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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130627
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】ニューレグリン調合剤の処方
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/22 20060101AFI20220830BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20220830BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220830BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220830BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220830BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220830BHJP
   C07K 14/00 20060101ALN20220830BHJP
【FI】
A61K38/22 ZNA
A61P9/04
A61P43/00 105
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/42
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/10
A61K9/19
C12N15/12
C07K14/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105452
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2020082456の分割
【原出願日】2014-12-17
(31)【優先権主張番号】201410002665.6
(32)【優先日】2014-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】504274712
【氏名又は名称】ゼンサン (シャンハイ) サイエンス アンド テクノロジー,シーオー.,エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ミングドング ズホウ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】心臓血管疾患を治療するための医薬調合剤を提供する。特にニューレグリン医薬調合剤の処方を提供する。
【解決手段】処方は、ニューレグリンポリペプチド、緩衝液、安定剤、賦形剤、塩、及び他の成分からなり、ニューレグリンポリペプチドの長期安定性を保証することができ、かつ心不全に罹患している患者又は心不全を発症するリスクのある患者を治療するために使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) ニューレグリン(NRG)ポリペプチド及び(b) 緩衝剤を含み、pHが約2.0、約2.1、
約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、又は約2.9である、NRGの医薬製剤
であって、該NRGポリペプチドが:
a) 配列番号:2に記載されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) NRGのEGF様ドメインを含むポリペプチド;及び
c) 配列番号:1に記載されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、か
らなる群から選択される、前記医薬製剤。
【請求項2】
前記NRG製剤が:(c)安定剤をさらに含む、請求項1記載の医薬製剤。
【請求項3】
前記安定剤が:
(i)約0.1 g/L~約200 g/Lの濃度であり;
(ii)マンニトール、ソルビトール、キシリトール、スクロース、トレハロース、マンノ
ース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビ
オース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトース、ヒト血清アルブ
ミン及びこれらの安定剤の組合せからなる群から選択されるか;又は
(iii)約2 g/Lの濃度のヒト血清アルブミンである、請求項2記載の医薬製剤。
【請求項4】
前記NRG製剤が:(d)塩をさらに含む、請求項1又は2記載の医薬製剤。
【請求項5】
前記塩が:
(i)約100 mM~約500 mMの濃度範囲であり;
(ii)好ましくは約150 mMの濃度である、塩化ナトリウムである、請求項4記載の医薬製
剤。
【請求項6】
前記NRGポリペプチドが、a) 配列番号:2に記載されたアミノ酸配列を含むポリペプチ
ドである、請求項1~5のいずれか1項記載の医薬製剤。
【請求項7】
前記NRGポリペプチドの濃度が約0.01 g/L~約1 g/Lの範囲内である、請求項1~6のいず
れか1項記載の医薬製剤。
【請求項8】
前記NRGポリペプチドが0.25 g/Lの濃度の配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からな
るポリペプチドである、請求項7記載の医薬製剤。
【請求項9】
前記緩衝剤がpH緩衝剤であり、ここで前記pH緩衝剤が:
(i)約0.1 mM~約500 mMの範囲内であり;
(ii)クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ヒスチジン、グリシン、炭酸水素塩、HEPES、ト
リス、希HCl、希NaOH及びこれらの薬剤の組合せからなる群から選択されるか;又は
(iii)リン酸塩である、請求項1~8のいずれか1項記載の医薬製剤。
【請求項10】
前記NRGポリペプチドが約0.25 g/Lの濃度の配列番号:2に記載されたアミノ酸配列から
なるポリペプチドであり、前記緩衝剤が約10 mMの濃度のリン酸塩である、請求項9記載の
医薬製剤。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項記載の医薬製剤の凍結乾燥によって調製される、ニューレグ
リン(NRG)の凍結乾燥医薬製剤であって、該凍結乾燥の前に、賦形剤を請求項1~10のい
ずれか1項記載の医薬製剤に添加する、前記凍結乾燥医薬製剤。
【請求項12】
前記賦形剤が:
(i)ヒト血清アルブミン、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコール、及びこ
れらの賦形剤の組合せからなる群から選択され;
(ii)1 mlの再懸濁溶液で約60 mgの前記製剤を再懸濁した後に、約0.1 g/L~約200 g/L
の濃度であり;又は
(iii)1 mlの再懸濁溶液で約60 mgの前記製剤を再懸濁した後に、好ましくは約50 g/Lの
濃度である、マンニトールである、請求項11記載の凍結乾燥医薬製剤。
【請求項13】
再懸濁溶液で再懸濁される、請求項11又は12記載の凍結乾燥医薬製剤。
【請求項14】
前記再懸濁溶液が滅菌水又は生理食塩水である、請求項13記載の凍結乾燥医薬製剤。
【請求項15】
前記再懸濁溶液が、pHが約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、
約2.8、又は約2.9である、請求項13記載の凍結乾燥医薬製剤。
【請求項16】
請求項11記載の凍結乾燥医薬製剤であって、
(a)配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(b)前記緩衝剤としてのリン酸塩、
(c)前記賦形剤としてのマンニトール、
(d)前記安定剤としてのヒト血清アルブミン、及び
(e)前記塩としての塩化ナトリウムを含み、ここで、1 mlの再懸濁溶液で約60 mgの前記
製剤を再懸濁した後に、前記凍結乾燥医薬製剤の濃度が、
(a)につき約0.25 g/Lであり;
(b)につき約10 mMであり;
(c)につき約50 g/Lであり;
(d)につき約2 g/Lであり;かつ
(e)につき約150 mMであり、並びに
前記再懸濁溶液が好ましくは滅菌水又は生理食塩水である、前記凍結乾燥医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
概して本発明は心臓血管疾患、例えば心不全の治療のための医薬調合剤に関する。特に
、本発明はニューレグリン調合剤の処方に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
米国人のおよそ500万人が心不全に罹患しており、毎年550,000人を超える新たな患者が
この病態であると診断される。現在の心不全の薬物治療は主にアンギオテンシン変換酵素
(ACE)阻害剤を対象とし、該阻害剤は血管の拡張を引き起こし、血圧を降下させ、かつ
心臓の作業負荷を低下させる血管拡張剤である。死亡率の低下割合が重要とされてきたが
、ACE阻害剤による実際の死亡率低下は平均してわずか3%~4%であり、いくつかの潜在
的な副作用が存在する。追加的な制約は、心不全を予防し、又は治療するための他の選択
肢と関連する。例えば、心臓移植は明らかに薬物治療より高額で侵襲的であり、ドナーの
心臓が利用できるかどうかによってさらに制約を受ける。両心室ペースメーカーのような
機械的装置の使用は同様に侵襲的であり、高額である。従って、現在の治療法の欠点を考
慮した新しい治療法が必要とされている。
【0003】
1つの有望な新規治療法は、心不全に罹患している、又は心不全を発症するリスクのあ
る患者へのニューレグリン(本明細書において、以下 「NRG」呼ぶ)の投与を伴う。NRG
はEGF様成長因子のファミリーであり、NRG1、NRG2、NRG3及びNRG4並びにこれらのアイソ
フォームを含む構造的に関連した成長因子及び分化因子のファミリーを含み、数々の生物
学的応答:乳癌細胞分化の刺激及び乳タンパク質の分泌;神経堤細胞のシュワン細胞への
分化誘導;骨格筋細胞のアセチルコリン受容体合成の刺激;並びに心筋細胞の生存及びDN
A合成の促進に関与する。心筋小柱形成及び後根神経節発生に重度の欠陥があるニューレ
グリン遺伝子をターゲティングしたホモ接合マウス胚のインビボ試験により、ニューレグ
リンが心臓及び神経の発生に必須であることが示されている。
【0004】
NRGは、EGFR、ErbB2、ErbB3及びErbB4を含むEGF受容体ファミリーと結合し、そのそれ
ぞれは細胞成長、細胞分化、及び細胞生存を含む複数の細胞機能において重要な役割を果
たす。それらは、細胞外のリガンド結合ドメイン、膜貫通キナーゼドメイン、及び細胞質
チロシンキナーゼドメインからなるタンパク質チロシンキナーゼ受容体である。NRGがErb
B3又はErbB4の細胞外ドメインに結合した後、それは、ErbB3、ErbB4、及びErbB2の間のヘ
テロ二量体形成又はErbB4自体の間のホモ二量体形成をもたらす立体構造変化を誘導し、
それによって細胞膜の内側にある受容体のC末端ドメインのリン酸化が起こる。次に、リ
ン酸化された細胞内ドメインは細胞内の追加のシグナルタンパク質と結合し、対応する下
流のAKT又はERKシグナル伝達経路を活性化し、細胞増殖、細胞分化、細胞アポトーシス、
細胞遊走、又は細胞接着の刺激又は低下などの、一連の細胞反応を誘導する。これらの受
容体のうち、主にErbB2及びErbB4が心臓で発現される。
【0005】
サイズが50~64個のアミノ酸の範囲であるNRG-1のEGF様ドメインは、これらの受容体に
結合して、それらを活性化するのに十分であることが示されている。過去の試験により、
ニューレグリン-1β(NRG-1β)は、高い親和性でErbB3及びErbB4に直接結合することが
できることが示されている。オーファン受容体であるErbB2は、ErbB3ホモ二量体又はErbB
4ホモ二量体よりも高い親和性で、ErbB3及びErbB4とヘテロ二量体を形成することができ
る。神経発生の研究は、交感神経系の形成には、完全なNRG-1β、ErbB2、及びErbB3シグ
ナル伝達系が要求されることを示した。NRG-1β又はErbB2又はErbB4のターゲティングに
よる破壊は、心臓の発生異常による胚性致死をもたらした。また、最近の試験は、心臓血
管の発生並びに成体の正常な心機能の維持におけるNRG-1β、ErbB2、及びErbB4の役割を
強調した。NRG-1βは、成体心筋細胞におけるサルコメアの組織化を強化することが示さ
れている。組換えNRG-1βのEGF様ドメインの投与により、心不全の異なる動物モデル並び
に臨床試験において、心筋の能力が顕著に改善され、又は心筋の能力の悪化から保護され
る。これらの結果はNRG-1を、様々な通常疾患に起因する心不全に対する広スペクトルの
治療薬、又はリード化合物として有望なものとする。大抵の場合、医薬タンパク質製剤は
注射薬の形態で投与されることが意図される。しかしながら、安定性の問題を呈する活性
タンパク質が一部には存在することが一般に知られている。従って、当技術分野において
、NRGを含む安定な医薬製剤を開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
(発明の概要)
本発明は:(a) ニューレグリン(NRG)ポリペプチド;(b) 緩衝剤を含み、pHが3~7で
ある、NRGの医薬製剤を提供する。いくつかの実施態様において、該NRG製剤は:(c) 安定
剤をさらに含む。いくつかの実施態様において、該NRG製剤は:(d) 塩をさらに含む。い
くつかの実施態様において、該製剤は液体製剤である。いくつかの実施態様において、該
製剤は、凍結乾燥製剤である。
【0007】
本明細書に提供される製剤中のNRGポリペプチドは:
a) 配列番号:2に記載されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) NRGのEGF様ドメインを含むポリペプチド;
