(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130466
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】細胞外基質組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/39 20060101AFI20220830BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220830BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20220830BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20220830BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20220830BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 35/50 20150101ALI20220830BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220830BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220830BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20220830BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20220830BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20220830BHJP
A61L 27/26 20060101ALI20220830BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61K38/39
A61P1/02
A61P13/02
A61P13/10
A61P1/00
A61P11/04
A61P25/00
A61P21/00
A61K35/50
A61K9/70
A61K9/16
A61L27/36 130
A61L27/24
A61L27/22
A61L27/26
A61P17/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094947
(22)【出願日】2022-06-13
(62)【分割の表示】P 2020092044の分割
【原出願日】2015-08-25
(31)【優先権主張番号】62/041,468
(32)【優先日】2014-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520169074
【氏名又は名称】セルラリティ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】バティア,モヒット,ビー
(72)【発明者】
【氏名】ハーズバーグ,ウリ
(72)【発明者】
【氏名】カプルノフスキー,アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ザカ,ライハナ
(72)【発明者】
【氏名】イェ,キアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】細胞外基質(細胞外マトリクス)(ECM)組成物、その製造方法、および細胞外基質を必要とする被検体における治療の方法を提供する。
【解決手段】胎盤組織、例えばヒト胎盤組織を用いて調製された細胞外基質(ECM)組成物であって、約30%から約60%のコラーゲン及び約10%から35%のエラスチンを含む組成物である。さらに、そのようなECM組成物は、(i)例えばエライザ法(ELISA)によって測定される、極めて少量のフィブロネクチン(例えば、0.1%未満のフィブロネクチン);(ii)例えばエライザ法による測定で、検出されないか又は検出不能な量のラミニン;及び/又は例えばエライザ法による測定で、検出されないか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約35-55%のコラーゲン及び約10-30%のエラスチンを含むことを特徴とする
細胞外基質(ECM)組成物。
【請求項2】
0.1%未満のフィブロネクチンを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
検出不能な量のラミニンを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
検出不能な量のグリコサミノグリカンを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれ
か1項に記載の組成物。
【請求項5】
0.1%未満のフィブロネクチン、検出不能な量のラミニン、及び検出不能な量のグリ
コサミノグリカンを含むことを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
約40-70%のコラーゲン及び約15-25%のエラスチンを含むことを特徴とする
ECM組成物。
【請求項7】
約0.1%未満のフィブロネクチンを含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
約0.1%未満のラミニンを含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
約0.1%未満のグリコサミノグリカンを含むことを特徴とする請求項6乃至8のいず
れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
検出不能な量のサイトカイン、成長因子、又はデオキシコール酸を含むことを特徴とす
る請求項6乃至9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
約0.1%未満のフィブロネクチンと、約0.1%未満のラミニンと、約0.1%未満
のグリコサミノグリカンと、検出不能な量のサイトカイン、成長因子、又はデオキシコー
ル酸と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項12】
約0.1%未満のフィブロネクチンと、約0.1%未満のラミニンと、約0.1%未満
のグリコサミノグリカンと、検出不能な量のサイトカイン、成長因子、及びデオキシコー
ル酸と、を含むことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ECMは胎盤ECMであることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記
載の組成物。
【請求項14】
前記胎盤ECMは、ヒト胎盤ECMであることを特徴とする請求項13に記載の組成物
。
【請求項15】
前記組成物はシートとして調製されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1
項に記載の組成物。
【請求項16】
前記シートは約1.5から2.5mmの厚さであることを特徴とする請求項15に記載
の組成物。
【請求項17】
前記組成物は粒子として調製されることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか1項
に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は流動性基質として調製されることを特徴とする請求項1乃至16のいずれ
か1項に記載の組成物。
【請求項19】
約35-55%のコラーゲン及び約10-30%のエラスチンを含むECM組成物であ
って、(i)羊膜、絨毛膜、及び臍帯を胎盤から除去するステップと;(ii)残っている
胎盤組織を、1M NaClを含む溶液内に入れるステップと;(iii)胎盤組織を均質化
するステップと;(iv)2%デオキシコール酸ナトリウムを含む溶液に胎盤組織を接触さ
せるステップと;(v)水で胎盤組織を洗浄するステップと;(vi)1M 水酸化ナトリウ
ムを含む溶液に胎盤組織を接触させるステップと;(vii)胎盤組織を含む溶液を中性の
pHとするステップと;(viii)胎盤組織を回収するステップと、を含む方法によって調
製されるECM組成物。
【請求項20】
0.1%未満のフィブロネクチンを含むことを特徴とする請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
検出不能な量のラミニンを含むことを特徴とする請求項19又は20に記載の組成物。
【請求項22】
検出不能な量のグリコサミノグリカンを含むことを特徴とする請求項19乃至21のい
ずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
0.1%未満のフィブロネクチン、検出不能な量のラミニン、及び検出不能な量のグリ
コサミノグリカンを含むことを特徴とする請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
約40-70%のコラーゲン及び約15-25%のエラスチンを含むECM組成物であ
って、(i)胎盤から絨毛膜を取得するステップと;(ii)絨毛膜を擦り清浄にするステ
ップと;(iii)絨毛膜組織を、0.5M NaClを含む溶液内に入れるステップと;(
iv)2%デオキシコール酸又はデオキシコール酸ナトリウムを含む溶液に絨毛膜を接触さ
せるステップと;(v)絨毛膜を水でリンスするステップと、(vi)すり潰し、凍結乾燥
するステップと、を含む方法によって調製されるECM組成物。
【請求項25】
約0.1%未満のフィブロネクチンを含むことを特徴とする請求項24に記載の組成物
。
【請求項26】
約0.1%未満のラミニンを含むことを特徴とする請求項24又は25に記載の組成物
。
【請求項27】
約0.1%未満のグリコサミノグリカンを含むことを特徴とする請求項24乃至26の
いずれか1項に記載の組成物。
【請求項28】
検出不能な量のサイトカイン、成長因子、又はデオキシコール酸を含むことを特徴とす
る請求項24乃至27のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
約0.1%未満のフィブロネクチンと、約0.1%未満のラミニンと、約0.1%未満
のグリコサミノグリカンと、検出不能な量のサイトカイン、成長因子、又はデオキシコー
ル酸と、を含むことを特徴とする請求項24に記載の組成物。
【請求項30】
約0.1%未満のフィブロネクチンと、約0.1%未満のラミニンと、約0.1%未満
のグリコサミノグリカンと、検出不能な量のサイトカイン、成長因子、及びデオキシコー
ル酸と、を含むことを特徴とする請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
約40-70%のコラーゲン及び約15-25%のエラスチンを含むECM組成物であ
って、(i)胎盤から絨毛膜を取得するステップと;(ii)絨毛膜を擦り清浄にするステ
ップと;(iii)絨毛膜を、1.0M NaClを含む溶液内に入れるステップと;(iv)
0.05%-0.1%のデオキシコール酸又はデオキシコール酸ナトリウム及び3mM-
5mMのEDTAを含む第1の洗浄剤溶液に絨毛膜を接触させ、その後水でリンスするス
テップと;(iv)0.05%-0.1%のデオキシコール酸又はデオキシコール酸ナトリ
ウムを含む第2の洗浄剤溶液に絨毛膜を接触させ、その後水でリンスするステップと;(
v)凍結乾燥するステップと、を含む方法によって調製されるECM組成物。
【請求項32】
約0.1%未満のフィブロネクチンを含むことを特徴とする請求項31に記載の組成物
。
【請求項33】
約0.1%未満のラミニンを含むことを特徴とする請求項31又は32に記載の組成物
。
【請求項34】
約0.1%未満のグリコサミノグリカンを含むことを特徴とする請求項31乃至33の
いずれか1項に記載の組成物。
【請求項35】
検出不能な量のサイトカイン、成長因子、又はデオキシコール酸を含むことを特徴とす
る請求項31乃至34のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項36】
約0.1%未満のフィブロネクチンと、約0.1%未満のラミニンと、約0.1%未満
のグリコサミノグリカンと、検出不能な量のサイトカイン、成長因子、又はデオキシコー
ル酸と、を含むことを特徴とする請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
約0.1%未満のフィブロネクチンと、約0.1%未満のラミニンと、約0.1%未満
のグリコサミノグリカンと、検出不能な量のサイトカイン、成長因子、及びデオキシコー
ル酸と、を含むことを特徴とする請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記ECMは胎盤ECMであることを特徴とする請求項19乃至37のいずれか1項に
記載の組成物。
【請求項39】
前記胎盤ECMは、ヒト胎盤ECMであることを特徴とする請求項38に記載の組成物
。
【請求項40】
前記組成物はシートとして調製されることを特徴とする請求項19乃至39のいずれか
1項に記載の組成物。
【請求項41】
前記シートは約1.5から2.5mmの厚さであることを特徴とする請求項40に記載
の組成物。
【請求項42】
前記組成物は粒子として調製されることを特徴とする請求項19乃至39のいずれか1
項に記載の組成物。
【請求項43】
前記組成物は流動性基質として調製されることを特徴とする請求項19乃至39のいず
れか1項に記載の組成物。
【請求項44】
細胞外基質(ECM)を必要とする被検体における治療の方法であって、被検体に投与
するステップ、又は被検体を請求項1乃至43のいずれか1項に記載の組成物に接触させ
るステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
前記被検体が口腔病変を有することを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記被検体が尿失禁を有することを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記被検体が膀胱尿管逆流症を有することを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記被検体が胃食道逆流症を有することを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記被検体が1つ又は両側の声帯及び/又は喉頭に影響する疾患、障害又は異常状態を
有することを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記被検体が声門の機能不全を有することを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記ECMは、神経ガイドとして用いられることを特徴とする請求項44に記載の方法
。
【請求項52】
前記ECMは、腱ラップとして用いられることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記ECMは、硬膜の代用として用いられることを特徴とする請求項44に記載の方法
。
【請求項54】
前記被検体が美容上の欠陥を有することを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記美容上の欠陥は、リンクル、陥没、クリース、妊娠線、瘢痕、窪んだ目、又は結果
として目の周りのクマとなる可視血管であることを特徴とする請求項54に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2014年8月25日に出願された米国特許出願第62/041468号に基
づく優先権の利益を主張する。当該出願の内容は、その全体が参照されることで本願明細
書に包含されている。
【0002】
1.技術分野
本明細書において、細胞外基質(細胞外マトリクス)(ECM)組成物及びECM組成
物の製造方法が開示される。また、本明細書に開示されるECM組成物の使用について、
本明細書に開示される。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術
細胞外基質(ECM)は、腱、靱帯、及び皮膚や内臓器官を支えるシート(sheets)を
含む体の様々な構造を形成するタンパク質を含む。当該技術分野において、今なお新たな
改良されたECM組成物及びそのようなECM組成物を作る方法が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
3.概要
1つの態様において、本明細書が開示するものは、例えばヒトの胎盤組織などの胎盤組
織を用いて調製された細胞外基質(ECM)の組成物である。
【0005】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるECM組成物は、約30%
から約60%のコラーゲン及び約10%から35%のエラスチンを含む。加えて、そのよ
うなECM組成物は、(i)例えばエライザ法(ELISA)によって測定される、極め
て少量のフィブロネクチン(例えば、0.1%未満のフィブロネクチン)、(ii)例えば
エライザ法による測定で、検出されないか又は検出不能な量のラミニン、及び/又は例え
ばエライザ法による測定で、検出されないか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを
含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるECM組成物は、約30%
から約72%のコラーゲン及び約10%から35%のエラスチンを含む。加えて、そのよ
うなECM組成物は、(i)例えばエライザ法によって測定される、極めて少量のフィブ
ロネクチン(例えば、0.1%未満のフィブロネクチン)、(ii)例えばエライザ法によ
って測定されるラミニン(例えば、0.1%未満のラミニン)、例えばエライザ法によっ
て測定されるグリコサミノグリカン(例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン)、
(iii)検出されないか又は検出不能な量のサイトカイン、(iv)検出されないか又は検
出不能な量の成長因子、及び/又は(v)検出されないか又は検出不能な量のデオキシコ
ール酸を含み得る。
【0007】
本明細書において開示されるECM組成物は、治療学的/医学的利用に適した特性を有
する。特に、本明細書において開示されるECM組成物は、無菌(sterile)で、無細胞
(例えば、≧99%無細胞(細胞フリー))であり、かつ/又は細胞残屑を含まない(fr
ee of cellular debris)(例えば、≧99%細胞残屑を含まない(細胞残屑フリー))。
特定の実施形態において、本明細書において開示されるECM組成物は、サイトカインを
含まないか又は例えばエライザ法による測定で検出不能な量のサイトカインを含む。いく
つかの実施形態において、本明細書においてさらに開示されるECM組成物は、試薬の残
渣を欠いている。すなわち、最終的なECM組成物は、当該組成物の製造において用いら
れる検出不能な量の試薬を含む。さらに、特定の実施形態において、本明細書において開
示されるECM組成物は、極少量の核酸(例えば乾燥品で、~41-171ng/mg)
及びエンドトキシン(例えば、<0.25EU)を含む。
【0008】
本明細書において開示されるECM組成物の他の有利な特性は、その吸水性である。い
くつかの実施形態において、本明細書において開示されるECM組成物は、自重の150
%-225%の水を吸収する。そのような特性は、例えば、本明細書において開示される
ECM組成物の創傷治療への適用において有利である。
【0009】
本明細書において開示される特定の実施形態は、約35-55%のコラーゲン及び約1
0-30%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記組成
物は約34-53%のコラーゲン及び約13-29%のエラスチンを含む。他の特定の実
施形態において、前記ECM組成物は、例えばヒトの胎盤組織などの胎盤組織から得られ
る。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、例えばヒト胎盤(human placen
ta)由来の絨毛膜などの胎盤の絨毛膜から得られる。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブ
ロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチ
ンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、ラミニンを含まないか又
は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、
グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。他
の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチンを含み
、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン又は0
.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラ
ミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量のグリコサミノグリ
カンを含む。
【0010】
本明細書において開示される特定の実施形態は、約35-72%のコラーゲン及び約1
5-25%のエラスチンを含むECM組成物である。本明細書において開示される他の特
定の実施形態は、約40-70%のコラーゲン及び約15-25%のエラスチンを含むE
CM組成物である。他の特定の実施形態において、前記組成物は、40-70%のコラー
ゲン及び15-22%のエラスチンを含む。他の特定の実施形態において、前記組成物は
、43-68%のコラーゲン及び18-21%のエラスチンを含む。いくつかの実施形態
において、前記ECM組成物はフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブ
ロネクチン、0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、
0.001%未満のフィブロネクチン、0.001から0.1%のフィブロネクチン、0
.001から0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.01%のフィブロネク
チン、0.01から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から0.05%のフィブ
ロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物はラミニンを含み、
例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニ
ン、0.001%未満のラミニン、0.001から0.1%のラミニン、0.001から
0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%の
ラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含む。他の特定の実施形態において
、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサ
ミノグリカン、0.05%未満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノ
グリカン、0.001%未満のグリコサミノグリカン、0.001から0.1%のグリコ
サミノグリカン、0.001から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0
.01%のグリコサミノグリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は
0.01から0.05%のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、
前記ECM組成物は、サイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸を含まないか
又は検出不能な量のサイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸を含む。いくつ
かの実施形態において、前記ECM組成物は、フィブロネクチンを含み、例えば、0.1
%未満のフィブロネクチン、0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィ
ブロネクチン、0.001%未満のフィブロネクチン、0.001から0.1%のフィブ
ロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.01%
のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から0.
05%のフィブロネクチンを含み、ラミニンを含み、例えば、0.1%未満のラミニン、
0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニン、0.001%未満のラミニン、
0.001から0.1%のラミニン、0.001から0.05%のラミニン、0.001
から0.01%のラミニン、0.01から0.1%のラミニン、又は0.01から0.0
5%のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサ
ミノグリカン、0.05%未満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノ
グリカン、0.001%未満のグリコサミノグリカン、0.001から0.1%のグリコ
サミノグリカン、0.001から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0
.01%のグリコサミノグリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は
0.01から0.05%のグリコサミノグリカンを含み、加えて、サイトカイン、成長因
子及び/又はデオキシコール酸を含まないか又は検出不能な量のサイトカイン、成長因子
及び/又はデオキシコール酸を含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は
、例えばヒトの胎盤組織などの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態において、前
記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば胎盤の絨毛膜板から得られる。当該絨毛膜は、
例えばヒト胎盤由来の絨毛膜板等である。
【0011】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約50-60%のコラーゲン及び
約10-20%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0012】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約45-55%のコラーゲン及び
約15-25%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0013】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約40-50%のコラーゲン及び
約20-30%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0014】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約30-40%のコラーゲン及び
約25-35%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0015】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約34-43%のコラーゲン及び
約16-24%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0016】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約37-42%のコラーゲン及び
約16-24%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0017】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約30-70%、30-60%、
30-50%、30-40%、30-35%、34-43%、35-72%、35-40
%、37-42%、40-70%、40-60%、40-50%、40-45%、40-
65%、43-68%、45-50%、50-55%、又は55-60%のコラーゲン及
び約10-30%、10-20%、10-15%、15-25%、15-22%、15-
20%、16-24%、17-24%、18-21%、18-20%、20-24%、2
0-30%、20-25%、25-30%、又は30-35%のエラスチンを含むECM
組成物である。特定の実施形態において、前記ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒト
の胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、胎盤の絨
毛膜、例えば胎盤の絨毛膜板から得られる。当該絨毛膜は、例えばヒト胎盤由来の絨毛膜
板等である。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロ
ネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.05%未満のフィブロ
ネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001%未満のフィブロネクチンを
含む。いくつかの実施形態において、前記ECM組成物は、0.001から0.1%のフ
ィブロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.0
1%のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から
0.05%のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の実施形態にお
いて、前記ECM組成物は、極めて少量のラミニンを含み、例えば、0.1%未満のラミ
ニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニン、又は0.001%未満の
ラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物はラミニンを含み、例
えば、0.001から0.1%のラミニン、0.001から0.05%のラミニン、0.
001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%のラミニン、又は0.01から
0.05%のラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、グリ
コサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特
定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のグリコサミノグリカンを含み
、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05%未満のグリコサミノグリカ
ン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%未満のグリコサミノグリカン
を含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物はグリコサミノグリカンを含み
、例えば、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0.001から0.05%
のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサミノグリカン、0.01
から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.05%のグリコサミノグリ
カンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロ
ネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロ
ネクチン、又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラミニンを含まないか又は
検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量の
グリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態において、前記ECM組成物はフィブ
ロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.05%未満のフィブ
ロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001%未満のフィブロネクチン
、0.001から0.1%のフィブロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネ
クチン、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブ
ロネクチン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチンを含み、ラミニンを含み、
例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニ
ン、0.001%未満のラミニン、0.001から0.1%のラミニン、0.001から
0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%の
ラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含み
、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05%未満のグリコサミノグリカ
ン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%未満のグリコサミノグリカン
、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0.001から0.05%のグリコ
サミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサミノグリカン、0.01から0.
1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.05%のグリコサミノグリカンを含
み、加えて、サイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸を含まないか又は検出
不能な量のサイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸を含む。
【0018】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約30%、約35%、約40%、
約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%又は約72%のコラーゲ
ン、及び約10%、約15%、約18%、約20%、約25%、約30%又は約35%の
エラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記ECM組成物は、
胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態において、前記E
CM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば胎盤の絨毛膜板から得られる。当該絨毛膜は、例え
ばヒト胎盤由来の絨毛膜板等である。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は
、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0
.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001%未
満のフィブロネクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記ECM組成物は、0.
001から0.1%のフィブロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネクチン
、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブロネク
チン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態にお
いて、前記ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。
他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のラミニンを含み、例え
ば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニン、
又は0.001%未満のラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成
物はラミニンを含み、例えば、0.001から0.1%のラミニン、0.001から0.
