IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シー・アール・バード・インコーポレーテッドの特許一覧

<>
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図1
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図2
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図2A
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図3
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図3A
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図4
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図4A
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図4B
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図5
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図5A
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図6
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図7
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図8
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図9
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図10
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図10A
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図11
  • 特開-内部バルブを有する灌流バルーン 図11A
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022130643
(43)【公開日】2022-09-06
(54)【発明の名称】内部バルブを有する灌流バルーン
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20220830BHJP
   A61M 39/22 20060101ALI20220830BHJP
【FI】
A61M25/10 510
A61M25/10 520
A61M39/22
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106261
(22)【出願日】2022-06-30
(62)【分割の表示】P 2018546544の分割
【原出願日】2017-02-28
(31)【優先権主張番号】15/061,719
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス,ギャレット
(72)【発明者】
【氏名】モル,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ラドチョンスキ,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルク,チャンダー
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,アンソニー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流体の流れを移送するための管において医療処置(特に、大動脈弁形成術)を実施するための装置を提供する。
【解決手段】装置は、シャフト16と、シャフト16によって支持される膨張可能な灌流バルーン12と、を備える。灌流バルーン12は、灌流バルーン12が膨張状態にある状態で、管内の流体の流れを許容するための内部通路を備える。装置は、さらに、通路内での流体の流れを制御するためのバルブを備える。バルブは、シャフト16に接続されてもよく、バルーン12に部分的に接続される細長いチューブを備えていてもよい。バルーン12は、単一の断面において複数のセル12aを備える。セル12aの各々は、ネック部を備え、バルブは、通路内での流体の流れを制御するために、シャフト16とネック部との間の空間に位置決めされてもよい。バルブの位置を制御するためにコネクタが設けられてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置であって、
