(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130410
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】メソテリン結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220830BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220830BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220830BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220830BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220830BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220830BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20220830BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220830BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220830BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/21
C12N1/19
C12N5/10
C07K16/30
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 E
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K45/00
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P35/04
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022091781
(22)【出願日】2022-06-06
(62)【分割の表示】P 2019562603の分割
【原出願日】2018-05-11
(31)【優先権主張番号】62/505,719
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/657,417
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517403846
【氏名又は名称】ハープーン セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ウェスチェ,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】レモン,ブライアン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】オースティン,リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ドゥブリッジ,ロバート ビー.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】改善された結合親和性、及びメソテリンを発現する癌細胞のT細胞依存性死滅を媒介する改善された能力を持つ、MSLN結合タンパク質、該結合タンパク質を含む医薬組成物、並びにそのような製剤を使用する方法を提供する。
【解決手段】単一ドメインメソテリン結合タンパク質であって、特定の配列及び1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、1つ以上の保存領域を備えている、単一ドメインメソテリン結合タンパク質を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一ドメインメソテリン結合タンパク質であって、SEQ ID NO:41、42、43、又は44と同一の配列、或いはSEQ ID NO:41、42、43、又は44に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、1つ以上の保存領域を備えている、単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項2】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:41と同一の配列、或いはSEQ ID NO:41に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項1に記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項3】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:42と同一の配列、或いはSEQ ID NO:42に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項4】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:43と同一の配列、或いはSEQ ID NO:43に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項1、2、又は3の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項5】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:44と同一の配列、或いはSEQ ID NO:44に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項1、2、又は3の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項6】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、(i)SEQ ID NO:41に相当するアミノ酸の伸張部;(ii)SEQ ID NO:42に相当するアミノ酸の伸張部;(iii)SEQ ID NO:43に相当するアミノ酸の伸張部;及び(iv)SEQ ID NO:44に相当するアミノ酸の伸張部を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項7】
以下の式を含む、単一ドメインメソテリン結合タンパク質であって:
f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4
式中、r1は、SEQ ID NO:51と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;r2は、SEQ ID NO:52と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びr3は、SEQ ID NO:53と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びここで、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である
ことを特徴とする単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項8】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:1-40、58、及び60-62から成る群から選択される配列に対し少なくとも80%同一の配列を含む、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項9】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、該結合タンパク質のヒト化を結果としてもたらす1つ以上の修飾を含む、ことを特徴とする請求項1乃至8の何れ1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項10】
前記修飾は、アミノ酸残基の置換、付加、又は欠失を含む、ことを特徴とする請求項9に記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項11】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、111~124のアミノ酸を含む、ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項12】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、非ヒトソース由来のVHHドメインを含む、ことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項13】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、ラマVHHドメインを含む、ことを特徴とする請求項1乃至12の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項14】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質はメソテリンのエピトープに結合し、前記エピトープは、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基296-390を含む領域I、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基391-486を含む領域II、又はSEQ ID NO:57のアミノ酸残基487-598を含む領域IIIに位置する、ことを特徴とする請求項1乃至13の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項15】
単一ドメインメソテリン結合タンパク質であって、SEQ ID NO:45、46、47、48、49、又は50と同一の配列、或いはSEQ ID NO:45、46、47、48、49、又は50に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、1つ以上の保存領域を備えている、単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項16】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:45と同一の配列、或いはSEQ ID NO:45に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項15に記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項17】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:46と同一の配列、或いはSEQ ID NO:46に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項15又は16に記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項18】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:47と同一の配列、或いはSEQ ID NO:47に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項15、16、又は17の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項19】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:48と同一の配列、或いはSEQ ID NO:48に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項15乃至18の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項20】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:49と同一の配列、或いはSEQ ID NO:49に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項15乃至19の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項21】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:50と同一の配列、或いはSEQ ID NO:50に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている、ことを特徴とする請求項15乃至20の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項22】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、(i)SEQ ID NO:45に相当するアミノ酸の伸張部;(ii)SEQ ID NO:46に相当するアミノ酸の伸張部;(iii)SEQ ID NO:47に相当するアミノ酸の伸張部;(iv)SEQ ID NO:48に相当するアミノ酸の伸張部;(v)SEQ ID NO:49に相当するアミノ酸の伸張部;及び(vi)SEQ ID NO:50に相当するアミノ酸の伸張部を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項23】
以下の式を含む、単一ドメインメソテリン結合タンパク質であって:
f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4
式中、r1は、SEQ ID NO:54と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;r2は、SEQ ID NO:55と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びr3は、SEQ ID NO:56と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びここで、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である
ことを特徴とする単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項24】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:30-40、58、及び60-62から成る群から選択される配列に対し少なくとも80%同一の配列を含む、ことを特徴とする請求項15乃至23の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項25】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、111~119のアミノ酸を含む、ことを特徴とする請求項15乃至24の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項26】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、非ヒトソース由来のVHHドメインを含む、ことを特徴とする請求項15乃至25の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項27】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、ラマVHHドメインを含む、ことを特徴とする請求項15乃至26の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項28】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:57として明記される配列を含むヒトメソテリンタンパク質に結合する、ことを特徴とする請求項15乃至27の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項29】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質はメソテリンのエピトープに結合し、前記エピトープは、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基296-390を含む領域I、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基391-486を含む領域II、又はSEQ ID NO:57のアミノ酸残基487-598を含む領域IIIに位置する、ことを特徴とする請求項15乃至28の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項30】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質はキメラ抗体又はヒト化抗体である、ことを特徴とする請求項1乃至29の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項31】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は単一ドメイン抗体である、ことを特徴とする請求項1乃至30の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項32】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、ヒト化単一ドメイン抗体である、ことを特徴とする請求項15乃至31の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項33】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:58に明記されるような配列を含む、ことを特徴とする請求項1乃至32の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項34】
請求項1乃至33の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項35】
請求項34に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項36】
請求項35に記載のベクターにより形質転換される、宿主細胞。
【請求項37】
(i)請求項1乃至33の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質、請求項33に記載のポリヌクレオチド、請求項35に記載のベクター、又は請求項36に記載の宿主細胞、及び(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項38】
請求項1乃至33の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質の産生のためのプロセスであって、メソテリン結合タンパク質の発現を可能とする条件下で請求項1乃至33の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターにより形質転換又はトランスフェクトされる宿主を培養する工程、及び、培養物から産生されたタンパク質を回収及び精製する工程を含む、プロセス。
【請求項39】
増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法であって、必要とする被験体への請求項1乃至33の何れか1つに記載のメソテリン結合タンパク質の投与を含む、方法。
【請求項40】
被験体はヒトである、ことを特徴とする請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記方法は、請求項1乃至33の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質と組み合わせた薬剤の投与を更に含む、ことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞に選択的に結合する、ことを特徴とする請求項39乃至41の何れか1つに記載の方法。
【請求項43】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞のT細胞死滅を媒介する、ことを特徴とする請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記腫瘍疾患は固形腫瘍疾患である、ことを特徴とする請求項39乃至43の何れか1つに記載の方法。
【請求項45】
前記固形腫瘍疾患は、中皮腫、肺癌、胃癌、卵巣癌、又は三種陰性乳癌を含む、ことを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記固形腫瘍疾患は転移性である、ことを特徴とする請求項45に記載の方法。
【請求項47】
単一ドメインメソテリン結合タンパク質であって、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:51-56及び63-179から選択された1つ以上のCDRを含む、単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項48】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:51、54、及び63-101の何れか1つに明記される配列を含むCDR1を備える、ことを特徴とする請求項47に記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項49】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:52、55、及び102-140の何れか1つに明記される配列を含むCDR2を備える、ことを特徴とする請求項47又は48に記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項50】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:53、56、及び141-179の何れか1つに明記される配列を含むCDR3を備える、ことを特徴とする請求項47乃至49の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項51】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:180-218の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域1(f1)を含む、ことを特徴とする請求項47乃至50の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項52】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:219-257の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域2(f2)を含む、ことを特徴とする請求項47乃至51の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項53】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:258-296の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域3(f3)を含む、ことを特徴とする請求項47乃至52の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項54】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:297-335の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域4(f4)を含む、ことを特徴とする請求項47乃至53の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項55】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:1-40及び58の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列を含む、ことを特徴とする請求項47乃至54の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質。
