IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧 ▶ 国立大学法人東京工業大学の特許一覧

特開2022-130304共培養装置、共培養システム及び共培養方法
<>
  • 特開-共培養装置、共培養システム及び共培養方法 図1
  • 特開-共培養装置、共培養システム及び共培養方法 図2
  • 特開-共培養装置、共培養システム及び共培養方法 図3
  • 特開-共培養装置、共培養システム及び共培養方法 図4
  • 特開-共培養装置、共培養システム及び共培養方法 図5
  • 特開-共培養装置、共培養システム及び共培養方法 図6
  • 特開-共培養装置、共培養システム及び共培養方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130304
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】共培養装置、共培養システム及び共培養方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220830BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12M1/00 D
C12N1/00 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022007634
(22)【出願日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2021028695
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤山 陽一
(72)【発明者】
【氏名】田川 陽一
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA01
4B029AA08
4B029DB19
4B029DF04
4B065AA90X
4B065BC06
4B065CA46
(57)【要約】
【課題】嫌気環境で流れている培地及び好気環境で流れている培地の双方を経時的に評価することが可能な共培養装置を提供する。
【解決手段】共培養装置は、第1密閉容器と、第1密閉容器外に配置されている共培養デバイスと、第1密閉容器内に配置され、第1培地が貯留されている第1培地源と、第1培地よりも溶存酸素濃度が低い第2培地が貯留されている第2培地源と、共培養デバイスと第1培地源とに接続されている第1導管とを備えている。共培養デバイスは、第1主面及び第1主面の反対側にあり、かつ細胞を培養するための第2主面を含むメンブレンと、第1主面により一部が画成されており、かつ第1培地が流れるように配置されている第1流路と、第2主面により一部が画成されており、かつ第2培地が流れるように配置されている第2流路とを有する。第1流路の入口は、第1導管に接続されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共培養デバイスと、
前記共培養デバイスに接続されている第1密閉容器と、
前記第1密閉容器内に配置され、第1培地を前記共培養デバイスに供給するための第1培地源と、
前記第1培地よりも溶存酸素濃度が低い第2培地を前記共培養デバイスに供給するための第2培地源と、
前記共培養デバイスと前記第1培地源とに接続されている第1導管とを備え、
前記共培養デバイスは、
第1主面及び前記第1主面の反対側にあり、かつ細胞を培養するための第2主面を含むメンブレンと、
前記第1主面により一部が画成されており、かつ前記第1培地が流れるように配置されている第1流路と、
前記第2主面により一部が画成されており、かつ前記第2培地が流れるように配置されている第2流路とを有し、
前記第1流路の入口は、前記第1導管に接続されている、共培養装置。
【請求項2】
前記共培養デバイスは、前記第1密閉容器外に配置されており、
前記共培養デバイスは、前記メンブレンを前記第1主面の側及び前記第2主面の側から挟持している第1板状部材及び第2板状部材を有し、
前記第1導管は、前記第1板状部材に接続されている、請求項1に記載の共培養装置。
【請求項3】
前記共培養デバイスは、前記メンブレンが配置されている底面を有する培養槽を有し、
前記第1密閉容器は、前記共培養デバイスを受ける開口部を有する、請求項1に記載の共培養装置。