シャフトと、
前記シャフトによって支持され、複数のセルを備える膨張可能な灌流バルーンであって、前記複数のセルは、膨張流体によって膨張可能であり、前記管内の前記血液の流れを許容するための内部通路を境界付け、該灌流バルーンが膨張状態にある状態で、前記管内の前記血液の流れが前記内部通路を通ることを許容するように構成された膨張可能な灌流バルーンと、
前記内部通路内での前記血液の流れを制御するために、最も内側の部分のところで前記シャフトに接続されたバルブであって、前記バルブの周囲に沿って、前記バルブの材料は前記膨張可能な灌流バルーンの内部に接続されておらず、これにより、前記バルブがつぶれて前記膨張可能な灌流バルーンの前記内部通路を通る前記血液の流れを許容することが可能になるように構成された、バルブと
を備える装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記バルブは、拡張状態において略円錐台形状を有する本体を備える
装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記バルブは、単一の本体、または、複数のフラップを備える
装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記バルブは、前記バルーンの一部分を受け入れるための開口を備える
装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
前記バルーンの前記一部分は、テーパ状端部を備える
装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記セルの各々は、テーパ状端部を備え、
前記バルブは、作動されたときに、前記テーパ状端部と前記シャフトとの間の空間を塞ぐ
装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、
前記バルブは、前記テーパ状端部のうちの少なくとも1つに接続された
装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
さらに、前記バルブを前記バルーン、前記シャフト、または、該シャフトに関連付けられたシースに接続するためのコネクタを備える
装置。
【請求項9】
流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置であって、
シャフトと、
前記シャフトによって支持される膨張可能な灌流バルーンであって、該灌流バルーンが膨張状態にある状態で、前記管内の前記流体の流れを許容するための内部通路を備える膨張可能な灌流バルーンと、
前記通路内での前記流体の流れを制御するために部分的につぶれるように構成された細長いチューブを有するバルブと
を備える装置。
【請求項10】
請求項9に記載の装置であって、
前記チューブは、前記バルーンに少なくとも部分的に接続された
装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記チューブは、前記バルーンに接続された遠位部分と、前記バルーンに接続されない近位部分と、を備える
装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、
前記近位部分は、前記バルーンとの周方向シールを形成する連続的な断面を有する
装置。
【請求項13】
請求項9に記載の装置であって、
前記バルーンは、単一の断面において複数のセルを備え、
前記チューブは、前記複数のセルによって形成された前記通路の一部分に位置決めされる
装置。
【請求項14】
請求項9に記載の装置であって、
前記セルの各々は、内面に沿って曲線的であり、
前記セルに接続された前記チューブの少なくとも一部分は、隣接するセル同士の間に位置決めするための突出部と、前記曲線的なセルに係合するための、前記突出部同士の間の凹部と、を有する星形の形態の断面を備える
装置。
【請求項15】
流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置であって、
シャフトと、
前記シャフトによって支持される膨張可能な灌流バルーンであって、該灌流バルーンが膨張状態にある状態で、前記管内の前記流体の流れを許容するための内部通路を備え、前記シャフトに向けて延在する略テーパ状の部分を備える膨張可能な灌流バルーンと、
