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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130334
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】調整可能な光学デバイス用の液体
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/14 20060101AFI20220830BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
G02B3/14
C08L83/04
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022026323
(22)【出願日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】10 2021 104 571.1
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】515100639
【氏名又は名称】オプトチューン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド アンドレアス ニーデラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ブランドル
(72)【発明者】
【氏名】マルタ ヴィディエラ デル ブランコ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP031
4J002CP032
4J002CP082
4J002CP092
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリジメチルシロキサン(PDMS)膜を使用する調整可能なレンズでの使用に適した液体の範囲を拡大する。
【解決手段】前記膜は、容積を少なくとも部分的に区画し、前記容積は、一般式(1)のシリコーンベースのポリマーで満たされ、

式中、Rは、アルキル部分、-(CH)-フェニル部分、フェニル部分、CF部分又はアルキル-CN部分であり、R~Rは、-H部分、アルキル部分、(CH)-フェニル部分又はフェニル部分である。前記ポリマーは、任意に、-Fで置換されていてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容積(volume)と膜とを備える光学調整可能なデバイスであって、前記膜は、前記容積を少なくとも部分的に区画し、かつ前記容積は、一般式1の少なくとも1つの化合物を含む液体で満たされ、
【化1】
式中、
各Rは、いずれの他のRから独立して、C-アルキル-Aから選択され、特に各Rは、C-アルキル-Aから選択され、ここで
Aは、-H、CN、フェニル、-(CH)-フェニル及びCFから選択され、特に-H及び-CNから選択され、かつ
xは、3~20の間の整数であり、
各Rは、いずれの他のRから独立して、C-アルキル、C-アルキル-B、フェニル、-(CH)-フェニルから選択され、特にいずれの他のRから独立して、-H、C-アルキル、フェニル、-(CH)-フェニルから選択され、ここで
Bは、CN、フェニル、-(CH)-フェニル及びCFから選択され、特にCF及び-CNから選択され、
yは、1~17の間の整数であり、特に1~6の間の整数であり、
、R、R、R、R及びRは、独立して、-H、C1~4アルキル、フェニル、及び-(CH)-フェニルから選択され、特にメチルから選択され、
nは、1~50の間の整数であり、
xとyとの和は、≦21であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、1つ又は複数の置換基Fによって任意に置換され、
かつ
前記膜は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の膜又は置換PDMSであり、特に非置換PDMSである、
前記光学調整可能なデバイス。
【請求項2】
前記一般式1の化合物の屈折率は、1.33~1.6の間であり、特に1.44~1.47の間である、請求項1に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項3】
前記一般式1の化合物の粘度は、≦100000cStであり、特に5~2000cStである、請求項1又は2に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項4】
Aが-CNである場合、xは3~13の間の整数であり、特に3~6の間の整数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項5】
n≧2の場合、AはすべてのRの少なくとも50%において-CNである、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項6】
Aは、すべてのRについて-CNである、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項7】
Aは、すべてのRについて-Hである、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項8】
Aが-Hである場合、xは6~20の間の整数であり、特に9~20の間、より特に9~13の間の整数である、請求項1~7のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項9】
部分C-アルキル-AのC-アルキルは、直鎖状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項10】
nは、1~10の間の整数であり、特に1~5の間、さらにより特に3~5の間の整数である、請求項1~9のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項11】
