(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022013057
(43)【公開日】2022-01-18
(54)【発明の名称】気液分離装置
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20220111BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20220111BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20220111BHJP
【FI】
F25B43/00 A
B60H1/32 613A
B60H1/22 651B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020115345
(22)【出願日】2020-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】マーレベーアサーマルシステムズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆行
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA52
(57)【要約】
【課題】車両内でのレイアウト性が向上する気液分離装置を提供する。
【解決手段】気液分離装置12は、内部に密閉状の冷媒収容空間31を有し、かつ上部に冷媒収容空間31に通じる冷媒入口ポート32および冷媒出口ポート33が形成されたタンク30と、冷媒収容空間31に配置されかつ一端部が冷媒出口ポート33に接続された冷媒排出管34とを備えている。冷媒排出管34が、冷媒収容空間31に溜められる液相冷媒の液面よりも下方に位置する液相冷媒吸入口と、冷媒収容空間31に溜められる液相冷媒の液面よりも上方に位置する気相冷媒吸入口345とを有している。液相冷媒吸入口および気相冷媒吸入口345が冷媒出口ポート33に通じている。冷媒排出管34に、液相冷媒吸入口を開閉するバイメタル式の第1開閉部材37、および気相冷媒吸入口345を開閉するバイメタル式の第2開閉部材38が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷房および暖房に利用されるヒートポンプ式冷凍サイクルに用いられ、かつ冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離装置であって、
内部に密閉状の冷媒収容空間を有し、かつ上部に冷媒収容空間に通じる冷媒入口ポートおよび冷媒出口ポートが形成されたタンクと、タンク内の冷媒収容空間に配置されかつ一端部が冷媒出口ポートに接続された冷媒排出管とを備えており、
冷媒排出管が、タンク内の冷媒収容空間に溜められる液相冷媒の液面よりも下方に位置する液相冷媒吸入口と、タンク内の冷媒収容空間に溜められる液相冷媒の液面よりも上方に位置する気相冷媒吸入口とを有しているとともに、液相冷媒吸入口および気相冷媒吸入口が冷媒出口ポートに通じており、
冷媒排出管に、液相冷媒吸入口を開閉するバイメタル式の第1開閉部材、および気相冷媒吸入口を開閉するバイメタル式の第2開閉部材が設けられている気液分離装置。
【請求項2】
液相冷媒吸入口および気相冷媒吸入口が、それぞれ冷媒排出管の一定の長さを有する直管状部分に形成されており、第1開閉部材が、冷媒排出管の外側に前記直管状部分の長手方向に沿って配置されかつ一端部が冷媒排出管に固定された平板状バイメタルと、平板状バイメタルの他端部に設けられかつ液相冷媒吸入口を塞ぎうる大きさを有する第1閉鎖蓋とよりなり、平板状バイメタルが、高膨張金属層が冷媒排出管側に位置するとともに、低膨張金属層が高膨張金属層とは反対側に位置するように配置されており、第2開閉部材が、冷媒排出管の前記直管状部分の周囲を覆うように配置されかつ一端部が冷媒排出管に固定されたつるまき状バイメタルと、つるまき状バイメタルの他端部に設けられかつ気相冷媒吸入口を塞ぎうる大きさを有する第2閉鎖蓋とよりなり、つるまき状バイメタルが、低膨張金属層が内周側に位置するとともに、高膨張金属層が外周側に位置するように配置されている請求項1記載の気液分装置。
【請求項3】
