(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130527
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】脳卒中および関係する凝固性障害の処置のためのトロンビン阻害剤
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20220830BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20220830BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20220830BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220830BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220830BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220830BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220830BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220830BHJP
A61K 38/36 20060101ALI20220830BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C07K7/08
C07K7/06
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/36
A61P9/10
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022100650
(22)【出願日】2022-06-22
(62)【分割の表示】P 2019531876の分割
【原出願日】2017-12-15
(31)【優先権主張番号】2016905231
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】500026418
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー
(71)【出願人】
【識別番号】519223745
【氏名又は名称】ザ ハート リサーチ インスティテュート リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】521230252
【氏名又は名称】アイビーエムシー ― インスティテュート デ バイオロジア モレキュラー エ セルラー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペイン リチャード ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン ショーン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】バルボサ ペレイラ ペドロ ホセ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】脳卒中及び関係する凝固性障害の処置に、フィブリン血餅形成及び関係するトロンビン活性に、ならびにトロンビンによるフィブリノーゲンの切断を阻害するための、トロンビン阻害剤を提供する。
【解決手段】トロンビンのエキソサイトIIに結合する特定のアミノ酸配列を有するペプチドであって、硫酸化チロシン残基を有するペプチド、及び上記のペプチドのN末端又はC末端にトロンビン活性部位に結合するペプチドを連結した、トロンビン阻害剤を提供する。本阻害剤はモル等量ベースでヒルジンより少なくとも20%短い凝固時間を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示されるアミノ酸配列を含むペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、トロンビンのエキソサイトIIに結合する、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドは、血餅関連フィブリン、好ましくはフィブリノーゲンγ’のトロンビンのエキソサイトIIへの結合を競合的に阻害する、請求項1~2のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項4】
配列番号1aまたは配列番号1bの少なくとも1つの残基は、硫酸化チロシン残基である、請求項1~3のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項5】
配列番号1aにおける11位のチロシンは、硫酸化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項6】
配列番号1bにおける4位のチロシンは、硫酸化されている、または配列番号1bにおける7位のチロシンは、硫酸化されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示されるアミノ酸配列からなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のペプチド。
【請求項8】
式1:
A-B
のトロンビン阻害剤であって、
Aは、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチドであり;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するために前記トロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10kの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
AおよびBは、Bが前記トロンビン活性部位に結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている、トロンビン阻害剤。
【請求項9】
Aは、BのN末端に位置する、請求項8に記載の阻害剤。
【請求項10】
Bは、AのN末端に位置する、請求項8に記載の阻害剤。
【請求項11】
式2:
A-B-C
のトロンビン阻害剤であって、
Aは、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチドであり;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するために前記トロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10kの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
Cは、トロンビンのエキソサイトIに結合するための配列番号11a~11cの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
A、B、およびCは、Bが前記トロンビン活性部位に結合し、CがトロンビンのエキソサイトIに結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている、トロンビン阻害剤。
【請求項12】
Aは、CのN末端に位置する、請求項11に記載の阻害剤。
【請求項13】
Cは、AのN末端に位置する、請求項11に記載の阻害剤。
【請求項14】
式3:
A-C-B
のトロンビン阻害剤であって、
Aは、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチドであり;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するために前記トロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10kの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
Cは、トロンビンのエキソサイトIに結合するための配列番号11a~11cの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
A、B、およびCは、Bが前記トロンビン活性部位に結合し、CがトロンビンのエキソサイトIに結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている、トロンビン阻害剤。
【請求項15】
Aは、BのN末端に位置する、請求項14に記載の阻害剤。
【請求項16】
Bは、AのN末端に位置する、請求項14に記載の阻害剤。
【請求項17】
式4:
B-A-C
のトロンビン阻害剤であって、
Aは、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチドであり;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するために前記トロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10kの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
Cは、トロンビンのエキソサイトIに結合するための配列番号11a~11cの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
