(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130397
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ウインドシールド
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20220830BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20220830BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20220830BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220830BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C03C27/12 M
C03C27/12 K
B60J1/00 H
B60S1/02 300
B32B7/023
B32B17/10
B60S1/02 400
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022089925
(22)【出願日】2022-06-01
(62)【分割の表示】P 2017229728の分割
【原出願日】2017-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】小川 良平
(72)【発明者】
【氏名】千葉 和喜
(72)【発明者】
【氏名】小川 永史
(57)【要約】
【課題】情報取得装置による情報の取得を正確に行うことができるような発熱が可能な、ウインドシールドを提供する。
【解決手段】本発明に係る合わせガラスは、光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可能な自動車のウインドシールドであって、第1辺と、及び前記第1辺と対向する第2辺を有する外側ガラス板と、前記外側ガラス板と対向配置され、前記外側ガラス板と略同形状の内側ガラス板と、前記外側ガラス板と内側ガラス板との間に配置される中間膜と、を備え、前記情報取得装置と対向し前記光が通過する情報取得領域を有し、前記中間膜は、少なくとも1つの接着層と、前記接着層に支持される発熱層と、を備え、前記発熱層は、少なくとも前記情報取得領域と対応する領域に、前記情報取得領域を挟むように配置された一対のバスバーと、前記両バスバーを連結するように並列に接続された複数の第1加熱線と、を備え、前記加熱線の線幅が10μm以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可
能な自動車のウインドシールドであって、
第1辺と、及び前記第1辺と対向する第2辺を有する外側ガラス板と、
前記外側ガラス板と対向配置され、前記外側ガラス板と略同形状の内側ガラス板と、
前記外側ガラス板と内側ガラス板との間に配置される中間膜と、
を備え、
前記情報取得装置と対向し前記光が通過する情報取得領域を有し、
前記中間膜は、
少なくとも1つの接着層と、
前記接着層に支持される発熱層と、
を備え、
前記発熱層は、少なくとも前記情報取得領域と対応する領域に、
前記情報取得領域を挟むように配置された一対のバスバーと、
前記両バスバーを連結するように並列に接続された複数の第1加熱線と、
を備え、
前記第1加熱線の線幅が10μm以下であり、
前記第1加熱線の断面形状が台形であって、前記第1加熱線における線幅の少なくとも一部は、前記第1加熱線の厚み以上の長さを有している、ウインドシールド。
【請求項2】
前記情報取得領域の面積は、10000mm2以下である、請求項1に記載のウインドシールド。
【請求項3】
隣接する前記第1加熱線同士は接続されていない、請求項1または2に記載のウインドシールド。
【請求項4】
前記情報取得領域は、前記外側ガラス板の端縁から200mm以内に位置している、請求項1から3のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項5】
前記複数の第1加熱線は、上下方向に延びている、請求項1から4のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項6】
前記第1加熱線のピッチは、0.3~10mmである、請求項1から5のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項7】
前記発熱層は、
少なくとも一部が前記第1辺側の端部に沿って延びる第1辺側バスバーと、
少なくとも一部が前記第2辺側の端部に沿って延びる第2辺側バスバーと、
前記第1辺側バスバーと第2辺側バスバーとを連結するように配置された複数の第2加熱線と、
をさらに備えている、請求項1から6のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項8】
前記第1辺側バスバー及び第2辺側バスバーの一方は、前記情報取得領域を挟むように配置されているバスバーのいずれか一方と、一体化されている、請求項7に記載のウインドシールド。
【請求項9】
前記第2加熱線は、前記情報取得領域の外の視野領域に配置されており、
前記情報取得領域の単位面積当たりの発熱量は、前記視野領域よりも高く、
前記第1加熱線の線幅は、前記第2加熱線の線幅よりも細い、請求項7または8に記載のウインドシールド。
【請求項10】
前記第1加熱線のピッチは、前記第2加熱線のピッチよりも小さい、請求項7から9のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項11】
光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可能な自動車のウインドシールドであって、
第1辺と、及び前記第1辺と対向する第2辺を有する外側ガラス板と、
前記外側ガラス板と対向配置され、前記外側ガラス板と略同形状の内側ガラス板と、
前記外側ガラス板と内側ガラス板との間に配置される中間膜と、
を備え、
前記情報取得装置と対向し前記光が通過する情報取得領域を有し、
前記中間膜は、
少なくとも1つの接着層と、
前記接着層に支持される発熱層と、
を備え、
前記発熱層は、少なくとも前記情報取得領域と対応する領域に、
前記情報取得領域を挟むように配置された一対のバスバーと、
前記両バスバーを連結するように並列に接続された複数の第1加熱線と、
前記一対のバスバーとそれぞれ接続され、前記ウインドシールドの同一の辺に向かって延びる一対の接続材と、
を備え、
前記発熱層は、
少なくとも一部が前記第1辺側の端部に沿って延びる第1辺側バスバーと、
少なくとも一部が前記第2辺側の端部に沿って延びる第2辺側バスバーと、
前記第1辺側バスバーと第2辺側バスバーとを連結するように配置された複数の第2加熱線と、
をさらに備え、
前記第1辺側バスバー及び第2辺側バスバーの一方は、前記情報取得領域を挟むように配置されているバスバーのいずれか一方と、一体化されており、
前記第1加熱線の線幅が10μm以下である、ウインドシールド。
【請求項12】
前記第1加熱線における線幅の少なくとも一部は、前記第1加熱線の厚み以上の長さを有している、請求項11に記載のウインドシールド。
【請求項13】
前記情報取得領域の面積は、10000mm2以下である、請求項11または12に記載のウインドシールド。
【請求項14】
隣接する前記第1加熱線同士は接続されていない、請求項11から13のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項15】
前記情報取得領域は、前記外側ガラス板の端縁から200mm以内に位置している、請求項11から14のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項16】
前記複数の第1加熱線は、上下方向に延びている、請求項11から15のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項17】
前記第1加熱線のピッチは、0.3~10mmである請求項11から16のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項18】
前記第2加熱線は、前記情報取得領域の外の視野領域に配置されており、
前記情報取得領域の単位面積当たりの発熱量は、前記視野領域よりも高く、
前記第1加熱線の線幅は、前記第2加熱線の線幅よりも細い、請求項11から17のいずれかに記載のウインドシールド。
【請求項19】
前記第1加熱線のピッチは、前記第2加熱線のピッチよりも小さい、請求項11から18のいずれかに記載のウインドシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の安全性能は飛躍的に向上しつつあり、その1つとして前方車両との衝突を回避するため、前方車両との距離及び前方車両の速度を感知し、異常接近時には、自動的にブレーキが作動する安全システムが提案されている。このようなシステムは、前方車両との距離などをレーザーレーダーやカメラを用いて計測している。レーザーレーダーやカメラは、一般的に、ウインドシールドの内側に配置され、赤外線等の光を前方に向けて照射することで、計測を行う(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のように、レーザーレーダーやカメラなどの測定装置は、ウインドシールドを構成するガラス板の内面側に配置され、ガラス板を介して光の照射や受光を行っている。ところが、気温の低い日や寒冷地では、ガラス板が曇ることがある。しかしながら、ガラス板が曇ると、測定装置から正確に光を照射できなかったり、あるいは受光できないおそれがある。これにより、車間距離などが正確に算出されない可能性もある。