nは、11~29の間の整数である、請求項1~10のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項12】
nは、30~50の間の整数である、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項13】
前記膜は、透明であり、かつ-40℃~+200℃の間の温度で安定である、請求項1~12のいずれか一項に記載の光学調整可能なデバイス。
【請求項14】
光学調整可能なデバイスにおける、請求項1~13のいずれか一項に記載のとおりの一般式1の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容積(volume)と膜とを備え、前記膜は前記容積を少なくとも部分的に区画し、かつ前記容積はシロキサンベースのポリマーで満たされている光学調整可能なデバイスに関する。さらに、本発明は、光学調整可能なデバイスにおける前記ポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
調整可能なレンズなどの光学デバイスは、通常、透明かつ弾性的に拡張可能な膜と、前記膜に対向する(面する)光学要素と、前記光学要素を前記膜に接続する壁とを備える。膜、光学要素、及び壁が、液体で満たされているレンズの容積を区画する。
【0003】
膜の曲率を変化させることでレンズの焦点を調節することができる。これは例えば、膜の光学的にアクティブな部分を変形させるように保持リングを膜に押し付けるアクチュエータを使用することで実現される(米国公開第2010/202054号)。
【0004】
膜を変形させるために、例えばコイル(国際公開第2010/104904号)又は膜を直接くぼませるリング状のピストン(米国公開第2011/267703号)などによって、力が膜に直接加えられるレンズアセンブリも知られている。
【0005】
或いは、光学要素に対して高さを調節できるように設計された壁を使用することで、膜の光学的挙動を変化させることができる。壁の高さを変更することによって、容積内に存在する流体の圧力とそれに伴う膜の曲率、及び/又は光学要素に対する膜の空間的な位置が調節される。
【0006】
国際公開第2018/119408号(A1)は、患者の眼の水晶体嚢内に移植するための収容型眼内レンズを開示している。このレンズは、シロキサンベースの液体が満たされた外部流体リザーバーと内部流体チャンバーとを備える。充填可能な容積は、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)コポリマーなどの高分子材料によって区画される。対象の水晶体嚢内の水は、浸透圧平衡を達成するために、ポリマー材料を介して内部流体チャンバー又は外部流体リザーバーの内部又は外部へ移動することができる。
【0007】
眼内レンズ装置に適したシロキサンベースのレンズオイルのさらなる例は、国際公開第2017/205811号に開示されている。分子量が約15,000ダルトン未満の任意の成分の約4重量%未満であるジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンとの混合物は、接触においてバルクポリマー材料の膨潤をもたらさないことが見出された。バルクポリマー材料は、シリコーン、アクリル、プラスチック又はポリマーのヒドロゲルから構成され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国公開第2010/202054号
【特許文献2】国際公開第2010/104904号
【特許文献3】米国公開第2011/267703号
【特許文献4】国際公開第2018/119408号(A1)
【特許文献5】国際公開第2017/205811号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
化学構造と組成に基づいて、調整可能な液体レンズでの使用に適したほとんどのエラストマー膜材料は、容積に満たされた液体によって引き起こされる溶解性及び膨潤性による影響を受けてしまう。
【0010】
本発明は、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane:PDMS)膜及び置換PDMSを使用する液体エラストマー技術に基づく調整可能なレンズでの使用に適した液体の範囲を拡大することを目的としている。本発明の液体は、低温可撓性、UV下での長期安定性、熱及び水分安定性、及び高透過性などの多くの肯定的な特性を適用して、様々な要求を有する広い範囲の可能な用途において、PDMS及び置換PDMSの使用を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本明細書の独立請求項の主題によって達成され、さらに有利な実施形態は、本明細書の従属請求項、実施例、図、及び一般的な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の膜を第1の保持部材に取り付けた状態を示す平面図である。
図2図2は、ベローズ形態の第1の壁を有する本発明によるレンズの断面図である。
図3図3は、膜の形態の第2の壁を有する本発明によるプリズムの断面図である。
図4図4は、膜の形態の2つの壁を有する本発明による最も単純なプリズムの断面図である。
図5図5は、中立位置(A)及び動作位置(B)にある膜の形態の第1の壁を有する本発明による調整可能なプリズムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の概要
調整可能なレンズなどの光学デバイスでの使用に適した液体は、特定の基準を満たす必要がある。適切な分子は、PDMSマトリックスなどの膜の環境への化学親和力と、膜の3次元構造及び安定性とのバランスが取れる一連の特性を含む必要がある。重要な役割は、膜の広範囲な膨潤を回避するために、液体の分子が膜の表面又は膜の周囲のポリマーネットワークのバルクに浸透しないように溶解度が低いことである(通常1.5%未満)。
