(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130463
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】化合物、樹脂、組成物、並びにレジストパターン形成方法及び回路パターン形成方法
(51)【国際特許分類】
C07C 39/21 20060101AFI20220830BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20220830BHJP
G03F 7/26 20060101ALI20220830BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220830BHJP
C08G 8/00 20060101ALI20220830BHJP
C08F 24/00 20060101ALI20220830BHJP
C08F 12/00 20060101ALI20220830BHJP
C07D 311/82 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C07C39/21 CSP
G03F7/11 503
G03F7/26 511
G03F7/20 501
G03F7/20 521
C08G8/00 Z
C08F24/00
C08F12/00
C07D311/82
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094792
(22)【出願日】2022-06-13
(62)【分割の表示】P 2018539752の分割
【原出願日】2017-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2016178433
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】越後 雅敏
(57)【要約】 (修正有)
【課題】湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性、溶解性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト及びフォトレジスト用下層膜を形成するために有用な、化合物、樹脂、及び組成物を提供する。
【解決手段】下式で表される、化合物。
(式中、R
Yは、H;R
Zは、C1~60のN価の基又は単結合;R
Tは、独立して、置換/非置換のC1~30のアルキル基、置換/非置換のC6~30のアリール基等;ここで、R
Tの少なくとも1つは水酸基であり、またR
Tの少なくとも1つはC2~30のアルケニル基;Xは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(0)で表される、化合物。
【化1】
(0)
(式(0)中、R
Yは、水素原子であり、
R
Zは、炭素数1~60のN価の基又は単結合であり、
R
Tは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロ
ゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記アル
キル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケ
トン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
Tの少なくとも1つは水酸基
であり、またR
Tの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり、
Xは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、
mは、各々独立して0~9の整数であり、ここで、mの少なくとも1つは2~9の整数
又はmの少なくとも2つは1~9の整数であり、
Nは、1~4の整数であり、ここで、Nが2以上の整数の場合、N個の[ ]内の構造
式は同一であっても異なっていてもよく、
rは、各々独立して0~2の整数である。)
【請求項2】
前記式(0)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物である、請求項1に
記載の化合物。
【化2】
(1)
(式(1)中、R
0は、前記R
Yと同義であり、
R
1は、炭素数1~60のn価の基又は単結合であり、
R
2~R
5は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素
数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、
ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記
アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合
、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
2~R
5の少なくとも1つ
は少なくとも1つは水酸基であり、またR
2~R
5の少なくとも1つは炭素数2~30のア
ルケニル基であり、
m
2及びm
3は、各々独立して、0~8の整数であり、
m
4及びm
5は、各々独立して、0~9の整数であり、但し、m
2、m
3、m
4及びm
5は同
時に0になることはなく、m
2、m
3、m
4及びm
5の少なくとも1つは2~8若しくは2~
9の整数又はm
2、m
3、m
4及びm
5の少なくとも2つは1~8若しくは1~9の整数であ
り、
nは前記Nと同義であり、ここで、nが2以上の整数の場合、n個の[ ]内の構造式
は同一であっても異なっていてもよく、
p
2~p
5は、各々独立して、前記rと同義である。)
【請求項3】
前記式(0)で表される化合物が、下記式(2)で表される化合物である、請求項1に
記載の化合物。
【化3】
(2)
(式(2)中、R
0Aは、前記R
Yと同義であり、
R
1Aは、炭素数1~30のn
A価の基又は単結合であり、
R
2Aは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロ
ゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記アル
キル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケ
トン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
2Aの少なくとも1つは少なく
とも1つは水酸基であり、またR
2Aの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基で
あり、
n
Aは、前記Nと同義であり、ここで、n
Aが2以上の整数の場合、n
A個の[ ]内の
構造式は同一であっても異なっていてもよく、
X
Aは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、
m
2Aは、各々独立して、0~7の整数であり、但し、少なくとも1つのm
2Aは2~7の
整数又は少なくとも2つのm
2Aは1~7の整数であり、
q
Aは、各々独立して、0又は1である。)
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-1)で表される化合物である、請求項
2に記載の化合物。
【化4】
(1-1)
(式(1-1)中、R
0、R
1、R
4、R
5、n、p
2~p
5、m
4及びm
5は、前記と同義であ
り、
R
6~R
7は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素
数2~30のアルケニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基又はチオ
ール基であり、ここで、R
6~R
7の少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であ
り、
R
10~R
11は、各々独立して、水素原子であり、
m
6及びm
7は、各々独立して、0~7の整数であり、但し、m
4、m
5、m
6及びm
7は同
時に0になることはない。)
【請求項5】
前記式(1-1)で表される化合物が、下記式(1-2)で表される化合物である、請
求項4に記載の化合物。
【化5】
(1-2)
(式(1-2)中、R
0、R
1、R
6、R
7、R
10、R
11、n、p
2~p
5、m
6及びm
7は、前
記と同義であり、
R
8~R
9は、前記R
6~R
7と同義であり、
R
12~R
13は、前記R
10~R
11と同義であり、
m
8及びm
9は、各々独立して、0~8の整数であり、但し、m
6、m
7、m
8及びm
9は同
時に0になることはない。)
【請求項6】
前記式(2)で表される化合物が、下記式(2-1)で表される化合物である、請求項
3に記載の化合物。
【化6】
(2-1)
(式(2-1)中、R
0A、R
1A、n
A、q
A及びX
A、は、前記と同義であり、
R
3Aは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基又はチオール
基であり、ここで、R
3Aの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり、
R
4Aは、各々独立して、水素原子であり、
m
6Aは、各々独立して、0~5の整数である。)
【請求項7】
請求項1に記載の化合物をモノマーとして得られる、樹脂。
【請求項8】
下記式(3)で表される構造を有する、請求項7に記載の樹脂。
【化7】
(3)
(式(3)中、Lは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の直鎖状、分岐状若しく
は環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリーレン基、置換
基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシレン基又は単結合であり、前記アルキ
レン基、前記アリーレン基及び前記アルコキシレン基は、エーテル結合、ケトン結合又は
エステル結合を含んでいてもよく、
R
0は、前記R
Yと同義であり、
R
1は、炭素数1~60のn価の基又は単結合であり、
R
2~R
5は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素
数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、
ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記
アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合
、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
2~R
5の少なくとも1つ
は水酸基であり、またR
2~R
5の少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり
、
m
2及びm
3は、各々独立して、0~8の整数であり、
m
4及びm
5は、各々独立して、0~9の整数であり、但し、m
2、m
3、m
4及びm
5は同
時に0になることはなく、m
2、m
3、m
4及びm
5の少なくとも1つは2~8若しくは2~
9の整数又はm
2、m
3、m
4及びm
5の少なくとも2つは1~8若しくは1~9の整数であ
る。)
【請求項9】
下記式(4)で表される構造を有する、請求項7に記載の樹脂。
【化8】
(4)
(式(4)中、Lは、炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基又は単結合
であり、
R
0Aは、前記R
Yと同義であり、
R
1Aは、炭素数1~30のn
A価の基又は単結合であり、
R
2Aは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロ
ゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記アル
キル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケ
トン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
2Aの少なくとも1つは水酸基
であり、またR
2Aの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり、
n
Aは、前記Nと同義であり、ここで、n
Aが2以上の整数の場合、n
A個の[ ]内の
構造式は同一であっても異なっていてもよく、
X
Aは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、
m
2Aは、各々独立して、0~7の整数であり、但し、少なくとも1つのm
2Aは2~7の
整数又は少なくとも2つのm
2Aは1~7の整数であり、
q
Aは、各々独立して、0又は1である。)
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物及び請求項7~9のいずれか1項に記載の
樹脂からなる群より選ばれる1種以上を含有する、組成物。
【請求項11】
溶媒をさらに含有する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
酸発生剤をさらに含有する、請求項10又は11に記載の組成物。
【請求項13】
酸架橋剤をさらに含有する、請求項10~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
リソグラフィー用膜形成組成物である、請求項10~13のいずれか1項に記載の組成
物。
【請求項15】
光学部品形成組成物である、請求項10~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項14に記載の組成物を用いて基板上にフォトレジスト層を形成した後、前記フォ
トレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン
形成方法。
【請求項17】
請求項14に記載の組成物を用いて基板上に下層膜を形成し、前記下層膜上に、少なく
とも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線
を照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン形成方法。
【請求項18】
請求項14に記載の組成物を用いて基板上に下層膜を形成し、前記下層膜上にレジスト
中間層膜材料を用いて中間層膜を形成し、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレ
ジスト層を形成する工程、
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形
成する工程、
前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜
パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターン
をエッチングマスクとして基板をエッチングすることにより基板にパターンを形成する工
程、を含む、回路パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する化合物、樹脂、組成物、並びにレジストパターン形成方
法及び回路パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、フォトレジスト材料を用いたリソグラフィーによる微
細加工が行われているが、近年、LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールに
よる更なる微細化が求められている。また、レジストパターン形成の際に使用するリソグ
ラフィー用の光源は、KrFエキシマレーザー(248nm)からArFエキシマレーザ
ー(193nm)へと短波長化されており、極端紫外光(EUV、13.5nm)の導入
も見込まれている。
【0003】
しかしながら、従来の高分子系レジスト材料を用いるリソグラフィーでは、その分子量
が1万~10万程度と大きく、分子量分布も広いため、パターン表面にラフネスが生じパ
ターン寸法の制御が困難となり、微細化に限界がある。そこで、これまでに、より解像性
の高いレジストパターンを与えるために、種々の低分子量レジスト材料が提案されている
。低分子量レジスト材料は分子サイズが小さいことから、解像性が高く、ラフネスが小さ
いレジストパターンを与えることが期待される。
【0004】
現在、このような低分子系レジスト材料として、様々なものが知られている。例えば、
低分子量多核ポリフェノール化合物を主成分として用いるアルカリ現像型のネガ型感放射
線性組成物(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が提案されており、高耐熱性を有
する低分子量レジスト材料の候補として、低分子量環状ポリフェノール化合物を主成分と
して用いるアルカリ現像型のネガ型感放射線性組成物(例えば、特許文献3及び非特許文
献1参照)も提案されている。また、レジスト材料のベース化合物として、ポリフェノー
ル化合物が、低分子量ながら高耐熱性を付与でき、レジストパターンの解像性やラフネス
の改善に有用であることが知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
本発明者らは、これまでに、エッチング耐性に優れるとともに、溶媒に可溶で湿式プロ
セスが適用可能な材料として、特定の構造の化合物及び有機溶媒を含有するレジスト組成
物(例えば、特許文献4参照。)を提案している。
【0006】
また、レジストパターンの微細化が進むと、解像度の問題若しくは現像後にレジストパ
ターンが倒れるといった問題が生じるため、レジストの薄膜化が望まれるようになる。と
ころが、単にレジストの薄膜化を行うと、基板加工に十分なレジストパターンの膜厚を得
ることが難しくなる。そのため、レジストパターンだけではなく、レジストと加工する半
導体基板との間にレジスト下層膜を作製し、このレジスト下層膜にも基板加工時のマスク
としての機能を持たせるプロセスが必要になっている。
【0007】
現在、このようなプロセス用のレジスト下層膜として、種々のものが知られている。例
えば、従来のエッチング速度の速いレジスト下層膜とは異なり、レジストに近いドライエ
ッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、所
定のエネルギーが印加されることにより末端基が脱離してスルホン酸残基を生じる置換基
を少なくとも有する樹脂成分と、溶媒とを含有する多層レジストプロセス用下層膜形成材
料が提案されている(例えば、特許文献5参照)。また、レジストに比べて小さいドライ
エッチング速度の選択比を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、
特定の繰り返し単位を有する重合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(例えば
、特許文献6参照)。さらに、半導体基板に比べて小さいドライエッチング速度の選択比
を持つリソグラフィー用レジスト下層膜を実現するものとして、アセナフチレン類の繰り
返し単位と、置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位とを共重合してなる重
合体を含むレジスト下層膜材料が提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【0008】
一方、この種のレジスト下層膜において高いエッチング耐性を持つ材料としては、メタ
ンガス、エタンガス、アセチレンガス等を原料に用いたCVDによって形成されたアモル
ファスカーボン下層膜がよく知られている。しかしながら、プロセス上の観点から、スピ
ンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスでレジスト下層膜を形成できるレジスト下
層膜材料が求められている。
【0009】
また、本発明者らは、エッチング耐性に優れるとともに、耐熱性が高く、溶媒に可溶で
湿式プロセスが適用可能な材料として、特定の構造の化合物及び有機溶媒を含有するリソ
グラフィー用下層膜形成組成物(例えば、特許文献8参照)を提案している。
【0010】
さらに、3層プロセスにおけるレジスト下層膜の形成において用いられる中間層の形成
方法に関しては、例えば、シリコン窒化膜の形成方法(例えば、特許文献9参照)や、シ
リコン窒化膜のCVD形成方法(例えば、特許文献10参照)が知られている。また、3
層プロセス用の中間層材料としては、シルセスキオキサンベースの珪素化合物を含む材料
が知られている(例えば、特許文献11及び12参照。)。
【0011】
光学部品形成組成物としても様々なものが提案されており、例えば、アクリル系樹脂(
例えば、特許文献13~14参照)や、アリル基で誘導された特定の構造を有するポリフ
ェノール(例えば、特許文献15参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005-326838号公報
【特許文献2】特開2008-145539号公報
【特許文献3】特開2009-173623号公報
【特許文献4】国際公開第2013/024778号
【特許文献5】特開2004-177668号公報
【特許文献6】特開2004-271838号公報
【特許文献7】特開2005-250434号公報
【特許文献8】国際公開第2013/024779号
【特許文献9】特開2002-334869号公報
【特許文献10】国際公開第2004/066377号
【特許文献11】特開2007-226170号公報
【特許文献12】特開2007-226204号公報
【特許文献13】特開2010-138393号公報
【特許文献14】特開2015-174877号公報
【特許文献15】国際公開第2014/123005号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】T.Nakayama,M.Nomura,K.Haga,M.Ueda:Bull.Chem.Soc.Jpn.,71,2979(1998)
【非特許文献2】岡崎信次、他22名「フォトレジスト材料開発の新展開」株式会社シーエムシー出版、2009年9月、p.211-259
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、従来、数多くのレジスト用途向けリソグラフィー用膜形成組成物及び
下層膜用途向けリソグラフィー用膜形成組成物が提案されているが、スピンコート法やス
クリーン印刷等の湿式プロセスが適用可能な高い溶媒溶解性を有するのみならず、耐熱性
及びエッチング耐性を高い次元で両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められて
いる。
【0015】
また、従来、数多くの光学部材向け組成物が提案されているが、耐熱性、透明性及び屈
折率を高い次元で両立させたものはなく、新たな材料の開発が求められている。
【0016】
本発明は、上記従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、湿式プロセ
スが適用可能であり、耐熱性、溶解性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト及びフ
ォトレジスト用下層膜を形成するために有用な、化合物、樹脂、及び組成物を提供するこ
とにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定構造
を有する化合物又は樹脂により、上記従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明
を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
下記式(0)で表される、化合物。
【化1】
(0)
(式(0)中、R
Yは、水素原子であり、
R
Zは、炭素数1~60のN価の基又は単結合であり、
R
Tは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロ
ゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記アル
キル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケ
トン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
Tの少なくとも1つは水酸基
であり、またR
Tの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり、
Xは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、
mは、各々独立して0~9の整数であり、ここで、mの少なくとも1つは2~9の整数
又はmの少なくとも2つは1~9の整数であり、
Nは、1~4の整数であり、ここで、Nが2以上の整数の場合、N個の[ ]内の構造
式は同一であっても異なっていてもよく、
rは、各々独立して0~2の整数である。)
[2]
前記式(0)で表される化合物が、下記式(1)で表される化合物である、[1]に記
載の化合物。
【化2】
(1)
(式(1)中、R
0は、前記R
Yと同義であり、
R
1は、炭素数1~60のn価の基又は単結合であり、
R
2~R
5は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素
数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、
ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記
アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合
、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
2~R
5の少なくとも1つ
は少なくとも1つは水酸基であり、またR
2~R
5の少なくとも1つは炭素数2~30のア
ルケニル基であり、
m
2及びm
3は、各々独立して、0~8の整数であり、
m
4及びm
5は、各々独立して、0~9の整数であり、但し、m
2、m
3、m
4及びm
5は同
時に0になることはなく、m
2、m
3、m
4及びm
5の少なくとも1つは2~8若しくは2~
9の整数又はm
2、m
3、m
4及びm
5の少なくとも2つは1~8若しくは1~9の整数であ
り、
nは前記Nと同義であり、ここで、nが2以上の整数の場合、n個の[ ]内の構造式
は同一であっても異なっていてもよく、
p
2~p
5は、各々独立して、前記rと同義である。)
[3]
前記式(0)で表される化合物が、下記式(2)で表される化合物である、[1]に記
載の化合物。
【化3】
(2)
(式(2)中、R
0Aは、前記R
Yと同義であり、
R
1Aは、炭素数1~30のn
A価の基又は単結合であり、
R
2Aは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロ
ゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記アル
キル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケ
トン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
2Aの少なくとも1つは少なく
とも1つは水酸基であり、またR
2Aの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基で
あり、
n
Aは、前記Nと同義であり、ここで、n
Aが2以上の整数の場合、n
A個の[ ]内の
構造式は同一であっても異なっていてもよく、
X
Aは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、
m
2Aは、各々独立して、0~7の整数であり、但し、少なくとも1つのm
2Aは2~7の
整数又は少なくとも2つのm
2Aは1~7の整数であり、
q
Aは、各々独立して、0又は1である。)
[4]
前記式(1)で表される化合物が、下記式(1-1)で表される化合物である、[2]
に記載の化合物。
【化4】
(1-1)
(式(1-1)中、R
0、R
1、R
4、R
5、n、p
2~p
5、m
4及びm
5は、前記と同義であ
り、
R
6~R
7は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素
数2~30のアルケニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基又はチオ
ール基であり、ここで、R
6~R
7の少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であ
り、
R
10~R
11は、各々独立して、水素原子であり、
m
6及びm
7は、各々独立して、0~7の整数であり、但し、m
4、m
5、m
6及びm
7は同
時に0になることはない。)
[5]
前記式(1-1)で表される化合物が、下記式(1-2)で表される化合物である、[
4]に記載の化合物。
【化5】
(1-2)
(式(1-2)中、R
0、R
1、R
6、R
7、R
10、R
11、n、p
2~p
5、m
6及びm
7は、前
記と同義であり、
R
8~R
9は、前記R
6~R
