(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130504
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】免疫関連障害のための抗体-サイトカイングラフト化タンパク質及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220830BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220830BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220830BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20220830BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220830BHJP
C07K 16/10 20060101ALI20220830BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220830BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220830BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220830BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20220830BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220830BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20220830BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20220830BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220830BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220830BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220830BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220830BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220830BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C07K14/55
C07K19/00
C07K16/10
C12N5/10
C07K16/46
A61P37/02
A61P3/10
A61P17/00
A61P37/06
A61P9/00
A61P31/18
A61P17/14
A61P25/00
A61P43/00 121
A61K38/20
A61P43/00 111
A61K39/395 N
A61K39/395 M
A61K47/68
A61K45/00
A61P43/00 107
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098525
(22)【出願日】2022-06-20
(62)【分割の表示】P 2019564885の分割
【原出願日】2018-05-22
(31)【優先権主張番号】62/510,514
(32)【優先日】2017-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ディア-デ-デュラナ,ヤイザ
(72)【発明者】
【氏名】ディドネート,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】フィリッピ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ミーウセン,シェリー
(72)【発明者】
【氏名】スプラッゴン,グレン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高親和性インターロイキン受容体に結合し、それを通じた細胞内シグナル伝達を刺激する抗体サイトカイングラフト化タンパク質を提供する。
【解決手段】(a)相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む、重鎖可変領域(VH);及び、(b)LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む、軽鎖可変領域(VL);及び、(c)VH又はVLのCDRにグラフト化されたインターロイキン2(IL2)分子を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む、重鎖可
変領域(VH);及び
(b)LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む、軽鎖可変領域(VL);及び
(c)VH又はVLのCDRにグラフト化されたインターロイキン2(IL2)分子
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項2】
前記IL2分子が重鎖CDRにグラフト化されている、請求項1に記載の抗体サイトカ
イングラフト化タンパク質。
【請求項3】
前記重鎖CDRが、相補性決定領域1(HCDR1)、相補性決定領域2(HCDR2
)、及び相補性決定領域3(HCDR3)から選択される、請求項2に記載の抗体サイト
カイングラフト化タンパク質。
【請求項4】
前記IL2分子がHCDR1にグラフト化されている、請求項3に記載の抗体サイトカ
イングラフト化タンパク質。
【請求項5】
前記IL2分子が軽鎖CDRにグラフト化されている、請求項1に記載の抗体サイトカ
イングラフト化タンパク質。
【請求項6】
前記軽鎖CDRが、相補性決定領域1(LCDR1)、相補性決定領域2(LCDR2
)、及び相補性決定領域3(LCDR3)から選択される、請求項5に記載の抗体サイト
カイングラフト化タンパク質。
【請求項7】
前記IL2分子が、低親和性IL2受容体に対する前記IL2分子の親和性を低下させ
る突然変異を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質。
【請求項8】
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質によるTreg細胞増殖の刺激が天然IL
2又はProleukin(登録商標)よりも大きい、請求項1~7のいずれか一項に記
載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項9】
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質によるCD8 Tエフェクター細胞増殖の
刺激が天然IL2又はProleukin(登録商標)よりも小さい、請求項1~8のい
ずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項10】
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質が天然IL2又はProleukin(登
録商標)よりも長い半減期を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗体サイトカ
イングラフト化タンパク質。
【請求項11】
前記IL2分子が配列番号4からなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質。
【請求項12】
前記IL2分子が配列番号6からなる、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質。
【請求項13】
IgGクラス抗体重鎖を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体サイト
カイングラフト化タンパク質。
【請求項14】
前記IgGクラス抗体重鎖が、IgG1、IgG2、又はIgG4から選択される、請
求項13に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項15】
標的に対する前記CDRの結合特異性が前記グラフト化されたIL2分子によって10
%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98
%、99%、又は100%低下する、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体サイト
カイングラフト化タンパク質。
【請求項16】
標的に対する前記CDRの結合特異性が前記グラフト化されたIL2分子の存在下で1
0%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、9
8%、99%、又は100%保持される、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質。
【請求項17】
前記CDRの結合特異性が前記IL2分子の結合特異性と異なる、請求項1~16のい
ずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項18】
前記CDRの結合特異性が非ヒト抗原に対するものである、請求項1~17のいずれか
一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項19】
前記非ヒト抗原がウイルスである、請求項18に記載の抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質。
【請求項20】
前記ウイルスが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である、請求項19に記載の抗体サイ
トカイングラフト化タンパク質。
【請求項21】
前記RSVが、RSVサブグループA及びRSVサブグループBから選択される、請求
項20に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項22】
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質の前記抗体足場部分がヒト化又はヒトであ
る、請求項1~21のいずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項23】
(i)(a)配列番号17のHCDR1、(b)配列番号18のHCDR2、(c)配
列番号19のHCDR3を含む重鎖可変領域及び(d)配列番号30のLCDR1、(e
)配列番号31のLCDR2、及び(f)配列番号32のLCDR3を含む軽鎖可変領域
;
(ii)(a)配列番号43のHCDR1、(b)配列番号44のHCDR2、(c)
配列番号45のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号56のLCDR1、
(e)配列番号57のLCDR2、及び(f)配列番号58のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;
(iii)(a)配列番号69のHCDR1、(b)配列番号70のHCDR2、(c
)配列番号71のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号82のLCDR1
、(e)配列番号83のLCDR2、及び(f)配列番号84のLCDR3を含む軽鎖可
変領域;又は
(iv)(a)配列番号95のHCDR1、(b)配列番号96のHCDR2、(c)
配列番号97のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号108のLCDR1
、(e)配列番号109のLCDR2、及び(f)配列番号110のLCDR3を含む軽
鎖可変領域
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項24】
(i)配列番号20を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号33を含む軽鎖可変領
域(VL);
(ii)配列番号46を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号59を含む軽鎖可変
領域(VL);
(iii)配列番号72を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号85を含む軽鎖可
変領域(VL);又は
(iv)配列番号98を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号111を含む軽鎖可
変領域(VL)
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項25】
低下したエフェクター機能に対応する修飾Fc領域を更に含む、請求項1~24のいず
れか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項26】
前記修飾Fc領域が、D265A、P329A、P329G、N297A、L234A
、及びL235Aの1つ以上から選択される突然変異を含む、請求項25に記載の抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質。
【請求項27】
前記修飾Fc領域が、D265A/P329A、D265A/N297A、L234/
L235A、P329A/L234A/L235A、及びP329G/L234A/L2
35Aの1つ以上から選択される突然変異の組み合わせを含む、請求項26に記載の抗体
サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項28】
配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、配列番号19のHCDR3、
配列番号30のLCDR1、配列番号31のLCDR2、配列番号32のLCDR3、突
然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質であって、Proleukin(登録商標)と比較したときNK細胞の拡大に対
する刺激が低い抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項29】
配列番号43のHCDR1、配列番号44のHCDR2、配列番号45のHCDR3、
配列番号56のLCDR1、配列番号57のLCDR2、配列番号58のLCDR3、突
然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質であって、Proleukin(登録商標)と比較したときNK細胞の拡大に対
する刺激が低い抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項30】
配列番号69のHCDR1、配列番号70のHCDR2、配列番号71のHCDR3、
配列番号82のLCDR1、配列番号83のLCDR2、配列番号84のLCDR3、突
然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質であって、Proleukin(登録商標)と比較したときNK細胞の拡大に対
する刺激が低い抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項31】
配列番号95のHCDR1、配列番号96のHCDR2、配列番号97のHCDR3、
配列番号108のLCDR1、配列番号109のLCDR2、配列番号110のLCDR
3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイトカイングラフ
ト化タンパク質であって、Proleukin(登録商標)と比較したときNK細胞の拡
大に対する刺激が低い抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【請求項32】
(i)配列番号23の重鎖及び配列番号36の軽鎖;
(ii)配列番号49の重鎖及び配列番号62の軽鎖;
(iii)配列番号75の重鎖及び配列番号88の軽鎖;又は
(iv)配列番号101の重鎖及び配列番号114の軽鎖
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質をコードする単離核酸。
【請求項33】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質の産生に好適な組換え宿主細胞であって、前記
タンパク質の重鎖及び軽鎖ポリペプチド、及び任意選択で分泌シグナルをコードする請求
項32に記載の核酸を含む、組換え宿主細胞。
【請求項34】
哺乳類細胞株である、請求項33に記載の組換え宿主細胞。
【請求項35】
前記哺乳類細胞株がCHO細胞株である、請求項34に記載の組換え宿主細胞。
【請求項36】
請求項1~31のいずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質と薬学
的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
【請求項37】
それを必要としている個体の免疫関連障害の治療方法であって、請求項1~31のいず
れか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は請求項36に記載の医薬組
成物の治療有効量を前記個体に投与することを含む方法。
【請求項38】
前記免疫関連障害が、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、白斑、慢性移植片対宿主
病(cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(pGvHD)、HIV誘発性脈管炎、円形
脱毛症、全身性硬化症モルフェア、及び原発性抗リン脂質症候群からなる群から選択され
る、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は医薬組成物が別の治療剤と併用して投
与される、請求項37又は38に記載の方法。
【請求項40】
前記治療剤が別の抗体サイトカイングラフト化タンパク質である、請求項39に記載の
方法。
【請求項41】
それを必要としている患者のTreg細胞を拡大する方法であって、請求項1~31の
いずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は請求項36に記載の医
薬組成物を前記患者に投与することを含む方法。
【請求項42】
前記Treg細胞が拡大され、且つCD8 Tエフェクター細胞が拡大されない、請求
項41に記載の方法。
【請求項43】
前記Treg細胞が拡大され、且つNK細胞が拡大されない、請求項41又は42に記
載の方法。
【請求項44】
免疫関連障害の治療における、
(i)(a)配列番号17のHCDR1、(b)配列番号18のHCDR2、(c)配
列番号19のHCDR3を含む重鎖可変領域及び(d)配列番号30のLCDR1、(e
)配列番号31のLCDR2、及び(f)配列番号32のLCDR3を含む軽鎖可変領域
;又は
(ii)(a)配列番号43のHCDR1、(b)配列番号44のHCDR2、(c)
配列番号45のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号56のLCDR1、
(e)配列番号57のLCDR2、及び(f)配列番号58のLCDR3を含む軽鎖可変
領域
を含む免疫関連障害の治療における抗体サイトカイングラフト化タンパク質の使用。
【請求項45】
前記免疫関連障害が、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、白斑、慢性移植片対宿主
病(cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(pGvHD)、HIV誘発性脈管炎、円形
脱毛症、全身性硬化症モルフェア、及び原発性抗リン脂質症候群からなる群から選択され
る、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質が別の治療剤と併用して投与される、請求
項44又は45に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月24日に出願された米国仮特許出願第62/510514号
の利益を主張するものであり、この仮特許出願の内容は、全体が参照により本明細書に援
用される。
【0002】
本開示は、インターロイキン-2(IL2)高親和性受容体に結合する抗体-サイトカ
イングラフト化タンパク質、並びに自己免疫障害及び免疫関連障害の治療方法に関する。
【0003】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により
本明細書に援用される。2018年3月30日に作成された前記ASCIIコピーは、P
AT056491-WO-PCT_SL.txtと称され、115,255バイトのサイ
ズである。
【背景技術】
【0004】
IL2は1983年に初めてクローニングされた(Taniguchi et al.
,Nature 1983,302:305-310、Devos et al.,Nu
cleic Acid Res.1983,11(13):4307-4323、Mae
da et al.,Biochem.Biophys.Res.Comm.1983,
115:1040-1047)。IL2タンパク質は、アミノ酸1~20のシグナルペプ
チドを含めて153アミノ酸の長さがあり、4つの逆平行両親媒性αヘリックス構造に折
り畳まれている(Smith K.A.,Science 1988,240:1169
-1176)。
【0005】
IL2は、高親和性又は低親和性受容体を通じたシグナル伝達によってその生物学的効
果を媒介する(Kreig et al.,PNAS 2010,107(26)119
06-11911)。高親和性受容体は、IL2-Rα(CD25)IL2-Rβ(CD
122)及びIL2-Rγ(CD132)からなる三量体である。低親和性受容体は、I
L2-Rβ(CD122)及びIL2-Rγ(CD132)鎖のみからなる二量体である
。低親和性受容体はIL2に結合するが、親和性は三量体である高親和性受容体の10~
100分の1であり、IL2-Rα(CD25)が親和性の増加に重要であるものの、シ
グナル伝達成分ではないことが示唆される(Kreig et al.、前掲)。IL2
受容体の発現もまた特徴的である。高親和性IL2受容体は、活性化T細胞及びCD4+
/Foxp3+調節性T細胞(Treg)に発現する。対照的に、低親和性IL2受容体
はCD8+ T記憶細胞、Tコンベンショナル細胞(Tcon)及びナチュラルキラー細
胞(NK)に見られる。
【0006】
組換えIL2(rhIL2)は当初、1992年に臨床使用が承認された(Coven
try et al.,Cancer Mgt Res.2012 4:215-221
)。Proleukin(登録商標)(アルデスロイキン)は、非グリコシル化型の、N
末端アラニンを欠いた、且つアミノ酸125でシステインがセリンに置換(C125S)
された修飾IL2である。Proleukin(登録商標)は当初、悪性黒色腫及び腎細
胞癌に対する療法薬として適応されたが、結腸直腸癌、乳癌、肺癌及び中皮腫などの他の
癌型に使用されるようになっている(Coventry et al.、前掲)。198
6~2006年の259人の腎細胞癌患者にわたる研究では、23人の患者が完全奏効と
なり、30人が部分奏効となったことが見出された(Klapper et al.,C
ancer 2008 113(2):293-301)。これは20%の全客観的奏効
率に相当し、腎細胞癌患者の7%で完全腫瘍退縮が得られた(Klapper et a
l.、前掲)。
【0007】
しかしながら、IL2による癌治療に有害作用がなかったわけではない。この259人
の患者の研究では、毛細血管/血管漏出、血管拡張及び乏尿が認められた。また、カテー
テル感染症及び一般感染症の両方の、好中球機能不全に起因するグレード3及びグレード
4の感染症もあった(Klapper et al.、前掲)。Proleukin(登
録商標)の文献は、Proleukin(登録商標)が、クローン病、強皮症、甲状腺炎
、炎症性関節炎、真性糖尿病、眼筋・球麻痺型重症筋無力症、半月体形成性IgA糸球体
腎炎、胆嚢炎、脳血管炎、スティーブンス・ジョンソン症候群及び水疱性類天疱瘡などの
自己免疫疾患及び免疫関連障害の増悪と関連付けられていることを指摘している。
【0008】
Treg細胞が高親和性IL2受容体を構成的に発現し、生存及び機能に関してIL2
に依存したことが発見され、研究の焦点はTreg細胞を模擬する(simulate)
方法としてのIL2に置かれるようになっている(D’Cruz et al.,Nat
.Immuno.2005,6:1152-1159)。低用量IL2は、I型糖尿病患
者に安全且つ有効な治療であることが示された(Hartemann et al.,L
ancet Diabetes Endocrinol.2013,1:295-305
)。C型肝炎ウイルスは脈管炎(Saadoun et al.,N.Eng.J.Me
d.2011,365:2067-2077)及び慢性移植片対宿主病(Koreth
et al.,N.Eng.J.Med.2011 365:2055-2066)を誘
発した。しかしながら、IL2は体内での半減期が極めて短く、複数回投与が必要である
。これは、IL2低受容体に対する活性が低く、且つ薬物動態が改善された、高親和性受
容体を介したTregの刺激に選択性のあるIL2療法薬の必要性を示すものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、公知の臨床で使用されている分子に優る好ましい治療プロファイルを備えた
、抗体のCDR配列にグラフト化されたIL2分子を有する抗体サイトカイングラフト化
タンパク質を提供する。詳細には、提供される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は
、CD8+ T細胞、Tcon又はNK細胞の活性を増加させることなくTreg活性を
増加させる、又はそれを維持する。加えて、提供される組成物は、Proleukin(
登録商標)などの組換えヒトIL2製剤と比べて向上した半減期、安定性及び生産性(p
roduceability)を付与する。こうした組成物の好ましい特性は、これまで
臨床で使用されているもの又は文献に記載されているものに優る好ましい治療組成物をも
たらす。例えば、本明細書に開示される一部の実施形態は、好ましくはIL2低親和性受
容体よりもIL2高親和性受容体に結合し、それを通じたシグナル伝達を促進する抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質を提供する。本明細書に開示される一部の実施形態は、
好ましくはCD8+ T細胞、Tcon又はNK細胞よりもTregを活性化する抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質を提供する。
【0010】
本開示の実施形態は、
(a)相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む、重鎖可変
領域(VH);及び
(b)LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む、軽鎖可変領域(VL);及び
(c)VH又はVLのCDRにグラフト化されたインターロイキン2(IL2)分子
を含む抗体-サイトカイングラフト化タンパク質を提供する。
【0011】
重鎖CDRにグラフト化されたIL2分子を含む、抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質。
【0012】
IL2分子が、相補性決定領域1(HCDR1)、相補性決定領域2(HCDR2)又
は相補性決定領域3(HCDR3)から選択される領域にグラフト化されている、抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質。
【0013】
HCDR1にグラフト化されたIL2分子を含む、抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質。
【0014】
軽鎖CDRにグラフト化されたIL2分子を含む、抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質。
【0015】
IL2分子が、相補性決定領域1(LCDR1)、相補性決定領域2(LCDR2)、
及び相補性決定領域3(LCDR3)から選択される領域にグラフト化されている、抗体
サイトカイングラフト化タンパク質。
【0016】
低親和性IL2受容体に対するIL2分子の親和性を低下させる突然変異を含むIL2
分子を含む、抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【0017】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質によるTreg細胞増殖の刺激が天然IL2又
はProleukin(登録商標)よりも大きい、抗体サイトカイングラフト化タンパク
質。
【0018】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質によるCD8 Tエフェクター増殖の刺激が天
然IL2又はProleukin(登録商標)よりも小さい、抗体サイトカイングラフト
化タンパク質。
【0019】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質が天然IL2又はProleukin(登録商
標)よりも長い半減期を有する、抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【0020】
IL2分子が配列番号4からなる、抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【0021】
IL2分子が配列番号6からなる、抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【0022】
IgGクラス抗体重鎖を含む、抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【0023】
IgGクラス抗体重鎖が、IgG1、IgG2、又はIgG4から選択される、抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質。
【0024】
抗体CDRの結合特異性がグラフト化されたIL2分子によって低下する、抗体サイト
カイングラフト化タンパク質。
【0025】
抗体CDRの結合特異性がグラフト化されたIL2分子の存在下で保持される、抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質。
【0026】
抗体CDRの結合特異性がIL2分子の結合特異性と異なる、抗体サイトカイングラフ
ト化タンパク質。
【0027】
抗体可変ドメインの結合特異性が非ヒト抗原に対するものである、抗体サイトカイング
ラフト化タンパク質。
【0028】
非ヒト抗原がウイルスである、抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
【0029】
ウイルスが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である、抗体サイトカイングラフト化タン
パク質。
【0030】
RSVが、RSVサブグループA及びRSVサブグループBから選択される、抗体サイ
トカイングラフト化タンパク質。
【0031】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質の抗体足場部分がヒト化又はヒトである、抗体
サイトカイングラフト化タンパク質。
【0032】
本開示の実施形態は、
(i)(a)配列番号17のHCDR1、(b)配列番号18のHCDR2、(c)配列
番号19のHCDR3を含む重鎖可変領域及び(d)配列番号30のLCDR1、(e)
配列番号31のLCDR2、及び(f)配列番号32のLCDR3を含む軽鎖可変領域;
(ii)(a)配列番号43のHCDR1、(b)配列番号44のHCDR2、(c)配
列番号45のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号56のLCDR1、(
e)配列番号57のLCDR2、及び(f)配列番号58のLCDR3を含む軽鎖可変領
域;
(iii)(a)配列番号69のHCDR1、(b)配列番号70のHCDR2、(c)
配列番号71のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号82のLCDR1、
(e)配列番号83のLCDR2、及び(f)配列番号84のLCDR3を含む軽鎖可変
領域;又は
(iv)(a)配列番号95のHCDR1、(b)配列番号96のHCDR2、(c)配
列番号97のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号108のLCDR1、
(e)配列番号109のLCDR2、及び(f)配列番号110のLCDR3を含む軽鎖
可変領域
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質を提供する。
【0033】
本開示の実施形態は、
(i)配列番号20を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号33を含む軽鎖可変領域
(VL);
(ii)配列番号46を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号59を含む軽鎖可変領
域(VL);
(iii)配列番号72を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号85を含む軽鎖可変
領域(VL);又は
(iv)配列番号98を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号111を含む軽鎖可変
領域(VL)
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質を提供する。
【0034】
抗体が、低下したエフェクター機能に対応する修飾Fc領域を含む、抗体サイトカイン
グラフト化タンパク質。
【0035】
修飾Fc領域が、D265A、P329A、P329G、N297A、L234A、及
びL235Aの1つ以上から選択される突然変異を含む、抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質。
【0036】
修飾Fc領域が、D265A/P329A、D265A/N297A、L234/L2
35A、P329A/L234A/L235A、及びP329G/L234A/L235
Aの1つ以上から選択される突然変異の組み合わせを含む、抗体サイトカイングラフト化
タンパク質。
【0037】
