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特開2022-130538植物における非トランスジェニックのゲノム編集のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130538
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】植物における非トランスジェニックのゲノム編集のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20220830BHJP
   A01H 1/00 20060101ALI20220830BHJP
   C12N 15/87 20060101ALI20220830BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20220830BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20220830BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
C12N15/09 100
C12N15/09 110
A01H1/00 A ZNA
C12N15/87 Z
C12N15/88 Z
A01H5/00 A
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022101216
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2019162575の分割
【原出願日】2014-06-13
(31)【優先権主張番号】61/835,307
(32)【優先日】2013-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512213549
【氏名又は名称】セレクティス
【氏名又は名称原語表記】CELLECTIS
【住所又は居所原語表記】8 rue de la Croix Jarry, 75013 Paris, France
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ボイタス ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】チャン フェン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジン
(72)【発明者】
【氏名】ストッダード トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ソン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】標非トランスジェニック方法を用いてゲノム操作植物を作製するための材料および方法を提供する。
【解決手段】外因性の遺伝物質を挿入しない、植物ゲノムの標的化した遺伝子改変のための方法であって:
(i)改変される内因性遺伝子を含む植物細胞を提供するステップ;
(ii)配列認識ドメインおよびヌクレアーゼドメインを含む、配列特異的なヌクレアーゼを提供するステップ;
(iii)前記の配列特異的なヌクレアーゼを用いて、前記植物細胞をトランスフェクトするステップ;および、
(iv)前記植物ゲノム中にいかなる外因性の遺伝物質も存在せずに、検出可能な標的化したゲノム改変を有する植物細胞(1または複数)を生産するために、前記ゲノムにおいて1つまたは複数の二本鎖DNA切断(DSB)を誘導するステップ、
を含む、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外因性の遺伝物質を挿入しない、植物ゲノムの標的化した遺伝子改変のための方法であって:
(i)改変される内因性遺伝子を含む植物細胞を提供するステップ;
(ii)配列認識ドメインおよびヌクレアーゼドメインを含む、配列特異的なヌクレアーゼを提供するステップ;
(iii)前記の配列特異的なヌクレアーゼを用いて、前記植物細胞をトランスフェクトするステップ;および、
(iv)前記植物ゲノム中にいかなる外因性の遺伝物質も存在せずに、検出可能な標的化したゲノム改変を有する植物細胞(1または複数)を生産するために、前記ゲノムにおいて1つまたは複数の二本鎖DNA切断(DSB)を誘導するステップ、
を含む、
方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
前記DSBは、非相同末端結合(NHEJ)により修復される、
方法。
【請求項3】
請求項2の方法であって、
前記ゲノムにおける1つまたは複数の二本鎖DNA切断の誘導は、相同組み換えメカニズムを通した前記切断(1または複数)の修復が後に続く、
方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、
前記の配列特異的なヌクレアーゼは、TALエフェクター-ヌクレアーゼである、
方法。
【請求項5】
請求項1の方法であって、
前記の配列特異的なヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼである、
方法。
【請求項6】
請求項1の方法であって、
前記の配列特異的なヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である、
方法。
【請求項7】
請求項1の方法であって、
前記の配列特異的なヌクレアーゼは、CRISPR-Cas9エンドヌクレアーゼである、
方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項の方法であって、
前記の配列特異的なヌクレアーゼは、精製されたタンパク質の形態である、
方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項の方法であって、
前記の配列特異的なヌクレアーゼは、精製されたmRNAなどのRNAの形態である、
方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項の方法であって、
前記の配列特異的なヌクレアーゼは、1つまたは複数の細胞内局在化ドメインをさらに含む、
方法。
【請求項11】
請求項10の方法であって、
前記の1つまたは複数の細胞内局在化ドメインが、SV40核局在化シグナルを含む、
方法。
【請求項12】
請求項10の方法であって、
前記の1つまたは複数の細胞内局在化ドメインが、hnRNPA1の酸性M9ドメインを含む、
方法。
【請求項13】
請求項10の方法であって、
前記の1つまたは複数の細胞内局在化ドメインが、PY-NLSモチーフシグナルを含む、
方法。
【請求項14】
請求項10の方法であって、
前記の1つまたは複数の細胞内局在化ドメインが、ミトコンドリア標的化シグナルを含む、
方法。
【請求項15】
請求項10の方法であって、
前記の1つまたは複数の細胞内局在化ドメインが、葉緑体標的化シグナルを含む、
方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項の方法であって、
前記の配列特異的なヌクレアーゼが、1つまたは複数の細胞透過性ペプチドドメイン(CPP)をさらに含む、
方法。
【請求項17】
請求項16の方法であって、
前記の1つまたは複数のCPPが、トランス活性化転写活性化因子(Tat)ペプチドを含む、
方法。
【請求項18】
請求項16の方法であって、
前記の1つまたは複数のCPPが、Pep-1 CPPドメインを含む、
方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項の方法であって、
前記の配列特異的なヌクレアーゼタンパク質は、1つまたは複数のエキソヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のプラスミドとともに共トランスフェクトされる、
方法。
【請求項20】
請求項19の方法であって、
