤; 水和剤、粉剤、粒剤、微粒剤、フロアブル剤等の固形又は半固形剤等が挙げられる。種々の物品に塗布またはコーティングすることができる。
【0056】
本発明の剤は、必要に応じてさらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば物品の洗浄剤、消毒剤などに配合され得る成分である限り特に限定されるものではないが、例えば基剤、担体、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、キレート剤などが挙げられる。
【0057】
緩衝剤としては、特に制限されず、用途に応じて、許容される適切なものを採用することができる。好ましくはリン酸緩衝液、酢酸緩衝液等が挙げられる。
【0058】
本発明の剤の有効成分の含有量は、有効成分の種類、用途、使用態様、適用対象、適用対象の状態などに左右されるものであり、限定はされないが、例えば0.000001~100重量%、好ましくは0.001~50重量%とすることができる。
【実施例0059】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0060】
試験例1.抗ウイルス作用の評価試験(Mix protocol)
本試験の概略を
図1に示す。Methyl gallate(一般式(1):R
1=メチル基)、Propyl gallate(一般式(1):R
1=n-プロピル基)、又はButyl gallate(一般式(1):R
1=n-ブチル基)をろ過滅菌水で100 mMになるよう溶解して、サンプル液を得た。
【0061】
サンプル液をろ過滅菌水で2段階希釈した。各濃度のSample液2μlにSF DMEM(MS)200μl 、またはSARS-CoV-2 (5 X 10^5 TCID50/200 μl)を200μl添加し、1分間室温に静置した。前日にVeroE6 /TMPRSS2細胞を5 X 10^4/100μl/wellで播き24時間培養した96-well plateから上清を除き、上記のウイルス/サンプル液を100 μl添加した(MOI5)。1h 吸着後ウイルス液を除きMSを100μl/wellで添加し、24時間培養した。細胞のviabilityを下記の方法で定量した。
【0062】
Plateから培地を除去し、PBSで洗浄した。フェノールレッドフリー培地にCell Count Reagent SF (ナカライ)を20%混合し、細胞に50 μl/well添加して60分培養した。ブランクとして、細胞を培養していないウェルに試薬混合液のみを添加したウェルも準備した。反応終了後、10% SDSを20 μl/well加え、ウェルに残存しているウイルスを不活化した。プレートリーダーにて波長450 nmの吸光度を測定した。測定はテトラプリケートで行った。%Inhibition of cell deathを次の式:%Inhibition of cell death=(OD((Virus + Alkyl gallate)-OD(Virus only))/(OD(Alkyl gallate only)-OD(Virus only)) x 100 に基づいて計算した。
【0063】
<結果>
結果を
図2に示す。Methyl gallate、Propyl gallate、及びButyl gallateはすべて、SARS-CoV-2に加えることによりウイルス感染による細胞死を濃度依存的に抑制した。
【0064】
試験例2.抗ウイルス作用の評価試験(Post-infection protocol)
本試験の概略を
図3に示す。Methyl gallate(一般式(1):R
1=メチル基)、またはPropyl gallate(一般式(1):R
1=n-プロピル基)をろ過滅菌水で250 mMになるよう溶解した。78℃の恒温槽で5分間処理して、サンプル液を得た。
【0065】
サンプル液を0.5% FBS DMEM (MS)で2段階希釈した。96-well plate にVeroE6 /TMPRSS2細胞を5 X 10^4/100μl/wellで播き15時間培養した後、細胞から上清を除きSARS-CoV-2 をMOI 5で添加し、1h 吸着させた。ウイルス液を除き各濃度のSample液あるいはMSを100μl/wellで添加し、24時間培養した。細胞のviabilityの定量と%Inhibition of cell deathの計算は、上記試験例1と同じ方法で行った。
【0066】
<結果>
結果を
図4に示す。Methyl gallateとPropyl gallateはどちらも、SARS-CoV-2を吸着させた細胞に洗浄後加えることにより、ウイルス感染による細胞死を濃度依存的に抑制した。