A、B、およびCは、Bが前記トロンビン活性部位に結合し、CがトロンビンのエキソサイトIに結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている、トロンビン阻害剤。
【請求項18】
Bは、CのN末端に位置する、請求項17に記載の阻害剤。
【請求項19】
Cは、BのN末端に位置する、請求項17に記載の阻害剤。
【請求項20】
前記阻害剤は、前記ペプチドおよびヒルジンのモル等量ベースでヒルジンより少なくとも20%短い出血時間を提供する、請求項8~19のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項21】
前記阻害剤は、前記ペプチドおよびヒルジンのモル等量ベースでヒルジンより少なくとも20%短い凝固時間を提供する、請求項8~19のいずれか一項に記載の阻害剤。
【請求項22】
薬学的に有効なキャリヤ、希釈剤、または賦形剤と一緒に、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチドまたは請求項8~21のいずれか一項に記載のトロンビン阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項1~7のペプチドまたは請求項8~21のいずれか一項に記載のトロンビン阻害
剤をコードするヌクレオチド配列を有する核酸。
【請求項24】
請求項23に記載の核酸を含むベクターまたは発現構築物。
【請求項25】
請求項23に記載の核酸または請求項24に記載のベクターもしくは構築物を含む細胞。
【請求項26】
前記細胞は、チロシン残基の硫酸化を可能にするチロシルプロテインスルホトランスフェラーゼを含む、請求項25に記載の細胞。
【請求項27】
血栓溶解療法において使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチドまたは請求項8~21のいずれか一項に記載のトロンビン阻害剤または請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記血栓溶解療法は、tPA療法を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のペプチドまたは請求項8~21のいずれか一項に記載のトロンビン阻害剤または請求項22に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳卒中および関係する疾患の処置に、フィブリン血餅形成および関係するトロンビン活性に、ならびにトロンビンによるフィブリノーゲンの切断を阻害するためのまたは修飾するための化合物、特にペプチドおよびポリペプチドの調製に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書におけるいかなる先行技術への参照も、この先行技術が、オーストラリアまたは任意の他の管轄区域においてありふれた一般知識の一部を形成するということの認識または何らかの暗示として解釈されず、また解釈されるべきではない。
【0003】
虚血性脳卒中は、脳循環内での血餅または塞栓の発生によって引き起こされ、世界的には3番目に多い死因である(World Health Organization,2014)。脳卒中イベントは、さらに、世界中で、能力障害になってしまう主な原因になっており、時間がかかり、多資源投入型で、かつ費用のかかるリハビリテーションプログラムに関連する(World Health Organization,2014)。
【0004】
現在、虚血性の脳の迅速な再灌流を促進し、それによって脳卒中イベントを最小限にする脳卒中のための唯一の承認されている薬理学的療法は、血栓溶解剤である組換え組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)の静脈内(i.v.)送達である。tPAは、プラスミノーゲンを活性化してプラスミンにし、プラスミンは、続いて、フィブリンおよび他の血餅関連タンパク質を分解し、それによって、冒された血管を通る血流を改善する(Wardlaw JM,et al.,2012)。
【0005】
臨床での使用が広く普及しているにもかかわらず、tPAベースの療法は、効能および適用の両方において多くの限界を有する。tPA療法後に動脈が完全に再疎通する患者は、わずか20~30%であり、これらの患者のうちの20~30%は、再閉塞を経験するであろうということが特に懸念されている(Alexandrov AV,Grotta
JC.,2002;Rubiera M,et al.,2005)。この問題は、tPAによって誘導されるプラスミンが血餅中のフィブリンを分解するものの、フィブリノーゲンのフィブリンへの切断のための活性を保持する血餅関連トロンビンから生じると考えられる。
【0006】
さらなる懸念は、tPA療法に関連する頭蓋内出血(ICH)の発生率の増加が観察されていることであり、これは、血栓溶解療法のために与えられるtPAの用量を事実上制限する(Molina CA,Saver JL.,2005)。
【0007】
tPA療法の深刻な限界は、改善された血栓溶解療法の開発への新たな関心の引き金となった。
【0008】
トロンビンは、主に不溶性のフィブリンの産生を介した血餅形成において中心的な役割を果たす。そのため、トロンビン阻害剤は、tPAと共に補助療法として使用するための有望な候補として現れた。
【0009】
現在までに、間接トロンビン阻害剤であるヘパリン(Von Kummer R 2004;Jang I-K 1999)ならびに直接トロンビン阻害剤(DTI)であるヒルジン(Karabiyikoglu M 2004)およびアルガトロバン(Barreto AD 2012)が調査された。血管再疎通における全体的な改善が観察された
一方、出血および徴候的なICHの危険性が、これらの共同療法により増加した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
虚血性脳卒中の予後を改善するために使用することができるトロンビン阻害剤が必要とされる。
【0011】
虚血性脳卒中の予後を改善するためにtPAと共に使用することができるトロンビン阻害剤もまた、必要とされる。
【0012】
他の血栓形成性疾患または凝固性障害を改善するために使用することができるトロンビン阻害剤もまた、必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記に言及される必要または限界の1つまたはそれ以上について扱おうと試みるものであり、一実施形態では、配列番号1aにおいて示されるアミノ酸配列:
PXYXXXZZPXYZZZ
または配列番号1bにおいて示されるアミノ酸配列:
ZXZYZXYZXXX
を含むペプチドであって、
Zは、D、E、Q、S、またはPであり、
Xは、任意のアミノ酸である、ペプチドを提供する。
【0014】
ペプチドは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示されるアミノ酸配列からなってもよい。
【0015】
好ましくは、ペプチドは、トロンビンのエキソサイトIIに結合する。
【0016】
より好ましくは、ペプチドは、血餅関連フィブリン、好ましくはフィブリノーゲンγ’のトロンビンのエキソサイトIIへの結合を競合的に阻害する。
【0017】
一実施形態では、ペプチドは、第V因子、第VIII因子、Gp1bα、コンドロイチン硫酸、およびヘパリンからなる群から選択される化合物のトロンビンのエキソサイトIIへの結合を阻害してもよい。
【0018】
典型的に、ペプチドの少なくとも1つの残基は、硫酸化チロシン残基である。
【0019】
好ましくは、配列番号1aにおける11位のチロシンは、硫酸化されている。配列番号1aにおける3位のチロシンは、硫酸化されていなくてもよい。
【0020】
好ましくは、配列番号1bにおける4位のチロシンは、硫酸化されている。配列番号1bにおける7位のチロシンは、硫酸化されていなくてもよい。
【0021】
好ましくは、配列番号1bにおける7位のチロシンは、硫酸化されている。配列番号1bにおける4位のチロシンは、硫酸化されていなくてもよい。
【0022】
別の実施形態では、配列番号1aにおける11位のチロシンは、硫酸化されており、3位のチロシンは、硫酸化されている。
【0023】
別の実施形態では、配列番号1bにおける4位のチロシンは、硫酸化されており、7位
のチロシンは、硫酸化されている。
【0024】
別の実施形態では、式1のトロンビン阻害剤:
A-B
であって、
Aは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示される配列を有するペプチドであり、上記に記載される1つまたはそれ以上の結合特徴を有し;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するためにトロンビン活性部位に結合するための配列番号10a:
LTYTD
または配列番号10b:
VVYTD
または配列番号10c:
DPGRRLGE
または配列番号10d:
VAEPKM
または配列番号10e:
EIPGIR
または配列番号10f:
PTAKPR
または配列番号10g:
RALHVK
または配列番号10h:
EPAKPR
または配列番号10i:
PRGGPK
または配列番号10j:
TLISAR
において示される配列を有するペプチドであり;
AおよびBは、Bがトロンビン活性部位に結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている、トロンビン阻害剤が提供される。
