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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130543
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】細胞内送達化合物
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/00 20060101AFI20220830BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20220830BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220830BHJP
【FI】
C07K16/00
C07K16/18 ZNA
C12N15/09 Z
A61P37/06
A61P29/00
A61P3/00
A61P9/00
A61P1/16
A61P1/00
A61P31/00
A61P5/00
A61P25/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61P35/04
A61K47/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022101760
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2018520148の分割
【原出願日】2016-10-19
(31)【優先権主張番号】62/244,176
(32)【優先日】2015-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/327,130
(32)【優先日】2016-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/382,828
(32)【優先日】2016-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヤンウェン・フゥ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー・ジィ
(72)【発明者】
【氏名】ガナー・イェルク・フロリス・カウフマン
(72)【発明者】
【氏名】ヒヒョン・リー
(72)【発明者】
【氏名】インゲイル・サンパット・ララソ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】インタクトペプチドおよびタンパク質(例えば、抗体)を送達するまたはそれらの送達を向上させるための手段を提供する。
【解決手段】本開示は、一部において、1つ以上のペプチドまたはタンパク質(例えば、抗体)の細胞内送達またはそれらの細胞内送達を向上させるのに有用である化合物に関する。本開示は、一部において特定の式を有する化合物;その医薬的に許容される塩、それらの医薬組成物、および抗体の細胞内送達におけるそれらの使用を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2016年9月2日出願の米国仮出願第62/382,828号、2016年4月25日出願の米国仮出願第62/327,130号、および2015年10月20日出願の米国仮出願第62/244,176号に基づく優先権を主張する。前記出願の各々の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、一部において、1つ以上のペプチドまたはタンパク質(例えば、抗体)の細胞内送達またはそれらの細胞内送達を向上させるのに有用である化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
治療用ペプチドおよびタンパク質(例えば、抗体)は、様々な疾患の処置に有用で有望な薬物標的として出現した。タンパク質およびペプチド治療薬は、従来の小分子ベースの薬物に対していくつかの利点を有する。一例として、それらはしばしば、従来の治療薬が模倣できない特定の生物学的機能を果たすのに関与している。大部分の小分子薬物と異なり、タンパク質およびペプチドはまた、典型的にはインビボで良好な耐性を示し、通常、標的としない生物学的プロセスと相互作用しない。これらの利点にもかかわらず、治療用ペプチドおよびタンパク質(例えば、抗体)は、細胞内区画への限定されたアクセスにより制限される。また、細胞内に入ることが達成される場合でさえ、ペプチドおよびタンパク質(例えば、抗体)は、部分的に分解され、標的認識のために不完全な提示を引き起こし得る。ペプチドおよびタンパク質(例えば、抗体)の治療的可能性および疾患との戦い続ける必要性を考慮すると、インタクトペプチドおよびタンパク質(例えば、抗体)を送達するまたはそれらの送達を向上させるための手段は依然として魅力的な研究領域である。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載の化合物、およびそれらの医薬的に許容される組成物がインタクト抗体を細胞内に効果的に送達することをこのたび見出した。例えば、図14A図14B図15A、および図15B参照。このような化合物には、式I:
【化1】
を有し、式中、X、q、Ba、R1、r、t、L、およびATの各々が本明細書に定義および記載されるとおりである化合物、またはその医薬的に許容される塩が含まれる。
【0005】
本明細書に記載の1つ以上の疾患および障害の処置において記載の化合物を用いる方法もまた提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本特許または出願は、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラーの図面を含むこの特許または特許出願の公報のコピーは、請求および必要な手数料の支払いの上で庁より提供されるだろう。
【0007】
図1図1は、化合物752(式Iで示され、式中ATは抗VEGFR2 IgGである化合物)のSDS-PAGE特性評価を示す。
【0008】
図2図2は、化合物752(式Iで示され、式中ATは抗VEGFR2 IgGである化合物)の質量分析データを示す。
【0009】
図3図3は、化合物802(式Iで示され、式中ATはパニツムマブ(Vectibix(登録商標))である化合物)を用いるヒト乳癌細胞株におけるリガンド誘導EGFRリン酸化の阻害を示す。
【0010】
図4図4は、化合物802(式Iで示され、式中ATはパニツムマブ(Vectibix(登録商標))である化合物)を用いるヒト癌細胞におけるEGFR下流抗アポトーシス遺伝子のmRNA発現の阻害を示す。
【0011】
図5図5は、化合物850(式Iで示され、式中ATは抗CTLA4 IgGである化合物)のSDS-PAGE特性評価を示す。
【0012】
図6図6は、クローンST1A5(「1A5」)、ST3G12(「3G12」)およびST5G12(「5G12」)の発現を示すクマシーブルー染色SDS-PAGEである。
【0013】
図7図7は、U251悪性神経膠芽腫細胞における、STAT3クローンST1A5、ST3G12およびST5G12の、細胞性抗原への結合を評価するために用いられるELISAアッセイの結果を示すグラフである。
【0014】
図8A図8Aは、MDA-MB-435細胞における、抗STAT3抗体ST1A5、ST3G12およびST5G12の、細胞性抗原への結合を評価する細胞結合アッセイの結果を示すグラフである。MFIは、検出された平均蛍光強度を指す。
【0015】
図8B図8Bは、U251細胞における、抗STAT3抗体ST1A5、ST3G12およびST5G12の、細胞性抗原への結合を評価する細胞結合アッセイの結果を示すグラフである。
【0016】
図9図9は、U251細胞における、細胞性抗原への裸の(naked)抗STAT3 ST3G12抗体(ST3G12)および化合物901a(式Iで示され、式中ATがST3G12である化合物)の、細胞性抗原への結合を評価する細胞結合アッセイの結果を示すグラフである。
【0017】
図10図10は、修飾されていない抗STAT3 ST3G12抗体(ST3G12未修飾)および化合物950の、ヒトIgGへの結合を評価するために用いられるELISAアッセイの結果を示すグラフである。
【0018】
図11図11は、修飾されていない抗STAT3 ST3G12抗体および化合物901aの、組み換えヒトSTAT3タンパク質への結合を評価するために用いられるELISAアッセイの結果を示すグラフである。
【0019】
図12A図12Aは、ヒト包皮線維芽細胞(HFF)、正常ヒトアストロサイト(NHA)、正常結腸線維芽細胞(CCD-18CO)、正常乳房上皮細胞(MCF-10A)、グリオブラストーマ(U251)、トリプルネガティブ乳癌(MDA-MB-468)、トリプルネガティブ乳癌(HCC1954)およびER+乳癌(MCF-7)における、STAT3の総レベルおよびリン酸化STAT3(ホスホ-STAT3)のレベルを決定するために実施されたELISAアッセイの結果を示すグラフである。
【0020】
図12B図12Bは、図12Aにおいて試験される細胞における、リン酸化されたものの総STAT3に対する比(比P/T STAT3)を示すグラフである。
【0021】
図13A図13Aは、MCF-10A細胞における化合物901aのSTAT3リン酸化に対する影響を決定する実験の結果を示すグラフである。
【0022】
図13B図13Bは、MCF7細胞における化合物901aのSTAT3リン酸化に対する影響を決定する実験の結果を示すグラフである。実験手順は、図13Aの記載のものと同じであった。
【0023】
図14A図14Aは、MDA-MB-468細胞における化合物901a集積を示す経時変化実験の結果を示すグラフである。結果は、腫瘍細胞における化合物901aの集積の延長を示す。
【0024】
図14B図14Bは、MCF-10A細胞において実施される、図14Aに記載のものと同じ実験を示すグラフである。結果は、6時間後の化合物901aの集積の減少を示す。
【0025】
図14C図14Cは、化合物901aの修飾がヒトIgGへのその結合親和性に影響を及ぼさないことを示すために実施されるELISA実験の結果を示すグラフである。Superblockは、ELISAアッセイにおいて用いられるブロッキング緩衝液を指す。
【0026】
図14D図14Dは、化合物901aの修飾がその結合親和性に影響を及ぼさないことを示すために実施されるELISA実験の結果を示すグラフである。
【0027】
図15A図15Aは、MDA-MB-468トリプルネガティブ乳癌細胞を、ヒト血清の割合を増加させて(1%、5%、10%および20%)10ug/mlの化合物901aで処理した顕微鏡画像を示す。
【0028】
図15B図15Bは、U251細胞に集積した化合物901aの顕微鏡画像である。
【0029】
図15C図15Cは、MCF10Aヒト正常乳房上皮細胞における化合物901aの取込みの顕微鏡画像である。
【0030】
図15D図15Dは、MDA-MB-468ヒト乳癌細胞における化合物901aの顕微鏡画像である。
【0031】
図15E図15Eは、U251細胞における化合物901の内部移行の共焦点顕微鏡画像である。
【0032】
図16A図16Aは、U251細胞における化合物901aの内部移行に対する温度の影響を示すグラフである。
【0033】
図16B図16Bは、MDA-MB-468細胞における化合物901aの内部移行に対する温度の影響を示すグラフである。
【0034】
図17A図17Aは、MDA-MB-480細胞における化合物901aの細胞取込みを決定するために実施された経時変化分析の結果を示すグラフである。
【0035】
図17B図17Bは、MCF-10A細胞における化合物901aの細胞取込みを決定するために実施された経時変化分析の結果を示すグラフである。
【0036】
図18図18は、化合物901aがエンドサイトーシス非依存性機構を用いてMDA-MB-438(STAT3高)腫瘍細胞に侵入することを示すグラフである。
【0037】
図19図19は、MCF-10A細胞における化合物901aが介在する取込みに対するクラスリン阻害剤Pitstop2(PS2;30uMまたは60uM)またはカベオリン阻害剤filipin(0.5ug/mlまたは1.0ug/ml)の影響を示すグラフである。
【0038】
図20図20は、MDA-MB-468乳癌腫細胞における、図19でなされたものと同じ実験の結果を示すグラフである。
【0039】
図21A図21Aは、化合物901aの侵入が温度に依存するかを決定するために実施された実験の結果を示すグラフである。
【0040】
図21B図21Bは、化合物901aの侵入が温度に依存するかを決定するために実施された実験の結果を示すグラフである。
【0041】
図22図22は、抗STAT3抗体コンジュゲートがIL-26誘導IL-10サイトカインおよび抗アポトーシス遺伝子BCL2L1およびBIRC5のmRNA発現をブロックできるかを試験するために実施された実験の結果を示すグラフである。
【0042】
図23図23は、化合物912(式Iで示され、式中ATが抗KRASである化合物)のSDS-PAGE特性評価を示す。
【0043】
図24図24は、抗KRAS抗体および化合物912のHPLC-HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)を示す。
【0044】
図25図25は、化合物901a(式Iで示され、式中ATが抗Stat3 IgG ST3G12である化合物)のSDS-PAGE特性評価を示す。
【0045】
図26図26は、抗Stat3 IgG ST3G12ならびに化合物901aおよび904aのHPLC-HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)を示す。
