(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130224
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ヤエザクラの花から分離したラクトバチルス・プランタルムに属する新規乳酸菌及びその利用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220830BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220830BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
C12N15/31
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021029288
(22)【出願日】2021-02-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】399090950
【氏名又は名称】株式会社北岡本店
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】宮谷 精二
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
4B018LB04
4B018LB07
4B018LB08
4B018LB09
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE04
4B018LE05
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF04
4B065AA30X
4B065BA22
4B065BB26
4B065BC03
4B065CA41
(57)【要約】
【課題】これまで乳酸菌発酵物の製造に用いられていた上記乳酸菌では、果物や野菜を発酵基質とした場合、プロバイオティクスとしての効果を得るための高い到達生菌数を達成することができなかった。
【解決手段】本発明は、定常状態になるまで培養した乳酸菌液を、植物性飲食物に対して0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が109CFU/ml以上である性質をみたす乳酸菌に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の性質をみたす乳酸菌。
定常状態になるまで培養した乳酸菌液を、植物性飲食物に対して0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が109CFU/ml以上である。
【請求項2】
前記植物性飲食物は、果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュース、果物破砕物及び野菜破砕物からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の乳酸菌。
【請求項3】
以下の(a)(b)(c)のうち少なくともいずれかひとつの性質をみたす、請求項1又は2に記載の乳酸菌。
(a)Lactobacilli MRS Broth培地で定常状態になるまで30℃で16時間培養した乳酸菌液を、オレンジ、パインの100%果汁、トマト、ニンジンの100%野菜ジュース、野菜ミックスジュースに対してそれぞれ0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が、共に109CFU/ml以上である。
(b)Lactobacilli MRS Broth培地で定常状態になるまで30℃で16時間培養した乳酸菌液を、イチゴ、ナシ、スイカ、メロン、マンゴー、パパイヤ、レッドドラゴンフルーツの果物破砕物に対してそれぞれ0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が共に109CFU/ml以上である。
(c)Lactobacilli MRS Broth培地で定常状態になるまで30℃で16時間培養した乳酸菌液を、トマト、ニンジン、キャベツ、レタス、タマネギ、ナガネギ、セロリ、ハクサイ、ダイコン、カブ、赤カブ、ピーマン、黄パプリカ、芽キャベツ、ズッキーニ、にんにく、ゴボウ、レンコン、大和まな(大和野菜)、しろ菜(大和野菜)、宇陀金ごぼう(大和野菜)、祝蕾(シュクライ)(大和野菜)、片平あかね(大和野菜)の野菜破砕物に対してそれぞれ0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が共に109CFU/ml以上である。
【請求項4】
ラクトバチルス属である請求項1から3のいずれかに記載の乳酸菌。
【請求項5】
ラクトバチルス・プランタルムに属する請求項1から4のいずれかに記載の乳酸菌。
【請求項6】
ラクトバチルス・プランタルム サクラ68に属する、請求項1から5のいずれかに記載の乳酸菌。
【請求項7】
受託番号:NITE P-03374で受託されている請求項1~6のいずれかに記載の乳酸菌。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の乳酸菌による発酵により得られた組成物。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の乳酸菌、及び、食品素材を含む、組成物。
【請求項10】
前記食品素材は、植物に由来する素材である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記植物に由来する素材は、植物の葉、根、茎、花、つぼみ、果実、それらの抽出液、それらの破砕物、および/またはそれらの組み合わせである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記植物に由来する素材は、果物、野菜、それらの抽出液、それらの破砕物、および/またはそれらの組み合わせである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は、発酵物である、請求項8~12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~7の何れかに記載の乳酸菌、または請求項8~13のいずれか1項に記載の組成物を含む、飲食物。
