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特開2022-130165スイッチングデバイスとその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130165
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】スイッチングデバイスとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20220830BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220830BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220830BHJP
   H01L 21/368 20060101ALI20220830BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20220830BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
H01L29/78 301G
H01L21/316 X
H01L21/31 B
H01L21/368 Z
H01L29/78 652T
H01L29/78 652K
H01L29/78 658F
H01L29/78 658E
H01L29/78 658A
H01L29/78 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029179
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 英幹
(72)【発明者】
【氏名】大川 峰司
(72)【発明者】
【氏名】川原村 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲麗▼
【テーマコード(参考)】
5F045
5F053
5F058
5F140
【Fターム(参考)】
5F045AA03
5F045AA15
5F045AB32
5F045AB34
5F045AC16
5F045BB16
5F045CA07
5F045DC61
5F045DP04
5F045EE02
5F045EE03
5F045EE19
5F045EK07
5F053AA50
5F053BB60
5F053DD20
5F053FF01
5F053GG10
5F053HH01
5F053HH04
5F053LL10
5F053RR03
5F058BB01
5F058BC02
5F058BC11
5F058BF29
5F058BF46
5F058BF47
5F058BJ01
5F140AA01
5F140AA05
5F140AB05
5F140AC23
5F140BA06
5F140BA16
5F140BB18
5F140BD05
5F140BD09
5F140BE09
5F140BE10
5F140BE20
5F140BF04
5F140BF05
5F140BH30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体層の界面にガリウム酸化物層が形成されることを抑制でき、高い性能を有するスイッチングデバイス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】スイッチングデバイス10であって、窒化ガリウム半導体基板12と、酸化シリコンにより構成されているとともに窒化ガリウム半導体層上に配置されたゲート絶縁膜22と、を有する。窒化ガリウム半導体基板とゲート絶縁膜の界面30にガリウム酸化物層が存在しないか又は窒化ガリウム半導体基板とゲート絶縁膜の界面に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングデバイス(10、500、600)であって、
窒化ガリウム半導体層(12、612)と
酸化シリコンにより構成されており、前記窒化ガリウム半導体層上に配置されたゲート絶縁膜(22、622)と、
を有し、
前記窒化ガリウム半導体層と前記ゲート絶縁膜の界面(30、630)にガリウム酸化物層が存在しない、または、前記窒化ガリウム半導体層と前記ゲート絶縁膜の界面に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である、スイッチングデバイス。
【請求項2】
スイッチングデバイスの製造方法であって、
シリコンを含む成膜原料と非プラズマ状態の酸化ガスとを窒化ガリウム半導体層(12、612)の表面に供給することによって、前記窒化ガリウム半導体層上に酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜(22、622)を形成する工程を有し、
前記ゲート絶縁膜をプラズマ状態の酸化ガスに曝す工程を有さない、製造方法。
【請求項3】
前記ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記成膜原料が溶解しているとともに溶剤を含む溶液(84d)を、前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記溶液からミスト(83)を発生させ、前記ミストを前記酸化ガスとともに前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記溶液を前記窒化ガリウム半導体層の前記表面にスプレー塗布しながら前記酸化ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記溶液をインクジェット法によって前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に塗布しながら前記酸化ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記溶液中にバブルを発生させることによって前記溶液の液滴を発生させ、前記液滴を前記酸化ガスとともに前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する、請求項3に記載の製造方法。
【請求項8】
前記ゲート絶縁膜を形成する前記工程では、前記成膜原料を含む原料ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する工程と、前記酸化ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する工程と、を交互に複数回繰り返す、請求項2に記載の製造方法。
