(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130545
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】直交集成板
(51)【国際特許分類】
E04C 2/12 20060101AFI20220830BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20220830BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
E04C2/12 E
E04B5/02 Q
B27M3/00 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101856
(22)【出願日】2022-06-24
(62)【分割の表示】P 2018242341の分割
【原出願日】2018-12-26
(71)【出願人】
【識別番号】591115006
【氏名又は名称】三菱地所株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 渉
(57)【要約】
【課題】コストの点で改善された直交集成板を提供する。
【解決手段】直交集成板は、積層接着された複数のラミナ層を備え、各ラミナ層は幅方向に隣り合うように配置された複数のラミナから構成されている。複数のラミナ層のうち、最外層に位置する第1ラミナ層および第2ラミナ層は、第1軸方向に沿った繊維方向を有する。第1ラミナ層および第2ラミナ層の間には、第1軸方向に対して直交する第2軸方向に沿った繊維方向を有する第3ラミナ層が配置されている。第3ラミナ層は、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナを含み、第3ラミナ層において、幅方向に隣り合うラミナ同士は接着されている。また各ラミナは、厚さ38mmまたはツーバイ材からなるラミナを含んでいてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層接着された複数のラミナ層を備え、各ラミナ層は幅方向に並べて配置された複数のラミナから構成されており、
前記複数のラミナ層のうち、最外層に位置する第1ラミナ層および第2ラミナ層は、第1軸方向に沿った繊維方向を有し、
前記第1ラミナ層および第2ラミナ層の間には、前記第1軸方向に対して直交する第2軸方向に沿った繊維方向を有する第3ラミナ層が配置されており、
前記第3ラミナ層は、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナを含み、
前記第1ラミナ層の厚さは、前記第1ラミナ層と前記第2ラミナ層との間に配置された1または2以上のラミナ層の各々の厚さより大きく、
前記第3ラミナ層は、少なくとも、第1のラミナと、前記第1のラミナより幅方向の長さが短い第2のラミナと、を含む、
ことを特徴とする直交集成板。
【請求項2】
前記第3ラミナ層において、幅方向に隣り合うラミナ同士は接着されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の直交集成板。
【請求項3】
前記第3ラミナ層は、前記第2のラミナより幅方向の長さが短い第3のラミナをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の直交集成板。
【請求項4】
前記第2ラミナ層の厚さは、前記第1ラミナ層と前記第2ラミナ層との間に配置された1または2以上のラミナ層の各々の厚さより大きい
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の直交集成板。
【請求項5】
前記第1ラミナ層は、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナを含み、前記第1ラミナ層において、幅方向に隣り合うラミナ同士は接着されている、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の直交集成板。
【請求項6】
前記第2ラミナ層は、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナを含み、前記第2ラミナ層において、幅方向に隣り合うラミナ同士は接着されている、
ことを特徴とする請求項5に記載の直交集成板。
【請求項7】
請求項1~6のいずれに記載の直交集成板を鉄骨梁の上に敷設するステップと、
前記直交集成板の上にコンクリートを打設するステップと、
を備えた工法。
【請求項8】
鉄骨梁と、
前記鉄骨梁に上に敷設された請求項1~6のいずれに記載の直交集成板と、
前記直交集成板の上に打設されたコンクリートと、
を備えた建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交集成板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、構造用の新しい建築材料として、CLT(Cross Laminated Timber)の利用が提案されている。CLTとは、複数のラミナ層を繊維方向が互いに直交するように積層接着したパネルである。
【0003】
