(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130286
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】菌叢を改善するための組成物、およびそれを用いた菌叢を改善するための方法、並びにその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20220830BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220830BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20220830BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20220830BHJP
A61K 31/715 20060101ALI20220830BHJP
A61K 31/733 20060101ALI20220830BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
C12Q1/02
A23L33/135
A61K35/747
A61K31/715
A61K31/733
A61P1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197847
(22)【出願日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2021029165
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(71)【出願人】
【識別番号】517245981
【氏名又は名称】株式会社バイオパレット
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 建吾
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昭彦
【テーマコード(参考)】
4B018
4B063
4B065
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB02
4B018LB03
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4B018LB06
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(57)【要約】
【課題】 菌叢を改善するための組成物、及びその方法を提供すること。
【解決手段】 本開示は、少なくともLactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか1つを含む、菌叢を改善するための組成物を提供する。また本開示は、改善された菌叢を生産するための方法であって、少なくともLactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか1つを含む培養液を提供する工程と、該培養液において菌叢を培養させる工程とを含む、方法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともLactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか1つを含む、菌叢を改善するための組成物。
【請求項2】
Lactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか2つ、またはすべてを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
(1)Lactobacillus属細菌もしくはその抽出物およびフコース含有化合物、(2)Lactobacillus属細菌もしくはその抽出物およびフルクタン含有化合物、(3)フコース含有化合物およびフルクタン含有化合物、または(4)Lactobacillus属細菌もしくはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記Lactobacillus属細菌がLactobacillus paracasei(Lacticaseibacillus paracasei)、およびLactobacillus fermentum(Limosilactobacillus fermentum)からなる群より選択される少なくとも1種に属する細菌を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記フコース含有化合物がフコイダンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記フルクタン含有化合物が麦葉抽出物を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記菌叢における短鎖脂肪酸組成を改善するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記菌叢における酪酸生産量を増加させるための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記菌叢におけるプロピオン酸生産量を増加させるための、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記菌叢における酢酸生産量を低下させるための、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
菌叢指標菌の比率を改善するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させるための、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
飲食品、食品添加物、サプリメント、医薬部外品、または医薬品である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物と、菌叢とを含む、剤。
【請求項15】
飲食品、食品添加物、サプリメント、医薬部外品、または医薬品である、請求項14に記載の剤。
【請求項16】
前記菌叢は糞便を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物、または請求項14または15に記載の剤。
【請求項17】
凍結乾燥されたものである、請求項1~13または16のいずれか一項に記載の組成物、または請求項14~16のいずれか一項に記載の剤。
【請求項18】
請求項1~13、16または17のいずれか一項に記載の組成物、または請求項14~17のいずれか一項に記載の剤を経口摂取させる工程を有する、菌叢を改善するための方法。
【請求項19】
菌叢における短鎖脂肪酸組成を改善するため、菌叢における酪酸生産量を増加させるため、菌叢におけるプロピオン酸生産量を増加させるため、菌叢における酢酸生産量を低下させるため、菌叢指標菌の比率を改善するため、及び/または菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させるための、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
改善された菌叢を生産するための方法であって、
少なくともLactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか1つを含む培養液を提供する工程と、
該培養液において菌叢を培養させる工程と
を含む、方法。
【請求項21】
前記方法はインビトロで実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は生体内で実施される、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、
(1)プロピオン酸生成量を増加させる、
(2)酪酸生成量を増加させる、および
(3)酢酸生成量を減少させる
のうちの少なくとも1つの特徴を有する、菌株。
【請求項24】
前記菌株は、培養条件Aで培養した場合に
(1)プロピオン酸生成量を少なくとも約1.1倍に増加させる、
(2)酪酸生成量を少なくとも約1.1倍に増加させる、および
(3)酢酸生成量を多くとも約95%以下に減少させる
の少なくとも1つの特徴を有する、請求項23に記載の菌株。
【請求項25】
Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させる、菌株。
【請求項26】
Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、菌叢におけるRuminococcus属細菌を少なくとも約1.1倍に増殖させる、菌株。
【請求項27】
前記菌株はLactobacillus paracasei(Lacticaseibacillus paracasei)、およびLactobacillus fermentum(Limosilactobacillus fermentum)からなる群より選択される少なくとも1種に属する、請求項23~26のいずれか一項に記載の菌株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、菌叢を改善するための組成物、それを用いた菌叢を改善するための方法、改善された菌叢を生産するための方法、並びに飲食品、医薬部外品、又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトや哺乳動物の腸内には、多種多様の細菌や真菌等の菌が常在しており、これらの菌が集まって腸内菌叢(腸内フローラ)を形成している。近年では、腸内菌叢は、ヒトにおいては1000種ともされる多種類の菌群がバランスを保った状態で多様な機能を果たしている複合的な生態系であることがわかっている。すなわち、菌叢が健全な多様性を有していることによって、宿主であるヒトや哺乳動物に対して健全な影響を及ぼしていると考えられている。そのため、菌叢を改善し、多様性を維持、向上させるための組成物が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明者らはこれまでに、ヒト糞便を植菌源として培養系中にヒト腸内細菌種を保持する装置を開発してきた。この開発の過程において、特定の細菌および/または化合物が菌叢の改善に寄与していることを見出した。本開示は、その特定の細菌および/または化合物を利用し、菌叢を改善するための組成物、及びその方法を提供する。
【0004】
したがって、本開示は以下を提供する。
(項目1) 少なくともLactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか1つを含む、菌叢を改善するための組成物。
(項目2) Lactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか2つ、またはすべてを含む、上記項目に記載の組成物。
(項目3) (1)Lactobacillus属細菌もしくはその抽出物およびフコース含有化合物、(2)Lactobacillus属細菌もしくはその抽出物およびフルクタン含有化合物、(3)フコース含有化合物およびフルクタン含有化合物、または(4)Lactobacillus属細菌もしくはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物を含む、上記項目に記載の組成物。
(項目4) 前記Lactobacillus属細菌がLactobacillus paracasei(Lacticaseibacillus paracasei)、およびLactobacillus fermentum(Limosilactobacillus fermentum)からなる群より選択される少なくとも1種に属する細菌を含む、上記項目に記載の組成物。
(項目5) 前記フコース含有化合物がフコイダンを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6) 前記フルクタン含有化合物が麦葉抽出物を含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7) 前記菌叢における短鎖脂肪酸組成を改善するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8) 前記菌叢における酪酸生産量を増加させるための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9) 前記菌叢におけるプロピオン酸生産量を増加させるための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10) 前記菌叢における酢酸生産量を低下させるための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目11) 菌叢指標菌の比率を改善するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12) 前記菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させるための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目13) 飲食品、食品添加物、サプリメント、医薬部外品、または医薬品である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目14) 上記項目のいずれか一項に記載の組成物と、菌叢とを含む、剤。
(項目15) 飲食品、食品添加物、サプリメント、医薬部外品、または医薬品である、上記項目に記載の剤。
(項目16) 前記菌叢は糞便を含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物、または上記項目のいずれか一項に記載の剤。