【請求項9】
前記酸化ガスが、オゾンである請求項1~8のいずれか一項の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチングデバイスに関する。
【0002】
特許文献1には、スイッチングデバイスの製造方法が開示されている。この製造方法は、第1ゲート絶縁膜形成工程と、第2ゲート絶縁膜形成工程を有している。第1ゲート絶縁膜形成工程では、オゾンを酸化剤として用いたALD法(atomic layer deposition)により、窒化ガリウム半導体層上に第1ゲート絶縁膜を形成する。第2工程では、酸素プラズマを酸化剤として用いたALD法により、第1ゲート絶縁膜上に第2ゲート絶縁膜を形成する。第2ゲート絶縁膜上には、ゲート電極が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-071497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の製造方法では、第2工程において、第1ゲート絶縁膜が酸素プラズマ(プラズマ状態の酸素ガス)に曝される。酸素プラズマは高い酸化力を有するので、第2工程では、第1ゲート絶縁膜の下部の窒化ガリウム半導体層が酸化される。このため、第1ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体層の界面に、ガリウム酸化物層が形成される。その結果、この界面に高密度に界面準位が生成され、スイッチングデバイスの性能が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するスイッチングデバイスは、窒化ガリウム半導体層と、酸化シリコンにより構成されているとともに前記窒化ガリウム半導体層上に配置されたゲート絶縁膜と、を有する。前記窒化ガリウム半導体層と前記ゲート絶縁膜の界面にガリウム酸化物層が存在しない、または、前記窒化ガリウム半導体層と前記ゲート絶縁膜の界面に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である。
【0006】
なお、スイッチングデバイスは、ゲート絶縁膜を有するスイッチングデバイスであれば、いずれのスイッチングデバイスであってもよい。例えば、スイッチングデバイスは、電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)であってもよいし、高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)であってもよい。
【0007】
また、窒化ガリウム半導体層は、窒化ガリウムを主成分とする半導体層である。例えば、窒化ガリウム半導体層は、窒化ガリウム(GaN)により構成されていてもよいし、窒化インジウムガリウム(InGaN)により構成されていてもよいし、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)により構成されていてもよいし、窒化インジウムアルミニウムガリウム(InAlGaN)により構成されていてもよい。
【0008】
また、酸化シリコンは、SiとOとの結合を含む化合物である。例えば、酸化シリコンは、SiOであってもよいし、SiONであってもよい。
【0009】
このスイッチングデバイスでは、窒化ガリウム半導体層とゲート絶縁膜の界面にガリウム酸化物層が存在しない、または、前記窒化ガリウム半導体層と前記ゲート絶縁膜の界面に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である。このため、窒化ガリウム半導体層とゲート絶縁膜の界面に存在する界面準位が少ない。したがって、このスイッチングデバイスは、高い性能を有する。
【0010】
本明細書は、スイッチングデバイスの製造方法を開示する。この製造方法は、シリコンを含む成膜原料と非プラズマ状態の酸化ガスとを窒化ガリウム半導体層の表面に供給することによって、前記窒化ガリウム半導体層上に酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜を形成する工程を有する。また、この製造方法は、前記ゲート絶縁膜をプラズマ状態の酸化ガスに曝す工程を有さない。
【0011】
なお、酸化ガスは、シリコンを酸化する能力を有するガスを意味する。例えば、酸化ガスは、酸素ガス、水蒸気、オゾン等であってもよい。
【0012】
この製造方法では、ゲート絶縁膜を形成する工程において非プラズマ状態の酸化ガスを用いるため、ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体層の界面における窒化ガリウム半導体層の酸化を抑制できる。また、この製造方法は、ゲート絶縁膜をプラズマ状態の酸化ガスに曝す工程を有さないので、ゲート絶縁膜の形成後においても、ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体層の界面における窒化ガリウム半導体層の酸化を抑制できる。したがって、この製造方法によれば、ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体層の界面にガリウム酸化物層が形成されることを抑制できる。このため、この製造方法によれば、高い性能を有するスイッチングデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】スイッチングデバイス10の断面図。
図2】スイッチングデバイス10の製造方法の説明図。
図3】スイッチングデバイス10の製造方法の説明図。
図4】スイッチングデバイス10の製造方法の説明図。
図5】スイッチングデバイス10の製造方法の説明図。
図6】ミストCVD法の説明図。
図7】ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体基板の界面のXPS分析結果を示すグラフ。
図8】実施例1の製造方法により製造されたスイッチングデバイス10の移動度を示すグラフ。
図9】酸素プラズマを使用する製造方法により製造されたスイッチングデバイス10の移動度を示すグラフ。
図10】スプレー法の説明図。
図11】インクジェット法の説明図。
図12】バブリング法の説明図。
図13】非プラズマ状態の酸化ガスを使用するALD法の説明図。
図14】スイッチングデバイス500の断面図。