【0014】
理想的なケースでは、-40℃~+85℃の目的温度範囲で測定可能な膨潤が観察されず(より大きなアルキル及びニトリルの官能化シロキサンの場合)、一方、適用において環境的に関連する条件の急激な変化(毎分約20℃を超える温度変化など)が見られない条件下では、最大4%の膨潤又は最終的にはさらにより多くの膨潤が許容される(メチルフェニル修飾シロキサンを用いて測定)。溶解と拡散は両方とも完全に可逆的でなければならない。これらの過程をモニターするために、特定の膜に対する分子の適合性を判断することが可能であるように正確な試験条件が基本的に重要である。
【0015】
許容できる膨潤性の具体的な限度は、場合及び用途の具体的な問題である。例えば、高温又は高圧条件で使用されるレンズの液体では、膨潤性及び拡散性が温度に依存し、つまり膜のエラストマーにおける液体の溶解度が温度とともに増加し、それにより膨潤するために、低温で使用されるレンズの液体とは異なる方法で評価されることもある。PDMSなどのエラストマーに対する熱衝撃は、過飽和の状況を引き起こし、その結果、液体がポリマーマトリックスから押し出され、薄い膜など表面効果が生じ、その後、表面に核形成と液滴とが形成される可能性がある。それにもかかわらず、特定の条件では、最大5%の膨潤性が許容される。
【0016】
最後に、液体とエラストマーとの材料のペアにおいて、その特性の完全な範囲が液体分子をポリマーバルクに浸透させない場合、又はその特性の完全な範囲がその分子をポリマーバルクと表面とを通して同時に浸透させない場合、かつポリマーネットワークが不安定な様式で影響を受けない限り、光学的用途に適合することが証明される。これは、親和性が高く、分子の他の媒体(気体又は他の液体)への放出を阻止する場合に得ることができる。
【0017】
本発明は、PDMS膜材料に対して上記の基準を満たす液体(一般式1の化合物)で満たされた容積を備える光学調整可能なデバイスを記載する。
【0018】
本発明の第1の態様は、容積と膜とを備える光学調整可能なデバイスに関し、前記膜は、前記容積を少なくとも部分的に区画し、かつ前記容積は、一般式1の少なくとも1つの化合物を含む液体で満たされ、
【化1】
式中、
各Rは、いずれの他のRから独立して、C-アルキル-Aから選択され、特に各Rは、C-アルキル-Aから選択され、ここで
Aは、-H、CN、フェニル、-(CH)-フェニル及びCFから選択され、特に-H及び-CNから選択され、かつ
xは、3~20の間の整数であり、
各Rは、いずれの他のRから独立して、-H、C-アルキル、C-アルキル-B、フェニル、-(CH)-フェニルから選択され、特にいずれの他のRから独立して、-H、C-アルキル、フェニル、-(CH)-フェニルから選択され、ここで
Bは、CN、フェニル、-(CH)-フェニル及びCFから選択され、特にCF及び-CNから選択され、
yは、1~17の間の整数であり、特に1~6の間の整数であり、
、R、R、R、R及びRは、独立して、-H、C1~4アルキル、フェニル、及び-(CH)-フェニルから選択され、特にメチルから選択され、
nは、1~50の間の整数であり、
xとyとの和は、≦21であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、1つ又は複数の置換基Fによって任意に置換され、
かつ
前記膜は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)又は置換PDMSの膜であり、特に非置換PDMSである。
【0019】
上記のとおり、液体エラストマー技術に基づく調整可能なレンズは、前記容積内に満たされた液体に接触する弾性膜によって少なくとも部分的に区画された容積を備える。弾性膜の曲率を変化させることで、調整可能なレンズの焦点を調節することができる。膜の曲率を調節する手段は、当業者に知られている。このようなデバイスの非限定的な例を図1及び図2に示す。
【0020】
該容積は、シリコーンベースのポリマー(一般式1の化合物)で満たされる。該ポリマーは、側鎖R及びRを特徴とする1~50個のモノマーを含む。
【0021】
本発明の第2の態様は、光学調整可能なデバイスにおける、本発明の第1の態様に記載のとおりの一般式1の化合物の使用に関する。
【0022】
用語と定義
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が適用され、適切な場合には、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆もまた同様とする。以下に定めるいずれの定義が、参照により本明細書に組み込まれるいずれの文書と矛盾する場合、この定められた定義が優先されるものとする。
【0023】
本明細書で使用されるとおり、用語「備える、含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び他の同様の形式の用語、並びにそれらの文法的に同等の用語は、これらの単語のいずれか1つに続く1つ又は複数の項目が、かかる1つ又は複数の項目の完全なリストであることを意味しないこと、又はリストされたこの1つ又は複数の項目のみに限定されることを意味することについて、同等の意味であり、かつオープンエンドであることが意図されている。例えば、成分A、B及びCを「備える、含む(comprising)」という品目は、成分A、B及びCからなる(すなわち、成分A、B及びCのみを含有する)こともでき、或いは成分A、B及びCにのみならず、1つ又は複数の他の成分を含むこともできる。そのため、「備える、含む(comprising)」及び同様の形式の用語、並びにそれらの文法的に同等の用語は、「から本質的になる」又は「からなる」の実施形態の開示が含まれることが意図及び理解される。
【0024】