前記通路内での前記流体の流れを制御するために、前記略テーパ状の部分における前記シャフトと前記バルーンとの間の空間に位置決めされるバルブと
を備え、
前記膨張可能な灌流バルーンは、前記内部通路を境界付ける単一の断面において複数のセルを備え、前記複数のセルの各々が、前記灌流バルーンの前記略テーパ状の部分を形成するネック部を有し、前記バルブは、作動されたとき、前記略テーパ状の部分と前記シャフトとの間の空間を閉塞するように構成される装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置であって、
前記バルブは、拡張状態において略円錐台形状を有する本体を備える
装置。
【請求項17】
請求項15に記載の装置であって、
前記バルブは、単一の本体、または、複数のフラップを備える
装置。
【請求項18】
請求項15に記載の装置であって、
前記バルブは、前記バルーンの一部分を受け入れるための開口を備える
装置。
【請求項19】
請求項15に記載の装置であって、
前記略テーパ状の部分は、前記バルーンの遠位端部分のところにある
装置。
【請求項20】
流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置であって、
シャフトと、
前記シャフトによって支持される膨張可能な灌流バルーンであって、該灌流バルーンが膨張状態にある状態で、前記管内の前記流体の流れを許容するための内部通路を備える膨張可能な灌流バルーンと、
前記通路内での前記流体の流れを制御するためのバルブと、
前記バルブに接続して該バルブの位置を制御するためのコネクタと
を備える装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置であって、
前記コネクタは、前記バルブが逆さまになることを防止するために、前記バルブと前記バルーンとの間で延在するテザーを備える
装置。
【請求項22】
請求項20に記載の装置であって、
前記コネクタは、前記バルブと、前記シャフトまたは関連するシースと、の間で延在するテザーを備える
装置。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本明細書に記載される全ての公表文献および特許出願は、各公表文献または特許出願が参照によって組み入れられるように具体的かつ個別的に表示されるかのように同程度に参照によって本明細書に組み入れられる。
【0002】
[0002]バルーンなどの拡張可能なデバイスが医療処置において広く使用されている。バルーンの場合、それは、典型的にはカテーテルの端部で、バルーンが対象領域に到達するまで体内に挿入される。バルーンに圧力を加えることによって、バルーンが膨張される。使用方法の1つのバリエーションでは、バルーンは、膨張するときに、体内に空間を作り出す。
【0003】
[0003]バルーンは、心臓に関連する弁で使用することができ、それには、大動脈弁バルーン形成術(BAV)(原らの「経皮バルーン大動脈弁形成術再検討:再生時間?」発行2007;115:e334-8)中や経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)中が含まれる。そのような処置のために、膨張されるバルーンは、継続的な血流または灌流を可能にするように設計され得る。しかしながら、バルーンが膨張されたとき、心臓弁は必ず一時的に無効化される。これは、血流の阻害(望ましくない逆流を作り出すことによるものが含まれる)につながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]したがって、処置中に、特に処置の結果または別の結果として無効化される弁を含む処置に関連して使用されるときに、流体の流れを調節するのに使用可能な灌流バルーンを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]開示される実施形態の技術的効果は、灌流バルーンの内部において弁での流れの調節を達成することを含むと捉えることができる。これは、バルブを開ける際に流体の流れを向上させ、バルブを閉じる際に流れの閉鎖を向上させ、および/または、バルーンを製造するためのより簡単な方法を作り出す。
【0006】
[0006]本開示の一態様によれば、流体の流れを移送するための管において医療処置を実施するための装置は、シャフトと、シャフトによって支持される膨張可能な灌流バルーンと、を備えている。バルーンは、灌流バルーンが膨張状態にある状態で管内における流体の流れを許容するための内部通路と、通路内での流体の流れを制御するためにシャフトに接続されるバルブと、を備えている。
【0007】