【0004】
このような問題は、車間距離の測定装置に限られず、例えば、レインセンサー、ライトセンサー、光ビーコンなどの光の受光によって車外からの情報を取得する情報取得装置全般に生じうる問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を解決するため、光が通過する領域に、加熱線を配置することが提案されている。しかしながら、この領域では、情報取得装置による正確な情報の取得のため、十分な発熱が要求されるが、単に加熱線を配置するだけでは、要求される発熱を得ることはできない。本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、情報取得装置による情報の取得を正確に行うことができるような発熱が可能な、ウインドシールドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
項1.光の照射及び/又は受光を行うことで車外からの情報を取得する情報取得装置が配置可能な自動車のウインドシールドであって、
第1辺と、及び前記第1辺と対向する第2辺を有する外側ガラス板と、
前記外側ガラス板と対向配置され、前記外側ガラス板と略同形状の内側ガラス板と、
前記外側ガラス板と内側ガラス板との間に配置される中間膜と、
を備え、
前記情報取得装置と対向し前記光が通過する情報取得領域を有し、
前記中間膜は、
少なくとも1つの接着層と、
前記接着層に支持される発熱層と、
を備え、
前記発熱層は、少なくとも前記情報取得領域と対応する領域に、
前記情報取得領域を挟むように配置された一対のバスバーと、
前記両バスバーを連結するように並列に接続された複数の第1加熱線と、
を備え、
前記加熱線の線幅が10μm以下である、ウインドシールド。
【0008】
項2.前記第1加熱線における線幅の少なくとも一部は、前記第1加熱線の厚み以上の長さを有している、項1に記載のウインドシールド。
【0009】
項3.前記情報取得領域の面積は、10000mm2以下である、項1または2に記載のウインドシールド。
【0010】
項4.隣接する前記第1加熱線同士は接続されていない、項1から3のいずれかに記載のウインドシールド。
【0011】
項5.前記情報取得領域は、前記外側ガラス板の端縁から200mm以内に位置している、項1から4のいずれかに記載のウインドシールド。
【0012】
項6.前記複数の第1加熱線は、上下方向に延びている、項1から5のいずれかに記載のウインドシールド。
【0013】
項7.前記第1加熱線のピッチは、0.3~10mmである項1から6のウインドシールド。
【0014】
項8.前記発熱層は、
少なくとも一部が前記第1辺側の端部に沿って延びる第1辺側バスバーと、
少なくとも一部が前記第2辺側の端部に沿って延びる第2辺側バスバーと、
前記第1辺側バスバーと第2辺側バスバーとを連結するように配置された複数の第2加熱線と、
をさらに備えている、項1から7のいずれかに記載のウインドシールド。
【0015】
項9.前記第1辺側バスバー及び第2辺側バスバーの一方は、前記情報取得領域を挟むように配置されているバスバーのいずれか一方と、一体化されている、項8に記載のウインドシールド。
【0016】
項10.前記第2加熱線は、前記情報取得領域の外の視野領域に配置されており、
前記情報取得領域の単位面積当たりの発熱量は、前記視野領域よりも高く、
前記第1加熱線の線幅は、前記第2加熱線の線幅よりも細い、項8または9に記載のウインドシールド。
【0017】
項11.前記第1加熱線のピッチは、前記第2加熱線のピッチよりも小さい、項8から10のいずれかに記載のウインドシールド。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るウインドシールドによれば、情報取得装置による情報の取得を正確に行うことができるような発熱が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るウインドシールドの正面図である。
【
図5】成形型が通過する炉の側面図(a)及び成形型の平面図(b)である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係るウインドシールドの平面図である。
【
図7】第2実施形態の第2態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図8】第2実施形態の第3態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図9】第2実施形態の第4態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図10】第2実施形態の第5態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図11】第2実施形態の第6態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図12】第2実施形態の第7態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図13】第2実施形態の第8態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図14】第2実施形態の第9態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図15】第2実施形態の第10態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図16】第2実施形態の第11態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図17】第2実施形態の第12態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図18】第2実施形態の第13態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図19】第2実施形態の第14態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図20】第2実施形態の第15態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図21】第2実施形態の第16態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図22】第2実施形態の第17態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図23】第2実施形態の第18態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図24】第2実施形態の第19態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図25】第2実施形態の第20態様に係るウインドシールドの平面図である。
【
図27】
図25に係るウインドシールドの第1発熱部の平面図である。
【
図28】
図25に係るウインドシールドの第2発熱部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<A.第1実施形態>
以下、本発明に係るウインドシールドの第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係るウインドシールドの平面図、
図2は
図1のウインドシールドが車両に取付けられた状態を示す断面図、
図3は
図1のA-A線断面図である。
図1~
図3に示すように、本実施形態に係るウインドシールドは、外側ガラス板1、内側ガラス板2、及びこれらガラス板1,2の間に配置される中間層3を備えている。また、外側ガラス板1及び内側ガラス板2の少なくとも一方には、それぞれマスク層4が積層されており、このマスク層4と対応する位置レーザーレーダーなどの車間距離の測定を行う測定ユニット5が取付けられている。以下、各部材について説明する。
【0021】
<1.ウインドシールドの概要>
<1-1.ガラス板>
各ガラス板1,2は、ともに、下辺12が上辺11よりも長い矩形状に形成されてする。すなわち、上辺11、下辺12、両側辺(左辺13,右辺14)で囲まれた台形状に形成されている。また、各ガラス板1,2としては、公知のガラス板を用いることができ、熱線吸収ガラス、一般的なクリアガラスやグリーンガラス、またはUVグリーンガラスで形成することもできる。但し、これらのガラス板1、2は、自動車が使用される国の安全規格に沿った可視光線透過率を実現する必要がある。例えば、外側ガラス板1により必要な日射吸収率を確保し、内側ガラス板2により可視光線透過率が安全規格を満たすように調整することができる。以下に、クリアガラス、熱線吸収ガラス、及びソーダ石灰系ガラスの組成の一例を示す。
【0022】
(クリアガラス)
SiO2:70~73質量%
Al2O3:0.6~2.4質量%
CaO:7~12質量%
MgO:1.0~4.5質量%
R2O:13~15質量%(Rはアルカリ金属)
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.08~0.14質量%
【0023】
(熱線吸収ガラス)
熱線吸収ガラスの組成は、例えば、クリアガラスの組成を基準として、Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3)の比率を0.4~1.3質量%とし、CeO2の比率を0~2質量%とし、TiO2の比率を0~0.5質量%とし、ガラスの骨格成分(主に、SiO2やAl2O3)をT-Fe2O3、CeO2およびTiO2の増加分だけ減じた組成とすることができる。