図15】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図16】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図17】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図18】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図19】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図20】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図21】スイッチングデバイス500の製造方法の説明図。
図22】スイッチングデバイス600の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書が開示する一例のスイッチングデバイスの製造方法では、前記ゲート絶縁膜を形成する前記工程で、前記成膜原料が溶解しているとともに溶剤を含む溶液を、前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。この場合、一つの構成においては、前記溶液からミストを発生させ、前記ミストを前記酸化ガスとともに前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。また、別の構成においては、前記溶液を前記窒化ガリウム半導体層の前記表面にスプレー塗布しながら前記酸化ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。また、別の構成においては、前記溶液をインクジェット法によって前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に塗布しながら前記酸化ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。また、別の構成においては、前記溶液中にバブルを発生させることによって前記溶液の液滴を発生させ、前記液滴を前記酸化ガスとともに前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給してもよい。
【0015】
これらの構成によれば、窒化ガリウム半導体層上に好適にゲート絶縁膜を形成することができる。
【0016】
また、本明細書が開示する別の一例のスイッチングデバイスの製造方法では、前記ゲート絶縁膜を形成する前記工程で、前記成膜原料を含む原料ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する工程と、前記酸化ガスを前記窒化ガリウム半導体層の前記表面に供給する工程と、を交互に複数回繰り返してもよい。
【0017】
この構成によれば、窒化ガリウム半導体層上に好適にゲート絶縁膜を形成することができる。
【0018】
本明細書が開示する何れかの製造方法では、前記酸化ガスが、オゾンであってもよい。
【0019】
図1に示す実施形態のスイッチングデバイス10は、MOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)である。スイッチングデバイス10は、窒化ガリウム半導体基板12を有している。窒化ガリウム半導体基板12は、高濃度n型層14a、バッファ層14b、ドリフト層14c、ボディ層16、ソース層18、及び、ドレイン層20を有している。高濃度n型層14aは、窒化ガリウム半導体基板12の下面を含む範囲に設けられている。バッファ層14bは、高濃度n型層14aよりもn型不純物濃度が低いn型層であり、高濃度n型層14a上に設けられている。ドリフト層14cは、バッファ層14bと同等のn型不純物濃度を有するn型層であり、バッファ層14b上に設けられている。ボディ層16は、p型層であり、ドリフト層14c上に設けられている。ソース層18とドレイン層20は、n型層であり、ボディ層16上に設けられている。ソース層18とドレイン層20は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを部分的に含む範囲に設けられている。ソース層18とドレイン層20は互いから分離されている。すなわち、ソース層18とドレイン層20の間にボディ層16が設けられており、ボディ層16によってソース層18がドレイン層20から分離されている。
【0020】
窒化ガリウム半導体基板12の上部に、ゲート絶縁膜22、ゲート電極24、ソース電極26、及び、ドレイン電極28が配置されている。
【0021】
ゲート絶縁膜22は、酸化シリコン(例えば、SiO、SiON等)によって構成されている。ゲート絶縁膜22は、窒化ガリウム半導体基板12上に配置されている。ゲート絶縁膜22は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aのうち、ソース層18の表面からドレイン層20の表面まで伸びている。ゲート絶縁膜22は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aにおいて、ソース層18、ボディ層16、及び、ドレイン層20に接している。
【0022】
ゲート電極24は、導体(例えば、金属やポリシリコン)により構成されている。ゲート電極24は、ゲート絶縁膜22上に配置されている。ゲート電極24は、ソース層18の上部からドレイン層20の上部まで伸びている。ゲート電極24は、ゲート絶縁膜22を介して、ソース層18、ボディ層16、及び、ドレイン層20に対向している。
【0023】
ソース電極26は、導体により構成されている。ソース電極26は、ソース層18上に配置されている。ソース電極26は、ソース層18にオーミック接触している。
【0024】
ドレイン電極28は、導体により構成されている。ドレイン電極28は、ドレイン層20上に配置されている。ドレイン電極28は、ドレイン層20にオーミック接触している。
【0025】
ゲート電極24に閾値以上の電位を印加すると、ゲート絶縁膜22の直下のドレイン層20にチャネルが形成される。チャネルによってソース層18とドレイン層20が接続される。この状態で、ドレイン電極28にソース電極26よりも高い電位を印加すると、ソース層18からチャネルを通ってドレイン層20へ電子が流れる。すなわち、スイッチングデバイス10がオンする。なお、後に詳述するが、スイッチングデバイス10では、ゲート絶縁膜22と窒化ガリウム基板12との界面30における界面準位密度が低い。したがって、スイッチングデバイス10のチャネル移動度は高い。
【実施例0026】