【0046】
図27図27は、化合物920(式Iで示され、式中ATがセツキシマブである化合物)のSDS-PAGE特性評価を示す。
【0047】
図28図28は、抗セツキシマブおよび化合物920のHPLC-HIC(疎水性相互作用クロマトグラフィー)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
1. 化合物の概括的説明
特定の実施態様において、本開示は、式I:
【化2】
[式中、
各Baは、独立して、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、およびチミン(T)より選択され;
Xは、OまたはSであり
各R1は、独立して、水素およびフルオロフォアで置換される(C1-C6)アルキルより選択され;
qは、12~35の整数であり;
rは、1~10の整数であり;
tは、1~10の整数であり;
Lは、-CH2-R2-*であり;
R2は、-C(=O)NRa、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)Rd、=NORe、-NRa、-NRaRb、-ORb、-S(O)kRb、-NRaS(O)2Rb、-S(O)2NRaRb、-S(O)2NRa、-C(=O)ORb、-OC(=O)ORb、-OC(=O)Rb、-C(=O)NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)ORb、-OC(=O)NRaRb、フェニル、-OC(=O)NRa、-NRaC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)NRa、-NRa(C=S)NRaRb、-NRa(C=S)NRa、および-C(=O)Rbより選択される1つまたは2つの基で置換される-(C1-C6)アルキルであり;
kは、0、1、または2であり;
各Raは、独立して、水素またはRfで任意に置換される(C1-C6)アルキルであり;
各Rbは、独立して、Rfで任意に置換される(C1-C6)アルキルまたは-C(=O)Rfであり;
Rdは、-[(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル]vC(=O)NHであり;
Reは、-[(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル]pC(=O)であり;
各Rfは、独立して、
【化3】
であり、式中、波線結合は、Raにより定義される(C1-C6)アルキル、またはRbにより各々定義される(C1-C6)アルキルもしくはカルボニルへの結合点を示し;
Rgは、(C1-C6)アルキルまたは-[(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル]wC(=O)NHであり;
環Aは、
【化4】
であり、式中、破線結合は、Rfのトリアゾリルへの結合点を示し、波線結合は、Raにより定義される(C1-C6)アルキル、またはRbにより各々定義される(C1-C6)アルキルもしくはカルボニルへの結合点を示し;
pは、1~10の整数であり;
vは、1~10の整数であり;
wは、2~12の整数であり;
*は、ATへの結合点を示し;そして
ATは、抗体である]
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0049】
2. 化合物および定義
用語アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、およびチミン(T)は、下記構造:
【化5】
を有するDNA核酸塩基を指す。
【0050】
用語「フルオロフォア」は、励起時に再発光することが可能である蛍光性化学物質(R1における置換基)を意味する。存在する場合、式Iで示される化合物におけるフルオロフォアモチーフは、化合物の細胞内部移行特性を顕著に減少させてはならない。一態様において、フルオロフォアは、インビトロ観察のための分子プローブとして働くことが意図される。したがって、一態様において、フルオロフォアは、式Iで示される化合物の治療特性に寄与することは意図されない。フルオロフォアとしては、クマリンベースの色素(例えば、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン)、フルオレセインベースの色素(例えば、フルオレセインおよびカルボキシフルオレセイン)、SO3ベースのコンジュゲート系(例えば、AlexaFluor(登録商標)350、Alexa Fluor(登録商標)405、Alexa Fluor(登録商標)488、Alexa Fluor(登録商標)532、AlexaFluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)594、AlexaFluor(登録商標)647、Alexa Fluor(登録商標)680、Alexa Fluor(登録商標)750、Texas Red(登録商標)、Cy(登録商標)5)、ホウ素系(例えば、Bodipy(登録商標))、およびテトラメチルローダミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
用語「抗体」は、その最も広い意味で用いられ、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、抗原に結合し得る抗体断片(Fab'、F'(ab)2、Fv、1本鎖抗体、ダイアボディを含む)、ならびに所望の生物学的活性および抗原結合特異性を示す限り上記を含む組み換えペプチドが含まれる。
【0052】
一実施態様において、抗体は、完全長またはインタクト抗体である。完全長抗体は、4つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合により相互結合される2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中HCVRまたはVHと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中LCVRまたはVLと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VHおよびVL領域は、さらに、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存される領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に細分し得る。各VHおよびVLは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に並ぶ、3つのCDRおよび4つのFRから構成される。種々の実施態様において、抗体のFRは、ヒホト生殖細胞系配列と同一であってもよく、または天然にまたは人工的に修飾されてもよい。
【0053】
開示される化合物は、様々な立体異性体で存在し得る。立体異性体は、空間的配置のみが異なる化合物である。ジアステレオマーは、2つ以上の不斉置換された炭素原子を含む立体異性体である。
【0054】
本明細書で用いる、記載される基の初めまたは終わりのハイフン(「-」)は、記載される基が定義される基に結合する箇所を指定する。例えば、-SO2-(C1-C3)アルキル-NH(C1-C3)アルキルは、スルホニルを介して結合する基を意味する。
【0055】
開示される化合物の立体化学を命名するかまたは構造により指定するとき、包含される立体異性体または包含される立体異性体の任意の混合物のうちの1つが含まれると理解される。また、命名または指定される立体異性体の立体異性の純度は、他の立体異性体のすべてに対し少なくとも60重量%、70重量%、80重量%、90重量%、99重量%または99.9重量%純粋であると理解される。この場合の立体異性の純度は、名称または構造により包含される立体異性体の混合物中の総重量を、立体異性体のすべての混合物中の総重量で割ることにより決定される。
【0056】
立体化学を示さずに開示される化合物を命名するかまたは構造により指定するとき、名称または構造が、他の立体異性体を有しない1つの立体異性体、立体異性体の混合物、または1つ以上の立体異性体が他の1つまたは複数の立体異性体と比較して豊富にある立体異性体の混合物を包含すると理解される。例えば、名称または構造は、他のジアステレオマーを有しない1つの立体異性体、立体異性体の混合物、または1つ以上のジアステレオマーが他の1つまたは複数のジアステレオマーと比較して豊富にある立体異性体の混合物を包含し得る。
【0057】
本明細書の化合物の医薬的に許容される塩が企図される。医薬における使用のために、本明細書に記載の化合物の塩は、無毒性の「医薬的に許容される塩」を指す。医薬的に許容される塩形態には、医薬的に許容される酸性/アニオンまたは塩基性/カチオンの塩が含まれる。
【0058】
用語「医薬的に許容される担体」は、それと製剤化する化合物の薬理活性を焼失させない無毒性の担体、アジュバント、またはビヒクルを指す。本開示の組成物において用いられ得る医薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルとしては、医薬適用に適する有機または無機の担体、添加剤または希釈剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
本明細書で用いる用語「対象体」および「患者」は、相互交換可能に用いられ得て、処置を必要とする哺乳類、例えば、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)を意味する。典型的には、対象体は、処置を必要とするヒトである。
【0060】
本明細書で用いる用語「処置(treatment)」「処置する(treat)」および「処置すること(treating)」は、本明細書に記載の疾患もしくは障害またはそれらの1つ以上の症状の発現を逆転、緩和、遅延させるか、またはそれらの進行を抑制することを指す。いくつかの実施態様において、処置は、1つ以上の症状が発現した後なされ得て、すなわち、治療的処置であり得る。他の実施態様において、処置は、症状の非存在下でなされ得る。例えば、処置は、症状の発現前の感受性個体になされ得て(例えば、症状の病歴および/または遺伝的または他の感受性因子を考慮して)、すなわち、予防的処置であり得る。処置は、例えば再発を予防するかまたは遅らせるために、症状が解消した後も継続され得る。
【0061】
本明細書で用いる用語「有効量」は、対象体に投与されたとき疾患の処置を達成するのに十分である、本明細書に記載の化合物の量を指す。治療上有効量は、化合物の相対的な活性、ならびに処置される対象体および疾患の状態、対象体の体重および年齢、疾患状態の重症度、投与様式などに応じて変化し、これは当業者により容易に決定され得る。
【0062】
3. 例示的化合物の説明
第1実施態様において、本開示は、式I:
【化6】
で示され、式中、可変基は上に記載するとおりである化合物、またはその医薬的に許容される塩を提供する。
【0063】
第2実施態様において、式I中のR2は、-C(=O)NRa、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)Rd、=NORe、-NRa、-NRaRb、-ORb、-S(O)kRb、-NRaS(O)2Rb、-S(O)2NRaRb、-S(O)2NRa、-C(=O)ORb、-OC(=O)ORb、-OC(=O)Rb、-C(=O)NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)ORb、-OC(=O)NRaRb、-OC(=O)NRa、-NRaC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)NRa、-NRa(C=S)NRaRb、-NRa(C=S)NRa、または-C(=O)Rbで置換される-(C1-C6)アルキルであり、残りの可変基は、式Iについて上に記載するとおりである。
【0064】
第3実施態様において、式I中のR2は、-C(=O)NRa、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)Rd、=NORe、-NRa、-NRaRb、-ORb、-S(O)2NRaRb、-S(O)2NRa、-C(=O)ORb、-C(=O)NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)ORb、-NRaC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)NRa、または-C(=O)Rbで置換される-(C1-C6)アルキルであり、残りの可変基は、式Iおよび第2実施態様について上に記載するとおりである。
【0065】
第4実施態様において、式I中のR2は、-(C1-C6)アルキル-NRaC(=O)Rd、-(C1-C6)アルキル-NRaC(=O)Rb、または-(C1-C6)アルキル(=NO)Reであり、残りの可変基は、式Iおよび第2または第3実施態様について上に記載するとおりである。
【0066】
第5実施態様において、式I中のRdは、-[(C1-C4)アルキル-O-(C1-C4)アルキル]vC(=O)NHであり、残りの可変基は、式Iおよび第2、第3、または第4実施態様について上に記載するとおりである。
【0067】
第6実施態様において、式I中のReは、-[(C1-C4)アルキル-O-(C1-C4)アルキル]pC(=O)であり、残りの可変基は、式Iおよび第2、第3、第4、または第5実施態様について上に記載するとおりである。
【0068】