7と同義であり、
R
12~R
13は、前記R
10~R
11と同義であり、
m
8及びm
9は、各々独立して、0~8の整数であり、但し、m
6、m
7、m
8及びm
9は同
時に0になることはない。)
[6]
前記式(2)で表される化合物が、下記式(2-1)で表される化合物である、[3]
に記載の化合物。
【化6】
(2-1)
(式(2-1)中、R
0A、R
1A、n
A、q
A及びX
A、は、前記と同義であり、
R
3Aは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基又はチオール
基であり、ここで、R
3Aの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり、
R
4Aは、各々独立して、水素原子であり、
m
6Aは、各々独立して、0~5の整数である。)
[7]
[1]に記載の化合物をモノマーとして得られる、樹脂。
[8]
下記式(3)で表される構造を有する、[7]に記載の樹脂。
【化7】
(3)
(式(3)中、Lは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の直鎖状、分岐状若しく
は環状のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリーレン基、置換
基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシレン基又は単結合であり、前記アルキ
レン基、前記アリーレン基及び前記アルコキシレン基は、エーテル結合、ケトン結合又は
エステル結合を含んでいてもよく、
R
0は、前記R
Yと同義であり、
R
1は、炭素数1~60のn価の基又は単結合であり、
R
2~R
5は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素
数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、
ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記
アルキル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合
、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
2~R
5の少なくとも1つ
は水酸基であり、またR
2~R
5の少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり
、
m
2及びm
3は、各々独立して、0~8の整数であり、
m
4及びm
5は、各々独立して、0~9の整数であり、但し、m
2、m
3、m
4及びm
5は同
時に0になることはなく、m
2、m
3、m
4及びm
5の少なくとも1つは2~8若しくは2~
9の整数又はm
2、m
3、m
4及びm
5の少なくとも2つは1~8若しくは1~9の整数であ
る。)
[9]
下記式(4)で表される構造を有する、[7]に記載の樹脂。
【化8】
(4)
(式(4)中、Lは、炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基又は単結合
であり、
R
0Aは、前記R
Yと同義であり、
R
1Aは、炭素数1~30のn
A価の基又は単結合であり、
R
2Aは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロ
ゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、前記アル
キル基、前記アリール基、前記アルケニル基及び前記アルコキシ基は、エーテル結合、ケ
トン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R
2Aの少なくとも1つは水酸基
であり、またR
2Aの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり、
n
Aは、前記Nと同義であり、ここで、n
Aが2以上の整数の場合、n
A個の[ ]内の
構造式は同一であっても異なっていてもよく、
X
Aは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、
m
2Aは、各々独立して、0~7の整数であり、但し、少なくとも1つのm
2Aは2~7の
整数又は少なくとも2つのm
2Aは1~7の整数であり、
q
Aは、各々独立して、0又は1である。)
[10]
[1]~[6]のいずれかに記載の化合物及び[7]~[9]のいずれかに記載の樹脂
からなる群より選ばれる1種以上を含有する、組成物。
[11]
溶媒をさらに含有する、[10]に記載の組成物。
[12]
酸発生剤をさらに含有する、[10]又は[11]に記載の組成物。
[13]
酸架橋剤をさらに含有する、[10]~[12]のいずれかに記載の組成物。
[14]
リソグラフィー用膜形成組成物である、[10]~[13]のいずれかに記載の組成物
。
[15]
光学部品形成組成物である、[10]~[13]のいずれかに記載の組成物。
[16]
[14]に記載の組成物を用いて基板上にフォトレジスト層を形成した後、前記フォト
レジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン形
成方法。
[17]
[14]に記載の組成物を用いて基板上に下層膜を形成し、前記下層膜上に、少なくと
も1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を
照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン形成方法。
[18]
[14]に記載の組成物を用いて基板上に下層膜を形成し、前記下層膜上にレジスト中
間層膜材料を用いて中間層膜を形成し、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジ
スト層を形成する工程、
前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形
成する工程、
前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜
パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターン
をエッチングマスクとして基板をエッチングすることにより基板にパターンを形成する工
程、を含む、回路パターン形成方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る化合物及び樹脂は、安全溶媒に対する溶解性が高く、耐熱性及びエッチン
グ耐性が良好である。また、本発明に係る化合物及び/又は樹脂を含む組成物は、良好な
レジストパターン形状を与える。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下「本実施形態」ともいう。)について説明す
る。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施
の形態のみに限定されない。
【0020】
本実施形態における化合物、樹脂、及びそれを含む組成物は、湿式プロセスが適用可能
であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジスト下層膜を形成するために有用
である。また、本実施形態における組成物は、耐熱性及び溶媒溶解性の高い、特定構造を
有する化合物又は樹脂を用いているため、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラ
ズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れたレジスト及び下層膜を形成すること
ができる。加えて、下層膜を形成した場合、レジスト層との密着性にも優れるので、優れ
たレジストパターンを形成することができる。
さらには、屈折率が高く、また低温から高温までの広範囲の熱処理による着色が抑制さ
れることから、各種光学形成組成物としても有用である。
【0021】
[式(0)で表される化合物]
本実施形態における化合物は、下記式(0)で表される。
【0022】
【0023】
(式(0)中、RYは、水素原子であり、
RZは、炭素数1~60のN価の基又は単結合であり、
RTは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロ
ゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、上記アル
キル基、上記アリール基、上記アルケニル基及び上記アルコキシ基は、エーテル結合、ケ
トン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、RTの少なくとも1つは水酸基
であり、またRTの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり、
Xは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、
mは、各々独立して0~9の整数であり、ここで、mの少なくとも1つは2~9の整数
又はmの少なくとも2つは1~9の整数であり、
Nは、1~4の整数であり、ここで、Nが2以上の整数の場合、N個の[ ]内の構造
式は同一であっても異なっていてもよく、
rは、各々独立して0~2の整数である。)
【0024】
RYは、水素原子である。アルキル基は、直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基を
用いることができる。RYが、水素原子であることにより、優れた耐熱性及び溶媒溶解性
を付与することができる。
【0025】
RZは炭素数1~60のN価の基又は単結合であり、このRZを介して各々の芳香環が結
合している。Nは、1~4の整数であり、Nが2以上の整数の場合、N個の[ ]内の構
造式は同一であっても異なっていてもよい。なお、上記N価の基とは、N=1のときには
、炭素数1~60のアルキル基、N=2のときには、炭素数1~30のアルキレン基、N
=3のときには、炭素数2~60のアルカンプロパイル基、N=4のときには、炭素数3
~60のアルカンテトライル基のことを示す。上記N価の基としては、例えば、直鎖状炭
化水素基、分岐状炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有するもの等が挙げられる。ここで
、上記脂環式炭化水素基については、有橋脂環式炭化水素基も含まれる。また、上記N価
の炭化水素基は、脂環式炭化水素基、二重結合、ヘテロ原子若しくは炭素数6~60の芳
香族基を有していてもよい。
【0026】
RTは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換
基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2
~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、ハロ
ゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基、水酸基であり、上記アルキ
ル基、上記アリール基、上記アルケニル基、上記アルコキシ基は、エーテル結合、ケトン
結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、RTの少なくとも1つは水酸基であ
り、またRTの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基を含む。なお、上記アル
キル基、アルケニル基及びアルコキシ基は、直鎖状、分岐状若しくは環状の基であっても
よい。
【0027】
Xは、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示し、Xが酸素原子又は硫
黄原子である場合、高い耐熱性を発現する傾向にあるため好ましく、酸素原子であること
がより好ましい。Xは、溶解性の観点からは、無架橋であることが好ましい。また、mは
、各々独立して0~9の整数であり、mの少なくとも1つは2~9の整数又はmの少なく
とも2つは1~9の整数である。
【0028】
式(0)中、ナフタレン構造で示される部位は、r=0の場合には単環構造であり、r
=1の場合には二環構造であり、r=2の場合には三環構造となる。rは、各々独立して
0~2の整数である。上述のmは、rで決定される環構造に応じてその数値範囲が決定さ
れる。
【0029】
[式(1)で表される化合物]
本実施形態における化合物(0)は、耐熱性及び溶媒溶解性の観点から、下記式(1)で
表される化合物であることが好ましい。
【0030】
【0031】
上記(1)式中、R0は、上記RYと同義であり、水素原子である。R0が、水素原子で
ある場合、耐熱性が比較的高くなり、溶媒溶解性が向上する傾向にある。
R1は炭素数1~60のn価の基又は単結合であり、R1を介して各々の芳香環が結合し
ている。
R2~R5は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素
数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルコキシ基、
ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール基又は水酸基であり、上記
アルキル基、上記アリール基、上記アルケニル基及び上記アルコキシ基は、エーテル結合
、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、R2~R5の少なくとも1つ
は水酸基であり、またR2~R5の少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基である
。
m2及びm3は、各々独立して、0~8の整数であり、m4及びm5は、各々独立して、0
~9の整数である。但し、m2、m3、m4及びm5は同時に0になることはない。m2、m3
、m4及びm5の少なくとも1つは2~8若しくは2~9の整数又はm2、m3、m4及びm5
の少なくとも2つは1~8若しくは1~9の整数である。
nは上記Nと同義であり、1~4の整数である。ここで、nが2以上の整数の場合、n
個の[ ]内の構造式は同一であっても異なっていてもよい。
p2~p5は各々独立して上記rと同義であり、0~2の整数である。
【0032】
なお、上記アルキル基、アルケニル基及びアルコキシ基は、直鎖状、分岐状若しくは環
状の基であってもよい。
【0033】
なお、上記n価の基とは、n=1の場合は、炭素数1~60のアルキル基、n=2の場
合は、炭素数1~30のアルキレン基、n=3の場合は、炭素数2~60のアルカンプロ
パイル基、n=4の場合は、炭素数3~60のアルカンテトライル基を示す。上記n価の
基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有す
るもの等が挙げられる。ここで、上記脂環式炭化水素基については、有橋脂環式炭化水素
基も含まれる。また、上記n価の基は、炭素数6~60の芳香族基を有していてもよい。
【0034】
また、上記n価の炭化水素基は、脂環式炭化水素基、二重結合、ヘテロ原子又は炭素数
6~60の芳香族基を有していてもよい。ここで、上記脂環式炭化水素基については、有
橋脂環式炭化水素基も含まれる。
【0035】
上記式(1)で表される化合物は、比較的低分子量ながらも、その構造の剛直さにより
高い耐熱性を有するので、高温ベーク条件でも使用可能である。また、分子中に3級炭素
又は4級炭素を有しており、結晶性が抑制され、リソグラフィー用膜製造に使用できるリ
ソグラフィー用膜形成組成物として好適に用いられる。
【0036】
また、安全溶媒に対する溶解性が高く、耐熱性及びエッチング耐性が良好であるため、
上記式(1)で表される化合物を含むリソグラフィー用レジスト形成組成物は、良好なレ
ジストパターン形状を与えることができる。
【0037】
さらに、比較的に低分子量で低粘度であることから、段差を有する基板(特に、微細な
スペースやホールパターン等)であっても、その段差の隅々まで均一に充填させつつ、膜
の平坦性を高めることが容易であり、その結果、これを用いたリソグラフィー用下層膜形
成組成物は、埋め込み及び平坦化特性が良好である。また、比較的高い炭素濃度を有する
化合物であることから、高いエッチング耐性をも付与することができる。
【0038】
さらにまた、芳香族密度が高いため屈折率が高く、また低温から高温までの広範囲の熱
処理によっても着色が抑制されることから、各種光学部品形成組成物としても有用である
。中でも、化合物の酸化分解を抑制して着色を抑え、耐熱性及び溶媒溶解性を向上させる
観点から、4級炭素を有する化合物が好ましい。光学部品としては、フィルム状、シート
状の部品の他、プラスチックレンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロ
レンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ、コントラスト向上レンズ等)、位相差フィ
ルム、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線
用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波
路として有用である。
【0039】
上記式(1)で表される化合物は、架橋のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、下
記式(1-1)で表される化合物であることがより好ましい。
【化11】
(1-1)
【0040】
式(1-1)中、
R0、R1、R4、R5、n、p2~p5、m4及びm5は、上記と同義であり、
R6~R7は、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素
数2~30のアルケニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基又はチオ
ール基であり、ここで、R6~R7の少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であ
り、
R10~R11は、各々独立して、水素原子であり、
m6及びm7は、各々独立して0~7の整数であり、但し、m4、m5、m6及びm7は同時
に0になることはない。
【0041】
また、上記式(1-1)で表される化合物は、さらなる架橋のし易さと有機溶媒への溶
解性の観点から、下記式(1-2)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0042】
【0043】
式(1-2)中、
R0、R1、R6、R7、R10、R11、n、p2~p5、m6及びm7は、上記と同義であり、
R8~R9は、上記R6~R7と同義であり、
R12~R13は、上記R10~R11と同義であり、
m8及びm9は、各々独立して、0~8の整数である。但し、m6、m7、m8及びm9は同
時に0になることはない。
【0044】
また、上記式(1-1)で表される化合物は、原料の供給性の観点から、下記式(1a
)で表される化合物であることもさらに好ましい。
【0045】
【0046】
上記式(1a)中、R0~R5、m2~m5及びnは、上記式(1)で説明したものと同義
である。
【0047】
上記式(1a)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1b)
で表される化合物であることがよりさらに好ましい。
【0048】
【0049】
上記式(1b)中、R0、R1、R4、R5、m4、m5、nは上記式(1)で説明したもの
と同義であり、R6、R7、R10、R11、m6、m7は上記式(1-1)で説明したものと同
義である。
【0050】
上記式(1b)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(1c)
で表される化合物であることがさらにより好ましい。
【0051】
【0052】
上記式(1c)中、R0、R1、R6~R13、m6~m9、nは上記式(1-2)で説明し
たものと同義である。
【0053】
上記式(1)で表される化合物は、さらなる有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(
BisF-1)~(BisF-5)で表される化合物であることが極めて好ましい。
【0054】
【化16】
(BiF-1)
【化17】
(BiF-2)
【化18】
(BiF-3)
【0055】
【0056】
【0057】
上記式(BiF-1)~(BiF-5)中、R6'~R9'は、各々独立して、水素原子、
置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素
数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、ハ
ロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基又はチオール基であり、ここで、R6'~
R9'の少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であり、R10~R13は上記式(1
c)で説明したものと同義である。
【0058】
[式(0)で表される化合物の製造方法]
本実施形態における式(0)で表される化合物は、公知の手法を応用して適宜合成する
ことができ、その合成手法は特に限定されない。以下、式(0)で表される化合物を、式
(1)で表される化合物を例に説明する。
例えば、常圧下、ビフェノール類、ビナフトール類又はビアントラセンオールと、対応
するアルデヒド類とを酸触媒下にて重縮合反応させることによりポリフェノール化合物を
得て、続いて、ポリフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に、アリル
基を導入し、その後、加熱することによりクライゼン転移をさせて得ることができる。ま
た、必要に応じて、加圧下で行うこともできる。
【0059】
アリル基を導入するタイミングは、縮合反応の前段階、後段階又は後述する樹脂の製造
を行なった後に導入してもよい。
【0060】
上記ビフェノール類としては、例えば、ビフェノール、メチルビフェノール、メトキシ
ビナフトール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で、
又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、原料の安定供給性
の観点から、ビフェノールを用いることがより好ましい。
【0061】
上記ビナフトール類としては、例えば、ビナフトール、メチルビナフトール、メトキシ
ビナフトール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又
は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、炭素原子濃度を上げ
、耐熱性を向上させる観点から、ビナフトールを用いることがより好ましい。
【0062】
上記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムア
ルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセト
アルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズ
アルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒ
ド、ブチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセン
カルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフ
ラール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種
以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、高い耐熱性を付与する観点
から、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒ
ドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチル
ベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシル
ベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアル
デヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラールを用
いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、ベンズアルデヒド、ヒドロ
キシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベン
ズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベン
ズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒ
ド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラールを用いる
ことがより好ましい。
【0063】
アルデヒド類としては、高い耐熱性及び高いエッチング耐性を兼備するという観点から
、芳香環を有するアルデヒドを用いることが好ましい。
【0064】
上記反応に用いる酸触媒については、公知のものから適宜選択して用いることができ、
特に限定されない。このような酸触媒としては、無機酸や有機酸が広く知られており、例
えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸;シュウ酸、マロン酸、こは
く酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、蟻酸、p-トルエン
スルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ト
リフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレン
ジスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のル
イス酸、或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモ
リブデン酸等の固体酸等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、
製造上の観点から、有機酸及び固体酸が好ましく、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造
上の観点から、塩酸又は硫酸を用いることがより好ましい。なお、酸触媒については、1
種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、酸触媒の使用量は、
使用する原料及び触媒の種類、さらには反応条件等に応じて適宜設定でき、特に限定され
ないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100質量部であることが好ましい
。
【0065】
上記反応の際には、反応溶媒を用いてもよい。反応溶媒としては、用いるアルデヒド類
と、ビフェノール類、ビナフトール類又はビアントラセンジオールとの反応が進行するも
のであれば、特に限定されず、公知のものの中から適宜選択して用いることができる。反
応溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テ
トラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコ
ールジエチルエーテル又はこれらの混合溶媒等が挙げられる。なお、溶媒は、1種を単独
で或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
また、これらの反応溶媒の使用量は、使用する原料及び触媒の種類、さらには反応条件
等に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0~20
00質量部の範囲であることが好ましい。さらに、上記反応における反応温度は、反応原
料の反応性に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、通常10~200℃
の範囲である。
【0067】
ポリフェノール化合物を得るためには、反応温度は高い方が好ましく、具体的には60
~200℃の範囲が好ましい。なお、反応方法は、公知の手法を適宜選択して用いること
ができ、特に限定されないが、ビフェノール類、ビナフトール類又はビアントラセンジオ
ール、アルデヒド類、触媒を一括で仕込む方法や、ビフェノール類、ビナフトール類又は
ビアントラセンジオールやアルデヒド類を触媒存在下で滴下していく方法が挙げられる。
重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法に従って行うことができ、特に限定さ
れない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度を
130~230℃にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般的
手法を採ることにより、目的物である化合物を単離することができる。
【0068】