(項目17) 凍結乾燥されたものである、上記項目のいずれか一項に記載の組成物、または上記項目のいずれか一項に記載の剤。
(項目A1) 上記項目のいずれか一項に記載の組成物を経口摂取させる工程を有する、菌叢を改善するための方法。
(項目A2) 菌叢における短鎖脂肪酸組成を改善するため、菌叢における酪酸生産量を増加させるため、菌叢におけるプロピオン酸生産量を増加させるため、菌叢における酢酸生産量を低下させるため、菌叢指標菌の比率を改善するため、及び/または菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させるための、上記項目に記載の方法。
(項目B1) 改善された菌叢を生産するための方法であって、
少なくともLactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか1つを含む培養液を提供する工程と、
該培養液において菌叢を培養させる工程と
を含む、方法。
(項目B2) 前記方法はインビトロで実施される、上記項目に記載の方法。
(項目B3) 前記方法は生体内で実施される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。(項目C1) Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、
(1)プロピオン酸生成量を増加させる、
(2)酪酸生成量を増加させる、および
(3)酢酸生成量を減少させる
のうちの少なくとも1つの特徴を有する、菌株。
(項目C1a) 培養条件Aが、(1)KH2PO4 2.67g/L、MgSO4・7H2O 1.33g/L、NaCl 0.27g/L、MnSO4・5H2O 0.10g/L、CaCl2・5H2O 0.10g/Lを加えたGAM培地で約16時間行う前培養と、(2)約115℃にて約15分間オートクレーブしたGAM培地(pHを約6.5に調整)に、添加培地濃度を約40g/Lとし、培養前に約37℃にて約1時間、約0.2μm PTFE膜を通して濾過滅菌した窒素および二酸化炭素混合ガス(N2:CO2=80:20)に曝気(約15mL/分)した培地に、ヒト健常被験体の糞便試料(綿棒で取得したものであり、綿棒の先端に付着した量、おおよそ0.1g)を約1%のL-アスコルビン酸を添加した約0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5、0.1M NaH2PO4および約0.1M Na2HPO4の61.65:28.35混合物からなる)約2mL中に懸濁して調製した懸濁物を約100μL接種して、嫌気培養を行う本培養とを含む、上記項目に記載の菌株。
(項目C2) 前記菌株は、培養条件Aで培養した場合に
(1)プロピオン酸生成量を少なくとも約1.1倍に増加させる、
(2)酪酸生成量を少なくとも約1.1倍に増加させる、および
(3)酢酸生成量を多くとも約95%以下に減少させる
の少なくとも1つの特徴を有する、上記項目に記載の菌株。
(項目C2a) 培養条件Aが上記項目と同一である、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目C3) Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させる、菌株。
(項目C3a) 培養条件Aが上記項目と同一である、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目C4) Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、菌叢におけるRuminococcus属細菌を少なくとも約1.1倍に増殖させる、菌株。
(項目C4a) 培養条件Aが上記項目と同一である、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目C5) 前記菌株はLactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus casei、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus acetotolerans、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus agilis、Lactobacillus alimentarius、Lactobacillus amylovorus、Lactobacillusanimalis、Lactobacilus antrumi、Lactobacillus avarius、Lactobacillus bifermentans、Lactobacillus brevis、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus collinoides、Lactobacillus confusus、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus fructosus、Lactobacillus gallinarum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus graminis、Lactobacillus halotolerans、Lactobacillus hamsteri、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus homohiochii、Lactobacillus intestinalis、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus kandleri、Lactobacillus kefir、Lactobacillus kefiranofaciens、Lactobacillus lactis、Lactobacillus leichmannii、Lactobacillus malefermentans、Lactobacillus mali、Lactobacillus minor、Lactobacillus mucosae、Lactobacillus murinus、Lactobacillus oris、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus pontis、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus sakei、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus sanfranciscensis、Lactobacillus suebicus、Lactobacillus vaccinostercus、Lactobacillus vaginalis、Lactobacillus viridescens、Lactobacillus acidifarinae、Lactobacillus acidipiscis、Lactobacillus algidus、Lactobacillus amylolyticus、Lactobacillus amylophilus、Lactobacillus amylotrophicus、Lactobacillus antri、Lactobacillus apodemi、Lactobacillus aviarius、Lactobacillus camelliae、Lactobacillus catenaformis、Lactobacillus ceti、Lactobacillus coleohominis、Lactobacillus composti、Lactobacillus concavus、Lactobacillus coryniformis、Lactobacillus crustorum、Lactobacillus delbrueckiisubsp.bulgaricus、Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii、 Lactobacillus delbrueckiisubsp.lactis、Lactobacillus dextrinicus、Lactobacillus diolivorans、Lactobacillus equi、Lactobacillus equigenerosi、Lactobacillus farraginis、Lactobacillus farciminis、Lactobacillus fornicalis、Lactobacillus fructivorans、Lactobacillus frumenti、Lactobacillus fuchuensis、Lactobacillus gastricus、Lactobacillus ghanensis、Lactobacillus hammesii、Lactobacillus harbinensis、Lactobacillus hayakitensis、Lactobacillus ingluviei、Lactobacillus kalixensis、Lactobacillus kefiri、Lactobacillus kimchii、Lactobacillus kitasatonis、Lactobacillus kunkeei、Lactobacillus lindneri、Lactobacillus manihotivorans、Lactobacillus mindensis、Lactobacillus nagelii、Lactobacillus namurensis、Lactobacillus nantensis、Lactobacillus oligofermentans、Lactobacillus panis、Lactobacillus pantheris、Lactobacillus parabrevis、Lactobacillus parabuchneri、Lactobacillus paracollinoides、Lactobacillus parafarraginis、Lactobacillus parakefiri、Lactobacillus paralimentarius、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus perolens、Lactobacillus protectus、Lactobacillus psittaci、Lactobacillus rennini、Lactobacillus rimae、Lactobacillus rogosae、Lactobacillus rossiae、Lactobacillus ruminis、Lactobacillus saerimneri、Lactobacillus satsumensis、Lactobacillus secaliphilus、Lactobacillus sharpeae、Lactobacillus siliginis、Lactobacillus spicheri、Lactobacillus thailandensis、Lactobacillus ultunensis、Lactobacillus versmoldensis、Lactobacillus vini、Lactobacillus vitulinus、Lactobacillus zeae、またはLactobacillus zymaeからなる群より選択される少なくとも1種に属する、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目C5a) 前記菌株は、Lacticaseibacillus baoqingensis、Lacticaseibacillus brantae、Lacticaseibacillus camelliae、Lacticaseibacillus casei、Lacticaseibacillus zeae、Lacticaseibacillus chiayiensis、Lacticaseibacillus hulanensis、Lacticaseibacillus manihotivorans、Lacticaseibacillus nasuensis、Lacticaseibacillus pantheris、Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei、Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei、Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei、Lacticaseibacillus paracasei subsp. tolerans、Lacticaseibacillus paracasei subsp. tolerans、Lacticaseibacillus porcinae、Lacticaseibacillus rhamnosus、Lacticaseibacillus rhamnosus、Lacticaseibacillus saniviri、Lacticaseibacillus sharpeae、Lacticaseibacillus songhuajiangensis、Lacticaseibacillus thailandensis、Lacticaseibacillus daqingensis、Lacticaseibacillus hegangensis、Lacticaseibacillus suibinensis、Lacticaseibacillus yichunensis、Lacticaseibacillus jixianensis、またはLacticaseibacillus zhaodongensisからなる群より選択される少なくとも1種に属する、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目C5b) 前記菌株は、Limosilactobacillus alvi、Limosilactobacillus antri、Limosilactobacillus caviae、Limosilactobacillus