値の範囲を示す場合は、特記しない限り、範囲の下限の単位の10分の1までの、上限と下限の範囲の間の値、及びその記載の範囲のいずれの他の記載の値若しくはその範囲の間の値が本発明内に包含されることが理解され、この記載の範囲において、いずれの具体的に排除された制限を受ける。記載の範囲が限度の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限度の一方又は両方を除いた範囲はまた開示に含まれる。
【0025】
本明細書において、値又はパラメータに関する「約」の言及は、その値又はパラメータそれ自体を対象にした変化を含む(及び記載する)。例えば、「約X」に関する記載は、「X」の記載を含む。
【0026】
添付の特許請求の範囲を含み、本明細書で使用されるとおり、単数形の「a」、「or(又は)」及び「the」は、特記しない限り、複数形の参照語を含む。
【0027】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。
【0028】
本明細書の文脈における「C-アルキル」又は「C-アルキル」という用語は、ある数(x又はy)のC原子からなるアルキル部分に関する。アルキル部分は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。例えば、x又はyが4の場合、n-ブチル、2-メチルプロピル、及びtert-ブチルが例として挙げられる。
【0029】
「PDMS」という用語は、ポリジメチルシロキサン(CAS番号63148-62-9)に関する。
【0030】
「置換PDMS」という用語は、フェニル又はフッ化物などの追加の置換基によって少なくとも部分的に官能化されたPDMSを指す。
【0031】
広義の「置換」という用語は、フッ化物Fによって1つ又は複数の炭素原子が置換されているアルキル又はフェニルを指す。非限定的な例としては-CHF、-CHF、-CF、-(CHF、-(CHF)H、-(CHF)F、-C、-(CHF、-(CHF)H、-(CHF)F、-C、-(CHF、-(CHF)H、-(CHF)F及び-Cが挙げられる。フェニルにより1つ又は複数の炭素原子が置換されている置換アルキルについても、同様の定義が適用される。
【0032】
発明の詳細な説明
本発明の第1の態様は、容積と膜とを備える光学調整可能なデバイスに関し、前記膜は、前記容積を少なくとも部分的に区画し、かつ前記容積は、一般式1の少なくとも1つの化合物を含む液体で満たされ、
【化2】
式中、
各Rは、いずれの他のRから独立して、C-アルキル-Aから選択され、特に各Rは、C-アルキル-Aから選択され、ここで
Aは、-H、CN、-(CH)-フェニル、フェニル及びCFから選択され、特に-H及び-CNから選択され、かつ
xは、3~20の間の整数であり、
各Rは、いずれの他のRから独立して、-H、C-アルキル、C-アルキル-B、フェニル、-(CH)-フェニルから選択され、特にいずれの他のRから独立して、-H、C-アルキル、フェニル、-(CH)-フェニルから選択され、ここで
Bは、CN、フェニル、-(CH)-フェニル及びCFから選択され、特にCF及び-CNから選択され、
yは、1~17の間の整数であり、特に1~6の間の整数であり、
、R、R、R、R及びRは、独立して、-H、C1~4アルキル、フェニル、及び-(CH)-フェニルから選択され、特にメチルから選択され、
nは、1~50の間の整数であり、
xとyとの和は、≦21であり、
、R、R、R、R、R、R及びRは、1つ又は複数の置換基Fによって任意に置換され、
かつ
前記膜は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の膜又は置換PDMSであり、特に非置換PDMSである。
【0033】
PDMS又は置換PDMSは光学的に透明である。
【0034】
膜の曲率を変化させることで、レンズの焦点を調節することができる。これは、例えば、膜を変形させるために膜に対して保持リングを押し付けるアクチュエータ、膜を直接くぼませるコイル又はリング状のピストン、或いは光学要素に対して高さを調節できるように設計された壁を使用することによって達成することができる。
【0035】
一般式1の化合物を充填することができる調整可能なデバイスの非限定的な例を図に示す。
【0036】
特定の実施形態では、PDMS又は置換PDMSは、低粘弾性ダンピングを有する純粋な弾性体である。
【0037】
特定の実施形態では、PDMSは、フェニル又はフッ化物などの追加の置換基によって少なくとも部分的に官能化することができる。官能基は、適用される液体と前記PDMSとの間の溶解度が特に低くなるように適用される液体に応じて選択することができる。
【0038】
特定の実施形態では、PDMSは非置換PDMSである。
【0039】
特定の実施形態では、容積は、一般式1の少なくとも1つの化合物で満たされ、かつ添加剤、特に抑制剤又は吸収剤などの材料の安定性を変化させるための添加剤を含む。
【0040】
特定の実施形態では、容積は、一般式1の2つ以上の化合物の混合物で満たされる。これにより、屈折率又は密度などの光学特性を調節できる。
【0041】
特定の実施形態では、容積は、一般式1の2つ以上の化合物の混合物で満たされ、かつ添加剤、特に抑制剤又は吸収剤などの材料の安定性を変化させるための添加剤を含む。
【0042】
特定の実施形態において、容積は、一般式1の1つ又は複数の化合物で少なくとも50%満たされる。
【0043】
特定の実施形態では、光学調整可能なデバイスは、膜の曲率を調節するように設計されたデバイスを備える。
【0044】
特定の実施形態において、光学調整可能なデバイスは、膜の曲率を調節するためのアクチュエータを備える。
【0045】
特定の実施形態では、光学調整可能なデバイスは、膜の曲率を調節するように設計されたリング、コイル、又はピストン、又は膜の曲率を調節するために高さが調節できるように設計された壁を備える。
【0046】