05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%のラミ
ニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前
記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量のグリコサミノ
グリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のグリ
コサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05%未
満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%未満
のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物はグリ
コサミノグリカンを含み、例えば、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0
.001から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサ
ミノグリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.0
5%のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は
、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0
.01%未満のフィブロネクチン、又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態において、前
記ECM組成物はフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001%
未満のフィブロネクチン、0.001から0.1%のフィブロネクチン、0.001から
0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0.0
1から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチンを
含み、ラミニンを含み、例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、
0.01%未満のラミニン、0.001%未満のラミニン、0.001から0.1%のラ
ミニン、0.001から0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、
0.01から0.1%のラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含み、グリ
コサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05%未
満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%未満
のグリコサミノグリカン、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0.001
から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサミノグリ
カン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.05%のグ
リコサミノグリカンを含み、加えて、サイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール
酸を含まないか又は検出不能な量のサイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸
を含む。
【0019】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、コラーゲンを約31%、約32%
、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%
、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%
、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%
、約57%、約58%、約59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、
66%、67%、68%、69%、70%、71%、又は72%含み、エラスチンを約1
0%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約1
8%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約2
6%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約3
4%、又は35%含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態において、前
記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば胎盤の絨毛膜板から得られる。当該絨毛膜は、
例えばヒト胎盤由来の絨毛膜板等である。他の特定の実施形態において、前記ECM組成
物は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン
、0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001
%未満のフィブロネクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記ECM組成物は、
0.001から0.1%のフィブロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネク
チン、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブロ
ネクチン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含
む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のラミニンを含み、
例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニ
ン、又は0.001%未満のラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM
組成物はラミニンを含み、例えば、0.001から0.1%のラミニン、0.001から
0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%の
ラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含む。他の特定の実施形態において
、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量のグリコサ
ミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量の
グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05
%未満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%
未満のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は
グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン
、0.001から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリ
コサミノグリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0
.05%のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成
物は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン
、0.01%未満のフィブロネクチン、又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み
、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含
まないか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態において
、前記ECM組成物はフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチ
ン、0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.00
1%未満のフィブロネクチン、0.001から0.1%のフィブロネクチン、0.001
から0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0
.01から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチ
ンを含み、ラミニンを含み、例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニ
ン、0.01%未満のラミニン、0.001%未満のラミニン、0.001から0.1%
のラミニン、0.001から0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニ
ン、0.01から0.1%のラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含み、
グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05
%未満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%
未満のグリコサミノグリカン、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0.0
01から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサミノ
グリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.05%
のグリコサミノグリカンを含み、加えて、サイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコ
ール酸を含まないか又は検出不能な量のサイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコー
ル酸を含む。
【0020】
本明細書において開示されるECM組成物は、多様な方法によって調製され得る。調製
物の種類は、例えば目的とされるECM組成物の用途に基づいて選択され得る。本明細書
において開示されるECM組成物の調製物の具体例は、4.1.1節に詳述されている。特
定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、流動性を有する基質とし
て調製される。例えば、当該ECM組成物は、シリンジを用いて投与され得る形態で調製
される。他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、粒子とし
て調製される。例えば、当該ECM組成物は、粉末の形態で調製される。他の特定の実施
形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、シートとして調製される。いくつ
かの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、ECM組成物ではない1
つ以上の成分を含んで調製される。4.1.1.1節を参照されたい。
【0021】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるものは、本明細書に開示さ
れる少なくとも1つのECMシートを含むラミネート(laminates)である。特定の実施
形態において、本明細書に開示されるものは、2つのECMシートを含むラミネートであ
る。特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、少なくとも1つの本明細書
に開示されるECMシート及び少なくとも1つの他の平面状の脱細胞された組織(例えば
、脱細胞された/脱水された羊膜、又は完全に脱細胞され若しくは線維芽細胞層を維持す
るように脱細胞された組織)を含む、又は代わりに平面状の人工組織を有するラミネート
である。いくつかの実施形態において、ラミネートは、複数のECMシート、又は1つ以
上のECMシート及び他の平面状の脱細胞された組織を、例えばニカワ(glue)(例えば
天然のニカワ、例えばフィブロネクチン、フィブリン、又は合成ニカワ)などの接着材の
存在下で互いに接触させて配置することによって生成され得る。いくつかの実施形態にお
いて、ラミネートは、2つ以上のECMシートを共に、又は1つ以上のECMシート及び
1つ以上の平面状の脱細胞された組織を共に加熱乾燥することによって生成され得る。
【0022】
本明細書において開示されるECM組成物には、1つ以上の種類の細胞が播種され、か
つ/又は含まれ得る。すなわち、細胞は、本明細書に記載されたECM組成物を培地とし
て培養されて当該ECM組成物上で成長し得、又は本明細書に記載されたECM組成物の
中に分散され得る(例えば、ECMの流動性のある基質組成物に加えられる)。当業者は
、当該技術分野において周知の、幹細胞及び非幹細胞の両方を含むあらゆる種類の細胞が
、本明細書に開示されるECM組成物に播種され、かつ/又は培養され得ることを十分に
理解するであろう。本明細書に開示されるECM組成物上に播種され得る細胞の種類の限
定的ではない列挙が、4.1.2節に開示されている。
【0023】
他の態様において、本明細書に開示されるものは、本明細書に記載されたECM組成物
を作る方法である。4.2節を参照されたい。いくつかの実施形態において、ECM組成
物を本明細書に開示される胎盤(例えば、ヒト胎盤)から作る方法は、次のようなステッ
プを順に含む:(i)羊膜、絨毛膜、及び臍帯を胎盤から(例えば、出産直後の母体から
得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)除去するステップと、(ii)胎盤組織に結
合された細胞の浸透圧崩壊(osmotic disruption)を引き起こす溶液に、胎盤組織をさら
すステップと、(iii)洗浄剤を含む溶液に胎盤を接触させるステップと、(iv)塩基を
含む溶液に胎盤を接触させるステップ。いくつかの実施形態において、ECM組成物を胎
盤から作る方法であって、胎盤(例えば、ヒト胎盤)の絨毛膜を用いる方法は、次のよう
なステップを順に含む:(i)胎盤から(例えば、出産直後の母体から得られた胎盤から
、又は保存された胎盤から)絨毛膜を取得するステップと、(ii)絨毛膜に結合された細
胞の浸透圧崩壊を引き起こす溶液に、絨毛膜をさらすステップと、(iii)洗浄剤を含む
溶液に絨毛膜を接触させるステップと、(iv)塩基を含む溶液に絨毛膜を接触させるステ
ップ。いくつかの実施形態において、ECM組成物を胎盤から作る方法であって、胎盤(
例えば、ヒト胎盤)の絨毛膜を用いる方法は、次のようなステップを順に含む:(i)胎
盤から(例えば、出産直後の母体から得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)絨毛
膜を取得するステップと、(ii)絨毛膜を擦り(scraping)、清浄にするステップと、(
iii)絨毛膜に結合された細胞の浸透圧崩壊を引き起こす溶液に、絨毛膜をさらすステッ
プと、(iv)洗浄剤を含む溶液に絨毛膜を接触させるステップと、(v)すり潰し(grind
ing)、凍結乾燥するステップ。いくつかの実施形態において、ECM組成物を胎盤から
作る方法であって、胎盤(例えば、ヒト胎盤)の絨毛膜を用いる方法は、次のようなステ
ップを順に含む:(i)胎盤から(例えば、出産直後の母体から得られた胎盤から、又は
保存された胎盤から)絨毛膜を取得するステップと、(ii)絨毛膜を擦り、清浄にするス
テップと、(iii)絨毛膜に結合された細胞の浸透圧崩壊を引き起こす溶液に、絨毛膜を
さらすステップと、(iv)第1の洗浄剤溶液を含む溶液、次に第2の洗浄剤溶液を含む溶
液に絨毛膜を接触させるステップであって、前記溶液は洗浄剤及び例えばEDTAなどの
キレート剤を含むステップと、(v)凍結乾燥するステップ。本明細書に開示されたEC
M組成物を作る方法は、例えば塩基、洗浄剤、キレート剤などの成分を、本明細書に開示
された特別な特徴を有するECM組成物を生成する結果となる量で用いる。
【0024】
本明細書に開示されたECM組成物を作る方法は、例えば塩基、洗浄剤などの成分を、
本明細書に開示された特別な特徴を有するECM組成物を生成する結果となる量で用いる
。
【0025】
本明細書に開示される特定の実施形態において、ECM組成物を作る方法は、(i)羊
膜、絨毛膜、及び臍帯を胎盤から(例えば、出産直後の母体から得られた胎盤から、又は
保存された胎盤から)除去するステップと、(ii)残っている胎盤組織を、例えば塩化ナ
トリウム(NaCl、例えば、1M NaCl)などの、当該胎盤組織に結合された細胞
の浸透圧崩壊を引き起こす溶液内に入れ(placing)て、均質化する(ホモジナイズする
)(homogenizing)ステップと、(iii)例えばデオキシコール酸ナトリウム(例えば、
2%デオキシコール酸ナトリウム)などの洗浄剤を含む溶液に胎盤組織を接触させるステ
ップと、(iv)例えば水などで胎盤組織を洗浄するステップと、(v)例えば水酸化ナト
リウム(NaOH、例えば、1M NaOH)などの塩基を含む溶液に胎盤組織を接触さ
せるステップと、(vi)例えば塩酸(HCl)などの酸性溶液を、胎盤組織を含む溶液に
加えて中性のpH又は中性に近いpH(例えば、pH6.0-8.0)とするステップと
、(vii)胎盤組織を当該溶液の液体部分から分離し(例えば、遠心分離によって)、当
該胎盤組織を回収するステップと、を含み、これによってECM組成物を作る。当該方法
によって生成するECM組成物は、通常、ペースト状(ECMペースト)であり、後で使
用するために回収後に冷凍されて、保管され得るか、又は回収後直ちに本明細書に記載さ
れたECM調製物(formulation)、例えば、ECMシートの調製物、ECM粒子の調製
物、又はECM流動性基質などの製造に使用され得る。
【0026】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法
であって、前記方法は、(i)胎盤から(例えば、出産直後の母体から得られた胎盤から
、又は保存された胎盤から)絨毛膜を取得するステップと、(ii)絨毛膜組織を、例えば
塩化ナトリウム(NaCl、例えば、1M NaCl)などの、当該絨毛膜組織に結合さ
れた細胞の浸透圧崩壊を引き起こす溶液内に入れて、当該絨毛膜組織を均質化するステッ
プと、(iii)例えばデオキシコール酸ナトリウム(例えば、2%デオキシコール酸ナト
リウム)などの洗浄剤を含む溶液に絨毛膜組織を接触させるステップと、(iv)例えば水
などで絨毛膜組織を洗浄するステップと、(v)例えば水酸化ナトリウム(NaOH、例
えば、1M NaOH)などの塩基を含む溶液に絨毛膜組織を接触させるステップと、(v
i)例えば塩酸(HCl)などの酸性溶液を、絨毛膜組織を含む溶液に加えて中性のpH
又は中性に近いpH(例えば、pH6.0-8.0)とするステップと、(vii)絨毛膜
組織を当該溶液の液体部分から分離し(例えば、遠心分離によって)、当該絨毛膜組織を
回収するステップと、を含み、これによってECM組成物を作る。当該方法によって生成
するECM組成物は、通常、ペースト状(ECMペースト)であり、後で使用するために
回収後に冷凍され、保管され得るか、又は回収後直ちに本明細書に記載されたECM調製
物、例えば、ECMシートの調製物、ECM粒子の調製物、又はECM流動性基質などの
製造に使用され得る。
【0027】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法
であって、前記方法は、(i)絨毛膜、例えば絨毛膜板を胎盤から(例えば、出産直後の
母体から得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)取得するステップと、(ii)絨毛
膜を擦り、清浄にするステップと、(iii)絨毛膜組織を、例えば塩化ナトリウム(Na
Cl、例えば、0.5M NaCl)などの、当該絨毛膜組織に結合された細胞の浸透圧
崩壊を引き起こす溶液内に入れるステップと、(iv)例えばデオキシコール酸又はデオキ
シコール酸ナトリウム(例えば、2%デオキシコール酸又はデオキシコール酸ナトリウム
)などの洗浄剤を含む溶液に絨毛膜組織を接触させ、そして例えば水によってすすぐ(リ
ンスする)(rinsing)などのリンスするステップと、(v)すり潰し、凍結乾燥するステ
ップと、を含む。当該ECM組成物は、通常、ペースト(ECMペースト)であり、例え
ば、粉砕されて調製され、様々な形状又は形態で調製され得る。例えば、当該ECM組成
物は、ECMシート、ECM粒子の調製物、又はECM流動性基質などに調製され得る。
【0028】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法
であって、前記方法は、(i)絨毛膜、例えば絨毛膜板を胎盤から(例えば、出産直後の
母体から得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)取得するステップと、(ii)絨毛
膜を擦り、清浄にするステップと、(iii)絨毛膜組織を、例えば塩化ナトリウム(Na
Cl、例えば、1.0M NaCl)などの、当該絨毛膜組織に結合された細胞の浸透圧
崩壊を引き起こす溶液内に入れるステップと、(iv)例えばデオキシコール酸又はデオキ
シコール酸ナトリウム(例えば、0.05%-0.2%又は0.3%-0.6%のデオキ
シコール酸又はデオキシコール酸ナトリウム)などの洗浄剤及びEDTA(例えば、1-
5mM EDTA又は5-10mM EDTA)を含む第1の洗浄剤溶液に絨毛膜組織を接
触させるステップと、(v)例えばデオキシコール酸又はデオキシコール酸ナトリウム(
例えば、0.05%-0.2%又は0.3%-0.6%のデオキシコール酸又はデオキシ
コール酸ナトリウム)などの洗浄剤及びEDTA(例えば、1-5mM EDTA又は5
-10mM EDTA)を含む第2の洗浄剤溶液に絨毛膜組織を接触させ、そして例えば
水などによってリンスするステップと、(vi)凍結乾燥し、脱細胞され凍結乾燥された、
全絨毛膜を得るステップと、を含む。当該全絨毛膜は、例えば、粉砕されて溶液(例えば
、水又はリン酸緩衝生理食塩水)中に再懸濁されて調製され得、脱細胞されたECMペー
ストを形成し得る。そして、例えばECMシート、ECM粒子の調製物、又はECM流動
性基質などの様々な形状又は形態に調製され得る。
【0029】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECMシートを生成する方法
であって、前記方法は、(i)本明細書に開示される方法に従ってECMペーストを準備
するステップと、(ii)ECMペーストを例えば水中に懸濁し、例えばECMを型に入れ
るなど、シートを形成するために適した基板に当該懸濁されたECM溶液を入れるステッ
プと、(iii)ECMを凍結させるステップと、(iv)凍結したECMを凍結乾燥させる
ステップと、(v)凍結乾燥されたECMを基板から取り外して水に浸すステップと、(v
i)例えば真空乾燥機を用いて、ECMを乾燥させるステップと、を含む。
【0030】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM粒子を生成する方法で
あって、前記方法は、(i)本明細書に開示される方法に従ってECMペーストを準備す
るステップと、(ii)ECMペーストを例えば水中に、懸濁するステップと、(iii)E
CMを凍結させるステップと、(iv)凍結したECMを凍結乾燥させるステップと、(v
)凍結乾燥されたECMを粉砕するステップと、を含む。
【0031】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM流動性基質を生成する
方法であって、前記方法は、(i)本明細書に開示される方法に従ってECMペーストを
準備するステップと、(ii)ECMペーストを例えば水中に、懸濁するステップと、(ii
i)ECMを凍結させるステップと、(iv)凍結したECMを凍結乾燥させるステップと
、(v)冷凍乾燥されたECMを微粉末化するステップと、を含む。微粉末化されたEC
Mを例えば生理食塩水などに再懸濁することで、ECM流動性基質が生成される。
【0032】
他の態様において、本明細書に開示されるものは、本明細書に開示されるECM組成物
の用途である。4.3章を参照されたい。いくつかの実施形態において、本明細書に開示
されるECM組成物は、治療学的/医学的な目的で利用される。4.3.1節を参照された
い。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、美容の目的で
利用される。4.3.2節を参照されたい。
【0033】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、創傷の治療及び/又
は管理において使用される。4.3.1節を参照されたい。特定の実施形態において、本明
細書に開示されるECM組成物は、傷を埋めるために、すなわち、創傷充填剤(wound fi
ller)として使用される。他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組
成物は、例えば火傷による傷などの傷を手当てする(dress)(例えば、被覆する(cover
))ために使用される。
【0034】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、例えば歯の欠陥
を修復するなど、歯の状態の治療及び/又は管理において使用される。4.3.2節を参照
されたい。
【0035】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、口腔病変(oral
lesions)の治療及び/又は管理において使用される。4.3.3節を参照されたい。
【0036】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体の体の空
隙(void)をシール(seal)するため、充填するため、及び/又は他の処置をするために
使用される。4.3.4節を参照されたい。
【0037】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体における
組織バルキング(tissue bulking)に使用される。4.3.5節を参照されたい。
【0038】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体における
尿失禁の治療に使用される。4.3.6節を参照されたい。
【0039】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体における
膀胱尿管逆流症の治療に使用される。4.3.7節を参照されたい。
【0040】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体における
胃食道逆流症の治療に使用される。4.3.8節を参照されたい。
【0041】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体における
1つ又は両側の声帯及び/又は喉頭に影響する疾患、障害又は他の異常状態の治療に使用
される。4.3.9節を参照されたい。
【0042】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体における
声門の機能不全(glottic incompetence)の管理又は治療に使用される。4.3.10節
を参照されたい。
【0043】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、組織又は器官の
バイオエンジニアリング(bioengineering)に使用される。4.3.11節を参照された
い。
【0044】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、美容の目的、例
えば、美容目的での被検体の皮膚の増強(augment)、(例えば、被検体がより若々しく
見えるようにすること)に使用される。4.3.12節を参照されたい。
【0045】
他の態様において、本明細書に開示されるものは、本明細書に開示されるECM組成物
を含むキット(kit)である。本明細書に開示されるキットは、通常、当業者である施術
者への配布に便利な容器に入れられた、本明細書に開示されるECM組成物を含む。5章
を参照されたい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
3.1図面の簡単な説明
【
図1】
図1Aから
図1F:アルビノのニュージーランドホワイトラビットに移植された後の、ブタ膀胱基質(porcine urinary bladder matrix)に対する組織の反応性と比較した際の本明細書に記載された方法に従って調製されたECMシートに対する組織の反応性を示している。移植後第1週では、膀胱組織(urinary bladder matrix)( UBM)シートに近接する組織は粒状化及び炎症反応の明瞭な兆候を示しているのに対して(
図1A)、ECMシート近傍の組織は、顆粒球の僅かな浸透に伴って散在した筋組織を示している(
図1B)。第2週及び第4週では、UBMシート近傍で粒状化がさらに顕著であるのに対して(
図1C及び
図1E)、ECMシート近傍の組織は、実質的に粒状化が無く、正常に見える(
図1D及び
図1F)。
【
図2】
図2Aから
図2F:アルビノのニュージーランドホワイトラビットに移植された後の、MATRISTEM MICROMATRIX(登録商標)に対する組織の反応性と比較した際の本明細書に記載された方法に従って調製されたECM粒子に対する組織の反応性を示している。移植後第1週では、ECM粒子は、炎症を示すいくらかの粒状化を示しているが(
図2B)、その程度はUBM粒子よりも著しく小さい(
図2A)。第2週及び第4週では、ECM粒子は粒状化の著しい減少を示しており(
図2D及び
図2F)、これと比較してUBM粒子は、第2週及び第4週で実質的な炎症を示している(
図2C及び
図2E)。
【
図3】
図3Aから
図3F:アルビノのニュージーランドホワイトラビットに移植された後の、ウシ由来の(bovine derived)創傷基質製品(wound matrix product)(INTEGRA(商標)Flowable)に対する組織の反応性と比較した際の本明細書に記載された方法に従って調製されたECM流動性基質に対する組織の反応性を示している。ウシ由来の創傷基質製品(INTEGRA(商標)Flowable)は、第1週で粒状化を示し(
図3A)、続いて第2週及び第4週で瘢痕化している(
図3C及び
図3Eの明るい領域)。一方で、ECM流動性基質は、実質的に最初の週にのみ炎症反応を示し(
図3B)、続いて、第2週及び第4週では殆ど完全に回復している(
図3D及び
図3F)。
【発明を実施するための形態】
【0047】
4.発明の詳細な説明
本明細書において、細胞外基質(ECM)組成物(4.1参照)及び細胞外基質(EC
M)組成物を製造する方法(4.2参照)が開示される。また、本明細書において、本明
細書に開示されるECM組成物の用途(4.3参照)及び本明細書に開示されるECM組
成物を含むキット(kit)が開示される(5章参照)。
【0048】
4.1.細胞外基質組成物
1つの態様において、本明細書に開示されるものは、胎盤組織(例えば、ヒト胎盤組織
)を用いて調製される細胞外基質(ECM)組成物である。本明細書に記載されたECM
組成物は、例えばコラーゲン及びエラスチンなどのECM成分を、当該技術分野において
周知のECM組成物中の量とは異なる量で含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、約30%から6
0%のコラーゲン及び約10%から約35%のエラスチンを含む。本明細書において使用
される「約」の用語は、特定の数字について10%多いか又は少ない量を示す。加えて、
そのような本明細書に開示されるECM組成物は、(i)例えばエライザ法(ELISA
)によって測定される、極めて少量のフィブロネクチン(例えば、0.1%未満のフィブ
ロネクチン)、(ii)例えばエライザ法による測定で、検出されないか又は検出不能な量
のラミニン、及び/又は例えばエライザ法による測定で、検出されないか又は検出不能な
量のグリコサミノグリカンを含む。
【0050】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、約30%から7
2%のコラーゲン及び約10%から約35%のエラスチンを含む。加えて、そのようなE
CM組成物は、(i)例えばELISA(エライザ法)によって測定される、極めて少量
のフィブロネクチン(例えば、0.1%未満のフィブロネクチン)、(ii)例えばエライ
ザ法によって測定されるラミニン(例えば、0.1%未満のラミニン)、例えばエライザ
法によって測定されるグリコサミノグリカン(例えば、0.1%未満のグリコサミノグリ
カン)、(iii)検出されないか又は検出不能な量のサイトカイン、(iv)検出されない
か又は検出不能な量の成長因子、及び/又は(v)検出されないか又は検出不能な量のデ
オキシコール酸を含み得る。
【0051】
本明細書において開示されるECM組成物は、治療学的/医学的利用に適した特性を有
する。特に、本明細書において開示されるECM組成物は、無菌で、無細胞(例えば、≧
99%無細胞)であり、及び/又は細胞残屑を含まない(free of cellular debris)(例
えば、≧99%細胞残屑を含まない)。特定の実施形態において、本明細書において開示
されるECM組成物は、サイトカインを含まないか又は例えばエライザ法による測定で検
出不能な量のサイトカインを含む。いくつかの実施形態において、本明細書においてさら
に開示されるECM組成物は、試薬の残渣を欠いている。すなわち、最終的なECM組成
物は、検出不能な量の、当該組成物の製造において用いられる試薬を含む。さらに、特定
の実施形態において、本明細書において開示されるECM組成物は、極少量の核酸(例え
ば乾燥品で、~41-171ng/mg)及びエンドトキシン(例えば、<0.25EU
)を含む。
【0052】
本明細書において開示されるECM組成物の他の有利な特性は、その吸水性である。い
くつかの実施形態において、本明細書において開示されるECM組成物は、自重の150
%-225%の水を吸収する。
【0053】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は約34-53%のコラ
ーゲン及び約13-29%のエラスチンを含む。他の特定の実施形態において、前記EC
M組成物は、例えばヒトの胎盤組織などの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態に
おいて、前記ECM組成物は、例えばヒト胎盤由来の絨毛膜などの胎盤の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0054】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は約35-55%の
コラーゲン及び約10-30%のエラスチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、例えばヒトの胎盤組織などの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形
態において、前記ECM組成物は、例えばヒト胎盤由来の絨毛膜などの胎盤の絨毛膜から
得られる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネ
クチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネ
クチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、
前記ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特
定の実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検
出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組
成物は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチ
ン、0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み
、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含
まないか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0055】
本明細書において開示される特定の実施形態は、約35-72%のコラーゲン及び約1
5-25%のエラスチンを含むECM組成物である。本明細書において開示される他の特
定の実施形態は、約40-70%のコラーゲン及び約15-25%のエラスチンを含むE
CM組成物である。他の特定の実施形態において、前記組成物は、40-70%のコラー
ゲン及び15-22%のエラスチンを含む。他の特定の実施形態において、前記組成物は
、43-68%のコラーゲン及び18-21%のエラスチンを含む。いくつかの実施形態
において、前記ECM組成物はフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブ
ロネクチン、0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、
0.001%未満のフィブロネクチン、0.001から0.1%のフィブロネクチン、0
.001から0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.01%のフィブロネク
チン、0.01から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から0.05%のフィブ
ロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物はラミニンを含み、
例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニ
ン、0.001%未満のラミニン、0.001から0.1%のラミニン、0.001から
0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%の
ラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含む。他の特定の実施形態において
、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサ
ミノグリカン、0.05%未満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノ
グリカン、0.001%未満のグリコサミノグリカン、0.001から0.1%のグリコ
サミノグリカン、0.001から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0
.01%のグリコサミノグリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は
0.01から0.05%のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、
前記ECM組成物は、サイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸を含まないか
又は検出不能な量のサイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸を含む。いくつ
かの実施形態において、前記ECM組成物は、フィブロネクチンを含み、例えば、0.1
%未満のフィブロネクチン、0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィ
ブロネクチン、0.001%未満のフィブロネクチン、0.001から0.1%のフィブ
ロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.01%
のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から0.