冷媒排出管が、長手方向を上下方向に向けた第1管部と、長手方向を上下方向に向けるとともに第1管部と間隔をおいて配置され、かつ上端が閉鎖された第2管部と、第1管部および第2管部の下端部どうしを通じさせる第3管部とからなり、第1管部の上端部がタンクの冷媒出口ポートに接続され、第2管部の上端寄りの部分の周壁に気相冷媒吸入口が形成され、第3管部の周壁に液相冷媒吸入口が形成されている請求項1または2記載の気液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷房運転モードおよび暖房運転モードを有する車両用空調装置のヒートポンプ式冷凍サイクルに用いられ、かつ冷媒を気相成分と液相成分とに分離する気液分離装置に関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、
図2および
図3の上下を上下というものとする。
【背景技術】
【0003】
原動機としてエンジンおよびモータが用いられるハイブリッド自動車や、原動機としてモータが用いられる電気自動車などの比較的廃熱の少ない車両に用いられる車両用空調装置として、圧縮機、車室外に配置され、かつ冷房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱させて凝縮させるとともに暖房時に減圧された冷媒に熱を受熱させて蒸発させる室外熱交換器、車室内に配置され、かつ冷房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室内エバポレータ、および車室内に配置され、かつ暖房時に圧縮機で圧縮された冷媒から熱を放熱させて凝縮させる室内コンデンサを有するヒートポンプ式冷凍サイクルを備えた車両用空調装置が周知である。
【0004】
上述した周知の車両用空調装置においては、冷房運転モードでは、室外熱交換器において熱を放熱した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、余剰の液相冷媒を室外熱交換器の下流側において溜める必要があり、暖房運転モードでは、室外熱交換器において受熱した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離し、気相冷媒だけを圧縮機に送る必要がある。しかしながら、ヒートポンプ式冷凍サイクルに、冷房時に液相冷媒を溜める機能を有する機器と、暖房時に気相冷媒を分離する機能を有する機器とを別個に設けることは、車両空間の設置スペースの制限上困難であり、しかもコストが高くなる。
【0005】
そこで、冷房時の液溜め機能および暖房時の気液分離機能の両機能を有する気液分離装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1記載の気液分離装置は、内部に密閉状の冷媒収容空間を有し、かつ上部に冷媒収容空間に通じる冷媒入口ポートおよび2つの冷媒出口ポートが形成されたタンクと、タンク内に配置されかつ一端部が冷媒出口ポートに接続された冷媒排出管とを備えており、タンクの一方の冷媒出口ポートが、タンク内に溜められる液相冷媒の液面よりも下方に形成され、タンクの他方の冷媒出口ポートが、タンク内に溜められる液相冷媒の液面よりも上方に形成され、冷媒排出管の他端開口が、タンク内に溜められる液相冷媒の液面よりも上方に位置して気相冷媒吸引口となっているものである。
【0007】
特許文献1記載の気液分離装置は、上述したヒートポンプ式冷凍サイクルにおいて、室外熱交換器の下流側でかつ室内エバポレータの上流側に設けられ、冷媒入口ポートが室外熱交換器に接続され、前記一方の冷媒出口ポートが室内エバポレータに接続され、前記他方の冷媒出口ポートが室内エバポレータをバイパスして圧縮機に接続されるようになっている。そして、冷房時に、室外熱交換器で放熱した冷媒が冷媒入口ポートから冷媒収容空間に流入して気液に分離された後、液相冷媒が前記一方の冷媒出口ポートから室内エバポレータに送られるとともに、余剰の冷媒が冷媒収容空間内に溜められ、暖房時に、室外熱交換器で受熱した冷媒が冷媒入口ポートから冷媒収容空間に流入して気液に分離された後、気相冷媒が気相冷媒吸引口を通って冷媒排出管に吸引され、前記他方の冷媒出口ポートから室内エバポレータをバイパスして圧縮機に送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1記載の気液分離装置は、2つの冷媒出口ポートを備えているので、当該気液分離装置を用いたヒートポンプ式冷凍サイクルにおいては、一方の冷媒出口ポートと室内エバポレータを接続する管路、および室内エバポレータをバイパスするように、他方の冷媒出口ポートと圧縮機とを接続する管路の2系統の管路が必要となり、車両内でのレイアウト性が悪くなる。