【請求項56】
請求項47乃至55の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項57】
請求項56に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項58】
請求項57に記載のベクターにより形質転換される、宿主細胞。
【請求項59】
(i)請求項47乃至55の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質、請求項56に記載のポリヌクレオチド、請求項57に記載のベクター、又は請求項58に記載の宿主細胞、及び(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項60】
請求項47乃至55の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質の産生のためのプロセスであって、メソテリン結合タンパク質の発現を可能とする条件下で請求項47乃至55の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターにより形質転換又はトランスフェクトされる宿主を培養する工程、及び、培養物から産生されたタンパク質を回収及び精製する工程を含む、プロセス。
【請求項61】
増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法であって、必要とする被験体への請求項47乃至55の何れか1つに記載のメソテリン結合タンパク質の投与を含む、方法。
【請求項62】
被験体はヒトである、ことを特徴とする請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記方法は、請求項1乃至33の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質と組み合わせた薬剤の投与を更に含む、ことを特徴とする請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞に選択的に結合する、ことを特徴とする請求項61乃至63の何れか1つに記載の方法。
【請求項65】
前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞のT細胞死滅を媒介する、ことを特徴とする請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記腫瘍疾患は固形腫瘍疾患である、ことを特徴とする請求項61乃至65の何れか1つに記載の方法。
【請求項67】
前記固形腫瘍疾患は、中皮腫、肺癌、胃癌、卵巣癌、又は三種陰性乳癌を含む、ことを特徴とする請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記固形腫瘍疾患は転移性である、ことを特徴とする請求項67に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、各々が全体において参照により本明細書に組み込まれている、2017年5月12日出願の米国仮特許出願62/505,719号及び2018年4月13日出願の米国仮特許出願62/657,417号の利益を主張するものである。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によって本明細書に組み込まれる配列表を含んでいる。2018年5月11日に作成された上記のASCIIのコピーは、47517-719_601_SL.txtのファイル名であり、145,039バイトのサイズである。
【0003】
引用による組み込み
本明細書で言及される刊行物、特許、及び特許出願は全て、あたかも個々の刊行物、特許、又は特許出願がそれぞれ参照により組み込まれるべく具体的且つ個々に指示されるかのように、及び、その全体にわたって、同程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
本開示は、MSLNの発現に相関される兆候(indications)を診断又は処置するために使用され得るメソテリン(MSLN)結合タンパク質を提供する。メソテリン(MSLN)は、GPI結合腫瘍抗原であり、MSLNは、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、三種陰性乳癌、及び中皮腫で過剰発現される。MSLNの正常組織発現は、胸膜、心膜、及び腹膜腔の内側にある、単細胞の中皮層に制限される。MSLNの過剰発現は、肺腺癌及び三種陰性乳癌における予後不良に関連付けられる。MSLNは、癌抗原として、抗毒素、ワクチン、抗体薬物複合体、及びCART細胞を含む多数の様式に対して使用されている。臨床効果の初期の兆候は、標的としてMSLNを検証したが、効果が改善された治療がMSLNを発現する癌の処置に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一実施形態は、単一ドメインメソテリン結合タンパク質を提供し、該単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:41、42、43、又は44と同一の配列、或いはSEQ ID NO:41、42、43、又は44に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、1つ以上の保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:41と同一の配列、或いはSEQ ID NO:41に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:42と同一の配列、或いはSEQ ID NO:42に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:43と同一の配列、或いはSEQ ID NO:43に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:44と同一の配列、或いはSEQ ID NO:44に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、(i)SEQ ID NO:41に相当するアミノ酸の伸張部;(ii)SEQ ID NO:42に相当するアミノ酸の伸張部;(iii)SEQ ID NO:43に相当するアミノ酸の伸張部;及び(iv)SEQ ID NO:44に相当するアミノ酸の伸張部を含む。
【0006】
一実施形態は、以下の式を含む、単一ドメインメソテリン結合タンパク質を提供し:
f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4
式中、r1は、SEQ ID NO:51と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;r2は、SEQ ID NO:52と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びr3は、SEQ ID NO:53と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びここで、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:1-29、30-40、58、及び60-62から成る群から選択された配列に少なくとも80%同一の配列を含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、該結合タンパク質のヒト化を結果としてもたらす1つ以上の修飾を含む。幾つかの実施形態において、修飾は、アミノ酸残基の置換、付加、又は欠失を含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、111~124のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、非ヒトソース由来のVHHドメインを含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質はラマVHHドメインを含む。幾つかの実施形態において、前記エピトープは、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基296-390を含む領域I、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基391-486を含む領域II、又はSEQ ID NO:57のアミノ酸残基487-598を含む領域IIIに位置する。
【0007】
一実施形態は、単一ドメインメソテリン結合タンパク質を提供し、該単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:45、46、47、48、49、又は50と同一の配列、或いはSEQ ID NO:45、46、47、48、49、又は50に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、1つ以上の保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:45と同一の配列、或いはSEQ ID NO:45に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:46と同一の配列、或いはSEQ ID NO:46に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:47と同一の配列、或いはSEQ ID NO:47に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:48と同一の配列、或いはSEQ ID NO:48に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:49と同一の配列、或いはSEQ ID NO:49に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:50と同一の配列、或いはSEQ ID NO:50に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む、保存領域を備えている。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、(i)SEQ ID NO:45に相当するアミノ酸の伸張部;(ii)SEQ ID NO:46に相当するアミノ酸の伸張部;(iii)SEQ ID NO:47に相当するアミノ酸の伸張部;(iv)SEQ ID NO:48に相当するアミノ酸の伸張部(v)SEQ ID NO:49に相当するアミノ酸の伸張部;及び(vi)SEQ ID NO:50に相当するアミノ酸の伸張部を含む。
【0008】
一実施形態は、以下の式を含む、単一ドメインメソテリン結合タンパク質を提供し:
f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4
式中、r1は、SEQ ID NO:54と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;r2は、SEQ ID NO:55と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びr3は、SEQ ID NO:56と同一である、又はこれに対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含んでおり;及びここで、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:30-40、58、及び60-62から成る群から選択された配列に少なくとも80%同一の配列を含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、111~119のアミノ酸を含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、非ヒトソース由来のVHHドメインを含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質はラマVHHドメインを含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:57として明記される配列を含むヒトメソテリンタンパク質に結合する。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質はメソテリンのエピトープに結合し、前記エピトープは、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基296-390を含む領域I、SEQ ID NO:57のアミノ酸残基391-486を含む領域II、又はSEQ ID NO:57のアミノ酸残基487-598を含む領域IIIに位置する。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、キメラ抗体又はヒト化抗体である。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質はヒト化単一ドメイン抗体である。
【0009】
一実施形態は、単一ドメインメソテリン結合タンパク質を提供し、該単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:51-56及び63-179から選択された1つ以上のCDRを含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:51、54、及び63-101の何れか1つに明記される配列を含むCDR1を備える。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:52、55、及び102-140の何れか1つに明記される配列を含むCDR2を備える。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:53、56、及び141-179の何れか1つに明記される配列を含むCDR3を備える。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:180-218の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域1(f1)を含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:219-257の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域2(f2)を含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:258-296の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域3(f3)を含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:297-335の何れか1つに明記されるような配列を含むフレームワーク領域4(f4)を含む。幾つかの実施形態において、前記単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、SEQ ID NO:1-40、及び58の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列を含む。
【0010】
一実施形態は、上記実施形態何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチドを提供する。更なる実施形態は、上記実施形態のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。更なる実施形態は、上記実施形態に記載のベクターで形質転換された宿主細胞を提供する。
【0011】
一実施形態は、(i)上記実施形態の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質、上記実施形態の何れか1つに記載のポリヌクレオチド、上記実施形態の何れか1つに記載のベクター、又は上記実施形態の何れか1つに記載の宿主細胞、及び(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0012】
更なる実施形態は、上記実施形態の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質の産生のためのプロセスを提供し、該プロセスは、メソテリン結合タンパク質の発現を可能とする条件下で上記実施形態の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターにより形質転換又はトランスフェクトされる宿主を培養する工程、及び、培養物から産生されたタンパク質を回収及び精製する工程を含む。
【0013】
一実施形態は、増殖性疾患又は腫瘍疾患の処置又は改善のための方法を提供し、該方法は、必要とする被験体への上記実施形態の何れか1つに記載のメソテリン結合タンパク質の投与を含む。幾つかの実施形態において、被験体はヒトである。幾つかの実施形態において、前記方法は更に、上記実施形態の何れか1つに記載の単一ドメインメソテリン結合タンパク質と組み合わせた薬剤の投与を含む。幾つかの実施形態において、単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞に選択的に結合する。幾つかの実施形態において、単一ドメインメソテリン結合タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞のT細胞死滅を媒介する。幾つかの実施形態において、腫瘍疾患は固形腫瘍疾患を含む。幾つかの実施形態において、前記固形腫瘍疾患は、中皮腫、肺癌、胃癌、卵巣癌、又は三種陰性乳癌を含む。幾つかの実施形態において、固形腫瘍疾患は転移性である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の新規な特徴は、特に、添付の特許請求の範囲内に明記される。本発明の特徴及び利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる例示的実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
【
図1】標的タンパク質MSLNを発現するOVCAR8細胞の死滅における、本開示に係る抗MSLN結合タンパク質を含む三重特異性分子(2A2及び2A4)を標的とする、典型的なMSLNの有効性を例示する。
【
図2】本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質が、5つのドナー(ドナー02;ドナー86;ドナー41;ドナー81;及びドナー35)由来のT細胞にCaov3細胞を死滅させるよう導くことを示す。この図はまた、対照三重特異性タンパク質(GFP TriTAC)が、5つのドナー(ドナー02;ドナー86;ドナー41;ドナー81;及びドナー35)由来のT細胞にCaov3細胞を死滅させるよう導かなかったことも示す。
【
図3】本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質が、5つのドナー(ドナー02;ドナー86;ドナー41;ドナー81;及びドナー35)由来のT細胞にOVCAR3細胞を死滅させるよう導くことを示す。この図はまた、対照三重特異性タンパク質(GFP TriTAC)が、5つのドナー(ドナー02;ドナー86;ドナー41;ドナー81;及びドナー35)由来のT細胞にOVCAR3細胞を死滅させるよう導かなかったことも示す。
【
図4】本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質が、健康なドナー由来のT細胞にMSLNを発現する細胞(OVCAR3細胞;Caov4細胞;OVCAR3細胞;及びOVCAR8細胞)を死滅させるよう導くことができたことを示す。この図は、本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質が、健康なドナー由来のT細胞にMSLNを発現しない細胞(MDAPCa2b細胞;及びNCI-H510A細胞)を死滅させるよう導くことができなかったことを示す。
【
図5】本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質が、カニクイザル由来のT細胞にヒト卵巣がん細胞(OVCAR3細胞;Caov3細胞)を死滅させるよう導くことができたことを示す。この図はまた、対照三重特異性タンパク質(GFP TriTAC)が、カニクイザル由来のT細胞にヒト卵巣癌細胞株(OVCAR3細胞;Caov3細胞)を死滅させるよう導くことができなかったことを示す。
【
図6】本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質が、ヒト血清アルブミン(HSA)の存在下又は不在下で、T細胞によってNCI-H2052中皮腫細胞を発現するMSLNの死滅を導くことができたことを示す。
【
図7】本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質が、MSLN発現Caov4細胞の存在下で、T細胞からのTNF-αの分泌によって実証されるように、4つの健康なドナー(ドナー2;ドナー86;ドナー35;及びドナー81)由来のT細胞を活性化することができたことを示す。
【