【0025】
領域Aは、BのN末端に位置してもよい。別の実施形態では、Bは、AのN末端に位置する。
【0026】
別の実施形態では、式2のトロンビン阻害剤:
A-B-C
であって、
Aは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示される配列を有するペプチドであり、上記に記載される1つまたはそれ以上の結合特徴を有し;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するためにトロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10jの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
Cは、トロンビンのエキソサイトIに結合するための配列番号11a:
DFEEIPEEYLQ
または配列番号11b:
EDYAAIEASLSETF
または配列番号11c:
PFDFEAIPEEYLDDES
において示される配列を有するペプチドであり;
A、B、およびCは、Bがトロンビン活性部位に結合し、CがトロンビンのエキソサイトIに結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている、トロンビン阻害剤が提供される。
【0027】
領域Aは、CのN末端に位置してもよい。別の実施形態では、Cは、AのN末端に位置する。
【0028】
別の実施形態では、式3のトロンビン阻害剤:
A-C-B
であって、
Aは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示される配列を有するペプチドであり、上記に記載される1つまたはそれ以上の結合特徴を有し;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するためにトロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10jの1つの配列を有するペプチドであり;
Cは、トロンビンのエキソサイトIに結合するための配列番号11a~11cの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
A、B、およびCは、Bがトロンビン活性部位に結合し、CがトロンビンのエキソサイトIに結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている、トロンビン阻害剤が提供される。
【0029】
領域Aは、BのN末端に位置してもよい。別の実施形態では、Bは、AのN末端に位置する。
【0030】
別の実施形態では、式4のトロンビン阻害剤:
B-A-C
であって、
Aは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示される配列を有するペプチドであり、上記に記載される1つまたはそれ以上の結合特徴を有し;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するためにトロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10jの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
Cは、トロンビンのエキソサイトIに結合するための配列番号11a~11cの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
A、B、およびCは、Bがトロンビン活性部位に結合し、CがトロンビンのエキソサイトIに結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている、トロンビン阻害剤が提供される。
【0031】
領域Bは、CのN末端に位置してもよい。別の実施形態では、Cは、BのN末端に位置する。
【0032】
一実施形態では、式1または式2または式3または式4のペプチドは、ペプチドおよびヒルジンのモル等量ベースでヒルジンより少なくとも20%短い凝固時間を提供する。
【0033】
好ましくは、式1または式2または式3または式4のペプチドは、ペプチドおよびヒルジンのモル等量ベースでヒルジンより少なくとも20%短い出血時間を提供する。
【0034】
別の実施形態では、上記に概論的に記載される配列番号1aもしくは配列番号1bのペプチドまたは上記に記載される式1もしくは式2もしくは式3もしくは式4のペプチドお
よび薬学的に有効なキャリヤ、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0035】
別の実施形態では、上記に概論的に記載される配列番号1aもしくは配列番号1bのペプチドまたは上記に記載される式1もしくは式2もしくは式3もしくは式4のペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する核酸、好ましくはcDNAならびに前記核酸を含有するベクター、発現構築物、および細胞が提供される。
【0036】
好ましくは、細胞は、チロシンの硫酸化を可能にするスルホトランスフェラーゼを含有する。
【0037】
一実施形態では、スルホチロシンは、アンバーコドン抑制によって本発明によるペプチドの中に遺伝学的に組み込まれる。
【0038】
別の実施形態では、血栓溶解療法において使用するための、上記に概論的に記載される配列番号1aもしくは配列番号1bのペプチドまたは上記に記載される式1もしくは式2もしくは式3もしくは式4のペプチドまたは上記に記載される医薬組成物が提供される。
【0039】
好ましくは、血栓溶解療法は、tPA療法を含む。
【0040】
より好ましくは、血栓溶解療法は、虚血性脳卒中の予後を最小化するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】硫酸化されたトロンビン阻害剤が、強力なインビボ抗凝固活性を持つことを示す図である。a)様々な濃度のヒルジンおよび二重に硫酸化されたトロンビン阻害剤によるインビトロAPTTアッセイ;b)ヒルジンおよび硫酸化されたトロンビン阻害剤(ともに1mg/kg;i.v.)の投与の後の血栓体積の低下;c)尾出血モデルにおけるヒルジン(0.5mg/kg)および硫酸化されたトロンビン阻害剤ペプチド(0.5mg/kg)の等モル濃度の送達後の出血時間;d)血管を針により損傷させた後のヒルジンおよび硫酸化されたトロンビン阻害剤(ともに1mg/kg;i.v.)の投与の後のフィブリンの低下;e)血管を針により損傷させた後のヒルジン(1mg/kg;i.v.)および硫酸化されたトロンビン阻害剤(1mg/kg;i.v.)の投与による血小板血栓(赤色)およびフィブリン(黄色)の低下を示す代表的な共焦点画像。
【
図2】生の阻害データを添えた、硫酸化されたトロンビン阻害剤の阻害定数(Ki)の表を示す図である。
【
図3】A)A
Aa(31~61)断片88の分析用UPLC:R
t1.50分(3分間0~60% B、溶出液B、γ=230nm);B)88の質量スペクトル(ESI+):(中性)C
143H
225N
39O
56S
2についての計算質量[M]:3449.5,[M+2H]
2+:1777.7(100%),[M+3H]
3+:1185.5(100.0%);実測質量(ESI+)[M+2H]
2+:1778.0,[M+3H]
3+:1185.6.
【
図4】A)A
Aa(1~30)断片87の分析用UPLC:R
t1.55分(3分間0~60% B、溶出液B、γ=230nm);B)87の質量スペクトル(ESI+):(中性)C
142H
210N
33O
61Sについての計算質量[M]:3386.4,[M+3H]
3+:1150.8(100%),[M+4H]
4+:863.6(100.0%);実測質量(ESI+)[M+3H]
3+:1151.0,[M+4H]
4+:863.5.
【
図5】A)対応するライゲーション産物95を得るためのC-末端A
Aa(31~61)断片87およびA
Aa(1~30)ペプチドチオエステル86の間のライゲーション反応の粗UPLC-MS分析(λ=230nm)。95について計算した質量(相対存在量100%)[M+4H]
4+:1683.2,[M+5H]
5+:1346.7,実測質量(ESI+)m/z:[M+4H]
4+:1683.3,[M+5H]
5+:1347.1.B)対応する二硫酸A
Aa(86)を得るための16時間後のライゲーション産物95のインサイツ脱硫反応の粗UPLC-MS分析。86について計算した質量(相対存在量100%)[M+4H]
4+:1675.2,[M+5H]
5+:1340.4,[M+6H]
6+:1117.1,実測質量(ESI+)m/z:[M+4H]
4+:1675.8,[M+5H]
5+:1340.9,[M+6H]
6+:1117.3.
【
図6】A)二重に硫酸化されたA
Aa(86)の分析用UPLC:R
t1.89分(3分間0~60% B、溶出液B、γ=214nm);B)86の質量スペクトル(ESI+):プロトン化(中性)C
275H
416N
72O
119S
2についての計算質量[M]:6696.8,[M+3H+Na]
4+:1680.7(100%),[M+3H+2Na]
5+:1349.2(100.0%);実測質量(ESI+)[M+3H+Na]
4+:1681.1,[M+3H+2Na]
5+:1349.5.[C
275H
416N
72O
119S
2-H]
-について計算したHRMS(MALDI)6697.789(平均),実測6698.295.
