(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130501
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】エレクトロコンピテント酵母細胞を調製する方法および前記細胞を使用する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/64 20060101AFI20220830BHJP
C40B 40/10 20060101ALI20220830BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220830BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12N15/64 Z
C40B40/10
C12N1/19
C12P21/02 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022097799
(22)【出願日】2022-06-17
(62)【分割の表示】P 2019521754の分割
【原出願日】2017-11-13
(31)【優先権主張番号】102016121899.5
(32)【優先日】2016-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】506258073
【氏名又は名称】イマティクス バイオテクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(72)【発明者】
【氏名】バンク,ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】マウラー,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ウェンフェルドルベン,フェリックス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気穿孔による酵母の形質転換方法を提供する。
【解決手段】培養した酵母細胞を冷水で洗浄後、ソルビトールとCaCl2とを含んでなる冷溶液で洗浄し、ソルビトールを含んでなる溶液に再懸濁することにより、エレクトロコンピテント酵母細胞を調製するステップと、該細胞をソルビトールを含んでなる冷溶液で洗浄し、形質移入されるDNAと混合し電気穿孔前混合物を形成するステップと、該電気穿孔前混合物を適切な電気穿孔キュベットに移し入れるステップと、該細胞を2.5kV/cm~12.5kV/cmで2~5ミリ秒間電気穿孔するステップとを含んでなる、電気穿孔による酵母の形質転換方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)酵母細胞を1.0~2のOD600に培養するステップと;
b)前記細胞を冷水で洗浄するステップと;
c)前記細胞をソルビトールとCaCl2とを含んでなる冷溶液で洗浄するステップと;
d)前記細胞を酢酸リチウムとトリス2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)とを含んでなる溶液中でインキュベートするステップと;
e)前記細胞をソルビトールとCaCl2とを含んでなる冷溶液で洗浄するステップと;
f)前記細胞をソルビトールを含んでなる溶液に再懸濁するステップと;
g)任意選択的に、前記細胞を適切に保存するステップと
を含んでなる、エレクトロコンピテント酵母細胞を調製する方法。
【請求項2】
a)請求項1に記載の方法によるエレクトロコンピテント酵母細胞を提供するステップと;
b)前記細胞をソルビトールを含んでなる冷溶液で洗浄するステップと;
c)前記細胞を形質移入されるDNAと混合し、電気穿孔前混合物を形成するステップと;
d)前記電気穿孔前混合物を適切な電気穿孔キュベットに移し入れるステップと;
e)前記細胞を2.5kV/cm~12.5kV/cmで2~5ミリ秒間電気穿孔するステップと
を含んでなる、エレクトロコンピテント酵母細胞を形質移入する方法。
【請求項3】
前記DNAが線状または環状である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記DNAが、例えば酵母表面ディスプレイライブラリーの形態である、目的のタンパク質のライブラリーをコードするDNA断片のライブラリーを含んでなる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ディスプレイライブラリーが、T細胞受容体(TCR)ライブラリーである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記形質転換効率が、1×108酵母形質転換体/μgベクターDNAよりも高く、好ましくは2×108酵母形質転換体/μgベクターDNAよりも高い、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法
【請求項7】
a)請求項2~6のいずれか一項に記載の方法による形質移入された酵母細胞を提供するステップと;
b)前記形質移入細胞を増殖培地中でソルビトール溶液の1:1混合物に希釈するステップと;
c)細胞を適切な増殖培地中に再懸濁するステップと;