前記の1つまたは複数のエキソヌクレアーゼは、TREX2のようなTREXエキソヌクレアーゼファミリーのメンバーを含む、
方法。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか一項の方法であって、
前記の改変される内因性遺伝子は、ALS1またはALS2のようなアセト乳酸シンターゼ遺伝子である、
方法。
【請求項22】
請求項1から20のいずれか一項の方法であって、
前記の改変される内因性遺伝子は、ジャガイモ(Solanum tuberosum)液胞インベルターゼ遺伝子(VInv)のような液胞インベルターゼ遺伝子である、
方法。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか一項の方法であって、
前記植物細胞は、アルファルファ、大麦、豆、トウモロコシ、綿、亜麻、エンドウ、セイヨウアブラナ、イネ、ライ麦、ベニバナ、モロコシ、大豆、ヒマワリ、タバコ、小麦の農作物種由来である、
方法。
【請求項24】
請求項23の方法であって、
前記植物細胞は、Nicotiana属由来である、
方法。
【請求項25】
請求項23の方法であって、
前記の種は、Arabidopsis thalianaである、
方法。
【請求項26】
請求項1から25のいずれか一項の方法であって、
トランスフェクションは、前記の配列特異的なヌクレアーゼの、分離された植物プロトプラストへの送達を通して達成される、
方法。
【請求項27】
請求項26の方法であって、
前記送達は、ポリエチレングリコール(PEG)が仲介するトランスフェクションを含む、
方法。
【請求項28】
請求項26の方法であって、
前記送達は、エレクトロポレーションを含む、
方法。
【請求項29】
請求項26の方法であって、
前記送達は、微粒子銃が仲介するトランスフェクションを含む、
方法。
【請求項30】
請求項26の方法であって、
前記送達は、超音波処理が仲介するトランスフェクションを含む、
方法。
【請求項31】
請求項26の方法であって、
前記送達は、リポソームが仲介するトランスフェクションを含む、
方法。
【請求項32】
請求項1から31のいずれか一項の方法により取得可能な、
形質転換された植物細胞。
【請求項33】
請求項32の植物細胞を含む、
形質転換された植物。
【請求項34】
外因性の遺伝物質を挿入しない、植物ゲノムの標的化した遺伝子改変のためのキットであって、
前記キットは:
(i)タンパク質またはmRNAの形での、1つまたは複数の配列特異的なヌクレアーゼ;
(ii)1つまたは複数の植物プロトプラストまたは培養された植物細胞全体;
および場合により、
(iii)1つまたは複数のエキソヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のDNAプラスミドベクター、
を含む、
キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2014年6月14日に出願された米国仮出願番号61/835,307からの優先権の利益を主張する。
【0002】
[技術分野]
本願は、植物分子生物学の分野に関し、具体的には、非トランスジェニック方法を用いてゲノム操作植物を作製するための材料および方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
増大した乾燥耐性および作物収量のような望ましい形質を植物種に導入するために、伝統的な植物育種ストラテジーが多くの年月にわたって開発されてきた。そのようなストラテジーは、それらは典型的に多くの連続する何回もの交配を必要とし、したがって、うまく特定の植物形質を変えるためには多くの年月がかかる可能性があるという欠点がある。トランスジェニック技術の出現によって、トランスジーン構築物を導入することによるゲノム変化を用いて植物を操作して、伝統的な植物育種の必要性を避けることが可能になった。しかしながら、これらのトランスジェニック技術もまた、いくつかの欠点があった。第一に、ゲノムへのトランスジーンの挿入(例えば、Agrobacterium tumefaciensにより仲介される)は非常にランダムであり、そして、多様な挿入をもたらす可能性があり、それは、分離中に、異なる染色体上に存在する多様なトランスジーンの追跡に困難性をもたらす可能性がある。さらに、トランスジーンの発現は、その染色体環境に起因して予測不可能である場合があり、多くの場合、トランスジーンの発現はサイレンシングされる。加えて、トランスジェニック植物の生産は、そのような変種の作製に反対することの多い世論により-特に、問題となっている変種が、広い地理的地域にわたって生育されて人が消費する食物として用いられる作物植物である場合に、非常に議論の的になるトピックであることが証明されている。
【0004】
植物ゲノムの標的化した改変を可能にする方法は、これらの問題の最初の2つを克服し得て、遺伝子発現に資する単一の染色体部位に対してトランスジーンの挿入を標的化することを可能にさせ、したがって、多様なトランスジーンの挿入およびサイレンシングイベントの可能性を低減または排除する。標的化したゲノム改変は、操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を用いて多くの種において示されていて、それは、予め選択された遺伝子座での二本鎖DNA切断点の作製、および、その後のトランスジーンの挿入を、標的化した様式で可能にする(Lloyd et al.2005;Wright et al.2005;Townsend et al.2009)。この技術のバリエーションは、ZFNを単純に用いて選択された遺伝子座での切断点を作製し、それから、NHEJ(非相同末端結合)によるDNA修復を可能にすることである。このプロセス中に、新しく加わった領域内にエラーが取り込まれることが多く(例えば、ヌクレオチド欠失)、この方法は、選択された植物遺伝子の標的化した突然変異誘発、および、トランスジーン構築物の挿入を、可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物遺伝子操作における上述の利点は、操作された植物種の生産および広範囲の生育に関する社会不安を必ずしも和らげない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、この問題に対する解決は、伝統的なトランスジェニックストラテジーを使用せずに、標的化した方法で、植物ゲノムを正確に変えることができる方法である。本明細書における開示は、そのような解決を、標的化した植物ゲノムの非トランスジェニック編集に関する方法を提供することにより提供する。その方法は、より具体的には、タンパク質またはmRNAの形での、配列特異的なヌクレアーゼの植物細胞への導入に依存し、それは核へ移行し、所定の遺伝子座でDNAを正確に切断するために作用する。切断の修復中に生じるエラーは、ゲノム中にいかなる外因性の遺伝物質も導入せずに、機能喪失(または機能獲得)の変異の導入を可能にする。
【0007】
このように、残留する外因性の遺伝物質を含まない、遺伝子改変された植物種を生産することができる。
【0008】
本明細書に記載の方法の開発の前は、植物細胞の遺伝子改変は、ヌクレアーゼまたはDNA修飾酵素のインビボでの発現のための、トランスジーンカセットの安定したゲノム組み込みが必要であった。そのような組み込みは典型的に、アグロバクテリウムが仲介する植物種の形質転換を通して達成された。しかしながら本明細書に記載のように、一貫した、および再現可能なゲノム改変は、植物細胞への、精製されたヌクレアーゼタンパク質またはそのようなヌクレアーゼをコードするmRNAのいずれかの導入を通して達成することができる。組み換えヌクレアーゼまたは精製されたmRNAは、植物染色体またはオルガネラDNAに対して重大な作用を有するのに十分に活性であるとは考えられていなかったため、これは予測されない効果である。さらに、本願は、ゲノム改変のための新規のプロトコルを提供し、およびまた、本明細書に記載の方法を実施するのに適切な、および、外因性のDNAを導入せずに、改変された植物細胞を生産するのに適切な、配列およびベクターも提供する。
【0009】
