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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013020
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】排泄物処理材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20220111BHJP
【FI】
A01K1/015 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115286
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101GB08
(57)【要約】
【課題】尿を下方に導きやすい排泄物処理材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】排泄物処理材1は、撥水性を有する複数の粒状体10からなる。複数の粒状体10は、粒状体20、及び粒状体30を含んでいる。粒状体20は、尿を通過させる貫通孔22を有している。粒状体30は、尿を通過させる貫通孔を有していない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水性を有する複数の粒状体からなる排泄物処理材であって、
前記複数の粒状体は、尿を通過させる貫通孔を有する第1の粒状体と、前記貫通孔を有しない第2の粒状体とを含むことを特徴とする排泄物処理材。
【請求項2】
請求項1に記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体において前記貫通孔は、一直線状に延在している排泄物処理材。
【請求項3】
請求項2に記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体に設けられた前記貫通孔は、円柱状の空間からなる排泄物処理材。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体は、円柱に前記貫通孔が設けられた形状をしている排泄物処理材。
【請求項5】
請求項4に記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体は、円筒状をしている排泄物処理材。
【請求項6】
請求項5に記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体の内径は、当該第1の粒状体の外径の50%以上である排泄物処理材。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第2の粒状体は、円柱状をしている排泄物処理材。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第2の粒状体は、前記第1の粒状体と同一組成の材料からなる排泄物処理材。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体の粒径は、前記第2の粒状体の粒径よりも大きい排泄物処理材。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1及び第2の粒状体は、複数ずつ設けられている排泄物処理材。
【請求項11】
請求項10に記載の排泄物処理材において、
前記第1の粒状体の個数は、前記第1及び第2の粒状体の個数の合計の30%以上70%以下である排泄物処理材。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れかに記載の排泄物処理材において、
前記第1及び第2の粒状体は、何れも有機物を主材料とする排泄物処理材。
【請求項13】
請求項12に記載の排泄物処理材において、
前記第1及び第2の粒状体は、何れも実質的に塩ビ壁紙分級物のみからなる排泄物処理材。
【請求項14】
請求項12に記載の排泄物処理材において、
前記第1及び第2の粒状体は、何れも石膏を含有する排泄物処理材。
【請求項15】
撥水性を有する複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する方法であって、
尿を通過させる貫通孔を有し、前記複数の粒状体に含まれる第1の粒状体を形成する第1の粒状体形成工程と、
前記貫通孔を有さず、前記複数の粒状体に含まれる第2の粒状体を形成する第2の粒状体形成工程と、
を含むことを特徴とする排泄物処理材の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、前記第1の粒状体において前記貫通孔が一直線状に延在するように、当該第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、円柱状の空間からなる前記貫通孔を有する前記第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項18】
