(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130208
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】オゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/33 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
G01N21/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029262
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】319015625
【氏名又は名称】光テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104570
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 光弘
(72)【発明者】
【氏名】菅野 裕靖
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059CC08
2G059CC12
2G059DD12
2G059EE01
2G059HH03
2G059HH06
2G059JJ03
2G059KK01
(57)【要約】
【課題】深紫外発光素子を用いてオゾン濃度およびトルエン濃度を測定する。
【解決手段】測定セル10にオゾンのHartley帯およびトルエンの紫外線吸収帯に属する第1の単一波長の紫外線を照射し、測定セル10を透過した紫外線の放射強度を測定する作業を測定セル10にゼロガスおよびサンプルガスが導入された場合各々で実施し、オゾンおよびトルエン濃度Cotを算出する。また、測定セル10にHartley帯に属し、トルエンの紫外線吸収帯には属さない第2の単一波長の紫外線を照射し、測定セル10を透過した紫外線の放射強度を測定する作業を測定セル10にゼロガスおよびサンプルガスが導入された場合各々で実施し、オゾン濃度Coを算出する。そして、算出した濃度Cot、Coを用いてトルエン濃度Ctを算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法であって、
深紫外発光素子を用いて、ガスが導入された測定セル内に、オゾンのHartley帯およびトルエンの紫外線吸収帯の両方に属する第1の単一波長の紫外線を照射し、受光センサを用いて、当該測定セルを透過した前記第1の単一波長の紫外線の放射強度を測定する作業を、当該測定セルに、オゾンおよびトルエンが除去されたゼロガスが導入された場合と、サンプルガスが導入された場合とのそれぞれについて実施して、前記ゼロガスおよび前記サンプルガスのそれぞれについて得られた測定値から、当該測定セル内に導入された前記サンプルガスのオゾンおよびトルエン濃度を算出し、
深紫外発光素子を用いて、ガスが導入された測定セル内に、Hartley帯に属し、トルエンの紫外線吸収帯には属さない第2の単一波長の紫外線を照射し、受光センサを用いて、当該測定セルを透過した前記第2の単一波長の紫外線の放射強度を測定する作業を、当該測定セルに、オゾンおよびトルエンが除去されたゼロガスが導入された場合と、前記サンプルガスが導入された場合とのそれぞれについて実施して、前記ゼロガスおよび前記サンプルガスのそれぞれについて得られた測定値から、当該測定セル内に導入された前記サンプルガスのオゾン濃度を算出し、
算出したオゾンおよびトルエン濃度とオゾン濃度とを用いて、前記サンプルガスのトルエン濃度を算出する
ことを特徴とするオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法であって、
前記第1の単一波長の紫外線および前記第2の単一波長の紫外線は、オゾンに対して同じ光化学反応物を生じさせる波長の紫外線である
ことを特徴とするオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法であって、
前記第1の単一波長の紫外線は、Hartley帯において、265nm波長の紫外線であり、
前記第2の単一波長の紫外線は、275nm波長の紫外線であり、
前記測定セルの光路長を30cmとした場合、
前記第1の単一波長の紫外線の出力は、0.1~0.2mW/cm2に設定され、
前記第2の単一波長の紫外線の出力は、1.8~3.9mW/cm2に設定される
ことを特徴とするオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン濃度およびトルエン濃度の測定技術に関し、特に大気中のオゾン濃度およびトルエン濃度を測定するのに好適な測定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、殺菌、脱臭等に有効であり、様々な作業において利用されている。しかし、日本産業衛生学会は、オゾンに関する作業環境(1日8時間、1週間40時間程度の労働強度における作業環境)での許容濃度を0.1ppm以下と定めている。このような作業環境では、オゾン濃度を適切に管理する必要がある。