本願は、非トランスジェニックストラテジーを用いて、植物ゲノムを編集するための方法を記載する。配列特異的なヌクレアーゼ(ZFN、ホーミングエンドヌクレアーゼ、TAL-エフェクターヌクレアーゼ、CRISPR-関連システム[Cas9]を含む)は、精製されたヌクレアーゼタンパク質の形態で、またはヌクレアーゼタンパク質をコードするmRNAとして、植物細胞に導入される。CRISPR-関連システム[Cas9]の場合は、ヌクレアーゼは、標的部位認識のためのガイドRNAとともに、mRNAまたは精製されたタンパク質としてのいずれかで導入することができる。
【0010】
機能性ヌクレアーゼは、特定の配列を標的とし、所定の遺伝子座で細胞DNAを切断する。DNA損傷は、植物細胞が二本鎖切断を修復するのを引き起こさせる。誤り(例えば、点変異または小さな挿入/欠失)がDNA修復中に生じ、その結果、インビボでDNA配列を変える。
【0011】
従来のDNA形質転換と異なり、本明細書に記載のタンパク質またはRNAに基づくゲノム編集ストラテジーは、標的の核酸配列を特異的に改変し、その後に足跡を残さない。これらの方法では外来DNAを用いないので、このプロセスは、非トランスジェニックの植物ゲノム編集であると考えられる。
【0012】
一態様では、本願は、外因性の遺伝物質を挿入しない、植物ゲノムの標的化した遺伝子改変のための方法を特徴とする。その方法は、(i)改変される内因性遺伝子を含む植物細胞を提供するステップ、(ii)配列認識ドメインおよびヌクレアーゼドメインを含む配列特異的なヌクレアーゼを取得するステップ;(iii)配列特異的なヌクレアーゼを用いて植物細胞をトランスフェクトするステップ、および(iv)植物ゲノム中にいかなる外因性の遺伝物質も存在せずに、検出可能な標的化したゲノム改変を有する植物細胞(1または複数)を生産するために、ゲノムにおいて1つまたは複数の二本鎖DNA切断(DSB)を誘導するステップを、含むことができる。DSBは、非相同末端結合(NHEJ)により修復することができる。
【0013】
配列特異的なヌクレアーゼは、TALエフェクター-ヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、または、CRISPR-Cas9エンドヌクレアーゼであってよい。配列特異的なヌクレアーゼは、精製されたタンパク質の形態で、または、精製されたRNA(例えばmRNA)の形態で、植物細胞に送達することができる。
【0014】
配列特異的なヌクレアーゼは、1つまたは複数の細胞内局在化ドメインをさらに含むことができる。1つまたは複数の細胞内局在化ドメインは、SV40核局在化シグナル、hnRNPA1の酸性M9ドメイン、PY-NLSモチーフシグナル、ミトコンドリア標的化シグナル、または、葉緑体標的化シグナルを含んでよい。配列特異的なヌクレアーゼは、1つまたは複数の細胞透過性ペプチドドメイン(CPP)をさらに含んでよい。1つまたは複数のCPPは、トランス活性化転写活性化因子(Tat)ペプチドまたはPep-1 CPPドメインを含んでよい。
【0015】
配列特異的なヌクレアーゼは、1つまたは複数のエキソヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のプラスミドとともに共トランスフェクトすることができる。1つまたは複数のエキソヌクレアーゼは、TREXエキソヌクレアーゼファミリー(例えば、TREX2)のメンバーを含んでよい。
【0016】
改変される内因性遺伝子は、アセト乳酸シンターゼ遺伝子(例えば、ALS1またはALS2)、または液胞インベルターゼ遺伝子(例えば、ジャガイモ(Solanum tuberosum)液胞インベルターゼ遺伝子(VInv)であってよい。
【0017】
植物細胞は、アルファルファ、大麦、豆、トウモロコシ、綿、亜麻、エンドウ、セイヨウアブラナ、イネ、ライ麦、ベニバナ、モロコシ、大豆、ヒマワリ、タバコ、小麦の農作物種由来であってよい。植物細胞は、Nicotiana属由来、または、Arabidopsis thaliana種由来であってよい。
【0018】
トランスフェクションは、分離された植物プロトプラストへの配列特異的なヌクレアーゼの送達を通して達成することができる。例えば、トランスフェクションは、ポリエチレングリコール(PEG)が仲介するトランスフェクション、エレクトロポレーション、微粒子銃が仲介するトランスフェクション、超音波処理が仲介するトランスフェクション、または、リポソームが仲介するトランスフェクションを用いて、分離された植物プロトプラストへの配列特異的なヌクレアーゼの送達により達成することができる。
【0019】
ゲノムにおける1つまたは複数の二本鎖DNA切断の導入は、相同組み換えメカニズムを通した切断(1または複数)の修復が後に続くことができる。
【0020】
また、本願は、本明細書において提供される方法により得ることのできる形質転換された植物細胞、および、その植物細胞を含む形質転換された植物も特徴とする。
【0021】
別の態様では、本願は、外因性の遺伝物質を挿入しない、植物ゲノムの標的化した遺伝子改変のためのキットを特徴とする。当該キットは、(i)タンパク質またはmRNAの形での1つまたは複数の配列特異的なヌクレアーゼ、(ii)1つまたは複数の植物プロトプラストまたは培養された植物細胞全体、および場合により(iii)1つまたは複数のエキソヌクレアーゼをコードする1つまたは複数のDNAプラスミドベクターを含んでよい。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が関連する当業者の一人により一般に理解されるものと同様の意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を用いて本発明を実施することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、それらの全体で参照により援用される。矛盾する場合は、本明細書(定義を含む)が支配する。加えて、材料、方法、および実施例は、単なる説明であり、制限を意図しない。
【0023】
本発明の1つまたは複数の実施態様の詳細を、添付の図面および以下の説明に示す。本発明の他の特徴、目的、および利点は、説明および図面から、および特許請求の範囲から、明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ゲノム操作に用いた配列特異的なヌクレアーゼの構造構成を示す略図である。ヌクレアーゼは、細胞透過性、細胞内タンパク質局在化、DNA配列認識、およびDNA切断を可能にする役割を果たすドメインを含む。
図2】E.coliで生産される転写活性化因子様エフェクターエンドヌクレアーゼ(TALEN(商標))のSDS-PAGEを示す写真である。ALS2T1LおよびALS2T1Rは、Nicotiana benthamianaのALS2遺伝子内の部位を標的とするTALEN(商標)である。VInv7は、ジャガイモVInv遺伝子を標的とする、コンパクトTALEN(商標)(cT)である。
図3】N.benthamianaのALS2遺伝子を標的とする、精製されたTALEN(商標)のインビトロ活性を示すアガロースゲルの写真である。ALS2T1 TALEN(商標)に関する標的部位を含むPCR産物が生産された。PCR産物を、精製されたALS2T1LおよびALS2T1Rタンパク質の不存在下(-)または存在下(+)でインキュベートした。PCR産物は2つのタンパク質の存在下でのみ切断された。ネガティブコントロールとして、精製されたALS2T1LおよびALS2T1Rタンパク質を、ALS1遺伝子由来のPCR産物とともにインキュベートした;切断は観察されなかった。
図4】タンパク質として植物細胞に送達された場合の、エピソーム標的に対するI-SceIの活性を示す表である。
図5】タンパク質単独として、またはTreXと組み合わせて、植物細胞に送達された場合の、染色体部位に対するI-SceI活性の活性を示す表である。この分析に用いた454のシーケンシングリード(sequencing read)の全数における数を、カラム2中の括弧内に示す。