c) a) のポリペプチドの生物学的に活性な類似体、断片又はバリアント;
d) 配列番号:1に記載されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;
e) d) のポリペプチドの生物学的に活性な類似体、断片又はバリアント;及び
f) 中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号:1に記載され
たポリヌクレオチドとハイブリッド形成するポリヌクレオチドによってコードされるポリ
ペプチド
からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、該NRGポリペプチドは配列番
号:2に記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。いくつかの実施態様にお
いて、NRGポリペプチドの濃度は約0.01 g/L~約1 g/Lの範囲内である。追加の実施態様に
おいて、本発明によって提供される製剤中のNRGポリペプチドは、約0.25 g/Lの濃度の配
列番号:2に記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0008】
いくつかの実施態様において、本発明によって提供される製剤はpH緩衝剤を含む。関連
する実施態様において、該pH緩衝剤は約0.1 mM~約500 mMの範囲内である。該緩衝剤は、
クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ヒスチジン、グリシン、炭酸水素塩、HEPES、トリス、
希HCl、希NaOH又はこれらの薬剤の組合せからなる群から選択される。一実施態様におい
て、本発明によって提供される製剤中の緩衝剤は、リン酸塩である。いくつかの実施態様
において、本発明の製剤はpHが約6.0である。いくつかの実施態様において、本発明の製
剤はpHが約3.4である。
【0009】
いくつかの実施態様において、本発明によって提供される製剤は安定剤を含む。さらな
る実施態様において、本発明によって提供される製剤は約0.1 g/L~約200 g/Lの濃度であ
る。追加の実施態様において、該安定剤はマンニトール、ソルビトール、キシリトール、
スクロース、トレハロース、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィ
ノース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミ
ン、フルクトース、ヒト血清アルブミン及びこれらの安定剤の組合せからなる群から選択
される。いくつかの実施態様において、該安定剤は約2 g/Lの濃度のヒト血清アルブミン
である。
【0010】
追加の実施態様において、本発明によって提供される製剤は、塩を含む。いくつかの実
施態様において、該塩は約100 mM~約500 mMの濃度範囲である。特定の実施態様において
、該塩は塩化ナトリウムである。関連する実施態様において、本発明の製剤中の塩濃度は
、約150 mMである。
【0011】
いくつかの実施態様において、本発明によって提供される製剤中のNRGポリペプチドは
、配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からなり;ここで、該緩衝剤は10 mMの濃度のリ
ン酸塩であり、かつ該pHは約6.0である。
【0012】
いくつかの実施態様において、本発明によって提供される製剤中のNRGポリペプチドは
、約0.25 g/Lの濃度の配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチドであ
り、該緩衝剤は約10 mMの濃度のリン酸塩であり、前記pHは約6.0であり、該安定剤は約2
g/Lの濃度のヒト血清アルブミンであり、かつ該塩は約150 mMの濃度の塩化ナトリウムで
ある。
【0013】
いくつかの実施態様において、本発明によって提供される製剤は、液体医薬製剤である
。追加の実施態様において、本発明によって提供されるNRG液体医薬製剤中のNRGポリペプ
チドは、約0.25 g/Lの濃度の配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチ
ドであり、該緩衝剤は約10 mMの濃度のリン酸塩であり、前記pHは、約3.4である。
【0014】
いくつかの実施態様において、本発明によって提供される製剤は、NRGの凍結乾燥医薬
製剤であり、賦形剤の追加された先述の製剤のいずれかを凍結乾燥することにより調製さ
れる。いくつかの実施態様において、該賦形剤はヒト血清アルブミン、マンニトール、グ
リシン、ポリエチレングリコール、及びこれらの賦形剤の組合せからなる群から選択され
る。具体的な実施態様において、該賦形剤はマンニトールである。関係のある実施態様に
おいて、該賦形剤は1 mlの再懸濁溶液で約60 mgの該製剤を再懸濁した後に、約0.1 g/L~
約200 g/Lの濃度である。具体的な実施態様において、マンニトールは1 mlの再懸濁溶液
で約60 mgの該製剤を再懸濁した後に、約50 g/Lの濃度である。
【0015】
さらなる実施態様において、本発明は:(a) ニューレグリン(NRG)ポリペプチド;(b)
緩衝剤、及び(c) 賦形剤を含むNRGの凍結乾燥医薬製剤を提供する。追加の実施態様にお
いて、該凍結乾燥医薬製剤は、安定剤をさらに含む。追加の実施態様において、該凍結乾
燥医薬製剤は、塩をさらに含む。
【0016】
具体的な実施態様において、本発明の凍結乾燥医薬製剤は、(a) 配列番号:2に記載さ
れたアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b) 該緩衝剤としてのリン酸塩、(c) 該賦形剤
としてのマンニトール、(d) 該安定剤としてのヒト血清アルブミン、及び(e) 該塩として
の塩化ナトリウムを含み、ここで、1 mlの再懸濁溶液で約60 mgの該製剤を再懸濁した後
に、(a) が約0.25 g/Lの濃度であり;(b) が約10 mMの濃度であり、かつ該pHが約6であり
;(c) が約50 g/Lの濃度であり、(d) が約2 g/Lの濃度であり、かつ(e) が約150 mMの濃
度である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
(図面の簡単な説明)
図1図1:組換えヒトニューレグリン-1(rhNRG-1)希釈液及び該希釈液中0.25 mg/mLに調製された標準溶液の代表的なクロマトグラム。
【0018】
図2図2:pH 3~10に対しての代表的なSDS-PAGEクロマトグラム。
【0019】
図3図3:40℃、pH 3~8での濃度対時間プロファイルの結果。
【0020】
図4図4:40℃、pH 2.3~4.3での濃度対時間プロファイルの結果。
【0021】
図5図5:50℃、pH 2.3~4.3での濃度対時間プロファイルの結果。
【0022】
図6図6:60℃、pH 3~8に対しての濃度対時間プロファイルの結果。
【0023】
図7図7:60℃で保存されたpH 2.3~4.3での濃度対時間プロファイルの結果。
【0024】
図8図8:pH 3~8に対するpH対分解速度(傾き)プロファイルの結果。
【0025】
図9図9:pH 2.3~4.3に対するpH対分解速度(傾き)プロファイルの結果。
【0026】
図10図10:2.3~8の範囲のpHに対するpH対分解速度(傾き)プロファイルの結果。
【0027】
図11図11:pH対予測貯蔵期間T(90)の図示。
【0028】
図12図12:40℃で77時間保存した、pH 3~8に対する代表的なクロマトグラム。
【0029】
図13図13:pH 2.3~3.8に対する代表的なクロマトグラム。
【0030】
図14図14:ストレス下においた溶液の代表的なクロマトグラム(上から下へ向かって:標準0.255 mg/mL、H2O2 20分後、H2O2 2時間25分後、H2O2 4時間30分後、H2O2 7時間7分後)。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(発明の詳細な説明)
本件開示は一部において、ニューレグリンの特定の医薬製剤がニューレグリンポリペプ
チドの驚くべき予想外の安定性を達成するという発見に基づいている。この点に関し、安
定性の予想外の改善は、本発明のニューレグリン製剤をより低いpHに適応させることによ
り達成され得ることが発見された。本明細書に記載される方法と類似の又は等価の任意の
方法を本発明の実施において用いることができるが、好ましい方法及び材料は、本明細書
に記載されている。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an
)」、及び「該(the)」は、その内容からそうでないことが明確に指示されない限り、
複数の指示対象を含む。従って例えば、「1つの緩衝剤」の言及は、2以上の緩衝剤などの
混合物を含む。
【0033】
用語「約」は、特に所与の量の言及において、±10パーセントの偏差を包含することを
意味する。
【0034】
添付の特許請求の範囲を含む本願において使用される単数形「1つの(a)」、「1つの
(an)」、及び「該(the)」はその内容からそうでないことが明確に指示されない限り
、複数の指示対象を含み、かつ「少なくとも1つ」及び「1以上」と互換的に使用される。
【0035】
本明細書で使用される用語「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、
「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「含む(contains)」、「含ん
でいる(containing)」、及び任意のこれらの変形は、非排他的な包括を網羅することが
意図され、その結果要素または要素の表を含み(comprises)、含み(includes)、又は
含む(contains)プロセス、方法、プロダクトバイプロセス、又は物質の組成物がこれら
の要素のみを含むだけでなく、明記されていないか、又はそのようなプロセス、方法、プ
ロダクトバイプロセス、又は物質の組成物に固有の他の要素も含むことができる。
【0036】
本明細書で使用される「ポリペプチド」はペプチド結合を介して結合されたアミノ酸残
基、構造バリアント、関連する天然に存在する構造バリアント、及びそれらの合成非天然
類似体から構成される多量体を指す。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合
成機を用いて調製される。用語「タンパク質」は典型的に大きなポリペプチドを指す。用
語「ペプチド」は典型的に短いポリペプチドを指す。
【0037】
本明細書で使用される「タンパク質」は、その内容からそうでないことが明確に指示さ
れない限り、「ポリペプチド」又は「ペプチド」と同義である。
【0038】
本明細書で使用されるポリペプチドの「断片」は、全長のポリペプチド又はタンパク質
発現産物よりも小さい任意のポリペプチド又はタンパク質の部分を指すことが意図される
【0039】
本明細書で使用される「類似体」は、構造が実質的に類似しており、同じ生物活性を有
するが、活性の程度が様々であり得る任意の2以上のポリペプチドを指し、分子全体又は
その断片のいずれかを指す。類似体は1以上のアミノ酸を他のアミノ酸へ変える置換、欠
失、挿入及び/又は付加を含む1以上の変異に基づくそれらのアミノ酸配列の組成において
異なる。置換は置換されるアミノ酸及びそれに置き換わるアミノ酸の物理化学的又は機能
的関連性に基づいて保存的又は非保存的となり得る。
【0040】
本明細書で使用される「バリアント」は、通常はその分子の一部ではない追加的な化学
的部分を含むように改変されたポリペプチド、タンパク質又はそれらの類似体を指す。そ
のような部分は分子の溶解性、吸収性、生物学的半減期などを変化させることができる。
あるいは該部分は該分子の毒性を減少させ、かつ該分子のいかなる有害な副作用をも排除
し、又は弱めるなどすることができる。そのような作用に介在することができる部分はレ
ミントン薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences)(1980)に開示されている。分
子にそのような部分を連結させる手順は当技術分野において周知である。例えば限定され
ることなく、一態様において該バリアントはインビボでタンパク質により長い半減期を付
与する化学的修飾を有する血液凝固因子である。様々な態様において、ポリペプチドは糖
鎖付加、ペグ化、及び/又はポリシアル化によって修飾される。
【0041】
断片、バリアント及び類似体をコードするポリヌクレオチドは、当業者によって容易に
生成され、天然に存在する分子と同じか、又は類似した生物活性を有する、天然に存在す
る分子の生物学的に活性な断片、バリアント、又は類似体をコードすることができる。様
々な態様において、これらのポリヌクレオチドはPCR技術、及び分子をコードするDNAの消
化/連結などを用いて調製される。従って、当業者であれば、限定はされないが、部位指
定変異誘発を含む当技術分野で公知の任意の方法を用いて、DNA鎖に一塩基変化を生成さ
せ、変化したコドン及びミスセンス変異をもたらすことができるであろう。本明細書で使
用される語句「中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、例えば、
50%ホルムアミド中42℃でハイブリダイゼーションを行い、0.1×SSC、0.1% SDS中60℃
で洗浄することを意味する。これらの条件において、変異が、ハイブリダイズされる配列
の長さ及びGCヌクレオチド塩基含有量に基づいて生じることが、当業者によって理解され
る。当技術分野の標準である式は、正確なハイブリダイゼーション条件を決定するために
適切である。Sambrookらの文献, 「分子クローニング(Molecular Cloning)」中9.47-9.