【請求項15】
食品素材に、請求項1~7のいずれかに記載の乳酸菌を接種し、発酵させることを特徴とする組成物の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュース、果物破砕物、野菜破砕物の発酵にすぐれたラクトバチルス・プランタルムに属する新規乳酸菌、上記乳酸菌を含有する飲食物、上記乳酸菌により得られた発酵物、当該発酵物を含有させた飲食物、及び上記乳酸菌を用いた発酵物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトの腸内には100兆個以上の菌が存在し、その種類も1000種類以上あるといわれている。腸内環境の維持や改善効果をもつ菌種は、善玉菌とよばれる乳酸菌である。乳酸菌は腸内で乳酸を生産することによって大腸菌や病原菌の増殖を抑制して腸内環境を改善するだけでなく、便通の改善、免疫力の上昇による感染防御、抗アレルギー作用など生理的効果も示す。
【0003】
このことから最近では、腸は第2の脳とよばれ、腸内環境を良好に保つことが身体全体の健康維持につながると言われてきている。
【0004】
通常の日々の生活においても乳酸菌の摂取は重要であるが、ことにコロナ禍の今、日々乳酸菌を摂取して腸内環境を良好に保ち、免疫力を上昇させることが重要である。
【0005】
しかしながら乳酸菌は、体内に摂取されて腸内で機能した後、体内に留まることなく体外に排出される。
【0006】
こうしたことから、毎日乳酸菌を摂取することが腸内環境を良好に保つために必要となってくる。
【0007】
従来日々乳酸菌を摂取するには動物性乳酸菌を使って乳を発酵させた乳酸菌飲料や発酵乳を摂取することが一般的になっている。
【0008】
このような乳酸発酵物に使用されている乳酸菌は、乳原料の発酵に適した動物性乳酸菌で、具体的にはラクトコッカス・ラクティス、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・アシドフィリス、ストレプトコッカス・サーモフィリスなどである。
【0009】
その一方、乳製品に対するアレルギーや乳製品によって消化不良を引き起こす人々が存在しており、そうした人々は乳酸菌を食品から効果的に摂取することが難しいという現状があり、乳製品以外を発酵させ効果的に乳酸菌を摂取することができる新しい乳酸菌株の開発が必要となってくる。
【0010】
最近、植物成分を発酵させることが可能な植物性乳酸菌が注目されている。植物性乳酸菌は、植物成分を発酵させるのみならず、酸性領域で生存、増殖することができるため、生きて腸まで届き、直接腸内環境の維持や改善効果をもつといわれている。これまでに乳原料以外を原料として植物成分を発酵できる乳酸菌が単離されており、豆乳を発酵できる植物性乳酸菌としてラクトバチルス・プランタルムに属する乳酸菌が知られている。たとえばラクトバチルス・プランタルムHOKKAIDO株は、豆乳を発酵基質として発酵させると凝固して固形のヨーグルト状になり、このヨーグルトは、免疫機能を刺激し、ストレスマーカーを減少させる(非許文献1)。また最近では豆乳を短時間で発酵凝固させるストレプトコッカス・サリバリウス サクラ2も報告されている(特許文献1)。
【0011】
しかしながら豆乳発酵製品の豆くささや豆乳に対するアレルギーの人も少なからず存在していることから、タンパク質含有量が低くアレルギーをひきおこしにくい植物性乳酸菌による第3の発酵原料として果物や野菜を発酵基質とする発酵物の開発が望まれていた。
【0012】
ことに多種類の果物や野菜を発酵することができれば、ある特定の果物や野菜が苦手だったりアレルギーがあったりしても、他の果物や野菜の乳酸菌発酵物が摂取できるという選択肢が広がり、ほとんどすべての人々がなんらかの形で植物性乳酸菌発酵物を摂取することができるようになる。
【0013】
これまで果物や野菜を発酵する能力に優れた乳酸菌としてはラクトバチルス・プランタルムに属する乳酸菌が知られている。例えばラクトバチルス・プランタルムATCC14431は、濃縮人参汁を6倍希釈したものを発酵基質として、107CFU/ml以上の生菌数に到達することが知られている(特許文献2)。
【0014】
また果汁での発酵に適した乳酸菌として、ラクトバチルス・プランタルムYIT0132、(FERM BP-11349),YIT0148(FERM BP-11350)が知られている。
【0015】
これらの乳酸菌は、グレープおよびオレンジ100%果汁を発酵基質とした時の到達生菌数が,共に
108CFU/ml以上になることが知られている。(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2020-61977号公報
【特許文献2】特開2001-252012号公報
【特許文献3】国際公開第2011/115114号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Nishimura, et al. J Tradit Compliment Med. 2015 Aug 21;6(3):275-80.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、これまで乳酸菌発酵物の製造に用いられていた上記乳酸菌では、果物や野菜を発酵基質とした場合、プロバイオティクスとしての効果を得るための高い到達生菌数を達成することができなかった。
【0019】
また、これらのラクトバチルス・プランタルムに属する菌株は様々な果物や野菜に対して、常に高い到達生菌数濃度が得られるものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