CLTには以下のような利点がある。すなわち、繊維方向が直交するように積層されていることから、大判で高い構造耐力を有するパネルを作ることが可能であり、中規模以上の集合住宅やオフィス・商業施設などにも活用することができる。また、パネル自体を壁や床として使用できるため、施工が簡易であり、大幅な工期短縮が可能であるとともに、型枠工等の専門技術を有する職人が不要となり、型枠工不足による建築費高騰の対策にも有効である。
【0004】
特許文献1には、防耐火性能を高めるために、CLTの表面ラミナ層と裏面ラミナ層との間の少なくとも1層全体を軽量気泡コンクリートパネルで置き換えた部材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CLTについては、「直交集成板」として日本農林規格(JAS)が制定されている(「直交集成板の日本農林規格」、制定:平成25年12月20日農林水産省告示第3079号、最終改正:平成28年8月30日農林水産省告示第1640号。以下、「現行のCLTのJAS規格」と呼ぶことがある)。
【0007】
しかしながら、現行のCLTのJAS規格では、告示による基準強度を設定する際に安全側にかなりの低減率がかけられており、また一般の集成材と同等の基準をラミナや接着性能にも求めているため、過剰な基準となっている。たとえば、現行のCLTのJAS規格では、幅方向に隣り合うラミナ同士は(接着されずに)並べられているだけであってもよいし、接着されていてもよいとされているものの、接着されていないときのせん断耐力にて評価が行われており、そのような評価に基づいて、ラミナの幅は、強軸方向に用いるものにあっては厚さの1.75倍以上、弱軸方向に用いるものにあっては厚さの3.5倍以上であると規定されている。また、各ラミナの厚さは、原則として等厚であると規定されている。
【0008】
このように、現行のCLTのJAS規格は、規格が厳しく、寸法等が一律のラミナが用いられているが、そのような寸法等が一律のラミナを木取りする場合には、製材歩留まりが低くなることから、低コスト化が困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたものである。本発明の目的は、コストの点で改善された直交集成板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様に係る直交集成板は、
積層接着された複数のラミナ層を備え、各ラミナ層は幅方向に隣り合うように配置された複数のラミナから構成されており、
前記複数のラミナ層のうち、最外層に位置する第1ラミナ層および第2ラミナ層は、第1軸方向に沿った繊維方向を有し、
前記第1ラミナ層および第2ラミナ層の間には、前記第1軸方向に対して直交する第2軸方向に沿った繊維方向を有する第3ラミナ層が配置されており、
前記第3ラミナ層は、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナを含み、前記第3ラミナ層において、幅方向に隣り合うラミナ同士は接着されている。
【0011】
このような態様によれば、その繊維方向が第2軸方向(弱軸方向)に沿った第3ラミナ層が、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナを含んでいるため、現行のCLTのJAS規格から外れるものの、第3ラミナ層のラミナとして、原木ごとに最適な利用効率となるように製材された不等幅のラミナを利用することが可能となる。これにより、ラミナの製材歩留まりを改善でき、直交集成板の低コスト化を実現できる。また、第3ラミナ層が、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナを含んでいても、幅方向に隣り合うラミナ同士が接着されていることにより、せん断耐力を向上させることが可能である。
【0012】
本発明の第2の態様に係る直交集成板は、第1の態様に係る直交集成板であって、
前記第1ラミナ層の厚さは、前記第1ラミナ層と前記第2ラミナ層との間に配置された1または2以上のラミナ層の各々の厚さより大きい。
【0013】
このような態様によれば、直交集成板の高強度化が可能である。
【0014】
本発明の第3の態様に係る直交集成板は、第2の態様に係る直交集成板であって、
前記第1ラミナ層は、ツーバイ材からなるラミナを含む。
【0015】
このような態様によれば、第1ラミナ層が、入手しやすいツーバイ材からなるラミナを含んでいるため、更なる低コスト化が可能である。
【0016】
本発明の第4の態様に係る直交集成板は、第2または3の態様に係る直交集成板であって、
前記第2ラミナ層の厚さは、前記第1ラミナ層と前記第2ラミナ層との間に配置された1または2以上のラミナ層の各々の厚さより大きい。
【0017】
このような態様によれば、直交集成板の更なる高強度化が可能となる。
【0018】
本発明の第5の態様に係る直交集成板は、第4の態様に係る直交集成板であって、
前記第2ラミナ層は、ツーバイ材からなるラミナを含む。
【0019】
このような態様によれば、第2ラミナ層が、入手しやすいツーバイ材からなるラミナを含んでいるため、更なる低コストが可能となる。
【0020】
本発明の第6の態様に係る直交集成板は、第1~5のいずれかの態様に係る直交集成板であって、
前記第1ラミナ層は、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナを含み、前記第1ラミナ層において、幅方向に隣り合うラミナ同士は接着されている。
【0021】