【請求項4】
前記第1培地源に貯留されている前記第1培地を前記第1導管を経由して前記第1流路に供給する第1駆動源をさらに備え、
前記第1駆動源は、前記第1密閉容器内に配置されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の共培養装置。
【請求項5】
前記共培養デバイスは、前記第1密閉容器側を向いている第1面と、前記第1面の反対側の第2面とを有し、
前記第1流路の入口は、前記第1面に形成されており、
前記第1流路の出口、前記第2流路の入口及び前記第2流路の出口は、前記第2面に形成されている、請求項1、請求項2及び請求項4のいずれか1項に記載の共培養装置。
【請求項6】
第2密閉容器をさらに備え、
前記共培養デバイスは、前記第2密閉容器内に配置されている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の共培養装置。
【請求項7】
前記第2流路の入口と前記第2培地源とを接続している第2導管と、
前記第2培地源に貯留されている前記第2培地を前記第2導管を経由して前記第2流路に供給する第2駆動源とをさらに備え、
前記第2駆動源及び前記第2培地源は、前記第2密閉容器内に配置されている、請求項6に記載の共培養装置。
【請求項8】
嫌気チャンバと、
前記嫌気チャンバ内に配置されている請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の前記共培養装置とを備える、共培養システム。
【請求項9】
第1主面及び前記第1主面の反対側にあり、かつ細胞を培養するための第2主面を含むメンブレンと、前記第1主面により一部が画成されている第1流路と、前記第2主面により一部が画成されている第2流路とを有する共培養装置を嫌気チャンバ内に配置する工程と、
前記第1流路に第1培地を供給する工程と、
前記第2流路に前記第1培地よりも溶存酸素濃度が低い第2培地を供給する工程とを備え、
前記第1流路に供給される前記第1培地は、前記嫌気チャンバ内で好気環境に保持されている、共培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共培養装置、共培養システム及び共培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物動態、薬物代謝等を調べることを目的として、腸内環境等を模擬したデバイスの開発が進められている。特許文献1(国際公開第2018/079793号)には、腸管上皮細胞を多孔質膜上に播種したデバイスを嫌気チャンバ内に配置し、腸内環境を模擬するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/079793号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1を含む従来の技術では、嫌気環境で流れている培地及び好気環境で流れている培地の双方を経時的に評価することが困難である。
【0005】
本発明は、嫌気環境で流れている培地及び好気環境で流れている培地の双方を経時的に評価することが可能な共培養装置、共培養システム及び共培養方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の共培養装置は、第1密閉容器と、第1密閉容器外に配置されている共培養デバイスと、第1密閉容器内に配置され、第1培地が貯留されている第1培地源と、第1培地よりも溶存酸素濃度が低い第2培地が貯留されている第2培地源と、共培養デバイスと第1培地源とに接続されている第1導管とを備える。共培養デバイスは、第1主面及び第1主面の反対側にあり、かつ細胞を培養するための第2主面を含むメンブレンと、第1主面により一部が画成されており、かつ第1培地が流れるように配置されている第1流路と、第2主面により一部が画成されており、かつ第2培地が流れるように配置されている第2流路とを有する。第1流路の入口は、第1導管に接続されている。
【0007】
本発明の共培養システムは、嫌気チャンバと、嫌気チャンバ内に配置されている上記の共培養装置とを備えている。
【0008】