本開示の実施形態は、配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、配列番
号19のHCDR3、配列番号30のLCDR1、配列番号31のLCDR2、配列番号
32のLCDR3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイ
トカイングラフト化タンパク質を提供し、ここで抗体サイトカイングラフト化タンパク質
はProleukin(登録商標)と比較したとき高いTreg細胞活性化を有する。
【0038】
本開示の実施形態は、配列番号43のHCDR1、配列番号44のHCDR2、配列番
号45のHCDR3、配列番号56のLCDR1、配列番号57のLCDR2、配列番号
58のLCDR3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイ
トカイングラフト化タンパク質を提供し、ここで抗体サイトカイングラフト化タンパク質
はProleukin(登録商標)と比較したとき高いTreg細胞活性化を有する。
【0039】
本開示の実施形態は、配列番号69のHCDR1、配列番号70のHCDR2、配列番
号71のHCDR3、配列番号82のLCDR1、配列番号83のLCDR2、配列番号
84のLCDR3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイ
トカイングラフト化タンパク質を提供し、ここで抗体サイトカイングラフト化タンパク質
はProleukin(登録商標)と比較したとき高いTreg細胞活性化を有する。
【0040】
本開示の実施形態は、配列番号95のHCDR1、配列番号96のHCDR2、配列番
号97のHCDR3、配列番号108のLCDR1、配列番号109のLCDR2、配列
番号110のLCDR3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗
体サイトカイングラフト化タンパク質を提供し、ここで抗体サイトカイングラフト化タン
パク質はProleukin(登録商標)と比較したとき高いTreg細胞活性化を有す
る。
【0041】
本開示の実施形態は、
(i)配列番号23の重鎖及び配列番号36の軽鎖;
(ii)配列番号49の重鎖及び配列番号62の軽鎖;
(iii)配列番号75の重鎖及び配列番号88の軽鎖;又は
(iv)配列番号101の重鎖及び配列番号114の軽鎖
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質をコードする単離核酸を提供する。
【0042】
本開示の実施形態は、タンパク質の重鎖及び軽鎖ポリペプチド、及び任意選択で分泌シ
グナルをコードする本明細書に開示される核酸を含む、抗体サイトカイングラフト化タン
パク質の産生に好適な組換え宿主細胞を提供する。
【0043】
哺乳類細胞株である組換え宿主細胞。
【0044】
本開示の実施形態は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質と1つ以上の薬学的に許
容可能な担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0045】
本開示の実施形態は、それを必要としている個体の免疫関連障害を治療する方法を提供
し、この方法は、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は医薬
組成物の治療有効量を個体に投与することを含む。
【0046】
前記免疫関連障害が、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、白斑、慢性移植片対宿主
病(cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(pGvHD)、HIV誘発性脈管炎、円形
脱毛症、全身性硬化症モルフェア、及び原発性抗リン脂質症候群からなる群から選択され
る、方法。
【0047】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は医薬組成物が別の治療剤と併用して投与さ
れる、方法。
【0048】
治療剤が別の抗体サイトカイングラフト化タンパク質である、方法。
【0049】
本開示の実施形態は、それを必要としている患者のTreg細胞を拡大する方法を提供
し、この方法は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は医薬組成物を患者に投与す
ることを含む。
【0050】
Treg細胞が拡大され、且つCD8 Tエフェクター細胞が拡大されない、方法。
【0051】
Treg細胞が拡大され、且つNK細胞が拡大されない、方法。
【0052】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は医薬組成物が別の治療剤と併用して投与さ
れる、方法。
【0053】
治療剤が別の抗体サイトカイングラフト化タンパク質である、方法。
【0054】
本開示の実施形態は、治療剤としての使用のための抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質を提供する。
【0055】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質が、(i)(a)配列番号17のHCDR1、
(b)配列番号18のHCDR2、(c)配列番号19のHCDR3を含む重鎖可変領域
及び(d)配列番号30のLCDR1、(e)配列番号31のLCDR2、及び(f)配
列番号32のLCDR3を含む軽鎖可変領域;及び(ii)(a)配列番号43のHCD
R1、(b)配列番号44のHCDR2、(c)配列番号45のHCDR3を含む重鎖可
変領域;及び(d)配列番号56のLCDR1、(e)配列番号57のLCDR2、及び
(f)配列番号58のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、免疫関連障害の治療におけ
る使用。
【0056】
免疫関連障害が、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、白斑、慢性移植片対宿主病(
cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(pGvHD)、HIV誘発性脈管炎、円形脱毛
症、全身性硬化症モルフェア、及び原発性抗リン脂質症候群からなる群から選択される、
使用。
【0057】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質が別の治療剤と併用して投与される、使用。
【0058】
本開示の実施形態は、それを必要としている個体の免疫関連障害の治療用医薬品の製造
のための本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質の使用を提供する
。
【0059】
免疫関連障害が、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、白斑、慢性移植片対宿主病(
cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(pGvHD)、HIV誘発性脈管炎、円形脱毛
症、全身性硬化症モルフェア、及び原発性抗リン脂質症候群からなる群から選択される、
使用。
【0060】
特定の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質はIgGクラス抗体
Fc領域を含む。詳細な実施形態において、免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、又
はIgG4サブクラスFc領域から選択される。抗体、抗体断片、又は抗原結合分子は、
任意選択で、Fc受容体への抗体又は抗体断片の結合を調節する(即ち増加又は低下させ
る)少なくとも1つの修飾を含む。免疫グロブリン重鎖は、任意選択で、修飾されたエフ
ェクター機能を付与する修飾を含み得る。詳細な実施形態において、免疫グロブリン重鎖
は、D265A、P329A、P329G、N297A、D265A/P329A、D2
65A/N297A、L234/L235A、P329A/L234A/L235A、及
びP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択されるエフェクター機能の低
下を付与する突然変異を含み得る。
【0061】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質はまた、分子のIL2部分の変異も含む。この
変異は、単一のアミノ酸変化、単一のアミノ酸欠失、複数のアミノ酸変化及び複数のアミ
ノ酸欠失であってもよい。分子のIL2サイトカイン部分のこれらの変化は、低親和性I
L2受容体に対するサイトカイングラフト化タンパク質の親和性を低下させることができ
る。
【0062】
更には、本開示は、本明細書に記載されるとおりの抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質の少なくとも重鎖及び/又は軽鎖タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供す
る。別の関連する態様において、本開示は、本明細書に記載されるとおりの抗体サイトカ
イングラフト化タンパク質の産生に好適な宿主細胞を更に提供する。詳細な実施形態にお
いて、宿主細胞は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の軽鎖及び/又は重鎖ポリペ
プチドをコードする核酸を含む。更に別の態様において、抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質の作製方法が提供され、この方法は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の
発現、形成、及び分泌に好適な条件下で本明細書に記載されるとおりの提供される宿主細
胞を培養すること、及び培養物から抗体サイトカイングラフト化タンパク質を回収するこ
とを含む。更なる態様において、本開示は、本明細書に記載されるとおりの抗体サイトカ
イングラフト化タンパク質を含むキットを更に提供する。
【0063】
別の関連する態様において、本開示は、本明細書に記載されるとおりの抗体サイトカイ
ングラフト化タンパク質と、薬学的に許容可能な担体とを含む組成物を更に提供する。一
部の実施形態において、本開示は、個体に投与するための抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0064】
別の態様において、本開示は、それを必要としている個体の免疫関連障害を治療する方
法を提供し、この方法は、本明細書に記載されるとおりの抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質の治療有効量を個体に投与することを含む。更なる態様において、本開示は、個
体の免疫関連障害の治療又は予防における使用のための抗体サイトカイングラフト化タン
パク質を提供する。
【0065】
一部の実施形態において、患者は、免疫関連障害、例えば、1型糖尿病、全身性エリテ
マトーデス、白斑、慢性移植片対宿主病(cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(pG
vHD)、HIV誘発性脈管炎、円形脱毛症、全身性硬化症モルフェア及び原発性抗リン
脂質症候群を有する。一部の適応疾患については、抗体サイトカイングラフト化タンパク
質はステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、プ
レドニゾロン、ブデソニド、デキサメタゾン)と共投与される。
【0066】
定義
「抗体」は、四量体構造単位を含む免疫グロブリンファミリーの分子を指す。各四量体
が2つの同一のポリペプチド鎖対を含み、各対が、ジスルフィド結合で結び付けられた1
つの「軽」鎖(約25kD)と1つの「重」鎖(約50~70kD)とを有する。認めら
れている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε、及びμ定常領域遺伝子、
並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκ又はλのいずれかに分
類される。重鎖はγ、μ、α、δ、又はεに分類され、ひいてはこれが免疫グロブリンク
ラス、それぞれIgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを定義する。抗体は、任意
のアイソタイプ/クラス(例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgE)、又
は任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、I
gA2)であり得る。
【0067】
軽鎖及び重鎖は両方とも、構造的及び機能的相同性領域に分けられる。構造的及び機能
的に、用語「定常」及び「可変」が用いられる。各鎖のN末端は、抗原認識に一義的に関
与する約100~110アミノ酸又はそれ以上の可変(V)領域又はドメインを画成する
。用語の可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)は、それぞれ軽鎖及び重鎖のこれらの領
域を指す。VHとVLとが共に対になって単一の抗原結合部位を形成する。V領域に加え
、重鎖及び軽鎖は両方とも定常(C)領域又はドメインを含む。分泌型の免疫グロブリン
C領域は、3つのCドメインCH1、CH2、CH3、任意選択でCH4(Cμ)、及び
ヒンジ領域で構成される。膜結合型の免疫グロブリンC領域はまた、膜ドメイン及び細胞
内ドメインを有する。各軽鎖はN末端にVLを有し、続いてその他端に定常ドメイン(C
)を有する。軽鎖(CL)及び重鎖(CH1、CH2又はCH3)の定常ドメインは、分
泌、経胎盤移動、Fc受容体結合、補体結合など、重要な生物学的特性を付与する。慣習
上、定常領域ドメインの番号は、抗原結合部位又は抗体のアミノ末端から遠位になるに従
い大きくなる。N末端が可変領域であり、C末端が定常領域である;実際にはCH3及び
CLドメインが、それぞれ重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端ドメインを含む。VLはVHと
整列し、及びCLは重鎖の第1の定常ドメインと整列する。本明細書で使用されるとき、
「抗体」は、従来の抗体構造及び変種の抗体を包含する。従って、この概念の範囲内には
、抗体サイトカイングラフト化タンパク質、完全長抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト
抗体、及びその抗体断片がある。
【0068】
抗体は、インタクトな免疫グロブリン鎖として存在するか、又は様々なペプチダーゼに
よる消化によって産生される幾つもの十分に特徴付けられた抗体断片として存在する。用
語「抗体断片」は、本明細書で使用されるとき、6つのCDRを保持している抗体の1つ
以上の一部分を指す。従って、例えば、ペプシンがヒンジ領域のジスルフィド結合の下で
抗体を消化すると、それ自体軽鎖がジスルフィド結合によってVH-CH1に連結したも
のであるFab’の二量体、F(ab)’2が産生される。F(ab)’2を穏和条件下
で還元するとヒンジ領域のジスルフィド結合が壊れ、それによりF(ab)’2二量体が
Fab’単量体に変換され得る。Fab’単量体は本質的に、ヒンジ領域の一部分を有す
るFabである(Paul et al.,Fundamental Immunolo
gy 3d ed.(1993))。様々な抗体断片がインタクトな抗体の消化という観
点で定義されているが、当業者は、かかる断片が化学的に、或いは組換えDNA方法を用
いることによりデノボ合成されてもよいことを理解するであろう。本明細書で使用される
とき、「抗体断片」は、全抗体の修飾によって作製されるか、又は組換えDNA方法を用
いてデノボ合成されるかのいずれかの、結合特異性及び機能活性を保持している抗体の1
つ以上の一部分を指す。抗体断片の例としては、同じ結合特異性を備えたFv断片、単鎖
抗体(ScFv)、Fab、Fab’、Fd(Vh及びCH1ドメイン)、dAb(Vh
及び単離CDR);及びこれらの断片の多量体型(例えば、F(ab’)2)が挙げられ
る。抗体サイトカイングラフト化タンパク質はまた、所望の結合特異性及び活性を実現す
るのに必要な抗体断片も含み得る。
【0069】
「Fab」ドメインは、この文脈で使用されるとき、重鎖可変ドメイン、定常領域CH
1ドメイン、軽鎖可変ドメイン、及び軽鎖定常領域CLドメインを含む。これらのドメイ
ンの相互作用はCH1ドメインとCLドメインとの間のジスルフィド結合によって安定し
ている。一部の実施形態において、Fabの重鎖ドメインはN末端からC末端にVH-C
Hの順序であり、Fabの軽鎖ドメインはN末端からC末端にVL-CLの順序である。
一部の実施形態において、Fabの重鎖ドメインはN末端からC末端にCH-VHの順序
であり、Fabの軽鎖ドメインはCL-VLの順序である。Fab断片は歴史的にはイン
タクトな免疫グロブリンのパパイン消化によって同定されたが、「Fab」は、典型的に
は任意の方法により組換えで作製される。各Fab断片は抗原結合に関して一価であり、
即ちそれは単一の抗原結合部位を有する。
【0070】
「相補性決定ドメイン」又は「相補性決定領域」(「CDR」)は、同義的に、VL及
びVHの超可変領域を指す。CDRは、抗体鎖の中でかかる標的タンパク質に対する特異
性を備えた標的タンパク質結合部位である。各ヒトVL又はVH中に3つのCDR(CD
R1~3、N末端から連続的に番号付けされる)があり、可変ドメインの約15~20%
を占める。CDRは、標的タンパク質のエピトープに対して構造的に相補的であり、した
がって、結合特異性に直接関与している。VL又はVHの残りの区間、いわゆるフレーム
ワーク領域(FR)は、アミノ酸配列の変化をあまり示さない(Kuby,Immuno
logy,4th ed.,Chapter 4.W.H.Freeman & Co.
,New York,2000)。
【0071】
CDR及びフレームワーク領域の位置は、当該技術分野における様々な周知の定義、例
えば、Kabat、Chothia、及びAbM(例えば、Kabat et al.1
991 Sequences of Proteins of Immunologic
al Interest, Fifth Edition,U.S.Departmen
t of Health and Human Services,NIH Publi
cation No.91-3242,Johnson et al.,Johnson
et al.,Nucleic Acids Res.,29:205-206(20
01);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.,196:901
-917(1987);Chothia et al.,Nature,342:877
-883(1989);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,22
7:799-817(1992);Al-Lazikani et al.,J.Mol
.Biol.,273:927-748(1997)を参照)を用いて決定され得る。抗
原結合部位の定義は、以下にも記載されている:Ruiz et al.,Nuclei
c Acids Res.,28:219-221(2000);及びLefranc,
M.P.,Nucleic Acids Res.,29:207-209(2001)
;(ImMunoGenTics(IMGT)numbering)Lefranc,M
.-P.,The Immunologist,7,132-136(1999);Le
franc,M.-P.et al.,Dev.Comp.Immunol., 27,
55-77(2003);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.
,262:732-745(1996);及びMartin et al.,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA,86:9268-9272(1989);Mar
tin et al.,Methods Enzymol.,203:121-153(
1991);及びRees et al.,In Sternberg M.J.E.(
ed.),Protein Structure Prediction,Oxford
University Press,Oxford,141-172(1996)。
【0072】
Kabatに基づけば、VHのCDRアミノ酸残基は31~35(HCDR1)、50
~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)と付番され;及びVLのCDR
アミノ酸残基は24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)、及び89~97
(LCDR3)と付番される。Chothiaに基づけば、VHのCDRアミノ酸は26
~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)と
付番され;及びVLのアミノ酸残基は26~32(LCDR1)、50~52(LCDR
2)、及び91~96(LCDR3)と付番される。Kabat及びChothiaの両
方のCDR定義を組み合わせることにより、CDRはヒトVHにおいてアミノ酸残基26
~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)、及び95~102(HCDR3)、
及びヒトVLにおいてアミノ酸残基24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2
)、及び89~97(LCDR3)からなる。
【0073】
「抗体可変軽鎖」又は「抗体可変重鎖」は、本明細書で使用されるとき、それぞれVL
又はVHを含むポリペプチドを指す。内因性VLは遺伝子セグメントV(可変)及びJ(
連結)によってコードされ、及び内因性VHはV、D(多様性)、及びJによってコード
される。VL又はVHの各々はCDR並びにフレームワーク領域(FR)を含む。用語「
可変領域」又は「V領域」は、同義的に、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3
-CDR3-FR4を含む重鎖又は軽鎖を指す。V領域は天然に存在するもの、組換え又
は合成であってもよい。本願において、抗体軽鎖及び/又は抗体重鎖はまとめて「抗体鎖
」と称することができる。本明細書に提供され及び更に記載されるとおり、「抗体可変軽
鎖」又は「抗体可変重鎖」及び/又は「可変領域」及び/又は「抗体鎖」は任意選択で、
CDRに組み込まれたサイトカインポリペプチド配列を含む。
【0074】
本明細書における免疫グロブリン重鎖の、例えばCH2及びCH3ドメインを含むC末
端部分は、「Fc」ドメインである。「Fc領域」は、本明細書で使用されるとき、第1
の定常領域(CH1)免疫グロブリンドメインを除外した抗体の定常領域を指す。Fcは
、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、IgE
及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにこれらのドメインの
可動性ヒンジN末端を指す。IgA及びIgMについては、FcはJ鎖を含み得る。Ig
Gについては、Fcは免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3並びにCγ1とCγとの
間のヒンジを含む。当該技術分野においては、Fc領域の境界は様々であり得るが、しか
しながらヒトIgG重鎖Fc領域は通常は残基C226又はP230~そのカルボキシル
末端まで(使用する付番はKabat et al.(1991,NIH Public
ation 91-3242,National Technical Informa
tion Service,Springfield,Va.)にあるEUインデックス
に従う)を含むと定義されることが理解される。「Fc領域」は、この領域を単独で指す
こともあり、又は抗体若しくは抗体断片のコンテクストでこの領域を指すこともある。「
Fc領域」は、例えばエフェクター機能を調節する修飾を含め、Fc領域の天然に存在す
る対立遺伝子変異体を例えばCH2及びCH3領域に含む。Fc領域はまた、生物学的機
能に変化をもたらさない変異体も含む。例えば、免疫グロブリンのFc領域のN末端又は
C末端から、生物学的機能を実質的に失うことなく1つ以上のアミノ酸が欠失される。例
えば、特定の実施形態においてC末端リジンが修飾され、置き換えられ、又は除去される
。詳細な実施形態においてFc領域の1つ以上のC末端残基が変更又は除去される。特定
の実施形態においてFcの1つ以上のC末端残基(例えば、末端リジン)が欠失される。
特定の他の実施形態においてFcの1つ以上のC末端残基が別のアミノ酸で置換される(
例えば、末端リジンが置き換えられる)。かかる変異体は、活性に及ぶ効果が最小限とな
るように当該技術分野において公知の一般的規則に従い選択される(例えば、Bowie
,et al.,Science 247:306-1310,1990を参照のこと)
。Fcドメインは、FcRなどの細胞受容体によって認識される免疫グロブリン(Ig)
の一部分であり、そこに補体活性化タンパク質C1qが結合する。CH2エクソンの5’
部分にコードされる下方のヒンジ領域は、FcR受容体への結合のための抗体内の可動性
を提供する。
【0075】
「キメラ抗体」は、(a)異なる又は変更されたクラス、エフェクター機能及び/又は
種の定常領域、又はそのキメラ抗体に新規特性を付与する完全に異なる分子、例えば、酵
素、毒素、ホルモン、成長因子、及び薬物に抗原結合部位(可変領域)が連結するように
定常領域、又はその一部分が変更され、置き換えられ、又は交換されている;又は(b)
異なる又は変更された抗原特異性を有する可変領域によって可変領域、又はその一部分が
変更され、置き換えられ、又は交換されている抗体分子である。
【0076】
「ヒト化」抗体は、ヒトにおいて免疫原性が低いながらも非ヒト抗体の反応性(例えば
、結合特異性、活性)を保持している抗体である。これは、例えば、非ヒトCDR領域を
保持し、且つ抗体の残りの部分をヒト対応物に置き換えることによって実現し得る。例え
ば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
,81:6851-6855(1984);Morrison and Oi,Adv.
Immunol.,44:65-92(1988);Verhoeyen et al.
,Science,239:1534-1536(1988);Padlan,Mole
c.Immun.,28:489-498(1991);Padlan,Molec.I
mmun.,31(3):169-217(1994)を参照のこと。
【0077】
「ヒト抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方が、ヒト起源の配列
に由来する可変領域を有する抗体を含む。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域
はまた、このようなヒト配列、例えば、ヒト生殖系列配列、又はヒト生殖系列配列の突然
変異型、又は例えば、Knappik et al.,J.Mol.Biol.296:
57-86,2000)に記載されるような、ヒトフレームワーク配列分析から得られる
コンセンサスフレームワーク配列を含む抗体に由来する。ヒト抗体は、ヒト配列によって
コードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダム若しくは部位
特異的突然変異によって、又はインビボでの体細胞突然変異によって、又は安定性若しく
は製造を促進するための保存的置換によって導入される突然変異)。
【0078】
「対応するヒト生殖系列配列」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン可変領域配
列によってコードされる全ての他の公知の可変領域アミノ酸配列と比較して、参照可変領
域アミノ酸配列又はサブ配列との最も高い決定されたアミノ酸配列同一性を有するヒト可
変領域アミノ酸配列又はサブ配列をコードする核酸配列を指す。対応するヒト生殖系列配
列はまた、全ての他の評価された可変領域アミノ酸配列と比較して、参照可変領域アミノ
酸配列又はサブ配列との最も高いアミノ酸配列同一性を有するヒト可変領域アミノ酸配列
又はサブ配列を指し得る。対応するヒト生殖系列配列は、フレームワーク領域のみ、相補
性決定領域のみ、フレームワーク及び相補性決定領域、可変セグメント(上で定義される
ような)、又は可変領域を含む配列若しくはサブ配列の他の組合せであり得る。配列同一
性は、例えば、BLAST、ALIGN、又は当該技術分野において公知の別のアライン
メントアルゴリズムを用いて、2つの配列を整列する、本明細書に記載される方法を用い
て決定され得る。対応するヒト生殖系列核酸又はアミノ酸配列は、参照可変領域核酸又は
アミノ酸配列との少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96
%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有し得る。
【0079】
用語「価数」は、本明細書で使用されるとき、ポリペプチド中の潜在的な標的結合部位
の数を指す。各標的結合部位は、1つの標的分子又は標的分子の特異的部位に特異的に結
合する。ポリペプチドが2つ以上の標的結合部位を含むとき、各標的結合部位は同じ又は
異なる分子に特異的に結合し得る(例えば、異なる分子、例えば異なる抗原、又は同じ分
子上の異なるエピトープに結合し得る)。従来の抗体は、例えば2つの結合部位を有し、
二価であり;「三価」及び「四価」は、抗体分子にそれぞれ3つの結合部位及び4つの結
合部位が存在することを指す。抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、一価(即ち、
1つの標的分子に結合する)、二価、又は多価(即ち、2つ以上の標的分子に結合する)
であり得る。
【0080】
語句「特異的に結合する」又は「結合特異性」は、標的(例えば、タンパク質)と抗体
サイトカイングラフト化タンパク質との間の相互作用について記載する文脈で使用される
とき、タンパク質及び他の生物学的物質の異種集団中、例えば、生体試料、例えば、血液
、血清、血漿又は組織試料中の標的の存在を決定付ける結合反応を指す。従って、特定の
指定される条件下では、特定の結合特異性を有する抗体サイトカイングラフト化タンパク
質は特定の標的にバックグラウンドの少なくとも2倍結合し、その試料中に存在する他の
標的に有意な量で結合することは実質的にない。一実施形態において、指定される条件下
では、特定の結合特異性を有する抗体サイトカイングラフト化タンパク質は特定の抗原に
バックグラウンドの少なくとも10倍結合し、その試料中に存在する他の標的に有意な量
で結合することは実質的にない。かかる条件下での抗体サイトカイングラフト化タンパク
質との特異的結合には、抗体サイトカイングラフト化タンパク質が特定の標的タンパク質
に対するその特異性に関して選択されている必要があり得る。本明細書で使用されるとき
、特異的結合は、ヒトIL2高親和性受容体に選択的に結合する抗体サイトカイングラフ
ト化タンパク質を含み、例えば他のサイトカイン受容体スーパーファミリーメンバーと交
差反応する抗体サイトカイングラフト化タンパク質を含まない。一部の実施形態において
、ヒトIL2高親和性受容体に選択的に結合し、且つ非ヒト霊長類IL2R(例えばカニ
クイザルIL2R)と交差反応する抗体サイトカイングラフト化タンパク質が選択される
。一部の実施形態において、ヒトIL2高親和性受容体に選択的に結合し、且つ更なる標
的抗原と反応する抗体グラフト化タンパク質が選択される。特定の標的抗原タンパク質と
特異的反応性を示す抗体サイトカイングラフト化タンパク質の選択には、種々のフォーマ
ットが用いられ得る。例えば、固相ELISAイムノアッセイが、タンパク質と特異的に
免疫反応性の抗体を選択するのに日常的に使用される(例えば、特異的免疫反応性を決定
するのに使用され得るイムノアッセイ形式及び条件の説明については、Harlow &
Lane,Using Antibodies,A Laboratory Manu
al(1998)を参照されたい)。典型的に、特異的又は選択的結合反応は、バックグ
ラウンドシグナルの少なくとも2倍、より典型的に、バックグラウンドより少なくとも1
0~100倍、シグナルを生成するであろう。
【0081】
「平衡解離定数(KD、M)」という用語は、解離速度定数(kd、時間-1)を結合
速度定数(ka、時間-1、M-1)で除算した値を指す。平衡解離定数は、当該技術分
野における任意の公知の方法を用いて測定され得る。抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質は、一般に、約10-7又は10-8M未満、例えば、約10-9M又は10-10
M未満、ある実施形態において、約10-11M、10-12M又は10-13M未満の
平衡解離定数を有するであろう。
【0082】
本明細書で使用されるとき、用語「エピトープ」又は「結合領域」は、抗体CDRと抗
原タンパク質との間の特異的結合に関与する抗原タンパク質におけるドメインを指す。
【0083】
本明細書で使用されるとき、用語「受容体-サイトカイン結合領域」は、グラフト化さ
れたサイトカインとその受容体(例えばIL2高親和性受容体)との間の特異的結合に関
与する抗体サイトカイングラフト化タンパク質のグラフト化されたサイトカイン部分にお
けるドメインを指す。各抗体サイトカイングラフト化タンパク質に少なくとも1つのかか
る受容体-サイトカイン結合領域が存在し、結合領域の各々は他と同一であることも、又
は異なることもある。
【0084】
用語「アゴニスト」は、同義的に、受容体を活性化させて完全な又は部分的な受容体媒
介性応答を誘導する能力を有する抗体を指す。例えば、IL2高親和性受容体のアゴニス
トはIL2高親和性受容体に結合し、IL2媒介性細胞内シグナル伝達、細胞活性化及び
/又はTreg細胞増殖を誘導する。抗体サイトカイングラフト化タンパク質アゴニスト
は、幾つかの点で天然IL2リガンドと同様にIL2高親和性受容体を通じたシグナル伝
達を刺激する。IL2がIL2高親和性受容体に結合するとJak1及びJak2活性化
が誘導され、それによりSTAT5リン酸化がもたらされる。一部の実施形態において、
抗体サイトカイングラフト化タンパク質アゴニストは、IL2高親和性受容体に結合し、
且つSTAT5リン酸化、及び/又はTreg細胞増殖を誘導するその能力によって同定
することができる。
【0085】
用語「IL2」又は「IL-2」又は「インターロイキン2」又は「インターロイキン
-2」は、同義的に、天然タンパク質が炎症過程の調節及び維持において機能するαヘリ
ックスサイトカインファミリーメンバーを指す。IL2の特性は、N末端とC末端とが空
間的に互いに近いことであり、そのためIL2サイトカインタンパク質は抗体グラフトに
好適となる。アゴニスト抗体サイトカイングラフト化タンパク質のコンテクストでは、完
全長天然ヒトの残基21~153を含むIL2が利用される。本明細書に開示されるとお
