(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130473
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】改善された塊茎保存
(51)【国際特許分類】
A01N 27/00 20060101AFI20220830BHJP
A23B 7/154 20060101ALI20220830BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20220830BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20220830BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A01N27/00
A23B7/154
A01P21/00
A01N25/30
A01N25/04 101
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022096004
(22)【出願日】2022-06-14
(62)【分割の表示】P 2020151501の分割
【原出願日】2015-10-20
(31)【優先権主張番号】14189559.9
(32)【優先日】2014-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】517139716
【氏名又は名称】アリスタ ライフサイエンス ベネルクス エスピーアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ピロット
(57)【要約】 (修正有)
【課題】塊茎の保存のための改善された方法を提供する。
【解決手段】本発明は、塊茎、特にジャガイモの芽の除去処置のための方法に関し、好ましくは高濃度のリモネン組成物の噴霧によるものである。前記組成物の総重量に対するリモネンの重量として、少なくとも50%のリモネン、及び1以上のエマルション安定化界面活性剤を含み、少なくとも700g/lのリモネン、及び1以上のエマルション安定化界面活性剤を含む乳剤(EC)の形態である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芽を有する塊茎の芽の除去のための、噴霧による適用に好適な組成物であって、
前記組成物の総重量に対するリモネンの重量として、少なくとも50%のリモネン、及び1以上のエマルション安定化界面活性剤を含み、
少なくとも700g/lのリモネン、及び1以上のエマルション安定化界面活性剤を含む乳剤(EC)の形態であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
10重量%未満の溶媒を含む請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品保存の技術分野、特に塊茎の保存、好ましくはジャガイモ(potato)の塊茎の保存に関する。より詳細には、本発明は、植物由来の活性成分であるリモネンによる塊茎の処置に関する。本発明は、青果物の分野に対して特に重要である。
【背景技術】
【0002】
ジャガイモなどの塊茎の保存は、2℃~10℃の温度で行われることが好ましい。しかしながら、この温度では、ジャガイモは、デンプンを糖に変換し、ジャガイモ中の糖を保存し、それによってより甘い食味となる。フレンチフライ試験(French fries test)においては、このようなジャガイモは、調理すると、かなり早く茶色に変色する(フライカラー)。これによって、ジャガイモの質が低くなる。
【0003】
ジャガイモ中の糖の蓄積に対する解決策は、ジャガイモをより高い温度で保存することであり、ジャガイモを市場に出す前に2、3週間程度約15℃で保存することが好ましい。この期間で、ジャガイモ内の糖レベルは、低下するが、ジャガイモは、芽や新芽を形成し始める。芽の形成に伴って、ジャガイモは、有害なグリコアルカロイドを生成し始める。これらの分子は、調理中に破壊されない。このプロセスによって、ジャガイモは売り物にならなくなる。
【0004】
幾つかのジャガイモの保存は、気候制御ユニットを装備せず、保存内の温度は、天候状況に依存する。倉庫内の温度が充分に低く維持できないと、ジャガイモは芽を形成し始める。したがって、他の処置方法、特に長い期間の保存が必要とされる。
【0005】
合成の芽の阻害剤が知られている。3-クロロフェニルイソプロピルカルバメート(CIPC)は、クロルプロファムとしても知られ、ジャガイモ、球根、塊茎において、芽の形成がごく僅かである休眠状態をもたらす(活動の予防形態)。しかしながら、CIPC処置は、処置された塊茎上にCIPCの残渣の膜を残す。この残渣は、処置された農作物を、青果物として市場に出荷されることを不向きにする。この市場区分において、実用的には、残渣レベルは、許容的ではない(最大4ppm~10ppm)。
【0006】
マレイン酸ヒドラジドは、芽の形成を抑制する他の成長調節物質である。収穫前に、フィールド上の作物の葉にマレイン酸ヒドラジドを適用するが;その摂取率は、フィールド条件次第である。マレイン酸ヒドラジドは、ジャガイモなどの作物によって摂取され、比較的長い期間塊茎の中に保存される(活動の予防形態)。最大の残渣レベルは、50ppmである。したがって、マレイン酸ヒドラジドを用いた処置は、青果物市場区分へ出荷される農作物において、許容できるものではない。
【0007】
食品農作物上の殺虫性残渣についての消費者意識度の高い度合い、及び生物学的に生成された野菜に対する高い要求によって、CIPC及びマレイン酸ヒドラジドなどの合成の芽の阻害剤の効果的な代替物に対する要求がある。バイオ-市場区分において許容されるために、代替の処置は、再生可能資源に基づき、残渣を残さないことが好ましい。
【0008】
代替として、幾つかのテルペン類が研究されてきた。特許文献1では、ジャガイモの出芽を阻害する能力の点で、モノテルペン及びその酸化物の研究が報告された。7日後、1.70mg/Lのヘッドスペース濃度で、リモネンは、ジャガイモの出芽に影響はなかったと結論付けられた。9.2リットルのデシケーターフラスコ中に2mlのリモネンを浸した濾紙に対して、曝露して処置された3つの出芽していないジャガイモは、芽を含むくぼみ(eyes)が0%である数値を示した。作用形態は、提供されていない。保存期間は、明示されていない。
【0009】
公知の天然の代替物としては、活性成分としてR-カルボンを有するスペアミント油がある。スペアミント油は、出芽を止めるのに効果的であるが、ジャガイモ上においては、ミントの味を残し、フライカラー試験(fry colour test)においてネガティブな効果が観察されることがある。ミント油もまた、コストがかかりすぎるようである。
【0010】
他の代替物は、活性成分としてS-カルボンを有するカラウェー油及び活性成分としてオイゲノールを有するチョウジ油である。いずれも、食味における影響を及ぼし、現在用いられている合成の抗出芽剤よりも更により価格が高い。
【0011】
特許文献2では、ジャガイモの処置のための液体組成物を用いた霧処置方法が開示される。実施例の1つは、7重量%の非イオン乳化剤及び33重量%の酢酸ブチル溶媒を含む60重量%リモネン組成物を用いる。処置のプロトコルは、保存の開始で45g/トン、20日毎に15g/トンからなり、それによって6ヶ月超でジャガイモ1トン当たり165gの活性成分を施す。5ヶ月の期間後、リモネン処置したジャガイモは、非処置のコントロールで観察されたものに近い重量損失(4.5%vs5.4%)及び芽の生育(96.8%vs100%;CIPCにおける18%と比較して)を示した。