図6】組み込まれたI-SceI認識部位を含むトランスジェニックN.tabacum株において、I-SceIにより誘導された変異の例を示す配列アライメントである。一番上の列(配列番号8)は、I-SceIに関する認識部位のDNA配列を示す(下線)。他の配列(配列番号9~18)は、不正確な非相同末端結合(NHEJ)により誘導された代表的な変異を示す。
図7】異なる形態(DNAまたはタンパク質)または処置の組み合わせで植物細胞へ形質転換した後の、TALEN(商標)ALS2T1突然変異誘発の活性を要約するグラフである。
図8】N.benthamianaのALS2遺伝子において、TALEN(商標)ALS2T1により誘導された変異の例を示す配列アライメントである。一番上の列(配列番号19)は、ALS2T1に関する認識部位のDNA配列を示す(下線)。他の配列(配列番号20~31)は、不正確な非相同末端結合(NHEJ)により誘導された代表的な変異を示す。
図9】インビトロのmRNA生産に用いられる配列特異的なヌクレアーゼの構造構成を示す略図である。ヌクレアーゼ構築物は、T7プロモーター、ヌクレアーゼORF、および、121bpのポリAテールを含む。
図10】YFPに基づくSSAアッセイにおける、植物プロトプラストに送達されたI-CreI mRNAの切断活性をプロットするグラフである。p35S-I-CreIまたはI-CreI mRNAとともに、SSA標的プラスミドが、PEGが仲介する形質転換を介してタバコプロトプラストに共送達された。形質転換の24時間後、プロトプラストをフローサイトメトリーに供して、YFP陽性細胞の数を定量した。
図11】N.benthamianaにおけるXylT_T04 TALEN(商標)の標的配列(配列番号32)である。
図12】タバコプロトプラストへのXyl_T04 TALEN(商標) mRNAの送達に関する454のピロシーケンスデータを要約する表である。カラム3中の括弧内の数は、得られたシーケンシングリードの全数である:NHEJ突然変異誘発の頻度は、プロトプラストの形質転換の効率に対して、NHEJ変異を有する454のリードの割合を標準化することにより得られた。この分析に用いた454のシーケンシングリードの全数を括弧内に示す。**:ネガティブコントロールは、YFPをコードするプラスミドによってのみ形質転換されたプロトプラストから得られた。
図13】N.benthamianaにおいて、XylT1(配列番号33~43)およびXylT2(配列番号44~54)遺伝子でXylT_T04 mRNAにより誘導された変異の例を示す配列アライメントである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願は、非トランスジェニックの植物材料を生産するための、植物ゲノムを編集する新規のストラテジーを提供する。本明細書において提供される方法は、植物ゲノムの任意の部位における特定の配列を認識するように設計されたヌクレアーゼを用いて行われる。
【0026】
一態様では、本願は、以下のステップの1または数個を含む、外因性の遺伝物質を挿入しない、植物ゲノムの標的化した遺伝子改変のための方法に関する:
i)改変される内因性遺伝子を含む植物細胞を提供するステップ;
ii)配列認識ドメインおよびヌクレアーゼドメインを含む、配列特異的なヌクレアーゼを取得するステップ;
iii)前記の配列特異的なヌクレアーゼを用いた、植物細胞の形質転換、および
iv)ゲノムにおける1つまたは複数の二本鎖DNA切断の導入;
【0027】
この方法は、好ましくは植物ゲノム中にいかなる外因性の遺伝物質も存在せずに、検出可能な標的化したゲノム改変を有する植物細胞(1または複数)を生産することを目的とする。
【0028】
ゲノムにおける二本鎖切断の導入は、一般に、非相同末端結合(NHEJ)による切断の修復をもたらし、それは、その方法により得られる植物細胞のゲノム中に、ゲノム配列の欠失、修正または挿入を好む。
【0029】
ヌクレアーゼに関するコード配列が合成されて発現ベクターにクローン化された後に、ヌクレアーゼタンパク質またはmRNAが生産および精製される。有効性を改善するために、細胞透過性ペプチド(CPP)を添加して、小分子(薬剤)、タンパク質および核酸に関する細胞膜透過性を改善することができる(Mae and Langel,2006;US2012/0135021,US2011/0177557,US7,262,267)。細胞内局在化ペプチドを添加して、細胞内のタンパク質輸送を、特に核へ向かわせることもできる(Gaj et al.2012;US20050042603)。
【0030】
一部の実施態様では,エキソヌクレアーゼ活性を有するタンパク質、例えば、Trex(WO2012/058458)および/またはTdt(ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ)(WO2012/13717)などが、配列特異的なヌクレアーゼにより誘導される突然変異誘発の効率を増大させるために、植物細胞へ共送達される。Trex2(配列番号6)は、本明細書に記載の突然変異誘発を増大することにより、特に効果的であることが示されている。単一のポリペプチド鎖(配列番号7)として発現されるTrex2の使用は、さらにより効果的であった。
【0031】
精製されたヌクレアーゼは、様々な手段により植物細胞へ送達される。例えば、微粒子銃の粒子送達システムを用いて植物組織を形質転換してよい。標準的なPEGおよび/またはエレクトロポレーション方法を、プロトプラスト形質転換に用いることができる。形質転換後に、細胞分裂、分化および再生を可能にするために植物組織/細胞を培養する。個々のイベント由来のDNAを分離して、変異に関してスクリーニングすることができる。
【0032】
一部の実施態様では、配列特異的なヌクレアーゼは、TAL-エフェクターヌクレアーゼ(Beurdeley et al.,2013)である。TAL-エフェクターヌクレアーゼと同様の機能を有する限り、任意のタイプの配列特異的なヌクレアーゼを用いて本明細書で提供される方法を行ない得ることも予想される。したがって、1つまたは複数の標的化した遺伝子座で、二本鎖DNA切断を誘導することが可能であるはずであり、1つまたは複数の標的化した変異をその遺伝子座(1または複数)で生じさせ、そこでNHEJまたは他のメカニズムによる、切断の誤った修復を通して変異が生じる(Certo et al.,2012)。そのような配列特異的なヌクレアーゼは、限定されないが、ZFN、ホーミングエンドヌクレアーゼ、例えば、I-SceIおよびI-CreI、制限エンドヌクレアーゼおよび他のホーミングエンドヌクレアーゼまたはTALEN(商標)を含む。特定の実施態様では、用いられるエンドヌクレアーゼは、CRISPR-関連のCasタンパク質、例えばCas9(Gasiunas et al.,2012)を含む。
【0033】
送達される配列特異的なヌクレアーゼは、精製されたヌクレアーゼタンパク質の形態、または、トランスフェクション後にタンパク質に翻訳され得るmRNA分子の形態のいずれかであってよい。ヌクレアーゼタンパク質は、利用可能なタンパク質発現ベクター、例えば、制限されないが、pQEまたはpETを用いて、当業者に公知の多くの方法により調製され得る。適切なベクターは、様々な細胞型(E.coli、昆虫、哺乳類)でのヌクレアーゼタンパク質の発現およびその後の精製を可能にする。mRNAの形態でのヌクレアーゼの合成は、例えば、細胞中へのトランスフェクションのためのキャップ化RNAの生産を可能にするT7ベクター(pSF-T7)の使用を通して、当業者に公知の様々な方法により行なってもよい。
【0034】
一部の実施態様では、mRNAは、最適な5’非翻訳領域(UTR)および3’非翻訳領域で改変される。UTRは、局在化、安定性および翻訳効率の調節を介して、遺伝子発現の翻訳後の制御において極めて重要な役割を果たすことが示されている(Bashirullah,2001)。上記のとおり、mRNA送達は、その非トランスジェニックの特質に起因して望ましいが、mRNAは非常に壊れやすい分子であり、植物の形質転換プロセス中に分解されやすい。植物のmRNA形質転換でのUTRの利用は、mRNA分子の増大した安定性および局在化を可能にし、非トランスジェニックゲノム改変に関する増大した形質転換効率を与える。