本発明の共培養方法は、嫌気チャンバ内に、第1主面及び第1主面の反対側にあり、かつ細胞を培養するための第2主面を含むメンブレンと、第1主面により一部が画成されている第1流路と、第2主面により一部が画成されている第2流路とを有する共培養装置を配置する工程と、第1流路に第1培地を供給する工程と、第2流路に第1培地よりも溶存酸素濃度が低い第2培地を供給する工程とを備えている。第1流路に供給される第1培地は、嫌気チャンバ内で好気環境に保持されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の共培養装置、共培養システム及び共培養方法によると、嫌気環境で流れている培地及び好気環境で流れている培地の双方を経時的に評価することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る共培養システムの模式的な断面図である。
図2】共培養デバイス10の分解斜視図である。
図3】第1ホルダ17a及び第2ホルダ17bの共培養デバイス10への取り付け状体を説明するための分解斜視図である。
図4】実施形態に係る共培養方法の工程図である。
図5】比較例に係る共培養システムの模式的な断面図である。
図6】第1変形例に係る共培養システムの模式的な断面図である。
図7】第2変形例に係る共培養システムの模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0012】
(実施形態に係る共培養システム)
以下に、実施形態に係る共培養システムを説明する。
【0013】
<実施形態に係る共培養システムの概略構成>
図1は、実施形態に係る共培養システムの模式的な断面図である。図1に示されるように、実施形態に係る共培養システムは、共培養デバイス10と、第1密閉容器20とを有している。実施形態に係る共培養システムは、第1培地容器30aと、第2培地容器30bと、第3培地容器30cと、第4培地容器30dとを有している。実施形態に係る共培養システムは、第1チューブ40aと、第2チューブ40bと、第3チューブ40cと、第4チューブ40dとを有している。
【0014】
実施形態に係る共培養システムは、第1ポンプ50aと、第2ポンプ50bと、経上皮電気抵抗測定装置60とを有している。
【0015】
共培養デバイス10は、第1面10aと、第2面10bとを有している。第1面10aは、第1密閉容器20側を向いている。第2面10bは、第1面10aの反対側にある。共培養デバイス10は、内部に、メンブレン11と、第1流路12と、第2流路13とを有している。共培養デバイス10は、第1密閉容器20外に配置されている。
【0016】
メンブレン11は、第1主面11aと、第2主面11bとを有している。第2主面11bは、第1主面11aの反対側にある。第2主面11bは、細胞を培養するためのメンブレン11の面である。第2主面11b上で培養される細胞は、例えば、第2主面11bにおいてタイトジャンクション(密着結合)を形成する腸管上皮細胞である。第2主面11b上で培養される細胞の具体例は、Caco-2細胞である。
【0017】
メンブレン11は、例えば、ポリカーボネート製のトラックエッチ膜である。メンブレン11は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のほかの材料により形成されている多孔質膜やコラーゲンビトリゲル膜であってもよい。メンブレン11は、第2主面11bにおいて細胞培養が可能であり、第1主面11aからの酸素や養分の供給が可能であれば、特に限定されない。
【0018】
第1流路12は、一部が第1主面11aにより画成されている。第2流路13は、一部が第2主面11bにより画成されている。第1流路12は第1培地80aが流れる流路であり、第2流路13は第2培地80bが流れる流路である。
【0019】
第2培地80b中の溶存酸素濃度は、第1培地80a中の溶存酸素濃度よりも低い。すなわち、第1培地80aは好気培地であり、第2培地80bは嫌気培地である。第2培地80bは、菌を含んでいてもよい。第2培地80bに含まれる菌は、例えば、嫌気性菌である。
【0020】
第1培地80aが第1流路12を流れている間に、第1培地80a中の酸素が、メンブレン11を通って第2主面11b上で培養されている細胞に供給される。そのため、第2培地80b中の溶存酸素濃度が低くても、第2主面11b上で培養されている細胞を維持することができる。
【0021】