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、ヒートポンプ式冷凍サイクルに使用した場合に、車両内でのレイアウト性が向上する気液分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0012】
1)冷房および暖房に利用されるヒートポンプ式冷凍サイクルに用いられ、かつ冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する気液分離装置であって、
内部に密閉状の冷媒収容空間を有し、かつ上部に冷媒収容空間に通じる冷媒入口ポートおよび冷媒出口ポートが形成されたタンクと、タンク内の冷媒収容空間に配置されかつ一端部が冷媒出口ポートに接続された冷媒排出管とを備えており、
冷媒排出管が、タンク内の冷媒収容空間に溜められる液相冷媒の液面よりも下方に位置する液相冷媒吸入口と、タンク内の冷媒収容空間に溜められる液相冷媒の液面よりも上方に位置する気相冷媒吸入口とを有しているとともに、液相冷媒吸入口および気相冷媒吸入口が冷媒出口ポートに通じており、
冷媒排出管に、液相冷媒吸入口を開閉するバイメタル式の第1開閉部材、および気相冷媒吸入口を開閉するバイメタル式の第2開閉部材が設けられている気液分離装置。
【0013】
2)液相冷媒吸入口および気相冷媒吸入口が、それぞれ冷媒排出管の一定の長さを有する直管状部分に形成されており、第1開閉部材が、冷媒排出管の外側に前記直管状部分の長手方向に沿って配置されかつ一端部が冷媒排出管に固定された平板状バイメタルと、平板状バイメタルの他端部に設けられかつ液相冷媒吸入口を塞ぎうる大きさを有する第1閉鎖蓋とよりなり、平板状バイメタルが、高膨張金属層が冷媒排出管側に位置するとともに、低膨張金属層が高膨張金属層とは反対側に位置するように配置されており、第2開閉部材が、冷媒排出管の前記直管状部分の周囲を覆うように配置されかつ一端部が冷媒排出管に固定されたつるまき状バイメタルと、つるまき状バイメタルの他端部に設けられかつ気相冷媒吸入口を塞ぎうる大きさを有する第2閉鎖蓋とよりなり、つるまき状バイメタルが、低膨張金属層が内周側に位置するとともに、高膨張金属層が外周側に位置するように配置されている上記1)記載の気液分装置。
【0014】
3)冷媒排出管が、長手方向を上下方向に向けた第1管部と、長手方向を上下方向に向けるとともに第1管部と間隔をおいて配置され、かつ上端が閉鎖された第2管部と、第1管部および第2管部の下端部どうしを通じさせる第3管部とからなり、第1管部の上端部がタンクの冷媒出口ポートに接続され、第2管部の上端寄りの部分の周壁に気相冷媒吸入口が形成され、第3管部の周壁に液相冷媒吸入口が形成されている上記1)または2)記載の気液分離装置。
【発明の効果】
【0015】
上記1)~3)の気液分離装置によれば、内部に密閉状の冷媒収容空間を有し、かつ上部に冷媒収容空間に通じる冷媒入口ポートおよび冷媒出口ポートが形成されたタンクと、タンク内の冷媒収容空間に配置されかつ一端部が冷媒出口ポートに接続された冷媒排出管とを備えており、冷媒排出管が、タンク内の冷媒収容空間に溜められる液相冷媒の液面よりも下方に位置する液相冷媒吸入口と、タンク内の冷媒収容空間に溜められる液相冷媒の液面よりも上方に位置する気相冷媒吸入口とを有しているとともに、液相冷媒吸入口および気相冷媒吸入口が冷媒出口ポートに通じており、冷媒排出管に、液相冷媒吸入口を開閉するバイメタル式の第1開閉部材、および気相冷媒吸入口を開閉するバイメタル式の第2開閉部材が設けられているので、ヒートポンプ式冷凍サイクルに用いた場合、気液分離装置の冷媒出口ポートに接続される管路は1つとなり、車両内でのレイアウト性が向上する。また、冷媒排出管に、液相冷媒吸入口を開閉するバイメタル式の第1開閉部材、および気相冷媒吸入口を開閉するバイメタル式の第2開閉部材が設けられているので、冷房時の冷媒温度および暖房時の冷媒温度に応じて、第1開閉部材を形成するバイメタルの材料および第2開閉部材を形成するバイメタルの材料を適切に選択することによって、比較的に簡単な構成で、冷房時に液相冷媒吸入口を開くとともに気相冷媒吸入口を閉じ、暖房時に液相冷媒吸入口を閉じるとともに気相冷媒吸入口を開くことができる。
