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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130250
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】多層構造食品容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/32 20060101AFI20220830BHJP
【FI】
B65D81/32 K
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021068007
(22)【出願日】2021-02-25
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】521156343
【氏名又は名称】伊藤 茉優
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茉優
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013AA05
3E013AB01
3E013AC11
3E013AC13
3E013AC17
3E013AD06
3E013AD09
3E013AD12
3E013AE02
3E013AF05
3E013AF17
3E013AF26
(57)【要約】
【課題】三種類以上を含む複数の食材を、変質を防止し、安定性を維持して一つの容器に収容し、食すまでの手間や時間を削減でき且つ手を汚さずに混合できる食品容器を提供すること。
【解決手段】容器の内部空間を仕切る1又は2以上の仕切りと、容器の軸方向に貫通する軸部と、仕切り上側で当該軸部と連結する仕切り破断手段と、蓋とを備える多層構造食品容器であって、底部に最も重い一の食材を収容し、その真上に一枚の仕切りシートを容器に取り付け、その上面に別の食材を収容し、これを食材数に合わせて繰り返し、且つ前記破断手段を連結した前記軸部を前記容器に取り付け、最後に当該容器の上面に蓋を取り付け、食に際しては容器全体を180°回転させ当該軸部を上へ引っ張ることで当該破断手段により当該仕切りが破れ、収容した複数の食材が当該容器の開口部方向に移動し当該蓋に落下し合わさる多層構造食品容器。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に開口部を有する有底の容器と当該開口部を覆う蓋を備える食品容器であって、
当該容器の内部空間を上下方向に仕切る一又は二以上の仕切りと、
当該容器の底部と当該仕切りを貫通するように容器の軸方向に貫通する軸部と、
当該容器内の最上方の仕切り又は各仕切りの上側において当該軸部に連結された一又は二以上の仕切り破断手段とを備えることを特徴とする多層構造食品容器。
【請求項2】
食材の収容に際しては、前記容器の底部に、収容する食材の内最も重い一の食材を収容し、その真上に一の前記仕切りを当該容器に取り付け、その上面に別の食材を載置して収容し、収容する食材数に合わせて仕切りの取り付けと食材の載置、収容を繰り返し、且つ前記破断手段を連結した前記軸部を前記容器に取り付け、最後に当該容器の上面に前記蓋を取り付けて複数の食材を収容し、食に際しては当該食材が収容された容器全体を180°回転させ、当該軸部を上へ引っ張ることで当該破断手段により当該仕切りが破れ、当該底部及び各仕切りに収容した複数の食材が当該容器の開口部方向に移動し、前記蓋に落下し合わさることを特徴とする請求項1に記載の多層構造食品容器。
【請求項3】
前記軸部はスティックであり、前記破断手段は前記スティックから径方向に延在するカッターであることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層構造食品容器。
【請求項4】
前記軸部はスティックであり、前記破断手段は前記スティックに連結され且つ前記仕切りの上側に所定角度範囲で径方向に延在する複数の糸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多層構造食品容器。
【請求項5】
さらに、前記容器内の最上方の仕切りの上側において前記破断手段の上側に取り付けられた食品誘導部を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の多層構造食品容器。
【請求項6】
前記スティックは、前記容器の底部側の端部に持ち手を備えることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の多層構造食品容器。
【請求項7】
前記カッターは、十字カッターであることを特徴とする請求項3、5又は6のいずれか一項に記載の多層構造食品容器。
【請求項8】
前記カッターの刃の前記容器の内壁方向の先端は、前記仕切りの表面に対して垂直な方向に刺さるV字形状であることを特徴とする請求項7に記載の多層構造食品容器。
【請求項9】
前記仕切りは、破断手段が当該仕切りを破断する破断線に沿うように当該仕切り表面にハーフカット部を備えることを特徴とする請求項1~8に記載の多層構造食品容器。
【請求項10】
前記仕切りは、その表面にロータス効果を有する撥水膜を備えることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の多層構造食品容器。
【請求項11】
前記スティックの前記底部側の端部は、当該スティックより切り離すことによりスプーンになり、前記持ち手がスプーンのつぼになることを特徴とする請求項6~10のいずれか一項に記載の多層構造食品容器。
【請求項12】
カトラリーが、前記容器の底部の下側の空間に収まるように、前記スティックに着脱自在に取り付けられたことを特徴とする請求項3~10のいずれか一項に記載の多層構造食品容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の食材を一つの容器に収容でき、手や周辺を汚さない多層構造食品容器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の食材を有する食品はそれぞれの質を保つため、複数の容器等を組み合わせた構造をしている包装体に詰めることが多い。この例として、コンビニエンスストアなどで販売されている丼ぶり容器や麺類の容器が挙げられる。しかし、これらの容器では、具材や調味材は別個の容器や小袋等の包装体に収容され主材と同一の容器に詰められているので、具材、調味材などは喫食時にいったん主材が詰められた容器から取り出し、当該包装体を開封後に、改めて主材容器に投入し混合して食す必要があり、喫食までに手間や時間を要す。また、前記麺類に添えられる具材や調味材、菓子類に添えられる複数のトッピングなどが詰められている包装体を開封する際に手が汚れ、また、周辺に食材が飛び散って汚すという問題もある。
