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特開2022-130472がんに対する免疫療法で使用されるペプチドおよびペプチドの組み合わせ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130472
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】がんに対する免疫療法で使用されるペプチドおよびペプチドの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20220830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220830BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220830BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20220830BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
A61K38/08
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 N
A61K48/00
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096002
(22)【出願日】2022-06-14
(62)【分割の表示】P 2018548713の分割
【原出願日】2017-03-14
(31)【優先権主張番号】1604490.1
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】62/309,107
(32)【優先日】2016-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】メア,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】スホール,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァインシェンク,トニ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】免疫療法、特にがんの免疫療法で使用するためのペプチド、タンパク質、核酸、および細胞を提供する。
【解決手段】単独のまたはその他の腫瘍関連ペプチドと組み合わされた、腫瘍関連T細胞ペプチドエピトープに関し、それは、例えば、抗腫瘍免疫応答を刺激しまたは生体外でT細胞を刺激して患者に移入する、ワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。主要組織適合性複合体(MHC)の分子と結合しているペプチド、またはペプチドそれ自体もまた、抗体、可溶性T細胞受容体、およびその他の結合分子の標的になり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MHCクラスIに結合する能力を有する、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩を含む、がんの診断または治療用の薬剤であり、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、薬剤。
【請求項2】
前記ペプチドが、非ペプチド結合を含む、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
請求項1に記載の薬剤をエンコードする核酸、または前記核酸を発現する能力がある発現ベクターを含む、薬剤。
【請求項4】
請求項1もしくは2に記載の薬剤を特異的に認識するまたはMHC分子と結合する請求項1もしくは2に記載の薬剤を特異的に認識する、抗体を含む、がんの診断または治療用の薬剤であり、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、薬剤。
【請求項5】
リガンドが請求項1もしくは2に記載の薬剤または請求項1もしくは2に記載の薬剤とMHCの複合体の一部である、HLAリガンドと反応するT細胞受容体(TCR)を含む、がんの診断または治療用の薬剤であり、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、薬剤。
【請求項6】
前記T細胞受容体が、可溶性分子として提供される、または、前記T細胞受容体が、可溶性分子として提供され、さらに免疫刺激ドメインもしくは毒素を含むエフェクター機能を保有する、請求項5に記載の薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、免疫療法で使用するためのペプチド、タンパク質、核酸、および細胞に関する。特に、本明細書は、がんの免疫療法に関する。本明細書は、単独のまたはその他の腫瘍関連ペプチドと組み合わされた、腫瘍関連T細胞ペプチドエピトープにさらに関し、それは、例えば、抗腫瘍免疫応答を刺激しまたは生体外でT細胞を刺激して患者に移入する、ワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。主要組織適合性複合体(MHC)の分子と結合しているペプチド、またはペプチドそれ自体もまた、抗体、可溶性T細胞受容体、およびその他の結合分子の標的になり得る。
【0002】
本明細書は、がん細胞を標的とするための腫瘍関連抗原(TAA)に結合する特異的T細胞受容体(TCR)を生成するための上記ペプチドの使用、それを発現するT細胞の生成、およびそれを使用してがんを治療する方法にさらに関する。ヒト腫瘍細胞のHLAクラスI分子に由来する、新規ペプチド配列およびそれらの変異型は、抗腫瘍免疫応答を引き起こすためのワクチン組成物中で、または薬理的/免疫学的活性化合物および細胞の開発のための標的として、使用され得る。好ましいのは、アミノ酸配列KIQEILTQV(配列番号1)を有するペプチドである。
【背景技術】
【0003】
胃がんは、悪性細胞が胃の内層に形成される疾患である。胃がんは胃の任意の部分で発生して、胃およびその他の臓器全体、特に食道、肺、および肝臓に広がり得る。胃がんは世界で4番目に一般的ながんであり、2002年には93万件の症例が診断された。これは、高死亡率の疾患であり(年間約80万人)、肺がんに次いで世界で2番目に頻度の高いがん死亡原因となっている。これは男性でより一般的であり、アジア諸国および発展途上国でより頻繁に発生する
【0004】
これは米国における全ての毎年の新規がん症例のほぼ2%(25,500症例)に相当するが、その他の国々ではより一般的である。これは韓国の主要ながん型であり、悪性新生物の20.8%を占める。日本では、胃がんは依然として男性にとって最も頻度の高いがんである。米国では、毎年約13,000人の男性と8,000人の女性が胃がんと診断されている。大多数は70歳以上である。
【0005】
胃がんは、肺がん、乳がん、結腸がん、および直腸がんに次いで、世界で4番目に一般的ながんである。さらに、胃がんは、依然としてがんによる死亡の2番目に頻度の高い原因である。米国がん協会は、2007年に推定で新たに100万件の新規症例があり、その約70%が発展途上国にあって、約80万人が死亡していると推定している
【0006】
世界各地で、この疾患の発症率には夥しい地理的変動が存在する。この疾患の比率は、アジアおよび南米地域で最も高く、北米で最も低い。最も高い死亡率は、チリ、日本、南米、および旧ソ連で記録されている。
【0007】
早期発見が達成されることが多い日本(そして限定的に韓国)を除いて、スクリーニングは世界のほとんどで行われていないため、胃がんは進行期において診断されることが多い。したがって、これは、医療従事者にとって大きな課題であり続ける。胃がんのリスク因子は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)(H.ピロリ(H.pylori)感染、喫煙、高塩分摂取、およびその他の食餌因子である。いくらかの胃がん(1%~3%)は、遺伝性胃がん素因症候群に関連する。E-カドヘリン変異は、びまん性胃がんの常染色体優性素因を有する家系の約25%で生じる。この胃がんのサブセットは、遺伝性びまん性胃がんと称される。12生殖細胞系短縮型の若年無無症候性キャリアにおいて、遺伝カウンセリングを提供すること、および予防的胃切除術を考慮することが有用であってもよい。
【0008】
胃壁は、粘膜(最内側)層、筋肉(中)層、および漿膜(最外側)層の3つの組織層で構成される。胃がんは、粘膜層を覆う細胞内で始まり、増殖するにつれて外層を通して広がる。4種類の標準治療法が、使用される。胃がんの治療は、手術、化学療法、放射線療法または化学放射線療法を伴ってもよい。手術は、胃がんの一次治療法である。手術の目的は、負のマージン(R0切除)で完全切除を達成することである。しかし、局所領域胃がんを有する患者のおよそ50%は、R0切除を受けることができない。R1は顕微鏡的残存がん(正のマージン)を指し;R2は肉眼的(巨視的)残存がんを指すが、遠隔疾患は指さない。患者の転帰は、診断時のがんの初期段階に左右される(NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(商標))。
【0009】
治癒的外科的切除の5年生存率は、第II病期の患者では30~50%であり、第III病期の患者では10~25%である。これらの患者は、局所および全身性の再発の可能性が高い。転移は胃がんを有する個人の80~90%で発生し、6ヶ月生存率は、早期診断された患者では65%、後期に診断された患者では15%未満である。
【0010】
神経膠腫は、神経系のグリア細胞から生じる脳腫瘍である。通常、神経膠または単にグリアと称されるグリア細胞は、支持および栄養を提供して恒常性を維持し、ミエリンを形成して神経系内の信号伝達に関与する、非神経細胞である。神経膠腫の2つの最も重要なサブグループは、それらが由来する正常なグリア細胞型(それぞれ星状細胞または希突起膠細胞)に基づいて命名された、星状細胞腫および乏突起膠腫である。星細胞腫の下位集団に属する多形性神経膠芽細胞腫(以下神経膠芽腫と称する)は、成人で最も頻度の高い悪性脳腫瘍であり、全ての悪性脳腫瘍のおよそ40%、そして神経膠腫のおよそ50%を占める。(CBTRUS,2006、www.cbtrus.org)。それは中枢神経系に攻撃的に侵入して、全ての神経膠腫中で最も高い悪性病変レベル(IV等級)に格付けされる。神経画像検査、顕微鏡下手術、テモゾロマイドまたは放射線などの多様な治療法の選択肢における進歩のために、膠芽細胞腫の治療には着実な進歩があるが、それは未だに不治である。(Burton and Prados,2000)。この脳腫瘍の致死率は非常に高く、平均余命は、最初の診断後9~12ヶ月である。1986~1990年の観察期間中の5年間生存率は、8.0%であった。これまでのところ、肉眼的腫瘍切除術をはじめとする積極的治療に続く5年間生存率は、依然として10%に満たない。(Burton and Prados,2000)。
【0011】
結腸直腸がんの発症は、遺伝因子と環境因子との相互作用の結果である。ほとんどの場合、腺腫様ポリープは、結腸直腸腫瘍の前駆体のようである;しかし転換には、長年かかることもある。結腸直腸がんの主要なリスク因子は年齢であり、症例の90%は50歳以上で診断される。米国がん協会による結腸直腸がんのその他のリスク因子としては、アルコール摂取、脂肪および/または赤身肉の多い食餌、および果物と野菜の不十分な摂取が挙げられる。発症率は上昇し続けており、特に日本のような地域では、脂肪や肉の過剰摂取と繊維摂取量の減少を伴う西洋化食の採用が非難されてもよい。しかし発生率の上昇は以前ほど速くなく、これはスクリーニングとポリープの除去が増加し、ひいてはポリープのがんへの進行が予防されることに起因するかもしれない。
【0012】
ほとんどの固形腫瘍と同様に第一選択治療は手術であるが、その利点は初期段階の患者に限定されており、なおもかなりの割合の患者が疾患の進行段階で診断される。進行した結腸直腸がんでは、フルオロウラシルベースのレジメンに基づく化学療法レジメンが標準的治療である。これらのレジメンの大多数は、いわゆるFOLFOX(静注5-FU/ロイコボリン+オキサリプラチン)、およびFOLFIRI(イリノテカン、ロイコボリン、ボーラスおよび持続静注5-FU)プロトコルである。
【0013】
イリノテカンやオキサリプラチンなどの第3世代の細胞傷害性薬物の導入は、有効性を大幅に改善する希望を高めたが、予後は依然として比較的不良であり、生存率は一般に転移性疾患で約20ヶ月にとどまり、その結果、この疾患における満たされていない要求は高いままである。
【0014】
がんの免疫療法は、がん細胞を特異的に標的化しながら副作用を最小化する選択肢に相当する。がん免疫療法は、腫瘍関連抗原の存在を利用する。
【0015】
腫瘍関連抗原(TAA)の現在の分類は、以下の群に分類され得る:
a)がん精巣抗原:T細胞によって認識され得る、最初に同定されたTAAはこのクラスに属し、元々はがん精巣(CT)抗原と称されたが、それは、そのメンバーが組織学的に異なるヒト腫瘍において発現し、正常組織では精巣の精母細胞/精原細胞のみに存在し、時として胎盤に存在するためであった。精巣の細胞は、クラスIおよびII HLA分子を発現しないので、これらの抗原は正常組織のT細胞によって認識され得ず、したがって免疫学的に腫瘍特異的と見なされる。CT抗原の周知の例は、MAGEファミリーメンバーおよびNY-ESO-1である。
b)分化抗原:これらのTAAは、腫瘍と、それから腫瘍が生じる正常組織との間で共有される。既知の分化抗原のほとんどは、黒色腫および正常メラノサイトに見いだされる。これらのメラノサイト系関連タンパク質の多くは、メラニン生合成に関与し、したがって腫瘍特異的でないが、それでもなおがん免疫療法のために広く利用されている。例としては、黒色腫に対するチロシナーゼとMelan-A/MART-1、または前立腺がんに対するPSAが挙げられるが、これに限定されるものではない。
c)過剰発現TAA:広範に発現されるTAAをエンコードする遺伝子は、組織学的に異なる型の腫瘍において検出され、多数の正常組織においても概してより低い発現レベルで検出されている。正常組織によってプロセスされて潜在的に提示されるエピトープの多くは、T細胞認識の閾値レベル未満であり得る一方で、腫瘍細胞におけるそれらの過剰発現は、以前確立された免疫寛容を破壊することにより、抗がん応答を始動し得る。このクラスのTAAの顕著な例は、Her-2/neu、サバイビン、テロメラーゼまたはWT1である。
d)腫瘍特異的抗原:これらのユニークなTAAは、正常な遺伝子(β-カテニン、CDK4など)の変異から生じる。これらの分子変化のいくつかは、腫瘍性形質転換および/または進行に関連する。腫瘍特異的抗原は、通常、正常組織に対する自己免疫反応のリスクなしに、強力な免疫応答を誘導できる。他方、これらのTAAは、ほとんどの場合、その上でそれらが同定されたまさにその腫瘍のみと関係があり、通常は、多くの個々の腫瘍間で共有されない。腫瘍特異的(関連)イソ型を有するタンパク質では、ペプチドの腫瘍特異性(または関連性)はまた、ペプチドが腫瘍(関連)エクソンに由来する場合に生じてもよい。
e)異常な翻訳後修飾から生じるTAA:このようなTAAは、特異的でなく腫瘍において過剰発現もされないタンパク質から生じてもよいが、それでもなお、腫瘍において主に活性である翻訳後プロセスによって腫瘍関連になる。このクラスの例は、腫瘍にMUC1のような新規エピトープをもたらす改変グリコシル化パターン、または腫瘍特異的であってもなくてもよい分解中のタンパク質スプライシングのような事象から生じる。
f)オンコウイルスタンパク質:これらのTAAはウイルスタンパク質であり、それらは発がん過程において重要な役割を果たしてもよく、外来性である(ヒト由来でない)ため、それらはT細胞応答を誘起し得る。このようなタンパク質の例は、子宮頸がんにおいて発現される、ヒト乳頭腫16型ウイルスタンパク質E6およびE7である。
【0016】
T細胞ベースの免疫療法は、主要組織適合性複合体(MHC)の分子によって提示される、腫瘍関連または腫瘍特異的タンパク質由来ペプチドエピトープを標的化する。腫瘍特異的Tリンパ球によって認識される抗原、すなわちそれらのエピトープは、酵素、受容体、転写因子などの全てのタンパク質クラスに由来する分子であり得て、それはそれぞれの腫瘍細胞において発現されて、同一起源の非改変細胞と比較して、通常、上方制御される。
【0017】
MHC分子には、MHCクラスIおよびMHCクラスIIの2つのクラスがある。MHCクラスI分子はα重鎖およびβ2ミクログロブリンから構成され、MHCクラスII分子はαおよびβ鎖から構成される。それらの三次元立体構造は、ペプチドとの非共有結合相互作用のために使用される結合溝をもたらす。MHCクラスI分子は、ほとんどの有核細胞上に見いだされる。それらは、主に、内因性タンパク質、欠陥リボソーム産物(DRIP)、およびより大型のペプチドのタンパク質切断から得られる、ペプチドを提示する。しかし、エンドソームコンパートメントまたは外因性起源に由来するペプチドもまた、MHCクラスI分子上に頻繁に見いだされる。この非古典的様式のクラスI提示は、文献中で交差提示と称される(Brossart and Bevan,1997)。MHCクラスII分子は、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)上に主に見いだされ、例えば、エンドサイトーシス中にAPCによって取り込まれ、続いてプロセシングされる、外因性タンパク質または膜貫通タンパク質のペプチドを主に提示する。
【0018】
ペプチドとMHCクラスIの複合体が、適切なT細胞受容体(TCR)を有するCD8陽性T細胞によって認識される一方で、ペプチドとMHCクラスII分子の複合体は、適切なTCRを有するCD4陽性ヘルパーT細胞によって認識される。その結果、TCR、ペプチド、およびMHCは、化学量論的に1:1:1の量で存在することが良く知られている。
【0019】
CD4陽性ヘルパーT細胞は、CD8陽性細胞傷害性T細胞による、効果的な応答を誘導し維持する上で重要な役割を果たす。腫瘍関連抗原(TAA)に由来するCD4陽性T細胞エピトープの同定は、抗腫瘍免疫応答を始動させる医薬品の開発に非常に重要である(Gnjatic et al.,2003)。腫瘍部位では、Tヘルパー細胞が、細胞傷害性T細胞(CTL)親和性サイトカイン環境を維持して(Mortara et al.,2006)、例えば、CTL、ナチュラル、キラー(NK)細胞、マクロファージ、および顆粒球などのエフェクター細胞を引きつける。
【0020】
炎症不在下では、MHCクラスII分子の発現は、免疫系の細胞、特に、例えば、単球、単球由来細胞、マクロファージ、樹状細胞などのプロフェショナル抗原提示細胞(APC)に主に限定される。がん患者においては、腫瘍細胞がMHCクラスII分子を発現することが判明している(Dengjel et al.,2006)。伸長された(より長い)本明細書のペプチドは、MHCクラスII活性エピトープとして作用し得る。
【0021】
MHCクラスIIエピトープによって活性化されたTヘルパー細胞は、抗腫瘍免疫におけるCTLのエフェクター機能を統合するのに重要な役割を果たす。TH1型のTヘルパー細胞応答を始動するTヘルパー細胞エピトープは、それらの細胞表面に腫瘍関連ペプチド/MHC複合体を提示する腫瘍細胞に向けられた細胞傷害機能をはじめとする、CD8陽性キラーT細胞のエフェクター機能を支持する。このようにして腫瘍関連Tヘルパー細胞ペプチドエピトープは、単独で、またはその他の腫瘍関連ペプチドとの組み合わせで、抗腫瘍免疫応答を刺激するワクチン組成物の活性医薬品成分の役割を果たし得る。
【0022】
例えば、マウスなどの哺乳類動物モデルにおいて、CD8陽性Tリンパ球の不在下であってさえも、インターフェロンγ(IFNγ)の分泌による血管新生阻害を通じて腫瘍発現を阻害するには、CD4陽性T細胞で十分であることが示された。CD4 T細胞が、直接抗腫瘍エフェクターであるという証拠がある(Tran et al.,2014)。
【0023】
HLAクラスII分子の構成的発現は、通常、免疫細胞に限定されるので、原発性腫瘍からクラスIIペプチドを直接単離する可能性があり得るとは、これまで考えられなかった。しかし、Dengjel et al.は、いくつかのMHCクラスIIエピトープを腫瘍から直接、成功裏に同定した(国際公開第2007/028574号パンフレット、欧州特許第1760088B1号明細書)。