【0035】
一部の実施態様では、操作された(engineered)ヌクレアーゼは、細胞内での(特に核への)ヌクレアーゼタンパク質の効率的なトラフィッキングを可能にするための、1つまたは複数の細胞内局在化ドメインを含む(Gaj. et al.,2012;US2005/0042603)。そのような局在化シグナルは、制限されないが、SV40核局在化シグナル(Hicks et al.,1993)を含んでよい。また、他の非古典的なタイプの核局在化シグナルを、本明細書で提供される方法での使用に適用してもよい(例えば、hnRNP A1の酸性M9ドメインまたはPY-NLSモチーフシグナル(Dormann et al.,2012))。また、ミトコンドリアまたは葉緑体のような他の細胞内区画へのヌクレアーゼのトラフィッキングを可能にするために、局在化シグナルを取り込んでもよい。用いる特定のミトコンドリアおよび葉緑体のシグナルに関する説明は、非常に多くの刊行物に見ることができ(Bhushan S. et al.,2006を参照)、これらのシグナルを含むようにヌクレアーゼなどのタンパク質を改変する技術は、当業者に公知である。
【0036】
一部の実施態様では、ヌクレアーゼは、細胞-透過性ペプチド領域(CPP)を含み、細胞膜を通したタンパク質のより簡単な送達を可能にする(Mae and Langel,2006;US 2012/0135021,US2011/0177557,US 7,262,267)。そのようなCPP領域は、限定されないが、トランス活性化転写活性化因子(Tat)細胞透過性ペプチド(Lakshmanan et al.,2013,Frankel et al.,1988)を含む。植物細胞へのタンパク質の送達での補助に特に適切なPep-1 CPP領域を含む、他のCPPもまた用いられ得ることが予想される(Chugh et al.,2009を参照)。
【0037】
一部の実施態様では、1つまたは複数の変異は、アセト乳酸シンターゼ(ALS)遺伝子ALS1またはALS2のうちの1つのコード配列内に生じ、または1つまたは複数の変異は、液胞インベルターゼ(VInv)遺伝子内に生じる。これらの実施態様のさらなる態様では、変異は、所定の遺伝子座において、非機能的な、または機能的に低減したコード配列を生じさせる、任意のトランジションまたはトランスバージョンであってよい。1つまたは複数の変異が、本明細書に記載の方法を用いて、任意の特定のゲノムの遺伝子座で生じ得ることが一般に予想される。
【0038】
一部の実施態様では、本明細書において提供される方法で用いられる植物種は、N.benthamianaであるが、さらなる態様では、植物種は、任意の単子葉植物または双子葉植物、例えば(制限されずに)、Arabidopsis thaliana;農作物(例えば、アルファルファ、大麦、豆、トウモロコシ、綿、亜麻、エンドウ、セイヨウアブラナ、イネ、ライ麦、ベニバナ、モロコシ、大豆、ヒマワリ、タバコ、および小麦);野菜作物(例えば、アスパラガス、ビート、ブロッコリ、キャベツ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、キュウリ、ナス、レタス、タマネギ、ピーマン、ジャガイモ、パンプキン、ラディッシュ、ホウレンソウ、カボチャ、タロイモ、トマト、およびズッキーニ);果物および木の実の穀物(例えば、アーモンド、リンゴ、アプリコット、バナナ、ブラックベリー、ブルーベリー、カカオ、チェリー、ココナッツ、クランベリー、ナツメヤシ、フェイジョア、ハシバミ、グレープ、グレープフルーツ、グアバ、キウイ、レモン、ライム、マンゴー、メロン、ネクタリン、オレンジ、パパイヤ、パッションフルーツ、ピーチ、ピーナッツ、洋ナシ、パイナップル、ピスタチオ、プラム、ラズベリー、ストロベリー、タンジェリン、クルミ、および、スイカ);および、観葉植物(例えば、ハンの木、セイヨウトネリコ、アスペン、ツツジ、カバノキ、ツゲの木、ツバキ、カーネーション、キク、ニレの木、モミ、ツタ、ジャスミン、ジュニパー、オーク、ヤシ、ポプラ、マツ、セコイア、シャクナゲ、バラ、および、ゴム)であってよい。
【0039】
一部の実施態様では、タンパク質またはヌクレアーゼ構築物をコードするmRNAは、分離されたプロトプラストの、PEGが仲介する形質転換を介して、植物細胞に送達される。PEGは典型的に、トランスフェクトされるmRNAまたはタンパク質懸濁液の半分から等量の範囲で用いられ、この目的においてPEG40%が主に用いられる。
【0040】
ある場合には、ヌクレアーゼは、微粒子銃の形質転換方法を介して、または当技術分野で公知の任意の他の適切なトランスフェクション方法を通して送達してよい(Yooetal、2007)。微粒子銃の形質転換の場合、ヌクレアーゼは、植物の細胞壁および膜を貫通するのに十分な300~600m/sのスピードまで微粒子発射(microprojectile)を加速する微粒子銃デバイスを用いて、植物組織に導入することができる(Klein et al.,1992を参照)。タンパク質またはRNAを植物に導入する別の方法は、標的細胞の超音波処理を介する。
【0041】
あるいは、リポソームまたはスフェロプラスト融合を用いて、外因性の物質を植物へ導入してよい(例えば、Christou et al.,1987を参照)。プロトプラストおよび細胞と組織全体のエレクトロポレーションも記載されている(Laursen et al.,1994)。
【0042】
トランスフェクションに用いられる方法およびその効率に応じて、本発明者らは、本明細書に記載の方法を行なう(特にTALEN(商標)を用いる)ための最適なタンパク質濃度は0.01~0.1μg/μlであると決定した。PEGを用いる場合は、タンパク質懸濁液の容量は、一般に、2~20μlであった。RNA濃度は、1~5μg/μlの範囲で最適であることが分かり、RNAバルクを増大させるために、非コードRNA(例えばtRNA担体)を10μg/μlまで添加することが時に有利となり得ると考えられた。このRNAの後の添加は、トランスフェクションを改善し、植物細胞において直面する分解酵素に関して、ヌクレアーゼをコードするRNAに対する保護効果を有する。
【0043】
本明細書に記載の任意の方法により生産される植物細胞を再生することにより、植物を得ることができる。内因性遺伝子の機能が、標的DNA部位に非サイレント変異が導入された植物細胞において抑制される場合は、そのような植物細胞から再生される植物の表現型は、内因性遺伝子の機能の抑制と関連して変化し得る。したがって、本明細書に記載の方法は、植物の育成を効率的に行うことを可能にさせる。植物細胞からの植物の再生は、当業者に公知の方法により行うことができ、それは植物細胞の種類に依存する。その例は、イネ品種の形質転換に関してChristouら(1997)に記載される方法を含む。
【0044】
一部の実施態様では、ヌクレアーゼは、配列特異的なヌクレアーゼにより誘導される突然変異誘発の効率を増大させるために、1つまたは複数のエキソヌクレアーゼタンパク質をコードするプラスミドとともに共送達することができる。そのようなエキソヌクレアーゼは、限定されないが、エキソヌクレアーゼのTrexファミリーのメンバー(治療用の赤血球交換エキソヌクレアーゼ)、例えば、TREX2(Shevelev et al.2002)を含む。本発明者らは、驚くべきことに、TREXのようなエキソヌクレアーゼの、精製されたI-SceIタンパク質との共送達は、I-SceIタンパク質単独の送達と比較して、観察されるNHEJイベントの頻度を増大させることを見いだした。他の適切なエキソヌクレアーゼも本明細書において提供される方法で使用してよいことに、注意すべきである。
【0045】