従って、本発明は、ラクトバチルス・プランタルムに属し、様々な果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュース、果物破砕物、野菜破砕物といった植物を発酵基質とした場合であっても高い到達生菌数となる優れた発酵能を有する新規な乳酸菌やこれを含有する飲食物等を提供することを課題とする。
【0021】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ヤエザクラの花から分離したラクトバチルス・プランタルムに属する乳酸菌が、100%果汁、100%野菜ジュース、野菜ミックスジュースだけでなく、果物破砕物、野菜破砕物を発酵基質とした場合でも、到達生菌数がプロバイオティクスとしての機能を発揮することが可能な109CFU/ml以上になることを見出し、本発明を完成させた。
【0022】
すなわち本発明は、以下の性質をみたす乳酸菌である。
定常状態になるまで培養した乳酸菌液を、植物性飲食物に対して0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が109CFU/ml以上である。
【0023】
また本発明は、オレンジ、パインの100%果汁、トマト、ニンジンの100%野菜ジュース、野菜ミックスジュースを発酵基質とした時の到達生菌数が共に109CFU/ml以上であるラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum) に属する乳酸菌である。
【0024】
また本発明は、イチゴ、ナシ、スイカ、メロン、マンゴー、パパイヤ、レッドドラゴンフルーツの果物破砕物を発酵基質とした時の到達生菌数が共に109CFU/ml以上であるラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)に属する乳酸菌である。
【0025】
さらに、本発明は、トマト、ニンジン、キャベツ、レタス、タマネギ、ナガネギ、セロリ、ハクサイ、ダイコン、カブ、赤カブ、ピーマン、黄パプリカ、芽キャベツ、ズッキーニ、にんにく、ゴボウ、レンコン、大和まな(大和野菜)、しろ菜(大和野菜)、宇陀金ごぼう(大和野菜)、祝蕾(大和野菜)、片平あかね(大和野菜)の野菜破砕物を発酵基質とした時の到達生菌数が共に109CFU/ml以上であるラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)に属する乳酸菌である。
【0026】
また、本発明は、上記乳酸菌による食品素材の発酵により得られた発酵物である。
【0027】
さらに、本発明は、上記発酵物を含有する飲食物である。
【0028】
またさらに、本発明は、上記乳酸菌を含有する飲食物である。
【0029】
また、本発明は、食品素材に、上記乳酸菌を接種し、発酵させることを特徴とする発酵物の製造方法である。
【発明の効果】
【0030】
本発明の乳酸菌は、さまざまな植物を発酵させることができ、さまざまな発酵基質をベースとするプロバイオティクスに用いられる飲料などの飲食物を調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、例示であって、本発明の範囲は、以下の実施形態で示すものに限定されない。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑さをさけるため、摘示説明を省略する。
【0032】
定義
便宜上、本願で使用される特定の用語は、ここに集めている。別途規定されない限り、本願で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当事者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。文脈で別途明記されない限り、単数形「a」,「an」及び「the」は複数の言及を含む。
【0033】
本発明で示す数値範囲及びパラメーターは、近似値であるが、特定の実施例に示されている数値は可能な限り正確に記載している。しかしながら、いずれの数値も本質的に、それぞれの試験測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含んでいる。また、本明細書で使用する「約」という用語は、一般に、所与の値又は範囲の10%、5%、1%、又は0,5%以内を意味する。或いは、用語「約」は、当業者が考慮する場合、許容可能な標準誤差内にあることを意味する。
【0034】
本発明の「野菜」とは、食用の植物のことを意味し、植物の葉、根、茎、花、つぼみ、果実などの食することができる部位が含まれる。
【0035】
本発明の「破砕物」とは、果物や野菜などの植物をそのままあるいは水を加えてジューサーなどにかけて粉砕したもので、固形成分と液体成分とが混合した状態のものを意味する。
【0036】
本発明の「発酵物」とは、乳酸菌を用いて発酵したものを意味し、食品素材などの発酵基質を原料として発酵したものが含まれる。
【0037】
本明細書において100%果汁、100%野菜ジュースとは、JAS法における果汁、野菜ジュース飲料品質表示基準において100%ジュースの基準をみたすものを示す。
【0038】
果汁の製法としては、果汁をしぼったものを加熱後冷凍保存する「ストレート果汁」、あるいは加熱により濃縮した後、冷凍保存する「濃縮還元果汁」のいずれでもよい。またJAS法における果汁飲料品質表示基準において100%ジュースの基準をみたすものであれば、糖類、香料、酸化防腐剤などを添加してもよい。
【0039】
野菜ミックスジュースは「充実野菜(伊藤園社製)」「1日分の野菜(伊藤園社製)」「きになる野菜(ヤクルト本社製)」「野菜1日これ1本(カゴメ社製)」「カゴメ野菜生活(カゴメ社製)」「48種類の濃い野菜(キリン社製)」を使用した。
【0040】
発明を実施するための形態
本実施形態にかかる乳酸菌は、以下の性質をみたす。