このような態様によれば、その繊維方向が第1軸方向(強軸方向)に沿った第1ラミナ層が、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナを含んでいるため、現行のCLTのJAS規格から外れるものの、第1ラミナ層のラミナとして、原木ごとに最適な利用効率となるように製材された不等幅のラミナを利用することが可能となる。これにより、ラミナの製材歩留まりを改善でき、直交集成板の更なる低コスト化を実現できる。また、第1ラミナ層が、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナを含んでいても、幅方向に隣り合うラミナ同士が接着されていることにより、せん断耐力を向上させることが可能である。
【0022】
本発明の第7の態様に係る直交集成板は、第6の態様に係る直交集成板であって、
前記第2ラミナ層は、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナを含み、前記第2ラミナ層において、幅方向に隣り合うラミナ同士は接着されている。
【0023】
このような態様によれば、その繊維方向が第1軸方向(強軸方向)に沿った第2ラミナ層も、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナを含んでいるため、現行のCLTのJAS規格から外れるものの、第2ラミナ層のラミナとして、原木ごとに最適な利用効率となるように製材された不等幅のラミナを利用することが可能となる。これにより、ラミナの製材歩留まりを改善でき、直交集成板の更なる低コスト化を実現できる。また、第2ラミナ層が、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナを含んでいても、幅方向に隣り合うラミナ同士が接着されていることにより、せん断耐力を向上させることが可能である。
【0024】
本発明の第8の態様に係る工法は、
第1~7のいずれかの態様に係る直交集成板を鉄骨梁の上に敷設するステップと、
前記直交集成板の上にコンクリートを打設するステップと、
を備える。
【0025】
本発明の第9の態様に係る建物は、
鉄骨梁と、
前記鉄骨梁に上に敷設された第1~7のいずれかの態様に係る直交集成板と、
前記直交集成板の上に打設されたコンクリートと、
を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、コストの点で改善された直交集成板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る直交集成板を示す斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、ラミナの木取り方法の一例を説明するための図である。
【
図2B】
図2Bは、ラミナの木取り方法の別の一例を説明するための図である。
【
図3A】
図3Aは、直交集成板の使用方法の一例を説明するための図である。
【
図3B】
図3Bは、直交集成板の使用方法の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、一実施の形態の一変形に係る直交集成板を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。また、各図においては、図示の理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0029】
本明細書において「ラミナ」とは、直交集成板を構成する最小単位のひき板(ひき板をその繊維方向を互いにほぼ平行にして長さ方向に接合接着して調整したもの、小角材をその繊維方向を互いに平行にして幅方向に接着したもの及びそれをさらに長さ方向に接合接着したものを含む。)をいう。「プライ」とは、ラミナをその繊維方向を互いにほぼ平行にして幅方向に並べ又は接着したものをいい、「ラミナ層」ということもある。「強軸方向」とは、直交集成板の最も外側に位置するプライの繊維方向をいう。「弱軸方向」とは、直交集成板の強軸方向に対して直角の方向をいう。
【0030】
<直交集成板の構造>
図1は、一実施の形態に係る直交集成板10を示す斜視図である。
【0031】
図1に示すように、直交集成板10は、その繊維方向を互いに直角にして厚さ方向43に積層接着された複数のラミナ層11~15を備えている。各ラミナ層11~15は、幅方向に隣り合うように配置された複数のラミナから構成されている。
【0032】
図示された例では、第2ラミナ層12の上に第4ラミナ層14が積層接着されており、第4ラミナ層14の上に第5ラミナ層15が積層接着されており、第5ラミナ層15の上に第3ラミナ層13が積層接着されており、第3ラミナ層13の上に第1ラミナ層11が積層接着されている。
【0033】
図1に示すように、複数のラミナ層11~15のうち、最外層に位置する第1ラミナ層11および第2ラミナ層12と第5ラミナ層15は、それぞれ、第1軸方向41に沿った繊維方向を有している。第1ラミナ層11および第2ラミナ層12が最外層に位置することから、その繊維方向である第1軸方向41は、直交集成板10の強軸方向となっている。
【0034】
また、第1ラミナ層11および第2ラミナ層12の間には、第1軸方向41に対して直交する第2軸方向42に沿った繊維方向を有する第3ラミナ層13と第4ラミナ層14が配置されている。第2軸方向42は、第1軸方向41に対して直交することから、直交集成板10の弱軸方向となっている。
【0035】