第7実施態様において、式I中のRgは、-[(C1-C4)アルキル-O-(C1-C4)アルキル]vC(=O)NHであり、残りの可変基は、式Iおよび第2、第3、第4、第5、または第6実施態様について上に記載するとおりである。
【0069】
第8実施態様において、式I中のRaは、独立して、水素および(C1-C6)アルキルより選択され、残りの可変基は、式Iおよび第2、第3、第4、第5、第6、または第7実施態様について上に記載するとおりである。
【0070】
第9実施態様において、式I中のRbは、Rfで置換される(C1-C6)アルキルまたは-C(=O)Rfであり、残りの可変基は、式Iおよび第2、第3、第4、第5、第6、第7、または第8実施態様について上に記載するとおりである。
【0071】
第10実施態様において、式I中のpは、1~6の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、または第9実施態様について上に記載するとおりである。あるいは、式I中のpは、1~4の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、または第9実施態様について上に記載するとおりである。
【0072】
第11実施態様において、式I中のvは、1~6の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、または第10実施態様について上に記載するとおりである。あるいは、式I中のvは、1~4の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、または第10実施態様について上に記載するとおりである。
【0073】
第12実施態様において、式I中のwは、2~10の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、または第11実施態様について上に記載するとおりである。あるいは、式I中のwは、2~8の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、または第11実施態様について上に記載するとおりである。他の選択肢として、式I中のwは、2~4の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、または第11実施態様について上に記載するとおりである。
【0074】
第13実施態様において、式I中のRfは、
【化7】
であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、または第12実施態様について上に記載するとおりである。
【0075】
第14実施態様において、環Aは、
【化8】
であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、または第13実施態様について上に記載するとおりである。
【0076】
第15実施態様において、式I中のフルオロフォアは、存在する場合、フルオレセインであり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、または第14実施態様について上に記載するとおりである。
【0077】
第16実施態様において、式Iで示される化合物は、式II:
【化9】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、または第15実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0078】
第17実施態様において、式Iで示される化合物は、式IIa:
【化10】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、または第16実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。あるいは、式Iで示される化合物は、式IIa':
【化11】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、または第16実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0079】
第18実施態様において、式Iで示される化合物は、式IIb:
【化12】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、または第18実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0080】
第19実施態様において、式Iで示される化合物は、式III:
【化13】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第8、第10、第11、または第15実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。あるいは、式Iで示される化合物は、式III':
【化14】
で示され、残りの可変基は、式Iおよびに第1、第2、第3、第4、第5、第8、第10、第11、または第15実施態様ついて上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。他の選択肢として、式Iで示される化合物は、式IIIa':
【化15】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第8、第10、第11、または第15実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0081】
第20実施態様において、式Iで示される化合物は、式IIIa:
【化16】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第8、第10、第11、または第19実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0082】
第21実施態様において、式Iで示される化合物は、式IV:
【化17】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第6、第10、第11、第12、または第15実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。あるいは、式Iで示される化合物は、式IV'':
【化18】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第6、第10、第11、第12、または第15実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。他の選択肢として、式Iで示される化合物は、式IV':
【化19】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第6、第10、第11、第12、または第15実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。他の選択肢として、式Iで示される化合物は、式IV''':
【化20】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第6、第10、第11、第12、または第15実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。他の選択肢として、式Iで示される化合物は、式IVa':
【化21】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第6、第10、第11、第12、または第15実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。他の選択肢として、式Iで示される化合物は、式IVa'':
【化22】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第6、第10、第11、第12、または第15実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0083】
第22実施態様において、式Iで示される化合物は、式IVa:
【化23】
で示され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第6、第10、第11、第12、第15または第21実施態様について上に記載するとおりである、化合物またはその医薬的に許容される塩である。
【0084】
第23実施態様において、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のXは、Sであり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、または第22実施態様について上に記載するとおりである。
【0085】
第24実施態様において、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のrは、2~6の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、または第23実施態様について上に記載するとおりである。あるいは、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のrは、3~5の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、または第23実施態様について上に記載するとおりである。他の選択肢として、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のrは、4であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、または第23実施態様について上に記載するとおりである。
【0086】
第25実施態様において、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のtは、1~6の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、または第24実施態様について上に記載するとおりである。あるいは、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のtは、2~4の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、または第24実施態様について上に記載するとおりである。他の選択肢として、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のtは3であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、または第24実施態様について上に記載するとおりである。
【0087】
第26実施態様において、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のqは、15~30の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、または第25実施態様について上に記載するとおりである。あるいは、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のqは、15~25の整数であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、または第25実施態様について上に記載するとおりである。他の選択肢として、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のqは、17であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、または第25実施態様について上に記載するとおりである。
【0088】
第27実施態様において、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中の3'末端にて開始するチオリン酸オリゴヌクレオチド配列は、TCCATGAGCTTCCTGATGCTであり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、または第26実施態様について上に記載するとおりである。
【0089】
第28実施態様において、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のATは、アイソタイプクラスまたはサブクラス、例えばIgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgM、IgD、IgA(例えば、IgA1およびIgA2)、およびIgE抗体より選択され、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、または第27実施態様について上に記載するとおりである。
【0090】
第29実施態様において、1つのみのフルオロフォアは、可能な場合、本明細書に記載の化合物または式のいずれかに存在し、すなわち、rが1以上の場合、1つのみのR1は、フルオロフォアで置換される(C1-C6)アルキルである。
【0091】
