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特開2022-130295歯科用研磨装置の運転方法ならびに歯科用研磨装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130295
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】歯科用研磨装置の運転方法ならびに歯科用研磨装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/00 20060101AFI20220830BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20220830BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20220830BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20220830BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20220830BHJP
   B24B 49/02 20060101ALI20220830BHJP
   B24B 47/25 20060101ALI20220830BHJP
   B24B 29/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61C 5/70 20170101ALI20220830BHJP
【FI】
A61C13/00 Z
B23Q17/09 E
B24B49/10
B24B49/12
B24B49/04 Z
B24B49/02 Z
B24B47/25
B24B29/00 D
A61C5/70
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021215362
(22)【出願日】2021-12-29
(31)【優先権主張番号】21159413.0
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】596032878
【氏名又は名称】イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン シェドラー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歯科用工作機械によって駆動される研磨ユニットを備える歯科用研磨装置の運転方法を提供する。
【解決手段】研磨ユニット12は、円形の研磨核体16と同じく円形でかつ特に前記研磨核体を囲繞する研磨構成体14とからなる。前記研磨装置が研磨すべきワークピースも備え、また前記研磨構成体がワークピースとの当接に際して弾力的に変形する。数値制御される制御装置が、ワークピース上で運動軌跡に沿って前記ワークピースに相対して研磨構成体を動作させる。ワークピースは、一定のあるいは実質的に一定の沈み込み量で研磨構成体内に沈み込む。制御装置が処理パラメータに基づいて沈み込み量を再調節する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用工作機械によって駆動される研磨ユニットを備え、前記研磨ユニットが円形の研磨核体と同じく円形でかつ特に前記研磨核体を囲繞する研磨構成体とからなる、歯科用研磨装置を運転するためのもので、前記研磨装置が研磨すべきワークピースも備え、また前記研磨構成体がワークピースとの当接に際して弾力的に変形する方法であって、数値制御される制御装置(40)がワークピース(22)上で運動軌跡(38)に沿って前記ワークピースに相対して研磨構成体(14)を動作させ、前記運動軌跡においてワークピース(22)が一定のあるいは実質的に一定の沈み込み量(26)で研磨構成体(14)内に沈み込み、制御装置(40)が処理パラメータに基づいて沈み込み量(26)を再調節することを特徴とする方法。
【請求項2】
処理パラメータには経験的に判定されたあるいは一連の個別実験によって判定された研磨構成体(14)の摩耗特性が含まれ、処理パラメータが特に送り、ワークピース(22)の材料、ワークピース(22)の形状、研磨構成体(14)の材料、研磨構成体(14)の形状、および/または研磨構成体(14)とワークピース(22)の間の押圧力に相関することを特徴とする請求項1に記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項3】
歯科用工作機械を使用して駆動される研磨ユニットを備え、前記研磨ユニットが円形の研磨核体と同じく円形でかつ特に前記研磨核体を囲繞する研磨構成体とからなる、歯科用研磨装置を運転するためのもので、前記研磨装置が研磨すべきワークピースも備え、また前記研磨構成体がワークピースとの当接に際して弾力的に変形する方法であって、数値制御される制御装置(40)がワークピース(22)上で運動軌跡(38)に沿って前記ワークピースに相対して研磨構成体(14)を動作させ、前記運動軌跡においてワークピース(22)が一定のあるいは実質的に一定の沈み込み量(26)で研磨構成体(14)内に沈み込み、研磨構成体(14)の少なくとも1つの寸法、特に直径あるいは半径方向の延長、および/またはワークピース(22)の各計測値が、特にカメラ、光学式、機械式あるいは音響式センサによって継続的あるいは繰り返し測定されるか、場合によってさらに間接的に測定され、制御装置(40)が測定結果に基づいて沈み込み量(26)を再調節することを特徴とする方法。
【請求項4】
測定がリアルタイム測定として実行され、また特に、制御装置(40)が、好適にはセンサによって検出されたあるいはセンサの出力信号から導出された研磨力を介して、運動軌跡(38)の制御を実行し、および/または歯科用工作機械(30)の回転数の制御を実行するか、および/または研磨力を調節することを特徴とする請求項3に記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項5】