この容積は、シリコーンベースのポリマー(一般式1の化合物)で満たされる。該ポリマーは、側鎖R及びRを特徴とする1~50個のモノマーを含む。
【0047】
側鎖は立体障害に寄与し、膜構造を通して一般式1の化合物の浸透及び輸送を制限する。
【0048】
該ポリマーは、R及び/又はRに変更される部分を有する様々なモノマーで構成されていてもよい。例えば、Rにアルキルを有するモノマーとRにアルキル-CN部分を有するモノマーとの混合物から構成されるポリマーであってもよい。また、1つのポリマー内でもRにおける変動が可能である。例えば、Rがアルキル-CN部分であることを特徴とするポリマーにおいて、R部分は、メチルと-CH-フェニルとの間で変化してもよい。
【0049】
及びRにおけるCアルキル部分及びCアルキル部分は、それぞれ、直鎖状又は分岐状のアルキルであってもよい。
【0050】
特定の実施形態において、各Rは、いずれの他のRと同一である。
【0051】
特定の実施形態において、各Rは、いずれの他のRと同一である。
【0052】
特定の実施形態において、各Rは、いずれの他のRと同一であり、かつ各Rは、いずれの他のRと同一である。
【0053】
部分R~Rは、任意にフッ素化されていてもよい。特に、ポリマーの立体効果は、完全又は部分的なF置換によって調節することができる。したがって、膜構造を通るポリマーの浸透及び輸送を回避することができる。これは、例えばRにおけるアルキル部分はC3~7アルキルの範囲など、xとyとの合計がむしろ小さい場合に特に重要である。
【0054】
特定の実施形態では、F置換は40%を超える範囲である。
【0055】
特定の実施形態において、部分R、R、R、R、R及びRは、完全に又は部分的に置換され、特に完全に置換されている。これは、例えば、Rにおけるアルキル部分はC3~7アルキルの範囲など、xとyとの合計がむしろ小さい場合に特に重要である。
【0056】
及びRにおいてより長い側鎖を有する実施形態では、側鎖は、特に少なくとも40%置換されている。
【0057】
及びRにおいてより長い側鎖を有する実施形態では、側鎖は、特に少なくとも40%で置換され、かつ部分R、R、R、R、R及びRは、完全又は部分的に置換され、特に完全に置換されている。
【0058】
光学レンズに適用するために、容積に満たされる液体(一般式1の化合物)は透明である必要がある。
【0059】
特定の実施形態では、一般式1の化合物の屈折率は、1.33~1.6の間であり、特に1.44~1.47の間である。
【0060】
一般式1の化合物の粘度は、数nと相関している。多くのモノマーからなるポリマーは、より少ないモノマーからなるポリマーよりも粘性が高い。ポリマーの粘度は、光学調整可能なデバイスの焦点が調節される速度に影響する。ほとんどの用途では、100000cSt以下の粘度が適している。
【0061】
特定の実施形態において、一般式1の化合物の粘度は、≦100000cStであり、特に5~2000cStである。
【0062】
Aが-CNである場合、一般式1の化合物は極性を有する。極性構造は非極性環境での溶解度が低いため、PDMSを弾性膜要素として使用する場合、例えば閉鎖系で水の存在が制御されている条件下では、極性液体の使用が適している。
【0063】
特定の実施形態では、Aが-CNである場合、xは3~13の間の整数である。
【0064】
特定の実施形態では、Aが-CNである場合、xは3~6の間の整数である。
【0065】
一般式1の極性化合物の場合、アルキル、トリフルオロアルキル及びフェニルなど、特にフェニル、-(CH)-フェニル及びCF、より特にCFなどの他の非反応性部分による-CN部分の点置換(punctual substitution)によって、膨潤又は他の特性に著しく影響を与えずに光学デバイスに適用するために屈折率を調節することが可能である。-CN部分の特性を全体的に維持し、かつPDMSなどのエラストマーとの適合性を維持するために、これらの置換体の割合は最大50%の範囲である可能性がある。
【0066】
特定の実施形態では、n≧2の場合、Aは、すべてのRの少なくとも50%において-CNである。
【0067】
特定の実施形態において、Aは、すべてのRについて-CNである。
【0068】
Aが-Hである場合、一般式1の化合物は疎水性である。液体の疎水性の特性は、水が中及び外に拡散することができる開放系での使用に好ましい。
【0069】
特定の実施形態では、Aは、すべてのRについて-Hである。
【0070】
特定の実施形態では、xは、Aが-Hである場合、6~20の間の整数であり、特に9~20の間の整数である。
【0071】
一般式1の疎水性の化合物の場合、C6~13アルキル、特にC9~13アルキルをRで使用して、バランスの取れた一連の特性を維持することができる。Rにおいて短い側鎖を含む化合物(例えば、x=9)の場合、粘度と融点とはどちらもむしろ低いが、多くの用途にとって興味深いことに、85℃付近の高温でのPDMSで作成された膜の膨潤は適切になる。一方、R(x=12又は13)にむしろ大きなアルキル基を含む化合物は、融点が高く、通常は10~15℃を超えるため、その使用が制限される可能性がある。それにもかかわらず、より短い又はより長いアルキル鎖を含む化合物は、ほとんどの標準的な用途に適している。
【0072】
特定の実施形態では、xは、Aが-Hである場合、6~13の間の整数であり、特に9~13の間の整数である。
【0073】
特定の実施形態では、Aが-Hである場合、xは9~12の間の整数である。
【0074】
また、一般式1の疎水性の化合物の場合、R及び/又はRの部分置換により、屈折率を調節することができる。例えば、Rにおけるメチル基は、いくつかのモノマーにおいて、フェニル部分又は-(CH)-フェニル部分によって置換されてもよい。
【0075】
特定の実施形態において、部分C-アルキル-AのC-アルキルは、直鎖状である。
【0076】
特定の実施形態において、部分C-アルキル-AのC-アルキル及びC-アルキルは、直鎖状である。
【0077】