51, Cold Spring Harbor Laboratory Press社, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)を参照
されたい。
【0042】
本明細書で使用される「心不全」は、心臓が代謝する組織の要求に必要とされる速度で
血液を拍出しなくなる心臓機能の異常を意味する。心不全は鬱血性心不全、心筋梗塞、頻
脈性不整脈、家族性肥大型心筋症、虚血性心疾患、特発性拡張型心筋症、及び心筋炎など
の広範囲の疾患状態を含む。心不全は限定されることなく、虚血性、鬱血性、リウマチ性
、ウイルス性、毒性又は特発性形態を含むいくつもの因子により引き起こされ得る。慢性
心肥大は鬱血性心不全及び心停止の前兆である顕著に病的な状態である。
【0043】
本明細書で使用されるように、本発明で使用される「ニューレグリン」又は「NRG」は
、ErbB2、ErbB3、ErbB4、又はそれらのホモ二量体若しくはヘテロ二量体と結合し、かつ
活性化させることができるタンパク質又はペプチドを指し、限定はされないが、全てのニ
ューレグリンアイソフォーム、ニューレグリンEGFドメイン単独、ニューレグリンEGF様ド
メインを含むポリペプチド、ニューレグリン変異体若しくは誘導体、及び以下に詳細を記
載する上述の受容体もまた活性化させる任意の種類のニューレグリン様遺伝子産物を含む
。また、ニューレグリンはNRG-1、NRG-2、NRG-3及びNRG-4タンパク質、ペプチド、断片並
びにニューレグリンの活性を模倣する化合物を含む。本発明で使用されるニューレグリン
は上述のErbB受容体を活性化させ、それらの生物学的反応を調節することができ、例えば
、骨格筋細胞におけるアセチルコリン受容体合成を刺激し;かつ/又は心筋細胞の分化、
生存及びDNA合成を改善させることができる。また、ニューレグリンはその生物活性を実
質的に変化させない保存的アミノ酸置換を有するそれらのバリアントを含む。適当なアミ
ノ酸の保存的置換は当業者に公知であり、一般に、得られる分子の生物活性を変化させる
ことなく施すことができる。当業者には一般に、ポリペプチドの重要でない領域の単一ア
ミノ酸置換は実質的に生物活性を変化させないことが認識されている(例えば、Watsonら
の文献, 「遺伝子の分子生物学(Molecular Biology of the Gene)」, 第4版, 1987, Be
njamin Cummings, p.224を参照されたい)。好ましい実施態様において、本発明で使用さ
れるニューレグリンはErbB2/ErbB4ヘテロ二量体又はErbB2/ErbB3ヘテロ二量体と結合し、
これらを活性化させることができるタンパク質又はペプチド、例えば、制限を意図するも
のではないが、EGF様ドメインを含むNRG-1 β2アイソフォームの177~237断片を含むペプ
チドを指す。該断片のアミノ酸配列は、以下からなる:
【化1】
【0044】
本明細書で使用される「上皮増殖因子様ドメイン」又は「EGF様ドメイン」は、ErbB2、
ErbB3、ErbB4、又はそれらのホモ二量体若しくはヘテロ二量体と結合し、これらを活性化
し、かつその内容が全て引用により本明細書に組み込まれているWO 00/64400, Holmesら
の文献, Science, 256:1205-1210 (1992); 米国特許第5,530,109号及び第5,716,930号; H
ijaziらの文献, Int. J. Oncol., 13:1061-1067 (1998); Changらの文献, Nature, 387:5
09-512 (1997); Carrawayらの文献, Nature, 387:512-516 (1997); Higashiyamaらの文献
, J. Biochem., 122:675-680 (1997);並びにWO 97/09425に開示されているEGF受容体結合
ドメインとの構造的類似性を有するニューレグリン遺伝子によってコードされたポリペプ
チドモチーフを指す。特定の実施態様において、EGF様ドメインはErbB2/ErbB4ヘテロ二量
体又はErbB2/ErbB3ヘテロ二量体と結合し、これらを活性化させる。特定の実施態様にお
いて、EGF様ドメインは、NRG-1の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。いくつかの
実施態様において、EGF様ドメインはNRG-1のアミノ酸残基177~226、177~237、又は177
~240に対応するアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、EGF様ドメインはNRG-2
の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、EGF様ドメイン
はNRG-3の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、EGF様ド
メインはNRG-4の受容体結合ドメインのアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、E
GF様ドメインは米国特許第5,834,229号に記載された通りのアミノ酸配列
【化2】
を含む。
【0045】
本発明はNRG製剤を提供し、高度に安定な医薬組成物をもたらす。該安定な医薬組成物
は心不全に罹患している個体又は心不全を発症するリスクのある個体の治療における治療
薬として有用である。
【0046】
一実施態様において、NRGの医薬製剤が提供され、該医薬製剤は:(a) NRGタンパク質又
はポリペプチド;(b) 1以上の緩衝剤を含み;該NRGタンパク質又はポリペプチドは:
a) 配列番号:2に記載されたアミノ酸配列を含むタンパク質又はポリペプチド;
b) NRGのEGF様ドメインを含むNRGタンパク質;
c) a) のポリペプチドの生物学的に活性な類似体、断片又はバリアント;
d) 配列番号:1に記載されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;
e) d) のポリペプチドの生物学的に活性な類似体、断片又はバリアント;及び
f) 中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号:1に記載され
たポリヌクレオチドとハイブリッド形成するポリヌクレオチドによってコードされるポリ
ペプチドからなる群から選択され;NRGタンパク質又はポリペプチドの濃度は約0.01 g/L
~約1 g/Lの範囲内である;いくつかの好ましい実施態様において、該濃度は約0.01 g/L
~約0.8 g/L、約0.01 g/L~約0.6 g/L、約0.01 g/L~約0.4 g/L、約0.01 g/L~約0.2 g/L
の範囲内である。追加の実施態様において、該NRGタンパク質又はポリペプチドは約1.0 g
/L、約0.90 g/L、約0.80 g/L、約0.70 g/L、約0.60 g/L、約0.50 g/L、約0.45 g/L、約0.