【0012】
特許文献3では、熱による噴霧(thermal fogging)技術を用いてジャガイモにおける芽の形成を制御する方法が開示される。処置後125日間で、16.6ppmのCIPCと16.6ppmのリモネンとの組合せによる使用は、97%が新鮮なパック使用に対して不向きであると示した。平均で1mm超である芽を有する塊茎は、新鮮なパックに対して許容できないと考えられた。
【0013】
したがって、当技術分野において、塊茎の保存のための、特にジャガイモの塊茎のための更なる代替の処置方法を提供する要求がある。
【0014】
本産業は、例えば、CIPC(クロルプロファム)と匹敵するレベルの有効性を提供する芽の抑制因子に対する代替を積極的に探している。有機の市場へ売り、より厳しい制限を有する市場へ輸出する栽培者は、代替の選択肢を強く探している。幾つかの国では、ゼロトレランスポリシーを課してさえいる。生鮮品市場に対する要求によって、消費者に売られるジャガイモに残ることがあるCIPC残渣の量に対して、ますます厳しい制限が課されてきている。
【0015】
ジャガイモ生産産業は、新しい経済的且つ効果的な代替品から利益を得ることが明確である。
【0016】
本発明は、塊茎、特にジャガイモの塊茎の保存のための改善された方法を提供することを目的とする。特に、本発明は、青果物市場に対して許容できる処置された塊茎を提供することを目的とする。好適な組成物も提供される。
【0017】
【特許文献1】WO92/10934
【特許文献2】WO00/32063
【特許文献3】US 5,811,372
【発明の概要】
【0018】
本発明は、改善された塊茎の保存のための方法を提供し、芽を有する塊茎に対して、前記芽を取り除くのに有効な量で、組成物を適用する工程を含み、前記組成物は、前記組成物の総重量に対するリモネンの重量として、少なくとも50%のリモネンを含む。
【0019】
驚くべきことには、濃縮されたリモネン組成物の適用によって、塊茎中の幼芽の形成が、効果的に処置されることができることが分かった。適切な用量のリモネンと接触した幼芽は、落下した。初期の発生段階にまだある幼芽に関しては、芽の除去は、塊茎に跡を残さなかった。この段階は、5mmより短い芽として、記載されることができる。リモネンの揮発性の利点としては、処置が農薬残渣を残さないことである。
【0020】
したがって、本発明は、芽の阻害剤の代替物を提供する。CIPCのような合成の芽の阻害剤の使用は、回避されることができる。前記処置は、コストが低いため、経済的に実現可能である。
【0021】
本発明の方法に従って処置されたリモネン処置された塊茎は、リモネン残渣の不在によって特徴づけられる。塊茎の風味は、リモネン処置によって影響されない。リモネン処置された塊茎は、フライ試験において、良好に働いた。リモネンで処置されたジャガイモは、加工産業及び青果物市場で用いられることができる。
【0022】
更なる態様においては、本発明は、芽を有する塊茎から芽を除くための、噴霧による適用に好適な組成物を提供し、前記組成物の総重量に対して、リモネンの重量として、前記組成物は、少なくとも50%のリモネンを含む。
【0023】
噴霧のためのリモネン系組成物は、噴霧装置からの製品の流出を低減する又は回避さえもすることができるという点で有利である。リモネンよりも低い揮発性を有する従来の組成物は、噴霧装置から来る液体の流出を示した。この流出した液体は、しみを生成した。アプリケーター(applicator)としては、これは、洗浄を必要とするので望ましくない。
【0024】
本発明において用いられる「噴霧」という用語は、散布のための、霧の形態による農薬の気化及び前記農薬の適用を意味する。噴霧は、噴霧器又は霧気スプレー器(fogair sprayer)によって行われる。このタイプの装置は、当業者にはよく知られる。噴霧器は、燃料タンク、配合物タンク、ポンプ、噴霧ノズル、噴霧コイル、ウォーターポンプ、及びコントロールからなることができる。
【0025】
更なる形態においては、本発明は、塊茎の芽の除去剤としてのリモネンの使用を提供する。好ましい実施形態においては、前記塊茎は、ジャガイモである。
【0026】
リモネンは、例えば、オレンジ油など、天然源からであるので有利である。それは、再生可能な原料である。リモネンの使用は、処置を受けた芽を有する塊茎が、青果物市場でも、まだ売れることを可能にする。前記処置は、リモネン残渣を残さないので、食味に影響を及ぼさず、ほとんど跡を残さない。
【0027】
好ましい実施形態は、従属請求項の形態でもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、ジャガイモのフライ試験の結果の図式的な表示を提供する。棒グラフにおいて、種々の処置を受けたジャガイモのカラースコアが、示される。
【0029】
【
図2】
図2は、ジャガイモの食味試験の結果の図式的な表示を提供する。ジャガイモは、種々の処置を受けた。食味試験で得られたスコアは、棒グラフに示される。
【0030】
【
図3】
図3は、ジャガイモの種々の処置の処方計画における芽の重量で表された処置結果を示す。コントロール以外は、各キャビンは、3回の種々の時期で処置された。
【0031】
【
図4A】
図4Aは、ジャガイモの試験結果のグラフ表示を示す。
【
図4B】
図4Bは、ジャガイモの試験結果のグラフ表示を示す。
【
図4C】
図4Cは、ジャガイモの試験結果のグラフ表示を示す。 Y軸では、芽の重量が表され、芽(g)/ジャガイモ(kg)で表される。X軸では、用量率が、3週間毎の処置間隔によって、ジャガイモ1トン当たりの配合された製品(ml)で表される。表示Aで示されるバーは、低温噴霧による適用を表し、表示Bで表されるバーは、高温噴霧による適用(電気による噴霧(electrofog))を表す。
図4Aは、保存後5ヵ月に得られたデータを示し、
図4Bは、保存後6ヵ月に得られたデータを示し、
図4Cは、保存後7ヵ月に得られたデータを示す。
【0032】
【
図5】
図5は、高温噴霧による適用(電気による噴霧)によって得られたジャガイモの試験結果の棒グラフ表示を示す。ジャガイモの品種であるビンチェ(中程度に長い~長い休眠)、ニコラ(Nicola)(中程度に長い休眠)、シャーロット(Charlotte)(長い休眠)における試験について、結果が表される。使用された製品は、CIPC又はオレンジ油(BIO024、x%リモネン)であった。適用された用量は、製品(ml)/トンで表される。適用の頻度も提供される。第1のCIPC試験では、2014年11月5日に、12gの活性成分が適用され、2014年12月31日に、8gの活性成分が適用され、2015年2月25日に、8gの活性成分が適用され、2015年4月22日に、8gの活性成分が適用された。第2の試験:CIPC(保存時)+9週間後に、BIO024を3週間毎。第3の試験:CIPC(保存時)+3週間後に、BIO024を3週間毎。第4の試験:166mlのBIO024を5週間毎。第5の試験:133mlのBIO024を4週間毎。第6の試験:100mlのBIO024を3週間毎。第7の試験:66mlのBIO024を2週間毎。第8の試験:33mlのBIO024を毎週。第9の試験:非処置。保存後5ヶ月で結果を記録した。
【発明を実施するための形態】
【0033】
パラメーター、量、経時的期間など測定可能な値に関する、本明細書中で用いられる、「約」は、明記された値から、35+/-20%以下の変動、好ましくは+/-10%以下の変動、より好ましくは+/-5%以下の変動、更により好ましくは+/-1%以下の変動、一層より好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含し、開示された発明がこのような変動内において適切に働く意味である。しかしながら、修飾語句である「約」が言及する値は、それ自身で具体的に開示されたものであることが理解されよう。