通常、nの数は1~50の範囲である。この範囲内で、弾性膜材料の基本的な適合性と無視できるほどの膨潤が達成される。注目すべきことに、粘度はモノマーの数nの増加とともに増加する。ほとんどの用途では、特に低温で適応要素のチューニング速度が速くなるため、低い粘度が好ましい。それにもかかわらず、この光学部品のダイナミクスがそれほど重要でない場合は高い粘度が好ましいが、機械的衝撃に対する堅牢性、低蒸気圧、キャビテーションに対する堅牢性(誘導気泡形成を伴う)などが好ましい。妥当な粘度の限度は100000cStである。1~5などの低い数のnは、高温と機械的衝撃とが、特に高圧ガス雰囲気の低温環境からの急速な移動の後に組み合わされて、光学デバイス内の低圧で蒸気が発生する特定のリスクを引き起こす可能性がある。それにもかかわらず、低温又は非常に低い温度では、そのような低分子量型の液体が好ましいこともある。焦点調整可能なレンズなどの調整可能な光学デバイスが光学システムの重量を大幅に削減できるスペースでの用途において、これらの極端な条件(高温/低温、高圧/低圧)が見出される可能性がある。
【0078】
特定の実施形態では、nは1~5の間の整数である。
【0079】
用途のために、例えばカメラシステムにおいて、周囲温度(例えば、15℃~40℃、好ましくは-20℃~85℃)では、11~29個のモノマーからなるポリマーが特に適している。
【0080】
特定の実施形態では、nは11~29の間の整数である。
【0081】
高温(例えば、40℃~150℃)で特に使用される光学調整可能なデバイスでは、ポリマーの標準状態(Standard Temperature and Pressure:STP)の粘度が高い必要がある。
【0082】
特定の実施形態では、nは30~50の間の整数である。
【0083】
適切な膜は、非常に広い温度範囲、すなわち少なくとも-40℃~200℃の範囲にわたって、光学的に透明であり、粘弾性ダンピングが小さく、かつ化学的及び物理的安定性(安定した弾性など)を示す。
【0084】
特定の実施形態では、-40℃~+200℃の間の温度において、膜は透明かつ安定である。
【0085】
本発明の別の態様は、光学調整可能なデバイスにおける、本発明の第1の態様に記載のとおりの一般式1の化合物の使用に関する。
【0086】
本発明の第1の態様の実施形態、特に光学調整可能なデバイスに関する実施形態、及び一般式1の化合物に関する実施形態について言及する。
【0087】
参照:
1 レンズ
10 膜
10b 膜10の内部側面
10c 膜10の光学的にアクティブかつ弾性拡張可能な領域
11 円形保持部材
11a 保持部材11の円周方向の内縁
12 膜10の最外縁
20 光学要素
30 円周方向の第1の壁
31 円周方向及び部分的に可撓性である領域
32 折り目
33 壁30の円周方向の縁領域
34 壁30の第1の部分
35 壁30の反対の部分
36 壁30の円周方向の第2の低部の縁領域
40 アクチュエータ手段
A 光軸
D 方向
F 流体
H 高さ
V 容積
1a プリズム
2a 容器
3a 透明な光学流体
4a 壁部材
5a 平面状底部
6a 弾性膜
60a 膜6aの円周方向の部分
60b 弾性膜
7a 密閉容積
8a ガラスウィンドウ
80a ウィンドウ8aの外縁
20a 弾力的に拡張可能な膜部分
30a 屈折率
100a 入射光
200a 光軸
201a x軸
202a y軸
203a z軸
204a 傾斜角
205a 偏向角
300a 作動力
【0088】
図2は、本発明に適した調整可能なレンズ1の一実施形態を図1と関連して示す。レンズ1は、図1に示すとおり、透明かつ弾性的に拡張可能な第1の膜10を備える。第1の膜10は、ガラス、ポリマー、エラストマー、プラスチック、又は任意の他の透明かつ弾性的に拡張可能な材料で作ることができる。第1の膜10は、第1の膜10の最外縁領域12を介して円形の第1の保持部材11に取り付けられ、それにより、膜10は、プレテンションされた状態にあることが好ましい。円形の第1の保持部材11は、実際には、第1の膜10の光学的にアクティブかつ弾性的に拡張可能な円形領域10cの境界を定め、この領域10cは、第1の保持部材11の円周方向の内縁11aまで延びる。代替として、図3に示すとおり、対応して成形された第1の保持部材11が使用される場合、前記領域10cはまた、長方形の形状を有し得る。そのような第1の保持部材11は、2つの別個の平行な部材を備えてもよく、又はレンズを成形する平行な脚を有する長方形のフレームとして形成されてもよい。
【0089】
その結果、球面レンズ1ではなく、円柱レンズ1が得られる。しかしながら、前記領域10cの他の任意の形状はまた、それに応じて第1の保持部材11の形状を選択することで可能である。
【0090】
レンズ1は、第1の膜10に対向する第1の光学要素20をさらに備え、前記第1の光学要素20は、例えば、レンズ1の光軸Aに垂直に配向された延長面に沿って延びる板状の剛性要素である。第1の光学要素20は、透明であり得る。特に、第1の光学要素は、ガラスから形成されるか、又はガラスを含むことができ、(例えば、ガラス)ウィンドウ;レンズ;屈折、回折、又は反射構造を有する微細構造要素として形成することができる。第1の光学要素20は、さらに、プラスチック、ポリマー、又は金属で作成することができる。第1の光学要素20は、反射又は反射防止のコーティングをさらに含むことができる。
【0091】
第1の膜10及び第1の光学要素20は、前記光軸Aに沿って互いに向き合っており、これらの2つの構成要素は、円周方向の第1の壁30を介して互いに接続され、円周方向の第1の壁30は、第1の壁30の第1の上部円周方向の縁領域33を介して前記第1の保持部材11に接続され、かつ第1の壁30の円周方向の第2の低部縁領域36を介して第1の光学要素20に接続され、この第2の縁領域36は、第1の縁領域33と反対側である。したがって、第1の壁30は、光軸Aと平行に走ることができる第1の方向Dに沿って、第1の光学要素20から第1の保持部材11に向かって突出している。