りのヒトIL2は、その全長にわたってアミノ酸配列番号2と少なくとも約90%、91
%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%
の配列同一性を有し、及び本明細書に記載されるとおりの抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質の優先的なアゴニスト活性を保持し、GenBank受託番号NP_00057
7として公開されている。配列番号1はヒトIL2 cDNA配列である。本明細書に開
示されるとおりのIL2タンパク質をコードするヒトIL2核酸は、その全長にわたって
配列番号1の核酸配列と少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%
、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有し、GenBank
受託番号NM_000586の下に公開された。
【0086】
用語「抗体サイトカイングラフト化タンパク質」又は「抗体サイトカイングラフト」又
は「グラフト化された」は、少なくとも1つのサイトカインが抗体のCDR内に直接取り
込まれ、CDRの配列に割り込んでいることを意味する。サイトカインは、HCDR1、
HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2又はLCDR3内に取り込むことがで
きる。サイトカインは、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2
又はLCDR3内に取り込み、CDRのN末端配列の方に、又はCDRのC末端配列の方
に取り込むことができる。CDR内に取り込まれたサイトカインは、元の標的タンパク質
に対する抗体部分の特異的結合を低下させてもよく、又は抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質は、その標的タンパク質に対するその特異的結合を保持していてもよい。例示的
サイトカインとしては、限定はされないが、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-
3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-12、IFN-α、I
FN-β、IFN-γ、GM-CSF、MIP-1α、MIP-1β、TGF-β、TN
F-α、及びTNF-βが挙げられる。また、サイトカインを抗体の一方の「アーム」の
特異的CDRにグラフト化すること、及び別の異なるサイトカインを抗体の他方の「アー
ム」のCDRにグラフト化することも可能である。例えば、IL2を抗体の一方の「アー
ム」のHCDR1にグラフト化し、且つIL-7を抗体サイトカイングラフト化タンパク
質の他方の「アーム」のLCDR1にグラフト化すると、二重機能抗体サイトカイングラ
フト化タンパク質を作り出すことができる。
【0087】
用語「単離された」は、核酸又はタンパク質に適用されるとき、核酸又はタンパク質に
自然状態でそれが関連している他の細胞成分が本質的に含まれないことを意味する。これ
は好ましくは均一状態にある。これは乾燥又は水溶液のいずれかである。純度及び均一性
は、典型的にはポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高速液体クロマトグラフィーなどの
分析化学技法を用いて決定される。調製物中に存在する優勢種であるタンパク質が、実質
的に精製される。詳細には、単離された遺伝子は、その遺伝子に隣接し、且つ目的の遺伝
子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームと分離されている。用語
「精製される」は、核酸又はタンパク質が電気泳動ゲルに本質的に1つのバンドを生じさ
せることを意味する。特に、これは核酸又はタンパク質が少なくとも85%純度、より好
ましくは少なくとも95%純度、及び最も好ましくは少なくとも99%純度であることを
意味する。
【0088】
用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、一本鎖形態又は二本鎖形態のいずれかのデ
オキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)及びこれらのポリマーを指す。具体的
に限定しない限り、この用語には、参照核酸と同様の結合特性を有し、且つ天然に存在す
るヌクレオチドと同じように代謝される天然ヌクレオチドの公知の類似体を含む核酸が包
含される。特に指示されない限り、特定の核酸配列はまた、明示的に指示される配列のみ
ならず、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)、対立遺伝子、オル
ソログ、SNP、及び相補配列も黙示的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1
つ以上の選ばれた(又は全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基及び/又はデオキシイ
ノシン残基に置換されている配列を作成することにより実現し得る(Batzer et
al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohts
uka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(198
5);及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:
91-98(1994))。
【0089】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書では、アミノ酸
残基のポリマーを指して同義的に使用される。これらの用語は、1つ以上のアミノ酸残基
が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工の化学的模倣体であるアミノ酸ポリマー、並
びに天然に存在するアミノ酸ポリマー及び天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用され
る。
【0090】
「アミノ酸」という用語は、天然、及び合成アミノ酸、並びに天然アミノ酸と同様に機
能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸は、遺伝子コードによっ
てコードされるもの、並びに後に修飾されるアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ
-カルボキシグルタミン酸、及びO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体は、天然アミ
ノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、
及びR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメ
チルスルホニウムに結合されたα-炭素を指す。このような類似体は、修飾されたR基(
例えば、ノルロイシン)又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基
本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的な化学構造と異なる構造を
有するが、天然アミノ酸と同様に機能する化合物を指す。
【0091】
「保存的に修飾された変異体」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の
核酸配列に関して、保存的に修飾された変異体は、同一の若しくは本質的に同一のアミノ
酸配列をコードする核酸、又は核酸がアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の
配列を指す。遺伝子コードの縮重のため、多数の機能的に同一の核酸が、任意の所与のタ
ンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミ
ノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって特定される全ての位
置で、コドンは、コードされるポリペプチドを変化させずに、記載される対応するコドン
のいずれかに変化され得る。このような核酸変化は、「サイレント変異」であり、これは
、保存的に修飾された変異の1種である。ポリペプチドをコードする、本明細書における
全ての核酸配列はまた、核酸の全ての可能なサイレント変異を説明する。当業者は、核酸
中の各コドン(通常はメチオニンのための唯一のコドンであるAUG、及び通常はトリプ
トファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一の分子を生じるよ
うに修飾され得ることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸
の各サイレント変異は、それぞれの記載される配列において黙示的なものである。
【0092】
アミノ酸配列に関して、コード配列における単一のアミノ酸又はごく一部のアミノ酸を
変化させ、付加し又は欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列に
対する個々の置換、欠失又は付加は、その変化が化学的に同様のアミノ酸によるアミノ酸
置換をもたらす場合に「保存的に修飾された変異体」であることは、当業者であれば認識
するであろう。機能的に類似するアミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野にお
いて周知である。このような保存的に修飾された変異体は、多型変異体、種間相同体、及
び対立遺伝子に対して追加的なものであり、それらを除外しない。以下の8つの群の各々
は、互いに保存的置換であるアミノ酸を含有する:1)アラニン(A)、グリシン(G)
;2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミ
ン(Q);4)アルギニン(R)、リシン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(
L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)
、トリプトファン(W);7)セリン(S)、トレオニン(T);及び8)システイン(
C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins(1984)
を参照)。
【0093】
「配列同一性パーセンテージ」は、2つの最適にアラインメントした配列を比較ウィン
ドウにわたって比較することにより決定され、ここでポリヌクレオチド配列のうち比較ウ
ィンドウ内にある部分は、2つの配列の最適アラインメントのため、付加又は欠失を含ま
ない参照配列(例えばポリペプチド)と比較したとき付加又は欠失(即ちギャップ)を含
み得る。パーセンテージは、両方の配列に同一の核酸塩基又はアミノ酸残基が現れる位置
の数を決定してマッチする位置の数を求め、そのマッチする位置の数を比較ウィンドウ内
の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性パーセンテージを求めること
により計算される。
【0094】
2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈における「同一である」又はパーセント「
同一性」という用語は、2つ以上の配列又はサブ配列が同じ配列でこと程度を指す。以下
の配列比較アルゴリズムのうちの1つを用いて、又は手作業でのアラインメント及び目視
検査によって測定したとき、2つの配列が比較ウィンドウ、又は指示領域にわたって最大
限対応するように比較及びアラインメントしたときに同じであるアミノ酸残基又はヌクレ
オチドを指定のパーセンテージだけ有する(即ち、参照配列の指定の領域にわたって、又
は指定されない場合には配列全体にわたって少なくとも85%、90%、91%、92%
、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性
を有する)場合に、2つの配列は「実質的に同一である」。本開示は、本明細書に例示さ
れるそれぞれポリペプチド又はポリヌクレオチド(例えば、配列番号20、配列番号33
、配列番号46、配列番号59、配列番号72、配列番号85、配列番号98、又は配列
番号111のいずれか1つに例示される可変領域と実質的に同一であるポリペプチド又は
ポリヌクレオチドを提供する。同一性は、参照配列の少なくとも約15、25又は50ヌ
クレオチド長の領域にわたって、又はより好ましくは100~500又は1000ヌクレ
オチド長又はそれ以上の領域にわたって、又は完全長にわたって存在する。アミノ酸配列
に関して、同一性又は実質的な同一性は、参照配列の少なくとも5、10、15又は20
アミノ酸長、任意選択で少なくとも約25、30、35、40、50、75又は100ア
ミノ酸長、任意選択で少なくとも約150、200又は250アミノ酸長の領域にわたっ
て、又は完全長にわたって存在し得る。より短いアミノ酸配列、例えば、20アミノ酸以
下のアミノ酸配列に関しては、1又は2アミノ酸残基が本明細書に定義される保存的置換
に従い保存的に置換されているとき、実質的な同一性が存在する。
【0095】
配列比較のために、典型的に、1つの配列は、試験配列が比較される参照配列として働
く。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験及び参照配列が、コンピュータに入力さ
れ、サブ配列が、指定され、必要に応じて、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指
定される。デフォルトプログラムパラメータが使用され得るか、又は代替パラメータが指
定され得る。次に、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配
列と比べた試験配列に対する配列同一性パーセントを計算する。
【0096】
本明細書において使用される際の「比較ウインドウ」は、2つの配列が最適に整列され
た後、配列が、同じ数の連続する位置の参照配列と比較され得る、20~600、通常、
約50~約200、より通常は、約100~約150からなる群から選択される連続する
位置の数のいずれか1つのセグメントに対する参照を含む。比較のための配列のアライン
メントの方法は、当該技術分野において周知である。比較のための配列の最適なアライン
メントは、例えば、Smith and Waterman,(1970)Adv.Ap
pl.Math.2:482cの部分相同性アルゴリズムによって、Needleman
and Wunsch,(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性ア
ラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman,(198
8)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444の類似検索法に
よって、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Ge
netics Software Package,Genetics Compute
r Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGA
P、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、又は手動によるアライ
ンメント及び視覚的検査(例えば、Ausubel et al.,Current P
rotocols in Molecular Biology(1995補遺)を参照
)によって行われ得る。
【0097】
配列同一性及び配列類似性パーセントを決定するのに好適なアルゴリズムの2つの例は
、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Alts
chul et al(1977)Nuc.Acids Res.25:3389-34
02,;及びAltschul et al(1990)J.Mol.Biol.215
:403-410,に記載されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、N
ational Center for Biotechnology Informa
tionによって公表されている。このアルゴリズムは、データベース配列中の同じ長さ
のワードと整列される場合、いくつかの正の値の閾値スコア(some positiv
e-valued threshold score)Tと一致するか、又はそれを満た
す、クエリー配列中の短いワード長Wを同定することによって、高スコア配列ペア(HS
P)をまず同定することを含む。Tは、近隣ワードスコア閾値と呼ばれる(Altsch
ul et al.上掲)。これらの初期近隣ワードヒットは、それらを含有するより長
いHSPを発見するための検索を開始させるためのシードとして働く。ワードヒットは、
累積アラインメントスコアが増加され得る限り、各配列に沿った両方の方向に伸長される
。累積スコアは、ヌクレオチド配列について、パラメータM(一致する残基のペアに関す
る報酬スコア;常に>0)及びN(不一致の残基に関するペナルティースコア;常に<0
)を用いて計算される。アミノ酸配列について、スコアリングマトリックスが、累積スコ
アを計算するのに使用される。各方向におけるワードヒットの伸長は、以下の場合に停止
される:累積アラインメントスコアが、その最大達成値から量Xだけ減少する場合;1つ
又は複数の負のスコアの残基アラインメントの累積のため、累積スコアが、ゼロ以下にな
る場合;又はいずれかの配列の末端に到達する場合。BLASTアルゴリズムパラメータ
W、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム
(ヌクレオチド配列について)は、デフォルトとして、11のワード長(W)、10の期
待値(E)、M=5、N=-4及び両鎖の比較を使用する。アミノ酸配列について、BL
ASTPプログラムは、デフォルトとして、3のワード長、及び10の期待値(E)、及
び50のBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and He
nikoff,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1
0915を参照)アラインメントs(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、及
び両鎖の比較を使用する。
【0098】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(例えば、K
arlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.S
ci.USA 90:5873-5787,を参照)。BLASTアルゴリズムによって
提供される類似性の1つの尺度は、2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の一致が偶然
生じる確率の指標を提供する最小合計確率(P(N))である。例えば、試験核酸と参照
核酸との比較における最小合計確率が、約0.2未満、より好ましくは、約0.01未満
、最も好ましくは、約0.001未満である場合、核酸は、参照配列と類似すると考えら
れる。
【0099】
2つの核酸配列又はポリペプチドが実質的に同一であることの別の指標は、後述される
ように、第1の核酸によってコードされるポリペプチドが、第2の核酸によってコードさ
れるポリペプチドに対して生じた抗体と免疫学的に交差反応することである。したがって
、例えば、2つのペプチドの保存的置換のみが異なる場合、ポリペプチドは、典型的に、
第2のポリペプチドと実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であることの
別の指標は、後述されるように、2つの分子又はその補体が、ストリンジェントな条件下
で互いにハイブリダイズすることである。2つの核酸配列が実質的に同一であることのさ
らに別の指標は、同じプライマーを用いて、配列を増幅することができることである。
【0100】
用語「連結」は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質内で結合領域がどのようにつ
ながっているかについて記載する文脈で使用されるとき、それらの領域を物理的に結び付
ける可能なあらゆる手段を包含する。多数の結合領域が高頻度で共有結合(例えば、ペプ
チド結合又はジスルフィド結合)又は非共有結合などの化学結合によって結び付けられ、
これは直接結合(即ち、2つの結合領域間にリンカーなし)又は間接的結合(即ち、2つ
以上の結合領域間に少なくとも1つのリンカー分子の助けを借りる)のいずれかであり得
る。
【0101】
「免疫関連障害」又は「免疫疾患」は免疫系の機能不全を指し、ここでは体自身の免疫
系が健常組織を攻撃する。機能不全は、免疫細胞の構成成分におけるものであってよく、
過活性及び低活性の両方の免疫系を含む。
【0102】
用語「対象」、「患者」、及び「個体」は、同義的に、哺乳類、例えばヒト又は非ヒト
霊長類哺乳類を指す。哺乳類はまた、実験動物哺乳類、例えば、マウス、ラット、ウサギ
、ハムスターであることもある。一部の実施形態において、哺乳類は、農業動物哺乳類(
例えば、ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)又は家庭内動物哺乳類(例えば、イヌ、ネ
コ)であることもある。
【0103】
本明細書において使用される際、任意の疾患又は障害の「治療する」、「治療すること
」、又は「治療」という用語は、一実施形態において、疾患又は障害を改善すること(す
なわち、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発生を減速するか又は停止させるか又
は軽減すること)を指す。別の実施形態において、「治療する」、「治療すること」、又
は「治療」は、患者によって認識できないものを含む少なくとも1つの物理的パラメータ
を軽減又は改善することを指す。さらに別の実施形態において、「治療する」、「治療す
ること」、又は「治療」は、疾患又は障害を、身体的に、(例えば、認識できる症状の安
定化)、生理学的に、(例えば、物理的パラメータの安定化)、又はその両方で調節する
ことを指す。更に別の実施形態において、「治療する」、「治療している」、又は「治療
」は、疾患又は障害の発生又は発症又は進行を妨げる又は遅らせることを指す。
【0104】
「治療的に許容できる量」又は「治療的に有効な用量」という用語は、所望の結果(す
なわち、炎症の減少、痛みの阻害、炎症の防止、炎症反応の阻害又は防止)をもたらすの
に十分な量を同義的に指す。ある実施形態において、治療的に許容できる量は、望ましく
ない副作用を誘導しないか、又は引き起こさない。治療的に許容できる量は、最初は低用
量を投与し、次に、所望の効果が達成されるまでその用量を徐々に増加することによって
決定され得るIL2抗体サイトカイングラフト化タンパク質の「予防的に有効な投与量」
、及び「治療的に有効な投与量」は、免疫関連障害に関連する症状を含む疾患の症状の、
開始を防止するか、又はその重症度の低下をもたらし得る。
【0105】
「同時投与する」という用語は、個体中の2つ(以上)の活性薬剤の同時の存在を指す
。同時投与される活性薬剤は、同時に又は連続的に送達され得る。
【0106】
本明細書で使用されるとき、語句「~から本質的になる(consisting es
sentially of)」は、方法又は組成物に含まれる医薬活性薬剤の属又は種、
並びにその方法又は組成物の意図される目的のための任意の不活性担体又は賦形剤を指す
。一部の実施形態において、語句「~から本質的になる(consisting ess
entially of)」は、IL2抗体サイトカイングラフト化タンパク質以外の1
つ以上の追加的な活性薬剤の包含を明示的に除外する。一部の実施形態において、語句「
~から本質的になる(consisting essentially of)」は、I
L2抗体サイトカイングラフト化タンパク質以外の更なる追加的な活性薬剤及び第2の共
投与される薬剤の包含を明示的に除外する。
【0107】
用語「a」、「an」、及び「the」は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の
指示対象を含む。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】IgG.IL2D49A.H1が組換えIL2(Proleukin(登録商標))と比較してTregを優先的に拡大することを示す、抗体サイトカイングラフト化構築物の表である。
【
図2】抗体サイトカイングラフト化タンパク質を組換えIL2(Proleukin(登録商標))と比較する表である。STAT5リン酸化によって測定したとき、IgG.IL2D49A.H1分子はTreg細胞上のIL2受容体を刺激するが、Tエフェクター細胞(Teff)又はNK細胞上のIL2受容体は刺激しないことに留意されたい。この分子はまた、Proleukin(登録商標)より長い半減期も有し、インビボで一層のTreg細胞拡大を引き起こす。
【
図3】種々の免疫調節細胞型のパネルにおける等モル用量の抗体サイトカイングラフト化タンパク質をProleukin(登録商標)と比較したときの変化倍数の表である。
【
図4】Proleukin(登録商標)と比較したときの、及びSTAT5リン酸化によって測定したときの、抗体サイトカイングラフト化タンパク質によるIL2低親和性又は高親和性受容体の差次的活性化に関する実験データを示す。IgG.IL2D49A.H1が、Treg細胞に発現するがCD4+又はCD8+ Tcon細胞には発現しない高親和性IL2受容体を刺激することに留意されたい。
【
図5】抗体サイトカイングラフト化タンパク質(例えばIgG.IL2D49A.H1)で拡大したTregがTエフェクター細胞(Teff)よりも良好な抑制因子であるという実験データを示す(上のパネルを参照)。下のパネルは、抗体サイトカイングラフト化タンパク質によって拡大したTreg細胞が、Foxp3タンパク質発現により、及びFoxp3メチル化により安定するという実験データを示す。
【
図6】抗体サイトカイングラフト化タンパク質が、IL2低親和性受容体を発現するNK細胞に効果をほとんど乃至全く及ぼさないという実験データを示す。対照的に、pSTAT5活性化によって測定したときProleukin(登録商標)はNK細胞を刺激する。
【
図7】カニクイザル(cynomolgous monkey)におけるProleukin(登録商標)と比較した抗体サイトカイングラフト化タンパク質の薬物動態(PK)、薬力学(PD)及び毒性プロファイルに関する実験データを示す。例えば、IgG.IL2D49A.H1はProleukin(登録商標)と比べてはるかに低い好酸球増加毒性プロファイルを有する。
【
図8】IgG.IL2D49.H1の半減期延長を示すグラフである。
【
図9】マウスGvHDモデルにおける抗体サイトカイングラフト化タンパク質分子に関する実験データを示す。これは、このモデルにおける抗体サイトカイングラフト化タンパク質による治療がProleukin(登録商標)よりも良好にTregを拡大する一方、CD4+/CD8+ Teff細胞又はNK細胞にはほとんど乃至全く効果を及ぼさないことを示す。
【
図10】IgG.IL2D49.H1の投与に伴う体重減少がほとんどない一方での、GvHDマウスモデルにおけるProleukin(登録商標)治療に伴う体重減少に関する実験データを示す。
【
図11】前糖尿病(NOD)マウスモデルにおける抗体サイトカイングラフト化タンパク質とProleukin(登録商標)との比較に関する実験データを示し、このモデルでIgG.IL2D49A.H1が1型糖尿病を予防することを実証する。
【
図12】前糖尿病NODマウスモデルにおけるTreg対CD8 Tエフェクター細胞比の比較に関する実験データを示す。
【
図13-1】
図13:
図13Aは1.3mg/kg用量でのNODマウスモデルにおけるIgG.IL2D49A.H1の薬物動態に関する実験データを示す。
図13Bは0.43mg/kg用量でのNODマウスモデルにおけるIgG.IL2D49A.H1の薬物動態に関する実験データを示す。
【
図14】前糖尿病NODマウスモデルにおいて使用した用量範囲の表であり、等モル量のProleukin(登録商標)を比較する。
【
図15-1】
図15:
図15Aは白斑患者(patent)から採取してインビトロでIgG.IL2D49.H1により処理し、及びProleukin(登録商標)と比較したヒトPBMC上でのpSTAT5活性化の大きさを示す一連のグラフを示す。
図15Bは1型糖尿病患者(patent)から採取してインビトロでIgG.IL2D49.H1及びProleukin(登録商標)により処理したヒトPBMC上でのpSTAT5活性化の大きさを示す一連のグラフを示す。
【
図16】IL2を抗RSV抗体のCDRH1にグラフト化したとき、RSV結合が維持されることを示すELISAデータのグラフを示す。しかしながら、IL2をCDRL3にグラフト化したときRSVへの結合は低下する。IL2を異なる抗体骨格(Xolair)にグラフト化したとき、RSVへの結合はない。
【
図17】IgG.IL2D49A.H1の単回投与後のカニクイザルにおけるTreg拡大に関する実験データを示す。
【
図18】漸増濃度の架橋剤抗ヒトIgG抗体がGFTX3b_IL-2-H1-D49Aの選択的活性に及ぼす効果に関する実験データを示す。
【
図19】GFTX3b_IL-2-H1-D49Aによる異なる自己免疫性患者PBMCにおける選択的シグナル伝達に関する実験データを示す。
【
図20】ヒトPBMCにおけるTエフェクター細胞よりも優先的なTregにおけるシグナル伝達に関してGFTX3b_IL-2-H1-D49AがProleukinよりも高い選択性を有することに関する実験データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0109】
IL2高親和性受容体を標的化する抗体サイトカイングラフト化タンパク質
本明細書には、抗体の相補性決定領域(CDR)にグラフト化されたIL2を含むタン
パク質構築物が提供される。抗体サイトカイングラフト化タンパク質はヒト患者での使用
に好適な特性を示し、例えば、天然又は組換えヒトIL2と同様の免疫刺激活性を保持し
ている。しかしながら、負の効果、例えばNK細胞の刺激は減少している。他の活性及び
特徴もまた本明細書全体を通じて実証される。従って、これまで公知のIL2及び修飾I
L2治療剤、例えばProleukin(登録商標)と比べて治療プロファイルが改善さ
れた抗体サイトカイングラフト化タンパク質、及び提供される抗体サイトカイングラフト
化タンパク質の治療における使用方法が提供される。
【0110】
従って、本開示は、選択的活性プロファイルを備えた、IL2高親和性受容体のアゴニ
ストである抗体サイトカイングラフト化タンパク質を提供する。免疫グロブリン重鎖配列
と免疫グロブリン軽鎖配列とを含む提供される抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
各免疫グロブリン重鎖配列は重鎖可変領域(VH)と重鎖定常領域(CH)とを含み、こ
こで重鎖定常領域はCH1、CH2、及びCH3定常領域からなる。各免疫グロブリン軽
鎖配列は軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)とを含む。各抗体サイトカイング
ラフト化タンパク質において、IL2分子は抗体のVH又はVLの相補性決定領域(CD
R)に取り込まれる。
【0111】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、重鎖CDRに取
り込まれたIL2分子を含む。特定の実施形態においてIL2分子は重鎖相補性決定領域
1(HCDR1)に取り込まれる。特定の実施形態においてIL2分子は重鎖相補性決定
領域2(HCDR2)に取り込まれる。特定の実施形態においてIL2分子は重鎖相補性
決定領域3(HCDR3)に取り込まれる。
【0112】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、軽鎖CDRに取
り込まれたIL2分子を含む。特定の実施形態においてIL2分子は軽鎖相補性決定領域
1(LCDR1)に取り込まれる。特定の実施形態においてIL2分子は軽鎖相補性決定
領域2(LCDR2)に取り込まれる。特定の実施形態においてIL2分子は軽鎖相補性
決定領域3(LCDR3)に取り込まれる。
【0113】
一部の実施形態において、グラフト化される抗体サイトカインは、CDRに取り込まれ
るIL2配列を含み、それによりIL2配列がCDR配列に挿入される。挿入はCDRの
N末端領域若しくはその近傍、CDRの中央領域、又はCDRのC末端領域若しくはその
近傍であってもよい。他の実施形態において、グラフト化される抗体サイトカインは、C
DRに取り込まれるIL2分子を含み、それによりIL2配列がCDR配列の全て又は一
部に置き換わる。置き換えは、CDRのN末端領域、CDRの中央領域又はCDRのC末
端領域若しくはその近傍であってもよい。置き換えは、CDR配列の1又は2アミノ酸ほ
どの少ないものであっても、又はCDR配列全体であってもよい。
【0114】
一部の実施形態においてIL2分子はペプチドリンカーなしにCDRに直接グラフト化
され、CDR配列とIL2配列との間に追加的なアミノ酸はない。
【0115】
一部の実施形態において抗体サイトカイングラフト化タンパク質はIgGクラス抗体重
鎖の免疫グロブリン重鎖を含む。特定の実施形態においてIgG重鎖は、IgG1、Ig
G2又はIgG4サブクラスのいずれか1つである。
【0116】
一部の実施形態において抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、既知の臨床的に利
用されている免疫グロブリン配列から選択される重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列を含む
。特定の実施形態において抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、ヒト化配列である
重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列を含む。他の特定の実施形態において抗体サイトカイン
グラフト化タンパク質は、ヒト配列である重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列を含む。
【0117】
一部の実施形態において抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、生殖細胞系列免疫
グロブリン配列から選択される重鎖及び軽鎖免疫グロブリン配列を含む。
【0118】
一部の実施形態において抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、IL2分子の結合
特異性と異なる標的に対する免疫グロブリン可変ドメインの結合特異性を有する重鎖及び
