IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クオンティニュアム エルエルシーの特許一覧

特開2022-130339コヒーレントシェルビングを含む量子ビット読み出し手順
<>
  • 特開-コヒーレントシェルビングを含む量子ビット読み出し手順 図1
  • 特開-コヒーレントシェルビングを含む量子ビット読み出し手順 図2
  • 特開-コヒーレントシェルビングを含む量子ビット読み出し手順 図3
  • 特開-コヒーレントシェルビングを含む量子ビット読み出し手順 図4
  • 特開-コヒーレントシェルビングを含む量子ビット読み出し手順 図5
  • 特開-コヒーレントシェルビングを含む量子ビット読み出し手順 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130339
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】コヒーレントシェルビングを含む量子ビット読み出し手順
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20220830BHJP
   G02F 3/00 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
G06N10/40
G02F3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022026645
(22)【出願日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/200,263
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/583,308
(32)【優先日】2022-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522047446
【氏名又は名称】クオンティニュアム エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ランズフォード
(72)【発明者】
【氏名】サラ・キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】ブライス・ビョーク
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102AA06
2K102AA37
2K102BA31
2K102BB10
2K102BC01
2K102DA10
2K102DA20
2K102DD05
2K102EA21
2K102EB02
2K102EB10
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】原子オブジェクト閉じ込め装置内にトラップされた原子オブジェクトの量子状態決定を実行するための方法、システム、装置、コンピュータプログラム製品及び/又は同様のものを提供する。
【解決手段】コヒーレントシェルビングを使用して原子オブジェクト及び/又は量子ビットの量子状態を読み出すための方法において、コントローラは、第1の波長の第1のビーム及び第2の波長の第2のビームを量子ビットに入射し、読み出しビームを量子ビットに入射する。第1の波長及び第2の波長は、量子ビットの量子空間の状態を安定状態に結合する。安定状態は、読み出し操作を実行するのに必要な時間の長さよりも長い寿命を有する。第1のビーム及び第2のビームは、コントローラによって制御されるマニピュレーションソースドライバによって操作されるマニピュレーションソース60によって生成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラップイオン量子コンピュータの量子ビットを読み出すための方法であって、
前記トラップイオン量子コンピュータのコントローラによって、第1の波長の第1のビームおよび第2の波長の第2のビームを前記量子ビットに入射させるステップであって、前記第1の波長および前記第2の波長は、前記量子ビットの量子空間の状態を安定状態に結合するように構成され、前記安定状態は、読み出し操作を実行するのに必要な時間の長さよりも長い寿命を有する、ステップと、
前記コントローラによって、前記読み出し操作を前記量子ビットで実行させるステップとを含む方法。
【請求項2】
前記量子ビットは一価電離イッテルビウム原子であり、前記第1の波長は411nmであり、前記第2の波長は3.4マイクロメートルであり、前記安定状態は前記量子ビットとして使用されている原子オブジェクトのFマニホールド内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コントローラによって、光検出器から信号を受信するステップと、
前記コントローラによって、前記信号に基づき、前記量子ビットの量子状態を決定するステップとをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記量子ビットを再初期化するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記量子ビットを再初期化するステップは、第3の波長の第3のビームおよび前記第2の波長の第4のビームを前記量子ビットに入射させるステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第3のビームおよび前記第4のビームは、前記量子ビットに少なくとも部分的に時間的に重なり合って入射する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記量子ビットは一価電離イッテルビウム原子であり、前記第2の波長は3.4マイクロメートルであり、前記第3の波長は976nmである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第3のビームおよび前記第4のビームは、15マイクロ秒未満の期間にわたって量子ビットに入射する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
量子回路を実行しながら、前記量子ビットが読み出されるべきであると決定するステップをさらに含み、前記第1のビームおよび前記第2のビームを、前記量子ビットが読み出されるべきであると決定したことに応答して前記量子ビットに入射させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記量子ビットを再初期化した後に、前記量子ビットを使用して前記量子回路の実行を継続するステップをさらに含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記読み出し操作を実行させるステップは、読み出しビームを前記量子ビットに入射させるステップと、光検出器によって生成された信号を監視して、前記読み出しビームが前記量子ビットに入射したことに応答して前記量子ビットが蛍光を発するかどうかを決定するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
トラップイオン量子コンピュータのコントローラであって、
該コントローラは少なくとも1つの処理デバイスを備え、前記少なくとも1つの処理デバイスは少なくとも1つのマニピュレーションソースドライバと通信し、
前記処理デバイスは該コントローラに、
第1の波長の第1のビームおよび第2の波長の第2のビームを量子ビットに入射させるステップであって、前記第1の波長および前記第2の波長は、前記量子ビットの量子空間の状態を安定状態に結合するように構成され、前記安定状態は、読み出し操作を実行するのに必要な時間の長さよりも長い寿命を有し、前記第1のビームおよび前記第2のビームは前記少なくとも1つのマニピュレーションソースドライバによって操作される少なくとも1つのマニピュレーションソースによって生成される、ステップと、
読み出しビームを前記量子ビットに入射させるステップとを行わせるように構成されている、コントローラ。
【請求項13】
前記量子ビットは一価電離イッテルビウム原子であり、前記第1の波長は411nmであり、前記第2の波長は3.4マイクロメートルであり、前記安定状態はFマニホールド内にある請求項12に記載のコントローラ。
【請求項14】
前記処理デバイスは光検出器と通信し、
前記処理デバイスは前記コントローラに、
前記光検出器から信号を受信するステップであって、前記信号は、前記読み出しビームが前記量子ビットに入射した結果に対応している、ステップと、
前記信号に基づき、前記量子ビットの状態を決定するステップとを行わせるようにさらに構成されている、請求項12に記載のコントローラ。
【請求項15】
前記処理デバイスは、前記コントローラに前記量子ビットを再初期化するステップを行わせるようにさらに構成されている、請求項12に記載のコントローラ。
【請求項16】
前記量子ビットを再初期化するステップは、第3の波長の第3のビームおよび前記第2の波長の第4のビームを前記量子ビットに入射させるステップを含む、請求項15に記載のコントローラ。
【請求項17】
前記第3のビームおよび前記第4のビームは、前記量子ビットに少なくとも部分的に時間的に重なり合って入射する、請求項16に記載のコントローラ。
【請求項18】
前記量子ビットは一価電離イッテルビウム原子であり、前記第2の波長は3.4マイクロメートルであり、前記第3の波長は976nmである、請求項16に記載のコントローラ。
【請求項19】