第1密閉容器20は、その内部空間を密閉可能な容器である。第1密閉容器20の内部空間は、好気環境に保たれている。より具体的には、第1密閉容器20の内部空間は、大気環境に保たれている。第1密閉容器20は、本体部21と、蓋22とを有している。本体部21は、筒状である。本体部21の下端は底壁により閉塞されており、本体部21の上端は開口されている。蓋22は、本体部21の上端に着脱可能に取り付けられている。蓋22には、蓋22を厚さ方向に貫通している貫通穴22aが形成されている。なお、第1密閉容器20内には、非接触酸素モニタ(例えば、励起光を照射することにより酸素量の測定が可能なスポットセンサ)が配置されていてもよい。これにより、第1密閉容器20内の残存酸素量を確認することができる。
【0022】
第1培地容器30a内には、第1培地80aが貯留されている。第1培地容器30aと第1流路12の入口とは、第1チューブ40aにより接続されている。第1チューブ40aは、第1密閉容器20内に配置されている。第1チューブ40aは、貫通穴22aを通って第1培地容器30aと第1流路12の入口とを接続している。
【0023】
第2培地容器30b内には、第2培地80bが貯留されている。第2培地容器30bと第2流路13の入口とは、第2チューブ40bにより接続されている。第2チューブ40bは、第1密閉容器20外に配置されている。第1流路12の入口は、第1面10aにある。第2流路13の入口は、第2面10bにある。
【0024】
第3培地容器30cと第1流路12の出口とは、第3チューブ40cにより接続されている。第4培地容器30dと第2流路13の出口とは、第4チューブ40dにより接続されている。第3チューブ40c及び第4チューブ40dは、第1密閉容器20外に配置されている。第1流路12の出口は、第2面10bにある。第2流路13の出口は、第2面10bにある。
【0025】
第1ポンプ50aは、第1培地容器30aに貯留されている第1培地80aを、第1チューブ40aを経由して第1流路12に供給する。第1ポンプ50aは、第1流路12から排出された第1培地80aを、第3チューブ40cを経由して第3培地容器30cに供給する。第1ポンプ50aは、第1チューブ40aに取り付けられている。すなわち、第1ポンプ50aは、第1密閉容器20内に配置されている。但し、第1ポンプ50aは、第1密閉容器20外に配置されていてもよい(第3チューブ40cに取り付けられていてもよい)。
【0026】
第2ポンプ50bは、第2培地容器30bに貯留されている第2培地80bを、第2チューブ40bを経由して第2流路13に供給する。第2ポンプ50bは、第1流路12から排出された第2培地80bを、第4チューブ40dを経由して第4培地容器30dに供給する。第2ポンプ50bは、第2チューブ40bに取り付けられている。すなわち、第2ポンプ50bは、第1密閉容器20外に配置されている。但し、第2ポンプ50bは、第4チューブ40dに取り付けられていてもよい。
【0027】
第1チューブ40a、第2チューブ40b、第3チューブ40c及び第4チューブ40dは、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン、シリコーン等により形成されているチューブである。第1ポンプ50aは、例えば、リングポンプである。第2ポンプ50bは、例えば、リングポンプである。
【0028】
共培養デバイス10は、第1電極14aと、第2電極14bとを有している。経上皮電気抵抗測定装置60は、第1電極14a及び第2電極14bに電気的に接続されている。これにより、経上皮電気抵抗測定装置60は、第1流路12を流れる第1培地80aと第2流路13を流れる第2培地80bとの間の電気抵抗値を測定する。
【0029】
第2主面11b上で培養されている細胞がタイトジャンクションを形成している場合にこの電気抵抗値が高くなり、第2主面11b上で培養されている細胞がタイトジャンクションを形成していない場合にこの電気抵抗値が低くなるため、この電気抵抗値を経上皮電気抵抗測定装置60で測定することにより、第2主面11b上で培養されている細胞の状態をモニタリングすることができる。
【0030】
嫌気チャンバ70内は、嫌気環境に保たれている。嫌気チャンバ70内には、実施形態に係る共培養装置が配置されている。
【0031】
<共培養デバイス10の詳細構成>
