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特開2022-130427改変されたインターロイキン-7タンパク質およびその使用
<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130427
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】改変されたインターロイキン-7タンパク質およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/54 20060101AFI20220830BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220830BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20220830BHJP
   C07K 14/76 20060101ALI20220830BHJP
   C07K 14/59 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/64 20170101ALI20220830BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220830BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220830BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220830BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20220830BHJP
   C12N 15/14 20060101ALN20220830BHJP
   C12N 15/16 20060101ALN20220830BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
C07K14/54 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/76
C07K14/59
A61P35/00
A61P31/16
A61P31/20
A61P31/14
A61P7/00
A61P31/12
A61K38/20
A61K47/64
A61K47/68
A61K39/395 Y
C12N15/13
C12N15/24
C12N15/14
C12N15/16
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092731
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2020199444の分割
【原出願日】2016-06-10
(31)【優先権主張番号】10-2015-0082793
(32)【優先日】2015-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516351304
【氏名又は名称】ジェネクシン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】GENEXINE, INC.
【住所又は居所原語表記】4F,Bldg. B,700,Daewangpangyo-ro,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13488,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、セ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ドンホン
(72)【発明者】
【氏名】リム、へ・ソン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大規模に容易な製造プロセスで生産することができる改変されたIL-7タンパク質を提供する。
【解決手段】次の構造:A-IL-7を有する改変されたインターロイキン-7であって、式中、Aは、グリシン、メチオニン-メチオニン、グリシン-グリシン、メチオニン-グリシン、グリシン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-グリシン、メチオニン-グリシン-メチオニン、グリシン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-グリシン-グリシン、グリシン-メチオニン-グリシン、グリシン-グリシン-メチオニン、グリシン-グリシン-グリシン、及びメチオニン-メチオニン-メチオニン-メチオニンからなる群から選択されるオリゴペプチドであり、IL-7はインターロイキン-7またはそれと類似の活性を有するポリペプチドである、改変されたインターロイキン-7である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構造:
A-IL-7
を有する改変されたインターロイキン-7であって、
式中、Aは1~10個のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドであり、
IL-7はインターロイキン-7またはそれと類似の活性を有するポリペプチドである、改変されたインターロイキン-7。
【請求項2】
前記IL-7が配列番号1~6からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の改変されたインターロイキン-7。
【請求項3】
AがIL-7のN末端に結合している、請求項1に記載の改変されたインターロイキン-7。
【請求項4】
Aがメチオニン、グリシン、メチオニン-メチオニン、グリシン-グリシン、メチオニン-グリシン、グリシン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-グリシン、メチオニン-グリシン-メチオニン、グリシン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-グリシン-グリシン、グリシン-メチオニン-グリシン、グリシン-グリシン-メチオニン、およびグリシン-グリシン-グリシンからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項1に記載の改変されたインターロイキン-7。
【請求項5】
以下のドメイン(a)、(b)、および(c):
(a)インターロイキン-7またはそれと類似の活性を有するポリペプチドを含む第1のドメイン;
(b)メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するオリゴペプチドを含む第2のドメイン;および
(c)前記インターロイキン-7融合タンパク質の半減期を延ばす第3のドメイン
を含む、インターロイキン-7融合タンパク質。
【請求項6】
前記第3のドメインが前記第1のドメインまたは前記第2のドメインのN末端またはC末端に連結している、請求項5に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
【請求項7】
前記第3のドメインが、免疫グロブリンのFc領域またはその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、Pro/Ala/Ser(PAS)、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、ポリエチレングリコール(PEG)、長鎖非構造化親水性アミノ酸配列(XTEN)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合性小分子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、請求項5に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
【請求項8】
前記第3のドメインが改変された免疫グロブリンのFc領域を含む、請求項5に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
【請求項9】
前記改変された免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項8に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
【請求項10】
前記改変された免疫グロブリンの前記Fc領域が、N末端からC末端方向に、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
前記ヒンジ領域はヒトIgDヒンジ領域を含み、
前記CH2ドメインはヒトIgDおよびヒトIgG4のCH2ドメインのアミノ酸残基の一部を含み、
前記CH3ドメインはヒトIgG4CH3ドメインのアミノ酸残基の一部を含む、請求項8に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
【請求項11】
前記改変された免疫グロブリンの前記Fc領域が次式(I):
[式(I)]
N’-(Z1)p-Y-Z2-Z3-Z4-C’
(式中、
N’はポリペプチドのN末端であり、C’はポリペプチドのC末端であり;
pは0または1の整数であり;
Z1は配列番号7の90~98位のアミノ酸残基のうちの、98位のアミノ酸残基からN末端に向かって5~9個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Yは配列番号7の99~162位のアミノ酸残基のうちの、162位のアミノ酸残基からN末端に向かって5~64個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z2は配列番号7の163~199位のアミノ酸残基のうちの、163位のアミノ酸残基からC末端に向かって4~37個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z3は配列番号8の115~220位のアミノ酸残基のうちの、220位のアミノ酸残基からN末端に向かって71~106個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z4は配列番号8の221~327位のアミノ酸残基のうちの、221位のアミノ酸残基からC末端に向かって80~107個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列である)で表される、請求項8に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
【請求項12】
前記第3のドメインが配列番号9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項5に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の前記改変されたインターロイキン-7または前記インターロイキン-7融合タンパク質をコードする、単離された核酸分子。
【請求項14】
前記核酸分子が配列番号15~25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、請求項13に記載の核酸分子。
【請求項15】
前記核酸分子が配列番号29~39からなる群から選択される塩基配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項13に記載の核酸分子。
【請求項16】
請求項13~15のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項17】
請求項16に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項18】
(a)請求項16に記載の発現ベクターにより形質転換された細胞を培養する工程;および
(b)工程(a)で得られた培養物または細胞から改変されたインターロイキン-7またはインターロイキン-7融合タンパク質を収集する工程
を含む、タンパク質を調製する方法。
【請求項19】
メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメインを、インターロイキン-7の活性またはその類似の活性を有する第1のドメインのN末端に連結することを含む、改変されたインターロイキン-7を調製する方法。
【請求項20】
メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメインを、インターロイキン-7の活性またはその類似の活性を有する第1のドメインのN末端に連結する工程;および
前記第1のドメインのC末端を第3のドメインに連結する工程
を含み、
前記第3のドメインは免疫グロブリンのFc領域またはその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのサブユニットのCTP、PEG、XTEN、HES、アルブミン結合性小分子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、インターロイキン-7融合タンパク質を調製する方法。
【請求項21】
(a)メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメインのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、インターロイキン-7の活性またはその類似の活性を有する第1のドメインをコードするポリヌクレオチドのN末端に連結することにより、連結したポリヌクレオチドを調製する工程;および
(b)前記連結したポリヌクレオチドを発現させることにより、改変されたインターロイキン-7を収集する工程
を含む、改変されたインターロイキン-7を調製する方法。
【請求項22】
(a)メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメインのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、第3のドメインをコードするポリヌクレオチドを、インターロイキン-7の活性またはその類似の活性を有する第1のドメインをコードするポリヌクレオチドのN末端およびC末端にそれぞれ連結することによって連結したポリヌクレオチドを調製する工程;および
(b)前記連結したポリヌクレオチドを発現させることによってインターロイキン-7を収集する工程
を含む、インターロイキン-7融合タンパク質を製造する方法であって、
前記第3のドメインが、免疫グロブリンのFc領域またはその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのCTP、PEG、XTEN、HES、アルブミン結合性小分子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、方法。
【請求項23】
請求項1~12のいずれか一項に記載の改変されたインターロイキン-7またはインターロイキン-7融合タンパク質を含む、疾患を予防または治療するための医薬組成物。
【請求項24】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記疾患が癌、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、リンパ球減少症(lymphocytopenia)(リンパ球減少症(lymphopenia))およびウイルス感染からなる群から選択される、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項26】
請求項1~12のいずれか一項に記載の改変されたインターロイキン-7またはインターロイキン-7融合タンパク質および薬学的に許容される担体をそれを必要とする対象に投与することを含む、疾患を予防または治療する方法。
【請求項27】
前記疾患が頭頸部癌、子宮頸癌、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、およびウイルス感染からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変されたインターロイキン-7タンパク質およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン-7またはそれと類似の活性を有するポリペプチド(以下、「IL-7」とする)は、B細胞およびT細胞により媒介される免疫応答を促進することができる免疫賦活性サイトカインであり、特にIL-7は適応免疫系で重要な役割を果たしている。IL-7は大部分が骨髄および胸腺において間質細胞により分泌されるが、ケラチノサイト、樹状細胞、肝細胞、神経細胞、および上皮細胞によっても産生される(Heufler C et al., 1993, J. Exp. Med. 178 (3): 1109-14; Kroncke R et al., 1996, Eur. J. Immunol. 26 (10): 2541- 4: Sawa Y et al., 2009, Immunity 30 (3): 447-57; Watanabe M et al., 1995, J. Clin. Invest. 95 (6): 2945-53)。
【0003】
具体的には、IL-7はT細胞およびB細胞の生存および分化、リンパ系細胞の生存、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性の刺激、等を介して免疫機能を活性化し、特にIL-7はT細胞およびB細胞の発達に重要である。IL-7は肝細胞増殖因子(HGF)に結合し、プレ-プロ-B細胞増殖刺激因子およびT細胞受容体ベータ(TCRβ)のV(D)J再配列のための補因子として機能する(Muegge K, 1993, Science 261 (5117): 93-5)。
【0004】
さらに、IL-7はリンパ節組織誘導(LTi)細胞を介してリンパ節の発達を調節し、ナイーブT細胞またはメモリーT細胞の生存および分裂を促進する。最近報告されたウイルス感染に関する臨床結果によると、IL-7はナイーブT細胞またはメモリーT細胞を維持する(Amila Patel, J Antimicrob Chemother 2010)。さらに、IL-7はIL-2およびインターフェロン-γの分泌を増強することによってヒトにおいて免疫応答を高める。
【0005】
すなわち、IL-7はT細胞、B細胞、および他の免疫細胞の生存、および増殖を促進するサイトカインであり、様々な病気、たとえばウイルス感染、癌、および免疫系傷害に適用可能な免疫治療薬として優秀な候補材料である。最近、悪性腫瘍およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染に関するいくつかの臨床研究で、人体における免疫の増加に対するIL-7の効果が確認された(Fry TJ et al., 2002, Blood 99 (11): 3892-904; Muegge K et al., 1993, Science 261 (5117): 93-5; Rosenberg SA et al., J. Immunother. 29 (3): 313-9)。さらに、IL-7は、同種幹細胞の移植後の免疫回復(Snyder KM, 2006, Leuk. Lymphoma 47 (7): 1222-8)およびリンパ球減少症の治療にも使用される。
【0006】
癌は生命を脅かす疾患である。癌細胞は、免疫細胞により認識されることなく成長することができるように免疫系を阻害することができる環境を提供する。癌患者は主として抗癌治療(たとえば化学療法、放射線療法)のためにT細胞が低減する免疫低下を示すか、または癌診断時に低減した数を示した。さらに、細胞障害性のTリンパ球、エフェクターT細胞、およびマクロファージが癌組織内に蓄積するのに、癌細胞を効果的に排除することができない。さらに、免疫細胞は、免疫エフェクター細胞の機能を阻害する制御性T細胞(Treg)、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)、等が癌組織内に存在するので、癌細胞の増殖を効果的に阻害することができない。
【0007】
これらの状況の下で、免疫療法が最近脚光を浴びている。免疫療法は、現在癌治療に使用されている化学療法または放射線療法と組み合わせて使用することができる。特に、IL-7の利用は、T細胞の数が減少するリンパ球減少症を克服することにより免疫機能を増強するための代替案と考えられている。
【0008】
慢性感染は、ウイルスを認識するT細胞の枯渇を誘発することにより持続させられる。たとえば、ウイルス、たとえばHIV、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)およびサル免疫不全ウイルス(SIV)に感染させることにより、初期の免疫応答が強く誘発されるが、ウイルス特異的T細胞の機能は時間と共に徐々に低下する。特に、ウイルス特異的T細胞の機能はPD-1、LAG-3、TIM-3、IL-10受容体、TGF-β受容体、等によって低減する。
【0009】
しかし、IL-7は、ウイルス特異的T細胞の機能の損失を回復させるか、または免疫阻害シグナル系を克服することによりT細胞の機能の低下を阻害する(Pellegrini M, 2009 May; 15 (5): 528-36)。さらに、IL-7は、T細胞の増殖を誘発し、Bcl-2の発現を増大させることによりT細胞の増殖および生存を促進する。
【0010】
さらに、IL-7はサイトカインを産生し、サイトカインシグナル伝達を阻害するためのメディエーターであるSOCS3の発現を阻害することによりサイトカインの機能を保持するのに役立つ。さらに、IL-7はIL-22の産生に起因する免疫病理学を低減させる(Som G. Nanjappa, Blood. 2011; 117 (19): 5123-5132, Marc Pellegrini, Cell 144, 601-613, February 18, 2011)。
【0011】
しかし、医薬としての利用目的で組換えIL-7を生産する場合、一般的な組換えタンパク質と比較して、不純物、IL-7分解量の増加という問題があり、大規模な生産を容易に達成することができない。かつて、Cytheris Inc.は、特別なジスルフィド結合を有するコンフォーマーである合成IL-7を開発した(Cys:1-4;2-5;3-6)(米国特許第7,585,947号)。しかし、合成IL-7の生産には複雑な変性プロセスが必要となるので、製造するプロセスは容易ではない。したがって、大規模に容易な製造プロセスで生産することができる改変されたIL-7タンパク質を開発することには強いニーズがある。
【0012】
これに関して、容易な製造プロセスにより大規模に生産することができる改変されたIL-7が製造され、これによって本発明が完成された。
【発明の開示】
【0013】
技術課題
本発明の1つの目的は改変されたIL-7を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は改変されたIL-7を含む融合タンパク質を提供することである。
【0015】
本発明のさらなる目的は、改変されたIL-7またはそれを含む融合タンパク質をコードする核酸、核酸を含むベクターおよびベクターを含む宿主細胞、ならびに改変されたIL-7またはそれを含む融合タンパク質を調製方法を提供することである。
【0016】
本発明のなおさらなる目的は、改変されたIL-7またはそれを含む融合タンパク質を含む医薬組成物、およびそれらの使用を提供する。
【0017】
課題の解決
上記目的を達成するために、本発明は、1~10個のアミノ酸からなるオリゴペプチドが連結した改変されたIL-7を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、IL-7の活性またはその類似の活性を有するポリペプチドを含む第1のドメイン;メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメイン;およびインターロイキン-7融合タンパク質の半減期を延ばす第3のドメインを含む、IL-7融合タンパク質を提供する。
【0019】
さらに、本発明は、改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質をコードする核酸、核酸を含む発現ベクター、および発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、核酸、発現ベクター、および宿主細胞を用いて改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質を生産または調製する方法を提供する。
【0021】
さらに、本発明は、改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質を用いて疾患を予防または治療する方法を提供する。
【発明の有利な効果】
【0022】
本発明の改変されたIL-7は変性プロセスなしに高収率で生産される。したがって、本発明の改変されたIL-7またはそれを含む融合タンパク質は様々な医薬分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の改変されたIL-7またはそれを含む融合タンパク質を生産するための遺伝子構築物の模式図である。