前記第3のビームおよび前記第4のビームは、15マイクロ秒未満の期間にわたって量子ビットに入射する、請求項16に記載のコントローラ。
【請求項20】
前記処理デバイスは、前記読み出し操作を実行させるために、読み出しビームを前記量子ビットに入射させ、光検出器によって生成された信号を監視して、前記読み出しビームが前記量子ビットに入射したことに応答して前記量子ビットが蛍光を発するかどうかを決定するように構成されている、請求項12に記載のコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年2月25日に出願した米国出願第63/200263号の優先権の利益を主張し、その内容全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
様々な実施形態は、原子オブジェクト閉じ込め装置(atomic object containment apparatus)にトラップされた原子オブジェクト(atomic object)の量子状態を決定することに関係する装置、システム、および方法に関するものである。たとえば、いくつかの例示的な実施形態は、イオンシェルビング(ion shelving)を使用して、トラップ原子オブジェクト量子コンピュータ(trapped atomic object quantum computer)の量子ビットの状態を読み出すための読取手順に関するものである。
【背景技術】
【0003】
イオントラップは、電場と磁場との組合せを使用して、ポテンシャル井戸内に複数の原子オブジェクトを捕捉することができる。原子オブジェクトは、たとえば、質量分析、研究、および/または量子状態の制御を含み得る、多くの目的のためにトラップされ得る。様々なシナリオにおいて、原子オブジェクトの量子状態を迅速に、高いレベルの精度で決定することが重要であり得る。たとえば、トラップされた原子オブジェクトは、トラップ原子オブジェクト量子コンピュータの量子ビットとして使用され得る。量子ビットの2つの状態として使用される量子ビット空間は、類似のエネルギー順位を有し得る。これは、非共鳴エラー(off resonant error)が量子状態決定に持ち込まれることを引き起こし得る。注がれた労力、創意工夫、および革新を通して、以前の原子オブジェクト量子状態決定技術の多くの欠陥が、本発明の実施形態に従って構造化された解決策を開発することによって解決されており、その多くの例は、本明細書において詳細に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例示的な実施形態は、原子オブジェクト閉じ込め装置内にトラップされた原子オブジェクトの量子状態決定を実行するための方法、システム、装置、コンピュータプログラム製品、および/または同様のものを提供する。たとえば、様々な実施形態は、量子ビット読み出しにおける非共鳴エラーの技術的問題に対する技術的解決策を含まない、および/または提供する、量子ビット読み出し操作のための方法、システム、装置、コンピュータプログラム製品、および/または同様のものを提供する。たとえば、様々な実施形態は、(従来の量子ビット読み出しプロセスに関して)非共鳴エラーを低減した方法、システム、装置、コンピュータプログラム製品、および/または同様のものを提供する。たとえば、トラップ原子オブジェクト量子コンピュータにおいて、原子オブジェクト閉じ込め装置内にトラップされた原子オブジェクトは、量子コンピュータの量子ビットとして使用され得る。原子オブジェクトの超微細構造の2つの量子状態は、2つの量子状態のうちの一方がアップまたは1と称され、2つの量子状態のうちの他方がダウンまたは0と称される量子ビット空間として使用され得る。量子ビット空間として使用される超微細構造の2つの量子状態は、類似のエネルギー準位を有し得る。たとえば、量子ビット空間の2つの量子状態は、50ギガヘルツ(GHz)未満(たとえば、13GHz未満)だけ分離され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来の読み出し手順は、量子ビットの状態のうちの1つだけを結合するレーザービームを、読み出されるべき原子オブジェクトに印加するものである。本明細書において使用されているように、読み出し手順という用語は、原子オブジェクトの量子状態を決定するために使用されるプロセスを指す。測定プロセスにおいて原子オブジェクトの量子状態が量子ビット空間の結合状態に収縮すると、レーザーはそれを励起し、その結果、原子オブジェクトが励起状態から崩壊するときに光子が放出される。崩壊後も原子オブジェクトはレーザーによって継続的に励起され、繰り返し光子を放出する。この光子は、様々な光検出器を用いて集光され得る。原子の量子状態がもう一方の(非結合)量子ビット状態に収縮すると、原子オブジェクトはレーザーと相互作用せず、光子は放出されない。しかしながら、量子ビット空間の2つの量子状態がエネルギーに関して近ければ近いほど、非結合量子ビット状態に収縮する量子状態を有する量子ビットがレーザーと相互作用し、非共鳴エラーをもたらす可能性が高くなる。
【0006】
様々な実施形態は、非共鳴エラーを低減し、および/または防ぐためのコヒーレントシェルビング(coherent shelving)アプローチを含む読み出し手順を提供する。特に、第1の波長の第1のビームおよび第2の波長の第2のビームは、読み出されるべき原子オブジェクトに印加され得る。第1および第2のビームは、量子ビット空間の第1の状態を量子ビット空間の外側の安定状態に結合するように構成される。たとえば、原子オブジェクトの量子状態が量子ビット空間の第1の状態に収縮する場合、原子オブジェクトの量子状態は、量子ビット空間の外側にある安定状態に発展する。様々な実施形態において、原子オブジェクトは、コヒーレントに安定状態に発展する。たとえば、原子オブジェクトは、原子オブジェクトの量子状態を安定状態に発展させることによって読み出し手順のために「シェルビング」される。原子オブジェクトの量子状態が量子ビット空間の第2の状態に収縮する場合、原子オブジェクトの量子状態は、第1および第2のビームの影響を受けず、第2の状態のままである。次いで、読み出しビームが、原子オブジェクトに印加され得る。原子オブジェクトの量子状態が第2の状態に収縮する場合、読み出しビームは、原子オブジェクトと相互作用し、光子を放出させる。光子は、光子検出器によって検出され得る。原子オブジェクトの量子状態が第1の状態に収縮し、次いで、安定状態に発展した場合、読み出しビームは原子オブジェクトと相互作用せず、光子は放出されない。さらに、安定状態は、量子ビット空間のいずれの状態にも類似しないエネルギー準位を有する。たとえば、安定状態は、少なくとも100GHZ(たとえば、少なくとも1テラヘルツ(THz))だけ量子ビット空間の両方の準位から分離され得る。量子ビット空間の第2の状態と安定状態との間のエネルギー差は、読み出し操作が非共鳴エラーの影響を受けないように十分に大きい。
【0007】
本開示の一態様によれば、コヒーレントシェルビング手順を含む、トラップイオン量子コンピュータ(trapped ion quantum computer)の量子ビットを読み出すための方法が提供される。例示的な一実施形態において、方法は、トラップイオン量子コンピュータのコントローラによって、第1の波長の第1のビームおよび第2の波長の第2のビームが量子ビットに入射することを引き起こすことを含む。第1の波長および第2の波長は、量子ビットの量子空間の状態を安定状態に結合するように構成される。安定状態は、読み出し操作を実行するのに必要な時間の長さよりも長い寿命を有する。方法は、コントローラによって、読み出し操作が量子ビットで実行されることを引き起こすことをさらに含む。
【0008】
例示的な一実施形態において、量子ビットは、一価電離イッテルビウム原子であり、第1の波長は411nmであり、第2の波長は3.4マイクロメートルであり、安定状態は、Fマニホールドにある。
【0009】
例示的な一実施形態において、方法は、コントローラによって、光検出器から信号を受信することと、コントローラによって、信号に基づき、量子ビットの量子状態を決定することとをさらに含む。
【0010】
例示的な一実施形態において、読み出し操作が実行されることを引き起こすことは、読み出しビームが量子ビットに入射することを引き起こすことと、光検出器によって生成された信号を監視して、読み出しビームが量子ビットに入射したことに応答して量子ビットが蛍光を発するかどうかを決定することとを含む。
【0011】
例示的な一実施形態において、方法は、量子ビットを再初期化することをさらに含む。
【0012】
例示的な一実施形態において、量子ビットを再初期化することは、第3の波長の第3のビームおよび第2の波長の第4のビームが量子ビットに入射することを引き起こすことを含む。
【0013】
例示的な一実施形態において、第3のビームおよび第4のビームは、量子ビット上に、少なくとも部分的に時間的に重なり合って入射する。
【0014】
例示的な一実施形態において、量子ビットは一価電離イッテルビウム原子であり、第2の波長は3.4マイクロメートルであり、第3の波長は976nmである。
【0015】
例示的な一実施形態において、第3および第4のビームは、30ミリ秒未満の期間にわたって量子ビット上に入射する。
【0016】
例示的な一実施形態において、方法は、量子回路を実行しながら、量子ビットが読み出されるべきであると決定することをさらに含み、第1のビームおよび第2のビームは、量子ビットが読み出されるべきであると決定したことに応答して量子ビット上に入射させられる。例示的な一実施形態において、方法は、量子ビットを再初期化した後に、その量子ビットを使用して量子回路の実行を継続することをさらに含む。
