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特開2022-130212内容物適用のための針、デバイスおよび内容物適用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130212
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】内容物適用のための針、デバイスおよび内容物適用方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/158 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
A61M5/158 500Z
A61M5/158 500F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029267
(22)【出願日】2021-02-25
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】大橋 文哉
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066CC07
4C066DD02
4C066EE11
4C066FF04
4C066KK04
4C066KK19
(57)【要約】
【課題】
凍結スフェロイド状細胞塊等の塊体や流動し辛い物質を、組織中に有効簡便に適用する手段を提供すること。
【解決手段】
中空の針を含むデバイスであって、針は長軸方向に複数の部分に分離可能であり、分離によって拡径部内の内部中空空間が露出し、内部中空空間に格納された内容物を放出し、所望の組織中の位置に適用する。
内容物は、凍結状態で針内に格納された状態で穿刺がなされ、解凍されてから組織中に注入されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端穿刺部、拡径部および基端部を有する内容物適用針であって、先端穿刺部と基端部の間に拡径部が位置し、先端穿刺部は生体組織に穿刺することができ、拡径部は内容物を収容できる内部中空空間を有し、基端部は操作手段に接続可能であり、拡径部は基端部および先端穿刺部の外径寸法以上の外径寸法を有し、拡径部は操作手段により操作されることによって内部中空空間を外界と連通するように変形するものである、前記内容物適用針。
【請求項2】
先端穿刺部、拡径部および基端部が一体に形成された針全体が針の長手方向に延びた分割面で複数の部材に分割されており、前記変形は分割面を境にして分割された部材が相対的に移動することにより行われる、請求項1に記載の針。
【請求項3】
前記分割された部材には、前記先端穿刺部および/または前記内部中空空間を有さないものも含まれる、請求項2に記載の針。
【請求項4】
前記相対的な移動は、前記分割された複数の部材間の、長手方向への相対移動、または、分割された部材間の相互の間隔を広げる方向の相対移動である、請求項2または3に記載の針。
【請求項5】
先端穿刺部と拡径部および/または拡径部と基端部の外表面がなめらかに連続する曲面である、請求項1~4のいずれか一項に記載の針。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の針と、該針を固定可能な、前記拡径部の前記操作が可能である操作手段を有するデバイス本体部を有する内容物適用デバイス。
【請求項7】
前記デバイス本体部の後端から液体を注入することによって、前記内部中空空間に前記液体を注入することを可能とする、前記デバイス本体部の後端外界と前記内部中空区間とを連通する通路を有する、請求項請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
デバイス本体部に設けたダイヤルによって前記拡径部の変形操作がなされる、請求項6または7に記載のデバイス。
【請求項9】
液体の注入によって前記拡径部の変形操作がなされる、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
組織内に内容物を適用する方法であって、内容物を収容した収容空間を有する針を組織に穿刺し、組織内において針を変形させることによって前記収容空間を針の外部と連通させることによって内容物を適用する、前記方法。
【請求項11】
凍結状態で針内に収容されている内容物を、針を組織内に挿入した後に、解凍して放出する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
解凍が前記収容空間内に流体を注入することによって促進される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