図1に示すように、第1ラミナ層11は、幅方向に隣り合うように配置された複数のラミナ11a~11dを有しており、第2ラミナ層12は、幅方向に隣り合うように配置された複数のラミナ12a~12dを有しており、第3ラミナ層13は、幅方向に隣り合うように配置された複数のラミナ13a~13fを有しており、第4ラミナ層14は、幅方向に隣り合うように配置された複数のラミナ14a~14fを有しており、第5ラミナ層15は、幅方向に隣り合うように配置された複数のラミナ15a~15dを有している。
【0036】
図2Aは、ラミナの木取り方法の一例を説明するための図である。
図2に示す例では、直径300mm以上の大径木からなる原木20に、4本の縦切断線に沿って刃を入れることで、1つのラミナ素材21と、2つのタイコ材22と、2つの内外装材23とを製材する。次いで、複数の横切断線に沿って等間隔に刃を入れることで、ラミナ素材21からラミナ24を製材する。
図2Bに示すように、複数の縦切断線に沿って等間隔に刃を入れることで、ラミナ素材21からラミナ24を製材してもよい。
【0037】
図2Aおよび
図2Bに示すような木取り方法によれば、原木20ごとに最適な利用効率となるように製材されたラミナ素材21からラミナ24が得られるため、幅や厚さが一律でない不等幅のラミナ24が製材されることになるものの、従来売れそうな製材や寸法等が一律のラミナが取られた後にチップに回されるなどして無駄にされていた端の部分からも2つのタイコ材22および2つの内外装材23が得られるため、原木20の利用効率を
高めることができ、製材歩留まりの高いラミナ24を得ることができる。そして、このようにして得られたラミナ24が、各ラミナ層11~15のラミナとして利用されることで、直交集成板10の低コスト化が可能となる。
【0038】
図1に示すように、第1ラミナ層11の厚さは、第1ラミナ層11と第2ラミナ層12との間に配置された第3~第5ラミナ層13~15の各々の厚さより大きくなっていてもよい。具体的には、たとえば、第3~第5ラミナ層13~15の各々の厚さが30mmであるのに対し、第1ラミナ層11の厚さが38mmであってもよい。第1ラミナ層11は、ツーバイ材からなるラミナを含んでいてもよい。
【0039】
同様に、第2ラミナ層12の厚さは、第1ラミナ層11と第2ラミナ層12との間に配置された第3~第5ラミナ層13~15の各々の厚さより大きくなっていてもよい。具体的には、たとえば、第3~第5ラミナ層13~15の各々の厚さが30mmであるのに対し、第2ラミナ層12の厚さが38mmであってもよい。第2ラミナ層12は、ツーバイ材からなるラミナを含んでいてもよい。
【0040】
本件発明者の知見によれば、直交集成板の曲げ性能(強度)は、最外層のラミナ層の厚さに大きく依存している。したがって、最外層に位置する第1ラミナ層11および第2ラミナ層12の厚さが、第3~第5ラミナ層13~15の各々の厚さより大きいことにより、直交集成板10の高強度化が可能となる。
【0041】
本実施の形態では、
図1に示すように、第3ラミナ層13は、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナ13cを少なくとも1つ含んでいる。そして、第3ラミナ層13において、幅方向に隣り合うラミナ13a~13f同士は接着剤で接着されている。接着剤としては、たとえば、水性高分子系接着剤が用いられ、より具体的には、たとえば、イソシアネート系接着剤またはレゾルシノール系接着剤が用いられる。第3ラミナ層13が、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナ13cを含んでいても、幅方向に隣り合うラミナ13a~13f同士が接着されていることにより、せん断耐力を向上させることが可能である。
【0042】
同様に、第4ラミナ層14は、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナ14dを少なくとも1つ含んでおり、第4ラミナ層14において、幅方向に隣り合うラミナ14a~14f同士は接着剤で接着されていてもよい。第4ラミナ層14が、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナ14dを含んでいても、幅方向に隣り合うラミナ14a~14f同士が接着されていることにより、せん断耐力を向上させることが可能である。
【0043】
また、本実施の形態では、
図1に示すように、第1ラミナ層11は、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナ11bを少なくとも1つ含んでいる。そして、第1ラミナ層11において、幅方向に隣り合うラミナ11a~11d同士は接着剤で接着されている。第1ラミナ層11が、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナ11bを含んでいても、幅方向に隣り合うラミナ11a~11d同士が接着されていることにより、せん断耐力を向上させることが可能である。
【0044】
同様に、第2ラミナ層12は、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナ12cを少なくとも1つ含んでおり、第2ラミナ層12において、幅方向に隣り合うラミナ12a~12d同士は接着剤で接着されていてもよい。第2ラミナ層12が、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナ12cを含んでいても、幅方向に隣り合うラミナ12a~12d同士が接着されていることにより、せん断耐力を向上させることが可能である。