好ましい反応条件としては、アルデヒド類1モルに対し、ビフェノール類、ビナフトー
ル類又はビアントラセンジオールを1モル~過剰量、及び酸触媒を0.001~1モル使
用し、常圧で、50~150℃で20分~100時間程度反応させることが挙げられる。
【0069】
反応終了後、公知の方法により目的物を単離することができる。例えば、反応液を濃縮
し、純水を加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離させ、
得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトグラフにより副生成物と分離精
製し、溶媒留去、濾過、乾燥を行って目的物である上記式(1)で表される化合物を得る
ことができる。
【0070】
また、ポリフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に、アリル基を導
入する方法も公知である。例えば、以下のようにして、上記化合物の少なくとも1つのフ
ェノール性水酸基にアリル基を導入することができる。
【0071】
アリル基を導入するための化合物は、公知の方法で合成又は容易に入手でき、例えば、
塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリルが挙げられるが、これらに特に限定はされない。
【0072】
まず、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエ
ーテルアセテート等の非プロトン性溶媒に上記化合物を溶解又は懸濁させる。続いて、水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド等
の塩基触媒の存在下、常圧で、20~150℃、6~72時間反応させる。反応液を酸で
中和し、蒸留水に加え白色固体を析出させた後、分離した固体を蒸留水で洗浄し、又は溶
媒を蒸発乾固させて、必要に応じて蒸留水で洗浄し、乾燥することにより、ヒドロキシ基
の水素原子がアリル基で置換された化合物を得ることができる。
【0073】
その後、加温することにより、フェノール性水酸基に導入されたアリル基をクライゼン
転移により転移することができる。
【0074】
本実施形態において、アリル基は、ラジカル又は酸/アルカリの存在下で反応し、塗布
溶媒や現像液に使用される酸、アルカリ又は有機溶媒に対する溶解性が変化する。上記ア
リル基で置換された基は、更に高感度・高解像度なパターン形成を可能にするために、ラ
ジカル又は酸/アルカリの存在下で連鎖的に反応を起こす性質を有することが好ましい。
【0075】
[式(0)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂]
上記式(0)で表される化合物は、リソグラフィー用膜形成や光学部品形成に用いられ
る組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)として、そのまま使用することができる。
また、上記式(0)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂を、組成物として使
用することもできる。樹脂は、例えば、上記式(0)で表される化合物と架橋反応性のあ
る化合物とを反応させて得られる。以下、式(0)で表される化合物をモノマーとして得
られる樹脂を、式(1)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂を例に説明する
。
【0076】
上記式(1)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂としては、例えば、以下
の式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。すなわち、本実施形態における組
成物は、下記式(3)で表される構造を有する樹脂を含有するものであってもよい。
【0077】
【0078】
式(3)中、Lは、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアルキレン基、置換基
を有していてもよい炭素数6~30のアリーレン基、置換基を有していてもよい炭素数1
~30のアルコキシレン基又は単結合であり、上記アルキレン基、上記アリーレン基、上
記アルコキシレン基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよい
。また、上記アルキレン基、アルコキシレン基は、直鎖状、分岐状若しくは環状の基であ
ってもよい。
R0、R1、R2~R5、m2及びm3、m4及びm5、p2~p5、nは上記式(1)における
ものと同義である。
但し、m2、m3、m4及びm5は同時に0になることはなく、m2、m3、m4及びm5の少
なくとも1つは2~8若しくは2~9の整数又はm2、m3、m4及びm5の少なくとも2つ
は1~8若しくは1~9の整数であり、R2~R5の少なくとも1つは水酸基であり、また
R2~R5の少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基である。
【0079】
[式(1)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂の製造方法]
本実施形態における樹脂は、上記式(1)で表される化合物を、架橋反応性のある化合
物と反応させることにより得られる。架橋反応性のある化合物としては、上記式(1)で
表される化合物をオリゴマー化又はポリマー化し得るものである限り、公知のものを特に
制限なく使用することができる。その具体例としては、例えば、アルデヒド、ケトン、カ
ルボン酸、カルボン酸ハライド、ハロゲン含有化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、イ
ソシアネート、不飽和炭化水素基含有化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されな
い。
【0080】
上記式(3)で表される構造を有する樹脂の具体例としては、例えば、上記式(1)で
表される化合物を、架橋反応性のある化合物であるアルデヒド及び/又はケトンとの縮合
反応等によってノボラック化した樹脂が挙げられる。
【0081】
ここで、上記式(1)で表される化合物をノボラック化する際に用いるアルデヒドとし
ては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデ
ヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプ
ロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベン
ズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデ
ヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェ
ナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール等が挙げられるが
、これらに特に限定されない。ケトンとしては、上記ケトン類が挙げられる。これらの中
でも、ホルムアルデヒドがより好ましい。なお、これらのアルデヒド及び/又はケトン類
は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記アルデヒ
ド及び/又はケトン類の使用量は、特に限定されないが、上記式(1)で表される化合物
1モルに対して、0.2~5モルであることが好ましく、より好ましくは0.5~2モル
である。
【0082】
上記式(1)で表される化合物とアルデヒド及び/又はケトンとの縮合反応においては
、酸触媒を用いることもできる。ここで使用する酸触媒については、公知のものから適宜
選択して用いることができ、特に限定されない。このような酸触媒としては、無機酸や有
機酸が広く知られており、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸
;シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレ
イン酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロ
ロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタ
レンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩
化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、
ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられるが、これらに特に限定
されない。これらの中でも、製造上の観点から、有機酸及び固体酸が好ましく、入手の容
易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸が好ましい。なお、酸触媒につ
いては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
また、酸触媒の使用量は、使用する原料及び触媒の種類、さらには反応条件等に応じて
適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100
質量部であることが好ましい。但し、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒ
ドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノー
ル、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボ
ルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等の
非共役二重結合を有する化合物との共重合反応の場合は、必ずしもアルデヒド類は必要な
い。
【0084】
上記式(1)で表される化合物とアルデヒド及び/又はケトンとの縮合反応においては
、反応溶媒を用いることもできる。この重縮合における反応溶媒としては、公知のものの
中から適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、
エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの
混合溶媒等が挙げられる。なお、溶媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用
いることができる。
【0085】
また、これらの溶媒の使用量は、使用する原料及び触媒の種類、さらには反応条件等に
応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0~2000
質量部の範囲であることが好ましい。さらに、反応温度は、反応原料の反応性に応じて適
宜選択することができ、特に限定されないが、通常10~200℃の範囲である。なお、
反応方法は、公知の手法を適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、上記式
(1)で表される化合物、アルデヒド及び/又はケトン類、触媒を一括で仕込む方法や、
上記式(1)で表される化合物やアルデヒド及び/又はケトン類を触媒存在下で滴下して
いく方法が挙げられる。
【0086】
重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法に従って行うことができ、特に限定
されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度
を130~230℃にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般
的手法を採ることにより、目的物であるノボラック化した樹脂を単離することができる。
【0087】
ここで、上記式(3)で表される構造を有する樹脂は、上記式(1)で表される化合物
の単独重合体であってもよいが、他のフェノール類との共重合体であってもよい。ここで
共重合可能なフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノ
ール、トリメチルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、ジフェニルフェ
ノール、ナフチルフェノール、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、ブ
チルカテコール、メトキシフェノール、メトキシフェノール、プロピルフェノール、ピロ
ガロール、チモール等が挙げるが、これらに特に限定されない。
【0088】
また、上記式(3)で表される構造を有する樹脂は、上述した他のフェノール類以外に
、重合可能なモノマーと共重合させたものであってもよい。かかる共重合モノマーとして
は、例えば、ナフトール、メチルナフトール、メトキシナフトール、ジヒドロキシナフタ
レン、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナ
フチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テ
トラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルナ
エン、ピネン、リモネン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、上記式(
3)で表される構造を有する樹脂は、上記式(1)で表される化合物と上述したフェノー
ル類との2元以上の(例えば、2~4元系)共重合体であっても、上記式(1)で表され
る化合物と上述した共重合モノマーとの2元以上(例えば、2~4元系)共重合体であっ
ても、上記式(1)で表される化合物と上述したフェノール類と上述した共重合モノマー
との3元以上の(例えば、3~4元系)共重合体であっても構わない。
【0089】
上記式(3)で表される構造を有する樹脂の分子量は、特に限定されないが、ポリスチ
レン換算の重量平均分子量(Mw)が500~30,000であることが好ましく、より
好ましくは750~20,000である。また、架橋効率を高めるとともにベーク中の揮
発成分を抑制する観点から、上記式(3)で表される構造を有する樹脂は、分散度(重量
平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.2~7の範囲内であることが好ましい。なお
、上記Mw及びMnは、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0090】
上記式(3)で表される構造を有する樹脂は、湿式プロセスの適用がより容易になる等
の観点から、溶媒に対する溶解性が高いものであることが好ましい。より具体的には、1
-メトキシ-2-プロパノール(PGME)及び/又はプロピレングリコールモノメチル
エーテルアセテート(PGMEA)を溶媒とする場合、当該溶媒に対する溶解度が10質
量%以上であることが好ましい。ここで、PGME及び/又はPGMEAに対する溶解度
は、「樹脂の質量÷(樹脂の質量+溶媒の質量)×100(質量%)」と定義される。例
えば、上記樹脂10gがPGMEA90gに対して溶解する場合は、上記樹脂のPGME
Aに対する溶解度は、「10質量%以上」となり、溶解しない場合は、「10質量%未満
」となる。
【0091】
[式(2)で表される化合物]
本実施形態における式(0)で表される化合物は、耐熱性及び溶媒溶解性の観点から、
下記式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0092】
【0093】
式(2)中、R0Aは上記RYと同義であり、水素原子である。
R1Aは、炭素数1~30のnA価の基又は単結合であり、
R2Aは、各々独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~30の直鎖状、分岐状若
しくは環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換
基を有していてもよい炭素数2~30のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数
1~30のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸基、チオール
基又は水酸基であり、上記アルキル基、上記アリール基、上記アルケニル基及び上記アル
コキシ基は、エーテル結合、ケトン結合又はエステル結合を含んでいてもよく、ここで、
R2Aの少なくとも1つは水酸基であり、またR2Aの少なくとも1つは炭素数2~30のア
ルケニル基である。
nAは上記Nと同義であり、1~4の整数であり、ここで、式(2)中、nAが2以上の
整数の場合、nA個の[ ]内の構造式は同一であっても異なっていてもよい。
XAは、各々独立して、酸素原子、硫黄原子、単結合又は無架橋であることを示す。こ
こで、XAは、優れた耐熱性を発現する傾向にあるため、酸素原子又は硫黄原子であるこ
とが好ましく、酸素原子であることがより好ましい。XAは、溶解性の観点からは、無架
橋であることが好ましい。
m2Aは、各々独立して、0~6の整数である。但し、少なくとも1つのm2Aは2~6の
整数又は少なくとも2つのm2Aは1~6の整数である。
qAは、各々独立して、0又は1である。
【0094】
なお、上記n価の基とは、n=1の場合は、炭素数1~60のアルキル基、n=2の場
合は、炭素数1~30のアルキレン基、n=3の場合は、炭素数2~60のアルカンプロ
パイル基、n=4の場合は、炭素数3~60のアルカンテトライル基を示す。上記n価の
基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基又は脂環式炭化水素基を有す
るもの等が挙げられる。ここで、上記脂環式炭化水素基については、有橋脂環式炭化水素
基も含まれる。また、上記n価の基は、炭素数6~60の芳香族基を有していてもよい。
【0095】
また、上記n価の炭化水素基は、脂環式炭化水素基、二重結合、ヘテロ原子若しくは炭
素数6~60の芳香族基を有していてもよい。ここで、上記脂環式炭化水素基については
、有橋脂環式炭化水素基も含まれる。
【0096】
また、上記n価の炭化水素基は、脂環式炭化水素基、二重結合、ヘテロ原子若しくは炭
素数6~30の芳香族基を有していてもよい。ここで、上記脂環式炭化水素基については
、有橋脂環式炭化水素基も含まれる。
【0097】
上記式(2)で表される化合物は、比較的低分子量ながらも、その構造の剛直さにより
高い耐熱性を有するので、高温ベーク条件でも使用可能である。また、分子中に3級炭素
又は4級炭素を有しており、結晶性が抑制され、リソグラフィー用膜製造に使用できるリ
ソグラフィー用膜形成組成物として好適に用いられる。
【0098】
また、安全溶媒に対する溶解性が高く、耐熱性及びエッチング耐性が良好でありため、
上記式(2)で表される化合物を含むリソグラフィー用レジスト形成組成物は、良好なレ
ジストパターン形状を与えることができる。
【0099】
さらに、比較的に低分子量で低粘度であることから、段差を有する基板(特に、微細な
スペースやホールパターン等)であっても、その段差の隅々まで均一に充填させつつ、膜
の平坦性を高めることが容易であり、その結果、これを用いたリソグラフィー用下層膜形
成組成物は、埋め込み及び平坦化特性が良好である。また、比較的高い炭素濃度を有する
化合物であることから、高いエッチング耐性をも付与することができる。
【0100】
さらにまた、芳香族密度が高いため屈折率が高く、また低温から高温までの広範囲の熱
処理によっても着色が抑制されることから、各種光学部品形成組成物としても有用である
。中でも、化合物の酸化分解を抑制し着色を抑え、耐熱性及び溶媒溶解性を向上させる観
点から、4級炭素を有する化合物が好ましい。光学部品としては、フィルム状、シート状
の部品の他、プラスチックレンズ(プリズムレンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレ
ンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ、コントラスト向上レンズ等)、位相差フィル
ム、電磁波シールド用フィルム、プリズム、光ファイバー、フレキシブルプリント配線用
ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路
として有用である。
【0101】
上記式(2)で表される化合物は、架橋のし易さと有機溶媒への溶解性の観点から、下
記式(2-1)で表される化合物であることがより好ましい。
【0102】
【0103】
式(2-1)中、R0A、R1A、nA、qA及びXAは、上記式(2)で説明したものと同
義である。
R3Aは、置換基を有していてもよい炭素数1~30の直鎖状、分岐状若しくは環状のア
ルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6~30のアリール基、置換基を有していて
もよい炭素数2~30のアルケニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、カルボン酸
基又はチオール基であり、同一のナフタレン環又はベンゼン環において同一であっても異
なっていてもよい。ここで、R3Aの少なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基であ
り、
R4Aは、各々独立して、水素原子であり、
m6Aは、各々独立して、0~5の整数である。
【0104】
上記式(2-1)で表される化合物を、アルカリ現像ポジ型レジスト用又は有機現像ネ
ガ型レジスト用リソグラフィー用膜形成組成物として使用する場合は、R4Aの少なくとも
1つは酸解離性基である。一方、式(2-1)で表される化合物を、アルカリ現像ネガ型
レジスト用リソグラフィー用膜形成組成物、下層膜用リソグラフィー用膜形成組成物又は
光学部品形成組成物として使用する場合は、R4Aの少なくとも1つは水素原子である。
【0105】
また、上記式(2-1)で表される化合物は、原料の供給性の観点から、下記式(2a
)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0106】
【0107】
上記式(2a)中、XA、R0A~R2A、m2A及びnAは、上記式(2)で説明したものと
同義である。
【0108】
また、上記式(2-1)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式
(2b)で表される化合物であることもさらに好ましい。
【0109】
【0110】
上記式(2b)中、XA、R0A、R1A、R3A、R4A、m6A及びnAは、上記式(2-1)
で説明したものと同義である。
【0111】
また、上記式(2-1)で表される化合物は、有機溶媒への溶解性の観点から、下記式
(2c)で表される化合物であることもさらに好ましい。
【0112】
【0113】
上記式(2c)中、XA、R0A、R1A、R3A、R4A、m6A及びnAは、上記式(2-1)
で説明したものと同義である。
【0114】
上記式(2)で表される化合物は、さらなる有機溶媒への溶解性の観点から、下記式(
BisN-1)~(BisN-4)、(XBisN-1)~(XBisN-3)で表され
る化合物であることが極めて好ましい。
【0115】
【化27】
(BisN-1)
【化28】
(BisN-2)
【化29】
(BisN-3)
【化30】
(BisN-4)
【化31】
(XBisN-1)
【化32】
(XBisN-2)
【化33】
(XBisN-3)
上記式(BisN-1)~(BisN-4)及び(XBisN-1)~(XBisN-
3)中、R
3A及びR
4Aは上記式(2-1)で説明したものと同義である。但し、R
3Aの少
なくとも1つは炭素数2~30のアルケニル基である。
【0116】
[式(2)で表される化合物の製造方法]
本実施形態における式(2)で表される化合物は、公知の手法を応用して適宜合成する
ことができ、その合成手法は特に限定されない。
例えば、常圧下、フェノール類、ナフトール類と、対応するアルデヒド類又はケトン類
とを酸触媒下にて重縮合反応させることによりポリフェノール化合物を得て、続いて、ポ
リフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に、アリル基を導入し、その
後、加熱することによりクライゼン転移をさせて得ることができる。また、必要に応じて
、加圧下で行うこともできる。
【0117】
アリル基を導入するタイミングは、縮合反応の前段階、後段階又は後述する樹脂の製造
を行なった後に導入してもよい。
【0118】
上記ナフトール類としては、特に限定されず、例えば、ナフトール、メチルナフトール
、メトキシナフトール、ナフタレンジオール等が挙げられ、中でも、キサンテン構造を容
易に作ることができるという観点から、ナフタレンジオールを用いることが好ましい。
【0119】
上記フェノール類としては、特に限定されず、例えば、フェノール、メチルフェノール
、メトキシベンゼン、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、トリメチルハイド
ロキノン等が挙げられる。
【0120】
上記アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムア
ルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセト
アルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズ
アルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒ
ド、ブチルベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセン
カルボアルデヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフ
ラール等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種
以上を組み合わせて使用することができる。これらの中でも、高い耐熱性を付与する観点
から、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプロピルアルデヒド、ヒ
ドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチル
ベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシル
ベンズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアル
デヒド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラールを用
いることが好ましく、エッチング耐性を向上させる観点から、ベンズアルデヒド、ヒドロ
キシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、メチルベン
ズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデヒド、シクロヘキシルベン
ズアルデヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒ
ド、フェナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラールを用いる
ことがより好ましい。
【0121】
上記反応に用いる酸触媒については、公知のものから適宜選択して用いることができ、
特に限定されない。酸触媒としては、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができ
、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、ふっ酸等の無機酸;シュウ酸、蟻酸、p-
トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホ
ン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸
;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸;ケイタングステ
ン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸が挙げら
れる。これらの中でも、入手の容易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫
酸を用いることが好ましい。酸触媒については、1種を単独で又は2種以上を組み合わせ
て用いることができる。
【0122】
上記反応の際には、反応溶媒を用いてもよい。反応溶媒としては、用いるアルデヒド類
とナフトール類等との反応が進行すれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、
エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの
混合溶媒を用いることができる。反応溶媒の量は、特に限定されず、例えば、反応原料1
00質量部に対して0~2000質量部の範囲である。
【0123】
反応温度は、特に限定されず、反応原料の反応性に応じて適宜選択することができるが
、10~200℃の範囲であることが好ましい。本実施形態における式(2)で表される
化合物を選択性良く合成する観点からは、温度が低い方が好ましく、10~60℃の範囲