【0017】
本開示の別の態様によれば、トラップイオン量子コンピュータのコントローラが提供される。例示的な一実施形態において、コントローラは、少なくとも1つの処理デバイスを備え、少なくとも1つの処理デバイスは少なくとも1つのマニピュレーションソース(manipulation source)ドライバと通信する。処理デバイスは、第1の波長の第1のビームおよび第2の波長の第2のビームが量子ビットに入射することと、読み出しビームが量子ビットに入射することとをコントローラに行わせるように構成される。第1の波長および第2の波長は、量子ビットの量子空間の状態を安定状態に結合するように構成される。安定状態は、読み出し操作を実行するのに必要な時間の長さよりも長い寿命を有する。第1のビームおよび第2のビームは、少なくとも1つのマニピュレーションソースドライバによって操作される少なくとも1つのマニピュレーションソースによって生成される。
【0018】
例示的な一実施形態において、量子ビットは、一価電離イッテルビウム原子であり、第1の波長は411nmであり、第2の波長は3.4マイクロメートルであり、安定状態は、Fマニホールドにある。
【0019】
例示的な一実施形態において、処理デバイスは、光検出器と通信し、処理デバイスは、コントローラが光検出器から信号を受信し、信号は読み出しビームが量子ビットに入射した結果に応答し、信号に基づき、量子ビットの状態を決定するようにさらに構成される。
【0020】
例示的な実施形態では、読み出し操作を実行させるために、処理デバイスは、読み出しビームを量子ビットに入射させ、光検出器によって生成された信号を監視して、読み出しビームが量子ビットに入射したことに応答して量子ビットが蛍光を発するかどうかを決定するように構成される。
【0021】
例示的な一実施形態において、処理デバイスは、コントローラに量子ビットを再初期化させるようにさらに構成される。
【0022】
例示的な一実施形態において、量子ビットを再初期化することは、第3の波長の第3のビームおよび第2の波長の第4のビームが量子ビットに入射することを引き起こすことを含む。
【0023】
例示的な一実施形態において、第3のビームおよび第4のビームは、量子ビット上に、少なくとも部分的に時間的に重なり合って入射する。
【0024】
例示的な一実施形態において、量子ビットは一価電離イッテルビウム原子であり、第2の波長は3.4マイクロメートルであり、第3の波長は976nmである。
【0025】
例示的な一実施形態において、第3および第4のビームは、30ミリ秒未満の期間にわたって量子ビット上に入射する。
【0026】
例示的な一実施形態において、処理デバイスは、量子回路を実行しながら、量子ビットが読み出されるべきであると決定するようにさらに構成され、第1のビームおよび第2のビームは、量子ビットが読み出されるべきであると決定したことに応答して量子ビット上に入射させられる。
【0027】
例示的な一実施形態において、処理デバイスは、量子ビットを再初期化した後に、その量子ビットを使用して量子回路の実行を継続するようにさらに構成される。
【0028】
本発明を一般的な用語で説明しており、添付図面を参照するが、必ずしも縮尺通りでない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】例示的な一実施形態の読み出し手順を実行するために使用され得る原子オブジェクト閉じ込め装置を備える例示的な量子コンピューティングシステムを示す概略図である。
図2】例示的な一実施形態のコヒーレントシェルビング手順を実行する際に使用され得る例示的な原子オブジェクトのエネルギー準位のうちのいくつかの概略図である。
図3】例示的な一実施形態による、シェルビングを含む読み出し手順の様々な処理、操作、および/または手順を例示するフローチャートである。
図4】例示的な一実施形態による、シェルビングを含む読み出し手順を実行した後にシェルビング解除手順を実行するために使用され得る例示的な原子オブジェクトのエネルギー準位のうちのいくつかの概略図である。
図5】様々な実施形態による、1つまたは複数の決定論的再整形(deterministic reshaping)および/または順序変更(reordering)機能を実行するように構成されている量子コンピュータの例示的なコントローラの概略図である。
図6】例示的な一実施形態により使用され得る量子コンピュータシステムの例示的なコンピューティングエンティティの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明は、本発明の実施形態のすべてではなくそのうちのいくつかの実施形態が図示されている、添付図面を参照しつつ、さらに詳しく以下で説明される。実際、本発明は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本明細書において述べられている実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、この開示が適用可能な法的要件を満たすように提供される。「または」(「/」とも表記)という言い回しは、断りのない限り、本明細書において代替的な意味および接続的な意味の両方で使用される。「例示する」および「例示的な」という言い回しは、品質レベルを示さない例として使用される。「一般的に」、「実質的に」、および「約」という言い回しは、断りのない限り、工学および/または製造公差の範囲内および/または使用者測定能力の範囲内を指す。全体を通して、類似の番号は、類似の要素を指す。
【0031】
様々な実施形態において、コヒーレントシェルビングを含む読み出し手順を実行するための方法、装置、システム、コンピュータプログラム製品、および/または同様のものが提供される。様々な実施形態において、読み出し手順は、原子オブジェクトの量子状態を決定するために使用される。様々な実施形態において、原子オブジェクトは、イオンまたは原子である。例示的な一実施形態において、原子オブジェクトは、一価電離イッテルビウムである。例示的な一実施形態において、原子オブジェクトは、イオントラップなどの原子オブジェクト閉じ込め装置内にトラップされる。様々な実施形態において、原子オブジェクトは、トラップ原子オブジェクト量子コンピュータの量子ビットとして使用される。たとえば、読み出し手順は、原子オブジェクトの波動関数が収縮し、波動関数収縮の結果として、量子ビットが、量子ビットに対して定義されている2状態量子ビット空間の第1の状態または第2の状態のいずれにあるかを決定するために使用されてもよい。
【0032】
様々な実施形態において、読み出し手順は、シェルビング手順を実行することと、量子ビットを読み出すことと、任意選択でシェルビング解除手順を実行することとを含む。シェルビング手順は、第1の波長の第1のビームおよび第2の波長の第2のビームが、呼び出されるべき原子オブジェクトに入射することを引き起こすことを含む。第1および第2のビームは、量子ビット空間の第1の状態を量子ビット空間の外側の安定状態に結合するように構成される。安定状態は、量子ビットを読み出すのに必要な時間よりも長い寿命を有する。たとえば、原子オブジェクトの量子状態が量子ビット空間の第1の状態に収縮するときに、原子オブジェクトの量子状態は、読み出されるべき量子ビットへの第1および第2のビームの印加によって量子ビット空間の外側にある安定状態に発展する。様々な実施形態において、原子オブジェクトは、コヒーレントに安定状態に発展する。原子オブジェクトを第1の状態から発展した安定状態までコヒーレントに発展させることは、結局、読み出されるべき量子ビットへの第1および第2のビームの印加を介してシステムにユニタリー変換を適用することに等しい。これは、量子状態の非コヒーレントな発展とは対照的であり、これは結局システムの非ユニタリー変換である。それに加えて、原子オブジェクトの安定状態へのコヒーレントな発展は、読み出し操作中のシェルビングのために量子状態の従来の非コヒーレントな発展の時間制限を有しない。言い換えると、原子オブジェクトは、読み出し操作の実行のためにコヒーレントにシェルビングされる。また、原子オブジェクトはコヒーレントにシェルビングされるので、原子オブジェクトによって記憶される量子情報は攪乱されない。対照的に、原子オブジェクトの非コヒーレントなシェルビングの結果、非コヒーレントにシェルビングされた原子オブジェクトによって記憶されている量子情報は破壊される。
【0033】
原子オブジェクトの量子状態が量子ビット空間の第2の状態に収縮するときに、原子オブジェクトの量子状態は、第1および第2のビームの影響を受けず、第2の状態のままである。次いで、読み出しビームが、原子オブジェクトに印加され得る。原子オブジェクトの量子状態が第2の状態に収縮する場合、読み出しビームは、原子オブジェクトと相互作用し、光子を放出させる。光子は、光子検出器によって検出され得る。原子オブジェクトの量子状態が第1の状態に収縮し、次いで、安定状態に発展した場合、読み出しビームは原子オブジェクトと相互作用せず、光子は放出されない。さらに、安定状態は、量子ビット空間のいずれの状態にも類似しないエネルギー準位を有する。たとえば、安定状態は、少なくとも100GHZ(たとえば、少なくとも1テラヘルツ(THz))だけ量子ビット空間の両方の準位から分離され得る。量子ビット空間の第2の状態と安定状態との間のエネルギー差は、読み出し操作が非共鳴エラーの影響を受けないように十分に大きい。
【0034】
原子オブジェクト閉じ込め装置を備える例示的な量子計算システム