d)任意選択的に、多様性の計算のために希釈を実施して、前記希釈液をカナマイシンを含有するSD-CAAプレート上播に種するステップと;
e)前記ライブラリーを適切な増殖培地に移し入れ、前記ライブラリーを電気穿孔毎に拡大するステップと;
f)任意選択的に、前記拡大されたイブラリーを適切に保存するステップと
を含んでなる、例えば酵母表面ディスプレイライブラリーの形態である、目的のタンパク質の改善された酵母ライブラリーを生成する方法。
【請求項8】
前記ディスプレイライブラリーが、T細胞受容体ライブラリーである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ライブラリーの多様性が、1012よりも高い、請求項7または8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵母細胞の改善された酵母形質転換と、それによって形質転換された酵母細胞ライブラリーに関する。より具体的には、本発明は、電気穿孔による酵母の形質転換に関する。
【背景技術】
【0002】
多年にわたり、がん治療の基礎は、手術、化学療法、および放射線療法であった。過去10年間にわたり、主にそれらの細胞上に見られる特定の分子変化を追尾することによってがん細胞を標的化する薬物である、イマチニブ(Gleevec(登録商標))やトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))のような標的療法もまた、いくつかのがんの標準治療法として浮上してきている。
【0003】
現在、患者の免疫系の力を利用して疾患と闘う治療法である、免疫療法がますます盛んになっている。免疫療法の1つのアプローチは、患者自身の免疫細胞を操作し、腫瘍を認識して攻撃することを伴う。養子細胞移入(ACT)と称されるこのアプローチは、進行がんを有する患者でいくつかの顕著な応答を生じた。
【0004】
典型的には、天然T細胞受容体(TCR)は、治療有効性を達成するのに十分に高い親和性を有することが期待されているものの、例えば、可溶性TCR(sTCR)などの治療用TCRまたはそれらの誘導体を開発する場合、通常は生体内で生産的免疫応答を引き出すために、いわゆる親和性成熟が所望/要求される。
【0005】
成熟のために、酵母表面ディスプレイ技術を用いる方法が、一般的に用いられる。それにもかかわらず、十分な多様性を有するライブラリーを作製するためには、酵母形質転換のための非常に効率的な方法が必要である。
【0006】
例えば、TCR、またはそれらの可溶性類似体を開発して、潜在的な治療薬の基礎を提供し得るように、特定の抗原に特異的に結合する天然のα鎖配列およびβ鎖配列から本質的になるTCRを同定することが、長い間望まれてきた。同定されたTCRによって認識される抗原は、がん、ウイルス感染症、自己免疫疾患、寄生虫感染症、および細菌感染症などの疾患と関連していてもよい。したがって、このような療法は前記疾患の治療に使用され得る。
【0007】
さらに、ひとたび天然または固有のTCRが同定されてそれらの配列が決定されれば、必要に応じて、親和性または半減期の増加をもたらす変異が導入され得る。伝統的に、がんウイルス抗原、自己免疫抗原、または細菌抗原などの疾患関連抗原に特異的に結合するTCRを同定する試みは、ボランティアドナーから採取された血液サンプルの使用に限定されてきた。このようなサンプルを使用して、疾患関連抗原に結合する、T細胞およびそれらの対応するTCRが単離される。このアプローチは、一般に少なくとも20人のドナーを必要とする。その過程は長くそして労働集約的であり、抗原結合T細胞受容体が同定されるという保証はない。機能性T細胞受容体が同定された場合、それらはしばしば抗原に対する弱い親和性、低い特異性を有し、および/または生体外で適切に折り畳まれない。スクリーニングできるT細胞の多様性は、ドナー内のT細胞の多様性に限定される。大部分のがん抗原をはじめとするいくつかの疾患関連抗原は、自己抗原であり;胸腺選択は自己抗原を認識するTCRを除去する役割を果たすので、疾患関連抗原に特異的なTCRは、ドナーの天然のレパートリーには存在しないこともあり、そうでなければ抗原に対して弱い親和性を有することもある。
【0008】
抗原結合特異性を有する新たなTCRを単離するためのライブラリーを設計する試みが、数年間続けられている。TCR鎖は安定性が低く、しばしば正しく提示されないので、TCRライブラリーは、同等の抗体ライブラリーよりも作製がはるかに困難である。TCRのライブラリーを構築することに伴う複雑さは、非常に大きい。(天然のレパートリーに見られるように)CDR3長の多様性を維持することが好ましい。いかなるライブラリーもかなりの部分は、停止コドン、フレームシフト、折り畳みの問題、およびHLA複合体に決して結合できないTCR鎖組み合わせのために、一般に失われる。多数の可変αおよび可変β遺伝子、ならびにJおよびD遺伝子を考慮に入れると、一緒になって必要な特異性を有する抗原ペプチドに結合するTCRを形成する、機能性の折り畳みα鎖および機能性の折り畳みβ鎖を作製して同定する見込みは極めて低い。
【0009】