であることがより好ましい。
【0124】
反応方法は、特に限定されないが、例えば、ナフトール類等、アルデヒド類又はケトン
類、触媒を一括で仕込む方法や、触媒存在下ナフトール類やアルデヒド類を滴下していく
方法が挙げられる。重縮合反応終了後、系内に存在する未反応原料、触媒等を除去するた
めに、反応釜の温度を130~230℃にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分
を除去することもできる。
【0125】
原料の量は、特に限定されないが、例えば、アルデヒド類1モルに対し、ナフトール類
等を2モル~過剰量、及び酸触媒を0.001~1モル使用し、常圧で、20~60℃で
20分~100時間程度反応させることが好ましい。
【0126】
反応終了後、公知の方法により目的物を単離する。目的物の単離方法は、特に限定され
ず、例えば、反応液を濃縮し、純水を加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後
、濾過を行って分離し、得られた固形物を濾過し、乾燥させた後、カラムクロマトグラフ
により、副生成物と分離精製し、溶媒留去、濾過、乾燥を行って目的化合物を単離する方
法が挙げられる。
【0127】
また、ポリフェノール化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基に、アリル基を導
入する方法も公知である。
例えば、以下のようにして、上記化合物の少なくとも1つのフェノール性水酸基にアリ
ル基を導入することができる。
【0128】
アリル基を導入するための化合物は、公知の方法で合成若しくは容易に入手でき、例え
ば、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリルが挙げられるが、これらに特に限定はされな
い。
【0129】
まず、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、プロピレングリコールモノメチルエ
ーテルアセテート等の非プロトン性溶媒に上記化合物を溶解又は懸濁させる。続いて、水
酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキサイド、ナトリウムエトキサイド等
の塩基触媒の存在下、常圧で、20~150℃、6~72時間反応させる。反応液を酸で
中和し、蒸留水に加え白色固体を析出させた後、分離した固体を蒸留水で洗浄し、又は溶
媒を蒸発乾固させて、必要に応じて蒸留水で洗浄し、乾燥することにより、ヒドロキシ基
の水素原子がアリル基で置換された化合物を得ることができる。
【0130】
本実施形態において、アリル基は、ラジカル又は酸/アルカリの存在下で反応し、塗布
溶媒や現像液に使用される酸、アルカリ又は有機溶媒に対する溶解性が変化する。上記ア
リル基で置換された基は、更に高感度・高解像度なパターン形成を可能にするために、ラ
ジカル又は酸/アルカリの存在下で連鎖的に反応を起こす性質を有することが好ましい。
【0131】
その後、加温することにより、フェノール性水酸基に導入されたアリル基をクライゼン
転移により転移することができる。
【0132】
[式(2)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂]
上記式(2)で表される化合物は、リソグラフィー用膜形成組成物や光学部品形成に用
いられる組成物として、そのまま使用することができる。また、上記式(2)で表される
化合物をモノマーとして得られる樹脂を、組成物として使用することができる。樹脂は、
例えば、上記式(2)で表される化合物と架橋反応性のある化合物とを反応させて得られ
る。
【0133】
上記式(2)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂としては、例えば、以下
の式(4)で表される構造を有するものが挙げられる。すなわち、本実施形態における組
成物は、下記式(4)で表される構造を有する樹脂を含有するものであってもよい。
【0134】
【0135】
式(4)中、Lは、炭素数1~30の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基又は単結合
である。
R0A、R1A、R2A、m2A、nA、qA及びXAは上記式(2)におけるものと同義であり
、
但し、nAが2以上の整数の場合、nA個の[ ]内の構造式は同一であっても異なって
いてもよく、少なくとも1つのm2Aは2~6の整数又は少なくとも2つのm2Aは1~6の
整数であり、R2Aの少なくとも1つは水酸基であり、また少なくとも1つは炭素数2~3
0のアルケニル基である。
【0136】
[式(2)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂の製造方法]
本実施形態における樹脂は、上記式(2)で表される化合物を、架橋反応性のある化合
物と反応させることにより得られる。架橋反応性のある化合物としては、上記式(2)で
表される化合物をオリゴマー化又はポリマー化し得るものである限り、公知のものを特に
制限なく使用することができる。その具体例としては、例えば、アルデヒド、ケトン、カ
ルボン酸、カルボン酸ハライド、ハロゲン含有化合物、アミノ化合物、イミノ化合物、イ
ソシアネート、不飽和炭化水素基含有化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されな
い。
【0137】
上記式(4)で表される構造を有する樹脂の具体例としては、例えば、上記式(2)で
表される化合物を、架橋反応性のある化合物であるアルデヒド及び/又はケトンとの縮合
反応等によってノボラック化した樹脂が挙げられる。
【0138】
ここで、上記式(2)で表される化合物をノボラック化する際に用いるアルデヒドとし
ては、例えば、ホルムアルデヒド、トリオキサン、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデ
ヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、フェニルプ
ロピルアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロベンズアルデヒド、ニトロベン
ズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、ブチルベンズアルデ
ヒド、ビフェニルアルデヒド、ナフトアルデヒド、アントラセンカルボアルデヒド、フェ
ナントレンカルボアルデヒド、ピレンカルボアルデヒド、フルフラール等が挙げられるが
、これらに特に限定されない。ケトンとしては、上記ケトン類が挙げられる。これらの中
でも、ホルムアルデヒドがより好ましい。なお、これらのアルデヒド及び/又はケトン類
は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上記アルデヒ
ド及び/又はケトン類の使用量は、特に限定されないが、上記式(2)で表される化合物
1モルに対して、0.2~5モルであることが好ましく、より好ましくは0.5~2モル
である。
【0139】
上記式(2)で表される化合物とアルデヒド及び/又はケトンとの縮合反応においては
、酸触媒を用いることもできる。ここで使用する酸触媒については、公知のものから適宜
選択して用いることができ、特に限定されない。このような酸触媒としては、無機酸や有
機酸が広く知られており、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸、フッ酸等の無機酸
;シュウ酸、マロン酸、こはく酸、アジピン酸、セバシン酸、クエン酸、フマル酸、マレ
イン酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロ
ロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタ
レンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸等の有機酸;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩
化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸、或いはケイタングステン酸、リンタングステン酸、
ケイモリブデン酸又はリンモリブデン酸等の固体酸等が挙げられるが、これらに特に限定
されない。これらの中でも、製造上の観点から、有機酸又は固体酸が好ましく、入手の容
易さや取り扱い易さ等の製造上の観点から、塩酸又は硫酸が好ましい。なお、酸触媒につ
いては、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0140】
また、酸触媒の使用量は、使用する原料及び触媒の種類、さらには反応条件等に応じて
適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して、0.01~100
質量部であることが好ましい。但し、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒ
ドロキシアントラセン、アセナフチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノー
ル、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボ
ルナジエン、5-ビニルノルボルナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等の
非共役二重結合を有する化合物との共重合反応の場合は、必ずしもアルデヒド類は必要な
い。
【0141】
上記式(2)で表される化合物とアルデヒド及び/又はケトンとの縮合反応においては
、反応溶媒を用いることもできる。この重縮合における反応溶媒としては、公知のものの
中から適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、例えば、水、メタノール、
エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジオキサン又はこれらの
混合溶媒等が挙げられる。なお、溶媒は、1種を単独で或いは2種以上を組み合わせて用
いることができる。
【0142】
また、これらの溶媒の使用量は、使用する原料及び触媒の種類、さらには反応条件等に
応じて適宜設定でき、特に限定されないが、反応原料100質量部に対して0~2000
質量部の範囲であることが好ましい。さらに、反応温度は、反応原料の反応性に応じて適
宜選択することができ、特に限定されないが、通常10~200℃の範囲である。なお、
反応方法は、公知の手法を適宜選択して用いることができ、特に限定されないが、上記式
(2)で表される化合物、アルデヒド及び/又はケトン類、触媒を一括で仕込む方法や、
上記式(2)で表される化合物やアルデヒド及び/又はケトン類を触媒存在下で滴下して
いく方法が挙げられる。
【0143】
重縮合反応終了後、得られた化合物の単離は、常法に従って行うことができ、特に限定
されない。例えば、系内に存在する未反応原料や触媒等を除去するために、反応釜の温度
を130~230℃にまで上昇させ、1~50mmHg程度で揮発分を除去する等の一般
的手法を採ることにより、目的物であるノボラック化した樹脂を単離することができる。
【0144】
ここで、上記式(4)で表される構造を有する樹脂は、上記式(2)で表される化合物
の単独重合体であってもよいが、他のフェノール類との共重合体であってもよい。ここで
共重合可能なフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、ジメチルフェノ
ール、トリメチルフェノール、ブチルフェノール、フェニルフェノール、ジフェニルフェ
ノール、ナフチルフェノール、レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、ブ
チルカテコール、メトキシフェノール、メトキシフェノール、プロピルフェノール、ピロ
ガロール、チモール等が挙げるが、これらに特に限定されない。
【0145】
また、上記式(4)で表される構造を有する樹脂は、上述した他のフェノール類以外に
、重合可能なモノマーと共重合させたものであってもよい。かかる共重合モノマーとして
は、例えば、ナフトール、メチルナフトール、メトキシナフトール、ジヒドロキシナフタ
レン、インデン、ヒドロキシインデン、ベンゾフラン、ヒドロキシアントラセン、アセナ
フチレン、ビフェニル、ビスフェノール、トリスフェノール、ジシクロペンタジエン、テ
トラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルナ
エン、ピネン、リモネン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、上記式(
4)で表される構造を有する樹脂は、上記式(2)で表される化合物と上述したフェノー
ル類との2元以上の(例えば、2~4元系)共重合体であっても、上記式(2)で表され
る化合物と上述した共重合モノマーとの2元以上(例えば、2~4元系)共重合体であっ
ても、上記式(2)で表される化合物と上述したフェノール類と上述した共重合モノマー
との3元以上の(例えば、3~4元系)共重合体であっても構わない。
【0146】
なお、上記式(4)で表される構造を有する樹脂の分子量は、特に限定されないが、ポ
リスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が500~30,000であることが好ましく
、より好ましくは750~20,000である。また、架橋効率を高めるとともにベーク
中の揮発成分を抑制する観点から、上記式(4)で表される構造を有する樹脂は、分散度
(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が1.2~7の範囲内であることが好ましい
。なお、上記Mw及びMnは、後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0147】
上記式(4)で表される構造を有する樹脂は、湿式プロセスの適用がより容易になる等
の観点から、溶媒に対する溶解性が高いものであることが好ましい。より具体的には、1
-メトキシ-2-プロパノール(PGME)及び/又はプロピレングリコールモノメチル
エーテルアセテート(PGMEA)を溶媒とする場合、当該溶媒に対する溶解度が10質
量%以上であることが好ましい。ここで、PGME及び/又はPGMEAに対する溶解度
は、「樹脂の質量÷(樹脂の質量+溶媒の質量)×100(質量%)」と定義される。例
えば、上記樹脂10gがPGMEA90gに対して溶解する場合は、上記樹脂のPGME
Aに対する溶解度は、「10質量%以上」となり、溶解しない場合は、「10質量%未満
」となる。
【0148】
[化合物及び/又は樹脂の精製方法]
本実施形態における化合物及び/又は樹脂の精製方法は、上記式(0)で表される化合
物又は上記式(0)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂の少なくともいずれ
か、より具体的には上記式(1)で表される化合物、上記式(1)で表される化合物をモ
ノマーとして得られる樹脂、上記式(2)で表される化合物、及び上記式(2)で表され
る化合物をモノマーとして得られる樹脂から選ばれる1種以上を、溶媒に溶解させて溶液
(S)を得る工程と、得られた溶液(S)と酸性の水溶液とを接触させて、上記化合物及
び/又は上記樹脂中の不純物を抽出する工程(第一抽出工程)とを含み、上記溶液(S)
を得る工程で用いる溶媒が、水と任意に混和しない溶媒を含む。
第一抽出工程において、上記樹脂は、上記式(1)で表される化合物及び/又は式(2
)で表される化合物と架橋反応性のある化合物との反応によって得られる樹脂であること
が好ましい。本実施形態の精製方法によれば、上述した特定の構造を有する化合物又は樹
脂に不純物として含まれ得る種々の金属の含有量を低減することができる。
より詳細には、本実施形態の精製方法においては、上記化合物及び/又は上記樹脂を、
水と任意に混和しない有機溶媒に溶解させて溶液(S)を得て、さらにその溶液(S)を
酸性水溶液と接触させて抽出処理を行うことができる。これにより、上記溶液(S)に含
まれる金属分を水相に移行させた後、有機相と水相とを分離して金属含有量の低減された
化合物及び/又は樹脂を得ることができる。
【0149】
本実施形態の精製方法で使用する化合物及び/又は樹脂は、単独で用いてもよく、2種
以上混合して用いることもできる。また、上記化合物や樹脂は、各種界面活性剤、各種架
橋剤、各種酸発生剤、各種安定剤等を含有していてもよい。
【0150】
本実施形態の精製方法において使用される水と任意に混和しない溶媒としては、特に限
定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましく、具体的には
、室温下における水への溶解度が30%未満、より好ましくは20%未満、さらに好まし
くは10%未満である有機溶媒である。当該有機溶媒の使用量は、使用する化合物と樹脂
の合計量に対して、1~100質量倍であることが好ましい。
【0151】
水と任意に混和しない溶媒の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ジエチ
ルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢
酸イソアミル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイ
ソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、2-ペンタノ
ン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコー
ルモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエ
ーテルアセテート類;n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キ
シレン等の芳香族炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類等
が挙げられる。これらの中でも、トルエン、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロ
ペンタノン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテ
ート、酢酸エチルが好ましく、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、シクロヘキサノン
、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましく、メチルイソブチ
ルケトン、酢酸エチルがよりさらに好ましい。メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等は
、上記化合物及び該化合物を構成成分として含む樹脂の飽和溶解度が比較的高く、沸点が
比較的低いことから、工業的に溶媒を留去する場合や乾燥により除去する工程での負荷を
低減することが可能となる。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、また
2種以上を混合して用いることもできる。
【0152】
本実施形態の精製方法において使用される酸性水溶液としては、一般に知られる有機系
化合物若しくは無機系化合物を水に溶解させた水溶液の中から適宜選択される。酸性水溶
液としては、以下に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸を水に
溶解させた鉱酸水溶液;酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マ
レイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、p-トルエン
スルホン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸を水に溶解させた有機酸水溶液が挙げられる。
これらの酸性水溶液は、それぞれ単独で用いることもできるし、また2種以上を組み合わ
せて用いることもできる。これらの酸性水溶液の中でも、塩酸、硫酸、硝酸及びリン酸か
らなる群より選ばれる1種以上の鉱酸水溶液、又は、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、マロン
酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、フェノー
ルスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及びトリフルオロ酢酸からなる群より選ばれる1
種以上の有機酸水溶液であることが好ましく、硫酸、硝酸、及び酢酸、蓚酸、酒石酸、ク
エン酸等のカルボン酸の水溶液がより好ましく、硫酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸の水溶液
がさらに好ましく、蓚酸の水溶液がよりさらに好ましい。蓚酸、酒石酸、クエン酸等の多
価カルボン酸は、金属イオンに配位し、キレート効果が生じるために、より効果的に金属
を除去できる傾向にあるものと考えられる。また、ここで用いる水は、本実施形態の精製
方法の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例えばイオン交換水等を用いることが好ま
しい。
【0153】
本実施形態の精製方法において使用する酸性水溶液のpHは、特に限定されないが、上
記化合物や樹脂への影響を考慮して、水溶液の酸性度を調整することが好ましい。酸性水
溶液のpHは、通常0~5程度であり、好ましくはpH0~3程度である。
【0154】
本実施形態の精製方法において使用する酸性水溶液の使用量は特に限定されないが、金
属除去のための抽出回数を低減する観点、及び全体の液量を考慮して操作性を確保する観
点から、使用量を調整することが好ましい。上記観点から、酸性水溶液の使用量は、上記
溶液(S)100質量%に対して、好ましくは10~200質量%であり、より好ましく
は20~100質量%である。
【0155】
本実施形態の精製方法においては、上記酸性水溶液と、上記溶液(S)とを接触させる
ことにより、溶液(S)中の上記化合物又は上記樹脂から金属分を抽出することができる
。
【0156】
本実施形態の精製方法においては、上記溶液(S)が、水と任意に混和する有機溶媒を
さらに含むことが好ましい。溶液(S)が水と任意に混和する有機溶媒を含む場合、上記
化合物及び/又は樹脂の仕込み量を増加させることができ、また、分液性が向上し、高い
釜効率で精製を行うことができる傾向にある。水と任意に混和する有機溶媒を加える方法
は特に限定されず、例えば、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法、予め水又は酸性水溶
液に加える方法、有機溶媒を含む溶液と水又は酸性水溶液とを接触させた後に加える方法
のいずれでもよい。これらの中でも、操作の作業性や仕込み量の管理のし易さの観点から
、予め有機溶媒を含む溶液に加える方法が好ましい。
【0157】
本実施形態の精製方法において使用される水と任意に混和する有機溶媒としては、特に
限定されないが、半導体製造プロセスに安全に適用できる有機溶媒が好ましい。水と任意
に混和する有機溶媒の使用量は、溶液相と水相とが分離する範囲であれば特に限定されな
いが、使用する化合物と樹脂の合計量に対して、0.1~100質量倍であることが好ま
しく、0.1~50質量倍であることがより好ましく、0.1~20質量倍であることが
さらに好ましい。
【0158】
本実施形態の精製方法において使用される水と任意に混和する有機溶媒の具体例として
は、以下に限定されないが、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン等のエーテル類
;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、N-メチル
ピロリドン等のケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール
モノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレ
ングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類等の脂肪族炭化水素類が挙げ
られる。これらの中でも、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエー
テル等が好ましく、N-メチルピロリドン、プロピレングリコールモノメチルエーテルが
より好ましい。これらの溶媒はそれぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合し
て用いることもできる。
【0159】
抽出処理を行う際の温度は通常、20~90℃であり、好ましくは30~80℃の範囲
である。抽出操作は、例えば、撹拌等によりよく混合させた後、静置することにより行わ
れる。これにより、溶液(S)中に含まれていた金属分が水相に移行する。また、本操作
により、溶液の酸性度が低下し、化合物及び/又は樹脂の変質を抑制することができる。
【0160】
上記混合溶液は静置により、化合物及び/又は樹脂と溶媒とを含む溶液相と、水相とに
分離するので、デカンテーション等により、溶液相を回収する。静置する時間は特に限定
されないが、溶媒を含む溶液相と水相との分離をより良好にする観点から、当該静置する
時間を調整することが好ましい。通常、静置する時間は1分以上であり、好ましくは10
分以上であり、より好ましくは30分以上である。また、抽出処理は1回だけでも構わな
いが、混合、静置、分離という操作を複数回繰り返して行うことも有効である。
【0161】
本実施形態の精製方法においては、上記第一抽出工程後、上記化合物又は上記樹脂を含
む溶液相を、さらに水に接触させて、上記化合物又は上記樹脂中の不純物を抽出する工程
(第二抽出工程)を含むことが好ましい。具体的には、例えば、酸性の水溶液を用いて上
記抽出処理を行った後に、該水溶液から抽出され、回収された化合物及び/又は樹脂と溶
媒を含む溶液相を、さらに水による抽出処理に供することが好ましい。この水による抽出
処理は、特に限定されないが、例えば、上記溶液相と水とを、撹拌等によりよく混合させ
た後、得られた混合溶液を静置することにより行うことができる。当該静置後の混合溶液
は、化合物及び/又は樹脂と溶媒とを含む溶液相と水相とに分離するので、デカンテーシ
ョン等により溶液相を回収することができる。
【0162】
また、ここで用いる水は、本実施の形態の目的に沿って、金属含有量の少ない水、例え
ば、イオン交換水等であることが好ましい。抽出処理は1回だけでも構わないが、混合、
静置、分離という操作を複数回繰り返して行うことも有効である。また、抽出処理におけ
る両者の使用割合や、温度、時間等の条件は特に限定されないが、先の酸性水溶液との接
触処理の場合と同様で構わない。
【0163】
こうして得られた化合物及び/又は樹脂と溶媒とを含む溶液に混入しうる水分について
は、減圧蒸留等の操作を施すことにより容易に除去できる。また、必要により上記溶液に
溶媒を加え、化合物及び/又は樹脂の濃度を任意の濃度に調整することができる。
【0164】
得られた化合物及び/又は樹脂と溶媒とを含む溶液から、化合物及び/又は樹脂を単離
する方法は、特に限定されず、減圧除去、再沈殿による分離、及びそれらの組み合わせ等
、公知の方法で行うことができる。必要に応じて、濃縮操作、ろ過操作、遠心分離操作、
乾燥操作等の公知の処理を行うことができる。
【0165】
[組成物]
本実施形態における組成物は、上記式(0)で表される化合物及び上記式(0)で表さ
れる化合物をモノマーとして得られる樹脂、より具体的には上記式(1)で表される化合
物、上記式(1)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂、上記式(2)で表さ
れる化合物、及び上記式(2)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂からなる
群より選ばれる1種以上を含有する。
【0166】
本実施形態の組成物は、リソグラフィー用膜形成組成物や光学部品形成組成物であるこ
とができる。
【0167】
[化学増幅型レジスト用途向けリソグラフィー用膜形成組成物]
本実施形態における化学増幅型レジスト用途向けリソグラフィー用膜形成組成物(以下
、「レジスト組成物」ともいう。)は、上記式(0)で表される化合物及び上記式(0)
で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂、より具体的には上記式(1)で表され
る化合物、上記式(1)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂、上記式(2)
で表される化合物、及び上記式(2)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂か
らなる群より選ばれる1種以上をレジスト基材として含有する。
【0168】
また、本実施形態における組成物(レジスト組成物)は、溶媒をさらに含有することが
好ましい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコールモノメチル
エーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリ
コールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエ
ーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレン
グリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレング
リコールモノアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリ
コールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ-n-ブチル
エーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロ
ピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエ
ーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル、乳
酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸n-アミル等の乳酸エステル類;酢酸メチル、酢
酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸n-アミル、酢酸n-ヘキシル、プ
ロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;3-メトキシ
プロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチ
ル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、
3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メト
キシ-3-メチルプロピオン酸ブチル、3-メトキシ-3-メチル酪酸ブチル、アセト酢
酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレ
ン等の芳香族炭化水素類;2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、シクロペ
ンタノン(CPN)、シクロヘキサノン(CHN)等のケトン類;N,N-ジメチルホル
ムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリ
ドン等のアミド類;γ-ラクトン等のラクトン類等を挙げることができるが、これらに特
に限定はされない。これらの溶媒は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0169】
本実施形態で使用される溶媒は、安全溶媒であることが好ましく、より好ましくは、P
GMEA、PGME、CHN、CPN、2-ヘプタノン、アニソール、酢酸ブチル、プロ
ピオン酸エチル及び乳酸エチルから選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはP
GMEA、PGME及びCHNから選ばれる少なくとも一種である。
【0170】
本実施形態において、固形成分の量と溶媒との量は、特に限定されないが、固形成分の
量と溶媒との合計質量100質量%に対して、固形成分1~80質量%及び溶媒20~9
9質量%であることが好ましく、より好ましくは固形成分1~50質量%及び溶媒50~
99質量%、さらに好ましくは固形成分2~40質量%及び溶媒60~98質量%であり
、特に好ましくは固形成分2~10質量%及び溶媒90~98質量%である。
【0171】
本実施形態の組成物(レジスト組成物)は、他の固形成分として、酸発生剤(C)、酸
架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)からなる群より選ばれる少な
くとも一種をさらに含有してもよい。なお、本明細書において「固形成分」とは溶媒以外
の成分をいう。
【0172】
ここで、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F
)については公知のものが使用でき、特に限定されないが、例えば、国際公開第2013
/024778号に記載されているものが好ましい。
【0173】
[各成分の配合割合]
本実施形態のレジスト組成物において、レジスト基材として用いる化合物及び/又は樹
脂の含有量は、特に限定されないが、固形成分の全質量(レジスト基材、酸発生剤(C)
、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)及びその他の成分(F)等の任意に使用される成
分を含む固形成分の総和、以下同様。)の50~99.4質量%であることが好ましく、
より好ましくは55~90質量%、さらに好ましくは60~80質量%、特に好ましくは
60~70質量%である。レジスト基材として用いる化合物及び/又は樹脂の含有量が上
記範囲である場合、解像度が一層向上し、ラインエッジラフネス(LER)が一層小さく
なる傾向にある。
なお、レジスト基材として化合物と樹脂の両方を含有する場合、上記含有量は、両成分
の合計量である。
【0174】
[その他の成分(F)]
本実施形態におけるレジスト組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応
じて、レジスト基材、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)及び酸拡散制御剤(E)以外の成
分として、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、有機カルボン酸又はリンのオ
キソ酸若しくはその誘導体、熱及び/又は光硬化触媒、重合禁止剤、難燃剤、充填剤、カ
ップリング剤、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤、レベ
リング剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等の各種添加剤を
、1種又は2種以上添加することができる。なお、本明細書において、その他の成分(F
)を任意成分(F)ということがある。
【0175】
本実施形態のレジスト組成物において、レジスト基材(以下、「成分(A)」ともいう
。)、酸発生剤(C)、酸架橋剤(G)、酸拡散制御剤(E)、任意成分(F)の含有量
(成分(A)/酸発生剤(C)/酸架橋剤(G)/酸拡散制御剤(E)/任意成分(F)
)は、固形物基準の質量%で、
好ましくは50~99.4/0.001~49/0.5~49/0.001~49/0
~49、
より好ましくは55~90/1~40/0.5~40/0.01~10/0~5、
さらに好ましくは60~80/3~30/1~30/0.01~5/0~1、
特に好ましくは60~70/10~25/2~20/0.01~3/0、である。
各成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。各成
分の配合割合が上記範囲である場合、感度、解像度、現像性等の性能に優れる傾向にある
。
【0176】
本実施形態のレジスト組成物は、通常は、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液と
し、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過すること
により調製される。
【0177】
本実施形態のレジスト組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、本実施形態の樹脂
以外のその他の樹脂を含むことができる。その他の樹脂としては、特に限定されず、例え
ば、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノール類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール
、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びアクリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェ
ノールを単量体単位として含む重合体或いはこれらの誘導体等が挙げられる。その他の樹
脂の含有量は、特に限定されず、使用する成分(A)の種類に応じて適宜調節されるが、
成分(A)100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、より好ましく
は10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0178】
[レジスト組成物の物性等]
本実施形態のレジスト組成物を用いて、スピンコートによりアモルファス膜を形成する
ことができる。また、本実施形態のレジスト組成物は、一般的な半導体製造プロセスに適
用することができる。上記式(1)及び/又は式(2)で表される化合物、これらをモノ
マーとして得られる樹脂の種類及び/又は用いる現像液の種類によって、ポジ型レジスト
パターン及びネガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
【0179】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成
したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下であ
ることが好ましく、0.05~5Å/secであることがより好ましく、0.0005~
5Å/secであることがさらに好ましい。溶解速度が5Å/sec以下である場合、現
像液に不溶で、レジストとすることが容易となる傾向にある。また、溶解速度が0.00
05Å/sec以上である場合、解像性が向上する場合がある。これは、上記式(1)及
び(2)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の露光前後の溶
解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面の
コントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効
果もみられる。
【0180】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成
したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上で
あることが好ましい。溶解速度が10Å/sec以上である場合、現像液に易溶で、レジ
ストに好適である。また、溶解速度が10Å/sec以上である場合、解像性が向上する
場合もある。これは、上記式(1)及び(2)で表される化合物及び/又は該化合物を構
成成分として含む樹脂のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するためと推測される
。またディフェクトの低減効果もみられる。
【0181】
上記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬
前後の膜厚を、目視、エリプソメーター又はQCM法等の公知の方法によって測定して決
定することできる。
【0182】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成
したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線
により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上で
あることが好ましい。溶解速度が10Å/sec以上である場合、現像液に易溶で、レジ
ストに好適である。また、溶解速度が10Å/sec以上である場合、解像性が向上する
場合もある。これは、上記式(1)及び(2)で表される化合物及び/又は該化合物を構
成成分として含む樹脂のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するためと推測される
。またディフェクトの低減効果もみられる。
【0183】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態のレジスト組成物をスピンコートして形成
したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射線
により露光した部分の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下であ
ることが好ましく、0.05~5Å/secであることがより好ましく、0.0005~
5Å/secであることがさらに好ましい。溶解速度が5Å/sec以下である場合、現
像液に不溶で、レジストとすることが容易となる傾向にある。また、溶解速度が0.00
05Å/sec以上である場合、解像性が向上する場合もある。これは、上記式(1)及
び(2)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の露光前後の溶
解性の変化により、現像液に溶解する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面の
コントラストが大きくなるためと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効
果もみられる。
【0184】
[非化学増幅型レジスト用途向けリソグラフィー用膜形成組成物]
本実施形態の非化学増幅型レジスト用途向けリソグラフィー用膜形成組成物(以下、「
感放射線性組成物」ともいう。)に含有させる成分(A)は、後述するジアゾナフトキノ
ン光活性化合物(B)と併用し、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエ
キシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線を照射することにより、現像液に易溶な化
合物となるポジ型レジスト用基材として有用である。g線、h線、i線、KrFエキシマ
レーザー、ArFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線により、成分(A)の
性質は大きくは変化しないが、現像液に難溶なジアゾナフトキノン光活性化合物(B)が
易溶な化合物に変化するため、現像工程によってレジストパターンを作ることが可能とな
る。
【0185】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、比較的低分子量の化合物で
あることから、得られるレジストパターンのラフネスは非常に小さい。また、上記式(1
)中、R0~R5からなる群より選択される少なくとも1つがヨウ素原子を含む基であるこ
とが好ましく、また、上記式(2)中、R0A、R1A及びR2Aからなる群より選択される少
なくとも1つがヨウ素原子を含む基であることが好ましい。本実施形態の感放射線性組成
物は、ヨウ素原子を含む基を有する成分(A)を適用した場合、電子線、極端紫外線(E
UV)、X線等の放射線に対する吸収能を増加させ、その結果、感度を高めることが可能
となるため好ましい。
【0186】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)のガラス転移温度は、好ましく
は100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上、特に好
ましくは150℃以上である。成分(A)のガラス転移温度の上限値は、特に限定されな
いが、例えば、400℃である。成分(A)のガラス転移温度が上記範囲内であることに
より、半導体リソグラフィープロセスにおいて、パターン形状を維持しうる耐熱性を有し
、高解像度等の性能が向上する傾向にある。
【0187】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)のガラス転移温度の示差走査熱
量分析により求めた結晶化発熱量は、好ましくは20J/g未満である。また、(結晶化
温度)-(ガラス転移温度)は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さ
らに好ましくは100℃以上、特に好ましくは130℃以上である。結晶化発熱量が20
J/g未満、又は(結晶化温度)-(ガラス転移温度)が上記範囲内であると、感放射線
性組成物をスピンコートすることによりアモルファス膜を形成しやすく、かつレジストに
必要な成膜性が長期に渡り保持でき、解像性を向上することができる傾向にある。
【0188】
本実施形態において、上記結晶化発熱量、結晶化温度及びガラス転移温度は、島津製作
所製DSC/TA-50WSを用いた示差走査熱量分析により求めることができる。試料
約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス気流中(50mL/分)昇温速
度20℃/分で融点以上まで昇温する。急冷後、再び窒素ガス気流中(30mL/分)昇
温速度20℃/分で融点以上まで昇温する。さらに急冷後、再び窒素ガス気流中(30m
L/分)昇温速度20℃/分で400℃まで昇温する。ステップ状に変化したベースライ
ンの段差の中点(比熱が半分に変化したところ)の温度をガラス転移温度(Tg)、その
後に現れる発熱ピークの温度を結晶化温度とする。発熱ピークとベースラインに囲まれた
領域の面積から発熱量を求め、結晶化発熱量とする。
【0189】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、常圧下、100以下、好ま
しくは120℃以下、より好ましくは130℃以下、さらに好ましくは140℃以下、特
に好ましくは150℃以下において、昇華性が低いことが好ましい。昇華性が低いとは、
熱重量分析において、所定温度で10分保持した際の重量減少が10%以下、好ましくは
5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくは0.1
%以下であることを示す。昇華性が低いことにより、露光時のアウトガスによる露光装置
の汚染を防止することができる。また低ラフネスで良好なパターン形状を得ることができ
る。
【0190】
本実施形態の感放射線性組成物に含有させる成分(A)は、プロピレングリコールモノ
メチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(
PGME)、シクロヘキサノン(CHN)、シクロペンタノン(CPN)、2-ヘプタノ
ン、アニソール、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル及び乳酸エチルからなる群から選ばれ
、かつ、成分(A)に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、好ましくは1質量
%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上溶解する。特に
好ましくは、PGMEA、PGME、CHNからなる群から選ばれ、かつ、(A)レジス
ト基材に対して最も高い溶解能を示す溶媒に、23℃で、20質量%以上、特に好ましく
はPGMEAに対して、23℃で、20質量%以上溶解する。上記条件を満たしているこ
とにより、実生産における半導体製造工程での使用が容易となる。
【0191】
[ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)]
本実施形態の感放射線性組成物に含有させるジアゾナフトキノン光活性化合物(B)は
、ポリマー性及び非ポリマー性ジアゾナフトキノン光活性化合物を含むジアゾナフトキノ
ン物質であり、一般にポジ型レジスト組成物において、感光性成分(感光剤)として用い
られているものであれば特に制限なく、1種又は2種以上を任意に選択して用いることが
できる。
【0192】
成分(B)としては、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジア
ジドスルホン酸クロライド等と、これら酸クロライドと縮合反応可能な官能基を有する低
分子化合物又は高分子化合物とを反応させることによって得られる化合物が好ましい。こ
こで、酸クロライドと縮合可能な官能基としては、特に限定されず、例えば、水酸基、ア
ミノ基等が挙げられるが、特に水酸基が好適である。水酸基を含む酸クロライドと縮合可
能な化合物としては、特に限定されず、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、2、4-
ジヒドロキシベンゾフェノン、2、3、4-トリヒドロキシベンゾフェノン、2、4、6
-トリヒドロキシベンゾフェノン、2、4、4’-トリヒドロキシベンゾフェノン、2、
3、4、4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2、2’、4、4’-テトラヒドロキ
シベンゾフェノン、2、2’、3、4、6’-ペンタヒドロキシベンゾフェノン等のヒド
ロキシベンゾフェノン類;ビス(2、4-ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2、3
、4-トリヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2、4-ジヒドロキシフェニル)プロパ
ン等のヒドロキシフェニルアルカン類;4、4’、3”、4”-テトラヒドロキシ-3、
5、3’、5’-テトラメチルトリフェニルメタン、4、4’、2”、3”、4”-ペン
タヒドロキシ-3、5、3’、5’-テトラメチルトリフェニルメタン等のヒドロキシト
リフェニルメタン類等を挙げることができる。
また、ナフトキノンジアジドスルホン酸クロライドやベンゾキノンジアジドスルホン酸
クロライド等の酸クロライドとしては、例えば、1、2-ナフトキノンジアジド-5-ス
ルフォニルクロライド、1、2-ナフトキノンジアジド-4-スルフォニルクロライド等
が好ましいものとして挙げられる。
【0193】
本実施形態の感放射線性組成物は、例えば、使用時に各成分を溶媒に溶解して均一溶液
とし、その後、必要に応じて、例えば、孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過するこ
とにより調製されることが好ましい。
【0194】
[感放射線性組成物の特性]
本実施形態の感放射線性組成物を用いて、スピンコートによりアモルファス膜を形成す
ることができる。また、本実施形態の感放射線性組成物は、一般的な半導体製造プロセス
に適用することができる。用いる現像液の種類によって、ポジ型レジストパターン及びネ
ガ型レジストパターンのいずれかを作り分けることができる。
【0195】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形
成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下で
あることが好ましく、0.05~5Å/secであることがより好ましく、0.0005
~5Å/secであることがさらに好ましい。溶解速度が5Å/sec以下である場合、
現像液に不溶で、レジストとすることが容易となる傾向にある。また、溶解速度が0.0
005Å/sec以上である場合、解像性が向上する場合がある。これは、上記式(1)
及び(2)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂の露光前後の
溶解性の変化により、現像液に溶解する露光部と、現像液に溶解しない未露光部との界面
のコントラストが大きくなるからと推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減
効果もみられる。
【0196】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形
成したアモルファス膜の23℃における現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上
であることが好ましい。当該溶解速度が10Å/sec以上である場合、現像液に易溶で
、レジストに好適である。また、溶解速度が10Å/sec以上である場合、解像性が向
上する場合もある。これは、上記式(1)及び(2)で表される化合物及び/又は該化合
物を構成成分として含む樹脂のミクロの表面部位が溶解し、LERを低減するためと推測
される。またディフェクトの低減効果もみられる。
【0197】
上記溶解速度は、23℃にて、アモルファス膜を所定時間現像液に浸漬させ、その浸漬
前後の膜厚を、目視、エリプソメーター又はQCM法等の公知の方法によって測定して決
定することができる。
【0198】
ポジ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形
成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射
線により照射した後、又は、20~500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃にお
ける現像液に対する溶解速度は、10Å/sec以上が好ましく、10~10000Å/
secがより好ましく、100~1000Å/secがさらに好ましい。溶解速度が10
Å/sec以上である場合、現像液に易溶で、レジストに好適である。また、溶解速度が
10000Å/sec以下である場合、解像性が向上する場合もある。これは、上記式(
1)及び(2)で表される化合物及び/又は該化合物を構成成分として含む樹脂のミクロ
の表面部位が溶解し、LERを低減するためと推測される。またディフェクトの低減効果
もみられる。
【0199】
ネガ型レジストパターンの場合、本実施形態の感放射線性組成物をスピンコートして形
成したアモルファス膜のKrFエキシマレーザー、極端紫外線、電子線又はX線等の放射
線により照射した後、又は、20~500℃で加熱した後の露光した部分の、23℃にお
ける現像液に対する溶解速度は、5Å/sec以下であることが好ましく、0.05~5
Å/secであることがより好ましく、0.0005~5Å/secであることがさらに
好ましい。溶解速度が5Å/sec以下である場合、現像液に不溶で、レジストとするこ
とが容易となる傾向にある。また、溶解速度が0.0005Å/sec以上である場合、
解像性が向上する場合もある。これは、上記式(1)及び(2)で表される化合物及び/
又は該化合物を構成成分として含む樹脂の露光前後の溶解性の変化により、現像液に溶解
する未露光部と、現像液に溶解しない露光部との界面のコントラストが大きくなるためと
推測される。またLERの低減、ディフェクトの低減効果もみられる。
【0200】
[各成分の配合割合]
本実施形態の感放射線性組成物において、成分(A)の含有量は、固形成分全重量(成
分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及びその他の成分(D)等の任意に使
用される固形成分の総和、以下同様。)に対して、好ましくは1~99質量%であり、よ
り好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは10~90質量%、特に好ましくは25
~75質量%である。本実施形態の感放射線性組成物は、成分(A)の含有量が上記範囲
内であると、高感度でラフネスの小さなパターンを得ることができる傾向にある。
【0201】
本実施形態の感放射線性組成物において、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含
有量は、固形成分全重量(成分(A)、ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)及びその
他の成分(D)等の任意に使用される固形成分の総和、以下同様。)に対して、好ましく
は1~99質量%であり、より好ましくは5~95質量%、さらに好ましくは10~90
質量%、特に好ましくは25~75質量%である。本実施の形態の感放射線性組成物は、
ジアゾナフトキノン光活性化合物(B)の含有量が上記範囲内であると、高感度でラフネ
スの小さなパターンを得ることができる傾向にある。
【0202】
[その他の成分(D)]
本実施形態の感放射線性組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて
、成分(A)及びジアゾナフトキノン光活性化合物(B)以外の成分として、酸発生剤、
酸架橋剤、酸拡散制御剤、溶解促進剤、溶解制御剤、増感剤、界面活性剤、有機カルボン
酸又はリンのオキソ酸若しくはその誘導体、熱及び/又は光硬化触媒、重合禁止剤、難燃
剤、充填剤、カップリング剤、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、染料、顔料、増粘剤、滑剤
、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等
の各種添加剤を1種又は2種以上添加することができる。なお、本明細書において、その
他の成分(D)を任意成分(D)ということがある。
【0203】
本実施形態の感放射線性組成物において、各成分の配合割合(成分(A)/ジアゾナフ
トキノン光活性化合物(B)/任意成分(D))は、固形成分基準の質量%で、
好ましくは1~99/99~1/0~98、
より好ましくは5~95/95~5/0~49、
さらに好ましくは10~90/90~10/0~10、
さらにより好ましくは20~80/80~20/0~5、
特に好ましくは25~75/75~25/0、である。
各成分の配合割合は、その総和が100質量%になるように各範囲から選ばれる。本実
施形態の感放射線性組成物の各成分の配合割合が上記範囲である場合、ラフネスに加え、
感度、解像度等の性能に優れる傾向にある。
【0204】