定常状態になるまで培養した乳酸菌液を、植物性飲食物に対して0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が109CFU/ml以上である。
【0041】
到達生菌数は、1.0×109CFU/ml以上、1.5×109CFU/ml以上、2.0×109CFU/ml以上、2.5×109CFU/ml以上、3.0×109CFU/ml以上、3.5×109CFU/ml以上、4.0×109CFU/ml以上、4.5×109CFU/ml以上、5.0×109CFU/ml以上、5.5×109CFU/ml以上、6.0×109CFU/ml以上、6.5×109CFU/ml以上、7.0×109CFU/ml以上、7.5×109CFU/ml以上、8.0×109CFU/ml以上、8.5×109CFU/ml以上、9.0×109CFU/ml以上または9.5×109CFU/ml以上であってもよい。
【0042】
植物性飲食物は、果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュース、果物破砕物、野菜破砕物からなる群より選択される少なくとも1つであってもよい。果汁は、100%果汁であってもよく、100%未満果汁であってもよい。野菜ジュースは、100%野菜ジュースであってもよく、100%未満野菜ジュースであってもよい。
【0043】
果汁としては、特に限定されないが、グレープフルーツ、オレンジ、パイン、アップルなどの果汁が好ましく、特にオレンジ、パインの果汁が好ましい。
【0044】
野菜ジュースとしては、特に限定されないが、トマト、ニンジン、などの野菜ジュースが好ましい。
【0045】
果物破砕物の原料となる果物は、特に限定されないが、リンゴ、イチゴ、ナシ、スイカ、メロン、キウイ、マンゴー、パパイヤ、レッドドラゴンフルーツなどの果物が好ましく、特にイチゴ、ナシ、スイカ、メロン、マンゴー、パパイヤ、レッドドラゴンフルーツの果物が好ましい。
【0046】
野菜破砕物の原料となる野菜は特に限定されないが、トマト、ニンジン、キャベツ、レタス、キュウリ、タマネギ、ナガネギ、セロリ、ハクサイ、ダイコン、カブ、赤カブ、ピーマン、黄パプリカ、ブロッコリー、アスパラガス、ミズナ、シュンギク、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、ナノハナ、パセリ、セリ、豆苗、芽キャベツ、ゴーヤ、ズッキーニ、ショウガ、ニンニク、ゴボウ、レンコン、クレソン、大和まな(大和野菜)、しろ菜(大和野菜)、宇陀金ごぼう(大和野菜)、祝蕾(大和野菜)、片平あかね(大和野菜)などの野菜が好ましく、特にトマト、ニンジン、キャベツ、レタス、タマネギ、ナガネギ、セロリ、ハクサイ、ダイコン、カブ、赤カブ、ピーマン、黄パプリカ、芽キャベツ、ズッキーニ、ニンニク、ゴボウ、レンコン、大和まな(大和野菜)、しろ菜(大和野菜)、宇陀金ごぼう(大和野菜)、祝蕾(大和野菜)、片平あかね(大和野菜)の野菜が好ましい。
【0047】
乳酸菌液は、Lactobacilli MRS Broth培地での培養で取得してもよい。培養条件は、例えば、30℃で16時間である。
【0048】
ある実施形態において、上記乳酸菌は、以下の(a)(b)(c)のうち少なくともいずれかひとつの性質をみたす。
(a)Lactobacilli MRS Broth培地で定常状態になるまで30℃で16時間培養した乳酸菌液を、オレンジ、パインの100%果汁、トマト、ニンジンの100%野菜ジュース、野菜ミックスジュースに対してそれぞれ0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が、共に109CFU/ml以上である。
(b)Lactobacilli MRS Broth培地で定常状態になるまで30℃で16時間培養した乳酸菌液を、イチゴ、ナシ、スイカ、メロン、マンゴー、パパイヤ、レッドドラゴンフルーツの果物破砕物に対してそれぞれ0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が共に109CFU/ml以上である。
(c)Lactobacilli MRS Broth培地で定常状態になるまで30℃で16時間培養した乳酸菌液を、トマト、ニンジン、キャベツ、レタス、タマネギ、ナガネギ、セロリ、ハクサイ、ダイコン、カブ、赤カブ、ピーマン、黄パプリカ、芽キャベツ、ズッキーニ、にんにく、ゴボウ、レンコン、大和まな(大和野菜)、しろ菜(大和野菜)、宇陀金ごぼう(大和野菜)、祝蕾(シュクライ)(大和野菜)、片平あかね(大和野菜)の野菜破砕物に対してそれぞれ0.4%容量接種したものを30℃で48時間培養した時の到達生菌数が共に109CFU/ml以上である。
【0049】
果物破砕物は以下のように調整した。
リンゴ破砕物はリンゴ200gに水50ml、イチゴ破砕物は、イチゴ100g、ナシ破砕物は、ナシ100g、スイカ破砕物は、スイカ100g、メロン破砕物は、メロン100g、キウイ破砕物は、キウイ200g、マンゴー破砕物は、マンゴー200gに水100ml、パパイヤ破砕物は、パパイヤ破砕物200gに水100ml、レッドドラゴンフルーツ破砕物は、レッドドラゴンフルーツ150gをそれぞれジューサーで処理したものを85℃で30分間処理して滅菌して調整した。
【0050】
野菜破砕物は以下のように調整した。