【0024】
CD8およびCD4依存性の双方のタイプの応答は、抗腫瘍効果に共同して相乗的に寄与するので、CD8+T細胞(リガンド:MHCクラスI分子+ペプチドエピトープ)、またはCD4陽性Tヘルパー細胞(リガンド:MHCクラスII分子+ペプチドエピトープ)のどちらかによって認識される、腫瘍関連抗原の同定および特性解析は、腫瘍ワクチンの開発にとって重要である。
【0025】
MHCクラスIペプチドが、細胞性免疫応答を始動(惹起)するためには、それはまた、MHC分子に結合しなくてはならない。この過程は、MHC分子の対立遺伝子と、ペプチドのアミノ酸配列の特定の多型性とに依存する。MHCクラスI結合ペプチドは、通常は8~12アミノ酸残基長であり、通常は、MHC分子の対応する結合溝と相互作用するそれらの配列中に、2つの保存残基(「アンカー」)を含有する。このようにして、各MHC対立遺伝子は、どのペプチドが結合溝と特異的に結合し得るかを決定する、「結合モチーフ」を有する。
【0026】
MHCクラスI依存免疫反応において、ペプチドは腫瘍細胞によって発現される特定のMHCクラスI分子に結合できるだけでなく、それらはまた、引き続いて特異的T細胞受容体(TCR)を有するT細胞によって認識されなくてはならない。
【0027】
タンパク質が、Tリンパ球によって腫瘍特異的または腫瘍関連抗原として認識され、治療で利用されるためには、特定の必要条件が満たされなくてはならない。抗原は、主に腫瘍細胞によって発現され、健常組織によって発現されず、または比較的少量発現されるべきである。好ましい実施形態では、ペプチドは、健常組織と比較して、腫瘍細胞によって過剰提示されるべきである。それぞれの抗原は、ある種の腫瘍に存在するだけでなく、高い濃度(すなわち、それぞれのペプチド細胞当たりのコピー数)で存在することもさらに望ましい。腫瘍特異的および腫瘍関連抗原は、例えば、細胞周期調節またはアポトーシス抑制における機能のために、正常細胞から腫瘍細胞への形質転換に直接関与するタンパク質に由来することが多い。さらに、形質転換の直接原因となるタンパク質の下流標的が、上方制御されてもよく、したがって間接的に腫瘍関連であってもよい。このような間接的腫瘍関連抗原もまた、ワクチン接種アプローチの標的であってもよい(Singh-Jasuja et al.,2004)。このようなペプチド(「免疫原性ペプチド」)が、腫瘍関連抗原に由来して、生体外または生体内T細胞応答をもたらすことを確実にするためには、抗原のアミノ酸配列内にエピトープが存在することが必須である。
【0028】
したがって、TAAは、腫瘍ワクチンをはじめとするが、これに限定されるものではない、T細胞ベースの治療法開発の出発点である。TAAを同定し特性決定する方法は、通常は、患者または健常人から単離され得るT細胞の使用に基づき、またはそれらは、腫瘍と正常組織との間の示差的転写プロファイル、またはペプチド発現パターンの生成に基づく。しかし、腫瘍組織またはヒト腫瘍細胞株において過剰発現され、またはこのような組織または細胞株において選択的に発現される遺伝子の同定は、免疫療法においてこれらの遺伝子から転写される抗原の使用に関する、正確な情報を提供しない。それは、これらの抗原のエピトープの個々の亜集団のみが、このような用途に適するためであり、その理由は、対応するTCRを有するT細胞が存在しなくてはならず、この特定のエピトープに対する免疫寛容が不在または最小でなくてはならないからである。したがって本明細書の非常に好ましい実施形態では、それに対する機能性および/または増殖性T細胞が見いだされる、過剰にまたは選択的に提示されるペプチドのみを選択することが、重要である。このような機能性T細胞は、特異的抗原による刺激時にクローン増殖され得て、エフェクター機能を果たすことができるT細胞(「エフェクターT細胞」)と定義される。
【0029】
本明細書による特異的TCR(例えば可溶性TCR)および抗体またはその他の結合分子(スキャフォールド)によってペプチドMHCを標的化する場合、基礎となるペプチドの免疫原性は二次的である。これらの場合には、提示が決定要因である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
したがって、上記および他のがんにおける類似の状況を考慮して、胃がん、前立腺がん、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、急性骨髄性白血病(AML)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、大腸がん/結腸直腸がん、神経膠芽腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮頸がん、ヒト乳がん、前立腺がん、結腸がん、膵臓がん、膵管腺がん、卵巣がん、肝細胞がん、肝臓がん、異なる表現型の脳腫瘍、急性リンパ芽球性白血病(ALL)などの白血病、肺がん、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、食道がん、口腔がん、膀胱がん、卵巣がん、腎細胞がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、脳腫瘍、唾液管がん、子宮頸がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および肺および乳房の悪性固形腫瘍、およびその他の腫瘍のための新しい有効かつ安全な治療選択肢、重度の副作用をもたらすこともある化学療法剤またはその他の薬剤を使用することなく、患者の健康を最適に増強することに対する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
国際公開第2015/187040号パンフレットは、アミノスフィンゴ糖脂質類似体およびそのペプチド誘導体、これらの化合物を含んでなる組成物、このような化合物を使用して、疾患または病状、特にがん、感染症、アトピー性疾患、自己免疫疾患または糖尿病に関連する疾患または病状を治療または予防する方法に関する。KIQEILTQVは配列番号377であり、その配列内に、MHC分子と結合してT細胞応答を誘導する1つまたは複数のエピトープを含有するペプチドとして開示される。
【0032】
米国特許第2012-0308590号明細書は、肺がんおよび食道がん治療のためのIMP-3552-560(インスリン様成長因子IImRNA結合タンパク質3)に属する、KIQEILTQV(配列番号3)を開示する。同様に、Tomita,Y.et al.は、IMP-3に由来するペプチドを開示している。
【0033】
米国特許第20110142919号明細書は、推定RNA結合タンパク質KOCに由来し、MSによって同定されるKIQEILTQV(配列番号409)を開示する。
【0034】
Dutoit et al.(2012)は、神経膠芽腫治療のためのKIQEILTQV(NP_006538)を開示する。
【0035】
国際公開第2007/150077号パンフレットは、卵巣がんサンプルから単離された免疫原性ペプチドを開示する。ペプチドIGF2BP3-001は、配列番号158である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
一態様では、本明細書は、配列番号1からなるアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも65%、好ましくは少なくとも77%、およびより好ましくは少なくとも85%相同的な(好ましくは少なくとも75%または少なくとも85%同一の)その変異配列を含んでなるペプチドに関する。前記変異型は、MHCと結合し、および/またはT細胞と前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩との交差反応を誘導し、前記ペプチドは、基礎となる完全長ポリペプチドでない。さらに、前記ペプチドは、IMP-3および/またはKOC由来抗原でない。
【0037】
本明細書は、配列番号1、または配列番号1と少なくとも65%、好ましくは少なくとも75%、およびより好ましくは少なくとも85%相同的な(好ましくは少なくとも75%または少なくとも85%同一の)その変異型からなる配列を含んでなる本明細書のペプチドにさらに関し、前記ペプチドまたはその変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14アミノ酸の全長を有し、前記ペプチドまたは変異型は、MHCに結合し、および/またはT細胞と前記ペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩との交差反応を誘導する。
【0038】
本明細書によるペプチドは、配列番号1、KIQEILTQVに記載のペプチドならびに本明細書に記載されるようなその変異型である。
【0039】
本明細書は、さらに、胃がん、前立腺がん、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、急性骨髄性白血病(AML)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、大腸がん/結腸直腸がん、神経膠芽腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮頸がん、ヒト乳がん、前立腺がん、結腸がん、膵臓がん、膵管腺がん、卵巣がん、肝細胞がん、肝臓がん、異なる表現型の脳腫瘍、急性リンパ芽球性白血病(ALL)などの白血病、肺がん、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、食道がん、口腔がん、膀胱がん、卵巣がん、腎細胞がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、脳腫瘍、唾液管がん、子宮頸がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および肺および乳房の悪性固形腫瘍、およびその他の腫瘍などの増殖性疾患の治療で使用するための本明細書によるペプチドに一般に関する。
【0040】
好ましいのは、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞、脳がん(例えば、神経膠芽腫、神経芽腫)、胃がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、頭頸部がん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、乳がん、メルケル細胞がん、黒色腫、卵巣がん、膀胱がん、子宮がん、胆嚢および胆管がん、および食道がんにおける使用である。より好ましいのは、膵臓がん、肝細胞がん、胃がん、および/または結腸直腸がんにおける使用である。
【0041】
特に好ましいのは、本明細書による、配列番号1からなる単独または組み合わせのペプチドである。より好ましいのは、配列番号1からなる単独または組み合わせのペプチドの胃がん、前立腺がん、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、急性骨髄性白血病(AML)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、大腸がん/結腸直腸がん、神経膠芽腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮頸がん、ヒト乳がん、前立腺がん、結腸がん、膵臓がん、膵管腺がん、卵巣がん、肝細胞がん、肝臓がん、異なる表現型の脳腫瘍、急性リンパ芽球性白血病(ALL)などの白血病、肺がん、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、食道がん、口腔がん、膀胱がん、卵巣がん、腎細胞がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、脳腫瘍、唾液管がん、子宮頸がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および肺および乳房の悪性固形腫瘍、およびその他の腫瘍の免疫療法におけるそれらの使用である。
【0042】
IGF2BP1遺伝子は、インスリン様成長因子2mRNA結合タンパク質ファミリーのメンバーをコードする。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、4つのK相同性ドメインおよび2つのRNA認識モチーフを含有する。それはインスリン様成長因子2、βアクチン、およびβトランスデューシンリピート含有タンパク質をはじめとする特定遺伝子のmRNAに結合し、それらの翻訳を調節することによって機能する。この遺伝子について、異なるイソ型をコードする2つの転写変異体が判明している。IGF2BP1遺伝子は、染色体17q21.32にマッピングされる。この遺伝子座の580kb微小欠失は、精神遅滞、小頭症、口蓋裂、および心奇形に関連する(Rooryck et al.,2008)。
【0043】
IGF2BP1は、多岐にわたる様々ながん実体において過剰発現される。乳がんでは、中度(30%)および高度(5%)のIGF2BP1遺伝子増幅、ならびにIGF2BP1の増幅非依存性過剰発現が検出されている(Doyle et al.,2000;Ioannidis et al.,2003)。Rossらが行った結腸直腸がん研究では、結腸直腸がん標本の大部分(81%)で過剰発現していたIGF2BP1が、正常結腸組織ではわずかであるか不在であった(Ross et al.,2001)。Ioannidisらは、結腸がん(1/1)、前立腺がん(1/4)、乳がん(3/4)、異なる肉腫(24/33)、単球性白血病(1/2)、12/24悪性神経上皮腫瘍、2/5良性神経上皮腫瘍、および4/15非小細胞細胞肺がんなどのがん型パネルにおけるIGF2BP1発現の証拠を提供する(Ioannidis et al.,2001;Ioannidis et al.,2004)。さらに、IGF2BP1は、卵巣の腺がんおよび低悪性潜在的腫瘍(Gu et al.,2004)および卵巣漿液がん滲出液(Davidson et al.,2014)ならびに肝細胞がん(2/7患者)(Himoto et al.,2005;Gutschner et al.,2014)、絨毛がん(Hsieh et al.,2013)、神経芽腫(Bell et al.,2015)、および横紋筋肉腫(Faye et al.,2015)において過剰発現されることが示された。IGF2BP1発現の上方制御は、前浸潤性精巣上皮内がん、古典的および精母細胞セミノーマ、および未分化胚性がんのような異なる精巣新生物でさらに記載されている(Hammer et al.,2005)。急性リンパ芽球性白血病では、IGF2BP1の過剰発現は、ETC6/RUNX1-陽性腫瘍のサブグループに特徴的なようである(Stoskus et al.,2011)。悪性黒色腫では、IGF2BP1の発現増加が、Wnt/βカテニンシグナル伝達経路の過剰活性に関連することが示された(Elcheva et al.,2008)。基底細胞がんにおけるIGF2BP2の過剰発現は、Wntの活性化ならびにヘッジホッグシグナル伝達と相関する(Noubissi et al.,2014)。
【0044】
高いIGF2BP1レベルは、様々ながん実体における予後不良に関連しているように見える。IGF2BP1の過剰発現は、卵巣がん患者における再発のない生存および全生存の減少と有意に相関することが示された(Gu et al.,2004;Kobel et al.,2007)。さらに、IGF2BP1の陽性免疫染色は、肺がんを有する患者における腫瘍の大きさ、非高分化型腫瘍グレード、および予後不良と相関する(Kato et al.,2007)。結腸直腸がんでは、IGF2BP1発現は、転移形成および再発の増加ならびにより短い生存時間に関連することが見いだされた。(Dimitriadis et al.,2007)。IGF2BP1の過剰発現は、肝細胞がんにおける予後不良(Zhou et al.,2015b)神経芽腫における全体的な患者生存率の低下(Bell et al.,2015)に関連する。IGF2BP1の過剰メチル化は、髄膜腫における侵襲性疾患表現型に関連することが示された(Vengoechea et al.,2013)。IGF2BP1発現は、卵巣がん、結腸直腸がん、および神経芽腫における進行した病期に関連することが示された。Koebelらは、高悪性度および後期の卵巣がん検体における、高いIGF2BP1発現レベルの優先的な検出を報告する(Kobel et al.,2007)。結腸直腸がんでは、IGF2BP1染色の出現頻度および強度が、リンパ節転移への疾患進行と共に高まることが示された。高レベルのIGF2BP1タンパク質は、結腸直腸がんリンパ節転移の97%で検出され、原発性がんにおける発現レベルは、リンパ節転移の存在とはっきりと相関する(Vainer et al.,2008)。神経芽腫では、IGF2BP1発現は第4病期のがんと関連していた(Bell et al.,2015)。
【0045】
本明細書は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIの分子に結合する能力を有し、または長さ変異型などの伸長(より長い)形態では、MHCクラスIIに結合する能力を有する、本明細書によるペプチドにさらに関する。
【0046】
本明細書は、本明細書によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは(それぞれ)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含んでなり、それからなり、またはそれから本質的になる。
【0047】
本明細書は、本明細書によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、修飾され、および/または非ペプチド結合を含む。
【0048】
本明細書は、本明細書によるペプチドにさらに関し、前記ペプチドは、特にHLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)のN末端アミノ酸に融合した、または例えば樹状細胞に対して特異的な抗体などの抗体(またはその配列中)に融合した、融合タンパク質の一部である。
【0049】
本明細書は、本明細書によるペプチドをエンコードする核酸にさらに関する。本明細書は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせである、本明細書による核酸にさらに関する。
【0050】
本明細書は、本明細書による核酸を発現でき、および/または発現する、発現ベクターにさらに関する。
【0051】
本明細書は、疾患の治療および医療で、特にがんの治療で使用するための本明細書にるペプチド、本明細書による核酸、または本明細書による発現ベクターにさらに関する。
【0052】
本明細書は、本明細書によるペプチドに対して、または前記本発明によるペプチドとMHCの複合体に対して特異的な対抗と、それらを生産する方法とにさらに関する。
【0053】
本明細書は、前述のような本明細書による核酸または発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。
【0054】
本明細書は、抗原提示細胞であり、好ましくは樹状細胞である、本明細書による宿主細胞にさらに関する。
【0055】
本明細書は、本明細書による宿主細胞を培養するステップと、前記宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、本明細書によるペプチドを生産する方法にさらに関する。
【0056】
本明細書は、十分な量の抗原を抗原提示細胞に接触させることで、適切な抗原提示細胞または人工抗原提示細胞の表面に発現されるクラスIまたはII MHC分子上に抗原が負荷される、本明細書による方法にさらに関する。
【0057】
本明細書は、抗原提示細胞が、配列番号1を含有する前記ペプチドを発現できおよび/または発現する発現ベクターを含んでなり、好ましくは配列番号1、または変異アミノ酸配列を含有する、本明細書による方法にさらに関する。
【0058】
本明細書は、本明細書による方法によって生産される活性化T細胞にさらに関し、前記T細胞は、本明細書によるアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを発現する細胞を選択的に認識する。