【0003】
特許文献1には、窒化物系深紫外半導体発光素子等の深紫外発光素子を用いた紫外線吸収式オゾン濃度測定装置が開示されている。この紫外線吸収式オゾン濃度測定装置は、深紫外発光素子により、オゾンの紫外線吸収帯であるHartley帯(320~200nm)に属する単一波長の紫外線を、ガスが導入された測定セル内に照射し、この測定セルを透過した単一波長の紫外線の放射強度を受光センサにより測定する。このような測定を、オゾンが除去されたゼロガスが測定セルに導入された場合と、サンプルガスが測定セルに導入された場合とのそれぞれについて実施し、ゼロガスが導入された測定セルについて得られたオゾンゼロ測定値を入射光束の強度とし、サンブルガスが導入された測定セルについて得られた測定値を透過光束の強度として用いて、ランベルト・ベールの法則に基づき、測定セル内に導入されたサンプルガスのオゾン濃度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、オゾンを取り扱う工場、事業場等において、オゾンに加えてトルエンも大気中に排出されることがあり、トルエン濃度も適切に管理することが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の紫外線吸収式オゾン濃度測定装置では、トルエン濃度を測定することについて考慮されていない。なお、日本工業規格協会発行「大気中のオゾン及びオキシダントの自動計測器 JIS B 7957:2006」(平成18年3月25日改正)は、紫外線吸収式のオゾン自動計測器の性能として、干渉成分であるトルエンの影響を0.004ppm以下にすることを要求している(表1)。しかしながら、紫外線吸収式のオゾン自動計測器において、オゾンおよびトルエンを含む大気中からトルエンの影響を受けることなくオゾン濃度を測定する方法については記述されていない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、深紫外発光素子を用いてオゾン濃度およびトルエン濃度の両方を測定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、深紫外発光素子を用いて、ガスが導入された測定セル内に、Hartley帯(320nm以下200nm以上)およびトルエンの紫外線吸収帯(275nm未満230nm以上)の両方に属する第1の単一波長の紫外線(266nm未満237nm以上)を照射し、受光センサを用いて、この測定セルを透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度を測定する作業を、測定セルにオゾンおよびトルエンが除去されたゼロガスが導入された場合と、サンプルガスが導入された場合とのそれぞれについて実施し、ゼロガスおよびサンプルガスのそれぞれについて得られた測定値から、測定セル内に導入されたサンプルガスのオゾンおよびトルエン濃度を算出する。
【0008】
また、深紫外発光素子を用いて、Hartley帯に属し、トルエンの紫外線吸収帯には属さない第2の単一波長の紫外線(320nm以下275nm以上)を、ガスが導入された測定セル内に照射し、受光センサを用いて、この測定セルを透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度を測定する作業を、オゾンおよびトルエンが除去されたゼロガスが測定セルに導入された場合と、サンプルガスが測定セルに導入された場合とのそれぞれについて実施し、ゼロガスおよびサンプルガスのそれぞれについて得られた測定値から、測定セル内に導入されたサンプルガスのオゾン濃度を算出する。
【0009】
そして、以上のようにして算出したサンプルガスのオゾンおよびトルエン濃度とオゾン濃度とを用いて、サンプルガスのトルエン濃度を算出する。
【0010】
なお、Hartley帯に属する波長の紫外線をオゾンに照射した場合、紫外線の波長に応じて異なる光化学反応を示す。すなわち、照射される紫外線の波長に応じて、エネルギー順位の異なる三種類の活性酸素O(P)、O(D)、O(S)が発生する(エネルギー順位:O(P)<O(D)<O(S))。したがって、同じオゾン濃度のサンプルガスでも、光化学反応が異なると、発生する活性酸素が異なるため、異なる測定値を示す。このため、第1の単一波長の紫外線および第2の単一波長の紫外線には、オゾンが同じ光化学反応を示すものを用いることが好ましい。Hartley帯において、紫外線の波長と反応性との関係を表1に示す。
【0011】
【0012】