図8】本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質が、MSLN発現OVCAR8細胞の存在下で、T細胞上でのCD69発現の活性化によって実証されるように、4つの健康なドナー(ドナー2;ドナー86;ドナー35;及びドナー81)由来のT細胞を活性化することができたことを示す。
【
図9A】MSLN発現細胞株又は非MSLN発現細胞株への、本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質の結合を例示する。
図9Aは、本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質に結合したMSLN発現細胞(Caov3細胞-左上パネル;Caov4細胞-右上パネル;OVCAR3細胞-左下パネル;OVCAR8細胞-右下パネル)との結合を示す;
図9Aは更に、対照の三重特異性タンパク質(GFP TriTAC)の同じ細胞株への結合の欠如を示す。
【
図9B】MSLN発現細胞株又は非MSLN発現細胞株への、本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質の結合を例示する。
図9Bは、非MSLN発現細胞株(MDCA2b細胞-左パネル;NCI-H510A細胞-右パネル)への、本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質及びGFP TriTACの両方の結合の欠如を示す。
【
図10】4つの健康なドナー(ドナー2-左上パネル;ドナー35-右上パネル;ドナー41-左下パネル;ドナー81-右下パネル)由来のT細胞への、本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質の結合を例示する。
【
図11】本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質が、NCI-H292細胞を発現するMSLNを埋め込まれたNCGマウスにおける腫瘍増殖を阻害することができたことを示す。
【
図12】本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質の薬物動態プロファイルを例示する。2匹のカニクイザルへの注射後の様々な時点での、本開示の典型的なMSLN結合ドメイン(MH6T)を含む三重特異性MSLN標的抗原結合タンパク質の血中濃度は、プロットにおいて示される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示され且つ記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者に明らかであろう。多数の変形、変更、及び置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されるかもしれないことを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びその同等物の範囲内の方法及び構造は、それにより包含されることが、意図されている。
【0016】
特定の定義
本明細書で使用される用語は、特定の事例のみを記載することを目的としており、本発明を制限することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他に明白に示していない限り、同様に複数形を含むように意図される。更に、用語「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「含んだ(with)」、又はそれらの変異形が発明を実施するための形態及び/又は請求項の何れかで使用される程度には、上記のような用語は「含んでいる(comprising)」という用語と同様の洋式で包括的であることが意図されている。
【0017】
用語「約(about)」又は「およそ(approximately)」は、当業者によって決定されるような特定の値の許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは部分的には、その値がどのように測定又は決定されるかに、例えば、測定システムの制限に依存する。例えば、「約」とは、任意の値での実施ごとに1又は1を超える標準偏差を意味し得る。特定の値が本出願と請求項に記載されている場合、特段の定めのない限り、「約」という用語は、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味するものであると仮定されなければならない。
【0018】
用語「個体」、「患者」、又は「被験体」は交換可能に使用される。いかなる用語も、医療従事者(例えば、医者、正看護師、臨床看護師、医師助手、看護助手、又はホスピス職員)の監督(例えば、常時又は断続的)を特徴とする状況を必要とせず、且つ、このような状況に限定されない。
【0019】
用語「フレームワーク」又は「FR」残基(又は領域)は、本明細書に定義されるようなCDR又は超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基を指す。「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択の際に最も一般に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。
【0020】
本明細書で使用されるように、「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、可変ドメインの特定の部分が抗体中の配列で大きく異なり、その特定の抗原に対する各々の特定の抗体の結合と特異性に使用されるという事実を指す。しかし、可変性は抗体の可変ドメイン全体に均一に分布していない。それは、軽鎖と重鎖の両方の可変ドメイン中の相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖と軽鎖の可変ドメインは各々、β-シート構造を接続する、場合によってはβ-シート構造の一部を形成するループを形成する、3つのCDRにより接続されたβ-シート構造を主に採用している4つのFR領域を含む。各鎖のCDRはFR領域によって極めて接近して一緒に保持され、他の鎖からのCDRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, National Institute of Health, Bethesda, Md.(1991)を参照)。定常ドメインは抗体の抗原への結合に直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。「Kabatにおけるような可変ドメイン残基の番号付け」又は「Kabatにおけるようなアミノ酸位置の番号付け」、及びその変形は、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md.(1991)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに対して使用される番号付け方式を参照する。この番号付け方式を使用して、実際の線形のアミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮、或いは可変ドメインのFR又はCDRへの挿入に対応する、より少ない又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatに係る残基52a)、及び、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに係る残基82a、82b、及び82cなど)を含み得る。残基のKabatの番号付けは、「標準的な」Kabatの番号付けされた配列を備えた抗体の配列の相同領域における整列によって、任意の抗体に対して決定され得る。本開示のCDRは、Kabatの番号付けの慣習に必ず対応するということを意図するものではない。
【0021】
本明細書で使用されるように、配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」という用語は、配列を整列させ、ギャップを導入して、必要に応じて最大のパーセント配列同一性を達成した後に、且つ、配列同一性の一部としていかなる保存的置換を考慮せずに、特定の配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として特定される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための整列は、当該技術分野内の様々な方法で、例えば、EMBOSS MATCHER、EMBOSS WATER、EMBOSS STRETCHER、EMBOSS NEEDLE、EMBOSS LALIGN、BLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)のソフトウェアなどの公に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて達成可能である。当業者は、比較されている配列の完全長にわたって最大限の整列を達成するために必要とされるあらゆるアルゴリズムを含む、配列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0022】
本明細書で使用されるように、「消失半減期」は、Goodman and Gillman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics 21-25(Alfred Goodman Gilman,Louis S.Goodman,and Alfred Gilman,eds.,6th ed.1980)に記載されるように、通常の意味で使用される。簡潔に言えば、この用語は、薬物排泄の時間的経過の定量的測度を包含することを目的としている。薬物濃度が消失プロセスの飽和に必要とされる濃度には通常接近しないので、大半の医薬品の消失は指数関数的である(即ち、一次速度論に従う)。指数関数的なプロセスの速度は、1単位時間当たりの僅かな変化を表すその速度定数kによって、或いは、そのプロセスの50%の完了のために必要とされる時間であるその半減時間t1/2によって、表され得る。これらの2つの定数の単位はそれぞれtime-1とtimeである。反応の一次速度定数と半減時間は、単純に関連づけられ(k×t1/2=0.693)、これに応じて交換されることがある。一次消失動力学は一定の比率の薬物が単位時間ごとに失われるように指示するため、薬物濃度対時間の対数のプロットは、初回の分布相の後(即ち、薬物の吸収と分布が完了した後)は常に線形である。薬物排泄のための半減時間は、こうしたグラフから正確に決定することができる。
【0023】
本明細書で使用されるように、用語「結合親和性」は、それらの結合標的に対する本開示に記載されたタンパク質の親和性を指し、「Kd」値を数的に使用して表される。2つ以上のタンパク質が、それらの結合標的に対して同等の結合親和性を有すると示されている場合、その結合標的に対するそれぞれのタンパク質の結合に関するKd値は、互いの±2倍以内である。2つ以上のタンパク質が単一の結合標的に対して同等の結合親和性を有すると示されている場合、上記の単一結合標的に対するそれぞれのタンパク質の結合に関するKd値は、互いの±2倍以内である。タンパク質が同等の結合親和性で2つ以上の標的に結合すると示されている場合、2つ以上の標的に対する上記タンパク質の結合に関するKd値は、互いの±2倍以内である。一般に、高いKd値は弱い結合に相当する。幾つかの実施形態において、「Kd」は、BIAcore(商標)-2000又はBIAcore(商標)-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, N.J.)を使用する、放射標識された抗原結合アッセイ(RIA)又は表面プラズモン共鳴アッセイによって測定される。特定の実施形態において、「オン率(on-rate)」又は「会合速度(rate of association又はassociation rate)」、或いは「kon」、及び「オフ率」、又は「解離速度(rate of dissociation又はdissociation rate)」、或いは「koff」も、BIAcore(商標)-2000又はBIAcore(商標)-3000(BIAcore, Inc., Piscataway, N.J.)を使用する表面プラズモン共鳴技術により決定される。追加の実施形態において、「Kd」、「kon」、及び「koff」は、OCTET(登録商標)Systems(Pall Life Sciences)を使用して測定される。OCTET(登録商標)Systemsを使用して結合親和性を測定する典型的な方法において、リガンド、例えばビオチン化されたヒト又はカニクイザルのMSLNは、OCTET(登録商標)ストレプトアビジン・キャピラリーセンサーの先端面上に固定され、その後、ストレプトアビジン先端は、約20-50μg/mlのヒト又はカニクイザルのMSLNタンパク質を使用して製造者の指示に従い活性化される。PBS/カゼインの溶液も遮断薬として導入される。会合反応速度測定に関して、MSLN結合タンパク質変異体は、約10ng/mL~約100μg/mL、約50ng/mL~約5μg/mL、又は約2ng/mL~約20μg/mLに及ぶ濃度で導入される。幾つかの実施形態において、MSLN結合単一ドメインタンパク質は、約2ng/mL~約20μg/mLに及ぶ濃縮で使用される。完全な解離は、陰性対照、即ち、結合タンパク質のないアッセイ緩衝液の場合に観察される。その後、結合反応の動力学的パラメータは、適切なツール、例えばForteBioソフトウェアを使用して判定される。
【0024】
本明細書には、MSLN結合タンパク質、医薬組成物の他、そのようなMSLN結合タンパク質を作成するための核酸、組み換え発現ベクター、及び宿主細胞が記載される。また、疾患、疾病、及び障害の予防及び/又は処置において、開示されたMSLN結合タンパク質を使用する方法も提供される。MSLN結合タンパク質はMSLNに特異的に結合することができる。幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は、CD3結合ドメイン及びアルブミン結合ドメインなどの追加のドメインを含む。メソテリン(MSLN)、及び腫瘍疾患におけるその役割
【0025】
本明細書にはメソテリン結合タンパク質が企図される。メソテリンは、腹膜腔、胸膜腔、及び心膜腔の中皮内膜の細胞の表面に存在する糖タンパク質である。メソテリン遺伝子(MSLN)は、メソテリンと称される40キロダルトン(kDa)のタンパク質へと処理される71kDaの前駆体タンパク質をコードするものであり、細胞表面に存在するグリコシル-ホスファチジルイノシトール-アンカー糖タンパク質である(Chang, et al, Proc Natl Acad Sci USA (1996) 93:136-40)。メソテリンcDNAは、HPC-Y5細胞株から調製されたライブラリからクローン化された(Kojima et al. (1995) J. Biol. Chem. 270:21984-21990)。cDNAはまた、中皮腫を認識するモノクローナル抗体K1を使用してクローン化された(Chang and Pastan (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:136-40)。メソテリンは、正常ヒト組織におけるその発現が、胸膜、心膜、及び腹膜などの体腔に内在する中皮細胞内膜に限定される、分化抗原である。メソテリンはまた、中皮腫、膵臓腺癌、卵巣癌、胃癌、及び肺腺癌を含む、様々な異なるヒトの癌において大いに発現される(Hassan, et al., Eur J Cancer (2008) 44:46-53) (Ordonez, Am J Surg Pathol (2003) 27:1418-28; Ho, et al., Clin Cancer Res (2007) 13:1571-5)。メソテリンは、良性膵臓組織に見られる稀であり且つ弱い発現を伴う、原発性膵臓腺癌の大部分において過剰発現される。Argani P, et al. Clin Cancer Res. 2001; 7(12):3862-3868。上皮悪性胸膜中皮腫(MPM)は普遍的にメソテリンを発現する一方、肉腫MPMは恐らくメソテリンを発現しない。最も希薄な上皮卵巣細胞腫、及び関連する原発性腹膜の細胞腫は、メソテリンを発現する。
【0026】
メソテリンはまた、未変性の膜結合変形と比較して、タンパク質の可溶性形態として腫瘍細胞から脱落する(Hellstrom, et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev (2006) 15:1014-20; Ho, et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev (2006) 15:1751)。構造的に、メソテリンは、60kDaの前駆体ポリペプチドとして細胞表面に発現され、これは、31kDaの脱落構成要素(MPFに相当)及び40kDaの膜結合構成要素へとタンパク質分解的に処理される(Hassan et al. (2004) Clin. Cancer. Res. 10:3937-3942)。メソテリンは、CA125(MUC-16としても知られる)、即ち、以前に卵巣癌抗原として特定された腫瘍細胞の表面に存在するムチン様の糖タンパク質と相互に作用すると示されている。更に、膜結合メソテリンへのCA125の結合は異型の細胞接着を媒介し、CA125及びメソテリンは、進行型の卵巣腺癌において共発現される(Rump, A. et al. (2004) J. Biol. Chem. 279:9190-9198)。腹膜の内膜におけるメソテリンの発現は、卵巣癌の転移形成の好ましい部位に相関し、メソテリン-CA125結合は、卵巣腫瘍の腹膜播種性転移を促進すると考えられている(Gubbels, J. A. et al. (2006) Mol. Cancer. 5:50)。
【0027】
メソテリンは卵巣癌における自然な免疫応答の標的であり、癌免疫療法の標的であると提唱されている。Bracci L, et al. Clin Cancer Res. 2007; 13(2 Pt 1):644-653; Moschella F, et al. Cancer Res. 2011; 71(10):3528-3539; Gross G, et al. FASEB J. 1992; 6(15):3370-3378; Sadelain M, et al. Nat Rev Cancer. 2003; 3(1):35-45; Muul L M, et al. Blood. 2003; 101(7):2563-2569; Yee C, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2002; 99(25):16168-16173。膵臓癌の患者におけるメソテリンに特異的なCTLの存在は、全生存期間に相関する。Thomas A M, et al. J Exp Med. 2004; 200:297-306。加えて、Pastan及びその同僚は、メソテリンプラス陽性腫瘍を抱える癌患者を処置するための免疫毒素に抱合される抗メソテリン抗体の可溶性抗体フラグメントを使用した。この手法は、膵臓癌における適切な安全性及びある程度の臨床的活性を実証した。Hassan R, et al. Cancer Immun. 2007; 7:20 and Hassan R, et al. Clin Cancer Res. 2007; 13(17):5144-5149。卵巣癌において、この治療方針は、RECIST基準、及び、腹水症が完全に解消した第2の患者の安定した疾患により、1つの軽微な反応をもたらした。
【0028】
メソテリンはまた、微量のメソテリンがメソテリン陽性癌を抱える一部の患者の血液に検出され得るので、特定の型の癌の診断及び予測のためのマーカーとして使用され得る(Cristaudo et al., Clin. Cancer Res. 13:5076-5081, 2007)。メソテリンは、そのカルボキシル末端での欠失を介して、又はその膜結合形態からのタンパク質分解開裂によって、血清へと放出され得る(Hassan et al., Clin. Cancer Res. 10:3937-3942, 2004)。アスベストにさらされた労働者の間に悪性中皮腫が現われる数年前に、メソテリンの可溶性形態の増加が検出可能であった(Creaney and Robinson, Hematol. Oncol. Clin. North Am. 19:1025-1040, 2005)。更に、卵巣癌、膵臓癌、及び肺癌を抱える患者はまた、血清中の可溶性メソテリンを上昇させている(Cristaudo et al., Clin. Cancer Res. 13:5076-5081, 2007; Hassan et al., Clin. Cancer Res. 12:447-453, 2006; Croso et al., Cancer Detect. Prev. 30:180-187, 2006)。従って、メソテリンは、疾患予防又は処置の方法に対する適切な標的であり、メソテリンに特異的な有効な抗体が必要とされている。
【0029】
細胞表面の成熟メソテリンが3つの別個のドメイン、即ち、領域I(残基296-390を含む)、II(残基391-486を含む)、及びIII(残基487-598を含む)を備えることが示されている。(Tang et al., A human single-domain antibody elicits potent antitumor activity by targeting an epitope in mesothelin close to the cancer cell surface, Mol. Can. Therapeutics, 12(4): 416-426, 2013)。
【0030】
治療的介入のためのメソテリンに対して生成された一次抗体は、メソテリンとCA-125との相互作用に干渉するように設計された。ファージディスプレイは、FvSSを識別し、これは、親和性を最適化され、且つ、メソテリンを標的とする組み換え免疫毒素、SS1Pを生成するために使用された。MORAb-009抗体アマツキシマブは、SS1も使用し、領域I内でメソテリンのアミノ末端基64アミノ酸における非線形エピトープを認識する。SS1 Fvも、キメラ抗原受容体で操作されたT細胞を生成するために使用された。近年、新たなメソテリンタンパク質は、メソテリンタンパク質の他の領域を認識すると報告されている。
【0031】
卵巣癌、膵臓癌、中皮腫、肺癌、胃癌、及び三種陰性乳癌などの、メソテリンの過剰発現に関連する固形腫瘍疾患の処置に対して利用可能な更なるオプションを備える必要性が依然として存在する。本開示は、特定の実施形態において、腫瘍標的細胞の表面上でMSLNに特異的に結合する単一ドメインタンパク質を提供する。
MSLN結合タンパク質
【0032】
本明細書には、特定の実施形態において、MSLNタンパク質においてエピトープに結合する、抗MSLN単一ドメイン抗体又は抗体変異体などの結合タンパク質が提供される。幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:57の配列を含むタンパク質に結合する。幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:57と比較して短縮した配列を含むタンパク質に結合する。
【0033】