【0059】
本明細書は、本明細書によって生産されるT細胞の有効数を患者に投与するステップを含んでなる、患者において、本明細書による任意のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドを異常に発現する標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0060】
本明細書は、薬剤としてのまたは薬剤の製造における、記載される任意のペプチド、本明細書による核酸、本明細書による発現ベクター、本明細書による細胞、本明細書による活性化Tリンパ球、T細胞受容体または抗体またはその他のペプチド結合分子および/またはペプチド-MHC結合分子の使用にさらに関する。好ましくは、前記薬剤は、がんに対して有効である。
【0061】
好ましくは、前記薬剤は、可溶性TCRまたは抗体に基づく、細胞療法、ワクチンまたはタンパク質である。
【0062】
本明細書はさらに、本明細書による使用に関し、前記がん細胞は、胃がん、前立腺がん、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、急性骨髄性白血病(AML)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、大腸がん/結腸直腸がん、神経膠芽腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮頸がん、ヒト乳がん、前立腺がん、結腸がん、膵臓がん、膵管腺がん、卵巣がん、肝細胞がん、肝臓がん、異なる表現型の脳腫瘍、急性リンパ芽球性白血病(ALL)などの白血病、肺がん、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、食道がん、口腔がん、膀胱がん、卵巣がん、腎細胞がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、脳腫瘍、唾液管がん、子宮頸がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および肺および乳房の悪性固形腫瘍、およびその他の腫瘍に由来する。
【0063】
本明細書は、がん、好ましくは非小細胞肺がんの診断において使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本明細書によるペプチドをベースとするバイオマーカーにさらに関する。マーカーは、ペプチドそれ自体の過剰提示、または対応遺伝子の過剰発現であり得る。マーカーはまた、好ましくは免疫療法、最も好ましくはバイオマーカーによって同定されるのと同じ標的を標的化する免疫療法である、治療の成功確率を予測するために使用されてもよい。例えば、抗体または可溶性TCRを使用して腫瘍切片が染色され、MHCと複合体形成した目的ペプチドの存在が検出され得る。任意選択的に、抗体は、免疫刺激ドメインまたは毒素などのさらなるエフェクター機能を保有する。
【0064】
本明細書は、前記標的の少なくとも1つを認識するTCRを同定するための、好ましくはT細胞を活性化する前記TCRを同定するための、これらの新規標的の使用にさらに関する。
【0065】
本明細書はまた、がん治療の文脈におけるこれらの新規標的の使用に関する。
【0066】
本発明はさらに、TCR、個々のTCRサブユニット(単独または組み合わせ)、およびそのサブドメイン、特に可溶性TCR(sTCR)およびクローニングされたTCRを生産するための本発明のペプチドの使用にさらに関し;前記TCRは自己由来または同種異系T細胞に組み込まれ、同TCR、ならびに前記TCRを保有しまたは前記TCRと交差反応するその他の細胞を生産する方法にさらに関する。
【0067】
本明細書は、TCRタンパク質、個々のTCRサブユニット(単独または組み合わせ)、およびそのサブドメインにさらに関し、特に、TCRα鎖可変ドメインおよびTCRβ鎖可変ドメインを含んでなるKIQEILTQV(配列番号1)-HLA-A02複合体と結合する、可溶性TCR(sTCR)およびクローン化TCRPにさらに関する。
【0068】
本明細書は、本明細書のTCRをコードするヌクレオチド配列を含んでなる、単離核酸にさらに関する。本明細書はさらに、TCRα鎖、β鎖、またはその双方をコードする核酸を含む組換え発現ベクターに関する。本明細書は、本明細書に従って生産されたTCRα鎖、β鎖、またはその双方をコードする核酸を含んでなる組換え発現ベクターにさらに関する。
【0069】
本明細書はさらに、本明細書のTCRα鎖、β鎖、またはその双方をコードする核酸を発現する組換え発現ベクターを含んでなる、単離された宿主細胞に関する。
【0070】
本明細書は、本明細書の組換え発現ベクターを含んでなる単離された宿主細胞にさらに関し、好ましくはその中で細胞は末梢血リンパ球(PBL)である。
【0071】
本明細書は、本明細書の組換え発現ベクターを含んでなる単離されたPBLにさらに関し、PBLは、CD8+T細胞またはCD4+T細胞である。
【0072】
本明細書は、本明細書の少なくとも1つの宿主細胞を含んでなる細胞集団にさらに関する。
【0073】
本明細書は、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、腎細胞、脳がん、胃がん、結腸直腸がん、肝細胞がん、膵臓がん、前立腺がん、白血病、乳がん、メルケル細胞がん、黒色腫、卵巣がん、膀胱がん、子宮がん、胆嚢および胆管がん、および食道がんなどの増殖性疾患の治療で使用するための本明細書のTCRタンパク質にさらに関する。
【0074】
免疫応答の刺激は、宿主免疫系によって外来性として認識された抗原の存在に依存する。腫瘍関連抗原の存在の発見は、宿主の免疫系を用いて腫瘍増殖に介入する可能性を高めた。免疫系の体液性および細胞性アームの双方を活用する様々な機構が、がん免疫療法のために目下探求されている。
【0075】
細胞性免疫応答の特異的要素は、腫瘍細胞を特異的に認識して破壊できる。腫瘍浸潤性細胞集団からの、または末梢血からのT細胞の単離は、がんに対する自然免疫防御において、このような細胞が重要な役割を果たすことを示唆する。特に、細胞質ゾル内に位置するタンパク質または欠陥リボソーム産物(DRIPS)に由来する、通常は8~10アミノ酸残基の主要組織適合性複合体(MHC)保有ペプチドのクラスI分子を認識するCD8陽性T細胞が、この応答において重要な役割を果たす。ヒトのMHC分子はまた、ヒト白血球抗原(HLA)とも称される。
【0076】
「T細胞応答」という用語は、生体外または生体内でペプチドによって誘導される、エフェクター機能の特異的増殖および活性化を意味する。MHCクラスI拘束性細胞傷害性T細胞では、エフェクター機能は、ペプチドパルスされた、ペプチド前駆体パルスされた、または天然のペプチド提示標的細胞の溶解;好ましくはペプチドによって誘導されるインターフェロン-γ、TNF-α、またはIL-2であるサイトカインの分泌;好ましくはペプチドによって誘導されるグランザイムまたはパーフォリンであるエフェクター分子の分泌;または脱顆粒であってもよい。
【0077】
「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって互いに連結される、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。ペプチドは、好ましくは9アミノ酸長であるが、8アミノ酸長程度に短くあり得て、10、11、または12以上に長くあり得て、MHCクラスIIペプチド(本明細書のペプチドの伸長された変異型)の場合、それらは13、14、15、16、17、18、19または20アミノ酸長以上に長くあり得る。
【0078】
さらに「ペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって互いに連結される、一連のアミノ酸残基の塩を含むものとする。好ましくは、塩は、例えば、塩化物塩または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などの、ペプチドの薬学的に許容可能な塩である。ペプチドは生体内で塩ではないので、本明細書によるペプチドの塩は、それらの生体内の状態がペプチドと実質的に異なることに留意すべきである。
【0079】
「ペプチド」という用語は、「オリゴペプチド」もまた含むものとする。「オリゴペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって互いに連結される、一連のアミノ酸残基を命名するために、本明細書で使用される。オリゴペプチドの長さは、その中で正しいエピトープまたはエピトープ群が保持されれば、本明細書にとって重要でない。オリゴペプチドは、典型的に、約30アミノ酸残基長未満であり、約15アミノ酸長を超える。
【0080】
「ポリペプチド」という用語は、典型的に、隣接するアミノ酸のαアミノ基とカルボニル基との間のペプチド結合によって互いに連結される、一連のアミノ酸残基を指す。正しいエピトープが保持されれば、ポリペプチドの長さは本明細書にとって重要でない。ペプチドまたはオリゴペプチドという用語とは対照的に、ポリペプチドという用語は、約30を超えるアミノ酸残基を含有する分子を指すことが意図される。
【0081】
ペプチド、オリゴペプチド、タンパク質またはこのような分子をコードするポリヌクレオチドは、免疫応答を誘導できれば「免疫原性」である(したがって本明細書における「免疫原」である)。本明細書では、免疫原性は、より具体的には、T細胞応答を誘導する能力と定義される。したがって「免疫原」は、免疫応答を誘導できる分子であり、本明細書では、T細胞応答を誘導できる分子である。別の態様では、免疫原は、それに対する特異的抗体またはTCRを生じさせるのに使用される、ペプチド、ペプチドとMHCの複合体、オリゴペプチド、および/またはタンパク質であり得る。
【0082】
クラスI T細胞「エピトープ」は、クラスI MHC受容体に結合している短いペプチドを必要とし、三成分複合体(MHCクラスIα鎖、β-2-ミクログロブリン、およびペプチド)を形成し、それは、適切な親和性でMHC/ペプチド複合体に結合する適合T細胞受容体を保有するT細胞によって、認識され得る。MHCクラスI分子に結合するペプチドは、典型的に8~14アミノ酸長であり、最も典型的には9アミノ酸長である。
【0083】
ヒトにおいては、MHCクラスI分子(ヒト白血球抗原(HLA)ともまた称されるヒトのMHC分子)をコードする、3つの異なる遺伝子座、HLA-A、HLA-B、およびHLA-Cがある。HLA-A01、HLA-A02、およびHLA-B07は、これらの遺伝子座から発現され得る、異なるMHCクラスI対立遺伝子の例である。
【0084】
表1:HLA-A*02およびHLA-A*24の発現頻度F、および最も高頻度のHLA-DR血清型。頻度は、ハーディ・ワインベルグの式 F = 1 - (1-Gf)&sup2;を用いて、Mori et al. (Mori et al., 1997)から適応された米国人集団内のハプロタイプ頻度Gfから推定された。連鎖不均衡のために、A*02またはA*24と特定のHLA-DR対立遺伝子との組み合わせは、それらの単一頻度から予測されるよりも、豊富でありまたは低頻度であるかもしれない。詳細については、Chanock et al.(Chanocket al,2004)を参照されたい。
【表1-1】
【表1-2】
【0085】
一実施形態では、「ヌクレオチド配列」という用語は、デオキシリボヌクレオチドのヘテロ重合体を指す。
【0086】
特定のペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、天然起源であってもよく、またはそれらは合成的に構築されてもよい。一般に、本明細書のペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質をエンコードするDNAセグメントは、cDNA断片と短いオリゴヌクレオチドリンカーとから構築され、またはひと続きのオリゴヌクレオチドから構築されて、微生物またはウイルスオペロンに由来する調節因子を含んでなる、組換え転写単位で発現できる合成遺伝子が提供される。
【0087】
本明細書の用法では「ペプチドをコーディング(またはコード)するヌクレオチド」という用語は、配列が、例えば、TCRの生産に有用な樹状細胞または別の細胞株によって発現される生体系と適合性である、人工(人造)開始および停止コドンを含むペプチドをコードする、ヌクレオチド配列を指す。
【0088】
本明細書の用法では「TCRタンパク質をコーディング(またはコード)するヌクレオチド」という用語は、配列が、例えば、TCRの生産に有用なT細胞または別の細胞株によって発現される生体系と適合性である、人工(人造)開始および停止コドンを含むTCRタンパク質をコードする、ヌクレオチド配列を指す。
【0089】
本明細書の用法では、核酸配列への言及は、一本鎖および二本鎖の核酸の双方を含む。したがって、例えば、特異的配列は、文脈上明らかに別の意味が示唆されない限り、このような配列の一本鎖DNA、このような配列とその補体との二本鎖(二本鎖DNA)、およびこのような配列の補体を指す。
【0090】
「コード領域」という用語は、その天然ゲノム環境内で、遺伝子の発現産物を天然にまたは正常にコードする遺伝子の部分、すなわち、遺伝子の天然発現産物を生体内でコードする領域を指す。
【0091】
コード領域は、非変異(「正常」)、変異または改変遺伝子に由来し得て、またはDNA合成技術の当業者に周知の方法を使用して実験室で完全に合成された、DNA配列または遺伝子にさえ由来し得る。
【0092】
「発現産物」という用語は、遺伝子の、そして遺伝コード縮重に起因する同等物をコードし、したがって同一アミノ酸をコードする任意の核酸配列の、天然翻訳産物である、ポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0093】
コード配列に言及する場合、「断片」という用語は、その発現産物が、完全コード領域の発現産物と本質的に同一の生物学的機能または活性を保つ、完全未満のコード領域を含んでなるDNAの部分を意味する。
【0094】
「DNAセグメント」という用語は、別々の断片の形態の、またはより大型のDNAコンストラクトの構成要素としての、DNAポリマーを指し、それは、実質的に純粋な、すなわち、混入内因性物質を含まない形態で、例えばクローニングベクターを使用した標準生化学的方法によって、セグメントおよびその構成ヌクレオチド配列が、同定、操作、および回収できる量または濃度で、少なくとも1回単離されたDNAに由来する。このようなセグメントは、典型的に真核生物遺伝子内に存在する内部非翻訳配列またはイントロンによって中断されていない、読み取り枠の形態で提供される。非翻訳DNA配列は、それがコード領域の操作または発現を妨げない、読み取り枠下流に存在してもよい。
【0095】
「プライマー」という用語は、短い核酸配列を意味し、それはDNAの1本鎖と対合し得て、DNAポリメラーゼがそこでデオキシリボヌクレオチド鎖合成を開始する、遊離3’-OH末端を提供する。
【0096】
「プロモーター」という用語は、転写を開始するためのRNAポリメラーゼ結合に関与する、DNAの領域を意味する。
【0097】
「単離」という用語は、物質が、その元の環境(例えば、それが天然起源であれば天然環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きている動物に存在する天然ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは単離されていないが、天然システムで共存する物質の一部または全部から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されている。一態様では、このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり、および/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組成物の一部であり、このようなベクターまたは組成物はその天然環境の一部ではないという点において、依然として単離されている。
【0098】
本明細書によって開示されるポリヌクレオチド、および組換えまたは免疫原性ポリペプチドは、「精製」形態であってもよい。「精製」という用語は、完全に純粋である必要はなく;むしろ、それは相対的定義であることが意図され、これらの用語が当業者によって理解されるように、高度に精製された調製物、または部分的にのみ精製された調製物を含み得る。例えば、cDNAライブラリーから単離された個々のクローンは、電気泳動的に均一に、従来法で精製されている。少なくとも1桁、好ましくは2または3桁、より好ましくは4または5桁までの、出発原料または天然物質の精製が明示的に検討される。さらに、重量基準で、好ましくは99.999%、または少なくとも99.99%または99.9%;さらに望ましくは99%以上の純度を有する、特許請求されるポリペプチドが明示的に包含される。
【0099】
本明細書によって開示される核酸およびポリペプチド発現産物、ならびにこのような核酸および/またはこのようなポリペプチドを含有する発現ベクターは、「富化形態」であってもよい。本明細書の用法では、「富化」という用語は、物質濃度が、(例えば)その天然濃度の少なくとも約2、5、10、100、または1000倍であることを意味し、有利には重量基準で0.01%、好ましくは重量基準で少なくとも約0.1%である。重量基準で約0.5%、1%、5%、10%、および20%の富化調製物もまた、検討される。本明細書を構成する、配列、コンストラクト、ベクター、クローン、およびその他の物質は、有利には、富化または単離形態であり得る。「活性断片」という用語は、通常は、単独で、または任意選択的に適切なアジュバントと共に、またはベクター中で、例えば、ウサギまたはマウスなどのそしてまたヒトをはじめとする哺乳類などの動物に投与されると免疫応答を生じる(すなわち、免疫原性を有する)ペプチド、ポリペプチドまたは核酸配列の断片を意味し、このような免疫応答は、ヒトなどのレシピエント動物内でT細胞応答を刺激する形態を取る。代案としては、「活性断片」はまた、生体外T細胞応答を誘導するのに使用されてもよい。
【0100】
本明細書の用法では、ポリペプチドとの関連で使用される場合、「部分」、「セグメント」、および「断片」という用語は、アミノ酸残基などの連続する残基の配列を指し、その配列はより大型の配列のサブセットを形成する。例えば、ポリペプチドが、トリプシンまたはキモトリプシンなどの一般的エンドペプチダーゼのいずれかによって処理されれば、このような処理から得られるオリゴペプチドは、出発ポリペプチドの部分、セグメントまたは断片に相当するであろう。ポリヌクレオチドに関して使用される場合、これらの用語は、いずれかのエンドヌクレアーゼによる前記ポリヌクレオチドの処理によって生じる生成物を指す。
【0101】
本明細書によると、配列に言及する場合、「同一性百分率」または「パーセント同一」という用語は、比較される配列(「比較配列」)と、記載されまたは特許請求される配列(「参照配列」)とのアライメント後に、配列が、特許請求されまたは記載される配列と比較されることを意味する。次に同一性百分率は、次式に従って判定される:
同一性百分率=100[1-(C/R)]
式中、Cは、参照配列と比較される配列との間のアライメント長にわたる、参照配列と比較配列の間の差異の数であり、
(i)比較配列中に対応する整列塩基またはアミノ酸を有しない、参照配列中の各塩基またはアミノ酸、および
(ii)参照配列中の各ギャップ、および
(iii)比較配列中の整列塩基またはアミノ酸と異なる、参照配列中の各整列塩基またはアミノ酸が差異を構成して、
(iv)アライメントは、整合配列の1位から開始しなくてはならず;
Rは、比較配列とのアライメント長にわたる参照配列中の塩基またはアミノ酸の数であり、参照配列中に生じる任意のギャップもまた、塩基またはアミノ酸として数えられる。
【0102】
比較配列と、それに対して同一性百分率が上のように計算される参照配列との間に、特定の最小同一性百分率とほぼ同じまたはそれを上回るアライメントが存在すれば、その中に、上記のように計算された同一性百分率が特定の同一性百分率未満であるアライメントが存在したとしても、比較配列は、参照配列との特定の最小同一性百分率を有する。
【0103】