【0092】
第1の膜10、第1の光学要素20、及び前記第1の壁30は、前記第1の流体Fが第1の容積Vを完全に満たし、特に第1の光学要素20に面する第1の膜10の内部側面10bに対して押圧するように、第1の流体Fで満たされるレンズ1の第1の容積Vを区画するように接続されている。
【0093】
ここで、レンズ1の焦点距離を調節するために、及び/又は前記第1の光学要素20に対して前記第1の膜10の空間位置を調節するように、膜10の曲率、例えば前記領域10cの曲率を調節するために、前記第1の壁30は、前記第1の容積Vの内部に存在する第1の流体Fの圧力を調節するように前記第1の光学要素20に対して前記第1の方向Dに沿って高さHを調節することができるように設計されている。ここで、第1の壁30の高さHは、第1の流体Fの圧力が変化することにより、流体Fの容積が一定であるために対応するレンズ1の第1の膜10の曲率の変化がもたらされるように調節することができる。
【0094】
特に、第1の壁30の前記高さHが全体的に減少する場合、レンズ1の容積Vの減少に対応して、第1の流体Fはその非圧縮性により第1の膜10の弾性変形可能領域10cに対して押圧し、したがってこの領域10cの曲率を増加させることになる。同時に、第1の膜10の前記領域10cは弾性的に拡張する。
【0095】
さらに、前記高さHが全体的に増加する場合、第1の流体Fの圧力が低下し、第1の膜10の前記領域10cが収縮し、第1の膜10の前記領域10cの前記曲率が減少する。
【0096】
しかしながら、第1の壁30の高さHはまた、高さHを調節した後に流体Fの圧力が一定のままであるか、又は同じであるように、軸Aに対して非対称に変更され得る。その場合、単に前記第1の膜10又は第1の膜10の前記領域10cの空間位置が変更されるだけである。しかしながら、非対称の高さ調節はまた、第1の流体Fの圧力の変化及び第1の膜10の前記領域10cの曲率の対応する変化をもたらすことができる。
【0097】
特に、第1の壁30の第1の部分34の高さH1は、第1の壁30の反対の部分35の高さH2よりも高くてもよく、これにより光軸A又は第1の光学要素20に対する第1の膜10の前記領域10cの配向の傾斜をもたらす。
【0098】
好ましくは、図2に示されるとおり第1の壁30は、ベローズを備えるか、又はベローズとして形成される。そのようなベローズ30は、複数の、例えば、円周方向及び特に可撓性の領域31を備え、特に、各2つの隣接する領域31は、(例えば、円周方向の)折り目32を介して互いに接続され、その結果、第1の壁30の前記高さHが低減する場合、前記隣接領域31は互いの方へ折り畳まれ、かつ第1の壁30の前記高さHが上昇する場合、前記隣接領域31の折り畳みは互いに離れる。したがって、その断面に関し、第1の壁又はベローズ30は、好ましくは、ジグザグのパターンを備える。ベローズ30の折り目32は、関連する折り目32の進行に沿うことができる剛性の細長い部材によって補強されてもよい。
【0099】
好ましくは、前記折り目32は、第1の光学要素20の延長面に沿って又は平行に(すなわち、第1の壁/ベローズ30の周辺方向に)、又は前記第1の方向Dに垂直に延びる。
【0100】
ベローズ構造により、第1の壁30は、前記第1の方向Dに直交して走る第2の方向D’に比べて、第1の壁30が備える前記調節可能な高さHが沿う前記第1の方向Dに変形しやすい。
【0101】
第1の壁30の高さHを局所的又は全体的のどちらかに調節するために、レンズ1は、前記方向Dに沿ってその高さHを調節するように第1の壁30に結合されるアクチュエータ手段40を備える。
【0102】
好ましくは、前記アクチュエータ手段40は、第1の壁30の高さHを調節するように第1の壁30に力を及ぼすように設計され、特に前記アクチュエータ手段40は、前記力の適用点が第1の膜10の前記領域10cの外側にあるように、前記第1の保持部材11に結合される。したがって、アクチュエータ手段が第1の方向Dと逆に第1の保持部材11を押す場合、ベローズ30の前記領域32が互いに接近し、第1の壁30の高さが減少する。一方、アクチュエータ手段40が第1の保持部材11を第1の光学要素20から離れる第1の方向Dに移動させる場合、ベローズ30の領域31がそれぞれの隣接領域31から離れるように折り畳み/回転し、これに対応して第1の壁30の高さHが上昇する。特に、アクチュエータ手段40は、第1の光学要素20に対して第1の保持部材11を移動させることができるように、第1の光学要素20に接続することができる。
【0103】
特に、前記アクチュエータ手段40は、第1の膜10の前記領域10cに対して構造物を押し付けることはない。したがって、第1の膜10の領域10c全体は、原理上、光路に影響を与えるために使用することができ、レンズ1の透明なアパーチャーと外径との間の比率を増大させることができる。
【0104】
さらに、第1の壁30、例えばベローズ30の形態では、横方向(すなわち、第2の方向D’)にも調節可能であってもよい。第1の壁30のこのような剪断運動は、イメージの安定化のために、すなわち、光軸Aに垂直に走る平面におけるレンズ1の動きを補償するために使用することができる。ここで、アクチュエータ手段40はまた、好ましくは第1の保持部材11に結合されて、前記第1の保持部材11を前記第2の方向D’に沿って変位させるようにも設計される。
【0105】
図3は、調整可能なプリズムの模式的断面図を示す。図3は、調整可能なプリズム1aの基本的な実施形態を断面図で示し、基本的な動作原理を示したものである。調整可能なプリズム1aは、透明な光学流体3aが満たされた容器2aを備える。容器2aは、ガラスからなる平面状の底部5aを有している。底部10aは、入射光100aの側を向くように配置されている。さらに、壁部材4aは、光軸200aに対して容器2aを横方向に区画する。壁部材4aは、底部5aと一体的に形成されている。調整可能なプリズム1の光軸200a(破線)は、z軸203aに沿って底部5aを直交かつ中心に通るように延びる。