【0003】
上記問題を解決するため、特許文献1には、一方の食材を収容する容器体1と、もう一方の食材を封入する収容部3からなる容器において、封止部材3bにより二種類の食材を隔て、封止部材3bを巻取ることで二種類の食品を合わせる食品容器が開示されている。
【0004】
特許文献2には、所定の食材Fが底部側に収納される容器本体1と、調味材Dが封入される調味材封入部3によって食材を隔て、外部から調味材封入部3を押圧することで二種類の食材を合わせる食品容器が開示されている。
【0005】
特許文献1と2に開示されている食品容器は、二種類の食材を隔てることで品質を維持でき、食材の変質を防止できる。また、二種類の食材の混ぜ合わせが容易で手や周辺を汚さず衛生面にも優れている。しかし、三種以上の多種の食材を収容に不便なことに加え収容部が小さいため多量の具材を収容できないという問題が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-264970号公報
【特許文献2】特開2017-214072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものである。すなわち三種類以上を含む複数の食材を、変質を防止して一つの容器に収容でき、食材を収容した容器の安定性を維持して具材等の副材の収容量も増やすことができ更に食すまでの手間や時間を削減でき且つ手や周辺を汚さずに混ぜ合わすことができる食品容器の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、有底の容器と、その開口部を覆う蓋と、当該容器の内部空間を上下方向に仕切り食材を収容する仕切りと、容器の軸方向に貫通する軸部と、仕切りを破断する破断手段とを備える多層構造食品容器を提供することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、
上面に開口部を有する有底の容器と当該開口部を覆う蓋を備える食品容器であって、
当該容器の内部空間を上下方向に仕切る一又は二以上の仕切りと、
当該容器の底部と当該仕切りを貫通するように容器の軸方向に貫通する軸部と、
当該容器内の最上方の仕切り又は各仕切りの上側において当該軸部に連結された一又は二以上の仕切り破断手段とを備えることを特徴とする多層構造食品容器である。
【0010】
また、本発明は、前記多層構造食品容器への食材の収容に際しては、前記容器の底部に、収容する食材の内最も重い一の食材を収容し、その真上に一の前記仕切りを当該容器に取り付け、その上面に別の食材を載置して収容し、収容する食材数に合わせて仕切りの取り付けと食材の載置、収容を繰り返し且つ前記破断手段を連結した前記軸部を前記容器に取り付け、最後に当該容器の上面に前記蓋を取り付けて複数の食材を収容し、食に際しては当該食材が収容された容器全体を180°回転させ、当該軸部を上へ引っ張ることで当該カッターにより当該仕切りが破れ、当該底部及び各仕切りに収容した複数の食材が当該容器の開口部方向に移動し、当該食品誘導部に入り誘導されて当該蓋の中央に落下し合わさることを特徴とする多層構造食品容器である。
【0011】
また、本発明は、前記軸部はスティックであり、前記破断手段は前記スティックから径方向に延在するカッターであることを特徴とする多層構造食品容器である。
【0012】
また、本発明は、前記軸部はスティックであり、前記破断手段は前記スティックに連結され且つ前記仕切りの上側面に所定角度範囲で径方向に延在する複数の糸であることを特徴とする多層構造食品容器である。
【0013】
さらに、本発明は、前記容器内の最上方の仕切りの上側において前記破断手段の上側に取り付けられた食品誘導部を備えることを特徴とする多層構造食品容器である。
【0014】
本発明に係る多層構造食品容器は、前記一又は二以上の仕切りが前記容器の内部空間を上下方向に仕切りその上面に各食材を載置して収容することにより、三種類以上を含む複数の食材を一の容器に収容することができ、且つ当該仕切りが各食材間を隔てることで各食材の接触による変質を防止することができる。また、当該容器は筒状体やカップ状の一般的な容器形状であるので底部の食材の載置面積に対して各仕切りの載置面積が同等以上になり、底部の食材収容量に対して各仕切りの食材収容量も同等以上にすることができるので、主材と具材等の副材からなる食品についても、従来容器に比べ主材に対して副材の収容量を増やすこともできる。更に、最も重い食材を当該容器の底部に収容することにより、安定性も維持できる。
【0015】
食に際しては、容器を180°回転させ前記軸部を引っ張り上げるだけで、前記破断手段が仕切りを破断し、収容された複数の食材が当該容器の開口部方向に移動して蓋に落下し混合され、前記食品誘導部を備える場合は、当該食材は当該蓋の中央に注入される。さらに、当該蓋は食す際にそのまま食器として使用できるので、食すまでの工程を省略できて手間や時間を削減でき、手や周辺を汚さない。
【発明の効果】
【0016】
以上より、本発明に係る多層構造食品容器は以下の効果を有する。
1.三種類以上も含む複数種類の食材を一つの容器に収容できる。また、具材等の副材の収容量も増やことができる。
2.複数の食材を互いに接触させずに収容できるので、食材の変質を防止できる。
3.重量の大きい食材を容器の底部に収容することにより、容器の重心が下に位置し、安定性を維持できる。
4.食すまでの主な工程は容器をひっくり返すことと軸部を上方に引くことなので、従来の容器と比べると手間と時間を削減できる。
5.手や周辺を汚さずに食せる。
6.当該多層構造食品容器を捨てる際、蓋とそれ以外の2つにまとまるため、従来の容器と比べると、比較的ゴミ数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による多層構造食品容器の一実施態様に係る縦断面図である。
図2】本発明による多層構造食品容器の一実施態様に係る斜視図である。
図3図2の多層構造食品容器に食材を詰めたイメージ図である。
図4】食す際の図2の多層構造食品容器の使用方法の説明図である。
図5図5(A)は上面にハーフカット部を設けた仕切りの斜視図である。図5(B)は(A)のA-A断面図である。
図6】仕切り破断手段であるカッター6の変形例の説明図である。
図7図7(A)は実施例3の三層構造食品容器9の使用方法の説明である。図7(B)は実施例3のスティックの一部をカトラリー(スプーン)に変える工程図である。
図8図8(A)は底面にカトラリーを備えた三層構造食品容器9の縦断面図である。図8(B)は(A)の容器2の底面図である。図8(C)はカトラリー(フォークスプーン)19の平面図である。
図9図9(A)は実施例2の三層構造食品容器9Sの縦断面図である。図9(B)は実施例2の三層構造食品容器9Sの仕切り破断後の斜視図である。
図10】三層構造食品容器9の試作品の斜視図(写真1)である。