【0034】
終了点までの数値範囲の列挙は、その範囲及び列挙された終了点の中において包含された全ての数及び小数(fractions)を含む。
【0035】
ここで及び明細書中において、「重量%」又は「wt%」(重量パーセント)という用語は、特段の定義がない限り、配合物の総重量に対して、それぞれの成分の相対的な重量を指す。
【0036】
本明細書中で用いられる、「塊茎」という用語は、植物が、養分を蓄え、冬や乾燥する月を生き残れるために拡大された、改変された植物の構造物を指す。これらは、再成長の及び無性生殖のために、エネルギー及び養分を提供する。これらは、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、サツマイモ(Ipomoea batatas)、キャッサバ(Manihot esculenta)、ヤムイモ(Dioscorea)、及びダリアなどの作物で見られる。
【0037】
本明細書中で用いられる、「芽」、「新芽」、又は「幼芽」という用語は、同義語である。これらの用語は、塊茎からの非常に早い植物の生長物を指す。
【0038】
本発明は、芽を有する塊茎から芽を除くための、噴霧による適用に好適な組成物を提供し、前記組成物の総重量に対して、リモネンの重量として、前記組成物は、少なくとも50%のリモネンを含む。
【0039】
好ましい実施形態においては、前記噴霧組成物は、少なくとも50重量%のリモネンを含む。前記噴霧組成物は、前記組成物の総重量に対して、少なくとも55重量%、60重量%、65重量%、70重量%のリモネン又はそれ以上を含むことがより好ましい。
【0040】
本発明の実施形態に係る組成物は、前記組成物の総重量に対して、少なくとも50重量%のリモネン、好ましくは60重量%のリモネン、より好ましくは70重量%のリモネン、更により好ましくは80重量%のリモネン、最も好ましくは少なくとも90重量%のリモネンを含む。より希釈された製品と比較して、高いリモネン含量は、配送及び保存される必要のある組成物の体積を少なくできるため有利である。
【0041】
好ましくは、前記組成物は、前記組成物の総体積に対して、100%の純度を有する活性成分量で表される、少なくとも500g/lのリモネン、好ましくは少なくとも600g/lのリモネン、より好ましくは700g/lのリモネン、更により好ましくは800g/lのリモネン、最も好ましくは900g/lのリモネンを含む。
【0042】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、植物又は植物の一部から生成された油を意味する精油を含む。精油の存在によって、処置剤を更に天然のものにし、生成において持続可能な資源を用いる。多くの場合、精油は、農業の副産物であり、これらの副産物の適用は、作物を生育すること以外に、より高い経済的価値を生み出すことができることが知られる。
【0043】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、精油のみ又は精油の混合物を含む。このことによって、前記組成物が完全に天然であるため、有利である。
【0044】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、オレンジ油を含む。オレンジ油は、90%超のD-リモネン(リモネンの鏡像異性の純粋な形態)からなる。オレンジ油のリモネン含量は、油が生成されるオレンジの品種及びオレンジが生育される地域に左右される。オレンジ油は、FDAによって、「一般的に安全と認識される」ものと分類され、食品へのオレンジ油の添加が承認される。オレンジ油の価格は、ミント油、チョウジ油、又はカラウェー油の価格よりも遥かに安価であり、そのことによって、オレンジ油が最も経済的に支持される選択肢とさせている。オレンジ油は、ミント油が含むほどのメントールを含まないので、処置された塊茎、好ましくはジャガイモの食味に影響を及ぼさない。ミント油で処置されたジャガイモが得るミント風味の一因となるものは、メントールである。
【0045】
より好ましい実施形態においては、前記オレンジ油は、工業等級オレンジ油(CAS 94266-47-4);食品等級オレンジ油(CAS 8028-48-6)又はコールドプレスオレンジ油の一覧からなる群から選択される。当業者であれば、活性物質としての一覧(SANCO/12083/2013 rev 3,2013)、基準参照ISO3140:211及びヨーロッパ薬局方5.0,2005から、オレンジ油及びその特性を熟知している。
【0046】
他の実施形態においては、前記柑橘油は、オレンジ油、レモン油、ライム油、グレープフルーツ油、及びタンジェリン油からなる群から選択される。
【0047】
より好ましい実施形態においては、前記組成物は、オレンジ油のみであり、任意の添加物又は任意の溶媒を含まない。オレンジ油のみを使用することで、前記方法が完全に天然のものとなり、生物学的に生産された青果物を得ることを好適にする。これらの青果物は、他の合成の抗出芽剤で処置された青果物よりもより高い価格で売られることができる。
【0048】
他の実施形態においては、界面活性剤は、リモネン含有組成物に添加される。界面活性剤の選択は、好ましくは、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、セスキオレイン酸ソルビタン、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレート、ポリエチレングリコールアルキレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリコールジエーテル、ラウロイルジエタノールアミド、脂肪酸イソ-プロパノールアミド、マルチトールヒドロキシ脂肪酸エーテル、アルキル化ポリサッカライド、アルキルグリコシド、糖エステル、アルコキシル化アルコール、親油性グリセロールモノステアレート、自己乳化型グリセロールモノステアレート、ポリグリセロールモノステアレート、ポリグリセロールアルキレート、脂肪族アルコールアルコキシレート、ソルビタンモノオレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレン蜜蝋、又はこれらの組合せの一覧から選択される非イオン界面活性剤であることが好ましい。
【0049】
他の好ましい実施形態においては、前記界面活性剤は、アニオン性界面活性剤である。前記アニオン性界面活性剤は、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、N-アシルグルタミン酸ナトリウム、及びこれらの組合せの一覧から選択されることが好ましい。
【0050】
好ましい実施形態においては、前記リモネン組成物は、水乳化性組成物(EC)の形態であり、50重量%超、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、又は60重量%超のリモネン、及び乳化性界面活性剤を含む。好ましい実施形態においては、前記組成物は、前記組成物の総重量に対して、65%超、好ましくは70%超、最も好ましくは71重量%超のリモネンを含む。最も好まれる組成物は、典型的には、前記組成物の総重量に対して、71重量%~72重量%のリモネン含量を含む。
【0051】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、水及び任意の有機溶媒(オレンジ油又はリモネンを除く)を実質的に含まない。本発明において用いられる「実質的に溶媒を含まない」という用語は、前記組成物の総重量に対して、10重量%未満、好ましくは5重量%未満の溶媒を含む組成物を意味する。「溶媒」という用語は、他の物質を溶解し、溶液を形成する物質を意味する。