【0024】
(ソーダ石灰系ガラス)
SiO2:65~80質量%
Al2O3:0~5質量%
CaO:5~15質量%
MgO:2質量%以上
NaO:10~18質量%
K2O:0~5質量%
MgO+CaO:5~15質量%
Na2O+K2O:10~20質量%
SO3:0.05~0.3質量%
B2O3:0~5質量%
Fe2O3に換算した全酸化鉄(T-Fe2O3):0.02~0.03質量%
【0025】
上記のように、各ガラス板1、2は矩形状に形成されているが、上辺11と下辺12の長さの比は、例えば、1:1.04~1:1.5とすることができる。例えば、上辺が1200mmの場合、下辺を1250~1800mmとすることができる。具体的には、上辺を1195mm、下辺を1435mmとすることができる。なお、以上説明した比は、ウインドシールドを正面から投影したときの2次元平面での比である。
【0026】
すなわち、
図1では、下辺12が長い例を挙げているが、上辺11が長いウインドシールドにも適用可能である。例えば、一人用の小型車のウインドシールドは、上辺が500mmの場合、下辺を350~450mmとすることができる。具体的には、上辺を500mm、下辺を425mmとすることができる。
【0027】
本実施形態に係る合わせガラスの厚みは特には限定されないが、軽量化の観点からは、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みの合計を、2.4~4.6mmとすることが好ましく、2.6~3.4mmとすることがさらに好ましく、2.7~3.2mmとすることが特に好ましい。このように、軽量化のためには、外側ガラス板1と内側ガラス板2との合計の厚みを小さくすることが必要であるので、各ガラス板のそれぞれの厚みは、特には限定されないが、例えば、以下のように、外側ガラス板1と内側ガラス板2の厚みを決定することができる。
【0028】
外側ガラス板1は、主として、外部からの障害に対する耐久性、耐衝撃性が必要であり、例えば、この合わせガラスを自動車のウインドシールドとして用いる場合には、小石などの飛来物に対する耐衝撃性能が必要である。他方、厚みが大きいほど重量が増し好ましくない。この観点から、外側ガラス板1の厚みは1.0~3.0mmとすることが好ましく、1.6~2.3mmとすることがさらに好ましい。何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0029】
内側ガラス板2の厚みは、外側ガラス板1と同等にすることができるが、例えば、合わせガラスの軽量化のため、外側ガラス板1よりも厚みを小さくすることができる。具体的には、ガラスの強度を考慮すると、0.6~2.0mmであることが好ましく、0.8~1.8mmであることがさらに好ましく、0.8~1.6mmであることが特に好ましい。更には、0.8~1.3mmであることが好ましい。内側ガラス板2についても、何れの厚みを採用するかは、ガラスの用途に応じて決定することができる。
【0030】
なお、後述する中間層3に含まれる加熱線314が、中間層3の厚み方向の中心に配置されている場合には、両ガラス板の厚み1,2を相違させてもよい。いずれのガラス板を厚くするかは、加熱線314の主たる用途による。
【0031】
また、本実施形態に係る外側ガラス板1及び内側ガラス板2の形状は、湾曲形状であってもよい。但し、各ガラス板1、2が湾曲形状である場合には、ダブリ量が大きくなると遮音性能が低下するとされている。ダブリ量とは、ガラス板の曲げを示す量であり、ガラス板の上辺の中央と下辺の中央とを結ぶ直線Lを設定したとき、この直線Lとガラス板との距離のうち最も大きいものをダブリ量Dと定義する。
【0032】
また、湾曲形状のガラス板は、ダブリ量Dが30~38mmの範囲では、音響透過損失(STL:Sound Transmission Loss)に大きな差はないが、平面形状のガラス板と比べると、4000Hz以下の周波数帯域で音響透過損失が低下していることが分かる。したがって、湾曲形状のガラス板を作製する場合、ダブリ量Dは小さい方が好ましい。具体的には、ダブリ量Dを30mm未満とすることが好ましく、25mm未満とすることがさらに好ましく、20mm未満とすることが特に好ましい。
【0033】
ここで、ガラス板が湾曲している場合の厚みの測定方法の一例について説明する。まず、測定位置については、ガラス板の左右方向の中央を上下方向に延びる中央線上の上下2箇所である。測定機器は、特には限定されないが、例えば、株式会社テクロック製のSM-112のようなシックネスゲージを用いることができる。測定時には、平らな面にガラス板の湾曲面が載るように配置し、上記シックネスゲージでガラス板の端部を挟持して測定する。
【0034】
<1-2.マスク層>
図1~
図3に示すように、このウインドシールドの周縁には、黒などの濃色のセラミックにより形成されたマスク層4が積層されている。このマスク層4は、車内また車外からの視野を遮蔽するものであり、ウインドシールドの4つの辺11~14に沿って積層される周縁部41と、この周縁部41のうち、ウインドシールド11の上辺と対応する部分の中央付近から下方に延びる中央部42と、を有している。そして、この中央部43には、矩形状の窓部43が形成されている。窓部43は、マスク層4が形成されていない部分であり、ウインドシールドの内外を透過する部分である。そして、上述した測定ユニット5は、車内側に配置され、この窓部43を介して車外からの情報を取得するようになっている。なお、窓部43の大きさは、特には限定されないが、例えば、10000mm
2以下にすることができる。また、窓部43は、ウインドシールドの上端縁から下方へ、例えば、200mm以内の範囲に配置することができる。
【0035】
マスク層4は、例えば、外側ガラス板1の内面のみ、内側ガラス板2の内面のみ、あるいは外側ガラス板1の内面と内側ガラス板2の内面、など種々の態様が可能である。但し、
図2では、一例としてマスク層4を内側ガラス板2の内面に配置した状態を示しているが、
図3ではマスク層4を省略している。また、セラミック、種々の材料で形成することができるが、例えば、以下の組成とすることができる。
【表1】
*1,主成分:酸化銅、酸化クロム、酸化鉄及び酸化マンガン
*2,主成分:ホウケイ酸ビスマス、ホウケイ酸亜鉛
【0036】
セラミックは、スクリーン印刷法により形成することができるが、これ以外に、焼成用転写フィルムをガラス板に転写し焼成することにより作製することも可能である。スクリーン印刷を採用する場合、例えば、ポリエステルスクリーン:355メッシュ,コート厚み:20μm,テンション:20Nm,スキージ硬度:80度,取り付け角度:75°,印刷速度:300mm/sとすることができ、乾燥炉にて150℃、10分の乾燥により、セラミックを形成することができる。
【0037】
また、マスク層4は、セラミックを積層するほか、濃色の樹脂製の遮蔽フィルムを貼り付けることで形成することもできる。
【0038】
<1-3.中間層>
続いて、中間層3について説明する。中間層3は、発熱層31、及びこの発熱層31を挟持する一対の接着層32,33、を有する3層で構成されている。以下では、外側ガラス板1側に配置される接着層を第1接着層32、内側ガラス板2側に配置される接着層を第2接着層33と称することとする。
【0039】
<1-3-1.発熱層>
まず、発熱層31について説明する。発熱層31は、ガラス板1,2において、マスク層4の窓部43と対応する領域(情報取得領域)を加熱することで、解氷を行ったり、曇りを除去するものである。具体的には、シート状の基材311と、この基材311上に配置される、第1バスバー312、第2バスバー313、及び複数の加熱線314を備えている。基材311は、ガラス板1,2と同じ大きさで形成されていてもよいが、マスク層4の中央部42と対応する領域にのみ配置されていてもよい。あるいは、接着層32,33よりも小さく、基材311の周縁部が、接着層32,33の周縁部よりも内側に配置されるような大きさに形成することもできる。そして、これら第1バスバー312、第2バスバー313、及び複数の加熱線314は、マスク層4の中央部42と対応する位置に配置されており、特に、複数の加熱線314は、窓部43を横断するように並列に設けられている。具体的には、以下の通りである。
【0040】
図1に示すように、第1バスバー312は、上述した窓部43の上辺に沿って帯状に形成され、第2バスバー313は、窓部43の下辺に沿って帯状に形成されている。第2バスバー313は、窓部43の下辺から右側へやや突出するように形成されている。そして、複数の加熱線314は、両バスバー312,313を電極とするように上下方向に並列に接続されている。また、第1バスバー312の左端部には、帯状の第1接続材317が接続され、第2バスバーの右端部には、帯状の第2接続材318が接続されている。これら第1接続材317及び第2接続材318は、各バスバー312,313と接続端子(陽極端子又は陰極端子:図示省略)とを接続するためのものであり、導電性の材料によりシート状に形成されている。そのため、これら接続材317,318は、ウインドシールドの上辺に向かって上方に延びており陽極及び陰極の接続端子にそれぞれ接続されている。そして、これら接続端子には、例えば、10~50Vの電源電圧が印加される。
【0041】
なお、両接続材317,318は、それぞれ、第1バスバー312と第2接着層33との間、及び第2バスバー313と第2接着層33との間に挟まれる。そして、半田などの固定材によって各バスバー312,313に固定される。固定材としては、後述するウインドシールドの組立て時にオートクレーブで同時に固定することができるよう、例えば、150℃以下の低融点の半田を用いることが好ましい。但し、これ以外の接続方法でもよい。
【0042】