運動軌跡(38)を実行する前にワークピース(22)の少なくとも1つの計測値がセンサを介して測定され、制御装置(40)が研磨ユニット(12)の運動軌跡(38)を実行前に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項6】
3mmまでの直径を有する工具の場合に所与の沈み込み量(26)が0.05mm超でかつ0.5mm未満であり、3mm超の直径を有する工具の場合は0.2mm超でかつ2mm未満であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項7】
数値制御される制御装置(40)がメモリを備え、そのメモリ内にワークピース(22)の輪郭に相当する仮想的な運動軌跡(38)が記憶されるが、所与の沈み込み量(26)の分だけ縮小され、すなわち実際の研磨構成体(14)の直径に相当するものに比べてよりワークピース(22)に近くなり、必要に応じて工具基準点(34)を考慮することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項8】
ワークピース(22)が歯科補綴物(22)である場合に制御装置(40)が歯科補綴物(22)のプレパラート境界を研磨から除外し、すなわちプレパラート境界上に負の沈み込み量(26)を設定するか、または除外される面上に仮想的な保護ジオメトリを付加することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項9】
特にいずれも工作機械(30)の回転駆動機構の実際の消費電力あるいは回転数を介して測定され、研磨力に対する沈み込み量(26)の関数を反映させるものである、少なくとも一連の測定に基づいて目標沈み込み量が予め設定されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項10】
制御装置(40)が所与の沈み込み量(26)における研磨力の低下から研磨構成体(14)の摩耗を検出して、所与の沈み込み量(26)において研磨力が閾値を下回った場合に信号を発信し、特に前記信号が補償動作を設定するか、および/または工具交換を指示すること請求項1ないし9のいずれかに記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項11】
制御装置(40)が運動軌跡(38)に沿ったワークピース(22)と研磨構成体(14)の間の相対動作を、当接している間の動作速度が特に5mm/秒、好適には10mm/秒の下限値より大きく、かつ特に30mm/秒、好適には20mm/秒の上限値より小さくなるように制御することを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項12】
研磨構成体(14)が、その研磨構成体(14)の軸外、および/または、存在する場合、尖端外の領域のみでワークピース(22)と当接することを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項13】
研磨構成体(14)が、円形、皿型、鉢型、あるいは円錐型に研磨核体(16)の周りに延在するブラシあるいは層板(20)を備えることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項14】
研磨構成体(14)が回転速度に従って増加する直径(32)を有していて、沈み込み量(26)がその、場合によって増加した、直径(32)に相関して設定され、特に回転速度を所要の沈み込み量(26)に適応させることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の歯科用研磨装置の運転方法。
【請求項15】
歯科用工作機械と伝動結合される研磨ユニットを備え、前記研磨ユニットが円形の研磨核体と同じく円形でかつ特に前記研磨核体を囲繞する研磨構成体とからなる研磨装置であって、前記研磨装置が研磨すべきワークピースも備え、また前記研磨構成体がワークピースとの当接に際して弾力的に変形する歯科用研磨装置であり、数値制御される制御装置(40)を設け、その制御装置によってワークピース(22)上で運動軌跡(38)に沿って前記ワークピースに相対して研磨構成体(14)を動作させることができ、前記制御装置(40)が沈み込み量(26)を再調節することができる沈み込み量制御ユニットを備えることを特徴とする歯科用研磨装置。
【請求項16】
沈み込み量制御ユニットが一定あるいは実質的に一定の沈み込み量(26)を設定可能であり、その沈み込み量でワークピース(22)が研磨構成体(14)内に沈み込み、前記沈み込み量制御ユニットによって、処理パラメータに基づいて、あるいは研磨構成体(14)の少なくとも1つの寸法および/またはワークピース(22)の各計測値を検出するためのセンサあるいはカメラに基づいて沈み込み量(26)を再調節可能であり、および/または沈み込み量制御ユニットによって測定結果に基づいて沈み込み量(26)を再調節可能であることを特徴とする請求項15に記載の歯科用研磨装置。
【請求項17】
歯科用工作機械に歯科用研磨装置が追加装備され、前記歯科用研磨装置がCAMソフトウェアによって具現化された、あるいはCAMソフトウェアの更新によって追加装備された制御装置を備え、その制御装置によって処理パラメータに基づいてあるいはセンサの測定結果に基づいて沈み込み量を再調節可能であることを特徴とする歯科用工作機械。
【請求項18】