【0052】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、微量の溶媒、すなわち、0.1%未満の溶媒は除くことができないものの、10重量%未満の溶媒、好ましくは5重量%未満の溶媒を含み、溶媒を含まないことが最も好ましい。ここで、パーセントは、いずれも重量対重量である。好ましい実施形態においては、前記組成物は、微量の水、すなわち、0.1%未満の水は除くことができないものの、5%未満の水を含み、水を含まないことが最も好ましい。ここで、パーセントはいずれも重量対重量である。
【0053】
本発明に係る組成物中に存在する非イオン性界面活性剤は、非イオン性高分子界面活性剤であることが好ましい。前記高分子界面活性剤は、アルコキシル化アルコールがより好ましく、脂肪族アルコールアルコキシレートが更により好ましく、好ましくは脂肪族アルコール、最も好ましくはイソ-トリデカノールアルコキシレート、更に最も好ましくはイソ-トリデカノールペンタ-エトキシレートのエトキシレート及び/又はプロポキシレートが最も好ましい。界面活性剤は、いずれも重量対重量で、5%~40%の量で存在することが好ましく、10%~20%の量がより好ましく、12%~13%の量が最も好ましい。リモネンを水に添加すると、水の上に油層を形成し、界面活性剤の添加によって、水中のリモネンの安定したエマルションをもたらす。
【0054】
本明細書中で用いられる「脂肪族アルコール」という用語は、少なくとも4個、好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも8個、更により好ましくは少なくとも10個、最も好ましくは少なくとも12個の炭素原子を有する炭素鎖の長さを含む、線状又は分岐状アルコールを意味する。好ましくは、前記脂肪族アルコールは、22個未満の炭素原子、より好ましくは20個未満の炭素原子、最も好ましくは18個未満の炭素原子の炭素鎖の長さを含む。前記アルコールは、第一級アルコールであることが好ましい。より好ましくは、前記アルコールは、4~22個の炭素鎖原子、最も好ましくは8~14個の炭素鎖原子の炭素鎖の長さを含む第一級アルコールである。
【0055】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、湿潤剤を含む。それによって前記組成物を水に添加した後に形成されるエマルションの表面張力を低下させることを助ける。この低下した表面張力は、塊茎の表面を広く塗布することを助ける。
【0056】
実質的に水を含まない組成物は、先行技術で一般的に用いられる湿潤剤を許容しない。湿潤剤は、一般的に水溶性アニオン性界面活性剤である。これらの界面活性剤は、対イオンが、一般的にカルシウムイオン、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、又はカリウムイオンであるため、安定した溶液を形成するために水を必要とする。
【0057】
アニオン界面活性剤は、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、セチル硫酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、パルミチン酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、及びN-アシルグルタミン酸ナトリウム、及びこれらの組合せなどの薬剤を含む。
【0058】
本発明に係る組成物中の湿潤剤は、アニオン性界面活性剤であることが好ましく、そのアニオン性部分がアルキルベンゼンスルホン酸塩であることが好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸塩であることがより好ましい。カチオン性対イオンとしては、トリエチルアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウム(tertrabutylammonium)イオン、又は他のテトラ-アルキルアンモニウムイオン、テトラフェニルホスホニウム(tertraphenylphosphonium)イオン、又は他のテトラ(tertra)-アルキルホスホニウムイオン又は金属-イオン及びクラウンエーテルの組合せの一覧から選択されることが好ましい。
【0059】
好ましい実施形態においては、前記湿潤剤は、エタノールアミンアルキルベンゼンスルホネートであることが好ましい。好ましい実施形態においては、前記湿潤剤は、トリエタノールアンモニウムドデシルベンゼンスルホネート(CAS:27323-41-7)である。このアニオン及び対イオンの組合せは、リモネン以外の溶媒を含むことなく、前記湿潤剤を組成物中で溶解することを可能にする。活性成分以外の溶媒がない、リモネン及びこのタイプの界面活性剤の乳化性組成物は、良好な冷温保存安定性を有することが分かった。前記冷温保存安定性は、-20℃~5℃、好ましくは-10℃~4℃、より好ましくは-5℃~3℃、最も好ましくは-4℃~0℃の温度範囲で提供されることが好ましい。CIPAC MT 39.3:液体配合物の低温安定性に準拠し、7日間の期間で保存した組成物に対して、低温保存安定性を測定した。サンプルを0℃で1時間保持し、その後分離した固体又は油状物の体積を記録した。0℃における保存を7日間続け、いずれの固体物も遠心分離にかけ沈殿させ、その体積を記録した。測定方法は、当業者によく知られる。
【0060】
前記湿潤剤は、好ましくは5%~25%、より好ましくは10%~20%、最も好ましくは15%~16%の量で乳化性組成物中に存在し、前記組成物の総重量に対して重量パーセントで表される。
【0061】
好ましい実施形態においては、前記リモネン組成物は、非イオン性界面活性剤及びアニオン性界面活性剤のいずれも含む。
【0062】
本発明の好ましい実施形態においては、前記リモネン組成物は、550g/l~750g/lのリモネン及び1以上のエマルション安定化界面活性剤を含む乳剤(EC)の形態である。本発明に係るリモネン組成物は、600g/l~650g/lのリモネン及び240g/l~260g/lの前記1以上のエマルション安定化界面活性剤を含むことが好ましい。
【0063】
前記リモネン含有組成物は、界面活性剤として、アルコキシル化脂肪族アルコール及びエタノールアミンアルキルベンゼンスルホネートの組合せを含むことが最も好ましい。
【0064】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、抗酸化剤を含む。前記抗酸化剤は、ジフェニルアミン、エトキシキン、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール及び2-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールの混合物であるBHA、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールに相当するBHT、アスコルビン酸、トコフェロール、及びポリフェノールの一覧から選択されることが好ましい。抗酸化剤の存在によって、リモネンが酸化することを防止することができる。例えば、ボトルを空けた後、微量の酸素が、組成物又はボトルのヘッドスペースに入り込むことがある。これは、リモネン酸化物が潜在的な感作物質であるため有利である。
【0065】
前記抗酸化剤は、いずれも全組成物の重量対重量で、好ましくは1%未満、より好ましくは0.5%未満、最も好ましくは0.1%未満で存在する。
【0066】