したがって上述したように、本明細書は、配列番号1~配列番号10、または配列番号1~配列番号10と85%相同的であるその変異型、またはT細胞を前記ペプチドと交差反応させるその変異型からなる群から選択される配列を含んでなる、ペプチドを提供する。本明細書のペプチドは、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスI分子または前記ペプチドの伸長バージョンをクラスIIに結合する能力を有する。
【0104】
本明細書では、「相同的」という用語は、2つのアミノ酸配列、すなわちペプチドまたはポリペプチド配列の配列間の同一性の程度を指す(上の同一性百分率を参照されたい)。前述の「相同性」は、比較される配列にわたり、最適条件下でアライメントされた2つの配列を比較することで判定される。このような配列相同性は、例えばClustalWアルゴリズムを使用してアライメントを作成することで、計算され得る。一般に利用できる配列解析ソフトウェア、より具体的には、Vector NTI、GENETYXまたはその他のツールが、公共データベースによって提供される。
【0105】
当業者は、特定のペプチドの変異型によって誘導されるT細胞が、ペプチドそれ自体と交差反応できるかどうかを評価できるであろう(Appay et al.,2006;Colombetti et al.,2006)。
【0106】
所与のアミノ酸配列の「変異型」によって、本発明者らは、ペプチドが、配列番号1からなる所与のアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同様にHLA分子となおも結合できるように、(例えば、それらを別の天然アミノ酸残基の側鎖で、またはその他の側鎖で置換することにより)例えば、アミノ酸の1つまたは2つの残基の側鎖が変化することを意味する。好ましいのは、KIQEILTQV(配列番号1)である。例えば、ペプチドは、それがHLA-A02または-DRなどの適切なMHC分子の結合溝と相互作用して結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持するように修飾されてもよく、このようにしてそれは、活性化T細胞のTCRに結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持する。同様に、TCRタンパク質は、HLA-A02またはHLA-DRなどの適切なMHC分子/KIQEILTQV(配列番号1)複合体と相互作用して結合する能力を改善せずとも、少なくとも維持するように修飾されてもよく、このようにしてそれは、T細胞を活性化する能力を改善せずとも、少なくとも維持する。
【0107】
これらのT細胞は、本明細書の態様で定義されているように、引き続いて細胞と交差反応して、KIQEILTQV(配列番号1)などの同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞を死滅させ得る学術文献およびデータベース(Rammensee et al.,1999;Godkin et al.,1997)から演繹され得るように、HLA結合ペプチドの特定の位置は、典型的にアンカー残基であり、結合溝を構成するポリペプチド鎖の極性、電気物理的、疎水性、および空間特性によって画定されるHLA受容体の結合モチーフと適合する、コア配列を形成する。したがって、当業者は、既知のアンカー残基を保つことで、配列番号1に記載されるアミノ酸配列を修飾でき、このような変異型がMHCクラスIまたはII分子/KIQEILTQV(配列番号1)複合体に結合する能力を維持するかどうかを判定できるであろう。本明細書の変異型は、MHCクラスIまたはII分子/KIQEILTQV(配列番号1)複合体に結合する能力を維持する。本明細書の変異型を発現するT細胞は、引き続いて、KIQEILTQV(配列番号1)などの同族ペプチドの天然アミノ酸配列を含有するポリペプチドを発現する細胞を滅殺し得る。
【0108】
本明細書で開示される元の(未修飾)ペプチドまたはTCRタンパク質は、特に明記されない場合は、ペプチド鎖内の異なる、おそらくは選択的な部位における、1つまたは複数の残基の置換によって修飾され得る。好ましくはこれらの置換は、前記ペプチドのアミノ酸鎖の末端に位置する。TCRタンパク質では、好ましくは、これらの置換は、TCRα鎖およびTCRβ鎖の可変領域に位置する。このような置換は、保存的性質であってもよく、例えば、疎水性アミノ酸が別の疎水性アミノ酸によって置換されるなど、構造および特徴の類似したアミノ酸によってアミノ酸が置換される。さらにより保存的な置換は、ロイシンのイソロイシンによる置換などの、同一または類似サイズおよび化学的性質のアミノ酸の置換である。天然起源相同タンパク質ファミリーの配列多様性の研究では、特定のアミノ酸置換は、他よりも耐容されることが多く、これらは、元のアミノ酸とその置換物との間のサイズ、電荷、極性、および疎水性の類似性との相関を示すことが多く、これが「保存的置換」の定義の基礎である。
【0109】
保存的置換は、本明細書では、以下の5つのグループの1つの中の交換として定義される:グループ1-小型脂肪族、非極性またはわずかに極性の残基(Ala、Ser、Thr、Pro、Gly);グループ2-極性の負に帯電した残基とそれらのアミド(Asp、Asn、Glu、Gln);グループ3-極性の正に帯電した残基(His、Arg、Lys);グループ4-大型脂肪族非極性残基(Met、Leu、Ile、Val、Cys);およびグループ5-大型芳香族残基(Phe、Tyr、Trp)。
【0110】
より保存的でない置換は、アラニンのイソロイシン残基による置換などの、類似した特徴を有するが、サイズがいくらか異なる別のアミノ酸による置換を伴うかもしれない。高度に非保存的な置換は、極性アミノ酸の、または塩基性アミノ酸の酸性アミノ酸による置換を伴うかもしれない。しかし化学効果は完全に予測可能でなく、過激な置換は単純な化学的原理からは予測できない偶然の効果を生じさせる可能性があるので、このような「過激な」置換は、潜在的に無効であるとして却下され得ない。
【0111】
もちろんこのような置換には、通常のL-アミノ酸以外の構造体が関与してもよい。したがってD-アミノ酸が、本明細書の抗原性ペプチドに通常見いだされるL-アミノ酸を置換するかもしれず、依然として本明細書の開示に包含される。さらに、非標準アミノ酸(すなわち、一般的な天然タンパク質新生アミノ酸以外)もまた置換目的で使用されて、本明細書による免疫原および免疫原性ポリペプチドが生産されてもよい
【0112】
2つ以上の位置における置換が、以下に定義されるように実質的に同等のまたはそれを超える抗原活性のあるペプチドをもたらすことが判明した場合、これらの置換の組み合わせを試験して、置換の組み合わせが、ペプチドの抗原性に相加または相乗効果をもたらすかどうかが判定される。最大でも、ペプチド内の4つを超える位置が、同時に置換されることはない。
【0113】
本明細書で示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチドは、非修飾ペプチドと比較すると、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が実質的に変化したり悪影響を受けたりすることなく交換される、1つまたは2つの非アンカーアミノ酸を有し得る(アンカーモチーフについては下記を参照されたい)。別の実施形態では、本明細書で示されるようなアミノ酸配列から本質的になるペプチドにおいては、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはII分子に結合する能力が非修飾ペプチドと比較して実質的に変化したり悪影響を受けることなく、1つまたは2つのアミノ酸が、それらの保存的交換パートナー(以下を参照されたい)で交換され得る。
【0114】
TCRとの相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、その組み込みが、T細胞反応性に実質的に影響を及ぼさず、関連MHCとの結合を排除しない、その他のアミノ酸での置換によって修飾され得る。したがって与えられた但し書きを除いて、本発明のペプチドは、与えられたようなアミノ酸配列またはそれらの部分または変異型を含む、任意のペプチド(本発明者らは、その用語にオリゴペプチドまたはポリペプチドを含める)であってもよい。
【0115】
表2:本発明のペプチドの変異型
【表2】
【0116】
より長い(伸長された)ペプチドもまた、適切であってもよい。MHCクラスIエピトープは、通常は実際のエピトープであるが、プロセシング中に実際のエピトープを曝露するのに必要なタンパク質分解性切断に実質的に影響を及ぼさない残基である可能性もある。
【0117】
記載のペプチドは、4つまでのアミノ酸によって伸長され得て、すなわち、1、2、3または4つのアミノ酸が、8~11アミノ酸長の任意の組み合わせで、どちらかの末端に付加され得て、実際のエピトープを含むより長いペプチドまたはタンパク質からのペプチドプロセシングによって生成される。4:0~0:4の間の側面に位置する残基が好ましい。本明細書による伸長の組み合わせは、表3にある。
【0118】
表3:記述のペプチドの伸長の組み合わせ
【表3】
【0119】
伸長/延長のためのアミノ酸は、元のタンパク質配列のペプチドまたは任意のその他のアミノ酸であり得る。伸長を利用して、ペプチドの安定性または溶解度を高め得る。
【0120】
したがって本明細書のエピトープは、天然起源腫瘍関連または腫瘍特異的エピトープと同一であってもよく、またはそれらが実質的に同一の抗原活性を有しさえすれば、4つ以下の残基が参照ペプチドと異なるエピトープを含んでもよい。
【0121】
代案の実施形態では、ペプチドは、4つを超えるアミノ酸で、好ましくは最大30アミノ酸の全長まで、片側または両側で伸長される。これは、MHCクラスII結合ペプチドをもたらしてもよい。MHCクラスIIへの結合は、当該技術分野で公知の方法によって試験される得る。
【0122】
したがって、本明細書は、MHCクラスIエピトープのペプチドおよび変異型を提供し、ペプチドまたは変異型は、8~100、好ましくは8~30、最も好ましくは8~14、すなわち8、9、10、11、12、13、14アミノ酸の全長を有し、伸長されたクラスII結合ペプチドの場合、長さはまた、15、16、17、18、19、20、21または22アミノ酸であり得る。
【0123】
もちろん、本明細書によるペプチドまたは変異型は、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIの分子に結合する能力を有する。ペプチドまたは変異型のMHC複合体への結合は、当該技術分野で既知の方法によって試験されてもよい。
【0124】
好ましくは、本明細書によるペプチドに特異的なT細胞を置換ペプチドについて試験する場合、置換ペプチドが背景に対して最大溶解増加の半分を達成するペプチド濃度は、約1mM以下、好ましくは約1μM以下、より好ましくは約1nM以下、さらにより好ましくは約100pM以下、最も好ましくは約10pM以下である。置換ペプチドが、2人以上、少なくとも2人、より好ましくは3人の個人からのT細胞によって認識されることもまた好ましい。
【0125】
腫瘍特異的TCRの親和性増強とその利用は、最適TCR親和性のウィンドウの存在に依存する。このようなウィンドウの存在は、HLA-A2拘束性病原体に対して特異的なTCRが、HLA-A2拘束性腫瘍関連自己抗原に対して特異的なTCRと比較して、一般に約10分の1のKD値を有するという観察に基づく(Aleksic et al.2012;Kunert et al.2013)。腫瘍抗原は免疫原性である可能性を有するが、腫瘍は個人自身の細胞から生じるので、改変された翻訳プロセッシングのある変異タンパク質またはタンパク質のみが、免疫系によって異質と見なされることが今や知られている。上方制御されまたは過剰発現される抗原(いわゆる自己抗原)は、腫瘍に対する機能性免疫応答を必ずしも誘導しない。これらの抗原に対して高度に反応性であるTCRを発現するT細胞は、中枢性免疫寛容として知られているプロセスにおいて胸腺内で負に選択され(Xing et al.2012;Ruella et al.2014;Sharpe et al.2015)、すなわち、自己抗原に対する低親和性TCRを有するT細胞のみが残留する。したがって、MAG-003に対する本明細書のTCRまたは変異型の親和性は、以下に記載されるように、当該技術分野で周知の方法によって増強された。
【0126】
「医薬組成物」は、医学的状況においてヒトへの投与に適する組成物である。好ましくは、医薬組成物は無菌であり、GMPガイドラインに準拠して製造される。
【0127】
医薬組成物は、遊離形態または薬学的に許容可能な塩の形態のどちらかのペプチドまたはTCRタンパク質を含んでなる(上記もまた参照されたい)。本明細書の用法では、「薬学的に許容可能な塩」は、開示されたペプチドの誘導体を指し、ペプチドは、薬剤の酸性塩または塩基性塩を生成することで修飾される。例えば、適切な酸との反応を伴って、遊離塩基(典型的には中性形態の薬物が中性の-NH2基を有する)から酸性塩が調製される。酸性塩を調製するための適切な酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸、ならびに例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸リン酸などの無機酸の双方が挙げられる。逆に、ペプチド上に存在してもよい酸部分の塩基性塩の調製物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなどの薬学的に許容可能な塩基を使用して調製される。
【0128】
本発明の別の実施形態は、非天然ペプチドに関し、前記ペプチドは、配列番号1~配列番号10に記載のアミノ酸配列からなり、またはそれから本質的になり、薬学的に許容可能な塩として合成的に生産される(例えば、合成される)。ペプチドを合成的に生産する方法は、当該技術分野で周知である。生体内で産生されるペプチドは塩でないため、本発明によるペプチドの塩は、ペプチドの生体内での状態と実質的に異なる。ペプチドの非天然塩形態は、特に、ペプチドを含んでなる医薬組成物、例えば、本明細書で開示されるペプチドワクチンなどの文脈で、ペプチドの溶解性を媒介する。治療される対象にペプチドを効率的に提供するためには、ペプチドの十分で少なくとも実質的な溶解性が必要である。好ましくは、塩は、ペプチドの薬学的に許容可能な塩である。本発明によるこれらの塩としては、ア二オンとしてのPO 3-、SO 2-、CHCOO、Cl、Br、NO 、ClO 、I、SCN、およびカチオンとしてのNH 、Rb、K、Na、Cs、Li、Zn2+、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Cu2+およびBa2+を含んでなるホフマイスター系列の塩類などのアルカリ塩およびアルカリ土類塩類が挙げられる。特に塩類は、(NHPO、(NHHPO、(NH)HPO、(NHSO、NHCHCOO、NHCl、NHBr、NHNO、NHCIO、NHI、NHSCN、RbPO、RbHPO、RbHPO、RbSO、RbCHCOO、RbCl、RbBr、RbNO、RbCIO、RbI、RbSCN、KPO、KHPO、KHPO、KSO、KCHCOO、KCl、KBr、KNO、KClO、KI、KSCN、NaPO、NaHPO、NaHPO、NaSO、NaCHCOO、NaCl、NaBr、NaNO、NaCIO、NaI、NaSCN、ZnCICsPO、CsHPO、CsHPO、CsSO、CsCHCOO、CsCl、CsBr、CsNO、CsCIO、CsI、CsSCN、LiPO、LiHPO、LiHPO、LiSO、LiCHCOO、LiCl、LiBr、LiNO、LiClO、LiI、LiSCN、CuSO、Mg(PO、MgHPO、Mg(HPO、MgSO、Mg(CHCOO)、MgCl、MgBr、Mg(NO、Mg(ClO、MgI、Mg(SCN)、MnCl、Ca(PO)、CaHPO、Ca(HPO、CaSO、Ca(CHCOO)、CaCl、CaBr、Ca(NO、Ca(ClO、CaI、Ca(SCN)、Ba(PO、BaHPO、Ba(HPO、BaSO、Ba(CHCOO)、BaCl、BaBr、Ba(NO、Ba(ClO、BaI、andBa(SCN)から選択される。特に好ましいのは、例えば、塩化物塩または酢酸塩(トリフルオロ酢酸塩)などのNH酢酸塩、MgCl、KHPO、NaSO、KCl、NaCl、およびCaClである。
【0129】
特に好ましい一実施形態では、医薬組成物は、酢酸(酢酸塩)、トリフルオロ酢酸または塩酸(塩化物)の塩としてのペプチドまたはTCRタンパク質を含んでなる。
【0130】
本明細書のさらなる態様は、本明細書のペプチドまたはペプチド変異型をコードする核酸(例えばポリヌクレオチド)、およびTCRタンパク質およびTCR変異型を提供する。ポリヌクレオチドは、それがペプチドをコードしさえすれば、例えば、一本鎖および/または二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよく、または例えばホスホロチオエート主鎖を有するポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドの未変性または安定化形態であってもよく、それはイントロンを含有してもまたはしなくてもよい。もちろん、天然起源ペプチド結合によって連結する天然アミノ酸残基を含有するペプチドのみが、ポリヌクレオチドによってエンコードされ得る。本明細書のなおもさらなる態様は、本明細書によるポリペプチドを発現できる発現ベクターを提供する。
【0131】
例えば相補的付着端を通じて、ポリヌクレオチド、特にDNAをベクターに連結する、多様な方法が開発されている。例えば、ベクターDNAに挿入されるDNAセグメントに、相補的ホモポリマー配列が付加され得る。次に、相補的ホモポリマー尾部間の水素結合によって、ベクターおよびDNAセグメントが連結されて、組換えDNA分子が形成する。
【0132】
1つまたは複数の制限部位を含有する合成リンカーは、DNAセグメントをベクターに連結する代替え方法を提供する。多様な制限エンドヌクレアーゼ部位を含有する合成リンカーは、米国コネチカット州ニューヘイブンのInternational Biotechnologies Inc.をはじめとするいくつかの供給元から商業的に入手できる。
【0133】
本明細書のポリペプチドをコードするDNAを修飾する望ましい方法は、Saiki RK,et al.(Saiki et al.,1988)で開示されるようなポリメラーゼ連鎖反応を用いる。この方法は、例えば、適切な制限部位を遺伝子操作することで、DNAを適切なベクターに導入するために使用されてもよく、またはそれは、当該技術分野で既知のその他の有用な様式でDNAを修飾するために使用されてもよい。ウイルスベクターを使用するのであれば、ポックスウイルスまたはアデノウイルスベクターが好ましい。
【0134】
次に、DNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)が適切な宿主において発現され、本明細書のペプチドまたは変異型を含んでなるポリペプチドが生産されてもよい。このようにして、本明細書に含まれる教示を考慮して適切に修正された既知の技術に従って、本明細書のペプチドまたは変異型をコードするDNAを使用して、発現ベクターが構築されてもよく、次にそれを使用して、本明細書のポリペプチドの発現および生産のために、適切な宿主細胞が形質転換される。このような技術としては、例えば、米国特許第4,440,859号明細書、米国特許第4,530,901号明細書、米国特許第4,582,800号明細書、米国特許第4,677,063号明細書、米国特許第4,678,751号明細書、米国特許第4,704,362号明細書、米国特許第4,710,463号明細書、米国特許第4,757,006号明細書、米国特許第4,766,075号明細書、および米国特許第4,810,648号明細書で開示されるものが挙げられる。
【0135】
本発明明細書の化合物を構成するポリペプチドをエンコードするDNA(またはレトロウイルスベクターの場合はRNA)は、適切な宿主への導入のために、多種多様なその他のDNA配列に連結されてもよい。コンパニオンDNAは、宿主の性質、DNAの宿主への導入様式、およびエピソームの維持または組み込みが所望されるかどうかに左右される。
【0136】