歯科用工作機械用のCAMソフトウェアであり、ソフトウェアが歯科用工作機械に歯科用研磨を追加装備し、前記CAMソフトウェアが制御装置を具現化するか、あるいは更新によって追加装備し、その制御装置によって処理パラメータに基づいてあるいはセンサの測定結果に基づいて沈み込み量を再調節可能であることを特徴とするCAMソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1の前文に記載の歯科用研磨装置の運転方法、請求項3の前文に記載の同種の方法、請求項15の前文に記載の歯科用研磨装置、請求項17の前文に記載の歯科用工作機械、ならびに請求項18の前文に記載の歯科用工作機械のためのCAMソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用工作機械によって歯科補綴物が製造され、それを工作機械内における製造の観点から一般的にワークピースと呼ぶこともできる。ワークピースは工作機械によって除去的な加工で製造される。それには特にフライス削りが含まれるが、回転研削も含まれる。研磨用の回転研削の独特な利点は、工具が継続的に一定の動作にある点である。加減速相があまり影響を及ぼさなくなる。
【0003】
製造は通常数値制御され、すなわちCNC機械が使用される。その機械は工具を所与の軌跡、すなわち運動軌跡に沿って、ワークピースを通過して誘導する。相対的動作は、運動軌跡を定義するフライス削りデータに基づいて実行される。例えば0.05mmの微細な解像度を有する運動軌跡であったとしても、ワークピース表面にある程度の粗度が残る。そのことは、実質的な製造作業の最後のステップとして極めて小さな送りを有する仕上げ削りを使用したとしても同様である。
【0004】
従って一般的に実質的な製造作業、すなわちフライス削りあるいは回転研削の後に研磨が行われる。そのため、独立した研磨装置が使用されるか、あるいは単に工作機械に研磨工具が装着される。
【0005】
研磨工具は、ワークピースの表面に対して独自の運動軌跡に沿って動作する。研磨工具は、例えばフライス工具に比べて著しく柔軟である。研磨工具は、ワークピースの表面の変形と粗目の尖端の除去が組み合わされた研磨効果が発生するような所定の圧力で、ワークピースの表面に沿って誘導する必要がある。
【0006】
その場合、研磨工具はシャフトによって工作機械に固定され、円形かつ硬質である研磨核体とその研磨核体を囲繞しかつ研磨核体よりも軟質である研磨構成体とからなる研磨ユニットを支持する。
【0007】
運動軌跡は、研磨核体を囲繞する研磨構成体内にワークピースが沈み込むように設定される。
【0008】
一般的に研磨工具は、摩耗しすなわち研磨効果が十分でなくなった場合に交換される。
【0009】
ワークピースとしての歯科補綴物は、鋭敏な角部も備え得る。その一例は、歯肉方向を向いたクラウンの縁部である。縁部が特に鋭角である場合、角部上で研磨構成体が極めて急速に摩耗する。
【0010】
研磨構成体の摩耗は時に極めて大きくなる。従って、多くの場合は早期の交換とそれに伴った高いコストを負担することになるものの、最小の設定工具寿命の経過後に研磨構成体と研磨工具を予防的に交換することが提案されている。
【0011】
そのため、利用効率を改善するために研磨工具の運動軌跡の精度を高めることも提案されているが、期待された程の顕著な改善は達成されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の目的は、追加的なコストを伴わずに研磨構成体のより効率的な利用を可能にする、請求項1および3の前文に記載の歯科用研磨装置の運転方法、請求項15の前文に記載の歯科用研磨装置、請求項17の前文に記載の歯科用工作機械、ならびに請求項18の前文に記載の歯科用工作機械のためのCAMソフトウェアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題は、本発明に従って請求項1、3、15、17あるいは18によって解決される。従属請求項によって好適な追加構成が定義される。
本発明に係る方法によれば、独自に数値制御される制御装置、あるいは独自に設定して数値制御される制御装置が使用される。その制御装置は、研磨構成体を研磨すべきワークピース上で独自の運動軌跡に沿って誘導する。運動軌跡は、請求項1に係る発明の態様のように、研磨構成体内へのワークピースの一定あるいは実質的に一定の沈み込み量に相当する。しかしながら、本発明によれば特定の処理パラメータに基づいて運動軌跡が再調節される。処理パラメータは、例えば送り、ワークピースの材料、ワークピースの表面、研磨構成体の材料、研磨構成体の形状、および/または研磨構成体とワークピースの間の圧力とすることができる。
【0014】
実用上の具現化において時間あるいは距離に対する相関性が形成される。その相関性は、以前の円滑化手法に依存して、材料固有の実験において判定される。
【0015】
本発明に係る研磨装置には、研磨構成体と研磨核体とから形成される研磨ユニットが含まれる。研磨構成体は、周知の方式で(硬質の)研磨核体を囲繞するか、あるいは少なくとも部分的に囲繞する。
【0016】
さらに、研磨装置には研磨されるワークピースも含まれる。ワークピースは研磨工程の開始時には未研磨であるが、フライス削りが完了している。通常、ワークピースは歯科用工作機械内でフライス削りあるいは回転研削によって製造され、研磨待ちになっている。
【0017】
他方、ワークピースを別の方式で製造し、研磨工程を要するようにすることもできる。
【0018】
ワークピースは、例えば接着結合、ネジ結合、あるいはクランプ装置等を使用してワークピースホルダ上に取り付けられる。ホルダは、研磨工程に使用される工作機械内に固定される。ワークピースが十分に研磨されるまで本発明に係る研磨方法が実行される。
【0019】
請求項3に係る発明の態様においても、一定あるいは実質的に一定のワークピースの沈み込み量で処理される。しかしながら追加的に、研磨構成体の少なくとも1つの寸法、特に直径あるいは半径方向の延長が測定される。他方、ワークピースの各計測値を測定することもできる。測定は、センサあるいはカメラによって実行される。本発明によれば、さらに特別な制御装置によって測定結果に基づいて運動軌跡が再調節される。
【0020】
また、間接的な測定も可能であり:例えば音波測定を実施することができる。測定結果から接触の強度が判定され、それによって研磨構成体の摩耗が判定される。
【0021】
従って本発明によれば、最初に一度制御装置によって計算され研磨効果に関して有効であると判定された、一定の沈み込み量を有する運動軌跡が設定される。次に、その標準運動軌跡を起点して偏差が判定される。