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、特に、凝固カスケードの内因性構成成分のトロンビンのエキソサイトIIへの結合の阻害に関する。トロンビンエキソサイトIIに結合し、かつこれらの構成成分のうちのいくつかを競合的に阻害するペプチドが、本明細書において開示される。
【0043】
これらのペプチド阻害剤は、血餅関連トロンビンによるフィブリン形成を阻害するために利用されてもよく、それによって、tPA療法に関連する再疎通に関する問題のうちのいくつかを扱うことが提唱される。ペプチド阻害剤はまた、トロンビン活性部位またはトロンビンエキソサイトIに結合し、かつその機能をブロックする他のペプチドの結合親和性および/または機能を修飾するために使用されてもよい。
【0044】
A.定義
「トロンビン」は、フィブリノーゲンのフィブリンへの変換を通して止血において中心的な役割を有するセリンプロテアーゼである。
【0045】
「トロンビン活性部位」は、フィブリノーゲン、フィブリノペプチド、第V因子、第VIII因子、プロテアーゼ活性化受容体(PAR)、糖タンパク質V、第XI因子、第XIII因子、ADAMTS13、プロテインCを含む一連の基質を切断する触媒部位である。
【0046】
「トロンビンエキソサイトII」(「ヘパリン結合エキソサイト」としても知られている)は、基質および補因子、特にフィブリノーゲン、Gp1bα、およびヘパリンの結合に影響を及ぼす、正に荷電している認識表面である。トロンビンエキソサイトIIは、残基R93、R101、R126、K236、K240、およびR233を含んでいてもよい。
【0047】
「トロンビンエキソサイトI」(「フィブリノーゲン結合エキソサイト」としても知られている)は、基質および補因子、特にフィブリノーゲン、第V因子、第VIII因子、ADAMTS13、第XIII因子、PAR-1、第XI因子、およびトロンボモジュリンの結合に影響を及ぼす、正に荷電している認識表面である。トロンビンエキソサイトIは、残基K36、H71 R73、R75、Y76、およびR77を含んでいてもよい。
【0048】
トロンビン活性部位ならびにエキソサイトIおよびIIを含むトロンビンは、Lane
D.et al.2005 Blood J.106:2605-2612において概
論的に議論される。
【0049】
「硫酸化チロシン残基」および「チロシン-O-硫酸」は、硫黄含有基のチロシンのヒドロキシル側鎖への移動から生じる残基である。残基は、チロシルプロテインスルホトランスフェラーゼ(TPST)の作用から生じてもよい。
【0050】
「出血時間」は、一般に、出血を停止させるために必要とされる時間を指す。それは、血小板機能を判断するために臨床的に利用されてきた。出血時間を判断するための一連のアッセイは、当技術分野において知られている:全般的にGreene T.K.et al.2010 J.Thromb and Haem 8:2820-2822;Liu Y.,et al.2012 WJEM 2:30-36;Broze G.J.et.al 2001 Thromb Haemost 85:747-748を参照。
【0051】
「凝固時間」は、一般に、フィブリン血餅の形成に必要とされる時間を指す。典型的に、凝固時間は、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)試験によって判断される。
【0052】
「ヒルジン」は、65アミノ酸から構成される低分子量ペプチド(7kDa)であり(Dodt et al.,1984 FEBS Lett.,165:180-4)、これは、エキソサイトIおよびトロンビン活性部位に結合することによって血液が凝固するのを予防する(Stone and Hofsteenge,1986 Biochem,25:4622-28)。
【0053】
「含む」ならびに「含むこと(comprising)」、「含む(comprises)」、および「含まれる(comprised)」などのようなその用語の変形は、さらなる付加物、構成要素、整数、またはステップを除外することを意図するものではない。
【0054】
B.エキソサイトII阻害剤
一実施形態では、配列番号1aにおいて示されるアミノ酸配列
PXYXXXZZPXYZZZ
を含むまたはそれからなるペプチドであって、
Zは、DまたはEであり、
Xは、任意のアミノ酸である、ペプチドが提供される。
【0055】
ペプチドは、
配列番号2(PBYXXGZZPXYZZZ ZはD/Eであり、BはK/R/Hであり、Xは任意のアミノ酸である。)
配列番号3(PQYJXGZZPOYZZZ ZはD/Eであり、JはA/T/SまたはGであり、OはSまたはTであり、Xは任意のアミノ酸である。)
配列番号4(PQYAXGZZPOYZZZ ZはD/Eであり、OはS/Tであり、Xは任意のアミノ酸である。)
配列番号5(PQYAXGZZPOYZZZXXXXZXX ZはD/Eであり、OはS/Tであり、Xは任意のアミノ酸である。)
配列番号6(PQYAXGZZPOYZZZ(D/T)(D/G/F)(D/A)(S/D/E)(D/E)(K/P/S)(L/V) ZはD/Eであり、OはS/Tであり、Xは任意のアミノ酸である。)
配列番号7(PQYAXGZZPOYZZZDDDDD(K/P/S)(L/V) ZはD/Eであり、OはS/Tであり、Xは任意のアミノ酸である。)
配列番号8(PQYAXGZZPOYZZZDDDEE(K/P/S)(L/V) Zは
D/Eであり、OはS/Tであり、Xは任意のアミノ酸である。)
配列番号8a(PQYAPGDEPSYDED)
配列番号8b(PQYAPGEEPSYDED)
配列番号8c(PQYTHGEEPEYDED)
配列番号8d(PQYAQGEEPTYDED)
配列番号8e(PQYARGDVPTYDEE)
において示される配列を有していてもよい。
【0056】
別の実施形態では、配列番号1bにおいて示されるアミノ酸配列
ZXZYZXYZXXX
を含むまたはそれからなるペプチドであって、
Zは、D、E、Q、S、またはPであり、
Xは、任意のアミノ酸である、ペプチドが提供される。
【0057】
ペプチドは、
配列番号12(DADYDEYEEDG)
配列番号13(DGDYDEYDNDE)
配列番号14(QGDYDEYDQDE)
配列番号15(DADYDDYDEEG)
配列番号16(DVSYDEYEDNG)
配列番号17(QDDYDEYDADE)
配列番号18(ETDYDEYEENE)
配列番号19(ESDYDTYPDDN)
配列番号20(DDEYDMYESDG)
配列番号21(ETSYEEYPDDS)
配列番号22(ESDYDTYPDDN)
配列番号23(ERDDEDYDNSN)
配列番号24(ZXZYZZYZZZZ ZはD/Eであり、XはT/M/E/S/D/G/N/Pである)
配列番号25 ZSZYZTYPDDN ZはD/Eである)