図1は、例示的な一実施形態による、原子オブジェクト閉じ込め装置300(たとえば、イオントラップおよび/または同様のもの)を含む例示的な量子コンピューティングシステム100の概略図である。様々な実施形態において、量子コンピューティングシステム100は、コンピューティングエンティティ10および量子コンピュータ110を備える。様々な実施形態において、量子コンピュータ110は、コントローラ30と、閉じ込め装置300(たとえば、イオントラップ)を囲むクライオスタットおよび/または真空チャンバ40と、1つまたは複数のマニピュレーションソース60とを備える。たとえば、クライオスタットおよび/または真空チャンバ40は、圧力制御チャンバであってもよい。例示的な一実施形態において、1つまたは複数のマニピュレーションソース60は、1つまたは複数のレーザー(たとえば、光レーザー、マイクロ波源、および/または同様のもの)を備え得る。様々な実施形態において、1つまたは複数のマニピュレーションソース60は、閉じ込め装置内の1つまたは複数の原子オブジェクトをマニピュレートし、および/またはその制御された量子状態の発展を引き起こすように構成される。たとえば、マニピュレーションソース60は、第1の波長λの第1のビーム、第2の波長λの第2のビーム、第3の波長λの第3のビーム、第2の波長λの第4のビーム、読み出し波長の読み出しビーム、および/または同様のものを生成するように構成され得る。たとえば、例示的な一実施形態において、1つまたは複数のマニピュレーションソース60が1つまたは複数のレーザーを備える場合、レーザーは、クライオスタットおよび/または真空チャンバ40内の閉じ込め装置300内にトラップされた原子オブジェクトに1つまたは複数のレーザービームを照射してよい。様々な実施形態において、第1のビーム、第2のビーム、第3のビーム、第4のビーム、および/または読み出しビームは、連続レーザービームまたはパルスレーザービームであってよい。
【0035】
様々な実施形態において、第1の波長λは、411nmに実質的に等しい。様々な実施形態において、第1のビームは、非常に良好な周波数安定性を有する411nmのビームを生成するように構成されている第1のマニピュレーションソース60によって生成される。たとえば、例示的な一実施形態において、第1のビームは、100kHz未満の周波数安定性を有する729THzの周波数を有するように第1のマニピュレーションソース60によって生成される。言い換えると、第1のマニピュレーションソース60は、729THzの100kHz以内の第1のビームを生成するように構成される。
【0036】
様々な実施形態において、第2の波長λは、3.4μmに実質的に等しい。様々な実施形態において、第2のビームは、非常に良好な周波数安定性を有する3.4μmのビームを生成するように構成されている第2のマニピュレーションソース60によって生成される。たとえば、例示的な一実施形態において、第2のビームは、100kHz未満の周波数安定性を有する88.2THzの周波数を有するように第2のマニピュレーションソース60によって生成される。言い換えると、第2のマニピュレーションソース60は、88.2THzの100kHz以内の第2のビームを生成するように構成される。例示的な一実施形態において、第2のビームを生成するように構成されているマニピュレーションソースは、周期的分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路を備える。例示的な一実施形態において、第2のビームを生成するように構成されているマニピュレーションソース60は、チューナブルTi:Sレーザーおよび1550nmレーザーを備える。例示的な一実施形態において、第2のビームを生成するように構成されているマニピュレーションソース60は、1064nmの光源および/またはレーザーと、ならびに1550nmに実質的に等しい固有波長を有するチューナブルレーザーを備える。
【0037】
様々な実施形態において、量子コンピュータ110は、(たとえば、読み出し手順において)量子ビットによって生成された光子を集光し、および/または検出するように構成されている光学系集光システムを備える。光学系集光システムは、1つまたは複数の光学素子(たとえば、レンズ、鏡、導波路、光ファイバケーブル、および/または同様のもの)ならびに1つまたは複数の光検出器を備え得る。様々な実施形態において、光検出器は、量子コンピュータの量子ビットの予想蛍光波長の光に感度を有するフォトダイオード、光電子増倍管、電荷結合素子(CCD)センサー、相補型金属酸膜半導体(CMOS)センサー、微小電気機械システム(MEMS)センサー、および/または他の光検出器であってもよい。様々な実施形態において、検出器は、1つまたは複数のA/Dコンバータ525(図5参照)および/または同様のものを介してコントローラ30と電子的に通信し得る。
【0038】
様々な実施形態において、量子コンピュータ110は、1つまたは複数の電圧源50を備える。たとえば、電圧源50は、複数の電圧ドライバおよび/または電圧源および/または少なくとも1つのRFドライバおよび/または電圧源を備え得る。電圧源50は、例示的な一実施形態において、閉じ込め装置300の対応する電位発生要素(たとえば、電極)に電気的に結合され得る。
【0039】
様々な実施形態において、コンピューティングエンティティ10は、使用者が量子コンピュータ110に入力を提供し(たとえば、コンピューティングエンティティ10のユーザインターフェースを介して)、量子コンピュータ110から出力を受信し、表示し、および/またはそれに対して同様の操作を行うことを可能にするように構成される。コンピューティングエンティティ10は、1つまたは複数の有線またはワイヤレスネットワーク20を介して、および/または直接的な有線および/またはワイヤレス通信を介して、量子コンピュータ110のコントローラ30と通信するものとしてよい。例示的な実施形態において、コンピューティングエンティティ10は、情報/データ、量子コンピューティングアルゴリズムおよび/または回路、および/または同様のものを、コントローラ30が理解しおよび/または実装できるコンピューティング言語、実行可能命令、コマンドセット、および/または同様のものに翻訳し、構成し、フォーマットし、および/またはそれに対して同様の操作を行うものとしてよい。
【0040】
様々な実施形態において、コントローラ30は、電圧源50、クライオスタットおよび/もしくは真空チャンバ40内の温度および圧力を制御するクライオスタットシステムおよび/もしくは真空システム、マニピュレーションソース60、ならびに/またはクライオスタットおよび/もしくは真空チャンバ40内の様々な環境条件(たとえば、温度、圧力、および/もしくは同様のもの)を制御し、および/もしくは閉じ込め装置内の1つもしくは複数の原子オブジェクトをマニピュレートし、および原子オブジェクトの量子状態の制御された発展を引き起こすよう構成されている他のシステムを制御するよう構成されている。たとえば、コントローラ30は、量子回路および/またはアルゴリズムを実行するために閉じ込め装置内の1つまたは複数の原子オブジェクトの量子状態の制御された発展を引き起こし得る。たとえば、コントローラ30は、場合によっては量子回路および/またはアルゴリズムを実行することの一貫として、コヒーレントシェルビングを含む読み出し手順が実行されることを引き起こし得る。様々な実施形態において、閉じ込め装置内に閉じ込められている原子オブジェクトは、量子コンピュータ110の量子ビットとして使用される。
【0041】
例示的なシェルビング手順
図2は、例示的な一実施形態において、量子コンピューティングシステムの量子ビットとして使用され得る例示的な原子オブジェクトに対するエネルギー準位図200の一部を例示している。特に、量子コンピューティングシステムの量子ビットとして作用する原子オブジェクトは、量子ビット空間210の2つの状態のうちの一方で開始する。たとえば、量子ビット空間210は、様々な実施形態において、ゼロまたはオフ状態(たとえば、|0>)またはダウン状態(たとえば、|↓>)と称され得る、原子オブジェクトの基底状態(たとえば、S1/2マニホールド)のl=0、m=0の超微細状態の第1の量子ビット状態212を含み得る。量子ビット空間210は、様々な実施形態において、1またはオン状態(たとえば、|1)またはアップ状態(たとえば、|↑>)と称され得る、原子オブジェクトの基底状態のl=1、m=0の超微細状態の第2の量子ビット状態214をさらに含み得る。様々な実施形態において、原子オブジェクトは、イオンまたは原子である。たとえば、原子オブジェクトは、一価電離イッテルビウムであってよい。量子系の量子ビットとして使用される原子オブジェクトは、単に量子ビットとも称される。
【0042】
様々な実施形態において、量子ビット空間210の2つの状態は、量子ビット状態分離波長λに対応する比較的小さなエネルギー差で分離され得る。たとえば、例示的な一実施形態において、量子ビット空間210の2つの量子ビット状態は、20GHz未満(たとえば、15GHz未満または13GHz未満)の周波数差に対応するエネルギー差で分離される。言い換えると、量子ビット空間210の2つの状態は、少なくとも1.5cm(たとえば、少なくとも2.0cmまたは少なくとも2.3cm)の量子ビット分離波長λに対応して、8.3×10-5eV未満(たとえば、6.2×10-5eV未満または5.4×10-5eV未満)で分離される。
【0043】