図11】三層構造食品容器9の試作品の側面図(写真2)である。
図12】三層構造食品容器9の試作品の平面図(写真3)である。
図13】試作品の容器2に三種類の食材を収容した斜視図(写真4)である。
図14】試作品の容器2に三種類の食材を収容した側面図(写真5)である。
図15】蓋1に三種類の食材が落下し合わさったときの三層構造食品容器9の斜視図(写真6)である。
図16】三種類の食材が合わさった状態の蓋1の斜視図(写真7)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の好ましい一実施態様を示す図面を挙げ、本発明を更に説明するが、本発明はこれらに何ら制約されるものではない。
【0019】
図1は、本発明よる多層構造食品容器の一実施態様の断面図であり、図2はその斜視図である。図1,2が示す様に本実施態様の食品容器は、有低円筒体の容器と円錐台形状の蓋からなり、当該容器が内部空間を上下方向に仕切る上下二枚の仕切りを有し三層構造になっている三層構造食品容器であり、三種類の食材を収容できる。また、当該容器は、当該容器の底部の下側の空間から開口部方向に垂直に伸びる持ち手付きのステッィクである軸部を備え、最上方の当該仕切りの上側において当該スティックに連結された仕切り破断手段であるカッターと当該カッターの上側に取り付けられた食材の移動を誘導する食品誘導部を備える。
【0020】
図中、1は蓋、2は容器、3は容器2の内部空間を上下に仕切るための上部仕切り、4は同じく下部仕切り、5は食品誘導部、6は破断手段であるカッター、7は軸部であるスティック、8はスティックの持ち手、9は三層構造食品容器、10は容器2の底部、11は底部10の下側の空間をそれぞれ示す。
【0021】
図1図2が示すように、本実施態様の容器2は上面に開口部と底部10の下側に空間11を有する有底円筒体であり、底部10に一の食材を収容することができるが、容器全体の安定性を確保するため最も重い食材を収容することが好ましい。容器2の上面の開口部を覆う蓋1は下面が開口部となっている円錐台形状で、食す際に三層構造食品容器9を180°回転させると、収容されていた三種類の食材が落下して溜まるので食器として使用できる。容器2の内部空間を上下に仕切る上部仕切り3と下部仕切り4は、容器2の内径と同一の外径を有する円形シート状で、その外周が容器2の内壁に当接するように容器2に取り付けられ、各仕切りの上面に各食材を互いに隔てた状態で載置して収容できる。下部仕切り4は、流動性のある食材も収容できるように容器2の内壁と接する外周端部に当該内壁に沿って上方に延びる立ち上がり部が設けられた略円形トレー形状となっている。
【0022】
容器2は有底円筒体であり、底部10、下部仕切り4、上部仕切り3の食材載置面積は等しいので、各食材の収容容量も等しくすることができる。三層構造食品容器9に主材と具材からなる食品を収容するときも、主材に対して具材の量を少量に制限することもない。
【0023】
持ち手8を備えたスティック7の上端にはカッター6とカッター6の上側に食品誘導部5が取り付けられている。なお、図1に示すように底部10の下側の空間11は、三層構造食品容器9を水平な場所に置いたときの安定性確保の観点から持ち手8が収まる程度の大きさ、特に高さが必要である。カッター6は図1、2に示すようにスティック7から容器2の径方向に延在する、刃先が仕切り3,4側に向いた略円弧状の十字形カッター(以下、「十字カッター」という。)であり、持ち手8によりスティック7を操作してカッター6を仕切り3、4の方向に動かすことにより仕切り3,4を破断する。このときカッター6の円弧の弦の長さが容器2の内径にほぼ等しく、仕切り3、4の外径も容器2の内径と同一であるので、カッター6は、破断幅が仕切り3,4の外径とほぼ等しくなり、十字形状に全面的に仕切り3、4を破断することができるため、仕切り3、4上の食材は下方に移動・落下しやすくなる。また、略円弧状の十字カッターであるため、カッター6を動かし仕切り3、4を破断するときカッター6全体が変形しにくく、容器2内の食材の移動の妨げにもなりにくい。
【0024】
食品誘導部5は、上下が開口部である円錐台形状であり、下部開口部(底面)の外径は容器2の内径に等しく、上部開口部(口部)の内径は底面の内径概ね1/2程度であり、口部は容器2の横断面の中央にあるため、三層構造食品容器9を180°回転させて食材を移動する時に容器2の底部10と仕切り3、4に収容されている食材の全ては円錐台形状の食品誘導部5の底面から食品誘導部5に入りその内側面に導かれ当該口部に向かって流下するので、当該食材をほぼ蓋1の中央に落下させ注入することができる。食材を蓋2の中央に注入したい場合に効果がある。
【0025】
本実施態様の三層構造食品容器9は以下の手順で製作される。
まず、容器2の底部10、上部仕切り3と下部仕切り4の中央にスティック7の直径と等しい孔を開ける。次に容器2に仕切り3,4を取り付け、最上方の仕切りである上部仕切り3の上方から、上端にカッター6を連結しカッター6の上側に食品誘導部5を取り付けたスティック7を仕切り3,4及び底部10の中央に設けられた孔を通して挿し底部10の下側の空間11まで貫通させる。その後底部10から当該空間11内に突出しているスティック7の下端部に空間11に収まるように持ち手8を取り付け、最後に容器2の上面の開口部を覆う蓋1を装着する。
【0026】
スティック7の上部に十字カッター6を連結する方法としては、例えば接着剤により十字カッター6の中心下側とスティック7の上端側を固着する方法か、十字カッター6の中心下側とスティック7の上端側に凹凸加工を施して嵌着する方法などが挙げられ、十字カッター6の上に食品誘導部5を取り付ける方法としては、図1に示すようにスティック7から容器2の径方向に延在する、即ち十字カッター6の中心から径方向の4方向に伸びる刃の各上側で食品誘導部5の側面下側と接する箇所(4箇所)で接着剤により固着する方法が挙げられるが、スティック7をその軸方向に動かして、カッター6で仕切り3、4を破断して食材を蓋1に流入させる時に、スティックから脱離しない強度を有する取り付け方法であれば、限定はない。
なお、接着剤を使用する場合は、スティック7,カッター6及び食品誘導部5を構成する材質に適用でき、且つ食品衛生法に適合する接着剤であれば特に限定はない。
【0027】
流動性のある食材を収容する下部仕切り4は、食材を収容する前に中心にスティック7挿すためにその外径に等しい孔が開けられているが、液体など流動性のある食材を載置、収容時に当該食材が当該孔から漏出する可能性がある。これを防止する方法として、例えばスティック7の先端で容易に切断できる程度の薄いフィルム例えば軟質プラスチックやシール性を有するウレタンエラストマー等の熱可塑性エラストマーなどの厚さ数十ミクロン程度のプラスチックフィルムからなる接着テープで予め孔を塞ぐか、円形トレー状の下部仕切り4の中心にある孔の周囲に、トレーの外周立ち上がり部(以下、「外周壁」という。)と同じ程度の高さの壁(以下、「内周壁」という。)を突設する方法(ただし、流動性がある食材は仕切り4の外周壁と内周壁の間に壁の高さ以下に収容しなければならない。)などが挙げられる。