本実施形態の感放射線性組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の樹脂を
含んでもよい。このようなその他の樹脂としては、ノボラック樹脂、ポリビニルフェノー
ル類、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、スチレン-無水マレイン酸樹脂、及びア
クリル酸、ビニルアルコール、又はビニルフェノールを単量体単位として含む重合体或い
はこれらの誘導体等が挙げられる。これらの樹脂の配合量は、使用する成分(A)の種類
に応じて適宜調節されるが、成分(A)100質量部に対して、30質量部以下であるこ
とが好ましく、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下、特に好
ましくは0質量部である。
【0205】
[レジストパターンの形成方法]
本実施形態におけるレジストパターンの形成方法は、上述した本実施形態のレジスト組
成物又は感放射線性組成物を用いて基板上にフォトレジスト層を形成した後、上記フォト
レジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む。より詳しくは、上述
した本実施形態のレジスト組成物又は感放射線性組成物を用いて基板上にレジスト膜を形
成する工程と、形成されたレジスト膜を露光する工程と、上記レジスト膜を現像してレジ
ストパターンを形成する工程とを備える。本実施形態におけるレジストパターンは、多層
プロセスにおける上層レジストとして形成することもできる。
【0206】
レジストパターンを形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の方法
が挙げられる。まず、従来公知の基板上にレジスト組成物又は感放射線性組成物を、回転
塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって塗布することによりレジスト膜を形成
する。従来公知の基板とは、特に限定されず、例えば、電子部品用の基板や、これに所定
の配線パターンが形成されたもの等が挙げられる。より具体的には、シリコンウェハー、
銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パ
ターンの材料としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金等が挙げられる。また
、必要に応じて、前述基板上に無機系及び/又は有機系の膜が設けられたものであっても
よい。無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜
としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。基板上にはヘキサメチレンジ
シラザン等による表面処理を行ってもよい。
【0207】
次に、必要に応じて、レジスト組成物又は感放射線性組成物を塗布した基板を加熱する
。加熱条件は、レジスト組成物又は感放射線組成物の配合組成等により変わるが、20~
250℃であることが好ましく、より好ましくは20~150℃である。加熱することに
よって、レジストの基板に対する密着性が向上する傾向にあるため好ましい。次いで、可
視光線、紫外線、エキシマレーザー、電子線、極端紫外線(EUV)、X線、及びイオン
ビームからなる群から選ばれるいずれかの放射線により、レジスト膜を所望のパターンに
露光する。露光条件等は、レジスト組成物又は感放射線性組成物の配合組成等に応じて適
宜選定される。本実施形態においては、露光における高精度の微細パターンを安定して形
成するために、放射線照射後に加熱することが好ましい。加熱条件は、レジスト組成物又
は感放射線性組成物の配合組成等により変わるが、20~250℃であることが好ましく
、より好ましくは20~150℃である。
【0208】
次いで、露光されたレジスト膜を現像液で現像することにより、所定のレジストパター
ンを形成する。現像液としては、使用する式(1)若しくは式(2)で表される化合物又
は式(1)若しくは式(2)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂に対して溶
解度パラメーター(SP値)の近い溶剤を選択することが好ましく、ケトン系溶剤、エス
テル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤等の極性溶剤、炭化水素
系溶剤又はアルカリ水溶液を用いることができる。
【0209】
ケトン系溶剤としては、例えば、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2
-ノナノン、アセトン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、ジイソブチ
ルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチ
ルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン
、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケ
トン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0210】
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプ
ロピル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレング
リコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセ
テート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプ
ロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテ
ート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、
乳酸プロピル等が挙げられる。
【0211】
アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロ
ピルアルコール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、n-ブチルアルコール
、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n
-ヘキシルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘプチルアルコール、n-
オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコールや、エチレングリコール、ジエチレ
ングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤や、エチレングリコールモ
ノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノ
エチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ
メチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノー
ル等のグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
【0212】
エーテル系溶剤としては、例えば、上記グリコールエーテル系溶剤の他、ジオキサン、
テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0213】
アミド系溶剤としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセ
トアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,
3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0214】
炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペ
ンタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0215】
上記溶剤は、複数混合してもよいし、性能を有する範囲内で、上記以外の溶剤や水と混
合し使用してもよい。但し、本発明の効果を十二分に奏するという観点からは、現像液全
体としての含水率が70質量%未満であることが好ましく、50質量%未満であることが
より好ましく、30質量%未満であることがさらに好ましく、10質量%未満であること
がさらにより好ましく、実質的に水分を含有しないことが特に好ましい。すなわち、現像
液に対する有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、30質量%以上100質量%以
下であることが好ましく、50質量%以上100質量%以下であることがより好ましく、
70質量%以上100質量%以下であることがさらに好ましく、90質量%以上100質
量%以下であることがさらにより好ましく、95質量%以上100質量%以下であること
が特に好ましい。
【0216】
アルカリ水溶液としては、例えば、モノ-、ジ-或いはトリアルキルアミン類、モノ-
、ジ-或いはトリアルカノールアミン類、複素環式アミン類、テトラメチルアンモニウム
ヒドロキシド(TMAH)、コリン等のアルカリ性化合物が挙げられる。
【0217】
特に、現像液としては、レジストパターンの解像性やラフネス等のレジスト性能を改善
するという観点から、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤
及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種の溶剤を含有する現像液が好ましい。
【0218】
現像液の蒸気圧は、20℃において、5kPa以下であることが好ましく、3kPa以
下であることがより好ましく、2kPa以下であることがさらに好ましい。現像液の蒸気
圧が5kPa以下である場合、現像液の基板上或いは現像カップ内での蒸発が抑制され、
ウェハ面内の温度均一性が向上し、結果としてウェハ面内の寸法均一性が良化する傾向に
ある。
【0219】
20℃において5kPa以下の蒸気圧を有する具体的な現像液の例としては、1-オク
タノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノ
ン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセト
ン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレング
リコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテ
ート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ
エチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチル
アセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、
乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系溶剤;n-プロピルアルコール、
イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert
-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、4-メチル-2
-ペンタノール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等
のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコ
ール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコ
ールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコー
ルモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコ
ールモノエチルエーテル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤;テ
トラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチル
アセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤;トルエン、キシレン等の
芳香族炭化水素系溶剤;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0220】
20℃において2kPa以下の蒸気圧を有する具体的な現像液の例としては、1-オク
タノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノ
ン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセト
ン等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテ
ルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコー
ルモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-
3-メトキシブチルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル等のエステル系
溶剤;n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、tert-ブチルアルコール
、イソブチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、n
-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、n-デカノール等のアルコール系溶剤
;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール
系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエー
テル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテ
ル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエー
テル、メトキシメチルブタノール等のグリコールエーテル系溶剤;N-メチル-2-ピロ
リドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドのアミド系溶剤
、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙
げられる。
【0221】
現像液には、必要に応じて界面活性剤を適当量添加することができる。界面活性剤とし
ては特に限定されないが、例えば、イオン性や非イオン性のフッ素系及び/又はシリコン
系界面活性剤等を用いることができる。これらのフッ素及び/又はシリコン系界面活性剤
としては、例えば、特開昭62-36663号公報、特開昭61-226746号公報、
特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-34
540号公報、特開平7-230165号公報、特開平8-62834号公報、特開平9
-54432号公報、特開平9-5988号公報、米国特許第5405720号明細書、
同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同
5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同5
824451号明細書に記載された界面活性剤を挙げることができ、好ましくは、非イオ
ン性の界面活性剤である。非イオン性の界面活性剤としては特に限定されないが、好まし
くは、フッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤である。
【0222】
界面活性剤の使用量は、現像液の全量に対して、通常0.001~5質量%、好ましく
は0.005~2質量%、さらに好ましくは0.01~0.5質量%である。
【0223】
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(
ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで
現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度
で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出し
続ける方法(ダイナミックディスペンス法)等を適用することができる。パターンの現像
を行なう時間としては、特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0224】
また、現像を行う工程の後に、他の溶媒に置換しながら、現像を停止する工程を実施し
てもよい。
【0225】
現像の後には、有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄する工程を含むことが好ましい。
【0226】
現像後のリンス工程に用いるリンス液としては、架橋により硬化したレジストパターン
を溶解しなければ特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液又は水を使用することが
できる。上記リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アル
コール系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤から選択される少なくとも1種類の有機
溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。より好ましくは、現像の後に、ケトン
系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤からなる群より選択される少
なくとも1種類の有機溶剤を含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。さらに好ま
しくは、現像の後に、アルコール系溶剤又はエステル系溶剤を含有するリンス液を用いて
洗浄する工程を行う。さらにより好ましくは、現像の後に、1価アルコールを含有するリ
ンス液を用いて洗浄する工程を行う。特に好ましくは、現像の後に、炭素数5以上の1価
アルコールを含有するリンス液を用いて洗浄する工程を行う。パターンのリンスを行なう
時間としては、特に制限はないが、好ましくは10秒~90秒である。
【0227】
ここで、現像後のリンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、
環状の1価アルコールが挙げられ、具体的には、1-ブタノール、2-ブタノール、3-
メチル-1-ブタノール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタ
ノール、1-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ヘプタノール、1-オ
クタノール、2-ヘキサノール、シクロペンタノール、2-ヘプタノール、2-オクタノ
ール、3-ヘキサノール、3-ヘプタノール、3-オクタノール、4-オクタノール等を
用いることができ、特に好ましい炭素数5以上の1価アルコールとしては、1-ヘキサノ
ール、2-ヘキサノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-ペンタノール、3-メチ
ル-1-ブタノール等が挙げられる。
【0228】
上記各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合し使用してもよい。
【0229】
リンス液中の含水率は、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量
%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。リンス液中の含水率を10質量%
以下にすることで、より良好な現像特性を得ることができる傾向にある。
【0230】
現像後に用いるリンス液の蒸気圧は、20℃において0.05kPa以上、5kPa以
下であることが好ましく、0.1kPa以上、5kPa以下であることがより好ましく、
0.12kPa以上、3kPa以下であることがさらに好ましい。リンス液の蒸気圧が0
.05kPa以上、5kPa以下である場合、ウェハ面内の温度均一性がより向上し、さ
らにはリンス液の浸透に起因した膨潤がより抑制され、ウェハ面内の寸法均一性がより良
化する傾向にある。
【0231】
リンス液には、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
【0232】
リンス工程においては、現像を行ったウェハを上記の有機溶剤を含むリンス液を用いて
洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されないが、例えば、一定速度で回転している
基板上にリンス液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板
を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー
法)等を適用することができ、中でも、回転塗布方法により洗浄処理を行い、洗浄後に基
板を2000rpm~4000rpmの回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去す
ることが好ましい。
【0233】
レジストパターンを形成した後、エッチングすることによりパターン配線基板が得られ
る。エッチングの方法はプラズマガスを使用するドライエッチング及びアルカリ溶液、塩
化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液等によるウェットエッチング等公知の方法で行うことがで
きる。
【0234】
レジストパターンを形成した後、めっきを行うこともできる。めっき法としては、例え
ば、銅めっき、はんだめっき、ニッケルめっき、金めっき等が挙げられる。
【0235】
エッチング後の残存レジストパターンは有機溶剤で剥離することができる。有機溶剤と
しては、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME
(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、EL(乳酸エチル)等が挙げられる。剥
離方法としては、例えば、浸漬方法、スプレイ方式等が挙げられる。また、レジストパタ
ーンが形成された配線基板は、多層配線基板でもよく、小径スルーホールを有していても
よい。
【0236】
本実施形態における配線基板は、レジストパターン形成後、金属を真空中で蒸着し、そ
の後レジストパターンを溶液で溶かす方法、すなわちリフトオフ法により形成することも
できる。
【0237】
[下層膜用途向けリソグラフィー用膜形成組成物]
本実施形態における下層膜用途向けリソグラフィー用膜形成組成物(以下、「下層膜形
成材料」ともいう。)は、上記式(0)で表される化合物及び上記式(0)で表される化
合物をモノマーとして得られる樹脂、より具体的には上記式(1)表される化合物、上記
式(1)表される化合物をモノマーとして得られる樹脂、式(2)で表される化合物及び
式(2)で表される化合物をモノマーとして得られる樹脂からなる群より選ばれる少なく
とも1種の物質を含有する。本実施形態において上記物質は塗布性及び品質安定性の点か
ら、下層膜形成材料中、1~100質量%であることが好ましく、10~100質量%で
あることがより好ましく、50~100質量%であることがさらに好ましく、100質量
%であることが特に好ましい。
【0238】
本実施形態の下層膜形成材料は、湿式プロセスへの適用が可能であり、耐熱性及びエッ
チング耐性に優れる。さらに、本実施形態の下層膜形成材料は、上記物質を用いているた
め、高温ベーク時の膜の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング
耐性にも優れた下層膜を形成することができる。さらに、本実施形態の下層膜形成材料は
、レジスト層との密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを得ることができる。
なお、本実施形態の下層膜形成材料は、本発明の効果が損なわれない範囲において、既に
知られているリソグラフィー用下層膜形成材料等を含んでいてもよい。
【0239】
[溶媒]
本実施形態における下層膜形成材料は、溶媒を含有してもよい。下層膜形成材料に用い
られる溶媒としては、上述した物質が少なくとも溶解するものであれば、公知のものを適
宜用いることができる。
【0240】
溶媒の具体例としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン
、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;プロピレングリコール
モノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソル
ブ系溶媒;乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エ
チル、メトキシプロピオン酸メチル、ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステル系溶媒;メ
タノール、エタノール、イソプロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコ
ール系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系炭化水素等が挙げられる。こ
れらの溶媒は、1種を単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0241】
上記溶媒の中でも、安全性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノ
メチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ヒ
ドロキシイソ酪酸メチル、アニソールが特に好ましい。
【0242】
溶媒の含有量は、特に限定されないが、溶解性及び製膜上の観点から、上記下層膜形成
材料100質量部に対して、100~10000質量部であることが好ましく、200~
5000質量部であることがより好ましく、200~1000質量部であることがさらに
好ましい。
【0243】
[架橋剤]
本実施形態における下層膜形成材料は、インターミキシングを抑制する等の観点から、
必要に応じて架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては特に限定されないが、例えば
、国際公開第2013/024779号に記載されたものを用いることができる。
【0244】
下層膜形成材料中の架橋剤の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100質
量部に対して、5~50質量部であることが好ましく、より好ましくは10~40質量部
である。架橋剤の含有量を上記範囲にすることで、レジスト層とのミキシング現象の発生
が抑制される傾向にあり、また、反射防止効果が高められ、架橋後の膜形成性が高められ
る傾向にある。
【0245】
[酸発生剤]
本実施形態における下層膜形成材料は、熱による架橋反応をさらに促進させる等の観点
から、必要に応じて酸発生剤を含有していてもよい。酸発生剤としては、熱分解によって
酸を発生するもの、光照射によって酸を発生するもの等が知られているが、いずれも使用
することができる。酸発生剤としては、例えば、国際公開第2013/024779号に
記載されたものを用いることができる。
【0246】
下層膜形成材料中の酸発生剤の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料100
質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~4
0質量部である。酸発生剤の含有量を上記範囲にすることで、酸発生量が多くなって架橋
反応が高められる傾向にあり、また、レジスト層とのミキシング現象の発生が抑制される
傾向にある。
【0247】
[塩基性化合物]
本実施形態における下層膜形成材料は、保存安定性を向上させる等の観点から、塩基性
化合物を含有していてもよい。
【0248】
塩基性化合物は、酸発生剤から微量に発生した酸が架橋反応を進行させるのを防ぐため
の、酸に対するクエンチャーの役割を果たす。このような塩基性化合物としては、特に限
定されないが、例えば、国際公開第2013/024779号に記載されたものが挙げら
れる。
【0249】
下層膜形成材料中の塩基性化合物の含有量は、特に限定されないが、下層膜形成材料1
00質量部に対して、0.001~2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.