針を組織中で前後に移動させることによって組織中に小空間を形成し、該小空間内に内容物を放出する、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針を通らないようなもの、例えばスフェロイド状の細胞塊のような内容物を、適用対象たる組織に注入するというような用途に好適な内容物適用針、およびそれを用いた内容物適用デバイスに関する。また、本発明は、組織への適用の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
スフェロイド状またはシート状の細胞塊は、単一の細胞よりも組織生着性が高く、たとえば細胞塊を用いた細胞治療に用いる方法として期待される。そして、そのような定着性が高く、かつ不要な混入細胞を含まず治療用に好適なスフェロイド状の細胞塊は、たとえば無血清条件下の培地を用いて培養し、当該細胞を再凝集させて形成させることができる。シート状細胞塊は、シート状に形成された細胞培養物を破砕することにより得られる細胞塊であり、単一の細胞ではなく複数個の細胞が塊状になったものをいう。またシート状に形成されかかった細胞培養物をシート状になる前に取り出した細胞塊であってもよい。
【0003】
しかしながら、スフェロイド状の細胞塊のような、流動性や体積において従来の注射針による注入が適さない物体は、従来、生体組織等、たとえば心臓や肝臓の組織等の狙った位置に注入するのに好適なデバイスがなかった。
【0004】
たとえば日本国特許第4411817号公報(特許文献1)には、針被覆手段を有する翼付き注射針、が開示されているが、注入するのは注射液であり、上記のスフェロイド状の細胞塊のような物体を注入するのは困難であった。
また、国際公開パンフレットWO01/12021号(特許文献2)には、輸液や輸血、対外血液循環等の処置の再に使用される翼付き注射針の被覆手段について特徴を有する、針被覆手段を有する翼付き注射針、が開示されているが、やはり、同様に細胞塊のような物体を注入するのは困難であった。
【0005】
さらに、日本国特許第6101206号公報(特許文献3)には、経皮的に医療器具を体腔内に挿置するために必要な穿刺孔を体壁に穿設するために用いる医療用拡張器(段落番号0011)が開示されているが、このものは、穿刺状態にある針体の針先を体壁に穿刺した後に、針体を保護状態に遷移させたうえで胴体部を案内部の基端部に連結させ、案内部をガイドとして安全にダイレータ(拡径部)を穿刺孔に押入する(ダイレーションする)ものであり、穿刺孔に拡径部を容易且つ低侵襲で押入できる(段落番号0013)ものであるが、拡径されたところに挿入される医療器具は、胃瘻カテーテル(段落番号0025)のような連通器具であり、低侵襲の意味はこの医療用拡張器以前のカテーテル挿入に比較して、というものであり、従来の注射針経由での組織内注入には適さない物体を、この拡張器のような侵襲とは比較にならない侵襲の低さで、組織内に注入する手段は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】日本国特許第4411817号公報
【特許文献2】国際公開パンフレットWO01/12021号
【特許文献3】日本国特許第6101206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来注射針によってでは組織内への注入が不可能であった、たとえば凍結スフェロイド状細胞塊のような、注射液と同様の扱い方によってでは組織内に注入不可能であった対象物を、注射針による穿刺と大きくは変わらないような侵襲の程度によって、有効に所望の組織中の位置に、内容物を適用可能なデバイスおよびそのための針を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、本発明者らは、注射針に類似した穿刺先端を有する針の中間部を拡径して、内部に中空空間を設けるとともに、針体全体の表面をなめらかな曲面とすることによって、穿刺は比較的低侵襲でおこなうことができ、さらに、該針体の中空空間が、操作によって穿刺後に針体外部と連通するように変形させることによって、上記のスフェロイド状細胞塊のような注射液と同様の扱いが困難な物体も有効に組織内に注入できることに着目し、さらに考究することにより、本発明に至った。
【0009】
すなわち本発明は、以下に関する。
[1]
先端穿刺部、拡径部および基端部を有する内容物適用針であって、先端穿刺部と基端部の間に拡径部が位置し、先端穿刺部は生体組織に穿刺することができ、拡径部は内容物を収容できる内部中空空間を有し、基端部は操作手段に接続可能であり、拡径部は基端部および先端穿刺部の外径寸法以上の外径寸法を有し、拡径部は操作手段により操作されることによって内部中空空間を外界と連通するように変形するものである、前記内容物適用針。
[2]
先端穿刺部、拡径部および基端部が一体に形成された針全体が針の長手方向に延びた分割面で複数の部材に分割されており、前記変形は分割面を境にして分割された部材が相対的に移動することにより行われる、[1]に記載の針。
[3]
前記分割された部材には、前記先端穿刺部および/または前記内部中空空間を有さないものも含まれる、[2]に記載の針。