酵母などの真核細胞系における、核酸ライブラリーの作製手段、およびそれによって生成される医薬タンパク質などの組換え産物の利用可能性は、大腸菌(E.coli)などの原核細胞系の使用と比較して、顕著な利点を提供する。酵母は一般的に細菌よりも高い細胞密度に培養され得て、連続発酵工程に容易に適応できる。しかし、組換え産物およびライブラリーの作製のための宿主/ベクター系としての酵母種の開発は、形質転換条件に関する知識の欠如、および外来核酸を酵母宿主細胞に安定に導入する適切な手段の欠如によって、著しく妨げられている。
【0010】
細胞の電気的形質転換を促進する様々な電気的および生物学的パラメータには、細胞表面へのDNAの吸着がある。低強度の電界交代もまた、おそらくDNAパーミアーゼの電気刺激によって、大腸菌(E.coli)細菌へのDNA移入を促進する。高分子電解質DNAの電気穿孔遺伝子移入に対する、優勢な電気拡散または電気泳動効果の証拠が、蓄積している。電気穿孔によって促進される、電気浸透効果および膜陥入もまた報告されている。
【0011】
酵母細胞膜を横切る電界の印加は、電気穿孔工程にとって重要な一時的な孔の形成をもたらす。電気穿孔装置シグナル発生器は、電極間の間隙(cm単位)を横切って移動する電圧(kV単位)を提供する。この電位差はいわゆる電界強度を画定し、EはkV/cmに等しい。各細胞は、最適電気穿孔のためのそれ自身の臨界電界強度を有する。これは、細胞サイズ、膜の構成、および細胞壁それ自体の個々の特性に起因する。例えば、哺乳類細胞は、典型的には、細胞死および/または電気穿孔が起こる前に、0.5〜5.0kV/cmを必要とする。一般に、必要な電界強度は細胞の大きさに反比例して変化する。
【0012】
欧州特許第2257638A1号明細書は、電気穿孔による酵母の形質転換方法に関する。これらには、細胞コンディショニング剤としての酢酸リチウム(LiAc)とジチオトレイトール(DTT)の組み合わせが含まれ、これらはどちらも酵母形質転換の頻度を高めるために使用されている。表2に示されるように、DTTはまたはLiAc前処理の除外は、それぞれ93.3%および85.7%の効率低下をもたらした。
【0013】
同様に、Smith et al.(in:T Cell Receptor Engineering and Analysis Using the Yeast Display Platform.Methods Mol Biol.2015;1319:95-141)は、抗原の結合における、ペプチド-MHC(pepMHC)リガンドとしてのTCRに関する研究を開示している。現在、抗体を使用して実施されているのと同様の方法で、このクラスの分子を使用するために、TCRの親和性を操作することに関心が寄せられてきた。TCRを操作し、それらの結合特性をより迅速に分析するために、彼らは、プラットフォームとして酵母ディスプレイ系を使用した。抗体由来のscFvフラグメントに類似した、一本鎖形態のTCRの発現および操作は、TCRが種々の可能なpepMHCリガンドによって親和性成熟できるようにする。さらに、酵母ディスプレイプラットフォームは、多様な結合親和性を有するTCR変異体を迅速に生成し、可溶性形態のTCRを精製する必要なしに、特異性および親和性を分析できるようにする。この論文は、酵母ディスプレイを用いて、一本鎖TCRを操作し分析するための方法を記載している。
【0014】
酵母ライブラリーは、ファージライブラリーによって達成されたサイズまたは効率を達成しておらず、典型的な最大ファージライブラリーサイズが1010~1011であるのに対して、典型的な酵母ライブラリーは107のサイズである。電気穿孔プロトコルにおける最近の進歩(Chao,Nature Protocols 1(2):755-768(2006)を参照されたい)は、単回形質転換において最大5×107の酵母ライブラリーサイズを達成することを可能にしたが、これまでのところ達成されている酵母ライブラリーのサイズが、ファージディスプレイライブラリーによって日常的に達成可能な、101010~1011サイズよりも依然として顕著に低いことは、依然として正しい記述である。
【0015】
上記の方法および開示は、ますます高い変換効率を達成しながらも依然として面倒であり、106~107サイズ範囲の複数の小さなライブラリーを、108~109サイズ範囲のより大きな統合ライブラリーサイズに蓄積するために、著しい時間と反復努力を要する。
【0016】
磁気ビーズおよび蛍光活性化細胞選別の双方を用いた酵母ディスプレイライブラリー選択は、特に蛍光活性化細胞選別(FACS)との適合性により、標的抗原に対する特異的バインダーを濃縮するための効率的かつ高感度の方法を提供する。しかし、この選択能力の利点は、酵母細胞の形質転換効率が低いことに起因する、典型的な酵母ディスプレイライブラリーの限られたサイズによって妨げられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、酵母を使用して、例えばTCRライブラリーなどのタンパク質ライブラリーを作製するための効率的な方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様では、a)酵母細胞を約1.0~2のOD600に培養するステップと;b)細胞を冷水で洗浄するステップと;c)細胞をソルビトールとCaCl2とを含んでなる冷溶液で洗浄するステップと;d)細胞を酢酸リチウムとトリス2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)とを含んでなる溶液中でインキュベートするステップと;e)細胞をソルビトールとCaCl2とを含んでなる冷溶液で洗浄するステップと;f)細胞をソルビトールを含んでなる溶液に再懸濁するステップと;g)任意選択的に、前記細胞を適切に保存するステップとを含んでなる、エレクトロコンピテント酵母細胞を調製する方法が提供される。