05%のフィブロネクチンを含み、ラミニンを含み、例えば、0.1%未満のラミニン、
0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニン、0.001%未満のラミニン、
0.001から0.1%のラミニン、0.001から0.05%のラミニン、0.001
から0.01%のラミニン、0.01から0.1%のラミニン、又は0.01から0.0
5%のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサ
ミノグリカン、0.05%未満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノ
グリカン、0.001%未満のグリコサミノグリカン、0.001から0.1%のグリコ
サミノグリカン、0.001から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0
.01%のグリコサミノグリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は
0.01から0.05%のグリコサミノグリカンを含み、加えて、サイトカイン、成長因
子及び/又はデオキシコール酸を含まないか又は検出不能な量のサイトカイン、成長因子
及び/又はデオキシコール酸を含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は
、例えばヒトの胎盤組織などの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態において、前
記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば胎盤の絨毛膜板から得られる。当該絨毛膜は、
例えばヒト胎盤由来の絨毛膜板等である。
【0056】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約50-60%のコラーゲン及び
約10-20%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0057】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約45-55%のコラーゲン及び
約15-25%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0058】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約40-50%のコラーゲン及び
約20-30%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0059】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約30-40%のコラーゲン及び
約25-35%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0060】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約34-43%のコラーゲン及び
約16-24%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0061】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約37-42%のコラーゲン及び
約16-24%のエラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば、ヒト胎盤由来の絨毛膜から得ら
れる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロネクチ
ンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチ
ン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記
ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の
実施形態において、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不
能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.01%未満のフィブロネクチン又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。
【0062】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約30-70%、30-60%、
30-50%、30-40%、30-35%、34-43%、35-72%、35-40
%、37-42%、40-70%、40-60%、40-50%、40-45%、40-
65%、43-68%、45-50%、50-55%、又は55-60%のコラーゲン及
び約10-30%、10-20%、10-15%、15-25%、15-22%、15-
20%、16-24%、17-24%、18-21%、18-20%、20-24%、2
0-30%、20-25%、25-30%、又は30-35%のエラスチンを含むECM
組成物である。特定の実施形態において、前記ECM組成物は、胎盤組織、例えば、ヒト
の胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、胎盤の絨
毛膜、例えば胎盤の絨毛膜板から得られる。当該絨毛膜は、例えばヒト胎盤由来の絨毛膜
板等である。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロ
ネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.05%未満のフィブロ
ネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001%未満のフィブロネクチンを
含む。いくつかの実施形態において、前記ECM組成物は、0.001から0.1%のフ
ィブロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.0
1%のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から
0.05%のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。他の特定の実施形態にお
いて、前記ECM組成物は、極めて少量のラミニンを含み、例えば、0.1%未満のラミ
ニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニン、又は0.001%未満の
ラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物はラミニンを含み、例
えば、0.001から0.1%のラミニン、0.001から0.05%のラミニン、0.
001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%のラミニン、又は0.01から
0.05%のラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、グリ
コサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。他の特
定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のグリコサミノグリカンを含み
、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05%未満のグリコサミノグリカ
ン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%未満のグリコサミノグリカン
を含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物はグリコサミノグリカンを含み
、例えば、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0.001から0.05%
のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサミノグリカン、0.01
から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.05%のグリコサミノグリ
カンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のフィブロ
ネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロ
ネクチン、又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラミニンを含まないか又は
検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量の
グリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態において、前記ECM組成物はフィブ
ロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0.05%未満のフィブ
ロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001%未満のフィブロネクチン
、0.001から0.1%のフィブロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネ
クチン、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブ
ロネクチン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチンを含み、ラミニンを含み、
例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニ
ン、0.001%未満のラミニン、0.001から0.1%のラミニン、0.001から
0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%の
ラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含み
、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05%未満のグリコサミノグリカ
ン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%未満のグリコサミノグリカン
、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0.001から0.05%のグリコ
サミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサミノグリカン、0.01から0.
1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.05%のグリコサミノグリカンを含
み、加えて、サイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸を含まないか又は検出
不能な量のサイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸を含む。
【0063】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、約30%、約35%、約40%、
約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%又は約72%のコラーゲ
ン、及び約10%、約15%、約18%、約20%、約25%、約30%又は約35%の
エラスチンを含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記ECM組成物は、
胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態において、前記E
CM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば胎盤の絨毛膜板から得られる。当該絨毛膜は、例え
ばヒト胎盤由来の絨毛膜板等である。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は
、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0
.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001%未
満のフィブロネクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記ECM組成物は、0.
001から0.1%のフィブロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネクチン
、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブロネク
チン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態にお
いて、前記ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含む。
他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のラミニンを含み、例え
ば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニン、
又は0.001%未満のラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成
物はラミニンを含み、例えば、0.001から0.1%のラミニン、0.001から0.
05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%のラミ
ニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前
記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量のグリコサミノ
グリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のグリ
コサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05%未
満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%未満
のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物はグリ
コサミノグリカンを含み、例えば、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0
.001から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサ
ミノグリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.0
5%のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は
、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、0
.01%未満のフィブロネクチン、又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み、ラ
ミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含まな
いか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態において、前
記ECM組成物はフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン、
0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001%
未満のフィブロネクチン、0.001から0.1%のフィブロネクチン、0.001から
0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0.0
1から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチンを
含み、ラミニンを含み、例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、
0.01%未満のラミニン、0.001%未満のラミニン、0.001から0.1%のラ
ミニン、0.001から0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、
0.01から0.1%のラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含み、グリ
コサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05%未
満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%未満
のグリコサミノグリカン、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0.001
から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサミノグリ
カン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.05%のグ
リコサミノグリカンを含み、加えて、サイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール
酸を含まないか又は検出不能な量のサイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコール酸
を含む。
【0064】
本明細書において開示される他の特定の実施形態は、コラーゲンを約31%、約32%
、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%
、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%
、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%
、約57%、約58%、約59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、
66%、67%、68%、69%、70%、71%、又は72%含み、エラスチンを約1
0%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約1
8%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約2
6%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約3
4%、又は35%含むECM組成物である。特定の実施形態において、前記ECM組成物
は、胎盤組織、例えば、ヒトの胎盤組織から得られる。他の特定の実施形態において、前
記ECM組成物は、胎盤の絨毛膜、例えば胎盤の絨毛膜板から得られる。当該絨毛膜は、
例えばヒト胎盤由来の絨毛膜板等である。他の特定の実施形態において、前記ECM組成
物は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン
、0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.001
%未満のフィブロネクチンを含む。いくつかの実施形態において、前記ECM組成物は、
0.001から0.1%のフィブロネクチン、0.001から0.05%のフィブロネク
チン、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0.01から0.1%のフィブロ
ネクチン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチンを含む。他の特定の実施形態
において、前記ECM組成物は、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含
む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量のラミニンを含み、
例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニン、0.01%未満のラミニ
ン、又は0.001%未満のラミニンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM
組成物はラミニンを含み、例えば、0.001から0.1%のラミニン、0.001から
0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニン、0.01から0.1%の
ラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含む。他の特定の実施形態において
、前記ECM組成物は、グリコサミノグリカンを含まないか又は検出不能な量のグリコサ
ミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は、極めて少量の
グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05
%未満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%
未満のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成物は
グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン
、0.001から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリ
コサミノグリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0
.05%のグリコサミノグリカンを含む。他の特定の実施形態において、前記ECM組成
物は、極めて少量のフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチン
、0.01%未満のフィブロネクチン、又は0.001%未満のフィブロネクチンを含み
、ラミニンを含まないか又は検出不能な量のラミニンを含み、グリコサミノグリカンを含
まないか又は検出不能な量のグリコサミノグリカンを含む。いくつかの実施形態において
、前記ECM組成物はフィブロネクチンを含み、例えば、0.1%未満のフィブロネクチ
ン、0.05%未満のフィブロネクチン、0.01%未満のフィブロネクチン、0.00
1%未満のフィブロネクチン、0.001から0.1%のフィブロネクチン、0.001
から0.05%のフィブロネクチン、0.001から0.01%のフィブロネクチン、0
.01から0.1%のフィブロネクチン、又は0.01から0.05%のフィブロネクチ
ンを含み、ラミニンを含み、例えば、0.1%未満のラミニン、0.05%未満のラミニ
ン、0.01%未満のラミニン、0.001%未満のラミニン、0.001から0.1%
のラミニン、0.001から0.05%のラミニン、0.001から0.01%のラミニ
ン、0.01から0.1%のラミニン、又は0.01から0.05%のラミニンを含み、
グリコサミノグリカンを含み、例えば、0.1%未満のグリコサミノグリカン、0.05
%未満のグリコサミノグリカン、0.01%未満のグリコサミノグリカン、0.001%
未満のグリコサミノグリカン、0.001から0.1%のグリコサミノグリカン、0.0
01から0.05%のグリコサミノグリカン、0.001から0.01%のグリコサミノ
グリカン、0.01から0.1%のグリコサミノグリカン、又は0.01から0.05%
のグリコサミノグリカンを含み、加えて、サイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコ
ール酸を含まないか又は検出不能な量のサイトカイン、成長因子及び/又はデオキシコー
ル酸を含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されたECM組成物中のコラーゲンは、
テロペプチドコラーゲン(telopeptide collagen)を含む、すなわち構成要素とする。い
くつかの実施形態において、本明細書に記載されたECM組成物中のコラーゲンは、アテ
ロペプチドコラーゲン(atelopeptide collagen)を含む、すなわち構成要素とする。い
くつかの場合、テロペプチドコラーゲン及びアテロペプチドコラーゲンを構成要素とする
。
【0066】
本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンの第1の種類は、I型コラーゲン(
type I collagen)である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM
組成物中のコラーゲンは、乾燥重量で少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも
70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は80%以上のI型コラーゲンを含む
。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、
乾燥重量で、50%から70%のI型コラーゲン、60%から80%のI型コラーゲン、
又は70%から90%のI型コラーゲンを含む。特定の実施形態において、本明細書に開
示されるECM組成物中のコラーゲンは、60%から80%のI型コラーゲンを含む。
【0067】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、
例えばI型コラーゲンを含み同様にIII型コラーゲン及び/又はIV型コラーゲンも含むと
いったように、複数種のコラーゲンの混合物を含む。
【0068】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、相当
量のI型コラーゲン(例えば、60%-80%のI型コラーゲン)を含み、さらにIII型
コラーゲンも含む。例えば、I型コラーゲンに加えて、本明細書に開示されるECM組成
物中のコラーゲンは、乾燥重量で、1%から5%のIII型コラーゲン、5%から10%のI
II型コラーゲン、若しくは1%から10%のIII型コラーゲンを含み得、又は、当該本明
細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、乾燥重量で、約1%、約2%、約3%
、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、若しくは約10%のIII型コラー
ゲンを含み得る。
【0069】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、
相当量のI型コラーゲン(例えば、60%-80%のI型コラーゲン)を含み、さらにI
V型コラーゲンも含む。例えば、I型コラーゲンに加えて、本明細書に開示されるECM
組成物中のコラーゲンは、乾燥重量で、1%から5%のIV型コラーゲン、5%から10
%のIV型コラーゲン、若しくは1%から10%のIV型コラーゲンを含み得、又は、当該
本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、乾燥重量で、約1%、約2%、約
3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、若しくは約10%のIV型コ
ラーゲンを含み得る。
【0070】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、
相当量のI型コラーゲン(例えば、60%-80%のI型コラーゲン)を含み、さらにII
I型コラーゲン及びIV型コラーゲンも含む。例えば、I型コラーゲンに加えて、本明細書
に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、(i)乾燥重量で、1%から5%のIII型コ
ラーゲン、5%から10%のIII型コラーゲン、若しくは1%から10%のIII型コラーゲ
ンを含み得、又は、当該本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、乾燥重量
で、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、若し
くは約10%のIII型コラーゲンを含み得、そして、(ii)乾燥重量で、1%から5%のI
V型コラーゲン、5%から10%のIV型コラーゲン、若しくは1%から10%のIV型コ
ラーゲンを含み得、又は、当該本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、乾
燥重量で、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%
、若しくは約10%のIV型コラーゲンを含み得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、
例えば架橋剤によって、架橋されている。架橋剤の具体例は、グルタルアルデヒド(例え
ば、米国特許第4,852,640号, 第5,428,022号, 第5,660,692号 及び 第5,008,116号参照。
これらの特許の内容は、その全体が参照されることで本願明細書に包含されている。))
、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、及びゲニピン(genipin)(例えば、米国特
許出願第2003/0049301号参照。当該出願の内容は、その全体が参照されることで本願明細
書に包含されている。)を含む。さらに架橋剤及びコラーゲンの架橋方法の具体例は、米
国特許第 5,880,242 号及び 第6,117,979号、 ゼーマンらの文献(Zeeman et al., 2000,
J Biomed Mater Res. 51(4):541-8)、 ワケムらの文献(van Wachem et al., 2000, J
Biomed Mater Res. 53(1):18-27)、ワケムらの文献(van Wachem et al., 1999, J Biom
ed Mater Res. 47(2):270-7)、ゼーマンらの文献(Zeeman et al., 1999, J Biomed Mat
er Res. 46(3):424-33)、及びゼーマンらの文献(Zeeman et al., 1999, Biomaterials
20(10):921-31)に記載されており、当該特許及び文献の内容は、その全体が参照される
ことで本願明細書に包含されている。
【0072】
4.1.1調製物
本明細書において開示されるECM組成物は、多様な方法によって調製され得る。調製
物の種類は、例えば目的とされるECM組成物の用途に基づいて選択され得る。
【0073】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、流動性基質として調
製され、例えばシリンジを用いて投与され得る形態で調製される。従って、本明細書に提
示されるものは、本明細書に記載されたようなECM組成物を含むシリンジである。いく
つかの実施形態において、本明細書において開示される流動性基質のECM組成物は、水
中又はリン酸緩衝生理食塩水中に、例えば溶液又は懸濁液、例えば洗口液として調製され
得る。溶液中で(例えば、流動性基質として)、本明細書に開示されるECM組成物は、
当業者にとって有用な任意の濃度で存在し得る。いくつかの実施形態において、本明細書
に開示される流動性基質ECM組成物は、200-300mg/ml、100-200m
g/ml、150-250mg/ml、0.1-100mg/ml、1-100mg/m
l、1-75mg/ml、1-50mg/ml、1-40mg/ml、10-40mg/
ml、又は20-40mg/mlのECMを含む。いくつかの実施形態において、本明細
書に開示される流動性基質ECM組成物は、約5mg/ml、10mg/ml、15mg
/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/ml、40mg
/ml、45mg/ml、50mg/mlのECM、75mg/ml、100mg/ml
、125mg/ml、150mg/ml、175mg/ml、200mg/ml、225
mg/ml、250mg/ml、275mg/ml、又は300mg/mlのECMを含
む。特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、200mg/mlのECM
を含む流動性基質ECM組成物である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示さ
れる流動性基質ECM組成物は、本明細書に記載された方法を用いて調製された、凍結乾
燥され、粉末化されたECMを用いて、当業者によって調製される。例えば、前記凍結乾
燥され、粉末化されたECMはキット(kit)の形態で提供され、例えば生理食塩水等の
適切な懸濁溶液を伴う。そして、当業者は、当該凍結乾燥され、粉末化されたECMを当
該懸濁溶液に懸濁させることによって、流動性基質ECM組成物を容易に生成することが
できる。
【0074】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、例えば粉末の形
態など、粒子として調製される。粒子である場合、本明細書に開示されるECM組成物は
、バイアル(例えば、ガラスバイアル(glass vial))等の、粒子の保存に適した任意の
容器内に準備され得る。粒子として提供される場合、本明細書に開示されるECM組成物
は、当業者にとって有用な任意の濃度で容器内に準備され得る。いくつかの実施形態にお
いて、本明細書に開示される粒子ECM組成物は、200-300mg、100-200
mg、150-250mg、50-100mg、25-50mg、10-25mg、5-
10mg、又は1-5mgのECMを含む。いくつかの実施形態において、いくつかの実
施形態において、本明細書に開示される流動性基質ECM組成物は、約5mg、10mg
、15mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg
のECM、約75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg
、225mg、250mg、275mg、又は300mgのECMを含み得る。特定の実
施形態において、本明細書に開示されるものは、200mgのECMを含む粒子ECM組
成物である。他の特定の実施形態において、100mgのECMを含む粒子ECM組成物
である。
【0075】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、例えば平面状の
固形のECM層のような、シートとして調製される。シートである場合、本明細書に開示
されるECM組成物は、意図される用途に適した任意の厚さ及び寸法のシートに成形され
得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECMシートは、例えば5×
5cm又は8×8cmのサイズといった標準のサイズで提供され、当業者によって使用前
に操作(例えば、切断)がなされ得る。当該切断は、例えば、意図される用途に適したサ
イズであり、当該用途は例えば、創傷ドレッシング(wound dressing)としての使用であ
る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、0.1-0.
15mm、0.15-0.2mm、0.1-0.2mm、0.2-0.25mm、0.2
5-0.3mm、又は0.2-0.3mmの厚さを有するシートとして調製される。いく
つかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、約0.1mm、0.1
5mm、0.2mm、0.25mm、又は0.3mmの厚さを有するシートとして調製さ
れる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、2×2cm
のシート、3×3cmのシート、4×4cmのシート、5×5cmのシート、6×6cm
のシート、7×7cmのシート、8×8cmのシート、又は9×9cmのシートとして調
製され、前記シートは約0.1-0.15mm、0.15-0.2mm、0.1-0.2
mm、0.2-0.25mm、0.25-0.3mm、又は0.2-0.3mmの厚さを
有する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書において開示されるものは、本明細書に開示さ
れる少なくとも1つのECMシートを含むラミネート(laminates)である。特定の実施
形態において、本明細書に開示されるものは、2つのECMシートを含むラミネートであ
る。特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、少なくとも1つの本明細書
に開示されるECMシート及び少なくとも1つの他の平面状の脱細胞された組織(例えば
、脱細胞された/脱水された羊膜、又は完全に脱細胞され若しくは線維芽細胞層を維持す
るように脱細胞された組織)を含む、又は代わりに平面状の人工組織を有するラミネート
である。いくつかの実施形態において、ラミネートは、複数のECMシート、又は1つ以
上のECMシート及び他の平面状の脱細胞された組織を、例えばニカワ(例えば天然のニ
カワ、例えばフィブロネクチン、フィブリン、又は合成ニカワ)などの接着材の存在下で
互いに接触させて配置することによって生成され得る。いくつかの実施形態において、ラ
ミネートは、2つ以上のECMシートを共に、又は1つ以上のECMシート及び1つ以上
の平面状の脱細胞された組織を共に加熱乾燥することによって生成され得る。
【0077】
4.1.1.1 非ECM組成物
特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、通常はECMに付随
しない1つ以上の成分を含むように調製される。
【0078】
1つの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、当該ECM組成物が
被検体への投与に適するように、薬学上又は美容上許容され得るキャリアと結合される。
当該被検体は例えば、そのような投与を必要とする人間の被検者である。投与の形態は、
限定するものではないが、注射、溶液、クリーム、ゲル、インプラント(implant)、ポ
ンプ、軟膏、乳液、懸濁液、微小球(microsphere)、粒子(particle)、微小粒子(micro
particle)、ナノ粒子(nanoparticle)、リポソーム、ペースト、パッチ(patch)、錠
剤、経皮デリバリーデバイス(transdermal delivery device)、スプレー、エアロゾル
及びその他の、当該技術分野において当業者に知られている手段を含む。そのような薬学
上又は美容上許容され得るキャリア(pharmaceutically or cosmetically acceptable ca
rrier)は、当該技術分野において当業者に周知である。「薬学上又は美容上許容され得
るキャリア」又は「薬学上又は美容上許容され得る賦形剤(pharmaceutically or cosmet
ically acceptable vehicle)」の用語は、本明細書において、限定するものではないが
、あらゆる液体、固体、又は準固体を意味するように使用され、限定するものではないが
、水又は生理食塩水、ゲル、クリーム、軟膏、溶媒、希釈剤、液体軟膏基材(fluid oint
ment base)、軟膏ペースト、インプラント(implant)、リポソーム、ミセル、巨大ミセ
ルなど、生きている動物又は人間の組織に接触した使用に適しており、不都合な生理的反
応又は美容上の反応を引き起こさず、組成物の他の成分、例えばECM等と、有害な態様
での相互作用をしないものを含む。
【0079】
1つの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、有効成分を放出可能
に構成されている。例えば当該有効成分は、ECM組成物に加えられた有効成分である。
例えば、本明細書に開示されるECM組成物には、製造中又は製造後に、生体分子が含浸
されても良い。生体分子の具体例は、限定するものではないが、抗生物質(例えばクリン
ダマイシン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、ゲンタマイシンなど)、ホルモン、成
長因子、抗がん剤、抗真菌薬、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗感
染薬、銀元素(elemental silver)、抗生物質、殺菌酵素(例えばリソゾーム(lysozome
)など)、創傷治癒剤(例えば、サイトカインであり、限定するものではないが、PDG
F、TGF、チモシンを含む)、ヒアルロン酸、創傷シーラント(例えば、トロンビンを
含むか又は含まないフィブリン)、細胞誘引物質及び足場試薬を含む。特定の例において
、本明細書に開示されるECM組成物は、少なくとも1つの成長因子が含浸される。例え
ば、当該成長因子は、線維芽細胞成長因子又は上皮成長因子である。いくつかの実施形態
において、本明細書に開示されるECM組成物は、例えば個別の生化学過程に関する特定
の阻害物質といった有機小分子が含浸される。当該特定の阻害物質は、例えば、膜受容体
阻害薬、キナーゼ阻害薬、成長阻害物質、及び抗がん剤等である。
【0080】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、ヒドロゲルと混
合される。当業者に知られているあらゆるヒドロゲルが用いられ得る。例えば、当該あら
ゆるヒドロゲルは、以下の論文、グラハム氏(Graham), 1998, Med. Device Technol. 9
(1): 18-22ページ、 ペッパス氏ら(Peppas et al.), 2000, Eur. J. Pharm. Biopharm.