各バスバー312,313の上下の幅は、例えば、5~50mmであることが好ましく、10~30mmであることがさらに好ましい。これは、バスバー312,313の幅が5mmより小さいと、バスバーでの発熱量が増加することで加熱線314の発熱量が低下し、所望の発熱量が得られない。一方、バスバー312,313の幅が50mmよりも大きいと、バスバー312,313により視野が妨げられるおそれがあることによる。また、各バスバー312,313は、正確に基材311に沿って形成されていなくてもよい。すなわち、基材311の端縁と完全に平行でなくてもよく、曲線状などにすることもできる。
【0043】
次に、加熱線314について説明する。加熱線314による発熱によって、窓部43の表面に生じる雪、氷、曇りの除去を行う。そのため、加熱線314には、解氷等を行えるような発熱量が要求されるが、その一方で、後述する測定ユニット5により、窓部43を介して車外の情報を取得するため、加熱線314によって、光の通過を阻害しないようにする必要がある。そのために、本実施形態では、後述するように、加熱線314の発熱量、線幅、ピッチなどの寸法等が設定されている。
【0044】
加熱線314による発熱量は、以下の式(1)によって算出できる。また、加熱線314の抵抗と加熱線3314の長さ及び断面積との関係は、式(2)の通りである。
W=IV=RI2=V2/R (1)
R=ρ(L/A) (2)
但し、W:電力、E:電圧、I:電流、R:抵抗、L:長さ、A:断面積、ρ:電気抵抗率
【0045】
したがって、上記式(1)(2)より、例えば、加熱線314の発熱量を大きくするには、抵抗Rを小さくする、加熱線314の長さLを短くする、加熱線314の断面積Aを大きくする、電気抵抗率ρを小さくする、等の方策がある。また、窓部43での発熱量を大きくするには、加熱線314の数を増やしてトータルの断面積Aを大きくするという方策もある。以上の点を考慮しつつ、以下、加熱線314について、説明する。
【0046】
複数の加熱線314は、両バスバー312,313を結ぶように、上下方向に延びるように形成されている。各加熱線314は、直線状に形成できるほか、波形など、種々の形状にすることができる。特に、各加熱線314を正弦波形状にすることで、熱の分布が均一になるほか、光学的に、加熱線314がウインドシールドの視野を妨げるのを防止することができる。このとき、加熱線314のクリンプ率は、例えば、150%以下にすることができる。クリンプ率とは、発熱層31上の加熱線314の両端の間の長さに対する、加熱線314の実際の長さ(曲線をたどった長さ)の割合である。
【0047】
各加熱線314の線幅は、1~10μmであることが好ましく、1~8μmであることがさらに好ましい。更には、1~5μmであることが好ましい。線幅の上限が10μmであるように線幅が小さいほど、視認しがたくなるため、本実施形態のようにセンサの光が通過する窓部43には適している。また、線幅が小さいほど、後述するように、加熱線314の厚みも小さくする必要があり、結果として、加熱線314の断面積が小さくなり、発熱量が増大する。一方、線幅が小さすぎると、製造できなかったり、発熱量が大きくなりすぎるおそれがある。なお、この線幅は、加熱線314の断面形状のうち、最も大きい部分の線幅のことをいう。例えば、加熱線314の断面形状が台形である場合には、下辺の幅が線幅となり、加熱線314の断面形状が円形の場合には、直径が線幅となる。加熱線314の幅は、例えば、VHX-200(キーエンス社製)などのマイクロスコープを1000倍にして測定することができる。
【0048】
加熱線314の線幅は、一定でなくてもよく、変化させることもできる。例えば、下方にいくにしたがって、徐々に細くなったり、あるいは太くなるように形成することができる。あるいは、領域毎に線幅を変えてもよい。例えば、加熱線314の上部と下部とで線幅を変えることができる。このような線幅の変化は、例えば、加熱線314のピッチが変化するような配置の場合に適用することができる。例えば、台形状の窓部43に複数の加熱線314を配置する場合、下方にいくにしたがって、加熱線314のピッチが広がる場合に、それに合わせて、下方にいくにしたがって加熱線314の線幅を小さくすることができる。
【0049】
各加熱線314の厚みは、線幅以下の長さであることが好ましい。換言すると、加熱線314の断面のアスペクト比が1以下であることが好ましい。これは、加熱線314の線幅よりも厚みが大きくなると、例えば、加熱線314が基材311上で倒れるなど、製造が困難になったり、あるいは、断線のおそれがあることによる。
【0050】
また、隣接する加熱線314のピッチの下限は、特には限定されないが、例えば、0.3~6mmであることが好ましく、1.25~4mmであることがさらに好ましい。ピッチが小さくなると、測定ユニットによる情報の取得を阻害するおそれがあり、ピッチが大きくなると、窓部を十分に加熱できないおそれがある。これを考慮して、加熱線のピッチを上記のように設定することが好ましい。なお、ピッチとは、隣接する加熱線314間の隙間の長さではなく、隣接する加熱線314間の隙間の長さに加熱線314の線幅を加えた長さとする。また、加熱線314が正弦波状に形成されている場合には、各加熱線314の中心線間の距離が、加熱線314のピッチとなる。
【0051】
また、各加熱線314における単位長さ当たりの発熱量は、例えば、両バスバー312,313間に、13.5Vの電圧を印加したときに、2.0W/m以下であることが好ましく、1.5W/m以下であることがさらに好ましく、1.0W/m以下であることが特に好ましい。そして、このような加熱線314を用い、窓部43における単位面積当たりの発熱量は、効果的に解氷等を行うために、400W/m2以上であることが好ましく、600W/m2以上であることがさらに好ましく、1000W/m2以上であることが特に好ましい。
【0052】
以下に、
図4のような窓部314に配置する加熱線314の仕様の一例を挙げる。
【表2】
【0053】
次に、発熱層31の材料について説明する。基材311は、両バスバー312,313、加熱線314を支持する透明のフィルムであり、その材料は特には限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどで形成することができる。あるいは、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)などによっても形成することができる。また、両バスバー312,313及び加熱線314は、同一の材料で形成することができ、銅(またはスズメッキされた銅)、金、アルミニウム、マグネシウム、コバルト、タングステン、銀、またはそれら金属の合金など、種々の材料で形成することができる。このうち、特に、電気抵抗率が3.0×10-8Ωm以下の材料である、銀、銅、金、アルミニウムを用いることが好ましい。
【0054】
続いて、両バスバー312,313、加熱線314の形成方法について説明する。これら両バスバー312,313、加熱線314は、予め形成された細線(ワイヤなど)などを基材311上に配置することで形成できるが、特に、加熱線314の線幅をより細くするには、基材311上にパターン形成することで、加熱線314を形成することができる。その方法は、特には限定されないが、印刷、エッチング、転写など、種々の方法で形成することができる。このとき、各バスバー312,313、加熱線314を別々に形成することもできるし、これらを一体的に形成することもできる。なお、「一体的」とは、材料間に切れ目がなく(シームレス)、界面が存在しないことを意味する。
【0055】
また、両バスバー312,313を基材311上で形成し、加熱線314用の基材311を残して、両バスバー312,313に対応する部分の基材311を剥離して取り外す。その後、両バスバー312,313の間の基材311上に加熱線314を配置することもできる。
【0056】
特に、エッチングを採用する場合には、一例として、次のようにすることができる。まず、基材311にプライマー層を介して金属箔をドライラミネートする。金属箔としては、例えば、銅を用いることができる。そして、金属箔に対して、フォトリソグラフィー法を利用したケミカルエッチング処理を行うことにより、基材311上に、両バスバー312,313、複数の加熱線314を一体的にパターン形成することができる。特に、本実施形態のように加熱線314の線幅を小さくする場合には、薄い金属箔を用いることが好ましく、薄い金属層(例えば、5μm以下)を基材311上に蒸着やスパッタリング等により形成し、その後、フォトリソグラフィーによりパターニングを実施してもよい。なお、加熱線314の表面、つまり内側ガラス板2側の面は黒色化することができ、これによって、車内側から加熱線314が視認されるのを抑制することができる。黒色化のための材料としては、窒化銅、酸化銅、窒化ニッケル、ニッケルクロム等があり、これらの材料を用いてメッキ処理により黒色化を行うことができる。
【0057】
<1-3-2.接着層>
両接着層32,33は、発熱層31を挟持するとともに、ガラス板1,2への接着を行うためのシート状の部材である。両接着層32,33は、両ガラス板1,2と同じ大きさに形成されている。また、これら接着層32,33は、種々の材料で形成することができるが、例えば、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)などによって形成することができる。特に、ポリビニルブチラール樹脂は、各ガラス板との接着性のほか、耐貫通性にも優れるので好ましい。なお、接着層32,33と発熱層31との間に界面活性剤の層を設けることもできる。このような界面活性剤により両層の表面を改質することができ、接着力を向上することができる。また、接着層32,33は、両ガラス板1,2と同じ大きさであるが、発熱層31は接着層32,33と同じ大きさでなくてもよく、上記のように、小さく形成することもできる。