トマト破砕物は、トマト200g、ニンジン破砕物はニンジン100gに水100ml、キャベツ破砕物は、キャべツ200gに水100ml、レタス破砕物は、レタス200g、キュウリ破砕物は、キュウリ200g、タマネギ破砕物はタマネギ150g、ナガネギ破砕物は、ナガネギ200gに水100ml、セロリ破砕物は、セロリ100gに水50ml、ハクサイ破砕物は、ハクサイ150gに水150ml、ダイコン砕砕物は、ダイコン200gに水100ml、カブ破砕物は、カブ100gに水50ml、赤カブ破砕物は、赤カブ100gに水100ml、ピーマン破砕物は、ピーマン150g、黄パプリカ破砕物は、黄パプリカ200g、ブロッコリー破砕物は、ブロッコリー100gに水100ml、アスパラガス破砕物は、アスパラガス200gに水100ml、ミズナ破砕物は、ミズナ150gに水150ml、シュンギク破砕物は、シュンギク150gに水150ml、ホウレンソウ破砕物は、ホウレンソウ200g、コマツナ破砕物は、コマツナ200g、チンゲンサイ破砕物は、チンゲンサイ100gに水100ml、ナノハナ破砕物は、ナノハナ100gに水150ml、パセリ破砕物は、パセリ100gに水100ml、セリ破砕物は、セリ70gに水70ml、豆苗破砕物は、豆苗60gに水60ml、芽キャベツ破砕物は、芽キャベツ100gに.水150ml、ゴーヤ破砕物は、ゴーヤ200gに水50ml、ズッキーニ破砕物は、ズッキーニ100gに水50ml、ショウガ破砕物は、ショウガ100gに水50ml、ニンニク破砕物は、ニンニク100gに水100ml、ゴボウ破砕物は、ゴボウ100gに水100ml、レンコン破砕物は、レンコン100gに水100ml、クレソン破砕物は、クレソン100gに水100ml、大和まな破砕物は、大和まな70gに水70ml、しろ菜破砕物は、しろ菜100gに水100ml、宇陀金ごぼう破砕物は、宇陀金ごぼう100gに水100ml、祝蕾破砕物は、祝蕾100gに水50ml、片平あかね砕砕物は、片平あかね150gに水150ml、をそれぞれジューサーで処理したものを、85℃で30分間処理して滅菌して調整した。
【0051】
また本明細書において到達生菌数とは、前培養として121℃で15分間オートクレーブ滅菌したLactobacilli MRS Broth(Difco社製)培地で種菌を30~37℃で16時間定常状態になるまで培養した後、0.4%容量の前培溶液を100%果汁などの発酵基質に接種し、48時間、30℃または37℃で培養後の生菌数を示す。なお生菌数の測定はMRS寒天平板を用いて行なう。また、到達生菌数を表す単位であるCFU/mlは、培養プレートにおいて1ml接種した時のコロニー形成能を示す。
【0052】
ある実施形態において、上記乳酸菌は、ラクトバチルス属である。別の実施形態において上記乳酸菌はラクトバチルス・プランタルムに属する。別の実施形態において上記乳酸菌はラクトバチルス・プランタルム サクラ68に属する。
【0053】
更に別の実施形態において、上記乳酸菌は、受託番号:NITE P-03374で寄託されている乳酸菌である。
【0054】
ある実施形態において、上記乳酸菌は、上記条件で生育可能な変異株も含まれる。
【0055】
本発明乳酸菌の生理効果を得るために、例えば固体または液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬品製剤の形態としたものに利用することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散在、カプセル剤等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤、凍結乾燥製剤等が挙げられる。これらの製剤は製剤上の常套手段により調整することができる。上記の医薬用無毒性担体としては、例えば、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤、賦形剤等の慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0056】
また、本発明乳酸菌は、上記のような製剤とするだけでなく、固形状、液状等のいずれの形態の飲食物に含有させることもできる。飲食物に含有させる場合は、そのまま、または種々の栄養成分と共に含有せしめればよい。具体的に本発明乳酸菌を飲食物に含有させる場合は、飲食物として使用可能な添加物を適宜使用し、慣用の手段を用いて食用に適した形態、すなわち、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペースト等に成形すればよい。飲食物の種類としては、例えば、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳等の食品や、水、果汁、牛乳、清涼飲料、茶飲料等の飲料が挙げられる。なお、飲食物には、動物の飼料も含まれる。
【0057】
本実施形態において、上記乳酸菌による発酵により得られた組成物も提供される。本実施形態において、上記乳酸菌、及び、食品素材を含む、組成物も提供される。上記食品素材は、植物に由来する素材であってもよい。上記植物に由来する素材は、植物の葉、根、茎、花、つぼみ、果実、それらの抽出液、それらの破砕物、および/またはそれらの組み合わせであってもよい。上記植物に由来する素材は、果物、野菜、それらの抽出液、それらの破砕物、および/またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0058】
本実施形態において、上記乳酸菌、または上記組成物を含む、飲食物も提供される。本実施形態において、食品素材に、上記乳酸菌を接種し、発酵させることを特徴とする組成物の製造法も提供される。
【0059】
本発明乳酸菌による食品素材の発酵により得られた発酵物、その発酵物を含む飲食物及び本発明乳酸菌を含む飲食物
本実施形態の発酵物は、本発明乳酸菌による食品素材の発酵により得られる。また、本実施形態の飲食物は、その発酵物を含む。本実施形態において、食品素材は、食品に用いられるものであれば特に限定されず、植物の葉、根、茎、花、つぼみ、果実、それらの抽出液(例えば、果汁)、それらの破砕物などが挙げられ、特に本発明乳酸菌により発酵できるものが好ましく、例えば、果物、野菜及び豆乳があげられる。本発明乳酸菌を用いて発酵果汁飲料を製造する場合には、まず使用する果汁に適した条件で殺菌した果汁に、本発明乳酸菌を単独または他の微生物と同時に接種培養し、これを均質化処理することで発酵果汁を得ることができる。果物、野菜又は豆乳の場合も、果汁と同様の方法により、発酵野菜ジュース、発酵果物破砕物、発酵野菜破砕物、発酵豆乳を得ることができる。
【0060】