【0022】
偏差によって、より少ない深さの沈み込み量、あるいはより大きな沈み込み量につながる可能性がある。そのため、運動軌跡が再調節される。再調節は、例えばワークピースおよび/または研磨構成体の材料パラメータに基づいて、まず一回行うことができる。または、例えば研磨構成体の形状に基づいて行うこともできる。すなわち、例えば円盤状の研磨構成体および円錐形の研磨構成体に対して研磨効果を最適化することができる。
【0023】
この態様によれば、工具の摩耗を考慮することもできる。工具がより強度に摩耗している場合、同じ研磨効果を得るための沈み込み量が大きくなる。
【0024】
目標沈み込み量は高められない。沈み込み量が再調節され、それによって沈み込み量が再び初期の値に相当するようにされる。再調節が大きくされる。そこで、沈み込み量が元の工具、すなわち公称直径に依存するという定義が基礎とされる。
【0025】
ここで「沈み込み量」の概念によって、ワークピースが存在しない状態で運動軌跡を通過する場合に公称直径を有する、すなわち未使用の状態の研磨構成体の表面上に存在する運動軌跡内への、ワークピースならびにそのワークピースの表面の沈み込みの大きさが定義される。
【0026】
(新品の)工具、すなわち研磨構成体の公称直径と、ワークピースの表面、すなわち輪郭のいずれもが既知であるため、沈み込み量は比較的に容易に再調節することができる。
【0027】
工具が摩耗した場合に実際の沈み込み量を高めることによって、工具の摩耗による研磨効果の低下が補償されることにつながる。
【0028】
他方、本発明によれば、研磨作業中の再調節も実行される。
【0029】
そのため、センサあるいはカメラが設けられる。センサが研磨構成体の直径あるいはその他の半径方向の延長、またはワークピースの計測値を検出し、測定結果を制御装置に伝送する。その後制御装置が運動軌跡を動的に再調節する。
【0030】
その処理によっても現状の研磨効果を一定に保持することができるが、研磨条件に適応させることもできる。プレパラート境界、例えばクラウンの歯肉縁部が研磨される場合、制御装置が沈み込み量を削減することができる。従って、工具の摩耗を著しく少なくすると同時に、クラウン縁部が過剰に研削されないようにすることが可能になる。
【0031】
さらに、プレパラート境界、例えばクラウン縁部が研磨に際して過熱しないことを保証することもできる。
【0032】
鋭敏な研磨工具によってワークピースの内側角部を研磨する必要がある場合も、同様な措置が可能かつ有効である。
【0033】
本発明は、前述の種類の歯科用研磨装置の新造に限定されるものではない。むしろ、本発明によれば、フライス盤等の歯科用工作機械を使用し、その歯科用工作機械に歯科用研磨装置を追加装備することも可能である。そのため、工作機械のCAMソフトウェアを変更するかあるいは新規にインストールし、また工作機械に研磨工具を装着する。
【0034】
ソフトウェアの更新によって本発明に係る制御装置が具現化され、その制御装置により、処理パラメータに基づいてあるいはセンサの測定結果に基づいて、沈み込み量を再調節することができる。更新すべきCAMソフトウェアには、工作機械のファームウェアも含まれる。
【0035】
他方、研磨ドライバを設定し、その研磨ドライバによって、動作データに対応する運動軌跡に代えて本発明に従って沈み込み量が変更された運動軌跡を通過するような方式で、工作機械の動作データに影響を与えることも本発明において可能である。
【0036】
本発明の別の態様において、歯科用工作機械のソフトウェアに歯科用研磨装置を追加設定する、歯科用工作機械のCAMソフトウェアが提供される。CAMソフトウェアが制御装置を具現化するか、あるいは更新によって追加設定し、その制御装置により、処理パラメータに基づいてあるいはセンサの測定結果に基づいて、沈み込み量が再調節される。
【0037】
歯科用途のセラミックは、極めて硬質であり得る。その一例は、珪酸リチウムからなるクラウンである。対応する研磨工具は例えば10000rpmで回転し、4Nの押圧力を作用させる。そのことが顕著な摩耗につながる。
【0038】
必要な押圧力が4Nでかつ例えば平均ばね定数を10N/mmとし得る場合、まず初期沈み込み量として0.4mmの値が制御装置によって設定される。摩耗特性に相関して、沈み込み量の再調節のためのパラメータが経験的に判定される。
【0039】
約9000rpmの回転数の場合、4μm/秒あるいは0.2μm/mmの大きさの沈み込み量の再調節が現実的である。研磨持続時間が3分である場合、20mm/sの比較的一定の軌道速度が3600mmの長さの処理軌跡をもたらす。従って、4μm/秒あるいは0.2μm/mmのどちらのパラメータ表示を選ぶかに関わらず、沈み込み量の最大再調節はいずれの場合も720μmである。それらの数値は、相関性を説明するための単なる例示的なものであると理解すべきである。本発明によれば、再調節の範囲を極めて多様にすることができ、例えば0.5μm/秒ないし20μm/秒、もしくは50nm/mmないし1.5μm/mmとすることができる。初期沈み込み量も、50μmないし1.5mmの範囲とすることができる。
【0040】
さらに、歯科用の場合、補綴物の材料削除を絶対的な最小値に抑制し、補綴物上において輪郭変形が生じないようにすることが重要である。
【0041】
従来の研削処理の場合、ワークピースと従って完成した歯科補綴物を製造するためのブランク内で、ワークピースの最終ジオメトリに接触するまで工具が沈み込む。工具上の僅かな摩耗を除いて、材料削除は主にブランク上で発生する。NCデータに基づいた研磨を含む本発明に係る方法においては、ワークピースが既に最終ジオメトリを有する。本発明に係る方法は、表面品質のみを向上させる。従来の加工処理と同様に工具が表面に沿って誘導されると、工具とワークピースの間の接触力が十分にならない。本発明によれば、研磨構成体を含んだ回転する工具内に特定の沈み込み量でワークピースが沈み込むことによって、研磨処理のための所要の接触力が達成される。沈み込み量は、負荷がかかっていない回転工具のシルエット内への理論的な沈み込みの深さによって判定される(図2)。