次に、実施例1のスイッチングデバイス10の製造方法について説明する。図2は、加工前の窒化ガリウム半導体基板12を示している。スイッチングデバイス10は、図2の窒化ガリウム半導体基板12から製造される。図2に示す窒化ガリウム半導体基板12の全体は、高濃度n型層14aにより構成されている。高濃度n型層14aは、約400μmの厚さを有しており、約1×1018cm-3のn型不純物濃度を有している。
【0027】
まず、図3に示すように、高濃度n型層14a上に、窒化ガリウムにより構成されたバッファ層14bをエピタキシャル成長させる。ここでは、バッファ層14bのn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、バッファ層14bの厚さが約0.3μmとなるようにバッファ層14bを形成する。次に、図3に示すように、バッファ層14b上に、窒化ガリウムにより構成されたドリフト層14cをエピタキシャル成長させる。ここでは、ドリフト層14cのn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、ドリフト層14cの厚さが約1.0μmとなるようにドリフト層14cを形成する。次に、図3に示すように、ドリフト層14c上に、窒化ガリウムにより構成されたボディ層16をエピタキシャル成長させる。ここでは、ボディ層16がp型不純物(例えば、マグネシウム)を約5×1017cm-3の濃度で有しており、ボディ層16の厚さが約1.5μmとなるようにボディ層16を形成する。その後、窒化ガリウム半導体基板12を窒素雰囲気化において約850℃にて約5分間アニールし、ボディ層16中のp型不純物を活性化させる。
【0028】
次に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aからボディ層16に選択的にn型不純物(例えば、シリコン)を約3×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。その後、窒化ガリウム半導体基板12全体を窒素雰囲気化において約1000℃にて約5分間アニールし、注入したn型不純物を活性化させる。これによって、図4に示すように、ボディ層16の表層部の一部に、ソース層18とドレイン層20を形成する。
【0029】
次に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを洗浄する。次に、ゲート絶縁膜形成工程を実施する。ゲート絶縁膜形成工程では、図5に示すように、上面12a上に酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜22を形成する。実施例1のゲート絶縁膜形成工程では、ミストCVD法(chemical vapor deposition)によりゲート絶縁膜22を形成する。
【0030】
図6は、ミストCVD法を実行するミストCVD装置80を示している。ミストCVD装置80は、炉82、ミスト発生装置84、キャリアガス供給源86、及び、酸化ガス供給源88を有している。
【0031】
炉82は、チャンバー82aを有している。チャンバー82a内に、窒化ガリウム半導体基板12を載置することができる。炉82は、ヒータを内蔵しており、チャンバー82a内の窒化ガリウム半導体基板12を加熱することができる。
【0032】
ミスト発生装置84は、ミスト発生タンク84a、容器84b、超音波振動子84cを有している。ミスト発生タンク84a内には、溶液84dが貯留されている。溶液84dは、溶剤に成膜原料を溶解させたものである。成膜原料は、元素としてシリコンを含んでいる。例えば、成膜原料として、ポリシラザン、テトラエトキシシラン、トリエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラン等を用いることができる。溶剤として、酢酸ブチル、ジメチルエーテル、酢酸メチル、アセトニトリル、ジブチルエーテル等の有機溶剤を用いることができる。容器84bは、液体84e(例えば、水)を貯留している。ミスト発生タンク84aの下部は、液体84e内に浸漬されている。容器84bの底面に、超音波振動子84cが固定されている。超音波振動子84cは、液体84eに超音波を加える。液体84eに加えられた超音波は、液体84eを介してミスト発生タンク84a内の溶液84dに伝わる。すると、溶液84dの液面が振動し、溶液84dの上部の空間に溶液84dのミスト83が発生する。このように、ミスト発生装置84は、ミスト発生タンク84a内に、溶液84dのミスト83を発生させる。ミスト発生タンク84aは、原料供給管94を介して炉82に接続されている。ミスト83は、ミスト発生タンク84aから原料供給管94を介して炉82に供給される。炉82内を下流端まで流れたミスト83は、炉82の外部へ排出される。
【0033】
キャリアガス供給源86は、キャリアガス供給管90を介してミスト発生タンク84aに接続されている。キャリアガス供給源86は、ミスト発生タンク84aにキャリアガス(例えば、アルゴン等の不活性ガス)を供給する。
【0034】
酸化ガス供給源88は、酸化ガス供給管92を介して原料供給管94の途中に接続されている。酸化ガス供給源88は、原料供給管94に酸化ガス(本実施形態では、オゾン)を供給する。
【0035】
ゲート絶縁膜形成工程では、まず、炉82のチャンバー82a内に窒化ガリウム半導体基板12を載置する。ここでは、チャンバー82a内を流れるミストに上面12aが曝される向きで、窒化ガリウム半導体基板12をチャンバー82a内に載置する。次に、炉82によって窒化ガリウム半導体基板12を加熱する。ゲート絶縁膜形成工程の間は、窒化ガリウム半導体基板12の温度を約400℃に維持する。次に、超音波振動子84cを作動させて、溶液84dからミスト83を発生させる。同時に、キャリアガス供給源86からミスト発生タンク84aへのキャリアガスの供給を開始し、酸化ガス供給源88から原料供給管94への酸化ガスの供給を開始する。キャリアガス供給管90からミスト発生タンク84a内に流入したキャリアガスは、ミスト発生タンク84a内のミスト83と共に原料供給管94へ流れる。原料供給管94内では、ミスト83がキャリアガスとともに炉82へ向かって流れる。原料供給管94の途中で、酸化ガス供給管92から原料供給管94内に酸化ガスが流入する。このため、原料供給管94のうちの酸化ガス供給管92との合流部よりも下流側の部分では、ミスト83がキャリアガスと酸化ガスとともに炉82へ向かって流れる。ミスト83、キャリアガス、及び、酸化ガスは、原料供給管94の下流端まで達すると、炉82のチャンバー82a内へ流入する。チャンバー82a内を流れるミスト83の一部は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに付着する。すると、上面12aに付着したミスト83に含まれる溶剤が揮発し、上面12aにシリコンを含む成膜原料が固着する。また、上面12aに成膜原料が固着するのと同時に、成膜原料が酸化ガスによって酸化される。酸化された成膜原料は、酸化シリコンとなる。したがって、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜22が成長する。ここでは、5分程度の成膜時間で、ゲート絶縁膜22の厚さが約100nmとなるようにゲート絶縁膜22を形成する。