これら発酵物を未発酵果汁、未発酵野菜ジュース、未発酵果物破砕物、未発酵野菜破砕物や、アルコール等と混合し、さらに各種栄養素、ビタミン、フレーバー等を添加して最終製品とすることも可能である。これらは、本発明乳酸菌の生菌の状態で含有するので好ましい。
【0061】
上記発酵果汁飲料の原料となる果汁としては、特に限定されないが、グレープフルーツ、オレンジ、パイン、アップルなどの果汁が好ましく、特にオレンジ、パインの果汁が好ましい。
【0062】
上記発酵野菜ジュースの原料となる野菜ジュースとしては、特に限定されないが、トマト、ニンジン、などの野菜ジュースが好ましい。
【0063】
上記発酵果物破砕物の原料となる果物は、特に限定されないが、リンゴ、イチゴ、ナシ、スイカ、メロン、キウイ、マンゴー、パパイヤ、レッドドラゴンフルーツなどの果物が好ましく、特にイチゴ、ナシ、スイカ、メロン、マンゴー、パパイヤ、レッドドラゴンフルーツの果物が好ましい。
【0064】
上記発酵野菜破砕物の原料となる野菜は特に限定されないが、トマト、ニンジン、キャベツ、レタス、キュウリ、タマネギ、ナガネギ、セロリ、ハクサイ、ダイコン、カブ、赤カブ、ピーマン、黄パプリカ、ブロッコリー、アスパラガス、ミズナ、シュンギク、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、ナノハナ、パセリ、セリ、豆苗、芽キャベツ、ゴーヤ、ズッキーニ、ショウガ、ニンニク、ゴボウ、レンコン、クレソン、大和まな(大和野菜)、しろ菜(大和野菜)、宇陀金ごぼう(大和野菜)、祝蕾(大和野菜)、片平あかね(大和野菜)などの野菜が好ましく、特にトマト、ニンジン、キャベツ、レタス、タマネギ、ナガネギ、セロリ、ハクサイ、ダイコン、カブ、赤カブ、ピーマン、黄パプリカ、芽キャベツ、ズッキーニ、ニンニク、ゴボウ、レンコン、大和まな(大和野菜)、しろ菜(大和野菜)、宇陀金ごぼう(大和野菜)、祝蕾(大和野菜)、片平あかね(大和野菜)の野菜が好ましい。
【0065】
本実施形態の飲食物は、溶液、固形状、粉末等、経口摂取可能な形態であればよく、特に限定するものではない。具体例としては、飲料(乳酸飲料、果汁飲料、豆乳飲料、野菜飲料、茶飲料、炭酸飲料、栄養飲料、スポーツ飲料、コーヒー飲料、スープ、アルコール飲料等)、乳製品(ヨーグルト、チーズ、バター、アイスクリーム等)、小麦粉製品(パン、麺、ケーキミックス等)、菓子(チョコレート、クッキー、キャンデー、キャラメル、ゼリー、ガム、和菓子等)、油脂食品(ドレッシング。マヨネーズ、クリーム等)、調味料(ソース、トマトケチャップ、酢、風味調味料、つゆのもと等)、即席食品(即席麺、即席スープ、味噌汁、缶詰、レトルト食品等)、サプリメント(錠剤、シロップ、顆粒剤、カプセル剤、速崩剤等)が挙げられる。
【0066】
本実施形態の乳酸菌は、従来のプロバイオティクスに用いられる乳酸菌と同様に各種の用途に利用し、これを摂取することにより整腸作用、抗菌作用等の生理効果を期待できる。
【0067】
本実施形態の乳酸菌をヒトや動物が摂取する場合、量に厳格な制限はないが、その好適な摂取量は生菌数として1回あたり106CFUから1014CFUが好ましい。また、本実施形態の乳酸菌は継続的に摂取することが好ましいが、これに限定されることはなく、例えば隔週、隔日のように摂取間隔を開けた場合や短い摂取期間でもよい。
【0068】
上記飲食物および発酵物には、各種栄養素、各種ビタミン、各種ミネラル、甘味料、乳化剤などの安定剤、増粘剤、食物繊維、フレーバー等の任意成分を配合することができる。
【0069】
栄養素としては、DHA EPA、アセチルグルコサミン、カテキン、ウコン、プロポリス、アガリスク、β―クリプトキサンチン、ケルセチン、アントシアニン等が挙げられる。各種ビタミンとしては、ビタミンA,ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB6、ビタミンB12,ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、葉酸、ニコチンアミド、ビオチン、ビタミンKが挙げられる。各種ミネラルとしては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、マンガン、鉄、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。甘味料としては、ショ糖、グルコース、フルクトース、トレハロース、キシロース、ラクトース、パラチノース、果糖ブドウ糖液糖、麦芽糖、果糖、蜂蜜などの糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、アスパルテーム、スクラロース、ステビア、アセスルファムK等の高甘味度甘味料が挙げられる。酸味料としてはクエン酸、乳酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、酪酸等があげられる。フレーバーとしてはオレンジ系、シトラス系、ベリー系、アップル系、ミント系、グレープ系、アプリコット系、シソ系、レモン系、グレープフルーツ系、ピーチ系、バナナ系、トロピカル系、ハーブ系、コーヒー系、お茶系等があげられる。
【0070】
また、本実施形態の発酵物又は飲食物の製造の際には、本実施形態の乳酸菌以外の菌を併用することもできる。このよう菌類としては、例えばビフィッドバクテリウム、ビフィダム、ビフィッドバクテリウム、ラクティス、ビフィッドバクテリウム、ロンガム等のビフィッドバクテリウム属細菌、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ブレビィス、ラクトバチルス・ケフィア、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ブルガリカス、ラクトバチルス・デルブルキィ、ラクトバチルス・ペントサス、ラクトバチルス・プランタルム等のラクトバチルス属細菌、ストレプトコッカス・サーモフィリス、ストレプトコッカス・サリバリウス等のストレプトコッカス属細菌、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシス・ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシス・クレモリス等のラクトコッカス属細菌、エンテロコッカス・フェカリス等のエンテロコッカス属細菌、サッカロマイセス・セルビシエ、キャンデイダ・ケフィア等のサッカロマイセス属、キャンディダ属等に属する酵母があげられる。