【0042】
材料削除が主に工具上で生じてワークピース上では生じないため、本発明によれば、沈み込み量を一定の範囲に保持するために、工具基準点とワークピースジオメトリの間の距離が常に減少する。それによって、大きな摩耗を有する工具でも、沈み込み量と、従って十分に高い接触力が保証される。
【0043】
沈み込み量の重要な制御変数は、押圧力と回転工具の剛性である。それらがさらに、工具およびワークピースの多くの因子に相関する。一部を挙げると、粒径、結合剤、摩耗、材料、表面品質、硬度、送り、回転数、または冷却剤等である。
【0044】
本発明によれば、0.05mmよりも大きい沈み込み量によって安定した研磨処理が好適に達成される。上方については、沈み込み量は工具の剛性によって制限される。本発明によれば、1mmまでの値が好適である。しかしながら、特に軟質かつ大きな工具の場合は、その数値を顕著に上回ることもできる。
【0045】
沈み込み量は、工具の回転軸に対して半径方向ならびに軸方向のいずれにおいても可能である。また、両方の方向の組み合わせも可能である。しかしながら、半径方向の沈み込み量を使用する場合は、3mm超の直径を有する工具が好適である。
【0046】
処理安定性と制御可能性に対して重要な別の特徴は、工具基準点とワークピースジオメトリの間の距離の時間変化である。その距離が、10秒の時間間隔にわたった累計において初期の沈み込み量の大きさを超える変化をしないことが好適である。
【0047】
大型の歯科補綴物の場合、所与の沈み込み量に対して、研磨開始に際して集中的な材料削除が生じるが、研磨終了時には工具摩耗のために殆ど全く研磨が行われないことが起こり得る。その場合、研磨工程中の動的な再調節を可能にする、請求項2に係る発明の特徴が極めて有効に適用される。
【0048】
本発明の好適な構成形態において、研磨構成体のばね定数が考慮される。本発明によれば、ばね定数が沈み込み量と相関する。基準工具直径において、本発明において設定される沈み込み量は押圧力とばね定数の比率となる。
【0049】
所要の押圧力が例えば4Nでありかつ例えば平均ばね定数が10N/mmであり得る場合、制御装置によってまず初期沈み込み量が0.4mmの値に設定される。その数値は、工具が摩耗する間に動的に高められる。
【0050】
請求項2に係る発明の特徴による好適な構成形態において、運動軌跡の事前計算を省略し、適応式に運動軌跡を計算して設定することが可能である。センサあるいはカメラが制御装置を介して適応式に沈み込み量を制御し、それによってワークピースと工具の間の相対動作がそれらの間の距離あるいは応力に関して継続的に再調節されるようにする。
【0051】
この解決方式において、制御装置がCNC機械あるいはCAMソフトウェア内に内蔵される。
【0052】
制御装置が沈み込み量を設定する。良好な研磨効果の理由のため、接触圧が最適な作業範囲内にあることが好適である。歯科用途において一般的な例えば8mmないし12mmの研磨構成体の寸法および直径において、最適な作業範囲は4N前後の押圧力、すなわち例えば3ないし6Nである。より小さな直径を有する工具の場合、設定押圧力がより小さくなる。原則的に、工具直径が小さくなる程押圧力も小さくなるということが成り立つ。3mmの工具の場合、2Nとし得る。10mmの工具の場合は4Nとなる。8mmないし12mmが好適であるが、機能性は3ないし15mmにおいて保証される。
【0053】
それらのパラメータの前述した比率に関する相関性のため、小さなばね定数が好適であることが明らかである。
【0054】
しかしながら、研磨構成体に過圧がかかる場合、すなわち研磨核体が効果的になるように圧縮される場合、ばね定数の急上昇が生じる。そのような作業箇所は、本発明において可能な限り回避すべきである。従って本発明によれば、例えば10N/mmの平均ばね定数を有する研磨構成体が好適である。
【0055】
本発明によれば、制御装置が予め仮想的な運動軌跡を例えばメモリ内に設定することが好適である。それがワークピースの輪郭に相当するが、沈み込み量の分は縮小する。ここで縮小とは、研磨構成体の実際の直径に相当するものよりもワークピースに接近していることを意味する。すなわち、同じデータを有する研磨工具に代えてフライス工具を適用する場合、大幅に大きな材料削除が実行される。
【0056】
仮想的な運動軌跡が、簡便なプログラミングと、例えばSTLフォーマットのフライスデータを介した設定を可能にする。
【0057】
別の好適な構成形態において、プレパラート境界およびその他の鋭敏な角部が研磨から除外される。そのことは、それらの除外する位置に負の沈み込み量を設定するか、または除外する位置で仮想的な保護ジオメトリの分だけワークピースジオメトリを拡大させることによって、仮想的な運動軌跡内において予め具現化することもできる。それによってそれらの位置における工具の著しい摩耗を有効に防止することができる。
【0058】
典型的な歯科補綴物について有効な沈み込み量に関する一連の試験を予め実施することも可能である。そこで、例えば3種の異なった大きさのクラウンについて異なった沈み込み量の数値で試験研磨工程を実行する。加えて、摩耗補償のために必要な再調節速度を判定するために、沈み込み量が時間に対してどのくらい速く変化するかを確認するための試験研磨工程を実行することができる。
【0059】
それによって最適化が可能になり、また実用のための同様な種類のクラウンに対して目標沈み込み量を設定することができるが、それは本発明に従って再調節によって変更可能である。
【0060】
本発明の好適な構成形態において、研磨力を測定することもできる。そのことは一連の試験と実用の両方に対して有効である。測定は、例えば工作機械の電力消費を検出することによって実行することができる。電力消費は研磨力の上昇に従って上昇し、また研磨力の低下に従って低下するため、工作機械の電力消費を通じて研磨力を測定することができる。それに代えて、力センサを介して研磨力を測定するか、または工作機械の回転数減少を介して研磨力を導出あるいは判定することができる。