【0058】
<1-3-3.中間層の厚み>
また、中間層3の総厚は、特に規定されないが、0.3~6.0mmであることが好ましく、0.5~4.0mmであることがさらに好ましく、0.6~2.0mmであることが特に好ましい。また、発熱層31の基材311の厚みは、5~200mmであることが好ましく、5~100mmであることがさらに好ましい。一方、各接着層32,33の厚みは、発熱層31の厚みよりも大きいことが好ましく、具体的には、0.1~2.0mmであることが好ましく、0.1~1.0mmであることがさらに好ましい。両接着層32,33の厚みは同じでもよいし、相違していてもよい。なお、第2接着層33と基材311とを密着させるため、その間に挟まれる両バスバー312,313、加熱線314の厚みは、3~20μmであることが好ましい。
【0059】
発熱層31及び接着層32,33の厚みは、例えば、以下のように測定することができる。まず、マイクロスコープ(例えば、キーエンス社製VH-5500)によって合わせガラスの断面を175倍に拡大して表示する。そして、発熱層31及び接着層32,33の厚みを目視により特定し、これを測定する。このとき、目視によるばらつきを排除するため、測定回数を5回とし、その平均値を発熱層31及び接着層32,33の厚みとする。
【0060】
なお、中間層3の発熱層31及び接着層32,33の厚みは全面に亘って一定である必要はなく、例えば、ヘッドアップディスプレイに用いられる合わせガラス用に楔形にすることもできる。この場合、中間層3の発熱層31及び接着層32,33の厚みは、最も厚みの小さい箇所、つまり合わせガラスの最下辺部を測定する。中間層3が楔形の場合、外側ガラス板1及び内側ガラス板2は、平行に配置されないが、このような配置も本発明におけるガラス板に含まれるものとする。すなわち、本発明においては、例えば、1m当たり3mm以下の変化率で厚みが大きくなる発熱層31及び接着層32,33を用いた中間層3を使用した時の外側ガラス板1と内側ガラス板2の配置を含む。
【0061】
<2.測定ユニット>
次に、測定ユニットについて、
図2を参照しつつ説明する。測定ユニット5は、内側ガラス板2の内面に固定されるブラケット(図示省略)、このブラケットに支持されるセンサ(情報取得装置:図示省略)、及びブラケットとセンサを車内側から覆うカバー(図示省略)により構成されている。なお、センサは、内側ガラス板2に固定されたブラケットに支持されており、内側ガラス板2には接していない。そのため、センサは、内側ガラス板2の近傍に配置されているといえる。
【0062】
ブラケットには、開口が形成されており、この開口を介して、マスク層4の窓部43からセンサが光の照射及び受光ができるようになっている。
【0063】
ブラケットには、図示を省略するハーネスなどが取り付けられた後、車内側からカバーが取り付けられる。これにより、センサやブラケットが車内側から見えないようになる。なお、マスク層4の中央部42により、窓部43を除いては、車外側からも測定ユニット4は見えないようになっている。
【0064】
このような測定ユニットにおいては、センサからレーザ光のパルスを発信する。そして、このレーザ光が先行車や障害物などで反射された反射光を、センサで受光するまでの時間に基づいて、先行車両や障害物と自車との距離を算出する。算出された距離は、外部機器に送信され、ブレーキの制御などに用いられる。
【0065】
<3.ウインドシールドの製造方法>
次に、ウインドシールドの製造方法について説明する。まず、ガラス板の製造ラインについて説明する。
【0066】
ここで、成形型について、
図5を参照しつつ、さらに詳細に説明する。
図5(a)は成形型が通過する炉の側面図、
図5(b)は成形型の平面図である。
図5(b)に示すように、この成形型800は、両ガラス板1,2の外形と概ね一致するような枠状の型本体810を備えている。この型本体810は、枠状に形成されているため、内側には上下方向に貫通する内部空間820を有している。そして、この型本体810の上面に平板状の両ガラス板1,2の周縁部が載置される。そのため、このガラス板1,2には、下側に配置されたヒータ(図示省略)から、内部空間820を介して熱が加えられる。これにより、両ガラス板1,2は加熱により軟化し、自重によって下方へ湾曲することとなる。なお、型本体810の内周縁には、熱を遮蔽するための遮蔽板840を配置することがあり、これによってガラス板1,2が受ける熱を調整することができる。また、ヒータは、成形型800の下方のみならず、上方に設けることもできる。
【0067】
そして、平板状の外側ガラス板1及び内側ガラス板2に上述した遮蔽層7が積層された後、これら外側ガラス板1及び内側ガラス板2は重ね合わされ、上記成形型800に支持された状態で、
図5(a)に示すように、加熱炉802を通過する。加熱炉802内で軟化点温度付近まで加熱されると、両ガラス板1,2は自重によって周縁部よりも内側が下方に湾曲し、曲面状に成形される。続いて、両ガラス板1,2は加熱炉802から徐冷炉803に搬入され、徐冷処理が行われる。その後、両ガラス板1,2は、徐冷炉803から外部に搬出されて放冷される。
【0068】
こうして、外側ガラス板1及び内側ガラス板2が成形されると、これに続いて、中間層3を外側ガラス板1及び内側ガラス板2の間に挟む。具体的には、まず、外側ガラス板1、第1接着層32、発熱層31、第2接着層33、及び内側ガラス板2をこの順で積層する。このとき、発熱層31は、第1バスバー312等が形成された面を第2接着層33側に向ける。続いて、各切欠き部21,22から、発熱層31と第2接着層33との間に、各接続材317,318を挿入する。このとき、各接続材317,318には固定材として低融点の半田を塗布しておき、この半田が各バスバー312,313上に配置されるようにしておく。
【0069】
こうして、両ガラス板1,2、中間層3、及び接続材317,318が積層された積層体を、ゴムバッグに入れ、減圧吸引しながら約70~110℃で予備接着する。予備接着の方法は、これ以外でも可能であり、次の方法を採ることもできる。例えば、上記積層体をオーブンにより45~65℃で加熱する。次に、この積層体を0.45~0.55MPaでロールにより押圧する。続いて、この積層体を、再度オーブンにより80~105℃で加熱した後、0.45~0.55MPaでロールにより再度押圧する。こうして、予備接着が完了する。
【0070】
次に、本接着を行う。予備接着がなされた積層体を、オートクレーブにより、例えば、8~15気圧で、100~150℃によって、本接着を行う。具体的には、例えば、14気圧で135℃の条件で本接着を行うことができる。以上の予備接着及び本接着を通して、両接着層32,33が、発熱層31を挟んだ状態で各ガラス板1,2に接着される。また、接続材317,318の半田が溶融し、各接続材317,318が各バスバー312,313に固定される。こうして、本実施形態に係る合わせガラスが製造される。なお、これ以外の方法、例えば、プレス加工により、湾曲したウインドシールドを製造することもできる。
【0071】
<4.ウインドシールドの使用方法>
上記のように構成されたウインドシールドは、車体に取付けられ、さらに各接続材317,318には、接続端子が固定される。その後、各接続端子に通電すると、接続材317,318、各バスバー312,313を介して加熱線314に電流が印加され、発熱する。この発熱により、窓部43の車内側の面の曇りを除去したり、あるいは窓部43の車外側の面の解氷を行うことができる。したがって、センサで光を受光したり、照射する際、窓部43において、光が曇りなどで遮断されるのを防止することができる。その結果、センサにより正確な測定を行うことができる。
【0072】
<5.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0073】
(1) 窓部43に配置される加熱線314の線幅が10μm以下であり、非常に細いため、センサによって光を照射したり、光を受光する際に、これが阻害されるのを防止することができる。また、外部から視認しがたくなる。
【0074】
(2) 上記のように加熱線314の線幅が小さいことに加え、加熱線314のピッチを0.3~6mmのように小さくすることで、多数の加熱線314を窓部43内に配置することができる。そのため、窓部43を均一に加熱することができるとともに、各加熱線314の発熱量が小さくても、窓部43全体で所望の発熱量(単位面積あたり発熱量)を実現することができる。
【0075】
(3) ガラス板1,2において、窓部43に対応する領域は、測定ユニット5により車外からの情報を正確に取得する必要があるため、加熱線314による解氷性能、防曇性能が、他の領域に比べて高いことが望ましい。ここで、加熱線314による解氷性能等を高めるためには、高い発熱量が必要とされるが、窓部43に囲まれた領域は、例えば、10000mm2以下など面積が小さいため、この領域の発熱量を高くしても、消費電力に関する問題は大きくない。その一方で、本実施形態では、上記式(1)(2)にしたがって、各加熱線314の線幅を10μm以下と小さくすることで、発熱量を小さくしている。その理由は、次の通りである。
【0076】
すなわち、窓部43における解氷性能、防曇性能は、測定ユニット5の測定性能を左右するほどに重要であるため、例えば、各加熱線314の発熱量が大きい場合、一部の加熱線314に断線が生じると、窓部43における発熱分布に不均衡が生じるおそれがある。これに対して、各加熱線314の発熱量が小さいと、一部の加熱線314に断線が生じても、発熱分布が概ね均一に保たれ、窓部43における解氷や防曇を均一に保つことができる。その結果、測定ユニット5により、車外の情報を正確に取得することができる。また、上記のように、加熱線314のピッチを小さくすることで、断線による発熱分布の不均衡をさらに防止することができる。
【0077】