[0007]一実施形態では、バルブは、膨張状態において略円錐台形状を有する本体を備えている。バルブは、単一の本体を備えていてもよく、1つ以上のフラップを備えていてもよい。バルブは、さらに、バルーンの一部分を受け入れるための開口を備えていてもよい。
【0008】
[0008]バルーンは、内部通路を境界付ける単一の断面において複数のセルを備えていてもよく、バルブは、セルによって形成される内部通路の一部分に位置決めされてもよい。各セルは、ネック部を備えていてもよく、バルブは、ネック部とシャフトとの間の空間に位置する。バルブは、ネック部のうちの少なくとも1つに接続されてもよい。
【0009】
[0009]装置は、さらに、バルブをバルーンに接続するためのコネクタを備えていてもよい。コネクタは、バルブをバルーン、シャフト、または、関連するシースに接続するために設けられてもよい。コネクタは、ワイヤ、ファイバ、リボン、または、類似の柔軟構造の形態のテザーを備えていてもよい。
【0010】
[00010]本開示の他の態様は、流体の流れを移送するための管において医療処置を実施
するための装置に関する。この装置は、シャフトと、シャフトによって支持される膨張可能な灌流バルーンと、を備えている。バルーンは、灌流バルーンが膨張状態にある状態で管内における流体の流れを許容するための内部通路を備えている。細長いチューブが、部分的につぶれて通路内での流体の流れを制御するように構成され、それによってバルブを形成する。
【0011】
[00011]一実施形態では、チューブは、バルーンに少なくとも部分的に接続される。チ
ューブは、バルーンに接続される遠位部分と、バルーンに接続されない近位部分と、を備えていてもよい。近位部分は、バルーンとの完全な、または、少なくとも部分的な周方向シールを形成する連続的な断面を有していてもよい。
【0012】
[00012]バルーンは、単一の断面において複数のセルを備えていてもよく、チューブは
、複数のセルによって形成された通路の一部分に位置決めされる。セルの各々は、内面に沿って曲線的であってもよい。セルに接続されるチューブの少なくとも一部分は、隣接するセル同士の間に位置決めするための突出部と、曲線的なセルに係合するための、突出部同士の間の凹部と、を有する星形の形態の断面を備えていてもよい。
【0013】
[00013]本開示のさらに別の態様は、流体の流れを移送するための管において医療処置
を実施するための装置に関する。この装置は、シャフトと、シャフトによって支持される膨張可能な灌流バルーンと、を備えている。バルーンは、灌流バルーンが膨張状態にある状態で管内における流体の流れを許容するための内部通路を備えている。バルーンは、シャフトに向けて延在する略テーパ状の部分を備えている。通路内での流体の流れを制御するために、略テーパ状の部分において、シャフトとバルーンとの間の空間にバルブが位置決めされる。
【0014】
[00014]一実施形態では、バルブは、拡張状態において略円錐台形状の本体を備えてい
る。バルブは、単一の本体を備えていてもよく、あるいは、複数のフラップを備えていてもよい。バルブは、バルーンの一部分を受け入れるための開口を備えていてもよい。バルブを受け入れるための略テーパ状の部分は、バルーンの遠位端部分のところに位置していてもよいが、同様に近位端のところに位置していてもよい。
【0015】
[00015]さらに別の態様では、本開示は、流体の流れを移送するための管において医療
処置を実施するための装置に関する。この装置は、シャフトと、シャフトによって支持される膨張可能な灌流バルーンと、を備えている。バルーンは、灌流バルーンが膨張状態にある状態で管内における流体の流れを許容するための内部通路と、通路内での流体の流れを制御するためのバルブと、バルブに接続してバルブの位置を制御するためのコネクタと、を備えている。
【0016】
[00016]一実施形態では、コネクタは、バルブが逆さまになるのを防止するために、バ
ルブとバルーンとの間に延在するテザーを備えている。コネクタは、バルブとシャフトまたは関連するシースとの間に延在するテザーを備えていてもよい。テザーは、ワイヤ、ファイバ、リボン、または、類似の柔軟構造を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】[00017]拡張状態にある膨張可能なデバイスの斜視図である。
図2】[00018]線2-2に沿った図1のデバイスの側断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを制限するための第1の位置にある。
図2A】[00019]図2の線2A-2Aに沿った断面図である。