本発明者は、オゾンのHartley帯において、トルエンの紫外線吸収率の谷部の最低ピーク付近を示す低濃度のトルエンを吸収可能な265nm波長の紫外線を第1の単一波長の紫外線とし、第1の単一波長と同じオゾンの光化学反応物(O(D)、O2)を生成することができ、トルエンには吸収されない275nm波長の紫外線を第2の単一波長の紫外線として用いた。なお、表1に示すように、266nm未満237nm以上の波長の紫外線における反応生成物は、O(S)、O(D)、O2であるが、閾値波長である265nm波長においては、エネルギー準位の高いO(S)の生成率が限りなくゼロになる。このため、265nm波長の紫外線における反応生成物は、275nm波長の紫外線における反応生成物と同様に、O(D)、O2の二種類となる。そして、光路長30cmの測定セルを用いて、第1の単一波長の紫外線の出力を0.1~0.2μW/cm2に設定して、オゾンおよびトルエン濃度を算出するとともに、第2の単一波長の紫外線の出力を1.8~3.9mW/cm2に設定して、オゾン濃度を算出した。その結果、第1の単一波長の紫外線を用いて、低濃度のトルエンを含むオゾンおよびトルエン濃度を算出することができるとともに、第2の単一波長の紫外線を用いて、上述の日本工業規格協会発行「大気中のオゾン及びオキシダントの自動計測器 JIS B 7957:2006」(平成18年3月25日改正)において、紫外線吸収式のオゾン自動計測器の性能を満たすトルエンの影響が0.004ppm以下のオゾン濃度を算出することができた。それから、上述のようにして算出したオゾンおよびトルエン濃度から上述のようにして算出したオゾン濃度を差し引くことにより、1ppm以下の低濃度のトルエン濃度を良好に算出できることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、深紫外発光素子を用いてオゾン濃度およびトルエン濃度の両方を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係るオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法に用いる紫外線吸収式濃度測定装置の概略機能構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態に係るオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法を説明するためのフロー図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す[オゾン・トルエン濃度Cotの算出]S1を説明するためのフロー図である。
【
図4】
図4は、
図2に示す[オゾン濃度Coの算出]S2を説明するためのフロー図である。
【
図5】
図5は、トルエンの紫外線吸収帯を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本実施の形態に係るオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法に用いる紫外線吸収式濃度測定装置1の概略機能構成図である。
【0017】
図示するように、紫外線吸収式濃度測定装置1は、測定セル10と、紫外線照射部11と、測光部12と、注入ポンプ13と、ゼロガス生成装置14と、切替弁15と、演算部16と、を備えている。
【0018】
測定セル10は、測定対象のガスを収容するための、紫外線が透過可能な筒状あるいは箱状の容器である。
【0019】
紫外線照射部11は、窒化物系深紫外半導体発光素子等の深紫外発光素子110を有し、この深紫外発光素子110から測定セル10内に紫外線を照射する。
【0020】
測光部12は、受光センサ120を有しており、紫外線照射部11の深紫外発光素子110から照射され、測定セル10を透過した紫外線を受光センサ120により検出し、その放射強度を測定する。
【0021】
注入ポンプ13は、例えば大気中からサンプルガスを吸引する。
【0022】
セロガス生成装置14は、注入ポンプ13によって大気中から吸引されたサンプルガスに含まれているオゾンおよびトルエンを分解してゼロガスを生成する。
【0023】
切替弁15は、注入ポンプ13によって大気中から吸引されたサンプルガスの供給先をゼロガス生成装置14および測定セル10間で切り替える。
【0024】
演算部16は、注入ポンプ13によって大気中から吸引されたサンプルガスが測定セル10内に導入された場合およびゼロガス生成装置14により生成されたゼロガスが測定セル10内に導入された場合のそれぞれについての測光部12での測定結果に基づいて、以下のように、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾン濃度Co、あるいはオゾンおよびトルエン濃度Cot(以下単に濃度Cとも呼ぶ)を算出する。
【0025】
測定セル10内にゼロガスが導入された場合において、測光部12により測定された紫外線の放射強度Iを入射光拘束の強度とし、測定セル10内にサンプルガスが導入された場合において、測光部12により測定された紫外線の放射強度Oを透過光束の強度とし、紫外線が通過する測定セル10の長さLを光路長として用いて、ランベルト・ベールの法則にしたがい、濃度Cは、数1により算出される。