特定の実施態様において、本明細書で用いられる抗体は、細胞内である抗原に特異的であり得る。細胞内抗原は、例えば、細胞の細胞質および/または核で見られる抗原を含む。細胞内抗原の例としては、受容体(例えば、細胞質受容体、例えばペルオキシソーム増殖因子活性化受容体および核内受容体、例えばステロイドホルモン受容体、アリール炭化水素受容体)、転写因子(例えば、SP1、AP-1、C/EBP、熱ショック因子、ATF/CREB、c-Myc、1-Oct、NF-1、STAT3)、サイトカイン(例えば、インターロイキン、インターフェロン、エリスロポエチン、トロンボポエチン、コロニー刺激因子)、増殖因子(EGF、HGF、BMP、VEGF)、酵素(例えば、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ)、メッセンジャー(例えば、ホルモン、例えばバソプレッシン、卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモンまたは神経送達物質、例えばソマトスタチンまたはサブスタンスP)、シグナル送達経路(例えば、MAPK経路、Wnt経路、Hedgehog経路、レチノイン酸経路、TGFβ経路、JAK-STAT経路、cAMP依存性経路)の一要素、担体タンパク質(例えば、電子運搬体、例えばオキシドレダクターゼ、NADPHオキシダーゼ)、または構造タンパク質(例えば、アクチン、チューブリン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
一実施態様において、本開示の細胞内標的は、シグナル送達兼転写活性化因子(STAT)タンパク質ファミリーの一因子である。STATタンパク質は、免疫系の発達および機能に関与し、免疫寛容および腫瘍サーベイランスを維持する役割を果たす。STATファミリーからの細胞内標的の例としては、ホモログを含む、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5(STAT5AおよびSTAT5B)およびSTAT6が挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
別の一実施態様において、本開示の細胞内標的は、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、例えば、VEGFR2、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)または肝細胞増殖因子受容体(cMet)タンパク質ファミリーの一因子である。本明細書に記載の式におけるATに用いられ得る例示的なVEGF2、CTLA4、およびcMet特異的抗体は、それぞれWO2013/149219、PCT/US2016/017713、およびWO2013/192594に開示されており、これら各々は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0094】
また別の一実施態様において、本開示の細胞内標的は、RAS遺伝子ファミリーの一因子、例えばKRASである。本明細書に記載の式におけるATに用いられ得る例示的なKRAS特異的抗体は、2016年10月13日出願の米国仮出願第62/407982号に開示されている。
【0095】
一実施態様において、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のATは、STAT3に特異的な抗体であり、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、第28実施態様、または第29実施態様について上に記載するとおりである。別の一実施態様において、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のATは、配列番号1に記載のアミノ酸配列(あるいは、配列番号1と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列)を含む重鎖可変領域と、配列番号2に記載のアミノ酸配列(あるいは、配列番号2と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列)を含む軽鎖可変領域とを含み、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、第28実施態様、または第29実施態様について上に記載するとおりである、抗STAT3抗体である。別の一実施態様において、式I、II、IIa、IIa'、IIb、III、III'、IIIa、IIIa'、IV、IV'、IV''、IV'''、IVa'、IVa''、およびIVa中のATは、配列番号3に記載のアミノ酸配列(あるいは、配列番号3と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列)を含む重鎖可変領域と、配列番号4に記載のアミノ酸配列(あるいは、配列番号4と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列)を含む軽鎖可変領域とを含み、残りの可変基は、式Iおよび第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10、第11、第12、第13、第14、第15、第16、第17、第18、第19、第20、第21、第22、第23、第24、第25、第26、第27、第28実施態様、または第29実施態様について上に記載するとおりである、抗STAT3抗体である。
【0096】
抗ヒトSTAT3抗体ST1A5およびST3G12のアミノ酸配列を以下に記載する。ST1A5およびST3G12の両方は、ヒト抗体である。
【表1】
【0097】
4. 概括的合成方法の説明
式Iで示される化合物は、以下の概括的反応スキームおよび実施例、またはそれらの改変に従って製造され得る。本明細書に記載の化合物を製造するための他の方法は、以下の反応スキームに照らして当業者に明らかであろう。
【0098】
第30実施態様において、式I:
【化24】
[式中、
Lは、-CH2-R2-*であり;
R2は、-(C1-C6)アルキル-NRaC(=O)Rbであり;
Raは、水素または(C1-C6)アルキルであり;
Rbは、Rfで置換される(C1-C6)アルキルまたは-C(=O)Rfであり;
Rfは、
【化25】
であり;
環Aは、
【化26】
であり、式中、破線結合は、Rfのトリアゾリルへの結合点を示し、波線結合は、Rbにより各々定義される(C1-C6)アルキルまたはカルボニルへの結合点を示し;そして
Rgは、(C1-C6)アルキルまたは-[(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル]wC(=O)NHである]
を有する化合物を形成するための方法であって;
該方法が、式100:
【化27】
[式中、
X2は、-CH2(C1-C6)アルキル-NRaC(=O)Rbであり;
Raは、水素または(C1-C6)アルキルであり;
Rbは、R40で置換される(C1-C6)アルキルまたは-C(=O)R40であり;そして
R40は、
【化28】
であり、式中、波線は、Rbにより定義される(C1-C6)アルキルまたはカルボニルへの結合点を示す]
を有する化合物を、式AT-Yを有し、式中Yは-RgN3である化合物と反応させることを含み;
残りの可変基は、式Iについての第1実施態様において上に定義するとおりである、第1方法を提供する。
【0099】
第31実施態様において、式Iで示される化合物を形成するための第1方法中、Raは、水素であり;そしてRbは、-C(=O)Rfで置換される(C1-C6)アルキルであり、残りの可変基は、第30実施態様において上に定義するとおりである。
【0100】
第32実施態様において、式Iで示される化合物を形成するための第1方法中、Rgは、-[(C1-C3)アルキル-O-(C1-C3)アルキル]wC(=O)NHであり、残りの可変基は、式Iについての第1実施態様、および第30または第31実施態様において上に定義するとおりである。
【0101】
第33実施態様において、式Iで示される化合物を形成するための第1方法中、wは、2~10の整数であり、残りの可変基は、式Iについての第1実施態様、および第30、第31、または第32実施態様において上に定義するとおりである。あるいは、式Iで示される化合物を形成するための第1方法中、wは、2~8の整数であり、残りの可変基は、式Iについての第1実施態様、および第30、第31、または第32実施態様において上に定義するとおりである。他の選択肢として、式Iで示される化合物を形成するための第1方法中、wは、2~4の整数であり、残りの可変基は、式Iについての第1実施態様、および第30、第31、または第32実施態様において上に定義するとおりである。
【0102】
第34実施態様において、式Iで示される化合物を形成するための第1方法中、式AT-Yを有し、式中Yは-RgN3である化合物は、本明細書で定義されるATを-R4N3で処理することにより製造され得て、ここで式中、R4は、-[(C1-C3)アルキル-O-(C1-C3)アルキル]wC(=O)O-Lgであり、そしてLgは、脱離基、例えばペンタフルオロフェニル、テトラフルオロフェニル、活性化エステル(例えば、NHSエステル、スルホ-NHSエステル)などであり、残りの可変基は、式Iについての第1実施態様、および第30、第31、第32、または第33実施態様において上に定義するとおりである。
【0103】
第35実施態様において、式I:
【化29】
[式中、
Lは、-CH2-R2-*であり;
R2は、-(C1-C6)アルキル-NRaC(=O)Rdであり;
Rdは、-[(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル]vC(=O)NHであり;
Raは、水素または(C1-C6)アルキルである]
を有する化合物を形成するための方法であって;
該方法が、式110:
【化30】
を有し、式中X1は-C(O)ペンタフルオロフェニルまたは-C(O)テトラフルオロフェニルである化合物を、ATと反応させることを含み、残りの可変基は、式Iについての第1実施態様において上に定義するとおりである、第2方法を提供する。
【0104】
化合物の具体的な例は実施例で提供される。これらの化合物の医薬的に許容される塩および中性形態が本明細書に含まれる。
【0105】
5. 使用、製剤および投与
(医薬的に許容される組成物)
特定の実施態様において、本開示は、本明細書で定義される疾患または障害を有する患者(例えば、ヒト)を処置する方法であって、有効量の式Iで示される化合物、またはその医薬的に許容される塩または組成物を患者に投与する段階を含む方法を提供する。
【0106】
単回用量形態で組成物を製造するために担体物質と組み合され得る、提供される化合物の量は、処置される患者および特定の投与様式に応じて変化する。
【0107】
本明細書に記載の化合物または組成物は、本明細書に記載の1つ以上の疾患および病態を処置するかまたはその重症度を軽減するのに有効である任意の投与量および任意の投与経路を用いて投与され得る。任意の特定の患者のための特定の用量および処置レジメンは、年齢、体重、健康状態、性別、食事、投与の時間、排泄速度、薬物組合せ、処置医師の判断、および処置される特定の疾患の重症度を含む、様々な因子に依存する。
【0108】
(化合物および医薬的に許容される組成物の使用)
本明細書に記載の化合物および組成物は、1つ以上の抗体の細胞内送達、またはその細胞内送達を向上させるのに有用である。したがって、本開示は、抗体(例えば、式I中のAT)により処置され得る疾患または障害を処置する方法を提供すると理解される。このような疾患および障害には、例えば、自己免疫疾患、発達障害、炎症性疾患、代謝障害、心血管疾患、肝臓疾患、消化管疾患、感染性疾患、内分泌疾患、神経障害が含まれる。
【0109】
特定の実施態様において、本明細書に記載の化合物および組成物は、処置を必要とする対象体において、癌または他の新生物状態を処置するのに有用である。
【0110】
例示的なタイプの癌には、例えば、副腎癌、腺房細胞腫、聴神経腫、末端性黒子性黒色腫、先端汗腺腺腫、急性好酸球性白血病、急性赤白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性巨核芽球性白血病、急性単球性白血病、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺様歯原性腫瘍、腺扁平上皮癌、巨核球性白血病、脂肪組織新生物、慢性骨髄性白血病(CML)、副腎皮質癌、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、成人T細胞白血病/リンパ腫、若年骨髄単球性白血病(JMML)、アグレッシブNK細胞白血病、エイズ関連リンパ腫、胞巣状横紋筋肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル上皮線維腫、未分化大細胞リンパ腫、組織非形成性甲状腺癌、血管免疫芽球性T細胞性リンパ腫、大型顆粒リンパ球白血病、血管筋脂肪腫、血管肉腫、星状細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、B細胞性慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、芽細胞腫、骨癌、ブレンナー腫瘍、褐色腫瘍、バーキットリンパ腫、乳癌、脳腫瘍、癌腫、上皮内癌、癌肉腫、軟骨腫瘍、セメント質腫、骨髄性肉腫、軟骨腫、脊索腫、絨毛癌、脈絡叢乳頭腫、腎臓明細胞肉腫、頭蓋咽頭腫、悪性皮膚T細胞リンパ腫、子宮頸癌、結腸直腸癌、デゴス病、線維形成性小円形細胞腫瘍、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、未分化胚細胞腫、胎児性癌、内分泌腺新生物、内胚葉洞腫瘍、腸疾患関連T細胞性リンパ腫、食道癌、胎児内胎児、繊維腫、繊維肉腫、濾胞性リンパ腫、濾胞性甲状腺癌、神経節細胞腫、消化器癌、胚細胞腫、妊娠性絨毛癌、巨大細胞線維芽細胞腫、骨の巨細胞腫、グリア細胞腫瘍、多形性神経膠芽腫、神経膠腫、神経膠腫症、グルカゴノーマ、性腺芽細胞腫、顆粒膜細胞腫、男女性胚細胞腫、胆嚢癌、胃癌、毛様細胞性白血病、血管芽細胞腫、頭頸部癌、血管周囲細胞