【0061】
従来の研磨装置において、単に研磨工具が装着されたフライス盤によって切削軌跡を辿って動作する。しかしながら、その場合通常不十分な研磨結果につながる。本発明の好適な構成形態において、研磨構成体がワークピースの一面上に当接し、運動軌跡はワークピースの縁部の方向に延在する。
【0062】
その点に関して、運動軌跡が研磨構成体の回転方向に対して横断方向、すなわち例えば研磨構成体を支持する研磨工具の軸と平行に延在することが好適である。
【0063】
研磨構成体と研磨核体からなる研磨ユニットは、任意の適宜な方式で構成することができる。研磨構成体は、例えばブラシあるいは層板を備えることができる。ブラシあるいは層板は、研磨核体から半径方向外側に、あるいは少なくとも部分的に半径方向外側に延在する。円錐形の研磨ユニットを形成するために斜めへの延在を採用することもできる。
【0064】
ブラシあるいは層板を屈曲させることもでき、それによって鉢型の形状の研磨ユニットが形成される。角速度が略ゼロである研磨ユニットの軸方向先端がワークピースと噛合せず、従ってその位置では摩耗が発生しないことが好適である。従って、研磨ユニットの軸方向の先端において表面に対する軸の角度が顕著に90°から逸脱し、例えば80°未満とすべきである。
【0065】
本発明に係る研磨工具は研磨ユニットとシャフトからなる。シャフトは工作機械のスピンドルに締付け固定されるか、または締付け固定可能である。シャフトは発条鋼から形成することもでき、それによって研磨工具のばね定数に影響を与え、例えば高める。適用形態によってそのことが好適であり得る。
【0066】
他方、以下の方式で弾力性の工具を具現化することもできる:
【0067】
工具を三部品構造とし、核体=鋼製のシャフト、内側リング=柔軟なスポンジ体、外側リング=研磨媒体から形成する。
【0068】
好適な構成形態において、偏位した運動軌跡を有する複数の経路を具現化する。軌跡間隔がより大きくなるように選択することができ、そのために複数の経路を軌跡間隔の半分だけ偏位して通過することができる。その一例は:
1.全ての面を0.3mmの軌跡間隔で研磨する。
2.全ての面を再び0.3mmの軌跡間隔で研磨するが、最初の各軌跡に対していずれも0.1mm偏位させ、かつ別の順序で研磨する。
3.さらに、0.1mm偏位させてもう一度繰り返す。
【0069】
この実施形態によって、工具変化による点的な影響が削減される。
【0070】
別の好適な構成形態において、運動軌跡が決まった高さの線あるいは輪郭周りの螺旋形のみによって形成されるのではなく、トロコイド切削において設定されるように、循環式あるいは「上昇/下降/前進/後退」動作から形成される。
【0071】
別の好適な構成形態において、研磨する面に特別な順序が設定される。新規の微細工具を使用して深い裂孔を研磨するか、または:最初に面を研磨し、その後古い工具を裂孔内に押し込むことによってその工具を犠牲にする。
【0072】
他方、以下の原理も考えられる:使い込むことによって工具がより細粒度になり、工具特性が変化することによって新規の研磨工程に際して表面品質が向上する。工具の進行方向が工具の後部と比べて異なった性質を有し、そのことによって研磨工程が加速し得ることが考えられる。
【0073】
別の好適な構成形態において、予め定義された工具軌跡が補綴物のジオメトリデータには依存せず、特にブロックサイズあるいはジオメトリに依存して設定される。
【0074】
制御装置が沈み込み量制御ユニットを備え、その制御ユニットを使用して沈み込み量が再調節可能である。再調節は処理パラメータに基づいて実行するか、あるいはセンサの測定結果、特に上述したようなセンサの測定結果に基づいて実行する。
【0075】
本発明によれば、既存の歯科用工作機械、例えばフライス盤を、本発明に係る方法に適用し得ることが極めて好適である。市販の研磨工具を装備し、本発明に係る制御装置を構成する適宜なソフトウェアを有することによって、本発明に係る歯科用研磨装置として使用することが可能になる。
【0076】
好適な構成形態において、研磨構成体が、駆動機構と回転ずれしないように結合可能、特に駆動機構の工具スピンドル内にシャフトを締付け固定可能である研磨工具の一部であり、研磨構成体が前記研磨工具のシャフトと回転ずれしないように結合される。
【0077】
別の好適な構成形態において、特にいずれも現存する工作機械の回転駆動機構の消費電力に対して測定された研磨力が所与の数値を下回った場合に、制御装置が運動軌跡を再調節する。
【0078】
別の好適な構成形態において、研磨構成体がワークピースの一面上に当接し、運動軌跡がいずれもワークピースの面からの一方向、特に前記面の中央からワークピースの隣接する縁部に向かう方向性を有するような方式で、制御装置が運動軌跡を制御する。
【0079】
本発明のその他の詳細、特徴、ならびに利点は、添付図面を参照しながら後述する実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
図1】本発明に係る方法を実施するための例示的な工具を示した説明図である。
図2】本発明に係る歯科用研磨装置を運転する方法を実行するための本発明に係る歯科用研磨装置の実施形態を概略的に示した説明図である。
図3】工具直径とCNC直径の間の差である大きさに相関して記録された接触圧を示した説明図である。
図4】本発明に係る方法を実行するための仮想的な運動軌跡を計算するためのモデルを示した説明図である。
図5】歯科インジケータ上に境界ボックスを有する実施形態を概略的に示した説明図である。
図6】処理時間あるいは処理距離に関して記録した押圧力を概略的に示した説明図である。
図7】請求項3に係る実施形態における運動軌跡の適応式の調節を概略的に示した説明図である。
図8】請求項1に係る実施形態における運動軌跡を概略的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0081】