50(1): 27-46ページ、グエン氏ら(Nguyen et al.), 2002, Biomaterials, 23(22): 43
07-4314ページ、ヘニンクル氏ら(Henincl et al.), 2002, Adv. Drug Deliv. Rev 54(1
): 13-36ページ、スケルホーン氏ら(Skelhorne et al.), 2002, Med. Device. Technol
. 13(9): 19-23ページ、 or シュメドレン氏ら(Schmedlen et al), 2002, Biomaterial
s 23: 4325-4332ページに開示されるようなあらゆるヒドロゲル組成物等である。特定の
実施形態において、ヒドロゲルはECM組成物の上に塗布される、すなわち、ECM組成
物の表面上に吐出される。例えば、ヒドロゲルは、ECM組成物上に噴霧され、ECM組
成物の表面に染み込ませられ、ECM組成物に浸漬され、ECM組成物に浸され、又はE
CM組成物の表面に塗布されても良い。本明細書に開示される方法及び組成物に有用なヒ
ドロゲルは、当該技術分野において知られる、水と相互作用する(water-interactive)
又は水溶性のあらゆるポリマーから作られ得る。当該あらゆるポリマーは、限定するもの
ではないが、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、
ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒアルロン酸、デキストラン(dextra
n)並びにこれらの誘導体及び類似体を含む。
【0081】
4.1.2 細胞
本明細書において開示されるECM組成物には、1つ以上の種類の細胞が播種され又は
培養されることで含まれ得る。例えば、細胞は、本明細書に記載されたECM組成物を培
地として培養されて成長し得、又は本明細書に記載されたECM組成物上に若しくは当該
ECM組成物中に分散され得る(例えば、ECMの流動性基質組成物に加えられる)。当
業者は、当該技術分野において周知の、幹細胞及び非幹細胞の両方を含むあらゆる種類の
細胞が、本明細書に開示されるECM組成物に播種され、かつ/又は培養され得ることを
十分に理解するであろう。
【0082】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物には、幹細胞が播種
され、かつ/又は含まれる。当該幹細胞は、所定の目的に適した如何なる幹細胞であって
も良く、全能性若しくは多能性の幹細胞でも良く、又は前駆細胞でも良い。特定の実施形
態において、本明細書に開示されるECM組成物には、胎盤幹細胞が播種され、かつ/又
は含まれる。当該胎盤幹細胞は、例えば、米国特許第7,045,148号, 第7,468,276号, 第8,
057,788号 及び 第8,202,703号に記載され、これらの特許の開示は、その全体が参照され
ることで本願明細書に包含されている。他の特定の実施形態において、本明細書に開示さ
れるECM組成物には、胚性幹細胞、胚性生殖細胞、間葉幹細胞、骨髄由来幹細胞、造血
前駆細胞(例えば、末梢血、胎児血、胎盤血、臍帯血、胎盤かん流液(placental perfus
ate)等に由来する造血幹細胞など)、体性幹細胞、神経幹細胞、肝幹細胞、膵臓幹細胞
、内皮幹細胞、心臓幹細胞、筋幹細胞、脂肪幹細胞等が播種され、かつ/又は含まれる。
特定の実施形態において、当該幹細胞は、ヒト幹細胞である。
【0083】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物には、1つ以上の種
類の非幹細胞が播種され、かつ/又は含まれる。本明細書において、最終分化細胞につい
て「非幹細胞」と称する。例えば、1つの実施形態において、本明細書に開示されるEC
M組成物は、複数の線維芽細胞を含む。本明細書に開示されるECM組成物と混合され得
る非幹細胞は、限定するものではないが、線維芽細胞又は線維芽細胞様細胞、真皮細胞、
内皮細胞、上皮細胞、筋細胞、心臓細胞、及び膵臓細胞を含む。他のいくつかの実施形態
において、本明細書に開示されるECM組成物には、2種類の非幹細胞が播種され、かつ
/又は含まれる。
【0084】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は細胞と共に培養さ
れ、当該培養は、複数の細胞がECM組成物に付着するために十分な時間なされる。その
ような実施形態によれば、ECM組成物は実用的な形状に成形され得る。例えば、ECM
組成物は、シート、プラグ(plug)、チューブ、又は他の形状に、ECM組成物が細胞と接
触される前に、成形され得る。
【0085】
当該ECM組成物は、少なくとも1×106, 3×106, 1×107, 3×107,
1×108, 3×108, 1×109, 3×109, 1×1010, 3×1010, 1×
1011, 3×1011, 若しくは 1×1012の細胞か又は1×106, 3×106,
1×107, 3×107, 1×108, 3×108, 1×109, 3×109, 1×1
010, 3×1010, 1×1011, 3×1011, 若しくは 1×1012未満の細
胞と共に培養され得る。
【0086】
4.1.1.キャラクタリゼーション
当該技術分野において公知の生化学に基づく定量法が、本明細書に開示される方法を用
いて作製されたECM組成物の生化学的組成を確認するために用いられ得る。タンパク質
の含有量は、例えば、吸光度定量法(absorbance assay)を用いて決定される。当該吸光
度定量は、例えば、レイン氏(Layne, E), Spectrophotometric and Turbidimetric Met
hods for Measuring Proteins, Methods in Enzymology 3: 447-455ページ, (1957); ス
トシェック氏(Stoscheck, C M,) Quantitation of Protein, Methods in Enzymology 1
82: 50-69ページ, (1990)), スコープス氏(Scopes, R K), Analytical Biochemistry 5
9: 277ページ, (1974); 及びストシェック氏(Stoscheck, C M.) Quantitation of Prot
ein, Methods in Enzymology 182: 50-69ページ, (1990))に記載されている。あるいは、
特定のタンパク質の含有量を測定するために、修正ローリー法定量(modified Lowry ass
ay)、ビウレット定量(biuret assay)、ブラッドフォード定量(Bradford assay)、ビ
シンコニニック酸(スミス)定量法(Bicinchoninic Acid (Smith) assay)(ストシェッ
ク氏(Stoscheck, C M.) Quantitation of Protein, Methods in Enzymology 182: 50-6
9ページ, (1990)参照)を含む比色分析に基づく定量法が用いられ得る。
【0087】
本明細書に開示されるECM組成物のコラーゲンの総含有量は、例えば、ヒドロキシプ
ロリン又は定量的な染料ベースの定量キット、例えば、バイオカラー社製(Biocolor Ltd
, UK.)のSIRCOL(商標)キット等を用いて決定され得る。本明細書に開示される
ECM組成物中のコラーゲンの種類は、例えばエライザ定量法(ELISA assay)等の当該
技術分野において公知の標準的な方法を用いて決定され得る。
【0088】
本明細書に開示されるECM組成物のエラスチンの総含有量は、例えば、定量的な染料
ベースの定量キット、例えば、バイオカラー社製(Biocolor Ltd, UK.)の染料ベースの
定量キット(FASTIN)等を用いて決定され得る。
【0089】
本明細書に開示されるECM組成物のグリコサミノグリカン(GAG)の総含有量は、
例えば、バイオカラー社製(Biocolor Ltd, UK.)の定量的な染料ベースの定量キット(
BLYSCAN)等を用いて決定され得る。また、GAGの含有量は、エライザ法によっ
て、技術分野において公知の方法を用いて測定され得る。
【0090】
本明細書に開示されるECM組成物のラミニン及びフィブロネクチンの総含有量は、例
えば、エライザ定量法を用いて決定され得る。例えば、当該エライザ定量法は、サンドウ
ィッチエライザ定量法等であり、例えば、タカラバイオ社製(Takara Bio Inc.,Shiga, J
apan)のキットとして提供されるラミニン及びフィブロネクチンに特化したエライザ定量
法等である。
【0091】
本明細書に開示されるECM組成物は、非免疫原性であり、例えばヒトの被検体等の被
検体の組織への生体適合性がある。本明細書において、「生体適合性」は、生体組織内で
有毒なもの、有害なもの、又は免疫反応若しくは免疫学的拒絶反応を生じさせず、生物学
的に適合する性質をいう。本明細書に開示されるECM組成物の生体適合性を確認するた
めに、生体適合性の評価が行われ得る。そのような評価は、当業者に公知であり、限定す
るものではないが、細胞毒性分析(例えば、ISO MEM 溶出試験)、ウサギ眼刺激性
試験(rabbit eye irritation tests)、溶血性試験、及び発熱試験を含む。
【0092】
本明細書に開示されるECM組成物は、殺菌されて調製され得、これによって生物学的
汚染物質を含まない。微生物の存在は、例えば、適切な細菌増殖培地の中/上でのECM
組成物の直接植菌等の公知の方法を用いて判定され得る。当該培地は、例えば、大豆カゼ
イン培地又はチオグリコール酸培地等である。
【0093】
本明細書に開示されるECM組成物は、少量のエンドトキシンを含むか、エンドトキシ
ンを含まないか、又は検出不能なレベルのエンドトキシンを含むように調製され得る。本
明細書に開示されるECM組成物中のエンドトキシンの存在は、例えばリムルス試験(Li
mulus Amebocyte Lysate (LAL) test)(細菌のエンドトキシン試験)等の、技術分野に
おいて周知のインビトロ(in vitro)での検査によって判定することができる。特定の実
施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、調製物当たり20エンドトキシ
ンユニット(EU)未満を含む(例えば、本明細書に開示されるECMの1つのシートが
20EU未満を含む)。
【0094】
4.2.細胞外基質組成物を作る方法
1つの態様において、本明細書において開示されるものは、胎盤の細胞外基質(ECM
)組成物を生成する方法である。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される胎
盤(例えば、ヒト胎盤)からECM組成物を作る方法は、次のようなステップを順に含む
:(i)羊膜、絨毛膜、及び臍帯を胎盤から(例えば、出産直後の母体から得られた胎盤
から、又は保存された胎盤から)除去するステップと、(ii)胎盤組織に結合された細胞
の浸透圧崩壊を引き起こす溶液に、胎盤組織をさらすステップと、(iii)洗浄剤を含む
溶液に胎盤を接触させるステップと、(iv)塩基を含む溶液に胎盤を接触させるステップ
。いくつかの実施形態において、ECM組成物を胎盤から作る方法であって、胎盤(例え
ば、ヒト胎盤)の絨毛膜を用いる方法は、次のようなステップを順に含む:(i)胎盤か
ら(例えば、出産直後の母体から得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)絨毛膜を
取得するステップと、(ii)絨毛膜に結合された細胞の浸透圧崩壊を引き起こす溶液に、
絨毛膜をさらすステップと、(iii)洗浄剤を含む溶液に絨毛膜を接触させるステップと
、(iv)塩基を含む溶液に絨毛膜を接触させるステップ。いくつかの実施形態において、
ECM組成物を胎盤から作る方法であって、胎盤(例えば、ヒト胎盤)の絨毛膜を用いる
方法は、次のようなステップを順に含む:(i)胎盤から(例えば、出産直後の母体から
得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)絨毛膜を取得するステップと、(ii)絨毛
膜を擦り、清浄にするステップと、(iii)絨毛膜に結合された細胞の浸透圧崩壊を引き
起こす溶液に、絨毛膜をさらすステップと、(iv)洗浄剤を含む溶液に絨毛膜を接触させ
るステップと、(v)すり潰し、凍結乾燥するステップ。いくつかの実施形態において、
ECM組成物を胎盤から作る方法であって、胎盤(例えば、ヒト胎盤)の絨毛膜を用いる
方法は、次のようなステップを順に含む:(i)胎盤から(例えば、出産直後の母体から
得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)絨毛膜を取得するステップと、(ii)絨毛
膜を擦り、清浄にするステップと、(iii)絨毛膜に結合された細胞の浸透圧崩壊を引き
起こす溶液に、絨毛膜をさらすステップと、(iv)第1の洗浄剤溶液を含む溶液、次に第
2の洗浄剤溶液を含む溶液に絨毛膜を接触させるステップであって、前記溶液は洗浄剤及
び例えばEDTAなどのキレート剤を含むステップと、(v)凍結乾燥するステップ。重
要なことには、本明細書に開示されたECM組成物を作る方法は、例えば塩基、洗浄剤、
キレート剤などの成分を、本明細書に開示された特別な特徴を有するECM組成物を生成
する結果となる量で用いる。
【0095】
本明細書に開示されるECMを生成する方法において用いられる胎盤は、通常、満期産
の後に得られ、新鮮分離され又は前もって分離されて冷凍保存され得る。通常、本明細書
に開示される方法によって、冷凍の胎盤を使用してECM組成物を作製する際に、当該胎
盤は、例えば使用する前に室温で、解凍される。例えば、当該胎盤は~22-23℃で解凍さ
れ、24時間又は当該胎盤が使用できる状態になるまで解凍される。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法によって胎盤からECM組成
物を作製する前に、当該胎盤は放血される、すなわち、出産後に残っている臍帯血が排出
される。いくつかの実施形態において、当該胎盤は、本明細書に開示される方法において
使用される前に、70%放血され、80%放血され、90%放血され、95%放血され、
又は99%放血される。
【0097】
本明細書に開示される方法において実行される、胎盤組織に結合された細胞の浸透圧崩
壊を引き起こす溶液に、胎盤組織(例えば、羊膜、絨毛膜、及び除去された臍帯由来の、
又は胎盤の絨毛膜由来の胎盤組織)をさらすステップは、結果として、通常は胎盤組織に
結合されている細胞及び細胞残屑だけでなく血液及び血液成分を除去する。従って、当業
者は、細胞の浸透圧崩壊を引き起こすあらゆる溶液が、本明細書に開示される方法におい
て用いられ得ることを理解するであろう。例えば、NaCl、塩化カリウム(KCl)、
硫酸アンモニウム、単糖、二糖(例えば、20%スクロース)、親水性ポリマー(例えば
、ポリエチレングリコール)、グリセロールが、その浸透ポテンシャル(osmotic potent
ial)によって細胞を崩壊させるために用いられ得る。
【0098】
特定の実施形態において、本明細書に開示される方法において使用される胎盤組織(例
えば、羊膜、絨毛膜、及び除去された臍帯由来の、又は胎盤の絨毛膜由来の胎盤組織)に
結合された細胞の浸透圧崩壊を引き起こすためにNaClが用いられる。特定の実施形態
において、約0.25M, 0.5M, 0.75M, 1.0M, 1.25M, 1.5M, 1
.75M, 2M, 2.25M,又は2.5MのNaClを含む溶液が、本明細書に開示さ
れる方法において使用される胎盤組織に結合された細胞の浸透圧崩壊を引き起こすために
用いられる。特定の実施形態において、約0.25Mから5M, 約0.5Mから4M, 約
0.75Mから3M,又は約1.0Mから2.0MのNaClを含む溶液が、本明細書に
開示される方法において使用される胎盤組織に結合された細胞の浸透圧崩壊を引き起こす
ために用いられる。
【0099】
胎盤組織(例えば、羊膜、絨毛膜、及び除去された臍帯由来の、又は胎盤の絨毛膜由来
の胎盤組織)を、浸透圧崩壊を引き起こす溶液に接触させるステップは、当業者の判断に
よるあらゆる温度で実行され得る。いくつかの実施形態において、当該ステップは、約0
℃から30℃、約5℃から25℃、約5℃から20℃、又は約5℃から15℃で実行され
る。いくつかの実施形態において、当該ステップは、約0℃、約5℃、約10℃、約15
℃、約20℃、約25℃、又は約30℃で実行される。特定の実施形態において、当該ス
テップは室温で実行される。他の特定の実施形態において、当該ステップは37℃±5℃
で実行される。
【0100】
胎盤組織(例えば、羊膜、絨毛膜、及び除去された臍帯由来の、又は胎盤の絨毛膜由来
の胎盤組織)を、浸透圧崩壊を引き起こす溶液に接触させるステップは、当業者の判断に
よる適切な時間にわたって実行され得る。いくつかの実施形態において、当該ステップは
、約1-24時間、約2-20時間、約5-15時間、約8-12時間、又は約2-5時
間実行される。特定の実施形態において、当該ステップは、室温で約18-26時間実行
される。他の特定の実施形態において、当該ステップは、37℃±5℃で約18-26時
間実行される。
【0101】
胎盤組織(例えば、羊膜、絨毛膜、及び除去された臍帯由来の、又は胎盤の絨毛膜由来
の胎盤組織)を、洗浄剤に接触させるステップは、本明細書に開示されるECM組成物か
らの核酸の除去と同様に、細胞及び細胞残屑(例えば、細胞膜)の除去をもたらす。従っ
て、本明細書に開示される方法において用いられる洗浄剤は、細胞又はオルガネラ膜(su
bcellular membranes)を崩壊させることができるものとして当業者に公知のあらゆる洗
浄剤であり得る。いくつかの実施形態において、当該洗浄剤はイオン性である。例えば、
いくつかの実施形態において、当該洗浄剤は、デオキシコール酸ナトリウム、デオキシコ
ール酸、又はドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecylsulfate)である。いくつかの実
施形態において、当該洗浄剤は両性イオン性である。いくつかの実施形態において、当該
洗浄剤は非イオン性である。例えば、いくつかの実施形態において、当該洗浄剤は、TW
EEN(登録商標)‐20等のTWEEN(登録商標)洗浄剤又はTrionX 100
等のTrionX洗浄剤であっても良い。コラーゲン組成物は、不必要な成分を当該組成
物から取り除くために適するように当業者によって判断される条件下で洗浄剤に接触され
得る。
【0102】
特定の実施形態において、本明細書に開示される方法において用いられる洗浄剤は、デ
オキシコール酸ナトリウム又はデオキシコール酸である。前記デオキシコール酸ナトリウ
ム又はデオキシコール酸は、本明細書に開示される方法において、細胞、細胞残屑、及び
核酸を取り除くために適した濃度で用いられ得る。本明細書に開示される方法の特定の実
施形態において、デオキシコール酸ナトリウム又はデオキシコール酸は、例えば、最終濃
度約1.5%、約2%、又は約2.5%で用いられ得る。特定の実施形態において、前記
デオキシコール酸ナトリウム又はデオキシコール酸は、本明細書に開示される方法におい
て、最終濃度約2%で用いられ得る。
【0103】
本明細書に開示される方法の他の特定の実施形態において、例えば、デオキシコール酸
ナトリウム又はデオキシコール酸等の洗浄剤を例えばエチレンジアミン四酢酸(ethylene
diaminetetraacetic acid)(EDTA)のようなキレート剤と共に利用する方法には、
第1の洗浄剤溶液において、そのようなデオキシコール酸ナトリウム又はデオキシコール
酸が例えば最終濃度約0.05%から約0.1%、約0.05%から約0.2%、約0.