【0016】
上記2)の気液分離装置によれば、バイメタル式の第1開閉部材、およびバイメタル式の第2開閉部材の構成が比較的簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明による気液分離装置が用いられているヒートポンプ式冷凍サイクルを備えた車両用空調装置を示す概略図である。
【
図2】この発明による気液分離装置を示す正面から見た垂直断面図である。
【
図3】この発明による気液分離装置を、第1開閉部材および第2開閉部材を省略して示す
図2相当の図である。
【
図4】
図2の気液分離装置の第1開閉部材を示し、(a)は液相冷媒吸入口を開いた状態の正面図であり、(b)は液相冷媒吸入口を閉じた状態の正面図であり、(c)は液相冷媒吸入口を開いた状態の斜視図である。
【
図5】
図2の気液分離装置の第2開閉部材を示し、(a)は気相冷媒吸入口を閉じた状態の正面図であり、(b)は気相冷媒吸入口を開いた状態の正面図であり、(c)は第2開閉部材のみを示す斜視図である。
【
図6】この発明による気液分離装置が用いられたヒートポンプ式冷凍サイクルの変形例を示す
図1相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0019】
図1はこの発明による気液分離装置が用いられているヒートポンプ式冷凍サイクルを備えた車両用空調装置の全体構成を概略的に示す。
図2~
図5はこの発明による気液分離装置を示す。
【0020】
以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。また、以下の説明において、
図2および
図3の左右を左右というものとする。
【0021】
図1において、車両用空調装置は冷房運転モードおよび暖房運転モードを有するものであって、ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)と、内部に空調用空気が流れる空気通路(20)を有する空調ケース(2)とを備えている。
【0022】
ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)は、圧縮機(10)と、車室外に配置され、かつ冷房時に圧縮機(10)で圧縮された冷媒から熱を放熱して凝縮させるとともに暖房時に減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室外熱交換器(11)と、車室外に配置され、かつ冷房時に室外熱交換器(11)において熱を放熱した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して余剰の液相冷媒を溜めるとともに暖房時に室外熱交換器(11)において受熱した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して気相冷媒だけを圧縮機(10)に戻す気液分離装置(12)と、開度調節可能であるとともに全閉設定を有し、かつ冷房時に室外熱交換器(11)で放熱した後に気液分離装置(12)で気液分離された液相冷媒を減圧する第1減圧器としての第1膨張弁(13)と、車室内に配置され、かつ冷房時に第1膨張弁(13)で減圧された冷媒に受熱させて蒸発させる室内エバポレータ(14)と、第1膨張弁(13)と並列に設けられ、かつ冷房時に第1膨張弁(13)のみに冷媒が流れるとともに暖房時に第1膨張弁(13)への冷媒の流れを遮断する第1開閉弁(15)と、車室内に配置され、かつ冷房時に圧縮機(10)で圧縮された冷媒を通過させるとともに暖房時に圧縮機(10)で圧縮された冷媒から放熱させて凝縮させる室内コンデンサ(16)と、開度調節可能であるとともに全開設定を有し、かつ暖房時に室内コンデンサ(16)で放熱した冷媒を減圧する第2減圧器としての第2膨張弁(17)と、これらの機器を接続し、かつこれらの機器の間で冷媒を循環させる冷媒循環路(18)とを備えている。
【0023】