腫、血液悪性腫瘍、肝芽腫、肝脾T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、侵襲性小葉癌腫、腸癌、腎臓癌、喉頭癌、黒色癌前駆症、致死性中線癌腫、白血病、ライディッヒ細胞腫瘍、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管腫、リンパ管肉腫、リンパ上皮腫、リンパ腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、肝臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、MALTリンパ腫、悪性線維性組織球腫、悪性末梢神経鞘腫、悪性トリトン腫瘍、マントル細胞リンパ腫、帯域B細胞リンパ腫、肥満細胞白血病、縦隔の胚細胞腫、胸部髄様癌、髄様甲状腺癌、髄芽細胞腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性尿路上皮癌、ミュラー管混合腫瘍、ムチン腫瘍、多発性骨髄腫、筋組織新生物、菌状息肉腫、粘液様の脂肪肉腫、粘液腫、粘液肉腫、鼻咽頭癌腫、神経鞘腫、神経芽腫、神経繊維腫、神経腫、結節型黒色腫、眼癌、乏突起星細胞腫、乏突起細胞腫、膨大細胞腫、視神経鞘髄膜腫、視神経腫瘍、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、パンコースト腫瘍、乳頭様甲状腺癌、傍神経節腫、松果体芽細胞腫、松果体細胞腫、下垂体細胞腫、下垂体腺腫、下垂体部腫瘍、プラスマ細胞腫、多胚腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、膵臓癌、咽頭癌、腹膜偽性粘液腫、腎細胞癌腫、腎髄質癌腫、網膜芽細胞腫、横紋筋腫、リヒター転化、直腸癌、肉腫、シュワノマトーシス、精上皮腫、セルトリ細胞腫、性索生殖腺間質腫瘍、印環細胞癌腫、皮膚癌、線維形成性小細胞腫瘍、小細胞癌腫、軟部組織肉腫、ソマトスタチノーマ、煤煙性疣贅、脊髄腫瘍、脾臓周辺帯リンパ腫、扁平上皮癌腫、滑膜肉腫、セザリー症、小腸癌、扁平上皮癌腫、胃癌、T細胞性リンパ腫、精巣癌、卵巣莢膜細胞腫、甲状腺癌、移行上皮癌腫、咽喉癌、尿膜管癌、尿生殖器癌、尿路上皮癌、ブドウ膜黒色腫、子宮癌、疣贅性癌腫、視神経膠腫、外陰癌、膣癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ワルチン腫瘍およびビルムス腫瘍が含まれる。
【0111】
一実施態様において、癌は、膵臓癌である。別の一実施態様において、癌は、肺癌、例えば、小細胞肺癌である。別の一実施態様において、一実施態様において、本明細書に記載の化合物および組成物は、固形腫瘍を処置するのに有用である。いくつかの態様において、本明細書に記載の化合物または組成物により処置される癌は、黒色腫、神経膠腫、髄芽腫、腎細胞癌腫、膵臓腺癌、卵巣癌腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、神経膠芽腫、乳房、膵臓、卵巣、前立腺、肺、肝臓、結腸、結腸直腸、胃、頭、頸、および腎臓より選択される。一実施態様において、癌は、血液癌である。また別の一実施態様において、血液癌は、AML、ALL、CML、CLL、毛様細胞性白血病、CMML、JMML、巨核球性白血病および大型顆粒リンパ球白血病より選択される。
【0112】
一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗KRAS(例えば、化合物910、911、912、および913)であるとき、癌は、KRAS変異を有する癌である。一態様において、KRAS変異は、G12D変異である。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗KRAS(例えば、化合物910、911、912、および913)であるとき、癌は、膵臓癌、肺癌(非小細胞性肺癌を含む)、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、頭頚部癌、膀胱癌、黒色腫、結腸直腸癌、平滑筋腫、平滑筋肉腫、神経膠腫、神経膠芽腫、食道癌、肝臓癌、腎臓癌、胃癌、結腸癌、子宮頚癌、子宮癌、肝臓癌および血液癌より選択される。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗KRAS(例えば、化合物910、911、912、および913)であるとき、癌は、膵臓癌である。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗KRAS(例えば、化合物910、911、912、および913)であるとき、癌は、肺癌である。一態様において、肺癌は、非小細胞肺癌である。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗KRAS(例えば、化合物903)であるとき、癌は、結腸直腸癌である。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗KRAS(例えば、化合物910、911、912、および913)であるとき、癌は、前駆病変である。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗KRAS(例えば、化合物910、911、912、および913)であるとき、癌は、転移性である。
【0113】
一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗STAT3(例えば、化合物900、900a、901、901a、902、902a、903、903a、904、904a、905、および905aにおけるようにST1A5、ST3G12、ST5G12)であるとき、癌は、構成的STAT3活性を有する癌である。一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗STAT3(例えば、化合物900、900a、901、901a、902、902a、903、903a、904、904a、905、および905aにおけるようにST1A5、ST3G12、ST5G12)であるとき、癌は、固形腫瘍である。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗STAT3(例えば、化合物900、900a、901、901a、902、902a、903、903a、904、904a、905、および905aにおけるようにST1A5、ST3G12、ST5G12)であるとき、癌は、黒色腫、神経膠腫、髄芽腫、腎細胞癌腫、膵臓腺癌、卵巣癌腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、神経膠芽腫、乳房、膵臓、卵巣、前立腺、肺、肝臓、結腸、結腸直腸、胃、頭、頸、および腎臓より選択される。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗STAT3(例えば、化合物900、900a、901、901a、902、902a、903、903a、904、904a、905、および905aにおけるようにST1A5、ST3G12、ST5G12)であるとき、癌は、血液癌である。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗STAT3(例えば、化合物900、900a、901、901a、902、902a、903、903a、904、904a、905、および905aにおけるのようにST1A5、ST3G12、ST5G12)であるとき、癌は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞性白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、巨核球性白血病、および大顆粒リンパ球白血病より選択される。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗STAT3(例えば、化合物900、900a、901、901a、902、902a、903、903a、904、904a、905、および905aにおけるようにST1A5、ST3G12、ST5G12)であるとき、癌は、前駆病変である。別の一実施態様において、本明細書に記載の化合物または組成物におけるATが、抗STAT3(例えば、化合物900、900a、901、901a、902、902a、903、903a、904、904a、905、および905aにおけるようにST1A5、ST3G12、ST5G12)であるとき、癌は、転移性である。
【実施例0114】
以下の実施例に示すように、特定の例示的実施態様において、化合物は、下記の概括的手順に従って製造される。概括的方法は、本明細書の特定の化合物の合成を示すが、下記の概括的方法、および当業者に公知の他の方法が、本明細書に記載のすべての化合物に適用され得ると理解される。
【0115】
(合成方法の概括的説明)
非直線形コンジュゲーション方法
エッペンドルフチューブ中の1.0mLの抗体(AT)溶液(pH7.4のPBS中濃度4~8mg/mL)に、DMSOなどの有機溶媒中の過剰な(例えば、5.0当量)化合物200(式中、(F)4または5は、4個または5個のフッ素原子を表す)を加えた。下記スキーム1参照。最終混合物中の最終有機溶媒(例えば、DMSO)含有量は、約6%(v/v)であった。チューブを回転ホイールに置き、4℃にて約8時間回転させた。混合物を15mL遠心式フィルター(75Kカットオフ)に移し、PBSで約3~5回洗浄して、化合物250および251を得た。
【0116】
スキーム1
【化31】
【0117】
エッペンドルフチューブ中の1.0mLの化合物250と251の混合物(pH7.4のPBS中濃度2~8mg/mL)に、PBS中の過剰な(例えば、5.0当量)化合物300を加えた。可変基Ba、q、R1、rおよびLは、Rfaが可変基Rfに置き換えられ、任意に置換されたアルキンであることを除き、式Iについて上記で定義するとおりである。チューブを回転ホイールに置き、室温にて8~10時間回転させた。下記スキーム2参照。過剰な(例えば、5.0当量)化合物300の第2バッチを加え、さらに8時間混合した。反応後、混合物を15mL遠心式フィルター(75Kカットオフ)に移し、PBSで1回洗浄した。生成物である化合物350および351を、プロテインAカラムで精製して、クロマトグラフィーシステムを用いて未反応物質を取り除いた。任意に、試料をさらに精製する。
【0118】
別法において、Rfaが可変基Rfに置き換えられ、任意に置換されたアルキンである場合、エッペンドルフチューブ中の1.0mLの化合物250と251の混合物(pH7.0の100mMリン酸カリウム中濃度2~8mg/mL)に、リン酸カリウム緩衝液中の過剰な(例えば、5.0当量)化合物300を加え、続いて、2.5μLのCuSO4(0.10mM)+5.0μLの0.50mMTHPTA(トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリル-メチル)アミン)のリン酸緩衝液中の予混合溶液、25μLのアミノグアニジン(リン酸緩衝液中5mM)、および25μLのアスコルビン酸ナトリウム(リン酸緩衝液中5mM)を加える。チューブを回転ホイールに置き、室温にて3~5時間回転させる。下記スキーム2参照。反応後、混合物を15mL遠心式フィルター(75Kカットオフ)に移し、PBSで2回洗浄する。EDTA(エチレンジアミン四酢酸)緩衝溶液での透析により銅イオンをさらに取り除く。生成物である化合物350および351を、プロテインAカラムで精製して、クロマトグラフィーシステムを用いて未反応物質を取り除く。任意に、試料をさらに精製する。波線
【化32】
は、300の250との反応からの化合物350の他方の対称な半分(明確さのために示していない)についての結合点を表す。
【0119】
スキーム2
【化33】
【0120】
直線形コンジュゲーション方法
エッペンドルフチューブ中の1.0mLの化合物400溶液(pH7.0のPBS中濃度4~8mg/mL)に、有機溶媒(例えば、DMSO)中の過剰な(例えば、10.0当量)化合物450を加えた。下記スキーム3参照。Ba、q、R1、rおよびTは式Iについて上記で定義するとおりであり、(F)4または5は、4個または5個のフッ素原子を表す。最終混合物中の有機溶媒(例えば、DMSO)含有量は、約6%(v/v)であった。チューブを回転ホイールに置き、室温にて2~3時間回転させた。反応をLC/MSによりモニターする。反応完了後、生成物をHPLC/LC-MSにより精製する。精製後、生成物である化合物500を、任意にPBS(pH7.4)へ緩衝液交換する。
【0121】
スキーム3
【化34】
【0122】
エッペンドルフチューブ中の1.0mLの抗体(AT)溶液(pH7.4のPBS中濃度4~8mg/mL)に、PBS中の過剰な(例えば、3.0当量)化合物500を加えた。下記スキーム4参照。チューブを回転ホイールに置き、室温にて4時間回転させた。その後、別の過剰な(例えば、3.0当量)化合物500を加え、6時間混合した。混合物を15mL遠心式フィルター(75Kカットオフ)に移し、PBSで2回洗浄した。コンジュゲートを、さらにカラムで精製して、生成物である化合物550および551を得た。波線
【化35】
は、化合物551の他方の対称な半分(明確さのために示していない)についての結合点を表す。
【0123】
スキーム4
【化36】
【0124】
式Iで示される化合物の製造
VEGFR2抗体コンジュゲート
エッペンドルフチューブ中の1.0mLのVEGFR2抗体溶液(pH7.4のPBS中濃度4~8mg/mL)に、DMSO中の5.0当量の化合物600(BP-21862、BroadPharm、SanDiego、CA)を加えた。下記スキーム5参照。最終混合物中のDMSO含有量は、約6%(v/v)であった。チューブを回転ホイールに置き、4℃にて約8時間回転させた。混合物を15mL遠心式フィルター(75Kカットオフ)に移し、PBSで3~5回洗浄して、生成物である化合物650および651を得た。