2%から約0.3%、約0.3%から約0.4%、若しくは約0.4%から約0.5%、
又は最終濃度約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%
、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、若しくは約0.5%で用いられ得
る。特定のそのような実施形態において、デオキシコール酸ナトリウム又はデオキシコー
ル酸は最終濃度約0.067%で用いられ得る。そのような第1の洗浄剤溶液中に存在す
るキレート剤に関して、キレート剤がEDTAである場合、そのようなEDTAは、例え
ば、最終濃度約1から約5mM、約2から約5mM、約2から約4mM、約3から約4m
M、約3mMから約5mM、約5から約10mM、約6から約10mM、約7から約9m
M、若しくは約8から約10mM、又は約1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6
mM、7mM、8mM、9mM、又は10mMで用いられ得る。第1の洗浄剤溶液の特定
の実施形態において、当該溶液は、デオキシコール酸ナトリウム又はデオキシコール酸を
最終濃度で約0.067%含み得、EDTAを最終濃度で約4mM含み得る。
【0104】
本明細書に開示される方法の実施形態において、例えば、デオキシコール酸ナトリウム
又はデオキシコール酸等の洗浄剤をEDTA等のキレート剤と共に利用する方法には、第
2の洗浄剤溶液において、そのようなデオキシコール酸ナトリウム又はデオキシコール酸
が例えば最終濃度約0.05%から約0.1%、約0.05%から約0.2%、約0.2
%から約0.3%、約0.3%から約0.4%、若しくは約0.4%から約0.5%、又
は最終濃度約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、
約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、若しくは約0.5%で用いられ得る
。特定のそのような実施形態において、約0.2%から約0.6%のデオキシコール酸ナ
トリウム又はデオキシコール酸が最終濃度約0.39%で用いられ得る。そのような第2
の洗浄剤溶液中に存在するキレート剤に関して、キレート剤がEDTAである場合、その
ようなEDTAは、例えば、最終濃度約1から約5mM、約2から約5mM、約2から約
4mM、約3から約4mM、約3mMから約5mM、約5から約10mM、約6から約1
0mM、約7から約9mM、若しくは約8から約10mM、又は約1mM、2mM、3m
M、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、又は10mMで用いられ得る。
第1の洗浄剤溶液の特定の実施形態において、当該溶液は、デオキシコール酸ナトリウム
又はデオキシコール酸を最終で濃度約0.39%、EDTAを最終濃度で約8mM含み得
る。
【0105】
胎盤組織(例えば、羊膜、絨毛膜、及び除去された臍帯由来の、又は胎盤の絨毛膜由来
の胎盤組織)を、洗浄剤に接触させるステップは、当業者の判断によるあらゆる温度で実
行され得る。いくつかの実施形態において、当該洗浄剤処理は、約0℃から30℃、約5
℃から25℃、約5℃から20℃、又は約5℃から15℃で実行される。いくつかの実施
形態において、当該洗浄剤処理ステップは、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約2
0℃、約25℃、又は約30℃で実行される。特定の実施形態において、洗浄剤処理ステ
ップは室温で実行される。他の特定の実施形態において、当該洗浄剤処理ステップは37
℃±5℃で実行される。
【0106】
当該洗浄剤処理(キレート剤を用いるか又は用いない)は、当業者の判断による適切な
時間にわたって実行され得る。いくつかの実施形態において、当該洗浄剤処理は、約1-
24時間、終夜、約24-48時間、又は約48-72時間実行される。特定の実施形態
において、当該洗浄剤処理ステップは、約72時間実行される。他の特定の実施形態にお
いて、当該洗浄剤処理ステップは、室温で約72時間実行される。他の特定の実施形態に
おいて、当該洗浄剤処理ステップは、37℃±5℃で約72時間実行される。
【0107】
胎盤組織(例えば、羊膜、絨毛膜、及び除去された臍帯由来の、又は胎盤の絨毛膜由来
の胎盤組織)を、塩基に接触させるステップは、本明細書に開示されるECM組成物から
のいくつかのECM成分の除去をもたらす。例えば、そのようなECM組成物を変性させ
ることによって、フィブロネクチン及びラミニンが除去される。当該塩基処理のための塩
基の具体例は、生体適合性の塩基、揮発性塩基又は容易で安全にECMから除去されるこ
とが当業者に公知の塩基を含む。当該塩基は、例えば0.2Mから1.0Mの濃度の、当
業者にとって公知のあらゆる有機又は無機の塩基であり得る。いくつかの実施形態におい
て、当該塩基は、水酸化アンモニウム(ammonium hydroxide)、水酸化カリウム又は水酸
化ナトリウムである。例えば、当該塩基は、水酸化アンモニウム溶液、水酸化カリウム溶
液又は水酸化ナトリウム溶液である。
【0108】
特定の実施形態において、本明細書に開示される方法の塩基処理ステップにおいて用い
られる塩基は、水酸化ナトリウム(NaOH)である。NaOHは本明細書に開示される
方法において、本明細書に開示されるECM組成物から例えばラミニン及びフィブロネク
チンを除去するために適したあらゆる濃度で用いられ得る。例えば、NaOHは本明細書
に開示される方法において、約0.1M NaOH、0.25M NaOH、0.5M N
aOH、1M NaOH、1.5M NaOH、又は2M NaOHの濃度で用いられ得る
。特定の実施形態では、NaOHは本明細書に開示される方法において、1M NaOH
の濃度で用いられ得る。
【0109】
当該塩基処理ステップは、当業者の判断によるあらゆる温度で実行され得る。いくつか
の実施形態において、当該塩基処理は、約0℃から30℃、約5℃から25℃、約5℃か
ら20℃、又は約5℃から15℃で実行される。いくつかの実施形態において、当該塩基
処理は、約0℃、約5℃、約10℃、約15℃、約20℃、約25℃、又は約30℃で実
行される。特定の実施形態において、塩基処理ステップは室温で実行される。他の特定の
実施形態において、当該塩基処理ステップは37℃±5℃で実行される。
【0110】
当該塩基処理ステップは、当業者の判断による適切な時間にわたって実行され得る。い
くつかの実施形態において、当該塩基処理は、約15分-30分、30分-1時間、1-
2時間、2-4時間、4-8時間、8-12時間又は約12-24時間実行される。特定
の実施形態において、当該塩基処理ステップは、約30分間実行される。他の特定の実施
形態において、当該塩基処理ステップは、室温で約30分間実行される。他の特定の実施
形態において、当該塩基処理ステップは、37℃±5℃で約30分間実行される。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法のステップのうちいくつかの
ステップ又は全てのステップは、滅菌状態下で実行される。さらなる実施形態において、
本明細書に開示される方法によって調製されるECM組成物は、当業者にとって明白な以
下に記載する技術によって、さらに滅菌される。
【0112】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法であ
り、前記方法は、(i)羊膜、絨毛膜、及び臍帯を胎盤から(例えば、出産直後の母体か
ら得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)除去するステップと、(ii)例えば塩化
ナトリウム(NaCl、例えば、1M NaCl)などの、当該胎盤組織に結合された細
胞の浸透圧崩壊を引き起こす溶液内に、残っている胎盤組織を入れて、当該胎盤組織を均
質化するステップと、(iii)例えばデオキシコール酸ナトリウム(例えば、2%デオキ
シコール酸ナトリウム)などの洗浄剤を含む溶液に胎盤組織を接触させるステップと、(
iv)例えば水などで胎盤組織を洗うステップと、(v)例えば水酸化ナトリウム(NaO
H、例えば、1M NaOH)などの塩基を含む溶液に胎盤組織を接触させるステップと
、(vi)例えば塩酸(HCl)などの酸性溶液を、胎盤組織を含む溶液に加えて中性のp
H又は中性に近いpH(例えば、pH6.0-8.0)とするステップと、(vii)胎盤
組織を当該溶液の液体部分から分離し(例えば、遠心分離によって)、当該胎盤組織を回
収するステップと、を含み、これによってECM組成物を作る。当該方法によって生成す
るECM組成物は、通常、ペースト状(ECMペースト)であり、後で使用するために回
収後に冷凍され、保管され得るか、又は回収後直ちに本明細書に記載されたECM調製物
、例えば、ECMシートの調製物、ECM粒子の調製物、又はECM流動性基質などの製
造に使用され得る。
【0113】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法
であり、前記方法は、(i)羊膜、絨毛膜、及び臍帯を胎盤から(例えば、出産直後の母
体から得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)除去するステップと、(ii)胎盤を
細片に切る、例えば、2×2センチメートルの細片に切るステップと、(iii)胎盤組織
を1.5リットルの1M NaCl溶液に入れ、(例えば、オムニインターナショナル社
製(Omni International, Kennesaw, GA)のオムニミクサーホモジナイザー(Omni Mixer
Homogenizer)を用いて)当該胎盤組織を均質化するステップと、(iv)均質化された胎盤
組織を処理容器(例えば、バッグ)に入れ、1M NaClを9.2リットルとなるよう
に加えるステップと、(v)均質化された胎盤組織を1M NaClで3回洗浄するステッ
プであって、当該洗浄は、(a)当該処理容器を攪拌器上で10分間攪拌するステップ、
(b)、胎盤組織を処理容器内で10分間沈殿させるステップ、及び(c)6.2リットル
の上澄みを重力排水(gravity drainage)によって除去するステップを含むステップと、
(vi)洗浄された胎盤組織を残りの1M NaCl溶液内で、室温で~18-26時間、
攪拌器上で混合させるステップと、(vii)上述したように、胎盤組織を水で4回洗浄す
るステップと、(viii)洗浄された胎盤組織を水の中で、室温で~18-26時間、攪拌
器上で混合させるステップと、(ix)一晩水の中で混合させた後、最後にもう1回、上述
したように水で洗浄し、その後、3%のデオキシコール酸ナトリウムを6.2L、当該混
合物に加え、デオキシコール酸ナトリウムの濃度を2%とするステップと、(x)胎盤組
織を2%のデオキシコール酸ナトリウム溶液中、室温で~72時間、攪拌器上で混合させ
るステップと、(xi)胎盤組織を水中で5回、上記した態様で洗浄するステップと、(xi
i)最後に水を加えた後、1M NaOHを加えることによって当該溶液のpHを約10-
12に調整し、塩基性溶液とするステップと、(xiii)胎盤組織を当該塩基性溶液中、室
温で~30分間、攪拌器上で混合させるステップと、(xiv)0.1N HClを用いて当
該溶液のpHを約7.0-7.5に調節するステップと、(xv)処理容器から、(例えば
、遠心分離によって)上澄みを除去し、胎盤組織を回収するステップと、を含み、これに
よってECM組成物を作る。
【0114】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法であ
り、前記方法は、(i)胎盤から(例えば、出産直後の母体から得られた胎盤から、又は
保存された胎盤から)絨毛膜を取得するステップと、(ii)胎盤絨毛膜(placental chor
ion)を、例えば塩化ナトリウム(NaCl、例えば、1M NaCl)などの、当該胎盤
絨毛膜に結合された細胞の浸透圧崩壊を引き起こす溶液内に入れて、当該胎盤絨毛膜を均
質化するステップと、(iii)例えばデオキシコール酸ナトリウム(例えば、2%デオキ
シコール酸ナトリウム)などの洗浄剤を含む溶液に胎盤絨毛膜組織を接触させるステップ
と、(iv)例えば水などで胎盤絨毛膜組織を洗浄するステップと、(v)例えば水酸化ナ
トリウム(NaOH、例えば、1M NaOH)などの塩基を含む溶液に胎盤絨毛膜組織
を接触させるステップと、(vi)例えば塩酸(HCl)などの酸性溶液を、胎盤絨毛膜組
織を含む溶液に加えて中性のpH又は中性に近いpH(例えば、pH6.0-8.0)と
するステップと、(vii)胎盤絨毛膜組織を当該溶液の液体部分から分離し(例えば、遠
心分離によって)、当該胎盤絨毛膜組織を回収するステップと、を含み、これによってE
CM組成物を作る。当該方法によって生成するECM組成物は、通常、ペースト状(EC
Mペースト)であり、後で使用するために回収後に冷凍され、保管され得るか、又は回収
後直ちに本明細書に記載されたECM調製物、例えば、ECMシートの調製物、ECM粒
子の調製物、又はECM流動性基質などの製造に使用され得る。いくつかの実施形態にお
いて、当該方法の様々なステップ(例えば、浸透圧崩壊、洗浄剤処理、洗浄、塩基処理)
は、室温で実行される。いくつかの実施形態において、当該方法の様々なステップ(例え
ば、浸透圧崩壊、洗浄剤処理、洗浄、塩基処理)は、37℃±5℃で実行される。いくつ
かの実施形態において、洗浄ステップは、1/2から2リットルの体積の液体を用いて1
-3回実行される。
【0115】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法
であり、前記方法は、(i)胎盤から(例えば、出産直後の母体から得られた胎盤から、
又は保存された胎盤から)絨毛膜を取得するステップと、(ii)絨毛膜を細片に切る、例
えば、2×2センチメートルの細片に切るステップと、(iii)胎盤絨毛膜組織を1.5
リットルの1M NaCl溶液に入れ、(例えば、オムニインターナショナル社製(Omni
International, Kennesaw, GA)のオムニミクサーホモジナイザー(Omni Mixer Homogeni
zer)を用いて)当該胎盤組織を均質化する(ホモジナイズする)(homogenizing)ステ
ップと、(iv)均質化された胎盤絨毛膜組織を処理容器(例えば、バッグ)に入れ、1M
NaClを9.2リットルとなるように加えるステップと、(v)均質化された胎盤絨毛
膜組織を1M NaClで3回洗浄するステップであって、当該洗浄は、(a)当該処理容
器を攪拌器上で10分間攪拌するステップ、(b)、胎盤絨毛膜組織を処理容器内で10
分間沈殿させるステップ、及び(c)6.2リットルの上澄みを重力排水によって除去す
るステップを含むステップと、(vi)洗浄された胎盤絨毛膜組織を残りの1M NaCl
溶液内で、室温で~18-26時間、攪拌器上で混合させるステップと、(vii)上述し
たように、胎盤絨毛膜組織を水で4回洗浄するステップと、(viii)洗浄された胎盤絨毛
膜組織を水の中で、室温で~18-26時間、攪拌器上で混合させるステップと、(ix)
一晩水の中で混合させた後、最後にもう1回、上述したように水で洗浄し、その後、3%
のデオキシコール酸ナトリウムを6.2L、当該混合物に加え、デオキシコール酸ナトリ
ウムの濃度を2%とするステップと、(x)胎盤絨毛膜組織を2%のデオキシコール酸ナ
トリウム溶液中、室温で~72時間、攪拌器上で混合させるステップと、(xi)胎盤絨毛
膜組織を水中で5回、上記した態様で洗浄するステップと、(xii)最後に水を加えた後
、1M NaOHを加えることによって当該溶液のpHを約10-12に調整し、塩基性
溶液とするステップと、(xiii)胎盤絨毛膜組織を当該塩基性溶液中、室温で~30分間
攪拌器上で混合させるステップと、(xiv)0.1N HClを用いて当該溶液のpHを約
7.0-7.5に調節するステップと、(xv)処理容器から、(例えば、遠心分離によっ
て)上澄みを除去し、胎盤絨毛膜組織を回収するステップと、を含み、これによってEC
M組成物を作る。いくつかの実施形態において、洗浄ステップは、1/2から2リットル
の体積の液体を用いて実行される。
【0116】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法
であり、前記方法は、(i)絨毛膜、例えば絨毛膜板を胎盤から(例えば、出産直後の母
体から得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)取得するステップと、(ii)絨毛膜
を擦り、清浄にするステップと、(iii)絨毛膜組織を、例えば塩化ナトリウム(NaC
l、例えば、0.5M NaCl)などの、当該絨毛膜組織に結合された細胞の浸透圧崩
壊を引き起こす溶液内に入れるステップと、(iv)例えばデオキシコール酸又はデオキシ
コール酸ナトリウム(例えば、2%デオキシコール酸又はデオキシコール酸ナトリウム)
などの洗浄剤を含む溶液に絨毛膜組織を接触させ、そして例えば水によってリンスするな
どのリンスするステップと、(v)すり潰し、凍結乾燥するステップと、を含む。当該E
CM組成物は、通常、ペースト(ECMペースト)であり、例えば、粉砕されて調製され
、様々な形状又は形態で調製され得る。例えば、当該ECM組成物は、ECMシート、E
CM粒子の調製物、又はECM流動性基質などに調製され得る。いくつかの実施形態にお
いて、当該方法の様々なステップ(例えば、浸透圧崩壊、洗浄剤処理、リンス)は、室温
で実行される。いくつかの実施形態において、当該方法の様々なステップ(例えば、浸透
圧崩壊、洗浄剤処理、リンス)は、37℃±5℃で実行される。いくつかの実施形態にお
いて、洗い流しステップは、1/2から2リットルの体積の液体を用いて1-3回実行さ
れる。
【0117】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法であ
り、前記方法は、次のようなステップを順に含む:(i)満期産直後の母体からヒト胎盤
(human placenta)を取得するか又は前もって分離された冷凍のヒト胎盤であって解凍さ
れているもの、例えば、室温で約24時間解凍されたものを取得するステップと、(ii)
胎盤を0.5M NaCl中で洗浄するステップと、(iii)羊膜、臍帯及び壁側脱落膜を
胎盤から除去し、胎盤の絨毛膜板を保持するステップと、(iv)絨毛膜を擦り、清浄にす
るステップと、(v)0.5M NaCl中及び水中で絨毛膜をリンスするステップと、(
vi)絨毛膜を2%デオキシコール酸内で一晩リンスし、続いて水リンスを数回、例えば、
3、4、5、6、7回又はそれ以上の水リンスを行うステップと、(vii)当該処理され
た絨毛膜を粉砕し、凍結乾燥するステップ。当該ECM組成物は、通常、ペースト(EC
Mペースト)であり、例えば、粉砕されて調製され、様々な形状又は形態で調製され得る
。例えば、当該ECM組成物は、ECMシート、ECM粒子の調製物、又はECM流動性
基質などに調製され得る。いくつかの実施形態において、当該方法の様々なステップ(例
えば、NaCl処理、デオキシコール酸処理、リンス)は、室温で実行される。いくつか
の実施形態において、当該方法の様々なステップ(例えば、NaCl処理、デオキシコー
ル酸処理、リンス)は、37℃±5℃で実行される。いくつかの実施形態において、当該
リンスステップは、1/2から2リットルの体積の液体を用いて1-3回実行される。
【0118】
他の特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法
であり、前記方法は、(i)絨毛膜、例えば絨毛膜板を胎盤から(例えば、出産直後の母
体から得られた胎盤から、又は保存された胎盤から)取得するステップと、(ii)絨毛膜
を擦り、清浄にするステップと、(iii)絨毛膜組織を、例えば塩化ナトリウム(NaC
l、例えば、1.0M NaCl)などの、当該絨毛膜組織に結合された細胞の浸透圧崩
壊を引き起こす溶液内に入れるステップと、(iv)例えばデオキシコール酸又はデオキシ
コール酸ナトリウム(例えば、0.05%-0.2%又は0.3%-0.6%のデオキシ
コール酸又はデオキシコール酸ナトリウム)などの洗浄剤及びEDTA(例えば、1-5
mM EDTA又は5-10mM EDTA)を含む第1の洗浄剤溶液に絨毛膜組織を接触
させるステップと、(v)例えばデオキシコール酸又はデオキシコール酸ナトリウム(例
えば、0.05%-0.2%又は0.3%-0.6%のデオキシコール酸又はデオキシコ
ール酸ナトリウム)などの洗浄剤及びEDTA(例えば、1-5mM EDTA又は5-
10mM EDTA)を含む第2の洗浄剤溶液に絨毛膜組織を接触させ、そして例えば水
などによって洗い流すステップと、(vi)凍結乾燥し、脱細胞され凍結乾燥された、全絨
毛膜を得るステップと、を含む。当該全絨毛膜は、例えば、粉砕されて溶液(例えば、水
又はリン酸緩衝生理食塩水)中に再懸濁されて、調製され得、脱細胞されたECMペース
トを形成し得る。そして、例えばECMシート、ECM粒子の調製物、又はECM流動性
基質などの様々な形状又は形態に調製され得る。いくつかの実施形態において、当該方法
の様々なステップ(例えば、浸透圧崩壊、洗浄剤/EDTA処理、リンス)は、室温で実
行される。いくつかの実施形態において、当該方法の様々なステップ(例えば、浸透圧崩
壊、洗浄剤/EDTA処理、リンス)は、37℃±5℃で実行される。いくつかの実施形
態において、当該リンスステップは、1/2から2リットルの体積の液体を用いて1-3
回実行される。
【0119】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM組成物を作る方法であ
り、前記方法は、次のようなステップを順に含む:(i)満期産直後の母体からヒト胎盤
を取得するか又は前もって分離された冷凍のヒト胎盤であって解凍されているもの、例え
ば、室温で約24時間解凍されたものを取得するステップと、(ii)羊膜、臍帯及び壁側
脱落膜を胎盤から除去し、胎盤の絨毛膜板を保持するステップと、(iii)絨毛膜を擦り
、清浄にするステップと、(iv)1.0M NaCl中及び水中で絨毛膜をリンスするス
テップと、(v)0.067%のデオキシコール酸及び4mM EDTAを含む第1の洗浄
剤溶液中で絨毛膜を一晩リンスし、続いて水リンスを数回、例えば、3、4、5、6、7
回又はそれ以上の水リンスを行うステップと、(vi)0.39%のデオキシコール酸及び
8mM EDTAを含む第2の洗浄剤溶液中で絨毛膜を一晩リンスし、続いて水リンスを
数回、例えば、3、4、5、6、7回又はそれ以上の水リンスを行うステップと、(vii
)処理された絨毛膜を凍結乾燥するステップ。生成した組成物は、脱細胞されたECMペ
ーストであり、さらなる調製に適している。例えば、当該組成物は、粉砕されて調製され
る。いくつかの実施形態において、当該方法の様々なステップ(例えば、NaCl処理、
デオキシコール酸/EDTA処理、リンス)は、室温で実行される。いくつかの実施形態
において、当該方法の様々なステップ(例えば、NaCl処理、デオキシコール酸/ED
TA処理、リンス)は、37℃±5℃で実行される。いくつかの実施形態において、当該
リンスステップは、1/2から2リットルの体積の液体を用いて1-3回実行される。
【0120】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECMシートを生成する方法
であり、前記方法は、(i)本明細書に開示される方法に従ってECMペーストを準備す
るステップと、(ii)ECMペーストを例えば水中に懸濁し、例えばECMを型に入れる
など、シートを形成するために適した基板に当該懸濁されたECM溶液を入れるステップ
と、(iii)ECMを凍結させるステップと、(iv)凍結したECMを凍結乾燥させるス
テップと、(v)凍結乾燥されたECMを基板から取り外して水に浸すステップと、(vi
)例えば真空乾燥機を用いて、ECMを乾燥させるステップと、を含む。脱水後、乾燥前
に、本明細書に開示されるECMシートは、例えばブロック、チューブ、又は他の形状な
どのあらゆる有用な形状に成形され得る。
【0121】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM粒子を生成する方法で
あり、前記方法は、(i)本明細書に開示される方法に従ってECMペーストを準備する
ステップと、(ii)ECMペーストを例えば水中に、懸濁するステップと、(iii)
ECMを凍結させるステップと、(iv)凍結したECMを凍結乾燥させるステップと、(
v)凍結乾燥されたECMを粉砕するステップと、を含む。
【0122】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるものは、ECM流動性基質を生成する
方法であって、前記方法は、(i)本明細書に開示される方法に従ってECMペーストを
準備するステップと、(ii)ECMペーストを例えば水中に、懸濁するステップと、(ii
i)ECMを凍結させるステップと、(iv)凍結したECMを凍結乾燥させるステップと
、(v)凍結乾燥されたECMを微粉末化するステップと、を含む。微粉末化されたEC
Mを例えば生理食塩水などに再懸濁することで、ECM流動性基質が生成される。
【0123】
本明細書に開示される方法によって生成されたECM組成物の凍結乾燥は、技術分野に
おいて公知のあらゆる手段によって達成され得、加えて、一般にECM組成物が実質的に
乾燥するまで、例えば、水が重量で約30%、25%、20%、5%、4%、3%、2%
、又は1%未満となるまで進行する。
【0124】
4.2.1任意の追加的な処理
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される方法は、付加的なステップを包含
する。例えば、当該付加的なステップは、細胞の浸透圧崩壊を起こすことができる溶液、
洗浄剤、又は塩基以外の他の薬剤を伴って調製されるECM組成物の処理をもたらすステ
ップである。
【0125】
特定の実施形態において、本明細書に開示される方法は、BENZONASE(登録商
標)を伴って本明細書に開示される方法によって調製されるECM組成物の処理を含む。
BENZONASE(登録商標)は、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens
)由来の遺伝子操作されたエンドヌクレアーゼであり、全ての型のDNA及びRNAを攻
撃して分解する。従って、BENZONASE(登録商標)は、本明細書に開示される方
法によって、生成するECM組成物が核酸を含まない(又は実質的に含まない)ことを確
実にするために用いられ得る。BENZONASE(登録商標)による処理後、ECM組
成物は高いpHとなるように処理され得、その後、BENZONASE(登録商標)を不
活性化させるために適した条件である低いpHとなるように処理され得る。
【0126】