図2図2は、調製されたIL-7融合タンパク質の一日当たりの1細胞単位生産性(pg/細胞/日、p/c/d)の評価の結果を示し、図2Aは培地中のIL-7-hyFcの量を示し、図2Bは培地中の培養MGM-IL-7-hyFcの量を示す。
図3図3は、様々な濃度の塩化ナトリウムに従ってIL-7-hyFcとそれを含むMGM-IL-7-hyFcとの間の安定性を比較した結果を示す。
図4図4は、様々な濃度の塩化ナトリウムに従ってIL-7-hyFcとMGM-IL-7-hyFcとの間のネイティブ-PAGEを比較した結果を示す。
図5図5は、調製されたIL-7融合タンパク質の相対的生産性(図5A)および純度(図5B)をそれぞれ比較した結果を示す。
図6図6は、調製されたIL-7融合タンパク質をSDラットモデルに皮下投与した後の時間に従って血清中薬物レベルを図示したグラフを示す。
図7図7は、調製されたIL-7融合タンパク質をSDラットモデルに皮下投与した後各々のタンパク質投与に従って抗薬物抗体(ADA)の産生レベルを図示した結果を示す。
図8図8は、調製されたIL-7融合タンパク質をSDラットモデルに皮下投与した後時間に従って白血球(WBC)の数を増加させる効果を図示したグラフを示す。
図9図9は、調製されたIL-7融合タンパク質と標準の材料との間の活性を比較した結果を示す。
図10図10は、致死性のインフルエンザ様疾患モデルにおける、調製されたIL-7融合タンパク質の投与に従って体重の変化(図10A)および生存率の変化(図10B)を図示したグラフを示す。
図11図11は、癌細胞移植疾患モデルにおける、調製されたIL-7融合タンパク質の投与に従って抗癌効果の形態学的観察の画像を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は次の構造:
A-IL-7;
を有する改変されたIL-7であって、
式中、Aは1~10個のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドであり、IL-7はインターロイキン7またはそれと類似の活性を有するポリペプチドである、改変されたIL-7を提供する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「IL-7の活性またはその類似の活性を有するポリペプチド」とは、IL-7と同じまたは類似の配列および活性を有するポリペプチドまたはタンパク質を意味する。本発明で他に規定されない限り、この用語は、IL-7融合タンパク質の第1のドメインと互換性がある概念として使用することができる。
【0026】
IL-7は配列番号1~6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含む。さらに、IL-7は、配列番号1~6の配列に対して約70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%またはそれ以上の配列同一性を有していてもよい。
【0027】
IL-7はIL-7タンパク質またはその断片を含んでいてもよい。特に、IL-7はヒト、ラット、マウス、サル、ウシ、またはヒツジに由来するものであってもよい。
【0028】
具体的には、ヒトIL-7は、配列番号1(Genbank受託番号P13232)で表されるアミノ酸配列を有していてもよく;ラットIL-7は配列番号2(Genbank受託番号P56478)で表されるアミノ酸配列を有していてもよく;マウスIL-7は配列番号3(Genbank受託番号P10168)で表されるアミノ酸配列を有していてもよく;サルIL-7は配列番号4(Genbank受託番号NP_001279008)で表されるアミノ酸配列を有していてもよく;ウシIL-7は配列番号5(Genbank受託番号P26895)で表されるアミノ酸配列を有していてもよく、ヒツジIL-7は配列番号6(Genbank受託番号Q28540)で表されるアミノ酸配列を有していてもよい。
【0029】
さらに、IL-7タンパク質またはその断片は様々に改変されたタンパク質またはペプチド、すなわち、変異体を含んでいてもよい。上記改変は、IL-7の機能を変更することなく少なくとも1つのタンパク質の野生型IL-7への置換、欠失、または付加の方法によって行ってもよい。これらの様々なタンパク質またはペプチドは野生型タンパク質に対して70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有していてもよい。
【0030】
慣習的に、野生型アミノ酸残基はアラニンで置換されるが、置換は全体のタンパク質電荷、すなわち、極性または疎水性に影響を及ぼさないかまたは弱い効果を与える保存アミノ酸置換で行われてもよい。
【0031】
保存アミノ酸置換の場合、下記表1を参照してもよい。
【0032】
【表1】
【0033】
各々のアミノ酸に対して、追加の保存置換はそのアミノ酸の「ホモログ」を含む。特に、「ホモログ」とは、アミノ酸の側鎖のベータ位の側鎖にメチレン基(CH)が挿入されたアミノ酸を意味する。「ホモログ」の例はホモフェニルアラニン、ホモアルギニン、ホモセリン、等を含んでいてもよいが、それらに限定されることはない。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「IL-7タンパク質」は、「IL-7タンパク質およびその断片」を含む概念として使用してもよい。他に規定されない限り、用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は互換性がある概念として使用してもよい。
【0035】
改変されたIL-7の構造において、AはIL-7のN末端に直接連結していても、またはリンカーを介して連結していてもよく、他に規定されない限り、この用語はIL-7融合タンパク質の第2のドメインと互換性があることができる概念として使用してもよい。
【0036】
本発明で、AはIL-7のN末端に連結していてもよい。Aは1~10個のアミノ酸を含むことで特徴付けられ、そのアミノ酸はメチオニン、グリシン、およびこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。
【0037】
メチオニンおよびグリシンはヒトの体内で免疫応答を誘発しない。大腸菌(E. coli)で産生されたタンパク質治療薬は常にN末端にメチオニンを含むが、不利な反応は報告されていない。また、グリシンもGSリンカーとして広く使用されており、Dulaglutideとして市販の製品で免疫応答を誘発しない(Cell Biophys. 1993 Jan-Jun; 22(103):189-224)。
【0038】
例示的な態様において、Aはメチオニン(Met、M)、グリシン(Gly、G)、およびこれらの組合せからなる群から選択される1~10個のアミノ酸を含むオリゴペプチド、好ましくは1~5個のアミノ酸からなるオリゴペプチドであってもよい。たとえば、Aはメチオニン、グリシン、メチオニン-メチオニン、グリシン-グリシン、メチオニン-グリシン、グリシン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-グリシン、メチオニン-グリシン-メチオニン、グリシン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-グリシン-グリシン、グリシン-メチオニン-グリシン、グリシン-グリシン-メチオニン、およびグリシン-グリシン-グリシンからなる群から選択されるいずれか1つのN末端配列を有していてもよい。具体的には、Aはメチオニン、グリシン、メチオニン-メチオニン、グリシン-グリシン、メチオニン-グリシン、グリシン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-グリシン、メチオニン-グリシン-メチオニン、グリシン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-グリシン-グリシン、グリシン-メチオニン-グリシン、グリシン-グリシン-メチオニン、およびグリシン-グリシン-グリシンからなる群から選択されるアミノ酸配列により表されていてもよい。
【0039】
本発明の別の側面は、IL-7の活性またはその類似の活性を有するポリペプチドを含む第1のドメイン;メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメイン;およびインターロイキン-7融合タンパク質の半減期を延ばす第3のドメインを含む、IL-7融合タンパク質を提供する。
【0040】
第3のドメインは第1のドメインまたは第2のドメインのN末端またはC末端に連結していてもよい。さらに、第1のドメインおよび第2のドメインを含むIL-7は第3のドメインの両末端に連結していてもよい。
【0041】
第3のドメインはインビボ半減期を増大するための融合パートナーであってもよく、好ましくは免疫グロブリンのFc領域またはその一部、アルブミン、アルブミン結合ポリペプチド、Pro/Ala/Ser(PAS)、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、ポリエチレングリコール(PEG)、長鎖非構造化親水性アミノ酸配列(long unstructured hydrophilic sequence)(XTEN)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合小分子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つを含んでいてもよい。
【0042】
第3のドメインが免疫グロブリンのFc領域であるときには、改変された免疫グロブリンのFc領域であってもよい。特に、改変された免疫グロブリンのFc領域は、Fc受容体および/または補体との結合親和性の変更に起因して抗体依存性の細胞障害性(ADCC)または補体依存性の細胞障害性(CDC)が弱められたものであってもよい。改変された免疫グロブリンはIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびこれらの組合せからなる群から選択されてもよい。具体的には、改変された免疫グロブリンのFc領域はN末端からC末端にかけてヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含んでいてもよい。特に、ヒンジ領域はヒトIgDヒンジ領域を含んでいてもよく;CH2ドメインはヒトIgDのアミノ酸残基の一部およびヒトIgG4 CH2ドメインのアミノ酸残基の一部を含んでいてもよく;CH3ドメインはヒトIgG4 CH3ドメインのアミノ酸残基の一部を含んでいてもよい。
【0043】
さらに、2つの融合タンパク質が二量体を形成していてもよく、たとえば、第3のドメインがFc領域である場合、Fc領域が互いに結合し、これにより二量体を形成してもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「Fc領域」、「Fc断片」、または「Fc」とは、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)および重鎖定常領域3(CH3)を含むが重鎖および軽鎖のその可変領域ならびに軽鎖定常領域(CL1)を含まないタンパク質をいい、さらに重鎖定常領域のヒンジ領域を含む。本発明において、ハイブリッドFcまたはそのハイブリッドFc断片は「hFc」または「hyFc」と呼んでもよい。
【0045】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「Fc領域変異体」とは、Fc領域内のアミノ酸の一部を置換するかまたは異なる種類のFc領域を組み合わせることによって調製されたものをいう。Fc領域変異体は、ヒンジ領域で切り取られることを防止することができる。具体的に、配列番号9の144番目のアミノ酸および/または145番目のアミノ酸が改変されてもよい。好ましくは、変異体は、144番目のアミノ酸KがGまたはSで置換されたもの、および145番目のアミノ酸EがGまたはSで置換されたものであってもよい。
【0046】
さらに、改変された免疫グロブリンのFc領域またはFc領域変異体は次式(I):
[式(I)]
N’-(Z1)p-Y-Z2-Z3-Z4-C’
で表されていてもよい。
【0047】
上記式(I)において、
N’はポリペプチドのN末端であり、C’はポリペプチドのC末端であり;
pは0または1の整数であり;