【0019】
本発明は、それによって、例えば、改善された酵母細胞ライブラリーの作製ために、酵母細胞を形質転換する非常に効率的な方法を提供する。本発明の方法は、これまで研究されていないはるかに大きなTCR多様性空間にアクセスするための実用的なツールとして、酵母ディスプレイ技術を適用する際の重大なボトルネックを取り除く。
【0020】
次に本発明のさらに別の態様は、a)本発明による方法によるエレクトロコンピテント酵母細胞を提供するステップと;b)細胞をソルビトールを含んでなる冷溶液で洗浄するステップと;c)細胞を形質移入されるDNAと混合し、電気穿孔前混合物を形成するステップと;d)前記電気穿孔前混合物を適切な電気穿孔キュベットに移し入れるステップと;e)前記細胞を約2.5kV/cm~約12.5kV/cmで約2~約5ミリ秒間電気穿孔するステップとを含んでなる、エレクトロコンピテント酵母細胞を形質移入する方法に関する。
【0021】
前記DNAが線状または環状である、本発明による方法が好ましい。より好ましいのは、前記DNAが、例えば酵母表面ディスプレイライブラリーの形態である、目的のタンパク質のライブラリーをコードする、DNA断片のライブラリーを含んでなる、本発明による方法である。最も好ましいのは、前記ディスプレイライブラリーがT細胞受容体(TCR)ライブラリーである、本発明による方法である。
【0022】
トリス2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)を還元剤として使用することで、本発明による方法の形質転換効率が、DTTと比較してより高いことが驚くことに分かり、例えば、1×108酵母形質転換体/μgベクターDNAよりも高く、好ましくは2×108酵母形質転換体/μgベクターDNAよりも高い。
【0023】
次に、本発明のさらに別の態様は、a)本発明による方法による形質移入された酵母細胞を提供するステップと;b)形質移入細胞を増殖培地中でソルビトール溶液の1:1混合物に希釈するステップと;c)細胞を適切な増殖培地中に再懸濁するステップと;d)任意選択的に、多様性の計算のために希釈を実施して、前記希釈液をカナマイシンを含有するSD-CAAプレート上に播種するステップと;e)前記ライブラリーを適切な増殖培地に移し入れ、前記ライブラリーを電気穿孔毎に拡大するステップと;f)任意選択的に、前記拡大されたイブラリーを適切に保存するステップとを含んでなる、例えば酵母表面ディスプレイライブラリーの形態である、目的のタンパク質の改善された酵母ライブラリーを作製する方法に関する。
【0024】
好ましいのは、前記ディスプレイライブラリーがT細胞受容体ライブラリーである、本発明による方法である。好ましいのは、前記ライブラリーの多様性が約1012よりも高い、発明による方法である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の文脈では、「発現ベクター」という用語は、自律複製部位(ARS)と、転写開始部位と、宿主生物において発現されるタンパク質をコードする少なくとも1つの構造遺伝子とを含む、DNAコンストラクトを意味する。複製部位、または複製起点は、クローニングおよび発現ベクターの複製を制御する、任意のDNA配列である。発現ベクターはまた、通常、宿主酵母におけるタンパク質の発現を制御する、1つまたは複数のエンハンサーおよび/またはプロモーター、サプレッサーおよび/またはサイレンサー、ならびにターミネーターなどの適切な制御領域も含有する。本発明による発現ベクターは、本明細書に記載されるような必須遺伝子を含んでなる選択マーカーもまた含有してもよい。発現ベクターは、一般的に利用可能で当業者に周知であるその他の選択可能なマーカーもまた、任意選択的に含有する。発現ベクターは、ベクターの一種である。ベクターは、1つまたは複数の酵母株に由来する、1つまたは複数のARS配列(要素)を任意選択的に含んでもよい。
【0026】
「作動可能に連結された」という用語は、DNAセグメントがそれらの意図された目的のために協調して機能するように配置されていることを意味し、例えば、転写はプロモーター中で開始し、コーディングセグメントを通じてターミネーターまで進行する。
【0027】
「形質転換」または「形質移入」という用語は、遺伝子型を変化させる、DNAまたはその他の核酸の受容体酵母宿主細胞への導入を意味する。
【0028】
「形質転換体」または「形質転換細胞」という用語は、形質転換を受けた受容体酵母宿主細胞およびその子孫を意味する。
【0029】
特に断りのない限り、「約」は所与の値の+/-10%を意味するものとする。
【0030】
本発明の電気穿孔法において有用なベクターとしては、酵母細胞によって増殖され得る、pYDベクター、その他の任意のベクター、およびそれらの誘導体コンストラクト、あるいは核酸全般が挙げられる。本発明の発現ベクターは、ベクターが宿主酵母細胞を形質転換、形質移入または形質導入できさえすれば、任意の種類のベクターに基づいてもよい。好ましい実施形態では、発現ベクターは、特にS.セレビシエ(S.cerevisiae)由来のものである、酵母プラスミドに基づく。酵母細胞の形質転換後、ライブラリー配列をコードする外因性DNAは、細胞に取り込まれ引き続いて形質転換細胞によって発現される。