特定の実施形態において、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される方法に
よって、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いて調製されるECM組成物の処理を
含む。EDTAは、当業者に周知の金属キレート剤であり、本明細書に開示される方法に
よって、二価金属イオンを本明細書に開示されるECM組成物から除去するために用いら
れ得る。EDTAは、当業者に公知の方法を用いてECM組成物から洗い流され得る。
【0127】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物中のコラーゲンは、
架橋され得る。当該架橋は、例えば上述した架橋剤等の、当業者に公知のあらゆる架橋剤
によってなされ得る。いくつかの実施形態において、架橋剤はグルタルアルデヒドであり
、当該架橋は、当業者に公知の、コラーゲンをグルタルアルデヒドで架橋する方法によっ
て実行される。他の実施形態において、架橋剤は1,4-ブタンジオールジグリシジルエー
テル又はゲニピンである。
【0128】
4.2.2保存
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、室温で保存され
る(例えば、~22-25℃)。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるE
CM組成物は、低温で保存され、例えば、約0℃、約4℃、又は約8℃の温度で冷蔵され
る。いくつかの実施形態において、ECMは、冷蔵されない。いくつかの実施形態におい
て、本明細書に開示されるECM組成物は、例えば0℃よりも低い温度で冷凍保存される
。当該温度は、例えば、-10℃,-15℃,-20℃,-25℃,-30℃,-35℃
,-40℃,-45℃,-50℃,-55℃,-60℃,-65℃,-70℃,-75℃
,-80℃,若しくは-85℃又はより低い温度である。いくつかの実施形態において、
本明細書に開示されるECM組成物の前記凍結及び保管は、0℃から-10℃,-10℃
から-20℃, -20℃から-30℃, -30℃から-40℃, -40℃から-50℃,
-50℃から-60℃, -60℃から-70℃,又は-70℃から-80℃の間の温度で
行われる。
【0129】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、無菌の状態下で
、かつ、酸化しない状態下で保管される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示
されるECM組成物は、上記で特定した温度のいずれかの温度で、12か月間か又はそれ
以上の間保管される。
【0130】
4.2.3.滅菌
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、そのような組成
物を滅菌するための当業者に公知の技術によって滅菌される。特定の実施形態において、
本明細書に開示されるECM組成物は、例えばガンマ線照射等、放射線によって滅菌され
る。
【0131】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物の滅菌は、当業者に公知
の方法を用いた電子ビーム照射によって実行される。例えば、当該方法について、バイロ
ム(Gorham, D. Byrom (ed.)), 1991, Biomaterials, Stockton Press, New York, 55-1
22ページを参照されたい。バクテリア又は他の潜在的な汚染微生物の少なくとも99.9
%を殺すために十分なあらゆる放射線量は、本明細書に開示される方法の範囲内である。
特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物の最終的な滅菌を達成する
ために少なくとも18-25kGyの線量が用いられる。
【0132】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、エンドトキシン
を通過させ、かつ、ECM組成物を保持するフィルターを通してろ過される。例えば30
kDaなど、エンドトキシンをろ過するための当業者に公知のあらゆるサイズのフィルタ
ーが用いられ得る。いくつかの実施形態において、当該フィルターは5kDaと100k
Daとの間であり、例えば、当該フィルターは、約5kDa,約10kDa,約15kD
a,約20kDa,約30kDa,約40kDa,約50kDa,約60kDa,約70
kDa,約80kDa,約90kDa,又は約100kDaである。当該フィルターは、
例えばセルロース又はポリエーテルスルホンなどの本明細書に開示されるECM組成物に
適合することが当業者に知られているあらゆる材料からなるものであり得る。当該ろ過は
、当業者に所望される回数繰り返され得る。標準的な技術によってエンドトキシンが検出
され得、浄化値(クリアランス)(clearance)がモニタされ得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、ろ過されてウイ
ルス粒子を含まないか又は低減されたECM組成物を生成する。ウイルスの除去に有効で
あることが当業者に公知であるあらゆるフィルターが用いられ得る。例えば、1000k
Daのフィルターは、パルボウイルス、A型肝炎ウィルス、及びHIVを除去又は低減す
るために用いられ得る。750kDaのフィルターは、パルボウイルス及びA型肝炎ウィ
ルスを除去又は低減するために用いられ得る。500kDaのフィルターは、パルボウイ
ルスを除去又は低減するために用いられ得る。当該フィルターは、例えばセルロース又は
ポリエーテルスルホンなどの本明細書に開示されるECM組成物に適合することが当業者
に知られているあらゆる材料からなるものであり得る。当該ろ過は、当業者に所望される
回数繰り返され得る。標準的な技術によってウィルスの存在が検出され得、クリアランス
がモニタされ得る。
【0134】
4.3.使用
本明細書に開示されるECM組成物(4.1参照)は、非常に多くの方法及び多くの目
的で使用され得、限定するものではないが、パッチ又は組織のプラグ又は基質材料、人工
装具、及び他のインプラント等の構造物を含む培養組織及び器官の製造におけるECM組
成物の使用;組織の足場としてのECM組成物の使用;創傷の修復又は被覆におけるEC
M組成物の使用;止血デバイスとしてのECM組成物の使用;例えば縫合、手術用及び整
形外科用のスクリュー、手術用及び整形外科用のプレート、人工のインプラント、美容的
インプラント(cosmetic implants)及びサポートのための天然の被覆材又は天然の部品
等の、組織の修復及び支持において使用するためのデバイスとしてのECM組成物の使用
;器官又は組織の修復又は構造的支持におけるECM組成物の使用;物質輸送のためのE
CM組成物の使用;生物工学プラットフォーム(bioengineering platforms)としてのE
CM組成物の使用;細胞に対する物質の効果を試験するためのプラットフォームとしての
ECM組成物の使用;及び細胞培養におけるECM組成物の使用を含む。さらに、ECM
組成物は、美容の目的で使用され得る。
【0135】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物の使用は、本明細書
に開示されるECM組成物を被検体に投与することを必要とする。本明細書において使用
される「被検体(subject)」の用語は、限定するものではないが、霊長類(例えば、ヒ
ト)、牛、羊、ヤギ、馬、犬、猫、ウサギ、ラット、マウス等を含む哺乳類などの動物を
称する。特定の実施形態において、当該被検体はヒトである。
【0136】
本明細書に開示されるECM組成物をインビボ(in vivo)で被検体に投与する方法は
、限定するものではないが、経口投与(例えば、口腔投与又は舌下投与)、局所適用、エ
アロゾル適用、経皮投与、皮内投与、皮下投与、筋内投与、及び外科的投与を含む。
【0137】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される用途の一部として、本明細書に開
示されるECM組成物は、クリーム、ゲル、溶液、懸濁液、リポソーム又は他の治療用及
び美容用成分の調製及び輸送(delivery)の手段として当業者に公知の形態で適用され得
る。皮下投与のための適切な調製物のいくつかの例は、限定するものではないが、インプ
ラント、デポー、針(ニードル)、カプセル及び浸透圧ポンプを含む。経口投与のための
適切な調製物のいくつかの実施例は、限定するものではないが:ペースト、パッチ、シー
ト、液体、シロップ、懸濁液、エアロゾル及びミストを含む。経皮投与のための適切な調
製物のいくつかの実施例は、限定するものではないが、クリーム、ペースト、パッチ、ス
プレー及びゲルを含む。皮下投与のための適切な輸送機構のいくつかの例は、限定するも
のではないが、インプラント、デポー、ニードル、カプセル、及び浸透圧ポンプを含む。
【0138】
本明細書に開示されるECM組成物は、所望の生理学的又は薬理学的な結果を生じるで
あろう任意の形態及び/又は濃度で被検体に投与され得る。ECM組成物の形態及び濃度
は、所望の治療終点(therapeutic endpoint)、作用部位又は体液中での所望有効濃度、
及び投与のタイプに依存するであろう。被検体への物質の投与に関する情報は、当業者に
公知であり、例えば、グッドマン(L. S. Goodman)及び ギルマン(A. Gilman), eds,
The Pharmacological Basis of Therapeutics, Macmillan Publishing, New York, 及び
カッツァング(Katzung), Basic & Clinical Pharmacology, Appleton & Lang, Norwalk
, Conn., (6th Ed. 1995)などの参照において見出されるであろう。所望の療法の技術分
野に熟練した施術者(practitioner)が、状況及び投与されるべき物質による要求に応じ
て、特定の形態及び濃度、並びに投与の頻度を選択してもよい。
【0139】
4.3.1.創傷治療における使用
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、創傷の治療にお
いて使用される。
【0140】
1つの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、当該ECM組成物を
被検体の皮膚を覆って、創傷の部位に直接置くことによって創傷の治療に使用され、従っ
て創傷は被覆される。他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、当
該ECM組成物を、例えば皮下埋め込み等のインプラントとして用いることによって、創
傷の治療に使用される。当業者は、ECM組成物のいくつかの調製物がそのような仕様に
適することを明確に理解するであろう。例えば、シートとして調製されたECM組成物は
、当該ECMシートを被検体の皮膚上の創傷を覆って直接置くことによって、創傷治療に
使用され得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、創傷の治療に使用される際に、本明細書に開示されるE
CM組成物は1つ以上の薬理活性物質を含むように調製され得る。当該薬理活性物質は、
限定するものではないが、血小板由来成長因子、インスリン様成長因子、上皮成長因子、
トランスフォーミング成長因子ベータ、血管新生因子、抗生物質、抗真菌薬、殺精子剤、
ホルモン、酵素、及び酵素阻害薬を含む。
【0142】
本明細書に開示されるECM組成物によって治療され得る創傷は、限定するものではな
いが、上皮創傷、皮膚創傷、慢性創傷、急性創傷、外部創傷、内部創傷(例えば、ECM
組成物は、縫合線からの血液の漏出を防ぐために、加えて、体が縫合材料に対して癒着を
形成することを防ぐために、外科手術の間に吻合部位に巻き付けられても良い)、先天性
創傷(例えば、ジストロフィー性表皮水泡症)、褥瘡(例えば、褥瘡性潰瘍)、一部の層
及び全層の創傷(partial and full-thickness wounds)、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍、
慢性血管潰瘍、トンネル状/穿掘性創傷(tunneled/undermined wounds)、手術創傷(例
えば、ドナー部位/移植片、モース手術後、レーザー手術後、足治療(podiatric)、創
傷裂開)、外傷創傷(例えば、剥離、裂傷、第2度熱傷及び皮膚裂傷)、及び排液性創傷
を含む。
【0143】
特定の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、限定されないが、第
1度熱傷、第2度熱傷(一部の層の熱傷(partial thickness burns))、第3度熱傷(
全層熱傷(full thickness burns))、熱傷創の感染、切除された熱傷創及び切除されて
いない熱傷創の感染、以前に移植されたか若しくは治癒された熱傷創からの上皮の喪失、
及び熱傷創の膿痂疹を含む火傷及び/又は火傷に関連する状態の治療に使用される。
【0144】
4.3.2.歯科用
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、歯の疾病及び歯
牙障害の治療に使用される。
【0145】
1つの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、歯根膜手術、歯周組
織を再生するための組織再生誘導法、誘導骨再生、及び/又は根面被覆において使用され
る。そのような方法は、限定するものではないが、整合(matched)両側歯周欠損(bilat
eral periodontol defects)、歯間骨内欠損(interdental intrabony defects)、深部
3壁性骨内欠損(deep 3-wall intrabony defects)、2壁性骨内欠損(2-wall intrabon
y defects)及び骨内欠損2及び3(intrabony defects 2 and 3)を含む歯周部の骨内欠
損の再生を促進するためのECM組成物の用途を包含する。
【0146】
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、限定するものではない
が、両側欠損、対の頬側クラスII下顎軟骨大臼歯分岐部欠損(paired buccal Class II m
andibular molar furcation defects)、及び両側の下顎分岐部欠損(bilateral mandibu
lar furcation defect)を含むクラスII分岐部欠損(class II furcation defects)の治
療に使用される。
【0147】
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、限定するものではない
が、歯周炎及び歯肉炎を含む歯周病の治療に使用される。1つの実施形態において、本明
細書に開示されるECM組成物は、例えば、グルコン酸クロルヘキシジン等の抗生物質が
含浸されたECM組成物を被検体の1つ以上の、例えば、5mmより大きいか又は5mm
程度の歯周ポケットに挿入することによって、歯周病を有する被検体を治療するために使
用され得る。
【0148】
4.3.3口腔病変
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、口腔病変の治療
において使用される。前記病変は歯科手術又は口腔手術によって引き起こされるものでは
ない。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるものは、口腔病変を有する被
検体を治療する方法である。当該方法は、例えば、治療効果のある量の本明細書に開示さ
れるECM組成物を口腔病変へ投与すること等の被検体への投与を含む。この文脈におい
て「治療効果のある量」は、口腔病変の少なくとも1つの症状又は態様を低減又は除去す
る、ECM組成物の量を意味する。例えば、当該ECM組成物は病変を修復するために投
与され得るか、又は、例えば、口腔病変に起因するか若しくは付随する痛み若しくは炎症
を低減させる等のための苦痛緩和剤として投与され得る。
【0149】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、治療の手段とし
て、口腔病変に直接投与される。他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組
成物は、口腔病変の少なくとも一部分の、近傍に又は周辺に投与される。そのような投与
は、例えば、口腔病変の少なくとも一部分又は全体を覆ってECM組成物のシートを配置
することによってなされ得る。いくつかの実施形態において、ECM組成物はペーストと
して口腔病変に投与される。いくつかの実施形態において、ECM組成物はスプレー又は
エアロゾルの形態で口腔病変に投与される。いくつかの実施形態において、ECM組成物
は、例えば洗口液等の溶液の形態で口腔病変に投与される。
【0150】
本明細書に開示される方法によって治療される口腔病変は、口腔病変を引き起こすこと
が技術分野において公知の様々な条件又は治療によって引き起こされ得る。1つの実施形
態において、本明細書に開示されるECM組成物を用いて治療される口腔病変は、例えば
落屑性口腔疾患(desquamating oral disorder)等の、落屑(desquamation)に起因する
か又は付随する。他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物を用いて治
療される口腔病変は、例えばベーチェット病(Behcet’s disease)に起因するか又はベ
ーチェット病の一部であるアフタ性潰瘍等の、アフタ性潰瘍である。他の実施形態におい
て、本明細書に開示されるECM組成物を用いて治療される口腔病変は、被検体の顎骨壊
死に起因するか又は付随する。
【0151】
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物を用いて治療される口腔病
変は、移植片対宿主疾患(graft-versus-host disease)に起因するか又は付随する。他
の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物を用いて治療される口腔病変は
、口腔病変を有する被検体によるメルファランの使用に起因するか又は付随する。
【0152】
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物を用いて治療される口腔病
変は、化学療法に起因するか又は付随する。当該化学療法は、例えば、腫瘍、血液癌、又
は他のタイプの癌を治療するために被検体に施されている化学療法等の化学療法である。
特定の実施形態において、口腔病変は、化学療法後の口腔粘膜炎又は化学療法による口腔
粘膜炎(chemotherapy-induced oral mucositis)に起因する。他の実施形態において、
当該口腔病変は、例えば特発性の(idiopathic)アフタ性口内炎等の、アフタ性口内炎で
あるか又はアフタ性口内炎と診断される。他の特定の実施形態において、口腔病変は、口
腔病変を有する被検体によるmTOR(ラパマイシンの哺乳類標的;mammalian target o
f rapamycin)阻害剤の使用に起因するか又は付随する。他の特定の実施形態において、
口腔病変は、口腔病変を有する被検体による5-フルオロウラシルの使用に起因するか又
は付随する。特定の実施形態において、口腔病変が化学療法に起因するか又は付随する場
合、当該口腔病変は、例えば化学療法剤に起因するか又は付随し、当該化学療法剤は、例
えば、アルキル化剤(例えば、ブスルファン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロフ
ォスファミド、ダカルバジン、イホスファミド、メクロレタミン又はメルファラン);代
謝拮抗物質(例えば、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、ゲムシタビン、シタラ
ビン又はフルダラビン);抗がん効果を有する抗生物質(例えば、ブレオマイシン、ダク
チノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン又はイダルビシン)又は分裂抑制因子(
例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、エトポシド、ビンブラスチン、ビンクリスチン
又はビノレルビン(vinorelbine))である。他の特定の実施形態において、前記被検体
が例えば化学療法等の一連の治療を受けているか又は受けたことがある場合、前記被検体
における前記口腔病変の進行は、前記治療の早期終了(premature termination)をもた
らすか又はもたらすことが予期される。この文脈において、「早期終了」は、部分的に又
は全体的に前記口腔病変の結果として、一連の治療が、前記被検体に規定されていたより
も前に終了することを意味する。
【0153】
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物を用いて治療される口腔病
変は、治療を必要とする被検体への抗体の投与に起因するか又は付随する。いくつかの実
施形態において、当該抗体は、アンチCD20抗体(anti-CD20 antibody)である。特定
の実施形態において、当該抗体は、リツキシマブ(rituximab)(例えば、RITUXA
N(登録商標))、オファツムマブ(ofatumumab)(例えば、ARZERRA(登録商標
))、ベルツズマブ(veltuzumab)又はオクレリズマブ(ocrelizumab)である。他の実
施形態において、当該抗体は、抗腫瘍壊死因子抗体(anti-tumor necrosis factor antib
ody)である。さらに特定の実施形態において、当該抗体は、アダリムマブ(adalimumab
)(例えば、HUMIRA(登録商標))、エタネルセプト(etanercept)(例えば、E
NBREL(登録商標))、インフリキシマブ(infliximab)(例えば、REMICAD
E(登録商標))、セルトリズマブペゴル(certolizumab pegol)(CIMZIA(登録
商標))、ナタリズマブ(natalizumab)(例えば、TYSABRI(登録商標))、又
はゴリムマブ(golimumab)(例えば、SIMPONI(登録商標))である。他の実施
形態において、前記被検体が抗体治療を受けているか又は受けたことがある場合、前記被
検体における前記口腔病変の進行は、前記抗体治療の早期終了(premature termination
)をもたらす。この文脈において、「早期終了」は、部分的に又は全体的に前記口腔病変
の結果として、抗体治療が、前記被検体に規定されていたよりも前に終了することを意味
する。
【0154】
4.3.4.空隙充填
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体の体内の
空隙(void)をシール(seal)、充填、及び/又は他の処置をするために使用される。本
明細書において使用される「空隙」の語は、被検体における好ましくない如何なる空洞を
も包含することを意図している。当該好ましくない空洞は、例えば、加齢、疾患、手術、
先天性異常、又はこれらの組み合わせによって形成される。例えば、空隙は、腫瘍又は他
の塊(mass)を被検体から外科的に除去した後に形成され得る。本明細書に開示されるE
CM組成物によって充填され得る空隙の限定的ではない具体例は、亀裂、瘻孔(fistula
)、憩室、動脈瘤、嚢胞(cyst)、損傷、又は他の、被検体の体の様々な器官又は組織に
おけるあらゆる好ましくない空洞を含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、組織、器官又は
他の体の構造体(例えば、血管)、又は近接する組織間、器官間又は構造体間の接合部、
の中の裂け目、亀裂、又は瘻孔の全体又は部分を、充填、シール及び/又は治療するため
に使用され得、例えば血液、尿又は他の体液等の体液が漏出することを防止する。例えば
、本明細書に開示されるECM組成物は、注射され、インプラントされ、挿入され(thre
aded into)、又は内臓間の瘻孔に若しくは被検体の体の内臓から外側までの開口部(open
ing)若しくは穴(orifice)に塗布され得る。本明細書に開示されるECM組成物は、これ
らの病理状態によって形成される空隙又は他の欠陥を充填し、加えて、線維芽細胞浸透、
治癒、及び組織の内方成長(ingrowth of tissue)を促すために使用され得る。
【0156】
1つの実施形態において、本明細書に開示されるものは、被検体の瘻孔を充填する、シ
ールする、及び/又は他の治療をする方法であって、前記方法は、本明細書に開示される
ECM組成物を被検体に注入又は他の方法で投与するステップを含む。当該ECM組成物
は、ニードルを通して瘻孔オリフィス(fistular orifices)の1つに注入され、当該オ
リフィスの殆ど又は全ての分岐を充填することによって被検体に投与され得る。或いは、
ECM組成物の糸(strings)又は棒(rods)が、オリフィスを通して瘻孔損傷に挿入され
ても良く、又はコラーゲンがカテーテルによって被検体に導入されても良い。本明細書に
開示されるECM組成物を用いて、例えば、肛門の、動静脈の、膀胱の、頸動脈-海綿静
脈洞の(carotid-cavernous)、外面の、胃の、腸の、体腔壁の(parietal)、唾液腺の
、膣の、及び肛門直腸の瘻孔又はこれらの組み合わせ等の多様なタイプの瘻孔が、充填さ
れ、シールされ、及び/又は他の治療を施され得る。
【0157】
1つの実施形態において、本明細書に開示されるものは、被検体の憩室を充填する、シ
ールする、及び/又は他の治療をする方法であって、前記方法は、本明細書に開示される
ECM組成物を被検体に注入又は他の方法で投与するステップを含む。憩室は、正常では
ない生理学的構造であり、例えば腸、膀胱等の管状又は嚢状の器官からの袋状又は嚢状の
開口部であって、本明細書に開示されるECM組成物を用いて充填され又は増強され(au
gmented)得る。
【0158】
他の実施形態において、本明細書に開示されるものは、被検体の嚢胞を充填する、シー
ルする、及び/又は他の治療を施す方法であって、前記方法は、本明細書に開示されるE
CM組成物を被検体に注入又は他の方法で投与するステップを含む。いくつかの実施形態
において、当該嚢胞は偽性嚢胞であり、例えば液体等の蓄積を有するが、上皮又は他の膜
形成性の内張り(membranous lining)を含まない。充填され、シールされ、及び/又は