【0026】
【0027】
なお、演算部16は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積ロジックICによりハード的に実現されるものでもよいし、あるいはDSP(Digital Signal Processor)などの計算機によりソフトウエア的に実現されるものでもよい。または、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、HDD(Hard Disk Dive)等の補助記憶装置、および、USB(Universal Serial Bus)、RS-232C等の測光部12とのインターフェースを備えたPC(Personal Computer)等の汎用コンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することで実現されるものでもよい。
【0028】
図2は、本実施の形態に係るオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法を説明するためのフロー図である。
【0029】
本実施の形態に係るオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法では、第1の単一波長の紫外線を出力する深紫外発光素子110を紫外線照射部11に有する紫外線吸収式濃度測定装置1(以下、オゾン・トルエン濃度測定用装置と呼ぶ)、および、第2の単一波長の紫外線を出力する深紫外発光素子110を紫外線照射部11に有する紫外線吸収式濃度測定装置1(以下、オゾン濃度測定用装置と呼ぶ)の2台の紫外線吸収式濃度測定装置1を用いる。
【0030】
[オゾン・トルエン濃度Cotの算出]S1
オゾン・トルエン濃度測定用装置を用いて、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾンおよびトルエン濃度Cotを算出する。ここで、紫外線照射部11の深紫外発光素子110から出力する第1の単一波長の紫外線には、オゾンのHartley帯およびトルエンの紫外線吸収帯の両方に属する波長の紫外線を用いる。
【0031】
[オゾン濃度Coの算出]S2
オゾン濃度測定用装置を用いて、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾン濃度Coを算出する。ここで、紫外線照射部11の深紫外発光素子110から出力する第2の単一波長の紫外線には、オゾンのHartley帯に属し、トルエンの紫外線吸収帯には属さない波長の紫外線を用いる。
【0032】
ただし、上記の表1に示したように、Hartley帯に属する波長の紫外線をオゾンに照射した場合、紫外線の波長に応じて異なる光化学反応を示し、同じオゾン濃度のサンプルガスでも、光化学反応が異なると、異なる測定値を示すため、測定値の補正が必要となって処理が複雑化する。このため、第2の単一波長の紫外線には、オゾンに対して第1の単一波長の紫外線と同じ光化学反応物を生じさせるものを用いることが好ましい。
【0033】
[トルエン濃度Ctの算出]S3
以上のようにして算出したオゾンおよびトルエン濃度Cotとオゾン濃度Coとを用いて、測定セル10内に導入されたサンプルガスのトルエン濃度Ct(=Cot-Co)を算出する。
【0034】
なお、
図2では、[オゾン・トルエン濃度Cotの算出]、[オゾン濃度Coの算出]の順番で実施しているが、[オゾン濃度Coの算出]、[オゾン・トルエン濃度Cotの算出]の順番で実施してもよい。あるいは、[オゾン・トルエン濃度Cotの算出]と[オゾン濃度Coの算出]とを、同時に平行して実施してもよい。
【0035】
図3は、
図2に示す[オゾン・トルエン濃度Cotの算出]S1を説明するためのフロー図である。
【0036】
[ゼロガス導入]S10
オゾン・トルエン濃度測定用装置において、切替弁15をゼロガス生成装置14側に切り替えて、注入ポンプ13を駆動する。これにより、注入ポンプ13によって大気中から吸引されたサンプルガスが切替弁15を介してゼロガス生成装置14に送られる。ゼロガス生成装置14は、供給されたガスに含まれているオゾンおよびトルエンを分解してゼロガスを生成し、このゼロガスを測定セル10に送る。これにより、ゼロガスを測定セル10内に導入する。なお、測定セル10へのゼロガス導入に際しては、例えば測定セル10内を予め真空にしておき、測定セル10内にゼロガス以外のガスが混入しないようにする。
【0037】
[第1の単一波長の紫外線出力]S11
紫外線照射部11を駆動して深紫外発光素子110から第1の単一波長の紫外線を出力して、ゼロガスが導入された測定セル10内に照射する。
【0038】
[紫外線の放射強度I測定]S12
紫外線照射部11の深紫外発光素子110から測定セル10内に照射され、ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線を、測光部12において、受光センサ120で検出して、その放射強度Iを測定する。