図2は、共培養デバイス10の分解斜視図である。図2に示されるように、共培養デバイス10は、メンブレン11と、第1ガラス板15aと、第2ガラス板15bと、第1シート16aと、第2シート16bとが積層された構造を有している。第1シート16a及び第2シート16bは、例えば、樹脂材料により形成されている。この樹脂材料の具体例は、シリコーンゴムである。
【0032】
第1ガラス板15aは、第1面10a側に配置されている。第1ガラス板15aには、貫通穴15aaが形成されている。貫通穴15aaは、厚さ方向に第1ガラス板15aを貫通している。貫通穴15aaは、第1流路12の入口になる。
【0033】
第2ガラス板15bは、第2面10b側に配置されている。第2ガラス板15bには、貫通穴15ba、貫通穴15bb及び貫通穴15bcが形成されている。貫通穴15baは、第2流路13の入口になる。貫通穴15bbは、第1流路12の出口になる。貫通穴15bcは、第2流路13の出口になる。
【0034】
メンブレン11は、第1シート16aと第2シート16bとの間に挟み込まれている。メンブレン11の第1主面11aは第1シート16a側を向いており、メンブレン11の第2主面11bは第2シート16b側を向いている。第1シート16a及び第2シート16bは、メンブレン11が挟み込まれている部分を除き、互いに接触している。
【0035】
第1シート16a及び第2シート16bは、第1ガラス板15aと第2ガラス板15bとの間に挟み込まれている。第1シート16aは、第1ガラス板15aに接触している。第2シート16bは、第2ガラス板15bに接触している。
【0036】
図示されていないが、第1ガラス板15aの第1シート16a側の面には第1電極14aが形成されており、第2ガラス板15bの第2シート16b側の面には第2電極14bが形成されている。第1電極14a及び第2電極14bは、例えば、白金により形成されている。第1電極14a及び第2電極14bは、例えば、スパッタリング法により形成される。
【0037】
第1シート16aの第1ガラス板15a側の面には、溝16aaが形成されている。溝16aaは、貫通穴15aaと重なる位置にある。第1シート16aには、貫通穴16ab及び貫通穴16acが形成されている。貫通穴16ab及び貫通穴16acは、厚さ方向に第1シート16aを貫通している。貫通穴16ab及び貫通穴16acは、溝16aaと重なる位置にある。
【0038】
第2シート16bの第2ガラス板15b側の面には、溝16baが形成されている。溝16baは、貫通穴15ba及び貫通穴15bcと重なる位置にある。
【0039】
第2シート16bには、貫通穴16bb及び貫通穴16bcが形成されている。貫通穴16bb及び貫通穴16bcは、厚さ方向に第2シート16bを貫通している。貫通穴16bbは、溝16baと重なる位置にある。貫通穴16bbは、貫通穴16abと重なる位置にある。貫通穴16ab及び貫通穴16bbは、メンブレン11により閉塞されている。貫通穴16bcは、貫通穴15bb及び貫通穴16acと重なる位置にある。
【0040】
貫通穴15aa、溝16aa、貫通穴16ac、貫通穴16bc、貫通穴15bb及びメンブレン11の第1主面11aは、第1流路12を構成している。貫通穴15ba、溝16ba、貫通穴15bc及びメンブレン11の第2主面11bは、第2流路13を構成している。
【0041】
第1ガラス板15aと第1シート16aとの接合、第1シート16aと第2シート16bとの接合及び第2シート16bと第2ガラス板15bとの接合は、例えば、酸素プラズマにより接合面が活性化された状態で当該接合面を加圧することにより行われる。
【0042】
図3は、第1ホルダ17a及び第2ホルダ17bの共培養デバイス10への取り付け状体を説明するための分解斜視図である。図3に示されるように、共培養デバイス10は、第1ホルダ17aと第2ホルダ17bとにより挟み込まれている。第1ホルダ17aと共培養デバイス10との間には、第1ゴムシート18aが挟み込まれている。第2ホルダ17bと共培養デバイス10との間には、第2ゴムシート18bが挟み込まれている。
【0043】
第1ホルダ17a及び第2ホルダ17bは、例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)により形成されている。第1ゴムシート18a及び第2ゴムシート18bは、例えば、ブチルゴムにより形成されている。
【0044】