請求項15乃至17の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、円柱に前記貫通孔が設けられた形状の前記第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、円筒状の前記第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、前記第1の粒状体の内径が当該第1の粒状体の外径の50%以上となるように、当該第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項21】
請求項15乃至20の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第2の粒状体形成工程においては、円柱状の前記第2の粒状体を形成するる排泄物処理材の製造方法。
【請求項22】
請求項15乃至21の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第2の粒状体形成工程においては、前記第1の粒状体形成工程において形成される前記第1の粒状体と同一組成の材料からなる前記第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項23】
請求項15乃至22の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、前記第1の粒状体の粒径が前記第2の粒状体の粒径よりも大きくなるように、当該第1の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項24】
請求項15乃至23の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1の粒状体形成工程においては、複数の前記第1の粒状体を形成し、
前記第2の粒状体形成工程においては、複数の前記第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記複数の第1の粒状体と前記複数の第2の粒状体とを混合する混合工程を含む排泄物処理材の製造方法。
【請求項26】
請求項25に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記混合工程においては、前記第1の粒状体の個数が前記第1及び第2の粒状体の個数の合計の30%以上70%以下となるように、当該第1及び第2の粒状体を混合する排泄物処理材の製造方法。
【請求項27】
請求項15乃至26の何れかに記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の粒状体形成工程においては、それぞれ、有機物を主材料とする前記第1及び第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項28】
請求項27に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の粒状体形成工程においては、それぞれ、実質的に塩ビ壁紙分級物のみからなる前記第1及び第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【請求項29】
請求項27に記載の排泄物処理材の製造方法において、
前記第1及び第2の粒状体形成工程においては、それぞれ、石膏を含有する前記第1及び第2の粒状体を形成する排泄物処理材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排泄物処理材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された排泄物処理材は、撥水性を有する複数の粒状体からなり、動物用トイレに敷設されている。この動物用トイレは、尿を通過させるメッシュ状のシートによって上部空間と下部空間とに区画されたシステムトイレである。撥水性の粒状体は、上部空間に配設されている。下部空間には、吸液シートが配設されている。動物が排尿すると、尿は、撥水性の粒状体どうしの隙間を通り抜けて、メッシュ状のシートを通じて下部空間に達する。下部空間に達した尿は、吸液シートによって吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-110700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撥水性の粒状体は、密集した状態で動物用トイレの上部空間に配設される。それゆえ、尿の通り道となる、粒状体どうしの隙間を充分に確保することができず、尿が下方に流れにくいという問題がある。このように尿が下方に流れにくいと、尿が上部空間に残留し、当該尿から発生した悪臭が動物用トイレの外に漏れやすくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、尿を下方に導きやすい排泄物処理材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による排泄物処理材は、撥水性を有する複数の粒状体からなる排泄物処理材であって、上記複数の粒状体は、尿を通過させる貫通孔を有する第1の粒状体と、上記貫通孔を有しない第2の粒状体とを含むことを特徴とする。