幾つかの実施形態において、本明細書に開示されるMSLN結合タンパク質は完全長のメソテリンを認識する。特定の実施形態にて、本明細書に開示されるMSLN結合タンパク質は、メソテリンの領域I(SEQ ID NO:57のアミノ酸残基296-390を含む)、領域II(SEQ ID NO:57のアミノ酸残基391-486を含む)、又は領域III(SEQ ID NO:57のアミノ酸残基487-598を含む)におけるエピトープを認識する。本開示のMSLN結合タンパク質は、幾つかの実施形態において、メソテリンの領域I、II、又はIIIの外に位置するエピトープを認識し、且つそれに結合し得ることが企図される。また他の実施形態において、MORAb-009抗体と異なるエピトープを認識し且つそれに結合する、MSLN結合タンパク質が開示される。
【0034】
幾つかの実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質は、追加の免疫グロブリンドメインを含む多重ドメインタンパク質内で発現される。そのような多重ドメインタンパク質は、免疫毒素に基づく腫瘍成長の阻害、及び抗体依存細胞性細胞毒素(ADCC)の誘導を介して作用することができる。幾つかの実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質を含む多重ドメインタンパク質は、補体依存細胞毒性(CDC)活性を示す。幾つかの実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質を含む多重ドメインタンパク質は、メソテリンを発現する癌細胞に対して、ADCC及びCDCの活性の両方を示す。
【0035】
更に、幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質を含む多重ドメインタンパク質がCDCを介して作用する場合、MLSN結合タンパク質は、細胞表面に接した、メソテリンタンパク質のC末端端部にて立体構造的なエピトープを認識し得る。幾つかの実施形態において、メソテリンタンパク質は、SEQ ID NO:57に明記されるような配列を含み、C末端端部はアミノ酸残基539-588を含む。
【0036】
幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は抗MSLN抗体又は抗体変異体である。本明細書で使用されるように、用語「抗体変異体」は、本明細書に記載される抗体の変異体及び誘導体を指す。特定の実施形態において、本明細書に記載される抗MSLNの抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、特定の実施形態において、本明細書に記載される抗MSLN抗体のアミノ酸配列変異体は、結合親和性及び/又は抗体の他の生物学的特性を改善するように企図されている。アミノ酸変異体を調製するための典型的な方法は、限定されないが、抗体をコードするヌクレオチド配列へと、又はペプチド合成により、適切な修飾を導入する工程を含む。そのような修飾は例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、前記残基への挿入、及び/又は前記残基の置換を含む。
【0037】
欠失、挿入、及び置換のあらゆる組み合わせは、最終の構築物に到達するために行うことができるが、最終の構築物が所望の特徴、例えば抗原結合を持つことを前提とする。特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を持つ抗体変異体が提供される。置換突然変異誘発に対する目的の部位はCDR及びフレームワーク領域を含む。そのような置換の例が後述される。アミノ酸置換は目的の抗体へと導入することができ、生成物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合の減少、免疫原性の減少、又は抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)或いは補体依存細胞毒性(CDC)の改善をスクリーニングした。保存的且つ非保存的なアミノ酸置換が、抗体変異体の調製に企図される。
【0038】
変異体抗MSLN抗体を作成するための置換の別の例において、親抗体の1つ以上の超可変領域残基が置換される。一般的に、変異体はその後、親抗体に比べて望ましい特性、例えば、親和性の増加、親和性の減少、免疫原性の減少、結合のpH依存性の増加に基づいて選択される。例えば、親和性の成熟した変異体抗体は、例えば、本明細書に記載され且つ当該技術分野で既知のものなどのファージディスプレイに基づく親和性成熟技術を使用して、生成され得る。
【0039】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質は、重鎖可変ドメイン(VH)、メソテリンに特異的なラマ由来のsdAb、ペプチド、リガンド、又は小分子実体の可変ドメイン(VHH)などの、単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質のメソテリン結合ドメインは、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含む、メソテリンに結合する任意のドメインである。特定の実施形態において、MSLN結合タンパク質は単一ドメイン抗体である。他の実施形態において、MSLN結合タンパク質はペプチドである。更なる実施形態において、MSLN結合タンパク質は小分子である。
【0040】
一般的に、単一ドメインという用語は、その最も広い意味で本明細書に使用されるように、特異的な生物学的ソース又は特異的な調製法には限定されないことを、留意されたい。単一ドメイン抗体は、その相補性決定領域が単一ドメインポリペプチドの一部である抗体である。例として、限定されないが、重鎖抗体、軽鎖が自然にない抗体、従来の4鎖状抗体に由来する単一ドメイン抗体、操作された抗体、及び抗体由来のもの以外の単一ドメインスキャホールドが挙げられる。単一ドメイン抗体は、当該技術分野の何れか、或いは、将来の単一ドメイン抗体であり得る。単一ドメイン抗体は、限定されないが、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、ヤギ、ウサギ、ウシを含む任意の種に由来し得る。例えば、幾つかの実施形態において、本開示の単一ドメイン抗体は:(1)自然発生の重鎖抗体のVHHドメインの単離によって;(2)自然発生のVHHドメインをコードするヌクレオチド配列の発現によって;(3)自然発生のVHHドメインの「ヒト化」、又はそのようなヒト化VHHドメインをコードする核酸の発現によって;(4)任意の動物種、具体的には人間などの一種の哺乳動物由来の自然発生のVHドメインの「ラクダ化」、又はそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現によって;(5)「ドメイン抗体」又は「Dab」の「ラクダ化」、又はそのようなラクダ化VHドメインをコードする核酸の発現によって;(6)タンパク質、ポリペプチド、又は他のアミノ酸配列の調製のための合成又は半合成の技術を使用することによって;(7)当該技術分野で既知の核酸合成のための技術を使用して単一ドメイン抗体をコードスル核酸の調製、その後に得られた核酸の発現によって;及び/又は(8)前述のものの1つ以上の任意の組み合わせによって、得られる。
【0041】
一実施形態において、単一ドメイン抗体は、MSLNに対して配向された自然発生の重鎖抗体のVHHドメインに相当する。本明細書で更に記載されるように、そのようなVHH配列は通常、MSLNにより一種のラマを適切に免疫化することによって(即ち、MSLNに対して配向された免疫応答及び/又は重鎖抗体を上昇させるように)、前記ラマの適切な生体サンプル(血液サンプル、血清サンプル、又はB細胞のサンプルなど)を得ることによって、及び、当該技術分野で既知の適切な技術を使用して、前記サンプルから出発して、MSLNに対して配向されたVHH配列を生成することによって、生成又は入手され得る。
【0042】
別の実施形態において、MSLNに対するそのような自然発生のVHHドメインは、例えば、当該技術分野で既知の1つ以上のスクリーニング技術を使用して、MSLN、又はその少なくとも一部、フラグメント、抗原決定基、又はエピトープを用いてライブラリをスクリーニングすることによって、ラクダ科VHH配列のナイーブライブラリから得られる。そのようなライブラリ及び技術は、例えば、WO99/37681、WO01/90190、WO3/025020、及びWO03/035694に記載されている。代替的に、例えばWO00/43507に記載されるように、無作為の突然変異誘発及び/又はCDRシャフリングなどの技術によってナイーブVHHライブラリから得られるVHHライブラリなどの、ナイーブVHHライブラリ由来の、改善された合成又は半合成ライブラリが使用される。
【0043】
更なる実施形態において、MSLNに対して配向されたVHHを得るための更に別の技術は、重鎖抗体を発現可能なトランスジェニック哺乳動物を適切に免疫化する工程(即ち、MSLNに対して配向された免疫応答及び/又は重鎖抗体を上昇させるように)、前記トランスジェニック哺乳動物の適切な生体サンプル(血液サンプル、血清サンプル、又はB細胞のサンプルなど)を得る工程、及び、その後に、当該技術分野で既知の適切な技術を使用して、前記サンプルから出発して、MSLNに対して配向されたVHH配列を生成する工程を含む。例えば、この目的のために、重鎖抗体を発現するラット又はマウス、並びに、WO02/085945及びWO04/049794に記載される方法及び技術が、使用され得る。
【0044】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるような抗MSLN抗体は、アミノ酸配列を含む単一ドメイン抗体を含んでおり、前記アミノ酸配列は、自然発生のVHHドメインのアミノ酸配列に相当するが、(例えば上述のような)人間由来の従来の4鎖抗体のVHドメインにおける対応する位置に生じるアミノ酸残基の1つ以上により前記自然発生のVHH配列のアミノ酸配列(及び具体的にはフレームワーク配列)における1つ以上のアミノ酸残基を置き換えることによって、「ヒト化」されている。これは、当業者に明白である当該技術分野で既知の様式で、例えば本明細書の更なる記載に基づいて、実行可能である。再度、そのような本開示のヒト化抗MSLN単一ドメイン抗体は、それ自体で既知の任意の適切な様式で(即ち、上記の点(1)-(8)の下で示されるように)得られ、故に、出発物質として自然発生のVHHドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドではあるが厳密にはそれに限定されないことを、留意されたい。幾つかの追加の実施形態において、本明細書に記載されるような単一ドメインMSLN抗体は、アミノ酸配列を含む単一ドメイン抗体を含んでおり、前記アミノ酸配列は、自然発生のVHドメインのアミノ酸配列に相当するが、重鎖抗体のVHHドメインの対応する位置に生じるアミノ酸残基の1つ以上により従来の4鎖抗体の自然発生のVHドメインのアミノ酸配列における1つ以上のアミノ酸残基を置き換えることによって、「ラクダ化」されている。そのような「ラクダ化」置換は好ましくは、VH-VL界面、及び/又はいわゆるラクダ科ホールマーク残基を形成する、及び/又はそれらに存在する、アミノ酸位置に挿入される(例えば、WO94/04678及びDavies and Riechmann (1994 and 1996)を参照)。好ましくは、ラクダ化単一ドメインを生成又は設計するための出発物質又は出発点として使用されるVH配列は好ましくは、哺乳動物のVH配列、より好ましくはVH3配列などの人間のVH配列である。しかし、そのような本開示のラクダ化抗MSLN単一ドメイン抗体は、特定の実施形態において、当該技術分野で既知の任意の適切な様式で(即ち、上記の点(1)-(8)の下で示されるように)得られ、故に、出発物質として自然発生のVHドメインを含むポリペプチドを使用して得られたポリペプチドではあるが厳密にはそれに限定されないことを、留意されたい。例えば、本明細書で更に記載されるように、「ヒト化」及び「ラクダ化」は共に、自然発生のVHHドメイン又はVHドメインをそれぞれコードするヌクレオチド配列を提供することにより、及びその後に、新たなヌクレオチド配列が「ヒト化」又は「ラクダ化」単一ドメイン抗体をそれぞれコードするような方法で前記ヌクレオチド配列における1つ以上のコドンを変化させることによって、実行されるその後、この核酸は、本開示の望ましい抗MSLN単一ドメイン抗体を提供するように発現され得る。代替的に、他の実施形態において、自然発生のVHHドメイン又はVHドメインそれぞれのアミノ酸配列に基づいて、本開示の望ましいヒト化又はラクダ化抗MSLN単一ドメイン抗体それぞれのアミノ酸配列が設計され、その後に既知のペプチド合成技術を使用して新規に合成される。幾つかの実施形態において、自然発生のVHHドメイン又はVHドメインそれぞれのアミノ酸配列又はヌクレオチド配列に基づいて、本開示の望ましいヒト化又はラクダ化抗MSLN単一ドメイン抗体それぞれをコードするヌクレオチド配列が設計され、その後に既知の核酸合成技術を使用して新規に合成され、その後、これにより得られた核酸を、既知の発現技術を使用して発現させて、本開示の望ましい抗MSLN単一ドメイン抗体を提供する。
【0045】
自然発生のVH配列又はVHH配列から出発する、本開示の抗MSLN単一ドメイン抗体及び/又はそれをコードする核酸を得るための、他の適切な方法及び技術は、例えば、本開示の抗MSLN単一ドメイン抗体或いはそれをコードするヌクレオチド配列又は核酸を提供するために、適切な様式で、1つ以上の自然発生のVH配列の1つ以上の部分(1つ以上のフレームワーク(FR)配列及び/又は相補性決定領域(CDR)配列など)、1つ以上の自然発生のVHH配列の1つ以上の部分(1つ以上のFR配列又はCDR配列など)、及び/又は1つ以上の合成又は半合成の配列を組み合わせる工程を含む。
【0046】
幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質はかなり小さく、25kD未満、20kD未満、15kD未満、又は10kD未満であることが企図される。特定の例において、MSLN結合タンパク質は、ペプチド又は小分子実体である場合に5kD以下である。
【0047】
幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は、重鎖可変相補性決定領域CDR1、重鎖可変CDR2、重鎖可変CDR3、軽鎖可変CDR1、軽鎖可変CDR2、及び軽鎖可変CDR3を含む抗MSLN特異抗体である。幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は、MSLNに結合するドメインを含み、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、又は抗原結合フラグメント、例えば単一ドメイン抗体(sdAb)、Fab、Fab’、F(ab)2、及びFvフラグメント、1つ以上のCDRで構成されたフラグメント、単鎖抗体(例えば、単鎖Fvフラグメント(scFv))、ジスルフィド安定化(dsFv)Fvフラグメント、ヘテロ共役抗体(例えば、二重特異性抗体)、pFvフラグメント、重鎖単量体又は二量体、軽鎖単量体又は二量体、並びに1つの重鎖と1つの軽鎖から成る二量体からのドメインが挙げられる。幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、抗MSLN単一ドメイン抗体は、重鎖可変相補性決定領域(CDR)、CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。
【0048】
幾つかの実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質は、式:f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4によって表わされるような、3つの相補性決定領域/配列によって遮られた4つのフレームワーク領域/配列(f1-f4)で構成されるアミノ酸配列を含むポリペプチドであり、式中、r1、r2、及びr3はそれぞれ相補性決定領域CDR1、CDR2、及びCDR3であり、f1、f2、f3、及びf4はフレームワーク残基である。本開示のMSLN結合タンパク質のフレームワーク残基は、例えば、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89の、90、91、92、93、又は94のアミノ酸残基を含み、相補性決定領域は、例えば24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、又は36のアミノ酸残基を含む。幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:1-40から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0049】
幾つかの実施形態において、CDR1は、SEQ ID NO:51に明記されるようなアミノ酸配列、或いは、SEQ ID NO:51における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR2は、SEQ ID NO:52に明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:52における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR3は、SEQ ID NO:53に明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:53における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。
【0050】
幾つかの実施形態において、CDR1は、SEQ ID NO:54に明記されるようなアミノ酸配列、或いは、SEQ ID NO:54における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR2は、SEQ ID NO:55に明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:55における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。幾つかの実施形態において、CDR3は、SEQ ID NO:56に明記されるような配列、或いは、SEQ ID NO:56における1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のアミノ酸置換を有する変異体を含む。
【0051】
本開示のMSLN結合タンパク質は、特定の例において、1つ以上の保存領域を含む。保存領域は、SEQ ID NO:41-50に明記されるような配列、又は前記配列に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む変異体を含む。典型的な実施形態は、SEQ ID NO:41-44から選択される1つ以上の保存領域を含むMSLN結合タンパク質、又は前記配列に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む変異体を含む。場合によっては、MSLN結合タンパク質は、(i)SEQ ID NO:41に相当するアミノ酸の伸張部、(ii)SEQ ID NO:42に相当するアミノ酸の伸張部、(iii)SEQ ID NO:43に相当するアミノ酸の伸張部、及び(iv)SEQ ID NO:44に相当するアミノ酸の伸張部を含む。
【0052】
更に典型的な実施形態は、SEQ ID NO:45-50から選択される1つ以上の保存領域を含むMSLN結合タンパク質、又は前記配列に対して1つ以上のアミノ酸残基置換を含む変異体を含む。場合によっては、MSLN結合タンパク質は、(i)SEQ ID NO:45に相当するアミノ酸の伸張部、(ii)SEQ ID NO:46に相当するアミノ酸の伸張部、(iii)SEQ ID NO:47に相当するアミノ酸の伸張部、(iv)SEQ ID NO:48に相当するアミノ酸の伸張部、(v)SEQ ID NO:49に相当するアミノ酸の伸張部、及び(vi)SEQ ID NO:50に相当するアミノ酸の伸張部を含む。
【0053】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:1-29、58、及び60-62から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0054】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:30-40、58、及び60-62から選択されたアミノ酸配列と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0055】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質の相補性決定領域は、SEQ ID NO:51又はSEQ ID NO:54に明記されるアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0056】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質の相補性決定領域は、SEQ ID NO:52又はSEQ ID NO:55に明記されるアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0057】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質の相補性決定領域は、SEQ ID NO:53又はSEQ ID NO:56に明記されるアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0058】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質の相補性決定領域1(CDR1)は、SEQ ID NO:63-101の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0059】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質の相補性決定領域2(CDR2)は、SEQ ID NO:102-140の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0060】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質の相補性決定領域3(CDR3)は、SEQ ID NO:141-179の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0061】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質のフレームワーク領域1(f1)は、SEQ ID NO:180-218の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0062】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質のフレームワーク領域1(f1)は、SEQ ID NO:219-257の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0063】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質のフレームワーク領域2(f2)は、SEQ ID NO:258-296の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0064】