様々な実施形態において、シェルビング手順は、2つのビームが量子ビットに入射するように、2つのビームを印加することを含む。本明細書において使用されているように、「ビームを印加する」という言い回しは、ビームを提供すること、および/またはビームが原子オブジェクトおよび/または量子ビット上に入射することを引き起こすことを含む。2つのビームは、第1の波長λの第1のビームと、第2の波長λの第2のビームとを含む。様々な実施形態において、第1および第2のビームは、一斉におよび/または同時に、重なり合う時間で、および/または交互する時間で印加されてもよい。例示的な一実施形態において、第1のビームが印加され、次いで、第1のビームが原子オブジェクトへの入射を完了した後に、第2のビームが印加される。
【0044】
例示的な一実施形態において、第1および第2のビームは、位相コヒーレント方式で印加されてもよい。たとえば、第1および第2のビームは、一斉におよび/または重なり合う方式で第1および第2のビームが印加される実施形態において、同じ位相で印加され得る。たとえば、第1および第2のビームは、第1および第2のビームが交互的な方式でまたは第1のビーム、その後に第2のビームという方式で原子オブジェクト上に印加される実施形態において連続位相により印加され得る。たとえば、第1および第2のビームが交互に印加されるときに、第1のビームが印加されるのを停止したときの第1のビームの位相は、第2のビームが印加され始めるときの第2のビームの位相(たとえば、場合によっては、第1のビームが印加されるのを停止したときと第2のビームが印加されるのを開始したときの間の時間遅延における任意の位相変化を考慮するわずかな修正による)であってもよい。様々な実施形態において、第1および第2のビームは、コヒーレント方式で印加され得ない。たとえば、第1および第2のビームは、特定の位相オフセット、発展する位相オフセット、および/または同様のものにより印加され得る。
【0045】
例示的な一実施形態において、第1および第2のビームは、第1および第2のビームの伝搬方向の間の特定の角度で印加され得る。たとえば、第1および第2のビームは、用途に応じて、同じ方向に伝搬するか(たとえば、実質的に平行な伝搬方向を有する)、反対方向に伝搬するか(たとえば、実質的に反平行な伝搬方向を有する)、直交する方向に伝搬するか(たとえば、実質的に垂直な伝搬方向を有する)、または第1および第2のビームの伝搬方向の間を他の角度で伝搬し得る。例示的な一実施形態において、第1および第2のビームは、特定の偏光オフセットにより印加され得る。たとえば、第1および第2のビームは、用途に応じて、同じ偏光、反対の偏光(たとえば、第1のビームは右直線偏光であり、第2のビームは左直線偏光であり、またはその逆であってよく、第1のビームは右旋円偏光であり、第2のビームは左旋円偏光であり得る)、および/または同様の偏光で印加され得る。
【0046】
上で指摘されているように、第1のビームは第1の波長λを有し、第2のビームは第2の波長λを有する。例示的な一実施形態において、第1の波長λは、411nmに実質的に等しく、第2の波長λは、3.4μmに実質的に等しい。様々な実施形態において、第1の波長λは、量子ビット空間210の第1の状態(たとえば、オン状態214)を中間マニホールド220の1つまたは複数の状態に結合する。例示されている実施形態において、中間マニホールド220は、D5/2 F=3マニホールドである。様々な実施形態において、第2の波長λは、中間マニホールド220の1つまたは複数の状態を、シェルビングマニホールド230の1つまたは複数の安定状態に結合する。様々な実施形態において、量子ビット空間210の第1の状態を中間マニホールド220の1つまたは複数の状態に、中間マニホールドの1つまたは複数の状態をシェルビングマニホールド230の1つまたは複数の安定状態に結合することは、コヒーレントである。例示されている実施形態において、シェルビングマニホールドは、F=3およびF=4、F7/2マニホールドを含む。シェルビングマニホールド230の1つまたは複数の安定状態は、各々、量子ビットを読み出すのに必要な時間よりも長い寿命を有する。理解されるように、シェルビングマニホールド230の1つまたは複数の安定状態は、量子ビット空間210の外側にある。さらに、シェルビングマニホールド230の1つまたは複数の安定状態は、各々、量子ビット空間210のいずれの状態にも類似しないエネルギー準位を有する。たとえば、安定状態は、少なくとも100GHZ(たとえば、少なくとも1テラヘルツ(THz))の周波数に対応するエネルギー差によって量子ビット空間の両方の準位から分離され得る。量子ビット空間の第2の状態と安定状態との間のエネルギー差は、読み出し操作が非共鳴エラーによって影響および/または制限されないように十分に大きい。
【0047】
したがって、量子ビットが量子ビット空間210の第1の状態(たとえば、オン状態214)にあるとき、第1および第2のビームを量子ビットに印加することは、量子ビットが量子ビット空間210の第1の状態から中間マニホールド220を介してシェルビングマニホールド230の安定状態に遷移することを引き起こす。量子ビットが量子ビット空間210の第2の状態(たとえば、オフ状態212)にあるときに、第1および第2のビームを量子ビットに印加することは、量子ビットに影響を及ぼさない。たとえば、量子ビット空間210の第2の状態は、第1の波長λを介して中間マニホールド220に結合されず、および/または非常に弱く結合されるだけである。読み出しビームは、量子ビットが蛍光を発するかどうかを確認するために量子ビットに印加され得る。たとえば、量子ビットは、量子ビットが量子ビット空間の第2の状態にあった場合に蛍光を発し、量子ビットが量子ビット空間の第1の状態にもともとあり、現在は量子ビット空間の外の安定状態にシェルビングされている場合に蛍光を発しない。
【0048】
図3は、例示的な実施形態による、シェルビングを含む読み出し手順を含む量子アルゴリズムおよび/または回路の少なくとも一部を実行するための様々なプロセス、操作、および/または手順を例示するフローチャートである。様々な実施形態において、図3に示されているプロセス、操作、および/または手順は、量子コンピューティングシステム100のコントローラ30によって実行される。
【0049】
ステップ/操作302で始まって、コントローラ30は、量子コンピュータ110が量子アルゴリズムおよび/または回路の少なくとも一部を実行することを引き起こす。たとえば、コントローラ30は、量子アルゴリズムおよび/または回路の少なくとも一部を実行するための、処理デバイス505、メモリ510、ドライバコントローラ要素515、A/Dコンバータ525、および/または同様のものなどの手段(図5参照)を含み得る。たとえば、コントローラ30は、たとえば、コンピューティングエンティティ10によって提供される量子アルゴリズムおよび/または回路を受け取るものとしてよい。次いで、コントローラ30は、複数のコマンドをキューに入れ、コマンドのキューを実行して、量子アルゴリズムおよび/または回路の少なくとも一部が実行されることを引き起こしてよい。たとえば、量子アルゴリズムおよび/または回路の少なくとも一部を実行することは、1つまたは複数の量子ビットを初期化すること(たとえば、1つまたは複数の原子オブジェクトを量子ビット空間210内に入れること)、1つまたは複数の量子ビットのうちの少なくともいくつかを原子オブジェクト閉じ込め装置300内の1つまたは複数の特定の配置に搬送すること、1つもしくは複数の量子ビットの少なくともいくつかに対して1つもしくは複数の、1つおよび/もしくは2つの、および/もしくはマルチ量子ビットゲートを実行すること、ならびに/または同様の操作を含み得る。
【0050】
ステップ/動作304において、量子コンピュータ110に量子アルゴリズムおよび/または回路の少なくとも一部を実行させながら、コントローラ30は、量子ビットが読み出されるべきであると決定する。量子ビットを読み出すことは、一般的に、読み出しビームを量子ビットに印加して量子ビットの量子状態が量子ビット空間210の状態のうちの1つに収縮することを引き起こすことと、量子ビットが蛍光を発するかどうかに基づき量子ビットの量子状態が量子ビット空間210のどの状態に収縮したかを決定することとを含む。たとえば、コントローラ30は、今後のおよび/または次に実行されるべきコマンドのセットが量子ビットを読み出すことに対応すると決定し得る。たとえば、コントローラ30は、今後のおよび/または次に実行されるべきコマンドのセットが量子ビットを読み出すことに対応すると決定するための処理デバイス505、メモリ510、および/または同様のものなどの手段を含み得る。
【0051】
量子ビットが読み出されると決定したことに応答して(場合によっては、読み出される量子ビットを原子オブジェクト閉じ込め装置300内の適切な配置に搬送する)、コントローラ30は、ステップ/操作306において、量子ビットに対してコヒーレントシェルビング手順を実行させ得る。たとえば、コントローラ30は、第1のマニピュレーションソース60に、第1の波長λの第1のビームを生成させ、第1のビームを読み出されるべき量子ビットに印加させるものとしてよい。コントローラ30は、第2のマニピュレーションソース60に第2の波長λの第2のビームを生成させ、第2のビームを読み出されるべき量子ビットに印加させ得る。上で説明されているように、様々な実施形態において、第1および第2のビームは、一斉に、重なり合う方式で、交互的な方式で、および/または同様の方式で印加され得る。例示的な実施形態において、第1のビームが印加され、次いで、第1のビームが印加されることが停止された後に第2のビームが印加される。たとえば、コントローラ30は、第1のマニピュレーションソースが第1のビームを印加し、第2のマニピュレーションソースが第2のビームを印加することを引き起こすための処理デバイス505、メモリ510、ドライバコントローラ要素515、および/または同様のものなどの手段を含み得る。上で説明されているように、第1および第2のビームは、特定の位相関係、第1および第2のビームの伝搬方向の間の特定の関係、および/または第1および第2のビームの偏光の間の特定の関係により印加され得る。例示的な一実施形態において、第1および第2のビームは、10~50μs(たとえば、10~30μs、20~40μs、および/または同様の時間)の時間にわたって印加されてもよい。