40 g/L、約0.35 g/L、約0.30 g/L、約0.25 g/L、約0.20 g/L、約0.15 g/L、約0.10 g/L、
約.05 g/L又はそれ未満とすることができる。
【0047】
好ましい一実施態様において、該NRGタンパク質又はポリペプチドは0.25 g/Lの濃度で
あり;該緩衝剤は約0.1 mM~約500 mMの範囲内のpH緩衝剤であり、かつ前記pHは約2.0~
約12.0の範囲内であり;該緩衝剤はクエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ヒスチジン、グリシ
ン、炭酸水素塩、HEPES、トリス、希HCl、希NaOH及びこれらの薬剤の組合せからなる群か
ら選択される。いくつかの好ましい実施態様において、該pHは約3.0~約10.0、約3.0~約
7.0、約2.3~3.8の範囲内である。いくつかの実施態様において、該pH値は約2.0、約2.1
、約2.2、約2.3、約2.4、約2.5、約2.6、約2.7、約2.8、約2.9、約3.0、約3.1、約3.2、
約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、約3.9又は約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、
約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9又は約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、
約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9又は約6.0である。好ましい一実施態様において、該
緩衝剤はリン酸塩であり、該pH値は約6である。好ましい一実施態様において、該緩衝剤
はリン酸塩であり、該pH値は約3~約4である。別の好ましい実施態様において、該緩衝剤
はリン酸塩であり、該pH値は約3.4である。
【0048】
本発明の具体的な一実施態様において、該NRG製剤は配列番号:2に記載されたアミノ酸
配列を有するNRGポリペプチドを含み;緩衝剤はリン酸塩であり、かつ該pHは約6.0である
。本発明の具体的な一実施態様において、該NRG製剤は配列番号:2に記載されたアミノ酸
配列を有するNRGポリペプチドを含み;緩衝剤はリン酸塩であり、かつ該pHは約3.4である
【0049】
別の実施態様において、NRGの安定な医薬製剤が提供され、該医薬製剤は:(a) NRGタン
パク質又はポリペプチド;(b) 1以上の緩衝剤;及び(c) 1以上の安定剤を含み;該安定剤
はマンニトール、ソルビトール、キシリトール、スクロース、トレハロース、マンノース
、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲンチオビオー
ス、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトース、ヒト血清アルブミン
及びこれらの安定剤の組合せからなる群から選択され;該安定剤は約0.1 g/L~約200 g/L
の濃度である。いくつかの好ましい実施態様において、該安定剤は約50 g/Lの濃度のマン
ニトールである。いくつかの好ましい実施態様において、該安定剤は約2 g/L~約8 g/Lの
濃度のヒト血清アルブミンである。
【0050】
本発明の具体的な一実施態様において、該NRG製剤は配列番号:2に記載されたアミノ酸
配列を有するNRGポリペプチドを含み;緩衝剤はpHが約6.0の約10 mMの濃度のリン酸塩で
あり;安定剤は約2 g/Lの濃度のヒト血清アルブミンである。
【0051】
さらに別の実施態様において、NRGの安定な医薬製剤が提供され、該医薬製剤は:(a) N
RGタンパク質又はポリペプチド;(b) 1以上の緩衝剤;及び(c) 1以上の賦形剤を含み;該
1以上の賦形剤はヒト血清アルブミン、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコー
ル、及びこれらの賦形剤の組合せからなる群から選択され;該1以上の賦形剤は約0.1 g/L
~約200 g/Lの濃度である。いくつかの好ましい実施態様において、該賦形剤は約2 g/L~
約8 g/Lの濃度のヒト血清アルブミンである。いくつかの好ましい実施態様において、該
賦形剤は約50 g/Lの濃度のマンニトールである。
【0052】
さらに別の実施態様において、NRGの安定な医薬製剤が提供され、該医薬製剤は:(a) N
RGタンパク質又はポリペプチド;(b) 1以上の緩衝剤;(c) 1以上の安定剤;及び(d) 1以
上の賦形剤を含む。いくつかの好ましい実施態様において、該安定剤はヒト血清アルブミ
ンである。いくつかの好ましい実施態様において、該賦形剤はマンニトールである。
【0053】
さらに別の実施態様において、NRGの安定な医薬製剤が提供され、該医薬製剤は:(a) N
RGタンパク質又はポリペプチド;(b) 1以上の緩衝剤;(c) 1以上の安定剤;(d) 1以上の
賦形剤;及び(e) 1以上の塩を含む。
【0054】
いくつかの実施態様において、本発明によって提供される製剤は、賦形剤を追加した上
記の製剤のいずれかの凍結乾燥により調製された、凍結乾燥医薬製剤である。いくつかの
実施態様において、該賦形剤はヒト血清アルブミン、マンニトール、グリシン、ポリエチ
レングリコール、及びこれらの賦形剤の組合せからなる群から選択される。具体的な実施
態様において、該賦形剤はマンニトールである。
【0055】
別の実施態様において、ニューレグリンの該凍結乾燥医薬製剤は:(a) NRGタンパク質
又はポリペプチド;(b) 1以上の緩衝剤;(c) 1以上の賦形剤;(d) 1以上の安定剤;及び(
e) 1以上の塩を含み、ここで、1 mlの再懸濁溶液で約60 mgの該製剤を再懸濁した後に、(
a) が約0.01 g/L~1 g/Lの濃度であり;(b) が約0.1 mM~約500 mMの濃度であり、かつ該
pHが約3~約7であり;(c) が約0.1 g/L~約200 g/Lの濃度であり、(d) が約0.1 g/L~約2
00 g/Lの濃度であり、並びに(e) が約100 mM~約500 mMの濃度である。
【0056】
特定の一実施態様において、本発明によって提供される凍結乾燥医薬製剤は、(a) 配列
番号:2に記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b) 該緩衝剤としてのリン酸
塩、(c) 該賦形剤としてのマンニトール、(d) 該安定剤としてのヒト血清アルブミン、及
び(e) 該塩としての塩化ナトリウムを含み、ここで、1 mlの再懸濁溶液で約60 mgの該製
剤を再懸濁した後に、(a) が約0.25 g/Lの濃度であり;(b) が約10 mMの濃度であり、か
つ該pHが約6であり;(c) が約50 g/Lの濃度であり、(d) が約2 g/Lの濃度であり、かつ(e
) が約150 mMの濃度である。
【0057】
(凍結乾燥)
【0058】
一態様において、本発明のNRGポリペプチドを含む製剤は、凍結乾燥により凍結乾燥医
薬製剤へと調製することができる。凍結乾燥は当該技術分野で一般的な技術を用いて実行
され、開発する組成物に対して最適化されるべきである[Tangらの文献, Pharm Res. 21:1
91-200, (2004) 及びChangらの文献, Pharm Res. 13:243-9 (1996)]。
【0059】
一態様において、凍結乾燥サイクルは、3つの工程:凍結、一次乾燥、及び二次乾燥か
ら構成される[A. P. Mackenzie, Phil Trans R Soc London, Ser B, Biol 278:167 (1977
)]。該凍結工程において、溶液を冷却して氷形成を開始させる。さらに、この工程は充填
剤の結晶化を誘導する。該氷は該一次乾燥段階において昇華する。該一次乾燥段階は昇華
を促進するために真空を用い、熱を導入しながら氷の蒸気圧より下へとチャンバ内を減圧
させることにより遂行される。最後に、二次乾燥段階ではチャンバの減圧下高い保存温度
で吸着水又は結合水が除去される。このプロセスは凍結乾燥ケーキとして知られる物質を
生じる。その後該ケーキは滅菌水又は適当な注射用希釈液により再構成することができる
【0060】
該凍結乾燥サイクルは賦形剤の最終物理状態を決定するだけでなく、再構成時間、外観
、安定性及び最終水分含有量のような他のパラメータにも影響する。凍結状態の組成物構
造は特定の温度で起こるいくつかの転移(例えば、ガラス転移、湿潤、及び結晶化)を通
じて進行し、該構造を使用して、凍結乾燥プロセスを理解し、最適化することができる。
ガラス転移温度(Tg及び/又はTg')は溶質の物理状態に関する情報を提供することができ
、かつ示差走査熱量測定(DSC)によって決定することができる。Tg及びTg'は凍結乾燥サ
イクルを設計する際に考慮しなくてはならない重要なパラメータである。例えば、Tg'は
一次乾燥にとって重要である。さらに、乾燥状態において、ガラス転移温度は最終生成物
の保存温度に関する情報を提供する。
【0061】
(緩衝液及び緩衝剤)
【0062】
本明細書で使用される「緩衝液」又は「緩衝剤」は、溶液のpHを許容し得る範囲である
約2.0~約9.0に維持する薬剤又は薬剤の組合せを包含する。適当な緩衝液は、他の成分と
化学反応を起こさず、かつ所望の程度のpHの緩衝を提供するに十分な量存在する緩衝液で
ある。
【0063】
医薬として活性のあるタンパク質製剤の安定性は、通常狭いpH範囲内で最大となること
が観察される。この最適安定性のpH範囲は、前製剤試験において早期に特定する必要があ
る。加速安定性試験及び熱量測定スクリーニング試験のようないくつかのアプローチが、
この試みにおいて有用である(Remmele R. L. Jr.らの文献, Biochemistry, 38(16): 524
1-7 (1999))。いったん製剤が完成したら、該タンパク質を製造し、貯蔵期間を通じて維
持しなくてはならない。そのため、該製剤中のpHを制御するために、緩衝剤がほとんど常
に利用される。
【0064】
緩衝種の緩衝能は、pKaと等しいpHにおいて最大となり、この値から離れるようにpHが
上昇するか、又は減少すると、減少する。該緩衝能の90パーセントがそのpKaの1つのpH単
位内に存在する。また、緩衝能は緩衝液濃度の上昇と比例して上昇する。
【0065】
緩衝液を選ぶ際に、いくつかの要素を考慮する必要がある。第一にまず、該緩衝種及び
その濃度はそのpKa及び所望の製剤pHに基づいて定義される必要がある。同様に重要なの
は、該緩衝液が該タンパク質及び他の製剤賦形剤と適合し、かついかなる分解反応も触媒
しないことが保証されることである。考慮すべき第三の重要な態様は、投与に際し該緩衝
液が誘発し得る刺激感及び炎症である。例えば、クエン酸塩は注射に際し刺激感を引き起
こすことが公知である(Laursen Tらの文献, Basic Clin Pharmacol Toxicol., 98(2): 2
18-21 (2006))。刺激感及び炎症の可能性は、皮下(SC)又は筋肉内(IM)経路を介して
投与される薬物に対してより大きい。SC又はIM経路においては、該製剤が投与に際し血液
中へと速やかに希釈されるIV経路によって投与される場合と比較して、薬物溶液は相対的
に長期間その場所にとどまる。直接IV注入により投与される製剤については、緩衝液の総
量(及び任意の他の製剤成分)をモニタリングする必要がある。患者において心臓血管作
用を誘発し得る、リン酸カリウム緩衝液の形態で投与されるカリウムイオンについては、
特に注意を払わねばならない(Hollander-Rodriguez J Cらの文献, Am. Fam. Physician.