【0036】
ゲート絶縁膜22を形成したら、窒化ガリウム半導体基板12を窒素雰囲気下において約800℃にて約5分間アニールする。
【0037】
次に、図1に示すように、ソース層18の上部、及び、ドレイン層20の上部において、ゲート絶縁膜22にコンタクトホール26a、28aを形成する。次に、ゲート電極24、ソース電極26、及び、ドレイン電極28を形成する。その後、必要に応じて、窒化ガリウム半導体基板12に対して水素シンタ処理を実施する。以上の工程によって、図1に示すスイッチングデバイス10が完成する。
【0038】
以上に説明したように、実施例1では、非プラズマ状態の酸化ガスを使用するミストCVD法によってゲート絶縁膜22を形成する。すなわち、窒化ガリウム半導体基板12上で成膜原料を非プラズマ状態の酸化ガスによって酸化することによって、ゲート絶縁膜22(すなわち、酸化シリコン膜)を形成する。すなわち、実施例1の製造方法では、ゲート絶縁膜形成工程でプラズマ状態の酸化ガスを使用しない。また、実施例1の製造方法では、ゲート絶縁膜22の形成後に、ゲート絶縁膜22がプラズマ状態の酸化ガスに曝されることが無い。以下に説明するように、この構成によれば、ゲート絶縁膜22と窒化ガリウム半導体基板12との界面30にガリウム酸化物層が形成されることを抑制し、スイッチングデバイス10のチャネル移動度を改善できる。
【0039】
図7のグラフA~Cは、スイッチングデバイス10として3つのサンプルを作成し、各サンプルに対してGaLLMについてのXPS分析を行った結果を示している。グラフAは、ゲート絶縁膜22を形成していない状態(図4の状態)のボディ層16の表面に対してXPS分析を行った結果である。すなわち、グラフAは、ガリウム酸化物層が存在しない状態のボディ層16の表面に対してXPS分析を行った結果である。グラフBは、実施例1のゲート絶縁膜形成工程(すなわち、酸化ガスとしてオゾンを使用したミストCVD法)によってゲート絶縁膜22を形成し、そのゲート絶縁膜22とボディ層16との界面30にXPS分析を行った結果である。グラフCは、酸素プラズマ(プラズマ状態の酸素ガス)を用いたALD法によってゲート絶縁膜22を形成し、そのゲート絶縁膜22とボディ層16との界面30にXPS分析を行った結果である。なお、グラフB及びCの測定では、ゲート絶縁膜22をウェットエッチングすることによってゲート絶縁膜22の厚さを約100nmから約5nmまで減少させ、その後に、ゲート絶縁膜22とボディ層16の界面30に対してXPS分析を行った。
【0040】
図7に示すように、グラフBはグラフAとほぼ一致するのに対し、グラフCはグラフAに対して明らかなずれを有する。Noritake Isomura at el(2020). X-ray photoelectron spectroscopy insights on interfaces between SiO2 films and GaNsubstrates: differences due to depositional technique, Jpn. J. Appl. Phys. 59, 090902 (2020)に示されているように、ゲート絶縁膜と窒化ガリウム半導体との界面のXPS分析の結果を比較することで、当該界面にガリウム酸化物層が存在するか否かを検出することができる。この手法によれば、厚さが1nmより厚いガリウム酸化物層を検出することができる。上述したように、グラフAはガリウム酸化物層が存在しない状態のボディ層16の表面に対してXPS分析を行った結果である。グラフBはグラフAと一致しているので、グラフBのサンプルでは、界面30にガリウム酸化物層が存在しない、または、界面30に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下(検出限界以下)である。すなわち、酸化ガスとしてオゾンを使用したミストCVD法によりゲート絶縁膜22を形成した場合には、界面30にガリウム酸化物層が形成されない、または、界面30に形成されるガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である。グラフCはグラフAに対してずれを有しているので、グラフCのサンプルでは、界面30に厚さが1nmよりも厚いガリウム酸化物層が存在する。すなわち、酸素プラズマを用いたALD法によってゲート絶縁膜22を形成した場合には、界面30に厚さが1nmよりも厚いガリウム酸化物層が形成される。
【0041】
以上に説明したように、実施例1の製造方法によれば、界面30にガリウム酸化物層が形成されることを抑制できる。その理由は、以下のように推測される。ゲート絶縁膜22を形成するときに、プラズマ状態の酸化ガスを使用すると、プラズマ状態の酸化ガスの酸化力が高すぎるため、窒化ガリウム半導体基板12の表面が酸化され、界面30にガリウム酸化物層が形成される。これに対し、実施例1の製造方法では、ゲート絶縁膜22を形成するときに非プラズマ状態の酸化ガスを使用する。非プラズマ状態の酸化ガスの酸化力がそれほど高くないので、界面30にガリウム酸化物層が形成されることが抑制される。また、ゲート絶縁膜22の形成後にゲート絶縁膜22がプラズマ状態の酸化ガスに曝されると、界面30にガリウム酸化物層が形成される。これに対し、実施例1の製造方法では、ゲート絶縁膜22の形成後にゲート絶縁膜22がプラズマ状態の酸化ガスに曝される工程が存在しない。したがって、ゲート絶縁膜22の形成後に界面30にガリウム酸化物層が形成されることが抑制される。したがって、実施例1の製造方法によれば、界面30にガリウム酸化物層が存在しない、または、界面30に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下であるスイッチングデバイス10を製造することができる。
【0042】