【0028】
仕切り3,4は多層(三層)構造食品容器9へ食材を収容するため容器2に着脱自在に取り付ける。取り付け方法としては、例えば仕切り3,4の各取り付け位置で容器2の内壁の周方向にリング状の小突起や同一高さ、同一間隔で複数(好ましくは4以上)の小突起を高さ方向に2列、仕切り3についてはその間隔が仕切り3の厚さに等しく、仕切り4については仕切り厚さに外周壁の高さを加えた高さに等しい間隔で突設して、仕切り3,4の外周端部を当該2列の突起の間に嵌合する方法や、仕切り3、4の外周側面で容器2の内周面に当接する部分に粘着テープで止める方法などが挙げられる。これらの方法であれば、仕切り3、4の取り付け、取り外しが容易で、容器2に水平に取り付けることができ、且つ仕切り3、4の外径が容器2の内径と等しく当該外周端部の側面が容器2の内壁と当接するように取り付けることができるので、容器2の内部空間を仕切り3、4により確実に仕切ることができる。また、同じく三層構造食品容器9容器への食材の収容するため、持ち手8もスティック7に着脱自在に取り付ける必要がある。取り付け方法としては、例えば持ち手8とスティック7の取り付け側の端部に雌雄のねじ切り加工を施して螺合する方法や、取り付け側の端部に凹凸加工を施して嵌合する方法などが挙げられる。
【0029】
本発明に係る多層構造食品容器である三層構造容器9を構成する容器2、蓋1及び食品誘導部5の材質としては、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性ポリエステル、ポリアミド、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等の熱可塑性樹脂からなるプラスチックや紙(板紙等)が挙げられる。材質の種類は収容する食材や本容器の使用環境、用途等により適宜選択されるが、当該三層(多層)構造食品容器に収容されている食材を見えるようにして消費者にアピールする場合は、ポリスチレン、PAN、PET等の透明性の高いプラスチックスが好ましい。
【0030】
前記容器2等の材質がプラスチックの場合は、当該容器2、蓋1及び食品誘導部5は、公知の成形加工法である真空成形、固相圧空成形若しくはシートの打ち抜き・貼り合わせ加工により成形加工されるプラスチックシートの成形体か又は射出成形等により成形される。
【0031】
仕切り3、4を構成する素材としては、前記プラスチックシート、板紙やプラスチックフィルムとアルミ箔の積層品などが挙げられるが、三層構造食品容器9に収容されている食材を見えるようにして消費者にアピールする場合には、前記透明性の高いプラスチックシートが好ましく、食材をその上面に載置しても変形しない程度の強度が有し且つカッター6で容易に破断できる形状・構造、材質が好ましい。材質がプラスチックの場合は、上部仕切り3は円形シート状であるので、プラスチックシートの打抜き加工等により加工され、下部仕切り4は略円形トレー状であるので、プラスチックシートの真空成形等により成形される。
【0032】
仕切り3,4上に収容された食材を速やかに移動し易くするため、その表面を食材剥離性の良好な形状・構造又は材質にすることが好ましい。表面の剥離性を向上させるための手段としては、素材自体に滑り性を有する四フッ化エチレン(PTFE)等のフッ素樹脂やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのからなるシートが挙げられる。更に仕切り表面の食材剥離性を向上する手段としては、仕切りの表面にナノオーダー乃至ミクロオーダーの微細な凹凸構造からなる空気を含む撥水膜を形成するいわゆるロータス効果を有する構成にする方法がある。当該ロータス効果は、仕切り3、4の表面にフッ素化合物若しくは二酸化ケイ素を主成分とするシリコーン(例えば商品名「ドライバリア365」等)からなる塗料又はポリエチレングリコールにグルコースやスクロースを組み合わせた塗料等を公知の方法でコーティングするか、公知の金型転写又はロール転写により仕切り表面に微細な凹凸構造を形成する方法により形成することで得ることができる。
【0033】
スティック7とカッター6は上部仕切り3、下部仕切り4を破断するために用いられるので、当該仕切りの材質より強度の高い材質が好ましく、カーボンファイバーや無機フィラーで強化したポリアミド樹脂等硬質プラスチック成形品又は木製などの加工品が挙げられる。
なお、前記の本発明に係る多層構造食品容器を構成する要素の材質は、所定の強度を有することのほか、食品衛生法に適合しなければならない。
【0034】
また、カッター6の形状・構造は、図1、2に示す十字カッターに限定されず、円弧の弦の長さが容器2の内径にほぼ等しい円弧状の一枚刃のカッターや、図6に示すように、十字カッターの先端が仕切り3,4の表面に垂直に刺さるようにV字形状刃先15になっているカッターなどが挙げられる。変形なく仕切り3、4を破断でき、食材の移動の妨げにならない形状であれば限定はない。
なお、図6に示す十字カッターであれば、仕切りの表面(外周端部)に最初に入るカッター6の刃先15が鋭利な形状になっていて、刃先15が仕切り表面に刺さって破断を開始するので、カッター6全体も仕切り表面に入りやすくなる。したがって、カッター6による仕切り3、4の破断容易性を更に向上させることができる。
【0035】
仕切り3,4のカッター6による破断容易性向上の別の手段としては、図5(A)、(B)に示すように、当該仕切りの表面中央部に十字カッターであるカッター6の形状に合わせ十字状のハーフカット部17を設ける方法もある。図5(B)に示すように、ハーフカット部17の仕切りの厚さは、仕切りの他の部分1/2程度であり、また、ハーフカット部17は十字カッターの形状に沿ったV字型の溝形状であるためカット時の応力が集中しやすく仕切りの破断を容易にすることができる。
【0036】
本実施態様の多層構造食品容器は三種類の食材の収容に対応する三層構造食品容器であるが、本発明の多層構造食品容器は、これに限定されず、二種類の食材を収容する場合は、前記仕切りは一枚として二層構造の多層構造食品容器となり、また、四種類以上の食材を収容する場合は、前記仕切りを三枚以上として四層以上の多層構造食品容器となる。容器の安定性が維持できれば、収容する食材数に特に制限はない。
【0037】
本発明に係る多層構造食品容器において容器の形状は、本実施態様のような有底円筒体のみに限定されることなく、有底角筒体や、容器の横断面が下方から上方に向かって連続的に大きくなるカップなどの一般的な容器形状であってもよい。容器の横断面形状、サイズに合わせて仕切りや食品誘導部、蓋の形状、サイズも適宜選択される。
【0038】