coleohominis、Limosilactobacillus equigenerosi、Limosilactobacillus fermentum、Limosilactobacillus frumenti、Limosilactobacillus gastricus、Limosilactobacillus gorillae、Limosilactobacillus ingluviei、Limosilactobacillus mucosae、Limosilactobacillus oris、Limosilactobacillus panis、Limosilactobacillus pontis、Limosilactobacillus reuteri、Limosilactobacillus secaliphilus、またはLimosilactobacillus vaginalisからなる群より選択される少なくとも1種に属する、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目C5c) 前記菌株は、Lactiplantibacillus daoliensis、Lactiplantibacillus daowaiensis、Lactiplantibacillus dongliensis、Lactiplantibacillus fabifermentans、Lactiplantibacillus herbarum、Lactiplantibacillus modestisalitolerans、Lactiplantibacillus mudanjiangensis、Lactiplantibacillus nangangensis、Lactiplantibacillus paraplantarum、Lactiplantibacillus pentosus、Lactiplantibacillus pingfangensis、Lactiplantibacillus plajomi、Lactiplantibacillus argentoratensis、Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum、Lactiplantibacillus songbeiensis、またはLactiplantibacillus xiangfangensisからなる群より選択される少なくとも1種に属する、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目C6) 前記菌株はLactobacillus paracasei(Lacticaseibacillus paracasei)、およびLactobacillus fermentum(Limosilactobacillus fermentum)からなる群より選択される少なくとも1種に属する、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目D1)
Lactobacillus属細菌に属する菌株をスクリーニングする方法であって、該方法は
(A)Lactobacillus属細菌を含むかまたは含むと推定される試料を培養条件Xで培養する工程と、
(B)(A)で得られた培養物または該培養物から必要に応じて単離した菌株を培養条件Aで培養した場合に、(1)プロピオン酸生成量を増加させる、(2)酪酸生成量を増加させる、および(3)酢酸生成量を減少させる、のうちの少なくとも1つの特徴を有する、菌株を同定する工程と、
(C)必要に応じて同定された菌株を単離する工程
を包含する、方法。
(項目D1a) 培養条件Aが上記項目と同一である、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目D1b) 培養条件Xが、試料100μLを、大麦若葉エキスを20g/LおよびL-システイン塩酸塩一水和物0.5g/Lを含む培地(25mL)中で37℃で7日間培養し、これを繰り返して、培養液を培地にて107倍希釈し、希釈液1mLを25mLの寒天培地に混釈して、N2:H2:CO2=80:10:10ガス下の37℃でコロニーを形成させ、単一のコロニーをチップで吸い上げ、Reinforced Clostridial培地で培養して菌株を単離する条件をを含む、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目D2)
Lactobacillus属細菌に属する菌株をスクリーニングする方法であって、該方法は
(A)Lactobacillus属細菌を含むかまたは含むと推定される試料を培養条件Xで培養する工程と、
(B)(A)で得られた培養物または該培養物から必要に応じて単離した菌株を培養条件Aで培養した場合に菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させる、菌株を同定する工程と、
(C)必要に応じて同定された菌株を単離する工程
を包含する、方法。
(項目D2a) 培養条件Aが上記項目と同一である、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
(項目D2b) 培養条件Xが上記項目と同一である、上記項目のいずれか一項に記載の菌株。
【0005】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。なお、本開示のさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【0006】
なお、上記した以外の本開示の特徴及び顕著な作用・効果は、以下の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【発明の効果】
【0007】
本開示の方法により、菌叢を改善し、その多様性を維持または向上する効果に優れた組成物を提供することができる。また本開示の菌叢を改善するための組成物を用いることで、改善された菌叢を生産することも可能となり、下痢や便秘、肥満、感染症、免疫疾患、がんなどの種々の健康障害に対する医薬の開発が可能であるため、医療分野への応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る各菌叢培養液の短鎖脂肪酸(酪酸・プロピオン酸・酢酸)生成量を示す。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る各菌叢培養液のOTU(Operational Taxonomic Unit)およびシャノン・ウィーナー指数の結果を示す。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る各菌叢培養液の各種細菌の相対存在量を示す。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る各菌叢培養液の短鎖脂肪酸(酪酸・プロピオン酸・酢酸)生成量を示す(Lacto 3種の単独添加)。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態に係る各菌叢培養液の各種細菌の相対存在量を示す(Lacto 3種の単独添加)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0010】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0011】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0012】
本明細書において、「菌叢」とは、細菌の集合を意味し、腸内細菌叢に限らず、例えば、皮膚上や口腔内などの細菌叢、人工的に生産した複数の細菌を混合した製剤等も含む。したがって、菌叢とは、ヒトや動物の腸内、皮膚、口腔内などで共存する多種多様な細菌や真菌等の菌の集まりやこれを人工的に生産したものを意味する。本明細書において、「菌叢の改善」とは、菌叢を構成する細菌や真菌等の菌の種類が多く、それらのバランスが良好になることを含む。好ましい実施形態の一つでは、菌叢は腸内細菌叢を指すことがあるが、本開示はこれに限定されない。
【0013】
本明細書において、「菌叢指標菌」とは、その菌の存在自体またはその存在量が、菌叢における細菌や真菌等の菌の多様性やバランスを指し示す指標となり得る菌をいう。例えば、酪酸やプロピオン酸を生産するRuminococcus属細菌やCoprococcus属細菌は、その存在量が増加することにより、短鎖脂肪酸である酪酸やプロピオン酸の生産量も増加し、菌叢の多様性やバランスが改善するため、菌叢指標菌となり得る。本明細書において、「菌叢指標菌の比率の改善」とは、菌叢における当該指標菌の存在比率が、菌叢を改善できるような比率に変化することをいう。例えば、菌叢におけるRuminococcus属細菌および/またはCoprococcus属細菌を増殖させるような変化は、菌叢における短鎖脂肪酸のバランスが改善するため、菌叢指標菌の比率の改善といえる。
【0014】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0015】
本開示の一局面において、少なくともLactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか1つを含む、菌叢を改善するための組成物が提供される。本開示の一実施形態において、本開示の組成物は、Lactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちのいずれか2つ、またはすべてを含むことができる。したがって、本開示の一実施形態において、本開示の組成物は、(1)Lactobacillus属細菌もしくはその抽出物およびフコース含有化合物、(2)Lactobacillus属細菌もしくはその抽出物およびフルクタン含有化合物、(3)フコース含有化合物およびフルクタン含有化合物、または(4)Lactobacillus属細菌もしくはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物を含むことができ。また他の実施形態において、本開示の組成物は、Lactobacillus属細菌に属する細菌のうち、いずれか2つ、もしくは3つ、またはそれらの抽出物を含むこともできる。したがって、本開示の一実施形態において、本開示の組成物は、Limosilactobacillus fermentum KS-001株(NITE BP-03546)、Limosilactobacillus fermentum KS-002株(NITE BP-03547)およびLacticaseibacillus paracasei KS-003株(NITE BP-03548)のうち、いずれか2つ、もしくは3つ、またはそれらの抽出物を含むこともできる。本開示の組成物は、菌叢を改善し、その多様性を維持または向上させるものとして有用である。
【0016】
一実施形態において、本開示の組成物は、菌叢を改善するために用いることができ、Lactobacillus属細菌またはその抽出物、フコース含有化合物、およびフルクタン含有化合物のうちの少なくとも1つを含むことができる。この3つの成分はいずれか1つだけを用いた場合でも菌叢を改善することができ、また3つ組み合わせた場合にはさらにその効果を向上させることができる。
【0017】
本開示の組成物を用いることによって改善する菌叢を構成する細菌の種類としては、例えば、短鎖脂肪酸組成を改善する細菌を含むことができる。短鎖脂肪酸は腸管上皮細胞の増殖や粘液分泌機能、水やミネラルの吸収のためのエネルギーとして利用される。また短鎖脂肪酸は、炎症性サイトカインの抑制作用などによる抗炎症作用、抗潰瘍作用を有することが知られている。一実施形態において、本開示の組成物は短鎖脂肪酸組成を改善するためのものとすることができ、例えば、菌叢における酪酸やプロピオン酸の生産量を増加させ、および/または酢酸の生産量を低下させることができる。酪酸やプロピオン酸は上皮細胞のエネルギーとして利用され、制御性T細胞の誘導、NF-κBの抑制から抗炎症作用を発揮することが知られている。一実施形態において、菌叢中にすでにプロピオン酸が飽和して存在している場合には、本開示の組成物はプロピオン酸生産量を増加させることはないが、菌叢中におけるプロピオン酸が飽和していない、または存在量が少ない場合には、本開示の組成物はプロピオン酸の生産量を増加させることができる。
【0018】
本開示の一実施形態において、本開示の組成物は、菌叢指標菌の比率を改善することで、短鎖脂肪酸組成を改善することもできる。このような菌叢指標菌としては、Ruminococcus属細菌、Coprococcus属細菌などが挙げられ、本明細書では、通常特に他の定義で用いない限り、菌叢指標菌は、Ruminococcus属細菌およびCoprococcus属細菌からなる群より選択される少なくとも1つ、または2つからなる。Ruminococcus属細菌は酪酸やプロピオン酸を生産するため、このRuminococcus属細菌が菌叢において増殖することで、酪酸やプロピオン酸の生産量が増加し、短鎖脂肪酸組成を改善することができる。したがって、一実施形態において、本開示の組成物は、菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させるためのものとすることができる。
【0019】
<Lactobacillus属細菌組成物>
別の局面において、本開示は、Lactobacillus属細菌またはその抽出物を含む、菌叢を改善するための組成物が提供される。本開示の組成物は、菌叢を改善し、その多様性を維持または向上させるものとして有用である。
【0020】