界面30におけるガリウム酸化物層の形成が抑制されると、界面30における界面準位密度を低減することができる。スイッチングデバイス10では、界面30に沿ってチャネルが形成されるので、界面30の界面準位密度を低減することで、チャネル移動度を向上させることができる。図8は、実施例1の製造方法により製造したスイッチングデバイス10のチャネル移動度を測定した結果を示している。図8に示すように、この場合、250cm/Vsを超える移動度が得られた。図9は、酸素プラズマを用いたALD法によってゲート絶縁膜22を形成した場合のスイッチングデバイス10のチャネル移動度を測定した結果を示している。図9に示すように、この場合、移動度は最大でも約56cm/Vsであった。このように、実施例1の製造方法によれば、界面30におけるガリウム酸化物層の形成を抑制でき、チャネル移動度の高いスイッチングデバイス10を製造することができる。
【0043】
次に、実施例2~5の製造方法について説明する。なお、実施例2~5の製造方法では、ゲート絶縁膜形成工程のみが実施例1の製造方法とは異なる。したがって、以下では、実施例2~5のゲート絶縁膜形成工程について説明する。
【実施例0044】
実施例2のゲート絶縁膜形成工程では、スプレー塗布法によってゲート絶縁膜22を形成する。すなわち、ここでは、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、図10に示すように、溶液84dを窒化ガリウム半導体基板12の上面12aにスプレー塗布する。同時に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化ガス(ここでは、オゾン)を供給する。上面12aに付着した溶液84dから溶剤が揮発し、上面12aにシリコンを含む成膜原料が固着する。また、上面12aに成膜原料が固着するのと同時に、成膜原料が酸化ガスによって酸化される。酸化された成膜原料は、酸化シリコンとなる。したがって、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜22が成長する。
【実施例0045】
実施例3のゲート絶縁膜形成工程では、インクジェット法によってゲート絶縁膜22を形成する。すなわち、ここでは、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、図11に示すように、インクジェットヘッド300から窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに向かって溶液84dの液滴を吐出する。同時に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化ガス(ここでは、オゾン)を供給する。上面12aに付着した溶液84dから溶剤が揮発し、上面12aにシリコンを含む成膜原料が固着する。また、上面12aに成膜原料が固着するのと同時に、成膜原料が酸化ガスによって酸化される。酸化された成膜原料は、酸化シリコンとなる。したがって、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜22が成長する。
【実施例0046】
実施例4のゲート絶縁膜形成工程では、バブリング法によってゲート絶縁膜22を形成する。図12は、バブリング法に使用するバブリング成膜装置400を示している。バブリング成膜装置400は、図6のミストCVD装置80のミスト発生装置84をバブリングタンク310に置き換えたものである。バブリングタンク310内には、溶液84dが貯留されている。キャリアガス供給管90の下流端は、バブリングタンク310内で溶液84d内に浸漬されている。原料供給管94の上流端は、バブリングタンク310内で溶液84dの液面よりも上側に配置されている。バブリング成膜装置400によってゲート絶縁膜22を形成する場合には、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、キャリアガス供給源86からキャリアガス供給管90へキャリアガスを供給し、酸化ガス供給源88から酸化ガス供給管92へ酸化ガス(ここでは、オゾン)を供給する。バブリングタンク310に供給されたキャリアガスは、溶液84d内を泡となって通過する。これによって、キャリアガス中に溶液84dの液滴が発生する。溶液84dの液滴は、キャリアガス及び酸化ガスとともに炉82内の窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに供給される。上面12aに溶液84dの液滴が付着すると、溶液84dから溶剤が揮発し、上面12aにシリコンを含む成膜原料が固着する。また、上面12aに成膜原料が固着するのと同時に、成膜原料が酸化ガスによって酸化される。酸化された成膜原料は、酸化シリコンとなる。したがって、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜22が成長する。
【0047】
以上に説明したように、実施例2~4の製造方法は、いずれも、実施例1と同様に、成膜原料が溶解しているとともに溶剤を含む溶液84dを、加熱した窒化ガリウム半導体基板12の表面12aに供給する技術である。実施例2~4のいずれの製造方法でも、非プラズマ状態の酸化ガスを用いて、ゲート絶縁膜22を形成する。また、実施例2~4のいずれの製造方法も、ゲート絶縁膜22を形成した後にゲート絶縁膜22をプラズマ状態の酸化ガスに曝す工程を有しない。したがって、実施例2~4のいずれの製造方法でも、ゲート絶縁膜22とボディ層16の界面30におけるガリウム酸化物層の形成を抑制できる。実施例2~4のいずれの製造方法でも、チャネル移動度が高いスイッチングデバイス10を製造することができる。
【実施例0048】