【0125】
スキーム5
【化37】
【0126】
エッペンドルフチューブ中の1.0mLの化合物650および651の溶液(pH7.4のPBS中濃度2~8mg/mL)に、PBS中の5.0当量の化合物700(固相合成により作成、TrilinkInc、San Diego、CA)を加えた。チューブを回転ホイールに置き、室温にて8~10時間回転させた。5.0当量の化合物700の第2バッチを加え、さらに8時間混合した。混合物を15mL遠心式フィルター(75Kカットオフ)に移し、PBSで1回洗浄した。生成物750および751を、Aktapureクロマトグラフィーシステムを用いてプロテインAカラムで精製して、余分なオリゴを取り除いた。生成化合物750および751を、さらにAkta pureクロマトグラフィーシステムを用いてGEHiTrap Butyl HPカラムで精製して、未修飾抗体を取り除いた。波線
【化38】
は、明確さのために示していない、化合物750の他方の対称な半分についての結合点を表す。
【0127】
スキーム6
【化39】
【化40】
【0128】
750(化合物752)および751(化合物753)の非フルオレセイン型、すなわちR1が水素であるものもまたそれぞれ製造した。化合物752は、図1および2にそれぞれ示すようにSDS-PAGEおよび質量分析によって特徴付けられた。
【0129】
パニツムマブ抗体コンジュゲート
パニツムマブを抗体(AT)として用いることを除き、上記手順に従い、化合物800および801もまた製造した。波線
【化41】
は、明確さのために示していない、化合物800の他方の対称な半分についての結合点を表す。800および801の非フルオレセイン型、すなわちR1が水素であるものもまた製造した。
【化42】
【0130】
800(化合物802)および801(化合物803)の非フルオレセイン型、すなわちR1が水素であるものもまたそれぞれ製造した。
【0131】
CTLA4抗体コンジュゲート
上記手順に従い、ATがCTLA4である、生成化合物850および851もまた製造した。波線
【化43】
は、明確さのために示していない、当該化合物の他方の対称な半分についての結合点を表す。850および851の非フルオレセイン型、すなわちR1が水素であるものもまた製造した。
【化44】
【0132】
図5は、化合物850のSDS-Page特性評価を示す。850(化合物852)および851(化合物853)の非フルオレセイン型、すなわちR1が水素であるものもまたそれぞれ製造した。
【0133】
抗STAT3抗体コンジュゲート
上記手順に従い、ATがそれぞれST1A5、ST3G12およびST5G12である、生成化合物900、901、902、903、904および905もまた製造した。波線
【化45】
は、明確さのために示していない、当該化合物の他方の対称な半分についての結合点を表す。900(化合物900a)、901(化合物901a)、902(化合物902a)、903(化合物903a)、904(化合物904a)および905(化合物905a)の非フルオレセイン型、すなわちR1が水素であるものもまたそれぞれ製造した。
【化46】
例えば、全体を描いた化合物901は次のとおりである。
【化47】
【0134】
抗KRAS抗体コンジュゲート
上記手順に従い、ATがヒト抗KRASクローンG12D(2016年10月13日出願の米国仮出願第62/407982号に記載される)である、化合物910および911もまた製造した。波線
【化48】
は、明確さのために示していない、化合物910の他方の対称な半分についての結合点を表す。910(化合物912)および911(化合物913)の非フルオレセイン型、すなわちR1が水素であるものもまた製造した。
【化49】
【0135】
セツキシマブ抗体コンジュゲート
上記手順に従い、ATがセツキシマブ(Erbitux(登録商標))である、化合物922および923もまた製造した。波線
【化50】
は、明確さのために示していない、当該化合物の他方の対称な半分についての結合点を表す。922(化合物921)および923(化合物920)の非フルオレセイン型、すなわちR1が水素であるものもまたそれぞれ製造した。
【化51】
【0136】
生物学的アッセイ
パニツムマブ抗体コンジュゲートの送達
化合物802でのヒト癌細胞の処理は、未修飾パニツムマブと比較して、効果的にEGF誘導EGFRリン酸化をブロックした。このデータ(例えば、図4)は、化合物802が、癌細胞増殖に関連するEGFR制御遺伝子の1つであるBCL2L1のmRNA発現を下方制御することをさらに示した。
【0137】
示した種々の用量の抗体で処理したMDA-MB-468トリプルネガティブ乳癌細胞におけるリン酸化されたEGFRのレベルを決定するために、ホスホ-ELISAアッセイにおいて化合物802を用いた。図3は、化合物802がヒト乳癌細胞においてリガンド誘導EGFRリン酸化を阻害することを示す。細胞を18時間飢えさせ、その後、示した種々の量の化合物/抗体で1時間処理した。50ng/mlのEGFを10分間細胞に加えて、リガンド誘導EGFRリン酸化を誘導した。ホスホ-EGFRレベルをELISAベースのアッセイ(Duoset、R&D)により測定した。矢印(図3)は、化合物/抗体の濃度増加を示す。
【0138】
図4は、化合物802がヒト癌細胞におけるEGFR下流抗アポトーシス遺伝子のmRNA発現を強く阻害することを示す。20μg/mlの示した化合物/抗体で18時間処理したMDA-MB-468細胞におけるBCL2L1(Bcl-xL)のmRNAレベル(mRNA/18S)をグラフは示している。BCL2L1遺伝子に特異的な蛍光標識RNAプローブまたはスクランブル配列を有するコントロールプローブ(EMDMillipore、SmartFlare RNA検出プローブ)とさらに18時間細胞をインキュベートした。
【0139】
非コンジュゲートのSTAT3抗体結合
3つの抗STAT3抗体、すなわちST1A5、ST3G12、ST5G12を発現させ、精製した。略称1A5、3G12および5G12は、それぞれST1A5、ST3G12およびST5G12を指し、全体を通して相互交換可能に用いられる。
【0140】
候補抗STAT3抗体の細胞標的への結合を評価するために、酵素結合免疫吸着法(ELISA)アッセイにおいて抗体クローンST1A5、ST3G12、ST5G12の結合を試験した。
【0141】
U251悪性神経膠芽腫細胞を96ウェルプレートに一晩播種した。細胞をパラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、Triton試薬で透過性にし、その後、抗体候補の段階希釈液と1時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、ホースラディシュ・ペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート抗ヒトIgGと30分間インキュベートした。化学発光をプレートリーダーで測定した。血管内皮細胞増殖因子A(VEGF-A)を阻害するモノクローナル抗体であるベバシズマブ(アバスチン)をネガティブコントロールとして用いた。結果は図7に示され、抗STAT3抗体ST1A5、ST3G12およびST5G12のSTAT3についての感受性および特異性を示す。
【0142】
次に、MDA-MB-435乳癌細胞およびU251細胞を用いて、候補抗STAT3抗体の細胞標的への結合を細胞結合アッセイにおいて試験した。細胞を96ウェルプレートに一晩播種し、その後、PFAで固定し、メタノールで透過性にした。細胞を抗STAT3抗体候補ST1A5、ST3G12およびST5G12の段階希釈液と1時間30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を洗浄し、フィコエリスリン(PE)コンジュゲート抗ヒトIgGと30分間インキュベートした。Intellicyte製ハイスループットフローサイトメトリーアナライザーで蛍光を測定した。図8Aおよび図8Bに示す結果は、このアッセイがSTAT3に特異的で感受性であることを示す。図8Aは、MDA-MB-468細胞(乳癌細胞株)における細胞性抗原への抗STAT3抗体ST1A5、ST3G12およびST5G12の結合を示し、図8Bは、U251細胞(神経膠芽腫)における抗STAT3抗体ST1A5、ST3G12およびST5G12の結合を示す。血管内皮細胞増殖因子A(VEGF-A)を阻害するモノクローナル抗体であるベバシズマブ(アバスチン)をネガティブコントロールとして用いた。図8Aおよび図8Bに示すように、抗STAT3抗体ST5G12およびST3G12の両方がSTAT3と結合し、ST5G12は特に強く結合する。ST1A5抗体は、抗体ST5G12およびST3G12と比較して、MDA-MB-468およびU251細胞における細胞性抗原への強力なSTAT3結合を示さなかった。
【0143】
U251細胞において、裸の抗STAT3 ST3G12抗体(ST3G12)対化合物901aの細胞結合を評価した。細胞を採り(lifted)、透過性にし、PBS+/- 2%ウシ胎児血清(FBS)中の裸の抗STAT抗体および化合物901aの量を増加させながらインキュベートした。室温にて45分後、細胞を2回洗浄し、フィコエリスリン(PE)コンジュゲート抗ヒトIgGと暗所で室温にて20分間インキュベートした。その後、細胞を洗浄し、ハイスループットフローサイトメトリー(HTFC)により分析した。U251細胞における細胞性抗原への抗体結合の評価についての結果を図9に示す。図9に記載するように、裸の抗STAT3抗体、ST3G12の結合は、化合物901aより極めて低かった。化合物901aについて、STAT3発現のレベルに依存して、裸の抗体と比較してより高い結合が各細胞株において検出された。
【0144】
次に、裸の抗STAT3抗体および化合物901aの結合親和性を決定した。ヒトSTAT3への抗STAT抗体および化合物901aの親和性を測定するために、BiacoreT200を用いた。抗ヒトFc抗体(GE、BR-1008-39)を、標準的なNHS/EDCカップリング法を用いておよそ1000 RUにCM5センサーチップ上に固定した。抗体(およそ10ug/ml)を10ul/分の流速にて60秒間を捕捉した。組み換えヒトSTAT3-GSTをランニング緩衝液(HBS-EP+、100nmから開始)中連続2段階希釈した。すべての測定を30ul/分の流速にて実施した。表面を(ヒト抗体キットからの)3MMgCl2で60秒間再生させた。データを合わせるために、1:1(Langmuir)結合モデルを用いた。抗STAT3抗体であるST3G12、およびST3G12-PSとして表2に記載した化合物901aについて、結果を次の表2に示す。
【表2】
【0145】
表2に示すように、化合物901aは、抗体のSTAT3への親和性を向上させた。表2のデータは、化合物901aは、未修飾抗STAT3抗体と比較したとき、より高い親和性を有して抗原に結合する(KDが小さいほど、抗体のその抗原に対する親和性が高い)ことを示す。未修飾抗STAT3抗体または化合物901aいずれかのGSTタンパク質への結合はアッセイにおいて観察されず、このことは、抗原-抗体の相互作用割合の差異が異なった結合親和性に寄与することを示唆している。
【0146】
未修飾抗体および化合物901aの結合をまた、修飾されていない抗STAT3 ST3G12抗体および化合物901aの、ヒトIgGおよび組み換えヒトSTAT3タンパク質への結合を評価するために用いられるELISAアッセイにおいて試験した。結果を図10および図11に示す。化合物901aは、未修飾ST3G12抗体よりわずかに低い結合を示した。しかしながら、EC50は同一であった。これらの結果を考慮すると、化合物901aは検出を妨害することが可能である。抗cMet未修飾((H8A2)-未修飾))およびコントロール化合物950(ATにおいてST3G12の代わりにc-Metを有する化合物901aである(WO2013/192594参照))をコントロールとして用いた。
【0147】
抗STAT3抗体の集積および内部移行
様々な試験細胞株における相対的STAT3レベルを図12Aおよび図12Bに示す。ヒト包皮線維芽細胞(HFF)、正常ヒトアストロサイト(NHA)、正常結腸線維芽細胞(CCD-18CO)、正常乳房上皮細胞(MCF-10A)、グリオブラストーマ(U251)、トリプルネガティブ乳癌(MDA-MB-468)、トリプルネガティブ乳癌(HCC1954)およびER+乳癌(MCF-7)における、STAT3の総レベルおよびリン酸化STAT3(ホスホ-STAT3)のレベルを、図12Aに示す。ホスホ-STAT3への抗体を用いてフローサイトメトリーによりリン酸化STAT3のレベルを決定した。用いたコントロールは、一次抗体単独、二次抗体単独およびコントロールIgGに対応するアイソタイプであった。図12Bは、これらの細胞における、リン酸化STAT3の総STAT3に対する比を示す。
【0148】
正常乳房上皮細胞(MCF-10A)およびER+乳癌細胞(MCF-7)を、STAT3リン酸化に対する影響を決定するために裸のST3G12抗体および化合物901aで処理した。細胞を抗体で一晩前処理し、その後、様々な濃度のIL-6で20分間刺激した(10ng/mlまたは40ng/ml)。IL-6は、STAT3アクティベーターである。その後、細胞を溶解させ、タンパク質溶解物をELISAに供して、リン酸化状態を決定した。MCF-10細胞については図13Aに示し、MCF-7細胞については図13Bに示した結果は、裸のST3G12抗体または化合物901aのSTAT3リン酸化に対する影響がほとんどまたは全くないことを示す。これらの結果は、化合物901aがSTAT3リン酸化部位を妨害しないことを示唆する。「OS-AIP」は、コントロールとして用いられる、オリゴ糖コンジュゲート細菌AIPタンパク質を指す。