Z1は、配列番号7の90~98位のアミノ酸残基のうちの、98位のアミノ酸残基からN末端に向かって5~9個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Yは、配列番号7の99~162位のアミノ酸残基のうちの、162位のアミノ酸残基からN末端に向かって5~64個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z2は、配列番号7の163~199位のアミノ酸残基のうちの、163位のアミノ酸残基からC末端に向かって4~37個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z3は、配列番号8の115~220位のアミノ酸残基のうちの、220位のアミノ酸残基からN末端に向かって71~106個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;および
Z4は、配列番号8の221~327位のアミノ酸残基のうちの、221位のアミノ酸残基からC末端に向かって80~107個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列である。
【0048】
さらに、本発明のFc断片は天然の糖鎖、天然の形態と比較して増大した糖鎖、もしくは減少した糖鎖を有する形態であってもよいし、または脱グリコシル化された形態であってもよい。免疫グロブリンFc糖鎖は慣用の方法、たとえば化学的な方法、酵素的な方法、および微生物を用いる遺伝子組換え法によって改変されていてもよい。Fc断片から糖鎖を除去すると、第1補体成分C1のC1q部分に対する結合親和性が急激に低下し、ADCCまたはCDCの低下または損失が起こり、それによりインビボで不必要な免疫応答を誘発しない。これに関して、脱グリコシル化または非グリコシル化(aglycosylated)形態の免疫グロブリンFc領域は薬物担体として本発明の目的により適していてもよい。本明細書で使用される場合、用語「脱グリコシル化」とは、Fc断片から糖が酵素的に除去されているFc領域を意味する。さらに、用語「非グリコシル化(aglycosylation)」は、Fc断片が原核生物、好ましくは大腸菌(E. coli)によりグリコシル化されない形態で産生されることを意味する。
【0049】
さらに、改変された免疫グロブリンのFc領域は配列番号9(hyFc)、配列番号10(hyFcM1)、配列番号11(hyFcM2)、配列番号12(hyFcM3)、または配列番号13(hyFcM4)のアミノ酸配列を含んでいてもよい。さらに、改変された免疫グロブリンのFc領域は配列番号14(非溶解性マウスFc)のアミノ酸配列を含んでいてもよい。
【0050】
本発明によると、改変された免疫グロブリンのFc領域は米国特許第7,867,491号に記載されているものであってもよく、改変された免疫グロブリンのFc領域の生産は米国特許第7,867,491号の開示を参照して行ってもよい。
【0051】
第2のドメインは第1のドメインのN末端に直接連結してもよい、またはリンカーによって連結してもよい。具体的には、その結果は第2のドメイン-第1のドメインまたは第2のドメイン-リンカー-第1のドメインの形態であってもよい。
【0052】
第3のドメインは第1のドメインもしくは第2のドメインに直接連結してもよい、またはリンカーによって連結してもよい。具体的には、その結果は第2のドメイン-第1のドメイン-第3のドメイン、第3のドメイン-第2のドメイン-第1のドメイン、第2のドメイン-第1のドメイン-リンカー-第3のドメイン、第3のドメイン-リンカー-第2のドメイン-第1のドメイン、第2のドメイン-リンカー-第1のドメイン-リンカー-第3のドメイン、または第3のドメイン-リンカー-第2のドメイン-第1のドメインの形態であってもよい。
【0053】
リンカーがペプチドリンカーである場合、接続はいかなる連結領域で起こってもよい。これらは、当技術分野で公知の架橋剤を用いてカップリングしてもよい。架橋剤の例はN-ヒドロキシスクシンイミドエステル、たとえば1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、および4-アジドサリチル酸;たとえばジスクシンイミジルエステル、たとえば3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)を含むイミドエステル、ならびに二官能性マレイミド、たとえばビス-N-マレイミド-1,8-オクタンを含んでいてもよいが、それらに限定されることはない。
【0054】
さらに、リンカーはアルブミンリンカーまたはペプチドリンカーであってもよい。ペプチドリンカーはGlyおよびSer残基からなる10~20個のアミノ酸残基のペプチドであってもよい。
【0055】
リンカーが化学結合からなる群から選択されるもので形成される場合、化学結合はジスルフィド結合、ジアミン結合、スルフィド-アミン結合、カルボキシ-アミン結合、エステル結合、および共有結合であってもよい。
【0056】
例示的な態様において、本発明の改変されたIL-7は、IL-7の活性またはその類似の活性を有するポリペプチドおよび1~10個のアミノ酸からなるオリゴペプチドを含むA-IL-7の構造を有していてもよい。
【0057】
具体的な態様において、改変されたIL-7は配列番号15~20からなるアミノ酸配列を有していてもよい。さらに、改変されたIL-7は配列番号15~20からなるアミノ酸配列に対して70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有する配列を有していてもよい。
【0058】
別の例示的な態様において、本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質は、IL-7の活性またはその類似の活性を有するポリペプチドを含む第1のドメイン;メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメイン;および、第1のドメインのC末端にカップリングされた、改変された免疫グロブリンのFc領域である第3のドメインを含む。
【0059】
IL-7融合タンパク質は配列番号21~25からなるアミノ酸配列を有していてもよい。さらに、IL-7融合タンパク質は配列番号21~25からなるアミノ酸配列に対して70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の相同性を有する配列を有していてもよい。
【0060】
本発明の別の側面は、改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0061】
核酸分子は配列番号15~25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするものであってもよい。核酸分子は配列番号29~39からなる群から選択されるポリヌクレオチド配列を含んでいてもよい。
【0062】
核酸分子はシグナル配列またはリーダー配列をさらに含んでいてもよい。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「シグナル配列」は、生物学的に活性な分子薬物および融合タンパク質の分泌を指令する断片を意味し、宿主細胞中で翻訳された後に切り取られる。本発明のシグナル配列は小胞体(ER)膜を貫通するタンパク質の運動を開始させるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。本発明の有用なシグナル配列には、抗体軽鎖シグナル配列、たとえば、抗体14.18(Gillies et al., J. Immunol. Meth 1989. 125:191-202)、抗体重鎖シグナル配列、たとえば、MOPC141抗体重鎖シグナル配列(Sakano et al., Nature, 1980. 286: 676-683)、および当技術分野で公知の他のシグナル配列(たとえば、Watson et al., Nucleic Acid Research, 1984. 12:5145-5164参照)が含まれる。
【0064】
シグナルペプチドの特性は当技術分野で周知であり、慣習的にシグナルペプチドは16~30個のアミノ酸を有しているが、それより多いかまたは少ない数のアミノ酸残基を含んでいてもよい。慣用のシグナルペプチドは塩基性のN末端領域、中央の疎水性領域、およびより極性のC末端領域の3つの領域からなる。
【0065】
中央の疎水性領域は、未成熟のポリペプチドの移行中膜の脂質二重層を貫通してシグナル配列を固定する4~12個の疎水性残基を含む。開始後、シグナル配列は、ERの内腔内でシグナルペプチダーゼとして公知の細胞性酵素により切り取られることが多い。特に、シグナル配列は組織プラスミノーゲン活性化(tPa)の分泌性シグナル配列、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(HSV gD)のシグナル配列、または成長ホルモンであってもよい。好ましくは、哺乳動物、等を含む高等真核細胞で使用される分泌性シグナル配列を使用してもよい。さらに、分泌性のシグナル配列として、野生型のIL-7に含まれるシグナル配列を使用してもよいし、または宿主細胞中の発現頻度が高いコドンで置換した後に使用してもよい。
【0066】
本発明の別の側面は改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質をコードする単離された核酸分子を含む、発現ベクターを提供する。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」は、組み換えられる宿主細胞中に導入され、宿主細胞のゲノム内に挿入されるか、またはエピソームとして自発的に複製することができるヌクレオチド配列を含む核酸手段として理解される。ベクターは直鎖状の核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター、およびこれらのアナログを含んでいてもよい。ウイルスベクターの例はレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスを含んでいてもよいが、これらに限定されることはない。
【0068】
本明細書で使用される場合、標的タンパク質の「遺伝子発現」または「発現」という用語は、DNA配列の転写、mRNA転写体の翻訳、および融合タンパク質産物またはその断片の分泌を意味すると理解される。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」とは、組換え発現ベクターを導入することができる原核細胞および真核細胞を意味する。本明細書で使用される場合、用語「形質導入」、「形質転換」、および「トランスフェクト」とは、当技術分野で公知の技術を用いる細胞内への核酸(たとえば、ベクター)の導入を意味する。
【0070】
本明細書で使用される場合、標的タンパク質の「遺伝子発現」または「発現」という用語は、DNA配列の転写、mRNA転写体の翻訳、およびFc融合タンパク質産物または抗体もしくはその抗体断片の分泌を意味すると理解される。
【0071】
有用な発現ベクターはRcCMV(Invitrogen, Carlsbad)またはその変異体であってもよい。発現ベクターは、哺乳動物細胞における標的遺伝子の連続的な転写を促進するヒトサイトメガロウイルス(CMV)および転写後のRNAの安定状態を増大するウシ成長ホルモンのポリアデニル化信号配列を含んでいてもよい。本発明の代表的な態様において、発現ベクターは、RcCMVの改変された形態であるpAD15である。
【0072】
別の側面において、本発明は、発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。本発明のDNA配列の形質導入またはトランスフェクションによる標的タンパク質の発現および/または分泌に適当な宿主細胞を使用することができる。
【0073】
本発明で使用するのに適当な宿主細胞の例は不死化ハイブリドーマ細胞、NS/0骨髄腫細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ヒト羊水由来細胞(CapT細胞)またはCOS細胞を含んでいてもよい。
【0074】
さらに別の側面において、本発明は、発現ベクターにより形質転換された細胞を培養する工程;改変されたIL-7またはIL-7を含む融合タンパク質を、培養プロセスで得られた培養物または細胞から収集する工程を含む、タンパク質を生産する方法を提供する。
【0075】
改変されたIL-7またはIL-7を含む融合タンパク質は、培地または細胞抽出物から精製してもよい。たとえば、組換えタンパク質が分泌された培地の上清を得た後、上清を商業市場で入手可能なタンパク質濃縮フィルター、たとえば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外ろ過装置で濃縮してもよい。その後、濃縮物を当技術分野で公知の方法で精製してもよい。たとえば、精製はプロテインAにカップリングされたマトリックスを用いて行ってもよい。