様々な実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質のフレームワーク領域3(f3)は、SEQ ID NO:297-335の何れか1つに明記されるようなアミノ酸配列に対して少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、又は約100%同一である。
【0065】
幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:1の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:2の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:3の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:4の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:5の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:6の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:7の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:8の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:9の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:10の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:11の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:12の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:13の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:14の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:15の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:16の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:17の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:18の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:19の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:20の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:21の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:22の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:23の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:24の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:25の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:26の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:27の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:28の配列を含む単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:28の配列を含む単一ドメイン抗体である。
【0066】
幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:30の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:31の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:32の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:33の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:34の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:35の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:36の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:37の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:38の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:39の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:40の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:58の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:60の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:61の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。幾つかの実施形態において、上記実施形態の何れか1つに係るMSLN結合タンパク質は、SEQ ID NO:62の配列を含むヒト化単一ドメイン抗体である。
【0067】
幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は、ヒト及びカニクイザルのメソテリンと交差反応する。幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質はヒトメソテリンに特異的である。特定の実施形態において、本明細書に開示されるMSLN結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するヒトメソテリンに結合する。特定の実施形態において、本明細書に開示されるMSLN結合タンパク質は、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザルメソテリンに結合する。特定の実施形態において、本明細書に開示されるMSLN結合タンパク質は、カニクイザルKd(cKd)及びヒトKd(hKd)をそれぞれ有する、カニクイザルメソテリン及びヒトメソテリンの両方に結合する。幾つかの実施形態において、MSLN結合タンパク質は、比較可能な結合親和性(即ち、hKd及びcKdの値は、±10%よりも多く相違しない)によりヒト及びカニクイザルのメソテリンに結合する。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約500nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約450nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約400nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約350nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約300nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約250nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約200nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約150nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約100nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.1nM~約90nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.2nM~約80nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.3nM~約70nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.4nM~約50nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.5nM~約30nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.6nM~約10nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.7nM~約8nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.8nM~約6nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約0.9nM~約4nMの範囲に及ぶ。幾つかの実施形態において、hKd及びcKdは、約1nM~約2nMの範囲に及ぶ。
【0068】
幾つかの実施形態において、前述のMSLN結合タンパク質の何れか(例えば、SEQ ID NO:1-40及び58の抗MSLN単一ドメイン抗体)は、精製の容易さのためにタグ付けされる親和性ペプチドである。幾つかの実施形態において、親和性ペプチドタグは、6X-hisとも称される、6つの連続するヒスチジン残基である。
【0069】
特定の実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質は、三重特異性タンパク質を標的とするMSLNへと組み込まれ得る。幾つかの例において、三重特異性結合タンパク質は、本開示に係るCD3結合ドメイン、ヒト血清アルブミン(HSA)結合ドメイン、及び抗MSLNの結合ドメインを含む。幾つかの例において、三重特異性結合タンパク質は、以下の配向:MSLN-HSA-CD3で上述のドメインを含む。
【0070】
特定の実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質は、可溶性メソテリン上で膜結合メソテリンに優先的に結合する。膜結合メソテリンは、メソテリンを発現する細胞の細胞膜表面における、又はその表面上のメソテリンの存在を指す。可溶性メソテリンは、メソテリンを発現する又は発現した細胞の細胞膜表面中に、又はその上にもはや存在しないメソテリンを指す。特定の例において、可溶性メソテリンは被験体における血液及び/又はリンパ循環に存在する。一実施形態において、MSLN結合タンパク質は、可溶性メソテリンよりも少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍大きい膜結合メソテリンに結合する。一実施形態において、本開示の抗原結合タンパク質は、可溶性メソテリンより30倍大きい膜結合メソテリンに優先的に結合する。可溶性MSLN上での抗原結合タンパク質の膜結合MSLNへの優先的な結合の判定は、当該技術分野で周知のアッセイを使用して容易に行われ得る。
【0071】
キメラ抗原受容体(CAR)への組み込み
本開示のMSLN結合タンパク質、例えば抗MSLN単一ドメイン抗体は、特定の例において、キメラ抗原受容体(CAR)へと組み込むことができる。操作された免疫エフェクター細胞、例えばT細胞又はNK細胞は、本明細書に記載されるような抗MSLN単一ドメイン抗体を含むCARを発現するために使用され得る。一実施形態において、本明細書に記載されるような抗MSLN単一ドメイン抗体を含むCARは、ヒンジ領域を介して膜貫通ドメインに、及び更には共刺激ドメイン、例えばOX40、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、又は4-1BBから得られる機能的シグナル伝達ドメインに接続される。幾つかの実施形態において、CARは、4-1BB及び/又はCD3ゼータなどの細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列を更に含む。
【0072】
腫瘍成長減少特性
特定の実施形態において、本開示のMSLN結合タンパク質は、メソテリンを発現する腫瘍細胞を有する被験体に投与すると、インビボで腫瘍細胞の成長を減少する。腫瘍細胞の成長の減少の測定は、当該技術分野で周知の複数の異なる方法によって判定され得る。非限定的な実施例は、腫瘍寸法の直接測定、切除した腫瘤の測定及び対照被験体との比較、解析の向上のために同位体又は発光分子(例えばルシフェラーゼ)を使用する又は使用しない画像処理技術(例えばCT又はMRI)を介した測定などを含む。特異的な実施形態において、本開示の抗原結合剤の投与は結果として、対照の抗原結合剤と比較して、腫瘍成長の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%の腫瘍細胞のインビボ成長の減少をもたらし、腫瘍の完全寛解及び消失を示す。更なる実施形態において、本開示の抗原結合剤の投与は結果として、対照の抗原結合剤と比較して、約50-100%、約75-100%、又は約90%-100%の腫瘍細胞のインビボ成長の減少をもたらす。更なる実施形態において、本開示の抗原結合剤の投与は結果として、対照の抗原結合剤と比較して、約50-60%、約70-80%、約80-90%、又は約90%-100%の腫瘍細胞のインビボ成長の減少をもたらす。
【0073】
MSLN結合タンパク質修飾
本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質は、(i)アミノ酸が遺伝子コードによってコードされるものではないアミノ酸残基で置換され、(ii)成熟ポリペプチドがポリエチレングリコールなどの別の化合物と融合され、又は、(iii)追加のアミノ酸が、リーダー配列、分泌配列、或いは免疫原ドメインを遮断するための及び/又はタンパク質の精製のための配列などのタンパク質に融合される、誘導体又はアナログを包含する。
【0074】
典型的な修飾としては、限定されないが、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリスチル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化などのアミノ酸のタンパク質への転移RNA媒介性の添加、及びユビキチン化が挙げられる。
【0075】
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、及びアミノ又はカルボキシル終端を含む、本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質のあらゆる場所で行われる。MSLN結合タンパク質の修飾に役立つ特定の一般的なペプチド修飾は、グルタミン酸残基のグリコシル化、脂質結合、硫酸化、ガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、共有結合修飾によるポリペプチド中のアミノ基又はカルボキシル基の遮断、或いはその両方、及びADPリボシル化を含む。
【0076】
MSLN結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子も提供される。幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチド分子はDNA構築物として提供される。他の実施形態において、ポリヌクレオチド分子はメッセンジャーRNA転写産物として提供される。
【0077】
ポリヌクレオチド分子は、適切なプロモーターに動作可能に結合される抗MSLN結合タンパク質をコードする遺伝子及び随意に適切な転写ターミネーターを組み合わせること、及び、細菌又は例えばCHO細胞などの他の適切な発現系にそれを発現させることなど、既知の方法によって構築される。
【0078】
幾つかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、更なる実施形態を表すベクター、好ましくは発現ベクターに挿入される。この組み換えベクターは既知の方法によって構築可能である。特定の対象のベクターは、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルスなど)、及びコスミドを含んでいる。
【0079】
様々な発現ベクター/宿主系は、記載されたMSLN結合タンパク質のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、且つそれを発現するために利用されてもよい。E.coli中での発現のための発現ベクターの例は、pSKK(Le Gall et al., J Immunol Methods.(2004) 285(1):111-27)、哺乳動物細胞中の発現用のpcDNA5(Invitrogen)、PICHIAPINK(商標)酵母発現系(Invitrogen)、BACUVANCE(商標)バキュロウィルス発現系(GenScript)である。
【0080】
故に、本明細書に記載されるようなMSLN結合タンパク質は、幾つかの実施形態において、上記のようなタンパク質をコードするベクターを宿主細胞へ導入し、且つ、タンパク質ドメインが発現し、単離され、随意に更に精製され得る条件下で上記宿主細胞を培養することにより、生成される。
【0081】
医薬組成物
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質、MSLN結合タンパク質のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、或いはこのベクター及び少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体によって形質転換された宿主細胞を含む、医薬組成物も提供される。用語「薬学的に許容可能な担体」としては、限定されないが、成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、且つ、投与される患者にとって毒性ではない任意の担体が挙げられる。適切な医薬担体の例は当該技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、無菌液などを含む。こうした担体は、従来の方法によって製剤することができ、適切な投与量で被験体に投与可能である。好ましくは、組成物は無菌である。これらの組成物は、防腐剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントを更に含み得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤の包含によって確保され得る。更なる実施形態は、凍結乾燥形態で包装される、或いは水性媒体に包装される、抗MSLN単一ドメイン抗体又はその抗原結合性フラグメントなどの、上記結合タンパク質の1つ以上を提供する。
【0082】
医薬組成物の幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質はナノ粒子に封入される。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、フラーレン、液晶、リポソーム、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、デンドリマー、又はナノロッドである。医薬組成物の他の実施形態において、MSLN結合タンパク質はリポソームに結合する。幾つかの例において、MSLN結合タンパク質はリポソームの表面に抱合される。幾つかの例において、MSLN結合タンパク質は、リポソームのシェル内に封入される。幾つかの例において、リポソームはカチオン性リポソームである。
【0083】
本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質は、薬物としての使用のために企図されている。投与は、様々な方法、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所、又は皮内の投与によって達成される。幾つかの実施形態において、投与経路は、治療の種類と、医薬組成物に含まれる化合物の種類に依存する。投与レジメンは主治医と他の臨床的要因によって決定される。任意の1人の患者のための用量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、性別、投与される特定の化合物、投与時間と投与経路、治療の種類、健康状態、及び同時に投与されている他の薬物を含む多くの因子に依存する。「有効量」は、こうした病状の減少又は緩解をもたらす、疾患の経過と重症度に影響を与えるのに十分な有効成分の量を指し、既知の方法を使用して決定されることもある。
【0084】
幾つかの実施形態において、本開示のMSLN結合剤は、週に1回の頻度で最大10mg/kgの用量で投与される。場合によっては、用量は、約1ng/kg~約10mg/kgに及ぶ。幾つかの実施形態において、投与量は、約1ng/kg~約10ng/kg、約5ng/kg~約15ng/kg、約12ng/kg~約20ng/kg、約18ng/kg~約30ng/kg、約25ng/kg~約50ng/kg、約35ng/kg~約60ng/kg、約45ng/kg~約70ng/kg、約65ng/kg~約85ng/kg、約80ng/kg~約1μg/kg、約0.5μg/kg~約5μg/kg、約2μg/kg~約10μg/kg、約7μg/kg~約15μg/kg、約12μg/kg~約25μg/kg、約20μg/kg~約50μg/kg、約35μg/kg~約70μg/kg、約45μg/kg~約80μg/kg、約65μg/kg~約90μg/kg、約85μg/kg~約0.1mg/kg、約0.095mg/kg~約10mg/kgである。場合によっては、用量は、約0.1mg/kg~約0.2mg/kg;約0.25mg/kg~約0.5mg/kg、約0.45mg/kg~約1mg/kg、約0.75mg/kg~約3mg/kg、約2.5mg/kg~約4mg/kg、約3.5mg/kg~約5mg/kg、約4.5mg/kg~約6mg/kg、約5.5mg/kg~約7mg/kg、約6.5mg/kg~約8mg/kg、約7.5mg/kg~約9mg/kg、又は約8.5mg/kg~約10mg/kgである。投与の頻度は、幾つかの実施形態において、ほぼ毎日(about less than daily)、隔日、1日1回未満、週に2回、毎週、7日に1回、2週に1回、2週に1回、3週に1回、4週に1回、又は月に1回である。場合によっては、投与の頻度は毎週である。場合によっては、投与の頻度は毎週であり、用量は最大10mg/kgである。場合によっては、投与の持続期間は約1日~約4週間以上である。