【0031】
より好ましくは、発現ベクターは、大腸菌(E.coli)または酵母のどちらかにおいて増殖され得る、酵母-細菌シャトルベクターであってもよい(Struhl,et al.(1979)Proc.Natl.Acad.Sci.)。pBR322などの大腸菌プラスミドDNA配列の組み入れは、大腸菌(E.coli)におけるベクターDNAの定量的調製、ひいては酵母の効率的な形質転換を容易にする。
【0032】
シャトルの役割を果たしてもよい酵母プラスミドベクターのタイプは、増殖型ベクターまたは組み込み型ベクターであってもよい。増殖型ベクターは、機能性のDNA複製起点の存在によって、酵母の染色体DNAとは無関係にそれ自身の維持を媒介できる酵母ベクターである。組み込み型ベクターは、染色体DNAとの組換えに依存して複製を容易にし、ひいては宿主細胞中での組換えDNAの継続的な維持を容易にする。増殖型ベクターは、2ミクロンベースのプラスミドベクターであってもよく、その中ではDNA複製起点は、内因性2ミクロンプラスミド酵母に由来する。代案としては、増殖型ベクターは自律複製(ARS)ベクターであってもよく、その中では「見かけの」複製起点は、酵母の染色体DNAに由来する。任意選択的に、増殖型ベクターは、上記のDNA複製起点の1つに加えて、セントロメアを保有することが知られている酵母染色体DNAの配列を有する、動原体(CEN)プラスミドであってもよい。
【0033】
ベクターは、閉環または直鎖形で、酵母細胞に形質転換されてもよい。組み込み型ベクターによる酵母の形質転換は、遺伝的安定性はあるが、ベクターが閉環形である場合には効率的でないこともある(例えば、1μgのDNA当たり約1〜10個の形質転換体しか得られない)。酵母染色体DNAと相同的なDNA配列に自由端が位置する線状化ベクターは、より高い効率(100〜1000倍)で酵母を形質転換し、形質転換DNAは一般に、切断部位に相同的な配列に組み込まれていることが見いだされている。したがって、適切な制限エンドヌクレアーゼでベクターDNAを切断することにより、形質転換の効率を高め、染色体への組込み部位を標的化することが可能になる。組み込み形質転換は、形質転換の効率が十分に高く、組込みのための標的DNA配列が、宿主細胞の代謝に必須の遺伝子を破壊しない領域内にあるという条件で、醸造酵母の遺伝子修飾に適用可能であってもよい。
【0034】
本発明の方法の電気穿孔によって形質転換され得る酵母株としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などのサッカロミセス属(Saccharomyces)、およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などのシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)の酵母種が挙げられる。一実施形態では、酵母細胞は二倍体酵母細胞である。代案としては、酵母細胞は、酵母半数体細胞の「a」および「α」株などの半数体細胞である。
【0035】
本発明の文脈では「T細胞受容体ライブラリー」は、好ましくは、例えば、2A-ペプチドなどの自己切断ペプチドに任意選択的に融合した、例えば、Vβ-リンカー-Vα一本鎖(scTCR);またはVα-リンカー-Vβ一本鎖などのTCRの一本鎖形態である、スクリーニングされるヒトおよび/または変異ヒトTCRの適切な部分を含んでなってもよい。野生型アミノ酸配に対する最小限の修飾でTCR発現を最適化するための公開された方法もまた使用され得る(例えば、Szymczak,A.L.et al.Correction of multi-gene deficiency in vivo using a single’self-cleaving’2A peptide-based retroviral vector.Nat Biotechnol 22,589-594(2004);Yang,S.et al.Development of optimal bicistronic lentiviral vectors facilitates high-level TCR gene expression and robust tumor cell recognition.Gene Ther 15,1411-1423(2008);Kuball,J.et al.Facilitating matched pairing and expression of TCR chains introduced into human T cells.Blood 109,2331-2338(2007);Cohen,C.J.et al.Enhanced Antitumor Activity of T Cells Engineered to Express T-Cell Receptors with a Second Disulfide Bond.Cancer Res 67,3898-3903(2007);Scholten,K.B.J.et al.Codon modification of T cell receptors allows enhanced functional expression in transgenic human T cells.Clin.Immunol.119,135-145(2006))。