本明細書において用いられる用語「同一性」は、2つの核酸分子またはポリペプチドの間の配列同一性を指す。同一性は、比較目的のためにアラインされ得る各配列における位置を比較することにより判定される。比較される配列内の位置が同一の塩基で占められる場合、その分子はその位置で同一である。核酸またはアミノ酸配列の間の類似性または同一性の程度は、核酸配列により共有される位置における同一または合致するヌクレオチドの数の関数である。アライメントのアルゴリズムおよびプログラムを用いて、2つの配列の間の同一性を計算する。FASTAおよびBLASTが、GCG配列分析パッケージの一部として利用可能であり(ウィスコンシン大学、Madison,WI)、初期設定で用いられる。また、類似性マトリックス、例えば、BLOSUM45、BLOSUM62またはBLOSUM80を用いて、参照アミノ酸配列に対して少なくとも80%、85%、87.5%、90%、92.5%、95%、97.5%、98%、または99%配列類似性を有するアミノ酸配列を同定するために、BLASTPを用いてもよい。別段の指示がない限り、類似性スコアは、BLOSUM62の使用に基づく。BLASTPを用いる場合、類似性のパーセントはBLASTPの正スコアに基づき、配列同一性のパーセントはBLASTPの同一性スコアに基づく。BLASTPの「同一性」は、同一である高スコア配列ペア内の合計残基の数および割合(fraction)を示し;そして、BLASTPの「正」は、アライメントスコアが正の値を有し、互いに類似する、残基の数および割合を示す。本明細書に開示されるアミノ酸配列に対して、これらの程度の同一性または類似性、または、任意の中間の程度の類似性の同一性を有するアミノ酸配列は、本開示により検討および包含される。同じことが、BLASTNを用いてポリヌクレオチド配列に関して当てはまる。
【0046】
本明細書において用いられる用語「相同」は、別の配列に対して十分な同一性を有して配列間で相同組み換えを生じる配列を意味することが意図され、より具体的には、少なくとも95%同一性(例えば、少なくとも97%同一性、または少なくとも99%同一性)を有する。
【0047】
本明細書において用いられる用語「エンドヌクレアーゼ」は、高度に特異的な位置でDNA分子において二本鎖切断をもたらすことが可能な酵素を指す。
【0048】
本明細書で定義される用語「エキソヌクレアーゼ」は、ポリヌクレオチド鎖の末端(エキソ)から1つずつヌクレオチドを切断することにより働く酵素を指し、3’または5’のいずれかでホスホジエステル結合を切断する加水分解反応を生じさせる。
【0049】
本明細書において用いられる用語「配列特異的なヌクレアーゼ」は、所望および所定のゲノムの遺伝子座で二本鎖DNA切断を誘導することが可能な、任意のヌクレアーゼ酵素を指す。
【0050】
本明細書において用いられる用語「メガヌクレアーゼ」は、典型的に、約12~40bp、より好ましくは14~40bpの長さのポリヌクレオチド認識部位を有する、天然または操作された(engineered)レアカットのエンドヌクレアーゼを指す。典型的なメガヌクレアーゼは、それらの認識部位の内側で切断をもたらし、3’OH突出を有する4ntのスタガードカットを生じる。メガヌクレアーゼは、好ましくは、ホーミングエンドヌクレアーゼであり、より具体的には、ドデカペプチドファミリー(LAGLIDADG;配列番号55)(WO2004/067736)に属し、TAL-エフェクター様エンドヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、または、モジュラー塩基対塩基結合性ドメイン(MBBBD)に融合された任意のヌクレアーゼ-すなわち、所定の核酸標的配列に結合すること、および、それに隣接する配列での切断を誘導することが可能なエンドヌクレアーゼである。これらのメガヌクレアーゼは、特定のDNA配列で二本鎖切断を誘導するのに有用であり、それにより、ゲノム配列の標的化した操作および部位特異的な相同組み換えを促進する。
【0051】
本明細書において用いられる用語「ベクター」は、それに連結されている別の核酸を、細胞または細胞区画へ移行することが可能な核酸分子を指す。
【0052】
本明細書において用いられる用語「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合することにより生産される人工の制限酵素を指す。簡単に言うと、ZFNは、FokI制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインに融合された、操作されたジンクフィンガーDNA結合ドメインを含む、合成のタンパク質である。ZFNを用いて特定のDNA配列での二本鎖切断を誘導し得て、それにより、ゲノム配列の標的化した操作および部位特異的な相同組み換えを促進する。
【0053】
本明細書において用いられる用語「TAL-エフェクターエンドヌクレアーゼ」は、WO2011/072246においてVoytasおよびBogdanoveにより記載されるように、キサントモナスのTALEタンパク質由来のDNA認識ドメインを、ヌクレアーゼの触媒ドメインに融合することにより生産される、人工の制限酵素を指す。TAL-エフェクターエンドヌクレアーゼは、本出願人によりTALEN(商標)と命名される(Cellectis,8 rue de la Croix Jarry,75013 PARIS)。
【0054】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明するが、それは特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を制限しない。
【実施例0055】
実施例1:タンパク質発現のための、配列特異的なヌクレアーゼの設計および構築。
配列特異的なヌクレアーゼは、典型的に、以下の構成要素を含む(図1):
1.植物ゲノム内の特定のDNA配列を認識するDNA結合ドメイン。
2.植物ゲノム内の認識部位でDNA二本鎖切断を生じさせるヌクレアーゼドメイン。非相同末端結合を通した、切断の不正確な修復が、切断部位に変異を導入する。
3.ヌクレアーゼを、核、ミトコンドリアまたは葉緑体へ向かわせる、細胞内局在化シグナル。
4.形質転換中に、配列特異的なヌクレアーゼが細胞膜を貫通するのを助ける、細胞透過性モチーフ。
【0056】
カスタムのヌクレアーゼをコードする配列を合成して、タンパク質発現ベクター、例えばpQEまたはpETにクローン化してよい。したがって、機能性タンパク質は、E.coli内に発現することができ、標準的なプロトコルまたは市販キットを用いて精製することができる。あるいは、酵母、昆虫または哺乳類の細胞を含む他のタンパク質発現システムを用いて、E.coli内での発現および精製が困難なタンパク質を生産することができる。
【0057】
ここでは、pQE-80L-Kanをタンパク質発現ベクターとして用いた。SV40核局在化シグナルを、Tat細胞透過性ペプチドと同様に添加した(Frankel and Pabo,1988,Schwarze et al.,1999)。配列特異的なヌクレアーゼは、N.benthamianaのALS2遺伝子内の部位を標的化するTALEN(商標)ペアを含んだ。加えて、S.tuberosumにおけるVInv7遺伝子内の部位を標的化するコンパクトTALEN(商標)も用いた。E.coli株BL21を、タンパク質発現に用いた(Beurdeley et al.,2013)。Qiagen Ni-NTA Spinキットを、タンパク質の精製に用いた。E.coliにおいて、全ての3つのTALEN(商標)に関して、高収率の組み換えタンパク質が得られた(図2)。組み換えTALEN(商標)を生産するためのプラスミドは、Cellectis Bioresearch(8,rue de la Croix Jarry,75013 PARIS)により提供された。
【0058】
実施例2:精製されたTALEN(商標)の、インビトロの配列特異的なヌクレアーゼ活性。
精製されたTALEN(商標)の酵素活性を試験するために、等量のALS2T1L(配列番号2)およびALS2T1R(配列番号3)タンパク質を混合して、N.benthamianaのALS2遺伝子に由来するPCRフラグメントとともにインキュベートした(PCR産物はTALEN認識部位を有する)。反応は25℃で行ない、以下のバッファー系を有した:100mMのNaCl、50mMのTris-HCl、10mMのMgCl、および1mMのジチオスレイトール、pH7.9。N.benthamianaのALS1遺伝子由来のPCRフラグメント(TALEN認識部位を欠く)をネガティブコントロールとして用いた。2つのTALENは、インビトロでALS2遺伝子フラグメントを明らかに切断した;ALS1フラグメントでは活性は見られなかった(図3)。データは、精製されたTALEN(商標)が、配列特異的なヌクレアーゼ活性を有することを示す。