一般に、DNAは、発現のための適切な方向および正しい読み枠で、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要ならば、DNAは、所望の宿主によって認識される適切な転写および翻訳調節制御ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような制御は、一般に発現ベクター中で利用できる。次に、標準的な技術を通じて、ベクターが宿主に導入される。一般に、全ての宿主がベクターによって形質転換されるわけではない。したがって、形質転換された宿主細胞を選択することが必要になる。一選択技術は、抗生物質耐性などの形質転換細胞内で選択可能な形質をコードする、任意の必要な制御因子を有するDNA配列を発現ベクター内に組み込むことを伴う。
【0137】
代案としては、このような選択可能な形質の遺伝子は、所望の宿主細胞を同時形質転換するのに使用される、別のベクター上にあり得る。
【0138】
次に、本明細書で開示される教示を考慮して、当業者に知られている適切な条件下で十分な時間にわたり、本発明の組換えDNAによって形質転換された宿主細胞が培養されてポリペプチドが発現され、次にそれが回収され得る。
【0139】
細菌(例えば大腸菌(E.coli)およびバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、酵母(例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌(例えばアスペルギルス属(Aspergillus))、植物細胞、動物細胞、および昆虫細胞をはじめとする多数の発現系が知られている。好ましくは、発現系は、ATCC Cell Biology Collectionから入手できるCHO細胞などの哺乳類細胞であり得る。
【0140】
構成的発現のための典型的な哺乳類細胞ベクタープラスミドは、適切なポリA尾部を有するCMVまたはSV40プロモーター、およびネオマイシンなどの耐性マーカーを含んでなる。一例は、米国ニュージャージー州ピスカタウェイのPharmaciaから入手できるpSVLである。誘導性哺乳類発現ベクターの一例であるpMSGもまた、Pharmaciaから入手できる。有用な酵母プラスミドベクターは、pRS403-406およびpRS413-416であり、通常、米国郵便番号92037カリフォルニア州ラホヤのStratagene Cloning Systemsから入手できる。プラスミドpRS403、pRS404、pRS405、およびpRS406は、酵母組み込みプラスミド(YIps)であり、酵母の選択可能なマーカーHIS3、TRP1、LEU2、およびURA3が組み込まれている。プラスミドpRS413-416は、酵母セントロメアプラスミド(Ycps)である。CMVプロモーターベースのベクター(例えばSigma-Aldrich製)は、一過性または安定性発現、細胞質内発現または分泌、およびFRAG、3xFLAG、c-mycまたはMATの様々な組み合わせでのN末端またはC末端標識付けを提供する。これらの融合タンパク質は、組換えタンパク質を検出、精製、および分析できるようにする。二重標識融合物は、検出に融通性を与える。
【0141】
強力なヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター調節領域は、COS細胞内で、構成タンパク質発現レベルを1mg/L程度の高さに駆動する。効力がより低い細胞株では、タンパク質レベルは、典型的に約0.1mg/Lである。SV40複製起点の存在は、SV40複製許容COS細胞内で高レベルのDNA複製をもたらす。CMVベクターは、例えば、細菌細胞内のpMB1(pBR322の誘導体)複製起点、細菌におけるアンピシリン耐性選択のためのb-ラクタマーゼ遺伝子、hGHポリA、およびf1起点を含有し得る。プレプロトリプシンリーダー(PPT)配列を含有するベクターは、抗FRAG抗体、樹脂、およびプレートを使用した精製のために、培養液中へのFRAG融合タンパク質分泌を誘導し得る。多様な宿主細胞と共に使用するためのその他のベクターおよび発現系が、当該技術分野で周知である。
【0142】
別の実施形態では、本明細書の2つ以上のペプチドまたはペプチド変異型がコードされ、したがって順次発現される(「数珠玉構造」コンストラクトと同様)。その際に、ペプチドまたはペプチド変異型は、例えばLLLLLLなどの一続きのリンカーアミノ酸によって、共に連結または融合されてもよく、またはそれらの間のいかなる追加的なペプチドもなしに連結されてもよい。これらのコンストラクトはまた、がん療法のために使用され得て、MHC IとMHC IIの双方が関与する免疫応答を誘導してもよい。
【0143】
本明細書はまた、本明細書のポリヌクレオチドベクターコンストラクトで形質転換された宿主細胞にも関する。宿主細胞は、原核または真核生物のどちらかであり得る。細菌細胞は、いくつかの状況では、好ましい原核宿主細胞であってもよく、典型的には、例えば、米国メリーランド州ベセスダのBethesda Research Laboratories Inc.,から入手できる大腸菌(E.coli)DH5株、および米国メリーランド州ロックビルの米国微生物系統保存機関(ATCC)から入手できるRR1(ATCC番号31343)などの大腸菌(E.coli)株である。好ましい真核宿主細胞としては、酵母、昆虫、および哺乳類細胞、好ましくはマウス、ラット、サルまたはヒトの線維芽細胞株および結腸細胞株に由来するものなどの脊椎動物細胞が挙げられる。酵母宿主細胞としては、米国郵便番号92037カリフォルニア州ラホヤのStratagene Cloning Systemsから一般に入手できる、YPH499、YPH500、およびYPH501が挙げられる。好ましい哺乳類宿主細胞としては、ATCCからCCL61として入手できるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCからCRL1658として入手できるNIH Swissマウス胚細胞NIH/3T3、ATCCからCRL1650として入手できるサル腎臓由来COS-1細胞、およびヒト胎児由来腎細胞である293細胞が挙げられる。好ましい昆虫細胞は、バキュロウイルス発現ベクターで形質移入され得るSf9細胞である。発現のための適切な宿主細胞の選択に関する概説は、例えば、Paulina BalbasおよびArgelia Lorenceの教科書、”Methods in Molecular Biology Recombinant Gene Expression,Reviews and Protocols,”Part One,Second Edition,ISBN 978-1-58829-262-9,および当業者に知られているその他の文献にある。
【0144】
本明細書のDNAコンストラクトによる適切な細胞宿主の形質転換は、典型的に使用されるベクターのタイプに依存する周知の方法によって達成される。原核宿主細胞の形質転換に関しては、例えば、Cohen et al.(Cohen et al.,1972)および(Green and Sambrook,2012)を参照されたい。酵母細胞の形質転換は、Sherman et al.(Sherman et al.,1986)に記載される。Beggs(Beggs,1978)の方法もまた有用である。脊椎動物細胞に関しては、このような細胞を形質移入するのに有用な、例えば、リン酸カルシウムおよびDEAE-デキストランまたはリポソーム製剤などの試薬が、米国郵便番号20877メリーランド州ゲイザースバーグのLife Technologies Inc.,から入手できる。電気穿孔もまた、細胞を形質転換および/または形質移入するのに有用であり、酵母細胞、細菌細胞、昆虫細胞、および脊椎動物細胞を形質転換する技術分野で周知である。
【0145】
成功裏に形質転換細胞、すなわち本明細書のDNAコンストラクトを含有する細胞は、PCRなどの周知の技術によって同定され得る。代案としては、抗体を使用して、上清中のタンパク質の存在が検出され得る。
【0146】
例えば、細菌、酵母、および昆虫細胞などの本発明の特定の宿主細胞が、本発明のペプチドの調製において有用であることが理解されるであろう。しかしその他の宿主細胞が、特定の治療法において有用であってもよい。例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞は、それらが適切なMHC分子中に負荷されてもよいように、本明細書のペプチドを発現するために有用に使用されてもよい。したがって、本明細書は、本明細書による核酸または発現ベクターを含んでなる宿主細胞を提供する。
【0147】
好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞または抗原提示細胞である。前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)を含有する組換え融合タンパク質が負荷されたAPCは、無症候性または微小症候性転移性HRPCを治療するために、米国食品医薬品局(FDA)によって2010年4月20日に認可された(シプロイセルT)(Rini et al.,2006;Small et al.,2006)。
【0148】
本明細書のさらなる態様は、宿主細胞を培養するステップと、宿主細胞またはその培養液からペプチドを単離するステップとを含んでなる、ペプチドまたはその変異型を生産する方法を提供する。
【0149】
別の実施形態では、本明細書のTCRタンパク質、核酸または発現ベクターは、医療において使用される。例えば、ペプチドまたはその変異型は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射のために調合されてもよい。ペプチド注射の好ましい方法としては、s.c、i.d、i.p、i.m、およびi.v.が挙げられる。DNA注射の好ましい方法としては、i.d、i.m、s.c、i.p、およびi.v.が挙げられる。例えば、50μg~1.5mg、好ましくは125μg~500μgのペプチドまたはDNAの用量が投与されてもよく、それぞれのペプチドまたはDNAに左右される。この範囲の用量は、以前の治験で成功裏に使用された(Walter et al.,2012)。
【0150】
活性ワクチン接種のために使用されるポリヌクレオチドは、実質的に純粋であってもよく、または適切なベクターまたは送達系に含有されてもよい。核酸は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせであってもよい。このような核酸をデザインして導入する方法は、当該技術分野で周知である。概説は、例えば、Teufel et al.(Teufel et al.,2005)によって提供される。ポリヌクレオチドワクチンは調製が容易であるが、免疫応答誘導におけるこれらのベクターの作用機序は、完全には分かっていない。適切なベクターおよび送達系としては、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、または2つ以上のウイルスの構成要素を含有するハイブリッドベースのシステムなどのウイルスDNAおよび/またはRNAが挙げられる。非ウイルス送達系としては、カチオン性脂質およびカチオン性ポリマーが挙げられ、DNA送達技術分野において周知である。「遺伝子銃」などを介した、物理的送達もまた使用されてもよい。核酸によってコードされるペプチド(単数)またはペプチド(複数)は、例えば、上述のように、それぞれの逆CDRのT細胞を刺激する、エピトープとの融合タンパク質であってもよい。
【0151】
本明細書の薬剤は、1つまたは複数のアジュバントもまた含んでもよい。アジュバントは、免疫応答(例えば、CD8陽性T細胞およびヘルパーT(TH)細胞によって媒介される抗原に対する免疫応答を非特異的に促進または増強する物質であり、したがって本明細書の薬剤で有用であると見なされる。適切なアジュバントとしては、1018 ISS、アルミニウム塩、AMPLIVAX(登録商標)、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、フラジェリンまたはフラジェリン由来TLR5リガンド、FLT3リガンド、GM-CSF、IC30、IC31、イミキモド(ALDARA(登録商標))、レシキモド、ImuFact IMP321、IL-2やL-13やIL-21などのインターロイキン、インターフェロン-αまたは-βまたはそれらのPEG化誘導体、ISパッチ、ISS、ISCOMATRIX、ISCOM、JuvImmune(登録商標)、LipoVac、MALP2、MF59、モノホスホリルリピドA、モンタニドIMS1312、モンタニドISA206、モンタニドISA50V、モンタニドISA-51、油中水型および水中油型エマルション、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、OspA、PepTel(登録商標)ベクター系、ポリ(ラクチドコグリコリド)[PLG]ベースおよびデキストラン微粒子、タラクトフェリンSRL172、ビロソームおよびその他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、サポニンに由来するAquila’s QS21 stimulon、マイコバクテリア抽出物および合成細菌細胞壁模倣体、およびRibi’s DetoxまたはQuilまたはSuperfosなどのその他の独自仕様の補助剤が挙げられるが、これに限定されるものではない。フロイントまたはGM-CSFなどのアジュバントが好ましい。樹状細胞およびそれらの調製物に対して特異的な、いくつかの免疫学的アジュバント(例えばMF59)が、以前記載されている(Allison and Krummel,1995)。サイトカインもまた使用されてもよい。数種のサイトカインは、樹状細胞のリンパ組織(例えばTNF-)への移動に影響を与えること、Tリンパ球(例えば、GM-CSF、IL-1、およびIL-4)のための効率的な抗原提示細胞への樹状細胞の成熟を加速すること(その内容全体が参照により本明細書に具体的に援用される、米国特許第5,849,589号明細書)、および免疫増強剤(例えば、IL-12、IL-15、IL-23、IL-7、IFN-α、IFN-β)として作用することと、直接関連付けられている(Gabrilovich et al.,1996)。
【0152】
CpG免疫賦活性オリゴヌクレオチドもまた、ワクチン環境において、アジュバント効果を増強することが報告されている。理論により拘束されることなく、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主にTLR9を通じた、内在的(非適応性)免疫系の活性化によって作用する。CpG誘導性TLR9活性化は、ペプチドまたはタンパク質抗原、生きたまたは死滅ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞ワクチン、そして予防的および治療的ワクチンの双方における多糖コンジュゲートをはじめとする多種多様な抗原に対する、抗原特異的体液性および細胞性応答を増強する。より重要なことには、それは樹状細胞の成熟と分化を増強し、CD4 T細胞援助の不在下であってさえも、TH1細胞の活性化の促進、および強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)生成をもたらす。TLR9刺激によって誘導されるTH1バイアスは、通常はTH2バイアスを促進するミョウバンまたは不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバント存在下であってさえも、維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、その他のアジュバントと調合されまたは同時投与された際に、または微粒子、ナノ粒子、脂質エマルションなどの配合物または類似配合物中で、なおもより高いアジュバント活性を示し、それは、抗原が比較的弱い場合、強力な応答を誘導するのに特に必要である。それらは免疫応答もまた加速し、いくつかの実験では、CpGなしのワクチン総量と同等の抗体応答で、抗原用量のほぼ2桁分の低減を可能にする(Krieg,2006)。米国特許第6,406,705B1号明細書は、抗原特異的免疫応答を誘導するためのCpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバント、および抗原の併用を記載する。CpG TLR9拮抗薬は、本明細書の医薬組成物の好ましい構成要素である、Mologen(独国ベルリン)製のdSLIM(二重ステムループ免疫調節剤)である。RNA結合TLR7、TLR8および/またはTLR9などのその他のTLR結合分子もまた、使用されてもよい。
【0153】
有用なアジュバントその他の例としては、化学修飾CpG(例えば、CpR、Idera);ポリ(I:C)などのdsRNAアナログおよびそれらの誘導体(例えばAmpliGen(登録商標)、Hiltonol(登録商標)、ポリ(ICLC)、ポリ(IC-R)、ポリ(I:C12U)、非CpG細菌DNAまたはRNA;ならびにシクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ(登録商標)、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフェニブ、テモゾロマイド、テムシロリムス、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、VEGF Trap、ZD2171、AZD2171、抗CTLA4などの免疫活性小型分子および抗体;免疫系の重要な構造体を標的にするその他の抗体(例えば、抗CD40、抗TGFβ、抗TNFα受容体);SC58175が挙げられるが、これに限定されるものではなく、これらは治療的におよび/またはアジュバントとして作用してもよい。本発明の文脈で有用なアジュバントおよび添加剤の量と濃度は、過度の実験を実施することなく、当業者によって容易に判定され得る。
【0154】
好ましいアジュバントは、抗CD40、イミキモド、レシキモド、GM-CSF、シクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、インターフェロンα、CpGオリゴヌクレオチドおよび誘導体、ポリ(I:C)および誘導体、RNA、シルデナフィル、およびPLGまたはビロソーム微粒子調合物である。
【0155】
本明細書による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、レシキモド、およびインターフェロンαなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。
【0156】
本明細書による医薬組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルグラモスチム)、シクロホスファミド、イミキモド、およびレシキモドなどのコロニー刺激因子からなる群から選択される。本発明明細書による薬剤組成物の好ましい実施形態では、アジュバントは、シクロホスファミド、イミキモドまたはレシキモドである。なおもより好ましいアジュバントは、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 20、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、poly-ICLC(Hiltonol(登録商標))、および抗CD40mABまたはそれらの組み合わせである。
【0157】
この組成物は、皮下、皮内、筋肉内などの非経口投与、または経口投与のために使用される。このためには、ペプチドおよび任意選択的にその他の分子が、薬学的に許容可能な、好ましくは水性担体に溶解され、または懸濁される。さらに組成物は、緩衝液、結合剤、ブラスチング剤、希釈剤、香料、潤滑剤などの賦形剤を含有し得る。ペプチドはまた、サイトカインなどの免疫刺激物質と共に投与され得る。このような組成物中で使用され得る賦形剤の詳細な一覧は、例えば、A.Kibbe,Handbook of Pharmaceutical Excipients(Kibbe,2000)から採用され得る。組成物は、腺腫様またはがん性疾患の阻止、予防法および/または治療法のために使用され得る。例示的調合物は、例えば、欧州特許第2112253号明細書にある。
【0158】