【0007】
この排泄物処理材においては、貫通孔を有する粒状体(第1の粒状体)と、貫通孔を有しない粒状体(第2の粒状体)とが設けられている。第1の粒状体においては、その貫通孔を尿が通過する。これにより、尿は、粒状体どうしの隙間だけでなく、第1の粒状体の貫通孔も通り抜けることが可能となる。このため、複数の粒状体が密集した状態においても、尿が下方に流れやすくなる。
【0008】
また、本発明による排泄物処理材の製造方法は、撥水性を有する複数の粒状体からなる排泄物処理材を製造する方法であって、尿を通過させる貫通孔を有し、上記複数の粒状体に含まれる第1の粒状体を形成する第1の粒状体形成工程と、上記貫通孔を有さず、上記複数の粒状体に含まれる第2の粒状体を形成する第2の粒状体形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
この製造方法においては、貫通孔を有する粒状体(第1の粒状体)と、貫通孔を有しない粒状体(第2の粒状体)とが形成される。第1の粒状体においては、その貫通孔を尿が通過する。これにより、製造後の排泄物処理材においては、尿は、粒状体どうしの隙間だけでなく、第1の粒状体の貫通孔も通り抜けることが可能となる。このため、複数の粒状体が密集した状態においても、尿が下方に流れやすくなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、尿を下方に導きやすい排泄物処理材及びその製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。
図2】粒状体20を示す斜視図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】粒状体30を示す斜視図である。
図5】ダイス40を示す端面図である。
図6】ダイス孔42を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による排泄物処理材の一実施形態を示す模式図である。排泄物処理材1は、排泄物(特に尿)の処理に用いられる排泄物処理材であって、複数の粒状体10からなる。排泄物処理材1は、猫や犬等の動物の排泄物を処理する動物用の排泄物処理材であってもよいし、人の排泄物を処理する人用の排泄物処理材であってもよい。この排泄物処理材1は、例えば、尿を通過させる孔部を有する仕切部材によって上部空間と下部空間とに区画された2段構造のトイレ(システムトイレ)において使用される。その場合、排泄物処理材1は、システムトイレの上部空間(仕切部材上)に複数の粒状体10が積み重ねられた状態で使用される。
【0014】
各粒状体10は、撥水性を有している。すなわち、粒状体10は、尿等の液体を全く吸収しないか、あるいは吸収するとしても殆ど吸収しない性質を有する。粒状体10が撥水性を有するというには、次の試験により測定される撥水率が80%以上であることが必要である。まず、茶こしに50g相当の複数の粒状体10(サンプル)を入れる。茶こしの下には、空のビーカーを設置する。そして、サンプルに対し、針のない注射器を用いて、30mlの水を10秒かけて滴下する。1分間放置した後、ビーカー内の水量を計測する。計測した水量の滴下した水量(30ml)に対する割合をもって撥水率とする。すなわち、ビーカー内の水量が24ml以上であれば、撥水率が80%以上となるため、粒状体10が撥水性を有するといえる。参考として、市販されている一般的な吸水性の猫砂の撥水率は、5%程度である。
【0015】
複数の粒状体10は、粒状体20(第1の粒状体)、及び粒状体30(第2の粒状体)を含んでいる。本実施形態においては、排泄物処理材1を構成する複数の粒状体10の全てが、粒状体20又は粒状体30からなる。粒状体20及び粒状体30は、複数ずつ設けられている。排泄物処理材1においては、これらの粒状体20,30が混在している。粒状体20の個数は、粒状体20及び粒状体30の個数の合計の30%以上70%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。各粒状体20,30の粒径は、例えば5mm以上15mm以下である。ただし、粒状体20の粒径は、粒状体30の粒径よりも大きい。ここで、粒状体の粒径は、当該粒状体を内包しうる最小の球の直径として定義するものとする。
【0016】
図2は、粒状体20を示す斜視図である。また、図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。粒状体20は、粒状に成形されており、撥水性を有している。粒状体20は、貫通孔22を有している。貫通孔22は、尿を通過させる。各粒状体20において貫通孔22は、一直線状に延在している。すなわち、貫通孔22は、直線状の中心軸を有している。本実施形態において貫通孔22は、円柱状の空間からなる。また、粒状体20は、円柱に貫通孔22が設けられた形状をしている。貫通孔22は、粒状体20をその高さ方向(図2及び図3の左右方向)に貫通している。それゆえ、粒状体20は、全体として円筒状をしている。各粒状体20の内径(貫通孔22の径)d1は、当該粒状体20の外径d2の50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。