【0059】
実施例3:タンパク質としての、植物細胞への配列特異的なヌクレアーゼの送達。
酵素I-SceIをNew England Biolabsから購入し、製造会社から供給されたバッファーを除去するために透析した。手短に言うと、20μl(100U)のI-SceIを、Milliporeの0.025μmのVSWPフィルター(カタログ番号VSWP02500)上に置いた。フィルターを、MMGバッファー(0.4M マンニトール、4mM MES、15mM MgCl、pH5.8)の上に、4℃で1時間浮かべた。酵素溶液がMMGバッファーにより完全に平衡化された後、それを新しいチューブに移して、さらなる使用まで氷上で維持した。PEGが仲介するプロトプラスト形質転換により、タンパク質を植物細胞に送達した。タバコプロトプラストの調製方法は以前に記載したとおりであった(Zhangら 2013)。手短に言うと、組み込まれたI-SceI認識部位を有するトランスジェニックのタバコ株由来の種子を、湿らせたバーミキュライトに植えて、低光条件下で3~5週培養した(Pacher et al.,2007)。若い、完全に広がった葉を集めて、表面を殺菌して、プロトプラストを分離した。
【0060】
精製されたI-SceIタンパク質を、他に記載される、PEGが仲介する形質転換(Yoo et al.,Nature Protocols 2:1565-1572,2007)により、N.tabacumプロトプラストへ導入した。手短に言うと、20~200UのI-SceIタンパク質を、室温で、200,000のプロトプラストと、200μlの0.4Mマンニトール、4mM MES、15mM MgCl、pH5.8中で混合した。他の処理は、I-SceIをコードするDNA(配列番号1)、Trex2タンパク質をコードするDNA、または両方を用いて、プロトプラストを形質転換することを含んだ。Trex2は、NHEJによる不正確なDNA修復の頻度を増大させるエンドヌクレアーゼである(Certoら 2012)。加えて、一部のサンプルでは、I-SceIタンパク質は、Trex2をコードするDNA(配列番号6)とともに共送達した。形質転換後に、等量の40%PEG-4000、0.2Mマンニトール、100mM CaCl、pH5.8をプロトプラストに添加して、直ちによく混合した。0.45Mのマンニトール、10mMのCaClで1回洗浄する前に、混合物を暗所で30分インキュベートした。それから、長期培養のために、ペトリ皿中の1mlのK3G1に細胞を移す前に、プロトプラストをK3G1培地で2回洗浄した。
【0061】
実施例4:N.tabacumにおける、エピソーム標的部位に対するI-SceIの活性。
植物細胞において、エピソーム部位を標的化するI-SceIのタンパク質活性を評価するために、SSA構築物を、I-SceIタンパク質と共送達した。このアッセイのために、標的プラスミドを、非機能性YFPレポーター遺伝子内にクローン化されたI-Sce認識部位とともに構築した。レポーター遺伝子がI-Sceにより切断された場合に、組み換えがダイレクトリピート間で生じて、機能がYFP遺伝子に復元するように、標的部位の横にYFPコード配列のダイレクトリピートを置いた。したがって、YFPの発現は、I-SceI切断活性の尺度としての役割を果たした。
【0062】
エピソーム標的配列に対するI-SceIタンパク質の活性およびそのコントロール処理を、図4に要約する。DNAとしてのI-SceIの送達は、0.49%のYFP発現を生じた;一方で、I-SceIタンパク質は、YFPの4.4%発現を生じた。SSA構築物およびI-SceIタンパク質を連続して送達すると、YFPのSSA効率は2.4%であった。形質転換効率は35S:YFPのDNA送達のコントロールのYFP発現により示した。
【0063】
実施例5:N.tabacumにおける、それらの内因性標的部位に対するI-SceIの活性。
トランスジェニックのタバコ株は、以前に示したように、ゲノム内に単一のI-SceI認識部位を含む(Pacher et al.,2007)。このトランスジェニック株から分離した形質転換されたプロトプラストを、処理後24~48時間に採取し、ゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAをテンプレートとして用いて、I-SceI認識部位を包含する301bpのフラグメントをPCRにより増幅した。それから、PCR産物を454ピロシーケンスに供した。認識部位内に挿入/欠失(インデル)変異を有するシーケンシングリードは、NHEJによる、切断されたI-SceI認識部位の不正確な修復から生じていると考えられた。突然変異誘発の頻度を、全シーケンシングリードのうちのNHEJ変異を有するシーケンシングリードの数として計算した。
【0064】
標的配列に対するI-SceIタンパク質の活性およびそのコントロール処理を、図5に要約する。DNAとしてのI-SceI(配列番号1)の送達は、15%の突然変異誘発の頻度を生じた。エキソヌクレアーゼTrex2をコードするDNAと組み合わせると、突然変異誘発の頻度は、59.2%まで増加した。I-SceIをタンパク質として送達した場合は、突然変異誘発の活性は検出不可能であったが、I-SceIタンパク質を、Trex2をコードするDNA(配列番号6)とともに共送達した場合は、7.7%の突然変異誘発の頻度が観察された。I-SceIタンパク質により誘導された変異の例を図6に示す。まとめると、データは、I-SceIタンパク質は、タンパク質として植物細胞に送達されると、標的化した染色体切断をもたらすことを示す。さらに、これらの切断の不正確な修復が、標的化した変異の導入をもたらす。
【0065】
実施例6:植物細胞への、TALENタンパク質の送達。
精製されたTALEN(商標)タンパク質を、実施例4に記載のように、PEGが仲介する形質転換により、N.benthamianaプロトプラストへ導入した。手短に言うと、2~20μlのALS2T1タンパク質を、200,000のプロトプラストと、室温で、200μlの0.4Mマンニトール、4mM MES、15mM MgCl、pH5.8中で混合した。他の処理は、Trex2タンパク質、ALS2T1をコードするDNA、Trex2タンパク質をコードするDNA、または、YFP発現のためのDNA構築物と組み合わせて、プロトプラストを形質転換することを含んだ。Trex2は、NHEJによる不正確なDNA修復の頻度を増大させるエンドヌクレアーゼである。形質転換後に、等量の40%PEG-4000、0.2Mマンニトール、100mM CaCl、pH5.8をプロトプラストに添加して、直ちによく混合した。0.45Mのマンニトール、10mMのCaClで1回洗浄する前に、混合物を、暗所で30分インキュベートした。それから、長期培養のために、ペトリ皿中の1mlのK3G1に細胞を移す前に、プロトプラストをK3G1培地で2回洗浄した。
【0066】
実施例7:N.benthamianaにおける、それらの内因性標的部位に対するTALEN(商標)ALS2T1の活性。
形質転換されたプロトプラストを、処理後48時間に採取し、ゲノムDNAを調製した。このゲノムDNAをテンプレートとして用いて、ALS2T1認識部位を包含する253bpのフラグメントをPCRにより増幅した。それから、PCR産物を454のピロシーケンスに供した。認識部位内に挿入/欠失(インデル)変異を有するシーケンシングリードは、NHEJによる、切断されたI-SceI認識部位の不正確な修復から生じていると考えられた。突然変異誘発の頻度を、全シーケンシングリードのうちのNHEJ変異を有するシーケンシングリードの数として計算した。
【0067】