図1には、歯科用研磨工具10が概略的に示されている。その歯科用研磨工具は、研磨ユニット12を含む。研磨ユニット12は、研磨構成体14と研磨核体16とから形成される。研磨ユニット12はシャフト18上に取り付けられ、そのシャフトと共に研磨工具10を構成する。
【0082】
シャフト18は、工作機械の工具スピンドルによってガイドされ、締付け固定して保持されるように構成される。
【0083】
図示された実施例において、研磨構成体14は円形に延在する複数の層板20から主に形成される。層板20はいずれも研磨核体16に固定され、周知の方式によって研磨核体から半径方向外側に向かって幾らか斜めに延在する。層板は粒子状の研磨媒体を備えていて研磨効果を作用させる。
【0084】
研磨のために前記層板を、同時にワークピース22でもある歯科補綴物22に沿って誘導する。
【0085】
それによって研磨力が作用し、さらにその研磨力が、層板20が研磨核体16の方向に押圧されるか、または少なくとも部分的に側方に押圧され、すなわち研磨構成体14が圧接されるように作用する。
【0086】
この基本原理は周知であり、ここでは使用される参照符号を明確にするために図示されている。
【0087】
例示された実施形態において、研磨構成体14の直径が9mmで、研磨核体の直径は4mmである。
【0088】
図2には、ワークピース22が示されている。図2にはさらに研磨装置24が、左側の正面図と右側の側面図によって示されている。研磨装置24は、ワークピース22と研磨構成体14から構成される。
【0089】
本発明によれば、一定のあるいは実質的に一定の沈み込み量26が存在するような方式で、研磨ユニット12がワークピース22を介して誘導される。
【0090】
そのため、既知の工具直径28が前提とされる。その直径は、未使用の状態の工具の直径に相当する。研磨工具10はCNC工作機械30内に締付け固定され、また工具10は沈み込み量が生じるような方式でワークピース22の表面を介して誘導される。そのため、沈み込み量26の分だけ工具直径28と異なる直径を工具10が有することがCNCデータに対する前提とされる。その直径をCNC直径32と呼称する。
【0091】
制御は、工具基準点34に基づいて実行される。その基準点は、本実施例において研磨工具10の軸36上に存在する。
CNC工作機械30の一部である、概略的に示された制御装置40が設けられる。制御装置40は、空間中における工具基準点34の動作を制御し、また空間中におけるワークピース22の動作も制御する。動作の差から、工具10とワークピース22の間の相対動作が得られ、従って運動軌跡38が工具10とワークピース22の間の相対動作と同時に得られる。図2の右側に示されるように、図面の描写中で右から左に向かって、すなわち実質的に軸36と平行に動作が実行される。
【0092】
材料削除と、さらに特に材料変形は、運動軌跡38に対して横断方向に実行され、図2の右側の描写において図の平面に向かって進入するかあるいはそこから突出する方向に実行される。
【0093】
本発明に係る研磨工程の間に、工具10の摩耗が生じる。その摩耗は、その時点の実際の工具直径が工具直径28より小さくなることにつながる。
【0094】
そのことを補償するために運動軌跡38が再調節されるが、その場合工具基準点34とワークピース22がより接近するような方向に実施される。
【0095】
その運動軌跡38の変更は制御装置40によって制御される。その制御は、任意の適宜なパラメータ、例えば送り、ワークピースの材料、ワークピースの形状、研磨構成体の材料、研磨構成体14の形状、および/または研磨構成体14とワークピース22の間の接触圧等に基づいて実行される。
【0096】
別の実施形態において、センサ42が使用され、そのセンサは制御装置40に結合されていて、運動軌跡38を再調節する。センサによって研磨構成体14と、および/またはワークピース22の各計測値が測定されるが、継続的に測定されることが好適である。
【0097】
センサ42は光学センサあるいはカメラとすることが好適である。しかしながら、それに代えて機械式のセンサならびに接触プローブ、あるいは音響センサを使用するか、またはセンサの代わりに制御装置の信号を評価することも可能である。
【0098】
図1との比較において図2から理解されるように、研磨構成体14の半径方向の広がり、すなわち層板20の半径方向の長さが、工具直径28とCNC直径32の間の差に相当する沈み込み量26より顕著に大きくなる。
【0099】
それによって研磨構成体14の過圧が確実に防止される。過圧には、摩耗が異常に大きくなり、さらに弾力性が大きく低下するという問題がある。
【0100】
それに対して、沈み込み量26が好適な範囲にある場合はばね定数が実質的に一定である。研磨構成体14は弾力性であって、ワークピース22の表面に当接した際に実質的に一定に保持されるばね定数をもって変形する。
【0101】
上述したように、ばね定数は押圧力と沈み込み量26との比率である。逆に、沈み込み量26は押圧力をばね定数で除算した比率から計算することができる。
【0102】
例えば、押圧力が4Nでばね定数が5N/mmである場合0.8mmの沈み込み量が得られる。
【0103】
小さなばね定数は、大きな作用範囲を可能にする。そのことに関して図3のグラフを参照することができる。このグラフにおいて、沈み込み量26に対して接触圧が記録されている。
【0104】
図示された実施例において、最適な押圧力が3Nで最適な作用範囲は2.5Nないし3.5Nである。接触圧、すなわち単位面積当たりの押圧力が、研磨効果に対して決定的である。
【0105】
研磨構成体14の弾力性によって、実質的に一定の接触圧を、沈み込み量からの相対的な不依存性とともに達成することが好適である。
【0106】
この実施例においては、前述した実施例と比べて接触圧が高くなる。それに従って、最適な作用範囲が、研磨構成体14の過圧に相当する、より大きな沈み込み量の方向に移動する。
【0107】
この実施例において、硬質の中央部、すなわち研磨核体16のより高いばね定数が有効であるが、それに従った問題点も伴う。