(4) 加熱線314同士はブリッジなどで繋がっていないため、断線時に局所的な発熱を抑制することができる。すなわち、本実施形態では、上記のように一部が断線しても問題が生じがたいように、できるだけ多くの加熱線314を小さい面積43の窓部に配置するものであるため、ブリッジは設けなくてもよい。したがって、コストの低減が可能となる。
【0078】
(5) 加熱線314は上下方向に延びるように配置されている。例えば、加熱線314を水平方向に平行に配置すると、ウインドシールドは傾斜しているため、加熱線の見かけのピッチが狭くなり、窓部43に対する光の照射及び入射に影響を及ぼすおそれがある。これに対して、本実施形態では、加熱線314を上下方向に延びるように配置しているため、そのような問題が発生しない。
【0079】
<B.第2実施形態>
次に、本発明に係るウインドシールドの第2実施形態について説明する。本実施形態が第1実施形態と相違するのは、中間膜3の発熱層31において、上述した窓部43以外の視野領域にもバスバーや加熱線が配置されている点である。そして、このような加熱線によりウインドシールドの視野領域を加熱し、解氷や曇りの除去を行う。以下では、説明の便宜のため、窓部43に配置される加熱線を第1加熱線と称することとする。また、第1加熱線314、第1及び第2バスバー312,313等の窓部43を加熱するための構成を第1発熱部と称し、ウインドシールドにおける窓部43以外の視野領域を発熱する加熱線等の構成を第2発熱部と称することとする。
【0080】
<1.発熱層の態様>
図6に示すように、本実施形態に係る発熱層31は、概ねガラス板全体に亘る大きさに形成されており、第1実施形態で説明した発熱層31の基材31上に、ウインドシールドの上辺11に沿うように配置された第3バスバー(第1辺側バスバー)61と、ウインドシールドの下辺12に沿うように配置された第4バスバー(第2辺側バスバー)662と、これら第3及び第4バスバー61,62を連結するように上下方向に延びる複数の第2加熱線63とを、さらに有している。第3バスバー61は、ウインドシールドの上辺11において、マスク層4の周縁部41及び中央部42を通過するように形成されている。特に、第3バスバーの左右方向の中央付近は、周縁部41から中央部42側縁を通過し、さらに窓部43の下方を通過するように形成されている。一方、第4バスバーは、ウインドシールドの下辺12において、マスク層4の周縁部41を通過するように形成されている。また、第3バスバー61の左端部には、第3接続材64が取付けられ、第4バスバー62の右端部には第4接続材65が取付けられている。これら接続材64,65は、上述した第1及び第2接続材317,318と同様の構成である。なお、発熱層31の基材311の大きさは、接着層32,33よりも小さく形成することができる。
【0081】
複数の第2加熱線63は、上下方向に延びるように平行に形成されているが、左右方向の中央付近の第2加熱線63は、マスク層4の中央部42が下方に突出しているため、他の第2加熱線63よりも短く形成されている。また、第2加熱線63は、第1加熱線314と同様の直線状あるいは波形に形成することができる。クリンプ率等も上述したとおりである。
【0082】
ところで、複数の第2加熱線63は、ウインドシールドの表面に生じる雪、氷、曇りの除去を行う。その一方で、加熱線63の発熱により、その周囲にある接着層32,33等が加熱されるため、これによってウインドシールドを通して車外を見たとき、チラツキが生じることがある。特に、本発明者の研究の結果、ウインドシールドを介して車外を見たときのチラツキを防止するためには、加熱線63及びその周囲の温度を60℃以下に抑える必要があることが分かった。そのためには、加熱線63による発熱量をある程度低下させる必要がある。このように、第2発熱部における加熱線63には、解氷等を行えるような発熱量が要求されるとともに、チラツキの防止も求められ、そのために、本実施形態では、上述した式(1)(2)に基づき、以下のように、第2加熱線63の発熱量、線幅、ピッチなどの寸法等が設定されている。
【0083】
各加熱線63の線幅は、1~30μmであることが好ましく、5~20μmであることがさらに好ましく、8~15μmであることが特に好ましい。加熱線63の線幅が小さいほど、視認しがたくなるため、本実施形態に係るウインドシールドには適している。但し、加熱線63の幅が小さくなると、断面積が小さくなるため、上記のように発熱量が大きくなるおそれがある。そのため、加熱線63の線幅の下限を上記のように設定することができる。一方、加熱線63の線幅が大きくなると、視認しやすくなり、また断面積の増加により発熱量が小さくなる。そのため、加熱線63の線幅の上限を上記のように設定している。
【0084】
但し、両バスバー61,62間に印加される電圧によっては、以下のように設定することができる。例えば、電圧が20Vよりも小さい場合には、加熱線63の線幅が9~20μmであることが好ましい。線幅を9μm以上とすることで、発熱量を大きくすることができる。一方、線幅を20μm以下とすることで、視認性を低下することができる。
【0085】
また、両バスバー61,62間に印加される電圧が20~50Vである場合には、1~10μmであることが好ましい。線幅を1μm以上とすることで、発熱量を大きくすることができる。一方、線幅を10μm以下とすることで、視認性を低下することができる。なお、この線幅は、加熱線63の断面形状のうち、最も大きい部分の線幅のことをいう。例えば、加熱線63の断面形状が台形である場合には、下辺の幅が線幅となり、加熱線63の断面形状が円形の場合には、直径が線幅となる。
【0086】
加熱線63の厚みは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがさらに好ましく、10μm以下であることが特に好ましい。このように、厚みが小さくなると、加熱線63と基材311との段差が小さくなり、後述するように、製造時にこの段差の近傍に泡が生じるのを抑制することができる。また、加熱線63の厚みは、加熱線63の線幅よりも小さいことが好ましい。換言すると、加熱線63の断面のアスペクト比が1以下であることが好ましい。これは、加熱線63の線幅よりも厚みが大きくなると、例えば、加熱線63が基材311上で倒れるなど、製造が困難になったり、あるいは、断線のおそれがあることによる。
【0087】
なお、加熱線63の線幅、厚みは、例えば、VHX-200(キーエンス社製)などのマイクロスコープを1000倍にして測定することができる。
【0088】
また、隣接する加熱線63のピッチは、1.25~10mmであることが好ましく、1.50~4.0mmであることがより好ましく、2.0~3.0mmであることがさらに好ましい。なお、ピッチとは、隣接する加熱線63間の隙間の長さではなく、隣接する加熱線63間の隙間の長さに加熱線63の線幅を加えた長さとする。
【0089】
このようにピッチの上限値を設定することで、例えば、ウインドシールド全体において、所定の発熱量(例えば、400W/m2)が求められる場合、上記のように、各加熱線63の発熱量Wを小さくしても、ピッチを小さくして加熱線63の数を増やすことができるため、ウインドシールド全体における発熱量の低下を防ぐことができる。一方、ピッチの下限値について、日本での平成29年11月時点では、次のような規定がある。すなわち、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示の第39条第3項第5号(窓ガラス)には、窓ガラスの曇りを防止する機器のうち、試験領域Aに埋め込まれたものについて、「機器の幅が0.03mm以下で、密度が8本/cm(導体が水平に埋め込まれた場合にあっては、5本/cm)以下」定められているが、8本/cm以下を満たすためには、ピッチが1.25mm以上であることが望ましい。
【0090】
なお、加熱線63が正弦波状に形成されている場合がある。また、隣接する加熱線63同士で正弦波状の凹凸の位置が異なったり、凹凸のピッチが異なったりする場合がある。これらの場合、加熱線63のピッチは、所定領域中の加熱線63の本数nをカウントして求めることができる。例えば、所定領域が、1辺200mmの矩形状の領域である場合、その領域内に加熱線63が101本配置されていれば、ピッチは200/(101-1)=2mmと求めることができる。また、所定領域は、JIS R3212で定める試験領域Aの範囲内であることが好ましい。なぜなら、JIS R3212における試験領域Aは、透視歪み等の試験を行うための領域であり、その領域において本願効果であるチラツキを防止する必要性が高いからである。
【0091】
また、加熱線63の長さは、例えば、1000mm以上とすることができる。あるいは、1100mm以上、または1200mm以上とすることもできる。さらに、加熱線63の抵抗は、30Ω以上であることが好ましく、90Ω以上であることがさらに好ましい。このように加熱線の長さを長くすることで、上述した式(2)に基づいて抵抗Rが大きくなるため、発熱量が小さくなり、チラツキを抑制することができる。
【0092】
ここで、加熱線63の抵抗Rの測定について説明する。測定は、市販の電気抵抗測定器を用いて測定することができるが、一例として、デジタルマルチメータ73200シリーズ(YOKOGAWA社製)を挙げることができる。測定に当たっては、最初に、測定対象とする加熱線を選定する。次に、電気抵抗測定器の一方の端子を、その加熱線のバスバー61付近に接続し、また、他方の端子を、その加熱線のバスバー62付近に接続する。なお、
図1のように、加熱線63が外側ガラス板1と内側ガラス板2に挟まれており、電気抵抗測定器の端子が加熱線と接続できない場合は、外側ガラス板1かもしくは内側ガラス板2を破壊して加熱線63の抵抗Rを測定することができる。また、例えば、測定対象の加熱線と、その加熱線に隣接する加熱線との間がブリッジ(図示せず)によりつながっているときは、ブリッジを切断後に測定対象の加熱線の抵抗Rを測定する。