好ましい実施形態においては、前記抗酸化剤は、BHT又はBHAである。前記組成物は、いずれも全組成物の重量対重量で、好ましくは1%未満のBHT又はBHA%、より好ましくは0.5%未満のBHT又はBHA%、最も好ましくは0.1%未満のBHT又はBHA%を含む。
【0067】
噴霧用のリモネン系組成物は、噴霧装置からの製品の流出を低減する又は回避さえもすることができる点で有利である。
【0068】
本発明は、リモネン(すなわち、CIPC(すなわち、合成の活性成分)のような芽の阻害剤の替わりとなることができる植物由来の活性成分)を用いた処置プロトコルを提供する。前記処置は、コストが低いため、経済的に実現可能である。
【0069】
特に、本発明は、改善された芽の保存のための方法を提供し、芽を有する塊茎に対して、前記芽を取り除くのに有効な量で、組成物を適用する工程を含み、前記組成物は、前記組成物の総重量に対するリモネンの重量として、少なくとも50%のリモネンを含む。
【0070】
芽の除去は、芽が存在することで売り物にならないとみなされたジャガイモの回復を可能にする。本発明に係るリモネン含有組成物は、好ましくは、ジャガイモ上への噴霧によって適用され、それによって芽が「なくなる(burn off)」。ある程度の(considerable)サイズの芽については、芽は、ジャガイモの表面に残されるが、低品質のジャガイモとして売れることができる。これらの処置されたジャガイモは、ジャガイモを加工する産業に売られることが好ましい。
【0071】
好ましい実施形態においては、芽は、15mm未満であり、10mm未満がより好ましく、7mm未満が更により好ましく、5mm、4mm、3mm、2mm、1mmより短いことが最も好ましい。青果物市場においては、芽は、1mm以下である。
【0072】
驚くべきことには、濃縮されたリモネン組成物の適用によって、塊茎中の幼芽の形成が、効果的に処置されることができることが分かった。リモネンと接触した幼芽は、落下する。初期の発生段階にまだある幼芽に関しては、目に見える芽をまだ示さず(白点段階(white point stage))、芽の除去は、塊茎に跡を残さない。この段階は、5mmより短い芽として、記載されることができる。実質的な芽の生長を避ける効果的な用量及び間隔におけるリモネンの繰り返された適用によって、合成の活性成分を用いた処置の替わりとなることができる。これは、塊茎、特にジャガイモが青果物として売られることができるので、かなり有利である。
【0073】
本発明に係るリモネン処置の効能は、驚くべきものであった。なぜなら、当業者がジャガイモを含む塊茎の発芽の抑制について、リモネンを不活性分子であると考えたことを先行技術文献が示してきたからである。しかしながら、本発明は、塊茎、好ましくはジャガイモの保存処置のためのリモネン含有組成物を用いた効果的な方法を提供する。
【0074】
前記リモネンの適用は、噴霧によるものが好ましい。本発明において用いられる「噴霧」という用語は、散布のための、霧の形態による農薬の気化及び前記農薬の適用を意味する。噴霧は、噴霧器又は霧気スプレー器によって行われる。噴霧器は、燃料タンク、配合物タンク、ポンプ、噴霧ノズル、噴霧コイル、ウォーターポンプ、及びコントロールからなることができる。
【0075】
好ましい実施形態においては、前記組成物の適用は、低温噴霧によって実施される。本明細書中で用いられる、「低温噴霧」という用語は、好ましくは40℃より高く加熱されず、より好ましくは、30℃以下、更により好ましくは20℃以下、最も好ましくは10℃以下であって、前記組成物が加熱されないことを意味する。好ましくは、前記低温噴霧は、―10℃より高い温度、より好ましくは0℃より高い温度、最も好ましくは5℃より高い温度で行われる。リモネン又はオレンジ油は、揮発性の可燃性液体であるので、噴霧装置中の熱源の存在は、火災危険を示すことがある。更に、低温噴霧は、高温噴霧と比較して、熱による劣化が少なくなる、又はなくなることさえあるので、有利である。低温噴霧は、任意の燃料を使用せず、且つ貯蔵室で排気ガスが排出されない。これらの排気ガスは、ジャガイモ中の糖レベルに影響を及ぼし、高温噴霧による霧の適用後、貯蔵室が換気されるこのような理由を解決した。この換気は、貯蔵室の条件を乱し、最適値へ戻る条件を回復するために余分のエネルギーを必要とする。
【0076】
他の好ましい実施形態においては、組成物の適用は、高温噴霧によって実施される。高温噴霧によって得られる製品の液滴は、低温噴霧によるものよりも大きい傾向がある。高温噴霧の使用によって、低温噴霧と比較して、製品のより良好な広がりが、塊茎上で得られることができる。
【0077】
好ましい実施形態においては、前記組成物は、塊茎1トン当たり60ml~400mlのリモネン、好ましくは70ml~300ml、より好ましくは80ml~200ml、最も好ましくは塊茎1トン当たり約90mlの初期用量で適用される。この初期用量について、好ましくは保存と同じ日、より好ましくは保存後1週間、更により好ましくは保存後2週間、最も好ましくは保存後1ヶ月に適用される。この用量は、積み重ねられた塊茎の中央部に十分高く到達して、例えば積み重ねの底部における塊茎と積み重ねの頂部における塊茎に同じ効果を引き起こす。
【0078】
好ましい実施形態においては、前記リモネン含有組成物の適用は、3日間毎~6週間毎、好ましくは、5日間毎~4週間毎、より好ましくは、1週間毎~3週間毎、最も好ましくは、2週間毎に繰り返される。より頻度多く繰り返されると、芽は形成されないが、処置剤は消耗される。より少ない頻度で繰り返されると、芽は大きくなり、処置後、芽があった塊茎の外側に、目に見える斑点が存在するであろう。これらの斑点は、塊茎の価値を損なう。
【0079】
好ましい実施形態においては、前記リモネン含有組成物は、最初の適用の後、塊茎1トン当たり20ml~300ml、好ましくは30ml~300ml、より好ましくは60ml~200ml、最も好ましくは塊茎1トン当たり90mlのリモネンの後続用量で適用される。この用量で、積み重ねの底部及び頂部は、完全に処置される。
【0080】
好ましくは、本発明に係る処置の方法は、長期間(すなわち、3ヶ月間超、好ましくは5ヶ月間超、より好ましくは7ヶ月間超、更により好ましくは9ヶ月間超、最も好ましくは11ヶ月間まで保存)保存された後でも、15mmより長い芽を示さず、示される芽が好ましくは10mm未満、より好ましくは7mm未満、最も好ましくは5mm未満である塊茎を提供する。保存期間は、4ヶ月間~8ヶ月間が好ましい。
【0081】
代替の好ましい実施形態においては、最初の適用は、貯蔵室に入るときに、塊茎上に組成物を噴霧するのではなく、スプレー、湿潤、液浸、ドレンチング(drenching)、シャワー、浸漬、湿し(dampening)、ドリズリング(drizzling)、又はダウジング(dousing)することによって行われる。最初の適用は、より早く、前記組成物の噴霧よりも少ないエネルギーを必要とするということで有利である。
【0082】
好ましい実施形態においては、前記方法は、貯蔵室で行われる。前記貯蔵室は、環境を制御できるように、塊茎、好ましくはジャガイモを保存するように設計されていることが好ましく、塊茎、好ましくはジャガイモのみを収容するのみであることが好ましい。前記貯蔵室は、温度制御システムを装備していることが好ましく、湿度制御システムを装備していることが更により好ましい。
【0083】
好ましい実施形態においては、処置される塊茎は、ジャガイモである。前記ジャガイモは、生鮮市場で売られる予定であることが好ましい。これらのジャガイモは、残渣を含まないので、より高い価格で売られることができる。
【0084】