本発明に係る多層構造食品容器の用途としては、複数種類の食材を収容し、混ぜ合わせて食する食品用途が挙げられるが、その内水分量が異なる複数種類の食材を混ぜ合わせて食する食品が好ましく、特にパフェ、シリアル等のお菓子用として好適である。
【0039】
次に、本発明に係る前記多層(三層)構造食品容器9を使用して三種類の食材を合わせて食する方法を実施例1により説明する。
【実施例0040】
本発明に係る多層構造食品容器について、更に詳しく説明するため、前記実施態様において、三種類の食材としてフルーツグラノーラ、ヨーグルト及びフルーツを用い、これら三種類の食材を図1、2に示す前記三層構造食品容器9に収容し、これらを合わせて食す方法について説明する。
【0041】
[三種類の食材の三層構造容器9への収容方法]
本実施例に使用した三層構造食品容器9の試作品を図9~11(写真1~3)に示す。図10~12(写真1~3)は、図1,2に示す三層構造食品容器9の試作品の外観(斜視図、側面図、平面図)であるが、透明性があるプラスチックシートを使用しているため、内部にある仕切り3、4、スティック7、食品誘導部5及びカッター6を視認できる。
【0042】
図3は、前記三種類の食材が三層構造食品容器9に収容された状態を示し、図13,14(写真4、5)は、写真1~3に示す三層構造食品容器9の試作品に前記三種類の食材(ここでは三種類の食材の模型)を収容した、蓋1の取り付け前の状態の外観(斜視図、側面図)を示す。写真4、5に示すように、当該食材の当該試作品への収容においては、最も軽いフルーツグラノーラ12は食品誘導部の外側面の上に載置し収容した。当該三種類の食材の三層構造容器9への収容手順は以下のとおりである。
【0043】
最初に、持ち手8、食品誘導部5とカッター6を備えたスティック7、上部仕切り3、下部仕切り4を取り外してから、容器2の底部10へ水分を含んでいる固形物14(本実施例ではフルーツ)を敷き詰めた。次に、下部仕切り4を取り付け、流動性がある固体13(本実施例ではヨーグルト)を下部仕切り4の上面に載置して収容した。その後、図3に示す場合は、上部仕切り3を取り付け、軽い乾物12(本実施例ではフルーツグラノーラ)を上部仕切り3の上面に載置して収容した。次に食品誘導部5とカッター6を備えたスティック7を上部仕切り3から底部10に向かって慎重に挿し、底部10を貫通したら底部2の下側の空間11内のスティック7の下端に持ち手8を取り付け、最後に、蓋1を装着した。ここで、前記比較的軽い乾物のフルーツグラノーラ12については、軽量でも有り、食材の中央に注入する必要がなければ、写真4,5に示すように上部仕切り3の上面ではなく、食品誘導部5とカッター6が付いたスティック7を取り付けた後に、容器に沿わせるようにして食品誘導部5の外側面の上に載置してもよい。
【0044】
図3、写真4、5に示すように、容器2の内部空間を上下に仕切る2枚の仕切りにより、三種類の食材は、それぞれ容器2の底部10、下部仕切り4及び上部仕切り3又は食品誘導部5の外側面の上に載置され、互いに隔てた状態で三層構造食品容器9に収容されるので、当該三種類の食材の様に水分量が異なる食材も隔てられ、食品の品質を維持でき、食材の変質を防止することもできた。また、三種類の食材の内、最も重いフルーツ14を底部10に収容することにより、重心が下り、容器全体の安定性が維持できた。更に、写真4、5が示すように、本試作品は透明性があるプラスチックシートを使用しているため、収容されている食材が視認でき、視認性が高いことにより消費者にアピールできるような食品用の容器として好適である。
【0045】
[喫食方法]
図4(A)、(B)に、図3に示した三層構造食品容器9に収容された三種類の食材を混ぜ合わせて食する方法を示す。以下にその手順を示す。
【0046】
図4(A)に示すように、先ず三層構造食品容器9を180°回転して、上下をひっくり返し、水平な場所へ置くと、フルーツ14は下部仕切り4へ、ヨーグルト13は上部仕切り3へ、フルーツグラノーラ12は食品誘導部を経由して落下し蓋1に溜まった。ただし、フルーツグラノーラ12を食品誘導部5の側面の上に収容した場合はそのまま落下し蓋1に溜る。
【0047】
三種類食材の動きが収まったところで、図4(B)に示すように、スティック7を上方に引き上げるため持ち手8を上に引き、カッター6が下部仕切り4に触れるところまで持ち手8を持ち上げると上部仕切り3が破れ、ヨーグルト13は逆円錐台形状になっている食品誘導部5の内側面に導かれ口部に向かって流れ、蓋1の天面(図4では底面)に溜まっているフルーツグラノーラ12の中央に注入された。ヨーグルト13が全て落ちた後、更に持ち手8を引いてカッター6を容器2の底部10まで引き上げると、下部仕切り4が破れ、フルーツ14が蓋1に溜まっているフルーツグラノーラ12とヨーグルト13に向かって中央に落下し、三種類の食材が合わさった。フルーツ14が全て落ちた後、カッター6と食品誘導部5を含む容器2を取り外し、蓋1を食器として前記三種類の食材が混ぜ合された食品を食すことができた。図14,15(写真6、7)は、三種類の食材が蓋1に落下して合わさった状態について、180°回転後の三層構造食品容器9の斜め上からの外観(斜視図、写真6)とカッター6と食品誘導部5及びスティック7を含む容器2を取り外した後の蓋1の斜め上からの外観(斜視図、写真7)を示す。
【0048】
図4(A)、(B)に示すように、三層構造食品容器9をひっくり返すこととスティック7の持ち手8を上方に引くことが、喫食方法の主な工程なので、従来の容器と比べると工程が省略でき、手間と時間を削減できた。また、図4(B)、写真6,7に示すように食材の混合も三層構造食品容器9内で終了し蓋1をそのまま食器として使用できるので、手や周辺を汚さず衛生面に優れる。更に、本三層構造食品容器9を廃棄する際、蓋1と容器2を含むそれ以外の2つにまとまるため、従来の容器と比べると、比較的ゴミ数を減らすことができた。
【0049】
なお、実施例1において三層構造食品容器9の試作品は、スティックが木製であり、それ以外は透明性を有するプラスチックシートを使用した。
【実施例0050】
本実施例では前記の実施態様とは異なり、破断手段に糸を用いた三層構造食品容器9Sについて説明する。
【0051】
図9(A)は破断手段に糸を用いた多層構造食品容器である三層構造食品容器9Sの斜視図である。破断手段である糸は容器2の二箇所に次のように配置される。即ち図9(A)に示すように、当該糸は各4本で、スティック7の連結部から90°の角度範囲で径方向に延在し、一方の端部が各仕切りの外周端部の対応する4箇所に取り付けられ、他の端部が上部仕切り3と下部仕切り4の各上側面の上方で軸部のスティック7に連結されている。なお、スティク7は前記実施態様とは異なり、下部仕切り4の上側面上方で上部仕切り3の下側と上部仕切り上側面でスティイク7の上端の二箇所に破断手段である糸を連結するための穴が穿設されている。また、食品誘導部5は前記実施態様とは異なり、容器2の開口部近傍で容器2に直接取り付けられている。即ち最上部の仕切り4の上側且つ当該糸が配置されている上方で、その底面開口部外周が容器2の内周面に取り付けられている。