軽鎖免疫グロブリン配列を含む。一部の実施形態において免疫グロブリン可変ドメインの
その標的に対する結合特異性は、グラフト化されたサイトカインの存在下で10%、20
%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99
%、又は100%保持される。特定の実施形態において保持される結合特異性は非ヒト標
的に対するものである。特定の実施形態において保持される結合特異性は、ウイルス、例
えばRSVに対するものである。他の実施形態において結合特異性は、IL2療法と併せ
て治療的有用性を有するヒト標的に対するものである。特定の実施形態において、免疫グ
ロブリンの結合特異性を標的化することにより、IL2成分に更なる治療利益が付与され
る。特定の実施形態において免疫グロブリンのその標的に対する結合特異性はIL2との
相乗活性を付与する。
【0119】
なおも他の実施形態において、免疫グロブリンのその標的に対する結合特異性は、IL
2分子をグラフト化することにより10%、20%、30%、40%、50%、60%、
70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は100%低下する。
【0120】
提供される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質のVH又はVLの相補性決定領域(CDR)に取り込まれたIL2分子を含む。
一部の実施形態において、IL2配列は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%
、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%
又は100%の配列同一性を有する。一部の実施形態において、IL2分子は配列番号4
の配列を含む。一部の実施形態において、IL2分子は配列番号4の配列からなる。提供
される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、抗体サイトカイングラフト化タンパク
質のVH又はVLの相補性決定領域(CDR)に取り込まれたIL2分子を含む。一部の
実施形態において、IL2配列は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%、90
%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は1
00%の配列同一性を有する。一部の実施形態において、IL2分子は配列番号4の配列
を含む。一部の実施形態において、IL2分子は配列番号4の配列からなる。
【0121】
提供される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質のVH又はVLの相補性決定領域(CDR)に取り込まれたIL2分子を含む。
一部の実施形態において、IL2配列は、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも85%
、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%
又は100%の配列同一性を有する。一部の実施形態において、IL2分子は配列番号6
の配列を含む。一部の実施形態において、IL2分子は配列番号6の配列からなる。提供
される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、抗体サイトカイングラフト化タンパク
質のVH又はVLの相補性決定領域(CDR)に取り込まれたIL2分子を含む。一部の
実施形態において、IL2配列は、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも85%、90
%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は1
00%の配列同一性を有する。一部の実施形態において、IL2分子は配列番号6の配列
を含む。一部の実施形態において、IL2分子は配列番号6の配列からなる。
【0122】
一部の実施形態において、グラフト化される抗体サイトカインは、ヒトIL2、組換え
ヒトIL2又はProleukin(登録商標)よりも優れた抗炎症特性を付与する。一
部の実施形態において、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は
、ヒトIL2、組換えヒトIL2又はProleukin(登録商標)と比較したときT
reg細胞に対する活性の増加を付与する一方で、比例した炎症誘発活性の低下を提供す
る。一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質は、高親和性IL2受容体(登録商標)の優先的刺激を提供する。一部の実施形態に
おいて、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、Teff細胞
、Tcon細胞、及び/又はNK細胞と比べたTreg細胞の優先的活性化を提供する。
一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質
は、Teff細胞、Tcon細胞、及び/又はNK細胞と比べたTreg細胞の優先的拡
大を提供する。一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフ
ト化タンパク質は、CD8 Tエフェクター細胞又はNK細胞の拡大なしにTreg細胞
の拡大増加を提供する。一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体サイトカイ
ングラフト化タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10である、およそ
それである、それより大きいTreg細胞:NK細胞拡大比を提供する。一部の実施形態
において、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、1、2、3
、4、5、6、7、8、9、10である、およそそれである、それより大きいTreg細
胞:CD8 Tエフェクター細胞拡大比を提供する。一部の実施形態において、本明細書
に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、
8、9、10である、およそそれである、それより大きいTreg細胞:CD4 Tco
n細胞拡大比を提供する。
【0123】
一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク
質は、ヒトIL2、組換えヒトIL2又はProleukin(登録商標)と比較してC
D4 Tcon細胞において低下するIL-2Rシグナル伝達効力を提供する。一部の実
施形態において、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、ヒト
IL2、組換えヒトIL2又はProleukin(登録商標)と比較してCD8 Te
ff細胞において低下するIL-2Rシグナル伝達効力を提供する。一部の実施形態にお
いて、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、ヒトIL2、組
換えヒトIL2又はProleukin(登録商標)と比較してNK細胞において低下す
るIL-2Rシグナル伝達効力を提供する。一部の実施形態において、本明細書に開示さ
れる抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、ヒトIL2、組換えヒトIL2又はPr
oleukin(登録商標)の約1,000倍、約2,000倍、約3,000倍、約4
,000倍、約5,000倍、約6,000倍、約7,000倍、約8,000倍、約9
,000倍、約10,000倍、又はそれ以上高いCD4 Tエフェクター細胞と比べた
Treg細胞の特異的活性化を提供する。一部の実施形態において、本明細書に開示され
る抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、ヒトIL2、組換えヒトIL2又はPro
leukin(登録商標)の約100倍、約200倍、約300倍、約400倍、約50
0倍、約600倍、約700倍、約800倍、約900倍、約1,000倍、又はそれ以
上高いCD8 Tエフェクター細胞と比べたTreg細胞の特異的活性化を提供する。一
部の実施形態において、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は
、ヒトIL2、組換えヒトIL2又はProleukin(登録商標)の約100倍、約
200倍、約300倍、約400倍、約500倍、約600倍、約700倍、約800倍
、約900倍、約1,000倍、又はそれ以上高いCD8 Tエフェクター/記憶細胞と
比べたTreg細胞の特異的活性化を提供する。
【0124】
一部の実施形態において、本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク
質は、ヒトIL2、組換えヒトIL2又はProleukin(登録商標)と比較して、
好酸球増加の拡大など、毒性の低下を提供する。一部の実施形態において、本明細書に開
示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、ヒトIL2、組換えヒトIL2又は
Proleukin(登録商標)と比較して、4時間超、6時間超、8時間超、12時間
超、24時間超、48時間超など、半減期の増加を提供する。一部の実施形態において、
本明細書に開示される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、ヒトIL2、組換えヒ
トIL2又はProleukin(登録商標)と比較して、移植片対宿主病(GvHD)
患者などにおける体重減少の軽減を提供する。一部の実施形態において、本明細書に開示
される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、ヒトIL2、組換えヒトIL2又はP
roleukin(登録商標)と比較して1型糖尿病の発症に対するより良好な保護を提
供する。
【0125】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、修飾エフェクタ
ー機能を付与する修飾Fcを有する修飾免疫グロブリンIgGを含む。特定の実施形態に
おいて修飾Fc領域は、D265A、P329A、P329G、N297A、L234A
、及びL235Aの1つ以上から選択される突然変異を含む。詳細な実施形態において免
疫グロブリン重鎖は、D265A、P329A、P329G、N297A、D265A/
P329A、D265A/N297A、L234/L235A、P329A/L234A
/L235A、及びP329G/L234A/L235Aのいずれかから選択されるエフ
ェクター機能の低下を付与する突然変異又は突然変異の組み合わせを含み得る。
【0126】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、(i)配列番号
20の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を
有する重鎖可変領域及び(ii)配列番号33の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89
%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99
%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。免疫グロブリン鎖
は、IgG1、IgG2、又はIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施
形態において免疫グロブリンは、任意選択で、D265A、P329A、P329G、N
297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234/L235A、
P329A/L234A/L235A、及びP329G/L234A/L235Aのいず
れかから選択されるエフェクター機能の低下を付与する突然変異又は突然変異の組み合わ
せを含む。
【0127】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、(i)配列番号
46の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を
有する重鎖可変領域及び(ii)配列番号58の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89
%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99
%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。免疫グロブリン鎖
は、IgG1、IgG2、又はIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施
形態において免疫グロブリンは、任意選択で、D265A、P329A、P329G、N
297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234/L235A、
P329A/L234A/L235A、及びP329G/L234A/L235Aのいず
れかから選択されるエフェクター機能の低下を付与する突然変異又は突然変異の組み合わ
せを含む。
【0128】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、(i)配列番号
71の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を
有する重鎖可変領域及び(ii)配列番号84の軽鎖可変領域と少なくとも85%、89
%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99
%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。免疫グロブリン鎖
は、IgG1、IgG2、又はIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実施
形態において免疫グロブリンは、任意選択で、D265A、P329A、P329G、N
297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234/L235A、
P329A/L234A/L235A、及びP329G/L234A/L235Aのいず
れかから選択されるエフェクター機能の低下を付与する突然変異又は突然変異の組み合わ
せを含む。
【0129】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、(i)配列番号
97の重鎖可変領域と少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、9
4%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を
有する重鎖可変領域及び(ii)配列番号110の軽鎖可変領域と少なくとも85%、8
9%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、9
9%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む。免疫グロブリン
鎖は、IgG1、IgG2、又はIgG4から選択されるIgGクラスである。特定の実
施形態において免疫グロブリンは、任意選択で、D265A、P329A、P329G、
N297A、D265A/P329A、D265A/N297A、L234/L235A
、P329A/L234A/L235A、及びP329G/L234A/L235Aのい
ずれかから選択されるエフェクター機能の低下を付与する突然変異又は突然変異の組み合
わせを含む。
【0130】
操作及び修飾された抗体サイトカイングラフト化タンパク質
特定の態様において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、IL2配列を免疫グ
ロブリン足場のCDR領域にグラフト化することにより作成される。重鎖及び軽鎖の両方
の免疫グロブリン鎖が作製されて、最終的な抗体グラフト化タンパク質が生じる。抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質はTreg細胞に好ましい治療活性を付与するが、しか
しながら抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、天然又は組換えヒトIL2(rhI
L2又はProleukin(登録商標))と比較したとき炎症誘発活性が低下している
。
【0131】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質を操作するため、特定のムテインを含有するI
L2配列(配列番号4又は配列番号6)が免疫グロブリン鎖足場タンパク質のCDRルー
プに挿入される。グラフト化構築物は、臨床セッティングで利用されている種々の公知の
免疫グロブリン配列、現在創薬及び/又は臨床開発中の公知の免疫グロブリン配列、ヒト
生殖細胞系列抗体配列、並びに新規抗体免疫グロブリン鎖の配列のいずれを使用して調製
してもよい。構築物は、関連性のある配列をコードする組換えDNAを利用した標準的な
分子生物学的方法を用いて作製される。GFTX3bと称される例示的足場におけるIL
2の配列を表2に示す。挿入点は、利用可能な構造又は相同性モデルデータに基づきルー
プの中間点となるように選択されたが、しかしながら挿入点はCDRループのN端側又は
C端側末端の方に調整することができる。
【0132】
従って本開示は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質が作成されるように異種抗体
タンパク質又はポリペプチドに組み換えで挿入されたIL2タンパク質を含む高親和性I
L2受容体に特異的に結合する抗体サイトカイングラフト化タンパク質を提供する。詳細
には、本開示は、本明細書に記載される抗体又は抗体の抗原結合断片又は任意の他の関連
性のある足場抗体ポリペプチド(例えば、完全抗体免疫グロブリンタンパク質、Fab断
片、Fc断片、Fv断片、F(ab)2断片、VHドメイン、VH CDR、VLドメイ
ン、VL CDR等)と、異種サイトカインタンパク質、ポリペプチド、又はペプチド、
例えばIL2とを含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質を提供する。タンパク質、
ポリペプチド、又はペプチドを抗体又は抗体断片と融合又はコンジュゲートする方法は当
該技術分野において公知である。例えば、米国特許第5,336,603号明細書、同第
5,622,929号明細書、同第5,359,046号明細書、同第5,349,05
3号明細書、同第5,447,851号明細書、及び同第5,112,946号明細書;
欧州特許第307,434号明細書及び同第367,166号明細書;国際公開第96/
04388号パンフレット及び同第91/06570号パンフレット;Ashkenaz
i et al.,1991,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:
10535-10539;Zheng et al.,1995,J.Immunol.
154:5590-5600;及びVil et al.,1992,Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA 89:11337-11341を参照のこと。加えて、
抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、遺伝子シャッフリング、モチーフシャッフリ
ング、エクソンシャッフリング、及び/又はコドンシャッフリング(まとめて「DNAシ
ャフリング」と称される)の技法によって作成することができる。DNAシャフリングは
、抗体サイトカイングラフト化タンパク質を調製するため、及び/又は抗体又はその断片
の活性を変化させる(例えば、より高い親和性及びより低い解離速度を有する抗体又はそ
の断片)ために用いることができる。概して、米国特許第5,605,793号明細書、
同第5,811,238号明細書、同第5,830,721号明細書、同第5,834,
252号明細書、及び同第5,837,458号明細書;Patten et al.,
1997,Curr.Opinion Biotechnol.8:724-33;Ha
rayama,1998,Trends Biotechnol.16(2):76-8
2;Hansson,et al.,1999,J.Mol.Biol.287:265
-76;及びLorenzo and Blasco,1998,Biotechniq
ues 24(2):308-313(これらの特許及び文献の各々は、本明細書によっ
て全体として参照により援用される)を参照のこと。抗体若しくはその断片、又はコード
される抗体若しくはその断片は、組換え前にエラープローンPCR、ランダムヌクレオチ
ド挿入又は他の方法によるランダム突然変異誘発に供することにより変化させることがで
きる。目的の抗原タンパク質に特異的に結合する抗体又はその断片をコードするポリヌク
レオチドが、本明細書に提供されるとおりの抗体サイトカイングラフト化タンパク質の調
製のため、1つ以上の異種サイトカイン分子、例えばIL2の1つ以上の成分、モチーフ
、セクション、パート、ドメイン、断片等で組み換えられてもよい。
【0133】
抗体Fabは、サイトカインタンパク質の潜在的な挿入部位として働き得る6つのCD
Rループ、軽鎖に3つ(CDRL1、CDRL2、CDRL3)及び重鎖に3つ(CDR
H1、CDRH2、CDRH3)を含む。どの1つ又は複数のCDRループにサイトカイ
ンを挿入すべきかの決定には、構造的及び機能的考慮点が勘案される。CDRループのサ
イズ及びコンホメーションは異なる抗体間で大きく変わるため、挿入に最適なCDRは、
各詳細な抗体/タンパク質の組み合わせについて実験的に決定されてもよい。加えて、サ
イトカインタンパク質はCDRループに挿入されることになるため、これがサイトカイン
タンパク質の構造に更なる制約を課し得る。例えば、サイトカインタンパク質のアミノ末
端とカルボキシ末端とは、比較的近い間隔(約25Å)に制約される可能性を許容しなけ
ればならない。加えて、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、生物学的活性につい
てオリゴマー形成に頼ってはならない。利用可能なタンパク質データベース構造の分析か
らは、IL2を含めた多くのサイトカインタンパク質がこの範疇に入ることが指摘される
。
【0134】
免疫グロブリン鎖のCDRは、本明細書に記載されるものを含め、当該技術分野におい
て公知の周知の付番方式によって決定される。例えば、CDRは、(1)Kabat e
t al.(1991),“Sequences of Proteins of Im
munological Interest,”5th Ed.Public Heal
th Service,National Institutes of Health
,Bethesda,MD(「Kabat」付番スキーム),NIH publicat
ion No.91-3242;及び(2)Chothiaに記載される付番方式を用い
ることにより識別及び定義されており、Al-Lazikani et al.,(19
97)“Standard conformations for the canon
ical structures of immunoglobulins,”J.Mo
l.Biol.273:927-948を参照のこと。20アミノ酸長未満の識別される
CDRアミノ酸配列については、所望の特異的結合及び/又はアゴニスト活性をなお保持
しながら、1又は2つの保存的アミノ酸残基置換が許容され得る。
【0135】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質は更に、出発抗体グラフト化タンパク質から特
性が変化していてもよい修飾抗体サイトカイングラフト化タンパク質を操作するための出
発材料として、本明細書(例えば表2)に示されるCDR及び/又はVH及び/又はVL
配列のうちの1つ以上を有する抗体を使用して調製することができる。或いは、修飾抗体
サイトカイングラフト化タンパク質を操作するための足場として任意の公知の抗体配列を
利用してもよい。例えば、任意の公知の臨床で利用されている抗体を抗体グラフト化タン
パク質の調製用の出発材料足場として利用してもよい。公知の抗体及び対応する免疫グロ
ブリン配列としては、例えば、パリビズマブ、アリロクマブ、メポリズマブ、ネシツムマ
ブ、ニボルマブ、ジヌツキシマブ、セクキヌマブ、エボロクマブ、ブリナツモマブ、ペン
ブロリズマブ、ラムシルマブ、ベドリズマブ、シルツキシマブ、オビヌツズマブ、トラス
ツズマブ、ラキシバクマブ、ペルツズマブ、ベリムマブ、イピリムマブ、デノスマブ、ト
シリズマブ、オファツムマブ、カナキヌマブ、ゴリムマブ、ウステキヌマブ、セルトリズ
マブ、カツマキソマブ、エクリズマブ、ラニビズマブ、パニツムマブ、ナタリズマブ、ベ
バシズマブ、セツキシマブ、エファリズマブ、オマリズマブ、トシツモマブ、イブリツモ
マブチウキセタン、アダリムマブ、アレムツズマブ、ゲムツズマブ、インフリキシマブ、
バシリキシマブ、ダクリズマブ、リツキシマブ、アブシキシマブ、ムロモナブ、又はこれ
らの修飾体が挙げられる。公知の抗体及び免疫グロブリン配列としてはまた、生殖細胞系
列抗体配列も挙げられる。フレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公
的なDNAデータベース又は既発表の参考文献から入手することができる。例えば、ヒト
重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列については、「VBase」ヒト
生殖系列配列データベース並びにKabat,E.A.,et al.,1991 Se
quences of Proteins of Immunological Int
erest,Fifth Edition,U.S.Department of He
alth and Human Services,NIH Publication
No.91-3242;Tomlinson,I.M.,et al.,1992 J.
fol.Biol.227:776-798;及びCox,J.P.L.et al.,
1994 Eur.J Immunol.24:827-836を参照することができる
。なおも他の例では、初期創薬及び/又は薬剤開発中であり得る他の公知の実体からの抗
体及び対応する免疫グロブリン配列が、同様に修飾抗体サイトカイングラフト化タンパク
質を操作するための出発材料として適合し得る。
【0136】
結果として生じるポリペプチドがサイトカイン(例えばIL2)の取り込みに適応した
少なくとも1つの結合領域を含む限り、多種多様な抗体/免疫グロブリンフレームワーク
又は足場を用いることができる。かかるフレームワーク又は足場は、ヒト免疫グロブリン
、又はその断片の5つの主要なイディオタイプを含み、他の動物種の、好ましくはヒト化
及び/又はヒトの側面を有する免疫グロブリンを含む。新規抗体、フレームワーク、足場
及び断片が当業者により継続的に発見及び開発される。
【0137】
抗体は、当該技術分野において公知の方法を用いて作成することができる。モノクロー
ナル抗体の調製には、当該技術分野において公知の任意の技法を用いることができる(例
えば、Kohler & Milstein,Nature 256:495-497(
1975);Kozbor et al.,Immunology Today 4:7
2(1983);Cole et al.,Monoclonal Antibodie
s and Cancer Therapy,pp.77-96.Alan R.Lis
s,Inc.1985を参照のこと)。単鎖抗体の作製技法(米国特許第4,946,7
78号明細書)は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質に使用するための抗体の作製
に適合させることができる。また、トランスジェニックマウス、又は他の哺乳類などの他
の生物を使用して霊長類化若しくはヒト化抗体又はヒト抗体を発現させ、同定してもよい
。或いは、ファージディスプレイ技術を用いて、抗体サイトカイングラフト化タンパク質
に使用するための選択の抗原に特異的に結合する抗体及びヘテロマーFab断片を同定す
ることができる(例えば、McCafferty et al.、前掲;Marks e
t al.,Biotechnology,10:779-783,(1992)を参照
のこと)。
【0138】
霊長類化又はヒト化非ヒト抗体のための方法は当該技術分野において周知である。概し
て、霊長類化又はヒト化抗体は、そこに非霊長類又は非ヒトの供給源から導入された1つ
以上のアミノ酸残基を有する。かかる非霊長類又は非ヒトアミノ酸残基は多くの場合に移
入残基(import residue)と称され、これは典型的には移入可変ドメイン
(import variable domain)から取られる。ヒト化は、本質的に
Winter及び共同研究者の方法に従い(例えば、Jones et al.,Nat
ure 321:522-525(1986);Riechmann et al.,N
ature 332:323-327(1988);Verhoeyen et al.
,Science 239:1534-1536(1988)及びPresta,Cur
r.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照のこと)、
ヒト抗体の対応する配列をげっ歯類CDR又はCDR配列に置換することにより実施し得
る。従って、かかるヒト化抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号明
細書)、ここでは実質的にインタクトに満たないヒト可変ドメインが、非ヒト種からの対
応する配列によって置換されている。実際には、霊長類化又はヒト化抗体は典型的には、
霊長類又はヒト抗体であって、一部の相補性決定領域(「CDR」)残基及び場合により
一部のフレームワーク(「FR」)残基が結合特異性を付与するため由来種(例えばげっ
歯類抗体)の類似部位からの残基によって置換されているものである。
【0139】
それに代えて又は加えて、非ヒト抗体と比べて同じ結合特性を維持しつつ又はより良好
な結合特性を提供しつつ抗体においてヒト可変領域で非ヒト抗体可変領域を置き換えるイ
ンビボ方法を利用して非ヒト抗体を操作されたヒト抗体に変換してもよい。例えば、米国
特許出願公開第20050008625号明細書、米国特許出願公開第2005/025
5552号明細書を参照のこと。或いは、逐次的なカセット置換によりヒトVセグメント
ライブラリを作成することができ、ここでは初めに参照抗体Vセグメントの一部のみがヒ
ト配列のライブラリに置き換えられ;次に残りの参照抗体アミノ酸配列のコンテクストで
結合を支持する同定されたヒト「カセット」が第2のライブラリスクリーニングで組み換
えられて完全ヒトVセグメントが作成される(米国特許出願公開第2006/01340
98号明細書を参照のこと)。
【0140】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質の調製に使用するための様々な抗体又は抗原結
合断片は、インタクトな抗体の酵素的又は化学的修飾によって作製することができ、又は
組換えDNA方法を用いてデノボ合成することができ(例えば単鎖Fv)、又はファージ
ディスプレイライブラリを用いて同定することができる(例えば、McCafferty
et al.,Nature 348:552-554,1990を参照のこと)。例
えばミニボディは、当該技術分野において、例えばVaughan and Solla
zzo,Comb Chem High Throughput Screen.4:4
17-30 2001に記載される方法を用いて作成することができる。二重特異性抗体
は、ハイブリドーマのグラフト化又はFab’断片の連結を含め、種々の方法によって作
製することができる。例えば、Songsivilai & Lachmann,Cli
n.Exp.Immunol.79:315-321(1990);Kostelny
et al.,J.Immunol.148,1547-1553(1992)を参照の
こと。単鎖抗体は、ファージディスプレイライブラリ又はリボソームディスプレイライブ
ラリ、遺伝子シャフリングライブラリを用いて同定することができる。かかるライブラリ
は、合成、半合成又は天然及び免疫適格供給源から構築することができる。従って、本明
細書に提供されるとおりの抗体サイトカイングラフト化タンパク質構築物の調製において
は、選択の免疫グロブリン配列を利用し得る。
【0141】
本開示の抗体、抗原結合分子又は抗体サイトカイングラフト化分子は、二重特異性抗体
を更に含む。二重特異性又は二機能性抗体は、2つの異なる重鎖/軽鎖対及び2つの異な
る結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。他の抗原結合断片又は抗体部分として
は、二価scFv(ダイアボディ)、抗体分子が2つの異なるエピトープを認識する二重
特異性scFv抗体、シングル結合ドメイン(dAb)、及びミニボディが挙げられる。
従って、本明細書に提供されるとおりの抗体サイトカイングラフト化タンパク質構築物の
調製においては、選択の免疫グロブリン配列を利用することができる。
【0142】
抗体の抗原結合断片、例えばFab断片、scFvを構成要素として使用して抗体サイ
トカイングラフト化タンパク質を構築することができ、任意選択で多価形態が含まれても
よい。一部の実施形態において、かかる多価分子は抗体の定常領域(例えばFc)を含む
。
【0143】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、抗体の一方又は両方の可変領域(即ち、V
H及び/又はVL)内、例えば1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基を修飾すること
により操作することができ、及びかかる適合されたVH及び/又はVL領域配列は、サイ
トカインのグラフト化に、又はサイトカイングラフト化の調製に利用することができる。
抗体は、主に6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を通
じて標的抗原と相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体間の多
様性がCDR外の配列よりも高い。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用に関与し
、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列にグラフトされた特異的抗体
からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより特異的抗体の特性を模倣する
組換え抗体を発現することが可能である(例えば、Riechmann,L.et al
.,1998 Nature 332:323-327;Jones,P.et al.