【0076】
さらに別の側面において、本発明は、メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含むオリゴペプチドを、IL-7の活性またはその類似の活性を有するポリペプチドのN末端に連結することを含む、改変されたIL-7を調製する方法を提供する。
【0077】
上記調製方法は異種の配列からなるポリペプチドを連結する工程をさらに含んでいてもよく、この方法によりIL-7融合タンパク質を調製することができる。特に、異種の配列からなるポリペプチドは免疫グロブリンのFc領域またはその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのCTP、PEG、XTEN、HES、アルブミン結合性小分子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0078】
さらに別の側面において、本発明は、メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含むオリゴペプチドをコードするポリヌクレオチドを、IL-7の活性またはその類似の活性を有する第1のドメインのアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのN末端に連結することにより、連結したポリヌクレオチドを調製し;連結したポリヌクレオチドを発現させて改変されたIL-7タンパク質を収集することを含む、改変されたIL-7を調製する方法を提供する。
【0079】
上記調製方法は異種の配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを連結する工程をさらに含んでいてもよく、この方法によってIL-7融合タンパク質を調製することができる。特に、異種の配列からなるポリペプチドは免疫グロブリンのFc領域またはその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのCTP、PEG、XTEN、HES、アルブミン結合性小分子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つであってもよい。
【0080】
さらに別の側面において、本発明は、改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質を含有する、疾患を予防または治療するための医薬組成物を提供する。
【0081】
本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質は、ナイーブもしくは前から存在するT細胞または移植されたT細胞の拡大または生存を促進するか、またはインビトロで単離されたT細胞凝集体を増殖させるために投与してもよい。
【0082】
疾患は慢性肝炎、癌、または感染症であってもよい。癌は頭頸部癌または子宮頸癌であってもよく、慢性肝炎はB型肝炎またはC型肝炎であってもよい。さらに、感染症はウイルス感染であってもよく、ウイルスはインフルエンザウイルス、CMV、HSV-1、HSV-2、HIV、HCV、HBV、ウエストナイル熱ウイルス、およびデングウイルスからなる群から選択されてもよい。さらに、疾患はリンパ球減少症(lymphocytopenia)(リンパ球減少症(lymphopenia))またはリンパ球、殊にT細胞の少ない数によって引き起こされるあらゆる症状、疾患、および症候群であってもよい。
【0083】
本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質は、薬学的に許容される担体をさらに含んでいてもよい。薬学的に許容される担体は患者への送達に適したいかなる非毒性の材料であってもよい。担体は蒸留水、アルコール、脂肪、ワックス、または不活性な固体であってもよい。さらに、あらゆる薬学的に許容されるアジュバント(緩衝剤、分散剤)が含有されてもよい。
【0084】
さらに、本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質を含有する医薬組成物は、様々な方法で対象に投与されてもよい。たとえば、組成物は非経口的に、たとえば、皮下に、筋肉内に、または静脈内に投与されてもよい。組成物は慣用の滅菌方法で滅菌してもよい。組成物は生理学的な条件の調節に必要な薬学的に許容される補助材およびアジュバント、たとえばpH調節、毒性調節剤、およびこれらのアナログを含有していてもよい。具体的な例は、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、等を含んでいてもよい。製剤に含ませる融合タンパク質の濃度は広く変化させてもよい。たとえば、融合タンパク質の濃度は重量に応じて約0.5%未満、一般にまたは少なくとも約1%から多くとも約15%~20%であってもよい。濃度は選択された特定の投与法、液量、粘度、等に基づいて選択されてもよい。
【0085】
さらに別の側面において、本発明は、本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質を活性成分として含有する組成物を投与することによって疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0086】
この方法は、治療上有効な量の本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質を、それを必要とし、標的の疾患と直接関連するかまたは関連しない健康状態を有する対象に投与することを含む。対象は哺乳動物、好ましくはヒトであってもよい。
【0087】
本発明の組成物はいかなる経路で投与してもよい。本発明の組成物は直接投与(たとえば、注射を介した投与による局所、移植、または組織領域内への局所投与)または適当な手段を介するシステム(たとえば、非経口または経口)によって動物に供給してもよい。本発明の組成物が非経口的に静脈内、皮下、眼内、腹腔内、筋肉内、経口、直腸内、眼窩内、大脳内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、クモ膜下、大槽内、嚢内、鼻腔内、またはエアロゾル投与により投与される場合、組成物は好ましくは体液の水性または生理学的に適用可能な懸濁液またはその溶液の一部を含有する。このように、生理学的に許容される担体または輸送体を組成物に加え、患者に送達することができ、これは患者の電解質および/または体積バランスに負の影響を引き起こさない。したがって、生理学的に許容される担体または輸送体は生理食塩水であってもよい。
【0088】
さらに、本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質を含む核酸を含むDNA構築物(またはゲノム構築物)を遺伝子療法プロトコールの一部として使用してもよい。
【0089】
本発明において、所望のタンパク質の機能を再構成または補足するために、特定の細胞中で融合タンパク質を発現することができる発現ベクターをなんらかの生物学的に有効な担体と共に投与してもよい。これは、所望のタンパク質またはIL-7融合タンパク質をコードする遺伝子をインビボで細胞内に効率的に送達することができる任意の製剤または組成物であってもよい。
【0090】
改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質をコードする核酸を用いる遺伝子療法の目的で、対象の遺伝子をウイルスベクター、組換え細菌プラスミド、または組換え真核プラスミドに挿入してもよい。ウイルスベクターは組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、および単純ヘルペスウイルス-1、等を含んでいてもよい。ヒトに対する遺伝子療法のための、本発明の融合タンパク質をコードする核酸の投与量は0.1mg~200mgの範囲でよい。例示的な態様において、ヒトの場合、本発明の融合タンパク質をコードする核酸の好ましい用量は0.6mg~100mgの範囲でよい。別の例示的な態様において、本発明の融合タンパク質をコードする核酸のヒトに対する好ましい用量は1.2mg~50mgの範囲でよい。
【0091】
本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質の単位用量は0.001mg/kg~10mg/kgの範囲であってもよい。例示的な態様において、改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質の単位用量は0.01mg/kg~2mg/kgの範囲であってよい。別の代表的な態様において、ヒトの場合のタンパク質の単位用量は、0.02mg/kg~1mg/kgの範囲であってよい。単位用量は治療する対象の疾患および副作用の存在によって変化してもよい。改変されたIL-7タンパク質の投与は周期的なボーラス注射もしくは外部容器(たとえば、点滴バッグ)または体内(たとえば、生体侵食性移植片)からの連続的な静注、皮下、もしくは腹腔内投与によって行ってもよい。
【0092】
本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質は、予防または治療しようとする疾患に対して予防または治療効果を有する他の薬物または生理学的に活性な材料と組み合わせて投与してもよいし、あるいは他の薬物と組み合わせて複合調製物に製剤化してもよく、たとえば、免疫刺激剤、たとえば造血成長因子、サイトカイン、抗原、およびアジュバントと組み合わせて投与してもよい。造血成長因子は幹細胞因子(SCF)、G-CSF、GM-CSF、またはFlt-3リガンドであってもよい。サイトカインはγインターフェロン、IL-2、IL-15、IL-21、IL-12、RANTES、またはB7-1であってもよい。
【0093】
本発明の改変されたIL-7またはIL-7融合タンパク質を含有する組成物を用いて疾患を予防または治療する方法はまた、他の薬物または生理学的に活性な材料と組み合わせて投与することを含んでいてもよく、併用投与の経路、投与期間、および用量は疾患の種類、患者の健康状態、治療または予防の目的、および組み合わせて投与する他の薬物または生理学的に活性な材料に応じて決定してもよい。
【0094】
発明の形態
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。以下の実施例は本発明の範囲を限定することなく本発明をさらに例証するためのものである。
【0095】
実施例1 オリゴペプチドがIL-7にカップリングされた改変されたIL-7タンパク質の調製
オリゴペプチドがIL-7のN末端にカップリングされた改変されたIL-7を調製した。IL-7としては、ヒトIL-7の配列(配列番号1)を使用し、オリゴペプチドとして、メチオニン(M)、グリシン(G)、MM、GG、MG、GM、MMM、MMG、MGM、GMM、MGG、GMG、GGM、GGG、DDD、またはMMMM配列を使用した。
【0096】
図1Aに示されているように、「A」-IL-7の構造を有する様々な形態の改変されたIL-7を調製した。この例では、メチオニン(M)、グリシン(G)、MM、GG、MG、GM、MMM、MMG、MGM、GMM、MGG、GMG、GGM、GGG、DDD、またはMMMM配列を第2のドメイン(オリゴペプチド、「A」)として使用した。オリゴペプチドに融合される第1のドメインとしてのIL-7には、配列番号28の核酸配列を使用した。IL-7がオリゴペプチドに融合した形態の全核酸配列を得、その後これを発現ベクターに挿入した。負の対照として、オリゴペプチド改変をもたないIL-7タンパク質を同様の様式で調製した。
【0097】
A-IL-7遺伝子を含む発現ベクターをHEK293細胞にトランスフェクトした。300mLの懸濁培養物に基づき、208.3ugのDNAおよび416.6ug(μL)のポリエチレンイミン(PEI)(w/w)を用いてポリプレックスを調製し、次いでHEK293F細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの6日後、細胞培養物を得、ウェスタンブロットにかけることにより標的タンパク質の発現速度を評価した。次いで、培養物を8,000rpmで30分間遠心分離し、培養残渣を取り除き、細孔径0.22μmのボトルトップフィルターを用いてろ過した。その結果、M-IL-7、G-IL-7、MM-IL-7、GG-IL-7、MG-IL-7、GM-IL-7、MMM-IL-7、MMG-IL-7、MGM-IL-7、GMM-IL-7、MGG-IL-7、GMG-IL-7、GGM-IL-7、GGG-IL-7、DDD-IL-7、およびMMMM-IL-7の改変されたIL-7を含有する培養液を得た。