【0108】
一つの解決策は、例えばシャフトを発条鋼から形成するかあるいは前述した三部品式の構成で形成することによって、シャフト18のばね予圧を実現することである。
【0109】
ばね予圧によって再び平坦な特性線が得られる。
【0110】
図4には、TCP(ツールセンターポイント)と呼称される工具の基準点34の算定が示されている。CAMソフトウェアのために、9mmの直径とその他の提示された寸法を有する仮想的な工具が設定される。
研磨構成体14は、弾力性のスパイラルツールとして示されている。研磨構成体は、硬質の研磨核体18と層板20とから形成される。層板20は外側に向かって尖形に延在し、従って内側に比べて外側で厚みが小さくなる。
【0111】
図4の下側には、仮想的な工具と実際の工具の重ね合わせが示されている。表記された寸法から、約0.5mmのオフセットが示される。
【0112】
表記された数値は単に例示的なものであり、必要に応じて広範囲に適応させることができる。
【0113】
図5には、いわゆる境界ボックス44を有する別の実施形態が示されている。境界ボックスとしては、仮想的なジオメトリあるいは「ボックス」であってその中に加工される対象物が存在するものが理解される。
【0114】
境界ボックス44は、センサ機構を使用して工具と歯科用対象物の寸法測定によって生成するか、あるいはCAMソフトウェアを使用して生成することができる。図5に示されるように、境界ボックス44によって、例えば上面図において弓状あるいは四角形の、研磨すべきインジケータの被包体が設定される。従って、必ずしも歯科インジケータの三次元輪郭をスキャンする必要はない。
【0115】
運動軌跡22を、例えば境界ボックス44内に仮想的に設定することもできる。
【0116】
境界ボックスをCAM内で自動的に計算するか、またはフライス盤のセンサ機構を使用して研磨すべきインジケータに対して所与の距離をもって研磨工具が移動するようにすることが考えられる。
【0117】
キャビティを填塞し従ってプレパラート境界を平滑化する仮想的な容積体から保護ジオメトリを形成することができる。キャビティは、プレパラート境界を超えて沈み込み量の高さまで容積体によって填塞される。
【0118】
境界ボックスは、三次元データから完全に独立して定義することができる。例えば、ブロック固有の運動軌跡「境界ボックス」を具現化するか、あるいはインジケータ固有のプログラム:「インレイ」、「クラウン」、「ブリッジ」、「部分義歯」、「義歯床」等を具現化することができる。または、平滑化処理の準備として、三次元データ(STLデータ)周りの円筒形境界ボックスが設定される。その後、一定の半径をもって研磨が実行される。しかしながら、その場合に輪郭を走行しない。境界ボックスは最小限の距離をもって輪郭の周りに設定され、外側に向かっては最上の位置にある最大沈み込み量まで延在する。
【0119】
図6は、時間あるいは処理距離に関して記録した押圧力を示したグラフである。
【0120】
点線の曲線46が理想的な軌道を示し:研磨持続時間全体にわたって一定の力が存在する。
【0121】
実線の曲線48は実際の軌道を示し:沈み込みの後に力が下降する。
【0122】
理想的な軌道に近づけることは、規則的に繰り返す、あるいは連続的な沈み込み量の再調節によって可能になり、曲線50に示される。
【0123】
歯科用工作機械によって駆動される研磨ユニットを備え、前記研磨ユニットが円形の研磨核体と同じく円形でかつ特に前記研磨核体を囲繞する研磨構成体とからなる、歯科用研磨装置を運転する適応式の方法が提供され、前記研磨装置が研磨すべきワークピースも備え、また前記研磨構成体がワークピースとの当接に際して弾力的に変形する。
【0124】
数値制御される制御装置が、ワークピース上で運動軌跡に沿って、前記ワークピースに相対して研磨構成体を動作させる。
【0125】
ワークピースが一定のあるいは実質的に一定の沈み込み量で研磨構成体内に沈み込み、制御装置が処理パラメータに基づいて沈み込み量を再調節する。
【0126】
運動軌跡38の制御が図7に示されている。基準点34の実際の運動軌跡は水平には延在せず、むしろ矢印52のように垂直方向の偏倚をもって延在する。軌跡計算が省略されるが、記憶されている軌跡を走行する。運動軌跡は二次元の格子内に存在することができる。例えば円筒形等の、三次元の運動軌跡も可能である。
【0127】
水平の動作によって接触54が生じると同時にノイズが発生する。このノイズは、音響センサ55によって検出される。研磨が開始され、運動軌跡と、従って沈み込み量が、継続的に再調節される。
【0128】
研磨構成体14の位置56上あるいはその直前に示されているように、ワークピースの表面が後退すると同時に接触が消滅するかあるいは弱くなる。ノイズの変化がセンサ55によって検出され、制御装置が運動軌跡38を再調節する。
【0129】
図8には、適応式の軌跡調節を伴わない実施形態が示されている。研磨構成体14の層板20は弾力性であり、ワークピース22の表面に追従する。そのため十分に弾力的な工具を必要とし、また予め定義された研磨パターンを走行する。
【0130】
工具の摩耗と相関性を有する任意の処理パラメータが選択される。そのため、経験的に判定されたあるいは一連の個別実験によって判定された摩耗特性が抽出される。その特性に基づいて工具の摩耗が検知されると同時に、ワークピース22の方向への運動軌跡の再調節が実行され、図8の描写において研磨構成体14の下降に相当する。
【符号の説明】
【0131】
10 歯科用研磨工具
12 研磨ユニット
14 研磨構成体
16 研磨核体
18 シャフト
20 薄層
22 歯科補綴物、ワークピース
24 研磨装置
26 沈み込み量
28 工具直径
30 CNC工作機械
32 CNC直径
34 工具基準点
36 軸
38 運動軌跡
40 制御装置
42 センサ
44 境界ボックス
46 曲線
48 曲線
50 曲線
52 矢印
54 接触
55 音響センサ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】