配列番号26 ZDZYZMYESDG ZはD/Eである)
配列番号27 ZTSYZEYPDDS ZはD/Eである)
配列番号28 ZSZYZTYPDDN ZはD/Eである)
において示される配列を有していてもよい。
【0058】
一実施形態では、ペプチドは、約35アミノ酸以上、好ましくは約30~35アミノ酸、より好ましくは約30、31、32、33、34、または35アミノ酸からなる。
【0059】
好ましくは、ペプチドは、トロンビンのエキソサイトIIに結合する。
【0060】
ペプチドは、血餅関連フィブリン、好ましくはフィブリノーゲンγ’のトロンビンのエキソサイトIIへの結合を競合的に阻害してもよい。ペプチドは、フィブリノーゲンγ’よりトロンビンのエキソサイトIIに対して高い親和性を有していてもよい。これは、ペプチドが、tPA血栓溶解療法の対象において、血餅から血餅関連トロンビンを表面に(ostensibly)溶出させ、それによって、そうでなければtPA療法に関連する再疎通の低下の発生率を最小限にするのを可能にすると思われる。
【0061】
一実施形態では、ペプチドは、第V因子、第VIII因子、Gp1bα、コンドロイチン硫酸、およびヘパリンからなる群から選択される化合物のトロンビンのエキソサイトIIへの結合を阻害してもよい。
【0062】
典型的に、ペプチドの少なくとも1つの残基は、硫酸化チロシン残基である。
【0063】
好ましくは、配列番号1aにおける11位のチロシンは、硫酸化されている。配列番号1aにおける3位のチロシンは、硫酸化されていなくてもよい。
【0064】
別の実施形態では、配列番号1aにおける11位のチロシンは、硫酸化されており、3位のチロシンは、硫酸化されている。
【0065】
本明細書の実施例において記載されるように、どちらかまたは両方のチロシン残基の硫酸化は、トロンビン活性の阻害における改善に関連する。
【0066】
好ましくは、配列番号1bにおける4位のチロシンは、硫酸化されている。配列番号1bにおける7位のチロシンは、硫酸化されていなくてもよい。
【0067】
好ましくは、配列番号1bにおける7位のチロシンは、硫酸化されている。配列番号1bにおける4位のチロシンは、硫酸化されていなくてもよい。
【0068】
別の実施形態では、配列番号1bにおける4位のチロシンは、硫酸化されており、7位のチロシンは、硫酸化されている。
【0069】
チロシン残基の硫酸化は、チロシルプロテインスルホトランスフェラーゼ(TPST)を含有する細胞において配列番号1aまたは配列番号1bのペプチドをコードする核酸を発現することによって実現することができる。より詳細には、無機硫酸は、それぞれATPスルフリラーゼおよびAPSキナーゼによって、アデノシン-5’-ホスホ硫酸(APS)および3’-ホスホ-アデノシン-5’-ホスホ硫酸(PAPS)の形態で活性化されてもよい。次いで、活性化された硫酸は、ゴルジ体においてTPSTによってチロシンに移されてもよい。
【0070】
本発明によるペプチドにおける硫酸化チロシン残基を得る別のアプローチは、ペプチドの組換え合成の間にスルホチロシンがペプチドの中に組み込まれるのを可能にするアンバーコドン抑制を伴う組換え発現系を利用することである。
【0071】
本明細書における実施例において、本発明者らは、硫酸化ペプチドの均一の組成物(すなわち、たった1つの硫酸化プロファイルしか有していないペプチドを含有する組成物)の産生を可能にする合成法を提供する。
【0072】
本明細書において記載されるエキソサイトII阻害剤は、Lovely RS et al.2002において記載されるように、トロンビン/γ’ペプチド結合アッセイを利用することによってトロンビンエキソサイトIIに結合する特異性について試験されてもよい。手短かに言えば、エキソサイトII阻害剤もしくはバインダーまたは推定上のエキソサイトII阻害剤もしくはバインダーを標識し、トロンビンと共にインキュベートし、蛍光偏光を測定する。アッセイは、それぞれのエキソサイトII結合ペプチドの阻害定数の決定を可能にするために競合的阻害剤モデルにおいて使用することができる。
【0073】
上記に記載されるように、虚血性脳卒中のためのtPA療法を受ける患者の少なくとも20~30%は、tPA療法後に動脈が完全に再疎通し、これらのうち、20~30%は、再閉塞を経験するであろう。これは、tPA療法により、エキソサイトIIを介して血餅に結合していると理解されている、血餅に閉じ込められたトロンビンが現れる場合に生じ、トロンビンの活性部位がフィブリノーゲンおよびフィブリノペプチドを切断して、血
餅を増幅し、構築するのを可能にすると考える人もいる。本明細書において記載されるエキソサイトII阻害剤は、フィブリン血餅からの血餅関連トロンビンの溶出を可能にし、それによって、そうでなければフィブリン産生および血餅拡大を引き起こすと思われる血餅のトロンビンの量を最小限にするために、tPA療法を受けている個人に対して提供される。
【0074】
したがって、一実施形態では、tPA療法の方法において、本明細書において記載されるトロンビンのエキソサイトII阻害剤を治療有効量で提供するステップが提供される。
【0075】
典型的に、トロンビンのエキソサイトII阻害剤は、i.v.投与に適した組成物の形態で提供される。
【0076】
典型的に、トロンビンのエキソサイトII阻害剤は、レシピエントについて約100μg/kg~10mg/kgの量で提供される。
【0077】
C.トロンビン阻害剤
さらなる実施形態では、本発明は、トロンビン活性の新規な阻害剤、特に、トロンビンによるフィブリノーゲンまたはフィブリノペプチドの切断を予防するまたは少なくとも最小限にする阻害剤の設計、修飾、および/または産生のための、本明細書において開示されるエキソサイトII結合ペプチドの利用に関する。これらのエキソサイトII結合ペプチドは、トロンビン活性部位へのおよび/またはエキソサイトIへの結合について改善された親和性を有する阻害剤を提供してもよい。
【0078】
トロンビン阻害剤は、式1:
A-B
によって説明されてもよく、
Aは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示され、上記に概論的に記載される配列を有するエキソサイトII結合ペプチドであり;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するためにトロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10jの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
AおよびBは、Bがトロンビン活性部位に結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている。
【0079】
Aは、BのN末端に位置してもよいまたはその代わりにBは、AのN末端に位置してもよいことが理解されるであろう。