他の治療を施され得る嚢胞の、追加の限定的ではない例は、皮脂嚢胞(sebaceous cyst)
、皮様嚢腫(dermoid cyst)、骨嚢胞若しくは漿液性嚢胞(serous cysts)又はこれらの
組み合わせを含む。
【0159】
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、注入又は他の方法で投
与され得、不必要な又は好ましくない腫瘍、液体、細胞、又は組織を被検体から外科的、
化学的又は生物学的に除去した結果として形成されるあらゆる空隙を全体的に又は部分的
に充填することができる。ECM組成物は、局所的な注入又は他の方法で空隙の部位に投
与され得、残りの又は周囲の組織を増強し、治癒の過程を促進し、感染のリスクを最小限
にする。この増強は、例えば、乳がん手術後、腫瘍に結合した組織、骨組織、又は軟骨組
織等の除去手術後といった、腫瘍切除の後に形成される空隙部位に特に有効である。
【0160】
4.3.5組織バルキング
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、組織バルキング(tiss
ue bulking)に使用され得る。本明細書において使用される「組織バルキング」の用語は
、自然状態の被検体の(例えば、ヒトの)皮膚ではない柔らかい組織の、外部の動作又は
作用によるあらゆる変化を意味する。本明細書に包含される組織は、限定するものではな
いが、筋組織、結合組織、脂肪、及び神経組織を含む。当該組織は、多くの器官の部分又
は体の部分であり得、限定するものではないが、括約筋、膀胱括約筋及び尿道を含む。
【0161】
4.3.6尿失禁
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、尿失禁(腹圧性尿失禁
(stress urinary incontinence))の治療に使用され得る。当該尿失禁は、例えば、咳
、くしゃみ、笑い又は運動等の腹腔内圧の増大をもたらす行動に伴って起こる急な尿の漏
出である。そのような実施形態によれば、本明細書に開示されるECM組成物は、例えば
被検体に注入されて、被検体の括約筋組織を増強し、これによって被検体内で改善又は復
元する。ECM組成物は、注入又は他の方法で尿道周囲に投与され得、尿失禁の管理及び
/又は治療のために尿道周辺の組織バルクを増大する。腹圧性失禁の改善は、組織バルク
を増大させ、これによって尿の流出に対する耐性を増大させることによって達成され得る
。
【0162】
いくつかの実施形態において、ECM組成物は注入又は他の方法で、被検体の尿道の周
辺の領域に投与される。例えば、当該ECM組成物は、尿が漏出する際に通る尿道内の穴
を閉じるか又は尿道の壁の厚みを増大させ、尿が保持されている際に、堅く封止する。
【0163】
他の実施形態において、ECM組成物は注入又は他の方法で、被検体の尿道の周辺の、
膀胱の出口にある尿道の筋肉のすぐ外側に投与される。バルキング材料の注入は、皮膚を
通して、尿道を通して、又は女性の場合は膣を通してなされ得る。
【0164】
4.3.7膀胱尿管逆流症
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、膀胱から腎臓への逆行
する尿の流れに特徴づけられる膀胱尿管逆流症(Vesicoureteral Reflux(VUR))(
又は尿の逆流(urinary reflux))の治療に使用され得る。そのような実施形態によれば
、本明細書に開示されるECM組成物は、注入又は他の方法でそれを必要とする被検体に
投与され得、当該被検体の尿管壁が増強され得、VURの症状は低減又は除去され得る。
当該組成物は、例えば内視鏡の誘導下で、注入(例えば、サブトリゴナル注射(subtrigo
nal injection))又は他の方法で、尿管口の下の排尿筋の裏側(backing)に、当業者に
公知の様々な方法を用いて投与され得る。
【0165】
4.3.8胃食道逆流症
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、下部食道括約筋(lowe
r esophageal sphincter(LES))--食道が胃に合流する箇所の筋肉の弁--が適切に閉
じない、弛緩する又は弱くなることによって頻繁に起こり、胃の内容物が食道にリークバ
ック(leak back)又は逆流する障害である胃食道逆流症(Gastroesophageal Reflux Dis
ease(GERD))の治療に使用され得る。そのような実施形態によれば、本明細書に開
示されるECM組成物は、注入又は他の方法でそれを必要とする被検体に投与され得、当
該被検体のLESが増強され得、GERDの症状は低減又は除去され得る。いくつかの実
施形態において、ECM組成物は内視鏡の誘導下で、食道壁の胃食道接合部の位置に投与
される。逆流を妨げることを目的とするバルキングの効果は、保持された材料とその結果
生じる組織反応との組み合わせに起因する。ECM組成物は、標準の又は太い(例えば、
大きいゲージの)注射針を通して注入され得る。
【0166】
4.3.9声帯及び喉頭
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、1つ又は両側の声帯(
vocal cords (folds))及び/又は喉頭(larynx (voice box))に影響する疾患、障害(
例えば神経障害のような)又は他の異常状態の管理又は治療に使用され得る。喉頭及び声
帯のそのような疾患、障害又は他の異常状態の限定的ではない例は、声門の機能不全(gl
ottic incompetence)、片側性声帯麻痺(unilateral vocal cord paralysis)、両側性
声帯麻痺(bilateral vocal cord paralysis)、麻痺性発声障害(paralytic dysphonia
)、非麻痺性発声障害(nonparalytic dysphonia)、痙性発声障害(spasmodic dysphoni
a)又はこれらの組み合わせを含む。他の実施形態において、本明細書に開示されるEC
M組成物は、例えば、高齢であることによって(老人性声門痙攣(“presbylaryngis”)
)、及び/又は声帯の傷によって(例えば、過去の手術又は放射線治療によるもの)、例
えば、一般に弱った声帯である声帯の不完全な麻痺(「不全麻痺」(“paresis”))な
ど声帯の不適切な閉鎖をもたらす疾患、障害又は他の異常状態の管理又は治療に使用され
得る。
【0167】
本明細書に開示されるECM組成物は、被検体の、かつて有していた容積が欠落してい
る声帯(例えば声帯の湾曲(bowing)又は委縮など)又は可動性が欠如している(例えば
麻痺など)声帯に支持(support)又は容積(bulk)を提供するために使用され得る。いくつ
かの実施形態において、声帯及び/又は他の喉頭の柔軟な組織は、単独で又は他の治療若
しくは投薬と組み合わせて、本明細書に開示されるECM組成物によって増強され得る。
1つの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、1つ(又は両側の)声
帯を増強し又は体積を追加して、当該声帯は、他の声帯と接触することができる。
【0168】
当業者に周知の多くの手順のうちの任意の手順が、本明細書に開示されるECM組成物
を被検体の声帯又は喉頭に投与するために使用され得る。いくつかの実施形態において、
本明細書に開示されるECM組成物を被検体の口を通して注射するために湾曲した針が使
用される。他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物を被検体の皮膚及
び喉仏を通して直接投与するために、針(例えばより高いゲージの、短い針)が用いられ
ても良い。
【0169】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、声帯麻痺の管理
又は治療において使用され得る。1つの実施形態において、本明細書に開示されるECM
組成物は、当該ECM組成物が注入又は他の方法で被検体に投与されることによって、片
側性の又は両側性の声帯麻痺又はこれらに関連する被検体の症状を管理するか又は治療す
るために使用され、被検体における声帯の閉鎖が改善する。1つの実施形態において、E
CM組成物は1つ(又は両側の)麻痺した声帯を増強し又は当該声帯に体積を追加して、
当該声帯は他の声帯と接触することができる。被検体へのECM組成物の注入は、被検体
の口を通して、又は皮膚及び喉仏を通して直接投与され得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、声に関する様々
な機能障害又は発話困難(difficulty speaking)である発声障害の治療に用いられ得る
。
【0171】
4.3.10声門の機能不全
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、声門の機能不全
の管理又は治療において使用され得る。経皮的な喉頭部のコラーゲン増強(collagen aug
mentation)は、ECM組成物を被検体の声帯に当業者に公知の方法を用いて注入される
ことによって起こり得る。いくつかの場合において、被検体は、発声不全及び/又は喉頭
の発生機能に影響する声門の機能不全、筋硬直の増大、及び甲状披裂筋の運動能力の低下
を有する。他の実施形態において、発声不全はパーキンソン病に起因する。1つの実施形
態において、当該ECM組成物は、ECM組成物を被検体の声帯に注入又は他の方法で投
与することによって、必要とする被検体の声門の機能不全の管理又は治療のために用いら
れ得る。当該注入は、声帯を増強し、声門の閉鎖を改善して、被検体における声門の機能
不全が低減されるか又は解消される。
【0172】
4.3.11バイオエンジニアリング
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、組織又は器官のバイオ
エンジニアリング(bioengineering)に使用され得、例えば、組織置換剤に使用され得る
。本明細書に開示されるECM組成物を用いて生成され得るバイオエンジニアリングされ
た(bioengineered)コンポーネント(component)の例は、限定するものではないが、骨
、歯の構造、関節、軟骨、骨格筋、平滑筋、心筋、腱、半月板、靱帯、血管、ステント(
stent)、心臓弁、角膜、鼓膜、神経ガイド(nerve guide)、組織又は器官のパッチ又は
シーラント、欠落した組織用のフィラー(filler)、美容修復用のシート、皮膚(皮膚と
同等のものを作るために細胞が加えられたシート)、気管、喉頭蓋及び声帯などの喉の柔
軟な組織構造、鼻の軟骨、瞼板、気管リング(tracheal ring)、甲状軟骨、披裂軟骨等
の他の軟骨構造、結合組織、血管移植片(vascular graft)、及びそれらの成分、局所的
な適用及び肝臓、腎臓、膵臓などの器官の修復又は置換のためのシート、を含む。
【0173】
4.3.12美容用途
本明細書に開示されるECM組成物は、さらに美容用途においても有用である。一般に
、そのような美容用途は、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体の皮膚内又は皮
膚上のライン(line)、しわ(クリース)(crease)その他のしわ(リンクル)(wrinkl
e)を充填するために用いられることに基づき、より滑らかで、若く見える外観を復元す
る。
【0174】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物は、被検体の皮膚増
強(スキンオーグメンテーション)(skin augmentation)に使用され得る。1つの実施
形態において、被検体の皮膚増強の方法は、本明細書に開示されるECM組成物を、増強
を必要とする被検体の顔又は体の領域に注入又は他の方法で投与することを含む。当該被
検体の顔又は体の領域は、コラーゲンの投与前の当該領域と比較して増強される。本明細
書において使用される「皮膚増強(skin augmentation)」の用語は、自然状態の被検体
の(例えば、人間の)皮膚又は関連する領域の、外部の動作又は作用によるあらゆる変化
を意味する。皮膚増強によって変化され得る限定的ではない皮膚の領域は、表皮、真皮、
皮下層、脂肪、立毛筋(arrector pill muscle)、毛幹、汗孔、皮脂腺、又はこれらの組
み合わせを含む。
【0175】
本明細書に開示されるECM組成物の美容用途の例は、顔のしわになった又はくぼんだ
領域を増強するための、加えて、被検体の顔又は体の領域に膨らみを追加するか又は当該
領域の膨らみを増大させるためのECM組成物の使用;限定するものではないが、しわ(
wrinkles)、陥没、又は他のしわ(creases)(例えば、眉間のしわ(frown lines)、額
のしわ(worry lines)、目尻のしわ(crow's feet)、マリオネットライン(marionette
lines))、妊娠線(stretch marks)、内側の又は外側の瘢痕(例えば、けが、創傷、
事故、咬傷(bites)又は手術による瘢痕)を含む皮膚の欠陥を治療するためのECM組
成物の使用;結果として目の周りのクマとなる「窪んだ」目(“hollow” eyes)及び可
視血管(visible vessels)を補正するためのECM組成物の使用;下側の眼瞼形成(low
er blepharoplasty)によって眼の下の脂肪体を積極的に除去した後の目の下の補正、頬
の脂肪の積極的な抜き取りの後の頬の下側の補正、及び鼻形成術、植皮、又は脂肪吸引に
よるへこみ(indentation)等の他の外科的に誘発された不整(irregularities)の結果
の補正を含む、整形術を補正又は追加するためのECM組成物の使用;顔又は体の瘢痕(
例えば、創傷、水疱瘡、又はニキビのあと)を補正するためのECM組成物の使用;及び
顔の再形成のためのECM組成物の使用を含む。
【0176】
5.キット
他の態様では、本明細書に開示されるものは、本明細書に開示されるECM組成物を含
むキット(kit)である。
【0177】
1つの実施形態において、本明細書に開示されるものは、本明細書に開示されるECM
組成物を含むキット(kit)であり、前記ECM組成物はシートとして調製される。当該
ECMシートは、滅菌された形態で提供され、パウチ(pouch)にパッケージ(package)
される。そのようなキットにおいて提供されるECMのシートは、様々な大きさ(例えば
、5×5 cm 又は 9×9 cm)及び厚み(例えば、1.5-2.5 mm)であり得、施術者による
使用、例えば創傷ドレッシング(wound dressing)としての使用ができる状態である。
【0178】
他の実施形態において、本明細書に開示されるものは、本明細書に開示されるECM組
成物を含むキットであり、前記ECM組成物は流動性基質として調製され得る。そのよう
なキットでは、ECM組成物は滅菌された形態で提供され、ガラスバイアル内に微粉末化
されたECMとしてパッケージされる。そのようなバイアルは、様々な量の微粉末化され
たECMを含み得、例えば、200mgの微粉末化されたECMを含み得る。流動性基質
として調製されるべきECM組成物を含むキットは、微粉末化されたECMを懸濁する際
の使用に適したコンポーネント、例えば、懸濁溶液(例えば、生理食塩水)と、針及び柔
軟なアプリケータを含むシリンジと、をさらに含み得る。
【0179】
他の実施形態において、本明細書に開示されるECM組成物を含むキットであり、前記
ECM組成物は粒子として調製される。そのようなキットでは、ECM組成物は滅菌され
た形態で提供され、ガラスバイアル内に粉砕されたECMとしてパッケージされる。その
ようなバイアルは、様々な量の粉砕されたECMを含み得、例えば、100mg又は20
0mgの粉砕されたECMを含み得る。
【0180】
本明細書に開示されるキットは、当該キットにおいて提供されるECM組成物の使用に
関する使用説明(instruction)を示すラベル又は表示を含み得る。いくつかの実施形態
において、当該キットは、ECM組成物が有効であるための方法を実行するために有用な
コンポーネントを含み得る。例えば、当該コンポーネントは、当該キット内のECM組成
物を投与するための手段であり、例えば、1つ以上のスプレーボトル、ピンセット、スパ
チュラ(ペースト又は粒子を適用するための)、カニューレ(cannula)、カテーテル等
である。
【0181】
6.実施例
6.1.実施例1:胎盤ECM(Placental ECM)を製造する方法
この実施例は、最初にペーストとして調製される、胎盤ECMを製造する方法を開示す
る。
【0182】
方法1:前もって分離された、冷凍のヒト胎盤が取得され、室温で~24時間解凍され
た。胎盤が解凍された後、羊膜、絨毛膜、及び臍帯が当該胎盤から除去されて廃棄された
。次に、当該胎盤は、処理のために2×2センチメートルの細片に切断された。
【0183】
当該胎盤の組織は、1.5リットルの1M NaCl溶液が入った容器に入れられ、オ
ムニインターナショナル社製(Omni International, Kennesaw, GA)のオムニミクサーホ
モジナイザー(Omni Mixer Homogenizer)を用いて均質化された。次に、均質化された胎
盤組織はプロセスバッグ(processing bag)に入れられ、当該バッグは1M NaClで
満たされて総体積が9.2リットルとなった。均質化された胎盤組織は1M NaCl溶液
で3回、次のように洗浄された:(i)プロセスバッグはオービタルシェーカー(orbital
shaker)上で10分間攪拌され、(ii)胎盤組織はプロセスバッグ内で10分間沈殿さ
せられ、(iii)6.2リットルの上澄みは重力排水によってプロセスバッグから除去さ
れた。このステップは、混合物から血液及び残屑を取り除くステップである。
【0184】
3回目の洗浄ステップの後、洗浄された胎盤組織は、室温で~18-26時間、オービ
タルシェーカー上で、1M NaCl溶液内(合計3リットルの混合物)に混合された。
次に、上述したNaCl洗浄と同様に、胎盤組織は滅菌水で4回洗浄された。4回目の水
での洗浄の後、胎盤組織は、室温で~18-26時間、オービタルシェーカー上で、水の
中に混合(合計3リットルの混合物)された。水の中での~18-26時間の混合の後、
胎盤組織は、水で最後に1回、上述した態様と同様に洗浄され、その後、6.2Lの3%
デオキシコール酸ナトリウムが当該混合物に加えられ、当該混合物中のデオキシコール酸
ナトリウムの最終濃度は2%とされた。
【0185】
当該胎盤組織は、室温で~72時間、オービタルシェーカー上で、2%のデオキシコー
ル酸ナトリウム溶液中で混合された。当該胎盤組織は、~72時間の混合の後、上述した
態様で、滅菌水で5回洗浄された。最後に水を加えられた後、1M NaOHの滴下(dro
pwise addition)によって当該溶液のpHは約10-12とされ、塩基性溶液とされた。
胎盤組織は、当該塩基性溶液中、室温で~30分間オービタルシェーカー上で混合された
。~30分の混合の後、当該溶液のpHは、0.1N HClの滴下によって、約7.0
-7.5に調節された。
【0186】
プロセスバッグから上澄みが除去され、残った胎盤組織が回収されて遠心分離された。
遠心分離の後、上澄みは除去され、回収された胎盤組織は最後の洗浄ステップとして滅菌
水(sterile water)中に再懸濁され、再度遠心分離され、その後上澄みが廃棄された。
得られた組成物は、コラーゲン及びエラスチンを含む胎盤ECM組成物であり、白いペー
ストの形態であった。
【0187】
方法2:処理が開始されると、冷凍のヒト胎盤は2-8℃で解凍され、生物学的安全キ
ャビネット(biological safety cabinet)(BSC)に移され、方法1と同様の処理が
施された。当該胎盤は、保存容器からはずされて滅菌された使い捨てのトレーに置かれた
。当該胎盤は、清掃されて余分な血液及び血餅が取り除かれ、小片に刻まれた。当該刻ま
れた胎盤材料は、滅菌水に懸濁され、機械的ホモジナイザー(mechanical homogenizer)
を用いて均質化された。当該生成された微小な組織粒子は、増大した表面積を有し、胎盤
ECMからのより効果的な細胞及び細胞残屑の分離及び除去を可能とする。均質化された
胎盤由来の組織は、滅菌された1M塩化ナトリウム溶液の入った滅菌されたプロセスバッ
グに移された。当該組織は、滅菌された1M塩化ナトリウム(NaCl)で数回、オービ
タルシェーカー上での攪拌によって洗浄された;NaCl溶液は、胎盤組織を沈殿させ、
その後排液して追加の滅菌された1M NaCl溶液を補給することによって交換された
。胎盤組織は、滅菌された1M NaCl溶液中で攪拌されている状態で18-24時間
保持され、その後滅菌水による洗浄が繰り返された。全ての処理ステップは室温で実行さ
れた。胎盤組織を高濃度の塩化ナトリウムにさらし、その後水にさらすことは、組織への
「浸透圧衝撃(osmotic shock)」を構成する。当該「浸透圧衝撃」は、組織の血液、血
液成分、細胞及び細胞残屑を掃除することに役立つ。当該胎盤組織は次のステップである
洗浄剤洗浄の前に、2回目の「浸透圧衝撃」を受ける。
【0188】
リンスされた胎盤組織は、滅菌された0.1-0.3%デオキシコール酸ナトリウム(
DOC)溶液及び4-8mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液と共に、バイオプ
ロセスバッグ(bio-processing bag)内で攪拌されている状態で、室温で48-72時間
保持された。続いて滅菌水でのリンスの後、当該組織は、2回目のDOC/EDTAによ
る18-24時間の洗浄が行われた。当該組織をリンスしてDOC及びEDTAを除去す
るために、滅菌水が用いられた。
【0189】
水による洗浄が終了すると、上澄みはバイオプロセスバッグから除去されて、2mM塩
化マグネシウム溶液及びpH8-9の10U/mLのBENZONASE(登録商標)に
置き換えられ、室温で18-24時間混合された。BENZONASE(登録商標)は、
全ての型の核酸(RNA及びDNA)を分解するエンドヌクレアーゼである;得られる短
いポリヌクレオチドの断片は、胎盤組織の一連のリンスによって洗い流される。
【0190】
核酸の残渣を除去するための胎盤組織のリンスの後、当該材料は、ウイルス不活性化の
ステップとして低いpH及び高いpHで処理された。第1のステップにおいて、胎盤組織
は、滅菌された0.67M NaCl溶液の存在下でpH3.3か又はそれ以下とされ、
22±1℃で24時間、オービタルシェーカー上で攪拌された。第2のステップにおいて
、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて当該溶液のpHは≧13に調整され、22±1
℃で最低4時間、オービタルシェーカー上、バイオプロセスバッグ内で混合された。当該
NaOH曝露(NaOH exposure)の終わりに、溶液のpHは5.5-9.0の範囲に
調整された。
【0191】
酸及び塩基処理が終了すると、当該組織は1M NaClを伴ってインキュベート(inc
ubate)され、オービタルシェーカー上で48-72時間混合された。NaCl処理の後
、当該胎盤ECMは滅菌水で18-24時間洗浄されて残屑及び残留した汚染物質を除去
された。当該懸濁液を遠心分離することによって、ECMペーストが生成された。ECM
ペーストは、当該生成物が調製及び滅菌されるまで、-20℃の冷凍庫で保存された。
【0192】
シートとしての調製:ECMシートを生成するために、ECMペーストは、2℃から2
2℃で24-48時間解凍され、生物学的安全キャビネットにおいて、滅菌されたリン酸
緩衝液に再懸濁された。当該組織は均質化されて均質なECM懸濁液が準備され、当該懸
濁液は滅菌されたプラスチックの型に分配されて凍結された。ECMの凍結された成型品
は、凍結乾燥を使って脱水された。得られた脱水されたECMウェハ(ECM wafer)は
、滅菌水で再水和され、その後室温で18-36時間、真空補助乾燥機(vacuum-assiste
d dryer)で凝縮された。シートは二重のパウチに入れられ、医療グレードのシーラーで
密封され、ラベルを付けられ、ガンマ線を用いて滅菌された。
【0193】
粒子としての調製:ECM粒子を生成するために、ECMペーストは滅菌水中に再懸濁
され、型に移され、サーモ・サイエンティフィック社 (Thermo Scientific, Marietta, O
H) 製のコントロールレートフリーザー(Controlled Rate Freezer)を用いて凍結され、
ラブコンコ社(LabConco, Kansas City, MO)製の凍結乾燥器(freeze-dryer)を用いて
48時間、凍結乾燥される。凍結乾燥されたECMは、フルイドエナジー社(Fluid Ener
gy, Telford, PA)製のジェットミル(jet mill)を用いて粉砕され、ECM粒子が生成
される。粉砕されたECM粉末は、琥珀色のガラスバイアルに充填されて密封され得る。
【0194】
流動性基質としての調製:ECM流動性基質は、ECM粒子を用いて調製され得る。通
常、ECM流動性基質は、凍結乾燥されて粉砕されたECM(ECM粒子)を例えば滅菌
水中又は生理食塩水中に懸濁することによって調製され得る。
【0195】
6.2.実施例2:ECM組成物のコラーゲン含有量の決定
この実施例は、ECM組成物のコラーゲン含有量の分析について説明する。
【0196】
実施例1に記載されたように、粒子、シート、又は流動性基質の形態で調製されたEC
M組成物は、比色分析のヒドロキシプロリン定量法を用いて全コラーゲン含有量(total
collagen content)に関して分析された。コラーゲンは、非常に高いプロリン濃度を有す
るという点で独特のタンパク質である。さらに、コラーゲンは、変換後にヒドロキシプロ
リンに変わる。そのようなものとして、熱塩酸中で加水分解されたコラーゲンから得るこ
とができるヒドロキシプロリンの定量化は、コラーゲンの定量化の代用物として用いられ
得る。
【0197】
ECM試料(ECM sample)は、6N HClを用いて110℃で加水分解され、その
後、クロラミン-T(Chloramine-T)(N-クロロ-4-メチルベンゼンスルホンアミド
(N-chloro 4-methylbenzenesulfonamide))を用いてヒドロキシプロリンが酸化されて
ピロール-2-カルボン酸(pyrrole-2-carboxylic acid)(ピロール(pyrrole))とな
った。色は4-ジメチルアミノベンズアルデヒド(4-Dimethylaminobenzaldehyde(DM
AB))を用いて発現され、ヒドロキシプロリンの含有量は550nmの吸光度を測定す
ることによって決定された。試料の吸光度は、既知の量のヒドロキシプロリンを用いたヒ
ドロキシプロリン標準曲線(standard curve)に対照して補間された。
【0198】
ECM組成物は、ECM組成物の重量で31%から53%の範囲の全コラーゲン(tota