【0052】
ステップ/操作308において、コントローラ30は、読み出しマニピュレーションソース60に、読み出しビームを読み出されるべき量子ビットに印加させる。上で指摘されているように、量子ビットがステップ306でシェルビングされていた(たとえば、量子ビットが量子ビット空間210の第1の状態にあり、したがってシェルビングマニホールド230の安定状態にコヒーレントに遷移していた)場合、量子ビットは、読み出しビームが量子ビットに印加されたことに応答して蛍光を発することはない。ステップ306で、量子ビットがシェルビングされなかった(たとえば、量子ビットが量子ビット空間210の第2の状態に以前にあって、今第2の状態にあり、したがってシェルビングマニホールド230の安定状態に遷移していない)場合、量子ビットは、読み出しビームが量子ビットに印加されたことに応答して蛍光を発する。次いで、コントローラ30は、量子コンピュータ110の光学系集光システムから、蛍光が検出/観察されたか、または検出/観察されなかったかを示す信号を受信する。受信した信号に基づき、コントローラ30は、量子ビットの量子状態が量子ビット空間210内のどの状態に収縮したか(たとえば、オン状態214および/またはオフ状態212)を決定する。たとえば、コントローラ30は、処理デバイス505、メモリ510、ドライバコントローラ要素515、A/Dコンバータ525、および/または同様のものなどの手段を備え、この手段は、読み出しマニピュレーションソースが読み出しビームを呼び出されるべき量子ビットに印加し、読み出しビームの印加に応答して量子ビットの蛍光が検出/観察されたかどうかを示す信号を受信し、量子ビットの量子状態を決定することを引き起こす。
【0053】
ステップ/操作310において、コントローラ30は、読み出された量子ビットが再初期化されることを引き起こす。様々な実施形態において、量子ビットを再初期化することは、シェルビング解除手順を実行することを含む。例示的な一実施形態において、シェルビング解除手順は、ステップ/操作308において、量子ビットの量子状態が量子ビット空間210の第1の状態に収縮し、したがって、読み出し手順においてシェルビングされたと決定された場合にのみ実行される(たとえば、蛍光は検出/観察されなかった)。たとえば、コントローラ30は、処理デバイス505、メモリ510、ドライバコントローラ要素515、A/Dコンバータ525、および/または同様のものなどの手段を含むものとしてよく、場合によってはシェルビング解除手順を介して、量子ビットが再初期化されることを引き起こす。様々な実施形態において、量子ビットを再初期化することは、量子ビットが量子ビット空間210において知られている状態にあるように量子ビットをシェルビング解除することに加えて1つまたは複数の追加のステップおよび/または操作を含み得る。
【0054】
図4は、例示的な一実施形態において、量子コンピューティングシステムの量子ビットとして使用され得る例示的な原子オブジェクトに対するエネルギー準位図400の一部を例示している。量子ビットがシェルビングされるときに(たとえば、ステップ/操作306において)、量子ビットはシェルビングマニホールド230内の安定状態に遷移される。量子ビットのシェルビング解除を行い、量子ビット空間210内に量子ビットを戻すために、シェルビング解除手順が実行される。様々な実施形態において、シェルビング解除手順は、第3の波長λの第3のビームおよび第2の波長λの第4の波長を一斉におよび/または少なくとも部分的に重なり合う方式で印加することを含む。たとえば、第3のビームは、第4のビームが量子ビットに入射するのと同じ時間の少なくとも一部で量子ビットに入射する。第3および第4のビームは、シェルビングマニホールドの1つまたは複数の安定状態を一時的マニホールド420の1つまたは複数の状態に結合する。例示的な一実施形態において、第3および第4のビームは、シェルビングマニホールドの1つまたは複数の安定状態を一時的マニホールド420の1つまたは複数の状態にコヒーレント結合する。様々な実施形態において、量子ビットは速く崩壊して一時的マニホールド420の1つまたは複数の状態から量子ビット空間210に戻る。例示されている実施形態において、一時的マニホールド420は、F=1およびF=2、[3/2]3/2マニホールドを含む。例示的な一実施形態において、第3および第4のビームは、第3および第4のビームが印加される重なり合う時間が10nsから15μsの範囲内(たとえば、8~12μs、10μs、および/または同様の時間)であるように印加される。
【0055】
たとえば、コントローラ30は、第3のマニピュレーションソースが第3の波長λの第3のビームを生成すること、および第2のマニピュレーションソース(または第4のマニピュレーションソース)が第2の波長λの第4のビームを生成することを引き起こし、それにより第3および第4のビームは一斉におよび/または少なくとも部分的に重なり合う方式で量子ビットに印加される。様々な実施形態において、第3の波長λは、976nmに実質的に等しく、第2の波長λは、3.4μmに実質的に等しい。次いで、量子ビットは、量子ビット空間210に戻るように(たとえば、自発的に)崩壊させられ得る。
【0056】
例示的な一実施形態において、第3および第4のビームは、位相コヒーレント方式で印加されてもよい。たとえば、第3および第4のビームは、同じ位相で印加されてもよい。様々な実施形態において、第3および第4のビームは、コヒーレント方式で印加され得ない。たとえば、第3および第4のビームは、特定の位相オフセット、発展する位相オフセット、および/または同様のものにより印加され得る。例示的な一実施形態において、第3および第4のビームは、第3および第4のビームの伝搬方向の間の特定の角度で印加され得る。たとえば、第3および第4のビームは、用途に応じて、同じ方向に伝搬するか(たとえば、実質的に平行な伝搬方向を有する)、反対方向に伝搬するか(たとえば、実質的に反平行な伝搬方向を有する)、直交する方向に伝搬するか(たとえば、実質的に垂直な伝搬方向を有する)、または第1および第2のビームの伝搬方向の間を他の角度で伝搬し得る。例示的な一実施形態において、第3および第4のビームは、特定の偏光オフセットにより印加され得る。たとえば、第3および第4のビームは、用途に応じて、同じ偏光、反対の偏光(たとえば、第3のビームは右直線偏光であり、第4のビームは左直線偏光であり、またはその逆であってよく、第3のビームは右旋円偏光であり、第4のビームは左旋円偏光であり得る)、および/または同様の偏光で印加され得る。
【0057】
引き続き図3を参照すると、ステップ/操作312において、コントローラ30は、量子コンピュータに、量子アルゴリズムおよび/または回路の残りの部分および/または別の部分の実行を継続させ得る。たとえば、コントローラ30は、量子アルゴリズムおよび/または回路の追加の、および/または残りの部分を実行するための、処理デバイス505、メモリ510、ドライバコントローラ要素515、A/Dコンバータ525、および/または同様のものなどの手段(図5参照)を含み得る。たとえば、コントローラ30は、量子アルゴリズムおよび/または回路の追加のおよび/または残りの部分が実行されることを引き起こすコマンドのキューを実行し続け得る。たとえば、量子アルゴリズムおよび/または回路の追加および/または残りの部分を実行することは、1つまたは複数の量子ビットを初期化すること(たとえば、1つまたは複数の原子オブジェクトを量子ビット空間210内に入れること)、1つまたは複数の量子ビットのうちの少なくともいくつかを原子オブジェクト閉じ込め装置300内の1つまたは複数の特定の配置に搬送すること、1つもしくは複数の量子ビットの少なくともいくつかに対して1つもしくは複数の、1つおよび/もしくは2つの、および/もしくはマルチ量子ビットゲートを実行すること、1つまたは複数の量子ビットのうちの少なくともいくつかを読み出すこと、および/または同様の操作を含み得る。例示的な一実施形態において、量子アルゴリズムおよび/または回路の追加のおよび/または残りの部分は、ステップ/操作308において決定された量子ビットの量子状態に基づき修正され得る。
【0058】
技術的な利点
様々な実施形態は、原子オブジェクトが、原子オブジェクトの別の量子状態にエネルギー的に近い量子状態にあると予想されるときに原子オブジェクトの量子状態を決定することに関する技術的問題に対する技術的解決策を提供するものである。特に、様々な実施形態は、非共鳴エラーにより決定を制限することなく、原子オブジェクトがエネルギー的に近い量子状態のセットの第2の量子状態にあるかどうかが決定され得るようにエネルギー的に近い量子状態のセットの第1の量子状態にある原子オブジェクトをコヒーレントシェルビングすることに関する技術的解決策を提供する。本明細書において説明されているコヒーレントシェルビングは、従来の(非コヒーレント)シェルビング技術よりも著しく高速である。たとえば、従来の(非コヒーレント)シェルビング技術は、約30msのタイムスケールで行われる。様々な実施形態のコヒーレントシェルビングは、約10~50μs、すなわち、従来の(非コヒーレント)シェルビングに比べて3桁も速い時間を必要とする。様々な実施形態は、量子ビットが原子オブジェクトであり、量子ビット空間が小さなエネルギー差(たとえば、20GHz以下)で分離される2つの量子ビット状態を定義する量子コンピュータの量子ビットの読み出しにこれらの技術的解決策を適用する。したがって、様々な実施形態は、原子オブジェクトの量子状態を正確に決定する技術分野に技術的改善を提供する。いくつかの実施形態は、量子コンピュータ(たとえば、超微細構造を用いて量子ビット空間を定義するトラップ原子オブジェクト量子コンピュータ)の量子ビットを読み出す技術分野に対する技術的改善を提供する。