【0045】
<直交集成板の使用方法>
次に、
図3Aおよび
図3Bを参照し、直交集成板10の使用方法について説明する。
【0046】
まず、
図3Aに示すように、建物30の鉄骨造において、鉄骨梁31の上に直交集成板10を敷設する。
【0047】
次に、
図3Bに示すように、直交集成板10の上に鉄筋32を配設したのち、直交集成板10の上にコンクリート33を打設する。これにより、CLT-RC複合スラブ床を構築することができる。なお、符号39は頭付きスタッドを示している。
【0048】
ところで、発明が解決しようとする課題で言及したように、現行のCLTのJAS規格は、規格が厳しく、寸法等が一律のラミナが用いられているが、そのような寸法等が一律のラミナを木取りする場合には、製材歩留まりが低くなることから、低コスト化が困難であるという問題があった。
【0049】
これに対し、本実施の形態によれば、その繊維方向が第2軸方向42(弱軸方向)に沿った第3ラミナ層13が、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナ13cを含んでいるため、現行のCLTのJAS規格から外れるものの、第3ラミナ層13のラミナ13a~13fとして、原木ごとに最適な利用効率となるように製材された不等幅のラミナを利用することが可能となる。これにより、ラミナ13a~13fの製材歩留まりを改善でき、直交集成板10の低コスト化を実現できる。また、第3ラミナ層13が、幅方向の長さが厚さの3.5倍未満であるラミナ13cを含んでいても、幅方向に隣り合うラミナ13a~13f同士が接着されていることにより、せん断耐力を向上させることが可能である。
【0050】
また、本実施の形態によれば、最外層に位置する第1ラミナ層11および第2ラミナ層12の厚さが、第3~第5ラミナ層13~15の各々の厚さより大きいことから、直交集成板10の高強度化が可能である。
【0051】
また、本実施の形態によれば、第1ラミナ層11および第2ラミナ層12が、入手しやすいツーバイ材からなるラミナを含んでいるため、更なる低コスト化が可能である。
【0052】
また、本実施の形態によれば、その繊維方向が第1軸方向41(強軸方向)に沿った第1ラミナ層11および第2ラミナ層12が、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナ11b、12cを含んでいるため、現行のCLTのJAS規格から外れるものの、第1ラミナ層11および第2ラミナ層12のラミナ11a~11d、12a~12dとして、原木ごとに最適な利用効率となるように製材された不等幅のラミナを利用することが可能となる。これにより、ラミナの製材歩留まりを改善でき、直交集成板10の更なる低コスト化を実現できる。また、第1ラミナ層11および第2ラミナ層12が、幅方向の長さが厚さの1.75倍未満であるラミナ11b、12cを含んでいても、幅方向に隣り合うラミナ11a~11d、12a~12d同士が接着されていることにより、せん断耐力を向上させることが可能である。
【0053】
なお、上述した実施の形態に係る直交集成板10では、第1~第5ラミナ層11~15がその繊維方向を互いに直角にして積層配置されており、全体として5層5プライの構成となっていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
たとえば、
図4に示す直交集成板10’のように、第1ラミナ層11と第3ラミナ層13との間に、第1軸方向41(強軸方向)に沿った繊維方向を有する第6ラミナ層16が積層配置されるとともに、第2ラミナ層12と第4ラミナ層14との間に、第1軸方向4
1(強軸方向)に沿った繊維方向を有する第7ラミナ層17が積層配置されており、全体として5層7プライの構成となっていてもよい。
【0055】
また、図示は省略するが、上述した実施の形態に係る直交集成板10から、第4ラミナ層14および第5ラミナ層15が省略され、全体として3層3プライの構成となっていてもよいし、上述した実施の形態に係る直交集成板10から、第4ラミナ層14のみが省略され、全体として3層4プライの構成となっていてもよい。
【0056】
なお、上述した実施の形態および個々の変形例の記載ならびに図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態および個々の変形例の記載または図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。上述した実施の形態および個々の変形例の構成要素は、発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
10、10’ 直交集成板
11 第1ラミナ層
11a~11d 第1ラミナ層のラミナ
12 第2ラミナ層
12a~12d 第2ラミナ層のラミナ
13 第3ラミナ層
13a~13f 第3ラミナ層のラミナ
14 第4ラミナ層
14a~14f 第4ラミナ層のラミナ
15 第5ラミナ層
15a~15d 第5ラミナ層のラミナ
16 第6ラミナ層
17 第7ラミナ層
20 原木
21 ラミナ素材
22 タイコ材
23 内外装材
24 ラミナ
30 建物
31 鉄骨梁
32 鉄筋
33 コンクリート
39 頭付きスタッド
41 第1軸方向
42 第2軸方向
43 厚さ方向