l collagen)を含むと判定された(表1)。16試料中14試料は、ECM組成物の重量
で全コラーゲンは34%から43%の範囲内であった。また、16試料中12試料は、E
CM組成物の重量で全コラーゲンは37%から42%の範囲内であった。これに対して、
比較試料の(comparator)基質製品であるブタ膀胱基質(porcine urinary bladder matr
ix)(MATRISTEM(登録商標) 創傷基質シート(Wound Matrix sheets) 又は
MATRISTEM MICROMATRIX(登録商標)粒子(particulates))及び
ウシ胎児真皮基質(fetal bovine dermis matrix)(PRIMATRIX(商標) 真皮
修復基質(Dermal Repair Matrix))は、重量でそれぞれ67%、67%、69%の全コ
ラーゲンを含むことが見出された。
【0199】
【0200】
6.3.実施例3:ECM組成物のエラスチン含有量の決定
この実施例は、ECM組成物のエラスチン含有量の分析について説明する。
【0201】
実施例1に記載されたように粒子又はシートとして調製されたECM組成物は、バイオ
カラー社(BioColor, Ltd. (UK))製のファスティンエラスチン定量キット(Fastin Elas
tin Assay kit)を用いてエラスチン含有量に関して分析された。当該キットは、テスト
試料から抽出されて可溶化されたアルファ・エラスチン(α-elastin)を着色するために
、5, 10, 15, 20-テトラフェニル-21, 23-ポルフィン テトラスルホン酸塩(5, 10, 15,
20-tetraphenyl-21, 23-porphine tetra-sulfonate (TPPS))を染料として使用する。エ
ラスチンは、0.25M シュウ酸中100℃で、ECM組成物試料から抽出された。エ
ラスチンは、トリクロロ酢酸(trichloroacetic acid)及び塩酸(TCA/HCl)によ
って沈殿され、その後TPPSで着色された。その後、TPPSはエラスチンから分離さ
れ、放出されたTPPSのレベルが分光光度法(spectrophotometry)によって定量され
た。ECM組成物試料中のエラスチンレベルは、エラスチン標準曲線に対照して補間する
ことによって決定された。
【0202】
ECM組成物は、ECM組成物の重量で13%から29%の範囲のエラスチンを有する
と判定された(表2)。16試料中14試料は、ECM組成物の重量でエラスチンは16
%から24%の範囲内であり、16試料中13試料は、ECM組成物の重量でエラスチン
は17%から24%の範囲内であり、16試料中10試料は、ECM組成物の重量でエラ
スチンは20%から24%の範囲内であった。これに対して、比較試料の基質製品である
ブタ膀胱基質(マトリステム(MATRISTEM(登録商標)) 創傷基質シート又は
マトリステムマイクロマトリクス(MATRISTEM MICROMATRIX(登録
商標))粒子)は、4%のエラスチンを含むことが見出された。ウシ胎児真皮基質(プリ
マトリクス(PRIMATRIX(商標)) 真皮修復基質)では、エラスチンは検出さ
れなかった。
【0203】
表2及び表3において、試料8は表1における試料8と同じECM組成物を示す。しか
しながら、分析されたECM組成物の種類は異なる(すなわち、表1では流動性基質の形
態のECM組成物が分析されたが、表2及び表3では粒子の形態のECM組成物が分析さ
れた)。
【0204】
【0205】
6.4.実施例4:ECM組成物のフィブロネクチン含有量の決定
この実施例は、ECM組成物のフィブロネクチン含有量の分析について説明する。
【0206】
実施例1に記載されたように粒子又はシートとして調製されたECM組成物は、マウン
テンビュー社(Mountain View, CA)のタカラフィブロネクチンEIAキット(TaKaRa Fi
bronectin EIA kit)を用いてフィブロネクチン含有量に関して分析された。当該キット
は、サンドウィッチエライザ法(sandwich ELISA method)に基づき、2段階の工程によ
って、2つのマウスモノクローナル抗ヒトフィブロネクチン抗体(mouse monoclonal ant
i-human fibronectin antibodies)を利用してフィブロネクチンを検出する。加えて、2
Mの尿素緩衝液(urea buffer)を用いたフィブロネクチンの特殊な抽出方法が開発され
た。
【0207】
15mgのECM組成物が3mLの抽出緩衝液(2Mの尿素、0.05MのPO4、2
mMのPMSF、pH7.1)に混合され、攪拌プレート(stir plate)上で4時間混合
された。当該試料は、その後10,000Xgで遠心分離された。上澄みは、分析時まで-20
℃で保存されるか又は直ちに使用された。タカラフィブロネクチンEIAキットを用いた
16のECM組成物試料の分析は、製造元の使用説明書に従って行われた。フィブロネク
チン濃度の標準曲線は、市販の凍結乾燥されたフィブロネクチンを用いて作成された。そ
して、試料のフィブロネクチン濃度は当該曲線から補間された。
【0208】
ECM組成物のフィブロネクチン含有量は低く、平均でECM組成物のmgあたり19
7ngのフィブロネクチンを含み(ECM組成物の重量で0.0197%)、21.3ng/mgから361
.3ng/mgの範囲である。ブタ膀胱基質の試料(マトリステム(MATRISTEM(登録
商標)) 創傷基質シート又は マトリステムマイクロマトリクス(MATRISTEM
MICROMATRIX(登録商標))粒子)及びウシ胎児真皮基質(プリマトリクス(
PRIMATRIX(商標)) 真皮修復基質)はテストされたが、当該定量法において
フィブロネクチンの含有量は判明しなかった。これは、当該定量法において使用された抗
体がウシ由来の又はブタ由来の基質と交差反応しなかったからである可能性がある。
【0209】
【0210】
6.5.実施例5:ECM組成物のラミニン組成の決定
実施例1に記載されたように準備されて粒子又はシートとして調製された16のECM
組成物は、マウンテンビュー社(Mountain View, CA)のタカラフィブロネクチンEIA
キットを用いて、製造元の使用説明書に従って、ラミニン含有量に関して分析された。当
該キットは、サンドウィッチエライザ法に基づき、2段階の工程によって、2つのマウス
モノクローナル抗ヒトフィブロネクチン抗体を利用してラミニンを検出する。加えて、2
Mの尿素緩衝液を用いたラミニンの特殊な抽出方法が開発された。ラミニン濃度の標準曲
線は、市販の凍結乾燥されたラミニンを用いて作成された。そして、試料のラミニン濃度
は当該曲線から補間された。
【0211】
結果:ラミニンは、16のECM試料のいずれからも検出されなかった。また、比較の
ために分析されたブタ膀胱基質(シート若しくは粒子)又はウシ胎児真皮基質のいずれか
らも、ラミニンは検出されなかった。
【0212】
6.6.実施例6:ECM組成物の生体適合性
実施例1に記載されたように準備されてシート、粒子又は流動性基質として調製された
ECM組成物は、調査開始時の年齢が4.7-6.3か月であり、体重が2.4-2.9
kgのアルビノのニュージーランドホワイトラビットにおける生体適合性がテストされた。
対照(control)のため、ECMシートはマトリステム(MATRISTEM(登録商標))創傷基
質(ブタ膀胱基質)と比較され;ECM粒子はマトリステムマイクロマトリクス(MATRIS
TEM MICROMATRIX(登録商標))と比較され、ECM流動性基質はインテグラ流動性創傷
基質(INTEGRA(商標)Flowable Wound Matrix)(コラーゲン及びグリコサミノ
グリカン)と比較された。
被験物質(test article) 使用量/サイトあたり(Site)
ECM粒子 5.0-5.4mg
ECM流動性基質 50μL
ECMシート 1×3×10mm片
マトリステム(登録商標)粒子 5.0-5.4mg
インテグラ流動性 50μL
マトリステムシート 1×3×10mm片
【0213】
流動性基質の調製:ECM流動物(ECM Flowable)及びINTEGRA(商標)流動物
は、2mL以上の注射可能な水を3mLのバイアルアクセスシリンジ(Vial Access syri
nge)で吸引し、気泡を排除し、体積を2mLに調節することによって調製された。その
後、当該バイアルアクセスシリンジからカニューレが取り除かれた。次に、このシリンジ
は、2mLの水が入ったECMシリンジと先端同士を(tip-to-tip)接続された。水はバ
イアルアクセスシリンジからバイアルアクセスシリンジにゆっくりと注入され、粉末が均
一に水和されるまで、10から15の前後の動きによって注意深く混合された。再構成さ
れ全部のペーストは、シリンジの1つに押し込まれた。当該空のシリンジは廃棄され、1
mLの空のシリンジが残ったECMペーストシリンジに接続され、1mLのECM流動物
又はINTEGRA(商標)流動物のペーストは1mLのシリンジに移された。この最後
のステップは、2番目の1mLシリンジに繰り返された。当該ペーストは、各々投与のた
めに1mLシリンジに装填される前に再混合された。INTEGRA(商標)流動物は、
注射のために3.0mLの生理食塩水と混合された。被験物質及び対照物質は、充填され
た1mLを用いて直接適用された。
【0214】
移植(implantation):各々の動物に、背中の中線上に両側の傍脊椎筋の筋膜を通って
伸びる2-4cmの皮膚切開が施された。各々の移植部位に、5mmの切開が傍脊椎筋に
施され、移植のため、止血鉗子によって、当該中線からおよそ2cmで、かつ筋肉の繊維
軸に平行である小さいポケットが生成されて、移植部位間に少なくとも2.5cmの間隔
がもたらされた。傍脊椎筋の一方の側に4つの被験物質又は4つの対照物質(control ar
ticles)が移植された。被験物質は右側に、対照物質は左側に、グループ毎に移植された
。その後全ての移植部位は、非吸収性縫合糸で閉じられ、当該皮膚切開は縫合糸及び/又
は皮膚ステープラー(skin staple)で閉じられた。50μLの流動性調製物、5mgの
粒子調製物及び1片(1×3×10mm)のシート調製物が生成された筋肉のポケットに
移植された。対照物質は、50μLのウシ由来の創傷基質製品(INTEGRA(商標) Flowab
le)、5mgのブタの膀胱由来の細胞外基質の粒子調製物(MATRISTEM MICROMATRIX(登
録商標))、及びブタの膀胱由来の細胞外基質のシート(1×3×10mm)調製物(MA
TRISTEM WOUND MATRIX(登録商標))であった。動物は、移植後1、2又は4週間後に殺
され、組織学的検査が行われた。
【0215】
結果:ECMシートは、ブタ膀胱基質よりも明らかに少ない組織反応性を示した。移植
後第1週では、膀胱基質(UBM)近傍の組織は、粒状化及び炎症反応の明瞭な兆候を示
しているのに対して(
図1A)、ECMシートは、顆粒球の僅かな浸透に伴って散在した
筋組織を示した。第2週及び第4週では、UBMシート近傍で粒状化がさらに顕著である
のに対して(
図1C及び
図1E)、ECMシート近傍の組織は、実質的に粒状化が無く、
正常に見えた(
図1D及び
図1F)。ECMシートは、第1,2,4週において刺激性が
ないと思われた。
【0216】
ECM粒子及び流動性基質は、対照の粒子及び流動性基質よりも少ない組織反応性を生
じた(
図2及び
図3)。例えば、移植後第1週では、ECM粒子は、炎症を示すいくらか
の粒状化を示したが(
図2B)、その程度はUBM粒子よりも著しく小さい(
図2A)。
第2週及び第4週では、ECM粒子は粒状化の著しい減少を示し、(
図2D及び
図2F)
、これと比較してUBM粒子は、第2週及び第4週で実質的な炎症を示した(
図2C及び
図2E)。同様に、牛由来の創傷基質製品(INTEGRA(商標) Flowable)は、第1週で粒状
化を示し(
図3A)、続いて第2週及び第4週で瘢痕化した(
図3C及び
図3Eの明るい
領域)。一方で、ECM流動性基質は、実質的に最初の週にのみ炎症反応を示し(
図3B
)、続いて、第2週及び第4週では殆ど完全に回復した(
図3D及び
図3F)。
【0217】
6.7.実施例7:胎盤絨毛膜から胎盤ECMを製造する方法
この実施例は、最初にペーストとして調製される胎盤ECMを胎盤絨毛膜から製造する
方法を開示する。
【0218】
方法1:前もって分離され、凍結されたヒト胎盤を取得し、室温で~24時間程度解凍
させる。当該胎盤が解凍された後、当該胎盤から絨毛膜が取得される。次に、当該胎盤は
、処理のため2×2センチメートルの細片に切断される。
【0219】
その後、胎盤絨毛膜組織は、1.5リットルの1M NaCl溶液が入った容器に入れ
られ、オムニインターナショナル社製のオムニミクサーホモジナイザーを用いて均質化さ
れる。次に、均質化された胎盤絨毛膜組織はプロセスバッグに入れられ、当該バッグは総
体積が9.2リットルとなるように1M NaCl溶液で満たされる。均質化された胎盤
絨毛膜組織は1M NaCl溶液で3回、次のように洗浄される:(i)プロセスバッグは
オービタルシェーカー上で10分間攪拌され、(ii)胎盤絨毛膜組織はプロセスバッグ内
で10分間沈殿させられ、(iii)6.2リットルの上澄みは重力排水によってプロセス
バッグから除去された。このステップは、混合物から血液及び残屑を取り除くステップで
ある。
【0220】
3回目の洗浄ステップの後、洗浄された胎盤絨毛膜組織は、室温で~18-26時間、
オービタルシェーカー上で、1M NaCl溶液内(合計3リットルの混合物)に混合さ
れる。次に、上述したNaCl洗浄と同様に、胎盤組織は滅菌水で4回洗浄される。4回
目の水での洗浄の後、胎盤絨毛膜組織は、室温で~18-26時間、オービタルシェーカ
ー上で、水の中に混合(合計3リットルの混合物)される。水の中での~18-26時間
の混合の後、胎盤絨毛膜組織は、水で最後に1回、上述した態様と同様に洗浄され、その
後、6.2Lの3%デオキシコール酸ナトリウムが当該混合物に加えられ、当該混合物中
のデオキシコール酸ナトリウムの最終濃度は2%とされる。
【0221】
当該胎盤絨毛膜組織は、室温で~72時間、オービタルシェーカー上で、2%のデオキ
シコール酸ナトリウム溶液中で混合される。当該胎盤絨毛膜組織は、~72時間の混合の
後、上述した態様で、滅菌水で5回洗浄される。最後に水を加えられた後、1M NaO
Hの滴下によって当該溶液のpHは約10-12とされ、塩基性溶液とされる。胎盤絨毛
膜組織は、当該塩基性溶液中、室温で~30分間オービタルシェーカー上で混合される。
~30分の混合の後、当該溶液のpHは、0.1N HClの滴下によって、約7.0-
7.5に調節される。
【0222】
プロセスバッグから上澄みが除去され、残った胎盤絨毛膜組織が回収されて遠心分離さ
れる。遠心分離の後、上澄みは除去され、回収された胎盤絨毛膜組織は最後の洗浄ステッ
プとして滅菌水中に再懸濁され、再度遠心分離され、その後上澄みが廃棄される。得られ
る組成物は、コラーゲン及びエラスチンを含む胎盤ECM組成物であり、白いペーストの
形態であろう。
【0223】
方法2:処理が開始されると、冷凍のヒト胎盤は2-8℃で解凍され、生物学的安全キ
ャビネット(BSC)に移される。当該胎盤は、保存容器からはずされて滅菌された使い
捨てのトレーに置かれる。当該胎盤は、清掃されて余分な血液及び血餅が取り除かれる。
当該胎盤の絨毛膜が取得され、小片に刻まれる。当該刻まれた胎盤材料は、滅菌水に懸濁
され、機械的ホモジナイザーを用いて均質化される。当該ホモジナイザーは、増大した表
面積を有する微小な組織粒子を生成し、胎盤ECMからのより効果的な細胞及び細胞残屑
の分離及び除去を可能とする。均質化された胎盤絨毛膜由来の組織は、滅菌された1M塩
化ナトリウム溶液の入った滅菌されたプロセスバッグに移される。当該組織は、滅菌され
た1Mの塩化ナトリウム(NaCl)で数回、オービタルシェーカー上での攪拌によって
洗浄される;胎盤組織を沈殿させ、その後排液して追加の滅菌された1M NaCl溶液
を補給することによって、NaCl溶液は交換される。胎盤組織は、滅菌された1M N
aCl溶液中で攪拌されている状態で18-24時間保持され、その後滅菌水による洗浄
が繰り返される。全ての処理ステップは室温で実行される。
胎盤絨毛膜組織を高濃度の塩化ナトリウムにさらし、その後水にさらすことは、組織への
「浸透圧衝撃」を構成する。当該「浸透圧衝撃」は、組織の血液、血液成分、細胞及び細
胞残屑を掃除することに役立つ。当該胎盤組織は次のステップである洗浄剤洗浄の前に、
2回目の「浸透圧衝撃」を受けさせられる。
【0224】
リンスされた胎盤絨毛膜組織は、滅菌された0.1-0.3%デオキシコール酸ナトリ
ウム(DOC)溶液及び4-8mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液と共に、バ
イオプロセスバッグ内で攪拌されている状態で、室温で48-72時間保持される。続い
て滅菌水でのリンスの後、当該組織は、2回目のDOC/EDTAによる18-24時間
の洗浄が行われる。その後、当該組織をリンスしてDOC及びEDTAを除去するために
、滅菌水が用いられる。
【0225】
水による洗浄が終了すると、上澄みはバイオプロセスバッグから除去されて、2mM塩
化マグネシウム溶液及びpH8-9の10U/mLのBENZONASE(登録商標)に
置き換えられ、室温で18-24時間混合される。BENZONASE(登録商標)は、
全ての型の核酸(RNA及びDNA)を分解するエンドヌクレアーゼである;得られる短
いポリヌクレオチドの断片は、胎盤組織の一連のリンスによって洗い流される。
【0226】
核酸の残渣を除去するための胎盤絨毛膜組織のリンスの後、当該材料は、ウイルス不活
性化のステップとして低いpH及び高いpHで処理される。第1のステップにおいて、胎
盤絨毛膜組織は、滅菌された0.67M NaCl溶液の存在下でpH3.3か又はそれ
以下とされ、22±1℃で24時間、オービタルシェーカー上で攪拌される。第2のステ
ップにおいて、水酸化ナトリウム(NaOH)を用いて当該溶液のpHは≧13に調整さ
れ、22±1℃で最低4時間、オービタルシェーカー上、バイオプロセスバッグ内で混合
される。当該NaOH曝露(NaOH exposure)の終わりに、溶液のpHは5.5-9
.0の範囲に調整される。
【0227】
酸及び塩基処理が終了すると、当該組織は1M NaClを伴ってインキュベートされ
、オービタルシェーカー上で48-72時間混合される。NaCl処理の後、当該胎盤絨
毛膜ECMは滅菌水で18-24時間洗浄されて残屑及び残留した汚染物質を除去される
。当該懸濁液を遠心分離することによって、ECMペーストが生成される。ECMペース
トは、当該生成物が調製及び滅菌されるまで、-20℃の冷凍庫で保存され得る。
【0228】
シートとしての調製:ECMシートを生成するために、ECMペーストは、2℃から2
2℃で24-48時間解凍され、生物学的安全キャビネットにおいて、滅菌されたリン酸
緩衝液に再懸濁される。当該組織は均質化されて均質なECM懸濁液が準備され、当該懸
濁液は滅菌されたプラスチックの型に分配されて凍結される。ECMの凍結された成型品
は、凍結乾燥を使って脱水される。得られた脱水されたECMウェハは、滅菌水で再水和
され、その後室温で18-36時間、真空補助乾燥機で凝縮される。シートは二重のパウ
チに入れられ、医療グレードのシーラーで密封され、ラベルを付けられ、ガンマ線を用い
て滅菌される。
【0229】
粒子としての調製:ECM粒子を生成するために、ECMペーストは滅菌水中に再懸濁
され、型に移され、サーモ・サイエンティフィック社 (Thermo Scientific, Marietta, O
H) のコントロールレートフリーザー(Controlled Rate Freezer)を用いて凍結され、ラ
ブコンコ社(LabConco, Kansas City, MO)の凍結乾燥器を用いて48時間、凍結乾燥さ
れる。凍結乾燥されたECMは、フルイドエナジー社(Fluid Energy, Telford, PA)の
ジェットミルを用いて粉砕され、ECM粒子が生成される。粉砕されたECM粉末は、琥
珀色のガラスバイアルに充填されて密封され得る。
【0230】
流動性基質としての調製:ECM流動性基質は、ECM粒子を用いて調製され得る。通
常、ECM流動性基質は、凍結乾燥されて粉砕されたECM(ECM粒子)を例えば滅菌
水中又は生理食塩水中に懸濁することによって調製され得る。
【0231】
ECMのコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、及び/又はラミニンの含有量は
、実施例2、3、4及び5においてそれぞれ開示された態様で分析され得る。さらに、E
CMの生体適合性は、実施例6において開示された態様で評価され得る。
【0232】
6.8.実施例8:胎盤絨毛膜から胎盤ECMを製造する方法(2)
この実施例は、最初にペーストとして調製される胎盤ECM組成物を胎盤絨毛膜から製
造する方法を開示する。
【0233】
満期産直後の母体から取得されたヒト胎盤か又は前もって分離された冷凍のヒト胎盤で
あって解凍されているものが使用される。当該胎盤は、0.5M NaCl中で洗浄され
る。羊膜、臍帯及び壁側脱落膜は胎盤から除去され、絨毛膜板は保持されて、擦って清浄
にされる。当該擦って清浄にされた絨毛膜は、0.5M NaCl中及び水中ですすがれ
(リンスされ)、2%デオキシコール酸内で一晩リンスされ、続いて数回水リンスされる
。その後、処理された絨毛膜は粉砕され、凍結乾燥される。得られる組成物は、脱細胞さ
れたECMペーストであり、粉砕して調製するなど、さらなる調製に適する。
【0234】
シートとしての調製:ECMシートを生成するために、ECMペーストは、2℃から2
2℃で24-48時間解凍され、生物学的安全キャビネットにおいて、滅菌されたリン酸
緩衝液に再懸濁される。当該組織は均質化されて均質なECM懸濁液が準備され、当該懸
濁液は滅菌されたプラスチックの型に分配されて凍結される。ECMの凍結された成型品
は、凍結乾燥を使って脱水される。その結果脱水されたECMウェハは、滅菌水で再水和
され、その後室温で18-36時間、真空補助乾燥機で凝縮される。シートは二重のパウ
チに入れられ、医療グレードのシーラーで密封され、ラベルを付けられ、ガンマ線を用い
て滅菌される。
【0235】
粒子としての調製:ECM粒子を生成するために、ECMペーストは滅菌水中に再懸濁
され、型に移され、サーモ・サイエンティフィック社 (Marietta, OH) のコントロールレ
ートフリーザーを用いて凍結され、ラブコンコ社(Kansas City, MO)の凍結乾燥器を用
いて48時間、凍結乾燥される。凍結乾燥されたECMは、フルイドエナジー社(Telfor
d, PA)のジェットミルを用いて粉砕され、ECM粒子が生成される。粉砕されたECM
粉末は、琥珀色のガラスバイアルに充填されて密封され得る。
【0236】
流動性基質としての調製:ECM流動性基質は、ECM粒子を用いて調製され得る。通
常、ECM流動性基質は、凍結乾燥されて粉砕されたECM(ECM粒子)を例えば滅菌
水中又は生理食塩水中に懸濁することによって調製され得る。
【0237】
ECMのコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、及び/又はラミニンの含有量は
、実施例2、3、4及び5においてそれぞれ開示された態様で分析され得る。さらに、E
CMの生体適合性は、実施例6において開示された態様で評価され得る。
【0238】
6.9.実施例9:胎盤絨毛膜から胎盤ECMを製造する方法(3)
この実施例は、胎盤ECM組成物を胎盤絨毛膜から製造する方法を開示する。
【0239】
満期産直後の母体から取得されたヒト胎盤が使用される。羊膜、臍帯及び壁側脱落膜は
胎盤から除去され、絨毛膜板は保持されて、擦って清浄にされる。当該擦って清浄にされ
た絨毛膜は、0.1M NaCl中及び水中でリンスされ、0.067%デオキシコール
酸及び4mM EDTAを含む溶液内で一晩リンスされ、続いて数回水リンスされる。そ
の後当該絨毛膜は、0.39%デオキシコール酸及び8mM EDTAを含む溶液内で一
晩リンスされ、続いて数回水リンスされる。その後、処理された全絨毛膜は凍結乾燥され
る。
【0240】
シートとしての調製:ECMシートを生成するために、ECMは、2℃から22℃で2
4-48時間解凍され、生物学的安全キャビネットにおいて、滅菌されたリン酸緩衝液に
再懸濁されて、ECMペーストを形成する。当該組織は均質化されて均質なECM懸濁液
が準備され、当該懸濁液は滅菌されたプラスチックの型に分配されて凍結される。ECM
の凍結された成型品は、凍結乾燥を使って脱水される。その結果脱水されたECMウェハ
は、滅菌水で再水和され、その後室温で18-36時間、真空補助乾燥機で凝縮される。
シートは二重のパウチに入れられ、医療グレードのシーラーで密封され、ラベルを付けら
れ、ガンマ線を用いて滅菌される。
【0241】
粒子としての調製:ECM粒子を生成するために、ECMは滅菌水中に再懸濁されてE
CMペーストを形成し、型に移され、サーモ・サイエンティフィック社 (Marietta, OH)
のコントロールレートフリーザーを用いて凍結され、ラブコンコ社(Kansas City, MO)
の凍結乾燥器を用いて48時間、凍結乾燥される。凍結乾燥されたECMは、フルイドエ
ナジー社(Telford, PA)のジェットミルを用いて粉砕され、ECM粒子が生成される。
粉砕されたECM粉末は、琥珀色のガラスバイアルに充填されて密封され得る。
【0242】
流動性基質としての調製:ECM流動性基質は、ECM粒子を用いて調製され得る。通
常、ECM流動性基質は、凍結乾燥されて粉砕されたECM(ECM粒子)を例えば滅菌
水中又は生理食塩水中に懸濁することによって調製され得る。
【0243】
ECMのコラーゲン、エラスチン、フィブロネクチン、及び/又はラミニンの含有量は
、実施例2、3、4及び5においてそれぞれ開示された態様で分析され得る。さらに、E
CMの生体適合性は、実施例6において開示された態様で評価され得る。
【0244】
そのような方法で調製された滅菌前のECM組成物のキャラクタリゼーションは、表4
にまとめられているように、乾燥重量での特性を示している:
【0245】
【0246】
本明細書に引用される全ての出版物及び特許出願は、個々の出版物が、参照されること
で包含されるように具体的に、かつ、個別的に、示されていることと同程度に、参照され
ることで本願明細書に包含される。明確な理解の目的で、本発明のいくつかの詳細が説明
及び実施例によって示されているが、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく様々な
変更がなされ得ることは、本明細書に開示される内容に照らして、当業者にとって明白で
あろう。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に実質的に記載された、新規な物、方法及び製造方法。
【外国語明細書】