一実施形態において、本開示の組成物に含まれるLactobacillus属細菌またはその抽出物に使用されるLactobacillus属細菌は、例えば、KH2PO4 2.67g/L、MgSO4・7H2O 1.33g/L、NaCl 0.27g/L、MnSO4・5H2O 0.10g/L、CaCl2・5H2O 0.10g/Lを加えたGAM培地で前培養して、糞便試料とともに培養した場合に、菌叢におけるプロピオン酸および/または酪酸を生産する細菌を増殖させるものである。他の実施形態において、Lactobacillus属細菌としては、これに限られるものではないが、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus casei、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus acetotolerans、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus agilis、Lactobacillus alimentarius、Lactobacillus amylovorus、Lactobacillusanimalis、Lactobacilus antrumi、Lactobacillus avarius、Lactobacillus bifermentans、Lactobacillus brevis、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus collinoides、Lactobacillus confusus、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus fructosus、Lactobacillus gallinarum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus graminis、Lactobacillus halotolerans、Lactobacillus hamsteri、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus homohiochii、Lactobacillus intestinalis、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus kandleri、Lactobacillus kefir、Lactobacillus kefiranofaciens、Lactobacillus lactis、Lactobacillus leichmannii、Lactobacillus malefermentans、Lactobacillus mali、Lactobacillus minor、Lactobacillus mucosae、Lactobacillus murinus、Lactobacillus oris、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus pontis、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus sakei、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus sanfranciscensis、Lactobacillus suebicus、Lactobacillus vaccinostercus、Lactobacillus vaginalis、Lactobacillus viridescens、Lactobacillus acidifarinae、Lactobacillus acidipiscis、Lactobacillus algidus、L.amylolyticus、Lactobacillus amylophilus、Lactobacillus amylotrophicus、Lactobacillus antri、Lactobacillus apodemi、Lactobacillus aviarius、Lactobacillus camelliae、Lactobacillus catenaformis、Lactobacillus ceti、Lactobacillus coleohominis、Lactobacillus composti、Lactobacillus concavus、Lactobacillus coryniformis、Lactobacillus crustorum、Lactobacillus delbrueckiisubsp.bulgaricus、Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii、 Lactobacillus delbrueckiisubsp.lactis、Lactobacillus dextrinicus、Lactobacillus diolivorans、Lactobacillus equi、Lactobacillus equigenerosi、Lactobacillus farraginis、Lactobacillus farciminis、Lactobacillus fornicalis、Lactobacillus fructivorans、Lactobacillus frumenti、Lactobacillus fuchuensis、Lactobacillus gastricus、Lactobacillus ghanensis、Lactobacillus hammesii、Lactobacillus harbinensis、Lactobacillus hayakitensis、Lactobacillus ingluviei、Lactobacillus kalixensis、Lactobacillus kefiri、Lactobacillus kimchii、Lactobacillus kitasatonis、Lactobacillus kunkeei、Lactobacillus lindneri、Lactobacillus manihotivorans、Lactobacillus mindensis、Lactobacillus nagelii、Lactobacillus namurensis、Lactobacillus nantensis、Lactobacillus oligofermentans、Lactobacillus panis、Lactobacillus pantheris、Lactobacillus parabrevis、Lactobacillus parabuchneri、Lactobacillus paracollinoides、Lactobacillus parafarraginis、Lactobacillus parakefiri、Lactobacillus paralimentarius、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus perolens、Lactobacillus protectus、Lactobacillus psittaci、Lactobacillus rennini、Lactobacillus rimae、Lactobacillus rogosae、Lactobacillus rossiae、Lactobacillus ruminis、Lactobacillus saerimneri、Lactobacillus satsumensis、Lactobacillus secaliphilus、Lactobacillus sharpeae、Lactobacillus siliginis、Lactobacillus spicheri、Lactobacillus thailandensis、Lactobacillus ultunensis、Lactobacillus versmoldensis、Lactobacillus vini、Lactobacillus vitulinus、Lactobacillus zeae、またはLactobacillus zymaeなどを含むことができる。本明細書において、「Lactobacillus属細菌」という場合は、Lactobacillus属の再分類に伴う学名変更による新分類および/または旧分類においてLactobacillus属に分類されていた、あるいは分類されている細菌を包含する。したがって、分類基準が改訂され、Lactobacillus属に分類されていた細菌が、他の属に分類されることとなっても、本明細書における「Lactobacillus属細菌」には、そのような細菌も包含され得る。Lactobacillus属は260を超える種が存在する非常に大きな属であったものの、近縁な関係にある他の属種と併せて、ゲノム解析に基づく分類学的な検証がなされた結果、23の新しい属が提案され、Lactobacillus属は既存の属名であるLactobacillus属およびParalactobacillus属を含む25属に再編成されている(ZhengJ et al., Int J Syst Evol Microbiol (2020) 70, 2782-2858、Liu DD & Gu CT,Int J Syst Evol Microbiol (2020) 70, 6414-6417.)。したがって、Lactobacillus paracaseiはLacticaseibacillus paracaseiを、Lactobacillus fermentumはLimosilactobacillus fermentumをそれぞれ指し、本明細書においては相互互換に使用することができる。
【0021】
またLactobacillus属の再分類に伴う学名変更によってLactobacillus属であったものが変更された新しい属名としては、Acetilactobacillus属、Agrilactobacillus属、Amylolactobacillus属、Apilactobacillus属、Bombilactobacillus属、Companilactobacillus属、Dellaglioa属、Fructilactobacillus属、Furfurilactobacillus属、Holzapfelia属、Lacticaseibacillus属、Lactiplantibacillus属、Lapidilactobacillus属、Latilactobacillus属、Lentilactobacillus属、Levilactobacillus属、Ligilactobacillus属、Limosilactobacillus属、Liquorilactobacillus属、Loigolactobacillus属、Paralactobacillus属、Paucilactobacillus属、Schleiferilactobacillus属、Secundilactobacillus属などが挙げられる。そのため、これらの属に分類される細菌であっても、再分類前にLactobacillus属に分類されていた細菌については、本明細書における「Lactobacillus属細菌」に包含され得る。
【0022】
したがって、本開示の一実施形態において、Lactobacillus属細菌としては、好ましくは、上記のZheng J et al.およびLiu DD & Gu CTによる新分類でLacticaseibacillus属、Limosilactobacillus属、またはLactiplantibacillus属に属する細菌とすることができ、Lacticaseibacillus属としては、これらに限られるものではないが、Lacticaseibacillus baoqingensis、Lacticaseibacillus brantae、Lacticaseibacillus camelliae、Lacticaseibacillus casei、Lacticaseibacillus zeae、Lacticaseibacillus chiayiensis、Lacticaseibacillus hulanensis、Lacticaseibacillus manihotivorans、Lacticaseibacillus nasuensis、Lacticaseibacillus pantheris、Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei、Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei、Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei、Lacticaseibacillus paracasei subsp. tolerans、Lacticaseibacillus paracasei subsp. tolerans、Lacticaseibacillus porcinae、Lacticaseibacillus rhamnosus、Lacticaseibacillus rhamnosus、Lacticaseibacillus saniviri、Lacticaseibacillus sharpeae、Lacticaseibacillus songhuajiangensis、Lacticaseibacillus thailandensis、Lacticaseibacillus daqingensis、Lacticaseibacillus hegangensis、Lacticaseibacillus suibinensis、Lacticaseibacillus yichunensis、Lacticaseibacillus jixianensis、Lacticaseibacillus zhaodongensisなどを挙げることができ、Limosilactobacillus属としては、これらに限られるものではないが、Limosilactobacillus alvi、Limosilactobacillus antri、Limosilactobacillus caviae、Limosilactobacillus coleohominis、Limosilactobacillus equigenerosi、Limosilactobacillus fermentum、Limosilactobacillus frumenti、Limosilactobacillus gastricus、Limosilactobacillus gorillae、Limosilactobacillus ingluviei、Limosilactobacillus mucosae、Limosilactobacillus oris、Limosilactobacillus panis、Limosilactobacillus pontis、Limosilactobacillus reuteri、Limosilactobacillus secaliphilus、Limosilactobacillus vaginalisなどを挙げることができ、またLactiplantibacillus属としては、これらに限られるものではないが、Lactiplantibacillus daoliensis、Lactiplantibacillus daowaiensis、Lactiplantibacillus dongliensis、Lactiplantibacillus fabifermentans、Lactiplantibacillus herbarum、Lactiplantibacillus modestisalitolerans、Lactiplantibacillus mudanjiangensis、Lactiplantibacillus nangangensis、Lactiplantibacillus paraplantarum、Lactiplantibacillus pentosus、Lactiplantibacillus pingfangensis、Lactiplantibacillus plajomi、Lactiplantibacillus argentoratensis、Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum、Lactiplantibacillus songbeiensis、Lactiplantibacillus xiangfangensisなどを挙げることができる。