,1986 Nature 321:522-525;Queen,C.et al.,
1989 Proc.Natl.Acad.,U.S.A.86:10029-1003
3;Winterに対する米国特許第5,225,539号明細書、並びにQueenら
に対する米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同
第5,693,762号明細書及び同第6,180,370号明細書を参照のこと)。特
定の例では、フレームワーク領域内の残基を突然変異させることにより抗体の抗原結合能
力を維持又は増強することが有益である(例えば、Queen et alに対する米国
特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693
,762号明細書及び同第6,180,370号明細書を参照のこと)。
【0144】
一部の態様において、目的の抗体の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を改善する
ための、「親和性成熟」として知られるVH及び/又はVL CDR1、CDR2、及び
/又はCDR3領域内のアミノ酸残基の突然変異が、例えばサイトカイングラフト化タン
パク質のコンテクストと併せた抗体の抗原結合の最適化に有益であり得る。部位特異的突
然変異誘発又はPCR媒介突然変異誘発を実施して1つ又は複数の突然変異を導入するこ
とができ、及び抗体結合への効果、又はその他の目的の機能特性について、本明細書に記
載され及び実施例に提供されるとおりのインビトロ若しくはインビボアッセイ及び/又は
当該技術分野において公知の代替的若しくは追加的アッセイで評価することができる。保
存的修飾を導入することができる。突然変異はアミノ酸置換、付加又は欠失であってもよ
い。更に、典型的にはCDR領域内の1、2、3、4又は5つ以下の残基を変化させる。
【0145】
操作された抗体又は抗体断片は、VH及び/又はVL内のフレームワーク残基に例えば
抗体の特性を改善するため修飾が行われたものを含む。一部の実施形態においてかかるフ
レームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、一つの手法
は、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列に変更することである。より
具体的には、体細胞突然変異を受けた抗体は、その抗体の由来である生殖系列配列と異な
るフレームワーク残基を含み得る。かかる残基は、抗体フレームワーク配列をその抗体の
由来である生殖系列配列と比較することにより同定し得る。フレームワーク領域配列をそ
の生殖細胞系列構成に戻すため、体細胞突然変異を例えば部位特異的突然変異誘発によっ
て生殖系列配列に「復帰突然変異」させることができる。追加的なフレームワーク修飾は
、フレームワーク領域内、又は更には1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基を突然変
異させてT細胞エピトープを除去し、それにより抗体の潜在的な免疫原性を低下させるこ
とを含む。この手法は「脱免疫化」とも称され、Carrらによる米国特許出願公開第2
0030153043号明細書に更に詳細に記載されている。
【0146】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質の調製に利用される抗体又は抗体断片の定常領
域は、適宜、任意のタイプ又はサブタイプであってよく、本方法によって治療される対象
の種(例えば、ヒト、非ヒト霊長類又は他の哺乳類、例えば、農業動物哺乳類(例えば、
ウマ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ラクダ)、家庭用動物哺乳類(例えば、イヌ、ネコ)又はげ
っ歯類(例えば、ラット、マウス、ハムスター、ウサギ)から選択することができる。一
部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質に利用される抗体は、ヒ
ト化抗体又はHumaneered(登録商標)抗体が作成されるように操作される。一
部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質に利用される抗体はヒト
抗体である。一部の実施形態において、抗体定常領域アイソタイプはIgG、例えば、I
gG1、IgG2、IgG3、IgG4である。特定の実施形態において、定常領域アイ
ソタイプはIgG1である。一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タン
パク質はIgGを含む。一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク
質はIgG1 Fcを含む。一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タン
パク質はIgG2 Fcを含む。
【0147】
フレームワーク又はCDR領域内に行われる修飾に加えて、又はそれに代えて、抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質の調製に利用される抗体又は抗体断片は、典型的には抗
体の1つ以上の機能特性、例えば血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は抗
原依存性細胞傷害などを変化させるため、Fc領域内に修飾を含むように操作されてもよ
い。更に、抗体、抗体断片、又は抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、この場合も
やはり抗体サイトカイングラフト化タンパク質の1つ以上の機能特性を変化させるため、
化学的に修飾することができ(例えば、1つ以上の化学的部分を抗体に付加することがで
きる)又はそのグリコシル化が変化するように修飾することができる。
【0148】
一実施形態では、ヒンジ領域のシステイン残基の数が変化する、例えば増加又は減少す
るようにCH1のヒンジ領域が修飾される。例えば、この手法は更にBodmerらによ
る米国特許第5,677,425号明細書に記載され、ここでは例えば軽鎖及び重鎖のア
センブリが促進されるように、又は抗体サイトカイングラフト化タンパク質の安定性が増
加若しくは減少するように、CH1のヒンジ領域にあるシステイン残基の数を変化させる
。別の実施形態では、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の生物学的半減期が変化す
るように抗体のFcヒンジ領域を突然変異させる。より具体的には、抗体サイトカイング
ラフト化タンパク質のブドウ球菌プロテインA(Staphylococcyl pro
tein A)(SpA)結合が天然Fc-ヒンジドメインSpA結合と比べて損なわれ
るように、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン接合部領域に1つ以上のアミノ酸
突然変異が導入される。この手法については、Wardらによる米国特許第6,165,
745号明細書に更に詳細に記載されている。
【0149】
本開示は、長いインビボ半減期を有するIL2高親和性受容体に特異的に結合する抗体
サイトカイングラフト化タンパク質を提供する。別の実施形態において、抗体サイトカイ
ングラフト化タンパク質は、その生物学的半減期が増加するように修飾される。様々な手
法が可能である。インビボ半減期が増加した抗体サイトカイングラフト化タンパク質はま
た、1つ以上のアミノ酸修飾(即ち、置換、挿入又は欠失)をIgG定常ドメイン、又は
そのFcRn結合断片(好ましくはFc又はヒンジFcドメイン断片)に導入して作成す
ることもできる。例えば、Wardに対する米国特許第6,277,375号明細書に記
載されるとおり、以下の突然変異のうちの1つ以上を導入することができる:T252L
、T254S、T256F。例えば、国際公開第98/23289号パンフレット;国際
公開第97/34631号パンフレット;及び米国特許第6,277,375号明細書を
参照のこと。或いは、生物学的半減期を増加させるため、抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質は、Prestaらによる米国特許第5,869,046号明細書及び同第6,
121,022号明細書に記載されるとおり、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つ
のループから取られたサルベージ受容体結合エピトープを含むようにCH1又はCL領域
内で変化させる。更に他の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ
酸残基に置き換えることによりFc領域を変化させて、抗体サイトカイングラフト化タン
パク質のエフェクター機能を変化させる。例えば、エフェクターリガンドに対する親和性
は変化しているが、親抗体の抗原結合能力は保持している抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質となるように、1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基に置き換えることがで
きる。親和性を変化させる対象のエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体(FcR
)又は補体のC1成分であってもよい。この手法については、いずれもWinterらに
よる米国特許第5,624,821号明細書及び同第5,648,260号明細書に更に
詳細に記載されている。
【0150】
別の実施形態では、抗体サイトカイングラフト化タンパク質のC1q結合が変化し及び
/又は補体依存性細胞傷害(CDC)が低下又は消失するように、アミノ酸残基から選択
される1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基に置き換えることができる。この手法に
ついては、Idusogieらによる米国特許第6,194,551号明細書に更に詳細
に記載されている。
【0151】
かかる突然変異を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質によって媒介される抗体
依存細胞傷害(ADCC)又は補体依存性細胞傷害(CDC)は低下し、又は全くなくな
る。一部の実施形態では、IgG1定常領域のアミノ酸残基L234及びL235がAl
a234及びAla235に置換される。一部の実施形態では、IgG1定常領域のアミ
ノ酸残基N267がAla267に置換される。
【0152】
別の実施形態では、1つ以上のアミノ酸残基を変化させて、それにより抗体サイトカイ
ングラフト化タンパク質の補体結合能力を変化させる。この手法については、Bodme
rらによる国際公開第94/29351号パンフレットに更に記載されている。
【0153】
更に別の実施形態では、抗体が抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する能力が増加
するように及び/又はFcγ受容体に対する抗体サイトカイングラフト化タンパク質の親
和性が増加するように、Fc領域が1つ以上のアミノ酸の修飾によって修飾される。この
手法については、Prestaによる国際公開第00/42072号パンフレットに更に
記載されている。更に、FcγRl、FcγRII、FcγRIII及びFcRnに対す
るヒトIgG1上の結合部位がマッピングされており、結合が改善した変異体が記載され
ている(Shields,R.L.et al.,2001 J.Biol.Chen.
276:6591-6604を参照のこと)。
【0154】
なおも別の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質のグリコシル化
が修飾される。例えば、非グリコシル化抗体サイトカイングラフト化タンパク質を作るこ
とができる(即ち、この抗体サイトカイングラフト化タンパク質はグリコシル化を欠いて
いる)。グリコシル化は、例えば、「抗原」に対する抗体の親和性を増加させるため変化
させることができる。かかる糖質修飾は、例えば抗体配列内の1つ以上のグリコシル化部
位を変化させることにより達成し得る。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークグリ
コシル化部位の除去をもたらし、それにより当該部位でのグリコシル化を除去する1つ以
上のアミノ酸置換を作ることができる。かかる非グリコシル化は抗原に対する抗体の親和
性を増加させ得る。かかる手法については、Coらによる米国特許第5,714,350
号明細書及び同第6,350,861号明細書に更に詳細に記載されている。
【0155】
それに加えて又は代えて、フコシル残基の量が低下した低フコシル化抗体サイトカイン
グラフト化タンパク質又は二分GlcNac構造が増加した抗体など、変化したタイプの
グリコシル化を有する抗体サイトカイングラフト化タンパク質を作ることができる。かか
る変化したグリコシル化パターンは、抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)能力を増加
させることが実証されている。かかる糖質修飾は、例えば、グリコシル化機構が変化した
宿主細胞において抗体サイトカイングラフト化タンパク質を発現させることにより達成し
得る。グリコシル化機構が変化した細胞については当該技術分野において記載されており
、組換え抗体サイトカイングラフト化タンパク質を発現して、それによりグリコシル化が
変化した抗体サイトカイングラフト化タンパク質を産生する宿主細胞として使用すること
ができる。例えば、Hangらによる欧州特許第1,176,195号明細書は、機能が
破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株について記載しており、この遺伝子はフコシル
トランスフェラーゼをコードするため、かかる細胞株において発現する抗体サイトカイン
グラフト化タンパク質は低フコシル化を呈することになる。Prestaによる国際公開
第03/035835号パンフレットは、フコースをAsn(297)結合糖質に付加す
る能力が低下した変異CHO細胞株、Lecl3細胞について記載し、これもまた当該宿
主細胞において発現する抗体サイトカイングラフト化タンパク質の低フコシル化をもたら
す(Shields,R.L.et al.,2002 J.Biol.Chem.27
7:26733-26740もまた参照のこと)。Umanaらによる国際公開第99/
54342号パンフレットは、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば
、β(1,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)
)を発現するように操作された細胞株について記載しており、この操作された細胞株で発
現する抗体サイトカイングラフト化タンパク質は二分GlcNac構造の増加を呈し、そ
れにより抗体のADCC活性の増加がもたらされる(Umana et al.,199
9 Nat.Biotech.17:176-180もまた参照のこと)。
【0156】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の1つ以上のドメイ
ン、又は領域は、当該技術分野において周知のものなど、リンカー、例えばペプチドリン
カーを介して接続される(例えば、Holliger,P.,et al.(1993)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444-6448;Polj
ak,RJ.,et al.(1994)Structure 2:1121-1123
を参照のこと)。ペプチドリンカーは長さが様々であってよく、例えばリンカーは1~1
00アミノ酸長であることができ、典型的にはリンカーは5~50アミノ酸長、例えば、
5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、
20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、3
3、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46
、47、48、49、又は50アミノ酸長である。
【0157】
一部の実施形態において、IL2は、任意選択で1つ以上のペプチドリンカー配列を用
いてCDR配列にグラフト化される。特定の実施形態において、1つ以上のペプチドリン
カーは、(Glyn-Ser)m配列(配列番号115)、(Glyn-Ala)m配列
(配列番号116)、又は(Glyn-Ser)m/(Glyn-Ala)m配列の任意
の組み合わせ(それぞれ配列番号115及び116)[式中、各nは独立に1~5の整数
であり、各mは独立に0~10の整数である]から独立して選択される。リンカーの例と
しては、限定はされないが、グリシンベースのリンカー又はgly/serリンカーG/
S、例えば(GmS)n[式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10に
等しい正の整数であり、mは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10に等し
い整数である](配列番号117)が挙げられる。特定の実施形態において、1つ以上の
リンカーはG4Sリピート(配列番号118)、例えばGly-Serリンカー(G4S
)n[式中、nは1以上の正の整数である(配列番号118)。例えば、n=1、n=2
、n=3、n=4、n=5及びn=6、n=7、n=8、n=9及びn=10]を含む。
一部の実施形態において、SerはAlaに置き換えることができ、例えば、(GmA)
n[式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10に等しい正の整数であり
、mは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10に等しい整数である](配列
番号119)などのリンカーG/Aである。特定の実施形態において、1つ以上のリンカ
ーはG4Aリピート(配列番号120)、(G4A)n[式中、nは1以上の正の整数で
ある(配列番号120)。例えば、n=1、n=2、n=3。n=4、n=5及びn=6
、n=7、n=8、n=9及びn=10]を含む。一部の実施形態において、リンカーは
リンカーの複数のリピートを含む。他の実施形態において、リンカーは組み合わせ及び複
数のG4S(配列番号118)及びG4A(配列番号120)を含む。
【0158】
リンカーの他の例としては、リンカー及び接合部によって生じる免疫原性を最小限に抑
えるため、抗体において天然に存在する可動性リンカー配列をベースとするものが挙げら
れる。例えば、抗体分子構造の可変ドメインとCH1定常ドメインとの間には天然の可動
性連結がある。この天然の連結は、VドメインのC末端から4~6残基が寄与し且つCH
1ドメインのN末端から4~6残基が寄与する約10~12アミノ酸残基を含む。抗体サ
イトカイングラフト化タンパク質は、例えば、CH1の末端5~6アミノ酸残基、又は1
1~12アミノ酸残基をリンカーとして取り込むリンカーを用いることができる。CH1
ドメインのN末端残基、特に最初の5~6アミノ酸残基は、強力な二次構造のないループ
コンホメーションをとり、従って可動性リンカーとして働くことができる。CH1ドメイ
ンのN末端残基は、それがIg配列の一部であるとおり、可変ドメインの天然の伸長部で
あり、従ってリンカー及び接合部によって潜在的に生じる可能性のある任意の免疫原性を
大幅に最小限に抑える。一部の実施形態においてリンカー配列は、ヒンジ配列をベースと
する修飾ペプチド配列を含む。
【0159】
更に、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質の精製を促進するためペプチドなどのマーカー配列に融合することができる。好まし
い実施形態において、マーカーアミノ酸配列は、とりわけ、pQEベクター(QIAGE
N,Inc.、Chatsworth、CA)に提供されるタグなど、ヘキサヒスチジン
ペプチド(配列番号121)であり、その多くは市販されている。Gentz et a
l.,1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821-82
4に記載されるとおり、例えばヘキサヒスチジン(配列番号121)は、グラフト化タン
パク質の好都合な精製をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグとしては、限定はされ
ないが、インフルエンザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに対応するヘマ
グルチニン(「HA」)タグ(Wilson et al.,1984,Cell 37
:767)、及び「flag」タグが挙げられる。
【0160】
抗体はまた固体支持体に付加されてもよく、これは標的抗原のイムノアッセイ又は精製
に特に有用である。かかる固体支持体としては、限定はされないが、ガラス、セルロース
、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンが
挙げられる。
【0161】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質活性のアッセイ
抗体サイトカイングラフト化タンパク質を同定するためのアッセイは当該技術分野にお
いて公知であり、本明細書に記載される。アゴニスト抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質はIL2高親和性受容体に結合し、細胞内シグナル伝達を促進、誘導、刺激してTr
eg効果並びに免疫刺激効果をもたらす。
【0162】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質によるIL2高親和性受容体への結合は、当該
技術分野において公知の任意の方法を用いて決定することができる。例えば、IL2高親
和性受容体への結合は、限定なしに、ELISA、ウエスタンブロット、表面プラズモン
共鳴(例えば、BIAcore)、及びフローサイトメトリーを含めた公知の技法を用い
て決定することができる。
【0163】
IL2高親和性受容体を通じた細胞内シグナル伝達は、当該技術分野において公知の任
意の方法を用いて測定することができる。例えば、IL2を通じた活性化はSTAT5活
性化及びシグナル伝達を促進する。STAT5活性化の測定方法は当該技術分野において
標準的である(例えば、STAT5タンパク質のリン酸化状態、レポーター遺伝子アッセ
イ、下流シグナル伝達アッセイ等)。IL2高親和性受容体を通じた活性化はTreg効
果の増加を伴う。加えて、IL2低親和性受容体の結合低下によりナチュラルキラー(N
K)細胞及びCD8 Tエフェクター細胞増殖が低下する。細胞増殖の測定方法は当該技
術分野において標準的である(例えば、3H-チミジン取込みアッセイ、CFSE標識)
。サイトカイン産生の測定方法は当該技術分野において周知である(例えば、ELISA
アッセイ、ELISpotアッセイ)。インビトロアッセイの実施においては、アゴニス
ト抗体サイトカイングラフト化タンパク質に接触させた試験細胞又は試験細胞からの培養
上清と、アゴニスト抗体サイトカイングラフト化タンパク質に接触させていない対照細胞
又は対照細胞からの培養上清及び/又は組換えヒトIL2(例えばProleukin(
登録商標))と接触させたものとを比較することができる。
【0164】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質の活性はまた、エキソビボ及び/又はインビボ
で測定することができる。一部の態様において、未治療の対照動物及び/又はProle
ukin(登録商標)で同様に治療した動物と比較したときの抗体サイトカイングラフト
化タンパク質で治療した動物からエキソビボで様々な細胞型にわたってSTAT5活性化
を測定する方法を用いて、細胞型間でのアゴニスト抗体グラフト化タンパク質の差次的活
性を示すことができる。好ましいアゴニスト抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、
Treg細胞を活性化して拡大する能力を有する。例えば、Treg細胞のインビボでの
活性化及び拡大は、当該技術分野において公知の任意の方法を用いて、例えばフローサイ
トメトリーにより測定することができる。好ましいアゴニスト抗体サイトカイングラフト
化タンパク質は、免疫関連障害、例えば:1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、白斑、
慢性移植片対宿主病(cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(pGvHD)、HIV誘
発性脈管炎、円形脱毛症、全身性硬化症モルフェア及び原発性抗リン脂質症候群の予防、
低減、阻害又は除去において治療上有用であり得る。1型糖尿病及びSLEにおけるアゴ
ニスト抗体サイトカイングラフト化タンパク質の有効性は、治療有効量の抗体サイトカイ
ングラフト化タンパク質を対象に投与し、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の投与
前及び投与後の対象を比較することにより決定し得る。1型糖尿病及びSLEに対する療
法におけるアゴニスト抗体サイトカイングラフト化タンパク質の有効性はまた、治療有効
量の抗体サイトカイングラフト化タンパク質を試験対象に投与し、試験対象を抗体未投与
の対照対象と比較すること及び/又はProleukin(登録商標)で同様に治療した
対象との比較によっても決定し得る。
【0165】
アゴニスト抗体サイトカイングラフト化タンパク質をコードするポリヌクレオチド
別の態様において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の重鎖及び軽鎖タンパク質
をコードする単離核酸が提供される。抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、限定は
されないが、組換え発現、化学合成、及び抗体四量体の酵素消化を含め、当該技術分野に
おいて公知の任意の手段により作製することができる。組換え発現は、当該技術分野にお
いて公知の任意の適切な宿主細胞、例えば、哺乳類宿主細胞、細菌宿主細胞、酵母宿主細
胞、昆虫宿主細胞等からであってよい。
【0166】
本明細書には、配列番号21、配列番号34、配列番号47、配列番号60、配列番号
73、配列番号86、配列番号99、及び配列番号112のいずれか1つに例示される可
変領域をコードするポリヌクレオチドが提供される。
【0167】
従って本開示は、本明細書に記載される抗体サイトカイングラフト化タンパク質の軽鎖
及び/又は重鎖ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、本明細書に記載さ
れるとおりの相補性決定領域を含む軽鎖又は重鎖可変領域又はセグメントをコードするポ
リヌクレオチドを提供する。一部の実施形態において、重鎖可変領域をコードするポリヌ
クレオチドは、配列番号21、配列番号47、配列番号73、及び配列番号99からなる
群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配
列同一性を有する配列を含む。一部の実施形態において、軽鎖可変領域をコードするポリ
ヌクレオチドは、配列番号34、配列番号60、配列番号86、及び配列番号112から
なる群から選択されるポリヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、
92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核
酸配列同一性を有する配列を含む。
【0168】
一部の実施形態において、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号23のポリ
ヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。一
部の実施形態において、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号36のポリヌク
レオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。
【0169】
一部の実施形態において、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号49のポリ
ヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。一
部の実施形態において、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号62のポリヌク
レオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。
【0170】
一部の実施形態において、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号75のポリ
ヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。一
部の実施形態において、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号88のポリヌク
レオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95
%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。
【0171】
一部の実施形態において、重鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号101のポ
リヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%
、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。
一部の実施形態において、軽鎖をコードするポリヌクレオチドは、配列番号114のポリ
ヌクレオチドと少なくとも85%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、
95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の核酸配列同一性を有する。
【0172】
ポリヌクレオチドは、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の可変領域配列のみをコ
ードすることができる。ポリヌクレオチドはまた、抗体サイトカイングラフト化タンパク
質の可変領域及び定常領域の両方をコードすることもできる。一部のポリヌクレオチド配
列は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質のうちの1つの重鎖及び軽鎖の両方の可変
領域を含むポリペプチドをコードする。他の一部のポリヌクレオチドは、抗体タンパク質
グラフト化されたもの(antibody protein engrafteds)の
うちの1つの重鎖及び軽鎖の可変領域とそれぞれ実質的に同一の2つのポリペプチドセグ
メントをコードする。
【0173】
特定の実施形態において、ポリヌクレオチド又は核酸はDNAを含む。他の実施形態に
おいて、ポリヌクレオチド又は核酸はRNAを含み、これは一本鎖であっても又は二本鎖
であってもよい。
【0174】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の1つ以上の免疫グ
ロブリンタンパク質鎖、及び任意選択で分泌シグナルをコードする核酸を含む組換え宿主
細胞が提供される。特定の実施形態において組換え宿主細胞は、1つの免疫グロブリンタ
ンパク質鎖と分泌シグナルとをコードするベクターを含む。他の特定の実施形態において
組換え宿主細胞は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の2つの免疫グロブリンタン
パク質鎖と分泌シグナルとをコードする1つ以上のベクターを含む。一部の実施形態にお
いて組換え宿主細胞は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の2つの免疫グロブリン
タンパク質鎖と分泌シグナルとをコードするシングルベクターを含む。一部の実施形態に
おいて組換え宿主細胞は、1つが抗体サイトカイングラフト化タンパク質の重鎖免疫グロ
ブリンタンパク質鎖をコードし、もう1つが軽鎖免疫グロブリンタンパク質鎖をコードす
る2つのベクターを含み、各々が分泌シグナルを含む。組換え宿主細胞は原核細胞又は真
核細胞であってもよい。一部の実施形態において宿主細胞は真核細胞株である。一部の実
施形態において宿主細胞は哺乳類細胞株である。一部の実施形態において宿主細胞はCH
O細胞である。一部の実施形態において、宿主細胞株は抗体産生用のCHO細胞株である
。
【0175】
加えて、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の作製方法が提供される。一部の実施
形態において、この方法は、(i)抗体サイトカイングラフト化タンパク質の免疫グロブ
リンタンパク質鎖をコードする1つ以上のベクターを含む宿主細胞を抗体サイトカイング
ラフト化タンパク質の発現、形成、及び分泌に好適な条件下で培養する工程、及び(ii
)抗体サイトカイングラフト化タンパク質を回収する工程を含む。
【0176】
ポリヌクレオチド配列は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質のポリペプチド鎖を
コードする既存の配列(例えば、本明細書に記載される配列)のデノボ固相DNA合成又
はPCR突然変異誘発によって生成され得る。核酸の直接化学合成が、Narang e
t al.,Meth.Enzymol.68:90,1979のホスホトリエステル法
;Brown et al.,Meth.Enzymol.68:109,1979のホ
スホジエステル法;Beaucage et al.,Tetra.Lett.,22:
1859、1981のジエチルホスホロアミダイト法;及び米国特許第4,458,06
6号明細書の固体担体法などの、当該技術分野において公知の方法によって行われ得る。
PCRによるポリヌクレオチド配列への突然変異の導入が、例えば、PCR Techn
ology:Principles and Applications for DN
A Amplification,H.A.Erlich(Ed.),Freeman
Press,NY,NY,1992;PCR Protocols:A Guide t
o Methods and Applications,Innis et al.(
Ed.),Academic Press,San Diego,CA,1990;Ma
ttila et al.,Nucleic Acids Res.19:967,19
91;及びEckert et al.,PCR Methods and Appli
cations 1:17,1991に記載されるように行われ得る。
【0177】
また、上記に記載される抗体サイトカイングラフト化タンパク質を作製するための発現
ベクター及び宿主細胞も提供される。抗体サイトカイングラフト化タンパク質の免疫グロ
ブリンポリペプチド鎖、又は断片をコードするポリヌクレオチドを発現させるため、様々
な発現ベクターを用いることができる。哺乳類宿主細胞における免疫グロブリンタンパク
質の作製には、ウイルスベースの発現ベクター及び非ウイルス発現ベクターの両方を使用
することができる。非ウイルスベクター及び系としては、典型的に、タンパク質又はRN
Aを発現するための発現カセットを含む、プラスミド、エピソームベクター、及びヒト人
工染色体(例えば、Harrington et al.,Nat Genet 15:
345,1997を参照)が挙げられる。例えば、哺乳動物(例えば、ヒト)細胞内での
抗体サイトカイングラフト化タンパク質ポリヌクレオチド及びポリペプチドの発現に有用
な非ウイルスベクターとしては、pThioHis A、B & C、pcDNA3.1
/His、pEBVHis A、B & C(Invitrogen,San Dieg
o,CA)、MPSVベクター、及び他のタンパク質を発現するための当該技術分野にお
いて公知の多くの他のベクターが挙げられる。有用なウイルスベクターとしては、レトロ
ウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスに基づくベクター、
SV40に基づくベクター、パピローマウイルス、HBPエプスタインバーウイルス、ワ
クシニアウイルスベクター及びセムリキ森林ウイルス(SFV)が挙げられる。Bren
t et al.、上掲;Smith,Annu.Rev.Microbiol.49:
807,1995;及びRosenfeld et al.,Cell 68:143,
1992を参照されたい。
【0178】
発現ベクターの選択は、ベクターが発現される意図される宿主細胞に応じて決まる。典
型的に、発現ベクターは、抗体サイトカイングラフト化タンパク質の免疫グロブリンタン
パク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されるプロモーター及び他の調節
配列(例えば、エンハンサー)を含有する。ある実施形態において、誘導性プロモーター
が、誘導条件下を除いて挿入された配列の発現を防止するのに用いられる。誘導性プロモ
ーターとしては、例えば、アラビノース、lacZ、メタロチオネインプロモーター又は
熱ショックプロモーターが挙げられる。形質転換された生物の培養物が、発現生成物が宿
主細胞によってより良好に許容されるコード配列について集団を偏らせずに非誘導条件下
で拡張され得る。プロモーターに加えて、他の調節エレメントも抗体サイトカイングラフ
ト化タンパク質の免疫グロブリン鎖又はフラグメントの効率的発現のために必要とされる
か又は所望され得る。これらのエレメントは、典型的に、ATG開始コドン及び隣接する
リボソーム結合部位又は他の配列を含む。さらに、発現の効率が、使用の際に細胞系への
適切なエンハンサーの包含によって高められ得る(例えば、Scharf et al.