01~1質量部である。塩基性化合物の含有量を上記範囲にすることで、架橋反応を過度
に損なうことなく保存安定性が高められる傾向にある。
【0250】
[その他の添加剤]
また、本実施形態における下層膜形成材料は、熱や光による硬化性の付与や吸光度をコ
ントロールする目的で、他の樹脂及び/又は化合物を含有していてもよい。このような他
の樹脂及び/又は化合物としては、ナフトール樹脂、キシレン樹脂ナフトール変性樹脂、
ナフタレン樹脂のフェノール変性樹脂;ポリヒドロキシスチレン、ジシクロペンタジエン
樹脂、(メタ)アクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレート、テトラメタクリ
レート、ビニルナフタレン、ポリアセナフチレン等のナフタレン環、フェナントレンキノ
ン、フルオレン等のビフェニル環、チオフェン、インデン等のヘテロ原子を有する複素環
を含む樹脂や芳香族環を含まない樹脂;ロジン系樹脂、シクロデキストリン、アダマンタ
ン(ポリ)オール、トリシクロデカン(ポリ)オール及びそれらの誘導体等の脂環構造を
含む樹脂又は化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。さらに、本実施形態
における下層膜形成材料は、公知の添加剤を含有していてもよい。公知の添加剤としては
、以下に限定されないが、例えば、熱及び/又は光硬化触媒、重合禁止剤、難燃剤、充填
剤、カップリング剤、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、染料、顔料、増粘剤、滑剤、消泡剤
、レベリング剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げら
れる。
【0251】
[リソグラフィー用下層膜及び多層レジストパターンの形成方法]
本実施形態におけるリソグラフィー用下層膜は、上述した下層膜形成材料から形成され
る。
【0252】
また、本実施形態のレジストパターン形成方法は、上記組成物を用いて基板上に下層膜
を形成し、上記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、上記フォ
トレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む。より詳しくは、基
板上に、本実施形態の下層膜形成材料を用いて下層膜を形成する工程(A-1)と、上記
下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程(A-2)と、上記(A
-2)工程の後、上記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程
(A-3)と、を有する。
【0253】
さらに、本実施形態の回路パターン形成方法は、上記組成物を用いて基板上に下層膜を
形成し、上記下層膜上にレジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成し、上記中間層膜
上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成する工程、
上記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形
成する工程、
上記レジストパターンをマスクとして上記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜
パターンをエッチングマスクとして上記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターン
をエッチングマスクとして基板をエッチングすることにより基板にパターンを形成する工
程を含む。
【0254】
より詳しくは、基板上に、本実施形態の下層膜形成材料を用いて下層膜を形成する工程
(B-1)と、上記下層膜上に、珪素原子を含有するレジスト中間層膜材料を用いて中間
層膜を形成する工程(B-2)と、上記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト
層を形成する工程(B-3)と、上記工程(B-3)の後、上記フォトレジスト層の所定
の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成する工程(B-4)と、上記
工程(B-4)の後、上記レジストパターンをマスクとして上記中間層膜をエッチングし
、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして上記下層膜をエッチングし、得ら
れた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることで基板にパター
ンを形成する工程(B-5)とを含む。
【0255】
本実施形態におけるリソグラフィー用下層膜は、本実施形態の下層膜形成材料から形成
されるものであれば、その形成方法は特に限定されず、公知の手法を適用することができ
る。例えば、本実施形態の下層膜材料をスピンコートやスクリーン印刷等の公知の塗布法
或いは印刷法等で基板上に付与した後、有機溶媒を揮発させる等して除去することで、下
層膜を形成することができる。
【0256】
下層膜の形成時には、上層レジストとのミキシング現象の発生を抑制するとともに架橋
反応を促進させるために、ベークを施すことが好ましい。この場合、ベーク温度は、特に
限定されないが、80~450℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは200
~400℃である。また、ベーク時間も、特に限定されないが、10~300秒の範囲内
であることが好ましい。なお、下層膜の厚さは、要求性能に応じて適宜選定することがで
き、特に限定されないが、通常、30~20000nm程度であることが好ましく、より
好ましくは50~15000nmである。
【0257】
下層膜を作製した後、2層プロセスの場合は、その上に珪素含有レジスト層、或いは通
常の炭化水素からなる単層レジスト、3層プロセスの場合はその上に珪素含有中間層、さ
らにその上に珪素を含まない単層レジスト層を作製することが好ましい。この場合、この
レジスト層を形成するためのフォトレジスト材料としては公知のものを使用することがで
きる。
【0258】
基板上に下層膜を作製した後、2層プロセスの場合は、その下層膜上に珪素含有レジス
ト層或いは通常の炭化水素からなる単層レジストを作製することができる。3層プロセス
の場合は、その下層膜上に珪素含有中間層、さらにその珪素含有中間層上に珪素を含まな
い単層レジスト層を作製することができる。これらの場合において、レジスト層を形成す
るためのフォトレジスト材料は、公知のものから適宜選択して使用することができ、特に
限定されない。
【0259】
2層プロセス用の珪素含有レジスト材料としては、酸素ガスエッチング耐性の観点から
、ベースポリマーとしてポリシルセスキオキサン誘導体又はビニルシラン誘導体等の珪素
原子含有ポリマーを使用し、さらに有機溶媒、酸発生剤、必要により塩基性化合物等を含
むポジ型のフォトレジスト材料が好ましく用いられる。ここで珪素原子含有ポリマーとし
ては、この種のレジスト材料において用いられている公知のポリマーを使用することがで
きる。
【0260】
3層プロセス用の珪素含有中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層が
好ましく用いられる。中間層に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的
に反射を抑えることができる傾向にある。例えば、193nm露光用プロセスにおいて、
下層膜として芳香族基を多く含み基板エッチング耐性が高い材料を用いると、k値が高く
なり、基板反射が高くなる傾向にあるが、中間層で反射を抑えることによって、基板反射
を0.5%以下にすることができる。このような反射防止効果を有する中間層としては、
以下に限定されないが、193nm露光用としては、フェニル基又は珪素-珪素結合を有
する吸光基が導入された、酸或いは熱で架橋するポリシルセスキオキサンが好ましく用い
られる。
【0261】
また、Chemical Vapour Deposition(CVD)法で形成し
た中間層を用いることもできる。CVD法で作製した、反射防止膜としての効果が高い中
間層としては、以下に限定されないが、例えば、SiON膜が知られている。一般的には
、CVD法よりスピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスによって中間層を形成
する方が、簡便でコスト的なメリットがある。なお、3層プロセスにおける上層レジスト
は、ポジ型、ネガ型のどちらでもよく、また、通常用いられている単層レジストと同じも
のを用いることができる。
【0262】
さらに、本実施形態における下層膜は、通常の単層レジスト用の反射防止膜或いはパタ
ーン倒れ抑制のための下地材として用いることもできる。下層膜は、下地加工のためのエ
ッチング耐性に優れるため、下地加工のためのハードマスクとしての機能も期待できる。
【0263】
上記フォトレジスト材料によりレジスト層を形成する場合においては、上記下層膜を形
成する場合と同様に、スピンコート法やスクリーン印刷等の湿式プロセスが好ましく用い
られる。また、レジスト材料をスピンコート法等で塗布した後、通常、プリベークが行わ
れるが、このプリベークは、80~180℃で10~300秒の範囲で行うことが好まし
い。その後、常法にしたがい、露光を行い、ポストエクスポジュアーベーク(PEB)、
現像を行うことで、レジストパターンを得ることができる。なお、レジスト膜の厚さは特
に制限されないが、一般的には、30~500nmが好ましく、より好ましくは50~4
00nmである。
【0264】
また、露光光は、使用するフォトレジスト材料に応じて適宜選択して用いればよい。一
般的には、波長300nm以下の高エネルギー線、具体的には248nm、193nm、
157nmのエキシマレーザー、3~20nmの軟X線、電子ビーム、X線等を挙げるこ
とができる。
【0265】
上述した方法により形成されるレジストパターンは、下層膜によってパターン倒れが抑
制されたものとなる。そのため、本実施形態における下層膜を用いることで、より微細な
パターンを得ることができ、また、そのレジストパターンを得るために必要な露光量を低
下させ得る。
【0266】
次に、得られたレジストパターンをマスクにしてエッチングを行う。2層プロセスにお
ける下層膜のエッチングとしては、ガスエッチングが好ましく用いられる。ガスエッチン
グとしては、酸素ガスを用いたエッチングが好適である。酸素ガスに加えて、He、Ar
等の不活性ガスや、CO、CO2、NH3、SO2、N2、NO2、H2ガスを加えることも可
能である。また、酸素ガスを用いずに、CO、CO2、NH3、N2、NO2、H2ガスだけ
でガスエッチングを行うこともできる。特に後者のガスは、パターン側壁のアンダーカッ
ト防止のための側壁保護のために好ましく用いられる。
【0267】
一方、3層プロセスにおける中間層のエッチングにおいても、ガスエッチングが好まし
く用いられる。ガスエッチングとしては、上記の2層プロセスにおいて説明したものと同
様のものが適用可能である。とりわけ、3層プロセスにおける中間層の加工は、フロン系
のガスを用いてレジストパターンをマスクにして行うことが好ましい。その後、上述した
ように中間層パターンをマスクにして、例えば酸素ガスエッチングを行うことで、下層膜
の加工を行うことができる。
【0268】
ここで、中間層として無機ハードマスク中間層膜を形成する場合は、CVD法やALD
法等で、珪素酸化膜、珪素窒化膜、珪素酸化窒化膜(SiON膜)が形成される。窒化膜
の形成方法としては、以下に限定されないが、例えば、特開2002-334869号公
報(特許文献6)、WO2004/066377(特許文献7)に記載された方法を用い
ることができる。このような中間層膜の上に直接フォトレジスト膜を形成することができ
るが、中間層膜の上に有機反射防止膜(BARC)をスピンコートで形成して、その上に
フォトレジスト膜を形成してもよい。
【0269】
中間層としては、ポリシルセスキオキサンベースの中間層も好ましく用いられる。レジ
スト中間層膜に反射防止膜としての効果を持たせることによって、効果的に反射を抑える
ことができる傾向にある。ポリシルセスキオキサンベースの中間層の具体的な材料につい
ては、以下に限定されないが、例えば、特開2007-226170号(特許文献8)、
特開2007-226204号(特許文献9)に記載されたものを用いることができる。
【0270】
また、次の基板のエッチングも、常法によって行うことができ、例えば、基板がSiO
2、SiNであればフロン系ガスを主体としたエッチング、p-SiやAl、Wでは塩素
系、臭素系ガスを主体としたエッチングを行うことができる。基板をフロン系ガスでエッ
チングする場合、2層レジストプロセスの珪素含有レジストと3層プロセスの珪素含有中
間層は、基板加工と同時に剥離される。一方、塩素系或いは臭素系ガスで基板をエッチン
グした場合は、珪素含有レジスト層又は珪素含有中間層の剥離が別途行われ、一般的には
、基板加工後にフロン系ガスによるドライエッチング剥離が行われる。
【0271】
本実施形態における下層膜は、基板のエッチング耐性に優れるという特徴を有する。な
お、基板としては、公知のものを適宜選択して使用することができ、特に限定されないが
、Si、α-Si、p-Si、SiO2、SiN、SiON、W、TiN、Al等が挙げ
られる。また、基板は、基材(支持体)上に被加工膜(被加工基板)を有する積層体であ
ってもよい。このような被加工膜としては、Si、SiO2、SiON、SiN、p-S
i、α-Si、W、W-Si、Al、Cu、Al-Si等、種々のLow-k膜及びその
ストッパー膜等が挙げられ、通常、基材(支持体)とは異なる材質のものが用いられる。
なお、加工対象となる基板或いは被加工膜の厚さは、特に限定されないが、通常、50~
10000nm程度であることが好ましく、より好ましくは75~5000nmである。
【実施例0272】
以下、本実施形態を合成例、合成実施例、実施例及び比較例によりさらに詳細に説明す
るが、本実施形態は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0273】
(炭素濃度及び酸素濃度)
下記装置を用いて有機元素分析により炭素濃度及び酸素濃度(質量%)を測定した。
装置:CHNコーダーMT-6(ヤナコ分析工業(株)製)
【0274】
(分子量)
化合物の分子量は、Water社製Acquity UPLC/MALDI-Syna
pt HDMSを用いて、LC-MS分析により測定した。
また、以下の条件でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析を行い、ポリスチレン
換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(Mw/Mn)を求
めた。
装置:Shodex GPC-101型(昭和電工(株)製)
カラム:KF-80M×3
溶離液:THF 1mL/min
温度:40℃
【0275】
(溶解性)
23℃にて、化合物をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロ
ヘキサノン(CHN)、乳酸エチル(EL)、メチルアミルケトン(MAK)又はテトラ
メチルウレア(TMU)に対して10質量%溶液になるよう溶解させ、1週間後の結果を
以下の基準で評価した。
評価A:いずれかの溶媒で析出物がないことを目視により確認した
評価C:全ての溶媒で析出物があることを目視により確認した
【0276】
[化合物の構造]
化合物の構造は、Bruker社製「Advance600II spectrome
ter」を用いて、以下の条件で、1H-NMR測定を行い、確認した。
周波数:400MHz
溶媒:d6-DMSO
内部標準:TMS
測定温度:23℃
【0277】
<合成例1> XBisN-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に2,6-ナフタレン
ジオール(シグマ-アルドリッチ社製試薬)3.20g(20mmol)と4-ビフェニ
ルカルボキシアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)1.82g(10mmol)とを30mL
のメチルイソブチルケトンに仕込み、95%の硫酸5mLを加えて、反応液を100℃で
6時間撹拌して反応を行った。次に反応液を濃縮し、純水50gを加えて反応生成物を析
出させ、室温まで冷却した後、濾過を行って分離した。得られた固形物を濾過し、乾燥さ
せた後、カラムクロマトグラフによる分離精製を行い、下記式で示される目的化合物を3
.05g得た。400MHz-1H-NMRにより下記式の化学構造を有することを確認
した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.7(2H,O-H)、7.2~8.5(19H,Ph-H)、6.6
(1H,C-H)
なお、2,6-ナフタレンジオールの置換位置が1位であることは、3位と4位のプロ
トンのシグナルがダブレットであることから確認した。
【0278】
【0279】
<合成例2> BisF-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積200mLの容器を準備した。この容器
に、4,4-ビフェノール(東京化成社製試薬)30g(161mmol)と、4-ビフ
ェニルアルデヒド(三菱瓦斯化学社製)15g(82mmol)と、酢酸ブチル100m
Lとを仕込み、p-トルエンスルホン酸(関東化学社製試薬)3.9g(21mmol)
を加えて、反応液を調製した。この反応液を90℃で3時間撹拌して反応を行った。次に
、反応液を濃縮し、ヘプタン50gを加えて反応生成物を析出させ、室温まで冷却した後
、濾過を行って分離した。濾過により得られた固形物を乾燥させた後、カラムクロマトグ
ラフによる分離精製を行うことにより、下記式で表される目的化合物(BisF-1)5
.8gを得た。
なお、400MHz-1H-NMRにより以下のピークが見出され、下記式の化学構造
を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.4(4H,O-H)、6.8~7.8(22H,Ph-H)、6.2
(1H,C-H)
得られた化合物について、上記方法により分子量を測定した結果、536であった。
【0280】
【0281】
<合成例3> Al-XBisN-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に上記式(XBisN
-1)で表される化合物9.8g(21mmol)と炭酸カリウム6.2g(45mmo
l)とを100mLのアセトンに加えた液を仕込み、さらに臭化アリル5.4(45mm
ol)g及び10-クラウン-6を2.0g加えて、得られた反応液を還流下で7時間撹
拌して反応を行なった。次に反応液から固形分をろ過で除去し、氷浴で冷却し、反応液を
濃縮し固形物を析出させた。析出した固形物をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトグ
ラフによる分離精製を行い、下記式(Al-XBisN-1)で表される目的化合物4.