【0085】
処置の方法
本明細書にはまた、幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるようなMSLN結合タンパク質の投与を含む、個体の免疫系を刺激するための方法と使用が提供される。幾つかの例において、本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質の投与は、標的抗原を発現する細胞への細胞毒性を引き起こす、及び/又は持続させる。幾つかの例において、細胞は、癌細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、自己反応性のT又はB細胞、損傷を受けた赤血球、動脈プラーク、或いは繊維症の組織である。
【0086】
MSLN結合タンパク質、又は本明細書に記載されるMSLN結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質を個体に投与する工程を含む、標的抗原に関連する疾患、障害、又は疾病の処置のための方法と使用も、本明細書で提供される。標的抗原に関連する疾患、障害、又は疾病としては、限定されないが、ウイルス感染、細菌感染、自己免疫性疾患、移植拒絶反応、アテローム性動脈硬化症、又は線維症が挙げられる。他の実施形態において、標的抗原に関連する疾患、障害、又は疾病は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主疾患、又は宿主対移植片疾患である。1つの実施形態において、標的抗原に関連する疾患、障害、又は疾病は癌である。本開示のMSLN結合タンパク質により、及びそれを使用する方法により処置、予防、又は管理され得る癌は、限定されないが、上皮細胞由来の癌を含む。そのような癌の例は、以下を含む:白血病、限定されないが、急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、例えば骨髄芽球、前骨髄球、骨髄単球性、単球、及び赤白血症の白血病、並びに及び骨髄異形成症候群など;慢性白血病、限定されないが、慢性骨髄球(顆粒白血球)白血病、慢性リンパ性白血病、ヘアリー細胞白血病など;一次性赤血球増加症;リンパ腫、限定されないが、ホジキン病、非ホジキン病など;多発性骨髄腫、限定されないが、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性黒色腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫、及び髄外の形質細胞腫など;ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症;意義不明の単クローン免疫グロブリン症;良性単クローン免疫グロブリン症;重鎖病;骨及び結合組織の肉腫、限定されないが、骨肉腫、骨肉腫(osteosarcoma)、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性巨細胞腫、骨の繊維肉腫、脊索腫、骨膜肉腫、軟部組織肉腫、血管肉腫(血管肉腫(hemangiosarcoma))、繊維肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、、神経鞘腫、横紋筋肉腫、及び滑膜肉腫など;脳腫瘍、限定されないが、神経膠腫、星細胞腫、脳幹神経膠腫、上衣腫、乏突起神経膠腫、非神経膠腫瘍、聴神経腫、頭蓋咽頭腫、髄芽腫、髄膜腫、松果体腫、松果体芽細胞腫、及び原発性脳リンパ腫など;乳癌、限定されないが、乳管癌、腺癌、小葉状(小細胞)癌、分泌管内癌、乳房の髄様癌、粘液性乳癌、管状乳癌、乳頭癌、パジェット病、及び炎症性乳癌など;副腎癌、限定されないが、褐色細胞腫及び副腎皮質細胞腫など;甲状腺癌、限定されないが、乳頭状又は濾胞性甲状腺癌、甲状腺髄様癌、及び未分化甲状腺癌など;膵臓癌、限定されないが、インスリノーマ、ガストリノーマ、グルカゴノーマ、ビポーマ、ソマトスタチン分泌腫瘍、及びカルチノイド、又は島細胞腫など;下垂体癌、限定されないが、クッシング病、プロラクチン分泌腫瘍、先端巨大症、及び尿崩症;眼癌、限定されないが、虹彩黒色腫、脈絡膜黒色腫及び毛様体黒色腫などの眼黒色腫、及び網膜芽細胞腫など;有棘細胞癌、腺癌、及び黒色腫などの膣癌;有棘細胞癌、黒色腫、腺癌、基底細胞癌、肉腫、及びパジェット病などの外陰癌;子宮頚癌、限定されないが、扁平上皮癌及び腺癌;子宮癌、限定されないが、子宮内膜細胞腫及び子宮肉腫など;卵巣癌、限定されないが、卵巣上皮性悪性腫瘍、境界型腫瘍、生殖細胞腫瘍、及び間質性腫瘍など;食道癌、限定されないが、扁平上皮癌、腺癌、腺様嚢胞癌、粘液性類表皮癌、腺扁平上皮癌、肉腫、黒色腫、形質細胞腫、疣状癌、及び燕麦細胞(小細胞)癌腫など;胃癌、限定されないが、腺癌、肉芽腫性軟性(ポリープ状)、潰瘍化型、表層進展性、拡散進展性(diffusely spreading)、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、繊維肉腫、及び癌肉腫など;結腸癌;直腸癌;肝臓癌、限定されないが、肝細胞癌及び肝芽腫;腺癌などの胆嚢癌;胆管癌、限定されないが、乳頭状、結節状、及びびまん性など;肺癌、限定されないが、非小細胞肺癌、扁平上皮癌(類表皮癌)、腺癌、大細胞癌、及び小細胞肺癌など;精巣癌、限定されないが、胚腫瘍、精上皮腫、退生、古典的(典型的)、精母細胞、非セミノーマ、胎児性癌、奇形腫癌腫、絨毛癌(卵黄嚢腫瘍)、限定されないが前立腺上皮内腫瘍、腺癌、平滑筋肉腫、及び横紋筋肉腫などの前立腺癌など;腎癌(penal cancer);限定されないが扁平上皮細胞腫などの口腔癌;基底膜癌;唾液腺癌、限定されないが、腺癌、粘液性類表皮癌、及び腺様嚢胞癌(adenoidcystic carcinoma)など;咽頭癌、限定されないが、扁平上皮癌及び疣贅性など;皮膚癌、限定されないが、基底細胞癌、扁平上皮癌及び黒色腫、表在拡大型黒色腫、結節型黒色腫、ほくろ悪性黒色腫、末端黒子型黒色腫など;腎臓癌、限定されないが、腎細胞癌、腺癌、副腎腫、繊維肉腫、移行性細胞癌(腎盂及び/又は尿管)など;ウィルムス腫瘍;膀胱癌、限定されないが、移行上皮癌、扁平上皮癌、腺癌、癌肉腫。加えて、癌は、粘液肉腫、骨原性肉腫、内皮肉腫、リンパ脈管内皮肉腫、中皮腫、滑膜腫、血管芽細胞腫、上皮性悪性腫瘍、嚢胞腺癌、気管支原性癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、及び乳頭状腺癌を含む(このような障害に関しては、Fishman et al., 1985, Medicine, 2d Ed., J.B. Lippincott Co., Philadelphia and Murphy et al., 1997, Informed Decisions: The Complete Book of Cancer Diagnosis, Treatment, and Recovery, Viking Penguin, Penguin Books U.S.A., Inc., United States of Americaを参照)。
【0087】
本開示のMSLN結合タンパク質は、以下を含む(これらに限定されない)様々な癌又は他の異常な増殖性疾患の処置又は予防にも有用である:膀胱、乳房、結腸、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、胃、頚部、甲状腺、及び皮膚の癌を含む癌腫;扁平上皮癌;白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫を含む、リンパ系統の造血腫瘍;急性及び慢性骨髄性白血病、並びに前骨髄性白血病を含む骨髄系統の造血腫瘍;線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉由来の腫瘍;黒色腫、精上皮腫、悪性奇形腫、神経芽細胞腫、及び神経膠腫を含む他の腫瘍;星細胞腫、神経芽腫、神経膠腫、及びシュワン細胞腫を含む、中枢神経系と末梢神経系の腫瘍;線維肉腫、横紋筋肉腫、及び骨肉腫を含む間充織由来の腫瘍;並びに、黒色腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞性癌、及び奇形癌を含む他の腫瘍。また、アポトーシスにおける異常によって引き起こされる癌も、本開示の方法及び組成物により処置されることが、企図される。そのような癌は、限定されないが、濾胞性リンパ腫、p53突然変異を持つ癌、乳房、前立腺、及び卵巣のホルモン依存性腫瘍、及び、家族性大腸腺腫症などの前癌正病変を含む。特異的な実施形態において、悪性病変又は悪性増殖(dysproliferative)変化(異形成及び形成異常症など)、或いは過剰増殖性障害)は、皮膚、肺、結腸、乳房、前立腺、膀胱、腎臓、膵臓、卵巣又は子宮中で処置又は予防される。他の特異的な実施形態において、肉腫、黒色腫、又は白血病が処置又は予防される。
【0088】
本明細書で使用されるように、幾つかの実施形態において、「処置」、「処置すること」、或いは「処置された」とは、望ましくない生理的な疾病、障害、又は疾患を遅らせる(減らす)こと、或いは、有益な又は望ましい臨床結果を得ることを目的とする治療的処置を指す。本明細書に記載される目的のために、有益な又は望ましい臨床結果としては、限定されないが、症状の緩和;疾病、障害、又は疾患の程度の減少;疾病、障害、又は疾患の状態の安定化(即ち、悪化しないこと);疾病、障害、又は疾患の発症を遅らせること、又はその進行を遅らせること;疾病、障害、又は疾患の状態の改善;及び、検出可能又は検出不可能にかかわらず、疾病、障害、又は疾患の緩解(部分的又は全体)、或いはその亢進又は改善が挙げられる。処置は、過剰なレベルの副作用のない臨床的に有意な反応を誘発することを含む。処置は更に、処置を受けない場合の予想される生存時間と比較して、生存時間を延ばすことを含む。他の実施形態において、「処置」、「処置すること」、又は「処置された」とは、予防的な処置を指し、その目的は、例えば、疾患の素因のある人(例えば、乳癌などの疾患に対する遺伝子マーカーをつけた個体)など、望ましくない生理的な疾病、障害、又は疾患の発症を遅らせるか、或いはその重症度を低下させることである。
【0089】
本明細書に記載される方法の幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるようなMSLN結合タンパク質は、特定の疾患、障害、又は疾病の処置のための薬剤と組み合わせて投与される。薬剤としては、限定されないが、抗体、小分子(例えば、化学療法剤)、ホルモン(ステロイド、ペプチドなど)、放射線療法(γ線、X線、及び/又は、放射性同位体、マイクロ波、UV放射などの指示された送達)、遺伝子治療(例えば、アンチセンス、レトロウイルス治療など)、及び他の免疫療法に関する治療が挙げられる。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるようなMSLN結合タンパク質は、下痢止め薬、制吐剤、鎮痛剤、オピオイド、及び/又は非ステロイド性抗炎症薬と組み合わせて投与される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるようなMSLN結合タンパク質は、抗癌剤と組み合わせて投与される。本開示の医薬組成物、投薬形態、及びキットを含む、本開示の様々な実施形態に使用され得る抗癌剤の非限定的な例は、以下を含む:アシビシン;アクラルビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アドゼレシン;アルデスロイキン;アルトレタミン;アムボマイシン;アメタントロンアセタート;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アザシチジン;アゼテーパ;アズトマイシン;バチマスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;ビサントレン塩酸塩;ジメシル酸ビスナフィド;ビセレシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナーナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベティマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼルシン;セデフィンガル;クロラムブシル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン塩酸塩;デシタビン;デクソロマプラチン;デザグアミン;メシル酸デザグアミン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;ドゥアゾマイシン;エダトレキセート;エフロルニチン塩酸塩;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロメイト;エピプロピジン;エピルビシン塩酸塩;エルブロゾール;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロオシタビン;フォスクィダン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;ゲムシタビン塩酸塩;ヒドロキシ尿素;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;イルモフォシン;インターロイキンII(組み換えインターロイキンII、又はrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-n1、インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;イリノテカン塩酸塩;ランレオチド酢酸塩;レトロゾール;ロイプロリド酢酸塩;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;マソプロコール;メイタンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲスロロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;マイトジリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オクシスラン;パクリタキセル;ペガスパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタマスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルフォスファミド;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロクサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニマスチン;塩酸プロカルバジン;プロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;リボプリン;ログレチミド;サフィンガル;サフィンゴル塩酸塩;セムスチン;シムトラゼーネ;スパルフォスエートナトリウム;スパルソマイシン;塩酸スピロゲルマニウム;スピロマスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェナール;タリソマイシン;テコガランナトリウム;テガフール;塩酸トレクサトロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;酢酸トレストロン;リン酸トリシビリン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンレウロジン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンゾキジン;硫酸ビンゾキジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシン。抗癌剤の他の例は、限定されないが以下を含む:20-epi-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アキルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アムバマスチン;アミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラフォライド;血管形成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス;抗背方化形態形成タンパク質-1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1);抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシナート;アポトーシス遺伝子モジュレータ;細胞死レギュレーター;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリマスチン;アクシナスタチン1;アクシナスタチン2;アクシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾチロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;ベータラクタム誘導体;ベータ-アレチン;ベタクラマイシンB;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビサジリジンイルスペルミン;ビスナフィド;ビストラテンA;ビセレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カナリポックスIL-2;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨由来の阻害剤;カルゼルシン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリックス;クロリン;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス‐ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェンアナログ;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチンアナログ;コナゲニン;クラムベシジン(crambescidin)816;クリスナトール;クリプトファイシン8;クリプトファイシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタンチラキノーズ;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスファート;細胞傷害性因子;シトスタチン;ダクリズマブ;デシタビン;デヒドロジデミンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキフォスダミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジデミンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキソール,9-;ジオクサマイシン;ジフェニルスピロマスチン;ドセタキセル;ドコサノール;ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;ズオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスティン;エデルフォシン;エドレコロマブ;エフロルニチン;エレメン;エミテフール;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチンアナログ;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレツッエラスチン;フラステロン(fluasterone);フルダラビン;塩酸フルオロダウノルニシン;フォルフェニメックス;ホルメスタン;フォストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテクサピリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリックス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ハプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロニック酸;イダルビシン;イドキシフェン;イドラマントン(idramantone);イルモフォシン;イルモスタット;イミダゾアクリドン(imidazoacridones);イミキモド;免疫賦活剤ペプチド;インスリン様成長因子I受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール、4-;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラライドF;ラメラリン-Nトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+プロゲステロン;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;線形ポリアミンアナログ;親油性二糖類ペプチド;親油性白金化合物;リッソクリナミド(lissoclinamide)7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメテレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;HMG-CoAリダクターゼ阻害剤(限定されないが、ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、スタチン、シンバスタチン、及びアトルバスタチンなど);ロクソリビン;ラルトテカン;ルテチウムテクサピリン;リソフィリン;細胞溶解ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリリシン阻害剤;マトリクスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メタレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン;ミトラクトール;マイトマイシンアナログ;ミトナファイド;マイトトキシン繊維芽細胞増殖因子-サポリン;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モノクローナル抗体、ヒト胎盤性性腺刺激ホルモン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリア細胞壁sk;モピダモール;多剤耐性遺伝子阻害剤;外発性腫瘍抑圧遺伝子1ベースの治療薬;マスタード抗癌剤;ミカペロキサイドB;ミコバクテリウム細胞壁抽出物;ミラポロン;N-アセチルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスティップ;ナロキソン+ペンタゾシン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ニーリドロニック酸;中性エンドペプチターゼ;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレータ;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン;O6-ベンジルグアミン;オクトレオチド;オキセノン;オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイニン誘発剤;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オグサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセルアナログ;パクリタキセル誘導体;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミド
ロニック酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリサルフェートナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルフォスファミド;ペリルアルコール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノゲンアクチベータインヒビター;白金複合体;白金化合物;白金トリアミン複合体;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム阻害剤;タンパク質Aベースの免疫モジュレータ;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、微細藻類;チロシンホスファターゼタンパク質阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化したヘモグロビン・ポリオキシエチレン抱合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセトロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;脱メチル化レティプチン;レニウムRe 186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ラビジノンB1;ラボキシル;サフィンゴル;セイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi 1模倣物;セムスチン;セネスセンス由来の阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シグナル伝達モジュレータ;一本鎖抗原結合タンパク質;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;フェニル酢酸ナトリウム;サルバロル;ソマトメジン結合タンパク質;ソナーミン;スパルフォシック酸;スピカマイシンD;スピロマスチン;スプレノペンチン;スポンジスタチン1;スクワラミン;幹細胞阻害剤;幹細胞分割阻害剤;スティピアミド;ストロメリシン阻害剤;サルフィノジン;超活性血管作用性小腸ペプチドアンタゴニスト;サラディスタ;スラミン;スウェインソニン;合成グリコサミノグリカン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロマスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;サリブラスチン;チオコラリン;トロンボポイエチン;トロンボポイエチン模倣物;チマルファジン;チモポイエチン受容体アゴニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプロプリン;チラパザミン;チタノセン二塩化物;トプセンチン;トレミフェン;全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシビリン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;テュロステリド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来の成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;ベクターシステム、赤血球遺伝子治療薬;ベラレゾール;ベラミン;アメリカツリスガラ;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンザルチン;Vitaxin(登録商標);ボロゾール;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;及びジノスタチンスチマラマー。追加の抗癌剤は5-フルオロウラシル及びロイコボリンである。サリドマイド及びトポイソメラーゼ阻害剤を利用する方法での使用時、これらの2つの薬剤は特に有用である。幾つかの実施形態において、本開示の抗MSLNの単一ドメイン結合タンパク質は、ゲムシタビンと組み合わせて使用される。
【0090】
幾つかの実施形態において、本明細書に記載されるようなMSLN結合タンパク質は、手術の前、間、又は後に投与される。
【0091】
メソテリン発現の検出及びメソテリン関連の癌の診断の方法
本開示の他の実施形態に従い、インビトロ又はインビボでメソテリンの発現を検出するためのキットが提供される。キットは、前述のMSLN結合タンパク質(例えば、標識された抗MSLN単一ドメイン抗体又はその抗原結合フラグメント)、及びラベルを検出するための1つ以上の化合物を含む。幾つかの実施形態において、ラベルは、蛍光ラベル、酵素ラベル、放射性ラベル、核磁気共鳴活性ラベル、発光ラベル、及び発色団ラベルから成る群から選択される。
【0092】
場合によっては、メソテリン発現は生体サンプルにおいて検出される。サンプルは、生検、剖検、及び病態の試料由来の組織を含むがこれらに限定されない任意のサンプルであり得る。生体サンプルはまた、組織の切片、例えば組織学目的のために得られた凍結切片を含む。生体サンプルは更に、血液、血清、血漿、痰、髄液、又は尿などの体液を含む。生体サンプルは、ヒト又は非ヒト霊長類などの哺乳動物から典型的に得られる。
【0093】
一実施形態において、被験体のサンプルを本明細書に開示されるような抗MSLN単一ドメイン抗体と接触させることにより、及びサンプルへの単一ドメイン抗体の結合を検出することにより被験体が癌を抱えるかどうか判定する方法が提供される。対照サンプルへの抗体の結合と比較した、サンプルへの抗体の結合の増加は、被験体が癌を抱えていると特定する。
【0094】
別の実施形態において、癌と診断された被験体のサンプルを本明細書に開示されるような抗MSLN単一ドメイン抗体と接触させることにより、及びサンプルへの抗体の結合を検出することにより、被験体の癌の診断を確認する方法が提供される。対照サンプルへの抗体の結合と比較した、サンプルへの抗体の結合の増加は、被験体の癌の診断を確認する。
【0095】
開示された方法の幾つかの例において、単一ドメイン抗体は直接標識される。
【0096】
幾つかの例において、前記方法は、単一ドメイン抗体に特異的に結合する二次抗体をサンプルに接触させる工程;及び二次抗体の結合を検出する工程を含む。対照サンプルへの二次抗体の結合と比較した、サンプルへの二次抗体の結合の増加は、被験体の癌を検出し、又は被験体の癌の診断を確認する。
【0097】
場合によっては、癌は、中皮腫、前立腺癌、肺癌、胃癌、有棘細胞癌、膵臓癌、肝内胆管癌、三種陰性乳癌又は卵巣癌、或いはメソテリンを発現する他のあらゆる種類の癌である。
【0098】
幾つかの例において、対照サンプルは、癌のない被験体のサンプルである。特定の例において、サンプルは血液又は組織のサンプルである。
【0099】
場合によっては、メソテリンに結合する(例えば特異的に結合する)抗体は、検出可能なラベルにより直接標識される。別の実施形態において、メソテリン(一次抗体)に結合する(例えば特異的に結合する)抗体は標識されず、メソテリンに特異的に結合する抗体に結合可能な二次抗体又は他の分子が標識される。二次抗体は、一次抗体の特異的な種及びクラスに特異的に結合できるように選択される。例えば、一次抗体がラマIgGである場合、二次抗体は抗ラマIgGであり得る。抗体に結合可能な他の分子は、限定されないが、共に市販で入手可能なプロテインA及びプロテインGを含む。抗体又は二次抗体に適したラベルは上述されており、様々な酵素、補欠分子族団、蛍光体、発光材料、磁性薬剤、及び放射性物質を含む。適切な酵素の非限定的な例は、ホースラディシュペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含む。適切な補欠分子団複合体の非限定的な例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含む。適切な蛍光体の非限定的な例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリンを含む。非限定的で典型的な発光材料はルミノールであり;非限定的で典型的な磁性薬剤はガドリニウムであり、非限定的で典型的な放射性ラベルは125I、131I、35S、又は3Hを含む。
【0100】
代替的な実施形態において、メソテリンは、検出可能な物質で標識したメソテリン基準、及びメソテリンに特異的に結合する非標識抗体を利用する競合イムノアッセイによって、生体サンプルにおいてアッセイされ得る。このアッセイにおいて、標識したメソテリン基準、及びメソテリンに特異的に結合する抗体が組み合わせられ、非標識抗体に結合される標識されたメソテリン基準の量が判定される。生体サンプル中のメソテリンの量は、メソテリンに特異的に結合する抗体に結合される標識されたメソテリン基準の量に反比例する。
【0101】
本明細書に開示されるイムノアッセイ及び方法は多数の目的のために使用可能である。一実施形態において、メソテリンに特異的に結合する抗体が、細胞培養における細胞中のメソテリンの産生を検出するために使用されてもよい。別の実施形態において、抗体は、組織サンプル、血液又は血清のサンプルなどの生体サンプル中のメソテリンの量を検出するために使用可能である。幾つかの例において、メソテリンは細胞表面メソテリンである。他の例において、メソテリンは、可溶性メソテリン(例えば、細胞培養上清におけるメソテリン、又は血液又は血清のサンプルなどの体液サンプルにおける可溶性メソテリン)である。
【0102】
一実施形態において、キットが、血液サンプル又は組織サンプルなどの生体サンプル中のメソテリンの検出のために提供される。例えば、被験体における癌診断を確認するために、生検を実行して組織学的検査のための組織サンプルを得ることができる。代替的に、血液サンプルを得て、可溶性メソテリンタンパク質又はフラグメントの存在を検出することができる。ポリペプチドを検出するためのキットは典型的に、メソテリンに特異的に結合する本開示に係る単一ドメイン抗体を含む。幾つかの実施形態において、scFvフラグメント、VHドメイン、又はFabなどの抗体フラグメントが、キットに含まれている。更なる実施形態において、抗体は標識される(例えば、蛍光ラベル、放射ラベル、又は酵素ラベルによる)。
【0103】
一実施形態において、キットは、メソテリンに結合する抗体の使用手段を開示する教材を含む。説明書が、電子的形態(コンピュータディスケット又はコンパクトディスクなど)に書き込まれてもよく、或いは視覚的なもの(ビデオファイルなど)であってもよい。キットはまた、キットの設計対象となる特定用途を容易にするための付加的な構成要素を含んでもよい。故に、例えばキットは、ラベルを検出する手段(酵素ラベルのための酵素基質、蛍光ラベル検出用のフィルタセット、二次抗体などの適切な第2のラベルなど)を付加的に含んでもよい。キットは付加的に、緩衝剤、及び特定の方法の実施に慣例的に使用される他の試薬を含んでもよい。そのようなキット及び適切な内容物は当業者に周知である。
【0104】
一実施形態において、診断キットはイムノアッセイを含む。イムノアッセイの詳細は利用される特定のフォーマットにより変動し得るが、生体サンプル中のメソテリンを検出する方法は通常、免疫学的反応条件下でメソテリンポリペプチドに特異的に反応する抗体に生体サンプルを接触させる工程を含む。抗体は、免疫複合体を形成するために免疫学的反応条件下で特異的に結合することを可能とされ、免疫複合体(結合抗体)の存在が直接又は間接的に検出される。
【0105】
細胞表面マーカーの有無を判定する方法が、当該技術分野で周知である。例えば、抗体は、酵素、磁気ビーズ、コロイド状磁気ビーズ、ハプテン、蛍光色素、金属化合物、放射性化合物又は薬物を含むがこれらに限定されない、他の化合物へと抱合され得る。抗体はまた、限定されないが放射免疫定量法(RIA)、ELISA、又は免疫組織化学アッセイなどのイムノアッセイにおいて利用可能である。抗体はまた、蛍光活性化細胞分類(FACS)に使用可能である。FACSは、細胞を分離又は選別するために、他のより洗練された検出レベルの中で、複数の色チャネル、低角度及び鈍角の光散乱検出チャネル、及びインピーダンスチャネルを利用する(米国特許5,061,620号を参照)。本明細書に開示されるようなメソテリンに結合する単一ドメイン抗体の何れかは、これらのアッセイに使用可能である。故に、抗体は、ELISA、RIA、FACS、組織免疫組織化学的検査、ウエスタンブロット、又は免疫沈降法を含むがこれらに限定されない、従来のイムノアッセイに使用可能である。
【実施例0106】
下記の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、記載された実施形態を更に例示する。
【0107】
実施例1:メソテリンを発現する癌細胞のT細胞死滅を媒介する、本開示の典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体の能力
典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体配列を、Expi293細胞(Invitrogen)へとトランスフェクトする。トランスフェクトされたExpi293細胞からの調整培地中の典型的な抗MSLN抗体の量を、プロテインAチップを備えたOctet器機を使用し、且つ標準曲線として対照抗MSLN抗体を使用して、定量する。
【0108】
調整培地の滴定をTDCCアッセイ(T細胞依存性細胞の細胞毒性試験)に加えて、抗MSLN単一ドメイン抗体が、T細胞と、メソテリンを発現する卵巣癌細胞株、即ちOVCAR8との間にシナプスを形成することができるかどうかを評価する。OVCAR8細胞の生存率を48時間後に測定する。典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体がT細胞死滅を媒介することを確認する。
【0109】
更に、典型的な抗体が、メソテリンを発現しないLNCaP細胞のT細胞死滅を媒介しないことから、典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体のTDCC活性はメソテリンを発現する細胞に特異的であることを、確認する。
【0110】
実施例2:本開示に係るMSLN結合ドメインを含む様々なMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の結合及び細胞毒性活性を評価する方法
【0111】
タンパク質産生
本開示に係るMSLN結合タンパク質を含むMSLN標的三重特異性分子の配列を、リーダー配列が先行し6xヒスチジンタグが後続する、哺乳動物発現ベクターpCDNA 3.4(Invitrogen)へとクローン化した。Expi293F細胞(Life Technologies A14527)を、Expi 293培地中の0.2~8×1e6細胞/mL間でOptimum Growth Flasks(Thomson)の懸濁液において維持した。精製されたプラスミドDNAを、Expi293 Expression System Kit(Life Technologies A14635)プロトコルに従ってExpi293細胞へとトランスフェクトし、トランスフェクション後4-6日間維持した。トランスフェクトされたExpi293細胞からの、調製培地中の試験されている典型的な三重特異性タンパク質の量を、プロテインAチップを備えたOctet器機を使用し、且つ標準曲線に対して対照の三重特異性タンパク質を使用して、定量した。
【0112】
細胞毒性アッセイ
【0113】
ヒトT細胞依存性細胞毒性(TDCC)アッセイを使用して、T細胞が腫瘍細胞を死滅させるよう導く、三重特異性分子を含むT細胞エンゲージャー(engagers)の能力を測定した(Nazarian et al. 2015. J Biomol Screen. 20:519-27)。このアッセイにおいて、T細胞及び標的癌細胞株の細胞を、384ウェルのプレートにおいて10:1の比率で一緒に混合し、試験される様々な量の三重特異性タンパク質を加える。腫瘍細胞株を操作して、ルシフェラーゼタンパク質を発現させる。48時間後、残る生存可能な腫瘍細胞を定量するために、Steady-GloR Luminescent Assay(Promega)を使用した。
【0114】
本研究において、調整培地の滴定をTDCCアッセイ(T細胞依存性細胞の細胞毒性試験)に加えて、抗MSLN単一ドメイン抗体が、T細胞と、メソテリンを発現する卵巣癌細胞株、即ちOVCAR8との間にシナプスを形成することができるかどうかを評価した。OVCAR8細胞の生存率を48時間後に測定した。三重特異性タンパク質がT細胞死滅を媒介したことを確認した。
図1は、三重特異性タンパク質2A2及び2A4の試験による細胞生存率アッセイの例を示す。他の様々な三重特異性タンパク質の試験のTDCC活性に対するEC
50を、以下表1に列挙する。
【0115】
【0116】
更に、試験されている三重特異性タンパク質が、メソテリンを発現しないLNCaP細胞のT細胞死滅を媒介しなかったことから、試験されているMSLN標的三重特異性タンパク質のTDCC活性はメソテリンを発現する細胞に特異的であったことを、観察した。特に三重特異性タンパク質2A2、11F3、9H2、5C2、10B3、2F4、5F2、7F1、2F4、5H1、3B4、及び7H2は、LnCaP細胞によるいかなるTDCC活性も示さなかった。
【0117】
実施例3:本開示の典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体のADCC活性
この研究は、本開示の典型的な抗体として配列修飾又は置換を持たない比較対象のラマ抗MSLN抗体と比較して、ADCCを媒介する本開示の典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体の能力を判定することを対象とする。両方の抗体は、追加の免疫グロブリンドメインを含む多重ドメインタンパク質として発現される。
【0118】
材料
ドナーを白血球泳動し(leukophoresed)、NK細胞を、Milteni AutoMacs Proの負選択システムを使用して細胞精製群によりleukopackから単離する。NK細胞をロッカー(rocker)上で4℃で一晩保持し、その後洗浄し、計数して、ADCCアッセイでの使用のために完全RPMIにおいて4×106細胞/mLで再懸濁する。
【0119】
標的:腫瘍細胞標的をメソテリン発現に基づいて選択する。標的を洗浄し、計数する。6×106の標的を完全RPMIに再懸濁し、37℃、5%のCO2で40分間、10μMのカルセイン(Sigma #C1359-00UL CALCEIN AM 4 MM IN ANHYDROUS DMSO)の最終濃度において標識する。細胞をPBSの中で2回洗浄し、完全RPMIにおいて再懸濁し、37℃、5%のCO2で2時間インキュベートした。標識後、標的細胞を洗浄し、再計数し、ADCCアッセイでの使用のために完全RPMIにおいて0.2×106細胞/mLで再懸濁する。
【0120】
方法
【0121】
96ウェルの丸底組織培養プレート(Corning 3799)においてADCCアッセイを実行する。試験タンパク質を、10%のFCS(1:10希釈)を含む1000μLの完全RPMIのうち10μLを運ぶことにより20μg/mL~0.0002μg/mLへと滴定する。カルセイン標識された標的50μLを加え、10,000の細胞を含ませる。標的細胞、及び、典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体又は比較対象の抗体の何れかを含む様々な濃度の多重ドメインタンパク質を、4℃で40分間インキュベートし、その後、NK細胞エフェクター50μLを加えた、100,000の細胞(10:1のE:T比率)を含ませる。培養物を37℃で4時間インキュベートし、その後、上清を引き抜き、 Wallac Victor II 1420 Multilable HTSカウンター上で485-535nmで蛍光を測定することによりカルセイン放出に対して分析した。100%の溶解値をIgepal 630洗剤(ウェルごとに3μL)で標識された標的の6つのウェルを溶解することにより判定し、自発的な溶解値を、標的単独からの上清中の蛍光を単独で測定することにより判定する。
【0122】
統計分析
【0123】
パーセント(%)特異的な溶解を、(サンプル蛍光)-(自発的な溶解蛍光)/(100%の溶解-自発的な溶解蛍光)として定めた。自発的な溶解を、標的のみを含むウェルによって判定し、100%の溶解を、標的がIGEPAL CA 630洗剤により溶解されるウェルによって判定する。生データを、式を埋め込んだExcel表計算に入力して、%特異性溶解を計算し、結果として得た値を、グラフィックプログラム(GraphPad Prism)に移し、その中でデータを曲線あてはめグラフにおいて変換する。その後の分析(直線回帰計算)をGraphPadにおいて行い、EC50値を生成する。
【0124】
結果及び議論
【0125】
比較対象の抗MSLN抗体を含む多重ドメインタンパク質でインキュベートされたウェルにおけるエフェクターNK細胞はカルセイン標識された標的細胞の死滅を媒介することができない一方、本開示の典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体を含む多重ドメインタンパク質を有するウェルにおけるエフェクターは、特異的な溶解作用(%特異的溶解)によって測定されるように、抗体依存性細胞の細胞毒性を媒介することができる。
【0126】
結論
【0127】
本開示の典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体は、配列置換、修飾、又はヒト化がない比較対象のラマ抗MSLN単一ドメイン抗体よりも、メソテリンを発現する標的細胞の、かなり高いレベルの死滅を媒介する。
【0128】
実施例4:本開示の典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体のCDC活性
癌細胞に対する、本開示に係る典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体の抗腫瘍活性を評価するために、補体のソースとしてヒト血清の存在下でのA431/H9及びNCI-H226細胞モデルの細胞毒性活性を試験する。典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体を、追加の免疫グロブリンドメインを含む多重ドメインタンパク質として発現する。本開示の典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体を含む多重ドメインタンパク質が、A431/H9の約40%、及びNCI-H226中皮腫細胞株の30%よりも多くを死滅させることにより強力なCDC活性を及ぼし、メソテリン陰性A431細胞株に対して活性を示さないことを、確認する。本開示の典型的な抗体として配列修飾又は置換を有していない、比較対象のラマ抗MSLN抗体は、同じ濃度で活性を示さない。