本明細書によるワクチンによって引き起こされる免疫応答は、異なる細胞分裂期および異なる発生段階のがんを攻撃することを理解することが重要である。さらに、異なるがん関連シグナル伝達経路が攻撃される。これは、1つまたは少数の標的のみに対処して、攻撃に対する腫瘍の容易な適応(腫瘍エスケープ)を引き起こすこともある、ワクチンに優る利点である。さらに個々の腫瘍の全てが、同一パターンの抗原を発現するとは限らない。したがって、いくつかの腫瘍関連ペプチドの組み合わせによって、ありとあらゆる腫瘍が標的の少なくとも一部を有することが確実になる。組成物は、それぞれの腫瘍が抗原のいくつかを発現することを予期して設計され、腫瘍の増殖と維持に必要ないくつかの独立した経路をカバーする。したがって、ワクチンは、より大きな患者集団のために、容易に「出来合」で使用され得る。これは、ワクチンで治療される患者の予備選択が、HLAタイピングに限定され得て、抗原発現に関する任意の追加的なバイオマーカーアセスメントを必要としないことを意味するが、いくつかの標的が誘導免疫応答によって同時に攻撃されることはなおも確実であり、これは有効性にとって重要である(Banchereau et al.,2001;Walter et al.,2012)。
【0159】
本明細書の用法では、「スキャフォールド」という用語は、(例えば、抗原性)決定因子に特異的に結合する分子を指す。一実施形態では、スキャフォールドはまた、それが付着する実体(例えば、(第2の)抗原結合部分)を例えば、抗原決定基(例えば本出願書に記載のペプチドとMHCの複合体)を有する特異的腫瘍細胞または腫瘍間質などの型標的部位に誘導できる。別の実施形態では、キャフォールドは、例えば、T細胞受容体複合体抗原などのその標的抗原を通じて、シグナル伝達を活性化できる。スキャフォールドとしては、抗体およびそれらの断片、抗体重鎖可変領域および抗体軽鎖可変領域を含んでなる抗体の抗原結合ドメイン、少なくとも1つのアンキリンリピートモチーフと単一ドメイン抗原結合(SDAB)分子とを含んでなる結合タンパク質、アプタマー、(可溶性)TCR、および同種または自己由来T細胞などの(改変)細胞が挙げられるが、これに限定されるものではない。分子が標的に結合するスキャフォールドであるかどうかを評価するために、結合アッセイが実施され得る。
【0160】
「特異的」結合は、特異的標的を保有する細胞を殺滅できる活性分子を装備したスキャフォールドが、特異的標的は有しないがその他のペプチド-MHC複合体を提示する別の細胞を殺滅できない程度に、スキャフォールドがその他の天然ペプチド-MHC-複合体よりもさらに良好に、目的ペプチド-MHC-複合体に結合することを意味する。交差反応性ペプチド-MHCのペプチドが天然に存在せず、すなわち、ヒトHLA-ペプチドームに由来しない場合、その他のペプチド-MHC複合体への結合は無関係である。標的細胞死滅を評価する試験は、当該技術分野で周知である。それらは、非改変ペプチド-MHC提示を有する標的細胞(初代細胞または細胞株)、または天然に存在するペプチド-MHCレベルに達するようにペプチドを負荷された細胞を使用して、実施されるべきである。
【0161】
各スキャフォールドは標識を含んでなり得て、それは、標識によって提供されるシグナルの存在または不在を判定することで、結合スキャフォールドが検出され得ることを提供する。例えば、スキャフォールドは、蛍光染料または任意のその他の適用可能な細胞マーカー分子で標識され得る。このようなマーカー分子は、当該技術分野で周知である。例えば、蛍光染料によって提供される蛍光標識は、蛍光またはレーザー走査顕微鏡またはフローサイトメトリーによる、結合アプタマーの視覚化を提供し得る。
【0162】
各スキャフォールドは、例えば、IL-21、抗-CD3、および抗-CD28などの第2の活性分子にコンジュゲートされ得る。
【0163】
ポリペプチドスキャフォールドに関するさらなる情報については、例えば国際公開第2014/071978A1号パンフレットの背景セクション、およびその中で引用される参考文献を参照されたい。
【0164】
本明細書は、アプタマーにさらに関する。アプタマー(例えば、国際公開第2014/191359号パンフレット、およびその中で引用される文献を参照されたい)は、短い一本鎖核酸分子であり、それは、所定の三次元構造に折り畳まれて、特異的標的構造体を認識し得る。それらは、標的療法を開発するための適切な代案のようであった。アプタマーは、高い親和性および特異性で、多様な複合体標的と選択的に結合することが示されている。
【0165】
細胞表面に位置する分子を認識するアプタマーは、過去10年内に同定されており、診断および治療的アプローチを開発する手段を提供する。アプタマーは、毒性および免疫原性がほぼ皆無であることが示されているので、それらは生物医学的用途のための有望な候補である。確かに、例えば、前立腺特異的膜抗原認識アプタマーなどのアプタマーは、標的療法のために成功裏に用いられており、異種移植片生体内モデルにおいて機能できることが示されている。さらに、特異的腫瘍細胞株を認識するアプタマーが同定されている。
【0166】
DNAアプタマーは、様々ながん細胞、特に固形腫瘍に由来するものに対して広域スペクトル認識特性を示す一方で、非腫瘍発生性および主要健常細胞を認識しないように選択され得る。同定されたアプタマーが、特異的腫瘍サブタイプを認識するだけでなく、むしろ一連の腫瘍と相互作用する場合、これは、アプタマーをいわゆる広域スペクトル診断薬および治療薬として応用可能にする。
【0167】
さらに、フローサイトメトリーによる細胞結合挙動の調査は、アプタマーがナノモル濃度範囲内の非常に良好な見かけの親和性を見せたことを示した。
【0168】
アプタマーは、診断および治療目的で有用である。一態様では、少なくとも1つまたはそれ以上のアプタマーが腫瘍細胞に取り込まれ、したがってsiRNAなどの抗がん剤の腫瘍細胞への標的化送達のための分子ビヒクルとして機能し得る。
【0169】
アプタマーは、細胞SELEX(試験管内進化法)技術を用いて、本明細書のMHC分子の記述に従って、細胞および組織などの複雑な標的、そしてペプチド複合体に対して選択され得る。
【0170】
本明細書のペプチドを使用して、MHC/ペプチド複合体に対する特異的抗体が生成され、開発され得る。これらは、毒素または放射性物質を患部組織に標的化する治療法のために、使用され得る。これらの抗体の別の用途は、PETなどのイメージング目的の放射性核種の患部組織への標的化であり得る。この用途は、小規模な転移の検出、または病的組織の大きさと正確な位置確認の判定を助け得る。
【0171】
したがってHLA拘束性抗原と複合体化した、ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、組換え抗体を生産する方法を提供することが、本明細書のさらなる態様であり、方法は、前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIを発現する細胞を含んでなる遺伝子操作された非ヒト哺乳類を、前記HLA拘束性抗原と複合体化した可溶性形態のMHCクラスIまたはII分子によって免疫化するステップと;mRNA分子を前記非ヒト哺乳類の抗体産生細胞から単離するステップと;前記mRNA分子によってコードされるタンパク質分子を提示する、ファージディスプレイライブラリーを作成するステップと;少なくとも1つのファージを前記ファージディスプレイライブラリーから単離するステップとを含んでなり、前記少なくとも1つのファージは、前記HLA拘束性抗原と複合体化した前記ヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する、前記抗体を提示する。
【0172】
HLA拘束性抗原と複合体化したヒト主要組織適合性複合体(MHC)クラスIまたはIIと特異的に結合する抗体を提供することも、本明細書のさらなる態様であり、その中で抗体は、好ましくは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、二重特異性抗体および/またはキメラ抗体である。
【0173】
このような抗体および一本鎖クラスI主要組織適合性複合体を生産するそれぞれの方法、ならびにこれらの抗体を生産するためのその他のツールは、本明細書の目的で、その内容全体が参照により全て明示的に援用される、国際公開第03/068201号パンフレット、国際公開第2004/084798号パンフレット、国際公開第01/72768号パンフレット、国際公開第03/070752号パンフレット、および文献(Cohen et al.,2003a;Cohen et al.,2003b;Denkberg et al.,2003)で開示される。
【0174】
好ましくは、抗体は、20ナノモル濃度未満、好ましくは10ナノモル濃度未満の結合親和性で複合体に結合し、それは本明細書の文脈で「特異的」とも見なされる。
【0175】
本明細書は、配列番号1に特異的に結合する、TCRタンパク質またはその変異型または機能性断片に関する。
【0176】
本明細書は、本明細書よるTCRタンパク質にさらに関し、その中でTCRタンパク質は(化学的に)修飾されおよび/または非ペプチド結合を含む。
【0177】
本発明は、TCRタンパク質が完全な(全)ヒトタンパク質でないという条件で、本明細書によるTCRタンパク質をコードする核酸にさらに関する。
【0178】
本明細書は、DNA、cDNA、PNA、RNAまたはそれらの組み合わせである、本明細書による核酸にさらに関する。
【0179】
本明細書は、本明細書による核酸を発現できる、発現ベクターにさらに関する。
【0180】
本明細書は、医療において、特に(改善された)胃がん、結腸直腸がんおよび/または神経膠芽腫の治療において使用するための、本明細書によるTCRタンパク質、本明細書による核酸、または本明細書による発現ベクターにさらに関する。
【0181】
本明細書は、本明細書による核酸または本明細書による発現ベクターを含んでなる、宿主細胞にさらに関する。
【0182】
本明細書は、T細胞、好ましくはCD8陽性T細胞またはCD4陽性T細胞である、本明細書による宿主細胞にさらに関する。
【0183】
本明細書は、本明細書によるTCRタンパク質を生産する方法にさらに関し、前記方法は、HLA-A02陰性健常ドナーに由来するPBMCをA2/IGF2BP3-001(配列番号1)モノマーと共に培養するステップと、PBMCを四量体フィコエリトリン(PE)と共に培養するステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞分類(FACS)-Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0184】
本明細書は、本明細書によるTCRタンパク質を生産する方法にさらに関し、前記方法は、HLA-A02陰性健常ドナーに由来するPBMCをA2/p286-1Y2Lモノマーと共に培養するステップと、PBMCを四量体フィコエリトリン(PE)と共に培養するステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞分類(FACS)-Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0185】
本明細書は、本明細書によるTCRタンパク質を生産する方法にさらに関し、前記方法は、HLA-A02陰性健常ドナーに由来するPBMCA2/p286-1Y2L9Lモノマーと共に培養するステップと、PBMCを四量体フィコエリトリン(PE)と共に培養するステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞分類(FACS)-Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0186】
本明細書は、本明細書によるTCRタンパク質を生産する方法にさらに関し、前記方法は、そのT細胞がマウスTCR欠損を補償する多様なヒトTCRレパートリーを発現する、全ヒトTCRαβ遺伝子遺伝子座(1.1および0.7Mb)を有する遺伝子組換えマウスを得るステップと、マウスをIGF2BP3-001で免疫化するステップと、四量体フィコエリトリン(PE)を有する遺伝子組換えマウスから得られたPBMCをインキュベートするステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0187】
本明細書は、本明細書によるTCRタンパク質を生産する方法にさらに関し、前記方法は、そのT細胞がマウスTCR欠損を補償する多様なヒトTCRレパートリーを発現する、全ヒトTCRαβ遺伝子遺伝子座(1.1および0.7Mb)を有する遺伝子組換えマウスを得るステップと、マウスをp286-1Y2Lで免疫化するステップと、四量体フィコエリトリン(PE)を有する遺伝子組換えマウスから得られたPBMCをインキュベートするステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0188】
本明細書は、本明細書によるTCRタンパク質を生産する方法にさらに関し、前記方法は、そのT細胞がマウスTCR欠損を補償する多様なヒトTCRレパートリーを発現する、全ヒトTCRαβ遺伝子遺伝子座(1.1および0.7Mb)を有する遺伝子組換えマウスを得るステップと、マウスをp286-1Y2L9Lで免疫化するステップと、四量体フィコエリトリン(PE)を有する遺伝子組換えマウスから得られたPBMCをインキュベートするステップと、高結合活性T細胞を蛍光活性化細胞選別(FACS)Calibur分析によって単離するステップとを含んでなる。
【0189】
本明細書は、本明細書による有効数のT細胞を患者に投与するステップを含んでなる、その標的細胞がIGF2BP3-001を異常に発現する患者において、標的細胞を死滅させる方法にさらに関する。
【0190】
本明細書は、記載される任意のTCRタンパク質、本明細書による核酸、本明細書による発現ベクター、本明細書による細胞、または本明細書による活性化細胞傷害性Tリンパ球の、薬剤としての、または薬剤の製造における、使用にさらに関する。本明細書は、薬剤ががんに対して有効である、本明細書による使用にさらに関する。
【0191】
本明細書はさらに、前記がん細胞が、胃がん、前立腺がん、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、急性骨髄性白血病(AML)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、大腸がん/結腸直腸がん、神経膠芽腫、非小細胞肺がん(NSCLC)、子宮頸がん、ヒト乳がん、前立腺がん、結腸がん、膵臓がん、膵管腺がん、卵巣がん、肝細胞がん、肝臓がん、異なる表現型の脳腫瘍、急性リンパ芽球性白血病(ALL)などの白血病、肺がん、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、食道がん、口腔がん、膀胱がん、卵巣がん、腎細胞がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、脳腫瘍、唾液管がん、子宮頸がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、および肺および乳房の悪性固形腫瘍、およびその他の腫瘍から選択される、本明細書による使用に関する。
【0192】
本発明はさらに、上記のがん、特に胃がん、結腸直腸がん、および神経膠芽腫の診断および/または予後で使用され得る、本明細書で「標的」と称される、本明細書によるペプチドに基づく特定のマーカータンパク質およびバイオマーカーに関する。本明細書はまた、がん治療のためのこれらの新規標的の好ましい使用に関する。
【0193】
「抗体(単数)」または「抗体(複数)」という用語は、本明細書では広義に使用され、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方を含む。無傷のまたは「完全」免疫グロブリン分子に加えて、「抗体」という用語には、それらが、本明細書による所望の特性のいずれか(例えば、胃がん、結腸直腸がん、および神経膠芽腫マーカー(ポリ)ペプチドの特異的結合;増加したレベルでがんマーカー遺伝子を発現する胃がん、結腸直腸がん、および神経膠芽腫がん細胞への毒素の送達;および/または胃がん、結腸直腸がん、および神経膠芽腫がんマーカーポリペプチド活性の阻害)を示す限り、断片(例えば、CDR、Fv、Fab、およびFc断片)またはこれらの免疫グロブリン分子のポリマー、および免疫グロブリン分子のヒト化バージョンもまた含まれる。
【0194】
可能な場合は常に、本明細書の抗体は、商業的供給元から購入されてもよい。また本明細書の抗体は、周知の方法を使用して生成されてもよい。当業者は、本明細書の抗体を生成するために、完全長非小細胞肺がんマーカーポリペプチドまたはその断片のどちらを使用してもよいことを理解するであろう。本明細書の抗体を作製するために使用されるポリペプチドは、天然原料から部分的にまたは完全に精製されてもよく、または組換えDNA技術を使用して生成されてもよい。
【0195】
当業者は、モノクローナルまたはポリクローナル抗体の2つ以上の異なるセットの作製が、その目的の用途(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、生体内イメージング、免疫毒素療法)に必要な特異性および親和性を有する抗体を得る可能性を最大化することを理解するであろう。抗体は、それに対して抗体が使用される目的に従って、既知の方法によりそれらの所望の活性について試験される(例えば、ELISA、免疫組織化学的検査、免疫療法など;抗体の作製および試験のさらなるガイダンスについては、例えば、Greenfield,2014(Greenfield,2014)を参照されたい)。例えば、抗体は、ELISAアッセイ、またはウエスタンブロット、ホルマリン固定がんまたは冷凍組織切片の免疫組織化学染色で試験されてもよい。それらの最初の生体外特性解析後、治療または生体内診断用途を意図した抗体が、既知の臨床試験法によって試験される。
【0196】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書の用法では、実質的に均質な抗体集団から得られる抗体を指し;すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在してもよい可能な自然発生変異以外は同一である。本明細書では、「モノクローナル抗体」は、それらが所望の拮抗活性を示しさえすれば、その中で重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来しまたは特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である一方、鎖の残部は、別の種に由来しまたは別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同的である、「キメラ」抗体、ならびにこのような抗体の断片を特に含む(その内容全体が本明細書に援用される、米国特許第4,816,567号明細書)。
【0197】
本明細書のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製されてもよい。ハイブリドーマ法においては、マウスまたはその他の適切な宿主動物が免疫剤によって典型的に免疫化されて、免疫剤と特異的に結合する抗体を産生するまたは産生できるリンパ球を生じさせる。代案としては、リンパ球は、生体外で免疫化されてもよい。
【0198】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載されるものなどの組換えDNA法によって生産されるものであってもよい。本明細書のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して、容易に単離および配列決定され得る(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子と特異的に結合できる、オリゴヌクレオチドプローブの使用によって)。
【0199】
インビトロ法もまた、一価の抗体を調製するのに適する。抗体断片、特にFab断片を作製するための抗体の消化は、当該技術分野で既知の通例の技術を使用して達成され得る。例えば、消化は、パパインを使用して実施され得る。パパイン消化の例は、国際公開第94/29348号パンフレットおよび米国特許第4,342,566号明細書に記載される。抗体のパパイン消化は、それぞれ単一抗原結合部位を有するFab断片と称される2つの同一の抗原結合断片と、残りのFc断片とを典型的に生じる。ペプシン処理は、F(ab’)2断片およびpFc’断片をもたらす。