[4]
前記相対的な移動は、前記分割された複数の部材間の、長手方向への相対移動、または、分割された部材間の相互の間隔を広げる方向の相対移動である、[2]または[3]に記載の針。
[5]
先端穿刺部と拡径部および/または拡径部と基端部の外表面がなめらかに連続する曲面である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の針。
[6]
[1]~[5]のいずれか一項に記載の針と、該針を固定可能な、前記拡径部の前記操作が可能である操作手段を有するデバイス本体部を有する内容物適用デバイス。
[7]
前記デバイス本体部の後端から液体を注入することによって、前記内部中空空間に前記液体を注入することを可能とする、前記デバイス本体部の後端外界と前記内部中空区間とを連通する通路を有する、[6]に記載のデバイス。
[8]
デバイス本体部に設けたダイヤルによって前記拡径部の変形操作がなされる、[6]または[7]に記載のデバイス。
[9]
液体の注入によって前記拡径部の変形操作がなされる、[7]に記載のデバイス。
[10]
組織内に内容物を適用する方法であって、内容物を収容した収容空間を有する針を組織に穿刺し、組織内において針を変形させることによって前記収容空間を針の外部と連通させることによって内容物を適用する、前記方法。
[11]
凍結状態で針内に収容されている内容物を、針を組織内に挿入した後に、解凍して放出する、[10]に記載の方法。
[12]
解凍が前記収容空間内に流体を注入することによって促進される、[11]に記載の方法。
[13]
針を組織中で前後に移動させることによって組織中に小空間を形成し、該小空間内に内容物を放出する、[10]~[12]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の針およびデバイスによれば、従来注射針によってでは組織内への注入が不可能であった、凍結スフェロイド状細胞塊、非凍結スフェロイド状細胞塊、シート状細胞塊のような、低流動性でありカテーテル経由での適用は不適切な物体であっても、組織内の所望の注入位置への適用が可能となる。
【0011】
本発明の針は、先端穿刺部、拡径部および基端部を有し、拡径部内には、組織に適用する内容物を収納する内部中空空間が設けられている。
この内部中空空間は、デバイス使用者等による操作によって外界と連通するよう構成され、操作の結果針の外部との連通を生じさせた連通開口部から内容物が針の外へと放出される。
【0012】
操作によって外界と連通するために、針は相対的に移動する複数の部材に分かれており、その分かれ目は、針の長手方向に延びる分割面をなしている。分かれ目は平面でも曲面でも、また複雑な形状でもよい。
針は、2分割されていても、またそれ以上に分割されていてもよく、相対的移動前には、内部中空空間は針外部からは遮断された状態であり、相対移動によって内部中空空間が外部と連通するように構成されている。
【0013】
相対移動は、分割面を挟んでいる針の部分が相対的に離れる方向の移動でもよく、また、分割面に沿って面の両側の針の部分が相対的に摺動する移動でもよい。
また、分割の境界は単純な平面だけでなく、例えば、液密性を高めるために、摺動方向に延びる溝とそれにはまり込む凸状の直線エッジの組みあわせを有していてもよい。
【0014】
分割面を挟んだ針の部分は、同一の形状、すなわち、分割面が対称面をなしていてもよく、また、面でわかれた針の部分が異なった形状をしていてもよい。いずれにせよ、相対移動によって、外部とは遮断されていた内部中空空間が露出するような構造であればいかなる形状でもよい。この遮断は、完全な液密性を意味するわけではなく、相対移動前には内容物が実用的に十分な漏洩防止を行っていれば足りる。
2分割より多くの分割がなされていても、上記の如くの内部中空空間の露出ができる構造であればよい。
【0015】
したがって、先端穿刺部は、すべての針の部分が有している必要はなく、たとえば、2分割の針の場合、一方の部分のみが先端穿刺部を有している、分割面に対して非対称な構造でもよい。
【0016】
本発明は、上記の針を先端に固定した、デバイス本体部と上記針とを含む内容物適用デバイスにも関する。
本発明のデバイスにおけるデバイス本体部は、針を内容物適用対象たる組織に穿刺するために例えば操作者が把持する、または機械によって把持される、等の機能を有する部分である。
【0017】
本発明の針、および針を含むデバイスは、操作者の操作によって、分割された針の一部が移動することにより、組織に適用する内容物を収納する内部中空空間が外界に連通され、内容物が針の外へと放出されるものである。
内部中空空間は、針の基端部が固定されているデバイス本体部および針の基端部を貫通して設けられた、液通路によって、デバイス本体部の後端の外界と連通することもでき、そのような態様では、デバイス本体部後端から液通路を通って緩衝液等を注入することによって、内容物の針外部への解放が、より促進される。