【0149】
高レベルのSTAT3活性(高STAT3)を有するMDA-MB-468トリプルネガティブ乳癌細胞(図12A参照)を、ヒト血清の割合を増加させながら(1%、5%、10%および20%)10ug/mlの化合物901aで37℃にて90分間処理して、STAT3活性化を誘導した。細胞を固定し、透過性にし、抗ヒトIgGAlexa 546で染色した。化合物901aがMDA-MB-468細胞に集積し、血清濃度の増加に伴って集積の増加が見られることが見出された。
【0150】
図12Aに記載するように、高レベルのSTAT3活性を同様に有するU251神経膠芽腫細胞株において、同一の実験を繰り返した。U251細胞を、ヒト血清の割合を増加させながら(1%、5%、10%および20%)10ug/mlの化合物901aで37℃にて90分間処理した。その後、細胞を固定し、透過性にし、抗ヒトIgGAlexa546で染色した。化合物901がU251細胞に集積し、血清濃度の増加に伴って集積の増加が見られることが見出された(データは示していない)。低レベルのSTAT3活性(低STAT3)を有する正常ヒト乳房上皮細胞株、MCF-10Aを図12Aおよび図12Bに記載する。この細胞株もまた上記手順に従って試験した。化合物901aが血清濃度の増加(1%、5%、10%および20%血清)に伴ってMCF-10A細胞に集積することが見出された(データは示していない)。
【0151】
MDA-MB-468細胞(高STAT3)における化合物901a集積を示す経時変化実験を実施した。細胞を96ウェルプレートに一晩播種した。20ug/mlの化合物901a-Alexa488抗体を0.5、2、4、6、8および24時間の示した時間加えた。示した時間の抗体とのインキュベーション後、細胞を固定し、Incucyteを用いてイメージ化した。図14Aパネル(i)およびパネル(ii)は、時間が増加するにつれて抗体の集積が増加することを示す。パネル(ii)は、細胞数へ正規化したパネル(i)からのデータを示す。図14Bパネル(i)およびパネル(ii)は、MCF-10A細胞(STAT3低)において実施された、同じ実験を示す。低STAT3のMCF-10A細胞で行った実験の結果は高STAT3のMDA-MB-468細胞のものと同様であり、これは、時間が増加するにつれて化合物901aの集積が増加したことを示している。
【0152】
図14Cおよび図14Dは、PSオリゴマーでのST3G12抗体の修飾がその結合親和性に影響を及ぼさないことを示すために実施されるELISA実験の結果を示す。ST3G12未修飾は、未修飾の抗STAT3抗体を指す(図14C)。Superblockは、ELISAアッセイにおいて用いられるブロッキング緩衝液を指す。図14Dは、抗体の修飾がその結合親和性に影響を及ぼさないことを示すために実施されるELISA実験の結果を示す。ST3G12未修飾は、未修飾の抗STAT3抗体を指す。Superblockは、ELISAアッセイにおいて用いられるブロッキング緩衝液を指す。
【0153】
高レベルのSTAT3活性(高STAT3)を有するMDA-MB-468トリプルネガティブ乳癌細胞を、ヒト血清の割合を増加させながら(1%、5%、10%および20%)10ug/mlの化合物901aで37℃にて90分間処理して、STAT3活性化を誘導した。その後、細胞を固定し、透過性にし、抗ヒトIgGAlexa 546で染色した。図15Aの結果は、化合物901aがMDA-MB-468細胞に集積し、血清濃度の増加に伴って集積の増加が見られることを示す。
【0154】
化合物の細胞取込み
化合物901aが細胞を透過することを確認する実験を実施した。要するに、予め洗浄したカバーガラスを37℃にて2時間コラーゲンでコーティングした。100,000のU251細胞をカバーガラスに播種した。培地を取り除き、細胞をfluorobriteで1回リンスした。次に、20ug/mLの特定抗体を37℃にて2時間加えた。細胞を4%PFAにおいて15分間固定し、その後0.1%TritonXで15分間透過性にした。細胞を3%BSAで30分間ブロックし、1:250GAH-Alexa fluor 488を1時間加えた。次に、200x 小麦胚芽凝集素Alexa fluor 555(WGA 555)および1:1000DAPIを30分間加えた。細胞をPBSで3回洗浄し、prolong gold退色防止剤をのせた。顕微鏡を用いて、すべての化合物901aおよび化合物901処理試料から細胞透過が観察されることが見出された。ネガティブコントロール、未修飾ST3G12抗体は内部移行を示さなかった。結果を図15A図15B、および図15E(化合物901について)に顕微鏡画像で示す。
【0155】
図15Bにおいて、U251細胞を、ヒト血清の割合を増加させながら(0%および20%)10ug/mlの化合物901a抗体で37℃にて90分間処理した。図15Eにおいて、赤色の蛍光は血漿膜を示し、青色の蛍光は核を示し、緑色の蛍光は化合物901を示す。図15Cは、15Aに記載の実験と同一であるが、MCF-10Aヒト正常乳房上皮細胞における血清濃度をさらに増加させた実験の結果を示す。図15Dは、5ug/mLおよび10ug/mLの化合物901aで処理したMDA-MB-468ヒト乳癌細胞の顕微鏡画像を示す。
【0156】
別個の実験において、化合物901aが細胞へ内部移行され、STAT3活性化時に核の周囲に再分布することが示された。MCF-10A細胞(5,000細胞/ウェル)を血清無しでまたは20%ヒト血清と共に一晩インキュベートして、STAT3活性化を誘導した。10ug/mlの化合物901aを細胞に2時間加えた。Alexa546にコンジュゲートした抗ヒトIgGで染色した細胞のEVOS顕微鏡により細胞内の抗体を可視化した。
【0157】
図16Aおよび図16Bは、化合物901aの内部移行の温度の影響を示す。図16Aは、U251細胞における化合物901aの内部移行に対する温度の影響を示す。U251細胞を、10ug/mlの濃度のAlexaflour NHS 488標識を有する化合物901aとインキュベートした。4℃および37℃における経時的に抗体コンジュゲートを内部移行した細胞の数に対応する、緑色数として結果を示した。図16Bは、MDA-MB-468細胞における化合物901aの内部移行に対する温度の影響を示すグラフである。MDA-MB-468細胞を、10ug/mlの濃度のAlexaflour NHS 488標識を有する化合物901aとインキュベートした。4℃および37℃における経時的に化合物901aを内部移行した細胞の数に対応する、緑色数として結果を示した。
【0158】
化合物901aの細胞取込みを決定する経時変化分析もまた実施した。MDA-MB-480(高STAT3)およびMCF-10A(低STAT3)細胞を5000細胞/ウェルの濃度で96ウェルプレートに播種した。24時間後、Alexa488で標識した20ug/mlの化合物901aを細胞に次の時間加えた:0.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間および24時間。その後、細胞を固定し、Incucyteを用いてイメージ化した。図17Aは、MDA-MB-436細胞に集積した化合物901aを示す。図17Bは、MCF-10A細胞に集積した化合物901aを示す。両方の細胞株において、集積は6時間で最大になると思われた。
【0159】
次に、化合物901aがどのように細胞に侵入するかの機構を試験した。MDA-MB-468(高STAT3)およびMCF-10A(低STAT3)細胞を5,000細胞/ウェルにて96ウェルプレートに一晩播種した。細胞をクラスリン阻害剤Pitstop2(60uM)またはカベオリン阻害剤filipin(1ug/ml)で30分間処理した。20ug/mlの化合物901a-Alexa488抗体をさらに30分間加えた。ビヒクル単独をコントロールとして用いた。その後、細胞を固定し、Incucyteでイメージ化した。図18は、化合物901aがエンドサイトーシス非依存性機構を用いてMDA-MB-438(STAT3高)腫瘍細胞に侵入したことを示す。
【0160】
カベオリンおよびクラスリン依存性の化合物901aが介在する取込みをMCF-10A細胞において試験した。クラスリン介在性エンドサイトーシスは、細胞質タンパク質クラスリンに主に関連するタンパク質の複合体で構成される形態学的に特徴的な被覆を有する小胞が介在する。カベオラは、最も一般的に報告されている非クラスリン被覆形質膜芽であり、これはすべてではないが多くの細胞タイプの表面に存在する。それらは、コレステロールおよび糖脂質が豊富にある二重層を有するコレステロール結合タンパク質カベオリン(Vip21)からなる。クラスリン介在性エンドサイトーシスおよびカベオラの両方は、細胞外分子を細胞内へ輸送する。5,000細胞/ウェルを96ウェルプレートに一晩播種した。細胞をクラスリン阻害剤Pitstop2(30uMまたは60uM)またはカベオリン阻害剤filipin(0.5ug/mlまたは1.0ug/ml)で30分間前処理した。20ug/mlの化合物901a-Alexa488抗体をさらに30分間加えた。細胞を固定し、Incucyteでイメージ化した。DMSOおよび抗体のみをコントロールとして用いた。図19パネル(i)に示すように、30uMおよび60uMの濃度のクラスリン阻害剤PS2での処理は、化合物901a取込みを阻害し、一方、カベオリン阻害剤filipinでの処理は、0.5ug/mlの濃度ではほとんど効果がなく、1.0ug/mlでより大きな効果を有した。図19パネル(ii)は、細胞数に正規化されたデータを示す。図20は、MDA-MB-468(STAT3高)細胞において実施された同じ実験の結果を示す。
【0161】
細胞への化合物901の侵入の温度依存性
化合物901aの侵入が温度に依存するかを決定する実験を実施した。10,000のU251細胞を播種した。化合物901aを37℃または4℃にて20ug/mLの濃度で選択した時間インキュベートし、その後4%PFAにおいて固定した。細胞を0.1%tritonXで透過性にし、その後、3%BSAで固定し、1:250Alexa 488 GAH IgGで処理した。その後、細胞を洗浄し、イメージ化した。結果を図21Aおよび図21Bに示す。図21Aは、4℃における化合物901aの阻害は、時間が増加するにつれて、緑色数は増加しなかったことを示す。37℃における化合物901aについて、緑色数は240分まで増加した。240分後、テーパーまたはプラトーのいずれかがあった。図21Bは、図21Aに記載の実験から240分の時点(「37℃1」および「4℃ 1」)を、240分の時点における第2の実験(「37℃ 2」および4℃ 2」))と比較する。4℃でのシグナルはおよそ同じままであったが、37℃のシグナルにおいて大きな上昇が観察された。
【0162】
COLO205におけるIL-26-STAT3経路のブロッキング
化合物901aがIL-26誘導IL-10サイトカインおよび抗アポトーシス遺伝子BCL2L1およびBIRC5の発現をブロックできるかを試験する実験を実施した。要するに、COLO205細胞を100k/ウェルにて12ウェルプレートに播種した。50ug/mLPS-OPRF(OPRF細菌タンパク質への抗体、PSにコンジュゲートしている、コントロールとして用いられる)、未修飾ST3G12、化合物901a、または1uMJAK阻害剤トファシチニブと細胞を37℃にて90分間プレインキュベートした。細胞を2.5ug/mL IL-26(0.1%ヒト血清担体タンパク質)で一晩刺激した。一晩刺激後、RNAを細胞から抽出し、cDNAに逆転写し、続いてrtPCRを行った。結果を図22に示す。図22に示すように、IL-26は、IL-10、BCL2L1(BCL-XL)およびBIRC5(Survivin)の発現を刺激し、これは化合物901aにより顕著に逆転した。
【0163】
多くの実施態様を記載してきたが、本発明の化合物および方法を利用する他の実施態様を提供するために基本的な実施例が変更され得ることは明らかである。したがって、本発明の範囲は、例として示されている特定の実施態様ではなく特許請求の範囲により定義されることが理解されるだろう。
【0164】
本願全体を通して引用されるすべての参考文献(文献の引用、発行された特許、公開された特許出願および同時係属中特許出願を含む)の内容は、出典明示によりその全体として本明細書の一部とする。他に定義しない限り、本明細書で用いられるすべての技術的および科学的用語は、当業者に一般に知られている意味と一致する。
本開示は、以下の態様および実施態様を包含する。
[1]
式I:
【化52】
[式中、
各Baは、独立して、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、およびチミン(T)より選択され;
Xは、OまたはSであり;
各R1は、独立して、水素およびフルオロフォアで置換される(C1-C6)アルキルより選択され;
qは、12~35の整数であり;
rは、1~10の整数であり;
tは、1~10の整数であり;
Lは、-CH2-R2-*であり;
R2は、-C(=O)NRa、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)Rd、=NORe、-NRa、-NRaRb、-ORb、-S(O)kRb、-NRaS(O)2Rb、-S(O)2NRaRb、-S(O)2NRa、-C(=O)ORb、-OC(=O)ORb、-OC(=O)Rb、-C(=O)NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)ORb、-OC(=O)NRaRb、フェニル、-OC(=O)NRa、-NRaC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)NRa、-NRa(C=S)NRaRb、-NRa(C=S)NRa、および-C(=O)Rbより選択される1または2つの基で置換される-(C1-C6)アルキルであり;