【0093】
また、各加熱線63における単位長さ当たりの発熱量は、例えば、両バスバー61,62間に、13.5Vの電圧を印加したときに、2.0W/m以下であることが好ましく、1.5W/m以下であることがさらに好ましく、1.0W/m以下であることが特に好ましい。2.0W/m以下とすると、チラツキを抑制することができる。より具体的な範囲として、例えば、1.5W/m以上2.0W/m以下、1.35W/m以上1.5W/m以下、1.20W/m以上1.35W/m以下、1.0W/m以上1.20W/m以下、0.8W/m以上1.0W/m以下、または0.5W/m以上0.8W/m以下の範囲にすることができる。そして、このような加熱線63を用い、ウインドシールドにおける単位面積当たりの発熱量は、効果的な防曇や解氷等を行うために、300~600W/m2であることが好ましく、特に、400W/m2以上であることがさらに好ましく、500W/m2以上であることが特に好ましい。
【0094】
以上のように、第2発熱部における加熱線63の線幅やピッチは、概ね第1発熱部の加熱線314の線幅やピッチよりも大きくなるように形成されている。これは、第2発熱部は、加熱すべき面積が大きいため、消費電力を考慮しているためである。
【0095】
<2.発熱層の他の態様>
上述した第1~第4バスバー、及び第1及び第2加熱線の配置は一例であり、適宜変更することができる。以下、
図6の例を第1態様と称することとし、他の態様の例について、
図7~
図28を参照しつつ説明する。
【0096】
(1)第2態様
第1態様とは、第1発熱部の構成が相違しており、第2発熱部の構成は同じである。
図7に示すように、窓部43の上側に直線上に並ぶ、第5バスバー71及び第6バスバー72を配置し、窓部43の下側に中継バスバー73を配置している。第5バスバー71には、陽極に接続される第1接続材317が取付けられ、第6バスバー72には、陰極に接続される第2接続材318が接続されている。第5バスバー71及び第6バスバー72は、隙間をあけて隣接しており、中継バスバー73は、第5及び第6バスバー71,72よりも長く形成されている。そして、複数の第1加熱線314は、第5バスバー71と中継バスバー73の右側とを接続し、さらに、第6バスバー72と中継バスバー73の左側を接続している。したがって、第1接続材317と第2接続材318との間に電圧を印加すると、電流は、第5バスバー71、中継バスバー73、及び第6バスバー72の順に流れ、第1加熱線314が発熱するようになっている。このように、第2態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0097】
(2)第3態様
図8に示すように、第3態様は、第2態様とは、第2発熱部の構成が相違している。すなわち、第3バスバー61の両端部に第3接続材64がそれぞれ取付けられている。また、第4バスバー62の中央部に、第2接続材65が取付けられている。このように、第3態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0098】
(3)第4態様
図9に示すように、この態様では、ウインドシールドの上辺11において、左端部から窓部43の上辺まで延びる第7バスバー74が形成されている。また、窓部43の下辺に沿って延びる第8バスバー75が形成されている。さらに、窓部43の下辺に沿って、第8バスバー75よりも下方を通過して右側に延び、さらにマスク層4の周縁部41に沿うようにウインドシールドの上辺11に沿って延びる第9バスバー76が形成されている。また、第3態様と同様に、ウインドシールドの下辺12に沿って第4バスバー62が形成されている。
【0099】
一方、複数の第1加熱線314は、第7バスバー74と第8バスバー75との間で、上下方向に窓部43を通過するように延びている。また、複数の第2加熱線63の一部は、第7バスバー74において、第1加熱線314よりも左側の領域と、第4バスバー62の左側の領域との間で上下方向に延びるように配置されている。さらに、これらよりも右側で、第9バスバー76と第4バスバー62との間にも上下方向に延びる複数の第2加熱線63が平行に配置されている。
【0100】
そして、第7バスバー74に上方に延びる第1接続材317が取付けられ、これが陽極に接続されている。また、第8バスバー75には上方に延びる第2接続材318が取付けられ、これが陰極に接続されている。さらに、第9バスバー76には上方に延びる第3接続材64が取付けられ、これが陰極に接続されている。このように、第4態様では、第1発熱部と第2発熱部とで陽極が共通し、陰極が別個に設けられている。
【0101】
(4)第5態様
図10に示すように、第5態様では、窓部43の上辺に沿って第10バスバー77が形成されている。複数の第1加熱線314は、第10バスバー77と第3バスバー61との間を上下方向に延びるように配置されている。そして、第10バスバー77には、上方に延びる第1接続材317が取付けられ、これが陰極に接続されている。第2発熱部の構成は第1態様と同じである。このように、第5態様では、第1発熱部と第2発熱部とで陽極が共通し、陰極が別個に設けられている。
【0102】
(5)第6態様
図11に示すように、第6態様は、第1態様と、第3バスバー61の構成が相違している。すなわち、第3バスバー61の左端部に、ウインドシールドの左辺13及び下辺12の左端部付近まで延びる延長部分が連結されている。このバスバーを第11バスバー78と称することとする。これに伴い、第4バスバーは、第11バスバー78と接触しないようにやや短くなっている。また、第11バスバー78には、ウインドシールドの下辺12において下方に延びる第3接続材64が取付けられており、これが陽極に接続されている。したがって、第2発熱部の接続材は、いずれもウインドシールドの下辺において電源端子と接続されている。このように、第6態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0103】
(6)第7態様
図12に示すように、第7態様は、第5態様の第3バスバー61を、第11バスバー78と入れ替えた態様を有している。このように、第7態様では、第1発熱部と第2発熱部とで、陽極が共通し、陰極が別個に設けられている。
【0104】
(7)第8態様
図13に示すように、第8態様は、第2態様の第3バスバー61を、第11バスバー78と入れ替えた態様を有している。このように、第8態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0105】
(8)第9態様
図14に示すように、第9態様は、第1態様の第4バスバー62を、左右2つに分割した、第12バスバー79及び第13バスバー80を有している。そして、第12バスバー79に第3接続材319が取付けられ、これが陽極に接続されている。一方、第13バスバー80には第4接続材310が接続され、これが陰極に接続されている。これにより、第2発熱部では、電流は、第12バスバー79から第3バスバー61を中継して、第13バスバー80に流れる。このように、第8態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0106】
(9)第10態様
図15に示すように、第10態様は、第1態様と、第4バスバー62の構成が相違している。すなわち、第4バスバー62の右端部に、ウインドシールドの右辺14及び上辺11の右端部付近まで延びる延長部分が連結されている。この延長部分における上辺11に位置する部分は、第3バスバー61よりも上方に配置されている。このバスバーを第14バスバー81と称することとする。また、第14バスバー81には、ウインドシールドの上辺11において上方に延びる第4接続材65が取付けられており、これが陰極に接続されている。したがって、第2発熱部の接続材64,65は、いずれもウインドシールドの上辺11において電源端子と接続されている。このように、第10態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0107】
(10)第11態様
図16に示すように、第11態様は、第5態様の第4バスバー62を、第14バスバー81と入れ替えた態様を有している。したがって、第2発熱部の接続材64,65は、いずれもウインドシールドの上辺11において電源端子と接続されている。このように、第11態様では、第1発熱部と第2発熱部とで、陽極が共通し、陰極が別個に設けられている。
【0108】
(11)第12態様
図17に示すように、第12態様は、第2態様の第4バスバー62を、第14バスバー81と入れ替えた態様を有している。したがって、第2発熱部の接続材64,65は、いずれもウインドシールドの上辺11において電源端子と接続されている。このように、第12態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0109】
(12)第13態様
図18に示すように、第11態様は、第5態様の第4バスバー62を、第9態様で示した、第12バスバー79及び第13バスバー80に入れ替えた態様を有している。したがって、第2発熱部の接続材319,310は、いずれもウインドシールドの下辺12において電源端子と接続されている。このように、第13態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、発熱を制御することができる。
【0110】
(13)第14態様
図19に示すように、第14態様は、第2態様の第4バスバー62を、第9態様で示した、第12バスバー79及び第13バスバー80に入れ替えた態様を有している。このように、第14態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0111】