【0017】
各粒状体20は、有機物を主材料とすることが好ましい。ここで、主材料とは、各粒状体を構成する1又は2以上の材料のうち、当該粒状体に占める重量割合が最大のものをいう。有機物としては、例えば、紙類、茶殻、プラスチック類又はオカラを用いることができる。
【0018】
紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙の他にも、塩ビ壁紙分級物、印画紙、剥離紙、フラッフパルプ、製紙スラッジ、パルプスラッジ等が挙げられる。塩ビ壁紙分級物は、紙及びポリ塩化ビニルを含有する塩ビ壁紙からポリ塩化ビニルの一部が除去されてなる。プラスチック類としては、例えば、通常のプラスチックの他にも、アルミ蒸着フィルム、紙おむつ分級物(紙おむつを分級することにより得られるプラスチック)等が挙げられる。オカラは、乾燥オカラであることが好ましい。これらの材料には、撥水処理が施されていてもよい。
【0019】
各粒状体20を構成する材料は、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。前者の場合、粒状体20を構成する材料は、主材料のみということになる。後者の場合、粒状体20は、主材料と他の材料との混合物によって構成されることになる。他の材料としては、例えば石膏が挙げられる。石膏の含有量(重量割合)は、例えば、粒状体20の全体に対して5%以上15%以下である。
【0020】
各粒状体20は、実質的に塩ビ壁紙分級物のみからなってもよい。「実質的に塩ビ壁紙分級物のみからなる」とは、各粒状体の撥水性を阻害しない限り、色素、香料等の他の材料が当該粒状体に添加されていてもよいという趣旨である。その場合であっても、各粒状体に占める他の材料の重量割合は1%以下(すなわち、塩ビ壁紙分級物の重量割合が99%以上)であることが好ましい。
【0021】
図4は、粒状体30を示す斜視図である。粒状体30は、粒状に成形されており、撥水性を有している。粒状体30は、尿を通過させる貫通孔を有していない。本実施形態において粒状体30は、円柱状をしている。
【0022】
各粒状体30は、有機物を主材料とすることが好ましい。各粒状体30を構成する材料は、1つのみであってもよいし、2つ以上であってもよい。前者の場合、粒状体30を構成する材料は、主材料のみということになる。後者の場合、粒状体30は、主材料と他の材料との混合物によって構成されることになる。他の材料としては、例えば石膏が挙げられる。石膏の含有量(重量割合)は、例えば、粒状体30の全体に対して5%以上15%以下である。各粒状体30は、実質的に塩ビ壁紙分級物のみからなってもよい。なお、粒状体30は、粒状体20と同一組成の材料からなっていてもよいし、粒状体20と異なる組成の材料からなっていてもよい。
【0023】
続いて、本発明による排泄物処理材の製造方法の一実施形態として、排泄物処理材1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、第1の粒状体形成工程、第2の粒状体形成工程、及び混合工程を含んでいる。
【0024】
第1の粒状体形成工程は、粒状体20を形成する工程である。この工程においては、造粒装置を用いて被造粒材料(粒状体20を構成する材料)を造粒することにより、粒状体20となる造粒物を形成する。本実施形態においては、複数の粒状体20が形成される。造粒装置としては、例えば押出造粒機を用いることができる。造粒に先立って、被造粒材料には、粉砕、混練、加水等の前処理が必要に応じて行われる。
【0025】
貫通孔22は、被造粒材料の造粒後に形成されてもよいし、被造粒材料の造粒と同時に形成されてもよい。前者の場合、例えば、造粒された円柱状の造粒物に対し、その中心軸に沿って丸棒を突き刺すことにより、貫通孔22を形成することができる。後者の場合、例えば、図5に示すダイス40を用いて被造粒材料を押出造粒することにより、貫通孔22を形成することができる。
【0026】
図5は、ダイス40を示す端面図である。ダイス40には、被造粒材料を通過させる複数のダイス孔42が設けられている。ただし、同図においては、1つのダイス孔42のみを示している。図6は、ダイス孔42を示す平面図である。ダイス孔42は、平面視で円形をしている。ダイス孔42の内部には、芯材44が設けられている。芯材44は、ダイス孔42の内面から離間した位置に設けられている。芯材44は、丸棒状(円柱状)をしており、ダイス孔42の中心軸に沿って延在している。芯材44の中心軸は、ダイス孔42の中心軸に一致する。
【0027】
芯材44は、連結部材46を介してダイス孔42に固定されている。連結部材46は、ダイス孔42の径方向に沿って、芯材44からダイス孔42の内面まで延在している。すなわち、連結部材46の一端が芯材44の側面に接続され、連結部材46の他端がダイス孔42の内面に接続されている。連結部材46の幅w1は、芯材44の径よりも小さい。連結部材46の幅w1は、造粒時に芯材44を支持しうる限り、できるだけ小さいことが好ましい。
【0028】