kは、0、1、または2であり;
各Raは、独立して、水素またはRfで任意に置換される(C1-C6)アルキルであり;
各Rbは、独立して、Rfで任意に置換される(C1-C6)アルキルまたは-C(=O)Rfであり;
Rdは、-[(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル]vC(=O)NHであり;
Reは、-[(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル]pC(=O)であり;
各Rfは、独立して、
【化53】
であり、式中、波線結合は、Raにより定義される(C1-C6)アルキル、またはRbにより各々定義される(C1-C6)アルキルもしくはカルボニルへの結合点を示し、;
Rgは、(C1-C6)アルキルまたは-[(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル]wC(=O)NHであり;
環Aは、
【化54】
であり、式中、破線結合は、Rfのトリアゾリルへの結合点を示し、波線結合は、Raにより定義される(C1-C6)アルキル、またはRbにより各々定義される(C1-C6)アルキルもしくはカルボニルへの結合点を示し;
pは、1~10の整数であり;
vは、1~10の整数であり;
wは、2~12の整数であり;
*は、ATへの結合点を示し;そして
ATは、抗体である]
を有する、化合物。
[2]
R2が、-C(=O)NRa、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)Rd、=NORe、-NRa、-NRaRb、-ORb、-S(O)kRb、-NRaS(O)2Rb、-S(O)2NRaRb、-S(O)2NRa、-C(=O)ORb、-OC(=O)ORb、-OC(=O)Rb、-C(=O)NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)ORb、-OC(=O)NRaRb、-OC(=O)NRa、-NRaC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)NRa、-NRa(C=S)NRaRb、-NRa(C=S)NRa、または-C(=O)Rbで置換される-(C1-C6)アルキルである、[1]に記載の化合物。
[3]
R2が、-C(=O)NRa、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)Rd、=NORe、-NRa、-NRaRb、-ORb、-S(O)2NRaRb、-S(O)2NRa、-C(=O)ORb、-C(=O)NRaRb、-NRaC(=O)Rb、-NRaC(=O)ORb、-NRaC(=O)NRaRb、-NRaC(=O)NRa、または-C(=O)Rbで置換される-(C1-C6)アルキルである、[1]または[2]に記載の化合物。
[4]
R2が、-(C1-C6)アルキル-NRaC(=O)Rd、-(C1-C6)アルキル-NRaC(=O)Rb、または-(C1-C6)アルキル(=NO)Reである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の化合物。
[5]
Rdが、-[(C1-C4)アルキル-O-(C1-C4)アルキル]vC(=O)NHである、[1]~[4]のいずれか一項に記載の化合物。
[6]
Reが、-[(C1-C4)アルキル-O-(C1-C4)アルキル]pC(=O)である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の化合物。
[7]
Rgが、-[(C1-C4)アルキル-O-(C1-C4)アルキル]vC(=O)NHである、[1]~[6]のいずれか一項に記載の化合物。
[8]
各Raが、独立して、水素および(C1-C6)アルキルより選択される、[1]~[7]のいずれか一項に記載の化合物。
[9]
Rbが、Rfで置換される(C1-C6)アルキルまたは-C(=O)Rfである、[1]~[8]のいずれか一項に記載の化合物。
[10]
pが、1~6の整数である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の化合物。
[11]
pが、1~4の整数である、[1]~[10]のいずれか一項に記載の化合物。
[12]
vが、1~6の整数である、[1]~[11]のいずれか一項に記載の化合物。
[13]
vが、1~4の整数である、[1]~[12]のいずれか一項に記載の化合物。
[14]
wが、2~10の整数である、[1]~[13]のいずれか一項に記載の化合物。
[15]
wが、2~8の整数である、[1]~[14]のいずれか一項に記載の化合物。
[16]
wが、2~4の整数である、[1]~[15]のいずれか一項に記載の化合物。
[17]
Rfが、
【化55】
である、[1]~[16]のいずれか一項に記載の化合物。
[18]
環Aが、
【化56】
である、[1]~[17]のいずれか一項に記載の化合物。
[19]
フルオロフォアが、存在する場合、フルオレセインである、[1]~[18]のいずれか一項に記載の化合物。
[20]
化合物が、式II:
【化57】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[4]、[7]~[9]および[10]~[19]のいずれか一項に記載の化合物。
[21]
化合物が、式IIa:
【化58】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[4]、[7]~[9]および[10]~[20]のいずれか一項に記載の化合物。
[22]
化合物が、式IIa':
【化59】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[4]、[7]~[9]および[10]~[20]のいずれか一項に記載の化合物。
[23]
化合物が、式IIb:
【化60】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[4]、[7]~[9]および[10]~[22]のいずれか一項に記載の化合物。
[24]
化合物が、式III:
【化61】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[5]、[8]、[10]および[19]のいずれか一項に記載の化合物。
[25]
化合物が、式III':
【化62】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[13]、[19]および[24]のいずれか一項に記載の化合物。
[26]
化合物が、式IIIa':
【化63】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[13]、[19]および[24]のいずれか一項に記載の化合物。
[27]
化合物が、式IIIa:
【化64】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[13]および[24]~[26]のいずれか一項に記載の化合物。
[28]
化合物が、式IV:
【化65】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[11]および[19]のいずれか一項に記載の化合物。
[29]
化合物が、式IV':
【化66】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[11]、[19]および[28]のいずれか一項に記載の化合物。
[30]
化合物が、式IVa':
【化67】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[11]、[19]および[28]のいずれか一項に記載の化合物。
[31]
化合物が、式IVa:
【化68】
で示される化合物、またはその医薬的に許容される塩である、[1]~[11]および[28]~[30]のいずれか一項に記載の化合物。
[32]
Xが、Sである、[1]~[31]のいずれか一項に記載の化合物。
[33]
rが、2~6の整数である、[1]~[32]のいずれか一項に記載の化合物。
[34]
rが、3~5の整数である、[1]~[33]のいずれか一項に記載の化合物。
[35]
rが、4である、[1]~[34]のいずれか一項に記載の化合物。
[36]
tが、1~6の整数である、[1]~[35]のいずれか一項に記載の化合物。
[37]
tが、2~4の整数である、[1]~[36]のいずれか一項に記載の化合物。
[38]
tが、3である、[1]~[37]のいずれか一項に記載の化合物。
[39]
qが、15~30の整数である、[1]~[38]のいずれか一項に記載の化合物。
[40]
qが、15~25の整数である、[1]~[39]のいずれか一項に記載の化合物。
[41]
qが、17である、[1]~[40]のいずれか一項に記載の化合物。
[42]
3'末端にて開始するチオリン酸オリゴヌクレオチド配列が、TCCATGAGCTTCCTGATGCTである、[1]~[41]のいずれか一項に記載の化合物。
[43]
ATが、IgG抗体である、[1]~[42]のいずれか一項に記載の化合物。
[44]
ATが、IgG1またはIgG4抗体である、[1]~[43]のいずれか一項に記載の化合物。
[45]
ATが、抗STAT3、パニツムマブ、CTLA4、またはVEGFR2である、[1]~[44]のいずれか一項に記載の化合物。
[46]
化合物が:
【化69】
【化70】
【化71】
【化72】
【化73】
【化74】
【化75】
である、[1]に記載の化合物。
[47]
[1]~[46]のいずれか一項に記載の化合物、またはその医薬的に許容される塩;および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
[48]
【化76】
【化77】
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
の混合物;および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
[49]
抗体を細胞へ送達する方法であって、[1]~[46]のいずれか一項に記載の化合物、または[47]もしくは[48]に記載の組成物で細胞を処理することを含む、方法。
[50]
処置を必要とする対象体において自己免疫疾患、発達障害、炎症性疾患、代謝障害、心血管疾患、肝臓疾患、消化管疾患、感染性疾患、内分泌疾患、神経障害、および癌より選択される疾患または障害を処置する方法であって、治療上有効量の[1]~[46]のいずれか一項に記載の化合物、または[47]もしくは[48]に記載の組成物を対象体に投与することを含む、方法。
[51]
処置を必要とする対象体において癌を処置する方法であって、治療上有効量の[1]~[46]のいずれか一項に記載の化合物、または[47]もしくは[48]に記載の組成物を対象体に投与することを含む、方法。
[52]
式I:
【化83】
[式中、
各Baは、独立して、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、およびチミン(T)より選択され;
Xは、OまたはSであり;
各R1は、独立して、水素およびフルオロフォアで置換される(C1-C6)アルキルより選択され;
qは、12~35の整数であり;
rは、1~10の整数であり;
tは、1~10の整数であり;
Lは、-CH2-R2-*であり;
R2は、-(C1-C6)アルキル-NRaC(=O)Rbであり;
Raは、水素または(C1-C6)アルキルであり;
Rbは、Rfで置換される(C1-C6)アルキルまたは-C(=O)Rfであり;
Rfは、
【化84】
であり;
環Aは、
【化85】
であり、式中、破線結合は、Rfのトリアゾリルへの結合点を示し、波線結合は、Rbにより
各々定義される(C1-C6)アルキルまたはカルボニルへの結合点を示し;そして
Rgは、(C1-C6)アルキルまたは-[(C1-C6)アルキル-O-(C1-C6)アルキル]wC(=O)NHであり;
wは、2~12の整数であり;
*は、ATへの結合点を示し;そして
ATは、抗体である]
を有する、化合物の製造方法であって;
該方法が、式100:
【化86】
[式中、
X2は、-CH2(C1-C6)アルキル-NRaC(=O)Rbであり;
Raは、水素または(C1-C6)アルキルであり;
Rbは、R40で置換される(C1-C6)アルキルまたは-C(=O)R40であり;そして
R40は、
【化87】
であり、式中、波線は、Rbにより定義される(C1-C6)アルキルまたはカルボニルへの結合点を示す]
を有する化合物を、式AT-Yを有し、式中Yは-RgN3である化合物と反応させることを含む、製造方法。
[53]
Raが、水素であり;そしてRbが、-C(=O)Rfで置換される(C1-C6)アルキルである、[52]に記載の製造方法。
[54]
Rgが、-[(C1-C3)アルキル-O-(C1-C3)アルキル]wC(=O)NHである、[52]または[53]に記載の製造方法。
[55]
wが、2~8の整数である、[52]~[54]のいずれか一項に記載の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図16A
図16B
図17A
図17B
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
【配列表】
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【外国語明細書】