実施例5のゲート絶縁膜形成工程では、非プラズマ状態の酸化ガスを用いたALD法によってゲート絶縁膜22を形成する。このゲート絶縁膜形成工程では、図13に示すように、ステップS2とステップS4を交互に複数回繰り返す。ステップS2では、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、元素としてシリコンを含む原料ガスを窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに供給する。その結果、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに、シリコンを含む原料が堆積する。ステップS4では、窒化ガリウム半導体基板12を加熱しながら、酸化ガス(ここでは、オゾン)を窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに供給する。その結果、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aに堆積したシリコンを含む原料が酸化されて酸化シリコンとなる。ステップS2とステップS4を繰り返すことで、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aにゲート絶縁膜(すなわち、酸化シリコン膜)が成長する。実施例5の製造方法でも、非プラズマ状態の酸化ガスを用いてゲート絶縁膜22を形成する。また、実施例5の製造方法も、ゲート絶縁膜22を形成した後にゲート絶縁膜22をプラズマ状態の酸化ガスに曝す工程を有しない。したがって、実施例5の製造方法でも、ゲート絶縁膜22とボディ層16の界面30におけるガリウム酸化物層の形成を抑制できる。実施例5の製造方法でも、チャネル移動度が高いスイッチングデバイス10を製造することができる。但し、この手法は原理的に原子レベルでの成膜手法となる為、例えば、100nm成膜するには10時間以上要する。一般的なCVDによる成膜手法では、成膜時間がせいぜい数10分程度である事を考えると、プラズマ状態の酸化ガスを使わなくても、ALD法では、長時間成膜中に界面30にガリウム酸化膜が形成されてしまう為、実施例5は、特に、10nm以下の成膜時に有効である。
【0049】
(変形例1)
次に、図14に示す変形例のスイッチングデバイス500について説明する。スイッチングデバイス500は、縦型のMOSFETである。スイッチングデバイス500の各部のうち、スイッチングデバイス10と機能が共通する部分には、スイッチングデバイス10と同じ符号を付している。
【0050】
図14に示すように、スイッチングデバイス500の窒化ガリウム半導体基板12は、スイッチングデバイス10と同様に、高濃度n型層14a、バッファ層14b、ドリフト層14cを有している。ドリフト層14c上に、複数のボディ層16が設けられている。各ボディ層16は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを部分的に含む範囲に設けられている。複数のボディ層16は、互いに分離されている。2つのボディ層16の間にドリフト層14cが設けられており、ドリフト層14cによって2つのボディ層16が互いに分離されている。以下では、2つのボディ層16の間に位置するドリフト層14cを、JFET層14d(junction field effect transistor層)という。各ボディ層16は、p型の高濃度層16aと、高濃度層16aよりもp型不純物濃度が低いp型の低濃度層16bを有している。高濃度層16aは、ドリフト層14cに対して上側から接している。低濃度層16bは、高濃度層16aに対して上側から接している。各低濃度層16bに囲まれた範囲内に、ソース層18とコンタクト層510が設けられている。各ソース層18は、上面12aを部分的に含む範囲に設けられている。各ソース層18は、ボディ層16によってドリフト層14cから分離されている。各コンタクト層510は、高濃度層16aよりもp型不純物濃度が高いp型層である。各コンタクト層510は、上面12aを部分的に含む範囲に設けられている。
【0051】
窒化ガリウム半導体基板12の上部に、ゲート絶縁膜22、ゲート電極24、ソース電極26、及び、層間絶縁膜520が配置されている。ゲート絶縁膜22は、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aの一部を覆っている。ゲート絶縁膜22は、上面12aのうちのソース層18の表面、低濃度層16bの表面、及び、JFET層14dの表面に跨る範囲を覆っている。ゲート電極24は、ゲート絶縁膜22上に配置されている。ゲート電極24は、ゲート絶縁膜22を介して、ソース層18、ボディ層16、及び、JFET層14dに対向している。ゲート電極24の上部は、層間絶縁膜520により覆われている。ソース電極26は、層間絶縁膜520を覆っており、ソース層18とコンタクト層510にオーミック接触している。窒化ガリウム半導体基板12の下面には、ドレイン電極28が設けられている。ドレイン電極28は、高濃度n型層14aにオーミック接触している。
【0052】
ゲート電極24に閾値以上の電位を印加すると、ゲート絶縁膜22の直下の低濃度層16bにチャネルが形成される。チャネルによってソース層18とJFET層14dが接続される。この状態で、ドレイン電極28にソース電極26よりも高い電位を印加すると、ソース層18から、チャネル、ドリフト層14c、バッファ層14bを通って高濃度n型層14aへ電子が流れる。すなわち、スイッチングデバイス500がオンする。
【0053】
スイッチングデバイス500は、図2に示す窒化ガリウム半導体基板12(全体が高濃度n型層14aにより構成されている基板)から製造される。
【0054】
まず、図15に示すように、高濃度n型層14a上に、窒化ガリウムにより構成されたバッファ層14bをエピタキシャル成長させる。ここでは、バッファ層14bのn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、バッファ層14bの厚さが約0.3μmとなるようにバッファ層14bを形成する。次に、図15に示すように、バッファ層14b上に、窒化ガリウムにより構成されたドリフト層14cをエピタキシャル成長させる。ここでは、ドリフト層14cのn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、ドリフト層14cの厚さが約5.0μmとなるようにドリフト層14cを形成する。次に、図15に示すように、ドリフト層14c上に、窒化ガリウムにより構成された高濃度層16aをエピタキシャル成長させる。ここでは、高濃度層16aのp型不純物濃度が約5×1019cm-3となり、高濃度層16aの厚さが約0.5μmとなるように高濃度層16aを形成する。次に、図15に示すように、高濃度層16a上に、窒化ガリウムにより構成された低濃度層16bをエピタキシャル成長させる。ここでは、低濃度層16bのp型不純物濃度が約5×1017cm-3となり、低濃度層16bの厚さが約1.5μmとなるように低濃度層16bを形成する。その後、窒化ガリウム半導体基板12を窒素雰囲気化において約850℃にて約5分間アニールし、窒化ガリウム半導体基板12中の不純物を活性化させる。
【0055】