図3】[00020]図1のデバイスの側断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを許容するための第2の位置にある。
図3A】[00021]図2の線3A-3Aに沿った断面図である。
図4】[00022]膨張可能なデバイスの他の実施形態の側断面図であり、このデバイスは、デバイスの中央通路を通る流れを閉鎖するための第1の位置にあるバルブを備えている。
図4A】[00023]図4の線4A-4Aに沿った断面図である。
図4B】[00024]図4Aに類似の断面図であり、代替実施形態を示している。
図5】[00025]図4のデバイスの側断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを許容するための第2の位置にある。
図5A】[00026]図5の線5A-5Aに沿った断面図である。
図6】[00027]図4Aに類似の断面図であり、バルブの様々な実施形態を示している。
図7図4Aに類似の断面図であり、バルブの様々な実施形態を示している。
図8図4Aに類似の断面図であり、バルブの様々な実施形態を示している。
図9図4Aに類似の断面図であり、バルブの様々な実施形態を示している。
図10】[00028]膨張可能なデバイスの他の実施形態の側断面図であり、このデバイスは、デバイスの中央通路を通る流れを許容するための第1の位置にあるバルブを備えている。
図10A】[00029]図10の線10A-10Aに沿った断面図である。
図11】[00030]図10のデバイスの側断面図であり、バルブは、デバイスの中央通路を通る流れを許容するための第2の位置にある。
図11A】[00031]図11の線11A-11Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[00032]開示される本発明は、本質的に灌流バルーンの範疇に入る膨張可能なデバイス
に関する。本発明の新規の特徴は、後で記載される特許請求の範囲に詳細に記載されている。本発明の原理が使用される例示的な実施形態を説明する次の詳細な説明と、添付図面と、を参照することによって、本発明の特徴および利点がより良好に理解されるであろう。
【0019】
[00033]図1は、膨張可能なデバイス10を示している。デバイス10は、処置に関し
て使用準備ができた膨張状態にある灌流バルーン12を備えている(ただし、このバルーンは、通常、選択された治療領域(例えば、大動脈弁)まで血管系を通って移送する目的で折り畳まれている)。膨張状態を見れば、デバイス10のバルーン12は、バルーンの少なくとも単一の断面において複数の膨張可能なセル12a(8つが図示されているが、任意の数が設けられ得る)を有していてもよいことを理解することができる(例えば、図2Aおよび図3A参照)。保持部(例えば、チューブ状の可撓性シースすなわち被覆(明確化のために図示していない))が、図示される実施形態では略環状の形態でセル12aを保持するために、セル12aの中央部分の上に設けられてもよく、また、狭窄バルブ等と接触するときにセルを保護するようにも機能してもよい。シースすなわち被覆は、セル12aの膨張が被覆を拡張させて外部構造(例えば、血管系、または、体内の他の構造の一部分を形成する弁)と係合するように、非コンプライアントに製造されてもよい。
【0020】
[00034]セル12aは、個々の、すなわち、離散的な個別に膨張可能なバルーンであっ
てもよい。各セル12aは、上述のようにネック部12bを介して、また、遠位端のとこ
ろのネック部12cを介して、分離した膨張内腔を有しており、これは、バルーン12の略テーパ状の部分を形成する。セル12aは、遠位先端のところ(例えば、各ネック部12cの遠位端のところ)でシールされていてもよく、あるいは、単一のバルーンの一部分であってもよい。後者は、中央軸線Xに沿って延在する通路Pをセル12aに形成させる態様で折り畳まれた、セグメント化された細長い構造によって達成され得る。バルーン12が完全に膨張されたときであっても、流体(例えば、血液)が中央軸線Xに沿って流れ続けることができる(これは、単一の膨張内腔によって行われてもよく、あるいは、各バルーンは、それ自体の膨張内腔を有していてもよい)。このタイプのバルーンの完全な説明は、国際特許出願公開WO2012099979で見つけることができる。ただし、他の形態の灌流バルーンも使用され得る(例えば、チューブ状のバルーン、流体の流れが膨張中に生じることを可能にする目的で周囲(たとえば、螺旋状)チャネルを有するもの、または、これらの技術の任意の組み合わせなど)。
【0021】
[00035]任意の場合において、デバイス10は、中央軸線Xに沿って延在する内腔Lを