, 73(2): 283-90 (2006))。
【0066】
凍結乾燥製剤のための緩衝液は、さらに考慮することを必要とする。酢酸塩及びイミダ
ゾールのような一般的な緩衝液の中には、凍結乾燥のプロセスの間に昇華又は蒸発するお
それがあり、それによって凍結乾燥の間、又は再構成の後に製剤のpHを変化させるものも
ある。
【0067】
該組成物中に存在する緩衝液系は、生理学的に適合し、医薬製剤を所望のpHに維持する
ように選択される。一実施態様において、溶液のpHは、pH 2.0~pH 12.0である。例えば
、溶液のpHは、例えば、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1
、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7
、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3
、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9
、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5
、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9
、11.0、11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8、11.9、又は12.0とすること
ができる。
【0068】
pH緩衝化合物は、製剤のpHを所定のレベルに維持するのに適当な任意の量存在し得る。
一実施態様において、pH緩衝濃度は0.1 mM~500 mMである。例えば、pH緩衝剤は少なくと
も0.1、0.5、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、1
2、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300
、又は500 mMであることが意図される。
【0069】
本明細書に記述される製剤を緩衝するのに用いられる例示的なpH緩衝剤には、限定はさ
れないが、有機酸、グリシン、ヒスチジン、グルタミン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、酢
酸塩、クエン酸塩、トリス、HEPES、及び限定はされないが、アスパラギン酸塩、ヒスチ
ジン、及びグリシンを含むアミノ酸又はアミノ酸の混合物がある。本発明の一実施態様に
おいて、該緩衝剤はリン酸塩である。
【0070】
(安定剤及び充填剤)
【0071】
本医薬製剤の一態様において、安定剤(又は、安定剤の組合せ)は、保存により誘発さ
れる凝集及び化学的分解を防止し、又は低下させるために追加される。再構成に際して溶
液にもやがかかったり、又は溶液が濁ったりしたら、タンパク質が沈殿したか、又は少な
くとも凝集したことを示している。用語「安定剤」は、凝集、又は水性状態における化学
的分解(例えば、自己分解、脱アミド化、酸化など)を含む、物理的分解を防止すること
のできる賦形剤を意味する。意図される安定剤には、限定はされないが、スクロース、ト
レハロース、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビ
オース、ゲンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトー
ス、マンニトール、ソルビトール、グリシン、アルギニンHCL、デキストラン、デンプン
、ヒドロキシエチルデンプン、シクロデキストリン、N-メチルピロリデン、セルロース、
及びヒアルロン酸などの多糖を含むポリヒドロキシ化合物がある[Carpenterらの文献, De
velop. Biol. Standard 74:225, (1991)]。本製剤において、該安定剤は約0.1、0.5、0.7
、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、
16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、又は200 g/Lの濃度で組み込ま
れる。本発明の一実施態様において、マンニトールは安定剤として使用される。
【0072】
また、所望の場合、該製剤は適当な量の充填剤及び浸透圧調節剤も含む。充填剤には、
例えば限定されることなく、マンニトール、グリシン、スクロース、多量体(例えばデキ
ストラン、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース)、ラクトース、ソルビ
トール、トレハロース、又はキシリトールがある。
【0073】
(製剤及び賦形剤)
【0074】
賦形剤は薬物生産品(例えば、タンパク質)に安定性及び送達を与えるか、又は該薬物
生産品の安定性及び送達を高める添加物である。それらを含める理由に関わらず、賦形剤
は製剤の一部を構成する成分であり、従って安全で、患者によく認容される必要がある。
タンパク質薬物については、賦形剤の選択は特に重要であり、それは、該賦形剤が該薬物
の有効性及び免疫原性の両方に影響し得るためである。従って、タンパク質製剤は適当な
安定性、安全性、及び市場性を与える賦形剤を適切に選択することにより、開発する必要
がある。
【0075】
タンパク質製剤開発の主要な困難は、生産品を製造、輸送、及び保存時のストレスに対
し安定化させることである。製剤賦形剤の役割は、これらのストレスに対する安定化を提
供することである。また、賦形剤は高濃度タンパク質製剤の送達を可能とし、患者の利便
を高めるため、該高濃度タンパク質製剤の粘性を低下させるために利用される。一般に、
賦形剤は該賦形剤がタンパク質を様々な化学的及び物理的ストレスに対し安定化させる機
構に基づいて分類することができる。一部の賦形剤は、特定のストレスの作用を軽減し、
又は特定のタンパク質の特定の感受性を調節するために使用される。他の賦形剤は、タン
パク質の物理的安定性及び共有結合性安定性に対するより一般的な作用を有する。本明細
書に記載される賦形剤は、その化学的類型又は製剤におけるその機能的役割によって整理
されている。安定化形態についての簡潔な記載を、それぞれの賦形剤の種類を議論する際
に提供する。
【0076】
賦形剤の量又は範囲は、生物薬剤(例えば、タンパク質)の安定性の保持を促進する、
本発明の生物医薬製剤を達成する任意の特定の製剤中に含めることができる。例えば、本
発明の生物医薬製剤中に含まれる塩の量及び種類は、所望の浸透圧(すなわち、等張、低
張又は高張)の最終溶液並びに該製剤中に含まれる他の成分の量及び浸透圧に基づいて選
択される。
【0077】
さらに、特定の賦形剤がモル濃度で報告される場合、当業者は溶液の当量パーセント(
%)w/v(例えば、(溶液の溶液試料/mL中の物質のグラム数)×100%)もまた意図され
ることを認識するであろう。
【0078】
本明細書に記載される賦形剤の濃度は、特定の製剤内での相互依存性を共有する。例と
して、充填剤濃度は例えば、タンパク質が高濃度で存在する場合、又は例えば、安定剤が
高濃度で存在する場合に、降下させることができる。充填剤が存在しない特定の製剤の等
張性を維持するために、安定剤濃度が適宜調節されるであろう(すなわち、安定剤の「浸
透圧調整」量が使用されるであろう)。賦形剤には、例えば限定されることなく、ヒト血
清アルブミン、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコール、及びこれらの賦形剤
の組合せがある。
【0079】
(塩)
【0080】
塩はしばしば、タンパク質の溶解性、物理的安定性、及び等張性にとって重要となり得
る製剤のイオン強度を上昇させるために追加される。塩は様々な様式でタンパク質の物理
的安定性に作用し得る。イオンはタンパク質表面の電荷を帯びた残基に結合することによ
り、未変性状態のタンパク質を安定化することができる。あるいは、塩はタンパク質骨格
(--CONH--)に沿ってペプチド基に結合することにより、変性状態を安定化させることが
できる。また、塩はタンパク質分子内での残基間の反発性静電的相互作用を遮蔽すること
により、タンパク質の未変性立体構造を安定化させることができる。また、タンパク質製
剤中の塩は、タンパク質の凝集及び不溶性をもたらし得るタンパク質分子間の誘引性静電
的相互作用を遮蔽することができる。提供される製剤において、塩濃度は約1、10、20、3
0、40、50、80、100、120、150、200、300、及び500 mMの間である。
【0081】
(調製方法)
【0082】
本発明は医薬製剤の調製方法をさらに意図する。
【0083】
本方法は以下の工程の1以上をさらに含む:凍結乾燥前に前記混合物に本明細書に記載
の安定剤を追加すること、凍結乾燥前に前記混合物にそのそれぞれが本明細書に記載され
ている充填剤、浸透圧調節剤、及び賦形剤から選択される、少なくとも1つの薬剤を追加
すること。
【0084】
凍結乾燥物質の標準的な再構成の実践は、純水又は滅菌注射用水(WFI)(典型的には
、凍結乾燥中に除去された体積と等しい)を追加して体積を戻すことであるが、抗菌剤の
希釈溶液が時折、非経口投与用の医薬の生産において使用される[Chenの文献, Drug Deve
lopment and Industrial Pharmacy, 18:1311-1354 (1992)]。従って、再構成されたNRG組
成物を調製するための方法が提供され、該方法は本発明の凍結乾燥NRG組成物に希釈液を
追加する工程を含む。
【0085】
凍結乾燥物質は、水溶液として再構成され得る。様々な水性担体、例えば滅菌注射用水
、複数回用量使用のための防腐剤を含む水、又は適量の界面活性剤を含む水(例えば、水
性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された活性化合物を含む該水性懸濁液)。様々な態
様において、そのような賦形剤は、懸濁剤、例えば限定されることなく、カルボキシメチ
ルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ア
ルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、及びアラビアゴムであ
り;分散剤又は湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えば限定されることなく、レ
シチン、又はアルキレンオキシドの脂肪酸との縮合産物、例えば限定されることなくステ
アリン酸ポリオキシエチレン、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合産物
、例えば限定されることなく、ヘプタデカエチル-エンオキシセタノール、又はエチレン
オキシドと脂肪酸に由来する部分エステルの縮合産物及びモノオレイン酸ポリオキシエチ
レンソルビトールのようなヘキシトール、又はエチレンオキシドと脂肪酸に由来する部分
エステルの縮合産物、及びヘキシトール無水物、例えば限定されることなく、モノオレイ
ン酸ポリエチレンソルビタンである。また、様々な態様において、水性懸濁液は1以上の
防腐剤、例えば限定されることなく、エチル、又はn-プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸塩
を含む。
【0086】
(投与)
【0087】
ヒト又は試験動物に組成物を投与するために、一態様において、該組成物は1以上の医
薬として許容し得る担体を含む。語句「医薬として」又は「薬理学的に」許容し得るとは