,Results Probl.Cell Differ.20:125,1994;及
びBittner et al.,Meth.Enzymol.,153:516,19
87を参照)。例えば、SV40エンハンサー又はCMVエンハンサーは、哺乳動物宿主
細胞内での発現を増加させるのに使用され得る。
【0179】
発現ベクターはまた、細胞から運び出されて培養培地中に入る抗体サイトカイングラフ
ト化タンパク質を形成するように分泌シグナル配列位置も提供することができる。特定の
態様において、挿入される抗体サイトカイングラフト化タンパク質の免疫グロブリン配列
は、ベクターに含める前にシグナル配列に連結される。免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変
ドメインをコードする配列を受け取るために使用されるベクターは、時にまた定常領域又
はその一部もコードする。かかるベクターは、定常領域を含むグラフト化タンパク質とし
ての可変領域の発現を可能にし、それによりインタクトな抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質又はその断片の作製につながる。典型的には、かかる定常領域はヒトである。
【0180】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質鎖を担持及び発現するための宿主細胞は、原核
又は真核のいずれかであり得る。大腸菌(E.coli)は、本開示のポリヌクレオチド
をクローニングし、発現するのに有用な1つの原核宿主である。使用するのに好適な他の
微生物宿主としては、枯草菌(Bacillus subtilis)などの桿菌、並び
にサルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)、及び様々なシ
ュードモナス(Pseudomonas)種などの他の腸内細菌科が挙げられる。これら
の原核宿主においては、典型的に、宿主細胞と適合する発現制御配列(例えば、複製起点
)を含む発現ベクターを作製することもできる。さらに、ラクトースプロモーター系、ト
リプトファン(trp)プロモーター系、β-ラクタマーゼプロモーター系、又はラムダ
ファージに由来するプロモーター系などの、任意の数の様々な周知のプロモーターば存在
することになる。プロモーターは、典型的に、任意選択的に、オペレーター配列とともに
発現を制御し、転写及び翻訳を開始及び完了させるためのリボソーム結合部位配列などを
有する。酵母などの他の微生物も、抗体サイトカイングラフト化タンパク質ポリペプチド
を発現するのに用いられ得る。バキュロウイルスベクターと組み合わせた昆虫細胞も使用
され得る。
【0181】
一部の好ましい実施形態では、抗体サイトカイングラフト化タンパク質ポリペプチドの
発現及び作製に哺乳類宿主細胞が使用される。例えば、それは外因性発現ベクターを有す
るいずれかの哺乳類細胞株であってもよい。これらは、任意の正常な死滅する又は正常若
しくは異常な不死の動物又はヒト細胞を含む。例えば、CHO細胞株、様々なCos細胞
株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、形質転換されたB細胞及びハイブリドーマを含む、無
傷の免疫グロブリンを分泌することが可能ないくつかの好適な宿主細胞株が開発されてい
る。ポリペプチドを発現するための哺乳動物組織細胞培養物の使用は、例えば、Winn
acker,From Genes to Clones,VCH Publisher
s,N.Y.,N.Y.,1987に一般に記載されている。哺乳動物宿主細胞のための
発現ベクターは、複製起点、プロモーター、及びエンハンサーなどの発現制御配列(例え
ば、Queen et al.,Immunol.Rev.89:49-68,1986
を参照)、並びにリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及
び転写ターミネーター配列などの必要なプロセッシング情報部位を含み得る。これらの発
現ベクターは、通常、哺乳動物遺伝子又は哺乳動物ウイルスに由来するプロモーターを含
有する。好適なプロモーターは、構成的、細胞型特異的、段階特異的、及び/又は調節可
能又は制御可能であり得る。有用なプロモーターとしては、限定はされないが、メタロチ
オネインプロモーター、構成的アデノウイルス主要後期プロモーター、デキサメタゾン誘
導性MMTVプロモーター、SV40プロモーター、MRPpolIIIプロモーター、
構成的MPSVプロモーター、テトラサイクリン誘導性CMVプロモーター(ヒト最初期
CMVプロモーターなど)、構成的CMVプロモーター、及び当該技術分野において公知
のプロモーター-エンハンサーの組合せが挙げられる。
【0182】
対象とするポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを導入するための方法は、細
胞宿主の型に応じて変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションが、原核細
胞のために一般的に用いられるが、リン酸カルシウム処理又はエレクトロポレーションが
、他の細胞宿主のために使用され得る(一般に、Sambrook et al.,上掲
を参照)。他の方法としては、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム処理
、リポソーム媒介性形質転換、インジェクション及びマイクロインジェクション、弾道法
、ビロソーム、免疫リポソーム、ポリカチオン:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工
ビリオン、ヘルペスウイルス構造タンパク質VP22へのグラフト化(Elliot a
nd O’Hare,Cell 88:223,1997)、DNAの薬剤促進性取り込
み、及びエクスビボ形質導入が挙げられる。組み換えタンパク質の長期の高収率の生成の
ために、安定した発現が望ましいことが多い。例えば、抗体サイトカイングラフト化タン
パク質鎖を安定に発現する細胞株は、ウイルスの複製起点又は内因性発現エレメントと、
選択マーカー遺伝子とを含有する発現ベクターを用いて調製され得る。ベクターの導入後
、細胞が、富化培地中で1~2日間成長されてから、選択培地に切り替えられる。選択マ
ーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在が、選択培地中で導
入された配列を首尾よく発現する細胞の成長を可能にする。耐性の安定にトランスフェク
トされた細胞が、細胞型にとって適切な組織培養技術を用いて増殖され得る。
【0183】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質を含む組成物
薬学的に許容可能な担体と共に製剤化された抗体サイトカイングラフト化タンパク質を
含む医薬組成物が提供される。任意選択で、医薬組成物は、所与の障害の治療又は予防に
好適な他の治療剤を更に含む。薬学的に許容可能な担体は組成物を増強し、若しくは安定
化させるか、又は組成物の調製を促進する。薬学的に許容可能な担体としては、生理的に
適合性のある溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延
剤などが挙げられる。
【0184】
医薬組成物は、当該技術分野において公知の種々の方法によって投与することができる
。投与経路及び/又は投与様式は所望の結果に応じて変わる。投与が非経口投与(例えば
、静脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、動脈内、又は皮下のいずれかから選択される)によ
るか、又は標的部位の近位に投与されることが好ましい。薬学的に許容可能な担体は、静
脈内、筋肉内、腹腔内、髄腔内、動脈内、皮下、鼻腔内、吸入、脊髄又は表皮投与(例え
ば、注射により、又は移植で)のうちの任意の1つ以上による投与に好適である。投与経
路に応じて、活性化合物、例えば抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、酸の作用及
びその他、化合物を不活性化し得る天然条件から化合物を保護する材料でコーティングす
ることができる。一部の実施形態において、医薬組成物は静脈内投与用に製剤化される。
一部の実施形態において、医薬組成物は皮下投与用に製剤化される。
【0185】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、単独で、又は他の好適な成分と組み合わせ
て、吸入によって投与するためのエアロゾル製剤にされてもよい(即ち、それは「噴霧化
」されてもよい)。エアロゾル製剤は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素など
、加圧された許容可能な噴射剤の中に置かれ得る。
【0186】
一部の実施形態において、医薬組成物は無菌且つ流動体である。適切な流動性は、例え
ば、レシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合には必要な粒径の維持、及び界面
活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖
類、マンニトール又はソルビトールなどの多価アルコール類、及び塩化ナトリウムを含む
ことが好ましい。吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラ
チンを組成物中に含めることにより、注射用組成物の長期吸収をもたらすことができる。
特定の実施形態では、組成物は、適切な賦形剤(例えばスクロース)を使用して凍結乾燥
形態での貯蔵用に調製することができる。
【0187】
医薬組成物は、当該技術分野において周知の常法に従い調製することができる。薬学的
に許容可能な担体は、一部には、投与される詳細な組成物、並びに組成物の投与に用いら
れる詳細な方法によって決まる。従って、医薬組成物の好適な製剤の種類は幅広くある。
抗体サイトカイングラフト化タンパク質の製剤化並びに適切な投与及びスケジュールの決
定に適用可能な方法については、例えば、Remington:The Science
and Practice of Pharmacy,21st Ed.,Unive
rsity of the Sciences in Philadelphia,Ed
s.,Lippincott Williams & Wilkins(2005);及
びMartindale:The Complete Drug Reference,
Sweetman,2005,London:Pharmaceutical Pres
s.、及びMartindale,Martindale:The Extra Pha
rmacopoeia,31st Edition.,1996,Amer Pharm
aceutical Assn、及びSustained and Controlle
d Release Drug Delivery Systems,J.R.Robi
nson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,197
8(これらの各々は本明細書によって参照により本明細書に援用される)を参照すること
ができる。医薬組成物は、好ましくはGMP条件下で製造される。典型的には、医薬組成
物中には治療有効用量又は効果的用量の抗体サイトカイングラフト化タンパク質が利用さ
れる。抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、当業者に公知の従来方法によって薬学
的に許容可能な剤形に製剤化される。投薬量レジメンは、所望の応答(例えば治療応答)
を提供するように調整される。治療上又は予防上有効な用量の決定においては、低用量を
投与し、次に望ましくない副作用は最小限として又は全くなく所望の応答が達成されるま
で漸増させることができる。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、数回に分割され
た用量が時間をかけて投与されてもよく、又は治療状況の危急性が示すところに従い用量
を比例的に増減させてもよい。特に、容易な投与及び投薬量の均一性のため、非経口組成
物を投薬量単位形態で製剤化することが有利である。投薬量単位形態は、本明細書で使用
されるとき、治療対象への単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位が
、必要な医薬担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定の分量の活性
化合物を含有する。
【0188】
本開示の医薬組成物中にある活性成分の実際の投薬量レベルは、患者にとって毒性でな
く、詳細な患者、組成物、及び投与様式に対して所望の治療応答を実現するのに有効な活
性成分の量に達するように変えられてもよい。選択される投薬量レベルは、用いられる詳
細な組成物、又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いら
れる詳細な化合物の排泄速度、治療継続期間、他の薬物、用いられる詳細な組成物と併用
して使用される化合物及び/又は材料、治療下の患者の年齢、性別、体重、状態、全般的
な健康及び前病歴などの要因を含め、種々の薬物動態学的要因に依存する。
【0189】
第2の薬剤との共製剤化
一部の実施形態において、薬理学的組成物は、抗体サイトカイングラフト化タンパク質
と1つ以上の追加的な薬理学的薬剤との混合物を含む。本抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質と共に混合物中に含められる例示的な第2の薬剤としては、限定なしに、抗炎症
剤、免疫調節剤、アミノサリチル酸、及び抗生物質が挙げられる。適切な選択は、好まし
い製剤、投薬量及び/又は送達方法に依存し得る。
【0190】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は抗炎症剤と共製剤
化される(即ち、混合物として提供されるか、又は混合物中に調製される)。詳細な実施
形態において、コルチコステロイド抗炎症剤が抗体サイトカイングラフト化タンパク質と
併せて使用されてもよい。使用のためのコルチコステロイドは、メチルプレドニゾロン、
ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ブデソニド(budenisonide)、メサラミ
ン、及びデキサメタゾンのいずれかから選択され得る。適切な選択は製剤化及び送達の優
先性に依存することになる。
【0191】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は免疫調節剤と共製
剤化される。詳細な実施形態において、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、シクロ
スポリンA、タクロリムス、及びメトトレキサートのいずれかから選択される免疫調節薬
。詳細な実施形態において、免疫調節薬は、抗TNF剤(例えば、インフリキシマブ、ア
ダリムマブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ)、ナタリズマブ、及びベドリズマブから選択
される。
【0192】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質はアミノサリチル酸
剤と共製剤化される。詳細な実施形態において、アミノサリチル酸は、スルファサラジン
、メサラミン、バルサラジド、オルサラジン又は他の5-アミノサリチル酸誘導体から選
択される。
【0193】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は抗細菌剤と共製剤
化される。例示的抗細菌剤としては、限定なしに、スルホンアミド類(例えば、スルファ
ニルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフイソオキサゾール、ス
ルファセタミド)、トリメトプリム、キノロン類(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン
、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、フレ
ロキサシン、ペフロキサシン(perloxacin)、レボフロキサシン、ガレノキサ
シン及びゲミフロキサシン)、メテナミン、ニトロフラントイン、ペニシリン類(例えば
、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリンオキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサ
シリン、ナフシリン(nafcilin)、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシ
リン、チカルシリン、メズロシリン、及びピペラシリン)、セファロスポリン類(例えば
、セファゾリン、セファレキシン、セファドロキシル、セフォキシチン、セファクロル、
セフプロジル、セフロキシム、セフロキシムアキセチル(cefuroxime ace
til)、ロラカルベフ、セフォテタン、セフォラニド、セフォタキシム、セフポドキシ
ムプロキセチル、セフチブテン(cefibuten)、セフジニル、セフジトレンピボ
キシル(cefditoren pivorxil)、セフチゾキシム、セフトリアキソ
ン、セフォペラゾン、セフタジジム、及びセフェピム(cefepine))、カルバペ
ネム類(例えば、イミペネム、アズトレオナム)、及びアミノグリコシド類(例えば、ネ
オマイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン(t
oramycin)、ネチルマイシン、及びアミカシン)が挙げられる。
【0194】
製品/キット
一部の態様において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は製品(即ちキット)で
提供される。提供される抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、概してバイアル又は
容器内にある。従って、製品は、容器及び容器上にある又はそれと関連付けられたラベル
又は添付文書を含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、溶液
バッグ等が挙げられる。適宜、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は液体又は乾燥形
態(例えば、凍結乾燥形態)であってもよい。容器は、それ自体で、又は別の組成物との
組み合わせで、免疫関連障害の治療、予防及び/又は改善用の組成物の調製に有効な組成
物を保持する。ラベル又は添付文書は、組成物が免疫関連障害の治療、予防及び/又は改
善に使用されることを指示する。本明細書に記載されるとおりの抗体サイトカイングラフ
ト化タンパク質を含む製品(キット)は、任意選択で1つ以上の追加的薬剤を含む。一部
の実施形態において、製品(キット)は抗体サイトカイングラフト化タンパク質と薬学的
に許容可能な希釈剤とを含む。一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タ
ンパク質は、製品(キット)において1つ以上の追加的な活性薬剤と共に同じ製剤に(例
えば、混合物として)提供される。一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト
化タンパク質は製品(キット)において第2又は第3の薬剤と共に別個の製剤に(例えば
、別個の容器に)提供される。特定の実施形態において、製品(キット)は抗体サイトカ
イングラフト化タンパク質のアリコートを含み、ここでアリコートは1用量以上を提供す
る。一部の実施形態において複数回投与用のアリコートが提供され、ここで用量は均一で
あるか、又は変化する。詳細な実施形態において、変化する投与レジメンは、適宜、漸増
又は漸減するものである。一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパ
ク質及び第2の薬剤の投薬量は、独立に均一であるか、又は独立に変化する。特定の実施
形態において、製品(キット)は、抗炎症剤、免疫調節剤、アミノサリチル酸、及び抗生
物質のいずれかから選択される追加的薬剤を含む。1つ以上の追加的薬剤の選択は、投薬
量、送達、及び治療しようとする疾患状態に依存することになる。
【0195】
免疫関連障害の治療方法及びその治療用組成物の使用
治療又は予防の対象となる病態
抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、免疫関連障害の治療、改善又は予防に使用
が見出される。一態様において、本開示は、それを必要としている個体の免疫関連障害の
治療方法を提供し、この方法は、本明細書に記載されるとおりの抗体サイトカイングラフ
ト化タンパク質の治療有効量を個体に投与することを含む。本開示はまた、一態様におい
て、治療剤としての使用のための抗体サイトカイングラフト化タンパク質も提供する。一
部の実施形態において、個体の免疫関連障害の治療又は予防における治療剤としての使用
のための抗体サイトカイングラフト化タンパク質が提供される。一部の実施形態において
、それを必要としている個体の免疫関連障害の治療用医薬品の製造のための抗体サイトカ
イングラフト化タンパク質の使用が提供される。更なる態様において、本開示は、それを
必要としている個体の免疫関連障害の治療又は改善における使用のためのかかる抗体サイ
トカイングラフト化タンパク質を含む組成物を提供する。
【0196】
治療の対象となる病態としては、免疫関連障害が挙げられる。治療目的については、個
体は免疫関連障害を有し得る。防御又は予防目的については、個体は、活性状態の免疫関
連障害から寛解していてもよく、又は将来的な発生が予測されてもよい。一部の実施形態
において、患者は免疫関連障害を有するか、免疫関連障害を有する疑いがあるか、又は免
疫関連障害から寛解している。抗体サイトカイングラフト化タンパク質による治療の対象
となる免疫関連障害は、Treg細胞上でのIL2受容体シグナル伝達の活性化から利益
を得る。治療の対象となる免疫関連障害としては、限定なしに:1型糖尿病、全身性エリ
テマトーデス、白斑、慢性移植片対宿主病(cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(p
GvHD)、HIV誘発性脈管炎、円形脱毛症、全身性硬化症モルフェア及び原発性抗リ
ン脂質症候群が挙げられる。
【0197】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質の投与
医師又は獣医師は、医薬組成物中に用いる抗体サイトカイングラフト化タンパク質の用
量を所望の治療効果の実現に必要な用量よりも低いレベルで開始し、所望の効果が実現す
るまで投薬量を徐々に増加させることができる。一般に、組成物の有効用量は、治療され
ることになる具体的な疾患又は病態、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者が
ヒトか、それとも動物か、投与されている他の薬物療法、及び治療が予防的か、それとも
療法的かを含め、多くの異なる要因に応じて変わる。治療投薬量は、安全性及び有効性を
最適化するため典型的には滴定が必要である。抗体サイトカイングラフト化タンパク質を
伴う投与について、投薬量は宿主体重の約0.0001~100mg/kg、及びより通
常は0.01~5mg/kgの範囲である。例えば投薬量は1mg/kg体重又は10m
g/kg体重又は1~10mg/kgの範囲内であってもよい。投与は必要又は所望に応
じて毎日、毎週、隔週、毎月、又はそれより多い若しくは少ない頻度であってもよい。例
示的治療レジームは必然的に、週1回、2週間毎に1回又は月1回又は3~6ヵ月毎に1
回の投与を伴う。
【0198】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質は単回用量又は分割用量で投与することができ
る。抗体サイトカイングラフト化タンパク質は通常、複数の機会に投与される。単回投薬
量間の間隔は、必要又は所望に応じて毎週、隔週、毎月又は毎年であってもよい。間隙は
また、患者における抗体サイトカイングラフト化タンパク質の血中レベルの測定によって
指示されるとおり不規則であってもよい。一部の方法では、投薬量は、1~1000μg
/ml、及び一部の方法では25~300μg/mlの血漿抗体サイトカイングラフト化
タンパク質濃度が実現するように調整される。或いは、抗体サイトカイングラフト化タン
パク質は徐放製剤として投与することができ、この場合より低い頻度での投与が必要であ
る。投薬量及び頻度は患者における抗体サイトカイングラフト化タンパク質の半減期に応
じて変わる。一般に、抗体グラフト化タンパク質は天然IL2又はProleukin(
登録商標)などの組換えサイトカインよりも長い半減期を示す。投薬量及び投与頻度は、
治療が予防的か、それとも療法的かに応じて変わり得る。一般に予防適用については、比
較的低い投薬量が比較的低い頻度間隔で長期にわたって投与される。一般に療法適用につ
いては、疾患の進行が減少又は終了するまで、及び好ましくは患者が疾患の症状の部分的
又は完全な改善を示すまで、比較的短い間隔での比較的高い投薬量が時に必要となる。そ
の後、患者は予防レジームを投与されてもよい。
【0199】
第2の薬剤との共投与
用語「併用療法」は、本開示に記載される治療上の病態又は障害を治療するための2つ
以上の治療剤の投与を指す。このような投与は、固定比の活性成分を有する単一のカプセ
ルなどの、実質的に同時の様式でのこれらの治療剤の同時投与を包含する。或いは、この
ような投与は、各活性成分について、複数の、又は別々の容器(例えば、カプセル、粉末
、及び液体)中での同時投与を包含する。粉末及び/又は液体は、投与前に所望の用量に
再構成又は希釈され得る。さらに、このような投与は、ほぼ同時に又は異なる時間に、連
続的様式での、それぞれのタイプの治療剤の使用も包含する。いずれの場合も、治療計画
は、本明細書に記載される病態又は障害を治療する際に薬物の組合せの有益な効果を提供
する。
【0200】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は1つ以上の追加的
な薬理学的薬剤と共投与される。一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化
タンパク質及び追加的な1つ以上の薬剤は、混合物として投与される。一部の実施形態に
おいて、抗体サイトカイングラフト化タンパク質及び追加的な1つ以上の薬剤は、別個の
製剤として投与される。別個の製剤が利用される特定の実施形態において、投与は同時で
ある。別個の製剤が利用される特定の実施形態において、投与は逐次的である。別個の製
剤が利用される特定の実施形態において、投与は同じ経路による。別個の製剤が利用され
る特定の実施形態において、投与は異なる経路による。抗体サイトカイングラフト化タン
パク質と共投与するための例示的な追加的薬剤としては、限定なしに、抗炎症剤、免疫調
節剤、アミノサリチル酸、及び抗生物質が挙げられる。適切な選択は、好ましい製剤、投
薬量及び/又は送達方法に依存し得る。抗体サイトカイングラフト化タンパク質はまた、
免疫関連障害病態を治療するための追加的な確立された手技、例えば外科手術との併用療
法にも使用が見出される。
【0201】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は抗炎症剤と共投与
される。詳細な実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質と併せてコル
チコステロイド抗炎症剤が使用されてもよい。使用のためのコルチコステロイドは、メチ
ルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ブデソニド(budenison
ide)、メサラミン、及びデキサメタゾンのいずれかから選択され得る。適切な選択は
製剤化及び送達の優先性に依存することになる。
【0202】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は免疫調節剤と共投
与される。詳細な実施形態において、6-メルカプトプリン、アザチオプリン、シクロス
ポリンA、タクロリムス、及びメトトレキサートのいずれかから選択される免疫調節薬。
別の実施形態において免疫調節薬は、抗TNF剤(例えば、インフリキシマブ、アダリム
マブ、セルトリズマブ、ゴリムマブ)、ナタリズマブ、及びベドリズマブから選択される
。
【0203】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質はアミノサリチル酸
剤と共投与される。詳細な実施形態においてアミノサリチル酸は、スルファサラジン、メ
サラミン、バルサラジド、オルサラジン又は他の5-アミノサリチル酸誘導体から選択さ
れる。
【0204】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は抗細菌剤と共投与
される。例示的抗細菌剤としては、限定なしに、スルホンアミド類(例えば、スルファニ
ルアミド、スルファジアジン、スルファメトキサゾール、スルフイソオキサゾール、スル
ファセタミド)、トリメトプリム、キノロン類(例えば、ナリジクス酸、シノキサシン、
ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、オフロキサシン、スパルフロキサシン、フレロ
キサシン、ペフロキサシン(perloxacin)、レボフロキサシン、ガレノキサシ
ン及びゲミフロキサシン)、メテナミン、ニトロフラントイン、ペニシリン類(例えば、
ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリンオキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシ
リン、ナフシリン(nafcilin)、アンピシリン、アモキシシリン、カルベニシリ
ン、チカルシリン、メズロシリン、及びピペラシリン)、セファロスポリン類(例えば、
セファゾリン、セファレキシン、セファドロキシル、セフォキシチン、セファクロル、セ
フプロジル、セフロキシム、セフロキシムアキセチル(cefuroxime acet
il)、ロラカルベフ、セフォテタン、セフォラニド、セフォタキシム、セフポドキシム
プロキセチル、セフチブテン(cefibuten)、セフジニル、セフジトレンピボキ
シル(cefditoren pivorxil)、セフチゾキシム、セフトリアキソン
、セフォペラゾン、セフタジジム、及びセフェピム(cefepine))、カルバペネ
ム類(例えば、イミペネム、アズトレオナム)、及びアミノグリコシド類(例えば、ネオ
マイシン、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン(to
ramycin)、ネチルマイシン、及びアミカシン)が挙げられる。
【0205】
一部の実施形態において、抗体サイトカイングラフト化タンパク質は標準治療と共投与
される。例えば、1型糖尿病の治療においては、標準治療はインスリンの投与又はインス
リン療法である。本明細書に開示されるとおりの抗体サイトカイングラフト化タンパク質
は、インスリンが正常糖値を一次的に回復することに伴い免疫寛容の促進においてなおも
良好に機能するであろう。
【実施例0206】
実施例1:IL2抗体サイトカイングラフト化タンパク質の創製
IL2配列を様々な免疫グロブリン足場のCDR領域内に操作することにより抗体サイ
トカイングラフト化タンパク質を作成し、次に重鎖及び軽鎖の両方の免疫グロブリン鎖を
使用して最終的な抗体サイトカインタンパク質を作成した。抗体サイトカイングラフト化
タンパク質はIL2の好ましい治療特性を付与する;しかしながら、抗体サイトカイング
ラフト化タンパク質は、rhIL2と比較したときNK細胞活性の増加などの望ましくな
い効果が低下している。
【0207】
抗体サイトカイングラフト化タンパク質を創製するため、ムテインを含むIL2配列(
配列番号4又は6)を免疫グロブリン鎖足場のCDRループに挿入した。臨床的セッティ
ングで利用されている種々の公知の免疫グロブリン配列並びに生殖細胞系列抗体配列を使
用して抗体サイトカイングラフト化タンパク質を調製した。GFTX3bと称される例示
的足場におけるIL2の配列を表2に示す。挿入点は、利用可能な構造的又は相同性モデ
ルデータに基づいて、ループの中間点であると選択された。抗体サイトカイン移植タンパ
ク質を、関連する配列をコードする組み換えDNAを用いる標準的な分子生物学方法を用
いて生成した。
【0208】
サイトカイングラフト化にどのCDRを選ぶかの選択は、以下のパラメータに関して選
択される:要求される生物学、生物物理学的特性及び好ましい開発プロファイル。どのC
DR及びCDR内のどの位置が所望のパラメータを提供することになるかを予測する際に
モデル化ソフトウェアが部分的にのみ有用であったため、従って6つ全ての可能な抗体サ
イトカイングラフトを作り、次に生物学的アッセイで評価する。要求される生物学的活性
が実現する場合、次に抗体サイトカイングラフト化分子がそれぞれのサイトカイン受容体
とどのように相互作用するかに関する構造分解などの生物物理学的特性を解く。
【0209】
抗体IL2グラフト化分子について、初めにサイトカイングラフト化に考えられる抗体
候補の構造を解いた。この構造から、抗体のなかでエピトープと相互作用する一部分であ
るパラトープが抗体「アーム」のN末端先端にあること、及びサイトカインをこの位置に
グラフト化すればそのそれぞれの受容体に対してサイトカインが提示されるであろうこと
が分かった。グラフト技術に起因して、各抗体IL2グラフト化タンパク質は、異なる長
さ、配列及び構造環境のCDRループの制約を受ける。そのため、LCDR-1、LCD
R-2、LCDR-3及びHCDR-1、HCDR-2及びHCDR-3に対応する6つ
全てのCDRにIL2をグラフト化した。
図1は、様々な点突然変異を含む、及びIL2
挿入点をCDRループのN部分又はC部分のいずれかにシフトさせて(nH1、cH1、
nH2、cH2)作製した異なる例示的バージョンのIL2抗体サイトカイングラフトを
示す。
図1のこの表から、CDR2の軽鎖にグラフト化されたIL2(IgG.IL2.