【0023】
本開示の一実施形態において、Lactobacillus属細菌としては、さらに好ましくは、Lactobacillus paracasei(Lacticaseibacillus paracasei)、およびLactobacillus fermentum(Limosilactobacillus fermentum)を挙げることができ、Lacticaseibacillus属、およびLimosilactobacillus属に属する細菌は、DNA配列の相同性から、Lactobacillus paracasei(Lacticaseibacillus paracasei)および/またはLactobacillus fermentum(Limosilactobacillus fermentum)と同様の性質を有すると考えられ、またLactiplantibacillus属に属する細菌は、部分配列が近縁のものとなるため、Lactobacillus paracasei(Lacticaseibacillus paracasei)および/またはLactobacillus fermentum(Limosilactobacillus fermentum)と同様の性質を有すると考えられる。
【0024】
また本開示の一実施形態において、本開示の組成物に含まれるLactobacillus属細菌またはその抽出物に使用されるLactobacillus属細菌は、培養条件Aで培養した場合に、(1)プロピオン酸生成量を増加させる、(2)酪酸生成量を増加させる、および(3)酢酸生成量を減少させる、のうちの少なくとも1つの特徴を有するものを挙げることができ、この場合、プロピオン酸生成量は少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、または約1.6倍に、また酪酸生成量は少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、または約1.8倍に増加させるものが好ましい。また酢酸生成量については多くとも約95%以下、約90%以下、または約80%以下に減少させるものが好ましい。一実施形態において、培養条件Aとしては、例えば、(1)KH2PO4 2.67g/L、MgSO4・7H2O 1.33g/L、NaCl 0.27g/L、MnSO4・5H2O 0.10g/L、CaCl2・5H2O 0.10g/Lを加えたGAM培地で約16時間行う前培養と、(2)約115℃にて約15分間オートクレーブしたGAM培地(pHを約6.5に調整)に、添加培地濃度を約40g/Lとし、培養前に約37℃にて約1時間、約0.2μm PTFE膜を通して濾過滅菌した窒素および二酸化炭素混合ガス(N2:CO2=80:20)に曝気(約15mL/分)した培地に、ヒト健常被験体の糞便試料(綿棒で取得したものであり、綿棒の先端に付着した量、おおよそ0.1g)を約1%のL-アスコルビン酸を添加した約0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5、0.1M NaH2PO4および約0.1M Na2HPO4の61.65:28.35混合物からなる)約2mL中に懸濁して調製した懸濁物を約100μL接種して、嫌気培養を行う本培養とを含むことができる。一実施形態において、培養の間、培地を濾過滅菌した混合ガスに曝気することにより、嫌気性条件を維持することもできる。また他の実施形態において、培養は培養系腸管モデル(KUHIMM)を用いることもできる。
【0025】
また本開示の一実施形態において、本開示の組成物に含まれるLactobacillus属細菌またはその抽出物に使用されるLactobacillus属細菌は、培養条件Aで培養した場合に、(1)菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させる、および(2)該菌叢におけるCoprococcus属細菌を増殖させる、のうちの少なくとも1つの特徴を有するものを挙げることができる。培養条件Aとしては、例えば、(1)KH2PO4 2.67g/L、MgSO4・7H2O 1.33g/L、NaCl 0.27g/L、MnSO4・5H2O 0.10g/L、CaCl2・5H2O 0.10g/Lを加えたGAM培地で約16時間行う前培養と、(2)約115℃にて約15分間オートクレーブしたGAM培地(pHを約6.5に調整)に、添加培地濃度を約40g/Lとし、培養前に約37℃にて約1時間、約0.2μm PTFE膜を通して濾過滅菌した窒素および二酸化炭素混合ガス(N2:CO2=80:20)に曝気(約15mL/分)した培地に、ヒト健常被験体の糞便試料(綿棒で取得したものであり、綿棒の先端に付着した量、おおよそ0.1g)を約1%のL-アスコルビン酸を添加した約0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5、0.1M NaH2PO4および約0.1M Na2HPO4の61.65:28.35混合物からなる)約2mL中に懸濁して調製した懸濁物を約100μL接種して、嫌気培養を行う本培養とを含むことができる。一実施形態において、培養の間、培地を濾過滅菌した混合ガスに曝気することにより、嫌気性条件を維持することもできる。また他の実施形態において、培養は培養系腸管モデル(KUHIMM)を用いることもできる。
【0026】
さらに他の実施形態において、本開示の組成物に含まれるLactobacillus属細菌またはその抽出物に使用されるLactobacillus属細菌は、培養条件Aで培養した場合に、(1)菌叢におけるRuminococcus属細菌を少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.5倍、約2倍、約5倍、約10倍、または約20倍に増殖させる、および(2)該菌叢におけるCoprococcus属細菌を少なくとも約1.05倍、約1.1倍、または約2.0倍に増殖させる、のうちの少なくとも1つの特徴を有するものを挙げることができる。一実施形態において、培養条件Aとしては、例えば、(1)KH2PO4 2.67g/L、MgSO4・7H2O 1.33g/L、NaCl 0.27g/L、MnSO4・5H2O 0.10g/L、CaCl2・5H2O 0.10g/Lを加えたGAM培地で約16時間行う前培養と、(2)約115℃にて約15分間オートクレーブしたGAM培地(pHを約6.5に調整)に、添加培地濃度を約40g/Lとし、培養前に約37℃にて約1時間、約0.2μm PTFE膜を通して濾過滅菌した窒素および二酸化炭素混合ガス(N2:CO2=80:20)に曝気(約15mL/分)した培地に、ヒト健常被験体の糞便試料(綿棒で取得したものであり、綿棒の先端に付着した量、おおよそ0.1g)を約1%のL-アスコルビン酸を添加した約0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5、0.1M NaH2PO4および約0.1M Na2HPO4の61.65:28.35混合物からなる)約2mL中に懸濁して調製した懸濁物を約100μL接種して、嫌気培養を行う本培養とを含むことができる。一実施形態において、培養の間、培地を濾過滅菌した混合ガスに曝気することにより、嫌気性条件を維持することもできる。また他の実施形態において、培養は培養系腸管モデル(KUHIMM)を用いることもできる。
【0027】
<フコース含有化合物>
別の局面において、本開示は、フコース含有化合物を含む、菌叢を改善するための組成物が提供される。本開示の組成物は、菌叢を改善し、その多様性を維持または向上させるものとして有用である。
【0028】
一実施形態において、本開示の組成物に含まれるフコース含有化合物としては、これに限られるものではないが、例えばフコイダン、ペクチン、またはキシログルカンなどを挙げることができる。フコイダンは、モズクなどの褐藻類に存在し、フコースを中心にガラクトース、マンノース、キシロース、ウロン酸、硫酸基等で構成されるヘテロ硫酸化多糖であり、免疫成分として注目されている。
【0029】
一実施形態において、フコイダンは、主にL-フコースが多数結合し、L-フコース残基の少なくとも一部に硫酸が結合し硫酸エステルを形成した硫酸化多糖である。L-フコース残基以外に、グルクロン酸残基やガラクトース残基が結合していてもよい。フコイダンは、コンブ、ワカメ、モズク、アカモク等の海藻から単離されたものであってもよい。
【0030】
<フルクタン含有化合物>
別の局面において、本開示は、フルクタン含有化合物を含む、菌叢を改善するための組成物が提供される。本開示の組成物は、菌叢を改善し、その多様性を維持または向上させるものとして有用である。
【0031】
一実施形態において、本開示の組成物に含まれるフルクタン含有化合物としては、これに限られるものではないが、麦葉やその抽出物、ニンニクやその抽出物、ラッキョウやその抽出物、タマネギやその抽出物を挙げることができる。
【0032】
麦葉は、麦類植物の緑葉により構成される。麦葉は、例えばビタミン、ミネラル、スクロース、デンプン、及びフルクタンを含有する。これらのうち、ビタミン及びミネラルは、高脂血症患者の血漿コレステロールを低下させるという効果を期待できる。また、スクロース、デンプン、及びフルクタンは、麦類植物が窒素飢餓の間、一時的な貯蔵炭水化物として麦葉に蓄積される。またフルクタンは、フルクトース由来のオリゴ糖及び多糖であり、それらの構造に基づいて、フルクタンは、イヌリン型(β2→1結合)、レバン型(β2→6結合)、グラミナン型(β2→1結合及びβ2→6結合)に分類される。
【0033】
麦類植物として、例えば、大麦、小麦、えん麦、及びライ麦が挙げられる。中でも麦類植物が大麦であることが好ましい。大麦は、世界に広く分布している穀物であるため、入手しやすい利点がある。麦類植物が大麦である場合、麦類植物の緑葉は大麦若葉であることが好ましい。大麦若葉は、一般的には若い大麦における葉の部分として知られているが、茎部分も含んでよい。
【0034】
麦葉の抽出物は、麦葉またはその乾燥粉末を水と混合し、攪拌したのちに、遠心分離処理を行い、その上清を必要に応じて凍結乾燥して利用することができる。麦葉またはその乾燥粉末は市販のものを用いてもよく、または大麦若葉などの麦葉や葉茎から得ることもできる。
【0035】
<剤・添加成分>
本開示の一実施形態において、本開示の組成物または本開示の組成物と菌叢とを含む剤は、その剤型に応じて、上記の成分とは別の調剤用添加剤、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、及び調味料等の添加剤をさらに含むことができる。このような添加剤や賦形剤としては、例えば、アスコルビン酸、ビオチン、パントテン酸カルシウム、カロテン、ナイアシン、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン、パントテン酸ナトリウム、チアミン塩酸塩、トコフェロール、ビタミンA、ビタミンB12、ビタミンD等のビタミン類;メタリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム等のリン酸ナトリウム類;ソルビン酸カルシウム、安息香酸、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等の保存料;アラビアガム、トラガント、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、マンニット、ソルビトール、ラクトース、可溶性澱粉、アミノ酸類、グルコース、フラクトース、スクロース、ハチミツ、脂肪酸エステル、二酸化ケイ素を挙げることができる。
【0036】
本開示の一実施形態において、本開示の組成物または本開示の組成物と菌叢とを含む剤の剤型は、例えば、粉末、顆粒、ペレット、錠剤、カプセル剤、油状、及び液状とすることができる。
【0037】
本開示の一実施形態において、本開示の組成物または本開示の組成物と菌叢とを含む剤は、飲食品、医薬部外品、医薬品に含まれてもよい。このうち、飲食品としては、例えば野菜加工食品、海藻加工食品、肉類加工品等の各種加工食品;スープ、スナック菓子、パン類、麺類、氷菓子類、お茶、ジュース、コーヒー、健康食品を挙げることができる。
【0038】
本開示の一実施形態において、本開示の組成物または本開示の組成物と菌叢とを含む剤は、凍結乾燥させることで菌叢の改善効果をさらに向上させることができ、医薬組成物として利用することもできる。
【0039】