【0018】
本発明の針および針を含むデバイスにおいては、長軸方向に複数に分割された針の一部が操作者の操作によって移動することにより、組織に適用する内容物を収納する内部中空空間が、外界に連通され、内容物が針の外へと放出される。
針の一部を移動させる操作機構としては、いろいろな機構がありうる。たとえば、デバイス本体部に設けたダイヤルの回転によりデバイス本体部の針を固定している部分が、相対移動して針の相対移動を生じさせる、針の拡開を生じるように開く回転をする、内部を通るロッド等の運動伝達手段が針の分割部材間の分割面に沿った相対運動を生じさせる、運動伝達手段がカム機構、楕円ロッド、楔状介在部等によって例えば針自体の有する弾性や付勢手段で常時閉状態である針の分割面の両側の部材が離隔する方向への力を生じさせるなどが考えられる。
【0019】
また、上記した緩衝液を、閉鎖した針の内部中空空間に注入することによる圧力によって、閉鎖した針の部材間に隙間を生じさせ、その隙間から内容物を解放することも可能である。
本発明においては、針の分割部分を相対的に移動できるものであれば足りるのであり、さらには電気的アクチュエータを用いてスイッチ操作により移動させて閉鎖と解放を切り替えるもの、液圧を利用して、流体アクチュエータで相対的移動を行わせて切り替えることも可能である。
本発明は、どのような機構であっても、内部中空空間の閉鎖と解放とがなされることが本質的な事項である。
【0020】
針をその先端に固定するデバイス本体部は、操作者が針を所望の位置に持ち来すに足りる剛性および構造を有すれば足り、例えば内視鏡の鏡胴部のように操作者がその形状を操作できる構造のものでも良い。いずれにせよ、操作者がデバイス本体部後端側で操作することによって、デバイス本体部先端に固定された針の分割部材が部材間で相対的移動をおこせることが出来ればよい。
【0021】
本発明の針およびデバイスによれば、従来注射針によってでは組織内への注入が不可能であった物体も、簡単にかつ低侵襲で組織内の注入することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明のデバイスに用いる針の一態様の閉鎖時の外観1aおよびその長軸に沿った縦断面図1bを示す。
図2図2は、本発明のデバイスに用いる針の他の一態様を示す。
図3図3は、本発明のデバイスの、一態様を示す。
図4図4は、本発明の針の一態様における、解放時に液体が注入され(4a)内容物が解放される状態(4b)を示す。
図5図5は、本発明のデバイスの針のさらに別の態様を示す。
図6図6は、操作手段による針の相対移動の態様(6a、6b)を示す。
図7図7は、操作手段の機構のいくつかの例(7a、7b、7c)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の内容物適用デバイスの動作を、図を参照してさらに説明する。
図3にデバイス全体を示す。図の右側がデバイスの先端側であり、針11が、デバイス本体部5に固定されている。デバイス本体部5の後端側には、針の内部中空空間6を露出する動作を行わせる操作機構を操作するための、例えばダイヤル7が設けられている。
針11の内部中空空間6まで連通する、液通路10をデバイス本体部5内および針11の内部に設けてもよく、該通路が開口しているインジェクタ接続部8を、デバイス本体部5後端に有してもよい。針11内には液通路を設けずに、後述する流体注入管4をデバイス本体部5内の液通路10と接続した構造としてもよい。
インジェクタ接続部8は、液体を注入するインジェクタを接続することができ、緩衝液等の液体を内部中空空間6に注入することができるので、図4に示すように、内容物を積極的に放出することができる。
【0024】
本発明のデバイス先端には、図1、2にその一態様が示される針が固定されている。
針は、その先端側に先端穿刺部1、後端側に基端部3そして先端穿刺部1と基端部3との間に拡径部2を有しており、拡径部2の内部には、内部中空空間6が設けられている。
針は相対的に移動する複数の部材に分かれており、その分かれ目は、針の長手方向に延びる分割面9をなしている。
針の断面図である図1bに示すように、内部中空空間6は組織内に注入する内容物12を収容する空間になっており、この空間は、デバイス本体部が有する操作手段によって、閉鎖状態から、露出状態に変化させることが出来る。
針11の基端部3には、液通路を設けてもよく設けなくてもよい。
また、図2に、先端穿刺部1を有さない分割部分を有する例を示し、図2においては2分割された針の上側の分割針部材が先端穿刺部1を有さない構成となっている。
【0025】
図1a、1bは内部中空空間6の閉鎖状態を示し、図4a、4bは露出状態を示す。
図4a、4bにおいては、内部中空空間6の近傍まで流体注入管5が挿入され(図4a)、矢印で示す注入管5からの流体の注入によって内容物12が放出される(図4b)態様が示されている。これは、デバイス本体部4の内部を貫通する液通路10に接続される流体注入管5がさらに針11の基端部3を越えて伸長し、内部中空空間6に流体を注入する態様であり、流体注入管5によって液密性が保たれるので、針11の分割部材の相対移動により針11の基端部3に隙間が生じたとしても、注入液体が基端部3の隙間から漏れることが防止される。