有する内側シャフトすなわちチューブ14を備えていてもよい。内側チューブ14は、デバイスを治療場所へ案内するためのガイドワイヤを受け入れるように構成されていてもよい。内側チューブ14は、カテーテルシャフトすなわちチューブ16の一部分を形成してもよく、チューブ16は、内側チューブ14が位置決めされる内腔Nを備えている。次いで、灌流バルーン12は、例えば、通路Pへの入口を形成する近位ネック部12bのところで、カテーテルシャフト16によって支持され、カテーテルシャフト16に取り付けられてもよい。通路Pは、内腔Nを通る膨張流体を受け入れてもよい。
【0022】
[00036]本開示の一態様によれば、バルーン12は、通路Pを通る流体の流れを選択的
に調節するように構成される。一実施形態では、これは、バルブ18を使用して達成される。バルブ18は、選択的に動作される本体を備えている。この本体は、例えば一方向における流体の流れの結果(例えば、心臓拡張期に生じる)として通路Pを塞ぐために動作されたときに(図2A)、それを実質的に閉塞し、したがって、流体の流れを妨害または防止する。非作動時(折り畳まれるか、つぶれた時、図3,3Aのバルブ18’を参照)には、例えば心臓収縮期において、バルブ18は、通路Pを通る実質的な流れを可能にする。このようにして、バルブ18は、(例えば、大動脈弁を含む空間において、)バルーン12が膨張されているときに通路Pを通る流体の流れを繰り返し規則的に制限または許容してもよく、したがって、さもなければ無効化されるバルブの機能を再現する。
【0023】
[00037]図示される実施形態では、バルブ18は、略円錐台形状の単一の柔軟材料を備
えている。ただし、バルブは他の形態をとってもよく、それには、以下の説明でさらに概説されるようなものが含まれる。いくつかの実施形態では、バルブ18は、複数の材料を備えている。この複数の材料は、分離されていてもよく、あるいは、接続されていてもよい。
【0024】
[00038]バルブ18は、通路P内のどこかに(例えば、近位側を向いたコーンの相対的
に大きな開放端を有するその近位開放端に隣接して)位置決めされてもよい。ただし、バルブ18は、代替的に、デバイス10の遠位端のところに位置していてもよい。バルブ18は、経心尖に使用される場合には、遠位側を向いて開くように再度方向付けられてもよい。特定の位置または向きに関係なく、バルブ18は、デバイス10を使用した処置中において一方向弁機能を提供するように構成される。
【0025】
[00039]一実施形態では、バルブ18を形成する材料は、最も内側の部分のところで、
バルーン12を貫通するシャフトすなわちチューブ14に接続される。したがって、図2Aから理解され得るように、円錐台形状を有する場合、バルブ18を形成する材料は、シャフトすなわちチューブ14を受け入れるための開口18aを備えている。この接続は、公知の結合方法(例えば、接着剤、テープ、溶接など)によって達成されてもよい。バルブ18を形成する材料は、別の態様では、実質的に連続していてもよく、あるいは、特定の使用方法に応じて、所望のバルブ機能を達成するために2つ以上のセグメントに設けられてもよい(例えば、二尖弁を模した2つのセグメント、三尖弁を模した3つのセグメント)。代替的には、バルブ18は、チューブ14に摺動可能に接続されるように設けられてもよく、その結果、バルブ18は、それに沿って行き来して流れを調節する。
【0026】
[00040]バルブ18の周囲に沿って、材料は、バルーン12(例えば、セル12a)の
内部に接続されない。これによって、バルブは、つぶれて、通路Pを通る流体の流れを許容することが可能になる。しかしながら、バルブ18が部分的にのみつぶれることを可能にするために、バルブ18を形成する材料の周囲の一部分をバルーン12に(例えば、1つ以上のセル12aに、または、おそらくはネック部12bにさえ)接続することも可能である。流体の流れの所望の調節を提供するために、このようにして調整が行われてもよい。
【0027】
[00041]図2に示されるように、バルブ18は、オプションとしてのコネクタ20によ
ってデバイス10に接続されてもよい。コネクタ20は、例えば1つのセル12aと対応するネック部12bとの間の接合部のところで、バルブ18の周囲と、バルーン12と、の間に延在してもよい。このコネクタ20は、通路18内でバルブ18が逆さまになることを防止するテザーとして機能するが、作動状態と非作動状態との間の所望の移動を阻止しない十分な大きさを有している。コネクタ20は、リボン、ワイヤ、ファイバ、または、所望の機能を達成するのに十分な柔軟性を有する構造を備えていてもよい。
【0028】
[00042]バルブ18は、バルブ18の位置を制御するために、バルーン12の外部の構