【0059】
例示的なコントローラ
様々な実施形態において、閉じ込め装置300は、コントローラ30を含むシステム(たとえば、量子コンピュータ110)に組み込まれる。様々な実施形態において、コントローラ30は、システム(たとえば、量子コンピュータ110)の様々な要素を制御するように構成される。たとえば、コントローラ30は、電圧源50、クライオスタットおよび/もしくは真空チャンバ40内の温度および圧力を制御するクライオスタットシステムおよび/もしくは真空システム、マニピュレーションソース60、冷却システム、ならびに/またはクライオスタットおよび/もしくは真空チャンバ40内の環境条件(たとえば、温度、湿度、圧力、および/もしくは同様のもの)を制御し、および/もしくは閉じ込め装置内の1つもしくは複数の原子オブジェクトをマニピュレートし、および原子オブジェクトの量子状態の制御された発展を引き起こすよう構成されている他のシステムを制御するよう構成され得る。様々な実施形態において、コントローラ30は、1つまたは複数の光学系集光システムから信号を受信するように構成され得る。
【0060】
図5に示されているように、様々な実施形態において、コントローラ30は、処理要素505、メモリ510、ドライバコントローラ要素515、通信インターフェース520、アナログ-デジタルコンバータ要素525、および/または同様の要素を含む様々なコントローラ要素を含み得る。たとえば、処理要素505は、プログラマブルロジックデバイス(CPLD)、マイクロプロセッサ、コプロセシングエンティティ、特定用途向け命令セットプロセッサ(ASIP)、集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)、ハードウェア加速器、他の処理デバイスおよび/または回路、ならびに/または同様のものを含み得る。回路という用語は、もっぱらハードウェアだけの実施形態、またはハードウェアとコンピュータプログラム製品との組合せを指すものとしてよい。例示的な一実施形態において、コントローラ30の処理要素505は、クロックを備え、および/またはクロックと通信する。
【0061】
たとえば、メモリ510は、ハードディスク、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリ、RAM、DRAM、SRAM、FPM DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、キャッシュメモリ、レジスタメモリ、および/または同様のもののうちの1つまたは複数などの揮発性および/または不揮発性メモリストレージなどの非一時的メモリを含み得る。様々な実施形態において、メモリ510は、量子アルゴリズムおよび/または回路が実行されることを引き起こすために実行されるコマンドのキュー(たとえば、実行可能キュー)、量子コンピュータの量子ビットに対応する量子ビットレコード(たとえば、量子ビットレコードデータストア、量子ビットレコードデータベース、量子ビットレコードテーブル、および/または同様のものにおける)、キャリブレーションテーブル、コンピュータプログラムコード(たとえば、1つまたは複数のコンピュータ言語、専用コントローラ言語、および/または同様の言語)、および/または同様のものを記憶し得る。例示的な一実施形態において、メモリ510に記憶されているコンピュータプログラムコードの少なくとも一部の実行(たとえば、処理要素505による)は、コントローラ30がシェルビング手順(およびシェルビング解除手順)を含む量子ビット読み出し手順を実行するために本明細書において説明されている1つまたは複数のステップ、操作、プロセス、手順、および/または同様のものを実行することを引き起こす。
【0062】
様々な実施形態において、ドライバコントローラ要素510は、1つまたは複数のドライバを制御するように各々構成されている1つまたは複数のドライバおよび/またはコントローラ要素を含み得る。様々な実施形態において、ドライバコントローラ要素510は、ドライバおよび/またはドライバコントローラを備え得る。たとえば、ドライバコントローラは、コントローラ30によって(たとえば、処理要素505によって)スケジュールされ実行される実行可能命令、コマンド、および/または同様のものに従って1つまたは複数の対応するドライバが操作されることを引き起こすように構成され得る。様々な実施形態において、ドライバコントローラ要素515は、コントローラ30が電圧源50、マニピュレーションソース60、冷却システム、および/または同様のものを操作することを可能にし得る。様々な実施形態において、ドライバは、レーザードライバ、真空コンポーネントドライバ、閉じ込め装置300のトラッピング電位を維持しおよび/または制御するために用いられる電極に印加される電流および/または電圧の流れを制御するためのドライバ(ならびに/または閉じ込め装置の電位発生要素にドライバ動作シーケンスを提供するための他のドライバ)、クライオスタットおよび/または真空システムコンポーネントドライバ、冷却システムドライバ、および/または同様のものであってよい。様々な実施形態において、コントローラ30は、(たとえば、光学系集光システムの)1つまたは複数の受光器コンポーネントから信号を伝達しおよび/または受信するための手段を備える。たとえば、コントローラ30は、1つまたは複数の受光器コンポーネント(たとえば、光学系集光システムの光検出器)、キャリブレーションセンサー、および/または同様のものから信号を受信するように構成されている1つまたは複数のアナログ-デジタルコンバータ要素525を備え得る。
【0063】
様々な実施形態において、コントローラ30は、コンピューティングエンティティ10とインターフェースし、および/または通信するための通信インターフェース520を備え得る。たとえば、コントローラ30は、コンピューティングエンティティ10から実行可能命令、コマンドセット、および/または同様のものを受け取り、量子コンピュータ110から受け取った出力(たとえば、光学系集光システムから)および/または出力を処理した結果をコンピューティングエンティティ10に提供するための通信インターフェース520を備え得る。様々な実施形態において、コンピューティングエンティティ10およびコントローラ30は、直接的な有線および/またはワイヤレス接続を介して、および/または1つまたは複数の有線および/またはワイヤレスネットワーク20を介して通信し得る。
【0064】
例示的なコンピューティングエンティティ
図6は、本発明の実施形態と組み合わせて使用することができる例示的なコンピューティングエンティティ10の例示的な概略図である。様々な実施形態において、コンピューティングエンティティ10は、使用者が量子コンピュータ110に入力を提供し(たとえば、コンピューティングエンティティ10のユーザインターフェースを介して)、量子コンピュータ110から出力を受信し、表示し、分析し、および/またはそれに対して同様の操作を行うことを可能にするように構成される。
【0065】
図6に示されているように、コンピューティングエンティティ10は、アンテナ612、送信機604(たとえば、無線)、受信機606(たとえば、無線)、および送信機604および受信機606にそれぞれ信号を提供し、信号を受信する処理要素608を含むことができる。それぞれ送信機604および受信機606に提供され、そこから受信される信号は、コントローラ30、他のコンピューティングエンティティ10、および/または同様のものなどの、様々なエンティティと通信するために、適用可能なワイヤレスシステムのエアーインターフェース規格によるシグナリング情報/データを含んでもよい。この点に関して、コンピューティングエンティティ10は、1つまたは複数のエアーインターフェース規格、通信プロトコル、変調タイプ、およびアクセスタイプで動作可能であり得る。たとえば、コンピューティングエンティティ10は、ファイバー分散データインターフェース(FDDI)、デジタル加入者回線(DSL)、イーサネット、非同期転送モード(ATM)、フレームリレー、データオーバーケーブルサービスインターフェース仕様(DOCSIS)、または任意の他の有線伝送プロトコルなどの有線データ伝送プロトコルを使用して通信を受け、および/または提供するように構成され得る。同様に、コンピューティングエンティティ10は、汎用パケット無線システム(GPRS)、Universal Mobile Telecommunications System(UMTS)、符号分割多元接続2000(CDMA2000)、CDMA2000 1X(1xRTT)、広帯域符号分割多元接続(WCDMA(登録商標))、Global System for Mobile Communications(GSM)、Enhanced Data rates for GSM Evolution(EDGE)、時分割同期符号分割多元接続(TD-SCDMA)、ロングタームエボリューション(LTE)、Evolved Universal Terrestrial Radio Access Network(E-UTRAN)、Evolved Data Optimized(EVDO)、High Speed Packet Access(HSPA)、High Speed Downlink Packet Access(HSDPA)IEEE 802. 