【0052】
[三種類の食材の三層構造容器9Sへの収容方法]
先ず、図9に示す前記三層構造食品容器9Sの容器2に予め取り付けていた蓋1、上部仕切り3、下部仕切り4、食品誘導部5、仕切り破断手段である糸連結用の穴を先端と仕切り3,4の間の中程の二箇所に穿設したスティック7及び糸20を取り外し、容器2の底部10へ水分を含んでいる固形物14(ここではフルーツとする。)を敷き詰めた。次に、下部仕切り4を容器2に取り付け、スティック7を容器2の底部10と下部仕切り4の中央に垂直に貫通するように挿し、下部仕切り4を貫通したら持ち手8を取り付けた。このときスティック7の中程にある糸連結用穴が下部仕切りの上側面の上方に位置するようにスティック7を挿した。下部仕切りの90°の角度範囲にある4箇所の外周端部に複数(4本)の糸20の一方の端部を取り付けてから他の端部を容器2の内周面に仮止めした。その後、流動性がある固体あるいは液体13(ここではヨーグルトとする。)を下部仕切り4の上に載置した。この時、糸20の容器2の内周面に仮止めした他の端部を当該内周面から外しスティック7の中程中央に穿設した穴に通し、連結した。次に、上部仕切り3を容器2に取り付け、スティック7の先端を先端に穿設した糸連結用の穴が上部仕切り3の上側面の上方に位置するようにスティック7を挿し、下部仕切り4の場合と同様に、上部仕切り3の外周端部に4本の糸20の一方の端部を取り付けてから他の端部を容器内周面に仮止めした。その後、軽い乾物12(ここではフルーツグラノーラとする。)を上部仕切り3の上に載置した。この時、糸20の容器2の内周面に仮止めした他の端部を当該内周面から外し、スティック7の先端に穿設した穴に通し、連結した。その後食品誘導部5を備え、最後に蓋1を装着した。この結果、下部仕切り4と上部仕切り3の90°の角度範囲にある各4箇所の外周端部に一方の端部が取り付けられた糸20は、スティック7の中程、即ち上部仕切り3の下側で下部仕切り4の上側面の上方とスティック7の上端部の二箇所でそれぞれスティック7に連結され、前者が下部仕切り4用、後者が上部仕切り3用の破断手段として機能する。
【0053】
[喫食方法]
糸を用いる場合における本実施例の三層構造食品容器9Sの使用方法は、実施例1と同様であり、先ず三層構造食品容器9Sを180°回転して、上下をひっくり返し、水平な場所へ置くと、フルーツ14は下部仕切り4へ、ヨーグルト13は上部仕切り3へ、フルーツグラノーラ12は食品誘導部を経由して落下し蓋1に溜まった。ただし、フルーツグラノーラ12を食品誘導部5の側面の上に収容した場合はそのまま落下し蓋1に溜る。三種類食材の動きが収まったところで、スティック7を上方に引き上げるため持ち手8を上に引き、スティック7の中程と上端の二箇所に連結した糸により下部仕切り4と上部仕切り3を破断し、各仕切り上の食材、フルーツ14とヨーグルト13が食品誘導部経由で蓋1に落下し合わさった。
【0054】
糸により仕切りが破断する機構は、以下の通りである。まず、持ち手8を引っ張ると、上部仕切り3の上側(三層構造食品容器9Sの反転後は仕切り3の下側)で上部仕切り3の外周端部とスティック7の上端部に連結され、90°範囲で径方向に延在する4本の糸に容器2の底面方向に向かう力が働き、仕切り3を十字形状に破断し、上部仕切り3の上にあるヨーグルト13は上部仕切り3の上方で、逆円錐台形状になっている食品誘導部5の内側面に導かれ口部に向かって流れ、蓋1の天面(図4では底面)に溜まっているフルーツグラノーラ12の中央に注入された。スティック7の中程の糸連結部である中央に穿設した穴が下部仕切り4に達すると、下部仕切り4の上側(三層構造食品容器9Sの反転後は仕切り4の下側)で下部仕切り4の外周端部とスティック7の中程中央に連結され、90°範囲で径方向に延在する4本の糸に容器の底面に向かう力が働き、上部仕切り3と同様に、下部仕切り4を十字形状に破断し、下部仕切り4上のフルーツ14が蓋1に溜まっているフルーツグラノーラ12とヨーグルト13に向かって食品誘導部5経由で中央に落下し、三種類の食材が合わさった。ここで、図5(A)、(B)に示す上面にハーフカットを設けた仕切りを用いることにより、ハーフカット部17に沿って破断用の糸が仕切り上方のスティック7の糸連結部から仕切り径方向の外周端部に延在し、ハーフカット部17は厚さが仕切りの他の部分の半分程度になっているため、破断し易く、ハーフカット部を有する仕切りは破断容易性が向上する。
なお、図9(B)に、仕切り3、4が糸によりは破断された状態を示す。
【0055】
使用する糸としては、綿糸やナイロンなどが挙げられる。
【0056】
破断手段に糸を用いた本実施例の三層構造食品容器9Sは、実施例1にくらべ、材料コストを抑えられる点とゴミ数を減らせる点で有利である。
【実施例0057】
実施例1の三層構造食品容器9において、内容物の食品を喫食するためのカトラリー(ここではスプーン)を備えた実施例について説明する。
【0058】
図7(A)はスプーン付き多層(三層)構造食品容器の使用方法の説明図である。図7(A)に示すように、上端(図7(A)では下端)にカッター6と食品誘導部5を備えたスティック7の下端(図7(A)では上端)に持ち手8に代えてスプーンのつぼ16を持ち手8と同様の方法で着脱自在に取り付けるとスプーンがスティックと一体化した。ここで、スティック7のスプーンのつぼ16側の一部がスプーンの柄となるので、食材の収容時に大部分の柄の部分が容器2中で食材と接触し、これによる柄への食材の付着を避けるため、スティック7については、スティック7とつぼ16の接合部を除いたスティック7の容器2の内部側の部分に予めラップ用のストレッチフィルムのようなフィルム厚さ数十ミクロン程度の薄いプラスチックフィルム18で被覆した。なお、本実施例では通常の持ち手8に代えてスプーンのつぼ16を持ち手兼用で使用するため、持ち手8の場合に比べ底部10の下側空間11の大きさ、特に高さを大きくした。
【0059】
実施例2において、三種類の食材を収容する工程は、スティック7のフィルム被覆部が容器2の内部に入るようにスティック7を仕切り3、4と底部10に挿し、持ち手8をスプーンのつぼ16(持ち手兼用)に代えた以外は実施例1と同じであるので省略する。
三層構造食品容器9中の食品を食す際も、持ち手8をスプーンのつぼ16(持ち手兼用)に代えた以外は、蓋1中で三種類の食材が合わさるところまでは実施例1と同じ工程である。スティック7と一体化しているスプーンについては、図7(A)に示すように、スプーンのつぼ16によりスティック7を引いてカッター6を容器2の底部10まで引き上げると、全ての仕切りがカッター6により破断されフルーツ14、ヨーグルト13とフルーツグラノーラ12が蓋1中で合わさると同時に予めスティック7を覆っていた薄いプラスチックフィルム18が容器9の底部10に留まるので剥がれ、容器2の底部10から容器2の外に出ているスティックの一部であるスプーンの柄には当該プラスチックフィルム18や食材の付着がなく、スティック7と一体化しているスプーンの部分をスティック7から切り離すことにより喫食用のスプーンとなり、これを用いて食材の混合物を食すことができた。