冷媒循環路(18)における気液分離装置(12)の冷媒流出側と圧縮機(10)の冷媒流入側との間には、冷房時に冷媒が流れる第1冷媒流通部(18a)と、暖房時のみに冷媒が流れる第2冷媒流通部(18b)とが並列状に設けられており、第1冷媒流通部(18a)に第1膨張弁(13)および室内エバポレータ(14)が配置され、第2冷媒流通部(18b)に開閉弁(15)が配置されている。したがって、冷媒循環路(18)は、第1膨張弁(13)、開閉弁(15)および第2膨張弁(17)の働きによって、冷房時に冷媒を圧縮機(10)、室内コンデンサ(16)、室外熱交換器(11)、気液分離装置(12)、第1膨張弁(13)および室内エバポレータ(14)の間の冷房用回路で循環させ、暖房時に冷媒を圧縮機(10)、室内コンデンサ(16)、第2膨張弁(17)、室外熱交換器(11)および気液分離装置(12)の間の暖房用回路で循環させる。
【0024】
空調ケース(2)は、空調用空気が空調ケース(2)内の空気通路(20)に導入される空気導入部(21)と、空気導入部(21)に空調用空気を送り込む空気入口(22)と、空気通路(20)の空気流れ方向の中間部分に並列状に設けられた第1通路部分(23)および第2通路部分(24)と、空気通路(20)の2つの通路部分(23)(24)のうちのいずれか一方を流れる空調用空気量と同他方を流れる空調用空気量とを調整するダンパ(25)とを備えている。さらに、図示は省略したが、空調ケース(2)には、フェイス吹き出し口、フット吹き出し口およびデフロスタ吹き出し口(いずれも図示略)が形成されている。空調ケース(2)の空気通路(20)における第1通路部分(23)および第2通路部分(24)よりも空気導入部(21)側にヒートポンプ式冷凍サイクル(1)の室内エバポレータ(14)が配置され、第1通路部分(23)に室内コンデンサ(16)が配置されている。また、空調ケース(2)の空気導入部(21)に、空調用空気を空気入口(22)から導入するとともに空気通路(20)を通してフェイス吹き出し口、フット吹き出し口およびデフロスタ吹き出し口のうちの少なくともいずれか1つから車室内に吹き出す室内ファン(26)が配置されている。
【0025】
そして、ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)の気液分離装置(12)に、本発明の気液分離装置が用いられている。
図2および
図3に示すように、気液分離装置(12)は、内部に密閉状の冷媒収容空間(31)を有し、かつ頂壁(上部)に冷媒収容空間(31)に通じる冷媒入口ポート(32)および冷媒出口ポート(33)が形成されたタンク(30)と、タンク(30)内の冷媒収容空間(31)に配置されかつ一端部が冷媒出口ポート(33)に接続された冷媒排出管(34)と、冷媒収容空間(31)内で冷媒排出管(34)に取り付けられたデフレクタ(35)と、乾燥剤が収納されかつ冷媒収容空間(31)に配置された乾燥剤バッグ(36)とを備えている。
【0026】
タンク(30)は、上端が開口するとともに下端が閉鎖された円筒状のアルミニウム製胴(301)と、胴(301)の上端に取り付けられて胴(301)の上端開口を閉鎖しかつ頂壁となるアルミニウム製頂蓋(302)とよりなり、頂蓋(302)に冷媒入口ポート(32)および冷媒出口ポート(33)が形成されている。
【0027】
冷媒排出管(34)は、長手方向を上下方向に向けた真っ直ぐな第1管部(341)と、長手方向を上下方向に向けるとともに第1管部(341)と間隔をおいて配置された真っ直ぐな第2管部(342)と、第1管部(341)および第2管部(342)の下端部どうしを通じさせる真っ直ぐな第3管部(343)とからなる。第1管部(341)の上端部がタンク(30)の冷媒出口ポート(33)に接続されるとともに同下端部がタンク(30)内の冷媒収容空間(31)に溜められる液相冷媒(図示略)の液面よりも下方に位置し、第2管部(342)の上端部が冷媒収容空間(31)に溜められる液相冷媒の液面よりも上方に位置するとともに同下端部が前記液面よりも下方に位置し、第3管部(343)が冷媒収容空間(31)に溜められる液相冷媒の液面よりも下方に位置するようになっている。なお、第2管部(342)の上端寄りの一定長さ部分は、冷媒収容空間(31)に溜められる液相冷媒の液面よりも上方に位置しており、第2管部(342)の上端開口は閉鎖されている。
【0028】
冷媒排出管(34)における冷媒収容空間(31)に溜められる液相冷媒の液面よりも下方に位置する第3管部(343)に液相冷媒吸入口(344)が形成され、同じく第2管部(342)における冷媒収容空間(31)に溜められる液相冷媒の液面よりも上方に位置する部分に気相冷媒吸入口(345)が形成されている。すなわち、液相冷媒吸入口(344)および気相冷媒吸入口(345)が、それぞれ冷媒排出管(34)の一定の長さを有する直管状部分に形成されている。