【0200】
抗体断片は、その他の配列に付着するかどうかに関わりなく、断片の活性が非修飾抗体または抗体断片と比較して顕著に変化せずまたは損なわれないという条件で、特定領域または特定アミノ酸残基の挿入、欠失、置換、またはその他の選択された修飾もまた含み得る。これらの修飾は、ジスルフィド結合できるアミノ酸の除去/付加、そのバイオ寿命増大、その分泌特性改変などのいくつかの追加的な特性を提供し得る。いずれにしても、抗体断片は、結合活性、結合領域における結合調節などの生理活性特性を有しなくてはならない。抗体の機能性または活性領域は、タンパク質の特定領域の変異誘発と、それに続く発現と、発現したポリペプチドの試験によって同定されてもよい。このような方法は、当該技術分野の熟練した実務家には容易に分かり、抗体断片をエンコードする核酸の部位特異的変異誘発を含み得る。
【0201】
本明細書の抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体をさらに含んでなってもよい。非ヒト(例えばマウス)抗体などのヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはその断片(抗体のFv、Fab、Fab’またはその他の抗原結合部分配列など)である。ヒト化抗体としては、その中でレシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト生物種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置換される。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体または移入CDRまたはフレームワーク配列のどちらにも見いだされない、残基を含んでなってもよい。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つおよび典型的に2つの可変領域の実質的に全てを含んでなり、その中ではCDR領域の全てまたは実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン共通配列のものである。ヒト化抗体は、至適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部もまた含んでなる。
【0202】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野で周知である。通常、ヒト化抗体は、非ヒト起源から導入された、1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「移入」残基と称され、それは典型的に「移入」可変ドメインから得られる。ヒト化は、齧歯類CDR(複数)またはCDR(単数)配列を対応するヒト抗体配列によって置換することで、基本的に実施され得る。したがって、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4,816,567号明細書)であり、その中では実質的に完全でないヒト可変ドメインが、非ヒト生物種からの対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は典型的にヒト抗体であり、その中ではいくつかのCDR残基と、おそらくはいくつかのFR残基とが、齧歯類抗体中の類似部位からの残基によって置換される。
【0203】
免疫化に際して、内因性免疫グロブリン生成不在下で、ヒト抗体の完全レパートリーを産生できる遺伝子組換え動物(例えばマウス)を用い得る。例えば、キメラおよび生殖細胞系変異マウスにおける、抗体重鎖連結領域遺伝子のホモ接合型欠失が、内因性抗体生成の完全阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖細胞系変異マウスにおけるヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子アレイの転写は、抗原チャレンジに際してヒト抗体の産生をもたらす。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリー中でも産生され得る。
【0204】
本明細書の抗体は、好ましくは薬学的に許容できる担体中で、対象に投与される。典型的に、製剤中で適当量の薬理的に許容可能な塩が使用されて、製剤を等張にする。薬理的に許容可能な担体の例としては、生理食塩水、リンゲル液、およびデキストロース溶液が挙げられる。溶液のpHは、好ましくは約5~約8、より好ましくは約7~約7.5である。さらなる担体としては、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックス徐放性製剤が挙げられ、そのマトリックスは、例えば、フィルム、リポソームまたは微粒子などの造形品の形態である。当業者には、例えば、投与される抗体の投与経路と濃度次第で、特定の担体がより好ましくあってもよいことが明らかであろう。
【0205】
抗体は、注射(例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内)によって、またはその有効形態での血流への送達を確実にする輸液などのその他の方法によって、対象、患者、または細胞に投与され得る。抗体はまた、腫瘍内または腫瘍周囲経路によって投与されて、局所性ならびに全身性の治療効果を発揮してもよい。局所注射または静脈注射が好ましい。
【0206】
抗体を投与するための有効投与量およびスケジュールは、経験的に判定されてもよく、このような判定をすることは、当該技術分野の技術範囲内である。当業者は、投与しなくてはならない抗体用量が、例えば、抗体を投与される対象、投与経路、使用される特定の抗体型、および投与されるその他の薬剤次第で変動することを理解するであろう。単独使用される抗体の典型的な1日量は、上述の要素次第で、1日当たり約1(μg/kg~最大100mg/kg体重またはそれ以上の範囲に及ぶかもしれない。好ましくは非小細胞肺がんを治療するための抗体投与に続いて、治療用抗体の効力が、熟練した実務家に良く知られている様々な方法で評価され得る。例えば、標準腫瘍イメージング技術を使用して、治療を受ける対象におけるがんの大きさ、数、および/または分布がモニターされてもよい。抗体投与不在下で起こるであろう疾患経過と比較して、腫瘍成長を停止させ、腫瘍収縮をもたらし、および/または新規腫瘍の発生を予防する、治療的に投与された抗体は、がん治療のための有効な抗体である。
【0207】
特異的ペプチド-MHC複合体を認識する可溶性T細胞受容体(sTCR)を生産する方法を提供することもまた、本明細書のさらなる態様である。このような可溶性T細胞受容体は、特異的T細胞クローンから生成され得て、それらの親和性は、相補性決定領域を標的化する変異誘発によって増加され得る。T細胞受容体の選択目的で、ファージディスプレイが利用され得る(米国特許第2010/0113300号明細書、(Liddy et al.,2012))。ファージディスプレイ中に、そして薬剤として実用する際に、T細胞受容体を安定化させる目的で、例えば、非天然ジスルフィド結合、その他の共有結合(一本鎖T細胞受容体)、または二量体化ドメインによって、αおよびβ鎖を連結させ得る(Boulter et al.,2003;Card et al.,2004;Willcox et al.,1999)。T細胞受容体は、標的細胞上で特定機能を発揮させるために、毒素、薬剤、サイトカイン(例えば、米国特許第2013/0115191号明細書を参照されたい)、抗CD3ドメインのようなエフェクター細胞動員ドメインなどに、連結させ得る。別の態様では、それは養子免疫伝達のために使用されるT細胞内で発現される。例えば、その内容全体が参照により援用される、国際公開第2004/033685A1号パンフレット、国際公開第2004/074322A1号パンフレット、および国際公開第2013/057586A1号パンフレットを参照されたい。
【0208】
さらに本明細書のペプチドおよび/またはTCRまたは抗体またはその他の結合分子を使用して、病理学者の生検サンプルに基づくがん診断を確認し得る。
【0209】
抗体またはTCRはまた、生体内診断アッセイのために使用されてもよい。通常、抗体は、腫瘍が位置確認され得るように、免疫シンチグラフィーを使用して、放射性ヌクレオチド(111In、99Tc、14C、131I、H、32Pまたは35Sなど)で標識される。一実施形態では、抗体またはそれらの断片は、上述のタンパク質からなる群から選択されるタンパク質の2つ以上の標的の細胞外ドメインに結合し、親和性(Kd)は1×10μM未満である。
【0210】
診断用の抗体は、様々なイメージング法による検出に適するプローブで標識されてもよい。プローブの検出方法としては、蛍光、光学、共焦点および電子顕微鏡検査;磁気共鳴画像法および分光法;蛍光透視法、コンピュータ断層撮影および陽電子放射型断層撮影法が挙げられるが、これに限定されるものではない。適切なプローブとしては、フルオレセイン、ローダミン、エオジンおよびその他のフルオロフォア、放射性同位体、金、ガドリニウムおよびその他のランタニド、常磁性鉄、フッ素18およびその他の陽電子放出放射性核種が挙げられるが、これに限定されるものではない。さらに、プローブは二官能価または多官能価であってもよく、列挙される方法の2つ以上によって検出可能であってもよい。これらの抗体は、前記プローブで直接または間接的に標識されてもよい。特に十分に技術分野で承認されている、プローブの抗体への付着としては、プローブの共有結合、プローブの抗体への組み込み、およびプローブ結合のためのキレート化合物の共有結合が挙げられる。免疫組織化学的検査では、疾患組織サンプルは、新鮮または冷凍であってもよく、またはパラフィン包埋されてホルマリンなどの保存料で固定されてもよい。サンプルを含有する固定または包埋切片は、標識一次抗体および二次抗体と接触されて、抗体を使用して原位置タンパク質発現が検出される。
【図面の簡単な説明】
【0211】
本発明を以下の実施例で、それでもなお非限定的にさらに説明する。本発明の目的で、本明細書で引用される全ての参考文献は、その内容全体が参照により援用される。
図1】正常組織およびがんにおける、IGF2BP3-001ペプチド提示を示す。
図2】がんおよび正常組織における、IGF2BP3-001発現を示す。
図3】同上
図4】同上
図5】HLA-A02:01に対するIGF2BP3の親和性を示すIGF2BP3および対照ペプチドMUC-001(中度結合体)およびMET-001(強力結合体)の解離定数(KD)は、ELISA-ベースのアッセイによって測定された。
図6】実施例6のように、IGF2BP3 mRNAが全ての評価されたがん検体において検出可能であることを示す。発現レベルは、結腸直腸がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、および食道がん標本(CCA001T、CCA006T、HNSCC017T1、NSCLC004T1、NSCLC005T1、OC038T、OSCAR052T1、およびOSCAR055T1)におけるかなりの発現から、膵臓がん標本(PC002T)におけるかなり低い発現までの範囲をカバーする。
【実施例0212】
HLA結合
SYFPEITHIルーチン(Rammensee et al.,1997;Rammensee et al.,1999)は、絶対スコア27および相対スコア0.74でのA02:01へのKIQEILTQV(配列番号1)の結合を予測する。ペプチドIGF2BP3-001は、次のようにがん細胞上で提示される:
【0213】
【表4】
【0214】
【表5】
【0215】
IGF2BP3-001は、16の様々ながん型をはじめとする380個を超えるHLA-A02陽性腫瘍サンプルにおいて、そして高および中リスク臓器に重点を置いて全てのリスクカテゴリーをカバーする異なる起源の240個を超える正常組織サンプルにおいて、定量化された(2015年8月時点)。図1は、これらの組織におけるIGF2BP3-001の相対的ペプチド提示レベルを示す。IGF2BP3-001は、しばしば排他的に、異なる実体の原発性腫瘍サンプルで見いだされ、正常組織では見いだされなかった。したがって、IGF2BP3-001標的は、高度に腫瘍特異的な様式でHLA-A02の文脈で提示される。
【0216】
図5に示されるデータは、IGF2BP3-001がHLA-A02:01に対する非常に良好な結合を有するペプチドであるという証拠をさらに提供する。
【0217】
アロ反応性設定を使用して自己免疫寛容を回避し、自己由来設定、すなわち、患者に由来するT細胞と比較してより高い結合活性を有する、T細胞もをたらし得る。このような設定の例としては、アロHLA反応性ペプチド特異的T細胞の生体外生成(Sadovnikova et al.1998;Savage et al.2004;Wilde et al.2012)、およびヒトMHCまたはヒトTCRについて遺伝子組換えであるマウスの免疫化(Stanislawski et al.2001;Li et al.2010)が挙げられる。
【0218】
実施例1
アロHLA反応性ペプチド特異的T細胞の生体外生成(Savage et al.2004)告知に基づく同意を得た後、HLA-A02陽性およびHLA-A02陰性の健常ドナーからのPBMCを使用した。組換えビオチン化HLA-A2クラスIモノマーと、IGF2BP3-001を含有するA2蛍光性四量体をMBLI(マサチューセッツ州ウーバン)から得た。リン酸緩衝食塩水(PBS)で希釈した抗CD20SAと共に、PBMCを室温で1時間培養し、洗浄して、ビオチン化A2/IIGF2BP3-001モノマーと共に室温で30分間培養し、洗浄して、24ウェルプレート内の001%ヒトAB血清添加RPMIに、3×10細胞/ウェルで播種した。インターロイキン7(IL-7;R&D systems、ミネソタ州ミネアポリス)を1日目に10ng/mLで添加し、IL-2(英国ヘアフィールドのChiron)を4日目に10U/mLで添加した。5週間にわたり、細胞を新鮮なPBMCで毎週再刺激し、応答性細胞と1:1の比で混合して、24ウェルプレートに3×10/ウェルで播種した。
【0219】
高結合活性T細胞を得るために、およそ10のPBMCをHLA-A2/IGF2BP3-001四量体フィコエリトリン(PE)(MBLIから得た)と共に、37℃で001分間培養し、それに続いて抗CD8イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)/アロフィコシアニン(APC)と共に4℃で20分間培養し、蛍光活性化細胞分類(FACS)-Calibur分析がそれに続いた。選別は、FACS-Vantage(英国オックスフォード市カウリーのBecton Dickinson)を用いて実施した。ウェル当たり、2×10の選別された細胞、フィーダーとしての2×10照射A2陰性PBMC、2×10のCD3/CD28ビーズ/mL(ノルウェイ国オスロのDynal)、およびIL-2(1000U/mL)を使用して、選別された四量体陽性細胞を24ウェルプレート内で増殖させた。次に、このようにして得られた高結合活性T細胞を使用して、単細胞5’RACE(cDNA末端の迅速増幅)などの当該技術分野で公知の技術を用いてTCRを同定し単離した。次に、非重複TCR DNAをアミノ酸/DNA配列決定について分析し、当該技術分野で周知の方法を用いて発現ベクターにクローニングした。
【0220】
実施例2:TCRのクローニング
TCRのクローニング法は、例えば、前記方法に関してその内容全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第8,519,100号明細書に記載されるように、当該技術分野で公知である。制限部位NdeIをコードするα鎖可変領域配列特異的オリゴヌクレオチドA1(ggaattccatatgagtcaacaaggagaagaagatcc配列番号11)、細菌における発現の効率的な開始のために導入されたメチオニン、および制限部位SalIをコードするα鎖定常領域配列特異的オリゴヌクレオチドA2(ttgtcagtcgacttagagtctctcagctggtacacg配列番号12)を使用して、α鎖可変領域を増幅する。β鎖の場合、制限部位NdeIをコードするβ鎖可変領域配列特異的オリゴヌクレオチドB1(tctctcatatggatggtggaattactcaatccccaa配列番号13)、細菌における発現の効率的な開始のために導入されたメチオニン、および制限部位AgeIをコードするβ鎖定常領域配列特異的オリゴヌクレオチドB2(tagaaaccggtggccaggcacaccagtgtggc配列番号14)を使用して、β鎖可変領域を増幅する。
【0221】
それぞれ腫瘍特異的TCR-αおよびTCR-β鎖をコードする3つのTCR(R10P1A7、R13P1C6、およびR18P1C12)を3人の健常ドナーのT細胞から単離して、クローン化した。TCR R18P1C12は、HLA-A2陽性ドナーに由来し、TCR R10P1A7およびTCR R13P1C6は、HLA-A2陰性ドナーに由来した。
【0222】
TCRのαおよびβ可変領域を配列決定した。次にTCR αおよびβ可変領域は、(Molecular Cloning a Laboratory Manual Third edition by Sambrook and Russell)で記載される標準的な方法によって、(それぞれ)CαまたはCβのどちらかを含有する、pGMT7ベースの発現プラスミドにクローン化した。プラスミドは、Applied Biosystems 3730×1 DNA分析装置を用いて配列決定した。
【0223】
TCRα鎖をコードするDNA配列をNdeIおよびSalIで切断し、pGMT7+Cαベクターにライゲートし、それをNdeIおよびXhoIで切断した。TCRβ鎖をコードするDNA配列をNdeIおよびAgeIで切断し、別個のpGMT7+Cβベクターにライゲートし、それもまたNdeIおよびAgeIで切断した。ライゲートされたプラスミドをコンピテント大腸菌(Escherichia coli)株XL1-blue細胞に形質転換し、100μg/mlのアンピシリンを含有するLB/寒天プレート上に播種する。37℃で一晩インキュベートした後、単一コロニーを選択し、100μg/mlのアンピシリンを含有する10mlのLB中で一晩37℃で振盪しながら増殖させる。クローン化プラスミドをMiniprepキット(Qiagen)を用いて精製し、挿入断片を自動DNA配列決定装置(Lark Technologies)を用いて配列決定する。
【0224】
ファージディスプレイを用いてTCR変異型のライブラリーを作成し、高親和性変異体を同定し得る。(Li et al,(2005)Nature Biotech 23(3):349-354)に記載されるTCRファージディスプレイおよびスクリーニング法が、参照TCRに用いられ得る。
【0225】
例えば、α鎖配列の全ての3つのCDR領域と、β鎖配列の全ての3つのCDR領域が変異誘発によって標的化され、各CDRライブラリーが別々にパニングおよびスクリーニングされ得る。
【0226】
したがって、参照TCRの少なくとも2倍の(したがって、天然TCRの少なくとも2倍であることが暗示される)親和性および/または結合半減期を有するTCRが同定され得る。
【0227】
定常領域に導入されたシステインをはじめとする方法を用いて、TCRヘテロ二量体を再折りたたみし、人工鎖間ジスルフィド結合を提供する。このようにして、(a)変異α鎖と共に参照TCRβ鎖;(b)変異β鎖と共に参照TCRα鎖;および(c)変異可変ドメインを含むβ鎖およびα鎖の様々な組み合わせからなるTCRを調製する。
【0228】
高親和性の可溶性ジスルフィド結合TCRと、TCR変異型、および天然ペプチドKIQEILTQV(配列番号1)HLA-A02複合体との間の相互作用は、BIAcore法を用いて分析され得る。
【0229】
高親和性TCR変異型はまた、酵母、またはT細胞ディスプレイによって、CDR変異体のライブラリーから選択され得る(Holler et al.2003;Chervin et al.2008)。したがって、候補TCR変異型は、TCRのCDRの変異をデザインして、高結合活性のTCR変異型を得るための指針を提供する(Robbins et al.2008;Zoete et al.2007)。
【0230】
実施例3:自己T細胞の遺伝子操作