11(Wi-Fi(登録商標))、Wi-Fi(登録商標)Direct、802.16(WiMAX)、超広帯域(UWB)、赤外線(IR)プロトコル、近距離無線通信(NFC)プロトコル、Wibree、Bluetooth(登録商標)プロトコル、ワイヤレスユニバーサルシリアルバス(USB)プロトコル、および/または他の任意のワイヤレスプロトコルなどの様々なプロトコルのうちのいずれかを使用するワイヤレス外部通信ネットワークを介して通信するように構成され得る。コンピューティングエンティティ10は、そのようなプロトコルおよび規格を使用して、ボーダーゲートウェイプロトコル(BGP)、動的ホスト構成プロトコル(DHCP)、ドメインネームシステム(DNS)、ファイル転送プロトコル(FTP)、ハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)、HTTP over TLS/SSL/Secure、インターネットメッセージ接続プロトコル(IMAP)、ネットワークタイムプロトコル(NTP)、Simple Mail Transfer Protocol(SMTP)、Telnet、Transport Layer Security(TLS)、Secure Sockets Layer(SSL)、インターネットプロトコル(IP)、伝送制御プロトコル(TCP)、ユーザデータグラムプロトコル(UDP)、Datagram Congestion Control Protocol(DCCP)、Stream Control Transmission Protocol(SCTP)、ハイパーテキストマークアップ言語(HTML)、および/または同様のものを使用して通信するものとしてよい。
【0066】
これらの通信規格およびプロトコルを介して、コンピューティングエンティティ10は、非構造化補足サービス情報/データ(USSD)、ショートメッセージサービス(SMS)、マルチメディアメッセージングサービス(MMS)、デュアルトーンマルチ周波信号(DTMF)、および/または加入者識別モジュールダイアラー(SIM dialer)などの概念を使用して様々な他のエンティティと通信することができる。コンピューティングエンティティ10は、たとえば、そのファームウェア、ソフトウェア(たとえば、実行可能命令、アプリケーション、プログラムモジュールを含む)、およびオペレーティングシステムに対する変更、アドオン、および更新をダウンロードすることもできる。
【0067】
コンピューティングエンティティ10は、1つまたは複数のユーザ入力/出力インターフェース(たとえば、処理要素608に結合されたディスプレイ616および/またはスピーカー/スピーカードライバと、処理要素608に結合されたタッチスクリーン、キーボード、マウス、および/またはマイクロフォン)を含むユーザインターフェースデバイスも含み得る。たとえば、ユーザ出力インターフェースは、情報/データの表示または可聴提示を引き起こすために、および1つまたは複数のユーザ入力インターフェースを介したインタラクティブな操作のために、コンピューティングエンティティ10上で実行される、および/またはコンピューティングエンティティ10を介してアクセス可能なアプリケーション、ブラウザ、ユーザインターフェース、インターフェース、ダッシュボード、スクリーン、ウェブページ、ページ、および/または本明細書において交換可能に使用される同様の語を提供するよう構成され得る。ユーザ入力インターフェースは、キーパッド618(ハードまたはソフト)、タッチディスプレイ、音声/スピーチまたはモーションインターフェース、スキャナ、リーダー、または他の入力デバイスなどの、コンピューティングエンティティ10がデータを受信することを可能にする、多数のデバイスのいずれかを備えることができる。キーパッド618を含む実施形態では、キーパッド618は、従来の数字(0~9)および関係するキー(#、*)、およびコンピューティングエンティティ10を操作するために使用される他のキーを含む(または表示を引き起こす)ことができ、フルセットの英字キーまたはフルセットの英数字キーを提供するようにアクティベートされ得るキーのセットを含み得る。入力を提供することに加えて、ユーザ入力インターフェースは、たとえば、スクリーンセーバーおよび/またはスリープモードなどのいくつかの機能をアクティベートし、またはデアクティベートするために使用することができる。そのような入力を通じて、コンピューティングエンティティ10は、情報/データ、ユーザインタラクション/入力、および/または同様のものを収集することができる。
【0068】
コンピューティングエンティティ10は、揮発性ストレージもしくはメモリ622および/または不揮発性ストレージもしくはメモリ624も含むことができ、これらは埋め込むことができ、および/または取り外し可能であり得る。たとえば、不揮発性メモリは、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、MMC、SDメモリカード、メモリスティック、CBRAM、PRAM、FeRAM、RRAM、SONOS、レーストラックメモリ、および/または同様のものであり得る。揮発性メモリは、RAM、DRAM、SRAM、FPM DRAM、EDO DRAM、SDRAM、DDR SDRAM、DDR2 SDRAM、DDR3 SDRAM、RDRAM、RIMM、DIMM、SIMM、VRAM、キャッシュメモリ、レジスタメモリ、および/または同様のものであってよい。揮発性および不揮発性のストレージまたはメモリは、データベース、データベースインスタンス、データベース管理システムエンティティ、データ、アプリケーション、プログラム、プログラムモジュール、スクリプト、ソースコード、オブジェクトコード、バイトコード、コンパイル済みコード、インタプリタコード、マシンコード、実行可能命令、および/または同様のものを記憶して、コンピューティングエンティティ10の機能を実装することができる。
【0069】
結論
本明細書において述べられている本発明の多くの修正形態および他の実施形態は、前述の説明および関連する図面に提示された教示の利益を有する本発明に係る当業者は思いつくであろう。したがって、本発明は、開示されている特定の実施形態に限定されるべきものではなく、修正形態および他の実施形態は、付属の請求項の範囲内に含まれることが意図されていることは理解されるであろう。特定の用語が本明細書において採用されているけれども、これらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用されており、制限を目的としたものではない。
【符号の説明】
【0070】
10 コンピューティングエンティティ
20 有線および/またはワイヤレスネットワーク
30 コントローラ
40 クライオスタットおよび/または真空チャンバ
50 電圧源
60 マニピュレーションソース
100 量子コンピューティングシステム
110 量子コンピュータ
200 エネルギー準位図
210 量子ビット空間
212 第1の量子ビット状態
214 第2の量子ビット状態
220 中間マニホールド
230 シェルビングマニホールド
300 原子オブジェクト閉じ込め装置
400 エネルギー準位図
420 一時的マニホールド
505 処理デバイス
510 メモリ
515 ドライバコントローラ要素
520 通信インターフェース
525 A/Dコンバータ
604 送信機
606 受信機
608 処理要素
612 アンテナ
616 ディスプレイ
618 キーパッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラップイオン量子コンピュータのコントローラであって、
該コントローラは少なくとも1つの処理デバイスを備え、前記少なくとも1つの処理デバイスは少なくとも1つのマニピュレーションソースドライバと通信し、
前記処理デバイスは該コントローラに、
第1の波長の第1のビームおよび第2の波長の第2のビームを量子ビットに入射させるステップであって、前記第1の波長および前記第2の波長は、前記量子ビットの量子空間の状態を安定状態に結合するように構成され、前記安定状態は、読み出し操作を実行するのに必要な時間の長さよりも長い寿命を有し、前記第1のビームおよび前記第2のビームは前記少なくとも1つのマニピュレーションソースドライバによって操作される少なくとも1つのマニピュレーションソースによって生成される、ステップと、
読み出しビームを前記量子ビットに入射させるステップとを行わせるように構成されている、コントローラ。
【請求項2】
前記処理デバイスは光検出器と通信し、
前記処理デバイスは前記コントローラに、
前記光検出器から信号を受信するステップであって、前記信号は、前記読み出しビームが前記量子ビットに入射した結果に対応している、ステップと、
前記信号に基づき、前記量子ビットの状態を決定するステップとを行わせるようにさらに構成されている、請求項に記載のコントローラ。
【請求項3】
前記処理デバイスは、前記読み出し操作を実行させるために、読み出しビームを前記量子ビットに入射させ、光検出器によって生成された信号を監視して、前記読み出しビームが前記量子ビットに入射したことに応答して前記量子ビットが蛍光を発するかどうかを決定するように構成されている、請求項に記載のコントローラ。
【外国語明細書】