【0129】
典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体の抗腫瘍活性における補体の役割を分析するために、フローサイトメトリーを使用して、リツキシマブ、オファツムマブ、及び他の抗CD20治療用mAbsの特徴づけのための十分に確立されたプロトコルに従い、抗メソテリンヒトmAbsと反応した癌細胞へのC1q結合を判定する(Pawluczkowycz et al., J Immunol 183:749-758, 2009; Li et al., Cancer Res 68:2400-2408, 2008)。MORAb-009のように、(細胞表面から遠く離れた)細胞表面メソテリンの領域Iに特異的なHN1ヒトmAbは、メソテリンを発現する癌細胞に対していかなるCDC活性も示さなかったことが、以前に示されている(Ho et al., Int J Cancer 128:2020-2030, 2011)。
【0130】
しかし、典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体の存在下で、C1q補体はA431/H9又はNCI-H226細胞に結合することが確認されている。対照的に、C1q結合は、比較対象のラマ抗MSLN抗体の存在下では見出されなかった。更に、癌細胞へのC1qの結合は、投与量に反応する様式で典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体の細胞結合に関連付けられる。これらの結果は、典型的な抗MSLN単一ドメイン抗体が、比較対象のラマ抗MSLN抗体に比べて改善されたCDCの活性を実証することを、実証する。
【0131】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示され且つ記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者に明らかであろう。多数の変形、変更、及び置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されるかもしれないことを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びその同等物の範囲内の方法及び構造は、それにより包含されることが、意図されている。
【0132】
実施例5:本開示に係るMSLN結合ドメイン(MH6T)を含むMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質は、T細胞がMSLN発現卵巣癌細胞を死滅させるよう導く
ヒトT細胞依存性細胞毒性(TDCC)アッセイを使用して、T細胞が腫瘍細胞を死滅させるよう導く、三重特異性分子を含むT細胞エンゲージャー(engagers)の能力を測定した(Nazarian et al. 2015. J Biomol Screen. 20:519-27)。このアッセイに使用されるCaov3細胞を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。5つの異なる健康なドナー(ドナー02、ドナー86、ドナー41、ドナー81、及びドナー34)からのT細胞及び標的癌細胞Caov3を共に混合し、MSLN結合ドメイン(MH6T)を含む様々な量のMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質(SEQ ID NO:58)を加え、混合物を37℃で48時間インキュベートした。Caov3細胞及びT細胞も、GFPを標的とする対照三重特異性分子、GFP TriTAC(SEQ ID NO:59)により37℃で48時間インキュベートした。48時間後、残る生存可能な腫瘍細胞を、発光アッセイによって定量した。
【0133】
MSLN結合ドメイン(MH6T)を含むMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質が、(
図2に示されるように)5つ全ての健康なドナーのT細胞に標的癌細胞Caov3を死滅させるよう導くことができ、一方で対照GFP TriTAC分子が、(
図2に示されるように)5つの健康なドナーの何れかのT細胞にCaov3細胞を死滅させるよう導くことができなかったことが、観察された。
【0134】
上記のような同じプロトコルを使用する更なるアッセイを、OVCAR3細胞を使用して実行した。MSLN結合ドメイン(MH6T)を含むMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質が、(
図3に示されるように)5つ全ての健康なドナーのT細胞に標的癌細胞OVCAR3を死滅させるよう導くことができ、一方で対照GFP TriTAC分子が、(
図3に示されるように)5つの健康なドナーの何れかのT細胞にOVCAR3細胞を死滅させるよう導くことができなかったことが、観察された。
【0135】
標的細胞を発現するMSLNの死滅に対するEC50値を以下の表IIに列挙する。
【0136】
【0137】
実施例6:本開示に係るMSLN結合ドメイン(MH6T)を含むMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質は、T細胞がMSLNを発現する細胞を死滅させるよう導くが、MSLNを発現しない細胞は死滅されない
このアッセイにおいて、健康なドナーのT細胞を、MSLNを発現する標的癌細胞(Caov3細胞、Caov4細胞、OVCAR3細胞、及びOVCAR8細胞)、又はMSLNを発現しない標的癌細胞(NCI-H510A細胞、MDAPCa2b細胞)でインキュベートした。この研究に使用される標的細胞の各々を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。MH6T(SEQ ID NO:58)ドメインを含む様々な量のMSLN標的三重特異性抗原結合性のタンパク質を、上述のT細胞と標的癌細胞の混合物に加えた。混合物を37℃で48時間インキュベートした。48時間後、残る生存可能な標的癌細胞を、発光アッセイによって定量した。
【0138】
MH6Tドメインを含むMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質が、T細胞にMSLNを発現する標的癌細胞(即ち、
図4に示されるような、Caov3、Caov4、OVCAR3、及びOVCAR8細胞)を死滅させるよう導くことができたことを、観察した。しかし、MH6Tドメインを含むMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質は、T細胞に、
図4にも示されるMSLNを発現しない標的癌細胞(MDAPCa2b及びNCI-H510A細胞)を死滅させるよう導くことができなかった。
【0139】
MSLNを発現する癌細胞の死滅に対するEC50値を以下の表IIIに列挙する。
【0140】
【0141】
実施例7:本開示に係るMSLN結合タンパク質(MH6T)を含むMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質は、カニクイザル由来のT細胞にヒト卵巣癌細胞株を死滅させるよう導いた
このアッセイにおいて、カニクイザルドナーからの末梢血単核球(PBMC;T細胞はPBMCの構成要素である)を、MSLNを発現する細胞(CaOV3細胞及びOVCAR3細胞)と混合し、様々な量のMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質(MH6Tドメイン、SEQ ID NO:58を含む)を混合物に加え、37℃で48時間インキュベートした。並行して、カニクイザルPBMC及びMSLN発現細胞の混合物を、上述のように、37℃で48時間、GFPを標的とする様々な量の対照TriTAC分子GFP TriTAC(SEQ ID NO:59)でインキュベートした。このアッセイに使用される標的癌細胞を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。48時間後、残る生存可能な標的細胞を、発光アッセイによって定量した。
【0142】
(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質は、
図5に示されるようにカニクイザルPBMCにMSLN発現細胞(即ち、Caov3及びOVCAR)を効率よく死滅させるよう導くことができ、一方で対照GFP TriTAC分子は、(
図5に示されるように)カニクイザルPBMCに細胞を死滅させるよう導くことができなかったことを、観察した。(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質に対するEC
50値は、OVCAR3細胞では2.9pM、及びCaov3細胞では3.0pMであり、これらは、表IIに示されるように、ヒトT細胞で観察されたEC
50値とは大きく相違しなかった。
【0143】
実施例8:(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質は、ヒト血清アルブミンの存在下又は不在下でT細胞によってMSLN発現NCI-H2052中皮腫細胞の死滅を導いた
この試験の目標は、(MH6Tドメイン;SEQ ID NO:58を含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質が、T細胞にMSLN発現細胞を死滅させるよう導くタンパク質の能力に影響を与えたかどうかを評価することであった。この研究に使用されるNCI-H2052中皮腫細胞を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。健康なドナーのT細胞及びMSLN発現細胞(NCI-H2052)を組み合わせ、(MH6Tドメインを含む)様々な量のMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質を混合物に加えた。混合物をHSAの存在下又は不在下で、37℃で48時間インキュベートした。NCI-H2052細胞及びT細胞の混合物も、HSAの存在下で、GFPを標的とする対照三重特異性分子、GFP TriTAC(SEQ ID NO:59)により37℃で48時間インキュベートした。48時間後、残る生存可能な標的細胞を、発光アッセイによって定量した。
【0144】
(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質は、HSAの存在下又は不在下で(
図6に示されるように)T細胞にNCI-H2052細胞を死滅させるよう効率よく導くことができ、一方で対照GFP TriTAC分子は、(
図6に示されるように)細胞の死滅を導くことができなかったことを、観察した。HSAの存在下で、細胞死滅に関するEC
50値は、(表IVに示されるように)約3.2倍増加したことも観察した。
【0145】
更に、TDCCアッセイを、追加のMSLN発現細胞株を用いて、15mg/mlのHSAの存在下又は不在下で、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質により実行し、EC50値を表IVに提示する。
【0146】
【0147】
実施例9:4つの異なるドナーのT細胞は、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質及びMSLN発現Caov4細胞の存在下でTNF-αを分泌する
このアッセイに使用される標的癌細胞CaOv4を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。このアッセイにおいて、4つの異なる健康なドナー(ドナー02、ドナー86、ドナー35、及びドナー81)からのT細胞及びCaov4細胞を共に混合し、(MH6Tドメイン;SEQ ID NO:58を含む)様々な量のMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質を加え、混合物を37℃で48時間インキュベートした。Caov4細胞及びT細胞も、GFPを標的とする対照三重特異性分子、GFP TriTAC(SEQ ID NO:59)により37℃で48時間インキュベートした。発光アッセイを使用して標的癌細胞の生存率を測定する前に、TDCCアッセイからの調整培地を48時間で集めた。調整培地中のTNF-αの濃度を、AlphaLISAアッセイキット(Perkin Elmer)を使用して測定した。
【0148】
TNF-αは、
図7に示されるように、Caov4細胞及び(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の存在下で培地に分泌されたが、Caov4細胞及び対照GFP TriTAC分子の存在下では分泌されなかったことを、観察した。
【0149】
更に、効率的な死滅を、対照GFP TriTAC分子の存在下ではなく、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の存在下で、4つ全ての健康なドナーからのT細胞により観察した。TDCCアッセイも追加のMSLN発現細胞株(Caov3細胞、OVCAR3細胞、及びOVCAR8細胞)に対して設定し、同様のTNF-α発現を観察した。TNF-αの(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質で誘導された発現に関するEC50値を、表Vに提示する。しかし、アッセイを、MSLNを発現しない癌細胞(NCI-H510A細胞、又はMDAPCa2b細胞)を使用して実行したとき、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質により導かれたTNF-αの分泌は観察されなかった(図示せず)。故に、この研究は、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質がMSLN発現標的癌細胞の存在下でT細胞を活性化することができたことを実証した。
【0150】
【0151】
実施例10:(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質及びMSLN発現OVCAR8細胞の存在下での4つの異なるドナーからのT細胞上でのCD69発現の活性化
このアッセイに使用されるOVCAR8細胞を操作し、ルシフェラーゼを発現させた。このアッセイにおいて、4つの異なる健康なドナー(ドナー02、ドナー86、ドナー35、及びドナー81)からのT細胞及びOVCAR8細胞を共に混合し、(MH6Tドメイン;SEQ ID NO:58を含む)様々な量のMSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質を加え、混合物を37℃で48時間インキュベートした。OVCAR8細胞及びT細胞も、GFPを標的とする対照三重特異性分子、GFP TriTAC(SEQ ID NO:59)により37℃で48時間インキュベートした。48時間後、T細胞を集め、T細胞上でのCD69発現をフローサイトメトリーによって測定した。
【0152】
CD69発現を、
図8に示されるように、陰性対照GFP TriTAC及びOVCAR8細胞の存在下ではなく、OVCAR8細胞及び(MH6Tドメインを含む)MSLN三重特異性抗原結合タンパク質の存在下で、4つ全ての健康なドナーからのT細胞上で検出した。TDCCアッセイも追加のMSLN発現細胞(Caov3細胞、OVCAR3細胞、及びOVCAR8細胞)に対して設定し、同様のCD69発現を観察した。Caov3細胞及びOVCAR8細胞におけるCD69の(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質で誘導された活性化に関するEC
50値を、表VIに提示する。
【0153】
【0154】
アッセイを、MSLNを発現しない癌細胞(NCI-H510A細胞、又はMDAPCa2b細胞)を使用して実行したとき、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質により導かれたCD69の活性化は観察されなかった(図示せず)。故に、この研究は、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質がMSLN発現標的癌細胞の存在下でT細胞を活性化することができたことを実証した。
【0155】
実施例11:MSLNを発現する/発現しない細胞株に結合する(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の測定
この研究のために、MSLNを発現する特定の標的癌細胞(Caov3細胞、CaOV4細胞、OVCAR3細胞、及びOVCAR8細胞)及びMSLNを発現しない特定の癌細胞(MDAPCa2b細胞及びNCI-H510A細胞)を、MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質(MH6Tドメイン;SEQ ID NO:58を含む)又は対照GFP TriTAC分子(SEQ ID NO:59)でインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、未結合のMH6T又はGFP TriTAC分子を取り除き、Alexa Fluor 647に抱合されるTriTAC分子中の抗アルブミンドメインを認識できる二次抗体で更にインキュベートした。(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の結合、又はMSLN発現又は非MSLN発現細胞へのGFP TriTACの結合を、フローサイトメトリーによって測定した。
【0156】
図9Aに見られるように、MSLNを発現する細胞株(Caov3、Caov4、OVCAR3及びOVCAR8)への、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の強健な結合を、観察した(左上パネルは、Caov3細胞への、MH6Tドメインを含むMSLN標的三重特異性標的抗原結合タンパク質の結合を示し;右上のパネルは、Caov4細胞への、MH6Tドメインを含むMSLN標的三重特異性標的抗原結合タンパク質の結合を示し;左下のパネルは、OVCAR3細胞への、MH6Tドメインを含むMSLN標的三重特異性標的抗原結合タンパク質の結合を示し;右下のパネルは、OVCAR8細胞への、MH6Tドメインを含むMSLN標的三重特異性標的抗原結合タンパク質の結合を示す)。
図9Bに見られるように、結合は、MSLNを発現しない細胞株では観察されなかった(左のパネルは、MDAPCa2b細胞への、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の結合の欠如を示し、右のパネルは、NCI-H510A細胞への、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の結合の欠如を示す)。更に、結合は、
図9A及び9Bの両方に示されるように、細胞型の何れかがGFP TriTAC分子でインキュベートされたときに観察されなかった。
【0157】
実施例12:ドナーからのT細胞に結合する(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の測定
この研究のために、4つの健康なドナーからのT細胞を、陰性対照として、(MH6Tドメイン;SEQ ID NO:58を含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質又は緩衝液でインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗浄し、未結合の(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質を取り除き、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質中の抗アルブミンドメインを認識できる、Alexa Fluor 647を抱合した二次抗体で更にインキュベートした。結合をフローサイトメトリーによって測定した。
【0158】
図10に見られるように、強健な結合を、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質で処置した4つ全てのドナーのT細胞で観察した(左上のパネルは、ドナー2のT細胞への、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の結合を示し;右上のパネルは、ドナー35のT細胞への、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の結合を示し;左下のパネルは、ドナー41のT細胞への、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の結合を示し;右下のパネルは、ドナー81のT細胞への、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の結合を示す)。
【0159】
実施例13:(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質で処置したマウスにおける腫瘍成長の阻害
この研究のために、107のNCI-H292細胞及び107のヒトPBMCを、NCGマウスの2つの群(群ごとに8匹のマウス)において共に皮下移植した。5日後、1つの群のマウスに、(MH6Tドメイン;SEQ ID NO:58を含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質を、10日間毎日(5-14日目)、0.25mg/kgの投与量で注入し;他の群のマウスにはビヒクル対照を注入した。腫瘍堆積を数日毎に測定し、36日目に試験を終了した。
図11に示されるように、ビヒクル対照を注入されたマウスと比較して腫瘍成長の有意な阻害を、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質を注入されたマウスにおいて観察した。
【0160】
実施例12:カニクイザルにおける(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の薬物動態
この研究のために、2匹のカニクイザルに、10mg/kgの投与量の(MH6Tドメイン;SEQ ID NO:58を含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質を静脈内注入し、血清サンプルを注入後の様々な時点で集めた。血清中の(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の量を、電気化学発光(electrochemiluminescient)アッセイにおいて、(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質を認識する抗イディオタイプ抗体を使用して測定した。
図12は、様々な時点での血清の(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質レベルのプロットを示す。その後、データを使用して、表VIIに提供されるように(MH6Tドメインを含む)MSLN標的三重特異性抗原結合タンパク質の薬物動態特性を算出した。
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】