【0039】
[サンプルガス導入]S13
切替弁15を測定セル10側に切り替えて、注入ポンプ13を駆動する。これにより、注入ポンプ13によって大気中から吸引されたサンプルガスが切替弁15を介して測定セル10に送られる。これにより、サンプルガスを測定セル10内に導入する。なお、測定セル10へのサンプルガス導入に際しては、例えば測定セル10内を予め真空にして、測定セル10内にサンプルガス以外のガスが混入しないようにする。
【0040】
[第1の単一波長の紫外線出力]S14
紫外線照射部11を駆動して深紫外発光素子110から第1の単一波長の紫外線を出力して、サンプルガスが導入された測定セル10内に照射する。
【0041】
[紫外線の放射強度O測定]S15
紫外線照射部11の深紫外発光素子110から測定セル10内に照射され、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線を、測光部12において、受光センサ120で検出して、その放射強度Oを測定する。
【0042】
[オゾンおよびトルエン濃度Cot算出]S16
ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度Iを入射光拘束の強度とし、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度Oを透過光束の強度とし、紫外線が通過する測定セル10の長さLを光路長として用いて、ランベルト・ベールの法則にしたがい、上記の数1により、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾンおよびトルエン濃度Cotを算出する。
【0043】
なお、
図3では、まず、ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度Iの測定を行い(S10~S12)、それから、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度Oの測定を行っている(S13~S15)。しかし、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度Oの測定を行ってから、ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度Iの測定を行うようにしてもよい。
【0044】
図4は、
図2に示す[オゾン濃度Coの算出]S2を説明するためのフロー図である。
【0045】
[ゼロガス導入]S20
オゾン濃度測定用装置において、切替弁15をゼロガス生成装置14側に切り替えて、注入ポンプ13を駆動する。これにより、注入ポンプ13によって大気中から吸引されたサンプルガスが切替弁15を介してゼロガス生成装置14に送られる。ゼロガス生成装置14は、供給されたガスに含まれているオゾンおよびトルエンを分解してゼロガスを生成し、このゼロガスを測定セル10に送る。これにより、ゼロガスを測定セル10内に導入する。なお、測定セル10へのゼロガス導入に際しては、例えば測定セル10内を予め真空にして、測定セル10内にゼロガス以外のガスが混入しないようにする。
【0046】
[第2の単一波長の紫外線出力]S21
紫外線照射部11を駆動して深紫外発光素子110から第2の単一波長の紫外線を出力して、ゼロガスが導入された測定セル10内に照射する。
【0047】
[紫外線の放射強度I測定]S22
紫外線照射部11の深紫外発光素子110から測定セル10内に照射され、ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線を、測光部12において、受光センサ120で検出して、その放射強度Iを測定する。
【0048】
[サンプルガス導入]S23
切替弁15を測定セル10側に切り替えて、注入ポンプ13を駆動する。これにより、注入ポンプ13によって大気中から吸引されたサンプルガスが切替弁15を介して測定セル10に送られる。これにより、サンプルガスを測定セル10内に導入する。なお、測定セル10へのサンプルガス導入に際しては、例えば測定セル10内を予め真空にして、測定セル10内にサンプルガス以外のガスが混入しないようにする。
【0049】
[第2の単一波長の紫外線出力]S24
紫外線照射部11を駆動して深紫外発光素子110から第2の単一波長の紫外線を出力して、サンプルガスが導入された測定セル10内に照射する。
【0050】
[紫外線の放射強度O測定]S25
紫外線照射部11の深紫外発光素子110から測定セル10内に照射され、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線を、測光部12において、受光センサ120で検出して、その放射強度Oを測定する。
【0051】
[オゾン濃度Co算出]S26
ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Iを入射光拘束の強度とし、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Oを透過光束の強度とし、紫外線が通過する測定セル10の長さLを光路長として用いて、ランベルト・ベールの法則にしたがい、上記の数1により、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾン濃度Coを算出する。
【0052】
なお、
図4では、まず、ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Iの測定を行い(S20~S22)、それから、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Oの測定を行っている(S23~S25)。しかし、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Oの測定を行ってから、ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Iの測定を行うようにしてもよい。
【0053】
以上、本発明の一実施の形態について説明した。
【0054】
本実施の形態では、深紫外発光素子110を用いて、ガスが導入された測定セル10内に、オゾンのHartley帯(320nm以下200nm以上)およびトルエンの紫外線吸収帯(275nm未満230nm以上)の両方に属する第1の単一波長の紫外線(266nm未満237nm以上)を照射し、受光センサ120を用いて、この測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度を測定する作業を、オゾンおよびトルエンが除去されたゼロガスが測定セル10に導入された場合と、サンプルガスが測定セル10に導入された場合とのそれぞれについて実施する。これにより、ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度Iを基準として用いて、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第1の単一波長の紫外線の放射強度Oから、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾンおよびトルエン濃度Cotを算出することができる。
【0055】
また、深紫外発光素子110を用いて、ガスが導入された測定セル10内に、オゾンのHartley帯に属し、トルエンの紫外線吸収帯には属さない第2の単一波長の紫外線(320nm以下275nm以上)を照射し、受光センサ120を用いて、この測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度を測定する作業を、オゾンおよびトルエンが除去されたゼロガスが測定セル10に導入された場合と、サンプルガスが測定セル10に導入された場合とのそれぞれについて実施する。これにより、ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Iを基準として用いて、サンプルガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Oから、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾン濃度Coを算出することができる。
【0056】
また、以上のようにして算出した、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾンおよびトルエン濃度Cotとオゾン濃度Coとを用いて、測定セル10内に導入されたサンプルガスのトルエン濃度Ctを算出することができる。
【0057】
したがって、本実施の形態によれば、深紫外発光素子110を用いて、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾン濃度Coおよびトルエン濃度Ctの両方を測定することができる。
【0058】
なお、上記の表1に示したように、オゾンのHartley帯に属する波長の紫外線をオゾンに照射した場合、紫外線の波長に応じて異なる光化学反応を示し、同じオゾン濃度のサンプルガスでも、光化学反応が異なると、異なる測定値を示すが、本実施の形態においては、第1の単一波長の紫外線および第2の単一波長の紫外線として、オゾンに対して同じ反応性を示す波長を用いるため、測定値の補正が不要となり、演算部16での演算処理に要する負荷を低減することができる。
【0059】
図5は、トルエンの紫外線吸収帯を示す図であり、縦軸は紫外線吸収率、横軸は波長を示している。
【0060】
図示するように、トルエンの紫外線吸収帯20は、275nm未満230nm以上であり、波長域A266nm未満237nm以上において山部21および谷部22を有する。
【0061】