第1ホルダ17aには、貫通穴17aaが形成されている。貫通穴17aaは、厚さ方向に第1ホルダ17aを貫通している。貫通穴17aaは、第1ホルダ17aが共培養デバイス10に取り付けられた状態で、貫通穴15aaと重なっている。第1ゴムシート18aには、貫通穴18aaが形成されている。貫通穴18aaは、第1ホルダ17aが共培養デバイス10に取り付けられた状態で、貫通穴15aaと重なっている。すなわち、貫通穴22aを通っている第1チューブ40aは、貫通穴17aa及び貫通穴18aaを通って貫通穴15aa(第1流路12の入口)に接続される。
【0045】
第2ホルダ17bには、貫通穴17ba、貫通穴17bb及び貫通穴17bcが形成されている。貫通穴17ba、貫通穴17bb及び貫通穴17bcは、厚さ方向に第2ホルダ17bを貫通している。第2ゴムシート18bには、貫通穴18ba、貫通穴18bb及び貫通穴18bcが形成されている。貫通穴18ba、貫通穴18bb及び貫通穴18bcは、厚さ方向に第2ゴムシート18bを貫通している。
【0046】
貫通穴17ba、貫通穴17bb及び貫通穴17bcは、第2ホルダ17bが共培養デバイス10に取り付けられた状態で、それぞれ、貫通穴15ba、貫通穴15bb及び貫通穴15bcと重なっている。貫通穴18ba、貫通穴18bb及び貫通穴18bcは、第2ホルダ17bが共培養デバイス10に取り付けられた状態で、それぞれ、貫通穴15ba、貫通穴15bb及び貫通穴15bcと重なっている。第2チューブ40bは、貫通穴17ba及び貫通穴18baを通って貫通穴15ba(第2流路13の入口)に接続される。第3チューブ40cは、貫通穴17bb及び貫通穴18bbを通って貫通穴15bb(第1流路12の出口)に接続される。第4チューブ40dは、貫通穴17bc及び貫通穴18bcを通って貫通穴15bc(第2流路13の出口)に接続される。
【0047】
共培養デバイス10は、第1ホルダ17a及び第2ホルダ17bに挟み込まれた状態で第1密閉容器20の蓋22に取り付けられる。この取り付けは、例えば、ねじ止めにより行われる。
【0048】
(実施形態に係る共培養方法)
以下に、実施形態に係る共培養方法を説明する。
【0049】
図4は、実施形態に係る共培養方法の工程図である。図4に示されるように、実施形態に係る共培養方法は、準備工程S1と、培地供給工程S2とを有している。培地供給工程S2は、準備工程S1の後に行われる。
【0050】
準備工程S1では、実施形態に係る共培養装置が、嫌気チャンバ70内に配置される。培地供給工程S2では、第1培地容器30aに貯留されている第1培地80aが第1チューブ40aを経由して第1流路12に供給される。また、培地供給工程S2では、第2培地容器30bに貯留されている第2培地80bが第2チューブ40bを経由して第2流路13に供給される。第1培地80aの第1流路12への供給は、第1ポンプ50aを駆動することにより行われる。第2培地80bの第2流路13への供給は、第2ポンプ50bを駆動することにより行われる。これにより、共培養デバイス10内において、細胞及び菌の共培養が行われる。
【0051】
第1ポンプ50aの駆動により、第1流路12を流れた第1培地80aは、第3チューブ40cを経由して第3培地容器30cに供給される。第2ポンプ50bの駆動により、第2流路13を流れた第2培地80bは、第4チューブ40dを経由して第4培地容器30dに供給される。第3培地容器30cに貯留されている第1培地80a及び第4培地容器30dに貯留されている第2培地80bは、例えば液体クロマトグラフィ質量分析法等を用いた質量分析に供される。
【0052】
(実施形態に係る共培養システムの効果)
以下に、実施形態に係る共培養システムの効果を、比較例と対比しながら説明する。
【0053】
図5は、比較例に係る共培養システムの模式的な断面図である。比較例に係る共培養システムは、図5に示されるように、第1密閉容器20を有していない。その他の点に関して、比較例に係る共培養システムは、実施形態に係る共培養システムと共通している。
【0054】
比較例に係る共培養システムでは、第1培地容器30a及び第1チューブ40aが第1密閉容器20内に配置されていないため、第1培地容器30aに貯留され、かつ第1流路12に供給される第1培地80aは、嫌気チャンバ70内の嫌気環境に曝されることになる。他方で、実施形態に係る共培養システムでは、第1培地容器30a及び第1チューブ40aが第1密閉容器20内に配置されているため、第1培地容器30aに貯留されている第1培地80aが、嫌気環境に曝されることなく第1流路12に供給される。