0gを得た。
400MHz-1H-NMRにより、下記式(Al-XBisN-1)の化学構造を有
することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)7.2~7.8(19H,Ph-H)、6.7(1H,C-H)、6.1
(2H,-CH=CH2)、5.4~5.5(4H,-CH=CH2)
得られた化合物について、上記方法により分子量を測定した結果、546であった。
【0282】
【0283】
<合成例4> Al-BisF-1の合成
上記式(XBisN-1)で表される化合物の代わりに、上記式(BisF-1)で表
される化合物を用いたこと以外は合成実施例1と同様に反応させ、下記式(Al-Bis
F-1)で表される目的化合物3.0gを得た。
400MHz-1H-NMRにより、下記式(Al-BisF-1)の化学構造を有す
ることを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)6.8~7.8(22H,Ph-H)、6.2(1H,C-H)、6.1
(4H,-CH=CH2)、5.4~5.5(8H,-CH=CH2)、
得られた化合物について、上記方法により分子量を測定した結果、872であった。
【0284】
【0285】
<合成実施例1> AlOH-XBisN-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に上記式(Al-XB
isN-1)で表される化合物6.1g(11mmol)を6.0mLに加え、反応液を
130℃で6時間撹拌して、その後160℃に昇温して24時間反応を行なった。次に反
応液に30mLの水を加え、結晶を析出させ、ろ過を行なって分離した。得られた固形物
をろ過し、乾燥させた後、カラムクロマトグラフによる分離精製を行い、下記式で示され
る目的化合物を0.90g得た。
400MHz-1H-NMRにより下記式の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.6(2H,O-H)、7.3~8.5(17H,Ph-H)、6.6
(1H,C-H)、5.9(2H,-CH=CH2)、4.9(4H,-CH=CH2)、
3.8(4H,-CH2-)
得られた化合物について、上記方法により分子量を測定した結果、546であった。
【0286】
【0287】
得られた化合物の熱分解温度は400℃、ガラス転移温度は211℃であり、高耐熱性
を有することが確認できた。
【0288】
<合成実施例2> AlOH-BisF-1の合成
攪拌機、冷却管及びビュレットを備えた内容積100mLの容器に上記式(Al-Bi
sF-1)で表される化合物6.1g(9mmol)を6.0mLに加え、反応液を13
0℃で6時間撹拌して、その後160℃に昇温して24時間反応を行なった。次に反応液
に30mLの水を加え、結晶を析出させ、ろ過を行なって分離した。得られた固形物をろ
過し、乾燥させた後、カラムクロマトグラフによる分離精製を行い、下記式で示される目
的化合物を1.05g得た。
400MHz-1H-NMRにより下記式の化学構造を有することを確認した。
1H-NMR:(d-DMSO、内部標準TMS)
δ(ppm)9.4(4H,O-H)、6.8~7.8(18H,Ph-H)、6.2
(1H,C-H)、5.9(4H,-CH=CH2)、4.9(8H,-CH=CH2)、
3.8(8H,-CH2-)
得られた化合物について、上記方法により分子量を測定した結果、696であった。
【0289】
【0290】
熱分解温度は390℃、ガラス転移温度は200℃であり、高耐熱性を有することが確
認できた。
【0291】
<合成例5>
ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた、底抜きが可能な内容積10Lの四つ口
フラスコを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流中、1,5-ジメチルナフタレン
1.09kg(7mol、三菱ガス化学(株)製)、40質量%ホルマリン水溶液2.1
kg(ホルムアルデヒドとして28mol、三菱ガス化学(株)製)及び98質量%硫酸
(関東化学(株)製)0.97mLを仕込み、常圧下、100℃で還流させながら7時間反
応させた。その後、希釈溶媒としてエチルベンゼン(和光純薬工業(株)製試薬特級)1
.8kgを反応液に加え、静置後、下相の水相を除去した。さらに、中和及び水洗を行い
、エチルベンゼン及び未反応の1,5-ジメチルナフタレンを減圧下で留去することによ
り、淡褐色固体のジメチルナフタレンホルムアルデヒド樹脂1.25kgを得た。
得られたジメチルナフタレンホルムアルデヒドの分子量は、Mn:562であった。
【0292】
続いて、ジムロート冷却管、温度計及び攪拌翼を備えた内容積0.5Lの四つ口フラス
コを準備した。この四つ口フラスコに、窒素気流下で、上記のようにして得られたジメチ
ルナフタレンホルムアルデヒド樹脂100g(0.51mol)とパラトルエンスルホン
酸0.05gとを仕込み、190℃まで昇温させて2時間加熱した後、攪拌した。その後
、さらに1-ナフトール52.0g(0.36mol)を加え、220℃まで昇温させて
2時間反応させた。溶剤希釈後、中和及び水洗を行い、溶剤を減圧下で除去することによ
り、黒褐色固体の変性樹脂(CR-1)126.1gを得た。
得られた樹脂(CR-1)は、Mn:885、Mw:2220、Mw/Mn:4.17
であった。また、炭素濃度は89.1質量%、酸素濃度は4.5質量%であった。
【0293】
<実施例1~2、比較例1>
上記AlOH-XBisN-1、AlOH-BisF-1及びCR-1につき、各々溶
解性を評価した。結果を表1に示す。
【0294】
また、表1に示す組成のリソグラフィー用下層膜形成材料を各々調製した。次に、これ
らのリソグラフィー用下層膜形成材料をシリコン基板上に回転塗布し、その後、240℃
で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークして、膜厚200nmの下層膜を各々作
製した。酸発生剤、架橋剤及び有機溶媒については以下のものを用いた。
・酸発生剤:みどり化学社製 ジターシャリーブチルジフェニルヨードニウムノナフルオ
ロメタンスルホナート(DTDPI)
・架橋剤:三和ケミカル社製 ニカラックMX270(ニカラック)
・有機溶媒:関東化学社製メチルアミルケトン(MAK)
【0295】
[エッチング耐性]
下記に示す条件でエッチング試験を行い、エッチング耐性を評価した。評価結果を表1
に示す。
【0296】
[エッチング試験]
エッチング装置:サムコインターナショナル社製 RIE-10NR
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
【0297】
エッチング耐性の評価は、以下の手順で行った。
まず、化合物(AlOH-XBisN-1)に代えてノボラック(群栄化学社製 PS
M4357)を用いたこと以外は、実施例1と同様の条件で、ノボラックの下層膜を作製
した。そして、このノボラックの下層膜を対象として、上記のエッチング試験を行い、そ
のときのエッチングレートを測定した。
次に、実施例1~2及び比較例1の下層膜を対象として、上記エッチング試験を同様に
行い、そのときのエッチングレートを測定した。そして、ノボラックの下層膜のエッチン
グレートを基準として、以下の評価基準でエッチング耐性を評価した。
【0298】
[評価基準]
A:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが-10%未満
B:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが-10%~+5%
C:ノボラックの下層膜に比べてエッチングレートが+5%超
【0299】
【0300】
<実施例3及び4>
次に、実施例1、2で得られた、AlOH-XBisN-1、又はAlOH-BisF
-1を含むリソグラフィー用下層膜形成材料の各溶液を、膜厚300nmのSiO2基板
上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることにより
、膜厚70nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、ArF用レジスト溶液を塗布し、
130℃で60秒間ベークすることにより、膜厚140nmのフォトレジスト層を形成し
た。なお、ArFレジスト溶液としては、下記式(11)の化合物:5質量部、トリフェ
ニルスルホニウムノナフルオロメタンスルホナート:1質量部、トリブチルアミン:2質
量部、及びPGMEA:92質量部を配合して調製したものを用いた。
【0301】
式(11)の化合物は、2-メチル-2-メタクリロイルオキシアダマンタン4.15
g、メタクリルロイルオキシ-γ-ブチロラクトン3.00g、3-ヒドロキシ-1-ア
ダマンチルメタクリレート2.08g、アゾビスイソブチロニトリル0.38gを、テト
ラヒドロフラン80mLに溶解させて反応溶液とした。この反応溶液を、窒素雰囲気下、
反応温度を63℃に保持して、22時間重合させた後、反応溶液を400mLのn-ヘキ
サン中に滴下した。このようにして得られた生成樹脂を凝固精製させ、生成した白色粉末
をろ過し、減圧下40℃で一晩乾燥させて得た。
【0302】
【0303】
上記式(11)中、「40」、「40」、「20」とあるのは、各構成単位の比率を示
すものであり、ブロック共重合体を示すものではない。
【0304】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用い
て、フォトレジスト層を露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.38質量
%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像することに
より、ポジ型のレジストパターンを得た。
【0305】
得られた55nmL/S(1:1)及び80nmL/S(1:1)のレジストパターン
の形状及び欠陥を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察した。
現像後のレジストパターンの形状については、パターン倒れがなく、矩形性が良好なも
のを「良好」とし、それ以外を「不良」として評価した。また、上記観察の結果、パター
ン倒れが無く、矩形性が良好な最小の線幅を“解像性”として評価の指標とした。さらに
、良好なパターン形状を描画可能な最小の電子線エネルギー量を“感度”として、評価の
指標とした。
評価結果を、表2に示す。
【0306】
<比較例2>
下層膜の形成を行わなかったこと以外は、実施例2と同様にして、フォトレジスト層を
SiO2基板上に直接形成し、ポジ型のレジストパターンを得た。結果を表2に示す。
【0307】
【0308】
表1から明らかなように、AlOH-XBisN-1又はAlOH-BisF-1を用
いた実施例1~2では、比較例1に比して、耐熱性、溶解度及びエッチング耐性のいずれ
の点でも良好であることが少なくとも確認された。一方、CR-1(フェノール変性ジメ
チルナフタレンホルムアルデヒド樹脂)を用いた比較例1では、エッチング耐性が不良で
あった。
また、実施例3~4においては、現像後のレジストパターン形状が良好であり、欠陥も
見られないことも確認された。さらに、下層膜の形成を省略した比較例2に比べて、解像
性及び感度ともに有意に優れていることも確認された。
加えて、現像後のレジストパターン形状の相違から、実施例3~4において用いたリソ
グラフィー用下層膜形成材料は、レジスト材料との密着性が良いことも確認された。
【0309】
<実施例5~6>
実施例1~2のリソグラフィー用下層膜形成材料の溶液を膜厚300nmのSiO2基
板上に塗布して、240℃で60秒間、さらに400℃で120秒間ベークすることによ
り、膜厚80nmの下層膜を形成した。この下層膜上に、珪素含有中間層材料を塗布し、
200℃で60秒間ベークすることにより、膜厚35nmの中間層膜を形成した。さらに
、この中間層膜上に、上記ArF用レジスト溶液を塗布し、130℃で60秒間ベークす
ることにより、膜厚150nmのフォトレジスト層を形成した。なお、珪素含有中間層材
料としては、下記で得られた珪素原子含有ポリマーを用いた。
【0310】
テトラヒドロフラン(THF)200g、純水100gに、3-カルボキシルプロピル
トリメトキシシラン16.6gとフェニルトリメトキシシラン7.9gと3-ヒドロキシ
プロピルトリメトキシシラン14.4gとを溶解させ、液温を35℃にし、シュウ酸5g
を滴下し、その後80℃に昇温し、シラノールの縮合反応を行った。次に、ジエチルエー
テルを200g加え水層を分別し、有機液層を超純水で2回洗浄、プロピレングリコール
モノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を200g加え、液温を60℃に加熱しな
がらの減圧下にTHF、ジエチルエーテル水を除去し、珪素原子含有ポリマーを得た。
【0311】
次いで、電子線描画装置(エリオニクス社製;ELS-7500,50keV)を用い
て、フォトレジスト層をマスク露光し、115℃で90秒間ベーク(PEB)し、2.3
8質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で60秒間現像する
ことにより、55nmL/S(1:1)のポジ型のレジストパターンを得た。
【0312】
その後、サムコインターナショナル社製 RIE-10NRを用いて、得られたレジス
トパターンをマスクにして珪素含有中間層膜(SOG)のドライエッチング加工を行い、
続いて、得られた珪素含有中間層膜パターンをマスクにした下層膜のドライエッチング加
工と、得られた下層膜パターンをマスクにしたSiO2膜のドライエッチング加工とを順
次行った。
【0313】
各々のエッチング条件は、下記に示すとおりである。
レジストパターンのレジスト中間層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:1min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:8:2(sccm)
レジスト中間膜パターンのレジスト下層膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:CF4ガス流量:O2ガス流量=50:5:5(sccm)
レジスト下層膜パターンのSiO
2
膜へのエッチング条件
出力:50W
圧力:20Pa
時間:2min
エッチングガス
Arガス流量:C5F12ガス流量:C2F6ガス流量:O2ガス流量
=50:4:3:1(sccm)
【0314】
[評価]
上記のようにして得られたパターン断面(エッチング後のSiO2膜の形状)を、(株
)日立製作所製電子顕微鏡(S-4800)を用いて観察したところ、本実施形態の下層
膜を用いた実施例は、多層レジスト加工におけるエッチング後のSiO2膜の形状は矩形
であり、欠陥も認められず良好であることが確認された。
【0315】
上述したとおり、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、その
要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。
【0316】
本発明に係る化合物及び樹脂は、安全溶媒に対する溶解性が高く、耐熱性及びエッチン
グ耐性が良好であり、本発明に係るレジスト組成物は良好なレジストパターン形状を与え
る。
【0317】
また、湿式プロセスが適用可能であり、耐熱性及びエッチング耐性に優れるフォトレジ
スト下層膜を形成するために有用な化合物、樹脂及びリソグラフィー用膜形成組成物を実
現することができる。そして、このリソグラフィー用膜形成組成物は、耐熱性が高く、溶
媒溶解性も高い、特定構造を有する化合物又は樹脂を用いているため、高温ベーク時の膜
の劣化が抑制され、酸素プラズマエッチング等に対するエッチング耐性にも優れたレジス
ト及び下層膜を形成することができる。さらには、下層膜を形成した場合、レジスト層と
の密着性にも優れるので、優れたレジストパターンを形成することができる。
【0318】
さらには屈折率が高く、また低温~高温処理によって着色が抑制されることから、各種
光学部品形成組成物としても有用である。
【0319】
したがって、本発明は、例えば、電気用絶縁材料、レジスト用樹脂、半導体用封止樹脂
、プリント配線板用接着剤、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載される電気用積層板
、電気機器・電子機器・産業機器等に搭載されるプリプレグのマトリックス樹脂、ビルド
アップ積層板材料、繊維強化プラスチック用樹脂、液晶表示パネルの封止用樹脂、塗料、
各種コーティング剤、接着剤、半導体用のコーティング剤、半導体用のレジスト用樹脂、
下層膜形成用樹脂、フィルム状、シート状で使われる他、プラスチックレンズ(プリズム
レンズ、レンチキュラーレンズ、マイクロレンズ、フレネルレンズ、視野角制御レンズ、
コントラスト向上レンズ等)、位相差フィルム、電磁波シールド用フィルム、プリズム、
光ファイバー、フレキシブルプリント配線用ソルダーレジスト、メッキレジスト、多層プ
リント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路等の光学部品等において、広く且つ有効に利
用可能である。
前記架橋剤が、フェノール化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、アミノ化合物、ベンゾオキサジン化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物、ウレア化合物、イソシアネート化合物及びアジド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の組成物。
前記ラジカル重合開始剤が、ケトン系光重合開始剤、有機過酸化物系重合開始剤及びアゾ系重合開始剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項19に記載の組成物。
基板上に、請求項22に記載の組成物を用いてフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン形成方法。
基板上に、請求項22に記載の組成物を用いて下層膜を形成し、前記下層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像を行う工程を含む、レジストパターン形成方法。
基板上に、請求項22に記載の組成物を用いて下層膜を形成し、前記下層膜上に、レジスト中間層膜材料を用いて中間層膜を形成し、前記中間層膜上に、少なくとも1層のフォトレジスト層を形成した後、前記フォトレジスト層の所定の領域に放射線を照射し、現像してレジストパターンを形成し、その後、前記レジストパターンをマスクとして前記中間層膜をエッチングし、得られた中間層膜パターンをエッチングマスクとして前記下層膜をエッチングし、得られた下層膜パターンをエッチングマスクとして基板をエッチングすることにより基板にパターンを形成する工程を含む、回路パターン形成方法。