、安定で、凝集及び切断産物のようなタンパク質分解を阻害し、それに加えて以下に記載
するように、当技術分野で周知の経路を用いて投与された場合にアレルギー性反応、又は
他の有害反応を引き起こさない、分子実体及び組成物を指す。「医薬として許容し得る担
体」は、任意の及び全ての臨床上有用な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌
剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含み、先に開示したこれらの薬剤を含む。
【0088】
本明細書で使用される「再懸濁溶液」は、溶液、例えばいかなるアレルギー反応又はい
かなる他の有害反応も引き起こすことなく、臨床的に使用することができる滅菌DI水又は
生理食塩水を指す。
【0089】
該医薬製剤は、経口的に、局所的に、経皮的に、非経口的に、吸入噴霧により、経膣的
に、経直腸的に、又は頭蓋内注射により投与される。本明細書で使用される用語、非経口
的は、皮下注射、静脈内、筋肉内、大槽内への注射、又は注入技術を含む。静脈内、皮内
、筋肉内、乳房内、腹腔内、髄膜下、眼球後方、肺内注射及び/又は特定の部位での外科
的植込みによる投与が、同様に意図される。一般的に、組成物は発熱物質並びに受容者に
とって有害となり得る他の不純物を本質的に含まない。
【0090】
該組成物の単一の又は複数回の投与は、治療する医師によって選択された投与量レベル
及び様式をもって実行される。疾患の予防又は治療について、適当な投薬量の決定は、先
に定義したように、治療される疾患の種類、該疾患の重症度及び経過、薬物が予防目的又
は治療目的のいずれで投与されるか、過去の療法、患者の病歴及び薬物への反応、並びに
主治医の裁量に依存する。
【0091】
(キット)
【0092】
追加の態様として、本発明は対象に投与するためのその使用を促進する様式で包装され
た1以上の凍結乾燥組成物を含むキットを含む。一実施態様において、そのようなキット
は本明細書に記載された医薬製剤(例えば、治療用タンパク質又はペプチドを含む組成物
)を含み、密封ボトル又は密封容器のような容器中に包装され、該方法の実践における該
化合物又は組成物の使用を記載するラベルが容器に添付されるか、又は包装中に含まれる
。一実施態様において、該キットは治療用タンパク質又はペプチド組成物を有する第一容
器及び該組成物用の生理学的に許容し得る再構成溶液を有する第二容器を含む。一態様に
おいて、該医薬製剤は単位剤形中に包装される。該キットは特定の投与経路に従う該医薬
製剤の投与に適当な装置をさらに含むことができる。好ましくは、該キットは該医薬製剤
の使用を記載したラベルを含む。
【0093】
(投薬量決定)
【0094】
本明細書に記載される状態を治療するための方法に関わる投薬レジメンは、薬物の作用
を変化させる様々な因子、例えば該患者の年齢、状態、体重、性別及び食事、何らかの感
染の重症度、投与時間、並びに他の臨床的因子を考慮して主治医により決定されるものと
する。
【0095】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明
の属する技術分野の当業者によって共通に理解されているものと同じ意味を有する。本節
に記載される定義が引用により本明細書に組み込まれている特許、出願、公開出願及び他
の刊行物に記載された定義と対立するか、又はそうでなくとも一致しない場合、本節に記
載された定義を引用により本明細書に組み込まれた定義に優先する。
【0096】
先行する記載から、本明細書に記載される発明に変形及び改変を施して、該発明を様々
な使用法及び条件に採択することができることは、明らかであろう。また、そのような実
施態様は以下の特許請求の範囲の範囲内である。
【0097】
本明細書における変数のいかなる定義においても、要素の表の列挙はあらゆる単一の要
素又は表に記載された要素の組合せ(若しくはサブコンビネーション)としての変数の定
義を含む。本明細書における実施態様の列挙は、任意の単一の実施態様又は任意の他の実
施態様若しくはそれらの部分との組み合わせとしての実施態様を含む。
【0098】
本明細書に言及される全ての特許及び刊行物は、それぞれの独立の特許及び刊行物が具
体的かつ個別的に引用により組み込まれることが示される場合と同程度に、引用により本
明細書に組み込まれる。
【0099】
以下の実施例は例示として提供されるが、限定するものではない。
【実施例0100】
(実施例)
本発明はいかなる様式においても限定することを意図するものではない以下の実施例に
より例示される。本明細書で使用されるように、該実施例で使用される「rhNRG-1」は、
配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質又はペプチドを指す。
【0101】
(実施例1:rhNRG-1のpH安定性プロファイリング)
【0102】
(1:実験の目的)
【0103】
1.1 様々なpH緩衝液(pH 3~pH 10)におけるrhNRG-1のpH安定性プロファイルをSDS-PA
GEにより生成するため。
【0104】
1.2 様々なpH緩衝液(pH 3~pH 8)及びDI水におけるrhNRG-1のpH安定性プロファイルをR
P-HPLCにより生成するため。
【0105】
1.3 目的1.2からの発見に基づき、狭い作業pH範囲(pH 2.3~4.3)のpH安定性プロファ
イルを生成する。
【0106】
1.4 該狭いpH安定性試験に基づき、rhNRG-1製剤に対する最適pHを決定する。
【0107】
(2. 実験手順)
【0108】
2.1 RP-HPLC法を開発し、rhNRG-1薬物物質の純度を決定する。
【0109】
表1:方法条件
【表1】
【0110】
1.24 mg/mL rhNRG-1、20 mMリン酸緩衝液及び0.5M NaCl、pH 5.5(「API」)を含むrhN
RG-1のバッチ201204001を、全てのHPLC分析の標準溶液の調製に使用した。
【0111】
rhNRG-1用希釈液及び該希釈液中で0.25 mg/mLに調製された標準溶液の代表的なクロマ
トグラムが、図1に示されている(それぞれ、上及び下)。
【0112】
表2:0.25 mg/mLの標準を6回注入することによって評価された方法の正確さ
【表2】
生成されたピーク面積に対するRSDは0.4であった。これは、正確さの許容し得る基準
である<2.0の範囲内である。
【0113】
2.2 pH 3~pH 10の緩衝液を調製する。
【0114】
15 mLのプラスチックチューブ中に、API及びDI水又は新しい緩衝液を加える。0.25 mg/
mL rhNRG-1、10 mM新緩衝液、4 mMリン酸塩(APIに由来)及び0.1M NaCl(APIに由来)を
含む溶液中に混合する。
【0115】
表3:最終pH及び新しい緩衝液
【表3】
【0116】
表4:ガラスバイアル中に密封され保存されたそれぞれの溶液の状況
【表4】
【0117】
2.3 SDS-PAGEにより純度を検出する。
【0118】
40℃については、10日後にSDS-PAGEにより試験する。脱染I(45%水、45%メタノール
、10%酢酸、直前に作製);0.1%クマシーブルー染色;ランニングゲル(12%~15%)
が個別のポリペプチドを別個のバンドへと分離する助けとなる。
【0119】
2.4 RP-HPLCにより溶液を検出する。
【0120】
60℃については、150 μLを取り、0、7.5、24、48、65及び77時間後にHPLCで試験する
【0121】
40℃については、150 μLを取り、28.5、49及び77時間後にHPLCで試験する。
【0122】
狭いpH試験(pH 2.3~4.3)のための準備:
【0123】
プラスチックチューブ中に、API及びDI水を加える。0.25 mg/mL rhNRG-1、4 mMリン酸
塩(API由来)及び0.1M NaCl(API由来)を含む溶液中に混合する。希HClを用いてpHを下
げて調節する。いったん第一の目標値に達したら、約8 mLを別々のプラスチックチューブ
に移し、滴定を続けて次の目標値に到達させ、それぞれの目標値(すなわち、4.29、3.90
、3.78、3.47、3.36、3.17、3.02、2.85、2.58、2.37及び2.33)で約8 mLを収集する。そ
れぞれのpHについて、ガラスバイアルに移し、それぞれのレベルで合わせて5つのバイア
ルとする。1つのバイアルをそれぞれ2~8、25、40、50及び60℃に置く。
【0124】
60℃について、200 μLを取り、0、3.7、4.7及び5.7日後にHPLCで試験する。
【0125】
50℃について、200 μLを取り、0、4.7及び11日後にHPLCで試験する。
【0126】
40℃について、200 μLを取り、0、5.7、7及び11日後にHPLCで試験する。
【0127】
狭い範囲のpH-速度(安定性)プロファイルをそれぞれの温度で構築する。
【0128】
アレニウスの等式を導き、5℃での有効期間を予測する。
【0129】
(3. 結果及び結論)
【0130】
pH 3~10に対する代表的なSDS-PAGEクロマトグラムを図2に示す。
【0131】
RP-HPLC法によって測定されたrhNRG-1の初期濃度及びストレス後濃度を以下に列挙する
【0132】
表5:40℃、pH 3~8での結果
【表5】
【0133】
表6:60℃、pH 3~8での結果
【表6】
NT:試験していない。
【0134】
表7:40℃、pH 2.3~4.3での結果
【表7】
【0135】
表8:50℃、pH 2.3~4.3での結果
【表8】
NA:利用可能でない
【0136】
表9:60℃、pH 2.3~4.3での結果
【表9】
NA:利用可能でない
【0137】
40℃、pH 3~8での濃度対時間プロファイルは図3に示されている。
【0138】
40℃、pH 2.3~4.3での濃度対時間プロファイルは図4に示されている。
【0139】
50℃、pH 2.3~4.3での濃度対時間プロファイルは図5に示されている。
【0140】
60℃、pH 3~8での濃度対時間プロファイルは図6に示されている。
【0141】
60℃、pH 2.3~4.3での保存時の濃度対時間プロファイルは図7に示されている。
【0142】
それぞれの濃度対時間プロファイルについて、線形回帰分析を実施し、回帰式の傾きを
用いて、零次速度過程を仮定の下分解速度をmg/mL/時間で表した。
【0143】
pH 3~8についてのpH対分解速度(傾き)プロファイルを、図8に示す。
【0144】
pH 2.3~4.3についてのpH対分解速度(傾き)プロファイルを、図9に示す。
【0145】
2.3~8の範囲のpHについてのpH対分解速度(傾き)プロファイルを、図10に示す。
【0146】
それぞれのpH(3~8)及び温度において評価された分解速度及びT90(初期濃度又は0.0
25 mg/mLの10%が分解する時間)は、以下の通りに提供される(表10):
【表10】
【0147】
それぞれのpH(2.3~3.9)についての40、50及び60℃でのデータを使い、アレニウスプ
ロットを用いて5℃、それぞれのpHレベルでの有効期間を予測した。アレニウスプロット
から計算されるT90値は、以下の通り提供される(表11):
【表11】
【0148】
図11はpH対予測された有効期間T(90)の図式的表現である。
【0149】
40℃、pH 3~8で77時間保存時のクロマトグラムを図12に示す。
【0150】
pH 2.3~3.8についてのクロマトグラムを図13に示す。
【0151】
(結論:)
1. 溶液中でのrhNRG-1の安定性は、顕著にpH依存的であり、該rhNRG-1は酸性溶液(pH 3.