【0098】
実施例2 Fc領域がIL-7のC末端にカップリングされたIL-7融合タンパク質の調製
異種のアミノ酸配列からなるポリペプチドが改変されたIL-7のC末端にさらにカップリングされたIL-7融合タンパク質、すなわち、第2のドメイン-第1のドメイン-第3のドメインを調製した。第1のドメインとしては、ヒトIL-7の配列(配列番号1)を使用し、第2のドメインとして、M、G、MM、GG、MG、GM、MMM、MMG、MGM、GMM、MGG、GMG、GGM、GGG、DDD、またはMMMM配列を使用した。第3のドメインとしては、Fc領域の配列(配列番号9または14)を使用した。
【0099】
図1Bに示されているように、第2のドメイン、第1のドメインおよび第3のドメインからなる様々な形態のIL-7融合タンパク質を調製した。この例では、第2のドメインとして、メチオニン(M)、グリシン(G)、MM、GG、MG、GM、MMM、MMG、MGM、GMM、MGG、GMG、GGM、GGG、DDD、またはMMMM配列を使用し;第1のドメインとして、ヒトIL-7を使用し;第3のドメインとして、ハイブリッドFc(hFc、hyFc)またはマウス非溶解性Fcを使用した。
【0100】
特に、ハイブリッドFcとしては、米国特許第7,867,491号に開示されているhFc(ハイブリッドFc)を使用した。hFcは、生理学的に活性なタンパク質にカップリングされることにより、現存する改変された免疫グロブリンのFc領域と比較して優秀なインビボ半減期を示すことができる。
【0101】
実施例1と同様の様式で遺伝子発現ベクターを調製し、トランスフェクトし、細胞を培養して、様々な形態のIL-7融合タンパク質を含有する培養液を調製した。その結果、G-IL-7-hyFc、M-IL-7-hyFc、MM-IL-7-hyFc、GG-IL-7-hyFc、MG-IL-7-hyFc、GM-IL-7-hyFc、MMM-IL-7-hyFc、MMG-IL-7-hyFc、MGM-IL-7-hyFc、GMM-IL-7-hyFc、MGG-IL-7-hyFc、GMG-IL-7-hyFc、GGM-IL-7-hyFc、GGG-IL-7-hyFc、DDD-IL-7-hyFc、またはMMMM-IL-7-hyFcタンパク質を含有する培養液が得られた。さらに、対照群として、第1のドメインおよび第3のドメインからなるIL-7-hyFcタンパク質を含有する培養液を作成した。
【0102】
実施例3 改変されたIL-7および改変されたIL-7融合タンパク質の生成および精製
上記実施例で生成した改変されたIL-7タンパク質および改変されたIL-7融合タンパク質の生成量を比較した。各々の融合タンパク質について、培養液中のタンパク質の量および細胞中に存在するタンパク質の量を測定した。
【0103】
細胞外に分泌されたタンパク質の濃度は細胞培養液を得ることによって測定し、細胞中のタンパク質の量は細胞溶解によって得、濃度はELISA法によって測定した。一次抗体としては、ヒトIL-7特異的抗体(Southern Biotech, カタログ番号10122-01)を使用し、二次抗体として、ビオチン(BD, カタログ番号554494)およびストレプトアビジン-HRP(BD, カタログ番号554066)を使用した。
【0104】
N末端へのオリゴペプチドのカップリングの存在による生産性の変化の結果を下記表2に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
結果として、表2に示されているように、MGM-IL-7の生成量は、オリゴペプチドがカップリングされてないIL-7、またはメチオニンおよびグリシン以外のアミノ酸がカップリングされたDDD-IL-7と比較して増大した。
【0107】
さらに、改変されたIL-7のC末端にhyFcがさらに融合すると、生成したタンパク質は高い濃度で存在することが示され、相対総生産は約2.8倍の増大を示した。
【0108】
実施例4 調製された改変されたIL-7およびIL-7融合タンパク質の生産性の評価
実施例2で調製した遺伝子構築物のうち、IL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFcタンパク質の遺伝子の各々をpAD15ベクターに挿入した。次いで、pAD15ベクターを付着または懸濁培養中のCHO DG44細胞(Columbia University, USA)にエレクトロポレーション法によってトランスフェクトした。付着培養の場合、エレクトロポレーションの5時間後培地を10%dFBS(Gibco, USA, 30067-334)、MEMα(Gibco, 12561, USA, カタログ番号12561-049)、HT(5-ヒドロキシトリプタミン、Gibco, USA, 11067-030)を含有する培地と交換した。トランスフェクションの48時間後、培地をHTを含まない10%dFBSを含有するMEMα培地と交換し、HT選抜を行った。HT選抜が完了したクローンを生産性の増幅のためにMTX増幅にかけ、細胞の安定化のために細胞を2または3回継代培養した。
【0109】
改変されたIL-7(A-IL-7)およびIL-7融合タンパク質(A-IL-7-hyFc)の単位生産性(pg/細胞/日、pcd、p/c/d)をHT選抜およびMTX増幅の間に評価した。継代培養中、培養上清を回収し、細胞の数を測定し、ヒトIgG ELISAキット(Bethyl, USA)を用いて上清から各々のタンパク質の量を測定した。単位生産性を下記式1に従って計算し、産生細胞株を評価した(pg/細胞/日、pcd):
[式1]
【0110】
【数1】
【0111】
単位生産性の評価により選択したクローンを用いて限界希釈クローニング(LDC)を行い、結果として、増大した生産性を有する単細胞クローンを選択した。選択した単細胞クローンを、懸濁細胞株として無血清培地を用いて培養した。単一の継代培養を3日とし、35回継代培養することによって長期安定性(LTS)試験を評価し、その結果を図2に示す。
【0112】
図2Aに示されているように、オリゴペプチドがN末端にカップリングされてないIL-7融合タンパク質は、MTX濃度を増大しても、その生産性の増大を示さなかった。これに関して、生産性のさらなる改良のためにMTX治療を4倍まで行ったが、有効ではなかった。しかし、図2Bに示されているように、オリゴペプチドがN末端にカップリングされたIL-7融合タンパク質(MGM-IL-7-hyFc)は、MTX濃度依存的に有意な生産性の増大を示した。LDL実施の後、タンパク質の生産性は約28pg/細胞/日および約16ug/mLであることが示された。
【0113】
以上のことから、オリゴペプチドをIL-7タンパク質にカップリングすると、調製された組換えIL-7の生産性の改良に対して優れた効果を示すことが可能であることが確認された。
【0114】
実施例5 調製された改変されたIL-7およびIL-7融合タンパク質の安定性の確認
上記実施例で得られたIL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFcタンパク質の培養液サンプルを精製し、精製したタンパク質をサイズ排除(SE)HPLCにかけ、塩化ナトリウムの濃度によるタンパク質安定性を確認した。
【0115】
まず、IL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFcタンパク質を緩衝液中に1mg/mLの濃度に希釈した。希釈したタンパク質を1mLのシリンジおよび0.2umフィルターを用いてろ過し、バイアルに入れた。バイアルをインサートに挿入し、バイアルキャップで閉鎖した。タンパク質をそれぞれ20μLの量でSE-HPLCシステムに注入した。SE-HPLCを下記条件下で実施し、その得られたピークの値から純度を確認した。
【0116】
<SE-HPLC実行条件>
カラム:TSK-GEL G3000SW x Lカラム(7.8mm×300mm)(Tosoh, Japan)
カラム温度:25℃
移動相:50mMリン酸ナトリウムおよび100mM、200mM、または300mM塩化ナトリウムの混合緩衝液(pH6.8)
流量:0.6mL/分
分析時間:40分
分析方法:アイソクラチック法
【0117】
その結果、図3に示されているように、MGM-IL-7-hyFcタンパク質は、IL-7-hyFcタンパク質と比較して、塩化ナトリウムの濃度が変化しても安定なパターンを示した。
【0118】
実施例6 調製された改変されたIL-7およびIL-7融合タンパク質のネイティブ-PAGEの確認
改変されたIL-7融合タンパク質と実施例5で確認された塩化ナトリウムの濃度によるIL-7融合タンパク質との間の安定性の差を以下のように再確認した。
【0119】
具体的には、上記実施例と同じ条件下で調製されたIL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFcを用いて下記表3に記載される条件に従ってネイティブ-PAGEを実行した。G-CSF-hyFcを対照群として使用した。
【0120】
【表3】
【0121】
結果として、図4に示されているように、MGM-IL-7-hyFcタンパク質では、IL-7-hyFcタンパク質と比較して凝集体が生じなかったが、これはSE-HPLCの結果と一致している。
【0122】
実施例7 調製された改変されたIL-7およびIL-7融合タンパク質の培養物サンプルの分析
IL-7-hyFcまたはMGM-IL-7-hyFcタンパク質を産生することができる細胞株のうち最も高い生産性を有する細胞株を、実施例5および6の結果に従って選択した。次いで、継代培養した培養液を得、実施例5と同じ方法により同じ条件下でSE-HPLCを実行した。
【0123】
結果として、図5Aに示されているように、MGM-IL-7-hyFcの相対的生産性は2,091%であり、これは100%に設定された産生されたIL-7-hyFcタンパク質の量と比較して約21倍の増大であった。さらに、標的タンパク質の量を各々の宿主細胞により産生される総タンパク質に対して比較した場合、IL-7-hyFcの純度は約11.3%であったが、MGM-IL-7-hyFcタンパク質の純度は約66.4%であり、したがって約6倍の増大を示した(図5B)。
【0124】
結果から、オリゴペプチドをIL-7タンパク質にカップリングすると、調製された組換えIL-7融合タンパク質の純度および生産性の改良に対して優れた効果を示すことができるということが確認された。
【0125】
実施例8 調製された改変されたIL-7およびIL-7融合タンパク質の薬物動態学的プロファイル
薬物動態学的プロファイル(PK)を、調製されたIL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFc組換えタンパク質の半減期および曲線下の面積(AUC)を比較することによって確認した。
【0126】
まず、雄性のSprague Dawley(SD)ラット(5ラット/群)に、各々の組換えタンパク質をそれぞれ0.2mg/kgの量で皮下に投与した。投与の前ならびに投与の4、8、12、24、48、72、96、120、144、および168時間後に血液サンプルを集め、室温で30分保存して血液サンプルを凝集させた。凝集した血液サンプルを3,000rpmで10分間遠心分離し、各々のサンプルの血液血清を得、ディープフリーザーに保存した。
【0127】
開裂が起こっていない完全な形態の組換えタンパク質を特異的に検出するように設計された試験方法によってサンプルを分析した。具体的には、調製された組換えタンパク質を含有する生物サンプルをヒトIL-7にカップリングされたマウス起源の捕捉抗体(R&D, カタログ番号MAB207)でコーティングされたプレートに装填した後、マウス起源のヒト免疫グロブリンG4(IgG4)にカップリングされるHRPをコンジュゲートした二次抗体(Southern Biotech, カタログ番号9190-05)を用いて標的タンパク質を検出する方法である。標準曲線の線形位置で分析される10%スキムミルクを含有する1×PBSでの10倍希釈によってサンプルを定量化した。結果は、各時点で血液中に残存するタンパク質量および曲線下の薬物濃度面積として図6に示す。
【0128】
結果として、IL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFc組換えタンパク質は同様なAUC値(約1.2倍)を示した。このように、第2のドメインであるオリゴペプチドの融合は、第1のドメインの薬物動態学に変化を生じないことが確認された。したがって、MGM-IL-7-hyFc組換えタンパク質およびIL-7-hyFc組換えタンパク質はインビボで同様な薬物動態学的プロファイルを示すことができた。