図5からわかるように、芯材44は、ダイス40の厚み方向(同図の上下方向)について、ダイス孔42の一部にのみ設けられている。芯材44は、ダイス孔42の出口側の開口面に達する一方で、ダイス孔42の入口側の開口面には達していない。また、連結部材46は、芯材44の下端よりも上端寄りに位置している。連結部材46の厚みt1は、芯材44の長さよりも小さい。連結部材46の厚みt1も、造粒時に芯材44を支持しうる限り、できるだけ小さいことが好ましい。芯材44及び連結部材46の材料としては、例えば、金属又はプラスチックを用いることができる。
【0029】
ダイス40を用いて被造粒材料を押出造粒するとき、被造粒材料は、ダイス孔42の内部のうち芯材44が設けられていない部分しか通過できない。このため、ダイス孔42から押し出された被造粒材料には、芯材44の延長線上に延びる孔が形成される。かかる被造粒材料を適当な長さで切断することにより、貫通孔22を有する造粒物(粒状体20)が得られる。なお、被造粒材料は、連結部材46が設けられた部分も通過できないが、連結部材46の幅w1及び厚みt1は充分に小さいため、ダイス孔42から押し出される被造粒材料の形状に実質的な影響を与えない。
【0030】
貫通孔22が形成された粒状体20には、必要に応じて撥水処理を施してもよい。撥水処理は、例えば、粒状体20の表面を撥水剤でコーティングすることにより行うことができる。撥水処理を行わない場合、造粒時に被造粒材料に加わる圧力を高めることにより、造粒物の表面や内部に隙間が極力生じないようにすることが好ましい。かかる隙間は、粒状体20の内部に尿等の水分が浸入する経路となるからである。
【0031】
第2の粒状体形成工程は、粒状体30を形成する工程である。この工程においては、造粒装置を用いて被造粒材料(粒状体30を構成する材料)を造粒することにより、粒状体30となる造粒物を形成する。本実施形態においては、複数の粒状体30が形成される。造粒装置としては、例えば押出造粒機を用いることができる。造粒に先立って、被造粒材料には、粉砕、混練、加水等の前処理が必要に応じて行われる。
【0032】
粒状体30には、必要に応じて撥水処理を施してもよい。撥水処理は、例えば、粒状体30の表面を撥水剤でコーティングすることにより行うことができる。撥水処理を行わない場合、造粒時に被造粒材料に加わる圧力を高めることにより、造粒物の表面や内部に隙間が極力生じないようにすることが好ましい。
【0033】
なお、第1及び第2の粒状体形成工程を実行する順序は、任意である。すなわち、両工程を同時に並行して実行してもよいし、一方の工程を他方の工程より先に実行してもよい。
【0034】
混合工程は、第1の粒状体形成工程において形成された複数の粒状体20と、第2の粒状体形成工程において形成された複数の粒状体30とを混合する工程である。この工程においては、粒状体20の個数が粒状体20及び粒状体30の個数の合計の30%以上70%以下となるように、粒状体20及び粒状体30を混合することが好ましい。また、粒状体20の個数が粒状体20及び粒状体30の個数の合計の40%以上60%以下となるように、粒状体20及び粒状体30を混合することがより好ましい。この工程においては、混合された粒状体20及び粒状体30を撹拌することが好ましい。以上により、粒状体20と粒状体30とが混在した排泄物処理材1が得られる。
【0035】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、貫通孔(貫通孔22)を有する粒状体20と、貫通孔を有しない粒状体30とが形成される。粒状体20においては、その貫通孔22を尿が通過する。これにより、製造後の排泄物処理材1においては、尿は、粒状体10(粒状体20,30)どうしの隙間だけでなく、粒状体20の貫通孔22も通り抜けることが可能となる。このため、複数の粒状体10が密集した状態においても、尿が下方に流れやすくなる。したがって、尿を下方に導きやすい排泄物処理材1及びその製造方法が実現されている。
【0036】
このように、複数の粒状体10が貫通孔22を有する粒状体20を含むことにより、全ての粒状体10が貫通孔を有しない粒状体30からなる場合に比して、尿を下方に誘導する効果を高めることができる。他方、複数の粒状体10が粒状体30を含むことにより、排泄物処理材1をシステムトイレにおいて使用したときに、下部空間に溜まった尿から発生した悪臭を遮断する効果を高めることができる。すなわち、貫通孔を有しない粒状体30は、臭気を通過させにくいため、下部空間から上昇してきた上記悪臭が上部空間を通過してシステムトイレの外に漏れるのを阻止するのに役立つ。それゆえ、全ての粒状体10が粒状体20からなる場合に比して、悪臭遮断効果を高めることができる。本実施形態においては、粒状体20及び粒状体30が共に設けられることにより、尿に対する下方誘導効果と悪臭遮断効果との均衡が図られている。
【0037】
粒状体20において貫通孔22は、一直線状に延在している。この場合、貫通孔22が蛇行したり途中で折れ曲がったりしている場合に比して、尿が貫通孔22内をスムーズに通過することができる。
【0038】
貫通孔22は、円柱状の空間からなる。この場合、貫通孔22の側面(粒状体20の内面)に角が存在しないため、尿が貫通孔22内をスムーズに通過することができる。
【0039】