【0036】
ベクターDNAと挿入DNAの比率は、約1:0.5~約1:10の範囲、例えば、1:0.5、1:1;1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、または1:10である。一実施形態では、約1μgのベクターDNAおよび約1μgの挿入DNAが、反応で使用される。別の実施形態では、約1μgのベクターDNAおよび約2μgの挿入DNAが沈殿する。別の実施形態では、約1μgのベクターDNAおよび約3μgの挿入DNAが沈殿する。なおも別の実施形態では、約1μgのベクターDNAおよび約4μgの挿入DNAが沈殿する。さらに別の実施形態では、約1μgのベクターDNAおよび約5μgの挿入DNAが沈殿する。
【0037】
一実施形態では、細胞懸濁液は、約50~約400μlの酵母細胞、例えば、50、100、150、200、250、300、350、400μlの酵母細胞を含んでなる。
【0038】
一実施形態では、酵母細胞懸濁液は、約1~約10×109酵母細胞/mL、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、or10×109酵母細胞/mLである。
【0039】
一実施形態では、酵母細胞を電気穿孔するために使用される電界強度は、約0.5kV/cm~約12.5kV/cm、例えば、0.5、1.0、約2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、kV/cmであった。
【0040】
一実施形態では、酵母細胞は、約10~約50μF、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、または50μFの静電容量で電気穿孔される。
【0041】
一実施形態では、酵母細胞は、約0.1~約10Mのソルビトールおよび0.1~10mMのCaCl2またはMgCl2、例えば、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、または10.0Mのソルビトール、または例えば、0.1、0.25、0.5、0.75、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、または10.0mMのCaCl2またはMgCl2に懸濁される。
【0042】
一実施形態では、酵母細胞は、約0.01~約1.0MのLiAc、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、約0.7、0.8、0.9、または1.0MのLiAc、および1~100mMのTCEP、例えば、1、10、20、30、40、50、60、約70、80、90、または100mMのTCEP中でインキュベートされる。
【0043】
本発明は、酵母を含有する細胞懸濁液を1つまたは複数の核酸コンストラクトで電気穿孔するステップを含んでなる、酵母細胞を形質転換する方法を提供する。酵母細胞の形質転換は、単一クローンから集団(すなわち、酵母ライブラリー)に至る酵母細胞をもたらし得て、それは(a)酵母表面タンパク質への係留によって、あるいは酵母細胞表面タンパク質またはその他の成分との特異的共有結合または非共有相互作用を介する結合によって、酵母細胞の表面に提示されるペプチドまたはタンパク質;(b)細胞内で発現されるペプチドまたはタンパク質;または(c)培地などの細胞外空間に分泌され、また固体表面に沈積するペプチドまたはタンパク質をスクリーニングするために使用され得る。このような酵母ライブラリーは、ペプチドまたはタンパク質と、酵母細胞に導入されまたは外因的に添加され得る別のタンパク質、ペプチド、DNA、RNA、またはその他の化学物質との間の相互作用をスクリーニングしまたは特性決定するための複数の用途に好都合に適し得る。具体例は、酵母ディスプレイ、酵母ツーハイブリッド、酵母スリーハイブリッドなどに見られるものである。
【0044】
本発明は、酵母細胞を形質転換するのに十分な抵抗、電界強度、およびパルス持続時間の1つまたは複数を用いて、1つまたは複数の制御配列と1つまたは複数の遺伝子または遺伝子断片とを含んでなる1つまたは複数の核酸コンストラクトと共に、酵母を含有する細胞懸濁液を電気穿孔するステップを含んでなる、酵母細胞を形質転換する方法を提供する。
【0045】
一実施形態では、電界強度は約2.5kV/cm~約12.5kV/cmである。特定の実施形態では、電界強度は、0.5kV/cm、1.0kV/cm、1.5kV/cm、2.0kV/cm、または2.5kV/cmである。これらの値は、電気穿孔キュベットが0.2cmの間隙を有することを考慮に入れている。より高い電界強度が可能であるが、それらの実用性は、より強力なパルスを送達し得る装置の開発に大きく依存している。
【0046】
一実施形態では、パルス持続時間は約3ミリ秒~約10ミリ秒である。特定の実施形態では、パルス持続時間は約4ミリ秒である。
【0047】