【0129】
実施例9 調製された改変されたIL-7およびIL-7融合タンパク質の免疫原性
上で調製されたIL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFc組換えタンパク質の投与による抗薬物抗体(ADA)を生産する能力を比較することにより、各々のIL-7融合タンパク質の抗原性を検討した。
【0130】
まず、実施例8に記載したのと同様の様式で得られた血液サンプルを、IL-7-hyFcまたはMGM-IL-7-hyFc組換えタンパク質で0.2ug/ウェルの量でコーティングされたプレートに装填した。次に、HRPがコンジュゲートされたラット免疫グロブリン抗体(Southern Biotech, カタログ番号1031-05)を用いてラットのADAを検出するように設計された試験方法を使用してサンプルを分析した。
【0131】
特に、ADAの反応が正常なラット血清(負のカットオフ;NCO)の反応と同じになるまでサンプルを希釈することによってサンプルを分析し、希釈倍率によるサンプルの反応を光学密度で測定した。結果を図7に示す。
【0132】
結果として、図7に示されているように、IL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFcが負のカットオフ(NCO)に到達するのに必要とされる希釈倍率は同様であった。この結果から、第2のドメインであるオリゴペプチドの融合は抗原性を増大させないことが確認された。
【0133】
実施例10 調製された改変されたIL-7およびIL-7融合タンパク質の薬力学的プロファイル
上で調製されたMGM-IL-7-hyFcおよびIL-7-hyFc組換えタンパク質の投与による白血球(WBC)の数を比較し、各々のタンパク質に対する薬力学的プロファイルを確認した。
【0134】
まず、雄性SDラット(5匹のラット/群)に、各々のタンパク質を0.2mg/kgの量で皮下に投与した。次に、投与の前ならびに投与後第1、第2、および第3週にラットから血液サンプルを集めた。血液サンプルの凝集を防ぐために、サンプルをEDTA処理したチューブに入れ、5分間混合し、安定化し、WBCの数を全血球数(CBC)分析により分析した。
【0135】
結果として、図8に示されているように、IL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFc組換えタンパク質は同様な様式で投与後第2週目でWBCの数を最高レベルに増加した。すなわち、第2のドメインであるオリゴペプチドの融合による薬力学的変化はない。したがって、IL-7-hyFcおよびMGM-IL-7-hyFc組換えタンパク質は同様な薬力学的プロファイルを示すことができるということが確認された。
【0136】
実施例11 調製された改変されたIL-7およびIL-7融合タンパク質のインビトロ活性の比較
ネズミの未成熟Bリンパ球である2E8細胞(ATCC, TIB-239)を用いて生物活性の分析を実行した。
【0137】
まず、細胞を96-ウェルプレートに蒔き(1×10細胞/50μL/ウェル)、MGM-IL-7-hyFcを750pM~2.93pMの濃度に段階的に希釈し、ウェル上で処理した。細胞をインキュベーター(37℃、5%CO)で70時間培養し、20μL/ウェル濃度のMTSで処理し、再びインキュベーター(37℃、5%CO)で4時間培養した。次いで、490nmで吸光度を測定した。特に、WHO国際標準のヒトIL-7(NIBSCコード:90/530、100,000単位)を対照群として使用した。MGM-IL-7-hyFc処理の濃度に従う較正曲線を作成し(4-パラメーターフィット)、分析の結果を図9に示す。
【0138】
結果として、図9に示されているように、国際標準100,000単位に基づいて、MGM-IL-7-hyFcのlogEC50に基づく活性は126,000単位であり、PLAに基づく活性は371,000単位であることが示された。これは、IL-7の分子の数を考慮すると、MGM-IL-7-hyFcの活性は国際標準のヒトIL-7のものと同様またはそれ以上であることを示している。
【0139】
実施例12 致死性用量のインフルエンザに感染したモデルにおける調製された改変されたIL-7融合タンパク質の予防および治療効果
致死性用量のインフルエンザをもつマウスモデルは、麻酔した後、鼻腔を介して3LD50のH5N2ウイルス(A/水鳥/韓国/W81/2005)を投与することによって調製した。一般に、ウイルスに感染したマウスは2~3日目から体重が減り始め、1週目以降から死に始める。このように調製した疾患モデルに、実施例2および4で調製されたIL-7組換えタンパク質を鼻腔から投与し、IL-7-mFc(マウスFc)(配列番号27)を対照群として使用した。
【0140】
特に、G-CSFは初期段階のインフルエンザ感染を阻害し、好中球を増殖させることにより免疫応答を促進することができる。そこで、G-CSF-hyFcを別の実験群として使用した。
【0141】
各実験群に付き6匹のマウスを使用し、致死性用量のインフルエンザに感染させる14日前にIL-7-mFc(IL-7-マウスFc)、MGM-IL-7-hyFc、またはG-CSF-hyFcを鼻腔を介して投与した。その後、3LD50のH5N2ウイルスを投与し、体重および生存率を20日間観察した。
【0142】
結果は、図10に示されているように、全ての群で体重が低下し始めた(図10A)。しかし、その体重低減のギャップはIL-7-mFcで処置した群およびMGM-IL-7-hyFcで処置した群で次第に減少し、次第に体重を回復し、その生存率は対照群のものと違って高かった。IL-7-mFcで処置した群は100%生存し、MGM-IL-7-hyFcで処置した群は83%の生存率を示した(図10B)。
【0143】
MGM-IL-7-hyFcの効果がIL-7-mFcのものより少し低く観察される理由は、種間の差に起因するようである。すなわち、マウスのインビボ系において、ヒトに由来するFcはマウスに由来するFcのものより低い機能を有する。
【0144】
一方、PBSまたはG-CSF-hyFcで処置した群は非常に低い効果を示し、したがって、致死性用量のインフルエンザに感染したマウスの生存率は10日で0%だった。
【0145】
結論として、MGM-IL-7-hyFc組換えタンパク質はインフルエンザモデルで強い効果を示したが、G-CSF-hyFcはそうでなく、MGM-IL-7がインフルエンザに極めて効果的であることを示している。
【0146】
実施例13 TC-1癌疾患を有するモデルにおける調製された改変されたIL-7融合タンパク質の治療効果
子宮内膜癌の疾患モデルを調製するために、マウスの腹腔内に3mgのデポプロペラを投与して生理の期間を調節した。4日で、マウスの膣内にノノキシノール-9(N9, USP, カタログ番号1467950)を投与して膣組織を刺激し、PBSで洗浄することにより残存するN9を除去した。次いで、癌細胞の子宮内への移植のために、1×10のTC-1細胞(Dr. Jae-Tae LEE, School of Medicine, Kyungpook National University)を投与し、その1日後、1ugのMGM-IL-7-hyFcを子宮頸部内に投与した。
【0147】
結果的に、融合タンパク質の投与の28日後、TC-1腫瘍細胞を子宮頸部または膣内部に植え付け、増殖させた。すなわち、図11に示されているように、細胞が増殖し、膣口の外に露出した。PBSを投与した対照群の場合、10匹のマウスのうち6匹でTC-1細胞の増殖が観察され、そのうちの1匹は癌細胞の過剰増殖のために死んだ。
【0148】
対照的に、MGM-IL-7融合タンパク質を投与した実験群では、10匹のマウスのうち2匹のみでTC-1細胞の増殖の症状を有することが観察され、死んだマウスはいなかった。したがって、改変されたIL-7融合タンパク質は癌の予防および治療に効果的であることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2022130427000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構造:
A-IL-7
を有する改変されたインターロイキン-7であって、
式中、Aは、グリシン、メチオニン-メチオニン、グリシン-グリシン、メチオニン-グリシン、グリシン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-グリシン、メチオニン-グリシン-メチオニン、グリシン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-グリシン-グリシン、グリシン-メチオニン-グリシン、グリシン-グリシン-メチオニン、グリシン-グリシン-グリシン、及びメチオニン-メチオニン-メチオニン-メチオニンからなる群から選択されるオリゴペプチドであり、
IL-7はインターロイキン-7である、改変されたインターロイキン-7。
【請求項2】
前記IL-7が、配列番号1~6からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するか、配列番号1~6からなる群から選択されるアミノ酸配列に対して85%以上のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1に記載の改変されたインターロイキン-7。
【請求項3】
AがIL-7のN末端に結合している、請求項1に記載の改変されたインターロイキン-7。
【請求項4】
請求項1に記載の改変されたインターロイキン-7を含む医薬組成物。
【請求項5】
次の構造:
N’-第2のドメイン-第1のドメイン-第3のドメイン-C’
を有する融合タンパク質であって、
式中、N’及びC’は、それぞれ、融合タンパク質のN末端及びC末端であり、
前記第1のドメインは、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するインターロイキン-7、
配列番号1で表されるアミノ酸配列に対して85%以上のアミノ酸配列同一性を有するインターロイキン-7ポリペプチド、又は配列番号1で表されるアミノ酸配列に対して85%以上のアミノ酸配列同一性を有するインターロイキン-7断片を含み;
前記第2のドメインは、グリシン、又はメチオニン及びグリシンからなる群から選択される2~10個のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドであり;
前記第3のドメインが、免疫グロブリンのFc領域又はその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、Pro/Ala/Ser(PAS)、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、融合タンパク質。
【請求項6】
前記免疫グロブリンのFc領域が、改変された免疫グロブリンのFc領域である、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記改変された免疫グロブリンが、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgE及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記改変された免疫グロブリンのFc領域が、N末端からC末端方向に、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、
前記ヒンジ領域はヒトIgDヒンジ領域を含み、
前記CH2ドメインはヒトIgD及びヒトIgG4のCH2ドメインのアミノ酸残基の一部を含み、
前記CH3ドメインはヒトIgG4 CH3ドメインのアミノ酸残基の一部を含む、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記改変された免疫グロブリンのFc領域が次式(I):
N’-(Z1)p-Y-Z2-Z3-Z4-C’ [式(I)]
(式中、
N’はポリペプチドのN末端であり、C’はポリペプチドのC末端であり;
pは0又は1の整数であり;