造(例えば、シース22またはシャフト16)に接続されてもよい。これは、コネクタ20に類似する(したがって、テザーを構成する)コネクタ24を使用して行うことができる。これによって、バルブ18は、チューブ16またはシース22を後退させることによって、強制的につぶされ得る。これは、作動状態すなわち拡張状態のバルブから干渉されることなくデバイス10の取り外しを確実に達成できるようにするために行われてもよい。
【0029】
[00043]次いで図4および図5を参照すると、灌流バルーン(例えば、例示される複数
セル式バルーン12)についての可能なバルブ構成のさらなる実施形態が示されている。この実施形態では、バルブ18は、通路Pを通る流れを制限するために作動時に略円錐台形状になり(図4および図4A)、次いで、実質的に制限されない流れを許容するためにつぶされる(図5および図5A)柔軟材料からなる本体から形成されている。ただし、理解され得るように、本実施形態のバルブ18は、バルーンセル12aの遠位ネック部12c内でバルーン12の遠位端のところに位置する。より具体的には、バルブ18は、チューブ14と、ネック部12cによって形成されるケージと、の間の内部空間に位置する。バルブ18は、バルーンの近位端のところ(例えば、同様の場所)に位置決めされてもよい。
【0030】
[00044]再述すると、バルブ18は、単一体(例えば、単一の材料片)から形成されて
もよく、あるいは、一連のフラップ(例えば、図4Bに示されるような8つのフラップ18a~18gなど)として形成されてもよい。任意の場合において、材料は、例えば結合(接着剤、溶接(熱またはその他)、テープなど)によって内側部分に沿ってチューブ14に接続されてもよい。これに代えて、または、加えて、バルブ18を形成する材料は、結合されて、デバイス10の遠位先端10aの一部を形成してもよい。
【0031】
[00045]バルブ18を形成する材料は、例えばネック部12cのうちの1つ以上に沿っ
て、また、バルーンの内部においてネック部とシャフト14との間の空間に設置するために、オプション的にバルーン12に接続されてもよい。この接続は、例えば、溶接または接着剤(のり、テープなど)によって、あるいは、機械的な接続によって、接合を使用して達成されてもよい。1つの特定の実施形態では、バルブ18を形成する材料は、バルーンセル12aのうちの1つのネック部12c、または、バルーン12に接続された他の構造をそれぞれが受け入れるための1つ以上の開口を有している。したがって、図6(これは、図4Aと類似の図である)に示されるように、ネック部12cは、少なくとも部分的につぶれることができる態様でバルブ18を支持するように機能してもよい。
【0032】
[00046]本実施形態または他の実施形態では、バルブ18の材料は、心臓収縮期および
心臓拡張期における流体の流れおよび圧力の結果として得られる変化によって生じる、バルブの本体を形成する材料の相対的な撓みまたは膨張に基づいて流体の流れの閉鎖および許容を選択的に行うために、1つ以上のスリットS(図7参照)を備えていてもよい。スリットSは、図示されるように径方向に延在していてもよく、あるいは、周方向に延在していてもよいが、他の向きも可能である。
【0033】
[00047]上述したように、バルブ18の本体を形成する材料は、複数の部品に分離また
は分割されていてもよく(図8では、4つの4分体18a~18dに留意のこと)、その各々は、周囲に沿ってネック部12cのうちの1つ以上に関連付けられ、また、内側部分のところでチューブ14または先端10aに部分的または完全に結合される。ネック部12c(単数または複数)との機械的な接続は、これに加えて、または、代えて、これらの実施形態のうちの任意の実施形態において、図9に示されるように、バルブ18を形成する材料の内側部分に沿って設けられてもよい。この場合、チューブ14との接続はオプションであってもよい。
【0034】
[00048]機械的な接続が確立される上記の状況では、ネック部12cは、バルーン18
が膨張されるときにバルブ18を作動状態にする助けとなることができ、また、収縮されるときにバルーン18をつぶす助けとなることができることが理解され得る。任意の場合において、バルブ18を形成する材料は、バルーン12がつぶされるときの優先的な折り畳み、および、その後の膨張を容易にする特性を有していてもよい。これは、例えば、厚みが異なる材料を使用して、材料を何らかの方法で折り畳ませるリビングのヒンジまたは類似の構造を作り出すことによって達成されてもよい。弁体の材料には、所望のバルブ機能を達成するために、意図する態様でバルブ18が確実に拡張するか、または、つぶれるように、優先的な態様で折り畳みおよび折り畳み解除を生じさせる折り畳み線、プリーツ、ビーズまたは支持体が設けられてもよい。
【0035】