更なる態様においては、本発明は、本発明に係る方法で入手できるリモネン処置された塊茎を提供する。本発明の方法にしたがって処置された塊茎は、リモネン残渣の不在によって特徴づけられる。前記塊茎の風味は、リモネン処置によって影響されない。
【0085】
好ましい実施形態においては、前記塊茎は、ジャガイモである。ジャガイモは、経済価値のある作物である。破棄を減らすことができるということは、興味深い。売れないものから低価格で売れるものへのジャガイモの回復は、大量生産の点から特に興味深い。
【0086】
好ましい実施形態においては、本発明に係る方法で処置されたジャガイモは、Munsell USDA カラー試験に準拠して決定された、2.5未満のフライカラーを有する。リモネン処置は、色の形成にネガティブな影響を及ぼさないことが分かった。本発明に係る方法で処置されたジャガイモは、非処置のジャガイモと比較して、食味試験において良好に働くことができる。
【0087】
好ましい実施形態においては、ジャガイモの塊茎は、レディー・クリストル(Lady Christl)のような短い休眠期間、より好ましくはデザレイ(Desiree)、シャーロット、ビンチェのような中程度から長い休眠期間、最も好ましくはアグリア(Agria)及びエルメス(Hermes)のような長期間から非常に長期間の休眠を有する栽培品種からである。
【0088】
他の好ましい実施形態においては、ジャガイモの塊茎は、ラセット・バーバンク(Russet Burbank)、レンジャー・ラセット(Ranger Russet)、ユーマティラ・ラセット(Umatilla Russet)、シェポディー(Shepody)、ノーコター・ラセット(Norkotah Russet)、ユコン・ゴールド(Yukon Gold)、ノルチップ(Norchip)、ゲム・ラセット(Gem Russet)、アトランティック(Atlantic)、チペタ(Chipeta)、スノーデン(Snowden)、シャーロット、ダーク・レッド・ノーランド(Dark Red Norland)、ニコラ、ビンチェ、及びイノベーターから選択される栽培品種からである。ジャガイモの塊茎は、ビンチェ又はイノベーターの栽培品種からであることがより好ましい。
【0089】
更なる態様においては、本発明は、塊茎の芽の除去剤としての、好ましくはジャガイモの芽の除去剤としての、より好ましくは、ジャガイモの芽の除去用の噴霧剤としての、リモネンの使用を提供する。
【0090】
リモネンは、天然源からであるので有利である。それは、再生可能な原料である。リモネンの使用は、処置を受けた芽を有する塊茎が、青果物市場でも、まだ売れることを可能にする。リモネンは、揮発性油であり、処置後、前記リモネンは、1日未満で揮発するので、処置された塊茎に残渣を残さない。これらの処置された塊茎は、翌日塊茎にリモネン残渣が存在しないので、市場に売りに出されることができる。処置は、食味に影響を及ぼさず、ほとんど跡を残さない。
【0091】
本発明は、実施例を示し、より詳細に記載されるが、これらに限定されない。
【0092】
実施例1:噴霧で使用するための組成物の調製
塊茎の処置のための低温噴霧における使用に好適な組成物を下記の通り調製した。オレンジ油、食品グレードを出発材料として選択した。このリモネンリッチのテルペン油に、乳化性界面活性剤、具体的に非イオン性界面活性剤及びイオン性界面活性剤を添加した。組成物は、リモネン抗酸化剤を更に含んだ。リストされた組成物に、溶媒は添加しなかった。組成物は、表1に提供される。
表1:600ECリモネン組成物、製品コード BCP425D
【表1】
【0093】
実施例2:塊茎処置
第2の実施例、実施例1に係る600ECリモネン組成物の使用について、ジャガイモの処置が示される。処置のスケジュールは、表2にまとめられる。
【0094】
本実施例において、10の等しい量のジャガイモ(20kgのビンチェ及び20kgのイノベーター)を5つの種々のキャビンで処置した。第1のキャビンは、コントロールとして働く。第1のキャビンでは、処置剤を適用しなかった。
表2:処置のスケジュール
【表2】
【0095】
キャビン2に、噴霧によってNeonet500HNを適用した。活性成分は、クロルプロファム(CIPC)である。製品は、ジャガイモ1,000kg当たり、7,5mlの用量で3週間毎に適用した。最初の適用は、収穫後2週間後に行った。
【0096】
キャビン3では、活性成分としてカルボンを含むミント油を有するBIOX-Mを用いた。最初の適用は、収穫後2週間で、1,000kgのジャガイモ当たり90mlの濃度で行った。この適用の後、次の適用は、1,000kgのジャガイモ当たり30mlの用量であった。
【0097】
キャビン4では、活性成分としてリモネンを有する実施例1に係る組成物を用いた。最初の適用は、収穫後2週間で、1,000kgのジャガイモ当たり90mlの濃度で行った。この適用の後、次の適用は、1,000kgのジャガイモ当たり30mlの用量であった。
【0098】
キャビン5では、活性成分として600g/lのリモネンを有する、キャビン4で用いられたものと同じ組成物を用いた。最初の適用は、収穫後2週間で、1,000kgのジャガイモ当たり90mlの濃度で行った。同じ用量で、3週間毎に、適用を繰り返した。
【0099】
全てのキャビンで、最初の処置は、収穫後2週間である10月22日であった。ジャガイモは、翌年2月5日、3月4日、及び4月4日に芽の形成について調査した。ジャガイモの各量において、重量損失を求め、芽の指標(sprout index)を求め、芽の重量を測定した。
【0100】
各キャビンで、収穫後約4ヶ月、約5ヶ月、及び約6ヶ月に相当する種々の3つの時期における、「イノベーター」という品種のジャガイモのグラムで表された芽の重量は、
図3に示される。
【0101】
これらのデータから、我々は、リモネンは、それ自身が処置剤として用いられる十分な有効性を有したことを結論づけた。リモネンは、ジャガイモ上に残渣を残さず、ミント油と比較して、ジャガイモの食味や香りにおいてネガティブな影響を及ぼさなかった。
【0102】
実施例3:低温噴霧による適用
本願では、リモネンを含む組成物の低温噴霧の技術が示される。処置のプロトコルは、表3にまとめられる。
【0103】
品種「イノベーター」のジャガイモは、直接フィールドから取り込まれた。洗浄及び等級区分は行わなかった。塊茎に関する特別なコメントは、報告されなかった。塊茎の質は良好だった。ジャガイモの各袋(sack)を量り、11月12日に処置のセル(cell)に置いた。
【0104】
処置をセルの中程度の高さで行われるように、セルを充填した。試験に必要とされる袋の上方及び下方であるセルの残りは、ジャガイモで充填した。総計は、セル当たり±3,400kgとなった。
【0105】
各セルにおいて、各処置は、12ネットの±20kgのジャガイモ;4回の繰り返し、3つのサンプリング、及び観察日で表される。
【0106】
表3にまとめられたプロトコルに従って製品を適用した。袋詰め及びセルの頂部との間のセルの上部において、セル1は、FOG GENERATOR IGEBA TF-35を用いた熱噴霧によって、セル2、3、及び4は、ジャガイモのミスト機VEUGENを用いて低温噴霧によって行った。
【0107】
セルにおける、ジャガイモ品種「イノベーター」上の最初の高温及び低温噴霧の適用を11月21日に行った。そのときから、週ごとに、又は3週間間隔で、翌年の3月27日まで低温噴霧の適用を行い、それぞれ合計で19回及び7回の適用に相当した。
【0108】
翌年、2回目の高温噴霧処置を1月2日に、3回目の高温噴霧処置を2月13日に、最後の高温噴霧処置を3月27日に行った。
【0109】
用いられた噴霧プロトコルは、下記の通りである。保存中、保存施設内の気温は、5。0℃~9.5℃に維持された。相対湿度は、87%~100%に維持された。