0~7.0)中において、塩基性溶液(pH 8.0~10.0)中におけるよりも安定である。
2. 該rhNRG-1に関して観察される最も高い安定性は、最も低いpH(3.2)におけるもので
ある。
3. 低pHでは、T90はpH 4.2でのT90の約2倍であり、又はその元の緩衝液(pH 5.5、無調整
)中におけるT90の約20倍である。従って、rhNRG-1溶液について低pHに適応させることに
より、安定性の大きな向上が期待できる。
4. 狭いpH試験により、最も高い安定性はpH 3.4(± 0.2)において示された。
【0152】
(実施例2:強制分解試験)
【0153】
(1. 実験の目的)
【0154】
rhNRG-1の安定性を試験するため。
【0155】
(2. 実験手順)
【0156】
API溶液を以下の通りに強制的に分解させた(表12):
【表12】

時点で収集された試料をRP-HPLCにより分析した。
【0157】
(3. 結果及び結論)
表13:酸化曝露の結果
【表13】
ストレスを受けた溶液の代表的なクロマトグラムを図14に示す(上から下へ向かって:
標準0.255 mg/mL、H2O2、20分後、H2O2、2時間25分後、H2O2、4時間30分後、H2O2、7時間
7分後)。
【0158】
(結論:)
【0159】
1. rhNRG-1は過酸化物に対する感受性が非常に高く、酸化を受けやすい。
【0160】
2. 安定性を高めるために抗酸化剤及び安定剤を製剤中に使用することが考慮されるべき
である。
【0161】
(実施例3:rhNRG-1製剤の安定性に対する異なる賦形剤の作用)
(1. 実験の目的)
【0162】
rhNRG-1製剤の安定性に対する異なる賦形剤の作用を試験するため。
【0163】
(2. 実験材料)
【0164】
2.1 16のrhNRG-1製剤が表14に列挙された。
【0165】
2.2 SHELLAB/Model1535サーモスタット付き容器(Sheldon社)
【0166】
2.3 HPLC Angilent 1200 (Angilent社)
【0167】
2.4 ZORBAX GF-250ゲルカラム(4.6 mm×250 mm)
【0168】
表14 試験製剤表
【表14】
【0169】
(3. 実験手順)
【0170】
3.1 試料を37℃に5日間置いた。
【0171】
3.2 SEC-HPLCにより試料純度を試験する。
【0172】
移動相:0.7 M NaCl、30 mM PB(pH7.0)
【0173】
HPLCクロマトグラフィー条件:流速0.5 ml/分、注入量20 μl、決定された波長450 nm
、記録時間20分。
【0174】
(4. 結果)
【0175】
面積正規化(area normalization)法により分析を実行し、それぞれの試料の純度を計
算した。4つのrhNRG-1製剤の試験結果を表15に列挙する。
【0176】
表15:5日後の試験製剤の純度
【表15】
【0177】
グルカン製剤(C1&C2)、アルギニン製剤(E1&E2)及びスクロース製剤(F1&F2)の
純度データは一致しない。そのためグルカン、アルギニン及びスクロースはrhNRG-1製剤
のための優れた賦形剤ではない。PVP(ポリビニルピロリドン)は充填剤であり、PVPを含
むrhNRG-1製剤はSEC-HPLCによる純度データを提供できない。この結果はラクトース、ト
レハロース、マンニトール及びグリシンがrhNRG-1製剤のための好ましい賦形剤であるこ
とを示していた。
【0178】
(実施例4:NRG製剤の生物活性へのヒト血清アルブミン(HSA)濃度の作用)
【0179】
(1. 要旨)
【0180】
HER2/neu遺伝子はチロシンタンパク質キナーゼである膜貫通タンパク質p185をコードす
る。ErbB3又はErbB4とのニューレグリン-1の結合はヘテロ二量体ErbB3-ErbB2及びErbB4-E
rbB2の形成を誘発し、かつHER2にコードされたチロシンタンパク質キナーゼを活性化させ
、これらはニューレグリン-1の機能性シグナル伝達の媒体となる。ニューレグリン-1とそ
の受容体との結合がErbB2タンパク質のリン酸化の誘因となるという事実に基づいて、イ
ンビトロで定量的に組換えニューレグリン-1の生物活性を決定するための、迅速で高感度
かつ高流量の方法が確立された。
【0181】
(2. 実験の目的)
【0182】
NRG製剤の生物活性に対する異なる濃度のHSAの作用を試験するため。
【0183】
(3. 実験材料)
【0184】
(3.1 rhNRG-1製剤)
【0185】
参照試料:0 g/L HSA、250 μg/L rhNRG-1、10 mMリン酸緩衝試薬、150 mM NaCl、50 g
/L マンニトール
【0186】
試験試料A:0.5 g/L HSA、250 μg/L rhNRG-1、10 mMリン酸緩衝試薬、150 mM NaCl、5
0 g/Lマンニトール
【0187】
試験試料B:2 g/L HSA、250 μg/L rhNRG-1、10 mMリン酸緩衝試薬、150 mM NaCl、50
g/L マンニトール
【0188】
試験試料C:8 g/L HSA、250 μg/L rhNRG-1、10 mMリン酸緩衝試薬、150 mM NaCl、50
g/Lマンニトール
【0189】
3.2 96穴細胞培養プレート(Corning社);Costar 96穴ELISA検出プレート。
【0190】
3.3 U.S. ATCCから導入したヒト乳癌細胞株を37℃、50% CO2下、基礎培地中で培養し
た。
【0191】
3.4 所与の量のDMEMを計量し、対応する体積を定量化し、3.7 g/LのNaHCO2、0.1 g/Lグ
ルタミン及び5.5 g/LのHEPESを追加する。
【0192】
3.5 基礎培地。4℃で保存された10%ウシ胎仔血清及びインスリン9 mg/Lを含むDMEM培
地。
【0193】
3.6 滅菌PBS(0.01M、pH 7.4)。
【0194】
3.7 Ca2+及びMg2+フリーPBSを用いて調製された0.25%膵臓酵素。
【0195】
3.8 抗ErbB2モノクローナル抗体、コーティング緩衝液、洗浄液。ErbB3及びErbB4との
交差反応性を有さないマウス抗ヒトErbB2細胞外機能性ドメインH4モノクローナル抗体を
選択する。コーティング緩衝液;pH 9.6, 0.05M炭酸塩緩衝液。洗浄液:0.01M PBS+0.05
% Tween-20。
【0196】
3.9 西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識されたマウス抗ヒトリン酸化プロテアー
ゼモノクローナル抗体(抗P-tyr-HRP)。
【0197】
3.10 基質、基質緩衝液。基質(TMB):2 mg/ml TMB(無水アルコールで調製)。基質
緩衝液:0.2 Mクエン酸+0.1 M Na2HPO4 (pH 5.0)。作用基質:基質緩衝液9 ml+TMB 1 m
l+3% H2O2 10 μl(必要に応じて調製)。
【0198】
3.11 終結剤 2N H2SO4
【0199】
3.12 細胞断片化解消(defragmentation)溶液。150 mM NaCl+50 mM Hepes+1% Trit
on-X 100+2 mM (オルトバナジウム酸ナトリウム)+0.01% (チメロソール(thimerosol)
)。混合プロテアーゼ阻害剤の錠剤(Tabletten, Proteasen-Irhibitoren-Cocktail)を1
つ、操作前に全ての25 mlに追加する。
【0200】
(4. 実験手順)
【0201】
4.1 試料を37℃に4日間置いた。
【0202】
4.2 細胞の接種
【0203】
MCF-7細胞を所与の量まで増幅させ、滅菌PBS溶液で洗浄し、続いて0.25%トリプシナー
ゼで消化した。計数後、細胞の濃度を基礎培地で調節した。96穴細胞培養プレートに細胞
を5×104/穴、100 μl/穴だけ加え、37℃、5% CO2下、培養箱中で一晩培養した。
【0204】
4.3 細胞飢餓
【0205】
96穴プレート中の培地を全て吸引し、それぞれの穴を37℃に温めたPBSで洗浄し、続い
て100 μl DMEM培地(ウシ血清フリーかつインスリンを含まない)を加える。細胞を37℃
、5% CO2下、培養箱中で24時間培養した。
【0206】
4.4 コーティング
【0207】
抗ErbB2細胞外機能性ドメインH4抗体をコーティング緩衝液で希釈して6 μg /mlとし、
続いて96穴ELISAプレートに穴当たり50 μlを加え、4℃で一晩(16~18時間)置く。
【0208】
4.5 試験する予定の対照溶液及び試料溶液を希釈する。
【0209】
試験する予定の対照溶液及び試料をそれぞれDMEM培地(ウシ血清フリーかつインスリン
を含まない)で希釈して2 μg/mlとし、続いて再び3回の勾配希釈を実行し、合わせて9倍
希釈する。
【0210】
4.6 細胞のリン酸化
【0211】
飢餓後の96穴細胞培地を吸引し、標準物質及び試験する予定の試料を穴当たり100 μl
加え、それぞれの濃度について2つの2連の穴を準備する。同時に陰性対照(すなわち、DM
EM培地プラセボ対照)を準備する。37℃で20分の反応。
【0212】
4.7 細胞の分解
【0213】
試料を速やかに吸引し、PBSで一度洗浄し、それぞれの穴に100 μlの断片化溶液を追加
し、4℃の冷蔵庫中で30分間断片化させた。全ての係留依存的な(anchorage-dependent)
細胞が沈降するまで氷浴条件下で水平に撹拌し、4℃、15,000 rpmで15分間遠心する。
【0214】
4.8 ELISA検出プレートの密封
【0215】
プレートを5回洗浄する。洗浄液を用いて5%スキムミルクを調製し、プレートのそれぞ
れの穴に200 μlを加え、37℃で2時間置く。
【0216】
4.9 試料を追加する。
【0217】
密封ELISAプレートを3回洗浄し、穴当たり90 μlの標準細胞断片化溶液及び試験試料断
片化溶液を加え、同時に陰性対照を準備し、37℃で1時間置く。
【0218】
4.10 酵素標識抗体を加える。
【0219】
プレートを5回洗浄し、1:500の洗浄液でHRP酵素結合マウス抗リン酸化チロシンタンパ
ク質抗体を希釈し(規準を用いた、かつ時間を用いた産物により決定された)、プレート
のそれぞれの穴に100 μlを加える。37℃で1時間置く。
【0220】
4.11 基質の発色
【0221】
プレートを5回洗浄し、調製された基質作業溶液を穴当たり100 μl加え、37℃で10分間
置く。
【0222】
4.12 終結
【0223】
2N H2SO4を穴当たり50 μl加え、反応を終結させた。
【0224】
4.13 OD値読み取り
【0225】
ELISAリーダー上での比色定量分析、450 nmの波長、655 nmの参照波長を決定し、結果
を記録する。
【0226】
(5. 結果)
【0227】
組換えヒトニューレグリン-1の濃度対OD値による構築及び分析を、試験する予定のそれ
ぞれの試料の半有効投与量を計算する線形回帰法を用いて実行した。4つのrhNRG-1製剤の
試験結果を表16に列挙する。
【0228】
表16 試験試料の生物活性