【0029】
液相冷媒吸入口(344)および気相冷媒吸入口(345)は冷媒出口ポート(33)に通じている。冷媒排出管(34)に、液相冷媒吸入口(344)を開閉するバイメタル式の第1開閉部材(37)、および気相冷媒吸入口(345)を開閉するバイメタル式の第2開閉部材(38)が設けられている。
【0030】
図4に示すように、第1開閉部材(37)は、冷媒排出管(34)の第3管部(343)の下側に第3管部(343)の長手方向に沿って配置されかつ一端部(左端部)が第3管部(343)に固定された平板状バイメタル(371)と、平板状バイメタル(371)の他端部(右端部)に設けられて液相冷媒吸入口(344)を塞ぎうる大きさを有する第1開閉蓋(372)とよりなる。平板状バイメタル(371)は、高膨張金属層(373)が第3管部(343)側(上側)に位置するとともに、低膨張金属層(374)が高膨張金属層(373)とは反対側(下側)に位置するように配置されている。第1開閉部材(37)の平板状バイメタル(371)の高膨張金属層(373)を構成する高膨張金属、および低膨張金属層(374)を構成する低膨張金属は、冷房時の冷媒温度において液相冷媒吸入口(344)を開くとともに暖房時の冷媒温度において液相冷媒吸入口(344)を閉じることができるように、適切に選択される。
【0031】
図5に示すように、第2開閉部材(38)は、冷媒排出管(34)の第2管部(342)上部の周囲を覆うように配置されかつ一端部(上端部)が冷媒排出管(34)に固定されたつるまき状バイメタル(381)と、つるまき状バイメタル(381)の他端部(下端部)に設けられて気相冷媒吸入口(345)を塞ぎうる大きさを有する第2閉鎖蓋(382)とよりなる。つるまき状バイメタル(381)は、低膨張金属層(383)が内周側に位置するとともに、高膨張金属層(384)が外周側に位置するように配置されている。第2開閉部材(38)のつるまき状バイメタル(381)の低膨張金属層(383)を構成する低膨張金属、および高膨張金属層(384)を構成する高膨張金属は、冷房時の冷媒温度において気相冷媒吸入口(345)を閉じるとともに暖房時の冷媒温度において気相冷媒吸入口(345)を開くことができるように、適切に選択される。
【0032】
車両用空調装置の冷房運転モードにおいては、ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)では、第1膨張弁(13)、開閉弁(15)および第2膨張弁(17)の働きによって、冷媒は、圧縮機(10)、室内コンデンサ(16)、室外熱交換器(11)、気液分離装置(12)、第1膨張弁(13)および室内エバポレータ(14)の間の冷房用回路で循環する。また、空調ケース(2)のダンパ(25)が、第1通路部分(23)への空気の流れを遮断するとともに第2通路部分(24)への空気の流れを許容する位置に切り替えられる(
図1鎖線参照)。なお、車室内の冷房時にも、空調用空気が両通路部分(23)(24)を流れるようにダンパ(25)の位置が調整されることもある。
【0033】
冷媒は、圧縮機(10)で圧縮された後に、室内コンデンサ(16)および全開状態とされた第2膨張弁(17)を通過し、ついで室外熱交換器(11)に送られて室外熱交換器(11)で車室外空気に熱を放熱して凝縮する。室外熱交換器(11)において放熱した冷媒は、気液分離装置(12)において気相冷媒と液相冷媒とに分離され、開度が調節された第1膨張弁(13)により減圧された液相冷媒が室内エバポレータ(14)で空調用空気から熱を奪って蒸発し、その後圧縮機(10)に戻される(
図1の実線矢印参照)。室内エバポレータ(14)で熱を奪われた空調用空気は、第2通路部分(24)を通って車室内に吹き出される。
【0034】
気液分離装置(12)においては、冷媒の温度に基づいて、第1開閉部材(37)の平板状バイメタル(371)の働きにより液相冷媒吸入口(344)が開かれるとともに、第2開閉部材(38)のつるまき状バイメタル(381)の働きにより気相冷媒吸入口(345)が閉じられるので、液相冷媒が第1膨張弁(13)に送られ、余剰の液相冷媒がタンク(30)内に貯留される。
【0035】