【0106】
容器2aは、さらに、容器2aの底部5aに対向して配置された弾性膜6aを備える。弾性膜6aは、繰り返し弾性的に拡張可能かつ伸縮可能である。静止状態では、弾性膜6aは、底部5aに平行に横方向の張力下で延在している。この張力は、作動力が適用されていない場合、膜6がその静止状態に戻るための復元力を与える。
【0107】
膜6aは、流体3aが壁部材6a、底部5a及び膜6aによって囲まれた容積7aから逃げないように、その縁部で容器2aの壁部材4aに封止されている。
【0108】
容積7aから離れて面する膜6aの上部には、ガラスウィンドウ8aが膜6aに取り付けられている。膜6aの静止状態では、ガラスウィンドウ8aは底部5aに平行に延びている。
【0109】
ガラスウィンドウ8aの外縁80aと壁部材4aとの間では、膜6aの周方向部分60aがガラスウィンドウ8aによって覆われていない。この部分を弾性的に拡張可能部分60aと呼ぶ。
【0110】
静止状態では、入射光100aは、矢印100a、101aで示すとおり、光軸200から偏向されることなく、底部5aから容積7aを通ってウィンドウ8aへ調整可能プリズム1aを横断する。
【0111】
作動力300aがウィンドウ8aの外縁80aに適用される場合、ウィンドウ8aは、第1の軸201aと呼ばれる少なくとも1つの軸、例えば、x軸の周りに傾く。ウィンドウ8aはまた、第2の軸202a、例えば第1の軸201aに特に直交するy軸の周りに傾斜させることができ、かつ、第1の軸201aと同様に、ウィンドウ8aの延在平面内で10aを拡張する。
【0112】
作動力300aがウィンドウ8aに適用される場合、ウィンドウ8aは、第1の軸及び/又は第2の軸201a、202aの周りに傾斜運動を行う。
【0113】
傾斜した状態では、ウィンドウ8aは底面部5aと平行に延びておらず、底面部5aと光軸200aとの傾斜角204aを囲み、ガラスウィンドウ8aの外縁80aの第1の部分は底面部5aに近く、一方、第1の部分と反対側に位置する外縁80aのもう一つの部分は底面部5aから離れるように位置する。
【0114】
これに対応して、ウィンドウ8aの外縁80aの周囲の弾性拡張可能な膜部60aが伸張される。膜6aは弾性体であるため、特に20aの弾性拡張可能な膜部60aは、傾いたウィンドウ8aに復元力を伝える。
【0115】
調整可能なプリズム1aが傾いた状態では、横断する光100、101は、光軸200に対して角度205でプリズム1aを出射する。これは、調整可能なプリズム1aの内側と外側を指す矢印100、101によって示される。
【0116】
ウィンドウ8aに対する作動力300aを調節することにより、ウィンドウ8aの傾斜角204aを調節することができ、これは、出射光101aの偏向角205aを調整することに通じる。
【0117】
ウィンドウ8aの機械的な傾斜角204aと、その結果得られる光の偏向角205aとの関係は、光学流体3a、特に液体の屈折率に依存する。液体3aの屈折率が高いほど、得られる光の偏向は強くなる。
【0118】
一方、通常、低屈折率の液体は高屈折率の液体に比べて分散性が低い。そのため、色収差を避けたい場合は、低屈折率の液体を使用することができる。したがって、特にイメージングなどの多色性用途では、低屈折率の液体が適している。低屈折率の液体の屈折率は、例えば1.33程度である。
【0119】
次いで、高屈折率の液体は、虹彩検出のような単色の用途に適している。高屈折率の液体の屈折率は、例えば1.56程度である。
【0120】
図4には、最小限の構成要素の数で構成され、特にコスト効率の良い生産に十分に適した調整可能なプリズム1aの実施形態が示されている。容器2aは、透明な底部5a、ガラスウィンドウ8a、及び液体3aからなる密閉容器容積を形成するために互いに密閉された変形可能な、特に弾性の2つの膜6a、60a、60bのみからなる。本実施形態は、ベローズを形成する。このような二重膜ベローズ容器2aは、さらに、ウィンドウ8aを第1の軸又は第2の軸の周りに傾けるために必要な作動力を最小化し、他方、透明なアパーチャー90aとウィンドウ8aの外径との間の比率を最大化する。
【0121】
これまでに導入されている作動コンセプト(エアコイル又は埋め込みPCBコイルを備えたVCM、SMA、リラクタンスモーター)及びプリズム成形デバイスの種類を適用することができる。
【0122】
図5では、調整可能なプリズム1aの別の実施形態が示されている。本実施形態では、底面部5aに封止される1つの膜6aのみを備える。膜6aが封止される底部5aの縁部は、壁部材4aとしても理解することができる。
【0123】
図5の左側のパネルには、傾斜していないウィンドウ8aを備えた中立位置(光は偏向されずにプリズム1aを通過する)が示され、図5の右側のパネルでは、ウィンドウ8aは、光がプリズム1aを通過する場合に偏向されるように、底部5aに対して傾斜されている。
【0124】
容器2aは、液体3aを備える。膜6aは変形可能であるが、必ずしも弾性体である必要はない。
【0125】
容器2aは、プリズム成形デバイスが作動される場合、ベローズのように機能する(図示せず)。
【0126】
そのようなベローズ容器2aは、膜6aが主に軸方向に変形され、すなわち、光軸に平行であり、半径方向に変形されないため、必要な作動力はより少なく、透明アパーチャー90aと外径との間の比率を最大にする。
【実施例0127】
【表1】
【0128】
視覚的に観察された浸透は、以下の条件下で評価される。液体材料は、容積が膜によって片側で区画されている容積内に配置される。膜は、PDMS(例えば、Sylgard 184)を含む。このセットアップを、常圧で熱衝撃(T0=85℃の場合、デルタTは約-20℃/分)に暴露する。視覚的に観察された浸透を、容積の反対側の膜の上部にある液体材料の液滴又は膜を識別することによって評価する。


図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】