【0071】
以下、実施例をあげて本発明の内容を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制約されるものではない。
【実施例0072】
実施例1
実施例の乳酸菌の単離及び培養条件
ラクトバチルス・プランタルムに属する新規乳酸菌は、以下に示す酒粕濾過培地を用いて単離した。800mlの蒸留水に200gの酒粕を加え、弱火にかけ、よく攪拌して沸騰させて溶かす。火から下ろして50℃ぐらいになるまで冷まし、キッチンペーパーで濾過し、Brixを5、0に調整して121℃で15分間オートクレーブし、酒粕濾過培地として使用した。ヤエザクラの花に付着した菌類を酒粕濾過培地に接触させ、30℃で24時間培養し、生育した菌を単離した。単離後、121℃で15分間オートクレーブしたLactobacilli MRS Broth(Difco社製)培地で30℃で24時間の条件において培養可能であった菌を以後の実験で用いた。かかる菌は、Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)培地において円形で白色のコロニーを形成した。顕微鏡観察において、上記菌は、桿菌で運動性はなく、芽胞は形成しなかった。(不図示)。上記菌は、グラム染色試験において陽性を示し、カタラーゼ活性試験において活性を示さず、またガス発生が観察されなかった。(不図示)。また上記菌は、嫌気条件で増殖するが、空気存在下でも増殖することが確認されている。
【0073】
16S rDNA塩基配列を用いた菌種同定
上記菌の菌種同定を16S rDNA塩基配列に基づいて以下の方法で行った。MRS培地を用いて30℃で24時間培養した培養用菌液を遠心分離した菌体ペレットから抽出したDNAを鋳型として16S rDNA配列の全長をPCR法によって増幅し、増幅産物の塩基配列をDye Terminater法により決定した。その塩基配列を配列番号1に示す。得られた塩基配列をデータベースで検索して菌種を同定した。
【0074】
その結果、前記乳酸菌の16S rDNAの塩基配列は、ラクトバチルス・プランタルムおよびラクトバチルス・ペントサスの16S rDNA塩基配列と99.2%同一であることが確認できたが、ラクトバチルス・ペントサスはD-キシロースを資化できるのに対し、前記乳酸菌はD-キシロースを資化できないことから、上記乳酸菌は、ラクトバチルス・プランタルムに属する乳酸菌の新株と同定し、ラクトバチルス・プランタルム サクラ68と命名して(以後実施例1の乳酸菌)、2021年1月29日に日本国千葉県木更津かずさ鎌足2-5-8に住所を有する独立行政法人製品評価基盤機構特許微生物寄託センターに寄託された。受託番号はNITE P-03374である。
【0075】
実施例の乳酸菌の糖資化性を表1(糖の発酵性状:API50CHによる測定)に示す。
【0076】
【0077】
実施例2
ラクトバチルス・プランタルムによる果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュースの発酵試験
(1)菌株
比較例1の乳酸菌(対照群)としてラクトバチルス・プランタルムに属する2株YIT0132株(FERM BP-11349)(比較例1-1)、YIT0148(FERM BP-11350)(比較例1-2)を使用した。
【0078】
(2)種菌と培養
比較例1-1、1-2の乳酸菌は、Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)を121℃で15分間オートクレーブ滅菌した後接種し、空気存在下で口をゆるめて37℃で16時間定常状態なるまで培養した。
【0079】
実施例1の乳酸菌(ラクトバチルス・プランタルム サクラ68)は、Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)を121℃で15分間オートクレーブ滅菌した後接種し、空気存在下で口をゆるめて30℃で16時間、定常状態になるまで培養した。
【0080】
(3)果汁、野菜ジュース、ミックス野菜ジュースでの増殖性
オレンジ(ヤクルト本社製)、オレンジ(キリン社製)、パイン(ヤクルト本社製)、パイン(キリン社製)、アップル(ヤクルト本社製)、アップル(キリン社製)、グレープフルーツ(キリン社製)の100%果汁、ニンジン(キャロット100、伊藤園社製)、トマト(高リコピン、カゴメ社製)、トマト(プレミアム、カゴメ社製)、トマト(理想のトマト、伊藤園社製)、トマト(完熟トマト、デルモンテ社製)、トマト(無塩無添加、デルモンテ社製)の100%野菜ジュース、野菜ミックスジュース(きになる野菜、ヤクルト本社製)、野菜ミックスジュース(野菜1日これ1本、ヤクルト本社製)、野菜ミックスジュース(1日分の野菜、伊藤園社製)、野菜ミックスジュース(充実野菜、伊藤園社製)、野菜ミックスジュース(野菜生活、カゴメ社製)、野菜ミックスジュース(48種類の濃い野菜、キリン社製)をそれぞれ無菌的に試験管に分注し、比較例1-1YIT0132(FERM BP-11349), 1-2 YIT0148(FERM BP-11350)の0.4%容量の菌液を接種し37℃で48時間培養した。
【0081】
同上の市販の果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュースをそれぞれ無菌的に試験管に分注し、実施例1の乳酸菌の0.4%容量の菌液を接種し、30℃で48時間培養した。
【0082】
(4)生菌数の測定