標的配列に対するALS2T1タンパク質の活性およびそのコントロール処理を図7に要約する。DNAとしてのALS2T1(配列番号2および3)の送達は、18.4%の突然変異誘発の頻度を生じた。エキソヌクレアーゼTrex2をコードするDNA(配列番号6)と組み合わせた場合、突然変異誘発の頻度は48%まで増加した。ALS2T1をタンパク質として送達した場合、突然変異誘発の活性は0.033%~0.33%であったが、ALS2T1タンパク質を35S:YFPのDNAとともに共送達した場合、0.72%の突然変異誘発の頻度が観察された。ALS2T1タンパク質により誘導された変異の例を図8に示す。まとめると、データは、ALS2T1タンパク質は、タンパク質として植物細胞に送達されると、標的化した染色体切断をもたらすことを示す。さらに、これらの切断の不正確な修復が、標的化した変異の導入をもたらす。
【0068】
実施例8:配列特異的なヌクレアーゼをコードするmRNAの調製。
メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、または転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN(商標))を含む、配列特異的なヌクレアーゼを、T7発現ベクターにクローン化する(図9)。様々な異なる5’および3’UTRペアを、A.thalianaにおける転写減衰率のゲノムにわたる試験によるデータに基づいて選択した(Narsai,2007)。選択された配列は、様々な転写産物の半減期および機能性カテゴリーに基づいた。これらのUTRペアを合成して、T7により作動するプラスミドベクターへの便利なクローニングを可能にした。生じるヌクレアーゼ構築物は、SapI消化により線形化される;SapI部位はポリA配列の直後に位置する。線形化されたプラスミドは、T7 Ultraキット(Life Technologies Corporation)を用いたインビトロのmRNA生産のためのDNAテンプレートとして働く。あるいは、ヌクレアーゼをコードするmRNAは、商業的な供給元により調製され得る。合成されたmRNAは、ヌクレアーゼフリーの蒸留水中に溶解され、-80℃で保管される。
【0069】
実施例9:mRNAとして送達される配列特異的なヌクレアーゼの、エピソーム標的に対する活性。
一本鎖アニーリング(SSA)アッセイを用いて、タバコプロトプラスト中に形質転換されたヌクレアーゼmRNAの活性を測定した(Zhangら 2013)。実施例4で説明したように、SSAアッセイは、ヌクレアーゼにより切断される非機能性YFPレポーターを用いる。切断の際に、レポーター内の繰り返し配列間の組み換えが、機能性YFP遺伝子を再構成する。その結果、YFP蛍光をフローサイトメトリーにより定量することができる。
【0070】
mRNAが、植物細胞に送達されて、標的化したDNA改変を仲介することができるかどうかを判定するために、I-CreI mRNAをSSA標的プラスミドとともに、PEGが仲介する形質転換により、タバコプロトプラストへ導入した(Golds et al.1993,Yoo et al.2007,Zhang et al.2013)。SSAレポーターは、YFP内の繰り返し配列間にI-CreI部位を有する。タバコプロトプラストの調製および形質転換のための方法は、以前に記載したとおりであった(Zhangら 2013)。SSA標的プラスミド単独は、ネガティブコントロールとしての役割を果たした。ポジティブコントロールとして、I-CreIを発現するDNA構築物(p35S-I-CreI)およびI-CreI SSAレポーターを用いて細胞を形質転換した。形質転換の24時間後、YFP蛍光をフローサイトメトリーにより測定した(図10)。同様のレベルの、SSAレポーターの標的化した切断が、p35S-I-CreI DNAおよびI-CreI mRNAの両方で見られた。データは、機能性ヌクレアーゼが、mRNAの形態で、プロトプラストにうまく送達され得ることを示す。
【0071】
実施例10:mRNAとして送達される配列特異的なヌクレアーゼの、染色体標的に対する切断活性。
TALENペア(XylT TALEN(商標))を、N.benthamianaの内因性β1,2-キシロシルトランスフェラーゼ遺伝子を切断するように設計した(Strasser et al.2008)(図11)。これらの遺伝子は、XylT1およびXylT2と命名され、TALEN(商標)は、両方の遺伝子内に見られる同じ配列を認識する。それぞれのXylT TALEN(商標)を、T7により作動される発現プラスミド内にサブクローニングした(図12)。生じたTALEN(商標)発現プラスミドは、SapI消化により線形化され、実施例8に記載のインビトロのmRNA生産のためのDNAテンプレートとしての役割を果たした。
【0072】
次に、TALEN(商標)をコードするプラスミドDNAまたはmRNAを、N.benthamianaプロトプラストへ、PEGが仲介する形質転換により導入した(Golds et al.,1993,Yoo et al.2007,Zhang et al.,2013)。プロトプラストを、1ヶ月齢のN.benthamianaの良く広がった葉から分離した。プロトプラスト密度は、5×10/ml~1×10/mlの細胞密度に調節し、200μlのプロトプラストを各形質転換に用いた。mRNA送達のために、RNAカクテルを、15μlのL-TALEN mRNA(2μg/μl)、15μlのR-TALEN mRNA(2μg/μl)、および、10μlの酵母tRNA担体(10μg/μl)を混合することにより調製した。RNAseによる分解の可能性を最小限にするために、RNAカクテルをすぐに200μlのプロトプラストに添加し、指でタッピングして数秒間だけ穏やかに混合した。ほぼ直後に、210μlの40%PEGを添加し、1分間指でタッピングしてよく混合した。形質転換の反応は、室温で30分間インキュベートした。900μlの洗浄バッファーの添加により形質転換を止めた。数回の洗浄後、形質転換されたプロトプラストを、K3/G1培地中で、5×10/mlの細胞密度で培養した。TALENをコードするプラスミドDNAも、ポジティブコントロールとして形質転換した。
【0073】
処理の3日後に、形質転換されたプロトプラストを採取し、ゲノムDNAを調製した。プロトプラストから調製したゲノムDNAをテンプレートとして用いて、TALEN(商標)認識部位を包含する、およそ300bpのフラグメントをPCRにより増幅した。それから、PCR産物を454のピロシーケンスに供した。スペーサー領域内に挿入/欠失(インデル)変異を有するシーケンシングリードは、非相同末端結合(NHEJ)による、切断されたTALEN(商標)認識部位の不正確な修復から生じていると考えられた。突然変異誘発の頻度を、シーケンシングリードの合計のうちのNHEJ変異を有するシーケンシングリードの数として計算した。
【0074】
Xyl_T04 TALEN(商標)のDNAおよびmRNAを、それらの標的、すなわちN.benthamianaにおけるXylT1およびXylT2遺伝子に対して試験した。上記に示すように、TALEN(商標)認識部位は、XylT1およびXylT2遺伝子の両方に存在する。図12に要約するように、Xyl_T04 TALEN(商標)のプラスミドDNAは、両方の遺伝子内に31.2%~54.9%にわたる非常に高頻度のNHEJ変異を誘導した。同時に、Xyl_T04 TALEN(商標)のmRNAもまた、22.9%~44.2%にわたる高頻度のNHEJ変異を両方の遺伝子内に誘導した。TALEN(商標)により誘導されたXylT1およびXylT2遺伝子座上の変異の例を図13に示す。
【0075】
[他の実施態様]
本発明はその詳細な説明とともに記載されているが、前述の記載は説明目的であり、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を制限しないことが理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。

[参考文献]


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2022130538000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【外国語明細書】