[00049]バルブ18は、円錐台以外の形状をとってもよい。例えば、図10~11は、
通路P内に位置決めされた略円筒形のチューブの形態の本体を有するバルブ18を示している。チューブは、バルーン12の内部に少なくとも部分的に接着されたフィルムから形成されていてもよい。フィルムは、例えば、通路Pを形成するセル12aの表面に沿うが、バルーンの他の場所に(例えば、ネック部12b,12cによって形成されるテーパ状の部分に沿って)位置していてもよい。具体的には、連続的な断面を有するチューブの第1の部分(これは、遠位側に位置していてもよい)が、第2の部分(これは、近位側に位置していてもよく、連続的な断面を有していてもよい)がバルーンに取り付けられていないままの状態で、(例えば、部分Aに沿って)バルーン12に接着されていてもよい。この取り付けは、結合(例えば、接着剤(のり、エポキシ樹脂など)、テープ、溶接、または、他の形態の熱接着など)を使用して達成されてもよい。その結果、周方向シールが、バルブ18の表面に沿って形成される。代替的に、シールは、大動脈弁に関して使用されるときに大動脈弁逆流が生じるとの理解のもと、(例えば、状況に応じて二尖、三尖、または、他の所望の形態のつぶれの機能を再現する態様でつぶれることを達成するために)チューブの一部分のみが接着されるようなものであってもよい。再述するが、チューブ18が他のどこかに位置決めされると、次いで、取付位置(例えば、部分A)は、適宜、再位置決めされるであろう(例えば、ネック部12b,12cに沿って。したがって、不連続なシールが形成される)。
【0036】
[00050]したがって、流体が近位方向に通路を流れるとき、バルブ18は、図10およ
図10Aに示されるように開いたままである。流れ方向が逆になると、結果として生じる負圧は、図11および図11Aに示されるように、バルブ18を形成するチューブの非取り付け部分をチューブ14のまわりでつぶれさせて、したがって、通路Pを通る反対方向の流体の流れを妨害させてもよい。このようにして、一方向弁が受動的な態様で形成される。再述すると、向きは、特定の用途に応じて逆にされてもよく、位置決めは、ネック部12b,12cではなく、セル12aによって結合される通路Pの一部分内に非取り付け部分がないようなものであってもよい。
【0037】
[00051]本実施形態のバルブ18は、通路Pに沿って任意の場所に位置決めされてもよ
く、全長は、異なる性能特性(長さが短いほど、材料が必要なくなり、したがって、追従性およびシース適合性の向上につながる)を達成するために調節されてもよい。部分Aに沿って所望のシールを達成するために、バルブ18を形成するチューブは、断面が8つの辺を有する星形形状を有していてもよい(図11A参照)。セル12aの各々が曲線的な内面を有している場合、バルブ18は、隣接するセル同士の間に位置決めするための複数の突出部と、曲線的なセルに係合するための、突出部同士の間の凹部と、を有していてもよい。ただし、バルブ18は、灌流バルーン12の構成に応じて、円形、正方形、矩形、長円形、三角形、または、他の任意の形状の断面を有していてもよい。この断面は、連続的であってもよいし、テーパ状であってもよいし、階段状であってもよいし、あるいは、非連続であってもよい。バルブ18の向きは、経心尖処置のために逆にされてもよい。
【0038】
[00052]様々な材料が、上述の構造を形成するために使用され得る。それには、国際特
許出願公開WO2012099979で概説されているようなものが含まれる。
【0039】
[00053]上述の説明は、本発明の概念の例示を提供することを意図しており、本発明を
特定の態様または形態に限定することを意図するものではない。単数形として本明細書に記載された任意の要素は、複数になってもよく(すなわち、「1つ」として記載された任意のものは1つよりも多くなり得る)、複数の要素は、個別に使用されてもよい。要素、デバイス、方法またはそれらの組み合わせの単一のバリエーションの開示された特徴は、他のバリエーション、例えば、寸法、破裂圧力、形状、材料、または、それらの組み合わせに使用または適用されてもよい。族要素の任意の種要素は、当該族の任意の他の種要素の特徴または要素を有していてもよい。「略」または「実質的に」といった用語は、その値が状況に応じて(例えば、所与の条件の10%まで)変わり得ることを意味している。本発明の実施するための上述の構成、要素または完全な組立体および方法ならびにそれらの要素、ならびに、本発明の態様のバリエーションは、任意の自明な修正形態とともに、任意の組み合わせで互いに組み合わせたり修正したりすることができる。
図1
図2
図2A
図3
図3A
図4
図4A
図4B
図5
図5A
図6
図7
図8
図9
図10
図10A
図11
図11A