【0060】
図7(B)は、蓋1中で三種類の食材が合わさった食品を食すため、スティック7からスプーンに切り離す工程を示す。図7(B)が示すように、食す際に三層構造食品容器9全体を180°回転させた状態では、持ち手兼用のスプーンのつぼ16と接合部を除いてスティック7は容器2中に有るが、薄いプラスチックフィルム18で被覆されているので、スティック7の表面には各食材と直接の接触はなかった。次にスティック7をつぼ16により上方に引き上げると当該フィルム18は容器2の底部10に留まり、スプーンのつぼ16を取り付けたスティック7の一部でスプーンの柄になる部分は容器2の底部10から外に出てフィルム18や食材の付着がない状態になった。最後に容器2の底部10から外に出ている切断箇所でスティック7を折り曲げて切断することにより、スプーンの部分をスティック7から切り離すことができ、スティック7の容器2の底部10側の端部がスプーンとなって、そのまま速やかに使用できた。したがって、事前にカトラリーを別途準備する必要がなく、簡易、迅速に内容物を食すことができた。
【0061】
本実施例において、スティック7の切断箇所での切断、切り離しをより容易にするため、材質としては前記硬質プラスチック成形品のようなプラスチック系の材料又は木製が好ましい。これに加えて、更に切断箇所を断面形状がV字形の溝を形成する等、スティック7の切断箇所の強度を下げてより切断し易くできればより好ましい。
【実施例0062】
図8(A)、(B)は、三層構造容器9の底部10の下側空間11内で、スティック7の下端部の持ち手8と底部10の下面との間にスプーン等のカトラリーを空間11内に収まるように着脱自在に取り付けた実施例である。
【0063】
図8(A)は前記三層構造容器9の縦断面図であり、図8(B)は前記三層構造容器9の容器2の底面図であり、図8(C)はカトラリーでフォークとスプーン兼用のフォークスプーン19を示す。図8(C)に示すように、フォークスプーン19は、柄の端部がスティック7に嵌合できるように円弧状の凹設部となっており、スティック7の外周と、当該凹設部の円弧が形状、サイズにおいて近似することにより、図8(A)、(B)に示すようにフォークスプーン19を着脱自在にスティックに取り付けることできた。なお、フォークスプーン19の素材は、例えば熱可塑性エラストマーのような弾性のある素材を使用することが好ましい。
【0064】
喫食の際には、予めスティック7の下端部の持ち手8と底部10の下面(底面)との間に着脱自在に取り付けたフォークスプーン19を取り外して使用できるので、事前にカトラリーを別途準備する必要がなく、簡易、迅速に内容物を食すことができた。
【0065】
前記カトラリー18は、図8(B)、(C)に示すフォークスプーン19に限定されず、フォーク、スプーン等のカトラリーであって、例えば、底部10の空間11に収まるのであれば、カトラリー単体又は複数種類のカトラリー一緒に取り付けてもよい。
【0066】
本発明を実施例により具体的に説明したが、本発明はそれらの実施例に限定されず、特許請求の範囲に含まれるいかなる形態も包含される。例えば、実施例2において、軸部にスティックを用い、破断手段として糸を用いたが、軸部のスティックの代わりに糸を用いてもよい。この場合、軸部としての糸は各仕切りの中央と底部を貫通する。底部を貫通して底部から突出した糸の端は持ち手として機能する。また、破断手段としての糸は、仕切りの中央で軸部の糸と連結されている。この形態によると、軸部と破断手段はすべて糸から構成することができ、単純な構造となり、また、環境にも優しい容器となる。上記実施例では食品誘導部を設けたが、省略してもよい。この場合、破断手段の径方向の寸法や材料を調整したりすることで、食品を中央に落下させるように工夫してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 蓋
2 容器
3 上部仕切り
4 下部仕切り
5 食品誘導部
6 カッター
7 スティック
8 持ち手
9 三層構造食品容器
9S 破断手段として糸を用いた三層構造食品容器
10 容器2の底部
11 底部10の下側の空間
12 フルーツグラノーラ
13 ヨーグルト
14 フルーツ
15 カッター6のV字形状刃先
16 持ち手兼用スプーンのつぼ
17 仕切りに設けたハーフカット部
18 スティック7被覆用プラスチックフィルム
19 カトラリー(フォークスプーン)
20 糸(仕切り破断用)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2021-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項2
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項2】
食材の収容に際しては、前記容器の底部に、収容する食材の内最も重い一の食材を収容し、その真上に一の前記仕切りを当該容器に取り付け、その上面に別の食材を載置して収容し、収容する食材数に合わせて仕切りの取り付けと食材の載置、収容を繰り返し、且つ前記破断手段を連結した前記軸部を前記容器に取り付け、最後に当該容器の上面に前記蓋を取り付けて複数の食材を収容し、食に際しては当該食材が収容された容器全体を180°回転させ、当該軸部を上へ引っ張ることで当該破断手段により当該仕切りが破れ、当該底部及び各仕切りに収容した複数の食材が当該容器の開口部方向に移動し、前記蓋に落下し合わさることを特徴とする請求項1に記載の多層構造食品容器の使用方法
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
前記軸部はスティックであり、前記破断手段は前記スティックから径方向に延在するカッターであることを特徴とする請求項1_に記載の多層構造食品容器。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
前記軸部はスティックであり、前記破断手段は前記スティックに連結され且つ前記仕切りの上側に所定角度離間して径方向に延在する複数の糸であることを特徴とする求項1_に記載の多層構造食品容器。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
さらに、前記容器内の最上方の仕切りの上側において前記破断手段の上側に取り付けられた食品誘導部を備えることを特徴とする請求項1、3又は4のいずれか一項に記載の多層構造食品容器。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記スティックは、前記容器の底部側の端部に持ち手を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の多層構造食品容器。