【0110】
高温噴霧に用いられた適用装置は、IGEBA TF-35という機器であり、低温噴霧に用いられた適用装置は、VEUGENのタイプ:FOGCOLという機器であった。機器を操作し、操作圧力は、3.3Barであった。
【0111】
低温及び高温噴霧条件は、局所(local)の保存プラクティスで得られたものと同じであった。
-処置前約15分間、自動調節をオフにし、手動の内部換気をオンにし(フォースIII)、用いられた換気率は、約900m
3/hに相当する。それは、留まる空気循環をかきまわす。
-セル中の塊茎の正確な重量が分かるので、配合された製品の正確な量を、算出し、調製した。
-スプレー/噴霧の間及びスプレー後約15分間まで、内部換気のスイッチをオンにしたままにし(フォースIII)、製品と塊茎との間の良好な接触を保証した。
-スプレー後約15分、内部換気のスイッチをオフにした。
-(スプレーの終わった後最小12時間)の後の日に、次の適用まで又は試験の終わりまで、自動調節のスイッチをオンにした。
表3:処置のプロトコル
【表3】
【0112】
キャビン1では、保存された農作物は、Neonet500HNで処置した。これは、活性成分としてクロルプロファムを500g/lの濃度で有する製品であり、高温噴霧濃縮物(HN)、すなわち、直接に又は希釈後のいずれかに高温噴霧器具による適用に好適な配合物として利用可能である。10ml/1,000kgの適用を用いた6週間後、20ml/1,000kgを用いた第1の適用を繰り返した。
【0113】
キャビン2では、保存された農作物は、高温噴霧濃縮物の形態で、ミント油の製品であるBiox-Mで処置した。30ml/1,000kgの低い用量で3週間後、90ml/1,000kgを用いた最初の処置を繰り返した。
【0114】
キャビン3では、600gリモネン/リットルにおけるオレンジ油乳剤(EC)を使用した。90ml/1,000kgの最初の用量率を用い、その後50ml/1,000kgを3週間の間隔で繰り返し適用した。
【0115】
キャビン4では、キャビン3で用いられた同じオレンジ油乳剤を適用した。1,000kgの保存された農作物に対して、最初の用量は、150mlであり、7日後、その後また7日間の間隔で、1,000kgの保存された農作物当たり50mlにおける適用を繰り返した。
【0116】
キャビン5は、非処置試験として働き、製品を適用しなかった。
【0117】
実施例4:品質管理
実施例2に記載される処置から得られた処置された農作物における品質管理試験を実行した。ジャガイモ材料について、2つの種々の、食味試験及びフライカラー試験は、それぞれ、リサーチセンターであるPCA及びCRA-Wで行われた。
【0118】
PCA-評価
フライカラー試験を、CKA-標準法を用いて行い、the Munsell USDA Frozen French Fry Standardに準拠し、フライの色を評価した。
【0119】
フレンチフライは、3分間180℃で焼いた(baked)。評価は、20個のフライで行った。
【0120】
カラーインデックスは、3又は4よりも低くなくてはいけなかった。少なくとも80%のフレンチフライは、色のクラスが000、00、0、1、又は2であり、良好な質を有するべきである。
【0121】
食味試験に関しては、ジャガイモを10個のスライスにカットし、その後蒸気で茹でた。食味の審査員団によって、食味について評価された。これらを1から9までの値で評価した。ここで、表4に示される等級によると、1は、「非常に悪い」又は「味がない」を意味し、9は、「非常に良い」又は「強い(strong)」を意味する。
【0122】
図1にフライの色に対する結果、
図2に食味試験に対する結果を示す。
【0123】
CRA-W評価
ジャガイモのフライの質を試験するために、1cm×1cmの幅を有する塊茎の中心から取られた「中心の」フライ20個があった。それらを水ですすぎ、その後短時間、好ましくは10分間で乾燥した。乾燥後、それらを3分間熱油に置いた。油の温度は180℃であった。フライした後、その色をカラーカードと比較し、スコアをつけた。
【0124】
フライの色を表す、フライ品質(frying quality)の指標が低いことは、色がより明るい(淡黄色)ことを意味する。数値が上がると、これらは色が濃くなっていく(茶色)。
【0125】
等級は、下記のとおりである。
2.5以下:優良、2.5~3.0:良好、3.0~3.5:中程度、3.5~4.0:並、及び4.0超:悪い
【0126】
食味の評価は、ジャガイモの味覚について熟知した6人の審査員によって行われた。評価を食味室で行った。下記の等級は、前記評価に用いられるものであった(表4)。
表4:食味強度を評価するための格付け等級
【表4】
【0127】
フレンチフライが消費のために調理されるのと同じ方法で、評価の20サンプルを2回にかけて揚げた。一回目に揚げる間、160℃で4分間揚げた。2回目に揚げるとき、180℃で2分間揚げた。各サンプルに対して、6人の審査委員会のレシーバー(jury receiver 6)は誰も、フレンチフライに塩分を加えなかった。
【0128】
図1にフライの色に対する結果、
図2に食味試験に対する結果を示す。ミント油と比較すると、食味又はにおいの問題はなかった。
【0129】
合わせた試験結果
図1は、両方のフライ色試験の試験結果を表す。本試験は、毎週の適用を含む本発明の第1の態様に係る方法が、Mussel USDA カラー試験において、非処置のサンプル及びミント油で処置したサンプルよりも、より良好な成果(値が低いと良好である)を有することを示す。リモネンを含む組成物の適用において、3週間毎の間隔は、ミント油の適用よりも更に良好である。
【0130】
図2は、両方の食味試験からの結果を示す。リモネンを用いる処置の方法は、非処置のジャガイモと比較して、ジャガイモの食味を改善する(高い値は、最も良好な味に相当する)。一方、ミント油を用いる方法は、非処置のジャガイモと比較して、食味試験において悪く働く。
【0131】
実施例6:オレンジ油を用いる処置
袋詰め及びセルの頂部との間の保存セルの上部において、ジャガイモのミスト機VEUGENを用いた低温噴霧による適用を介して、3週間毎に、100%のオレンジ油を用いて、ジャガイモを処置した。
【0132】
用いられた噴霧プロトコルは、下記の通りである。保存中、保存施設内の気温は、5.0℃~9.5℃に維持された。相対湿度は、87%~100%に維持された。
【0133】
-処置前約15分間、自動調節をオフにし、手動の内部換気をオンにし(フォースIII)、用いられた換気率は、約900m3/hに相当する。それは、留まる空気循環をかきまわす。
-セル中の塊茎の正確な重量が分かるので、配合された製品の正確な量を、算出し、調製した。
-スプレー/噴霧の間及びスプレー後約15分間まで、内部換気のスイッチをオンにしたままにし(フォースIII)、製品と塊茎との間の良好な接触を保証した。
-スプレー後約15分、内部換気のスイッチをオフにした。
-(スプレーの終わった後最小12時間)の後の日に、次の適用まで又は試験の終わりまで、自動調節のスイッチをオンにした。
【0134】
実施例7:オレンジ油を用いた処置、結果
品種:ビンチェ、イノベーター、及びニコラからのジャガイモを保存室で保存し、抗出芽処置における種々の製品で、各保存室(試験番号)を処置した。表5は、各保存室の処置条件を表す。BIO-024は、少なくとも900gのリモネン/リットルを含むオレンジ油を表す。BIOX Mは、抗出芽剤として商業的に利用可能なミント油系の製品の商標名である。Gro Stop fogは、ジャガイモの出芽の処置のためのCIPC含有製品の商標名である。
【0135】