【0026】
本発明の針11は該液体注入路の無い態様も可能であり、図1bの断面図は、デバイス本体部4からの液体注入路のない態様を示す。すなわち、針11の内部中空空間6が、密閉と露出の2状態に操作手段によって変化可能であれば、図4に示すような緩衝液等の注入を積極的に行わなくても、本発明の目的は達成される。
液体注入は、緩衝液を必要とする場合や、内容物の解放をより早く行いたい場合等により好適である。
【0027】
本発明の態様は、拡径部2の外径が先端穿刺部1および基端部3より大きいものも含まれる。拡径部2の外径がより大きい場合、たとえば針11を組織内で前後に動かして、拡径部2によって組織に空隙を作ってそこに内容物を解放することも可能となり、内容物が組織から漏洩することを防ぐこと、内容物の適用位置や濃度を調節すること、等の効果がある。また、内部中空空間6の最大内径が、拡径部3に隣接する先端穿刺部1および基端部3の外径よりも大きくしてもよい。そのような寸法とすることによって、穿刺部および基端部により組織にできた孔より大きい内容物が適用でき、確実に形成した組織空隙に放出できる。
【0028】
針11の拡径部2と、先端穿刺部1および基端部3とが接する部分の針11の表面は、図1aにおいては不連続曲面で接しているが、ここを滑らかな表面で連続するように形成することが、侵襲の程度を下げるためには有利である。
【0029】
内部中空空間6に格納する物体12は、凍結スフェロイド状細胞塊のような流動性の無いものでも、また流動性は低いが流動状態であるようなものなど、いかなる内容物でも、本発明は対応可能である。尤も、非常に流動性の高い内容物の場合、操作によって内部中空空間が露出されたときに速やかに内容物が流出するので、注入前の段階で内容物が漏洩する可能性を考慮しておく必要はあるが、すみやかな注入という点においては好適である。
【0030】
また、内容物12は、凍結しておけば、固まった状態であるので内部中空空間6内に留まり、予期しない漏洩を防ぐことができる。
周囲温度や緩衝液により、凍結が解除され流動性を得れば、内部中空空間6が露出状態にされることにより注入がなされることになる。凍結の解除は、穿刺を行う前から始まっていてもよい。内容物の漏洩が防止されること、適切な流動、注入が行われること等、不都合が生じない態様で凍結および解凍の過程をおこなえば足りる。
【0031】
本発明の適用デバイスを用いる場合、密閉状態の針11にあらかじめ内容物を収容した状態で保管しておき、使用する時点においてデバイス本体部4に針11を装填して使用する、といった使用方法も可能である。
従って、本発明の針11は、内容物の収容済み状態での流通や保管に好都合であり、汚染や漏洩を防ぐことが容易となる。
【0032】
針11の分割構造による相対移動のうち、分割境界をはさんで分割部材の距離が開いていく移動を行うものについては、基端部のデバイス本体側を、分割させないで分割部材が接合したままにしておく態様も可能である。その態様を図5に示す。この場合、針11の内容物注入のための解放動作は、針11が接合部を要として開く動作を行うことになる。そのような動作は、例えば図5において針11の分割面9は基端部の途中までで止まり、操作手段は分割面両側の分割部材間の距離を広げるような動作をすることになる。
【0033】
図6に、内部中空空間6の開放動作の態様としてのいくつかの態様を示す。6aに分割面9に沿った摺動の例を示し、6bに分割面の間隔が広がっていく動作の例を示す。 これらの開放動作は、図2に示す、先端穿刺部1を一つの分割部材にしか設けない態様においても同様に行われる。
【0034】
図7は、操作手段の態様のいくつかの例を示し、7aはカム機構を用いるもの、7bは楔を用いるもの、7cは摺動させるために一方の分割部材を押し出すものを例示する。
前述したように、操作手段の構成の如何は、本発明の構成要件としては特に限定されず、公知の如何なる機構も採用可能である。本発明においては、相対移動によって内部中空空間6が外部と連通状態になり、内容物12が針11の外に放出されることによって、内容物の注入がなされること、が本質的である。
【0035】
針の長手方向に直角な断面形状は、円形のみならず、楕円形でも多角形でも、またその他の形状であってもよく、分割部材の相対移動によって、内部中空空間の外界との連通の有り無しが切り替えられれば足りる。
【符号の説明】
【0036】
1: 先端穿刺部
2: 拡径部
3: 基端部
4: デバイス本体部
5: 流体注入管
6: 内部中空空間
7: ダイヤル
8: インジェクタ接続部
9: 分割面
10: 液通路
11: 針
12: 内容物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7