【0080】
さらなる実施形態では、トロンビン阻害剤は、式2:
A-B-C
によって説明されてもよく、
Aは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示され、上記に概論的に記載される配列を有するエキソサイトII結合性ペプチドであり;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するためにトロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10jの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
Cは、トロンビンのエキソサイトIに結合するための配列番号11a~11cの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
A、B、およびCは、Bがトロンビン活性部位に結合し、CがトロンビンのエキソサイトIに結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている。
【0081】
Aは、CのN末端に位置してもよいまたはその代わりにCは、AのN末端に位置してもよいことが理解されるであろう。
【0082】
さらなる実施形態では、トロンビン阻害剤は、式3:
A-C-B
によって説明されてもよく、
Aは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示され、上記に概論的に記載される配列を有するエキソサイトII結合ペプチドであり;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するためにトロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10jの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
Cは、トロンビンのエキソサイトIに結合するための配列番号11a~11cの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
A、B、およびCは、Bがトロンビン活性部位に結合し、CがトロンビンのエキソサイトIに結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている。
【0083】
Aは、BのN末端に位置してもよいまたはその代わりにBは、AのN末端に位置してもよいことが理解されるであろう。
【0084】
さらなる実施形態では、トロンビン阻害剤は、式4:
B-A-C
によって説明されてもよく、
Aは、配列番号1aまたは配列番号1bにおいて示され、上記に概論的に記載される配列を有するエキソサイトII結合ペプチドであり;
Bは、トロンビン活性部位がフィブリノーゲンを切断してフィブリンを形成するのを予防するためにトロンビン活性部位に結合するための配列番号10a~10jの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
Cは、トロンビンのエキソサイトIに結合するための配列番号11a~11cの1つにおいて示される配列を有するペプチドであり;
A、B、およびCは、Bがトロンビン活性部位に結合し、CがトロンビンのエキソサイトIに結合した場合に、AがトロンビンのエキソサイトIIに結合するのを可能にするように連結されている。
【0085】
Bは、CのN末端に位置してもよいまたはその代わりにCは、BのN末端に位置してもよいことが理解されるであろう。
【0086】
式1~4のトロンビン阻害剤は、B(活性部位結合ペプチド)をA(エキソサイトII結合ペプチド)と;またはB(活性部位結合ペプチド)をC(エキソサイトI結合ペプチド)と;またはA(エキソサイトII結合ペプチド)をC(エキソサイトI結合ペプチド)と連結する、ペプチド配列(たとえば、GlyおよびAlaなどのような2つもしくはそれ以上のアミノ酸残基を含むペプチド)または他のポリマー(たとえばジエチレングリコールリンカー)の形態をしたリンカーを含んでいてもよい。ペプチド配列の例は、ポリAlaまたはポリGlyペプチドを含む。リンカーペプチドの長さは、関係のあるトロンビン部位の間の分子の距離によって決定されてもよい。これらの分子の距離は、以下のとおりである:(i)トロンビン活性部位~エキソサイトII:38~60オングストローム;(ii)トロンビン活性部位~エキソサイトI:27~40オングストローム;(iii)エキソサイトII~エキソサイトI:65~100オングストローム。
【0087】
上記に記載される阻害剤は、固相ペプチド合成によって調製されてもよい。たとえば、式1の阻害剤は、Aの固相合成、所望のチロシン硫酸化プロファイルを保持するためのAの選択的な脱硫、Bの固相合成、ならびにAのBへのライゲーションまたは最終ステップにおける代わりとして、AのリンカーへのライゲーションおよびAリンカー-Bコンジュゲートを形成するためのA-リンカーコンジュゲートのBへのライゲーションのステップを含む方法によって調製されてもよい。
【0088】
他の実施形態では、阻害剤は、組換えDNA技術によって合成されてもよい。この技術において使用される細胞株は、(i)無機硫酸の存在下において成長することができ、(ii)無機硫酸を生物系、特にチロシン残基の翻訳後修飾を伴う系の中に同化して取り込むことができることが特に好ましい。そのような細胞株は、一般に、ゴルジ体にチロシルプロテインスルホトランスフェラーゼを含み、1つまたはそれ以上のチロシン-O-硫酸残基の形成を可能にする。ある実施形態では、発現産物は、チロシン硫酸化パターンに関して不均一であってもよい。チロシン硫酸化アイソフォームの均一な集団は、チロシン硫酸化表現型に基づいてアイソフォームの区別を可能にする、クロマトグラフィー系を含む様々な分離系で発現産物を精製することによって得ることができる。
【0089】
本明細書において記載される阻害剤は、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、パパイン、レプチラーゼ、ならびに血液凝固カスケード由来の第Xa因子および活性化プロテインCを含むプロテアーゼのパネルに対するカウンタースクリーニングによって、トロンビン選択性について調査されてもよい。阻害剤は、上記に記載されるように、蛍光偏光アッセイを使用して、単一濃度(5μM)で最初にスクリーニングされる。
【0090】