本発明の電気穿孔法による細胞の処理は、1対の電極間において、酵母細胞懸濁液に電界を印加することによって実施される。細胞に対する損傷なしに、または最小の損傷で、細胞の電気穿孔が起こるように、電界強度は適度に正確に調節されなくてはならない。次に電極間の距離が測定され、式、E=V/dに従って、適切な電圧が電極に印加され得る(E=V/cm単位の電界強度;V=ボルト単位の電圧;およびd=cm単位の距離)。
【0048】
本明細書に記載の手順を実施するためのパルス発生器は、長年にわたって市販されている。1つの適切なシグナル発生器は、Gene Pulser II(カリフォルニア州ハーキュリーズのBio-RadLaboratories,Inc.)である。典型的なセットアップは、静電容量エクステンダープラスおよびパルスコントローラープラスモジュールに接続された、Gene Pulser IIからなる。
【0049】
電気穿孔は、酵母細胞へのDNAの導入を容易にするために本発明において使用される。電気穿孔は、パルス電界を用いて細胞膜を一時的に透過性にし、DNAなどの巨大分子が細胞内に移行できるようにする工程である。しかし、DNAが細胞に移入される実際の機序は良く分かっていない。例えば、カンジダ・ファマタ(Candida famata)の形質転換では、約10~約13kV/cmの電界強度および約R5(129Ω)の抵抗値、および約4.5ミリ秒の時定数を有する、実験的に減衰するパルス電界に細胞が曝露された場合、電気穿孔は驚くほど効率的である。典型的には、選択された電気穿孔装置に応じて、抵抗および静電容量が存在するか、または使用者によって選択されてもよい。いずれにしても、装置は製造会社の使用説明書に従って構成され、適切な場合は電界強度と減衰パラメータが提供される。
【0050】
本発明は、任意の1つまたは複数の所望の内因性(すなわち、その酵母細胞内に天然に存在する)または異種遺伝子の高レベルの発現を可能にする、酵母の非常に効率的な形質転換方法にさら関する。本発明の方法は、例えば、TCR、scTCR、キメラまたはそれらの断片を発現するライブラリーを調製する方法にさらに関する。
【0051】
1つのシナリオでは、目的の遺伝子を保有する発現ベクターが、電気穿孔によって酵母宿主細胞に形質転換され、細胞内タンパク質(例えば、核または細胞質タンパク質)、膜タンパク質(例えば、膜貫通タンパク質または膜結合タンパク質)、または分泌タンパク質を発現する多数の形質転換細胞を含んでなる、単一クローンまたはライブラリーが作製され得る。形質転換細胞またはライブラリーを使用して、タンパク質を精製し、タンパク質機能を研究し、タンパク質-タンパク質相互作用を同定し、または新規タンパク質バインダーもしくは相互作用パートナーが同定できるであろう。特記すべきは、TCRおよびTCR断片を提示しまたは発現する、非常に大きな酵母ライブラリーを作製する能力である。ライブラリーは標的抗原による選択に供され、選択抗原に結合するTCRが同定され得る。
【0052】
形質転換酵母は、人工的に構築されたプラスミドを失う傾向があるので、それらに正の選択圧を及ぼすように培地を使用することが有利である。株が必須代謝産物に対する栄養要求性変異体であり、使用されるベクタープラスミドが、例えば、LEU2遺伝子などの株原栄養性を回復できるマーカー遺伝子を含んでなる場合、この選択圧は培地から代謝産物を省くことにより発揮されてもよい。同じ結果を得るための別の手段が存在し、本発明を実施するために使用されてもよい。
【0053】
目的の構造遺伝子の性質に応じて、生成物または発現生成物は、酵母宿主細胞の細胞質内に残留してもまたは分泌されてもよい。細胞内に残留するタンパク質だけでなく、分泌されるタンパク質もまた可溶性であることが分かった。生成物または発現生成物が酵母宿主細胞中に残留する場合、形質転換体が高密度に達するまで、所望の生成物の発現または産生がほとんどまたは全くないように、誘導性転写開始領域を有することが一般に望ましくあってもよい。生成物または発現生成物が発現されるのに十分な時間が経過した後、細胞は、例えば、遠心分離、溶菌、および目的の生成物の単離などの従来の手段によって単離されてもよい。生成物の性質および用途に応じて、溶解物は、クロマトグラフィー、電気泳動、溶媒抽出、結晶化、透析、限外濾過などの様々な精製方法に供されてもよい。クロマトグラフィーの方法としては、ガスクロマトグラフィー、HPLC、カラムクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、および当業者に知られているその他のクロマトグラフィー方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。純度は、約50%~90%以上、好ましくは最大約100%まで変化してもよい。
【0054】
代案としては、発現生成物または目的の生成物は培地中に分泌されて連続的に産生され得て、培地は部分的に抜き取られ、所望の生成物は、例えば、カラムまたはアフィニティークロマトグラフィー、限外濾過、沈殿などにより抽出され、消耗培地は廃棄され、または必須成分を回復させることによって再循環される。限外濾過からの生成物を含有する透過液は、さらに蒸発させることによってさらなる濃縮に供し得て、アルコールおよび/またはpH調節を用いた結晶化または沈殿がそれに続く。当業者は、多数の方法の選択肢を承知している。生成物が分泌される場合、通常は構成的転写開始領域が用いられるが、非構成的領域が用いられてもよい。
【0055】