次に、図16に示すように、エッチングマスクを用いて窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを選択的にドライエッチングすることによって、上面12aに凹部530を形成する。ここでは、凹部530の幅が約4μmとなり、凹部530の深さがドリフト層14cに達するように、凹部530を形成する。
【0056】
次に、図17に示すように、窒化ガリウム半導体基板12上にn型層540をエピタキシャル成長させる。ここでは、n型層540のn型不純物濃度が約2×1016cm-3となり、n型層540の厚さが約3.0μmとなるように、n型層540を形成する。このようにn型層540を形成すると、凹部530がn型層540によって埋まる。凹部530内のn型層540によって、JFET層14dが形成される。
【0057】
次に、図18に示すように、CMP(chemical mechanical polishing)によって窒化ガリウム半導体基板12の上面12aを平坦化する。ここでは、上面12aに低濃度層16bが露出するように上面12aを平坦化する。
【0058】
次に、窒化ガリウム半導体基板12の上面12aから低濃度層16bに選択的にn型不純物(例えば、シリコン)を約3×1015cm-2のドーズ量でイオン注入する。その後、窒化ガリウム半導体基板12全体を窒素雰囲気化において約1000℃にて約5分間アニールし、注入したn型不純物を活性化させる。これによって、図19に示すように、低濃度層16bの表層部の一部に、ソース層18を形成する。
【0059】
次に、図20に示すように、窒化ガリウム半導体基板12の上面12a上に酸化シリコンにより構成されたゲート絶縁膜22を形成する。ここでは、上面12a全体を覆うようにゲート絶縁膜22を形成する。ゲート絶縁膜22は、上述した実施例1~5のいずれかのゲート絶縁膜形成工程によって形成することができる。したがって、ゲート絶縁膜22と窒化ガリウム半導体基板12の間の界面30に酸化ガリウム層が形成されることが抑制される。
【0060】
次に、図20に示すように、ゲート絶縁膜22上にゲート電極24を形成する。ここでは、ゲート絶縁膜22の上面全体を覆うようにゲート電極24を形成する。
【0061】
次に、図21に示すように、ゲート絶縁膜22とゲート電極24を部分的に除去することによって、ソース層18と低濃度層16bの一部を露出させる。次に、低濃度層16bにp型不純物をイオン注入し、その後、活性化アニールを行うことで、図21に示すように、コンタクト層510を形成する。その後、窒化ガリウム半導体基板12の上部に層間絶縁膜520とソース電極26を形成し、窒化ガリウム半導体基板12の下部にドレイン電極28を形成することで、図14に示すスイッチングデバイス500が完成する。
【0062】
以上に説明したように、変形例1のスイッチングデバイス500のゲート絶縁膜22は、上述した実施例1~5のいずれかのゲート絶縁膜形成工程によって形成される。したがって、ゲート絶縁膜22と窒化ガリウム半導体基板12の間の界面30における酸化ガリウム層の形成が抑制される。すなわち、変形例1のスイッチングデバイス500では、界面30にガリウム酸化物層が存在しない、または、界面30に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である。したがって、変形例1のスイッチングデバイス500では、界面30における界面準位密度が低い。このため、変形例1のスイッチングデバイス500のチャネル移動度は高い。
【0063】
(変形例2)
上述したスイッチングデバイス10、500は、MOSFETであった。しかしながら、他のスイッチングデバイスに本明細書に開示の技術を適用してもよい。例えば、HEMTに本明細書に開示の技術を適用してもよい。図22は、HEMTの一例として変形例2のスイッチングデバイス600を示している。図22では、窒化ガリウム半導体基板612が、キャリア走行層618とキャリア供給層620を有している。キャリア走行層618は、n型の窒化ガリウム(すなわち、n-GaN)により構成されている。キャリア供給層620は、キャリア走行層618上に設けられている。キャリア供給層620は、i型の窒化アルミニウムガリウム(すなわち、i-AlGaN)により構成されている。キャリア走行層618とキャリア供給層620の界面640はヘテロ接合面であり、界面640に沿って二次元電子ガスが生じている。キャリア供給層620の上面にリセス650が設けられており、リセス650内にゲート絶縁膜622とゲート電極624が設けられている。ゲート電極624は、ゲート絶縁膜622を介してキャリア供給層620に対向している。また、窒化ガリウム半導体基板612の上面には、ゲート電極624の両側にソース電極626とドレイン電極628が設けられている。
【0064】
図22のスイッチングデバイス600(すなわち、HEMT)において、ゲート絶縁膜622は、上述した実施例1~5のいずれかのゲート絶縁膜形成工程によって形成することができる。このようにゲート絶縁膜622を形成することで、ゲート絶縁膜622とキャリア供給層620の界面630におけるガリウム酸化物層の形成を抑制できる。すなわち、変形例2のスイッチングデバイス600では、界面630にガリウム酸化物層が存在しない、または、界面630に存在するガリウム酸化物層の厚さが1nm以下である。したがって、界面630における界面準位密度が低い。界面630における界面準位密度は、その直下の2次元電子ガスの振る舞いに大きい影響を与える。したがって、界面630における界面準位密度を低減させることで、スイッチングデバイス600の特性を改善することができる。
【0065】
なお、上述した実施例1~5のゲート絶縁膜形成工程では、酸化ガスとしてオゾンを使用した。しかしながら、酸化ガスとしてシリコンを酸化可能な他のガス(例えば、酸素、水蒸気等)を使用してもよい。但し、オゾンは、酸素及び水蒸気よりも高い酸化力を有するため、ゲート絶縁膜形成工程における窒化ガリウム半導体基板の加熱温度が比較的低くても、好適にゲート絶縁膜を形成することができる。また、このように窒化ガリウム半導体基板の加熱温度を比較的低温とすることで、ゲート絶縁膜形成工程中に窒化ガリウム半導体基板からゲート絶縁膜にガリウムが拡散することを抑制できる。これによって、スイッチングデバイスの特性の劣化を防止できる。
【0066】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0067】
10:スイッチングデバイス、12:窒化ガリウム半導体基板、16:ボディ層、18:ソース層、20:ドレイン層、22:ゲート絶縁膜、24:ゲート電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22