Z1は配列番号7の90~98位のアミノ酸残基のうちの、98位のアミノ酸残基からN末端に向かって5~9個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Yは配列番号7の99~162位のアミノ酸残基のうちの、162位のアミノ酸残基からN末端に向かって5~64個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z2は配列番号7の163~199位のアミノ酸残基のうちの、163位のアミノ酸残基からC末端に向かって4~37個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z3は配列番号8の115~220位のアミノ酸残基のうちの、220位のアミノ酸残基からN末端に向かって71~106個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z4は配列番号8の221~327位のアミノ酸残基のうちの、221位のアミノ酸残基からC末端に向かって80~107個の連続したアミノ酸残基を有するアミノ酸配列である)で表される、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記第3のドメインが配列番号9、10、11、12、13及び14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記第1のドメインが配列番号1、2、3、4、5及び6からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
配列番号22、23、24及び25からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むタンパク質。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0148
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0148】
対照的に、MGM-IL-7融合タンパク質を投与した実験群では、10匹のマウスのうち2匹のみでTC-1細胞の増殖の症状を有することが観察され、死んだマウスはいなかった。したがって、改変されたIL-7融合タンパク質は癌の予防および治療に効果的であることが確認された。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 次の構造:
A-IL-7
を有する改変されたインターロイキン-7であって、
式中、Aは1~10個のアミノ酸残基からなるオリゴペプチドであり、
IL-7はインターロイキン-7またはそれと類似の活性を有するポリペプチドである、改変されたインターロイキン-7。
[2] 前記IL-7が配列番号1~6からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、[1]に記載の改変されたインターロイキン-7。
[3] AがIL-7のN末端に結合している、[1]に記載の改変されたインターロイキン-7。
[4] Aがメチオニン、グリシン、メチオニン-メチオニン、グリシン-グリシン、メチオニン-グリシン、グリシン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-メチオニン-グリシン、メチオニン-グリシン-メチオニン、グリシン-メチオニン-メチオニン、メチオニン-グリシン-グリシン、グリシン-メチオニン-グリシン、グリシン-グリシン-メチオニン、およびグリシン-グリシン-グリシンからなる群から選択されるいずれか1つである、[1]に記載の改変されたインターロイキン-7。
[5] 以下のドメイン(a)、(b)、および(c):
(a)インターロイキン-7またはそれと類似の活性を有するポリペプチドを含む第1のドメイン;
(b)メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するオリゴペプチドを含む第2のドメイン;および
(c)前記インターロイキン-7融合タンパク質の半減期を延ばす第3のドメインを含む、インターロイキン-7融合タンパク質。
[6] 前記第3のドメインが前記第1のドメインまたは前記第2のドメインのN末端またはC末端に連結している、[5]に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
[7] 前記第3のドメインが、免疫グロブリンのFc領域またはその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、Pro/Ala/Ser(PAS)、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、ポリエチレングリコール(PEG)、長鎖非構造化親水性アミノ酸配列(XTEN)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、アルブミン結合性小分子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、[5]に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
[8] 前記第3のドメインが改変された免疫グロブリンのFc領域を含む、[5]に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
[9] 前記改変された免疫グロブリンがIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgEおよびこれらの組合せからなる群から選択される、[8]に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
[10] 前記改変された免疫グロブリンの前記Fc領域が、N末端からC末端方向に、ヒンジ領域、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含み、
前記ヒンジ領域はヒトIgDヒンジ領域を含み、
前記CH2ドメインはヒトIgDおよびヒトIgG4のCH2ドメインのアミノ酸残基の一部を含み、
前記CH3ドメインはヒトIgG4CH3ドメインのアミノ酸残基の一部を含む、[8]に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
[11] 前記改変された免疫グロブリンの前記Fc領域が次式(I):
[式(I)]
N’-(Z1)p-Y-Z2-Z3-Z4-C’
(式中、
N’はポリペプチドのN末端であり、C’はポリペプチドのC末端であり;
pは0または1の整数であり;
Z1は配列番号7の90~98位のアミノ酸残基のうちの、98位のアミノ酸残基からN末端に向かって5~9個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり; Yは配列番号7の99~162位のアミノ酸残基のうちの、162位のアミノ酸残基からN末端に向かって5~64個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z2は配列番号7の163~199位のアミノ酸残基のうちの、163位のアミノ酸残基からC末端に向かって4~37個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z3は配列番号8の115~220位のアミノ酸残基のうちの、220位のアミノ酸残基からN末端に向かって71~106個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列であり;
Z4は配列番号8の221~327位のアミノ酸残基のうちの、221位のアミノ酸残基からC末端に向かって80~107個の連続した前記アミノ酸残基を有するアミノ酸配列である)で表される、[8]に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
[12] 前記第3のドメインが配列番号9~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、[5]に記載のインターロイキン-7融合タンパク質。
[13] [1]~[12]のいずれか一に記載の前記改変されたインターロイキン-7または前記インターロイキン-7融合タンパク質をコードする、単離された核酸分子。
[14] 前記核酸分子が配列番号15~25からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする、[13]に記載の核酸分子。
[15] 前記核酸分子が配列番号29~39からなる群から選択される塩基配列を有するポリヌクレオチドを含む、[13]に記載の核酸分子。
[16] [13]~[15]のいずれか一に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
[17] [16]に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
[18] (a)[16]に記載の発現ベクターにより形質転換された細胞を培養する工程;および
(b)工程(a)で得られた培養物または細胞から改変されたインターロイキン-7またはインターロイキン-7融合タンパク質を収集する工程
を含む、タンパク質を調製する方法。
[19] メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメインを、インターロイキン-7の活性またはその類似の活性を有する第1のドメインのN末端に連結することを含む、改変されたインターロイキン-7を調製する方法。
[20] メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメインを、インターロイキン-7の活性またはその類似の活性を有する第1のドメインのN末端に連結する工程;および
前記第1のドメインのC末端を第3のドメインに連結する工程
を含み、
前記第3のドメインは免疫グロブリンのFc領域またはその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのサブユニットのCTP、PEG、XTEN、HES、アルブミン結合性小分子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、インターロイキン-7融合タンパク質を調製する方法。
[21] (a)メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメインのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、インターロイキン-7の活性またはその類似の活性を有する第1のドメインをコードするポリヌクレオチドのN末端に連結することにより、連結したポリヌクレオチドを調製する工程;および
(b)前記連結したポリヌクレオチドを発現させることにより、改変されたインターロイキン-7を収集する工程
を含む、改変されたインターロイキン-7を調製する方法。
[22] (a)メチオニン、グリシン、またはこれらの組合せからなる1~10個のアミノ酸残基を有するアミノ酸配列を含む第2のドメインのアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、第3のドメインをコードするポリヌクレオチドを、インターロイキン-7の活性またはその類似の活性を有する第1のドメインをコードするポリヌクレオチドのN末端およびC末端にそれぞれ連結することによって連結したポリヌクレオチドを調製する工程;および
(b)前記連結したポリヌクレオチドを発現させることによってインターロイキン-7を収集する工程
を含む、インターロイキン-7融合タンパク質を製造する方法であって、
前記第3のドメインが、免疫グロブリンのFc領域またはその一部、アルブミン、アルブミン結合性ポリペプチド、PAS、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのCTP、PEG、XTEN、HES、アルブミン結合性小分子、およびこれらの組合せからなる群から選択されるいずれか1つである、方法。
[23] [1]~[12]のいずれか一に記載の改変されたインターロイキン-7またはインターロイキン-7融合タンパク質を含む、疾患を予防または治療するための医薬組成物。
[24] 薬学的に許容される担体をさらに含む、[23]に記載の医薬組成物。
[25] 前記疾患が癌、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、リンパ球減少症(lymphocytopenia)(リンパ球減少症(lymphopenia))およびウイルス感染からなる群から選択される、[23]に記載の医薬組成物。
[26] [1]~[12]のいずれか一に記載の改変されたインターロイキン-7またはインターロイキン-7融合タンパク質および薬学的に許容される担体をそれを必要とする対象に投与することを含む、疾患を予防または治療する方法。
[27] 前記疾患が頭頸部癌、子宮頸癌、インフルエンザ、B型肝炎、C型肝炎、およびウイルス感染からなる群から選択される、[26]に記載の方法。
【外国語明細書】