その他の好ましい実施形態は、本明細書に記載の図を参照して実施例から導き出し得るが、それにもかかわらず、それらに限定されることはない。本発明の目的で、本明細書で引用される全ての参考文献は、その内容全体が参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】同一条件下でDTTと比較した、TCEPの改善された形質移入効率の比較を示す。
【実施例0057】
本発明の実施は、特に断りのない限り、当該分野で周知である細胞電気穿孔および酵母細胞生物学の従来の技術を用いる。
【0058】
I.培地
1.YPD培地
酵母抽出物 10g
バクトペプトン 20g
デキストロース 20g
H2Oで容積を1Lにする(滅菌グルコースを高圧蒸気滅菌溶液に添加する)
【0059】
2.SD-CAA(pH4.5):
クエン酸ナトリウム二水和物 14.8g(50mM最終)
クエン酸一水和物 4.2g(20mM最終)
800mlのH2O中、高圧蒸気滅菌。
カザミノ酸 5.0g
酵母窒素原礎培地(アミノ酸なし) 6.7g
グルコース 20g
H2Oで容積を1Lにして滅菌濾過する
【0060】
3.SD-CAAプレート:
ソルビトール 182.2g
寒天 15g
クエン酸ナトリウム 14.8g
クエン酸一水和物 4.2g
800mlのH2O中、高圧蒸気滅菌し約55°Cに冷却する。
カザミノ酸 5.0g
酵母窒素原礎培地(アミノ酸なし) 6.7g
グルコース 20g
カナマイシン硫酸塩 35mg
200mlのH2O中、滅菌濾過、冷却した高圧蒸気滅菌溶液に添加する
【0061】
II.エレクトロコンピテント酵母細胞の調製
-80℃から新たに解凍した20μlの酵母原液をYPD寒天プレート上に画線塗抹し、30℃で2日間培養した。単一コロニー(コロニー全体を採取する)をYPD寒天プレートから15mlのYPD培地に採取して、30℃で一晩振盪した。翌朝、10mlの培養物を100mlの新鮮なYPD培地に移し入れ、振盪を30℃で7時間継続した。OD600を測定して、1Lの冷YPD培地をOD600が0.2になるように接種した。振盪フラスコを予冷した(4℃)振盪機に入れた。振盪機は、就業日が始まる5時間前に加熱(30℃)および振盪(250rpm)が開始するようにプログラムした。OD600が1.5に達するまで培養を実施したが、これは通常、振盪開始後6時間であった。
【0062】
特に明記されない場合は、引き続く工程は氷上において、冷却された溶液、チューブ、キュベット、および遠心分離機を用いて実施しなくてはならない。
【0063】
細胞を2,000gおよび4°Cで3分間ペレット化し(10本のFalconチューブ内の二段法、50ml)、25mlの冷H2Oで2回洗浄し、2,000gで3分間ペレット化した。細胞を25mlの冷ソルビトール、1M/CaCl2、1mMで洗浄し、2,000gで3分間ペレット化した。細胞を25mlの酢酸リチウム、100mM/TCEP、10mMに再懸濁した。フィルター蓋付きの50mlのFalconチューブを使用して曝気させ;細胞を160rpmで30分間振盪しながら30℃でインキュベートし、氷上に置き、細胞を2,000gおよび4℃で3分間ペレット化した。細胞を25mlの冷1Mソルビトール/1mM CaCl2で洗浄し;2,000gおよび4°Cで3分間ペレット化し、25mlの冷1Mソルビトールで洗浄し;2,000gおよび4°Cで3分間ペレット化した。細胞を円錐管内で冷1Mソルビトールに懸濁し、電気穿孔反応当たり400μlの最終容積にした。エレクトロコンピテント細胞は、-80℃で直接、保存し得る。サンプルを電気穿孔で使用する前に、漏出した塩を遠心分離(2,000g、4℃、5分間)および1M冷ソルビトールで2回洗浄することによって除去した。
【0064】
III.電気穿孔
400μlの細胞をH2O中の5〜10μlのDNA(ベクター)と混合し、3分間氷上に保ち、予冷した0.2cm電気穿孔キュベットに移し入れた。BioRad MicroPulser電気穿孔システムを用いて、細胞を2.5kVで電気穿孔した。典型的な時定数は約4ミリ秒であり、好ましくは4ミリ秒であった。電気穿孔した細胞を、振盪せずに30℃で1時間、10mlの1Mソルビトール:YPD培地の1:1混合物に移し入れた。細胞を室温で3分間2,000gで収集し、室温で10mlのSD−CAAに再懸濁した。多様性の計算のために希釈を実施した(1:105~1:107)。カナマイシンを含有するSD−CAAプレート上で、希釈液を30℃で1日間℃、そして室温で3日間培養した。ライブラリーを100mlのSD-CAAに移し入れ(好ましくは電気穿孔毎に)、振盪を30℃および160rpmで24時間継続した。拡大されたライブラリーは、誘導のために直接使用し得て、または4℃で2週間保存し得る。長期保存は、-80℃で30%のグリセロール中で凍結することによって実施し得る。
【0065】
最適な電気穿孔条件を使用することによって、約2×10
8個の酵母形質転換体/μgベクターDNAの酵母形質転換効率を日常的に達成し得る(
図1を参照されたい)。この形質転換効率は、最小限の細胞容積(100μl)で達成されるため、自動化およびマルチウェル電気穿孔装置に非常に適している。
前記DNAが、例えば酵母表面ディスプレイライブラリーの形態である、目的のタンパク質のライブラリーをコードするDNA断片のライブラリーを含んでなる、請求項2または3に記載の方法。