【手続補正6】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項7
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項7】
前記カッターは、十字カッターであることを特徴とする請求項3_に記載の多層構造食品容器。
【手続補正7】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項8
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項8】
前記カッターの刃の前記容器の内壁方向の先端は、前記仕切りの表面に対して垂直な方向に刺さる先細形状であることを特徴とする請求項7に記載の多層構造食品容器。
【手続補正8】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記仕切りは、破断手段が当該仕切りを破断する破断線に沿うように当該仕切り表面にハーフカット部を備えることを特徴とする請求項1、3~8に記載の多層構造食品容器。
【手続補正9】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項10
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項10】
前記仕切りは、その表面にロータス効果を有する撥水膜を備えることを特徴とする請求項1、3~9のいずれか1項に記載の多層構造食品容器。
【手続補正10】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項11
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項11】
前記スティックの前記底部側の端部は、当該スティックより切り離すことによりスプーンになり、前記持ち手がスプーンのつぼになることを特徴とする請求項6_に記載の多層構造食品容器。
【手続補正11】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項12】
カトラリーが、前記容器の底部の下側の空間に収まるように、前記スティックに着脱自在に取り付けられたことを特徴とする請求項3、4又は6のいずれか一項に記載の多層構造食品容器。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、本発明は、前記多層構造食品容器への食材の収容に際しては、前記容器の底部に、収容する食材の内最も重い一の食材を収容し、その真上に一の前記仕切りを当該容器に取り付け、その上面に別の食材を載置して収容し、収容する食材数に合わせて仕切りの取り付けと食材の載置、収容を繰り返し且つ前記破断手段を連結した前記軸部を前記容器に取り付け、最後に当該容器の上面に前記蓋を取り付けて複数の食材を収容し、食に際しては当該食材が収容された容器全体を180°回転させ、当該軸部を上へ引っ張ることで当該カッターにより当該仕切りが破れ、当該底部及び各仕切りに収容した複数の食材が当該容器の開口部方向に移動し、当該食品誘導部に入り誘導されて当該蓋の中央に落下し合わさることを特徴とする多層構造食品容器の使用方法である。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、本発明は、前記軸部はスティックであり、前記破断手段は前記スティックに連結され且つ当該前記仕切りの上側面に所定角度離間して径方向に延在する複数の糸であることを特徴とする多層構造食品容器である。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
図中、1は蓋、2は容器、3は容器2の内部空間を上下に仕切るための上部仕切り、4は同じく下部仕切り、5は食品誘導部、6は破断手段であるカッター、7は軸部であるスティック、8はスティックの持ち手、9は三層構造食品容器、10は容器2の底部、11は底部10の下側の空間即ち底部10の下面と容器2の側壁内周と容器2の接地面(容器2の環状接地部が形成する面)で囲まれた空間をそれぞれ示す。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
また、カッター6の形状・構造は、図1、2に示す十字カッターに限定されず、円弧の弦の長さが容器2の内径にほぼ等しい円弧状の一枚刃のカッターや、図6に示すように、十字カッターの先端が仕切り3,4の表面に垂直に刺さるように先細形状刃先15になっているカッターなどが挙げられる。変形なく仕切り3、4を破断でき、食材の移動の妨げにならない形状であれば限定はない。
なお、図6に示す十字カッターであれば、仕切りの表面(外周端部)に最初に入るカッター6の刃先15が鋭利な形状になっていて、刃先15が仕切り表面に刺さって破断を開始するので、カッター6全体も仕切り表面に入りやすくなる。したがって、カッター6による仕切り3、4の破断容易性を更に向上させることができる。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
1 蓋
2 容器
3 上部仕切り
4 下部仕切り
5 食品誘導部
6 カッター
7 スティック
8 持ち手
9 三層構造食品容器
10 容器2の底部
11 底部10の下側の空間
12 フルーツグラノーラ
13 ヨーグルト
14 フルーツ
15 カッター6の先細形状刃先
16 持ち手兼用スプーンのつぼ
17 仕切りに設けたハーフカット部
18 スティック7被覆用プラスチックフィルム
19 カトラリー(フォークスプーン)
20 糸(仕切り破断用)
【手続補正書】
【提出日】2021-12-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
前記軸部はスティックであり、前記破断手段は_所定角度離間して径方向に延在する複数の糸であることを特徴とする求項1に記載の多層構造食品容器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記仕切りは、破断手段が当該仕切りを破断する破断線に沿うように当該仕切り表面にハーフカット部を備えることを特徴とする請求項1、3~8のいずれか一項に記載の多層構造食品容器。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項12】
前記容器の底部の下側に空間を有し、カトラリーが、前記_空間に収まるように、前記スティックに着脱自在に取り付けられたことを特徴とする請求項3、4又は6のいずれか一項に記載の多層構造食品容器。