本明細書において記載される阻害剤によるトロンビンの認識および阻害についての分子的詳細は、トロンビンとのそれらの複合体の三次元構造を解析することによって決定されてもよい。手短かに言えば、トロンビン-阻害剤複合体を、インビトロにおいて調製し、結晶化条件のための広範囲な超微量(sub-microlitre scale)スクリーニングにかける。予備的条件は、特注のグリッドスクリーニングを使用して改良を加え、最適化する。凍結保護条件の決定および初期サンプルキャラクタリゼーションは、X線回折計を使用して実行する。高分解能X線回析データは、高輝度シンクロトロン放射光源で収集し、結果として生じるモデルにおいて十分な詳細度を確実にする。構造は、コンピュータープラットフォームを使用して、サーチモデルとしてリガンド非結合ヒトトロンビンの座標を使用する分子置換法によって解析し、精密化し、情報を読み取る。これらのデータは、阻害剤の結合モードについての詳細を提供し、トロンビンとの鍵となる相互作用を明らかにする。
【0091】
本明細書において開示されるトロンビン阻害剤の抗凝固活性は、臨床TTアッセイを使用してインビトロにおいてヒト血漿の凝固を延長する能力を測定することによって決定される。手短かに言えば、健康なドナー由来のヒト血漿(800μL)をある濃度範囲の阻害剤と混合し、凝固をトロンビンの追加によって開始し、凝固時間を凝固計を使用して測定する。50nMの濃度で≧30秒間まで凝固時間を延長する化合物は、APTTについてインビトロにおいて/エクスビボにおいてさらに調査されてもよい。手短かに言えば、C57BL6/Jマウス由来のクエン酸塩添加血漿のプールを、様々な濃度(0~12μg/mL)の阻害剤と共にあらかじめインキュベートする。それぞれの血漿サンプルのAPTTを、凝固活性化因子およびCaCl2の追加後に定量化する。エクスビボアッセイでは、マウスに阻害剤(インビトロAPTTから決定された固定濃度)をi.v.注射し、投与の0、5、30、および60分後に全血をクエン酸ナトリウムの中に収集する(約130μL)。APTTは、RANDOX APTTキットを使用して、単離した血漿について定量化し、凝固時間を測定するためにフィブリン生成をモニターする。
【0092】
本発明者らは、実施例において、上記に記載されるエキソサイトII結合ペプチドを有するポリペプチドが、強力なインビボ抗血栓活性を持ち、既知の抗凝固薬と比較して、凝固時間が低下し、かつ出血時間が低下することを示す。多くの抗血栓性の薬剤が、出血の危険性(脳卒中療法における脳内出血を含む)のためにそれらの使用が限られているので、これは有利である。
【0093】
出血の危険性が抗凝固療法を受けている患者において著しく増加するので、出血時間は、臨床的に重要な問題である。特に、ヒルジンを含む既知の抗凝固薬によって引き起こされる出血に対抗して利用可能な、有効な処置はない。そのため、出血時間を低下させる薬剤の必要がある。
【0094】
本発明者らは、本発明による硫酸化されたポリペプチドが、既知の凝血薬ヒルジンと比較して、出血が著しく少ないことを表す驚くべき効果を実証する。
【0095】
一実施形態では、本発明による硫酸化されたポリペプチドは、ヒルジンと比較した場合、2倍超、出血を低下させる。別の実施形態では、本発明による硫酸化されたポリペプチドは、ヒルジンと比較した場合、3倍超、出血時間を低下させる。別の実施形態では、本発明による硫酸化されたポリペプチドの存在下において出血時間は、10分以下の間、生じる。
【0096】
別の実施形態では、本発明による硫酸化されたポリペプチドの存在下における出血時間は、ヒルジンと比較した場合、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、または60%以上低下する。
【0097】
開示されるペプチドおよび組成物は、たとえば病的な血栓症を望んでいないヒトなどのような対象においてトロンビン活性を阻害するのに十分な抗血栓性の量で、トロンビン活性を阻害するために使用することができる。組成物は、心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓症、深部静脈血栓症、末梢動脈閉塞症(peripheral arterial occlusion)、播種性血管内凝固症候群、心血管血栓症および脳血管血栓症、術後の外傷に関連する血栓症、肥満、妊娠、経口避妊薬の副作用、長期の拘束、ならびに血液障害、免疫障害、またはリウマチ障害に関連する過凝固状態などのような状態に罹患している対象において使用することができる。その代わりに、対象は、不安定狭心症、動脈硬化症、バルーンカテーテルによる血管形成後の血管の再遮断、または血液透析における血液凝固に罹患していてもよい。
【実施例0098】
実施例1-硫酸化されたエキソサイトIIバインダーの合成
エキソサイトIIのみに結合する完全長トロンビン阻害剤の断片をFmoc法SPPSによって合成した。
【0099】
樹脂負荷:2-クロロトリチルクロリド樹脂、Rinkアミド樹脂、またはWang樹脂に、メーカーの説明書どおり、標的スルホペプチドのC-末端アミノ酸を負荷した。
【0100】
反復ペプチド構築(Fmoc-SPPS)
脱保護:樹脂をピペリジン/DMF(1:4、v/v、3mL、3×5分間)により処置し、ろ過し、次いで、DMF(5×3mL)、CH2Cl2(5×3mL)、およびDMF(5×3mL)により洗浄した。
【0101】
カップリング(標準Fmoc保護アミノ酸):DMF中標準Fmoc保護アミノ酸(4当量)、PyBOP(4当量)、およびNMM(8当量)の溶液(最終濃度0.1M)を
樹脂に追加した。1時間後、樹脂をろ過し、DMF(5×3mL)、CH2Cl2(5×3mL)、およびDMF(5×3mL)により洗浄した。
【0102】
硫酸化チロシンの部位特異的な組み込み:硫酸化チロシンは、2つの方法のうちの1つによって所望のペプチド断片の中に組み込んだ:
1)アミノ酸カセット[Fmoc-Tyr(SO2OCH2C(CH3)3)-OH]のカップリング:DMF中Fmoc-Tyr(SO2OCH2C(CH3)3)-OH(1.2当量)、HATU(1.2当量)、およびNMM(2.4当量)の溶液(最終濃度0.1M)を樹脂に追加した。18時間後、樹脂をろ過し、DMF(5×3mL)、CH2Cl2(5×3mL)、およびDMF(5×3mL)により洗浄した。
2)Fmoc-TyrOAll-OHの組み込み後の固相硫酸化:固相硫酸化は、Taleski,D et al.2011またはHsieh,Y.S.et al 2014において記載される方法を使用し、イミダゾリウム硫酸化試薬により実行した。
【0103】
キャッピング:無水酢酸/ピリジン(1:9、v/v、3mL)を樹脂に追加した。3分後、樹脂をろ過し、DMF(5×3mL)、CH2Cl2(5×3mL)、およびDMF(5×3mL)により洗浄した。
【0104】
切断:硫酸化されたペプチドは、酸性切断カクテル、たとえば90:5:5 v/v/v トリフルオロ酢酸/トリイソプロピルシラン/水を使用し、同時の側鎖脱保護と共に、樹脂から切断した。
【0105】
硫酸エステル保護基の脱保護:
1)ネオペンチル硫酸エステルの脱保護(カセット法からの)は、Ziarek,J.J et al 2013において記載されるように、アジ化ナトリウム溶液または酢酸アンモニウム水溶液による処置によって実行した。