車両用空調装置の暖房運転モードにおいては、ヒートポンプ式冷凍サイクル(1)では、第1膨張弁(13)、開閉弁(15)および第2膨張弁(17)の働きによって、冷媒は、圧縮機(10)、室内コンデンサ(16)、第2膨張弁(17)、室外熱交換器(11)および気液分離装置(12)の間の暖房用回路で循環する。また、空調ケース(2)のダンパ(25)が、第2通路部分(24)への空気の流れを遮断するとともに第1通路部分(23)への空気の流れを許容する位置に切り替えられる(
図1実線参照)。なお、車室内の暖房時にも、空調用空気が両通路部分(23)(24)を流れるようにダンパ(25)の位置が調整されることもある。
【0036】
冷媒は、圧縮機(10)で圧縮された後に室内コンデンサ(16)で空調用空気に熱を放熱して凝縮し、ついで開度が調節された第2膨張弁(17)により減圧された液相冷媒が室外熱交換器(11)で車室外空気から熱を奪って蒸発する。室外熱交換器(11)において車室外空気から熱を奪った冷媒は、気液分離装置(12)において気相冷媒と液相冷媒とに分離され、気相冷媒のみが圧縮機(10)に戻される(
図1の破線矢印参照)。室内コンデンサ(16)を通過して冷媒から温熱を奪った空調用空気は、第1通路部分(23)を通って車室内に吹き出される。
【0037】
気液分離装置(12)においては、冷媒の温度に基づいて、第1開閉部材(37)の平板状バイメタル(371)の働きにより液相冷媒吸入口(344)が閉じられるとともに、第2開閉部材(38)のつるまき状バイメタル(381)の働きにより気相冷媒吸入口(345)が開かれるので、気相冷媒のみが圧縮機に送られる。
【0038】
図6はこの発明による気液分離装置(12)が用いられているヒートポンプ式冷凍サイクルの変形例を示す。
【0039】
図6に示すヒートポンプ式冷凍サイクル(100)は、車室外に配置され、かつ冷房時のみに冷媒を過冷却する冷媒過冷却器(101)を備えている。すなわち、冷媒循環路(18)における気液分離装置(12)の直ぐ下流側と、第1冷媒流通部(18a)および第2冷媒流通部(18b)の分岐部との間に第3冷媒流通部(18c)および第4冷媒流通部(18d)が並列状に設けられ、第4冷媒流通部(18d)に冷媒過冷却器(101)が配置されている。冷媒循環路(18)における気液分離装置(12)の直ぐ下流側部分から第3冷媒流通部(18c)および第4冷媒流通部(18d)への分岐部には三方弁(102)が設けられている。三方弁(102)は、車両用空調装置の冷房運転モードでは気液分離装置(12)から流出した液相冷媒を第4冷媒流通部(18d)を通して冷媒過冷却器(101)に流し、同じく暖房運転モードでは気液分離装置(12)から流出した気相冷媒を第3冷媒流通部(18c)に流して冷媒過冷却器(101)への流れを遮断する。
【0040】
その他の構成は、
図1に示すヒートポンプ式冷凍サイクル(1)と同様であり、同一部分および同一物には同一符号を付す。
【0041】
上述したヒートポンプ式冷凍サイクル(100)を備えた車両用空調装置において、第1膨張弁(13)、開閉弁(15)、三方弁(102)および第2膨張弁(17)の働きによって、冷房運転モードにおいては、冷媒は、圧縮機(10)、室内コンデンサ(16)、室外熱交換器(11)、気液分離装置(12)、冷媒過冷却器(101)、第1膨張弁(13)および室内エバポレータ(14)の間の冷房用回路で循環し、暖房運転モードにおいては、冷媒は、圧縮機(10)、室内コンデンサ(16)、第2膨張弁(17)、室外熱交換器(11)および気液分離装置(12)の間の暖房用回路で循環する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明による気液分離装置は、比較的廃熱の少ないハイブリッド自動車や電気自動車の車両用空調装置を構成するヒートポンプ式冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0043】
(1)(100):ヒートポンプ式冷凍サイクル
(12):気液分離装置
(30):タンク
(31):冷媒収容空間
(32):冷媒入口ポート
(33):冷媒出口ポート
(34):冷媒排出管
(341):第1管部
(342):第2管部
(343):第3管部
(344):液相冷媒吸入口
(345):気相冷媒吸入口
(37):第1開閉部材
(371):平板状バイメタル
(372):第1開閉蓋
(373):高膨張金属層
(374):低膨張金属層
(38):第2開閉部材
(381):つるまき状バイメタル
(382):第2開閉蓋
(383):低膨張金属層
(384):高膨張金属層