粒状体20は、円柱に貫通孔22が設けられた形状をしている。このように粒状体20の外形が円柱である場合、粒状体20となる造粒物を押出造粒によって形成することができる。それにより、多数の粒状体20を短時間で形成することができる。
【0040】
粒状体20は、円筒状をしている。この場合、上述のダイス40を用いた押出造粒により、被造粒材料の造粒と同時に貫通孔22を形成することができる。それにより、貫通孔22を有する粒状体20を効率良く形成することができる。
【0041】
貫通孔22の径を大きくすることにより、尿が貫通孔22内をスムーズに通過しやすくなる。かかる観点から、貫通孔22の径d1は、粒状体20の外径d2の50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。他方、径d1を大きくしすぎると、粒状体20の強度が不充分になるおそれがある。かかる観点から、径d1は、外径d2の90%以下であることが好ましい。
【0042】
粒状体30は、円柱状をしている。この場合、粒状体30となる造粒物を押出造粒によって形成することができる。それにより、多数の粒状体30を短時間で形成することができる。
【0043】
粒状体30が粒状体20と同一組成の材料からなる場合、粒状体20の形成に用いる被造粒材料と粒状体30の形成に用いる被造粒材料とを共通化することができる。このことは、排泄物処理材1の製造コストの低減につながる。
【0044】
粒状体は、粒径が小さくなる程、他の粒状体どうしの隙間を通って下方に移動しやすくなる。そのため、粒径が比較的大きい粒状体と粒径が比較的小さい粒状体とをランダムに混合してトイレに流し込んだ場合、前者の粒状体が上方に偏在するとともに後者の粒状体が下方に偏在しやすい傾向にある。それゆえ、粒状体20の粒径を粒状体30の粒径よりも大きくすることにより、排泄物処理材1(複数の粒状体10からなる集合体)の上層に多くの粒状体20を配置しやすくなる。このことは、排泄物処理材1の上層に留まる尿の割合を減らすのに有利となる。排泄物処理材1の上層に尿が留まると、当該尿から発生した悪臭がトイレの外に放出されやすくなってしまう。
【0045】
尿を下方に導きやすくするには、排泄物処理材1全体に占める粒状体20の割合が大きい方が有利である。かかる観点から、粒状体20の個数は、粒状体20及び粒状体30の個数の合計の30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。他方、粒状体20の割合が大きすぎると、上述した粒状体30による悪臭遮断効果が不充分となりかねない。かかる観点から、粒状体20の個数は、粒状体20及び粒状体30の個数の合計の70%以下であることが好ましく、60%以下であることがより好ましい。
【0046】
粒状体20及び粒状体30が有機物を主材料とする場合、焼却処分に適した粒状体20,30を得ることができる。この場合、使用済みの排泄物処理材1を可燃ゴミとして捨てやすくなるため、ユーザにとっての利便性が向上する。
【0047】
粒状体20が実質的に塩ビ壁紙分級物のみからなる場合、塩ビ壁紙分級物に他の材料が混ぜ合わされている場合に比して、粒状体20の表面や内部に隙間が生じにくい。かかる隙間が少ないと、粒状体20の内部に水分が浸入しにくくなるため、粒状体20の撥水率を高めることができる。このため、撥水処理をしなくても、撥水性を有する粒状体20を容易に実現することができる。粒状体30が実質的に塩ビ壁紙分級物のみからなる場合についても、同様である。
【0048】
粒状体20が石膏を含有する場合、粒状体20の撥水率を高めることができる。このため、撥水処理をしなくても、撥水性を有する粒状体20を容易に実現することができる。粒状体30が石膏を含有する場合についても、同様である。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、貫通孔22が円柱状の空間からなる場合を例示した。しかし、貫通孔22の空間形状は、尿を通過させることができる限り、任意である。例えば、貫通孔22は、角柱状又はテーパ状の空間からなっていてもよい。
【0050】
上記実施形態においては、粒状体20が円筒状をしている場合を例示した。しかし、粒状体20の形状は、貫通孔22が設けられた粒状である限り、任意である。例えば、粒状体20は、角柱、球又は楕円体に貫通孔22が設けられた形状をしていてもよい。
【0051】
上記実施形態においては、粒状体30が円柱状をしている場合を例示した。しかし、粒状体30の形状は、貫通孔が設けられていない粒状である限り、任意である。例えば、粒状体30は、角柱、球又は楕円体の形状をしていてもよい。
【0052】
上記実施形態においては、粒状体20の粒径が粒状体30の粒径よりも大きい場合を例示した。しかし、粒状体20の粒径は、粒状体30の粒径に等しくてもよいし、粒状体30の粒径より小さくてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 排泄物処理材
10 粒状体
20 粒状体(第1の粒状体)
22 貫通孔
30 粒状体(第2の粒状体)
40 ダイス
42 ダイス孔
44 芯材
46 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6