L2)が発現しなかったことを含め、抗体サイトカイングラフト化タンパク質が全てその
活性の点で異なることが明らかである。また、Fc機能が変化した(例えばFcサイレン
トの)IL2抗体サイトカイングラフトがより良好なプロファイルを有することも観察さ
れた。
【0210】
特性(生物物理学的及び生物学的)の最良の組み合わせを有し、且つ含まれたIL2点
突然変異が所望の生物学的特性を増強したため、HCDR-1が選択された。挿入点の選
択については、CDRループの構造中心が、いずれの側にも最も大きい(直線サイズ3.
8Å×残基数の)間隔をもたらし得ることに伴い選ばれ、及びいかなる一つの理論によっ
ても拘束されるものではないが、これはIL2のより容易な折り畳みを独立に可能にする
ことにより安定分子を提供した。グラフト足場GFTX3bの構造は既に分かっていたた
め、各CDRの構造中心もまた分かっていた。これは、Chothia付番方式を用いて
定義したときのCDRループ配列の中心と一致した。既述のとおり、IL-2グラフトの
挿入点をCDRループの中心から離れてN末端部分又はC末端部分のいずれかの方にシフ
トさせた。しかしながら、CDRループ内でIL2をシフトさせても生物学的活性に大き
な差は生じなかった。
【0211】
要約すれば、CDR内にグラフトすることによりあるレベルの立体障害がIL2受容体
の個々のサブユニットにもたらされ得るという仮説の下、構造に基づき各CDRにおける
挿入点を選択した。特定のサイトカインにどのCDRグラフトが最良かについての最終的
な選択は、所望の生物学及び生物物理学的特性に基づいた。サイトカイン受容体の性質、
サイトカイン/受容体相互作用及びシグナル伝達機構もまた役割を果たしたとともに、こ
れは各個別の抗体サイトカイン分子をそのそれぞれの特性に関して比較することにより行
った。
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
実施例2:抗体サイトカイングラフト化タンパク質はTreg細胞に対するより高い活性
及び増加した半減期を示す
Proleukin(登録商標)を上回る所望の生物学的効果を実現したことに伴いI
gG.IL2D49A.H1及びIgG.IL2.L3を選択した(
図1に相対的変化を
まとめている)。これらの効果には以下が含まれる;Tcon及びNK細胞よりも優先的
なTreg上のIL-2R選択性、マウスにおけるTcon及びNK細胞と比べたTre
gのより大きい半減期拡大。
【0227】
高親和性IL-2受容体刺激の評価においては、Proleukin(登録商標)及び
IgG.IL2D49A.H1グラフトの両方がTreg細胞上で同等のシグナル効力を
示したが、IgG.IL2D49A.H1は、Proleukin(登録商標)と異なり
、CD8 Tエフェクター細胞及びNK細胞の両方で低下した活性乃至無活性を示した。
CDRL3にグラフト化されたIL2(IgG.IL2.L3)は、Proleukin
(登録商標)よりも低いTreg上でのシグナル効力を示したが、NK細胞上では活性を
示さなかった。HemaCare Corp.からヒト末梢血単核球(hPBMC)を購
入し、Proleukin(登録商標)、IgG.IL2D49A.H1又はIgG.I
L2.L3のいずれかによってインビトロで試験してIL-2高親和性受容体に対する選
択的活性を評価した。細胞を無血清試験培地中に静置し、各ウェルに加えた。ウェルに抗
体サイトカイングラフト化タンパク質又は天然ヒトIL-2のいずれかを加え、37℃で
20分間インキュベートした。20分後、細胞を固定し、表面マーカーで染色し、透過処
理し、STAT5抗体(BD Biosciences)で製造者の指示に従い染色した
。
【0228】
血漿中でのIgG.IL2D49A.H1又はIgG.IL2.L3の薬物動態は、僅
か1用量後にProleukin(登録商標)と比べて半減期の延長を示した。Prol
eukin(登録商標)又はグラフトのいずれかによる1回の治療後8日における前糖尿
病NODマウスの脾臓で細胞拡大を評価した。IgG.IL2D49A.H1はTエフェ
クター細胞及びNK細胞と比べて優れたTreg拡大を実現し、前糖尿病マウスにおいて
Proleukin(登録商標)よりも良好に忍容された。STAT5刺激、IgG.I
L2D49A.H1及びIgG.IL2.L3のPK/PDの要約を
図2に示す。これは
、抗体サイトカイングラフト化タンパク質がProleukin(登録商標)よりも長い
半減期を有するのみならず、Tエフェクター細胞及びNK細胞の望ましくない刺激なしに
標的Treg細胞を刺激できることを示している。
【0229】
実施例3:抗体サイトカイングラフト化タンパク質はTreg細胞に対してより高い活性
を示す
非肥満糖尿病(NOD)マウスは1型糖尿病を自然発症し、ヒト1型糖尿病の動物モデ
ルとして用いられることが多い。前糖尿病NODマウスに等モルのProleukin(
登録商標)(週3回)及び種々の抗体サイトカイングラフト化タンパク質(1回/週)を
投与した。初回治療から8日後、脾臓を処理して単一細胞懸濁液を入手し、RPMI(1
0%FBS)で洗浄した。赤血球を赤血球溶解緩衝液(Sigma #R7757)で溶
解させて、細胞を細胞数及び生存率に関してカウントした。標準プロトコルに基づきFA
CS緩衝液(1×PBS+0.5%BSA+0.05%ナトリウムアジド)を使用してF
ACS染色を実施した。細胞を表面抗体:ラット抗マウスCD3-BV605(BD P
harmingen #563004)、ラット抗マウスCD4-パシフィックブルー(
BD Pharmingen #558107)、ラット抗マウスCD8-PerCp(
BD Pharmingen #553036)、CD44 FITC(Pharmin
gen #553133)ラット抗マウスCD25-APC(Ebioscience
#17-0251)で染色し、続いて固定/透過処理し、抗マウス/ラットFoxP3染
色セットPE(Ebioscience #72-5775)に従いFoxP3に関して
染色した。細胞はBD LSR Fortessa(登録商標)又はBD FACS L
SR II(登録商標)で分析し、及びデータはFlowJo(登録商標)ソフトウェア
で分析した。
図3は、IgG.IL2D49A.H1及びIgG.IL2D113A.H
1をProleukin(登録商標)と比較した、各脾臓から絶対数として計算した倍数
値及び比を示す。IgG.IL2D49A.H1によるCD8 Tエフェクター細胞又は
NK細胞の拡大のないTreg細胞の拡大の増加が一番上の列に示される。これは、全て
の細胞型の拡大につながる低用量及び高用量Proleukin(登録商標)と対照的で
ある。
【0230】
実施例4:インビトロでIL-2Rシグナル伝達効力はCD4 Tcon及びCD8 T
effにおいて低下するがTregにおいては低下しない
Proleukin(登録商標)及びIgG.IL2D49A.H1を両方ともにIL
-2Rに対するシグナル効力に関してヒトPBMC及びカニクイザル(cynomolo
gus monkey)PBMCの両方でインビトロで試験した。等モルIL2濃度のI
gG.IL2D49A.H1及びProleukin(登録商標)は両方ともに、高親和
性IL-2Rを発現するTreg細胞に対しては同様のシグナル効力を示したが、低親和
性IL-2受容体を発現する従来のCD4及びCD8 Tエフェクター細胞に対してはI
gG.IL2D49A.H1のみが効力の低下を示した。これらの結果はヒト及びカニク
イザルの両方のPBMCで観察された。このアッセイについて、PBMC細胞は無血清試
験培地中に静置し、各ウェルに加えた。ウェルにIgG.IL2D49A.H1又はPr
oleukin(登録商標)のいずれかを加え、37℃で20分間インキュベートした。
20分後、細胞を固定し、表面マーカーで染色し、透過処理し、STAT5抗体(BD
Biosciences)で製造者の指示に従い染色した。細胞はBD LSR For
tessa(登録商標)で分析し、及びデータはFlowJo(登録商標)ソフトウェア
で分析した。
【0231】
図4に示されるとおりの結果が特に明らかであった。ヒト及びカニクイザル(cyno
mologus)の両方のPBMCにおいて、TregでIgG.IL2D49A.H1
によるpSTAT5活性化が見られ、これはCD8 Tエフェクターではほとんど見られ
なかった。
【0232】
実施例5:IgG.IL2D49A.H1はインビトロで機能性安定Tregを拡大する
Treg選択性の改善には機能的効果が伴う。IgG.IL2D49A.H1で拡大し
たTregは、Proleukin(登録商標)で拡大したTregと比べて同等か又は
より良好なTエフェクターの抑制因子である。このアッセイのため、Ficoll-Hy
paque勾配(GE HealthCare カタログ番号17-1440-03)で
遠心することにより全血からヒトPBMCを精製した。PBMCをRBC溶解させた(A
mimed カタログ番号3-13F00-H)。EasySep CD4+ T細胞エ
ンリッチメントキット(StemCell Technologies カタログ番号1
9052)を使用してCD4+ T細胞をエンリッチした。エンリッチしたCD4+をV
500抗CD4(クローンRPAT4)、PerCP-Cy5.5抗CD127(及びA
PC抗CD25で染色し、CD4+CD127-CD25+天然調節性T細胞(nTre
g)及びCD4+CD127+CD25- Tレスポンダー(Tresp)を単離するた
め選別した。選別したTregを培地を満たした96ウェル丸底マイクロプレートにレプ
リケートでプレーティングし(1×105/100μl/ウェル)、等モル濃度の1nM
又は0.3nM Proleukin(登録商標)又はIgG.IL2D49A.H1の
存在下において3:1のビーズ対細胞比でマイクロビーズによって刺激した。37℃で2
4時間インキュベートした後、ウェルに同じIL2濃度を含む100μl培地を補充した
。3日目、培養物を懸濁し、半分に分割し、同じIL2濃度を含む100μl培地を補充
した。6日目、培養物を3日目と同じく処理した。8日目、細胞を回収し、チューブにプ
ールし、チューブをマルチスタンド磁石上に1~2分間置くことによりビーズを除去した
。細胞を含有する上清を収集し、室温下200gで5分間遠心した。次に細胞をカウント
し、元のIL2濃度の5分の1を含む培地を補充した48ウェル平底マイクロプレートに
約5×105/mlで再びプレーティングした。2日間静置した後、細胞を回収し、カウ
ントし、分析するか、又は抑制アッセイに使用した。拡大したTreg及び新鮮に解凍し
たCD4+CD127+CD25- Tレスポンダー(Tresp)細胞をそれぞれ0.
8μM CTViolet(Life Technologies カタログ番号C34
557)及び1μM CFSE(Life Technologies カタログ番号C
34554)で製造者の指示に記載されるとおり標識した。拡大したTregの抑制特性
を評価するため、3×104 CFSE標識Trespを単独で、又はCTViolet
標識Tregと共に(異なるTresp:Treg比)トリプリケートでプレーティング
し、Dynabeadsによって1:8のビーズ対細胞比で刺激した(最終容積200μ
l/ウェル)。4~5日後、細胞を収集し、レスポンダー細胞の増殖をフローサイトメト
リーによって判定した。
【0233】
新鮮な拡大したTregにおいて、Tresp細胞と比較してメチル化状態を判定した
。QiagenからのAllprep(登録商標)DNA/RNA Mini(カタログ
番号80204)を使用して>5.0×105細胞からゲノムDNA(gDNA)を単離
した。次に、SigmaからのImprint(登録商標)DNA修飾キット(カタログ
番号MOD50)を使用して200ngのgDNAを処理し、非メチル化シトシンをウラ
シルに変換した(一方でメチル化シトシンは変化しないままとした)。次に、EpiTe
ct MethyLight(登録商標)PCR+ROX(Qiagen カタログ番号
59496)、Epitect対照DNA(Qiagen カタログ番号59695)、
標準メチル化(Life Technologies、カタログ番号12AAZ7FP)
及び非メチル化(Life Technologies、カタログ番号12AAZ7FP
)プラスミド、Treg特異的脱メチル化領域(TSDR)、メチル化及び非メチル化フ
ォワード及びリバースプライマー、及びプローブ(MicroSynth)を利用した配
列特異的プローブベースのリアルタイムPCRを用いて8ngの亜硫酸水素変換gDNA
に関して定量的メチル化を判定した。メチル化パーセンテージはEpiTect Met
hyLight(登録商標)PCRハンドブックに記載されるとおり計算した。
【0234】
図5は、Proleukin(登録商標)及びIgG.IL2D49A.H1で拡大し
たTregによるFoxp3遺伝子座の安定脱メチル化をグラフで示す。インビトロでI
gG.IL2D49A.H1によって拡大したヒトTregはFoxp3発現及び脱メチ
ル化によって安定し、これが安定Treg細胞につながる。
【0235】
実施例6:インビトロでIgG.IL2D49.H1によるIL-2Rシグナル伝達に対
する効力はヒトNKにおいて低下した
IgG.IL2D49A.H1は等モル濃度のProleukin(登録商標)と比較
してNK細胞におけるシグナル伝達効力の低下を示した。PBMC細胞を無血清試験培地
中に静置し、各ウェルに加えた。ウェルにIgG.IL2D49A.H1又はProle
ukin(登録商標)のいずれかを加え、37℃で20分間インキュベートした。20分
後、細胞を1.6%ホルムアルデヒドで固定し、洗浄し、表面マーカーで染色した。室温
で30分後、試料を洗浄し、再懸濁した細胞ペレットを-20℃メタノールで透過処理し
、洗浄して、STAT5及びDNAインターカレーターで染色した。細胞をCytofに
かけ、データをFlowJo(登録商標)ソフトウェアで分析した。結果は
図6に示し、
ここでIgG.IL2D49A.H1はNK細胞にほとんど乃至全く効果を及ぼさなかっ
た。対照的に、Proleukin(登録商標)治療は、Proleukin(登録商標
)治療の望ましくない副作用として、NK細胞上のpSTAT5活性を増加させた。
【0236】
実施例7:雌カニクイザルに皮下投与したときのIgG.IL2D49A.H1の薬物動
態(PK)、薬力学(PD)、及び毒性効果の判定
カニクイザルにおけるIgG.IL2D49A.H1は、薬物動態の延長、Tエフェク
ター細胞よりも優先的な優れたTreg拡大及び低用量Proleukin(登録商標)
よりも低い毒性を示した。この非臨床的実験室試験は、Novartis実験動物委員会
(Animal Care and Use Committee)が承認済みの一般的
プロトコル第TX 4039号、本プロトコル及び施設内標準実施要領(Standar
d Operating Procedures:SOP)に従い行われた。
【0237】
試験初日に動物にIgG.IL2D49A.H1又はProleukin(登録商標)
のいずれかを皮下投与した。試験における各用量レベルで全ての動物から血液を採取した
。投与1日前、投与後1時間、6時間及び12時間、その後2、3、4、5、6、7、8
、10、及び12日目。薬物動態学及び薬力学用の血液試料は全て遠心し、血漿試料を入
手した。得られた血漿試料を単一ポリプロピレンチューブに移し、-70℃以下で凍結し
た。全ての試料を分析し、血漿中のIgG.IL2D49A.H1及びProleuki
n(登録商標)の濃度を免疫アッセイを用いて測定した。半減期などの薬物動態パラメー
タを計算し、薬力学用にFACSによって細胞の免疫表現型を決定した。IL-2/IL
-2 Gyrosアッセイプロトコルは以下のとおりである。各試料はデュプリケートで
実行し、デュプリケートの分析の各々に5μLの1:20希釈した試料が必要であった。
捕捉抗体はヤギ抗ヒトIL-2ビオチン化抗体(R&D Systems BAF202
)であり、Alexa 647抗ヒトIL-2、クローンMQ1-17H12(Biol
egend 500315)LOQ:0.08ng/mlで検出し、イムノアッセイは全
て、Gyrolab Bioaffy200(登録商標)をGyros CD-200(
登録商標)と共に使用して行った。
【0238】
図7は、IgG.IL2D49A.H1とProleukin(登録商標)との対比を
示す。IgG.IL2D49A.H1は12時間の半減期を有し、一方、Proleuk
in(登録商標)は3時間の半減期を有する。IgG.IL2D49A.H1の半減期の
延長に伴いTreg活性が増加し、好酸球増加毒性がはるかに低くなる。
【0239】
実施例8:IgG.IL2D49A.H1はProleukin(登録商標)を上回る半
減期の延長を示す
IgG.IL2D49A.H1は、単回投与後にProleukin(登録商標)の4
時間の半減期と比較して約12時間の半減期を示した。ナイーブCD-1動物に静脈内又
は皮下投与し、投与前、投与後1時間、3、7、24、31、48、55及び72時間に
全ての動物から血液を採取した。血液試料を遠心し、血漿試料を入手した。得られた血漿
試料を単一ポリプロピレンチューブに移し、-80℃で凍結した。全ての試料を分析し、
IgG.IL2D49A.H1の血漿中濃度をイムノアッセイを用いて測定した。IL-
2/IL-2 Gyrosアッセイプロトコルは以下のとおりである。各試料はデュプリ
ケートで実行し、デュプリケートの分析の各々に5μLの1:20希釈した試料が必要で
あった。捕捉抗体はヤギ抗ヒトIL-2ビオチン化抗体(R&D Systems BA
F202)であり、Alexa 647抗ヒトIL-2、クローンMQ1-17H12(
Biolegend 500315)LOQ:0.08ng/mlで検出し、イムノアッ
セイは全て、Gyrolab Bioaffy200(登録商標)をGyros CD-
200(登録商標)と共に使用して行った。このアッセイは、実施例7の半減期の決定を
更に展開したものである。このアッセイの結果は
図8に示し、ここでIgG.IL2D4
9A.H1の半減期は12~14時間であると決定され、これは4時間の半減期を有する
Proleukin(登録商標)と対照的である。
【0240】
実施例9:異種GvHDマウスにおいてヒトTregは拡大するが、Tエフェクター又は
NK細胞は拡大しない
IgG.IL2D49A.H1は異種GvHDモデルにおいてTエフェクター又はNK
細胞と比べてTregを選択的に拡大するが、Proleukin(登録商標)ではこれ
はない。NOD-scid IL2Rγヌルマウス(NSG)に健常ドナーからのhPB
MCを腹腔内注射によって注射した(HemaCare Corp)。注射24時間後、
動物にIgG.IL2D49A.H1 1回/週又はProleukin(登録商標)5
回/週を試験期間中にわたって毎週投与した。試験期間中にわたって体重を週2回モニタ
した。初回投与の28日後に各群4匹のマウスを回収し、脾臓を処理して単一細胞懸濁液
を入手し、RPMI(10%FBS)で洗浄した。赤血球を赤血球溶解緩衝液で溶解させ
て、細胞を細胞数及び生存率に関してカウントした。標準プロトコルに基づきFACS緩
衝液(1×PBS+0.5%BSA+0.05%ナトリウムアジド)を用いてFACS染
色を実施した。細胞を表面抗体で染色し、続いて固定/透過処理し、抗マウス/ラットF
oxP3染色セットPE(Ebioscience #72-5775)に従いFoxP
3に関して染色した。細胞をBD LSR Fortessa(登録商標)で分析し、デ
ータをFlowJo(登録商標)ソフトウェアで分析した。倍数値及び比は各脾臓絶対数
から計算した相対数に基づく。
図9は、IgG.IL2D49A.H1がこのマウスモデ
ルにおいてProleukin(登録商標)よりもはるかに良好にTreg細胞を拡大し
、またTcon及びNK細胞の望ましくない拡大も低減することを示している。
【0241】
異種GvHDマウスをIgG.IL2D49.H1で治療し、それにヒトPBMC(外
来細胞)を注射したとき、マウスは治療経過中、正常体重を維持した。対照的に、Pro
leukin(登録商標)で治療したマウスには重篤な体重減少があった。体重は試験期
間中にわたって週2回モニタし、パーセント体重は、登録時点における動物の初期体重を
考慮に入れて計算した。この改善は、このモデルにおいてIgG.IL2D49A.H1
がTreg増強に及ぼす効果と関連付けられ、データは
図10にグラフで示す。このデー
タは、IgG.IL2D49A.H1及び他の抗体サイトカイングラフト化タンパク質が
より高い治療指数及び安全性の幅を有することを示している。
【0242】
実施例10:IgG.IL2D49A.H1はNODマウス糖尿病モデルにおいて1型糖
尿病の発症を予防する
前糖尿病NOD雌に等モルのProleukin(登録商標)(週3回)及びIgG.