T細胞は、高結合活性TCR(いわゆるTCR療法)、またはMHCI/IGF2BP3-001複合体またはMHCII/IGF2BP3-001複合体に対する抗原特異性が増強されたタンパク質融合由来キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように、遺伝子操作され得る。一態様では、このアプローチは、中枢および末梢寛容に関連するいくつかの制限を克服し、患者における新生T細胞活性化の必要なしに、腫瘍の標的化においてより効率的なT細胞を生じる。
【0231】
一態様では、本明細書のTCRを発現するT細胞を得るために、実施例1~2に記載されるように同定され単離された腫瘍特異的TCR-αおよび/またはTCR-β鎖をコードする核酸を、γ-レトロウイルスまたはレンチウイルスなどの発現ベクターにクローン化する。組換えウイルスを生成し、次に、抗原特異性および機能的結合活性などの機能について試験する。次に、最終生成物のアリコートを使用して、標的T細胞集団(一般に患者のPBMCから精製される)を形質導入し、それを患者への輸液前に増殖させる。
【0232】
別の態様では、本明細書のTCRを発現するT細胞を得るために、例えば、生体外転写システムなどの当該技術分野で公知の技術によってTCR RNAを合成した。次に生体外で合成されたTCR RNAを、健常ドナーから得られた原発性CD8+T細胞内に電気穿孔によって導入し、腫瘍特異的TCR-αおよび/またはTCR-β鎖を再発現させた。
【0233】
外因性TCRが形質転換T細胞の細胞表面で機能的に発現しているかどうかを試験するために、四量体染色技術を用いてMHC/IGF2BP3-001結合T細胞を検出した。図5および表6に示されるように、例えば1.53%であるMHC/無関係のペプチド(例えば、NYESO1-001)四量体、または例えば1.73%である模擬対照よりも、蛍光標識MHC/IGF2BP3-001四量体染色によって、CD3陽性特異的T細胞集団のより高い百分率、すなわち、6.78%(TCR R10P1A7)および16.54%(TCR R13P1C6)が、TCR発現CD8+T細胞において観察された。対照として、MHC/NYESO1-001複合体と特異的に結合することが知られている1G4 TCRなどの無関係TCRで形質転換された初代CD8+T細胞は、MHC/NYESO1-001四量体によって容易に検出され、すなわち、17.69%であった。これらの結果は、TCR R10P1A7およびTCR R13P1C6がT細胞表面上で発現され、MHC/IGF2BP3-001複合体に特異的に結合し得ることを示す。
【0234】
TCRがMHC/IGF2BP3-001特異的細胞傷害活性を誘導するかどうかを判定するために、形質転換CD8+T細胞をIGF2BP3-001が負荷された標的細胞と、または類似しているが無関係のペプチドが負荷された標的細胞と、または例えば未負荷標的細胞およびCD8+T細胞単独などの対照と共インキュベートして、IFN-γ放出アッセイがそれに続いた。CD8+T細胞からのIFN-γ分泌は、細胞傷害活性を有するT細胞活性化の指標となる。
【0235】
【表6】
【0236】
本開示のTCRで形質転換された全ての初代CD8+T細胞は、IGF2BP3-001負荷標的細胞との共インキュベート後に、無関係のペプチドが負荷された標的細胞で刺激されたもの、および対照よりも、はるかに高レベルのIFN-γを放出したことが分かった。標的ペプチド滴定分析は、約1nM(TCR R10P1A7)および約0.8nM(TCR R13P1C6)のEC50を示した。これらの結果は、本発明のTCRが、MHC/IGF2BP3-001複合体との特異的相互作用を通じて、例えばIFN-γ放出などの細胞傷害性T細胞活性を活性化し得ることを示唆する。
【0237】
MHC/IGF2BP3-001複合体に対するTCRの結合モチーフを判定するために、IGF2BP3-001ペプチドの9個のアミノ酸のそれぞれでポジショナルアラニンスキャニング分析を実施した。アラニン置換IGF2BP3-001ペプチドは、表7に示される。
【0238】
【表7】
【0239】
簡潔に述べると、各TCRで形質転換されたT細胞を、IGF2BP3-001、IGF2BP3-001-A1~IGF2BP3-001-A9、または無関係のNYESO1-001ペプチドが負荷された標的細胞と共インキュベートし、上記のようなIFNγ放出アッセイがそれに続いた。
【0240】
TCR R10P1A7およびTCR R13P1C6のポジショナルアラニンスキャニング分析の結果は、表8に要約される。
【0241】
【表8】
【0242】
同一モチーフを有するA02結合ペプチドのゲノムワイドスクリーニングは、潜在的に交差反応性のペプチドがないことを明らかにした。これらの結果は、thatIGF2BP3-001の3~6位が、TCR R10P1A7およびTCR R13P1C6結合にとって重要であってもよいことを示唆する。
【0243】
本明細書に記載のTCRを発現するT細胞の有効性を判定するために、TCR R10P1A7で形質転換された初代CD8+T細胞を、例えば、HLA-A2陽性およびIGF2BP3-001(標的)陽性のA-375(ヒト黒色腫細胞)およびT98G(ヒト神経膠芽腫細胞株)などのヒトがん細胞株、そしてHLA-A2陰性およびIGF2BP3-001陰性のSK-BR-3(ヒト乳がん細胞株)と共インキュベートし、IFNγ放出アッセイがそれに続いた。
【0244】
IFNγ放出は、HLA-A2陽性およびIGF001BP3-001陽性のA-375およびT98G細胞の双方で観察されたが、エフェクター細胞単独対照と同等の基礎レベルのIFNγ放出を有するSK-BR-3細胞では観察されなかった。これらの結果は、TCR R10P1A7を発現するT細胞が、HLA-A2/IGF2BP3-001特異的様式で、がん細胞を標的化する細胞傷害活性を特異的に誘導し得ることを示唆する。
【0245】
本明細書は、IGF2BP3-001を過剰にまたは排他的に提示する、がん/腫瘍、好ましくは黒色腫および神経膠芽腫を治療するのに有用なTCRを提供する。
【0246】
実施例5:同種異系T細胞の遺伝子操作
病原体に対する防御の第一線に関与する非従来的なTリンパ球エフェクターであるガンマデルタ(γδ)Τ細胞は、受容体、特に、TCR-γおよびTCR-δ鎖を活性化することで、MHC非依存的様式で腫瘍細胞と相互作用して、腫瘍細胞を根絶し得る。これらのγδT細胞は、活性化に際して、迅速なサイトカイン産生(IFN-γ、TNF-α)および強力な細胞傷害性応答を可能にする前活性化表現型を示す。これらのT細胞は多くのがんに対して抗腫瘍活性を有し、γδT細胞媒介免疫療法が実行可能であり、客観的な腫瘍応答を誘導し得ることが示唆される。(Braza et al.2013)。
【0247】
固定化抗原、作動性モノクローナル抗体(mAb)、腫瘍由来人工抗原提示細胞(aAPC)、または活性化mAbとaAPCの組み合わせを用いる近年の進歩は、オリゴクローナルまたはポリクローナルTCRレパートリーありまたはなしで、γδT細胞を増殖させるのに成功している。例えば、固定化主要組織適合性複合体クラスI鎖関連Aは、TCRδ1アイソタイプを発現するγδT細胞に対する刺激であり、プレート結合活性化抗体は、生体外でVδ1およびVδ2細胞を増殖させた。臨床的に十分な量のTCRδ1、TCRδ2、およびTCRδ1negTCRδ2negがaAPC上の共培養後に生成し、これらのサブセットは、生体外および生体内で、記憶表現型および腫瘍に対する反応性に差を示した。(Deniger et al.2014)。
【0248】
さらに、γδT細胞は、TCR-α鎖およびTCR-β鎖の導入によって証明されるように、遺伝子修飾に適している。(Hiasa et al.2009)。本明細書の別の態様は、IGF2BP3-001に結合するTCR-αおよびTCR-βを発現するγδT細胞の生成に関する。これを行うために、γδT細胞をDeniger et al.2014によって記載される方法によって増殖させ、(実施例3に記載されるような)IGF2BP3-001に結合するTCRを発現する組換えウイルスを、増殖させたγδT細胞に形質導入することがそれに続いた。次に、ウイルス形質導入γδT細胞を患者に輸液する。
【0249】
実施例6:mRNA発現
原位置ハイブリダイゼーション(ISH)を用いて、ホルマリン固定または凍結組織切片において直接、mRNA発現を検出した。その高い感度とその空間分解能のために、それは細胞型特異的標的発現およびがん組織切片中の標的発現の分布または頻度を判定するのに適した方法である。
【0250】
IGF2BP3 mRNAを検出するために、Advanced Cell Diagnostics(ACD)によって開発されたRNAscope(登録商標)技術を用いてISHが実施されている。RNAscope(登録商標)技術は、約20対のZ型オリゴヌクレオチドプローブの標的配列へのハイブリダイゼーションに基づいている。シグナル増幅は、オリゴヌクレオチドの複数のハイブリダイゼーション過程に基づく分枝DNA増幅によって達成され、最終的に分枝DNA(bDNA)ツリーが構築される。最後に、多数の標識プローブがbDNAツリーの分枝にハイブリダイズし、増強されたシグナルが検出され得る。発色性RNAscope(登録商標)検出キット(RED)は、酵素(アルカリホスファターゼ)に連結した標識プローブを含む。シグナル検出は、元のシグナルをさらに増幅させる、発色基質FastRedの酵素的変換に依存する。RNAscope(登録商標)は非常に感度の高い技術であるが、それはたとえ部分的に架橋または分解されていたとしても、標的mRNAへのZプローブ対の感度および堅固な結合と対になった、シグナル増幅の効率的な過程のためである。ACDによれば、20個のプローブ対のうちの3個の各単一RNA分子に対する結合が、検出可能なISHシグナルを生成するのに十分である。
【0251】
各ISH実験は、1)標的検索のための組織前処理と、2)標的ハイブリダイゼーション、シグナル増幅および検出との2つの方法論的プロセスに細分される。最適な前処理条件は、FFPE組織切片における成功裏の標的検出のために重要である。固定化過程は、細胞および組織中のタンパク質、DNA、およびRNAの架橋を誘導し、それによってハイブリダイゼーション部位をマスクする。したがって、標的mRNAのアクセスしやすさおよびプローブセットの適切な結合を保証するためには、標的ハイブリダイゼーションの前に、これらの架橋を除去しなければならない。組織の前処理には、1)過酸化水素処理による内因性アルカリホスファターゼのブロック、2)標的検索試薬中で煮沸することによる標的検索、および3)プロテアーゼ消化による標的検索の3つの別個のステップが含まれる。異なるFFPEブロック間では、固定化および架橋の程度が変動してもよいので、最適な標的検索条件は個々のFFPEブロックについて実験的に決定しなければならない。したがって、組織切片は異なる沸騰およびプロテアーゼ消化時間に曝露され、陽性対照セットおよび陰性対照プローブセットとのハイブリダイゼーションがそれに続いた。最適条件は、陽性対照における特異的シグナル強度と、陰性対照における非特異的背景と、組織形態との顕微鏡評価によって判定した。組織の前処理は、製造業者のプロトコルに従って行った実施した。前処理試薬は、RNAscope(登録商標)試薬キットに含まれる。様々な前処理過程の完了後、特異的プローブセットの目的mRNAへのハイブリダイゼーションと、引き続く分岐DNAシグナル増幅および発色または蛍光シグナル検出によって、標的発現を評価した。全てのアッセイは、製造業者のプロトコルに従って実施した。
【0252】
【表9】
【0253】
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2022130472000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-06-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの診断または治療のための医薬の製造における、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬学的に許容可能な塩の使用であって、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、使用
【請求項2】
前記ペプチドがMHCクラスI分子に結合する能力を有する、または
前記ペプチドがMHCクラスI分子に結合する能力を有し、前記ペプチドがMHCクラスI分子に結合した際に、CD8T細胞によって認識されることができるようになる、
請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ペプチドが、非ペプチド結合を含む、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
がんの診断または治療のための医薬の製造における、融合タンパク質の使用であって、
前記融合タンパク質は、HLA-DR抗原関連不変鎖(Ii)の80個のN末端アミノ酸に融合されている請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチドであり、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、使用。
【請求項5】
がんの診断または治療のための医薬の製造における、請求項1または2に定義されるペプチドをエンコードする核酸の使用であって、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、使用。
【請求項6】
前記核酸は発現ベクターに含まれている、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
がんの診断または治療のための医薬の製造における、請求項1もしくは2に定義されるペプチドまたは請求項5もしくは6に定義される核酸を含んでなる、組換え宿主細胞の使用であって、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、使用。
【請求項8】
がんの診断または治療のための医薬の製造における、請求項1もしくは2に定義されるペプチドを特異的に認識するもしくはMHC分子と結合する請求項1もしくは2に定義されるペプチドを特異的に認識する、抗体または抗体の断片の使用であって
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、または
がんの診断または治療のための医薬の製造における、請求項1もしくは2に定義されるペプチドを特異的に認識するもしくはMHC分子と結合する請求項1もしくは2に定義されるペプチドを特異的に認識する、抗体または抗体の断片の使用であって、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択され、
ここで、(i)前記抗体または抗体の断片はモノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体および/またはキメラ抗体またはその断片、または
(ii)前記抗体または抗体の断片はさらに免疫刺激ドメインまたは毒素を含むエフェクター機能を保有する、
使用。
【請求項9】
がんの診断または治療のための医薬の製造における、請求項1もしくは2に定義されるペプチドもしくはMHC分子と結合する請求項1もしくは2に定義されるペプチドであるHLAリガントと反応する、可溶性T細胞受容体または膜結合性T細胞受容体の使用であって、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、または
がんの診断または治療のための医薬の製造における、請求項1もしくは2に定義されるペプチドもしくはMHC分子と結合する請求項1もしくは2に定義されるペプチドであるHLAリガントと反応する、可溶性T細胞受容体または膜結合性T細胞受容体の使用であって、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択され、
前記T細胞受容体が、可溶性分子として提供され、免疫刺激ドメインまたは毒素を保有する、
使用。
【請求項10】
がんの診断または治療のための医薬の製造における、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを提示する細胞を選択的に認識する活性化Tリンパ球の使用であって、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、使用。
【請求項11】
患者における標的がん細胞を死滅するための医薬の製造における、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを提示する細胞を選択的に認識する活性化Tリンパ球の使用であって、
前記標的がん細胞は配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるペプチドを提示し、
前記がんが、口腔がん、口腔扁平上皮がん(OSCC)、H.ピロリ(H.pylori)誘発性MALTリンパ腫、子宮頸がん、ヒト乳がん、膵管腺がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、ユーイング肉腫、子宮内膜がん、頭頸部扁上皮がん、喉頭の上皮がん、口腔がん、異型髄膜腫、乳頭状甲状腺がん、唾液管がん、リンパ節外T/NK-細胞リンパ腫、頭頸部がん、メルケル細胞がん、子宮がん、胆管がん、前立腺がん、浸潤性乳頭がん、および/または原発性腹膜がんからなる群から選択される、使用。
【請求項12】
前記医薬はさらにアジュバントを含む、または
前記医薬はさらにアジュバントを含み、前記アジュバントはインターロイキンである、または
前記医薬はさらにアジュバントを含み、前記アジュバントはIL-2および/またはIL-15である、
請求項10または請求項11に記載の使用。
【請求項13】
a)個々の患者から腫瘍サンプルによって提示される腫瘍関連ペプチド(TUMAP)を同定するステップと;
b)a)で同定された前記ペプチドを、正常組織との比較で腫瘍における免疫原性および/または過剰発現について予備選別されたペプチド貯蔵庫を比較するステップと;
c)ペプチドを、前記個々の患者において同定されたTUMAPと一致する貯蔵庫から選択するステップと;
d)ステップc)に基づいて、個別化ワクチンまたは化合物ベースおよび/または細胞療法剤を作成および/または処方するステップと
を含んでなる、個々の患者のための個別化抗がんワクチンまたは化合物ベースおよび/または細胞療法剤を生産する方法であって、
前記貯蔵庫は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを含む、
方法。
【請求項14】
以下の(1)~(4)からなる群から選択される1つまたは複数の手段を含む、請求項13に記載の方法:
(1)前記TUMAPが、
(a1)前記腫瘍サンプルからの発現データを前記腫瘍サンプルの組織型に対応する正常組織サンプルからの発現データと比較して、前記腫瘍サンプルにおいて過剰発現されまたは異常に発現されるタンパク質を同定するステップと
(a2)前記発現データを、前記腫瘍サンプル中のMHCクラスIおよび/またはクラスII分子と結合しているMHCリガントの配列と相関させて、前記腫瘍によって過剰発現されまたは異常発現されるタンパク質に由来するMHCリガンドを同定するステップとによって同定される;
(2)結合ペプチドを前記腫瘍サンプルから単離されたMHC分子から溶出させて、溶出リガンドを配列決定することで、MHCリガンドの配列が同定される;
(3)前記腫瘍サンプルの組織型に対応する正常組織が、同一の前記個々の患者から得られる;
(4)前記貯蔵庫に包含される前記ぺプチドの免疫原性が、生体外免疫原性アッセイ、MHC多量体染色、ELISPOTアッセイおよび/または細胞内サイトカイン染色を含んでなる方法によって判定される。
【請求項15】
前記個々の患者からの正常な対応する組織と比較して前記腫瘍サンプルに特有の少なくとも1つの変異を同定するステップと、前記ワクチンに包含するために、または細胞療法剤を作成するために、前記変異に関連があるペプチド選択するステップとをさらに含んでなる、または
前記個々の患者からの正常な対応する組織と比較して前記腫瘍サンプルに特有の少なくとも1つの変異を同定するステップと、前記ワクチンに包含するために、または細胞療法剤を作成するために、前記変異に関連があるペプチド選択するステップとをさらに含んでなり、前記少なくとも1つの変異が、全ゲノム配列決定によって同定される、
請求項13または14に記載の方法。