培養液を減菌した希釈液(0.1%酵母エキス溶液)にて適宜希釈後、スパラルシステムにてMRS寒天平板培地に塗布し生菌数を測定した。果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュースで増殖性を調べた結果を表2に示した。生菌数は3回の異なる実験を行なって、得られた数値を平均して算出した。
【0083】
【0084】
(5)果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュースにおける増殖性の検討
実施例1の乳酸菌は、比較例2株の乳酸菌と比較して、果汁、野菜ジュース、ミックス野菜ジュースすべてにおいて、約1、7倍から4倍の増殖能を示し、すぐれた増殖能をもつことが明らかとなった。
【0085】
実施例3
ラクトバチルス・プランタルムによる果物破砕物の発酵実験
(1)菌株
比較例1の乳酸菌(対照群)としてラクトバチルス・プランタルムに属する2株YIT0132株(FERM BP-11349)(比較例1-1)、YIT0148(FERM BP-11350)(比較例1-2)を使用した。
【0086】
(2)種菌と培養
比較例1-1、1-2の乳酸菌は、Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)を121℃で15分間オートクレーブ滅菌した後接種し、空気存在下で口をゆるめて37℃で16時間定常状態なるまで培養した。
【0087】
実施例1の乳酸菌(ラクトバチルス・プランタルム サクラ68)は、Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)を121℃で15分間オートクレーブ滅菌した後接種し、空気存在下で口をゆるめて30℃で16時間、定常状態になるまで培養した。
【0088】
(3)果物破砕物での増殖性
リンゴ、イチゴ、ナシ、スイカ、メロン、キウイ、マンゴー、パパイヤ、レッドドラゴンフルーツの果物破砕物をそれぞれ無菌的に試験管に分注し、比較例1-1 YIT0132(FERM BP-11349) ,1-2 YIT0148(FERM BP-11350)の0.4%容量の菌液をそれぞれに接種し、37℃で48時間培養した。同上の果物破砕物をそれぞれ無菌的に試験管に分注し、実施例1の乳酸菌の0・4%容量の菌液をそれぞれに接種して30℃で48時間培養した。
【0089】
(4)生菌数の測定
培養液を減菌した希釈液(0.1%酵母エキス溶液)にて適宜希釈後、スパラルシステムにてMRS寒天平板培地に塗布し生菌数を測定した。果物破砕物での増殖性を調べた結果を表3に示した。生菌数は3回の異なる実験を行なって、得られた数値を平均して算出した。
【0090】
【0091】
(5)果物破砕物における増殖性の検討
実施例1の乳酸菌は、比較例の2株の乳酸菌と比較して、すべての果物破砕物において約1、6倍から14倍の生菌数を示したことから、すぐれた増殖能をもつことが明らかとなった。
【0092】
実施例4
ラクトバチルス・プランタルムによる野菜破砕物の発酵実験
(1)菌株
比較例1の乳酸菌(対照群)としてラクトバチルス・プランタルムに属する2株YIT0132株(FERM BP-11349)(比較例1-1)、YIT0148(FERM BP-11350)(比較例1-2)を使用した。
【0093】
(2)種菌の培養
比較例1-1、1-2の乳酸菌は、Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)を121℃で15分間オートクレーブ滅菌した後接種し、空気存在下で口をゆるめて37℃で16時間定常状態なるまで培養した。
実施例1の乳酸菌(ラクトバチルス・プランタルム サクラ68)は、Lactobacilli MRS Broth(Difco社製)を121℃で15分間オートクレーブ滅菌した後接種し、空気存在下で口をゆるめて30℃で16時間、定常状態になるまで培養した。
【0094】
(3)野菜破砕物での増殖性
トマト、ニンジン、キャベツ、レタス、キュウリ、タマネギ、ナガネギ、セロリ、ハクサイ、ダイコン、カブ、赤カブ、ピーマン、黄パプリカ、ブロッコリー、アスパラガス、ミズナ、シュンギク、ホウレンソウ、コマツナ、チンゲンサイ、ナノハナ、パセリ、セリ、豆苗、芽キャベツ、ゴーヤ、ズッキーニ、ショウガ、ニンニク、ゴボウ、レンコン、クレソン、大和まな(大和野菜)、しろ菜(大和野菜)、宇陀金ごぼう(大和野菜)、祝蕾(大和野菜)、片平あかね(大和野菜)の野菜破砕物をそれぞれ無菌的に試験管に分注し、比較株例1-1 YIT 0132(FERM BP-11349)、1-2 YIT 0148(FERM BP-11350)の0.4%容量の菌液をそれぞれ接種し、37℃で48時間培養した。同上の野菜破砕物をそれぞれ無菌的に試験管に分注し、実施例1の乳酸菌の0.4%容量の菌液をそれぞれ接種し、30℃で48時間培養した。
【0095】
(4)生菌数の測定
培養液を減菌した希釈液(0.1%酵母エキス溶液)にて適宜希釈後、スパラルシステムにてMRS寒天平板培地に塗布し生菌数を測定した。野菜破砕物での増殖性を調べた結果を表4に示した。生菌数は3回ずつ実験を行なって得られた数値を平均して算出した。
【0096】
【0097】
(5)結果
実施例1の乳酸菌は、比較例の2株の乳酸菌と比較して、すべての野菜破砕物において、約1.3倍から13倍の生菌数を示したことから、すぐれた増殖能をもつことが明らかとなった。
【0098】
表1、表2、表3に示した通り、実施例1の乳酸菌は、比較例1-1YIT 0132(FERM BP-11349) 1-2(FERM BP-11350)の乳酸菌と比較して、さまざまな果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュース、果物破砕物、野菜破砕物において、常に高い到達生菌数となり、すぐれた増殖能をもつことが明らかとなった。
前記植物性飲食物は、果汁、野菜ジュース、野菜ミックスジュース、果物破砕物及び野菜破砕物からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の乳酸菌。