IL2D49A.H1(1回/週)を腹腔内注射によって投与した。試験の継続期間中(
初回投与後4ヵ月)、血糖及び体重に関してマウスを週2回モニタした。
図11は、Ig
G.IL2D49A.H1治療マウスが低血糖値を維持することを示す。このように、I
gG.IL2D49A.H1で治療したマウスでは顕性1型糖尿病(T1D)に進行しな
かった。対照的に、Proleukin(登録商標)治療マウスは初めは低血糖値であっ
たが、しかしこれは時間が経つと上昇し、1型糖尿病の症状をもたらした。
【0243】
実施例11:前糖尿病NODマウスにおける低用量Proleukin(登録商標)と比
べたIgG.IL2D49A.H1
IgG.IL2D49A.H1はNODマウスモデルにおいて3用量のProleuk
in(登録商標)と比較して1用量で優れたTreg拡大、より良好な忍容性及び有害事
象なしを示した。前糖尿病NOD雌に低用量等モルProleukin(登録商標)(週
3回)及びIgG.IL2D49A.H1(1回/週)を腹腔内注射によって投与した。
初回投与後4日で各群4匹のマウスを取り、脾臓を処理して単一細胞懸濁液を入手し、R
PMI(10%FBS)で洗浄した。赤血球を赤血球溶解緩衝液で溶解させて、細胞を細
胞数及び生存率に関してカウントした。標準プロトコルに基づきFACS緩衝液(1×P
BS+0.5%BSA+0.05%ナトリウムアジド)を用いてFACS染色を実施した
。細胞を表面抗体:ラット抗マウスCD3-BV605(BD Pharmingen
#563004)、ラット抗マウスCD4-パシフィックブルー(BD Pharmin
gen #558107)、ラット抗マウスCD8-PerCp(BD Pharmin
gen #553036)、CD44 FITC(Pharmingen #55313
3)ラット抗マウスCD25-APC(Ebioscience #17-0251)で
染色し、続いて固定/透過処理し、抗マウス/ラットFoxP3染色セットPE(Ebi
oscience #72-5775)に従いFoxP3に関して染色した。細胞をBD
LSR Fortessa(登録商標)又はBD FACS LSR II(登録商標
)で分析し、データをFlowJo(登録商標)ソフトウェアで分析した。倍数値及び比
は各脾臓絶対数から計算した相対数に基づく。IgG.IL2D49A.H1の単回用量
の投与は、
図12に示されるとおり、NODマウスモデルにおいてProleukin(
登録商標)の反復投与よりも大きいTreg拡大を示した。
【0244】
実施例12:NODマウスモデルにおける効果的用量のIgG.IL2D49A.H1の
薬物動態
1.3mg/kg及び0.43mg/kgのIgG.IL2D49A.H1の薬物動態
を1用量後に48時間まで血漿中でアッセイした。前糖尿病10週齢NODマウスに2つ
の異なる濃度のIgG.IL2D49A.H1を腹腔内投与し、投与後1時間、3、7、
24及び48時間に全ての動物から血液を採取した。血液試料を遠心し、血漿試料を入手
した。得られた血漿試料を単一ポリプロピレンチューブに移し、-80℃で凍結した。G
yrosプラットフォームに適合させた3つの異なる方法:1)IL2ベースの捕捉及び
検出、2)IL2ベースの捕捉及びhFcベースの検出、及び3)hFcベースの捕捉及
び検出を用いて各試料を分析することによりIgG.IL2D49A.H1血漿濃度を検
出した。
【0245】
各試料はデュプリケートで実行し、デュプリケートの分析の各々に5μLの1:20希
釈した試料が必要であった。Gyros IL-2/IL-2アッセイは捕捉ヤギ抗ヒト
IL-2ビオチン化抗体(R&D Systems BAF202)を使用し、Alex
a 647抗ヒトIL-2、クローンMQ1-17H12(Biolegend 500
315)で検出する。IL-2/Fc検出には、捕捉ヤギ抗ヒトIL-2ビオチン化抗体
(R&D Systems BAF202)を使用し、検出には、Alexa 647ヤ
ギ抗ヒトIgG、Fc特異的(Jackson ImmunoResearch 109
-605-098)抗体を使用する。ヒトFc/Fcアッセイには、捕捉ビオチン化ヤギ
抗ヒトIgG、Fc特異的(Jackson ImmunoResearch #109
-065-098)を使用した。検出工程にはAlexa 647ヤギ抗ヒトIgG、F
cγ特異的(Jackson ImmunoResearch #109-605-09
8)を使用した。イムノアッセイは全て、Gyrolab Bioaffy200(登録
商標)をGyros CD-200と共に用いて行った。このマウスモデルにおける定量
限界(LOQ)は、
図13Aに示されるとおり48時間である。
図13Bにおいてこれを
Proleukin(登録商標)及びIL2-Fc融合タンパク質と比較する。このグラ
フは、IgG.IL2D49.H1などの抗体サイトカイン(cyokine)グラフト
化タンパク質についてLOQがより高いことを示している。
【0246】
実施例13:前糖尿病NODマウスにおける用量範囲設定
IgG.IL2D49A.H1は、同じ等モル濃度のProleukin(登録商標)
と比較したときCD4 Tcon及びCD8 Tエフェクターのいずれよりも優先的な優
れたTreg拡大を示した。最も高いProleukin(登録商標)群では死亡などの
有害事象が認められ、いずれの用量のIgG.IL2D49.H1で治療したマウスにも
死亡は見られなかった。
【0247】
前糖尿病NOD雌に低用量等モルIL-2(週3回)及びIgG.IL2D49A.H
1(1回/週)を腹腔内注射によって投与した。初回投与後8日で各群3匹のマウスを安
楽死させ、脾臓を摘出した。脾臓を処理して単一細胞懸濁液を入手し、RPMI(10%
FBS)で洗浄した。血液を採取し、赤血球を赤血球溶解緩衝液で溶解させて、細胞を細
胞数及び生存率に関してカウントした。標準プロトコルに基づきFACS緩衝液(1×P
BS+0.5%BSA+0.05%ナトリウムアジド)を用いてFACS染色を実施した
。細胞を表面抗体で染色し、続いて固定/透過処理し、抗マウス/ラットFoxP3染色
セットPE(Ebioscience #72-5775)に従いFoxP3に関して染
色した。細胞をBD LSR Fortessa(登録商標)で分析し、データをFlo
wJo(登録商標)ソフトウェアで分析した。比は、各脾臓から計算した相対細胞数に基
づく。このデータは
図14に提供される。この表は抗体サイトカイングラフト化タンパク
質の用量範囲フォーマットを提供する。これはまた、投与がより広い範囲にわたって良好
に忍容されたことに伴いIgG.IL2D49A.H1がProleukin(登録商標
)よりも高い治療指数を有したことも実証する。対照的に、高用量のProleukin
(登録商標)の投与ではマウスに罹患及び死亡が生じた。最も高用量のProleuki
n(登録商標)では、この用量での治療を中断せざるを得ない十分な罹患及び死亡が生じ
た。
【0248】
実施例14:ヒトPBMC上でのSTAT5シグナル伝達
IgG.IL2D49A.H1は、健常ドナーヒトPBMC並びに自己免疫性ドナーか
らのPBMCにおいてTcon及びNKよりも優先的にTreg活性化に選択的であった
。STAT5シグナル伝達効力は、IgG.IL2D49.H1によるインビトロ治療後
にTconでは低下したが、Tregでは低下しなかった。健常及び自己免疫性患者から
のヒトPBMC(Hemacare Corp)細胞を無血清試験培地に静置し、各ウェ
ルに加えた。ウェルにIgG.IL2D49A.H1を加え、37℃で20分間インキュ
ベートした。20分後、細胞を固定し、表面マーカーで染色し、透過処理し、STAT5
抗体(BD Biosciences)で製造者の指示に従い染色した。細胞をBD L
SR Fortessa(登録商標)で分析し、データをFlowJo(登録商標)ソフ
トウェアで分析した。
図15Aのデータは、ヒト白斑患者から採取したPBMCのIgG
.IL2D49A.H1治療について、Treg活性が維持された一方で、NK、CD4
Tcon、又はCD8 Tエフェクター細胞の活性化がほとんどなかったことを示して
いる。この結果はまた、SLE及び橋本病患者から採取されたPBMCにおいても観察さ
れた(データは示さず)。
図15Bは、1型糖尿病(Type 1 Diabeties
)(T1D)のヒト患者から採取してIgG.IL2D49A.H1及びProleuk
in(登録商標)で治療したPBMCにおいて、NK細胞、CD8 Tエフェクター細胞
又はCD4 Tcon細胞上のpSTAT5活性が大きく低下していたことを示している
。IgG.IL2D49A.H1治療が正常PBMCで有効であったとともにT1D患者
から採取されたPBMCで良好に忍容されたことに伴い、これは、患者がインスリン療法
を受けている場合であっても、抗体サイトカインタンパク質がT1Dの治療において有用
となるであろうことを示している。これは、IgG.IL2D49A.H1がこれらの免
疫関連障害を有する患者で良好に忍容されるであろうこと、及びこれらの免疫関連障害へ
の対処において有効であることを示している。
【0249】
実施例15:抗体サイトカイングラフト化タンパク質の結合
ムテインを含むIL2配列(配列番号4又は6)を免疫グロブリン鎖足場のCDRルー
プに挿入した。抗体サイトカイングラフト化タンパク質は、臨床セッティングで利用され
ている種々の既知の免疫グロブリン配列並びに生殖細胞系列抗体配列を使用して調製した
。使用した抗体のうちの1つはその抗原としてRSVを有する。IL2をこの抗体のCD
Rにグラフト化するとRSVへの結合が低下又は消失したかどうかを決定するため、PB
S又は炭酸塩緩衝液のいずれかにおいてRSVタンパク質に関するELISAアッセイを
行った。
図16に示すとおり、これはIL2グラフト化にどのCDRを選択したかに影響
を受けるように見える。例えば、IgG.IL2D49A.H1は、元の非グラフト化(
非修飾)抗体と同様のRSV結合を有する。対照的に、IL2をCDR3の軽鎖(CDR
-L3)又はCDR-H3にグラフト化すると、結合が低下する。予想どおり、IL2を
無関係の抗体(Xolair)にグラフト化すると、結合は生じない。これは、抗体サイ
トカイングラフト化タンパク質が抗体足場の元の標的に対する結合を保持し得ること、又
はこの結合が低下し得ることを実証している。
【0250】
実施例16:非ヒト霊長類におけるTreg拡大
IgG.IL2D49A.H1を2用量群(3匹の雄/群)間で交互に4週間の無投与
間隔を伴い与える2つの単回漸増皮下投与でカニクイザルに投与した。この後、緩衝液又
は5mg/kg IgG.IL2D49A.H1の6回の皮下用量(隔日で2週間)を受
けた2群(3匹の雄/群)における2週間複数回投与相が続いた。「単回投与相」(29
日の間隔を空けて2用量が投与された)からのフローサイトメトリー(免疫表現型タイピ
ング)によって評価したリンパ球集団の変化を
図17に示す。125及び375μg/k
g用量では、Tcon又はNK細胞に対する明らかな効果は何らなしに、Treg絶対数
の3~4倍及び最大5.5倍の増加が観察された。最大のTreg拡大は4日目に見られ
たとともに、Treg数は10日目までにほぼベースラインに戻る。IgG.IL2D4
9A.H1は安全で且つ良好に忍容され、死亡、臨床徴候、又は体重、摂食量、サイトカ
インレベル若しくは臨床病理の変化はなかった。更に、この試験において最高2.4mg
/kgの単回投与後又は2週間にわたる5mg/kgの隔日の複数回投与後に心血管効果
(ECG又は血圧)は観察されなかった。血液漏出の徴候又は他のCV関連所見はなかっ
た。
【0251】
実施例17:抗薬物抗体効果のリスク
GFTX3b_IL-2-H1-D49Aの選択的プロファイルに対する抗薬物抗体効
果のリスクを決定するため、用量反応においてFc架橋結合抗体の存在下でシグナル伝達
アッセイを行った。
【0252】
ヒトPBMCをRPMI完全培地に3×106細胞/mlで再懸濁し、3×105細胞
/ウェル(100ul)でプレーティングして2時間静置した。別個の96ウェルプレー
トに、最高濃度のProleukin、GFTX3b_IL-2-H1-D49A及びG
FTX3b_IL-2-H1-D49A+モル過剰のヤギF(ab’)2抗ヒトIgG、
ヤギF(ab’)2抗ヒトIgG単独(Southern Biotech カタログ番
号2042-01、ロット番号J1715-PI77)、及び培地中2×最終濃度で滴定
曲線を作成した。全ての条件について、最高濃度のIL2当量は200nMであった。最
高濃度を調製し、Proleukin及びGFTX3b_IL-2-H1-D49Aにつ
いて、最高濃度の下に10pt希釈曲線を(1:2希釈物を間に入れて)作成した。加え
て、200nM(IL-2当量)のGFTX3b_IL-2-H1-D49A最高濃度及
びモル濃度に基づき0.5×、1×、2.5×、5×及び10×GFTX3b_IL-2
-H1-D49Aの抗ヒトIgで滴定曲線を作成した。各条件について最高濃度の下に1
0pt、1:10希釈曲線を作成した。抗ヒトIgG+GFTX3b_IL-2-H1-
D49A滴定を調製し、室温で20分間インキュベートした後、PBMCに加えた。
【0253】
調製した条件(又は媒体単独)を100ul/ウェルの最終容積となるようにPBMC
に加えた。PBMCを37℃、5%CO
2で25分間刺激した。インキュベーション後、
細胞を速やかに固定し、バーコード付加の処理をし、表面に関して染色し、透過処理し、
pSTAT5及びFoxp3に関して染色した。細胞をCytofで読み取り、データを
FlowJoソフトウェアで分析した。漸増濃度の架橋剤抗ヒトIgG抗体はGFTX3
b_IL-2-H1-D49Aの選択的活性に干渉しない(
図18)。
【0254】
実施例18:種々の自己免疫性患者において維持された選択的シグナル伝達
自己免疫性患者からのヒトPBMC(Hemacare Corp)細胞を無血清試験
培地に静置し、各ウェルに加えた。別個のプレートに、最高濃度のProleukin又
はGFTX3b_IL-2-H1-D49Aのいずれかを作り、培地中4×最終濃度で滴
定曲線を作成した。最高濃度(200nMのIL-2当量)を調製し、最高濃度のGFT
X3b_IL-2-H1-D49A又は天然ヒトIL-2(Proleukin)のいず
れかの下に4pt希釈曲線(又はADについて10pt)を作成した。作成した条件をウ
ェルに加え、37℃で25分間インキュベートした。25分後、細胞を固定し、表面マー
カーで染色し、透過処理し、及び細胞内抗体(pSTAT5、Foxp3)で染色して、
Cytofで(抗体は全てFluidigmから)製造者の指示に従い取得した。Flo
wJoソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0255】
GFTX3b_IL-2-H1-D49Aは、1型糖尿病、SLE、白斑及びアトピー
性皮膚炎を含めた幾つかの試験した自己免疫性適応疾患においてCD4 T
con及びC
D8 T
effよりも優先的にT
regに選択的であった(
図19)。インビトロでのI
L-2Rシグナル伝達効力はT
con及びT
effで低下したが、T
regでは低下しな
かった。
【0256】
実施例19:ヒトPBMCにおけるTエフェクター細胞よりも優先的なTregにおける
シグナル伝達選択性
PBMC細胞をRPMI培地に静置し、各ウェルに加えた。ウェルにIL-2グラフト
D49A又は天然ヒトIL-2のいずれかを加え、37℃で25分間インキュベートした
。25分後、細胞を1.6%ホルムアルデヒドで固定し、洗浄して、表面マーカーで染色
した。室温で30分後、試料を洗浄し、再懸濁した細胞ペレットを-20℃メタノールで
透過処理し、洗浄して、STAT5及びDNAインターカレーターで染色した。細胞をC
ytofにかけ、データをFlowJoソフトウェアで分析した。
【0257】
GFTX3b_IL-2D49Aは、等モル濃度のIL-2でTエフェクターよりも優
先的なTreg上でのシグナル伝達に関してProleukinと比べてより高い特異性
を示した(
図20)。
【0258】
本明細書に記載される例及び実施形態は例示を目的とし、それらを踏まえた様々な修正
又は変更が当業者に提案され得るとともに本願の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範
囲に包含されるべきであることが理解される。本明細書に引用される刊行物、配列受託番
号、特許、及び特許出願は全て、本明細書によってあらゆる目的から全体として参照によ
り援用される。
標的に対する前記CDRの結合特異性が前記グラフト化されたIL2分子によって10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は100%低下する、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
標的に対する前記CDRの結合特異性が前記グラフト化されたIL2分子の存在下で10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は100%保持される、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
前記修飾Fc領域が、D265A/P329A、D265A/N297A、L234/L235A、P329A/L234A/L235A、及びP329G/L234A/L235Aの1つ以上から選択される突然変異の組み合わせを含む、請求項19に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
本明細書に記載される例及び実施形態は例示を目的とし、それらを踏まえた様々な修正又は変更が当業者に提案され得るとともに本願の趣旨及び範囲並びに添付の特許請求の範囲に包含されるべきであることが理解される。本明細書に引用される刊行物、配列受託番号、特許、及び特許出願は全て、本明細書によってあらゆる目的から全体として参照により援用される。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[発明1]
(a)相補性決定領域(CDR)HCDR1、HCDR2、HCDR3を含む、重鎖可変領域(VH);及び
(b)LCDR1、LCDR2、LCDR3を含む、軽鎖可変領域(VL);及び
(c)VH又はVLのCDRにグラフト化されたインターロイキン2(IL2)分子
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明2]
前記IL2分子が重鎖CDRにグラフト化されている、発明1に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明3]
前記重鎖CDRが、相補性決定領域1(HCDR1)、相補性決定領域2(HCDR2)、及び相補性決定領域3(HCDR3)から選択される、発明2に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明4]
前記IL2分子がHCDR1にグラフト化されている、発明3に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明5]
前記IL2分子が軽鎖CDRにグラフト化されている、発明1に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明6]
前記軽鎖CDRが、相補性決定領域1(LCDR1)、相補性決定領域2(LCDR2)、及び相補性決定領域3(LCDR3)から選択される、発明5に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明7]
前記IL2分子が、低親和性IL2受容体に対する前記IL2分子の親和性を低下させる突然変異を含む、発明1~6のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明8]
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質によるTreg細胞増殖の刺激が天然IL2又はProleukin(登録商標)よりも大きい、発明1~7のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明9]
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質によるCD8 Tエフェクター細胞増殖の刺激が天然IL2又はProleukin(登録商標)よりも小さい、発明1~8のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明10]
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質が天然IL2又はProleukin(登録商標)よりも長い半減期を有する、発明1~9のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明11]
前記IL2分子が配列番号4からなる、発明1~10のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明12]
前記IL2分子が配列番号6からなる、発明1~10のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明13]
IgGクラス抗体重鎖を更に含む、発明1~12のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明14]
前記IgGクラス抗体重鎖が、IgG1、IgG2、又はIgG4から選択される、発明13に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明15]
標的に対する前記CDRの結合特異性が前記グラフト化されたIL2分子によって10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は100%低下する、発明1~14のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明16]
標的に対する前記CDRの結合特異性が前記グラフト化されたIL2分子の存在下で10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は100%保持される、発明1~15のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明17]
前記CDRの結合特異性が前記IL2分子の結合特異性と異なる、発明1~16のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明18]
前記CDRの結合特異性が非ヒト抗原に対するものである、発明1~17のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明19]
前記非ヒト抗原がウイルスである、発明18に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明20]
前記ウイルスが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)である、発明19に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明21]
前記RSVが、RSVサブグループA及びRSVサブグループBから選択される、発明20に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明22]
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質の前記抗体足場部分がヒト化又はヒトである、発明1~21のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明23]
(i)(a)配列番号17のHCDR1、(b)配列番号18のHCDR2、(c)配列番号19のHCDR3を含む重鎖可変領域及び(d)配列番号30のLCDR1、(e)配列番号31のLCDR2、及び(f)配列番号32のLCDR3を含む軽鎖可変領域;
(ii)(a)配列番号43のHCDR1、(b)配列番号44のHCDR2、(c)配列番号45のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号56のLCDR1、(e)配列番号57のLCDR2、及び(f)配列番号58のLCDR3を含む軽鎖可変領域;
(iii)(a)配列番号69のHCDR1、(b)配列番号70のHCDR2、(c)配列番号71のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号82のLCDR1、(e)配列番号83のLCDR2、及び(f)配列番号84のLCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(iv)(a)配列番号95のHCDR1、(b)配列番号96のHCDR2、(c)配列番号97のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号108のLCDR1、(e)配列番号109のLCDR2、及び(f)配列番号110のLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明24]
(i)配列番号20を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号33を含む軽鎖可変領域(VL);
(ii)配列番号46を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号59を含む軽鎖可変領域(VL);
(iii)配列番号72を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号85を含む軽鎖可変領域(VL);又は
(iv)配列番号98を含む重鎖可変領域(VH)、及び配列番号111を含む軽鎖可変領域(VL)
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明25]
低下したエフェクター機能に対応する修飾Fc領域を更に含む、発明1~24のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明26]
前記修飾Fc領域が、D265A、P329A、P329G、N297A、L234A、及びL235Aの1つ以上から選択される突然変異を含む、発明25に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明27]
前記修飾Fc領域が、D265A/P329A、D265A/N297A、L234/L235A、P329A/L234A/L235A、及びP329G/L234A/L235Aの1つ以上から選択される突然変異の組み合わせを含む、発明26に記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明28]
配列番号17のHCDR1、配列番号18のHCDR2、配列番号19のHCDR3、配列番号30のLCDR1、配列番号31のLCDR2、配列番号32のLCDR3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質であって、Proleukin(登録商標)と比較したときNK細胞の拡大に対する刺激が低い抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明29]
配列番号43のHCDR1、配列番号44のHCDR2、配列番号45のHCDR3、配列番号56のLCDR1、配列番号57のLCDR2、配列番号58のLCDR3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質であって、Proleukin(登録商標)と比較したときNK細胞の拡大に対する刺激が低い抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明30]
配列番号69のHCDR1、配列番号70のHCDR2、配列番号71のHCDR3、配列番号82のLCDR1、配列番号83のLCDR2、配列番号84のLCDR3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質であって、Proleukin(登録商標)と比較したときNK細胞の拡大に対する刺激が低い抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明31]
配列番号95のHCDR1、配列番号96のHCDR2、配列番号97のHCDR3、配列番号108のLCDR1、配列番号109のLCDR2、配列番号110のLCDR3、突然変異D265A/P329Aを含む修飾Fc領域を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質であって、Proleukin(登録商標)と比較したときNK細胞の拡大に対する刺激が低い抗体サイトカイングラフト化タンパク質。
[発明32]
(i)配列番号23の重鎖及び配列番号36の軽鎖;
(ii)配列番号49の重鎖及び配列番号62の軽鎖;
(iii)配列番号75の重鎖及び配列番号88の軽鎖;又は
(iv)配列番号101の重鎖及び配列番号114の軽鎖
を含む抗体サイトカイングラフト化タンパク質をコードする単離核酸。
[発明33]
抗体サイトカイングラフト化タンパク質の産生に好適な組換え宿主細胞であって、前記タンパク質の重鎖及び軽鎖ポリペプチド、及び任意選択で分泌シグナルをコードする発明32に記載の核酸を含む、組換え宿主細胞。
[発明34]
哺乳類細胞株である、発明33に記載の組換え宿主細胞。
[発明35]
前記哺乳類細胞株がCHO細胞株である、発明34に記載の組換え宿主細胞。
[発明36]
発明1~31のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質と薬学的に許容可能な担体とを含む医薬組成物。
[発明37]
それを必要としている個体の免疫関連障害の治療方法であって、発明1~31のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は発明36に記載の医薬組成物の治療有効量を前記個体に投与することを含む方法。
[発明38]
前記免疫関連障害が、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、白斑、慢性移植片対宿主病(cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(pGvHD)、HIV誘発性脈管炎、円形脱毛症、全身性硬化症モルフェア、及び原発性抗リン脂質症候群からなる群から選択される、発明37に記載の方法。
[発明39]
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は医薬組成物が別の治療剤と併用して投与される、発明37又は38に記載の方法。
[発明40]
前記治療剤が別の抗体サイトカイングラフト化タンパク質である、発明39に記載の方法。
[発明41]
それを必要としている患者のTreg細胞を拡大する方法であって、発明1~31のいずれか一つに記載の抗体サイトカイングラフト化タンパク質又は発明36に記載の医薬組成物を前記患者に投与することを含む方法。
[発明42]
前記Treg細胞が拡大され、且つCD8 Tエフェクター細胞が拡大されない、発明41に記載の方法。
[発明43]
前記Treg細胞が拡大され、且つNK細胞が拡大されない、発明41又は42に記載の方法。
[発明44]
免疫関連障害の治療における、
(i)(a)配列番号17のHCDR1、(b)配列番号18のHCDR2、(c)配列番号19のHCDR3を含む重鎖可変領域及び(d)配列番号30のLCDR1、(e)配列番号31のLCDR2、及び(f)配列番号32のLCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(ii)(a)配列番号43のHCDR1、(b)配列番号44のHCDR2、(c)配列番号45のHCDR3を含む重鎖可変領域;及び(d)配列番号56のLCDR1、(e)配列番号57のLCDR2、及び(f)配列番号58のLCDR3を含む軽鎖可変領域
を含む免疫関連障害の治療における抗体サイトカイングラフト化タンパク質の使用。
[発明45]
前記免疫関連障害が、1型糖尿病、全身性エリテマトーデス、白斑、慢性移植片対宿主病(cGvHD)、急性移植片対宿主病予防(pGvHD)、HIV誘発性脈管炎、円形脱毛症、全身性硬化症モルフェア、及び原発性抗リン脂質症候群からなる群から選択される、発明44に記載の使用。
[発明46]
前記抗体サイトカイングラフト化タンパク質が別の治療剤と併用して投与される、発明44又は45に記載の使用。