(14)第15態様
図20に示すように、第15態様では、ウインドシールドの上辺11の概ね全体に沿う第15バスバー82が設けられている。この第15バスバー82は、窓部43の上方に配置されている。そして、複数の第1加熱線314は、窓部43を通過するように第15バスバー82と第2バスバー313との間に配置されている。また、複数の第2加熱線63は、第1加熱線314が配置されていない領域、つまり窓部43の両側において、第15バスバー82と第4バスバー62との間に配置されている。また、第2バスバー313と第4バスバー62との間にも複数の第2加熱線63が配置されている。そして、第1接続材317が第15バスバー82に取付けられ、上方に延びている。この第1接続材317は陽極に接続されている。このように、第13態様では、第1発熱部と第2発熱部とが共通の回路で構成されている。
【0112】
(15)第16態様
図21に示すように、第16態様では、第1態様と第1発熱部の構成が相違している。すなわち、窓部43の左側に第16バスバー83が配置され、窓部43の右側に第17バスバー84が配置されている。第16及び第17バスバー83,84は、いずれも上下方向に延びている。そして、第16バスバー83と第17バスバー84との間に水平方向に延びる複数の第1加熱線314が平行に配置されている。第2発熱部の構成は、第1態様と同じである。このように、第16態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0113】
(16)第17態様
図22に示すように、第17態様では、第1態様と第1発熱部の構成が相違している。すなわち、窓部43の左側に上下方向に延びる第18バスバー85が配置されている。そして、複数の第1加熱線314は、第18バスバー85から平行に水平方向に延び、窓部43を通過して第3バスバー61に接続されている。また、第18バスバー85には、第1接続材317が取付けられ、上方に延びている。この第1接続材317は陰極に接続されている。このように、第17態様では、第1発熱部と第2発熱部とで、陽極が共通し、陰極が別個に設けられている。
【0114】
(17)第18態様
図23に示すように、第18態様では、第1態様と第1発熱部の構成が相違している。すなわち、窓部43の左側に上下方向に延びる第19バスバー86が配置され、窓部43の右側に上下方向に延びる第20バスバー87と第21バスバー88が配置されている。第20バスバー87は、第21バスバー88の上方に隙間を空けて配置されている。そして、第19バスバー86の上部と、第20バスバー87とが水平方向に延びる複数の第1加熱線314と接続され、第19バスバー86の下部と、第21バスバー88とが水平方向に延びる複数の第1加熱線314と接続されている。また、第20バスバー87には上方に延びる第1接続材317が取付けられ、陽極に接続されている。一方、第21バスバー88には上方に延びる第2接続材318が取付けられ、陰極に接続されている。したがって、電流は、第20バスバー87から、第19バスバー86を介して、第21バスバー88に流れるようになっている。このように、第18態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0115】
(18)第19態様
図24に示すように、第19態様では、第17態様と第2発熱部の構成が相違している。すなわち、第17態様における第3バスバー61が、左右に分割されており、第22バスバー89と第23バスバー90となっている。そして、第18バスバー85と、第23バスバート90が水平に延びる複数の第1加熱線314で接続されている。また、第22バスバー89には第3接続材64が取付けられ、陽極に接続されている。一方、第23バスバー90には、第4接続材65が取付けられ、陰極に接続されている。複数の第2加熱線63は、第22バスバー89と第4バスバー62の左側、及び第23バスバー90と第4バスバー62の右側を接続している。したがって、第2発熱部では、第22バスバー89から第4バスバー62を介して第23バスバー90に電流が流れている。
【0116】
(19)第20態様
上記第1~第19態様では、一つの発熱層に第1発熱部と第2発熱部とを設けているが、第20態様では第1発熱部が設けられる発熱層と、第2発熱部が設けられる発熱層とを別々にしている。
図25は、第20態様の平面図であり、
図26は
図25のB-B線断面図である。また、
図27は第1発熱部が設けられた第1発熱層を示す平面図であり、
図28は第2発熱部が設けられた第2発熱層を示す平面図である。
【0117】
図26に示すように、この中間膜3は、第1発熱部を構成する第1基材71と、第2発熱部を構成する第2基材72を有している。これら第1及び第2基材は、上述した基材31と同じ材料で構成され、ガラス板1,2よりもやや小さく形成されている。但し、ガラス板1,2と同じ大きさでもよい。第1基材71には、
図27に示すように、第1バスバー312、第2バスバー313、第1加熱線314、第1接続材317、及び第2接続材318が配置されている。これらの構成は第1実施形態と同じである。一方、第2基材72には、
図28に示すように、第3バスバー61、第2バスバー62、第2加熱線63、第3接続材64、及び第4接続材65が配置されている。これらの構成のうち、第3バスバー61は、窓部43よりも上方で、ガラス板1,2の上辺11に沿って直線状に形成されているが、他の構成は上述した第1態様と同じである。
【0118】
そして、
図26に示すように、
図27及び
図28に示す第1発熱部及び第2発熱部が重ね合わされ、両接着層32,33の間に挟まれている。そして、正面から見た場合には、第1バスバー312と第3バスバー61とが重なるように構成される。このように、第20態様では、第1発熱部と第2発熱部とが異なる回路で構成され、別々に発熱を制御することができる。
【0119】
<3.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、窓部43に加え、ウインドシールドの視野領域も加熱することができる。したがって、ウインドシールド全体において、解氷、防曇を行うことができる。特に、視野領域については、上記のように、加熱線63の仕様が決定されるため、十分な発熱により解氷等を行うことができる。
【0120】
<C.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。また、以下の変形例は適宜組合せが可能である。
【0121】
<1>
上記各実施形態では、各バスバーがマスク層4に隠れるように形成しているが、これに限定されるものではなく、マスク層4に隠れていなくてもよい。また、必ずしも遮蔽層7を設けなくてもよい。マスク層4の形状は特には限定されない。また、本発明の情報取得領域を形成する窓部43の形状も特には限定されない。
【0122】
<2>
上記実施形態では、中間層3を発熱層31と、一対の接着層32,33の合計3層で形成したが、これに限定されるものではない。すなわち、中間層3には、少なくとも両バスバー312,313及び加熱線6が含まれていればよい。例えば、加熱線を基材311の外側ガラス板1側の面に配置することもできる。あるいは、発熱層31に基材311を設けず、接着層32,33の間に加熱線6を配置することもできる。
【0123】
<3>
発熱層31は、種々の形状にすることができる。例えば、予め基材311上に両バスバーと加熱線が形成されたシート状の発熱層31を準備しておき、これを適宜切断し、適当な形状にした上で、両ガラス板1,2の間に配置することができる。したがって、例えば、ガラス板1,2の端縁が湾曲していれば、それに合わせて基材311の端縁を湾曲させてもよい。また、発熱層31をガラス板1,2の形状と完全に一致させる必要はなく、防曇効果を得たい部分にのみ配置することができるため、ガラス板1,2よりも小さい形状など種々の形状にすることができる。なお、ガラス板1,2も完全な矩形以外に種々の形状にすることができる。
【0124】
上記実施形態では、基材311上に両バスバーと加熱線を配置しているが、少なくとも加熱線が配置されていればよい。したがって、例えば、バスバーを両接着層32,33の間に配置することもできる。
【0125】
<4>
また、第2実施形態においては、隣接する第2加熱線63同士を少なくとも1つのブリッジで接続することもできる。これにより、例えば、一の第2加熱線63が断線したとしても、隣接する第2加熱線63から通電が可能となる。ブリッジ線の位置、数は特には限定されない。また、ブリッジの形状も特には限定されず、斜めに延びるように配置したり、波形にするなど、種々の形状にすることができる。なお、ブリッジは、第2加熱線63と同じ金属材料で形成し、第2加熱線63と一体的に形成することができる。
【0126】
<5>
ガラス板1,2の形状は特には限定されず、外形上、上辺11、下辺12、左辺13、右辺14が特定できるような形状であればよく、必ずしも矩形状でなくてもよい。また、各辺11~14は直線のほか、曲線であってもよい。
【0127】
<6>
複数の第2加熱線63は必ずしも平行に配置される必要はなく、例えば、メッシュのように不規則な形状であってもよい。また、上記実施形態では、加熱線63は、バスバー61,62を電極として並列に接続しているが、直列にすることもできる。また、両バスバー61,62の間で、複数回、折り曲げた加熱線63を配置することもできる。
【0128】
<7>
上記第2実施形態では、各バスバー61,62をそれぞれ、ガラス板の上辺、下辺に沿って配置しているが、第2加熱線63が左右方向に延びるようにバスバー61,62をガラス板の左辺及び右辺に沿って配置することもできる。
【符号の説明】
【0129】
1 外側ガラス板
2 内側ガラス板
3 中間層
31 発熱層
311 基材
312 第1バスバー
313 第2バスバー
314 加熱線