【表16】
【0229】
試料B及び試料Cの生物活性データ(表16を参照されたい)は、明らかに参照試料及び試
料Aのデータより優れている。この結果は、2 g/L(試料B)又は8 g/L(試料C)のHSA濃度
が、rhNRG-1製剤に対して好ましい濃度であることを示していた。
【0230】
(実施例5:加速及び長期安定性試験)
【0231】
(1. 実験の目的)
【0232】
rhNRG-1の最終薬物生産品の安定性を試験するため。
【0233】
(2. 実験手順)
【0234】
実験材料:Zensun社で製造された4つのrhNRG-1最終薬物生産品(FDP)バッチ。該rhNRG
-1 FDPは約250 μg/L rhNRG-1、約pH 6.0の約10 mMリン酸緩衝液、約50 g/Lマンニトール
、約2 g/L HSA及び約150 mM NaClを含む溶液を凍結乾燥させることにより得た。凍結乾燥
後、それぞれのバイアル中の生産品の量は約60 mgである。
【0235】
推奨保存条件及び上昇保存条件の両方で保存したrhNRG-1最終薬物生産品(FDP)の安定
性を評価するために試験を遂行し、表17中に見出すことができる。試料は試験期間のpH値
、生物活性及びrhNRG-1の量の項目を試験する際に、1 mlの水で分離した(resolved)。
【0236】
現在の指定は残余水分≦3.0%である(Karl Fischer法を用いて決定した)。ロットrhN
RG#1、rhNRG#2、rhNRG#3及びrhNRG#4はそれぞれ水分レベル1.49%、1.51%、1.62%、及
び1.35%で解放された。類似のバイアル及び栓構成を伴う他の生産品での過去の経験に基
づいて、残余水分およそ1.7%で解放されるいかなるrhNRG-1のロットも、提案される有効
期間の終了時(すなわち、5℃±3℃の意図された保存温度で24か月)に≦3.0%の指定限
界を満たすことが期待される。
【0237】
推奨保存条件(すなわち、5℃±3℃)及び上昇温度(すなわち、25℃±2℃)での長期
安定性試験をZensun社により製造された4つのrhNRG-1 FDPロットについて遂行した。これ
らの試験により個別の臨床ロットの安定性挙動を示すのに十分なデータが提供された。
【0238】
表17 それぞれのバッチの保存条件&試験期間
【表17】
【0239】
(3. 結果及び結論)
【0240】
それぞれのバッチを試験期間における外観、pH値、残余水分、生物活性及びrhNRG-1の
量を含む項目について試験した。
【0241】
安定性指示検定及び安定性容認基準の記載を含む安定性プロトコルは、表18に見出さす
ことができ、表18はまた、安定性試験において評価されたrhNRG-1 FDPのロットに関する
情報も含む。
【0242】
結果を表18に列挙した。
【0243】
表18 それぞれのバッチの安定性試験結果
【表18】
【0244】
ロットrhNRG#1、rhNRG#2、rhNRG#3及びrhNRG#4に対する残余水分において観察された変
動は、容認基準≦3.0%より十分に低く維持され、生物活性に影響を与えなかった。非臨
床試験及び臨床試験での使用目的に適するように製造されたロットの定性的分析技術(す
なわち、外観、SDS-PAGE分析など)に対する安定性の結果において、変化は観察できなか
った。同様に、保存中の全タンパク質分析、rhNRG-1量の分析に対し安定性の減少傾向は
なかった。
【0245】
これらのrhNRG-1 FDPロットは5℃±3℃で最大24か月の保存にわたってrhNRG-1の生物活
性を維持していた。この結果は上昇温度保存条件での安定性が6か月にわたることを示し
、このことから冷蔵条件下では有効期間が2年超であると推定できる。
【0246】
(提案される保存条件及び有効期間)
【0247】
rhNRG-1 FDPに対して推奨される保存条件は5℃±3℃である。従って、推奨保存条件で
保存した場合は、rhNRG-1 FDPに対し24か月という暫定有効期間が提案される。rhNRG-1 F
DPロットの有効期間はより長期の保存期間に対して生成される追加データに基づいてさら
に延長できる見込みがある。
【0248】
先の実施例は例示のみの目的で含まれており、本発明の範囲を限定することを意図しな
い。先に記載の内容に対する多くの変形が可能である。先に記載の実施例に対する改変及
び変形は当業者にとって明らかであるため、本発明は添付する特許請求の範囲の範囲によ
ってのみ限定されることが意図される。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
(a) ニューレグリン(NRG)ポリペプチド及び(b) 緩衝剤を含み、pHが3~7である、NRG
の医薬製剤。
(構成2)
前記NRG製剤が:(c) 安定剤をさらに含む、構成1記載の製剤。
(構成3)
前記NRG製剤が:(d) 塩をさらに含む、構成1又は2記載の製剤。
(構成4)
前記NRGポリペプチドが:
a) 配列番号:2に記載されたアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b) NRGのEGF様ドメインを含むポリペプチド;
c) a) のポリペプチドの生物学的に活性な類似体、断片又はバリアント;
d) 配列番号:1に記載されたポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド;
e) d) のポリペプチドの生物学的に活性な類似体、断片又はバリアント;及び
f) 中程度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で配列番号:1に記載され
たポリヌクレオチドとハイブリッド形成するポリヌクレオチドによってコードされるポリ
ペプチド
からなる群から選択される、構成1~3のいずれか1項記載の製剤。
(構成5)
前記NRGポリペプチドが配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチドで
ある、構成4記載の製剤。
(構成6)
NRGポリペプチドの濃度が約0.01 g/L~約1 g/Lの範囲内である、構成1~3のいずれか1
項記載の製剤。
(構成7)
前記NRGポリペプチドが0.25 g/Lの濃度の配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からな
るポリペプチドである、構成6記載の製剤。
(構成8)
前記緩衝剤がpH緩衝剤である、構成1~3のいずれか1項記載の製剤。
(構成9)
前記pH緩衝剤が約0.1 mM~約500 mMの範囲内である、構成8記載の製剤。
(構成10)
前記緩衝剤がクエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ヒスチジン、グリシン、炭酸水素塩、HE
PES、トリス、希HCl、希NaOH及びこれらの薬剤の組合せからなる群から選択される、構成
8記載の製剤。
(構成11)
前記緩衝剤がリン酸塩である、構成10記載の製剤。
(構成12)
前記pHが約6である、構成11記載の製剤。
(構成13)
前記pHが3~4である、構成11記載の製剤。
(構成14)
前記製剤が液体製剤である、構成1記載の製剤。
(構成15)
前記NRGポリペプチドが配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチドで
ある、構成14記載の製剤。
(構成16)
前記緩衝剤がリン酸塩である、構成14記載の製剤。
(構成17)
前記NRGポリペプチドが0.25 g/Lの濃度の配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からな
るポリペプチドであり、前記緩衝剤が10 mMリン酸塩であり、かつ前記pHが約3.4である、
構成14記載の製剤。
(構成18)
前記安定剤が約0.1 g/L~約200 g/Lの濃度である、構成2記載の製剤。
(構成19)
前記安定剤がマンニトール、ソルビトール、キシリトール、スクロース、トレハロース
、マンノース、マルトース、ラクトース、グルコース、ラフィノース、セロビオース、ゲ
ンチオビオース、イソマルトース、アラビノース、グルコサミン、フルクトース、ヒト血
清アルブミン及びこれらの安定剤の組合せからなる群から選択される、構成2記載の製剤

(構成20)
前記安定剤が約2 g/Lの濃度のヒト血清アルブミンである、構成2記載の製剤。
(構成21)
前記塩が約100 mM~約500 mMの濃度範囲である、構成3記載の製剤。
(構成22)
前記塩が塩化ナトリウムである、構成3記載の製剤。
(構成23)
前記塩化ナトリウムが約150 mMの濃度である、構成22記載の製剤。
(構成24)
前記NRGポリペプチドが約0.25 g/Lの濃度の配列番号:2に記載されたアミノ酸配列から
なるポリペプチドであり、ここで、前記緩衝剤が約10 mMの濃度のリン酸塩であり、前記p
Hが約6.0であり、前記安定剤が約2 g/Lの濃度のヒト血清アルブミンであり、かつ前記塩
が約150 mMの濃度の塩化ナトリウムである、構成3記載の製剤。
(構成25)
賦形剤を追加した構成1~24のいずれか1項記載の製剤の凍結乾燥により調製した、ニュ
ーレグリン(NRG)の凍結乾燥医薬製剤。
(構成26)
前記賦形剤がヒト血清アルブミン、マンニトール、グリシン、ポリエチレングリコール
、及びこれらの賦形剤の組合せからなる群から選択される、構成25記載の製剤。
(構成27)
前記賦形剤が、1 mlの再懸濁溶液で約60 mgの前記製剤を再懸濁した後に、約0.1 g/L~
約200 g/Lの濃度である、構成25記載の製剤。
(構成28)
前記賦形剤がマンニトールである、構成25記載の製剤。
(構成29)
前記マンニトールが1 mlの再懸濁溶液で約60 mgの前記製剤を再懸濁した後に、約50 g/
Lの濃度である、構成25記載の製剤。
(構成30)
(a) 配列番号:2に記載されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、(b) 前記緩衝剤と
してのリン酸塩、(c) 前記賦形剤としてのマンニトール、(d) 前記安定剤としてのヒト血
清アルブミン、及び(e) 前記塩としての塩化ナトリウムを含み、ここで、1 mlの再懸濁溶
液で約60 mgの前記製剤を再懸濁した後に、(a) が約0.25 g/Lの濃度であり;(b) が約10
mMの濃度であり、かつ前記pHが約6であり;(c) が約50 g/Lの濃度であり、(d) が約2 g/L
の濃度であり、かつ(e) が約150 mMの濃度である、構成25記載の製剤。
(構成31)
前記再懸濁溶液が生理食塩水である、構成30記載の製剤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
2022130627000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-07-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に実質的に記載された、新規な物、方法及び製造方法。