2)ジクロロビニル硫酸エステルおよびトリクロロエチル硫酸エステルの脱保護(固相硫酸化法からの)は、Taleski,D.et al 2011において記載されるように、水素化を使用して実行した。トリフルオロエチル硫酸エステルの脱保護は、Hsieh,Y.S.et al.2014において記載されるように、酢酸アンモニウム水溶液を使用して実現した。
【0106】
精製:部位特異的に硫酸化されたエキソサイトII結合ペプチド断片の精製は、逆相HPLC精製を使用して実現した。
【0107】
実施例2-式2のトロンビン阻害剤(AAa)の合成
手法1 A
Aa(31~61)断片(88)の合成
【化1】
手法1 つづき
【化2】
【0108】
Fmoc-Pro-OH(84mg、250μmol)を標準負荷手順を使用してCTC樹脂に負荷した。次いで、完全に構築された樹脂結合A
Aa(32~61)を得るために、上記に概説されるように、反復Fmoc-SPPSを実行した。樹脂上のペプチドを分離し、25μmolのペプチドを下記の処置において使用した。ペプチドを、DMF(2×5mL)中20%ピペリジンによりFmoc脱保護し、Boc-Asp(STmb,OtBu)-OH(25mg、50μmol、2.0当量)を、16時間、室温で、DM
F(1.5mL)中PyBOP(26mg、50μmol、2.0当量)およびNMM(0.11mL、101mg、0.10mmol、4.0当量)を使用し、続いてカップルした。樹脂をDMF(5×5mL)、CH
2Cl
2(5×5mL)、およびDMF(5×5mL)により洗浄した。ペプチドを脱保護し、TFA/iPr
3SiH/H
2O(4mL、90:5:5 v/v/v)を使用して樹脂から切断し、結果として生じる混合物を2時間撹拌した。粗ペプチドを氷冷Et
2O(20mL)から沈殿させ、逆相分取HPLC(60分間20~80% B、溶出液A)によって精製し、冷凍乾燥後、TFA塩(8.8mg、9.0%)として所望のペプチド88がもたらされた。
図3AおよびBを参照。
手法2 A
Aa(1~30)断片(87)の合成
【化3】
手法2 つづき
【化4】
【0109】
Fmoc-Thr(OtBu)-OH(100mg、250μmol)を標準負荷手順を使用してCTC樹脂に負荷した。次いで、完全に構築された樹脂結合A
Aa(1~30)を得るために、上記に概説されるように、反復Fmoc-SPPSを実行した。樹脂上のペプチドを分離し、25μmolのペプチドを下記の処置において使用した。保護されたペプチドを、HFIP/CH
2Cl
2(4mL、7:3 v/v)を使用して樹脂から遊離させた。結果として生じる産物は、一晩、-40℃で、DMF(2mL)中PyBO
P(65mg、0.13mmol、5.0当量)、iPr
2NEt(22μL、16mg、0.13mmol、5.0当量)、および3-メルカプトプロピオン酸エチル(160μL、170mg、1.3mmol、50当量)により続いて処置した。この時点で、反応混合物を真空中で濃縮した。次いで、ペプチドを、TFA/iPr
3SiH/H
2O(4mL、90:5:5 v/v/v)により脱保護し、反応混合物を2時間撹拌した。結果として生じる粗生成物を氷冷Et
2O(20mL)から沈殿させ、分取HPLC(60分間20~80% B、溶出液A)によって精製し、冷凍乾燥後、TFA塩(11mg、12%)としてペプチドチオエステル87がもたらされた。
図4AおよびBを参照。
【0110】
二硫酸A
Aaのワンポット合成についての一般的な手順
【化5】
【0111】
手法3 二重に硫酸化されたA
Aa(86)のワンポット合成
ライゲーションバッファー(6M Gn.HCl、100mM Na
2HPO
4、25mM TCEP、pH6.8、320μL)中ペプチド88(6.0mg、1.6μmol、1.2当量)の溶液をペプチドチオエステル87(5mg、1.3μmol、1.0当量)に追加し、ペプチドチオエステル87の最終5mM溶液を得た。結果として生じる溶液を、2M NaOHによりpH7.4に注意深く再調整し、その後、TFET(10体積%)を追加し、2時間30℃でインキュベートした。UPLC-MS分析は、ライゲーションタンパク質95への完全な変換を示した。次いで、バッファー(6M Gn.HCl、100mM Na
2PO
4、320μL)中TCEP(0.5M)およびグルタチオン(100mM)の中性溶液を追加し、2.5mM最終濃度のライゲーション産物を得た。結果として生じる溶液をpH6.5に調整し、次いで、10分間のArのスパージングによって脱気し、これにより、さらに、反応混合物から過剰なTFETが除去された。次いで、VA-044(10mM)を固体形態で追加し、反応混合物を穏やかに撹拌し、16時間37℃でインキュベートした。この後、UPLC-MS分析は、二重に硫酸化されたA
Aa 86への完全な変換を示した。粗反応混合物を、分取HPLC精製(60分
間0~60% B、0.1M NH
4OAc)にかけ、冷凍乾燥後、酢酸アンモニウム塩(3.9mg、43%)として二硫酸A
Aa 86がもたらされた。
図5を参照。
【化6】
【0112】
実施例3-ヒルジンと比較したAAaの凝固時間および出血時間
本発明者らは、インビトロ活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)アッセイにおける凝固時間を延長する実施例2(AAa)の阻害剤の能力を調査した(
図1A)。これらの研究は、ヒルジンが、2μg/mLを上回る濃度で凝固時間において8倍の増加を示した一方、AAa(5.7倍)は、より安全な凝固時間の範囲内にとどまったことを実証した。
【0113】
本発明者らは、そのうえ、AAaが、インビボ針損傷モデルにおいてヒルジンと非常に類似する抗血栓活性を持つ一方(
図1B)、AAaは、尾出血インビボモデルにおいて3倍少ない出血を示す(
図1C)ことを示した。AAaが、血栓からフィブリンを除去することにおいてヒルジンと同様に有効である一方(
図1D)、AAaは、血小板を除去することにおいてそれほど有効でないように思われる(ヒルジンおよびAAaの共焦点画像についての
図1Eを参照)。フィブリンおよび血小板に対するこの効果の差は、予想外であり、AAaで観察された出血における著しい減少について部分的に説明するものかもしれない。
【0114】
実施例4-AAaの硫酸化形態によるトロンビンの阻害
本発明者らは、
図2aにおいて示されるように、硫酸化されたペプチドが、約6pM未満、たとえば3.0pM未満のK
iでトロンビンを阻害することを実証する。さらに、これらのペプチドおよびタンパク質の二重に硫酸化された変異体は、硫酸化されていない対応物より、インビトロにおけるヒトトロンビンの阻害剤として、2桁超、強力である。
【0115】
参考文献
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