本発明者は、波長域Aにおいて、紫外線吸収率の谷部22の最低ピーク付近を示す低濃度のトルエンを吸収可能な265nm波長の紫外線を第1の単一波長の紫外線として用い、第1の単一波長と同じオゾンの光化学反応物(O(D)、O2)を生成することができ、トルエンには吸収されない275nm波長の紫外線を第2の単一波長の紫外線として用いた。上述の表1に示すように、波長域Aの紫外線における反応生成物は、O(S)、O(D)、O2であるが、波長域Aの閾値波長である265nm波長においては、エネルギー準位の高いO(S)の生成率が限りなくゼロになる。このため、265nm波長の紫外線における反応生成物は、275nm波長の紫外線における反応生成物と同様に、O(D)、O2の二種類となる。そして、光路長30cmの測定セルを用いて、第1の単一波長の紫外線の出力を0.1~0.2μW/cm2に設定して、オゾンおよびトルエン濃度Cotを算出するとともに、第2の単一波長の紫外線の出力を1.8~3.9mW/cm2に設定して、オゾン濃度Coを算出した。その結果、第1の単一波長の紫外線を用いて、低濃度のトルエンを含むオゾンおよびトルエン濃度Cotを算出することができるとともに、第2の単一波長の紫外線を用いて、上述の日本工業規格協会発行「大気中のオゾン及びオキシダントの自動計測器 JIS B 7957:2006」(平成18年3月25日改正)において、紫外線吸収式のオゾン自動計測器の性能を満たすトルエンの影響が0.004ppm以下のオゾン濃度Coを算出することができた。それから、上述のようにして算出したオゾンおよびトルエン濃度Cotから上述のようにして算出したオゾン濃度Coを差し引くことにより、1ppm以下の低濃度のトルエン濃度Ctを良好に算出できることを見出した。また、高濃度のトルエン濃度Ctは、波長域Aにおいて、例えば、紫外線吸収率の山部21の最高ピーク付近を示す260nm波長の紫外線を第1の単一波長の紫外線として用い、その他については上述の場合と同様とすることにより、良好に算出できることを見出した。
【0062】
なお、上記の実施の形態において、オゾン濃度測定用装置は、サンプルガスのオゾン濃度Coの算出処理(S2)において、ゼロガス生成装置14によりサンプルガスからオゾンおよびトルエンを分解・除去してゼロガスを生成しているが(S20)、必ずしも、この通りにする必要はない。例えば、オゾン濃度測定用装置のゼロガス生成装置14は、サンプルガスからオゾンのみを分解・除去してゼロガスを生成するものでもよい。この場合、ゼロガスおよびサンプルガスの両方に同じ濃度のトルエンが含まれることになるので、ゼロガスが導入された測定セル10を透過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Iとサンプルガスが導入された測定セル10を通過した第2の単一波長の紫外線の放射強度Oとを用いることにより、トルエンによる紫外線吸収に起因する干渉(出力変動)を相殺することができ、測定セル10内に導入されたサンプルガスのオゾン濃度Coをより正確に算出することができる。また、この場合、第2の単一波長の紫外線として、第1の単一波長の紫外線と同じ波長の紫外線を用いることができる。ここで、オゾンおよびトルエンが除去されたゼロガスおよびオゾンのみが除去されたゼロガスを生成可能なゼロガス生成装置14を設けることによって、オゾンおよびトルエン濃度Cotとオゾン濃度Coとを1台の紫外線吸収式濃度測定装置1で測定するようにしてもよい。
【0063】
また、2台の紫外線吸収式濃度測定装置1を備える測定システムにタイマーを設け、上記実施の形態に係るオゾン濃度およびトルエン濃度の測定方法(
図2参照)にしたがう測定処理が、所定のタイミング(例えば、指定した日時、定期的等)に実行されるようにしてもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態においては、注入ポンプ13により大気中からサンプルガスを吸引してゼロガス生成装置14または測定セル10に供給しているが、採取したサンプルガスが封入されたサンプル容器からゼロガス生成装置14または測定セル10にサンプルガスが供給されるようにしてもよい。
【0065】
また、第1の単一波長の紫外線を出力する深紫外発光素子および第2の単一波長の紫外線を出力する深紫外発光素子を紫外線照射部11に設けることによって、あるいは、深紫外発光素子から出力された光をフィルタリングして、測定セル10への入射光を第1の単一波長の紫外線および第2の単一波長の紫外線のいずれかに切り替えるフィルタを備えた紫外線照射部11に設けることによって、1台の紫外線吸収式濃度測定装置1で、オゾンおよびトルエン濃度Cotと、オゾン濃度Coとを測定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1:紫外線吸収式濃度測定装置 10:測定セル
11:紫外線照射部 110:紫外線発光素子
12:測光部120:受光センサ 13:注入ポンプ
14:ゼロガス生成装置 15:切替部 16:演算部