本開示の一実施形態において、本開示の組成物または本開示の組成物と菌叢とを含む剤を経口摂取させる場合には、例えば、凍結乾燥処理または再培養した本開示の組成物または菌叢を、一週間あたり1回または2回程度経口摂取させることができる。投与後例えば21日後に糞便の菌叢を評価することで、その効果を確認することができる。一実施形態において、評価項目としては、特に限られるものではないが、例えば免疫サイトカイン量、免疫系細胞の挙動などを挙げることができる。
【0040】
一実施形態において、菌叢培養液の消化管における各種免疫細胞への作用については、例えば、Th17細胞の増殖又は集積を誘導する効果あるいは制御性T細胞の増殖または集積を誘導する作用を確認することによって評価することができる。一実施形態において、これらの作用は、例えば、菌叢あるいは培養上清若しくは上清成分、又は菌叢に由来する生理活性物質を無菌マウス等の実験動物に経口投与し、その後、消化管におけるCD4陽性細胞を単離し、該CD4陽性細胞に含有されるTh17細胞の比率あるいは該細胞に含まれる制御性T細胞の割合を、フローサイトメトリーにより測定することによって確認することができる。
【0041】
本開示の新規Lactobacillus属細菌は、本開示の組成物に含まれるLactobacillus属細菌またはその抽出物として使用することができる。
【0042】
<培養>
本開示の一局面について、本開示の組成物を含む培養液において菌叢を培養することで、改善された菌叢を生産することができる。菌叢の培養方法は、本開示の組成物を含有する培養液に糞便を接種し、培養に適した環境下で増殖させることを含み、生体内または生体外で培養することもできる。
【0043】
菌叢または菌の培養期間中、培養液の温度は所定温度に維持されていることが好ましい。この所定温度は、特に限定されないが、例えば約37℃である。所定温度が約37℃であると、ヒトの体温(具体的には腸内温度)に模した温度で菌叢または菌は増殖できる。また、菌叢または菌の培養期間は、培養液の量や濁度等に応じて任意に設定されるため、特に限定されない。菌叢または菌の培養期間は、例えば、約48時間であり、約72時間とすることもできる。
【0044】
菌叢または菌を培養するにあたって、例えば、KUHIMM(神戸大学ヒト腸管細菌叢モデル(Kobe University Human IntestinalMicrobiota Model)Sasaki D et al 2018 SciRep 8 435(2018))を採用することができる。KUHIMMは、外因性機能化合物、すなわちヒト腸内細菌叢におけるプレバイオティクスの効果を評価したり、シミュレートしたりするための有用なモデルである。そして、KUHIMMでは、大腸における短鎖脂肪酸(SCFA)の産生を再現することができる。例えば、潰瘍性大腸炎患者でみられる酪酸産生の低下をKUHIMMで再現できる。KUHIMMは、複数の培養槽を備える多チャンネル発酵装置に適用することもでき、または任意のジャーファーメンターに適用することもできる。一実施形態において、菌叢または菌を培養するにあたって、培養条件としては、例えば、(1)KH2PO4 2.67g/L、MgSO4・7H2O 1.33g/L、NaCl 0.27g/L、MnSO4・5H2O 0.10g/L、CaCl2・5H2O 0.10g/Lを加えたGAM培地で約16時間行う前培養と、(2)約115℃にて約15分間オートクレーブしたGAM培地(pHを約6.5に調整)に、添加培地濃度を約40g/Lとし、培養前に約37℃にて約1時間、約0.2μm PTFE膜を通して濾過滅菌した窒素および二酸化炭素混合ガス(N2:CO2=80:20)に曝気(約15mL/分)した培地に、ヒト健常被験体の糞便試料(綿棒で取得したものであり、綿棒の先端に付着した量、おおよそ0.1g)を約1%のL-アスコルビン酸を添加した約0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5、0.1M NaH2PO4および約0.1M Na2HPO4の61.65:28.35混合物からなる)約2mL中に懸濁して調製した懸濁物を約100μL接種して、嫌気培養を行う本培養とを含むことができる。
【0045】
培養液に糞便を接種する際、糞便を培養液に直接接種してもよく、糞便を一旦水などに懸濁させてなる懸濁液を培養液に接種してもよい。懸濁液を培養液に接種する場合、懸濁液の量は、特に限定されないが、例えば、培養液の体積に対して約1/1000である。
【0046】
本開示の一実施形態において、培養液に接種される糞便は、特に限られるものではないが、糞便採取前の2ヶ月以上、抗生物質による治療をうけていない健常人から提供を受けたものであることが好ましい。また、この健常人には、糖尿病、肝疾患、腎臓病、及び食物アレルギー等を含む各種疾患の既往歴または疑いがないことが好ましい。
【0047】
菌叢または菌の培養では、糞便接種前の培養液に本開示の組成物が配合される。本開示の組成物の配合量は、特に限られるものではないが、例えば、培養液の全質量に対して、約1.5質量%以上であることが好ましい。すなわち、培養液は、約1.5質量%以上の本開示の組成物を含有することが好ましい。ここで、「約1.5質量%」は、ヒトが約6質量部(具体的には、約6g)の本開示の組成物を摂取した場合に腸内(特に糞便)に存在する本開示の組成物の濃度を想定した値である。
【0048】
本開示の一局面において、本開示の組成物を、または本開示の組成物と菌叢とを含む剤を経口摂取させることで菌叢を改善することができる。本開示の組成物は上記のとおり短鎖脂肪酸組成を改善し、菌叢における酪酸生産量を増加させ、菌叢におけるプロピオン酸生産量を増加させ、菌叢における酢酸生産量を低下させ、及び/または菌叢指標菌の比率を改善し、菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させることができるため、本開示の一実施形態において、本開示の組成物または本開示の組成物と菌叢とを含む剤を摂取することによって、生体内において、本開示の組成物を用いて菌叢または菌を培養した場合と同等の効果が期待できる。
【0049】
本開示の組成物を用いて菌叢または菌を培養すると、培養液中でRuminococcus属細菌を増殖させることができる。Ruminococcus属細菌が増殖すると、菌叢におけるプロピオン酸生成量及び/または酪酸生成量が増加し、一実施形態において、本開示の組成物を用いていない場合と比べて、プロピオン酸生成量は少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、または約1.6倍に、また酪酸生成量は少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、または約1.8倍に増加させることができる。
【0050】
<Lactobacillus属細菌およびそのスクリーニング>
本開示の一局面において、本開示は、Lactobacillus属細菌に属する菌株をスクリーニングする方法であって、該方法は(A)Lactobacillus属細菌を含むかまたは含むと推定される試料を培養条件Xで培養する工程と、(B)(A)で得られた培養物または該培養物から必要に応じて単離した菌株を培養条件Aで培養した場合に、(1)プロピオン酸生成量を増加させる、(2)酪酸生成量を増加させる、および(3)酢酸生成量を減少させる、のうちの少なくとも1つの特徴を有する、菌株を同定する工程と、(C)必要に応じて同定された菌株を単離する工程を包含する、方法を提供することができる。
【0051】
本明細書において「培養条件X」とは、試料100μLを、大麦若葉エキスを20g/LおよびL-システイン塩酸塩一水和物0.5g/Lを含む培地(25mL)中で37℃で7日間培養し、これを繰り返して、培養液を培地にて107倍希釈し、希釈液1mLを25mLの寒天培地に混釈して、N2:H2:CO2=80:10:10ガス下の37℃でコロニーを形成させ(ここで使用される、寒天培地は、大麦若葉エキスを含む培地に寒天末(例えば、Code:01059-85、ナカライテスクのものを使用し得るが他社の市販品も使用し得る)を終濃度1%で加えることで作製する)、単一のコロニーをチップで吸い上げ、Reinforced Clostridial培地(例えば、Code:CM0149、OxoidCulture Media productのものを使用し得る)で培養して菌株を単離する条件をいう。
【0052】
本明細書において、「培養条件A」とは、(1)KH2PO4 2.67g/L、MgSO4・7H2O 1.33g/L、NaCl 0.27g/L、MnSO4・5H2O 0.10g/L、CaCl2・5H2O 0.10g/Lを加えたGAM培地で約16時間行う前培養と、(2)約115℃にて約15分間オートクレーブしたGAM培地(pHを約6.5に調整)に、添加培地濃度を約40g/Lとし、培養前に約37℃にて約1時間、約0.2μm PTFE膜を通して濾過滅菌した窒素および二酸化炭素混合ガス(N2:CO2=80:20)に曝気(約15mL/分)した培地に、ヒト健常被験体の糞便試料(綿棒で取得したものであり、綿棒の先端に付着した量、おおよそ0.1g)を約1%のL-アスコルビン酸を添加した約0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5、0.1M NaH2PO4および約0.1M Na2HPO4の61.65:28.35混合物からなる)約2mL中に懸濁して調製した懸濁物を約100μL接種して、嫌気培養を行う本培養とを含む条件をいう。培養条件Aで使用されるGAM培地は、59.0g(1L分)中、ペプトン10.0g、ダイズペプトン3.0g、プロテオーゼペプトン10.0g、消化血清末13.5g、酵母エキス5.0g、肉エキス2.2g、肝臓エキス1.2g、ブドウ糖3.0g、リン酸二水素カリウム2.5g、塩化ナトリウム3.0g、溶性デンプン5.0g、L-システイン塩酸塩0.3g、チオグリコール酸ナトリウム0.3gを含み、pH7.1としたものをいい、代表的には、日水製薬株式会社からカタログ番号Code 05422で販売されるものが使用されるが他社の市販品を用いてもよく、自己で調製してもよい。本明細書において、嫌気性条件は、培養の間、培地を濾過滅菌した混合ガスに曝気することができる。本明細書において、培養は培養系腸管モデル(KUHIMM)(生田ら、New food industry=ニューフードインダストリー:食品加工および資材の新知識 60(5),37-43,2018を参照)を用いることができる。
【0053】
また本開示の他の局面において、本開示は、Lactobacillus属細菌に属する菌株をスクリーニングする方法であって、該方法は(A)Lactobacillus属細菌を含むかまたは含むと推定される試料を培養条件Xで培養する工程と、(B)(A)で得られた培養物または該培養物から必要に応じて単離した菌株を培養条件Aで培養した場合に菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させる、菌株を同定する工程と、(C)必要に応じて同定された菌株を単離する工程を包含する、方法を提供することができる。
【0054】
本開示の一局面において、Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、(1)プロピオン酸生成量を増加させる、(2)酪酸生成量を増加させる、および(3)酢酸生成量を減少させる、のうちの少なくとも1つの特徴を有する、菌株を提供する。
【0055】
本開示の一局面において、Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させる菌株を提供する。
【0056】
本開示の一実施形態において、このようなLactobacillus属細菌は、本開示の組成物としても利用することができるため、当該菌株は、培養条件Aにおいて(1)プロピオン酸生成量を少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、または約1.6倍に増加させる、(2)酪酸生成量を少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、または約1.8倍に増加させる、および(3)酢酸生成量を多くとも約95%以下、約90%以下、または約80%以下に減少させる、の少なくとも1つの特徴を有することができる。
【0057】
また本開示の他の局面において、Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させる、菌株が提供される。
【0058】
また他の局面において、Lactobacillus属細菌に属する菌株であって、該菌株は培養条件Aで培養した場合に、菌叢におけるRuminococcus属細菌を少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.5倍、約2倍、約5倍、約10倍、または約20倍に増殖させる、菌株を提供することができる。
【0059】