【0055】
また、実施形態に係る共培養システムでは、第2培地容器30b及び第2チューブ40bが嫌気チャンバ70内に配置されているため、第2培地容器30bに貯留されている第2培地80bは、嫌気環境下で流れて第2流路13に供給される。このように、実施形態に係る共培養システムによると、好気環境で流れている培地(第1培地80a)及び嫌気環境で流れている培地(第2培地80b)の双方を経時的に評価することが可能である。
【0056】
実施形態に係る共培養システムでは、第1流路12の出口(貫通穴15bb)、第2流路13の入口(貫通穴15ba)及び第2流路13の出口(貫通穴15bc)が第2面10bに形成されている一方で、第1流路12の入口(貫通穴15aa)が第1密閉容器20側を向いている第1面10aに形成されているため、第1培地容器30aが第1密閉容器20内に配置されている状態で第1流路12の入口と第1培地容器30aとを第1チューブ40aにより容易に接続することができる。
【0057】
(第1変形例に係る共培養システム)
以下に、第1変形例に係る共培養システムを説明する。ここでは、実施形態に係る共培養システムと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0058】
図6は、第1変形例に係る共培養システムの模式的な断面図である。第1変形例に係る培養システムは、図6に示されるように、第2密閉容器90を有している。第2密閉容器90の内部空間は、密閉されている。第2密閉容器90内には、共培養デバイス10、第2ポンプ50b及び第2培地容器30bが配置されている。その他の点に関し、第1変形例に係る共培養システムは、実施形態に係る共培養システムと共通している。なお、第2ポンプ50b及び第2培地容器30bは、第2密閉容器90外に配置されていてもよい。
【0059】
評価が長期間(例えば、数日間)にわたる場合、第1培地容器30aに貯留されている第1培地80aを交換するために、第1密閉容器20を嫌気チャンバ70外に持ち出す必要があることがある。この際、共培養デバイス10内の嫌気環境が維持できない。
【0060】
第1変形例に係る共培養システムでは、第2密閉容器90内に共培養デバイス10、第2ポンプ50b及び第2培地容器30bが配置されているため、第1培地容器30aに貯留されている第1培地80aを交換するために、第1密閉容器20を嫌気チャンバ70外に持ち出す際に嫌気チャンバ70内の酸素濃度が一時的に上昇したとしても、共培養デバイス10、第2ポンプ50b及び第2培地容器30bを嫌気環境に保持し続けることが可能になる。
【0061】
(第2変形例に係る共培養システム)
以下に、第2変形例に係る共培養システムを説明する。ここでは、実施形態に係る共培養システムと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0062】
図7は、第2変形例に係る共培養システムの模式的な断面図である。第2変形例に係る共培養システムでは、図7に示されるように、共培養デバイス10が、実施形態に係る共培養システムにおける共培養デバイス10の積層構造と異なり、培養槽19aと、アダプタ19bと、流路プレート19cとを有している。
【0063】
培養槽19aは、例えば、セルカルチャーインサートである。培養槽19aは、筒状部19aaと、メンブレン11とを有している。筒状部19aaは、例えば樹脂材料により形成されている。メンブレン11は、筒状部19aaの下端側を閉塞している。第1主面11a及び第2主面11bは、それぞれ、培養槽19a(筒状部19aa)の外部側及び内部側を向いている。
【0064】
蓋22には、蓋22を厚さ方向に沿って貫通して第1密閉容器20の内部に連通している貫通穴22bが形成されている。培養槽19aの下端側は、第1密閉容器20内に位置するように、貫通穴22bに挿入されている。培養槽19aと貫通穴22bの間は、ガス封止部19dで封止されている。これにより、第1密閉容器20内の気密性が維持されている。ガス封止部19dは、例えば、Оリングである。
【0065】