2月11日、3月11日、4月8日、及び5月6日に取られたサンプルの新鮮な芽の重量及び重量損失の概要を表7に示す。結果から、現在の天然のCIPCの代替物であるBIOX Mと比較して、100ml/トンの組成物を用いた3週間毎の処置は、新鮮な芽の重量を低下させることを実証する。450gリモネン/トン又は450ppmに相当する50ml/トンにおける処置は、CIPC又はミント油によって得られる制御のレベルに到達するには十分効果的ではなかった。10月11日から、全ての農作物が噴霧によって適用された後の翌年5月16日まで保存を行った。
表5:処置条件
【表5】
処置スケジュールの概要は、表6で確認できる。
表6:処置の日付
【表6】
【0136】
重量損失のパーセンテージは、下記式を用いて算出した。
重量損失(%)=((保存荷積み時の重量-保存荷降ろし時の重量(芽を除く))/保存荷積み時の重量)×100
【0137】
フレンチフライのフライ品質を評価した(品種:イノベーター及びビンチェ)。塊茎を洗浄し、皮を剥いた。20個のフレンチフライスティックは、20個の塊茎から切り落とし(各塊茎から1つのスティック)、揚げた。各フレンチフライの色は、000から4までの7つのカテゴリー(000=非常に明るい色(最も高品質)~4=暗褐色))を有するUSDA指標スケールを用いて評価した。
【0138】
フライ指標(1~6)を算出した。
フライ指標=(0*n000+1*n00+2*n0+3*n1+4*n2+5*n3+6*n4)/nの合計(n=各カテゴリー毎のフライの数)
【0139】
サンプル毎の全ての芽を量ることで、新鮮な芽の重量を評価した。芽の重量は、1.0kgのジャガイモの標準的なサイズのサンプルに対して算出した。
新鮮な芽の重量(g)=新鮮な芽のサンプル重量/(荷降ろし時のサンプル重量-芽)
表7:新鮮な芽の重量及び重量損失
【表7】
表8:保存後の芽の平均量
【表8】
表9:保存後の平均重量損失
【表9】
表10:保存後のフライ品質
【表10】
【0140】
実施例8
スペアミント油処置とオレンジ油処置との間の比較を行った。スペアミント油処置は、主にカルボン(65%~85%)をベースとし、電気による噴霧のために配合させた製品であるBiox Mを用いた。オレンジ油処置は、リモネン(少なくとも900gのリモネン/リットル)の含量を増加させたオレンジ油であるBIO024を用いた。処置の1つのグループとしては、低温噴霧(グループA)であり、他のグループとしては、高温噴霧、詳細には電気による噴霧によるものであった。非処置試験も同様に含まれた。処置条件(保存温度、換気、湿度、用いられた品種、荷積み/荷降ろし/散布)は、同じであった。ジャガイモは、2014年9月23日に収穫し、2014年9月30日に実験用の保存室に積んだ。ジャガイモを乾燥し、その後7℃まで冷却した。最初の適用は、2014年10月21日に行われた。
【0141】
保存の種々な時間間隔(
図4A:保存後5ヶ月、
図4B:保存後6ヶ月、
図4C:保存後7ヶ月)における結果を
図4にまとめる。9つのオレンジ油処置によって、1トン当たり675ml~1,350mlの配合された製品を使用した(9×75ml~9×150mlの配合された製品)。Biox-Mに関しては、最初の適用が90mlで、その後30mlの適用を9回行い、合計が310ml/トンとなった。
【0142】
結果から、オレンジ油処置が最も良好な芽の生長制御を提供したことを結論づけた。直接接触することで、オレンジ油は働く。ジャガイモの表面を覆った良好な広がりは、均一な制御を提供するために必要とされる。図面から、低温噴霧によるものよりも高温噴霧によって得られたものが良好であるということが分かる。これは、高温噴霧が生成する液滴が小さいため、製品の広がりが良好になるためである。用量を反映する明確な関係が、75mlと100mlとの間にあるが、100mlと150mlとの間にはない。3週間の間隔でジャガイモ1トン当たり100mlの配合された製品の用量は、最も良好な制御を提供した。効能は、効いている効果に基づいていると考えられる。
【0143】
結論として、オレンジ油/リモネン処置は、長期期間に亘り、マレイン酸ヒドラジド又はCIPCなどの従来の化学的な処置がなくても十分な芽の制御を提供したことが実証される。スペアミント油系のBiox-Mと比較して、良好な芽の制御を提供した。更に、フライの製造においても、加工されたジャガイモにミント味が残らない。
【0144】
実施例9
高温噴霧によるジャガイモの品種(ビンチェ、シャーロット、及びニコラ)上のBIO024(940g/lのオレンジ油)の適用における幾つかのタイミングでの評価を行った。結果を
図5にまとめる。
【0145】
参考として、非処置試験及びCIPC 500HN(500g/lのクロルプロファム)を用いた処置も含まれる。処置は、活性物質の全用量が同じである。適用当たりの用量率は、用いられた適用の頻度に準拠して適用される。繰り返しは4回行われた。ユニットあたりの気温は、8.3℃~10.4℃であり、相対湿度は、試験の開始で90%であり、試験中は99%であった。
【0146】
第1の試験では、CIPCのみに基づく処置スケジュールを用いた。2014年11月5日に12グラムの活性成分を適用し、その後2014年12月31日に8gの活性成分を適用し、2015年2月25日に8gの活性成分を適用し、2015年4月22日に8gの活性成分を適用した。全部で、4つの処置によって、1年当たり、ジャガイモ1トン当たり36gの最大許容量が適用された。
【0147】
第2の試験では、12gの活性成分に相当する24mlのCIPCが配合された製品を保存時に適用した。保存後9週間で、90gのリモネンに相当する100mlのBIO024を適用した。この後に、3週間毎に100mlのBIO024の処置を行った。これは、全部で6回の処置に相当した。第3の試験では、24mlのCIPCが配合された製品を保存時に適用した。保存後3週間に100mlのBIO024を適用し、その後3週間毎に100mlのBIO024の処置を行った。これは、全部で8回の処置に相当した。
【0148】
第4の試験では、5週間毎に、全部で6回の処置で、166mlのBIO024を適用した。第5の試験では、4週間毎に133mlのBIO024を適用し、7回の処置に相当した。第6の試験では、3週間毎に100mlのBIO024を適用し、9回の処置に相当した。第7の試験では、2週間毎に、全部で14回の処置で66mlを適用した。第8の試験では、毎週、全部で27回の処置で33mlのBIO024を適用した。第9の試験では、処置は行われなかった。
【0149】
結果から、製品を単独で用いると、3週間毎における100mlのBIO024(又は90gのリモネン)の投与計画(dosage regime)は、最も良好な芽の制御を提供することが分かる。より少ない単一の用量且つ短い適用頻度(例えば、毎週33mlのBIO024)を用いて、又は高い単一の用量及び長い適用頻度(例えば、4週間毎に133mlのBIO024)を用いた同じ量の活性成分の運用は、単独で用いた製品の効能を低下させる。
【0150】
100mlの処置における、減少させた用量(12gの活性成分)におけるCIPCとオレンジ油(活性成分のリモネン)との組合せは、今回使われているCIPC適用スキーム(12gの用量の後、8gを3回適用、ジャガイモ1トン当たり36gの活性成分の合計量を提供する)と比較して、同様の制御を提供した。揮発性があり、且つ浸透性(systemic)作用がないことで、リモネンは、残渣として発見されない。このスキームで、芽の制御の効能を維持しつつ、CIPCの量を減らすことができる。保存時に(保存開始時に)CIPCを使用すると、CIPCの適用と、保存からジャガイモを取り出す間の期間を、CIPCの残渣が青果物市場区分に許容できるレベルへ減少させるのに十分な長さとなる。