この新規Lactobacillus属細菌としては、これに限られるものではないが、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus casei、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus acetotolerans、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus agilis、Lactobacillus alimentarius、Lactobacillus amylovorus、Lactobacillusanimalis、Lactobacilus antrumi、Lactobacillus avarius、Lactobacillus bifermentans、Lactobacillus brevis、Lactobacillus buchneri、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus collinoides、Lactobacillus confusus、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus delbrueckii、Lactobacillus fructosus、Lactobacillus gallinarum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus graminis、Lactobacillus halotolerans、Lactobacillus hamsteri、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus hilgardii、Lactobacillus homohiochii、Lactobacillus intestinalis、Lactobacillus iners、Lactobacillus jensenii、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus kandleri、Lactobacillus kefir、Lactobacillus kefiranofaciens、Lactobacillus lactis、Lactobacillus leichmannii、Lactobacillus malefermentans、Lactobacillus mali、Lactobacillus minor、Lactobacillus mucosae、Lactobacillus murinus、Lactobacillus oris、Lactobacillus pentosus、Lactobacillus pontis、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus sakei、Lactobacillus salivarius、Lactobacillus sanfranciscensis、Lactobacillus suebicus、Lactobacillus vaccinostercus、Lactobacillus vaginalis、Lactobacillus viridescens、Lactobacillus acidifarinae、Lactobacillus acidipiscis、Lactobacillus algidus、Lactobacillus amylolyticus、Lactobacillus amylophilus、Lactobacillus amylotrophicus、Lactobacillus antri、Lactobacillus apodemi、Lactobacillus aviarius、Lactobacillus camelliae、Lactobacillus catenaformis、Lactobacillus ceti、Lactobacillus coleohominis、Lactobacillus composti、Lactobacillus concavus、Lactobacillus coryniformis、Lactobacillus crustorum、Lactobacillus delbrueckiisubsp.bulgaricus、Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii、 Lactobacillus delbrueckiisubsp.lactis、Lactobacillus dextrinicus、Lactobacillus diolivorans、Lactobacillus equi、Lactobacillus equigenerosi、Lactobacillus farraginis、Lactobacillus farciminis、Lactobacillus fornicalis、Lactobacillus fructivorans、Lactobacillus frumenti、Lactobacillus fuchuensis、Lactobacillus gastricus、Lactobacillus ghanensis、Lactobacillus hammesii、Lactobacillus harbinensis、Lactobacillus hayakitensis、Lactobacillus ingluviei、Lactobacillus kalixensis、Lactobacillus kefiri、Lactobacillus kimchii、Lactobacillus kitasatonis、Lactobacillus kunkeei、Lactobacillus lindneri、Lactobacillus manihotivorans、Lactobacillus mindensis、Lactobacillus nagelii、Lactobacillus namurensis、Lactobacillus nantensis、Lactobacillus oligofermentans、Lactobacillus panis、Lactobacillus pantheris、Lactobacillus parabrevis、Lactobacillus parabuchneri、Lactobacillus paracollinoides、Lactobacillus parafarraginis、Lactobacillus parakefiri、Lactobacillus paralimentarius、Lactobacillus paraplantarum、Lactobacillus perolens、Lactobacillus protectus、Lactobacillus psittaci、Lactobacillus rennini、Lactobacillus rimae、Lactobacillus rogosae、Lactobacillus rossiae、Lactobacillus ruminis、Lactobacillus saerimneri、Lactobacillus satsumensis、Lactobacillus secaliphilus、Lactobacillus sharpeae、Lactobacillus siliginis、Lactobacillus spicheri、Lactobacillus thailandensis、Lactobacillus ultunensis、Lactobacillus versmoldensis、Lactobacillus vini、Lactobacillus vitulinus、Lactobacillus zeae、またはLactobacillus zymaeなどを含むことができる。
【0060】
他の実施形態において、Lactobacillus属細菌としては、これに限られるものではないが、上記のZheng J et al.およびLiu DD &Gu CTによる新分類でLacticaseibacillus属、Limosilactobacillus属、またはLactiplantibacillus属に属する細菌とすることができ、Lacticaseibacillus属としては、これらに限られるものではないが、Lacticaseibacillus baoqingensis、Lacticaseibacillus brantae、Lacticaseibacillus camelliae、Lacticaseibacillus casei、Lacticaseibacillus zeae、Lacticaseibacillus chiayiensis、Lacticaseibacillus hulanensis、Lacticaseibacillus manihotivorans、Lacticaseibacillus nasuensis、Lacticaseibacillus pantheris、Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei、Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei、Lacticaseibacillus paracasei subsp. paracasei、Lacticaseibacillus paracasei subsp. tolerans、Lacticaseibacillus paracasei subsp. tolerans、Lacticaseibacillus porcinae、Lacticaseibacillus rhamnosus、Lacticaseibacillus rhamnosus、Lacticaseibacillus saniviri、Lacticaseibacillus sharpeae、Lacticaseibacillus songhuajiangensis、Lacticaseibacillus thailandensis、Lacticaseibacillus daqingensis、Lacticaseibacillus hegangensis、Lacticaseibacillus suibinensis、Lacticaseibacillus yichunensis、Lacticaseibacillus jixianensis、Lacticaseibacillus zhaodongensisなどを挙げることができ、Limosilactobacillus属としては、これらに限られるものではないが、Limosilactobacillus alvi、Limosilactobacillus antri、Limosilactobacillus caviae、Limosilactobacillus coleohominis、Limosilactobacillus equigenerosi、Limosilactobacillus fermentum、Limosilactobacillus frumenti、Limosilactobacillus gastricus、Limosilactobacillus gorillae、Limosilactobacillus ingluviei、Limosilactobacillus mucosae、Limosilactobacillus oris、Limosilactobacillus panis、Limosilactobacillus pontis、Limosilactobacillus reuteri、Limosilactobacillus secaliphilus、Limosilactobacillus vaginalisなどを挙げることができ、またLactiplantibacillus属としては、これらに限られるものではないが、Lactiplantibacillus daoliensis、Lactiplantibacillus daowaiensis、Lactiplantibacillus dongliensis、Lactiplantibacillus fabifermentans、Lactiplantibacillus herbarum、Lactiplantibacillus modestisalitolerans、Lactiplantibacillus mudanjiangensis、Lactiplantibacillus nangangensis、Lactiplantibacillus paraplantarum、Lactiplantibacillus pentosus、Lactiplantibacillus pingfangensis、Lactiplantibacillus plajomi、Lactiplantibacillus argentoratensis、Lactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum、Lactiplantibacillus songbeiensis、Lactiplantibacillus xiangfangensisなどを挙げることができる。
【0061】
別の局面において、本開示は、新規Lactobacillus属細菌を提供し、この新規Lactobacillus属細菌は、培養条件Aで培養した場合に、(1)プロピオン酸生成量を増加させる、(2)酪酸生成量を増加させる、および(3)酢酸生成量を減少させる、のうちの少なくとも1つの特徴を有するものを挙げることができ、この場合、プロピオン酸生成量は少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、または約1.6倍に、また酪酸生成量は少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.3倍、約1.4倍、約1.5倍、約1.6倍、約1.7倍、または約1.8倍に増加させるものが好ましい。また酢酸生成量については多くとも約95%以下、約90%以下、または約80%以下に減少させるものが好ましい。
【0062】
別の局面において、本開示は、新規Lactobacillus属細菌を提供し、このLactobacillus属細菌は、培養条件Aで培養した場合に、(1)菌叢におけるRuminococcus属細菌を増殖させる、および(2)該菌叢におけるCoprococcus属細菌を増殖させる、のうちの少なくとも1つの特徴を有するものを挙げることができる。このようなLactobacillus属細菌の少なくとも1つ(例えば、本明細書の実施例において取得されるもの)は、これまでに報告のないものを含む新規菌株であるということができる。
【0063】
別の局面において、本開示は、新規Lactobacillus属細菌を提供し、このLactobacillus属細菌は、培養条件Aで培養した場合に、菌叢におけるRuminococcus属細菌を少なくとも約1.1倍、約1.2倍、約1.5倍、約2倍、約5倍、約10倍、または約20倍に増殖させるものを挙げることができる。