アダプタ19bは、メンブレン11(第2主面11b)から離間するように、上端側から筒状部19aa内に挿入されている。アダプタ19bの底面、筒状部19aaの内壁面及び第2主面11bにより画成される空間は、第2流路13を構成している。アダプタ19bは、例えば、ゴムにより形成されている。
【0066】
アダプタ19bには、貫通穴19ba及び貫通穴19bbが形成されている。貫通穴10ba及び貫通穴19bbは、アダプタ19bの上面からアダプタ19bの底面に向かう方向に沿って、アダプタ19bを貫通している。貫通穴19ba及び貫通穴19bbは、第2流路13に連通している。貫通穴19ba及び貫通穴19bbには、それぞれ、第2チューブ40b及び第4チューブ40dが挿入されている。これにより、第2チューブ40b及び第4チューブ40dが、第2流路13に接続されている。
【0067】
流路プレート19cは、板状の部材である。流路プレート19cは、第1密閉容器20内に配置されている。流路プレート19cには、溝19caと、貫通穴19cbと、貫通穴19ccとが形成されている。溝19caは、流路プレート19cの一方の主面に形成されている。流路プレート19cの一方の主面は、培養槽19a側を向いている。貫通穴19cb及び貫通穴19ccは、流路プレート19cを厚さ方向に沿って貫通して溝19caに連通するように、流路プレート19cの他方の主面に形成されている。
【0068】
培養槽19aは、第1主面11aが溝19caと対向するように、流路プレート19c上に配置されている。培養槽19aと溝19caとの間は、液体封止部19eにより液密に封止されている。液体封止部19eは、例えば、PDMS(ポリジメチルシロキサン)により形成されているシール又はOリングである。溝19ca、貫通穴19cb、貫通穴19cc、液体封止部19e及び第1主面11aは、第1流路12を構成している。貫通穴19cb及び貫通穴19ccには、それぞれ、第1チューブ40a及び第3チューブ40cが接続されている。その他の点に関し、第2変形例に係る共培養システムの構成は、実施形態に係る共培養システムの構成と共通している。
【0069】
第2変形例に係る共培養システムでは、第1培地容器30a及び第1チューブ40aが第1密閉容器20内に配置されているため、第1培地容器30aに貯留されている第1培地80aが、嫌気環境に曝されることなく第1流路12に供給される。また、第2変形例に係る共培養システムでは、第2培地容器30b及び第2チューブ40bが嫌気チャンバ70内に配置されているため、第2培地容器30bに貯留されている第2培地80bは、嫌気環境下で流れて第2流路13に供給される。このように、第2変形例に係る共培養システムによっても、好気環境で流れている培地(第1培地80a)及び嫌気環境で流れている培地(第2培地80b)の双方を経時的に評価することが可能である。
【0070】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0071】
10 共培養デバイス、10a 第1面、10b 第2面、11 メンブレン、11a 第1主面、11b 第2主面、12 第1流路、13 第2流路、14a 第1電極、14b 第2電極、15a 第1ガラス板、15aa 貫通穴、15b 第2ガラス板、15ba,15bb,15bc 貫通穴、16a 第1シート、16aa 溝、16ab 貫通穴、16b 第2シート、16ba 溝、16bb,16bc 貫通穴、17a 第1ホルダ、17aa 貫通穴、17b 第2ホルダ、17ba,17bb,17bc 貫通穴、18a 第1ゴムシート、18aa 貫通穴、18b 第2ゴムシート、18ba,18bb,18bc 貫通穴、19a 培養槽、19aa 筒状部、19b アダプタ、19ba 貫通穴、19bb 貫通穴、19c 流路プレート、19ca 溝、19cb 貫通穴、19cc 貫通穴、19d ガス封止部、19e 液体封止部、20 第1密閉容器、21 本体部、22 蓋、22a 貫通穴、22b 貫通穴、30a 第1培地容器、30b 第2培地容器、30c 第3培地容器、30d 第4培地容器、40a 第1チューブ、40b 第2チューブ、40c 第3チューブ、40d 第4チューブ、50a 第1ポンプ、50b 第2ポンプ、60 経上皮電気抵抗測定装置、70 嫌気チャンバ、80a 第1培地、80b 第2培地、90 第2密閉容器、S1 準備工程、S2 培地供給工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7