【0064】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al.(1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M.(1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M. (1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis, M.A. et al.(1995).PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky, J.J. et al.(1999). PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0065】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えばGeneArt、GenScript、Integrated DNA Technologies(IDT)などの遺伝子合成やフラグメント合成サービスを用いることもでき、その他、例えば、Gait, M.J.(1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Gait, M.J.(1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein, F.(1991). Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Adams, R.L. et al.(1992). The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman & Hall; Shabarova, Z. et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G.M. et al.(1996). Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T.(I996). Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0066】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0067】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0068】
(実施例1:糞便試料の採取および培養)
糞便試料の採取
健常者から糞便試料を採取した。なお実験参加者は、半年以上にわたりいかなる抗生物質も受けていない者であった。実験参加者から書面によるインフォームドコンセントを得た。本実験は、神戸大学医学部附属病院のガイドラインに従って行い、神戸大学の治験倫理審査委員会によって認可された。本実験で使用した全ての方法は、神戸大学の医療倫理による認可ガイドラインに従った。糞便試料は採取後、嫌気性培養スワブ(212550 BD BBL Culture Swab;ベクトン・ティッキンソンアンドカンパニー製)内に保管し、実験室に送付した。
【0069】
大麦若葉エキスの調整方法
大麦若葉青汁粉末(健康食品の原料屋)100gを超純水(Milli-Q水)900mLと混ぜて、4℃で6時間撹拌する。続いて500gで1分間の遠心分離により上清を回収する。上清は凍結後に、真空凍結乾燥を行い、得られた乾燥物を大麦若葉エキスとして使用した。
【0070】
Lactobacillus属の単離方法
便試料100μLを大麦若葉エキス 20g/LおよびL-システイン塩酸塩一水和物(Code: 10313-42、ナカライテスク) 0.5g/Lを含む培地中で37℃、気相N2:H2:CO2=80:10:10にて7日間培養し、これを再度繰り返して、培養液をこの培地にて107倍希釈した。希釈液1mLを25mLの寒天培地に混釈して、気相N2:H2:CO2=80:20:20ガス下の37℃でコロニーを形成させた。寒天培地は、同濃度の大麦若葉エキスおよびL-システイン塩酸塩一水和物を含む培地に寒天末(Code: 01059-85、ナカライテスク)を終濃度1%で加えて作成した。単一のコロニーをチップで吸い上げ、Reinforced Clostridial培地(Code: CM0149、Oxoid Culture Media product)で培養し、Lactobacillus paracasei(Lacticaseibacillus paracasei)、およびLactobacillus fermentum(Limosilactobacillus fermentum)を単離した。菌の同定はゲノムDNAを以下に記載の方法で抽出した。プライマーS-D-Bact-0341-b-S-17 (5’-CCTACGGGNGGCWGCAG-3’)(配列番号1)およびS-D-Bact-0785-a-A-21(5’-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3’)(配列番号2)を使用してPCRを行い、ジェネティックアナライザ3500(Applied Biosystems)を用いて遺伝子配列を読み実施した。
【0071】
糞便試料の採取および培養
マルチチャンネル培養器(Bio Jr.8;エイブル株式会社製)を用いるヒト大腸を模した1回バッチ式培養装置を作製した。本インビトロモデル装置は、8つの並列した独立の容器からなり、各容器に、100mLのオートクレーブ(115℃にて15分間)した岐阜大学処方嫌気性培地(GAM培地[Code 05422];日水製薬株式会社製)を入れ、培養開始時pHを6.5に調整し、添加培地濃度を40g/Lとした。
【0072】
培養前に37℃にて1時間、0.2μm PTFE膜(ポール・コーポレーション製)を通して濾過滅菌した窒素および二酸化炭素混合ガス(N2:CO2=80:20)に曝気(15mL/分)することにより、培養容器の嫌気性条件を構築した。接種物の調製のため、各糞便試料(綿棒で取得したものであり、綿棒の先端に付着した量、おおよそ0.1g)を、1%のL-アスコルビン酸(和光純薬工業株式会社製)を添加した0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5,0.1M NaH2PO4および0.1M Na2HPO4の61.65:28.35混合物からなる)2mL中に懸濁した。100μLの上記糞便懸濁液を各培地含有容器内に接種して、試験対象となる成分(次段落に記載)を加えるまたは加えないで、嫌気培養(本実施例で、「本培養」ともいう)を開始した。培養の間、培地を濾過滅菌した混合ガスに曝気することにより、嫌気性条件を維持した。
【0073】
Lactobacillus属(Limosilactobacillus fermentum KS-001株(NITE BP-03546)、Limosilactobacillus fermentum KS-002株(NITE BP-03547)、Lacticaseibacillus paracasei KS-003株(NITE BP-03548))はKH2PO4 2.67g/L、MgSO4・7H2O 1.33g/L、NaCl 0.27g/L、MnSO4・5H2O 0.10g/L、CaCl2・5H2O 0.10g/Lを加えてGAM培地で約16時間前培養を行った。上記で説明した本培養の培養開始時に、容器の側面の突出部分よりLactobacillus属(1×108-細胞数/mL)、大麦若葉エキス(10g/L)、フコイダン(5g/L)をそれぞれ単独、2剤併用、または3剤併用にて添加した。本培養の培養開始時、48時間後に、容器の側面の突出部分より培養液の一部を回収した。培養期間中5分毎にpHデータを採取した。培養開始時の試料(糞便試料)および培養48時間後に回収した試料(培養液)については、菌叢評価にも使用した。培養48時間後に回収した試料(培養液)については、短鎖脂肪酸(SCFA)定量にも使用した。なお糞便試料および培養液は、測定に供するまで-20℃下に保管した。
【0074】
短鎖脂肪酸の濃度測定方法
短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)濃度は、液体クロマトグラフ(HPLC)Prominence(株式会社島津製作所)を使用して測定した。HPLCは、Aminex HPX-87Hカラム(Bio-Rad Laboratories製)および示差屈折率検出器-10A(株式会社島津製作所)を備えている。
【0075】
ヒト健常被験体を用いた場合のそれぞれの菌叢培養液の短鎖脂肪酸解析結果を
図1および4に示した。多くの場合で酢酸量の減少が認められ、またすべての場合で酪酸量の増加が認められた。
【0076】
(実施例2:糞便培養液の菌叢評価)
微生物DNAの抽出
培養開始時の試料(糞便試料)および培養48時間後に回収した試料(培養液)について、大腸内細菌叢の菌のDNA抽出を下記のようにして行った。DNA抽出における抽出液には、Tris-EDTA(TE)飽和フェノール500μL、溶菌緩衝液(1M Tris pH8.0,0.5M EDTA)250μL、10%SDS 50μL、ガラスビーズ(φ0.1mm)0.3gを用いた。試料に抽出液を200μL添加したものをFastPrep24 (MP)を用い、パワーレベル5.0で30秒間縦方向に激しく振とうし、菌体を破砕した。そして、遠心分離により上清を回収しフェノール・クロロホルム・イソアミルアルコールを用いてタンパク質変性後イソプロパノール沈殿によりDNAを析出させた。DNAを析出させて、100μLのTEに溶解したものを鋳型DNAとして使用した。精製したDNAを、使用するまで-20℃下に保管した。
【0077】
16S rRNA遺伝子配列決定
ゲノムDNAを、S-D-Bact-0341-b-S-17((5’-CCTACGGGNGGCWGCAG-3’) (配列番号1))およびS-D-Bact-0785-a-A-21(5’-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3’) (配列番号2)のプライマー対を用いた細菌16S rRNA遺伝子のV3-V4領域の増幅に供した。イルミナアダプターオーバーハングヌクレオチド配列(イルミナ株式会社製)を遺伝子特異的配列に付加した。製造者作成の説明書に従ってPCRサイクリング反応を行った。確認したアンプリコンをAMPure XP DNA精製ビーズ(ベックマン・コールター株式会社製)を用いて精製し、25μlの10mM Tris(pH8.5)中に溶出させた。精製後のアンプリコンをAgilent Bioanalyzer 2100 DNA 1000チップ(アジレント・テクノロジー株式会社製)において定量し、等モル濃度(5nM)に調製した。16S rRNA遺伝子産物を内部コントロール(PhiXコントロールV3;イルミナ株式会社製)と共に、600サイクルMiSeq試薬キット(イルミナ株式会社製)によりMiSeqシーケンサー(イルミナ株式会社製)を用いて、ペアエンドシーケンスに供した。PhiX配列を除去し、20以上のQスコアのペアエンドリードを、ソフトウェアパッケージQIIME 2バージョン2020.8を用いて結合した。キメラ配列を同定し、ライブラリーから排除した。Ribosomal Database Project(RDP) Classifierを用いてGreenGenes系統学的データベースによって、ペアエンドリードを系統学的に分類した。97%類似性に達したOTU(Operational Taxonomic Unit)を、シャノン・ウィーナー指数の多様性比較のために用いた。
【0078】
リアルタイムPCR
リアルタイムPCRをLight Cycler(登録商標)96システム(ロシュ・ダイアグノシティックス株式会社製)を用いて行った。Takagi, R. et al. A single-batch fermentation system to simulate human colonic microbiota for high-throughput evaluation of prebiotics. PLoS One 11,e0160533 (2016).に記載のように、全腸内細菌をターゲットにするプライマーセット(ACTCCTACGGGAGGCAGCAGT(配列番号3)およびGTATTACCGCGGCTGCTGGCAC)(配列番号4)を用いた増幅を行った。
【0079】
バイオインフォマティクス
シャノン・ウィーナー多様性指数を、QIIME 2ソフトウェアパッケージを用いて算出した。
【0080】
Limosilactobacillus fermentum KS-001株(NITE BP-03546)を用いた場合のそれぞれの菌叢培養液のOTU(Operational Taxonomic Unit)およびシャノン・ウィーナー指数の多様性比較結果を
図2に示した。いずれの場合も比較例とほぼ同等であった。またLimosilactobacillus fermentum KS-002株(NITE BP-03547)およびLacticaseibacillus paracasei KS-003株(NITE BP-03548)を用いた場合にもOTUおよびシャノン・ウィーナー指数の多様性比較結果は同様のものとなった。また各種細菌の相対存在量を
図3および5に示した。いずれの場合もRuminococcus属細菌の含有率が顕著に増加していた。
【0081】
(実施例3:凍結乾燥処理および菌叢の再培養)
培養液1mLを遠心して菌体を沈降させて、上清800μLを除去する。菌体を含む液200μLに8%スキムミルク(Code:31149-75、ナカライテスク)、0.8%グルタミン酸ナトリウム(Code:16914-05,ナカライテスク)を添加して混合して、真空凍結乾燥する。乾燥後にガス相をN2:H2:CO2=80:10:10に置換して低温(4℃前後)で保存する。
【0082】
再培養時に、GAM培地1mLに懸濁してマルチチャンネル培養器で実施例1と同様に培養する。
【0083】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許庁に2021年2月25日に出願された特願2021-29165に対して優先権主張をするものであり、その内容はその全体があたかも本願の内容を構成するのと同様に参考として援用される。
本開示の方法によって、菌叢を改善し、その多様性を維持または向上する効果に優れた組成物を提供することができるため、菌叢が関連する種々の健康障害に対する医薬の開発が可能となり、医療分野への応用が期待できる。